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開業からわずか10年で

行なった戦略的投資

内藤　

今回リノベーションを行なった

「JALシティ那覇」は２０１１年に取

得し、５年ほど運用してきました。開業

10周年を迎え、「JALシティ那覇」か

ら改修の提案をいただいたのが、今回の

プロジェクトの起点。もともと「JAL

シティ那覇」はビジネスマン向けのホテ

ルでしたが、ここ数年、インバウンド客

も含め、観光客が増加し、「ホテルが提

供しているサービス」と「お客様のニー

ズ」がかみ合わなくなっていることが大

きな課題となっていました。競合ホテル

の出店に対抗すべく、さらなる集客とパ

フォーマンスの向上を目指して戦略的投

資として山下PMCと改修プロジェク

トをスタートしました。

深瀬　

お話をいただいた際は、建って10

年で改修というのは正直、早いと思いま

したし、施設もまだまだ綺麗でした。し

かし、状況も理解できましたし、やらせ

今、ホテルリノベーションは大きな転換期を迎えようとしている。今や単なる改装では成果を上げることが難しくなっており、ターゲットとする顧客層の明確化とオペレーションの効率化が改修後のパフォーマンスを大きく左右する時代に変わりつつある。では、いかにしてプロジェクトを成功させることができるのか？鍵となるのは「パートナーシップ」と「プロフェッショナリズム」だ。その成功例が 2018 年リノベーションを果たした「JAL シティ那覇」と「ロワジールホテル＆スパタワー那覇」。両ホテルの AMである「ジャパン・リート・アドバイザーズ」とPM・CMを担当した「山下 PMC」に、その成功のストーリーを聞いた。

HOTEL JAL CITY NAHA

OKINAWA

LOISIR HOTEL NAHA

オーナーに徹底して寄り添うマネジメントで最短・最上のリノベーションを実現

「JALシティ那覇 」「ロワジールホテル＆スパタワー那覇」

株式会社山下 PMC事業創造推進本部　第四部ホスピタリティ・コンサルティング部門チーフプロジェクトマネージャー

深瀬 章子氏Pro f i l eコンストラクション・マネジメント（CM）、プロジェクト・マネジメント（PM）専門のリーディングカンパニー。予算管理、工期管理のみならず、企画立案から設計・施工、建築の運営管理に至るまで、ワンストップでクライアントに寄り添い、ベストな布陣でプロジェクトを推進。

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柔軟な発想と小回りの効く感じをもとめ

ていたので、実績のある個人デザイナー

を選びました。デザイナーにはコンセプ

トを十分に理解してもらい、見える部分

＝デザインに特化した仕事をしてもら

い、山下PMCはそのプランを実現す

るためのバックアップ体制を万全に整え

ました。社内には設計事務所、設備会社、

ゼネコンなどからの転職者が多く、それ

ぞれに積み重ねてきたキャリアをプロ

ジェクトごとに発揮できる、という体制

がとれるのです。デザインマネジメント

から施工者選定、工事CM、インテリ

アや備品の手配まですべてワンストップ

で行えるチーム力も強みです。

内藤　

着工までの２年、最低でも月に１

ジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社アセット・マネジメント 第２チーム部長

内藤 武士氏Pro f i l e全国のホテルをはじめ多様な不動産を投資対象としている総合型の不動産投資法人「ユナイテッド・アーバン投資法人」の資産運用会社

「ジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社」にてホテル部門のアセットマネージャーを務める。

度、山下PMCのメンバーと沖縄に飛

び、GMだけではなく、マネージャー

クラスも交えてディスカッションを重ね

ることで、ホテルとしてのあり方まで共

有でき、そこから自ずとリノベーション

の方向性も見えてきました。当初は「本

当に数字が上がるのか？」という不安も

も、プロジェクト決定のトリガーになり

ました。“自分が働くホテルにロイヤル

ティを持てるか”ということは、最終的

に“数字につながってくる”大きなファ

クターだと感じています。そういった“想

い”の部分もすべて山下PMCと共有

することからプロジェクトをスタートし

ました。

信頼関係を構築し、

ベクトルをひとつにすることが

数字へとつながっていく

深瀬　

表層的なリノベーションを行うの

は簡単ですが、一番大切なのは“高い商

品価値を生み出すこと”です。その商品

価値とは何なのか？をきちんと理解し、

目に見えない価値を可視化するのが私た

ちの仕事です。オーナーとホテル、私た

ちとで時間をかけて何度も様々な話し合

いを重ねさせてもらえたことで、徐々に

その輪郭が見えてきました。こういった

時間こそ、プロジェクトの根幹を作るう

えで、非常に大切だと考えています。

　

