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VS1-1☆ VS1-2☆ Aorto Mitral continuityで連続する大動脈弁 透析 …

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Page 1: VS1-1☆ VS1-2☆ Aorto Mitral continuityで連続する大動脈弁 透析 …

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VS1-1☆Aorto�Mitral continuity で連続する大動脈弁輪・僧帽弁輪石灰化症例に対する手術

京都大学医学部附属病院 心臓血管外科

船本 成輝、山崎 和裕、三和 千里、丸井 晃、南方 謙二、村中 弘之、中田 朋宏、武田 崇秀、高井 文恵、小田 基之、仲原 隆弘、池田 義、坂田 隆造

【はじめに】高度僧帽弁弁輪石灰化を伴う場合、弁周囲逆流や左室破裂などの合併症発生リスクが高く、僧帽弁手術の難易度は飛躍的に高くなる。当院で行った aorto�mitral continuity で連続する大動脈弁輪および僧帽弁輪石灰化症例にする手術症例をビデオにて供覧する。

【症例】76 歳女性。156cm、65.3kg、BSA 1.62m2。2年前より DOE、下腿浮腫が出現し、半年前から意識消失発作を認めるようになった。心エコーにて高度MS(MVA : 1.10cm2)、高度 AS(AVA : 0.4cm2)を認め、大動脈弁輪と僧帽弁輪に連続する高度の弁輪部石灰化を認めた。

【手術】僧帽弁は前尖弁輪部全体から後尖 P3 弁輪部にかけて高度の石灰化を認めた。後尖を切除し、CUSA にて P3 部の石灰化を除去した。大動脈弁は三尖で、弁尖・弁輪部の高度石灰化を認めた。弁尖を切除し、弁輪部石灰化はロンジュールにて除去した。大動脈弁輪越しに僧帽弁を観察したところ、大動脈弁輪部の石灰化は僧帽弁前尖弁輪部の石灰化と連続し、後尖 P3 弁輪部まで伸びていた。大動脈弁輪越しに MAC をロンジュールおよび CUSA にて破砕・摘除し、僧帽弁前尖を切除した。僧帽弁は CEP27mm を選択し、supra�annular position に縫着、大動脈弁は CEP Magna 19mm を選択し、supra�annu-lar position に縫着した。三尖弁は De Vega 法にて弁輪を縫縮した。人工心肺からの離脱は容易であった。体外循環 236 分、大動脈遮断 181 分。術後、気道狭窄にて再挿管、肺炎合併から敗血症となり気管切開を必要とし、術後呼吸管理・感染症に対する治療で入院は長期となったが、気切孔閉鎖し歩行器使用で歩行可能な状態まで回復し、近医へリハビリ転院となった。経過中、心血管イベント、弁関連合併症はなく、心エコーにて perivalvular leakage は認めなかった。

【まとめ】A�M continuity の高度石灰化を伴う MACに対して、大動脈弁輪越しに CUSA にて除石灰を行った。除石灰にて支持組織の確保が難しい時は弁輪部形成が必要となるが、除石灰は徹底的に行う必要はなく、針の刺入が可能な状態まで石灰化を破砕することを基本方針とすることで、弁輪部高度石灰化病変においても弁輪部再建をせずに通常通りの弁置換で対応可能であった。

VS1-2☆透析患者の高度僧帽弁輪石灰化病変に対する僧帽弁置換術の工夫~Translocation MVR

湘南鎌倉総合病院 心臓血管外科

田中 正史、伊藤 智、片山 郁雄、嶋田 直洋、板垣 翔、白杉 岳洋

長期透析歴を有する弁膜症症例では弁尖、弁輪の石灰化が高度である場合が多く、特に高度僧帽弁輪石灰化を合併した症例では僧帽弁置換術の際、弁輪の石灰化を除去しようとすると左室破裂や左冠動脈回旋枝の損傷などの致命的な合併症を起こす危険性がある。今回我々は僧帽弁置換術が必要となった高度僧帽弁輪石灰化症例に対し、石灰化を CUSA で可及的に除去し、僧帽弁輪の左房側に人工弁輪を作成し、自己弁輪に糸かけをせずに左房側に機械弁を縫着した症例を経験したので、手術手技を動画で供覧し報告する。59 歳男性。慢性糸球体腎炎で血液透析歴 23 年。大動脈弁狭窄症および僧帽弁狭窄症が進行し、労作時の呼吸困難、透析時の血圧低下を認めるようになり来院。僧帽弁は前後尖弁輪から弁下組織、左室壁まで高度な石灰化を認めた。前尖側は大動脈弁まで石灰化が連続していた。僧帽弁側と大動脈弁側からCUSA にて弁尖および弁下組織の石灰化を除去し、僧帽弁口を確保した。前後尖弁輪ともに石灰化が非常に強く自己弁輪への縫着は困難であったため、SJM 25mm にテフロンフェルトを Collar 状に縫着し、全周性に左房壁に縫着した。さらに AVR、TAP、MAZE 手術を施行した。術後、弁周囲逆流を認めず、僧帽弁機能に異常を認めなかった。高度僧帽弁輪石灰化を伴う僧帽弁疾患に対して本術式は遠隔期の左室化左房の瘤化などの問題点が報告されているが、手術手技は比較的容易であり、長期透析症例の手術法として選択肢の一つになりうると考えられる。

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VS1-3☆CUSAによる石灰化狭小大動脈弁輪に対する基部再建の工夫

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター心臓血管外科

久貝 忠男、摩文仁克人、盛島 裕次、阿部 陛之

【目的】最小サイズの生体弁が移植できない狭小弁輪や植え込み操作が困難な高度な基部石灰化を有する高齢者の大動脈弁置換に対して、われわれはFreestyle 弁 R(FS 弁)によるフルルート法(大動脈基部再建)を行ってきた。特に、著しい石灰化への対処や冠動脈吻合は重要であり、その工夫をビデオで供覧する。

【弁輪の石灰化処理】CUSA の超振動を利用して、弁輪の石灰化を均一かつ丁寧に除去する。弁輪への糸かけはできるだけ細かく、単結節で行い、やわらかい所を刺出入する。糸切れ防止で帯フェルトを糸の間に挟んで結紮する。

【冠動脈再建】Carrel patch 法の冠動脈ボタンは石灰化を一緒に大きめに作成する。冠動脈は剥離しすぎないことが肝要で、吻合の際に周囲組織も利用する。ボタンは針が通る程度に抑えて CUSA で脱灰する。外膜のみになってもドーナツフェルトを使用し、かつ big biteで入口近くに全層かけることで強固になる。

【症例 1】69 歳の女性、透析。Leriche 症候群。BSA=0.99cm2。ADL は杖歩行。3 年前から、透析後に胸部圧迫感出現。【心エコー】AVA=0.5~0.7cm2、⊿ PG

(LV�Ao)=48mmHg、EF=72%。大動脈弁輪径は16mm。【心カテーテル検査】CAG : #7~#8;びまん性の 75~90%、#2 : 90% 狭窄。

【手術手技】大動脈遮断前に LITA�#8、SVG�#3 吻合終了。STJ~バルサルバは石灰化で狭小化し、mosaic R 19mm、ATS�AP R 16mm のサイザーが通過せず。フルルート法にて FS 弁 19mm を移植した。大動脈切開部の石灰化は切除し、フェルト補強した。

【症例 2】80 歳の男性。BSA=1.41cm2。夜間の胸部圧迫感。【心エコー】AVA=0.99cm2、⊿ PG(LV�Ao)=32mmHg、EF=80%。大動脈弁輪径は 20mm。【心カテーテル検査】CAG : #11just ; 90%、#1 : 75% 狭窄。

【胸部 CT】上行~バルサルバ洞まで陶器様石灰化。冠動脈入口部の石灰化著明。

【手術手技】冷却中に SVG�#3、SVG�#14 吻合終了。上行は循環停止、選択的脳分離体外循環下に人工血管置換。基部~弁輪は石灰化で土管状に硬化、狭小化し、操作が困難であった。FS 弁 21mm によるフルルート法を行った。FS 弁と人工血管を吻合し、手術終了した。

【まとめ】狭小弁輪に対するフルルート法は機械弁移植や弁輪拡大を回避でき、優れたパーフォマンスとワ-ファリン回避を確保できる。基部~弁輪、冠動脈入口の石灰化が障害となるが、その問題解決のために CUSAによる脱灰は均一で、むらがなく、組織を柔軟にして安全に行うことができる。

VS1-4☆右房血管肉腫に対して腫瘍切除を行い、右房、三尖弁輪及び冠動脈再建を行った一手術例

兵庫医科大学 心臓血管外科

良本 政章、光野 正孝、山村 光弘、田中 宏衞、福井 伸哉、吉岡 良晃、辻家 紀子、梶山 哲也、宮本 裕治

血管肉腫は心臓に発生する悪性腫瘍では最も頻度が高く、予後不良の疾患であり、右房に好発する。今回我々は右房血管肉腫に対する手術例を経験したので、手術手技をビデオにて供覧する。症例:39 歳、男性。現病歴:突然の胸背部痛を主訴に近医を受診した。心エコーにて心嚢液貯留を認めたため、心膜炎と診断され、入院加療を受けた。以後、心嚢液は漸減していたが、入院後 21 日目に再度胸背部痛が出現し、ショック状態となった。心エコー上、心タンポナーデを認め、当院 CCU に搬送された。入院後経過:心嚢穿刺により血性心嚢液が得られ、冠動脈造影により右冠動脈(RCA)に腫瘍濃染像が認められた。経胸壁心エコー検査では腫瘍像を同定することは困難であったが、MRI 及び造影 CT 検査により右房自由壁を占拠する血管肉腫(サイズ 65x 60 mm)と診断された。同腫瘍の破裂による心タンポナーデと診断し、手術を施行した。手術:胸骨縦切開により心嚢内にアプローチした。右房自由壁は表面が不整な脆弱な腫瘍により占拠されていたが、上大静脈(SVC)との接合部は越えておらず、周囲臓器への浸潤も認められなかった。上行大動脈送血、SVC 及び右大腿静脈脱血による人工心肺を確立し、心停止下に腫瘍切除を行った。腫瘍の広がりは上大静脈や心房中隔、左房には及んでいなかった。しかしながら、自由壁側は右房室間溝を越えて、右室心外膜面に一部浸潤していた。このため、RCA を#1 及び#3 で結紮し、腫瘍とともに切除した。CUSA により右室側の腫瘍を切除したところ、浸潤は心外膜側のみであり、心内膜側は三尖弁輪を越えていなかった。心臓表面には腫瘍播種によると思われるフィブリン様の析出物を認めたが、これも CUSA により有効に郭清できた。右室自由壁から離開した三尖弁輪を 4�0 Polypropylene 糸による連続縫合で再建し、さらに 31mm Tailor band により弁輪補強を行った。右房自由壁の再建はウシ心膜パッチで行い、RCA #3 への CABG を大伏在静脈グラフトで行った。術後経過:術後経過は良好であり、病理組織検査では血管肉腫と診断された。術後 3 ヶ月の現在、局所再発及び遠隔転移を認めず、外来通院中である。まとめ:右房自由壁を占拠する血管肉腫に対して、腫瘍、右房自由壁及び右冠動脈合併切除術+三尖弁輪及び右房自由壁再建+CABG x1(SVG to #3)を施行し、救命し得た。

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VS2-1☆Porcelain Aorta を伴う ASに対する上行大動脈置換及び大動脈弁再建術

東邦大学医療センター大橋病院 心臓血管外科

河瀬 勇、尾崎 重之、山下 裕正、野澤 幸成、松山 孝義、内田 真、高遠 幹夫、萩原 壮

[目的]透析患者に対する大動脈弁置換術においては、人工弁の選択や術後管理など議論が多い。また、透析患者特有の高度石灰化は大動脈にも多く見られ開心術を困難にすることもしばしばである。今回、我々は、Porcelain Aorta を伴う透析患者の重症大動脈弁狭窄症(AS)に遭遇し、上行大動脈置換術および大動脈弁再建術を施行したので、手術を供覧し同様な症例に対する手術方法を検討する。

[症例]患者は 67 歳の女性である。透析導入 4 年後に胸部不快感を覚えるようになり、狭心症および大動脈弁狭窄症を指摘された。冠動脈病変は、右冠動脈#3 および左前下行枝#6 に見られ、カテーテルインターベンションが施行された。その後、AS の増悪が見られ、胸部症状の増悪を伴ったため手術依頼となった。CT 上、上行大動脈の石灰化が著明であった。心エコー上、大動脈弁は 3 尖で石灰化が著明であり、最大圧較差が 76mmHg で弁口面積が 0.97cm2、外科的弁輪径が 19.7mm であった。PorcelainAorta のために上行大動脈へのカニュレーションやクランプが危険と判断されたため、低体温循環停止・逆行性脳潅流のもと上行大動脈を CUSA にて脱石灰化した後、人工血管で置換した。その際、CUSA による脱石灰化は非常に有効であった。一方、大動脈弁手術については、透析患者であり弁置換の場合でも人工弁の選択につき議論の多いところである。当科では、術後の血行動態が良好なこと、異物を用いないこと、そして、術後ワーファリン内服が不要なことなどから、グルタルアルデヒド処理した自己心膜を用いた大動脈弁 3 尖再建術を施行した。患者の術後経過は良好で、心エコー上の大動脈弁最大圧較差は 12mmHg で大動脈弁逆流は全く認めなかった。

[結論]Porcelain Aorta を伴う透析患者の AS に遭遇し、循環停止下に上行大動脈置換術を行い、自己心膜を用いた大動脈弁再建術を施行した。手術は安全に行うことができ良好な結果を得た。本術式は、石灰化の強い透析患者に対し非常に有効であると思われた。

VS2-2☆Bentall 術後 19 年目に菌血症から大動脈基部仮性瘤を発症し再Bentall 手術を施行した 1例

名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学系 心臓外科学講座

田村 高廣、碓氷 章彦、藤田 山、岡田 典隆、吉住 朋、高野橋 暁、野中 利通、寺澤 幸枝、徳田 順之、六鹿 雅登、成田 裕司、荒木 善盛、大島 英揮、上田 裕一

【目的】Bentall 術後に合併した PVE に対する再手術では、大動脈弁輪および冠動脈入口部の脆弱性を伴うことが多く、縫着操作が困難な上に、人工血管・人工弁に対する感染再発予防を考慮する必要がある。われわれは Valsalva graft を用いた Composite graftを用い、大動脈弁輪への縫着を工夫するとともに、二期的大網移植術により、感染制御可能であった症例を経験したので、手術の工夫をビデオで供覧する。

【症例】60 歳男性【主訴】発熱【既往歴】1992 年大動脈弁輪拡張症・大動脈弁閉鎖不全症 Bentall 手術

【現病歴】2011 年 5 月に発熱で当院救急外来受診。血液培養で Edwardsiella trada を検出し、CTRX4g�day で抗生剤加療を開始。尿培養も同一菌種。入院後に DIC 病態が続き、FFP や PC・AT�III の補充。第5 病日の CT で、心嚢液、大動脈周囲の液体貯留などもなく抗生剤治療を継続。第 20 病日に炎症部位の特定を図るため PET�CT を施行したところ、大動脈基部周囲に限局して集積が強く、Bentall 手術後の PVEと診断。第 33 病日の MDCT で吻合部仮性瘤を認め、第 41 病日に再 Bentall 手術を施行し、翌日に大網充填を施行。

【手術所見】胸骨正中切開、弓部送血、右房脱血で人工心肺を確立し、大動脈基部を剥離。この部位には膿汁はなく、乾酪組織があり感染所見が認められた。人工血管・人工弁を外し、大動脈弁輪部から全ての組織を切除。Valsalva graft 28mm の collor 部を内翻させ On�X 25mm を 4�0 プロリンで固定し、折り返した collar 部を縫代として残して composite graft を作成し、Rifampicin 溶液に浸漬させた。左右冠動脈はGelweave 8mm を用いて Piehler 法で再建した。大動脈弁輪は大きく欠損した状態で、LCC は AML 付着部まで、RCC は弁輪下の中隔心筋が吻合部となった。弁輪の外側にウシ心膜フェルトをおき、外から内に大きく 3�0 プロリンで U�suture を全周性に計 17 対置いた。作成した graft の collar 部に運針し、graft外側にも心膜ストリップを置いて結紮した。その後に Main graft 末梢側吻合を行い、冠動脈人工血管をgraft に吻合した。組織塗末は陰性、培養も陰性。

【術 後 経 過】LVFX500mg�day+FLCZ400mg�dayを使用し、発熱は徐々に軽快。リハビリも順調に進み、独歩退院し外来通院中で再燃を認めていない。

【結語】Valsalva graft を用いた Comosite graft は Ri-fampicin 浸漬が可能なうえ、脆弱な大動脈弁輪への縫着が容易であり、二期的大網移植とともに感染再燃予防にも有用であった。

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VS2-3☆人工弁感染症に対するManoguian+Bantall手術

