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Instructions for use Title レンバチニブおよびソラフェニブの治療効果予測因子の探索ならびにFGFシグナル阻害を介したレンバチニ ブの肝癌Cancer stem cellsへの効果 Author(s) 重沢, 拓 Citation 北海道大学. 博士(医学) 甲第14491号 Issue Date 2021-03-25 DOI 10.14943/doctoral.k14491 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/81855 Type theses (doctoral) Note 配架番号:2610 File Information Taku_Shigesawa.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Instructions for use

Title レンバチニブおよびソラフェニブの治療効果予測因子の探索ならびにFGFシグナル阻害を介したレンバチニブの肝癌Cancer stem cellsへの効果

Author(s) 重沢, 拓

Citation 北海道大学. 博士(医学) 甲第14491号

Issue Date 2021-03-25

DOI 10.14943/doctoral.k14491

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/81855

Type theses (doctoral)

Note 配架番号:2610

File Information Taku_Shigesawa.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学位論文

レンバチニブおよびソラフェニブの治療効果予測因子の探索

ならびに FGF シグナル阻害を介したレンバチニブの肝癌

Cancer stem cells への効果

(Exploring predictors of therapeutic efficacy of

lenvatinib and sorafenib, and analysis of effect of

lenvatinib on hepatocelluar carcinoma Cancer Stem Cells

through inhibition of FGF signaling)

2021 年 3 月

北海道大学

重沢 拓

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学位論文

レンバチニブおよびソラフェニブの治療効果予測因子の探索

ならびに FGF シグナル阻害を介したレンバチニブの肝癌

Cancer stem cells への効果

(Exploring predictors of therapeutic efficacy of

lenvatinib and sorafenib, and analysis of effect of

lenvatinib on hepatocelluar carcinoma Cancer Stem Cells

through inhibition of FGF signaling)

2021 年 3 月

北海道大学

重沢 拓

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目 次

発表論文目録および学会発表目録 ・・・・・・・・・・ 1 頁

要旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 頁

略語表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 頁

緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 頁

(第一章)

緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 頁

方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 頁

結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 頁

考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 頁

(第二章)

緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 頁

方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 頁

結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 頁

考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 頁

結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 頁

謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 頁

利益相反・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 頁

引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 頁

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発表論文目録および学会発表目録

本研究の一部は以下の論文に掲載。

1. Taku Shigesawa Goki Suda Megumi Kimura Tomoe Shimazaki Osamu

Maehara Ren Yamada Takashi Kitagataya Kazuharu Suzuki Akihisa

Nakamura Masatsugu Ohara Machiko Umemura Naoki Kawagishi Masato

Nakai Takuya Sho Mitsuteru Natsuizaka Kenichi Morikawa Koji Ogawa

Naoya Sakamoto

Baseline angiopoietin‐2 and FGF19 levels predict treatment response in

patients receiving multikinase inhibitors for hepatocellular carcinoma

JGH OPEN 2020 April 11. Online ahead of print.

2.Taku Shigesawa, Osamu Maehara, Goki Suda, Mitsuteru Natsuizaka, Megumi

Kimura, Tomoe Shimazaki, Koji Yamamoto, Ren Yamada, Takashi Kitagataya,

Akihisa Nakamura, Kazuharu Suzuki, Masatsugu Ohara, Naoki Kawagishi,

Machiko Umemura, Masato Nakai, Takuya Sho, Kenichi Morikawa, Koji Ogawa,

Shunsuke Ohnishi, Masaya Sugiyama, Masashi Mizokami, Hiroshi Takeda,

Naoya Sakamoto

Lenvatinib suppresses cancer stem-like cells in HCC by inhibiting FGFR

1-3 signaling, but not FGFR4 signaling

Carcinogenesis 2020 May 25. Online ahead of print.

本研究の一部は以下の学会にて発表した。

1. 重沢拓、須田剛生、坂本直哉.