その話し合いの中で“営業を続けなが

ら”“収益をできるだけ落とさず”とい

う目標が見えてきましたので、「JAL

シティ那覇」の改修は“時短”というテー

マをキーワードに据えました。

　

具体的には、本来こういったプロジェ

クトの場合、デザイナーもコンペで選定

しますが、その選定だけで最低２ヶ月は

かかってしまいます。今回は“一緒に作

り上げていく”という姿勢から生まれる

ていただけるなら、お客様に喜んでいた

だけて、より収益性の高いものにしなけ

ればと。内藤さんとは以前も別のプロ

ジェクトでご一緒させていただいていた

ので、チーム一同、また一緒に楽しくお

仕事できるなら！と、喜んで再集結しま

した。

内藤　

プロジェクトを決定するまでは慎

重に検討し、お客様の評価なども大いに

参考にしました。「JALシティ那覇」

は最寄り駅より徒歩８分と距離があるの

で、ビジネスマンから“ファシリティは

いいが、立地がイマイチ”という評価を

受けていました。しかし一方で、国際通

りという繁華街の真ん中にあることで、

観光客には“最高の立地”として評価さ

れていました。つまり、お客様のニーズ

とホテルがマッチしていなかったという

状況がそこにあったんです。

ビジネスで来たのに利便性が悪い、観

光で来たのにリゾート気分が盛り上がら

ない、これではお客様に快適に過ごして

いただけない。さらに、お客様のニーズ

に合ってないことを肌で実感しながら、

スタッフも日々接客しなければならない

…。ホテルとゲストのミスマッチは、ゲ

ストはもちろん働く人にとっても、スト

レスを生んでいるようでした。

個人的な話になりますが、私が２年前

に初めてホテルを訪れた際、スタッフの

みなさんから笑顔で迎えられて、スタッ

フのホテルへの愛情を強く感じたこと

136

多少ありましたが、検討を重ね具体的な

モックアップが出来てきて「これは間

違いなく国際通りで一番のホテルにな

る」と確信が持てました。これだけのプ

ロジェクトになると、最初に組んだメン

バーで成果が決まるといっても過言では

ありません。山下PMCの存在は有り

難かったです。

深瀬　

ビジネスから観光へ、リノベー

ションの方向性が明確になると、具体的

なプランをご提案しました。客室の広さ

は変えられないので、利便性を向上させ

るために、まず、ビジネス用に設置され

ていた大きな机をなくし、ベッドの長さ

もコンパクトにしました。テレビも壁掛

けにして、冷蔵庫も小さく。こうして、

お客様がスーツケースを広げられるス

ペースを確保しました。

　

また、常設の３人部屋、４人部屋を作っ

たというのも今回のポイント。インバウ

ンド客はファミリーが多いですし、常設

しておくことでエキストラベッドの出し

入れが不要となり、オペレーションの効

率も上がります。

内藤　

客室数は３０４室から３０２室に

なりましたが、観光客のホテルでの快適

性を優先し、家具の配置や大きさを変更

したことで収容人数が増えました。

　