長崎光晴会病院 循環器センター外科

末永 悦郎、麓 英征、三保 貴裕、陣内 宏紀

【背景】人工弁感染症(PVE)は感染性心内膜炎(IE)の中でも最も手術が困難といわれている。再手術でありそのほとんどが緊急あるいは不安定な状態で手術することが多く死亡率が高いとされる。今回われわれは感染尖心内膜炎による大動脈弁置換術後に人工弁感染を起こし急性左心不全に陥った症例に対し緊急にて Manoguian+Bantall 手術を施行し良好な結果を得たのでビデオにて供覧する。【症例】48 歳、女性。45 歳時に右変形性股関節症にて手術の既往あり。H23 年 2 月 16 日労作時息切れを主訴に精査入院となった。心エコーにて重度の AR を認めたため手術予定となる。外来待機中に急性心不全となり 3 月30 日、緊急 AVR(生体弁)を施行した。術中所見により感染性心内膜炎が疑われた。術後厳重な抗生剤投与にもかかわらず発熱、CRP の上昇を認めた。術後 2 ヶ月も頃より弁輪部逆流を認め膿瘍形成も疑われた。感染はコントロールできていたが、左心室の拡大と僧帽弁逆流が出現したため再手術を予定した。待機中 6 月 21 日に急性左心不全に陥り緊急手術を施行した。【手術】上行大動脈送血、右房脱血にて体外循環を確立後、大動脈を遮断し心停止下に大動脈切開した。感染は大動脈弁輪広範に及び、デタッチメントと膿瘍を形成していた。人工弁と取り外しManoguian 法によるアプローチにて大動脈基部及び僧帽弁前尖を切除し感染組織を可及的に除去した。まず自己心膜を Double-Layer にて左室心筋に縫合し大動脈基部を再建した。次に SJM#25mm 機械弁にて僧帽弁を置換した。続いて Double-Layerウシ心膜パッチにて Inter valvelar fibrous body

(IFB)を再建し左房壁を 4�0Prolenenite にて連続縫合した。再建した自己心膜とウシ心膜に MattressSuture をかけ Carboseal #23mm にて大動脈基部を再建した。5�0Prolene の連続縫合にて両側の冠動脈を再建した後、人工血管を遠位側大動脈と吻合した。体外循環時間は 354 分、大動脈遮断時間は 260mm、手術時間は 7 時間 58 分を要した。術後の心エコーでは IE の再発を認めなかった。術後 75 病日に軽快退院となった。

【結語】急性心不全に陥った人工弁感染症に対し緊急にて Manoguian+Bantall 手術を施行し良好な結果であった。

VS2-4☆成人期の動脈スイッチ手術後患者に対する手術―大動脈弁閉鎖不全と大動脈基部拡大―

船橋市立医療センター 心臓血管外科

茂木 健司、高原 善治、松浦 馨、桜井 学、川村 知紀

完全大血管転位(TGA)に対する動脈スイッチ手術(ASO)の成人期における問題点のひとつとして、大動脈弁閉鎖不全症(AR)と大動脈基部拡大が指摘されていている。ASO 後 23 年を経過した AR+大動脈基部拡大症例を経験したので映像を供覧する。

【症例】26 歳男性。出生時、Dextrocardia[ILL]、TGA(I)と診断され、3 歳時、右 BT シャントおよび肺動脈絞扼術が行われた。その 3 ヶ月後に Jatene 手術

(Lecompte’s modification)、肺動脈主幹部から左肺動脈のパッチ形成が行われた。その後、しばらくは近医に通院していたが、15 歳頃より通院を自己中断。NYHAI 度。平成 23 年 1 月、自然気胸を発症し当院へ入院。CT で、大動脈基部瘤(径 60mm)、心臓超音波検査・カテーテル検査で高度大動脈弁逆流・左肺動脈狭窄と診断した。

【手術】再胸骨正中切開し、心臓大血管を剥離し、左大腿動脈送血、右房脱血で人工心肺を確立した。拡大した大動脈基部に肺動脈が癒着していたため、狭窄と思えた左肺動脈を切離し、大動脈の遮断部位を確保した。上行大動脈遮断。拡大した大動脈基部を切開した。冠動脈は、single coronary artery であり、ボタン状にくり貫いた。肺動脈主幹部から左肺動脈壁は馬心膜で形成してあったが、肺動脈を切開すると、馬心膜は著しく石灰化し、内腔側には石灰塊が大きく突出して高度に狭窄させていた。石灰化した馬心膜を可及的に切除した。Hemashield 人工血管28mm に Bicarbon25mm を縫着して作成した Com-posite graft にて、大動脈基部置換術(m�Bentall手術)を行った。冠動脈は Carrel パッチ法で縫着した。肺動脈主幹部から左肺動脈を、Hemashield 人工血管 12mm で再建した。手術時間 5 時間 31 分、体外循環時間 210 分、大動脈遮断時間 91 分で手術を終了した。術前右室収縮期圧は 80mmHg 以上あったが、術後は 40mmHg まで改善した。

【まとめ】成人に達した ASO 術後遠隔期の AR および大動脈基部拡大に対して、m�Bentall 手術を施行し、良好な結果を得た。上行大動脈前面に位置する再建した肺動脈を一部離断することで、容易に大動脈基部再建を行うことができた。

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VS3-1☆乳児期 scimitar 症候群に対してグルタールアルデヒド処理自己心膜片を用いた心内修復例

1東邦大学医療センター大森病院 心臓血管外科、2東邦大学医療センター大森病院 第一小児科、3東邦大学医療センター大森病院 薬剤部

小澤 司1、片柳 智之1、原 真範1、佐々木雄毅1、大熊新之介1、藤井 毅郎1、塩野 則次1、高月 晋一2、嶋田 博光2、鈴木 良雄3、中西 正典3、西澤 健司3、佐地 勉2、渡邉 善則1、小山 信彌1

【緒言】Scimitar 症候群は、右肺静脈の下大静脈への還流異常、右肺低形成、心臓右方偏位、異常側副動脈を伴う肺分画症等を主徴とする稀な疾患であり、特に乳児期発症例では肺高血圧、心不全を呈する重症例が多く、その治療成績は満足のいくものではない。また scimitar 静脈から左房への肺静脈還流ルート作成法は様々であるが、中でも新鮮自己心膜を右房内バッフルとしてルートを作成した場合、その退縮変性が原因となって PVO を来すことも多く長期開存性が問題となる。そこで今回、乳児 scimitar症候群に対してグルタールアルデヒド処理自己心膜片を用いた心内修復術を施行したので報告する。

【症例】生後 3 ヶ月時に体重増加不良、哺乳力低下、呼吸困難のため近医受診。重症肺高血圧と診断され当院紹介となり、陥没呼吸、低酸素血症(SpO2 :78%)、肝腫大が認められ、当院 ICU 入院。人工呼吸管理となり NO 吸入療法が開始された。胸部 CT により scimitar 症候群と診断されるも、右肺出血を契機に一時は心肺蘇生を要する呼吸不全に陥った。その後も重症感染が遷延したが、入院後 7 ヶ月にて右分画症肺を灌流する異常側副動脈 2 本に対してコイル塞栓術を施行。肺高血圧、心不全が緩和され手術介入に至った。

【手術】胸骨正中切開、IVC の脱血カニューレを可及的尾側より挿入して人工心肺を確立。広い肺静脈還流ルートを確保するために ASD を IVC 方向に切開、心房中隔壁を一部切除した。0.6% グルタールアルデヒド溶液に 3 分間浸漬された自己心膜パッチをscimitar 静脈開口部下端から ASD 上縁まで縫着し肺静脈還流ルート(右房内バッフル)を作成。更にRA~IVC 切開縁下方も自己心膜片を用いてパッチ拡大し IVC 還流ルートの狭窄防止を図った。術後 1年を経過した現在、バッフルによる肺静脈還流ルートの開存が示され、PVO や IVC 狭窄もなく患児は元気に外来通院中である。

【考察・結語】Scimitar 症候群の 1 乳児例に対して、異常側副動脈に対するコイル塞栓術を行った後、グルタールアルデヒド処理自己心膜片を用いて心内修復を行い、良好な結果が得られた。検索し得る限り、乳児 scimitar 症候群に対して同生体材料が用いられた報告例はない。グルタールアルデヒド処理自己心膜は、新鮮自己心膜よりも退縮変性が少ないとする報告もあり、同生体材料による右房内バッフル作成は、乳児期 scimitar 症候群の術後 PVO を防止するうえで有効と考えられる。

VS3-2☆小児期大動弁閉鎖不全に対する glutaralde-hyde 処理自己心膜を用いた大動脈弁尖延長術

1兵庫県立尼崎病院 心臓センター 心臓血管外科、2兵庫県立尼崎病院 心臓センター 小児循環器内科

今井 健太1、藤原 慶一1、大野 暢久1、長門 久雄1、吉川 英治1、吉澤 康祐1、羽室 護1、坂崎 尚徳2、佃 和弥2、稲熊洸太郎2

【はじめに】我々は小児期大動脈弁閉鎖不全(AR)に対し、glutaraldehyde(GA)処理自己心膜を用いた大動脈弁尖延長術を 5 例に行い良好な結果を得ている。最近行った 1 例について心エコー、手術ビデオを中心に報告する。【症例】症例は 2 歳 7 ヵ月、14kg の男児。診断は先天性 AR で、心不全症状出現と左室拡大が認められたため手術の方針となった。【手術】胸骨正中切開にてアプローチ。心膜を採取し0.6%GA 溶液に 5 分間浸透、リンスした。上行大動脈送血、上下大静脈脱血で体外循環確立。心停止後大動脈横切開した。大動脈弁は 3 尖で、右冠尖は弁尖から弁腹まで肥厚し退縮していた。無冠尖は弁尖が肥厚し逸脱していた。左冠尖は弁尖が肥厚していたが比較的正常に近い状態であった。右冠尖‐無冠尖および右冠尖‐左冠尖の癒合した交連を切開。右冠尖は縫い代を残してほぼ全切除し、トリミングしたGA 処理自己心膜を逢着、両交連を吊り上げた。無冠尖も大部分を切除し、右冠尖と同様の方法で弁尖延長を行った。左冠尖はスライシングと吊り上げを行った。3 弁尖の接合を確認し、最終的な心膜のトリミングと、各交連形成を行った。へガールにて弁口を測定、17mm(正常 12mm)であった。水試験にて左室へ水が落ちないことを確認後、大動脈縫合閉鎖。温心筋保護液注入し左室の張りがないことを確認、大動脈遮断解除した。最終的に経食道エコーで ARが trivial�mild であることを確認し、手術を終了した。【結果】経過は良好で術後 10 日で退院となった。退院前心エコーで AR は trivial�mild であった。同様の方法で行った他の 4 例の術後観察期間は 1.0~4.8(中央値 3.8)年で、AR は trivial�mild : 2、mild�moderate : 2 でいずれも観察期間中に進行はなかった。【結語】小児期大動脈弁閉鎖不全に対する GA処理自己心膜を用いた大動脈弁尖延長術は、長期にわたり経過観察が必要であるが中期成績は良好であった。

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VS3-3☆ファロー四徴症~z<�4(65% of N)に対する肺動脈弁尖温存術~

静岡県立こども病院 心臓血管外科

伊藤 弘毅、藤本 欣史、太田 教隆、村田 眞哉、登坂 有子、井出雄二郎、城 麻衣子、杉本 愛、坂本喜三郎

ファロー四徴症根治術後の遠隔期 QOL 向上を目指し、“自己弁温存”に努めている。その中で、通常なら trans annular incision を加えるであろう、極狭小肺動脈弁輪(z<�4(65% of N))を有する症例に対しても、transRA�transPA に右室小切開を加えたapproach にて、弁下組織に埋もれている弁尖を削り出すような筋線維切除を行い、交連下の線維三角に切開を加え弁輪の線維性連続を断ち、十分なサイズの Hegar’s bougie(100% of normal)を通過させる

“弁尖温存術”を適応させている。【症例】2 ヶ月女児。体重 4.3kg。診断は TOF�PS。βブロッカーを内服するも spell 頻回にて、当院紹介となり心臓カテーテル検査を施行。LVEDV=76.3%of normal、PAindex=129。RCA から RVOT を横切る conal branch を認めるが、LAD への接続は認めず。根治術が予定された。術前経胸壁エコーにて肺動脈弁輪径は 6.0mm(68% of normal)であった。

【手術】通常の胸骨正中切開。上行大動脈送血、右心耳および下大静脈脱血で体外循環確立。左右肺動脈を剥離、主肺動脈から左右肺動脈にかけて全体的に低形成。大動脈遮断。右房切開。VSD は perimembra-nous。閉鎖のための組織を残し septal band、parietalband を切除。VSD 閉鎖(0.4mm ePTFE patch、7�0polypropylene 連続縫合)を行う。さらに筋切除追加。主肺動脈縦切開。肺動脈弁は交連が左右の前後2 尖弁。右室切開は conal branch に留意した縦切開を置く。transRV にて埋もれた弁尖を削り出すようにして弁下組織を切除。PV commissurotomy を加え、transPA にて交連直下の線維組織を切開。過程で肺動脈弁後尖を一部損傷し 8�0 糸で修復している。最終的に 100% of normal の Hegar’s bougie を通過させた。主肺動脈後壁を縦切開し 8�0 糸結節縫合で横方向に再縫合し supraPS 解除。処理した自己心膜にて PA 拡大。右室切開部は 0.4mm ePTFEpatch で拡大。TEE にて PS、PR 認めず。右室圧測定せず。大動脈遮断時間 130 分。術後経過良好に退院。退院時 PS=2.04m�s、PR=mild to moderate。術後 9 ヶ月で PS=1.26m�s、PR=mild to moderate、右心系の拡大認めず。

【まとめ】右室切開に伴う諸問題、削り出した弁尖の成長、心停止時間が長くなる等、検討課題はあるが、この群に対する弁尖温存術は trans annular patch適応に比して良好な遠隔期 QOL を得られる可能性があると考えている。

VS3-4☆AVSDに対するSimplified single patch 法における分割線決定の技術的考察

岡山大学医歯薬学総合研究科 心臓血管外科

笠原 真悟、平田 昌敬、樽井 俊、小林 純子、川畑 拓也、黒子 洋介、大澤 晋、立石 篤史、藤田 康文、吉積 功、高垣 昌巳、新井 禎彦、佐野 俊二

【背景】房室中隔欠損症において房室弁機能を温存しながら、左右房室弁の分割と VSD の閉鎖を同時に達成することは必要最低条件である。しかしながらその分割線の決定、同定に関しては経験に依存するところが多く、これがこの手術成績に関与している。また心室中隔欠損を直接閉鎖するため大動脈弁下狭窄の発生も懸念されるところである。根治術においては Two patch 法が広く知られており、その手術成績も安定している。一方では古くから single patch法として知られていた方法が、modify され Simpli-fied single patch として紹介され、広く行われるようになってきた。しかしながらこの方法では、VSDを直接閉鎖するために、分割線の決定に際し少しのずれが共通房室弁の distortion を引き起こすためこの手術を不成功にさせる。2006 年から現在の術式を用いた手術を 22 例に行い、最初の 1 例に左側房室弁逆流のため再手術を行ったのみで、左室流出路狭窄や房室ブロックを含む不整脈の発生を見ていない。今回我々は Rastelli type A と C の異なった房室弁形態の 2 症例に対し、Simplified single patch 法における分割線決定の技術的知見を得たのでビデオにて供覧する。

【症例 1】Down 症候群、3 ヶ月、体重 4.3kg、女児。Rastelli type A で術前の AVVR は左側、右側ともMild であり、VSD の Depth は最大 11.7mm であった。分割線の決定に際し、共通前尖は divide されている線を利用し、共通後尖は左右心室からの腱索の支配境界線を利用した。

【症例 2】Down 症候群、8 ヶ月、6.1kg 男児。Rastellitype C で術前の AVVR は左側、右側とも Mild であり、VSD の Depth は最大 6.4mm であった。TypeC のため分割決定に際し、逆流試験を繰り返して共通後尖と接合する共通前尖の接合点を同定し、ここを通る仮想線を分割線とした。

【考察】Simplified single patch においては共通房室弁の分割が VSD の閉鎖と同時に行われるため、分割線の同定が非常に重要となる。共通後尖は rigidで type によらず左右心室からの腱索支配を受けており、分割線は比較的容易に決定できる。しかしながら共通前尖の分割はなかなか判断しにくい。TypeA の場合は共通前尖の裂隙が分割線となるが、TypeC は分割線の決定は困難な場合が多く逆流試験による共通後尖分割線と共通前尖の接合点をマーキングし、これに向かう仮想線が分割線となる。

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VS3-5☆LVOT付着異常乳頭筋と 2尖 P弁を伴う d�TGA(II):術中 PS評価とB�W法の応用

和歌山県立医科大学 第一外科

打田 俊司、東 康晴、吉田 稔、本田賢太朗、戸口 幸治、西村 好晴、岡村 吉隆

【症例】11days 3066g 男児。【診断】d�TGA(II)、muscular outlet VSD、ASD(II)、PDA、bicuspid pulmonary valve、abnormalmuscle across LVOT

【経過】40 週 2 日、3328g で出生。生直後よりチアノーゼ出現し、当院ヘリ搬送。UCG で上記診断。LVOT に存在する abnormal mass は付着異常の乳頭筋(PM)で血流速度は 2m�sec。CA は Shaher 1型。Arterial Switch Operation(ASO)に際し、以下のことが懸念材料となった。

【治療方針】① P 弁下(LVOT)の abnormal mass:僧帽弁 PM が VSD 下縁に付着。術後 LVOTS の可能性。②二尖 P 弁:生理的な PH の存在と PDA 開存により PS 過小評価の可能性。③ VSD:筋性中隔流出部で前壁移行境界部に存在。位置的に VSD 閉鎖困難と Straddling の可能性。術前 UCG では PM 部位での加速血流は認めないため、PS の評価として PDA を一時閉鎖し PA 圧測定を行い、圧較差 3mmHg 以上は ASO を断念し PAbanding、圧較差 3mmHg 未満なら ASO、VSD 閉鎖困難なら PAB 併施の方針とした。

