Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
Title 上部尿路結石症によるNon-visualizing KidneyのRenogramによる観察
Author(s) 仁平, 寛巳; 高橋, 陽一; 広川, 栄助
Citation 泌尿器科紀要 (1963), 9(5): 252-261
Issue Date 1963-05
URL http://hdl.handle.net/2433/112432
Right
Type Departmental Bulletin Paper
Textversion publisher
Kyoto University
252
泌尿紀要9巻5号
昭和38年5月
上 部 尿 路 結 石 症 に よ るNon-visualizingKidney
のRenogramに よ る観 察
京都大学医学部泌尿器科学教室(主 任 稲田 務教授)
助教援 仁 平 寛 巳
助 手 高 橋 陽 一
大学院学生 広 川 栄 助
OBSERVATION WITH RADIOISOTOPE RENOGRAM OF THE
NON-VISUALIZING KIDNEY DUE TO UROLITHIASIS
OF THE UPPER URINARY TRACT
Hiromi NIHIRA, Youichi TAKAHASHI and Eisuke HIROKAWA
From the Department of Urology, Faculty of Medicine, Kyoto University, Kyoto, Japan
(Director : Prof. T. Inada, M. D.)
1) The radio-isotope renogram was attempted to evaluate the latent renal function of the non-visualizing kidney due to urolithiasis in 8 cases.
2) From the results of this observation, it may be said that radio isotope renogram is
well suited to serve as a procedure for detection of latent renal function.
3) We have proposed a modification of the parameter of Krueger et al. or zum Winkel u. Mitarb about segment B and showed its average value and standerd deviation.
上 部 尿路 結 石症 の場 合 に,患 側 の 排泄 性 腎 孟
像 が まつ た く得 られ ない所 謂non-visualizing
kidneyは しば しば 経 験 す る もの であ るが,こ
の 場合 患 側 の潜在 性 の腎 機能 は どの 程 度 の もの
が 判断 の資 料 が得 られ な い こ とが 多 い 総 腎 機
能 検査,血 液 の 生化 学 的 検査 等 は 健 腎機 能 に お
お われ る し,青 排 泄 試 験 及 び上 部 尿 路 の逆 行 性
検 査 等 はか か る腎後 性 閉 塞 の場 合 に は 有 力 な資
料 とな らな い こ とが多 い.従 つ て臨 床症 状,腎
触 診所 見,腹 部X線 単 純撮 影 に於 け る 腎 輪 郭
像,結 石 の大 き さ及 び形,delayedpyelogra-
phy,経 腰 的 腎 孟撮 影,更 に上 部 尿 管 の 結石 の
場 合 は手 術 時 に 於 け る腎 の 肉 眼的 観 察 等 を参 考
に して経 験 的 に 判断 す る以 外 に方 法 は な か つ
た.上 部 尿 路 の 結石 の ため にdelayedpyelo-
gramで も造 影 剤 排 泄 を認 め な い腎 につ い て,
1)そ の 機 能状 態 は ど うな つ て い るか,2)結 石
除 去 に よ り腎 機 能 が どの程 度恢 復 し 得 る も の
か,従 つ て3)手 術 的 治 療 に 際 し て 腎 摘 除 術 或
は 腎 保 存 的 に 切 石 術 を 行 うべ き か の 適 応 を 決 定
す る た め の 資 料 の 一 つ と し て1311-Hippuranを
用 い た レ ノ グ ラ ム に よ る 腎 機 能 観 察 を 行 い,主
と し てX.線 的 検 査 所 見 と比 較 検 討 し た.