ホテルとの話し合いの中で、ADR

は１５００円、稼働率２%アップとい

うのをお互いの目標にして投資計画をた

てましたが、２０１８年７・８月も昨年

同月比より、確実に数字が上がり、きち

んとターゲット層に訴求できていると自

負しています。

宴会場を客室に、

ダンスホールを宴会場にし

稼働率をアップ

内藤　「ロワジールホテル＆スパタワー

那覇」は２０１６年２月に取得した物件

でした。投資法人としては初のフルサー

ビス型ホテルとして重要なアセットと捉

えており、２０２０年に予定されている

那覇空港の拡張も見据えて投資すること

にしました。こちらのテーマは“施設の

有効活用”。稼働率が低いスペースを、

収益を出せるスペースに変えることが目

的でした。まずは施設のウォークスルー

をして、有効活用できていていないとこ

ろをピックアップしました。「ロワジー

BEFORE

AFTER

HOTEL JAL CITY NAHA -- Banquet Hall --

137

状の部分も簡単に撤去できると思ってい

たら、躯体が上がっていてそう簡単には

いかない。山下PMCには技術的制約

をひとつひとつ検証してもらえました。

深瀬　

改修工事は開けてみないとわから

ない、ということが多々起こるんです。

今の施工方法だと、先々の改修や変更も

見据えて行うというのが当たり前なので

すが、昔は作って終わり、という感じの

工事が多かった。配管もいろんなものが

クロスしていたり、梁の中にダクトが貫

通していたり。もっと昔の物件だとアス

ベストが使われていたりすることもあり

ますし。何が出てくるかわからないのが

改修工事なんです。

内藤　

コンプライアンスの考え方も今と

昔では違いますよね。そういった状況も

事前にしっかり把握していただいた上

で、工事計画が立てられたので、安心で

きました。

緻密な事前調査により

工期遅れゼロを実現！

深瀬　

当社の強みは、技術スタッフなん

です。事前にしっかり調査をし、きちん

と技術的なシミュレーションができた上

で、工事業者もそれを得意とするところ

に声掛けします。

　

また、社内に“賢け

んじん人さん”と呼ばれて

いるシニアのスペシャリスト集団がいる

のも心強い点です。彼らはゼネコンの現

場所長とか、海外で長年経験を積んで来

られた方とか、それはそれは錚々たる

キャリアの持ち主。ただならぬ現場を渡

り歩いてこられた経験をお持ちですの

で、とにかく現場に強い、頼もしい存在

BEFORE

AFTER

ルホテル＆スパタワー那覇」は１９９３

年、ちょうどバブルが終わった頃に開業

したホテルで、館内にディスコスペース

があったんです。時代でしょ（笑）。ミラー

ボールがついていて、階段状にボックス

席があって。開業当時はニーズがあった

のでしょうが、今では有効活用できてい

ないスペースになっていました。

　