【手術】PDA 一時閉鎖し mPA に 23G needle で圧測定。PAP38�17→35�16 と著変なく ASO 可能と判断。人工心肺確立後 PDA を重結紮し離断。 AAo 遮断、心筋保護液(CP)注入後、経中隔 LA venting。経三尖弁では VSD 確認できず、AAo を離断し経 A 弁でVSD を確認するも視野が悪い。まず mPA を離断し、P 弁越しに LVOT を観察。付着異常 PM はLVOT 狭窄形成しないと判断。経 A 弁の視野は左右coronary cuff を切離することで良好に展開。VSDは muscular outlet の free wall 移行部肉柱下に確認、straddling なくパッチ閉鎖。P 弁は LCC remnantが RCC と raphe を介し fusion している 2 弁。前方弁尖 raphe 左側は移植部位作成困難で、右側 3�4部位に trap door を作成。右側 trap door はやや高め、左側 trap door は浅めの J shape で右側寄り。左coronary cuff は neo aortic との口径補正、left CAのゆとりと移植位置の角度補正効果から Bay�Win-dow を作成しその左側上縁も縫合。右 coronary cuff上部は AAo に切れ込みを入れ縫合。French maneu-ver の後、AAo と neo aorta を吻合。neo PA を自己心膜補填し再建。

【まとめ】PDA 仮閉鎖による PA 圧測定は、術後 PSに対する評価法として有用であった。VSD 閉鎖はcoronary button を切離することで、経大動脈弁から視野を確保出来た。bicuspid PA 前方尖は raphe の存在で CA 移植部位が右側に限定されたが、modi-fied Bay�Window 法によりゆとりある LCA の再建と自然な口径差補正が得られた。

VS4-1☆心拍動下逆流試験による逆流ゼロの僧帽弁形成術

札幌医科大学 第二外科

橘 一俊、村木 里誌、田淵 正樹、前田 俊之、高木 伸之、樋上 哲哉

【目的】僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する僧帽弁形成術(MVP)において、術中の水試験と心拍再開後の経食道エコーの評価に差があることが術後 MRの残存につながると考えている。MVP の長期遠隔成績を向上させる必須条件は、手術直後の逆流を限りなくゼロとすることにある。これらの点を考慮し我々は、大動脈遮断下にて心拍動を再開させ、直視下に逆流評価をする新しい手技である逆行性心筋保護下心拍動逆流試験(Retrograde cardioplegic beat-ing test ; RC�beating test)を施行し症例を重ねてきた。今回、水試験にて逆流を認めないが、RC�beat-ing test にて逆流を同定し得た症例を中心に水試験と RC�beating test の差をビデオにて供覧し、その仕組みおよびポイントを明らかにする。【方法】2006年 1 月より 2011 年 9 月までに RC�beating testを施行した MVP 症例 51 例を対象とした。本法は、Aorta送血、SVC、IVC の 2 本脱血、大動脈遮断、心停止下にて右側左房切開により僧帽弁形成術を施行する。心筋保護は逆行性持続心筋保護法を用いており、Cold Blood Cardioplegia を冠状静脈洞より初回ローラーポンプにて注入し心停止を得た後、Drip に切り替え投与を継続する。弁形成終了後、水試験にて逆流を認めない事を確認する。続いて同ラインよりTerminal Warm Blood Cardioplegia をローラーポンプにて投与し、次いで Warm Blood を継続投与する。およそ 10 分にて自己心拍が再開する。この際、術野側での特別な操作は必要とせず一連の作業による煩わしさを感じる事は一切無い。このように大動脈遮断下で心拍動を再開させ、さらに圧負荷、容量負荷状態での左室収縮期の僧帽弁を直視下に評価することができる。これにより生理的収縮期の閉鎖状態に近い僧帽弁を経左房にて直視下に見ることができ、水試験にて認められない minor leak をも同定するが可能となった。【結果】対象症例中、RC�beatingtest にて minor leak を同定し得た症例は 15 例

(29.4%)であった。【結語】本法は安全かつ簡易に施行可能であり、僧帽弁形成術の完成度の向上に大きく寄与する方法と期待できる。

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VS4-2☆新しい僧帽弁前尖形成術式―rough�zonetrimming 法―による複雑病変の攻略

札幌医科大学 外科学第2講座

宮木 靖子、村木 里誌、高木 伸之、樋上 哲哉

【はじめに】当施設では複雑な僧帽弁変性病変をも弁形成で完遂できる rough�zone trimming 法(RZT)を開発し前尖形成を全て切除縫合によって一貫して行っている。僧帽弁形成術においてしばしば遭遇する複雑病変の中に、thethering はなく、腱索断裂や prolapse もない弁尖の硬化変性主体の病変がある。僧帽弁尖が傷んで硬化し弁尖が短縮した為に coaptation が全く合わない、いわゆる「僧帽弁閉鎖不全症のなれの果て」の状態である。このような症例を我々は non�prolapse type と分類し、特に繊細な形成術を必要とする症例と考えている。現在の僧帽弁前尖形成術の世界的な流れは前尖の余剰に対しては切除縫合を敬遠し、人工腱索が用いられる。しかし、non�prolapse type では人工腱索や人工弁輪を用いても遺残逆流が残るため、弁置換に移行する事が多いと考えられる。弁尖の硬化病変同士が coaptation を作る状態では逆流が完全には止まないからである。当科が開発した新しい前尖形成法をビデオで紹介し、遠隔成績と共に検討する。

【対象】2006 年 1 月~2011 年 8 月の ischemic�IE による MR を除く僧帽弁前尖形成の絡む 33 例の中でnon�prolapse type8 例。 年齢:30~79(平均 52)歳。男女比 2 : 6。

【Rough�zone trimming 法】余剰弁尖のある腱索間を rough zone に限った鈍角三角形に切除し縫合することで coaptation zone を深くするというコンセプトに基づいている。硬化変性の強い病変は、接合部の弁尖が硬い為に合わさりが悪くなり逆流の原因になることが多く、人工腱索の調節では逆流の制御が困難である。RZT は硬い病変部位を取り除きcoaptation が深くなることで柔らかい部分が新しいcoaptation となり、逆流が止まるという非常に画期的で理にかなった手法である。切除範囲を roug�zone にとどめることで、以前の三角切除と異なり、縫合面の脆弱性による僧帽弁閉鎖不全(MR)の再発を防ぐ。形成術後は水テストに加え、当科独自のbeating�test を行い厳しくチェックを行う。

【結果】全例 RZT 法で完遂。人工腱索の使用は 0。弁形成完遂率 100%。在院死亡 0 例。早期成績:MR1 度以下 7、MR 2 1 例。中期成績(追跡期間 3~48カ月):MR 1 度以下 7、MR2 1 例。再手術 0 例。遠隔死亡 0 例。

【結語】rough�zone trimming 法による僧帽弁前尖形成術式は理にかなった有効な術式であり、遠隔成績も良好で今後複雑な僧帽弁変性病変に対しても対応できる有効な手段である。

VS4-3☆僧帽弁閉鎖不全症に対するRankin 法によるanterior leaflet repair technique

福岡大学医学部 心臓血管外科学講座

西見 優、田代 忠、峰松 紀年、桑原 豪、藤井 満、寺谷 裕允、松村 仁、和田 秀一

僧帽弁前尖逸脱(prolapse)による僧帽弁閉鎖不全症(MR : Carpentier’s 分類 type Ⅱ)に対しては、PTFE(Gore�Tex)を用いた人工腱索を用いた再建術が行われることが多い。この際、前後尖の高さの位置決定には多少なりとも困難が伴う。特に弁輪リングを逢着した後の修復は容易ではない。J.S Rankin らの方法による弁形成術は、乳頭筋にpledget 付きの 4�0 prolene を乳頭筋に固定した後

(anchor suture)、PTFE 糸(CV4)を通し、これを結紮せずに、double�armed suture とし、弁尖に通して、弁形成を行う方法である。最近の前尖逸脱による MR 7 例に対し J.S Rankin らの方法による弁形成術を行った。年齢 68.1 歳、男性4 人、MR Ⅲ:2、例Ⅳ:5 例、腱索断裂(RCT)4例、elongation 3 例、prolap の範囲は A1~A2 : 2 例、A2 : 4 例、A1~2~3~PC : 1 例であった。PTFE 糸の結紮にはヘモロック結紮システムを用いて行った。弁形成術後は人工弁輪リング(physio ring)による弁輪形成術を行った。術後は MR trivial~1 に改善した。本法は1.弁尖切除を行わず人工腱索による前後尖の調整が容易である。2.必要に応じて人工腱索の追加が可能である。3.弁輪リングを逢着後の修正も容易である。などの特徴を有していた今回、前尖全体に逸脱を認めた症例の手技をビデオで供覧する。

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VS4-4☆交連部病変に対する僧帽弁形成術 Respectrather than resect

倉敷中央病院 心臓血管外科

小宮 達彦、坂口 元一、島本 健、渡邊 隼、渡谷 啓介、植木 力、片山 秀幸、植野 剛、伊集院真一、西田 秀史、古賀 智典

僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術は広く普及している。交連部病変に対しては、病変部切除(いわゆるフレンチテクニック)が基本であるが、近年、切除しない形成手技も取り入れられるようになってきた。当施設でも 2006 年ごろまでは、逸脱部を切除して、交連部弁輪を縫縮し、交連部形成(edge toedge)を基本的に行ってきた。しかし、術後に軽度の僧帽弁狭窄を認めたり、遠隔期に僧帽弁逆流増悪を認める症例があった。2007 年以降は切除範囲をより縮小し、限局的な弁輪縫縮は行わず、より大きな人工弁輪を縫着する手技を中心に行ってきたので、ビデオ供覧する。

【手術手技】僧帽弁は原則、右側左房アプローチである。弁輪に全周に人工弁輪縫着糸をかけて僧帽弁を展開する。病変部をよく観察し、逸脱部位が広範囲であったり弁瘤を形成している場合は、切除後の形態および切開部の弁尖の厚みを考慮して切開線を決定する。弁輪部までは切り込まない。切除断端同志を縫合する。前尖側に余剰部分を残すとリング縫着後に弁尖に皺を生ずる。逸脱範囲が比較的狭い場合は、余剰部分を左室側に折り込むようにして、交連部形成を行う。切除範囲が従来法より小さいので、切除していない部分に多少逸脱を認めることがある。この場合、2つの方法がある。1.人工腱索を追加する2.Magic stitch をおく2 の方法で、僧帽弁狭窄が懸念される場合は、1 の方法がよい。

【結果】2006 年までは交連部病変に対する僧帽弁形成術を31 例に行った。平均人工弁輪サイズは 28.4。退院時の mild MR は 2 例(6%)であるが、遠隔期に mod-erate 以上に増悪したのが 5 例あり、2 例で再手術

(9 ヵ月後 MVR、9 年後 ReMVP)。また軽度の僧帽弁狭窄(僧帽弁口面積<2cm2)は 19% であった。2007年以降の 23 例では、12 例(52%)では病変部切除なし。平均人工弁輪サイズは 30。退院時の mikd MRは 1 例(4%)で遠隔期の moderate 以上 MR はなかった。 軽度の僧帽弁狭窄は 2 例(8.6%)であった。

【考察】僧帽弁交連部の形態はやや複雑であり、接合の程度の見極めがしにくい。過剰な弁尖切除は、縫合部の離解の懸念や弁尖稼動制限による逆流再発の可能性がある。適度な弁尖切除にとどめることが肝要である。

VS4-5☆新しい僧帽弁形成術―Measured Tube Tech-nique による人工腱策再建―

1北海道大学大学院医学研究科 循環器・呼吸器外科学分野、2北光記念病院

松居 喜郎1、新宮 康栄1、夷岡 徳彦1、若狭 哲1、杉木 宏司2、大岡 智学1、橘 剛1、久保田 卓1

【はじめに】僧帽弁形成術時 EPTFE 糸による人工腱策による再建が広く行われているが、人工腱策の長さの決定がやや難しく、糸がすべりやすく結紮時調整に技術を要することが指摘されている。今回われわれは吸痰用チューブを用いた簡易な人工腱策再建法を開発し報告した(Ann Thorac Surg 2011 ; 92 : 1132�4)ので、実際の手技をビデオで供覧する。

【手術手技】必要な材料は 12Fr の吸痰用チューブのみである。5�0 EPTFE 糸を必要な本数を厚めのプレジェットにかけておき、もう一方のプレジェットに新たな 5�0 EPTFE 糸をおき乳頭筋頭にかけて前者のプレジェットを通し固定する。これにより多数の人工腱策再建が一回の手技で可能となる。必要に応じ前後乳頭筋に固定する。一対の糸の針を切断し 5cm 程度の 12Fr チューブを通し、糸は引きチューブはややおしつけた形で対照となる健常腱策あるいは対面の対応する腱策の長さに合せマーキングし、チューブを抜いてマーキングまでの長さを新たな人工腱策の長さとして切断、同じ乳頭筋からの人工腱策はほぼ同じ長さとしてその数だけチューブを用意する。EPTFE 糸の針を切断し長さを決めたチューブを通し断機付き針を用い逸脱部位の弁尖に通す。通す方法はどのような方法でもかまわない。あとは対ごとに結紮するが結紮位置がかわらず極めて容易に結紮できる。結紮後チューブは先端が鈍なはさみで糸に損傷与えず容易に切除できる。これを繰り返し行うことですべての腱策再建が容易に行える。Looptechnique と同様に、この方法で術中に正確な腱策長決定が可能となる。腱策長が決定しづらい場合は、人工腱策の長さの決定はやや長めにしておけば、結紮後に他の EPTFE 糸で結紮 loop を引っ張り上げ固定することで微調整が可能となる。こののち人工弁輪を縫着し弁輪形成術を行う。

【提示症例】症例 1.Partial Barlow で A2、3、P2、3 が billowingと prolapse を呈していた。後尖を矩形切除した後Measured tube technique を用い前尖逸脱部位に 6本の人工腱策をおいた。症例 2.広範な後尖逸脱症例で矩形切除の範囲が過剰になると考えられ Measured tube technique を用い人工腱策再建を行なった。いずれの症例も術後逆流は消失し良好な状態である。現在手技が極めて容易で確実なことから、当科では若手を含めた術者での標準術式となっている。

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VS5-1☆高度石灰化を伴った弓部下行大動脈瘤に対する open stent 併用上行弓部置換術

金沢医科大学 心臓血管外科

三上 直宣、秋田 利明、水野 史人、岡田 正穂、森岡 浩一、野口 康久、小畑 貴司、四方 裕夫

症例は 76 歳女性。高血圧症にて近医通院中、転倒にて前腕骨骨折。手術施行予定となった。胸部レントゲンで胸部大動脈瘤が疑われ当院紹介となった。胸部 CT では左鎖骨下動脈分岐部から始まる最大径90mm の遠位弓部下行大動脈瘤を認めた。また、喫煙によると思われる肺野気腫性変化も認めた。遠位弓部大動脈は高度に石灰化し、胸部正中切開による Elephant trunk法は末梢側吻合が困難と判断し、下行大動脈に対する open stent 法を併用した上行弓部置換術を選択した。手術は胸部正中切開、胸骨縦切開でアプローチ。SVC・IVC2 本脱血、上行大動脈送血で人工心肺を確立。25 度まで冷却しながら左腋窩動脈に 8mmRingd Goretex 人工血管を吻合。大動脈遮断の後、左鎖骨下動脈を結紮、人工血管より選択的脳灌流開始。腕頭動脈、左総頚動脈を Endo GIAで切断、Studcatheter を挿入し、選択的脳灌流を開始した。循環停止の後、上行大動脈を切断し、Open stent(自作 UBE32mm graft+Z stent)を留置した。Open stent 中枢側の断端形成を行った。Intergurad 30 mm4 分枝管を用い、末梢側人工血管同士を吻合した。さらに、腕頭、左総頚動脈を分枝と吻合し、中枢側吻合を行い大動脈遮断を解除した。Rewarming しながら左鎖骨下動脈人工血管を左胸腔に通し、4 分枝管と吻合した。循環停止時間 37分、大動脈遮断時間 157 分、体外循環時間 311 分。術後経過は良好、翌朝人工呼吸器を離脱し、対麻痺も認めなかった。術後造影 CT でも瘤内への leakは認めなかった。Open stent法は手技的に比較的容易で低侵襲な治療方法であり、本症例の様な末梢側吻合が困難な症例には有用な術式と考えられる。しかし、末梢側吻合を行わないため endoleak を生じる危険性があるため、長期的な経過観察が必要であると考える。

VS5-2☆マルファン合併の急性A型大動脈解離に対するBentall+total arch+open stent

広島大学大学院医歯薬学総合研究科 病態制御医科学講座 外科学

内田 直里、高崎 泰一、高橋 信也、片山桂次郎、今井 克彦、黒崎 達也、末田泰二郎

急性 A 型大動脈解離合併したマルファン症候群に対する手術戦略は議論の余地がある。われわれは急性 A 型大動脈解離に対して積極的に open stent 法を併設した弓部全置換術を施行し良好な成績を発表してきた。今回、急性 A 型大動脈解離を発症したマルファン症候群に対する Bentall+total arch+openstent 手術をビデオで供覧する。39 歳女性のマルファン症候群で、胸背部痛を主訴に来院し、CT・エコーで大動脈弁輪が 60mm に拡大し重症の AR を合併した De�Bakey I 型と診断され緊急手術となった。右腋窩動脈送血メインとして大腿動脈からも補助循環併設し、中程度低体温・選択的脳灌流下に左総頸動脈起始部の弓部大動脈から末梢にグラフト径26mm の stent graft を 10cm、Th6 レベルに内挿した。復温中に Bentall+total arch を施行した。術後経過は良好で、退院前の CT で stent graft レベルの偽腔は血栓吸収され、横隔膜レベルまで偽腔血栓化を認めた。現在まで同手術を 4 例(平均年齢:38 歳)に施行し、平均手術時間:7 時間 38 分。平均体外循環時間 4 時間 04 分。平均大動脈遮断時間:2 時間 41分。平均選択的脳潅流時間:89 分。平均 open distalanastomosis time : 38 分であった。手術死亡はなく、合併症も認めず、4 例とも 1 か月以内退院された。退院時 CT で 4 例中全例ステントグラフト部までの偽腔は血栓化していたが、3 例は下行大動脈遠位部からは偽腔が残存していた。術後平均観察期間 38 ヵ月