Lenvatinib は肝癌 Cancer stem cell を抑制し、殺細胞性抗癌剤と相乗効果を有

する~Lenvatinib ・TACE 併用療法の基礎的検討~

第 24 回日本肝臓学会大会、2020 年 11 月 5 日~11 月 5 日、神戸

2. Taku Shigesawa, Goki Suda, Naoya Sakamoto.

Biomarkers of treatment response in sorafenib and lenvatinib for patients

with unresectable HCC.

The 10thAsia-Pacific Primary Liver Cancer Expert Meeting、2019 年 8 月 29

日~8月 31 日、札幌

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要旨

【背景と目的】

本邦において進行肝癌の全身化学療法の第一選択薬として 2009 年にソラフェニ

ブが、2018 年にレンバチニブが承認された。しかしソラフェニブ、レンバチニブの

有効性を予測する血清バイオマーカーは確立されていない。

そこで本研究では第一章でソラフェニブおよびレンバチニブの治療効果予測因

子となり得る新規血清バイオマーカーについて検討した。

また、肝癌は他癌腫と比較し既存の殺細胞性抗癌剤に抵抗性であり、肝癌幹細胞

(Cancer stem cell, CSC)の存在が一因と考えられている。本研究の第二章ではソ

ラフェニブとレンバチニブの 肝癌における CSC への効果、および CSC と

Fibroblast growth factor(FGF)伝達シグナルとの関連について検討を行った。

【対象と方法】

(第一章)

本研究は後方視的単施設観察研究である。2009 年 8 月から 2019 年 1 月までに北

海道大学病院に通院された進行肝癌患者で、レンバチニブあるいはソラフェニブが

投与された患者を対象とした。対象者のうち、治療開始 2か月以内に他抗癌剤やカ

テーテル治療が併用された患者、治療開始後 2か月以内に治療中止となった患者や

経過が負えなくなった患者を除外した。これら対象患者の治療反応性、患者因子、

治療前血清バイオマーカー値の関連性について検討した。治療効果は Modified

response evaluation criteria in solid tumors(mRECIST)基準を用いて評価した。

(第二章)

本検討では、肝癌細胞株を使用し、フローサイトメーターで分離した

CD44High/CD133High分画細胞を CSC と定義した。まず、CSC および非 CSC の腫瘍増殖

能、コロニー形成能、遊走能を検討した。次に 5-fluorouracil(5-FU)、レンバチニ

ブあるいはソラフェニブを添加し薬剤耐性能試験を行った。さらに 5-FU、レンバ

チニブあるいはソラフェニブを添加後にフローサイトメーターで CSC 割合の変化

について解析した。同様に CSC を皮下移植した Xenograft model mouse を用いてレ

ンバチニブあるいはソラフェニブを経口投与し腫瘍増殖抑制効果と CSC 割合の変

化について検討した。続いて、細胞株 Huh7 由来の CSC と非 CSC の FGFR 発現につい

てウエスタンブロットと qPCR で解析した。次にこれらの細胞に FGFR1∼3 阻害剤な

らびに FGFR4 阻害剤を投与、また FGFR1∼3 ならびに FGFR4 をノックダウンし CSC 割

合の変化について検討した。最後に FGFRs のリガンドとなる FGF2 あるいは FGF19

を添加または、ノックダウンし CSC 割合の変化について検討した。

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【結果】

(第一章)

ソラフェニブまたはレンバチニブで治療された進行肝癌患者 114 名をスクリー

ニングした。除外基準に該当した症例を除外し、最終的にソラフェニブ群 29 名、

レンバチニブ群 27 名がエントリーされた。レンバチニブ群およびソラフェニブ群

の患者背景のうち、年齢中央値、肝外転移の有無、および血小板数に関して両群間

で有意差を認めた。ソラフェニブ群では、Responder と Non-Responder でベースラ

インバイオマーカー値に有意差を認めなかった。一方でレンバチニブ群ではベース

ライン FGF19 および Angiopoietin 2(ANG2)値は Non-Responder で Responder と比

較し有意に高かった。

次にレンバチニブ群のベースライン ANG2 および FGF19 値にカットオフ値を設定

し治療反応との関連を解析した。ベースライン ANG2 低値群で Responder 率は 86%

(12/14)、高値群でResponder 率は31%(4/13)だった。FGF19低値群ではResponder

率 86%(12/14)、高値群 31%(4/13)であった。

ANG2 および FGF19 のカットオフ値を用いて層別化すると、ベースライン

ANG2/FGF19 低値の場合、全例(9/9)で Responder となった。一方で ANG2/FGF19

高値の場合、Responder 率 13%(1/8)であった。ソラフェニブ群では治療効果は

ベースライン ANG2 および FGF19 値に関連はなかった。

(第二章)