また、宴会場の稼働率の低さという課

題もありました。稼働が低い宴会場は思

い切って客室に、ダンスホールは多目的

な宴会場に改装したいと山下PMCに

相談しました。

深瀬　

宴会場を客室にする場合、各部

屋への設備工事が必要です。しかし、

弊社で下見させてもらったところ、宴

会場の下が温泉。温泉はお客様が滞在

中に行くのを楽しみにされている場所

なので、絶対に営業を止められないと

いう状況。どうやって工事を進められ

るか、というのが最大のミッションに

なりました。

内藤　

宴会場から客室へというのはこち

らからの要望。それを山下PMCに確

かなものにしてもらいました。もともと

建物も古いですし、図面も完全には揃っ

ていなかった。開けてびっくりするよう

なことが次から次へと出てきて（笑）。

宴会場の下が温泉、じゃあ、上は？と見

てみると、プールのろ過装置とかいろん

なものがあったり。ダンスホールの階段

BEFORE

AFTER

HOTEL JAL CITY NAHA -- Rooms --

HOTEL JAL CITY NAHA -- Entrance --

138

業しながら工事を行うので、その間は商

品を止めてしまいますよね。２週間で終

わるはずの工事が、３週間、４週間と伸

びると、たとえ工事費は変わらなくても、

売上が落ちていきます。

深瀬　「ロワジールホテル＆スパタワー

那覇」は３段階にわけた玉突き工事が必

要でした。宴会場がなくなるので、ダン

スホールを宴会場にして朝食会場を作

る、その後ブライダルサロンと新しい事

務所を作る、最後に宴会場を客室にする、

どれかひとつの工期がずれると、その後

すべてのスケジュールがずれていくとい

うのがわかっていたので、事前の調査を

徹底的に行い、工程も細かくわけて、１

日のズレもなく進めることができまし

た。ちなみに「沖縄で工事が遅れないの

は奇跡的！」と言われました（笑）。沖

縄は、ホテルの建設ラッシュで職人の取

り合いがあり、また「沖縄時間」もある

ので、なかなか計画通りに進まないのが

実情です。

内藤　

その徹底した管理は「JALシ

ティ那覇」でも発揮されていました。計

画上の工事終了日の翌日から全室を販売

していて、しかも満室稼働、これは絶対

に遅れられない、という状況でした。で

も、山下PMCの工程管理の正確さを

実感していたので、ホテル側もこれは大

丈夫というのがわかっていて、安心して

販売できたんです。当社は資金確保する、

企画立案はホテルを交えて協議する、そ

して技術的なノウハウは山下PMCを

信頼してお任せするこの役割分担がきち

んとできていたことが、計画どおりの工

程実現の要因でしょうね。

深瀬　

ありがとうございます。

常設のビュッフェで

クレーム解消＆

オペレーションの効率化

内藤　「ロワジールホテル＆スパタワー

那覇」の宴会場の一つを18部屋の客室に

コンバージョンしました。その内、ロフ

ト付きのメゾネットタイプが８部屋ある

んです。これは面白い試みでした。

深瀬　

ロフトってなかなか作れませんよ

ね。しかし、今回はもともとが宴会場だっ

たたけに、天井高があったんです。ベッ

ド数も増やせるし「ロフト作りません

か？」とご提案したところ、柔軟に取り

入れていただきました。

内藤　

改修後、ロフトタイプの部屋はか

BEFORE

AFTER

です。

　

