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21 緊急事態宣言後の組織の動き 第 2 回 新型コロナウイルス感染症への対応状況に関する緊急調査 analysis analysis 「原則全員がテレワーク」は半減 織の出勤形態に関する質問で は、前回調査に比べ「原則全員 がテレワーク」との回答が 35.4%から 16%に半減した。一方で、「一部がテ レワーク、残りは出社」との回答は 46.7%から 56.3% へと10%ほど伸び 【グラフ 1】 。テレワークの割合につ いては 5 割との回答が 27.8%で最も高 くなった 【グラフ 2 】 0.5% 16. 0% 56. 3% 10. 4% 16. 9% 1.1% 35. 4% 46. 7% 6. 1% 10. 6% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 業務停止(休業等) 原則全員がテレワーク . 一部がテレワーク、残りは出社 原則全員が三密を避け出社 原則全員が感染防止を徹底し出社 今回調査 前回調査 【グラフ 1 】 組織の出勤形態 スク対策 .com は、「首都圏を中心としたレジリエンス総合プロジェクト(総括:国立 研究開発法人 防災科学技術研究所 首都圏レジリエンス研究センター長 平田 直 氏)」(以下、首都圏レジリエンスプロジェクト)との連携による「第 2回 新型コロナウイ ルス感染症(COVID-19)に係わる BCP(事業継続)に関する緊急調査」を実施した。5 月 11日~ 15日にかけて実施した第 1回調査に続くもので、緊急事態宣言後の 6 月15日から、 都道府県境をまたいだ移動の自粛が全面解除される 6 月19 日までの間、リスク対策 .com のメールマガジン購読者、首都圏レジリエンスプロジェクト・データ利活用協議会の会員 をはじめ、他の研究会の参画組織・団体にも協力を呼びかけ、計 563 の回答を得た。調査 は、COVID-19 に対する企業などの対応の流れを時間軸でとらえ、現時点での感染対策 や事業継続に向けた取り組みレベル、経営への影響、さらには組織に従事する個人の心 的負担などについて明らかにし、これらの対応の経験を、自然災害時の対応に生かすこと などを目的としている。リスク対策 .com では、速報性に重きを置き、まずは自動集計機能 による単純集計を実施した。その結果、組織の出勤体制においては「全員がテレワーク」 との回答が前回調査より減る一方で、「一部がテレワーク」との回答は増えた。また、国内 の出張・移動については「原則、中止」とする回答が大幅に減り、政府により県境をまたい だ移動が解除される前から、出張・移動を再開した組織が多かったことが分かった。

analysisanalysis 「原則全員がテレワーク」は半減 組織の出勤形態に関する質問で は、前回調査に比べ「原則全員 がテレワーク」との回答が35.4%から

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Page 1: analysisanalysis 「原則全員がテレワーク」は半減 組織の出勤形態に関する質問で は、前回調査に比べ「原則全員 がテレワーク」との回答が35.4%から

21

緊急事態宣言後の組織の動き第 2 回 新型コロナウイルス感染症への対応状況に関する緊急調査

analysisanalysis

「原則全員がテレワーク」は半減

組織の出勤形態に関する質問では、前回調査に比べ「原則全員

がテレワーク」との回答が35.4%から16%に半減した。一方で、「一部がテレワーク、残りは出社」との回答は

46.7%から56.3%へと10%ほど伸びた【グラフ1】。テレワークの割合については5割との回答が27.8%で最も高くなった【グラフ2】。

0.5%

16.0%

56.3%

10.4%

16.9%

1.1%

35.4%

46.7%

6.1%10.6%

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

業務停止(休業等)