装 置 及 び 測 定 条 件
島 津 製 レ ノグ ラ ム検 査 装 置 を 用 い た.シ ソ チ レータ
ーのNal(T1)結 晶 の 大 き さは25.4φ×25.4mm.検 出
効 率 は1311に 対 して約60%.「 リメ ・一ターはcyrin-
d「icalformで25mmの 厚 さの鉛 製 シ ール ドを有す
る.1311の γ 線 ス ペ ク トルの0.25Mev以 下 を切 り捨
て る様 デ イ ス ク リ ミネ ー タ ーの 電圧 を設 定 .時 定数は
通 常5秒 を用 い て い る が時 に1 .25秒 の こ と もあ る.患
者 は や や前 傾 した 坐位 を と らせRadiohipPuran注 射
前 約1時 間 に 水300cc,30分 前 に更 に300ccを 飲用 さ
せ て い る.レ コー ダ ーの ペ ー,K・一ス ピー ドは1 .Ocm/
m童n.1311-HippuranはO .5μc/kgを 静 脈 内投 与 してい
るが 時 に はそ の1/2~1/3量 を用 い る こ と もあ る.プ ロ
仁平 ・高 橋 ・広 川一 上 部 尿路 結 石 症 に よるNon・visualizingKidneyのRenogramに よ る観 察253
一ブのセソター リソグは立位排泄性腎孟X線 像 で行っ
ているが,腎 孟 の像を見ない時 にはactivityの 高い
所を求めてプローブの移動 を要 す ることもある・
レノグラムの各部分について
レノグ ラムの各 部 分をFig,1の 如 く称 す る こ とと
する.
Seg・A
Fig.1
!00"
刃点
従来Seg.Aは,MeadeandShyi}のR.1.S.A.
を用いての実 験 な どか ら,renalvascularityを 表 わ
すとされ て いたが,最 近Isotopeのtubularuptake
も関与 してい る とい う実 験(KlapprothetaL2))も あ
り,レ ノグ ラムの 曲線 上A点 の決 定 困雑 な場 合 が あ る
ことも加わ つ て,こ の部 分 の意 味 づ け もそ う簡単 で は
ない.だ が一 応Hippuran-clearanceの 検 討(Sch-
wartzandMadeloff3))な どか らSeg.AはR.B.F.
と相関す る と考 え て差 支 え ない 段 階 の様 で あ る.最 初
Winter4)はSeg.Aをspikeと して 観 察 した が
Seg.Bへ なだ らか な移 行 を 示す こ と も多 い の でSe一
gmentと 称 す る方 が穏 当で あ ろ う.Seg.Bはtubular
secretionを 表 わ す と云わ れ,こ の 部 の勾 配 につ い て
後 述 の 様 に種 々のparameterが 考案 され て他 の腎機
能 検 査 との相 関性 が 検 討 さ れ て い る.Spenceret
al.s)は レノ グ ラムの 各 部分 の 再 現性 を 検 討 して い る
が,Seg.Bの 勾 配 に関 す る ものは最 もaveragede-
viationの 比 率 が 小で 再 現性 が よい事 を指 摘 し て い
る.Seg.Cが 腎 孟 よ りの尿 の ドレナ ージ の状 態 を表
わ す とい うこ とにつ い て は まず 異 議 のな い と こ ろ だ
が,腎 の機 能 状態,腎 孟 の大 き さな どに影 響 され るた
め細 か な解 析 は難 か しい.し か し腎 機 能 との 関係 に 於
いて 大 ざつば に ドレナ ージ の状 態を 把握 す る こ とは 可
能 で あ る.
各 部 分 のお お よそ の 意味 づ け は上 述 の様 で あ るが,
以 下 の各 症 例 につ い て の レグ ノラ ムの解 釈 は この様 な
見 地 か ら行 うこ ととす る.
症 例
第1例(Fig.2,10,11):MT.,16才,♀,右 尿
管 結 石 症,4ケ 月程 前 には 右側 腹 部疵 痛 発作 が 度 々あ
つ た が,こ の2ケ 月程 は 全 く痛 み な は ない.医 師 に右
腎 が悪 い と云 わ れ 来院 した.Fig.10は76%Uro-
grafin20cc静 注後30分 の排 泄性 尿 路X線 像(以 下
1.V.P.と 略 す)で,右 腎 は全 くnon-visualizingで
あ る.1.VP、60分 像 も同様 で あつ た.左 側 レ ノグ ラ
ムは 正常 曲線.右 側 はSeg.Aが 左 の ほぼ1/3.Seg .
B,Seg.Cの 特 徴 は 全 く見 られ ない.典 型 的 な無 機能
腎 所 見で,結 石 とと もに腎 摘 除 を行 つ た.摘 除 腎 は
Fig.11に 示 す 様 に嚢 状 腎 の状態 で あ る.