プロジェクト・マネジメントというと、

机上の仕事のように聞こえるかもしれま

せんが、うちはあくまで現場主導。“賢

人さん”の知恵も借りながら、常に具

体的にどうしたらいいかを考えてプラン

を立てます。

内藤　

発注する側は建築のプロではない

ので、ゼネコンと相対する時って、ある

意味“言いなり“になってしまう。「で

きません」と言われたら「そうなのか」

と思わざるを得ないんです。そんな時、

セカンドオピニオンとして山下PMC

に相談できるのは助かります。工事規模

にもよるとは思いますが、今回のような

大きなプロジェクトだと、そういう信頼

できる存在があったことは、非常に助か

りましたし、最終的にそれがホテル及び

ホテル利用者のためにもなると感じまし

た。

深瀬　

価格にしても、工期にしても、積

み上げてきた経験があるからこそお伝え

できる情報があります。お客様の『施設

参謀』として、各部門のスペシャリスト

が無理難題を「どうやったら実現可能か」

と知恵を出してカタチにつくりあげてい

きます。

内藤　

実は今回の２つのリノベーショ

ン、工期が１日たりともずれていないん

です。これは本当に素晴らしいこと。営

LOISIR HOTEL NAHA -- Banquet Hall --

139

なり人気となり、稼働率も高いようです。

同じく、新しい宴会場も好評です。厨房

からの料理を提供する動線が短縮され、

オペレーション効率が上がりました。

深瀬　

今回、宴会場に「常設のビュッ

フェ」を作ったことも大きかったのでは

ないでしょうか。最近、特に繁忙期は朝

食会場がレストラン１箇所だと足りない

ことが多い。そうなるとメインのレスト

ランと宴会場の差が激しくなってしまっ

て「どうして私たちはこっち（宴会場）

なの？」というお客様の不満につながり

やすくなる。そんな状況の解決策として

ご提案したのが「常設のビュッフェ」で

した。

内藤　

可動式の壁で閉じると、壁の向

こうにビュッフェがあるとはまったく

わからなくなり、通常の宴会場として

ご利用いただける。今までだと、宴会

場を朝食会場にするためには、机を配

置し、料理を並べ、ということを毎日

繰り返さなくてはならず、空間もリゾー

ト感にとぼしく、オペレーション的に

も効率が悪かったのですが、常設にす

ることですべてが解決され、お客様の

満足度も向上しています。

—

最後に、編集部からですが、多様化

するマーケットの中で、今後どういっ

たホテル作りが必要だとお考えになり

ますか？

内藤　

企業としては、当たり前のことで

すが「きちんと収益が上げられるホテ

ル」でしょうか。どんなカテゴリーのホ

テルであろうと「コンセプト」「お客様

のニーズ」「ファシリティ」「提供する

サービス」の４つがきちんとマッチして

いれば、必ず数字は上がってくると認識

しています。既存のホテルで何かうまく

いっていないのであれば、４つのうちの

何かひとつが足りないのだと思います。

私たちの手で、その「何か」をプラスで

きる、そこにポテンシャルがあると判断

できる物件かどうかを見極めて投資を

考えます。

深瀬　

最近、改修の相談を頂く際、「イ

ンスタ映えのするフォトスポットを考え

てもらいたい」、という要望をよく耳に

します。でも、一度インスタにあげたら

リピートはしません。一過性のバリュー

ではなく、本当に必要とされるスペック

の見直しが大切だと思います。また、と

なりのホテルのマネをするのもやめま

しょう（笑）。「皆がやっているから」と

いう基準でスペックを決めるのは危険で

す。日本では１泊５０００円のホテルで

もウォシュレットがついているし、やた

ら大きな空気清浄機を置いています。備

品も、ないとクレームになってしまうか

ら、色々置いてしまって、物が多くてか

えって狭さを感じさせてしまうこともあ

ると思うんです。そういうのは、そろそ

ろ取捨選択して、お客様のニーズがどこ

にあるのかということを空間にもしっか

り反映させた方がいいと思います。やっ

ぱりホテルはサービスです。押しつけで

はなく、お客様のニーズにマッチした心

地の良いサービスの提供が大切です。逆

にサービスしないのなら徹底してやらな

い方がいい。人がいてもきちんとした

サービスができないなら、やらない方が

いい、くらいの覚悟が必要です。例えば

「JALシティ那覇」では、２年通って

いる間に、フロントを横切っただけで、

カードキーがさっと用意されていて素晴

らしいと感じました。

　

建物は建った時をピークに劣化してし

まいますが、サービスは心がけ次第でい

くらでも改善できるもの。ハードだけが

立派なホテルはいつしか廃れていく、と

いうのは歴史が証明していると思いま

す。

内藤　

ホテルには「地域の交流の場」と

いう役割もあると思います。特に観光地

の場合、その土地に観光資産があるから

こそホテルが運営できるので、常にホテ

ルが開かれた場として、地域の人々に何

か還元できたらと。今後、ホテルという

場所が地域の方と観光客を結ぶ接点にな

れたら、また何か新しいこと、楽しい世

界が生まれていくのではないかと考えて

います。

BEFORE

AFTER

LOISIR HOTEL NAHA -- The Ballroom --

140

— 10 周年で改装に踏み切った背景と改装前の課題について教えてください

インバウンド比率もここ５年で4〜 5倍になるなど、沖縄の観光需要が右肩上がりを続ける中、「変化した利用客層に対応すること」、「国際通り周辺のホテル新設ラッシュに対応すること」、この２つが改装に踏み切る大きな要因となりました。当時、ホテル自体は好調でしたが、お客様から「部屋が狭い」「ホテルでリゾート感が感じられない」といったコメントも寄せられていました。確かに、お客様の持ち物を見ても、以前はボストンバッグ主流でしたが、現在はほとんどのお客様がキャリーケースやスーツケースに変わったため、どうしても客室に手狭感がでてしまっていたのです。

— 実際の工事で留意した点は？

運営しながらの工事でしたので、工期の遵守と音出し工事の騒音規模と期間の早期確定、チェックアウトから夕方までの工事時間帯の厳守を一番留意しました。期間中は大きなコンプレインもなく、スムースに進行できたと思います。開始当初は改装の直下階客室の販売をストップしていましたが、音