(3~98 ヵ月)で死亡や大血管イベントはない。下行大動脈径の増大率も年平均 0.3 mm であった。マルファン症候群に対する stent 治療は議論の余地があるが、open stent により下行大動脈近位部の偽腔は血栓化でき、二期手術が高率の急性 A 型大動脈解離合併のマルファン症候群には有効な術式であると考えられた。

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VS5-3☆当院における弓部置換術末梢側吻合の工夫

イムス葛飾ハートセンター 心臓血管外科

金村 賦之、吉田 成彦、田鎖 治、清家 愛幹、古畑 謙、宮崎 卓也、月岡 祐介、中原 嘉則、細山 勝寛、伊藤雄二郎

<背景>大動脈手術、特に弓部置換術において、末梢側吻合の重要性はいうまでもない。特に動脈硬化性疾患である遠位弓部大動脈瘤では血管の性状が不良なことも多く、止血困難な場合には手術成績に影響を及ぼす可能性がある。一方、急性大動脈解離においては、吻合ラインにテンションがかかることにより、新たなエントリーが出現する可能性もある。また以前から当院において弓部置換術を行う際には、末梢側はステップワイズに吻合を行っていた。その場合人工血管同士の吻合が必要となるため不要な出血を来す可能性がある。そこで 2011 年 5 月より、4 分枝人工血管を用いた全弓部置換術では、末梢側吻合に工夫を加えるようにし良好な成績を得ている。今回は我々が行っている末梢側吻合法に焦点をおいてビデオにて供覧する。<手術>開胸前に右鎖骨下動脈に人工血管を吻合し送血路を確保、同時に一側大腿動脈を露出し送血管を挿入しておいた。右房脱血にて人工心肺を確立し、直腸温28℃ で循環停止として腕頭動脈を遮断、左総頸動脈、左鎖骨下動脈にそれぞれ送血管を挿入し脳分離体外循環を確立する。末梢側吻合予定部位にて大動脈を離断し、全周性に縫合糸をかけておく。4 分枝管の末梢側を適当な位置で折り返し、外側の人工血管のみに縫合糸をかけて末梢側大動脈内に下ろす。結紮後、大動脈壁と外側人工血管とを連続縫合で補強する。頸部分枝の再建、中枢側吻合を行い人工心肺から離脱する。<考察>我々の吻合法におけるポイントは以下の通りである。1.4 分枝管の末梢側を折り返してエレファントトランクとするため、ステップワイズ法のような人工血管同士の吻合が必要ないことから、出血のリスクを減らすことができる。2.血流により人工血管が拡張することで吻合ラインにラジアルフォースがかかることにより、面での止血効果が得られる。また縫合糸にはテンションがかかりにくいため、脆弱な組織でも比較的安全であると考えられる。3.真性瘤の場合、必ずしも大動脈を全周性に離断する必要は無いが、壁側胸膜と接している場合には肺損傷に留意する必要がある。

VS5-4☆GoreTAGを用いたオープンステントグラフト法における末梢側吻合の工夫

福島県立医科大学 心臓血管外科

瀬戸 夕輝、佐戸川弘之、高瀬 信弥、若松 大樹、佐藤 善之、黒澤 博之、坪井 栄俊、山本 晃裕、高野 智弘、横山 斉

当教室では、真性弓部大動脈瘤に対しては選択的脳分離体外循環を用いた大動脈弓部全置換術またはdebranching TEVAR を標準術式としている。しかし、大動脈弓部置換術において末梢側吻合部位が深い症例や大動脈瘤が胸部下行にまで及ぶ症例、またshaggy aorta 症例に対しては、GoreTAG を用いたオープンステントグラフト法(以下 OS 法)を採用することもある。OS 法では、Guiantruco Z stent をthin wall の人工血管で被覆したステントグラフトを使用するのが一般的であるが、当教室では GoreTAG を積極的に使用してきた。病変の中枢側と末梢側のどちらからでも留置できるため有用であるが、フレアが末梢側吻合部の邪魔となる点、および被覆人工血管は薄く針穴からの出血がコントロールしにくい点など、工夫が必要と考えられる。2010 年 9 月から 2011 年 8 月までに真性弓部大動脈瘤に対して、5 例の OS 法を施行した。LogisticsEuroSCORE は 21.0±8.2point、Japan Score 30 daymortality は 6.7±3.8% であった。末梢側吻合部の血管径は 39.6±4.6 mm であった。症例 1(82 歳、男)では、Gore TAG を留置後に内外 2 重フェルトを用いた断端形成を施行し、4 分枝人工血管を吻合した。しかし、フレアが邪魔となり、止血にはほぼ全周にわたる追加縫合が必要であった。症例 2(76 歳、男)では、外側フェルトのみでの断端形成を施行し、吻合ラインの外に突出したフレアをニッパーで切除したが、フレア切断端が鋭利となり周囲の組織を損傷する危険があると考えられた。症例 3(82 歳、男)では再び内外 2 重フェルトを用いた断端形成を施行し、4 分枝人工血管とできる限り細かく吻合した。症例 4(72 歳、女)では断端形成をせず、外側フェルトのみで 4 分枝人工血管と GoreTAG と血管を直接吻合した。吻合時間は短縮したが、追加縫合は数カ所で必要であった。症例 5(81 歳、男)では、4 分枝人工血管を末梢側吻合部位に elephant trunk の要領で挿入した後に人工血管を半周切開し、この切開部から GoreTAG を挿入した。人工血管と GoreTAGと血管とを連続縫合で吻合し、最後に人工血管の切開部を閉鎖した。止血は容易に得られた。これら吻合方法についてビデオで供覧し、検討する。

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VS5-5☆広範囲胸部大動脈瘤に対する一期的Hybrid治療

1佐賀大学 胸部・心臓血管外科学講座、2久留米大学 外科

諸隈 宏之1、蒲原 啓司1、中西 晴美1、内野 宗徳1、古舘 晃1、野口 亮1、伊藤 学1、古川浩二郎1、森田 茂樹1、田中 厚寿2

【背景】高齢者の胸部大動脈手術の際には、手術侵襲と耐術能のバランスが問題となる。今回、高齢者の広範囲胸部大動脈瘤症例に対して、胸部正中からのア プ ロ ー チ の み で 弓 部 全 置 換+Open stent+TEVAR という一期的 Hybrid 治療を行い、良好な結果を得たので、術式をビデオで供覧する。【症例】82 歳、男性。主訴は労作時呼吸苦。胸部 CT にて、遠位弓部に最大径 80mm の嚢状動脈瘤を認め、その後 40mm 程度と一旦収束し、胸部下行には最大径 75mm の紡錘状動脈瘤を認め、左胸水貯留を伴っていた。さらに腹部大動脈以下にも多発動脈瘤を認めた。Adamkiewicz 動脈は、左 Th 12 より分岐。以上より、弓部大動脈瘤の形態、胸部下行大動脈瘤が左胸水貯留を伴っていたことから、いずれも破裂のリスクが高いと判断し、一期的治療を選択。また TEVARに関して、大腿動脈からのアプローチが困難であったことから、胸部正中術野からのアプローチを選択。

【手術】術前日に Spinal drainage tube 挿入。全身麻酔、仰臥位、MEP モニター。胸骨正中切開に先だって、右腋窩動脈を露出し、送血路確保。右腋窩動脈送血、上・下大静脈の 2 本脱血により体外循環を確立。全身冷却後、直腸温 23℃ で循環停止。心筋保護は、間欠的順行性+持続的逆行性を併用。大動脈を切開し、腕頭動脈と左総頸動脈の間で離断。腕頭動脈及び左総頸動脈より選択的脳分離体外循環を開始。左総頸動脈の中枢側を縫合閉鎖した後に、大動脈末梢側に Open stent(Handmade : UBE 40mm+1連 Z stent)を挿入し、 径 40mm の部分に Landing。大動脈断端と Open stent 中枢側を縫合し、末梢側断端形成。28mm の J�Graft 4 分枝管を用いて、末梢側吻合。グラフト側枝より循環再開。左鎖骨下動脈の中枢側を縫合閉鎖。左鎖骨下・左総頸・腕頭動脈の順に分枝再建し、中枢側吻合。上行大動脈遮断を解除し、止血を確認後、体外循環を離脱。グラフト側枝より胸部下行大動脈に TEVAR(Gore�TAG 40mm�20cm)を施行し、手術終了。確認造影にて、明らかなエンドリークは認めなかった。【術後経過】中枢神経・脊髄障害なく、術後約 2 ヶ月で他院転院。

【考察】血管内治療の併用により、胸骨正中切開のみで広範囲胸部大動脈瘤を根治し得た。また TEVARに関して、大腿動脈からのアプローチが困難な本症例において、グラフト側枝からの順行性アプローチが有用であった。【結語】高齢者の広範囲胸部大動脈瘤に対して、可能な限り低侵襲な根治手術が可能であった。

VS6-1☆patent graft を有するCABG術後患者の弁膜症再手術時における工夫

心臓血管研究所付属病院 心臓血管外科

田邉 大明、依田 真隆、門磨 義隆、高井 秀明、須磨 久善

心臓大血管手術患者の高齢化・複雑化とともに、冠動脈バイパス術(CABG)後の patent grafts を有する弁膜症手術が多くなってきている。このような症例は剥離・アプローチにも慎重を要し、また心筋保護などにも工夫が求められることが多い。今回、われわれは 3DCT を用いたグラフト走行の確認や術中心筋保護の工夫で、安全かつ容易に手術を施行出来た症例を経験したので提示する。

【症例 1】76 歳女性。15 年前 CABG(RITA�LAD、LITA�Cx)施行。AS による胸部症状の出現を認め、AVR+CABG(Ao.�SVG#3)を施行。術前の冠動脈 CTにて両側 ITA grafts の走行を確認。RITA が胸骨直下に癒着しており、胸骨縦切開・横切開を組み合わせるアプローチをとった。剥離には超音波メスを用いた。また RCA へバイパスを置き、LITA は剥離することなく合計 3 本のバイパスグラフトを用いて持続冠潅流を行いながら beating 下に AVR を施行した。

【症例 2】62 歳 男 性。12 年 前 MVR+TAP+CABG(SVG�LAD)施行。3 年前より心不全症状が出現、徐々に増悪し内科的コントロールの限界となり当院紹介。SAVE 手術施行。術前の冠動脈 CT にて胸骨裏面に固着する SVG の走行を確認。胸骨縦切開・横切開を組み合わせ心臓にアプローチした。剥離には超音波メスを用いた。

【症例 3】69 歳女性。27 年前左乳がん全摘術+放射線治療後、14 年前 CABG(RITA�LAD SVG�RCA)、術後縦隔炎にて前胸部遊離筋皮弁移植術施行。1 年前から労作時息切れを自覚し、ASR+MSR を認め手術目的当院紹介。patent RITA が胸骨直下を走行し遊離筋皮弁で前胸部が覆われているため、右開胸にてアプローチ。RITA は剥離することなく、RITA 持続環流+逆行性心筋保護にて AVR+MVR 施行。

【まとめ】胸骨直下に開存グラフトを有する症例では、胸骨の横切あるいは右開胸アプローチを行うことによってグラフト損傷のリスクを軽減しうる場合がある。開存 ITA は剥離の必要はなく、心拍動下、あるいは逆行性心筋保護+開存 ITA の持続冠環流により、安全に弁膜症手術が可能であった。

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VS6-2☆繰り返す人工弁周囲逆流に対する手術の工夫:右開胸による double closure technique

大阪市立総合医療センター 心臓血管外科

小谷 真介、服部 浩治、加藤 泰之、元木 学、高橋 洋介、西村 慎亮、柴田 利彦

【はじめに】人工弁周囲逆流(PVL)は弁置換術後の重大な合併症の一つであり、手術による治療後も再発することがある。複数回の手術は高度な癒着が予想され、広範囲の癒着剥離は手術時間の延長や出血の危険性を高める。また修復に関しては耐久性のあるものが必要とされるが、手術の方法に関しては再弁置換や逆流部位の閉鎖、経皮的治療など様々な方法があり、確立された治療法はない。今回我々は僧帽弁位 PVL に対し右開胸下に工夫を行い修復術を行ったので報告する。【症例】症例は 81 歳男性。54歳時にリウマチ性 AR、MR に対し大動脈弁形成術および MVR(生体弁)を施行されていた。3 年前に僧帽弁位 PVL による溶血性貧血と AR を認め AVR

(生体弁)、re�MVR(生体弁)を施行された。1 年前より心不全症状の出現および溶血性貧血を認め入院となった。3�D 経食道心エコーでは僧帽弁人工弁位の 9 時方向の比較的限局した範囲に MR を認めた。高齢であり、3 度目の正中開胸となるため、右開胸下に修復を行うこととした。【手術】手術は肩甲骨下に肩枕を置いた仰臥位とし、第 4 肋間開胸で行った。人工心肺は右大腿動脈送血、右大腿静脈および術野から上大静脈脱血を行い確立した。送血温を 25℃ とし、低体温により心室細動を誘発した。その後、右側左房を切開し逆流部位を確認し、術前診断通り人工弁 9 時の方向に逆流部位を認めた。まずプレジェット付の 2�0 テフデッサー 4 組を使用し、左房側から人工弁輪にかけ、逆流部位を閉鎖した。この糸を、その針を落とさずそのままウマ心膜に通し、心膜パッチを人工弁輪に固定した。両側の糸を使用し、左房側を縫い上がり、心膜パッチでプレジェットを被覆するようにして補強とした。体外式パドルで除細動を行い、逆流部位の閉鎖を確認し、手術を終了した。手術時間は 250 分。体外循環時間は 129分であった。【考察】複数回の僧帽弁手術後の PVL症例に対し右開胸心室細動下で手術を行うことで、心臓の無理な牽引や広範囲の癒着剥離が不要で、良好な視野を確保することができた。弁周囲逆流の術後再発率は低くなく、確実な修復を行うために直接閉鎖とパッチ閉鎖を併用して修復術を行った。当科では同様の手術を他に 1 例行い、共に経過は良好である。また、PVL の治療として修復術を行う場合は正確な逆流部位と範囲の同定が重要であり、3�D 経食道心エコーによる部位診断が有用であった。PVLに対する逆流閉鎖法の工夫をビデオで供覧する。

VS6-3☆症例に応じたMICS AVR

東京医科大学 心臓血管外科

杭ノ瀬昌彦、荻野 均、西部 俊哉、松山 克彦、小泉 信達、岩橋 徹

高齢者 AS に対する AVR は弁膜症手術の大きなウエイトを占めている。今後予想される TAVI の臨床使用が始まると胸骨を大きくひらく従来の AVR は患者に見向きもされなくなる可能性がある。TAVIには AR の残存や脳梗塞、ブロックの発生などまだ問題点も多く長期成績も不明である。このように問題点の多い TAVI に AVR を譲る必要はないはずであるが、諸外国の様子をみるとその勢いを止めることは不可能に近いと予想される。心臓外科医は今まさに患者が求める低侵襲心臓手術 MICS をルーチン化する時期だと考えている。MICS AVR のアプローチとして我々は、右第 3 もしくは第 4 肋間小開胸法(IC 法)、胸骨部分切開法(上)

(US 法)、胸骨部分切開法(下)(LS 法)の 3 方法を使い分けている。US 法か LS 法かの判断は、大動脈弁位、上行大動脈の性状・位置で判断すれば良い。US 法は上行大動脈が広く見え送血管、遮断が術野から容易にできる。脱血管も簡単に入るが術野が煩雑になるので大腿静脈から SVC まで入れると快適である。LS 法は上行大動脈が L 字に曲り大動脈弁が剣状突起に近い高さまで下がっている症例に最適である。通常通りのカニュレーションも可能で創が下着から出ないので喜ばれる。COPD など呼吸機能の低下している患者には US 法か LS 法を適応すると術後の呼吸管理は容易になる。IC 法はこの 3 法の中では一番視野が悪いので送血管や脱血管は術野外から入れる必要がある。遮断鉗子も別の肋間から入れる。利点は骨を全く切らない点にあり早期社会復帰を望む比較的若年者、脳梗塞後などで杖を必要とする患者、出血傾向のある患者などに適応すべきと考えている。TAVI の欠点を補うために suture less AVR の開発も行われている。心臓外科医は必要最小限の視野が安全に出せれば確実に手術ができるようなり短時間で終了する時代がすぐそこまで来ていると考えルーチン化を行っている。

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VS7-1☆Norwood 術後の急性心筋虚血に対する左内胸動脈―上行大動脈バイパス術

