社会システム概論 - 東京大学ipr-ctr.t.u-tokyo.ac.jp/sklab/pdf/2017/komaba/komaba02.pdf · ﾏｰｹﾃｨﾝｸﾞ. 知的財産等. の管理や. 規格・標準化. 産業界の狭義のｲﾉﾍﾞｰｼｮﾝプロセス

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２０１ 7 （平成２ 9 ）年１０月 6 日

工学系研究科技術経営戦略学専攻

工学部システム創成学科

教授坂田一郎

[email protected]

社会システム概論（社会システムの見方）

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社会システムと産業（第２回）

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研究企画ロードマップ

探索研究実用化研究試作実証

生産ﾏｰｹﾃｨﾝｸﾞ

知的財産等の管理や規格・標準化

産業界の狭義のｲﾉﾍﾞｰｼｮﾝプロセス

ファイナンス（資金調達・運用、会計・税務）

組織編成事業提携経営戦略

複雑な相互作用

重要な企業外・環境条件

内外の市場環境、大学、競争相手等の先端的研究、分野別技術ロードマップ会社法制度・法人税制度、環境規制、政策的誘導措置など

本講義の主な対象

本講義の主な対象


社会システムとは（社会学）

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社会学で言う「社会システム」：一般に、「システム」とは、ある種の「仕組み」（秩序）であると

同時に、その仕組みによって維持され、相互に連関する「諸要素の一総体」のことをいう。

「社会システム」という言葉は、社会集団に一定のまとまりがあり、それを維持する仕組み（秩序）が認められる時、そうした社会集団をとらえるために使われる。

パーソンズの場合、社会システムとは、具体的な社会集団をそのまま指すのではなく、「行為」という分析的な要素の連関として想定されるものである。

（出典）内田隆三「社会学を学ぶ」


社会システムが持つ性格

4

○何らかの形で、「市場原理」を超えた作用・介入が存在

○複数の「セクター」が参加する社会グループが形成され、組織や個人を超えた横断的な力を発揮、ルール、スタンダード、プロトコロの共有を実現

○社会グループ内の組織や個人は、相互に影響を与え合う関係に立つ（“社会性”の存在）

○システムを形作ることで、「市場の失敗」の修正、「協働による利益」の享受、「社会的取引コスト」の軽減を可能とする

○「テクノロジー（開発・進歩・受容）」も多くの面で、社会システムから影響を受ける、秩序に取り入れられないと新技術も社会に出ることができない。


社会システムのメリットの例

１．市場の失敗の修正

○特許制度による知財の保護により、研究開発投資が過小投資になることを抑制

２．協働の利益の享受

○営業秘密漏えいのルール整備により、複数企業が安心して独自の知見を持ちより、共同研究や事業を行える

３．社会的な取引コストの軽減

○標準化・規格化によって、選択に要する時間や労力を軽減○会計基準や開示ルールにより、調査のコストを軽減


証券市場の例

証券取引等監視委員会（金融庁）-証券取引における検査・監視-

監視・監督

東京証券取引所等

証券会社群

投資家上場企業

・上場会社、株式取引等の規制・新規上場、市場変更、上場廃止等・開示ルール等

・会社法・企業会計原則・開示ルール等

資金運用株式等上場


社会システムをみる重要な視点

１．総合的な理解の重要性

２．性格の異なる様々な制度の束としてのシステム

３．一つの制度/システムで性格の異なる複数の領域に対応

４．「制度的補完性」、「戦略的補完性」

５．制度等の発展とアクターへの影響

６．「社会」の性格への依存性

（成熟度、豊かさ、精神・文化等）


社会システム再考（サッカーへのたとえ）

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○制度等は、サッカーにおける「競技ルール」に相当○会社、大学などは、サッカーの「プレイヤー」に相当○ルールとプレイヤーの能力が試合の中身、スタイルを左右する○ただし、サッカーと異なり、「競技場」のサイズは、変化しうる


社会システムを作る制度

ハード・ロー

明文化されて、公権力により強制執行が保証されている法令、条約等（民間ではあるが、証券市場ルール等もこれに近い）

ソフト・ロー

民間団体等による自己規律ルール（民間団体による自主規制、倫理指針）、経済産業省企業価値委員会報告書

暗黙のルール（さらに、背景にある文化）

実は、中間的なものもいろいろある！公的団体の指針、国税庁のＱ＆Ａ、解釈通達、公共調達の基準公的団体の資格 etc.


制度等の具体例は

(1) 法制度やその他の公的ルール○商法、税法、労働法制等の基本制度○教育関連法制、特許法、製品安全法制等の基幹的法制度○産業再生法、大学等技術移転法等の特定目的法○安全基準、認証基準、規格○税法の解釈通達、ガイドライン等※「ハード・ロー」、「ソフト・ロー」の双方を含む

(2) 民間団体による自主ルール○証券取引所の上場基準○企業会計原則など

(3) 誘導的な行為○国・地方財政（助成金の交付、交付税措置によるインフラ整備など）○「e-Japan 戦略」、「大学発ベンチャー1000社構想」、「新産業創造戦略」、

「新成長戦略」などのビジョン

System


システムの背後にある暗黙の了解、文化

海外の地下鉄の料金ルールの一部

日本でも採用できる？

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商法（会社法）

企業会計法人税制

産業（企業行動）（合併、分割・分社化、

共同事業、事業提携）

株式会社等としての規制に沿って組織

投資家等への説明責任証券市場からの統制

税金の支払いの金額・時期の決定

複数の制度により支えられるシステム


性格の異なる領域をカバーするシステム

情報中間創薬

特許制度

・１特許１新薬・長い投資回収期間

・多数特許で１製品・短い投資回収期間


制度的補完性①（システム間）

社会システムの間には、「制度的補完性」が存在。本来、システム相互の関係を無視することは出来ない。バランスが崩れると、「仕切られた多元主義(青木昌彦教授)」の弊害。

企業社会システムイノベーション・システム

（社内閉鎖型vs.オープン型）

教育システムイノベーション・システム

＜補完関係の例＞

（独創重視vs.チームプレー型）

企業社会システム金融システム

（間接金融vs.直接金融）


制度的補完性②（ケース）

「企業のオープンイノベーション」と「大学による産学連携」の関係

ケース１企業：クローズドにこだわり大学：大学オープン指向→結果：大学にお客がこない

（1980年代のテクノポリス）

ケース２企業：オープン化大学：産学連携体制の遅れ→結果：企業は海外大学を指向

（1990年代後半～最近まで）

ケース３最近の組織的な産学連携（産学協創）


仕組み間の相互補完性・戦略的補完性（奥野(1993)「現代日本経済システム」を参考に）

旧日本型システム新日本型システム

大きな壁・囚人のジレンマ

雇用慣行、企業システム、金融システム、教育システム政府・企業関係などにより一体的に構成

○経済システムを構成するさまざまな制度・慣行の間には、「戦略的補完性」、「相互補完性」が存在し、それが、経済システム全体の安定性をもたらしている。かつて、政府・企業間関係は、旧システムの「秩序と安定」を保つものとして機能。

○「安定的な均衡状態」には、それを維持しようとする慣性が存在し、それを変革するためには、社会全体で一致した協調行動が必要である。

1980年代までの成功1990年以降の停滞

移行の必要性

グローバル化、知識経済、人口減少社会での成長を実現する総合的なシステムを希求


歴史的な視点でみた補完性

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前工業化（農商業）工業化知識化経済・技術軸

個人

企業

社会

家庭内・近隣労働農地の耕作能力（少数の商人）

工場・都市労働中心組織人能力

知縁内労働創造力・ｱﾋﾟｰﾙ力・ネットワーク力

個人事業主中心（商業に会社組織の萌芽）

株式（物的）会社（2次革命により物的な規模拡大）

ブランド・ポータルと人的会社の重要性拡大

（知識を軸に結合）

I.SAKATA

地縁社会

（地理的コミュニティ）組織毎縦割り社会知縁社会

（知識コミュニティ）

労働者保護法制株式会社法制都市政策など

非組織型個人法制人的会社法制(LLC,LLP)ｺﾐｭﾆﾃｨ形成・専門教育等

工業革命 IT革命

壁壁

壁壁

壁壁

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競技場のサイズの変化（例：デジタル革命）

技術革新インターネットの普及（スマホ）

ＳＮＳの普及

ブロックチェーン技術

ネットを介した情報伝達（グローバル、瞬時）

マルチメディア双方向コミュニケーション

データドリブン・イノベーション/スマート化

サイバーテロポストトゥルースポピュリズムの台頭世界同時不況

日本のインターネット平均トラヒックの推移（推定）

新たな社会・経済の仕組みが必要


スマート化する産業とゲームチェンジ

Primary Secondary Tertiary

Labor Intensive

Capiital Intensive

Knowledge Intensive

消えていく業種、産業間の壁 !

Smart mobility Smart health Smart farming

社会ニーズ主導データマネジメント AI /サイバースペースサイエンスリンケージ領域横断

Fusion

新たなスタイルでの価値創造


（事例検討）技術シーズ獲得の選択肢とシステム

社内研究開発

大学への研究委託・大学からの技術移入

外部企業へのアウトソーシング

共同研究コンソーシアムの組成

技術を持つ研究開発ベンチャー等の買収

産学連携システム技術移転システム知的財産権

ノウハウ等の社秘管理知的財産権ＣＳＲなど

税制・商法(会社法)知的財産権

税制・商法(会社法)知的財産権

○社会システムは、技術開発の様態や効率に影響を及ぼす○効率的の技術開発マネイジメント

には、統合的な思考が不可欠

プロジェクト・リーダー選択は？


経済成長と社会システム改革の関係

＋０．７＋０．５

＋１．０

＋１．７

＋０．７

▲０．５

＋０．０

＋０．５

＋０．９

＋０．７

＋０．０

▲０．３▲０．６▲０．５-▲０．１

＋１．０＋１．２

＋１．８

＋２．２

＋２．０

▲ 1

0

1

2

3

4

5

6

81～85 86～90 91～95 96～00 01～02

資本投入

労働投入（労働時間）

労働投入（就業者数）

ＴＦＰ

潜在ＧＤＰ

（注）労働投入は、労働時間の寄与と就業者数の寄与に分解。【出所】平成１５年度版　経済財政白書

（年）

（％）潜在成長率の要因分解

＋３．４

＋４．４

＋２．７

＋１．４＋１．２

多様なシステム改革（主にＴＦＰに寄与）

雇用・就活システム改革

戦略投資についてロードマップ、投資減税

産業政策

投入要素

（備考）「ＴＦＰ（全要素生産性）」は、投入要素の増減で説明出来ない誤差項。技術進歩、産業構造変化など。

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