出し工事がない日は滞在時間を制限した商品を設けて販売するなど、極力無駄のない販売戦略が行えました。そういったことが可能となったのも、山下 PMC さんのきめ細やかな管理体制があったからこそ。実際の工事は 2017 年 10 月からでしたが、2016 年 8 月の早い段階で大まかなスケジュールをいただいておりましたので、旅行会社に対する販売期間の早期調整ができました。なにより建設需要が高い沖縄で、他ホテルで工期が大幅に遅れる中、当ホテルの改修に 1日の遅れもなかったことは、他ホテルや旅行会社の方から「考えられない！」という声をいただきました。

ー 部屋の大きさは変わらず、広くするための工夫とは？

家具の入れ替えなどのほかに、空気清浄機も従来型の床置き型から天井埋め込み型に変更しました。また、床材にファブテックという新素材を採用し、リゾート感を演出するとともに、メンテナンスがしやすく、埃も立ちにくくなりました。改装工事前、モックアップルームが完成した段階で、多くの旅行会社の方

に現行タイプの客室との比較を行なっていただきました。現行客室を見ていただいた際、多くの方の第一声が「まだ十分新しいのに、改装必要？」でした。しかし、モックアップルームにご案内した後、その声は「ぜひ改装しましょう！」「これ同じ大きさの部屋ですか？」「リゾートらしいですね！」に変わりました。一番嬉しかったのは弊社の女性スタッフに見せた際「いつ完成するのですか？」「早く販売してみたい！」という声が相次いだ時。この時、このプロジェクトは必ず成功すると確信しました。

— 改修後の感想を聞かせてください

今回のプロジェクトでは、チームの連携や仕事の正確性の高さがあり、想像していたものを遥かに超える仕上がりになったと自負しております。正面のファサードも沖縄の伝統工芸である紅型を採用していただき、設置当日から宿泊客だけでなく、国際通りを行き交う人々の写真撮影スポットにもなり、より沖縄らしさを発信できるホテルに変わることができたと思っています。これからも那覇・国際通りのランドマークであり続けたいですね。

真柳 宏二氏ホテル JAL シティ那覇総支配人（兼）営業部長

DATA施 設 名＝ホテル JAL シティ那覇住　　所＝沖縄県那覇市牧志 1-3-70電話番号＝ 098-866-2580開業年月日＝ 2006 年 6 月 20 日規　　模＝地上 14 階建て・地下 1 階駐 車 場＝ 85 台収容（有料）面　　積＝敷地 3,573㎡、建物 13,655㎡、　　　　　延床面積 14,090㎡客 室 数＝ 302 室運営形態＝マスターリース方式　所有会社＝みずほ信託銀行不動産信託受益者＝ユナイテッド・アーバン　　　　　投資法人資産運用会社＝ジャパン・リート・アドバイ　　　　　ザーズ株式会社経営会社＝株式会社サン・ビスタ那覇運営会社＝オークラニッコー　ホテルマネジ　　　　　メント

改装年月日＝ 2018 年 7 月 1 日改装期間＝ 2017 年 10 月 15 日～ 2018 年 6 月　　　　　30 日（11 月 6 日～ 1 月 6 日まで休工）改装箇所＝全客室・宴会場・ロビー・　　　　　正面ファサード・授乳室（新設）設計・デザイン＝髙島屋スペースクリエイツ株式会社　　　　　ｎ．ｎ．新田法子施　　工＝髙島屋スペースクリエイツ株式会社

HOTEL OPERATOR INTERVIEW／ HOTEL JAL CITY NAHA

141

— 今回、大きく宴会場に手を加えられましたが、その背景とは？

「宿泊需要増加への対応」「MICE 案件増加への対応」「人員確保競争の激化をカバーする運営効率アップ」この３つの課題を低稼働エリアの改装による用途転換で一度に解決できると仮定し、検討をスタートしました。当社は施設面の制約から宴会場にて朝食をご提供しておりますが、お客様の口コミコメント等で宴会場の雰囲気がお客様の朝食満足度低下につながっていることがわかっておりました。また大宴会場を朝食会場に使うことで前日からの設営が必要な大型の宴席が受注できないという営業的な問題もありました。地下メインキッチンと3階大宴会場の移動にくわえ毎日朝食会場の設営と撤収が繰り返されるなど業務効率も悪かったため、宴会場の改修が急務と考えました。

