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正式名称 宇部興産㈱ UBEケミカル教育センター
場所 山口県宇部市藤曲2575-62
センター概要 UBEグループの各事業部門(化学・医薬・建設資材・機械・エネルギー環境)の一
つ、化学カンパニーを対象としている。従来から各所で実施していた技能および安全教
育について、集中化した体験型安全教育施設として 2014 年に設立した。
その中でも宇部ケミカル工場の3交代運転員が主な教育対象であったが、経験を踏ま
えて、千葉・堺など他の化学系工場にも出前に行くようになり、進化し続けている。
この背景として、世代交代や自動化が進みリスクに遭遇する機会が減っていること、
技術・技能の知識を習得しても現場で活かせていないという意見もあり机上教育の限界
を感じていた。そこで「体験・体感教育」を重点とした教育施設を造り、安全行動を身
に付けて技術技能伝承、安全安定操業を遂行できる人財育成を目指している。
(1) センター所員 6名
(2) 年間の研修受講者数 約600人
(3) 教育カリキュラムは豊富で、細分化されている。1日コースではカリキュラムを
複合させて実施するが、職場を1日空けることは難しいことから体験コースを細
分化してコース三時間にまとめるなど参加しやすくする工夫もされている。
1回の受講者数は各項目で最大6名とし、顔を見て(個々人の特性を把握して)
教育している。
① 体験型安全教育(ライン内滞留やバルブリークなど)11項目
② 保全安全教育Ⅰ~Ⅳ(槽内作業や足場組立作業など)9項目
③ フランジ締結教育(ガスケットの選定・施工、高温特性、気密テストなど)
④ 自主保全教育(各種ポンプ分解・組立、ポンプ振動診断など)
⑤ 爆発体感教育(ガスや溶剤による引火・爆発など)
(4) 施設見学
工場敷地内の一角に、センター事務所があり別に爆発体験棟・保全棟・体験棟の
三棟が併設されている。今回は体験棟を施設見学させて頂いた。
① 体験施設 【全景】
【体験棟入口】
【ガスケット特性を体感する設備】
プラントにおいては高温液体が配管を通ることも
あり常温時の作業でガスケットサイズ間違えや不良ボ
ルト取り付けによってプラント再稼働して起きる不具
合事象を体感できる。
【ライン内滞留・薬傷熱傷を体感する設備】
透明配管によりライ
ン内に滞留している残
液を見えるようにして
いる。
ライン内の液体抜き
取り作業をする場合
に、完全に抜き取って
あるという思い込みな
どにより思わぬところ
に残液があり、不用意
にフランジを外してしまうなどで薬
液・高温の液体をかぶり被災してしま
うことを体感できる。
配管の傾斜やホースのたわみ、N2
充填による液抜き時に残液する様子
など 経験豊富な指導員から現場で
起こるエラーをわかりやすく説明し
て頂きこういう教え方ならば受講者
も「腹落ち」するのではないかと思った。研修項目ごとに、意義・注目点・事故例な
どを示す掲示ボードを用意して、研修者への訴求を行っていて自部門の事故例を解
析した結果を織り込んだハード&ソフトにより、暗黙知を可視化して受講者に意識
変革を訴えている。
【構内移動を体感する設備】
手前の入口から出口に移
動する間に配管や床に資
材が置いてあるところを
二人がかりでフランジ付
き長尺配管を移動するな
ど安全に通行するために
相互の合図や注意が必要
です。研修の初めに受講者
たちが相互理解を促進す
るためのアイスブレイク
に使われるとのこと。一見
なんてことないような現
場の一部を切り取った施
設だが、ここにも現場を知っている作り手の側の思いが満載している。
【槽内作業】
槽内の作業のための保護具を着用する意味や、換気装置の段取りによって換気気流が
大きく変わることを体験できる。また槽内で被災(酸欠)した作業員を槽外へ救出する
訓練もされており槽内事故の救急作業で、教科書通りの3点確保ハーネスではマンホー
ルに引っかかって被災者を出せない。ではどうするか。といった現場の実情に即した指
導を行っている。
槽内が見えるようになっている。
【フランジ締結】
フランジ部の締付手順を理解して、トルク管理・工具
の使い方を体験できる。右の写真はトルクアナライザ、
締め付ける力加減はレンチの持ち手位置によって変わる
ことを数値でわかるようになっている。
水平・垂直方向にフランジ部があり、締結作業を体験し
て締付け軸力が測定できる。測定結果はパソコン画面上
に8本のボルトへどのように力が加わっていくのか工程
が見える化できる。
講師の方に模範演技して頂いたが、測定値は赤い線の
8角形で均一に締め付けられていることがわかる。
② 過去の失敗について
過去の災害を展示しています。事
象、原因、対策について細かく記載
されており、事故の原因となった
ガスケットなど失敗の現物も展示
していた。
(5) 全体を通しての感想
〇来年度以降も体験施設の増強を検討している。
〇体験・体感教育の一般的な方向として、「これやると危ないよ」という教え方が多い
が、ここでは「うまくやるにはどうするか」その先は安全につながっているという
教え方が現場目線に設計されている。
〇技術技能向上ということよりも、溶接などは現場の運転員が実施することはない作
業であるが管理監督や検収者としての視点を持たせるために実技指導している。
〇見学記では一部の体験施設を紹介したが、多くの体験施設は全て現場に通じている
ノウハウが詰まっていた。
(6) その他(隣接している施設)
隣接してユーエスパワー(太陽光)発電所がある。
太陽光電池出力21,920kW
太陽光パネルの遠くに見える橋は、宇部興産㈱専用道路の橋で道路は
全長 31.94 km に及ぶ、日本一長い私道である。
公開状況 〇一般公開はしていない。(※2017 年 9 月 26 日 国立山口大学が主催する産学連携地域
イノベーションを開催している。)
〇研修対象者は基本的にはケミカル工場の運転員を中心としているが、関係する企業に
対しても実施している。
見学記作成 日向 洋吉 2018 年 2 月 8 日