第2例(Fig.3,12,13)T.O.,24才,6,左 尿
∬'
Rightkidney
∠θ"ん びη劔
〃5
"inutesaftenごnv'ection
Eig.2.Case1。
〃
ヤJ
僻
254仁 平 ・高橋 ・広 川一 上 部尿 路 結 石 症に よ るNon・visualizingKidneyのRenogramに よ る観察
愈ミ§
ミ
a.4邊
〃inutピ ∫ 副 θr勿 θc芒伽
Fig.3.Case2.
管 結 石症.10日 程 前突 然 肉眼 的 血 尿が あ り,一 昨 日来
左 側 腰部 癌痛 を来 た して 来院 す.Fig.12は1.V.P.
15分 像 で 矢 印 の結 石陰 影 と左 腎 がnon-visualizingな
る事 を認 め た,引 き続 き60分 の撮 影 で も造 影 剤排 泄 は
認 め なか つ た.右 側 レノグ ラ ムはほ ぼ正 常.左 側 は
Seg.Aの 低下(右 側 の ほぼ2/3)を 見 る.Seg.Bの
立ち上が りの勾配は良好.続 いて漸次上昇 する曲線と
な り腎孟にIsotopeが 蓄積 されてい く事 を示 してい
る.尿 路の閉塞は比較的高度 であ るが,腎 機能は割合
保たれ てい るものと判断 した.Fig.13は 切石術後7
日目の1.V.P.15分 像で,未 だ腎孟腎杯の拡張は残つ
ているが造影剤の排泄伏態は良好であ る.
曜ψ 渉 片油 町
LeEki(fney
。配 留
避 〉姻
20 15105
"t加te5aften吻ection
Fig.4.Case3.
第3例(Fig.4,14,15)=T。M.,21才,6,右 尿
管 結 石症,3ケ 月程前 に左尿 管 結 石症 で切 石 術 を うけ
た.2日 前右 腰 部 疵痛 及 び 肉眼 的血 尿 を 来 して来 院 し
た.Fig.14に 示す 様 に右 腎 は1.V.P.15分 像 で 腎孟
尿 管 の造 影 を認 め ない.引 き続 き行 つ た60分 像 も同様
所 見で あ つ た.こ の あ と尿管 カテ ー テル 法併 用 の腹 部
単 純撮 影 で 尿管 下 端 に小 結石 の 存 在す る事 が 確 かめ ら
れ た.翌 日行 つ た レノグ ラ ムはFig.4の 如 くで ,左
0
o.8
む
ミoゲ8
§も
起a4
02
0
側 は 正常,右 側 はSeg.A,Seg.Bは ほ ぼ 正常 だが・
Seg.Cは 遅 延 し尿 路 に 閉 塞 の あ る事 を 示 してい る.
しか し一 応 下 降 曲線 を 辿 つ てい るの で,閉 塞 の程 度は
高 度で ない と思わ れ た.ロ ワチ ソ 及 びサ ー ク レチソを
使用 しつ つ 経 過 を 見 てい た と ころ,患 者 は 排 石に気づ
い て い な いが,3週 間後 の1 .V.P.で はFig.15の 如
く右 腎 はほ ぼ 正 常像 が得 られ 結 石 像 も証 しな かつた ・
第4例(Fig.5,16,17):T.1.,35才,♂,左 腎
仁 平 ・高 橋 ・広 川一 上 部尿 路 結 石症 に よ るNon・visualizingKidneyのRenogramに よる観察255
!5
Rigんtkidney
∠θ琵 κ幽 砂
〆05
擁 ηα6θ5after吻 θcピ∠oη
Fig.5.Case4.
及び尿管結石症.5年 程前 に結石 自然排出の病歴があ
る.4ケ 月程前か ら左側腹部に疵痛発作があ り来院 し
た.Fig.16は1.V.P.15分 像であ るが,120分 像で も
同様に左側上部尿路は造影 されていない.Fig.5に
示す如くレノグラムは右側正常.左 は低いSeg,Aの
あとゆるやか な上昇 曲線を描 き,多 少 とも腎機能が残
存することを示す.手 術時所見で腎孟内の尿は膿様を
0
1.0
a8
06:ミ℃
ミも
o鑓
0,2
呈 し,腎 外観か ら膿腎症 と判断 して腎摘除 術 を 行 つ
た.摘 出腎はFig.17に 示す如 くで、 腎実質はかな
りの圧迫萎縮を来 し,組 織学的に も炎症性変化が強 く
て感染性水腎症の所見を呈し,腎 機能廃絶までには至
つていないが レノグラムのかな り高度の機能低下の所
見を裏付ける ものであつた。
第5例(Fig.6,18,19):K.H.,60才,6,
20
RightkidneLy
∠θ〆蝕 ∠加 砂
ノ5!05
Minat'esafterinjectten
Fig.6.Case5.