— オペレーターサイドとして、宴会場の改装にどんなリクエストを出されたのでしょう？

新しい宴会場は窓が設置できない場所でしたが、朝食会場として明るい印象にしたいとリクエストしました。そ

こで、あたかもバルコニー付きの部屋から海を眺めているようなアーティフィシャル・ウインドウを取り入れたデザインと最新の LED 照明を導入し、従来の朝食会場にはなかった爽やかな雰囲気が実現できました。実際には躯体の都合により、以前より天井高が低くなっているのですが、梁や柱のレイアウト、照明効果によって圧迫感が軽減されているのには驚きました。また、山下PMCからは固定式のブッフェカウンターの設置提案をいただき、朝食・宴会とも会場の高級感が増すとともに、会場セッティングの手間が減少。業務効率がぐっと改善されました。

ー 宴会場から客室へのコンバージョンというのもユニークでしたね。

そうですね。もともと、客室需要の増加から、全室トリプル対応にしたいと考えていました。また、RMの観点から部屋タイプが増えないよう、既存タイプとスペックも揃えるつもりでした。そんな折、元宴会場の天井高を活かし、メゾネットタイプの客室の提案を受け、これにより海側の８部屋が４名対応可能になり、客単価が向上しました。４名対応なので、バス・トイレ

も別レイアウトにし、快適性を重視しました。事前調査では階下に温泉施設があったため、なんとか営業を止めずに工事を進めたいとリクエストしましたが、資材の搬入・搬出の経路や工程について、何度も話し合いを重ねたことで営業停止日ゼロを実現することができました。

— 改修後の推移はいかがでしょう？

前年対比で客室増加分 +18.8% に対し、売上 +18.9% を設定しましたが、目標を上回る数値で推移しています。特にメゾネットタイプの客室はピークシーズンで稼働率 90%超えをマークするほど人気です。新宴会場も昼時間帯の稼働が +17.0%、夜も +36.0% の改善をマークしています。今回の改装は低稼働の宴会場エリアの用途転用により収益改善を実現した数少ない事例だと自負しております。その成功を導いてくれたのは、相反することが多いオーナーと運営者の意向を理解しつつ、双方の言い分を合理的に分析し、提案してくれた山下 PMCのプロジェクトマネージャー。その存在は非常に大きかったと感謝しております。

藤井 幸氏ロワジールホテル＆スパタワー那覇総支配人

DATA施 設 名＝ロワジールホテル ＆ スパタワー 那覇住　　所＝沖縄県那覇市西３－２－１電話番号＝ 098-868-2222開業年月日＝ 1993 年 2 月 2 日規　　模＝（本館）地上 12 階建て・地下 1 階　　　　　 （新館）地上 12 階建て駐 車 場＝ 303 台収容（有料）面　　積＝敷地 11,535.01㎡、建物 7,604.80㎡、　　　　　延床面積 47,121.62㎡客 室 数＝ 640 室運営形態＝マスターリース方式　所有会社＝三菱 UFJ 信託銀行不動産信託受益者＝ユナイテッド・アーバン　　　　　投資法人資産運用会社＝ジャパン・リート・アドバイ　　　　　ザーズ株式会社経営会社＝株式会社ロワジール・ホテルズ沖縄運営会社＝ソラーレ　ホテルズ　アンド　　　　　　リゾーツ

改装年月日＝ブライダルサロン・新オフィス2017 年 8 月 1 日共用開始宴会場「あまいろ」2017 年 10 月 1 日供用開始新館客室 2018 年 1 月 1 日供用開始改装期間＝ 2017 年 7 月 8 日～2017 年 12 月 31日改装箇所＝宴会場「月桃」「胡蝶」　　　　　「ファンテジー」「てぃだ」設計・デザイン＝ケーアンドイー株式会社　　　　　　　　　 　（ワイズ・ラボ株式会社）施　　工＝ケーアンドイー株式会社

HOTEL OPERATOR INTERVIEW／ LOISIR HOTEL NAHA