日本赤十字社医療センター 心臓血管外科

峯岸 祥人、小林城太郎、高橋 昂大、竹内 功

当施設は 2009 年 1 月から 2011 年 10 月までに成人開心術 79 例(うち冠動脈バイパス術 41 例)、成人大血管手術 33 例、成人末梢血管手術 268 例、先天性心疾患手術 330 例と、体重 390g の超低出生体重児の動脈管閉鎖術から 88 歳の大動脈弁置換術まで、幅広い症例の手術を行っている。小児心臓外科医と成人心臓外科医のすみわけが明確になされているわが国にあって、これらの幅広い症例を 3 人の常勤医で、小児、成人症例の区別なく割り振っている点が、当施設の大きな特徴と思われる。このような背景があってこそ、思いつくような極めて独創的な手術手技を経験したので報告する。症例は胎児診断の付いた左心低形成症候群の患児で、在胎週数 38 週 6 日、誘発分娩、体重 3302g で出生。精査にて左心低形成症候群(僧帽弁閉鎖�大動脈弁閉鎖)と診断された。日齢 4 に両側肺動脈絞扼術を行い、日齢 39 に Norwood+Blalock�Taussig shunt術を施行。退院間近となっていたが、日齢 88 に急性心筋虚血による心原性ショックとなった。原因として、弓部から上行大動脈にかかる部分の変形による狭窄や、Blalock�Taussig shunt に冠血流が奪われていることなどが疑われたため、冠血流を増やすべく、日齢 89 に緊急で左内胸動脈―上行大動脈バイパス術を行った。当初はオフポンプでのバイパス術を予定していたが、循環動態が極めて不安定であったため、人工心肺使用下の手術となった。人工心肺時間は 101 分。大動脈遮断時間は 36 分であった。その後の経過は良好で、月齢 6 に両方向性 Glenn 手術+三尖弁形成術を行い、月齢 9 に退院となった。Norwood 手術前の上行大動脈の太さは、3D�CT 上内腔で 1.2mm と極めて細い症例であったが、左内胸動脈―上行大動脈バイパス術後、Glenn 手術前の心臓カテーテル検査では上行大動脈が内腔 3mm まで太くなった。Norwood 手術後の冠血流低下による合併症はきわめて重篤で、致死的である。対応策としては狭窄部のパッチ形成術などがあるが、本症例のように左内胸動脈―上行大動脈バイパス術を行った症例は極めて珍しい。本術式はパッチ形成術と比べて、拡張期に Blalock�Taussig shunt に血流が奪われにくいという点で画期的なものである可能性がある。

VS7-2☆両側上大静脈に対する unifocalized bilateralbidirectional Glenn 手術

あいち小児保健医療総合センター 心臓血管外科

村山 弘臣、長谷川広樹、八神 啓、前田 正信

【はじめに】両側上大静脈における両側両方向性グレン手術(B-BDG 手術)は、術後、中心肺動脈の形成不全や血栓形成の可能性が指摘されている。これに対し、かねてから、両上大静脈を近接させて肺動脈に吻合することが提唱されている。われわれは、大動脈弓小弯側で、両側上大静脈を unifocalizationしながら中心肺動脈と吻合する方法を標準術式としており、本法を供覧する。

【症例】症例は無脾症の 1 歳、男児。両側上大静脈、単心房、単心室、共通房室弁、右側大動脈弓、肺動脈狭窄の診断で、B-BDG 手術を施行した。手術は胸骨正中切開で入り、両側上大静脈を剥離し、奇静脈、半奇静脈を結紮切離した。上大静脈の可動性を十分確保するため、可及的頭側までこれらを剥離した。上行大動脈送血、両側上大静脈および下大静脈脱血で体外循環を開始した。心拍動下に心房から左右上大静脈を離断後、中心肺動脈を長軸に切開した。6-0 polypropylene による連続縫合で、左上大静脈後壁を肺動脈切開左半部に吻合した。同様にして、右上大静脈後壁を同右半部に吻合した。左右吻合のバランスを確認しながら、両上大静脈前壁を 6-0polypropylene による結節縫合で肺動脈に吻合した。最後に、両上大静脈間を結節縫合で吻合し、uni-focalize した。体外循環からの離脱は容易で、体外循環時間は 146 分であった。手術当日抜管し、術後経過は良好であった。

【対象・結果】両側上大静脈を有する機能的単心室連続 6 例(男児:女児=2 : 4、手術時年齢 0.6~1.2(平均 0.8±0.3)歳)に本法を施行した。対象のうち 3例は無脾症で、2 例で B-T シャント手術の、1 例で肺動脈絞扼術の先行姑息術後であった。体外循環は、両側上大静脈および下大静脈脱血を原則とし、片側の上大静脈が細径の場合はカニュレーションせず、環流血を吸引しながらグレン吻合を行った。全例で、体外循環からの離脱は容易で、手術当日抜管し、術後経過良好であった。術後、心臓カテーテル検査を4 例に行ったところ、両肺動脈の均衡のとれた発育を確認でき、TCPC 手術を施行した。残る 2 例は検査待機中にある。

【まとめ】本法施行後は、中心肺動脈の形成不全や血栓形成を認めないばかりか、均衡のとれた両肺動脈の発育を確認できた。External conduit によるTCPC 手術に際しては、conduit の肺動脈側吻合をunifocalization した上大静脈吻合部と併せることによって、下大静脈から肺動脈に滑らかな接続が可能であった。

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VS7-3☆超低出生体重児動脈管開存症に対する手術の工夫

日本赤十字社医療センター 心臓血管外科

峯岸 祥人、小林城太郎、高橋 昂大、竹内 功

当施設では低出生体重児の動脈管開存症に対して、保存的治療が奏効しない場合には積極的に動脈管閉鎖術を施行し、2004 年 1 月から 2011 年 10 月までに100 例経験した。このうち、出生時も手術時も体重が1000g 未満の症例が 74 例(平均体重 643g)とその大部分を占めているが、手術死亡なしと良好な成績を収めている。当初の手術手技は成人の開胸手術に則して後側方切開を行い、肩甲骨を挙上して第 4 肋間開胸でのアプローチであったが、胸壁筋肉を切離するため、体力のない超低出生体重児に対しては、この開胸方法は大きな侵襲になると思われた。また、大きな開胸で視野確保のために鈎をかけ、肺を大きく圧排することになり、しばしば循環虚脱に陥り、手術操作の中断を余儀なくされることも多かった。これらの問題を改善するべく、新しい手術手技として 2010 年から聴診三角部切開とエスマルヒ駆血帯を用いた手術手技を試しているので報告する。我々は動脈管閉鎖に血管クリップを用いるが、クリップを動脈管に直行して掛けるためには動脈管と同じ高さの肋間で開けることが肝要で、超低出生体重児ではこの肋間が第 3 肋間であることがわかってきた。動脈管を視認して、剥離操作をするには後方の小切開で十分で、従来の後側方切開のように側胸部に切開が及ぶと視野は広くなるが、結果的に肺を大きく圧排するため、循環虚脱を生じやすいと思われた。聴診三角部は肩甲骨内側縁、広背筋の上縁、僧帽筋の外側縁に囲まれた部位で、ここを切開すると胸壁筋肉を切離せずに、最短距離で、やや後方の第 3 肋間に到達できるため、侵襲も少なく、動脈管への距離も近いため、肺の圧排も最小限ですむ。また、エスマルヒ駆血帯をちょうど胸腔内に収まるように切ったものを用いて、視野展開を行うと手術操作に最低限必要なワーキングスペースを安定して確保することができ、循環虚脱のリスクを軽減できると思われた。本術式を行っても手術時間が有意に延長されることもなく、皮切は 20mm 前後と、以前より 10mm ほど短くなった。低侵襲で安全な手術として本術式が有用である可能性が示唆された。

VS8-1☆開胸 debranching+人工血管からの順行性TAG挿入で再 TEVARを行った症例

東北大学大学院医学系研究科 大動脈疾患治療開発学寄附講座

熊谷紀一郎、齋藤 武志、安達 理、川本 俊輔、秋山 正年、本吉 直孝、齋木 佳克

症例提示:症例は 83 歳女性で、2009 年 12 月に弓部大動脈瘤に対して Zone2 から TEVAR(talent)を行ったが、術後近位からの type1 エンドリークが出現し、動脈瘤の拡大傾向がみられたため再手術となった。再 TEVAR の方針としたが、問題点として1)近位側のランディングゾーンを確保するため、Zone0 から挿入する必要があり、2)すでに挿入されている talent 内にステント追加する際に、talent の中枢側ベアスプリングが中枢に押し上げられることで大動脈壁の損傷を引き起こすおそれがあり、大腿動脈からの挿入がためらわれる点があげられた。そのため、開胸して Zone0 debranching+順行性にTAG を挿入する方針とした。手術ビデオ:はじめに、胸骨正中切開から上行大動脈―腕頭動脈、左総頸動脈バイパス術を行った。人工血管は Hemashield 3branch graft(14�10�10)を用いた。上行大動脈に部分遮断鉗子をかけ斜切開したグラフトを端側吻合した。頚部分枝吻合には tempo-rary shunt を用い、末梢潅流圧をモニタリングすることとしている。左総頸動脈には MERA12Fr、腕頭動脈には十分な潅流量を得る目的で住友ベークライト 15Fr を用いて潅流を行いつつ端々吻合を行った。その後中枢側からの TEVAR の手技に移行した。グラフトの基部にあらかじめ吻合しておいた 10mm の人工血管からガイドワイヤーを挿入し、左大腿動脈から引き抜き、人工血管内から上行大動脈にかけてシースを挿入、ここから順行性に GoreTAGを挿入した。はじめ遠位側に GoreTAG2815、次に近位側に GoreTAG3420 を挿入した。術直後の造影ではエンドリークは消失した。術後経過:術後は特に合併症なく順調な経過で、術後 1 週間目の造影 CT でもエンドリークはみられず、再建した頚部分枝も patent であった。考察:頚部分枝の吻合操作の際に、当科では人工血管側枝から脳送血用カニューレを用いて脳循環を行う方法を用いている。これにより脳虚血時間をほとんどなくすことができ、安全で確実な吻合を行えることが本法の利点である。また、本症例では先に留置されているステントグラフトによる大動脈損傷を防ぐため人工血管から順行性にステントグラフト挿入を行った。このような症例に有効な方法である。

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VS8-2☆弓部大動脈瘤に対する全弓部分枝 debranch-ing TEVARの工夫

財団法人仙台厚生会 仙台厚生病院 心臓センター心臓血管外科

吉岡 一朗、水本 雅弘、永野 直子、畑 正樹、阿部 和男、柳沼 厳弥

弓部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術は弓部大動脈の解剖学的複雑性からその方法や適応には議論が多いが、近年では患者背景もより高齢化しリスクの高い症例が増えていることから低侵襲化が望まれている。我々もハイリスク症例に対して積極的に debranching TEVARを行ない低侵襲化を図っている。当施設では zone 0への留置を必要としたTEVAR は非開胸下に chimney technique を用いた2 例を含め 6 例を経験しているが、今回は最近施行した企業製の debranching 用人工血管を用い開胸下に全弓部分枝の debranching TEVAR を行ない良好な結果を得た 2 例を経験したのでビデオで供覧する。

【術式】症例は 80 歳男性。開胸に先立ち左腋窩動脈を露出し 8mm 人工血管を端側吻合しておく。胸部正中切開をおき、上行大動脈および頚部 3 分枝を露出しテーピングしておく。頚部分枝へのバイパスには 3 分枝用の人工血管(Gelweave Trifurcate 12×8×8)を用いた。上行大動脈にサイドクランプし 12mm の人工血管を吻合する。吻合後に左腋窩動脈に吻合する 8mm の人工血管側枝に循環カニューラ

(15Fr)をつなげておく。腕頭動脈、左総頚動脈の順に端側で吻合するが、それぞれ中枢側を結紮した後に頸動脈を縦切開し先の循環カニューラを遠位側に挿入し内シャントにすることで脳循環を保つことが可能となる。先に左腋窩動脈に吻合しておいた人工血管を縦隔内に導き人工血管人工血管吻合を行い、左鎖骨下動脈を結紮し full debranchingが完了する。右 大 腿 動 脈 ア プ ロ ー チ で Gore�TAG を 用 いTEVAR を行う。【結果】2 例とも手術は成功し術後の CT でエンドリークは認めず頚部分枝へのグラフトの開存も良好であった。手術時間は 3 時間 40 分、どちらも手術室で抜管し脳合併症を含め術後合併症は認めなかった。【結語】ハイリスク症例における弓部大動脈瘤症例に対する全弓部分枝 debranchingTEVAR は有用な治療手段となりうると考えられた。

VS8-3☆遠位弓部大動脈瘤に対する新しい TEVAR治療戦略:double chimney technique

1山口県立総合医療センター 外科、2山口県立総合医療センター 心臓血管外科

佐村 誠1、善甫 宣哉1、池田 宜孝1、岡崎 充善1、金山 靖代1、日高 匡章1、宮崎 健介1、松尾 光敏1、金田 好和1、須藤隆一郎1、野島 真治1、鈴木 一弘2、壷井 英敏2

【目的】遠位弓部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(TEVAR)では、zone 別の分枝再建が問題と な る。こ れ ま で は debranching を 併 用 し たTEVAR が主流であったが、当院では chimney tech-nique を併用した TEVAR を行っており、特に zone0 における腕頭、左総頸動脈の再建法として、それぞれに chimney graft を用いる double chimney tech-nique を試みている。今回当院で経験した 2 例をビデオで供覧する。

【症例】症例 1 は 81 歳男性。径 60mm の遠位弓部大動脈瘤に対し開胸手術を拒否され、ステントグラフト治療希望で紹介となった。1 年前に両側総腸骨動脈狭窄に対して径 8mm のベアステントが留置されていた。症例 2 は 82 歳男性。前立腺癌、膀胱癌の手術歴があり、今回径 57×106mm の遠位弓部大動脈瘤、径 57mm の胸腹部大動脈瘤に対し、ステントグラフト治療目的に紹介となった。遠位弓部大動脈瘤をまず治療する方針とした。2 例とも腕頭動脈までの landing zone 長<20mm であった。

【手術手技】症例 1 は径 10mm の PTFE グラフトをexternal conduit として腎動脈下腹部大動脈に端側吻合し、症例 2 は大腿動脈アプローチで行った。TAG ステントグラフトを目的部位まで挿入した後、右上腕動脈カットダウンで 12Fr シースを用いて、Excluder iliac extender(14.5mm×7cm)を腕頭動脈に挿入し、左総頸動脈カットダウンで 7Fr シースを用いて、Atrium V12(10mm×59mm)を左総頸動脈に挿入した。Iliac extender、Atrium の先端を TAGgold band より中枢に位置させ iliac extender、TAG、Atrium の順に deployment した。

【結果】手術時間はそれぞれ 346 分、151 分、出血量は 480g、320g であった。2 例とも術後脳梗塞は発生せず、腕頭、左総頸動脈の血流は良好で、type I en-doleak はなかった。2 例とも左鎖骨下動脈からのtype II endoleak を認め、コイル塞栓術を追加した。現在まで瘤径の拡大はなく、良好に経過している。

【結語】遠位弓部大動脈瘤に対する double chimneytechnique を併用した TEVAR は、debranching を用いない低侵襲で新しい分枝再建法として有用であった。

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VS8-4☆Zenith TX2による屈曲の強い遠位弓部瘤へのアプローチ

1いわき市立総合磐城共立病院 心臓血管外科 小切開心臓手術―大動脈ステントグラフトセンター、2福島県立医科大学 心臓血管外科、3葉山ハートセンター 心臓血管外科

近藤 俊一1、山部 剛史1、近藤 太一3、廣田 潤1、横山 斉2

【症例】72 才 男性【既往歴】30 才時に結核のため両側胸郭形成術施行。50 才時 C 型肝炎、胆石。68 才時 胃潰瘍。

【現病歴】2011 年 3 月 16 日に急性大動脈解離(De-Bakey IIIb)を発症した。安静、降圧療法で治療を行った。解離腔はその後おおむね血栓化したが、遠位弓部の entry 部の ULP は残存した。CT で followup を行っていたところ、次第に ULP 部分の拡大がみられるようになり、2011 年 9 月の CT では最大径52mm と拡大したため、手術適応と判断された。胸郭形成術後であり、開胸による手術はリスクが高いと判断され当科紹介となった。

【手術】左橈骨動脈付近に局所麻酔を行い、意識下に左鎖骨下動脈を閉鎖した。意識状態、INVOS、感覚に変化がないか Pt.に確認しながら、10 分間経過を見た。問題ない事を Pt.本人に確認し、左鎖骨下動脈は単純閉鎖する方針とした。全身麻酔下に、spinalposition で手術を開始した。右外腸骨動脈を露出taping した。DSA を行い、瘤の位置、形態を把握した。TX2 4036�158 & 40�135 で行う方針とした。まず、25Fr.TX2 4036�158 を右外腸骨動脈から挿入した。スムースであった。弓部大動脈まで誘導し、LAO 45 度で DSA を行った。位置を確認した。瘤のjust proximal からリリースした。次に、TX2 40�135を挿入した。左鎖骨下動脈入口部をバルーンカテーテルで閉鎖し椎骨動脈への塞栓をブロックした。25Fr.TX2 φ40×135mm を弓部大動脈まで誘導した。LAO 45 度 CAU 7 度で DSA を行い、位置を確認した。左総頸動脈の just distal へ 1 本目の TX2 から 1連だけ出るように TX240�135 をリリースする事により、小湾にしっかり追従した。左鎖骨下動脈に留置したバルーンカテを用いてコイル塞栓した(トルネードコイル 5�10mm×8)。Coda 40mm バルーンで末梢側から順に圧着した。確認 DSA の結果、endleak はなく良好に exclude された。

VS8-5☆大動脈浸潤肺癌に対する開窓型胸部大動脈ステントグラフトの応用

1鹿児島大学大学院 循環器・呼吸器病学講座 循環器・呼吸器・消化器疾患制御学、2鹿児島大学大学院 呼吸器外科学

川津 祥和1、山本 裕之1、山元 文晴1、重久 喜哉1、峠 幸志1、久 容輔1、上野 哲哉1、永田 俊行2、佐藤 雅美2、井本 浩1

68 歳男性。食道癌術後の経過観察中に大動脈弓部直上に 21×17mm 大の腫瘍を認めた。7 月 25 日に試験開胸下生検を行い肺癌と診断された。また大動脈への浸潤所見もあり、左肺上葉切除及び大動脈合併切除の方針となった。先行して放射線療法を行った。大動脈切除に備えて、8 月 19 日に開窓型胸部大動脈ステントグラフト“NAJUTA”を内挿した。その後、引き続き化学療法・放射線療法行われ、10 月 3 日に左肺上葉切除+大動脈合併切除+大動脈切除部パッチ閉鎖術を行った。術後は胸水貯溜を認めたものの、感染兆候無く経過し、術後 15 日目に退院となった。肺癌の大動脈浸潤症例は一般的に手術適応とならないが、化学療法・放射線療法にて down sizing が得られるものは外科的切除の適応となる事がある。浸潤している大動脈の位置によっては大掛かりなバイパス術や人工心肺が必要となる。開窓型ステントグラフトを前もって内挿することで、これらのデバイスを用いる事無く簡便にかつ安全に手術を行うことが出来る。

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VS9-1☆感染性胸部大動脈瘤に対する非解剖学的バイパス術

弘前大学医学部 胸部心臓血管外科

小笠原尚志、鈴木 保之、青木 哉志、谷口 哲、福井 康三、福田 幾夫

感染性弓部大動脈瘤の治療において非解剖学的バイパスを用いることが有効であった症例を経験したため手術ビデオを供覧する。症例は 76 歳女性で CRP の上昇以外は大きな検査異常が見当たらなかった。原因検索のため行った CT検査で遠位弓部に 6cm の動脈瘤を認めたため当科へ紹介、救急搬送となった。動脈瘤は八頭状で急速な拡大傾向が認められた。感染性動脈瘤が疑われ緊急手術の適応と判断した。手術は非解剖学的バイパスと大動脈瘤切除、及び大網充填の方針とした。右腋窩動脈、左総頸動脈、左大腿動脈に送血路用の人工血管を吻合し、左大腿静脈から脱血管を挿入し体外循環を開始した。CT で動脈瘤と胸骨後面が近接していたため胸骨正中切開時の損傷を考慮し、直腸温を 25℃ とし胸骨正中切開を行った。幸い動脈瘤と胸骨の癒着は軽度で、上大静脈に脱血管を追加し右上肺静脈にベントを挿入し完全体外循環を確立した。上行大動脈に部分遮断鉗子をかけ J�graft 22mmを 4�0 プロリンで端側縫合した。続いて心臓を脱転し心嚢背側で下行大動脈を露出し 18mm グラフトを端側で吻合したのち、それぞれのグラフトを端々で吻合し非解剖学的バイパスを完成した。左開胸を追加し胸部中部下行大動脈にテーピングを行い、この部位で下行大動脈を遮断した。上行大動脈グラフト吻合の遠位側、腕頭動脈、左総頸動脈を遮断し、左鎖骨下動脈はバルーンカテーテルで閉鎖し脳血流を維持した状態で動脈瘤切除を行った。上行大動脈切断端は牛心膜で補強し 4�0 プロリンで縫合閉鎖した。下行大動脈断端は壁性状が悪く 4�0 プロリンで縫合閉鎖した後、胸部中部下行大動脈にかけたテープを用いて 2 重結紮し下行大動脈断端に圧がかかることを回避した。非解剖学的バイパスに側枝をつけ腕頭動脈、左総頸動脈を再建した。左鎖骨下動脈は新たに人工血管を吻合し左総頸動脈に縫着した人工血管とつなぐことで再建を終了した。瘤切除部位には大網を充填し感染巣と人工血管を隔離した。手術時間 18 時間 31 分、総体外循環 9 時間 45 分であった。術後は感染の再燃なく経口摂取も可能となり現在リハビリテーション中である。考察:感染性動脈瘤に対しては感染巣の完全な除去と再発予防が重要となる。血流としては解剖学的バイパス術が理想的ではあるが感染巣除去と感染巣隔離という面では非解剖学的再建が非常に有効であり最終的な感染コントロールに結びついたと考えられる。

VS9-2☆RITA を使用したCABG術後に左開胸にて部分弓部置換術を施行した 1例

藤田保健衛生大学 心臓血管外科

天野健太郎、秋田 淳年、櫻井 祐補、樋口 義郎、近藤 弘史、石田 理子、金子 完、佐藤 俊充、石川 寛、佐藤 雅人、高木 靖、渡邊 孝、安藤 太三

(はじめに)CABG 後の再手術において patent ITAの存在は、術式選択において問題となる。今回我々は、CABG 術後に遠位弓部大動脈瘤に対して左開胸にて部分弓部置換術を施行したので報告する。(症例)73 歳、男性。2 年前に不安定狭心症に対してCABG(RITA�LAD、SVG�4PD�4AV)施行した。初回手術時の CT にて遠位弓部に最大短径 45mmの嚢状瘤を認めた。外来 follow 中に瘤径の拡大を認め最大短径が 55mm となったため手術適応と判断した。造影 CT にて弓部大動脈に粥腫の存在があり、TEVAR は脳塞栓の危険が高いと判断し、弓部置換術が望ましいと判断した。前回 CABG におけるRITA�LAD は patent でありまた、上行大動脈の前面胸骨直下を走行していることを CT および CAGにて確認した。胸骨正中切開による手術は patentITA の損傷の危険があることより左開胸アプローチによる術式を選択した。手術は低体温脳分離体外循環下に部分弓部置換術(左鎖骨下動脈再建)を施行した。左大腿動脈送血および脳分離体外循環として左腋窩動脈送血にて脳保護を施行し、右腋窩動脈送血を加えることで弓部の粥腫による脳塞栓を予防した。術後呼吸管理にやや難渋したが、術後 6 日目に抜管。抜管後に NPPV 使用し、術後 11 日目にNPPV 離脱した。術後 18 日目に集中治療室退室し、その後リハビリ施行し術後 67 日目に独歩退院となった。(まとめ)patent RITA を認める CABG 術後に左開胸にて部分弓部置換術を施行した 1 例を経験した。術前に CT および CAG にて patent graft の走行を確認することで安全に手術を施行することが可能であると思われた。CABG 術後の再手術では pat-ent graft の存在に注意して術式を選択することが重要である。

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VS9-3☆マルファン症候群患者に生じた急性解離;AAE、破裂性 TAAAに対する一期的手術

弘前大学医学部附属病院 胸部心臓血管外科

齊藤 良明、福田和歌子、野村 亜南、小笠原尚志、渡辺 健一、青木 哉志、谷口 哲、大徳 和之、皆川 正仁、鈴木 保之、福井 康三、福田 幾夫

【はじめに】マルファン症候群患者の大動脈病変に対して段階的手術は標準的であるが、急性期において同時手術が必要な複合病変に遭遇することはまれである。AAE、胸腹部大動脈瘤(TAAA)を有するマルファン症候群患者に生じた A 型急性大動脈解離に対して、大動脈基部・弓部・胸腹部大動脈人工血管置換術を一期的に行い救命した症例について報告する。

【症例】53 歳女性。大動脈弁輪拡張症(AAE)(4.2cm)、Craw-ford 4 型の TAAA(最大径 6 cm)が指摘され、段階的手術を予定していた。待機中に A 型大動脈解離を発症した。CT では大動脈基部から terminal aortaにまで大動脈解離がおよんでおり、エントリーは上行大動脈に存在。TAAA 周囲には造影剤の漏出を認めた。心エコー検査でⅢ度大動脈弁逆流、心のう液貯留を認めた。救命のため一期的手術を行う方針とした。

【手術】仰臥位で両側腋窩動脈(Ax)、左大腿動脈(FA)に人工血管を吻合し、送血路とした。体位を右半側臥位とし、初めに胸骨正中切開を行った。続いて左第8 肋間から腹部斜切開で後腹膜に到達し、下行大動脈、両側総腸骨動脈(CIA)をテーピングしておく。<基部・弓部操作>中枢温 28 度まで冷却。大動脈を遮断、切開すると RCA 付近の STJ 直上にエントリーを認めた。大動脈の外側から弁輪にマットレス縫合をかけ、21 mm SJM 弁、26 mm Valsalva graft を縫着。LCA、RCA 入口部をボタン上に切離したが、本幹付近まで解離がおよんでいた。外側にドーナツ状のフェルトをあて吻合口を形成し、グラフトに縫着した。脳分離体外循環を確立後、下行大動脈に 4 分枝 J graft の一部を elephant trunk(8 cm)として挿入し、total arch replacement を行った。30 度まで復温し、DC をかけて洞調律に復帰させた。<胸腹部操作>右 Ax、FA 送血としたまま、下行大動脈と両側CIA を遮断した。SMA、左腎動脈に潅流をしておき22 mm Coselli graft を用いて下行大動脈、terminalaorta に吻合し、順次腹部分枝を再建した。復温後に止血を行い閉胸閉腹。総手術時間 18 時間 25 分、対外循環時間 10 時間 20 分、冠動脈虚血時間 3 時間 15分。退院後独歩で外来通院している。

【まとめ】一期的手術を行うことで臓器潅流不全などの心配もなく、周術期は安定した循環動態を保つことができた。

VS9-4☆遠位弓部大動脈瘤における末梢側吻合の工夫―Double suture technique―

名古屋大学医学部附属病院 心臓外科

藤田 山、碓氷 章彦、六鹿 雅登、徳田 順之、荒木 善盛、成田 裕司、大島 英揮、上田 裕一

【目的】胸部大動脈瘤に対する弓部置換は遠位側吻合部の出血コントロールが手術の正否に大きく影響する。遠位弓部大動脈瘤の末梢側吻合部は正中切開では術野から遠く、CPB 再開後は吻合部の展開が困難となり、止血に難渋する時がある。今回人工血管を大動脈瘤内に挿入し、大動脈瘤の遠位側・中枢側両方を吻合する Double suture 法を用いた症例を経験したのでビデオ供覧する。

【症例】症例は 69 歳、女性。右手のしびれ感で近医受診。精査により遠位弓部外側に突出する最大短径6cm の嚢状動脈瘤を認め、手術適応となった。大動脈瘤の末端は左鎖骨下動脈から 6cm で下行大動脈の動脈硬化は軽度であった。

【手術】胸骨正中切開で開胸し、心嚢を縦切開して心臓を露出。上行大動脈送血、右心耳脱血で人工心肺を確立。Core cooling を持続し、咽頭温 25℃、膀胱温 28℃ で準婚停止を行い、腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈を基部で横断し SCP を開始した。弓部を左総頸動脈レベルで横断し、左鎖骨下動脈基部を切開して大動脈瘤遠位側の視野を得た。瘤の末梢は左鎖骨下動脈から 6cm 遠位にあるため、瘤遠位の下行大動脈 4 カ所に 3�0 U suture を運針し、この針で二重に折り返した 16cm 長の Triplex 22mm をStepwize 法で固定。この後、全周性に over�overを追加した。吻合後に折り返した人工血管を引き出し Foly cath を挿入して末梢側灌流を行い同時に止血を確認した。左鎖骨下動脈分岐部を 3�0 で閉鎖した後に、大動脈中枢側壁と内挿した人工血管中枢側を ransverse matress で固定した。次に Triplex 22mm 4 分枝管を吻合した。Triplex 末端 1cm を外翻させ人工血管に内挿するように 4 カ所 4�0 SH1 Usuture で固定し、over�over を追加した。その後Graft 送血に変更し、左鎖骨下動脈、上行大動脈中枢側、左総頸動脈、腕頭動脈の順に吻合し復温した。人工心肺 230 分、心虚血 151 分、手術時間 450 分。術後の 3D�CT で瘤は完全に空置されていた。術中は無輸血で経過できた。第 20 病日に軽快退院した。

【結語】胸部大動脈瘤に対する Double suture 法は出血コントロールが容易であった。確実な吻合を行うために、吻合部の深さ・大動脈の性状により吻合法を選択することが重要である。

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VS9-5☆遠位弓部大動脈瘤手術時の循環停止時間の短縮の工夫

社会福祉法人 京都社会事業財団 京都桂病院 心臓血管センター・外科

森田 雅文、吉井 康欣、三重野繁敏、常深孝太郎

近年、胸部大動脈瘤手術に対し、低侵襲手術としてステントグラフトが多用されるようになったが、大動脈壁が脆弱でステントグラフトを留置することを躊躇われることもある。当院では、弓部大動脈瘤に対しては循環停止法を使用した人工血管置換術を積極的に使用している。最近、特に、遠位弓部大動脈瘤手術に際し循環停止時間が長くなる場合などにバルーンカテーテルを使用して、末梢循環を早期に開始し、循環停止時間の短縮を計る工夫をしたのでビデオで供覧する。症例は 71 歳、男性。遠位弓部大動脈瘤 60mm 大の診断で手術目的で紹介となった。既往歴に約 15 年前に腎癌で右腎摘出術を施行されており、術前検査で左腎転移、右恥骨転移を認めた。担癌状態であったが無症状で発育が遅いとの判断で動脈瘤の手術を行うこととした。手術は胸骨正中切開でアプローチし、上行大動脈送血、右心房脱血で体外循環を確立、上行大動脈を遮断し、中枢側吻合を施行した後、30�31 度の軽度低体温循環停止として、脳循環を開始した後、末梢側吻合部を同定、elephant trunk を流すと同時にバルーンカテーテルで末梢循環を開始した。断端形成の後、末梢側吻合を行い、止血を確認後に復温を開始し、頚部 3 分枝の再建を施行した。循環停止時間は 18分であった。また、バルーンカテーテルでの末梢(下半身)還流量は 2L�分は可能であった。末梢吻合時の視野にやや問題点は残すものの、軽度低体温での手術が可能となり、体外循環時間、止血時間の短縮などの利点を有し、有益な方法であると考えられた。

VS10-1☆Da Vinci surgical system を使用した冠動脈バイパス術

国立循環器病研究センター 心臓血管外科

藤田 知之、戸田 宏一、島原 佑介、佐藤 俊輔、小林順二郎

【背景および目的】冠動脈疾患において、冠動脈バイパス術(CABG)がカテーテル治療(PCI)に対して長期成績が優れていることは広く認識されているが、低侵襲であるとの理由で患者が PCI を選択する傾向にある。我々は Da Vinci surgical system を使用した左内胸動脈(LITA)の採取と小切開での前下行枝(LAD)への CABG(MIDCAB)を組み合わせ、安全かつ低侵襲な手術を目指したのでその結果を報告する。

【対象および方法】対象は 2004 年以降、冠動脈カンファレンスにて LITA�LAD の 1 本バイパスの適応とされ、Da Vinci surgical system を用いた手術に同意した患者。平均年齢は 64 歳(50�80 歳)、男性 21例(84%)、冠動脈の病変は 1 枝病変 14 例(56%)、2 枝病変 4 例(24%)、3 枝病変 1 例(4%)、左主幹部(LMT)病変 5 例(20%)であった。手術前に PCIまたは CABG の既往のある患者は 13 例(52%)であった。手術はまず、右胸腔にカメラポートおよび左右のアームポートを作成し、Da Vinci surgicalsystem を用いて LITA を採取。初期の 21 例は pedi-cle で採取し、後期の 4 例は skeletonized techniqueで採取した。バイパスは右前胸部に約 7cm の小切開を加え、心拍動下 CABG(OPCAB)を施行した。

【結果】全例生存し、重篤な合併症(MACCE)は認めなかった。24 例(96%)で Da Vinci surgical sys-tem による LITA の採取は成功し、1 例で出血による正中切開への conversion を要した。術後の造影CT ではすべてのグラフトの良好な開存を確認したが、1 例で LAD 以外の冠動脈への吻合を認めたため、再吻合を行った。患者は早期退院を達成することができた。

【結語】手技上の pitfall もあるが、良好な成績を達成することができ、患者にとっては有効な選択肢となりうると考えられた。今後は PCI と組み合わせるハイブリッド手術により多枝病変を有する患者に対しても適応拡大が可能ではないかと考えられた。

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VS10-2☆OPCAB施行時のModified LIMA Suture による視野展開の工夫

聖路加国際病院 心血管センター

阿部 恒平、渡辺 直、山崎 学、桑内慎太郎、伊藤 丈二、川副 浩平

OPCAB は 1960 年代に一時行われたものの、人工心肺の普及に伴い、心停止法が主流となっていた。近年 OPCAB 法が主流となってきている要因として、視野展開法や各種スタビライザーの進歩が挙げられる。視野展開法としては LIMA らが 1995 年に提唱した deep pericardial traction 法が Epoch�makingであり、今日でも広く用いられている。この展開法は心膜を左上肺静脈近傍から心下面に向けて 3~4 針の吊り上げ糸を掛けて心臓を下面より引き上げる方法である。この場合、吊り上げ糸

(LIMA suture)が心臓に接触する可能性があるためネラトンなどで保護する必要がある。また回旋枝領域のバイパス時には作業エリアに吊り上げ糸が位置するため吻合時の障害物になる可能性もある。今回提案する方法(Modified LIMA suture)は、LIMA suture を左内胸動脈剥離後の胸壁を通して引き上げることにより心臓との接触を避けられ、また回旋枝バイパス時の作業エリアの妨げにもならない。またわずかではあるが、心基部がわずかに左方に変移するため回旋枝脱転時の側壁の傾斜角度を下げることが出来、血行動態の変化がより少ない状態での視野展開が可能である。この展開法で良好な視野及び手術結果を得たのでビデオにて報告する。