白板症を伴 え る左尿 管 結 石 症.4ケ 月程前 か ら 左 側
腹部鈍痛を訴 え来院.1.V.P.15分 像 で は左 側 は 全 く
non・visualizing(Fig.18).レ ノ グ ラムで は 第1例
と同 じく,左 側 は無 機 能 腎所 見 を 示 した.摘 除 腎 の 腎
実質は高度 の圧 迫萎 縮 に よつ て非 常 に 菲薄 で あ つ た
(Fig.19).
第6例(Fig.7,20):K.S.,43才,6,右 尿 管 結
o
0.8
ρ6葡.ミ
℃
暑
o.4零
ε
石 症.2日 前 よ り右 側 腹部 に 鈍痛 を 訴へ て来院 した.
1.V.P.20分 像 では 右 側 はnon-visualizingで60分 像
も同様 所 見 で あつ た(Fig.20).レ ノグ ラム は第2例
と似 た所 見 で,右 側 は 尿 路閉 塞 高度 で あ るが 腎機 能 は
比 較 的保 た れ て い る と判 断 した(Fig.7).現 在 保 存
的 に経 過観 察 中で あ る.
第7例(Fig.8,21,22):M.N.,35才,3,右 尿
256仁 平 ・高 橋 ・広 川一 上部 尿 路結 石 症 に よるNon・visualizingKidneyのRenogramに よ る観 察
15/05Minute5aftetiofection
Fig.7.Case6.
0
20
鞠 んtkidney
乙θ泥 片励 町
t5/05
Minutasafterinj'ecitOn
Fig.8.Case7.
0
〃
'ぎ
鴇oむ.ミへ
遣
08
「宝
06誉
.ミ
遣04
O.2
0
〃
ρ8
も9§
o.6謡
9
ミ
遷04
O.2
MCnutes・ 伽 ・i・jectd・n
Fig.9.Case8 .
仁平 ・高橋 ・広 川一 上 部 尿路 結 石 症 に よ るNon-visualizingKidneyのRenogramに よ る観 察257
管結 石症.4日 前 に突 然 右側 腹 部 瘤 痛 があ つ て 来院
す.LV.P.施 行時 も癌 痛が 続 い てい た.1.V.P.15分
像では右 腎はnon・visualizingで あ る(Fig,21).レ
ノグラム上右 側 は機 能 もよ く,尿 管 の 閉塞 も軽 度 と判
断 した.spasmolyticsの 投 与 で期 待療 法 を行 い,11
日目に結 石の 自然 排 出を み た.排 石 後 のLV.P.で は
患側はほぼ 正常像 で あ る(Fig,22).
第8例(Fig,9,23,24)=M.N.,28才.9,右 尿
管結石症.一 一昨 日来右 腰 部 に癌 痛 が あ る.LV.P.施 行
時 も疵痛 が続 いて いた,1.V.P.の 各7分,15分,60分
像 ともに右 腎はnon-visualizingで あ る.Fig.23は
1.V,P.15分 像 で尿 管 下端 に 小結 石 陰 影 を認 め る.レ
ノグ ラム施行 時 も疵痛 が あ つた,右 側 は閉 塞 高度 だが
腎機能 は保たれ て い る所見 で あ る.spasmolyticsを
使用 して経過 を見 てい た ところ,癌 痛 が 始 まつ て4日
目に結石の 自然排 出 をみ た.Fig.24は 排 石の 翌 日
の1.V.P,15分 像で 左右 と もほぼ 正 常 像 で あ る.
考 按
以上 の各症 例 に見 る様 に,上 部 尿 路 結 石症 に
於 いてLV.P.で 造 影剤 の排 泄 を認 め な い 腎,
即 ちnon-visualizingkidneyの 潜 在性 の機 能
状態(尿 路 の閉 塞 を除 去 して恢 復 し得 る腎機 能
の意味)は,機 能恢 復 の望 み の な い も の か ら結
石除去後 ほ とん ど正常 の腎 孟 像 を 得 る もの まで
あつて,全 く種 々様 々 で あ る.レ ノ グ ラ ムに よ
る潜在 性腎機 能 判定 につ い て は,zumWinkel
u.MitarbbJ,Haugeu.Mitarb7).南8)等 が そ
の可 能性 を指 摘 して い るが,特 に結 石症 に於 い
てはその機 能 状 態 は多 彩 で治 療 方 針 決定 上 有 用
である.
以上 の症 例 を も とに 潜在 性腎 機 能 判 定 に対 す
る意義 を検 討 してみ る,
1)Seg.Aに つ い て:第8例 以 外 は い つ れ
も健側 よ り低 下 を示 して い る.第1,4,5例
の様 な著明 な低 下,第2,6 ,7例 の 中 等 度低
下・第3例 の軽 度低 下 と概 括 してみ る と,正 確
にはいい難 いが や は り閉 塞 の 程 度(結 石 の大 ぎ
さ・Seg.Cの 傾 向 な どか ら)と 期 間(病 歴 か
ら)に 応 じて低 下 してい る様 で あ る.第8例 は
痛痛が始 まつ て3日 目の レノ グ ラ ムで あ るが,
両側Seg.Aは 砥 ぼ 同 高 で あ る.こ の 例 は 特
に癌痛発作時 に レノ グ ラ ムを行 つ て お り,尿 路
結石の痛痛時 に は 反射 的 に 腎血 流 量 が 低 下 す る
(田 口9・))と云 われ て い るが,予 期 に反 した所
見 で,こ の点 につ いて は更 に検 討 を 加 え るつ も
りで あ る.と にか くSeg.A低 下 の所 見 は結
石 嵌 頓 後 数 日~ それ 以 上 の 日数 をお い て徐 々に
発 現 す る様 で,こ れ は 腎病 変 の ある程 度 進 行 せ
る所 見 と考 え てい る.
2)Seg.Bに つ いて=こ の部 分 は 潜在 性 腎
機 能 判定 に有 力 で あ る と思 われ る.こ れ が全 く
見 られず,従 つ て 腎孟 よ りの尿 の ドレナ ー ジに
よ る低 下 曲線 であ るSeg.Cも 欠 き',た だ血 中
濃 度低 下 に応 じ徐 々に 低下 す る 曲線 を辿 る もの
(第1,5例)は,摘 除標 本 が 示 す様 に機 能 が
全 く廃 絶 した 腎 と考 え られ る.但 し この場 合,
(1)プ ロー ブの腎 に 対 す るセ ン タ ー リン グが 確 実
で あ る事,② コ リメー ターが そ の側 の腎 全 体 を
見 て い る事 等 が 必 要 条件 で あ.Seg.Bが 急 峻
な程 尿細 管 分 泌 能 が 良 い と'考え る わ け だ が,
Seg.Aが 低 い と当 然Seg.Bの 勾 配 は緩 やか
とな るか ら単 な るvisualcomparisonは 危 険
であ る.例 えば 第7例 では 左 右 のA点 を 同 じ高
さに 標準 化 す れ ばSeg.Bの 勾 配 は 殆 ん ど差 が
な く,従 つ てHippuranの 濃 縮 率 は 同 じとい
え る.こ の 部 分 に つ い て従来 色 々 のparameter
が 考案 され て い る(zumWinkelu.Mitarb6).
金子1。).Witcofskietal.uv,Spenceret
al.「)),Kruegereta1.12))が 我 々はzum
Winkel或 はKruegerに 似 た方 法 を とつ てい
る.即 ちA点 を起 点 と してSeg.Bの 立 ち 上 り
の100秒 の 上昇 度(b)と,A点 の 高 さ(a)
との比 率(b/a×100)で 表 現 して い る.最 初
の部 分 だ け を とる理 由 は(1)こ の部 は 腎孟 よ りの
尿 流 下 の 影響 が加 わ らず 尿細 管 よ りの分 泌 の み
の表 現 と考 え られ る こ と,(2)特 に 結石 症 で よ く
あ る ピ ー ク不 明 な場 合 で も測 定 可 能 な こと,③
Seg.Bは 全 体 と して は必 ず しも直線 とな らな
い こ と等 を考 慮 した もの で あ る.我 々 の装 置 及
び条 件下 で正 常 腎(代 償 性 肥 大 を含 む)50例 に
つ い ての この値 の平 均 値 は57.8で 標 準 偏差(σ)
は13.3で あ つ た,各 症 例 の この値 をTableに
示 す(下 線 は患 側)第2,3,8例 は健 側 よ
りも低 値 だが 正 常 範 囲 に あ り,結 石除 去後 の1・IK一
復状 況 も良好 であ る.こ れ 以外 の患 側 腎 は すべ
258仁 平 ・高 橋 ・広 川一 上 部 尿路 結 石 症 に よるNon-visualizingKidneyのRenogramに よ る観 察
Fig.10. Fig.'13.
曜〆勉 隔
」,"'炉
.ヤ'"'
Fig.11.
t
Fig.14.
整 、
吻
毫ク
ゆ
Fig.12,
む
認
Fig.15.
f転 塗
あ脚
鍵拶 が調
仁平 ・高橋 ・広 川一 上 部尿 路結 石 症 に よ るNon-visualizingKidneyのRenogramに よ る観 察259
ド
繁 辮 ㌔實 1,;』 夢
》 」'
㌘
蜜『
櫛
髄 ジ
て アら そて
ノ 勘誘 τ
、,澱
㌧1麟 裂,∴tvFig,19.
\
禦
3
Fig.16.
Fig.17,
鰯1
Fig.20.
Fig,18. Fig.21,
260仁 平 ・高 橋 ・広 川一 上 部尿 路 結 石症 に よ るNon・visualizingKidneyのRenogramに よ る観察
Fig,22.
Table
Case
1
2
3
4
5
6
7
8
R L
0
56,1
46tQ
66,2
57,0
37.5
婁6・-1
54過
65.0
堕墨
43.3
1塾9
一9_
3窪9
41.8
85.6
下線 はaffectedside
Fig.23.
Fig.24.
て57.8-2σ 以 下 の値 であ る.第1,4,5例
は摘 除 標 本 の所 見 に一 致 して低 値Cあ り,第6
例 は 正 常 値 に近 い値 ご結 石 の 自然 排 出後 は好 結
果 が 期 待 され る.第7例 は正 常 値 に近 い 値 で,
排 石 後 は をまぼ 正常 の 腎孟 像 を得 て い る,
この 他peaktime,最 高 計 数 率 等 の 値 は利尿
状 態 その 他 の条 件 に よ り大 き く変 化 す る し,上
部 尿 路 結 石症 では測 定 出来 ない こ と も多 く,再
現 性 も悪 い と云 われ て い る(Spenceretal.fi))
Seg.Bの 各 部 分 と他種 腎機 能 検 査 との相 関に
つ い ては我 国 で も高 橋,鈴 木 他13}14).金 子1。)等
の 発 表 が あ るが,定 量 的 表 現 とす るに は なお検
討 を 要 す る点 が 多 く,我 々 も現 在 臨床 例 につい
て検 討 中 で あ る.
3)Seg.Cに つ い て:色 々の 因子 が重 な る
の で この 部 分 の 分析 は 複 雑 で あ る.我 々は結 石
症 に於 い ては 特 別 のparameterを き めず に,
visualcomparisonに よ り尿 の ドレナ ーヂ或
は 尿 管 の 閉 塞 状 態 の 指 標 と して い る.各 症例 に
見 る様 にnon-visualizingkidneyで は一般 に
閉 塞 は 高 度 で あ るが,第3,7例 の様 に多 少の
遅 延 は あつ て も ドレナ ーヂ の 比較 的 良 い もの も
あ る事 が 示 され た.
1.V.P.で 排 泄 像 が 見 られ な い場 合,レ ノグ
ラ ムに よ りそ の潜 在 性 の 腎機 能 が或 る程 度検 出
され る とい う こ とに つ い て は 色 々の 理 由 が 考
え られ るが,結 局 は 各方 法 に於 け る 目 標 物 質
(1.V.Pで は 造 影剤,レ ノグ ラ ムで は1311)の 検
仁平 ・高橋 ・広 川 一上 部 尿 路 結 石 症に よ るNon・visualizingKidneyのRenogramに よる観 察261
出閾値 の問題 に帰 す る と思 わ れ る ・つ ま り レノ
グラムは1.V.P.に 較 べ よ り鋭 敏 で あ る とい う
ことだが,そ の他 分析 的 で あ る点,撮 影 時 期 を
考慮 しな くて もよい 点等 の利 点 が あ り,所 謂
non.visualizingkidneyの 機i能判 定 に 利 用価
値が高 い.特 に上 部尿 路結 石 症 の場 合 は,症 例
に示す如 く機 能 の よい もの か ら全 く廃 絶 して い
るもの まで多 彩 な所 見 を示 し,治 療 方 針 を 決定
する上 で,又 予 後 判定 の場 合 に有 力 な 資料 とな
る.
結 論
1)上 部 尿路 結石 に よ る所 謂11011-visualiz-
iロgkidlleyの8例 につ い て,レ ノグ ラム に よ
る腎機能観 察 を行 つ た.
2)レ ノグ ラムの各Segmentの 所 見 と結 石
除去後 の1.V.P.或 は 摘 除 腎 とを比 較 した.
3)上 部尿 路 結 石 に よ るnon-visualizing
kidlleyは 種 々の機 能状 態 の も の を含 むが,レ
ノグラムは これ等 の機 能 状態 を よ く反 映 した結
果を示す もの であ る.
4)Seg・Bに つ い て我 々の 用 い てい るpara-
meterと その正 常 腎 に つ い ての 平 均 値 を 示 し
た.又 このparameterがnon『visualizing
kidneyの 機 能判 定 の重 要 な指 標 とな り得 る こ
とを述べ た.
文 献
1)Meade,R,C,andShy,C,M.J,UroL,
86(1)=163,1961.
2)Klapproth,H.J.,Hirakawa,A.andCor-
coran,A.C.=J.Urol.,87(1)177,1962.
3)Schwartz,F.D,andMadeloff,M.S,.J.
Uro1.,87(3)249,1962.
4)Winter,C.C.=J,Urol.,78(2):107,
1957.
5)Spencer,C.C.,Callendine,G.W.and
Vincent,D.J.=J.Lab.&Clin。Med.,57
(3)=350,1961.
6)zumWinkel,K.,Scheer,K.E.u,Becker,
J.=Z.Uro1.,53:535,1960.
7)Hauge,A,,GOpe1,H.,Scholz,A.u.Oeff,
K.DerUrologe,1(1)72,1962.
8)南=内 科,104:67(4),1962.
9)田 口 日泌 尿 会 誌,51(11):1251,1960.
10)金 子:日 内 誌,50:41,昭36.
11)Witcofski,L.R.,Whitley、J.E.,Mesch-
an,J.andPainter,W.E.:Radiology,
76=621,1961.
12)Krueger,R.P.,Sander,A,P。,deMaria,
W.andBaylin,G.J.Amer.J.Roent-
genol.,86819,1961.
13)高 橋,鈴 木 他=最 最 医 学,15:3152,昭35.
14)高 橋,鈴 木 他 ・最 新 医 学,17'1682,昭37.
恩師稲田教授の御指導,御 校閲を深謝 する,
本論文の要 旨は1962年9月22日 京都会館で行われ た
第19回日本泌尿器科学会関西地方会におい て 発 表 し
た,
適
レ・螺醗
撫 羅.、 響琶,い肋蟹憩額郷
晦触。巌 髪 \
血 管収縮 作用 をもち
作 用 持 続 時 間の長 い新 局 所 麻 酔 剤
カルポカイン油糖
本剤はスエーデン ・ボフォース ノーペルクルー ト社
提携品で、同社研究所 に於て、12力隼の歳月を費して
完成 された新局所麻酔剤である。
【特長】1.本 剤はそれ自体血管収縮作用を もつ。2.作 用発現が速かで且つ持続時 間が長い。
3.急性毒性が少 く忍容量が大 で、組織を損傷 しない。
4.麻 酔成功率が極めて高い。
@◎ 雛 撫 維 諜 講 薬品工業株式会社