原則全員がテレワーク

. 一部がテレワーク、残りは出社

原則全員が三密を避け出社

原則全員が感染防止を徹底し出社

今回調査 前回調査

【グラフ1 】

組織の出勤形態

リスク対策.comは、「首都圏を中心としたレジリエンス総合プロジェクト(総括:国立研究開発法人 防災科学技術研究所 首都圏レジリエンス研究センター長 平田 直

氏)」(以下、首都圏レジリエンスプロジェクト)との連携による「第2回 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係わるBCP(事業継続)に関する緊急調査」を実施した。5月11日~15日にかけて実施した第1回調査に続くもので、緊急事態宣言後の6月15日から、都道府県境をまたいだ移動の自粛が全面解除される6月19日までの間、リスク対策.comのメールマガジン購読者、首都圏レジリエンスプロジェクト・データ利活用協議会の会員をはじめ、他の研究会の参画組織・団体にも協力を呼びかけ、計563の回答を得た。調査

は、COVID-19に対する企業などの対応の流れを時間軸でとらえ、現時点での感染対策や事業継続に向けた取り組みレベル、経営への影響、さらには組織に従事する個人の心的負担などについて明らかにし、これらの対応の経験を、自然災害時の対応に生かすことなどを目的としている。リスク対策.comでは、速報性に重きを置き、まずは自動集計機能による単純集計を実施した。その結果、組織の出勤体制においては「全員がテレワーク」との回答が前回調査より減る一方で、「一部がテレワーク」との回答は増えた。また、国内の出張・移動については「原則、中止」とする回答が大幅に減り、政府により県境をまたいだ移動が解除される前から、出張・移動を再開した組織が多かったことが分かった。

Page 2: analysisanalysis 「原則全員がテレワーク」は半減 組織の出勤形態に関する質問で は、前回調査に比べ「原則全員 がテレワーク」との回答が35.4%から

22

国内出張・移動は早い段階から再開

国内出張・移動については、政府から都道府県境をまたぐ移動

の自粛が解除される6月19日以前の調査だったが、「原則、中止」は76.1%から40.3%と大幅に減り、逆に「同一

都道府県内および許可された地域なら可能」「三密を避け出張・移動」との回答が伸びた【グラフ4】。海外については、前回調査とほぼ同様で、依然として「原則、中止」が8割を超えた。

40.3%

11.5%

22.8% 19.4%

3.8% 2.3%

76.1%

9.5%

2.5%7.0%

1.8% 3.2%0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

原則、中止

同一都道府県内なら可能

同一都道府県内および許可された地域

三密を避け出張・移動

通常通り出張・移動

あてはまらない

今回調査 前回調査

【グラフ4 】

国内出張・移動7.4%

21.0%

30.9%

17.3%

49.3%

27.9%

21.7%

26.4%

36.1%

18.5%

39.1%

29.8%

一部拠点の閉鎖

間引き出勤

スプリットチームを実施

勤務時間帯を分けている

三密を避けた職場レイアウト

どれもあてはまらない

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

今回調査 前回調査

【グラフ3 】

組織の働き方環境

7.5%

9.8%

16.9%

11.0%

27.8%

9.4% 9.8%

5.1%

2.8%

1割 2割 3割 4割 5割 6割 7割 8割 9割0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

【グラフ2 】

テレワークの割合 組織の働き方環境についても、「一部拠点の閉鎖」は21.7%から7.4%まで減った。逆に、「三密を避けた職場レイアウト」は39.1%から49.3%に伸びており、完全に在宅勤務にしていた

会社がかなり少なくなったことがうかがえる【グラフ3】。回答組織の多くが東京を本社にしていることから、特に首都圏でこうした動きが顕著だったと言える。

Page 3: analysisanalysis 「原則全員がテレワーク」は半減 組織の出勤形態に関する質問で は、前回調査に比べ「原則全員 がテレワーク」との回答が35.4%から

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15.3%

26.6%

29.1%

22.5%

24.1%

19.6%

13.7%

11.9%

12.2%

15.1%

15.3%

53.6%

50.2%

56.8%

59.5%

59.0%

55.2%

47.5%

48.4%

55.2%

46.2%

41.7%

6.5%

3.4%

1.8%

5.0%

3.4%

2.0%

7.0%

9.2%

9.5%

4.7%

2.9%

11.0%

7.4%

5.9%

8.3%

6.5%

7.9%

12.4%

15.1%

13.1%

7.0%

3.6%

2.0%

2.0%

1.1%

0.9%

0.9%

0.5%

1.6%

2.5%

1.8%

0.9%

0.7%

11.5%

10.4%

5.4%

3.8%

6.1%

14.9%

17.8%

12.8%

8.3%

26.1%

35.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

人事・労務:採用

人事・労務:昇進

財務:決算処理

契約:取引・契約

情報:既存インフラ・保守の実施

情報:テレワークのサポート

広報:マーケティング

営業:企画・セールス

営業:顧客対応

生産:研究・開発

生産:製造・生産管理

原則通常通り 三密避け通常通り 一部停止 最低限の業務のみ 中止/延期 非該当/不明

今回

11.7%

22.1%

23.3%

16.9%

21.0%

19.2%

9.0%

6.6%

9.3%

8.6%

11.1%

35.4%

35.7%

49.0%

42.9%

45.2%

42.7%

28.0%

30.3%

35.2%

32.5%

29.1%

9.5%

3.4%

1.8%

6.8%

5.0%

1.8%

9.5%

12.4%

10.6%

9.3%

5.9%

23.9%

21.0%

17.4%

25.3%

22.4%

19.4%

23.7%

26.2%

29.1%

14.9%

10.6%

5.9%

3.2%

1.1%

1.6%

1.4%

0.5%

5.4%

5.6%

4.1%

2.9%

1.6%

13.5%

14.7%

7.5%

6.6%

5.2%

16.5%

24.4%

19.0%

11.7%

31.8%

41.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

人事・労務:採用

人事・労務:昇進

財務:決算処理

契約:取引・契約

情報:既存インフラ・保守の実施

情報:テレワークのサポート

広報:マーケティング

営業:企画・セールス

営業:顧客対応

生産:研究・開発

生産:製造・生産管理

原則通常通り 三密避け通常通り 一部停止 最低限の業務のみ 中止/延期 非該当/不明

(前回)

事業は「三密を避け通常通り」が増える

事業継続への取り組み状況については、前回同様、人事、財

務、契約、情報、広報、営業、生産の各機能について、「原則通常通り」

「三密避け通常通り」「一部停止」「最低限の業務のみ」「中止/延期」のどのレベルにあるかを聞いた。その結果、全ての機能について「原則通常

通り」と「三密避け通常通り」の割合が前回より増えた。逆に「一部停止」や「最低限の業務のみ」の割合は減った。ただし、人事、財務、契約、

情報に比べ、広報や営業、生産については、「原則通常通り」「三密避け通常通り」を足した割合が前者に比べ低い【グラフ5】。

【グラフ5 】事業継続の状況

Page 4: analysisanalysis 「原則全員がテレワーク」は半減 組織の出勤形態に関する質問で は、前回調査に比べ「原則全員 がテレワーク」との回答が35.4%から

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0.2% 0.7%2.3%

18.0%

39.4%

7.7%

4.1% 4.1%

12.8%10.8%

0.7% 0.2% 0.5%

13.8%

30.9%

12.6%

3.2%5.4%

14.9%

17.8%

3倍以上の増

2~3倍の増

同じ程度~2倍の増

同じ程度

1~3割の減

3~5割の減

5~7割の減

7割以上の減

売り上げとは関係ない業種

わからない

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

今回調査 前回調査

マスクや移動に関する感染対策にストレス

アンケートでは、組織に従事する個人の心的負担についても

聞いた。政府が示す「新しい生活様式」について、それぞれどの程度ストレスに感じているかを聞いたところ、マスクの着用(屋内/会話するとき)や移動に関する感染対策(旅行は