CSC は非 CSC と比較し腫瘍形成能、コロニー形成能、遊走能、5-FU に対する薬剤

耐性能が高いことが示された。また 5-FU 添加によって CSC 割合は増加していた。

次にレンバチニブおよびソラフェニブ添加で同様の検討を行ったところ、レンバ

チニブは CSC 割合が減少したが、ソラフェニブでは CSC 減少効果が見られなかっ

た。in vivo の検討ではレンバチニブはソラフェニブよりも高い腫瘍形成抑制効果

が見られた。CSC 割合はレンバチニブでより減少していた。

FGFR 発現の解析では、CSCが非 CSCと比較し FGFR1 高発現であった。次に FGFR1∼3

阻害剤ならびに FGFR4 阻害剤を投与し解析したところ、CSC 割合は FGFR4 阻害剤と

比較し FGFR1∼3 阻害剤でより減少効果が認められた。次に CSC に対して FGFR1∼3 な

らびに FGFR4 をノックダウンしたところ FGFR1∼3 ノックダウンにおいて CSC 減少

効果が見られたが、FGFR4 ノックダウンでは CSC 減少が見られなかった。

CSC に対し FGF2 あるいは FGF19 を添加したところ、FGF2 添加群では CSC 増加が

見られたが、FGF19 では CSC に変化は見られなかった。次に CSC に対して FGF2 あ

るいは FGF19 をノックダウンし CSC の変化を検討したところ、FGF2、FGF19 ノック

ダウン細胞ではいずれもコントロール細胞と比較し著明に CSC 割合が減少してい

た。

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【考察】

(第一章)

本研究ではベースラインの血清 FGF19 および ANG2 レベルはレンバチニブに対す

る治療反応の予測因子であることが示された。これまでの研究では進行肝癌患者

におけるソラフェニブの治療反応予測因子は明らかとなっていない。本研究結果

では血清ベースライン FGF19 および ANG2 レベルが低値の場合、レンバチニブで良

好な治療効果が得られる可能性が示唆された。また血清ベースライン FGF19 およ

び ANG2 レベルが高値の場合、レンバチニブに対する応答不良が予想されるため、

治療選択においてソラフェニブが適している可能性があることが示唆された。

(第二章)

肝癌において CD44High/CD133High細胞は CSC の特徴を持ち、予後不良と関連して

いることが報告されている。本研究はレンバチニブおよびソラフェニブの CSC に

対しての治療効果を解析した最初の報告である。レンバチニブはソラフェニブと

比較し CSC に対しての治療効果が高いことが示された。さらに、レンバチニブの

FGFR 阻害作用が CSC 抑制効果を有することが示された。特に FGFR1∼3 シグナル阻

害では CSC 割合を減少させたが、FGFR4 シグナル阻害は CSC 割合に影響を与えな

いことが明らかとなった。

【結論】

進行肝癌に対する治療薬であるレンバチニブおよびソラフェニブの選択基準と

してベースライン ANG2 と FGF19 が有用であることが示された。また、レンバチニ

ブは肝癌 CSC に対して高い抑制効果を有し、その機序として FGFR1∼3 阻害作用が

重要であることが明らかとなった。

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略語表

本文中および図表に記載した略語は以下の通りである。

α-fetoprotein, AFP

ANG2, Angiopoietin 2

BCLC, the Barcelona Clinic Liver Cancer

CR, Complete Response

CSC, Cancer stem cell

CT, Computed Tomography

CTCAE, Common Terminology Criteria for Adverse Events

DMSO, Dimethyl sulfoxide

DMEM, