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38 富山大学 芸術文化学部紀要 第6巻 平成24 年 2月 : ●プロジェクトの経緯 平成22年度、「国立大学法人富山大学と株式会社北陸 銀行との包括的連携協力に関する覚書」に基づき、富山 大学地域連携推進機構と北陸銀行との連携推進事業の一 環として、富山大学五福地区正門前の北陸銀行五福支店 正面ウィンドウを作品展示用のギャラリーとしてリメイ クしたことに伴って起動したプロジェクトである。関連 学部としての芸術文化学部へ作品展示の要請が地域連携 推進機構より行われた。 そのプロジェクトの推進と企画を学部長より拝命し、 北陸銀行五福支店支店長と展示内容の確認や、展示周 期、運搬、展示、管理等について両者の責務を含め話し 合いを持った。 そこで出された結論は、両者の確認事項として順次推 進して行くことが決定された。詳細は、富山大学本部前 に位置しているギャラリー故、本学への訪問者等の目に 触れるものでもあり、芸術文化学部の教員、大学院生の 作品を中心に、展示期間2ヶ月の周期で展示を行うこと や、大学院生に対しては謝礼として図書券を授与する こと、運搬や展示については学部で責任を持って行い、 管理については銀行側が全責任を負うこと等である。更 に、展示時間の延長(深夜12:00まで)や芸術文化学部 の名称パネルを常に掲示することも併せて確認された。 ●ギャラリー展示メンバー 第1回 後藤敏伸(立体作品) 芸術文化学部教授 第2回 安達博文(平面作品) 芸術文化学部教授 第3回 斎藤晴之(立体作品) 芸術文化学部准教授 第4回 後藤千香(平面作品) 芸術文化学研究科大学院1年生 第5回 西川紗絵子(立体作品) 教育学研究科大学院2年生 第6回 桜井裕子(平面作品) 芸術文化学研究科大学院1年生 第7回 松井麻里子(立体作品) 教育学研究科大学院2年生 以上今日までの展示メンバーとなっているが、随時芸 術文化学部実技系教員と大学院生を中心に展示運用して 行くことになる。 ●プロジェクトの効果 北陸銀行五福支店は本学正門前に位置し、大学関係者 (訪問者を含む)や学生、一般住人など日常的に多くの 往来がある。ギャラリーの仕様も正面通路に大きく開口 部を持ち、往来する車や人々の目につく設計がされてお り、室内型のギャラリーとは異なる。夜間でもライト アップされウィンドウ型ギャラリーの特性を持つ。その ギャラリー内部に常時富山大学芸術文化学部の広報用ポ スターと、教員、及び大学院生の作品が展示されている ことは大きな意味となる。学部広報の意味においても、 教員、院生の成果展示という意味に於いてもである。 また、銀行側に於いてはメセナ活動のPRにも、来店者 へのサービス、あるいはエクステリア、ウィンドウディ スプレイ等の美的効果が期待されるのである。つまり、 連携両者にとって利のある企画と言えよう。 また、北陸銀行高岡支店に於いても同様の連携が後発 ではあるが進んでおり、その実施責任者は本学部高島圭 司講師が務め、学部学生が作品を提供している。 プロジェクト実施責任者/後藤敏伸 北陸銀行五福支店ギャラリー前にて支店長と院生の記念撮影 ART GALLERY 北陸銀行アートギャラリー 富山大学地域連携推進機構プロジェクト 富山大学芸術文化学部教授 後藤 敏伸

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38 富山大学 芸術文化学部紀要 第6巻 平成24 年2月:

●プロジェクトの経緯 平成22年度、「国立大学法人富山大学と株式会社北陸

銀行との包括的連携協力に関する覚書」に基づき、富山

大学地域連携推進機構と北陸銀行との連携推進事業の一

環として、富山大学五福地区正門前の北陸銀行五福支店

正面ウィンドウを作品展示用のギャラリーとしてリメイ

クしたことに伴って起動したプロジェクトである。関連

学部としての芸術文化学部へ作品展示の要請が地域連携

推進機構より行われた。

 そのプロジェクトの推進と企画を学部長より拝命し、

北陸銀行五福支店支店長と展示内容の確認や、展示周

期、運搬、展示、管理等について両者の責務を含め話し

合いを持った。

 そこで出された結論は、両者の確認事項として順次推

進して行くことが決定された。詳細は、富山大学本部前

に位置しているギャラリー故、本学への訪問者等の目に

触れるものでもあり、芸術文化学部の教員、大学院生の

作品を中心に、展示期間2ヶ月の周期で展示を行うこと

や、大学院生に対しては謝礼として図書券を授与する

こと、運搬や展示については学部で責任を持って行い、

管理については銀行側が全責任を負うこと等である。更

に、展示時間の延長(深夜12:00まで)や芸術文化学部

の名称パネルを常に掲示することも併せて確認された。

●ギャラリー展示メンバー 第1回 後藤敏伸(立体作品)

     芸術文化学部教授

 第2回 安達博文(平面作品)

     芸術文化学部教授

 第3回 斎藤晴之(立体作品)

     芸術文化学部准教授

 

 第4回 後藤千香(平面作品)

     芸術文化学研究科大学院1年生

 第5回 西川紗絵子(立体作品)

     教育学研究科大学院2年生

 第6回 桜井裕子(平面作品)

     芸術文化学研究科大学院1年生

 第7回 松井麻里子(立体作品)

     教育学研究科大学院2年生

 以上今日までの展示メンバーとなっているが、随時芸

術文化学部実技系教員と大学院生を中心に展示運用して

行くことになる。

●プロジェクトの効果 北陸銀行五福支店は本学正門前に位置し、大学関係者

(訪問者を含む)や学生、一般住人など日常的に多くの

往来がある。ギャラリーの仕様も正面通路に大きく開口

部を持ち、往来する車や人々の目につく設計がされてお

り、室内型のギャラリーとは異なる。夜間でもライト

アップされウィンドウ型ギャラリーの特性を持つ。その

ギャラリー内部に常時富山大学芸術文化学部の広報用ポ

スターと、教員、及び大学院生の作品が展示されている

ことは大きな意味となる。学部広報の意味においても、

教員、院生の成果展示という意味に於いてもである。

 また、銀行側に於いてはメセナ活動のPRにも、来店者

へのサービス、あるいはエクステリア、ウィンドウディ

スプレイ等の美的効果が期待されるのである。つまり、

連携両者にとって利のある企画と言えよう。

 また、北陸銀行高岡支店に於いても同様の連携が後発

ではあるが進んでおり、その実施責任者は本学部高島圭

司講師が務め、学部学生が作品を提供している。

プロジェクト実施責任者/後藤敏伸

北陸銀行五福支店ギャラリー前にて支店長と院生の記念撮影

ARTGALLERY北陸銀行アートギャラリー富山大学地域連携推進機構プロジェクト富山大学芸術文化学部教授 後藤 敏伸

Page 2: ART GALLERYART GALLERY 北陸銀行アートギャラリー 富山大学地域連携推進機構プロジェクト 富山大学芸術文化学部教授 後藤 敏伸 Bulletin of the

39Bulletin of the Faculty of Art and Design, University of Toyama, Vol. 6, February 2012

プロジェクト第 4 回ギャラリー展示 ( 院生作品 )

プロジェクト第 1 回ギャラリー展示

Page 3: ART GALLERYART GALLERY 北陸銀行アートギャラリー 富山大学地域連携推進機構プロジェクト 富山大学芸術文化学部教授 後藤 敏伸 Bulletin of the

 平成24年1月、予て交流のあったタイ王国バンコッ

ク中心部に位置する王立パタナシン芸術大学との学部間

交流締結のため、前学部長秦正徳教授、前支援グループ

長清水良太郎氏、前学部国際交流委員長の私の3人で、

協定締結の為に渡航した。パタナシン芸術大学は、バン

コック中央に位置し、王宮に隣接した、環境にも恵まれ

た大学である。構内には寺院もあり、伝統舞踊、伝統音

楽の学部を併設した芸術総合大学と言える。同地区から

は離れているが、その他に、美術学部、芸術系教員養成

学部(高校も併設)など、タイ王国の大学再編に伴い幾

つかの教育組織を統括している。

 1月19日(木)現地時刻13時30分、パタナシン芸術

大学本部棟にて学術交流協定が締結された。本学部から

は、前述の3名の他、通訳を含め4名に対しパタナシン

芸術大学側からはガモン・ストー学長を初め、副学長3

名、学長補佐2名、その他学部長、校長、副校長等7名、

総勢12名の列席の中で執り行われた。始めにこれまで

の交流の経緯説明があり、ガモン・ストー学長、秦前学

部長の挨拶、続いて締結調印となり、その後両校の映像

を使用した紹介となり、記念品の交換後、記念撮影で終

了した。

 協定の内容は、両機関が相互に対等な立場で、

(1)学生と教員の交流

(2)学術資料、刊行物及び情報の交換

(3)双方が同意するその他の項目

についての実施と、その発展に協力することや、実施す

る為に必要となる事項は、その都度両機関が協議し定め

ること、更に実施にあたっての財政上の義務を双方共に

負わないこと、協定書の有効期間が5年であり、その後

は一方が協定終了の意思を通告しない限り自動更新され

ること、協定書は、両機関の合意によりいつでも修正で

きること等である。

 以上の交流協定に基づき、平成24年8月には、早速

研究者交流の名目によりパタナシン芸術大学からの4名

の絵画系教員が、日本画技術の修得の為に研修来日の運

びとなった。日程は一週間程であったが、熱心に修得に

励み日本画への興味を深くしたようだ。研修以外にも県

内の美術館視察等で、日本に対する理解を深め、友好的

な印象を持ったとのことである。

 更には、平成25年3月25日から4月26日の期間で、

第一回の両大学間交流美術展をパタナシン芸術大学構内

ワンナーギャラリーにて開催した。本学部からの出品者

数は教員、院生を合わせ25名、パタナシン芸術大学側

の教員出品数は47名に及び盛大な展覧会となった。開

催にあたっては、タイ王国文化大臣ソンタヤ氏の列席の

もと、パタナシン芸術大学新学長ファチャムルーン氏以

下教員及び学生、一般市民等多数の参加者と、秦前学部

長並びに、展示作業の為に本学部から3名、及び数名の

日本人が参集した。文化大臣、学長、本学部長の開会挨

拶に続き、本学部側の作品解説を文化大臣他来賓の方々

パタナシン芸術大学構内のワンナーギャラリー正面

International Exchange

パタナシン芸術大学との国際交流締結とその交流状況

project

富山大学芸術文化学部教授 後藤 敏伸

パタナシン芸術大学との国際交流締結とその交流状況

International Exchange

12 富山大学 芸術文化学部紀要 第8巻 平成26年2月G E I B U N 0 0 8 :

Page 4: ART GALLERYART GALLERY 北陸銀行アートギャラリー 富山大学地域連携推進機構プロジェクト 富山大学芸術文化学部教授 後藤 敏伸 Bulletin of the

に行い、その後、屋外での歓迎式典、及び交換会が行わ

れ、音楽学部の学生による伝統音楽演奏や、舞踊学部学

生による伝統舞踊が披露された。タイのTV局や新聞社

の取材もありパタナシン芸術大学の対応努力に感心させ

られた。

 前日の新学長表敬の折には、両校の更なる交流促進の

為の話し合いがなされ、実際に日本の学生が留学をした

場合のパタナシン芸術大学の具体的な対応や、研究者交

流の発展的可能性、及び大学院生を含めた交流協定の見

直し等にも議論が及び有意義な時間を持てた。本学部に

対するパタナシン芸術大学側の期待感や、誠意を確信し

たと言える。

 今年度は、第2回目の両大学間交流美術展が既に12

月に予定されており、両大学の交流が更に発展して行く

ものと思われる。また、本学部院生の留学希望者もあり、

タイの美術工芸の歴史的解明や、研究の一助に寄与でき

るであろう。と、同時に両国の文化発展に弾みをつけた

いものである。

パタナシン芸術大学正面ゲート学問の神様ガネーシャの像

パタナシン芸術大学構内ギャラリーの展示風景

交流美術展オープニング(タイ文化大臣列席)

オープニングにて本学側の作品紹介

実際の日本画研修風景

研究者交流で本学部へ来学したパタナシン芸術大学教員

13Bulletin of the Faculty of Art and Design, University of Toyama, Vol. 8, February 2014