VS10-3☆急性下壁心筋梗塞後心室中隔穿孔に対するDagget 変法の工夫

名古屋第二赤十字病院 心臓血管外科

高味 良行、内田健一郎、宗像 寿祥、日尾野 誠、藤井 恵、加藤 亙、酒井 喜正、田嶋 一喜

【症例】76 歳男性。胸痛を主訴に前医救急外来へ搬送。来院時より血圧 60 台とショック状態。急性下壁心筋梗塞の診断にて、IABP 挿入・一時的ペーシング導入後緊急心カテ施行。#2 閉塞に対してステント留置。他に、#7 75%・#12 75%・#13 75% を認めた。PCI 後に心室細動となり、蘇生後人工呼吸器管理に。腎障害進行し第 2 病日より持続的血液濾過透析導入。第 3 日心エコー上、VSP(Qp�Qs 4.95)を認め、手術目的で当院搬送となった。

【手術】胸骨正中切開・上行大動脈送血・右房脱血にて人工心肺確立、左室ベント挿入後左内胸動脈採取。上行大動脈遮断・順行性心筋保護にて心停止後、心尖部を挙上し左室下壁を 4PD 左縁に沿って切開。後乳頭筋損傷を回避するよう左室内腔を観察しながら切開口を拡大。僧帽弁輪に隣接する中隔が広範に壊死し穿孔を認めた。最も深い、僧帽弁輪に近傍から後乳頭筋に平行なラインで 4�0 スパ付 U 字縫合を 3針おき、大きめにトリミングしたウシ心膜パッチの1 辺に通し結紮。心尖部側は壊死が強く、U 字縫合には適さないので、2�0 スパ付糸 U 字縫合を左室後壁に貫壁させ心室の外側には、後に左室縫合に用いる短冊フェルトに通し、結紮。心基部方向へは、4�0糸連続縫合にて中隔筋肉にパッチを縫着。下壁筋肉に達したところで、2�0 糸スパ付き糸の U 字縫合にて貫壁性に外へ出し、短冊フェルトに通し結紮しパッチをトリミング。左室切開部を 2�0 糸 U 字マットレス縫合にてフェルト短冊を通しウマ心膜パッチをサンドイッチする形で閉鎖。さらに同部にウシ心膜パッチをフィブリン糊にて固定後、2�0 糸の連続縫合にて補強。最後に左内胸動脈と#8 を吻合。大動脈遮断解除後人工心肺離脱を試みるも、右室不全が明らかとなり、左大腿動静脈送脱血による PCPS 補助にて術後管理を行った。術後 3 日目に PCPS 離脱、4 日目に閉胸、7 日目に IABP 抜去。術後心エコー上遺残短絡は認めなかった。

【考察】下壁梗塞に合併する VSP はより心基部に存在するため、修復には工夫を要する。最も深い僧帽弁輪から後乳頭筋に沿う中隔組織に深い U 字縫合で確実にパッチを縫合することが肝要である。心筋貫壁性の U 字縫合を多用する Dagget 変法は、手技が単純で有用である。また左室切開線の縫合にはウシ心膜パッチをフィブリン糊にて固定後の連続縫合が有用である。

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VS10-4☆Flat & Cone patch for VSP

筑波メディカルセンター病院 心臓血管外科

松崎 寛二、川又 健、池田 晃彦、小西 泰介、軸屋 智昭

心室中隔穿孔(VSP)は急性心筋梗塞の重篤な合併症の一つであり、緊急手術を要することも少なくない。手 術 方 法 と し て は Komeda�David 法 や Doublepatch 法が有名であり、それらに独自の工夫を加えた手法も報告されている。しかし、病態の厳しさから誰もが安定した成績を得ることは難しく、術式の標準化には至っていない。我々は前壁中隔梗塞例に対して形状の異なる 2 枚のパッチ(Flat patch とCone patch)を用いた VSP 閉鎖手術を行い、良好な結果を得たので報告する。

【手技】1)、人工心肺下に左室切開を加え、VSP と健常心筋の位置を把握する。さらに中隔梗塞の大きさを計測し、パッチの形状と縫合ラインを想定する。2)、1 枚のウシ心のう膜パッチ(10×15cm)から Flatpatch と Cone patch の原型を切りだす。前者は中隔梗塞を被覆する 1 枚目のパッチであり、後者は一回り大きな扇形をイメージしたパッチである。3)、Flatpatch は心室中隔に 2�0PPP のマットレス縫合

(10~12 針)で縫着する。心基部側の縫合糸(5~6針)は健常心筋の辺縁に抜いたまま保持し、心尖部側の縫合糸(5~6 針)は右室自由壁に抜いて結紮する。4)、Cone patch は前者の心基部側縫合糸を用いてマットレス縫合と 3�0ppp の連続縫合で健常中隔に二重に縫着する。次に扇形の 2 辺を合せて左室腔を裏打ちする円錐形を作り、残りの底縁を 2�0PPPのマットレス縫合で左室自由壁に縫着する。5)、余剰パッチや帯状フェルトを用いて心外膜を補強し、左室切開を 2�0PPP のマットレス縫合および連続縫合で閉鎖する。

【考察】Komeda�David 法の長所は、Infarct exclu-sion technique と言われるように VSP や左室切開を含めた梗塞巣全体を左室内腔から裏打ちする点である。VSP の被覆が一重であり、パッチの立体構築と左室内腔への縫着を同時に進めるため手技的に難しいとされている。Double patch 法の長所は、前者に比べて手技的に平易であり、VSP を含めた中隔梗塞を二重に被覆できる点である。一方、左室自由壁の梗塞巣には裏打ちがない。Flat & Cone patch を用いた我々の手法は、両者の長所を兼ね備えている。その詳細をビデオ供覧にて解説する。

VS10-5☆AMI 後心室中隔穿孔手術後 1年で側壁に偽性仮性心室瘤を形成し左室形成術を施行した一例

1町田市民病院 心臓血管外科、2社会保険中央総合病院 心臓血管外科

水野 友裕1、三原 茜1、恵木 康壮2

急性心筋梗塞後心室中隔穿孔に対する急性期手術において、Infarct exclusion 法は心筋梗塞と健常部の境界ラインに縫合するため、脆弱な心筋が裂けてシャント血流が遺残やすい。今回、急性心筋梗塞後心室中隔穿孔症例に対し、急性期に Infarct exclu-sion 法を施行したが、術後 1 年の間に前側壁部の左室拡大とともに嚢状心室瘤が形成され、再手術を行った症例を経験したので供覧する。症例は 70 歳、女性。1 年前に突然の呼吸困難のため当院に救急搬送され、左前下行枝閉塞による急性心筋梗塞後心室中隔穿孔と診断され、緊急で Infarct exclusion 法によるシャント閉鎖術、1 枝冠動脈バイパス術を施行された。術後遺残シャント血流はなく、経過は良好であったが、術後 3 か月より、左室の拡大傾向を認めるようになった。術後半年の心臓 MRI では LAD領域の左室璧拡大とともに心尖部側壁に嚢状に突出する心室瘤が見られた。その後自覚症状に変化は見られなかったが、術後 1 年での精査で嚢状心室瘤の明らかな拡大が見られ、破裂の危険があると判断し再手術を施行した。右室前面と左室周囲の癒着は高度で嚢状心室瘤周辺は特に癒着は高度であったため、人工心肺補助下に癒着剥離をした。心拍動下に嚢状心室瘤を切開し左室内を観察すると、嚢状心室瘤はパッチ縫合部から 1cm ほど心基部よりの前側壁に形成されていた。前回手術で縫合されたパッチは、中隔、心尖部領域は梗塞巣を exclusion していたが、前側壁領域で、梗塞巣が exclusion されていなかった心筋梗塞部位から嚢状心室瘤が形成され、さらに心筋梗塞巣が拡大したと考えられた。左室前側壁の切開を広げ、健常部と梗塞巣との境界に 3-0プローリンのマットレス縫合を置き、4×2cm の楕円形ヘマシールドパッチを用いて、左室心尖部の縫縮、形成術を施行した。心機能は良好に保たれ、問題なく人工心肺を離脱した。嚢状心室瘤璧の病理所見で心筋の残存を認め、偽性仮性心室瘤と診断された。術後経過は良好であったが、心エコーでパッチ縫合の針穴からの血流と思われるわずかな左右シャントが見られた。Infarct exclusion 法においては心筋梗塞巣と健常部との境界の見極めが重要であり、心筋梗塞巣を確実に exclusion しえないと術後に心室瘤、左室拡大を引き起こすことがあり注意を要すると考えられた。

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VS11-1☆Ross 手術後のAutograft 拡大、大動脈弁閉鎖不全に対する人工血管内挿Yacoub 変法

金沢医科大学 心臓血管外科

秋田 利明、三上 直宣、水野 史人、岡田 正穂、野中 利通、森岡 浩一

【背景】Ross 手術後、移植された大動脈弁位の肺動脈弁に Valsalva 洞の拡大と大動脈弁閉鎖不全が進行し再手術を必要とする症例が少なからず存在する。そのような症例に対する治療は Bentall 手術が基本であるが、自己弁温存基部置換手術も報告されている。今回我々は大動脈基部の剥離が困難な Ross 手術後の症例に対して大動脈基部を剥離せず人工血管を大動脈に内挿させる Yacoub 手術を行った。Yacoub手術の欠点である弁輪拡大を防止するため人工血管を横断したストリップを大動脈弁下の心室大動脈接合部に固定する大動脈弁形成術も併用した。Ross手術後の大動脈弁閉鎖不全を伴う Valsalva 洞瘤に対する手術治療の選択肢の 1 つになると考えられたので報告する。

【症例】24 才男性。17 才時大動脈弁閉鎖不全に対して Ross 手術が他院で行われた。その際、NCC は弁を含めて切除され、肺動脈弁位に 2 弁の Goretex valveとともに肺動脈再建に用いられた。Valsalva 洞の拡大(φ52mm)と大動脈弁閉鎖不全(II̊)、中等度の肺動脈弁閉鎖不全を認めたため、手術目的で当科に紹介された。

【手術】心嚢内は高度に癒着していた。肺動脈再建に用いられた人工血管の縫合糸が Autograft にかかっていて大動脈基部の剥離を断念した。人工心肺を開始し、心筋保護は初回順行性、以降逆行性に行った。大動脈弁観察すると NCC は多少 Curling し、RCCと LCC は正常な形態だった。RCC が多少逸脱気味だったが Coaptation はまずまずだったので人工血管内挿 Yacoub 手術を行うことにした。左室流出路径は 28mm だったが、手術操作を考えて Valsalvagraft 30 mm を選択した。人工血管を弁下の形に合わせて横断し、4mm 幅の人工血管リングを作成し、大動脈弁下に置き U 字縫合を弁輪をまたぐように12 針かけておいた。Valsalva graft 3 カ所を縦切開し、In situ において Coronary 用の穴を作成した。Yocoub 用人工血管に弁輪下より通した U 字縫合の糸を通して結紮した。それ以降の操作は Yacoub 法に準じた。大動脈遮断解除後 NCC�RCC 間から中等度の AR を認めたが、もともとの手術適応が Val-salva 洞瘤であり、大動脈弁閉鎖不全ではなかったので AVR は行わなかった。止血は良好で無輸血で手術を終了した。術後造影 CT では Valsalva 洞形態は正常化し、冠動脈も良好に造影された。

【結語】人工血管を内挿する Yacoub 手術は、大動脈基部の剥離が不要で Ross 手術後の自己弁温存手術が容易になる術式と考える。

VS11-2☆自己心膜を用いた大動脈弁形成術を併用した大動脈基部再建術(David 手術)の応用

1仙台厚生病院 心臓血管外科、2東邦大学医療センター大橋病院 心臓血管外科

阿部 和男1、山岸 俊介1、吉岡 一朗1、水本 雅弘1、永野 直子1、畑 正樹1、柳沼 厳弥1、尾崎 重之2

David 手術は 1992 年に Tyrone David により始められた術式で、特徴は①自己大動脈弁を温存できること②術後ワーファリンの使用を避けられること等であるが、術後早期~中期の大動脈弁逆流(AR)が問題となることが報告されている。自己弁温存が難しい症例に、David Ⅴ手術に自己弁を切除して自己心膜を用いた大動脈弁形成術を加えた手術を施行し、良好な結果を得たのでビデオにて供覧する。

『症例』症例 54 歳の男性で、心不全で入院し、精査で Sellors Ⅳ度の大動脈弁逆流を伴う大動脈弁輪拡張症を認めた。また腹部大動脈瘤、左総腸骨動脈瘤を指摘された。宮城県沿岸部の島に住んでおり、東日本大震災後薬が無くなり、心不全を発症したことから、ワーファリンの服用はしたくないとの希望があった。

『手術』心機能の低下が著しく、腹部の大動脈遮断は難しいと考え、ハイブリッド手術室にてまず腹部ステントグラフト内挿術を施行した。引き続き、胸骨正中切開にて入り、まず自己心膜を摘出し、0.6% グルタールアルデヒドで 10 分間浸漬処理した。上行大動脈送血、SVC、IVC2 本抜血による人工心肺を開始し、大動脈を遮断。STjunction 部位で大動脈を切開。冠動脈口およびバルサルバ洞をトリミングし、大動脈弁を切除(大動脈弁の接合が悪く floppy valve)した。大動脈基部外側を十分に剥離。大動脈弁を切除後、David Ⅴ手術に準じて、GELWEAVE VAL-SALVA GRAFT30mm を大動脈弁輪部に固定。各交連間の距離を専用のサイザーでサイジングし、それに対応した大きさに自己心膜を専用のテンプレートで型取りし、弁輪に 4-0 モノフィラメント連続縫合で逢着。左室ベントを引いて各弁尖の接合を確認する。左右冠動脈の再建は Carrel Patch 法にて行った。

『結果』術後合併症なく 2 週間程度で退院された。術後 CT で人工血管の吻合形態、冠動脈吻合形態は良好。心エコーで AR は認めなかった。腹部ステントグラフトの留置形態は良好で endoleak はなかった。

『結語』これまで 3 例の AAE 症例に対して、同術式を施行した。3 例とも術後大動脈弁の逆流がなく、順調に経過している。AVP はグルタールアルデヒドで処理した自己心膜を用いて大動脈弁を弁尖ごとに新たに作成する術式で、東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科尾崎教授が考案した、あらゆる大動脈弁疾患に適応しうる方法である。術後抗凝固療法が不要。

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VS11-3☆感染性心内膜炎に対して心膜を使用した大動脈弁再建術

東邦大学医療センター大橋病院 心臓血管外科

尾崎 重之、河瀬 勇、内田 真、山下 裕正、野澤 幸成、松山 孝義、高遠 幹夫、萩原 壮

【目的】当科では大動脈弁狭窄症を中心に大動脈弁疾患に対して自己心膜を使用した大動脈弁再建術

(AVrC)を積極的に施行している。感染性心内膜炎に対しても出来るだけ異物を使用しないで手術をすることが望まれている。今回、感染性心内膜炎に伴う大動脈弁閉鎖不全症に対する大動脈弁再建術について報告する。【対象と方法】2007 年 4 月から 2011年 9 月の間に 404 例の大動脈弁疾患に対して AVrCを施行した。そのうち感染性心内膜炎が 12 例、感染による人工弁機能不全症例が 2 例であった。年齢は63.4±10.5 歳、男性 9 例、女性 4 例であった。術前の外科的弁輪径は 20.3±3.6mm であった。基本的な手術手技はまず、自己心膜切除後、心膜をグルタールアルデハイドにて 10 分間処理する。弁尖切除後、自己開発した弁尖サイザーにて各交連部間の距離を計測する。その計測値に対応した大きさの弁尖をテンプレートを使用して、グルタールアルデハイド処理した自己心膜にて作成する。作成した弁尖を 4�0 モノプロピレン糸を用いて弁輪部に縫着する。弁輪部には感染を予防するためにバンコマイシンの局注とピオクタニンの塗布を行った。人工弁機能不全症例に対してはウマ心膜を使用した。【成績】術後経過は良好で、感染の再発は認めなかった。術後 2.5 年経過して AR はすべての症例で trivial 以下であった。圧格差も 13.3±6.1mmHg と低値であった。手術死亡はなく、再手術もない。【結語】急性期に再手術を必要とした症例は一例も認めず、短期成績は良好であった。大動脈弁再建術は多彩な形態を持つ大動脈弁疾患に対しても適応可能である。