控えめ、やむを得ない出張のみ、要行動記録)、娯楽スポーツ(公園は空いている時間、ジョギングは少人数、狭い部屋は短時間、歌・応援は十分な距離かオンライン)において強くストレスを感じている傾向が表れた【グラフ7】。

 売上への影響は、前回調査と大きな変動はなかったが、コロナ前と比べて「1~3割程度の減」が10%近く増え39.4%となった【グラフ6】。

【グラフ6 】売上への影響(新型コロナ対応前と比較)

4.1%

13.1%

0.2%

11.7%

2.9%

3.8%

7.7%

7.0%

12.4%

7.4%

5.0%

24.1%

44.1%

12.6%

40.1%

21.4%

25.9%

31.3%

33.3%

39.9%

28.2%

23.9%

17.1%

10.1%

16.4%

17.6%

16.7%

18.5%

18.0%

20.3%

15.8%

25.9%

22.5%

32.7%

19.8%

36.9%

18.2%

38.3%

32.7%

26.1%

23.2%

17.3%

16.2%

26.4%

21.6%

12.6%

33.6%

10.6%

19.6%

18.9%

14.2%

14.6%

12.4%

8.8%

20.5%

0.5%

0.2%

0.2%

1.8%

1.1%

0.2%

2.7%

1.6%

2.3%

13.5%

1.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

身体的距離の確保

マスクの着用

手洗い

移動に関する感染対策

日常生活

買い物

公共交通機関の利用

食事

娯楽 スポーツ等

冠婚葬祭等の親族行事

働き方のスタイル

非常にストレスに感じる ストレスに感じる どちらとも言えない

たいしてストレスに感じない ほとんどストレスに感じない 非該当

【グラフ7 】新しい生活様式への適応

Page 5: analysisanalysis 「原則全員がテレワーク」は半減 組織の出勤形態に関する質問で は、前回調査に比べ「原則全員 がテレワーク」との回答が35.4%から

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職場付近は少し閑散としている

今回の調査では新たに職場付近のにぎわいについて聞いたと

ころ、「コロナ前より少し閑散としている」が46.4%と最多で、「コロナ

前より、ずいぶん閑散としている」が37.8%と僅差で続いた。今後の調査で、どうにぎわいを取り戻していくのか注目したい【グラフ8】。

三密を避けた避難準備に課題

最後に、コロナ禍における自然災害への備えについて聞いた

ところ「自宅や職場での備蓄」は、43.9%と多くの回答者が既に実施済みとしたものの、「三密を避けるために、より広い避難場所を検討」「早め

の避難ができるように準備」「高齢者・障がい者の感染対策の準備」についてはあまり進んでいない傾向が明らかになった【グラフ9】。既に大規模な災害が発生しているだけに、感染対策と避難の両立は急務と言える。

0.5%

14.0%

46.4%

37.8%

1.4%

コロナ禍前よりにぎわっている

コロナ禍前の状態に戻った

コロナ禍前より少し閑散としている

コロナ禍前より、ずいぶん閑散としている

コロナ禍の影響はなかった

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

50.0%

【グラフ8 】職場付近のにぎわい

15.8%

6.5%

23.9%

11.7%

7.0%

35.4%

43.9%

36.0%

32.0%

51.8%

43.5%

23.2%

44.1%

42.8%

42.1%

50.2%

21.4%

37.8%

40.3%

17.8%

12.2%

6.1%

11.3%

2.9%

7.0%

29.5%

2.7%

1.1%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

ハザードマップ等を活用し、三密を避ける避難方法・場所を検討する

三密を避けるために、より広い避難所を検討する

三密を避けるために、在宅避難に備える

三密を避けるために、早め早めの避難ができるように準備する

高齢者・障がい者等の感染症対策を準備する

非常持出袋に感染症対策グッズを準備する

コロナ禍での災害に備えて、自宅や職場に備蓄をする

実施した・実施済 今は実施を考えていない 必要ない・あてはまらない実施する予定である

【グラフ9 】自然災害への備え