VS11-4☆高齢者・狭小弁輪を伴う大動脈弁閉鎖不全症に対する大動脈弁形成術の一例

聖路加国際病院 心臓血管外科

桑内慎太郎、阿部 恒平、伊藤 丈二、山崎 学、渡辺 直、川副 浩平

高齢者の大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対しては、生体弁による大動脈弁置換術(AVR)が推奨されている。しかし狭小弁輪を有する患者に対し AVR を行う際、次の 2つの問題がある。1)弁輪拡大術を行うことによる手術侵襲・リスクの増大2)機械弁しかサイズが合わなかった場合、術後ワーファリン導入による QOL 低下このような患者に対し大動脈弁形成術を行うと、弁輪拡大術の必要もなく、また術後ワーファリン投与も必要としないため、有益であると思われる。今回、我々は 73 歳女性の狭小弁輪を有する AR の患者に対し、自己心膜を用いて大動脈弁形成術を施行したので報告する。症例73 歳 女性 147cm 36kg。2008 年から高血圧と心雑音を指摘。2009 年より AR と診断され follow 開始。2011年に入り、NYHA II の症状および心エコーにて AR の増悪と左室拡大を認め手術となった。術前検査:ECG : SR。CXp : CTR 49%。心エコー:LVDd�s 52�33mm、IVST 8mm、PWT 7mm、EF 65%、AR severe、MR moderate、大動脈弁は 3 尖で、3 弁尖ともに curling を伴う短縮あり。AR jet は中心から心尖部方向に認めた。PG 26mmHg。Annulus : 17.4mm、Valsalva : 30.7mm、STJ : 23.9mm。手術胸骨正中切開。自己心膜を 3×5cm の大きさで採取し0.7%Glutaraldehyde 溶液にて固定。上行大動脈送血、RA 脱血にて人工心肺を確立。大動脈遮断の後、逆行性冠還流にて心筋保護液を注入。心停止後、大動脈切開。以後は順行性・逆行性を用い、心筋保護を行った。大動脈弁は術前診断通り、3 尖で、すべての弁尖が退縮変性しており(LCC>RCC>NCC)、NCC が curling。弁高は NCC 17mm、RCC 12mm、LCC 11mm であった。自己心膜を raphe の部分で 10mm 高になり、交連部に向かって taper していくよう舟形に形成。6�0 polypropyl-ene 連続縫合にて、各弁尖に縫着し、弁高を補った。その後、各自己心膜の中央(Arantius body に相当)を 7�0polypropylene にて縫縮した(central plication)。出来上がりのでは弁高は NCC 19mm、RCC 17mm、LCC17mm であった。大動脈切開部を閉鎖し、遮断解除。人工心肺からの離脱は容易。無輸血にて手術終了。AXC 120min、CPB 150min。術後心エコーLVDd�s 41�29、IVST 10、PWT 9、EF 55%。AR trivial、MR mild。PG 11.7mmHg。術後経過は良好で、 合併症なく 8POD に自宅退院した。自己弁を温存しつつ不足している弁組織を追加するcusp extension 法は自己心膜の劣化に伴う影響を最小限にとどめる為有効な方法であると思われる。

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VS11-5☆先天性大動脈二尖弁に対する弁形成術

小牧市民病院 心臓血管外科 弁膜症センター

澤崎 優、泊 史朗、井澤 直人、島田 康亮

先天性大動脈弁二尖弁(BAV)による大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対する弁形成術は未だ普及に至っていない。術式の指標が示されていないことが再現性に乏しい理由である。今回、弁尖縫縮と吊り上げの程度を計算する formula を見いだしたので報告する。

【対象および方法】1997 年から 2011 年に弁形成術を行った BAV による AR8 例を対象とする。年齢は平均 35±14 歳。男女比 7 : 1。病変はいずれも Raphe を有する型で、前後型が 7 例、左右型が 1 例であった。術式の基本は三角切除で、cusp 自由縁の長さが対側の cusp と同じになるようにした。症例により弁輪形成と STJ縫縮を追加した。7 例で Gore�Tex による cusp sus-pension を追加し、3 例ではその長さを STJ の直径に関連づけて決定した。STJ の縫縮は 1 例に行った。

【結果】8 例中 2 例が AR の残存のために 2nd pump run となった。1 例は人工弁置換としたが、symmetric pro-lapse が原因であった。弁中央部における coaputa-tion deapth は 6.2mm と浅かった。他の 1 例は、sus-pension に用いた Gore�Tex の結紮が解けていたため、再弁形成した。この症例を含めて 7 例(87.5%)に形成を完遂出来た。入院死亡や合併症は無かった。術後経過観察は 1 年 1 ヶ月から 15 年 1 ヶ月(平均 5年 5 ヶ月)で中等度以上の逆流の再発はなく、再手術例もない。cusp の自由縁の距離を Sino TubularJunction(STJ)の直径と同じとした例では、ARは制御できたものの、術後平均圧較差 14.5mmHgとごく軽度の狭窄を呈した。STJ の直径+1mm とした 2 症例では AR を制御できかつ狭窄を呈さなかった。成功例 7 例の coaputation depth は平均 11±3mm と十分に深かった。

【結語】先天性大動脈弁二尖弁による大動脈弁閉鎖不全症に対する弁形成術は、三角切除術のみでは不十分な事があり、cusp suspension を追加することで再現性のある定型的な術式となりうる。その際に、STJ の直径(D)と cusp の自由縁の半径(d)を、d=D�2+1 の比率にすることが適切である。

VS12-1僧帽弁輪近傍に形成された下壁心室瘤の治療経験

独立行政法人国立病院機構 埼玉病院

林 一郎、笠原 啓史、新堀 立

心筋梗塞後に形成された左心室瘤に対しては exclu-sion 法を用いた Dor 手術や短冊状フェルト等を用いて直接閉鎖を行うのが一般的であるが、僧帽弁輪近傍に形成された下壁心室瘤の場合、これらの方法では僧帽弁輪に変形が起こり僧帽弁閉鎖不全症の原因となる危険がある。一方楕円形のパッチを用いてパッチ閉鎖術を行えば僧帽弁輪の変形の予防は可能であるが、この方法では左室が拡大している症例では左室を縫縮することが困難となる。そこで弁輪の変形を起こさないように僧帽弁輪を底辺とした三角形のダクロンパッチを用いて左室瘤を閉鎖し僧帽弁機能の温存と左室の縫縮が可能であった 1 例を経験したので報告する。

[症例]70 歳男性。糖尿病、高血圧、高脂血症にて他院に通院中、深夜に前胸部痛が出現しショック状態となり緊急入院。冠動脈造影検査にて右冠動脈に完全閉塞を認めサイファーステントを挿入、経過は良好であったために退院となった。術後の CT 検査で左室下壁に軽度の嚢状瘤を認め、一年後のフォローアップ CT で心室瘤の拡大を認めたため手術目的で当科に紹介となった。入院時の心臓超音波検査ではLVEDd�Ds は 58�43mm、EF は 50% で僧帽弁閉鎖不全は軽度であった。

[手術]胸骨正中切開下に心膜を切開すると心嚢内は全周性に軽度の癒着をしていた。可及的に癒着剥離を行った後に人工心肺下を確立し左室下壁に嚢状に突出する心室瘤の周囲を剥離した。上行大動脈遮断、順行性の心筋保護液にて心停止、逆行性の冠灌流カテーテルを挿入し以降心筋保護液は逆行性に注入した。左室瘤を切開すると、瘤は僧帽弁輪に近接しており周囲の心筋組織は脆く心室瘤の閉鎖には僧帽弁輪の組織を利用する必要があると判断した。僧帽弁輪に左室外側からプレジェット付き 3-0 プロリンでマットレススーチャーを数針置きこの部位は縫縮させないようにほぼ同じ長さに形成した三角形のダクロンパッチの一辺に縫着し、残りの 2 辺は左室自由壁に同様に糸をかけて左室を短軸方向に縫縮するように心室瘤の閉鎖を行った。人工心肺時間は 114分、大動脈遮断時間は 106 分であった。

[結果]術後経過は良好で術後の僧帽弁機能に変化はなく、LVEDd�Ds は 50�42mm であった。

[まとめ]今回の症例のように僧帽弁輪近傍の心室瘤では弁輪の組織を利用して三角形のパッチを充てることにより僧帽弁輪を変形させずに左室瘤を閉鎖し左室を縫縮することが可能である。

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VS12-2☆石灰化した左心室瘤に対する石灰化温存左室形成術

岐阜県総合医療センター 心臓血管外科

森 義雄、初音 俊樹、梅田 幸生、滝谷 博志

症例、58 歳、男性、陳旧性心筋梗塞、左室心室瘤(瘤内血栓疑い)、不安定狭心症に対して手術適応として紹介された。【手術】胸骨正中切開にて心臓を露出した。心臓には、心尖部に癒着を認めた。左内胸動脈(LITA)の性状は良好で free flow も良好で使用可能と判断した。送血管 20Fr を上行大動脈、脱血管

(34×48F 2�stage)を右心耳から右房へ挿入し人工心肺を確立した。大動脈を遮断後、心筋保護液を順行性に注入し、心停止を得た。右上肺静脈より左室ベントを挿入後、左室瘤を切開した。左室前壁 LADの左側を心尖部より 6cm まで左室前壁を切開し、内腔を確認すると前壁心尖部すべてと中隔の前壁寄り1�3 まで梗塞の強固な瘢痕となり、中隔寄りの左室瘤壁には板状の石灰化を認めた。術前指摘されていた血栓は認めず、梗塞の部位より瘤切除より Over-lapping 手術の方が左室の形態が良好となると判断した。術後の VT 予防のため梗塞巣と正常心筋の境界部へ cryoablation を全周に施行した。MR はなく、乳頭筋間距離が 25mm 程度であったので、乳頭筋接合術の適応はないと判断した。切開した左室瘤壁で左室瘤を閉鎖するように、左室壁(LAD より 1cm離して)を Felt strip(1.65mm 厚)で補強して線形に縫縮することとした。板状の石灰化部は切除せずに、錐で石灰化部に孔をあけ、3�0 prolene inter-rupted mattress suture(9 針)をかけ瘤を閉鎖し、切開縁を 3�0 prolene にて連続縫合して切開壁からの止血を確保した。結果的には 3cm 程度 overlap-ping されたような形(直径にして 1cm 縫縮)になった。中隔を exclusion すると開存している LAD が閉塞する危惧があったため、中隔 1�3 には瘤を遺残させることになった。心室縫合糸を牽引しつつ、Cxを吻合可能な位置に置き、吻合予定部の中枢・末梢にエラスティック糸をかけて牽引遮断し、切開した。LITA との末梢側吻合を、8�0Prolene 連続縫合にて施行した。流量は、30ml�min で良好であった。人工心肺時間:171min 大動脈遮断時間:117min であり、術中、TEE では問題なく、肺動脈圧も正常範囲内で、CI も良好であった。術後の UCG 上、LVESV

(ml)は術前 141 から術後 117 へ、LVEDV(ml)は術前 216 から術後 176 へ減少した。【結語】左室瘤壁の石灰化を除去することなく、左室形成術(LV over-lapping 手術)、左室 cyroablation、回旋枝への LITAによる冠動脈バイパス術を施行し、良好な結果を得た。

VS12-3☆左室切開を必要としない左室瘤切除術:LeftVentricular Aneurysm Plication

東京女子医科大学 心臓血管外科

津久井宏行、磯村 彰吾、久米 悠太、宮本 真嘉、岩朝 静子、梅原 伸大、齋藤 博之、冨岡 秀行、西中 知博、齋藤 聡、青見 茂之、山崎 健二

左室瘤切除術には、linear closure 法、circular patch法、endoventricular patch 法など様々な術式が存在するが、いずれも左室切開を必要とする。今回、我々は左室瘤を左室腔内に埋没させた状態で固定することにより、左室切開を必要としない左室瘤切除術、Left Ventricular Aneurysm Plication を考案したので報告する。59 才男性。高血圧、脂質異常症、糖尿病、脳梗塞の既往を有する。54 歳時に 3 枝病変を伴った急性心筋梗塞に対し、PCI が施行された。58 才時に、腎機能障害に伴う血液透析導入された。今回、左回旋枝ステント留置部位の完全閉塞と右冠動脈 75% 狭窄とともに、左室後下壁の左室瘤(25 x 21 mm 大)を指摘され、当科紹介となった。術前 SPECT にて、左回旋枝領域の viability が認められなかったため、CABG は右冠動脈のみとし、左室瘤切除術を同時に施行することとした。麻酔導入後、経食道心エコーにて、左室瘤内に血栓が存在しないことを確認した。胸骨正中切開にてアプローチし、体外循環確立後、心拍動下に心臓を脱転すると、左回旋枝領域に一致して、左室瘤の突出が確認された。瘤壁は、菲薄化し柔軟であったため、用手的に左室腔内に容易に埋没させることが可能であった。瘤壁を左室腔内側に埋没させた状態で、2�0 モノフィラメント糸にてマットレス縫合と連続縫合にて固定し、左室瘤切除術 Left Ventricular Aneu-rysm Plication を完成させた。その後、大伏在静脈を用いて、右冠動脈に CABG を施行した。術後確認造影にて、左室瘤消失とグラフト開存が確認された。ホルター心電図では、不整脈の発生は認められなかった。術後経過良好につき、術後第 15病日に軽快退院となった。今回用いた左室瘤切除術、Left Ventricular Aneu-rysm Plication は、左室瘤切開を必要としないため、簡便で、出血リスクを軽減させることが可能である。本術式の適応にあたっては、左室瘤内に血栓が存在しないこと、左室瘤が比較的小型であること、瘤壁が柔軟性を有していることが重要である。今後も症例を重ねて、更なる工夫を行っていきたい。

Page 27: VS1-1☆ VS1-2☆ Aorto Mitral continuityで連続する大動脈弁 透析 …

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VS12-4☆重症心不全に対する第 3世代植込み型人工心臓HeartWare(HVAD)の本邦初の使用経験

大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科

西 宏之、坂口 太一、宮川 繁、吉川 泰司、福嶌 五月、斎藤 俊輔、上野 高義、倉谷 徹、澤 芳樹

【はじめに】新しい補助人工心臓である HeartWare(HVAD)はポンプ本体の容量が 50ml と手の平サイズでポケットの作成が不要で、ドライブラインも 4.2mm と非常に細く、10L 以上の高流量が可能な第 3世代植込み型 LVAD であり、欧米での良好な成績も報告されてきている。今回、われわれは本邦初のHVAD 植込み術を経験したので報告する。

【症例】36 歳、男性。拡張型心筋症の症例。2010 年より心不全を発症し、種々の内科的治療後に心移植適応と判断され、カテコラミンの持続投与を受けており、今回 LVAD 装着目的で当科入院となった。心エコー上 LVDd�Ds=84�76、EF=20% であった。

【手術手技】胸骨正中切開にて開胸。上行大動脈送血、右心房脱血にて人工心肺を開始した。この間にバックテーブルで HVAD 本体に専用の保護用外筒と 10mm の人工血管を装着し、ドライブラインに抗生剤を塗布して、ポンプを回転させてテストを行った。心拍動下に心尖部を挙上して HVAD 挿入部位を決定した後に 12 針のフェルト付き 2�0 Ethibond を通常の手技にて縫着し、専用のカフリングを装着。コアリングデバイスを用いて心尖部を punch out して内腔に血栓のないことを確認した後にポンプ本体をAir が混入しないように向きに注意を払いながら装着した。カフと本体の装着は容易でネジにて固定を行った。続いて人工血管の長さを合わせて大動脈を部分遮断し、4�0 prolene 連続縫合にて人工血管を上行大動脈に吻合した。人工心肺からの離脱は良好で初期から 5L 近くのフローが可能であった。人工心肺時間 96 分、手術時間 3 時間 28 分。術後経過は良好で第 34 病日に軽快退院となった。

【まとめ】ポケット作成が不要で、高流量が可能なHVAD は手術時間、入院期間の短縮も図れる有用なデバイスであると考えられた。手術手技上は簡便であるものの種々のピットフォールがあり、そのような手技上の工夫をビデオでは供覧する。

VS12-5☆体外設置型ABIOMED社製 AB5000 から植込み型サンメディカル社EVAHEARTへのConversion

東北大学病院心臓血管外科

秋山 正年、本吉 直孝、川本 俊輔、齋木 佳克

植込型補助人工心臓(VAD)使用可能となったが、Intermacs level 1 など最重症例では、まず体外設置型 VAD で、その後の改善を見て植込み型 VAD への conversion が可能となる。Nipro 社製 VAD とTERUMO 社 製 DuraHeart の Inflow conduit とOutflow graft は互換性があるが、互換性のない場合はシステム全交換を要する。ABIOMED 社製 AB�5000 は体外設置型 VAD で、国内治験が終了し、販売承認申請中である。AB5000からサンメディカル社製 EVAHEART へ conver-sion した症例を経験したので供覧する。

【症例】拡張型心筋症で AB5000 装着し 1 年 5 カ月。経過中 conduit 皮膚貫通部の培養検査は陰性。装着後 1 年 2 カ月から溶血性貧血に加え肝機能障害、腎機能障害が出現。精査で Inflow conduit の左室後壁への近接に伴う VAD 流入障害が原因だった。患者は長期入院に限界を感じ、植込み型 VAD への con-version を希望したため EVAHEART 装着を施行。再胸骨正中切開と、左室心尖部周囲の視野確保、剥離操作の簡素化のため左開胸を加えた。3D�CT 所見から左第 6 肋間開胸で Inflow cuff を露出することにした。体位は軽度右側臥位とした。まず左開胸して Inflow cuff を剥離。次いで再胸骨正中切開し、Outflow graft を露出。上行送血、右房脱血で人工心肺を開始し AB5000 を停止。conduit を除去してEVAHEART ポンプポケットを作成。AB5000 graftを全て切除し、 EVAHEART outflow graft を縫着。Inflow cuff 根元部分の径が EVAHEART の Inflowconduit 径とほぼ同じであることが分かり、Cuff 全摘は不要だった。Cuff 左室接触部は残し、左室内のwedge thrombus を切除後、AB5000 の残存 cuff の外側から運針して EVAHEART cuff を縫着した。Inflow conduit を左室内に挿入し、ポンプ本体は In-flow conduit が僧帽弁側を向くように左胸壁に固定した。ポンプと Outflow graft を接続した。ドライブラインは腹直筋後鞘、腹膜間を通し、右上腹部から体外に誘導。上行大動脈に Air 針を立て、Trender-enburg 体位として EVAHEART 駆動を開始。ポンプ流量は 5~6 L�分。術翌日人工呼吸器離脱。近日退院予定。

【結語】AB5000 から EVAHEART への切り替えの経験をした。Inflow cuff を残したままで EVA-HEART Inflow conduit 挿入が可能だった。左開胸の追加により Inflow conduit の操作、wedge throm-bus の確認とその摘出が容易だった。左開胸と正中切開による植込み型 VAD への Conversion は術中の視野確保、心臓表面の剥離操作を縮小する有用な方法である。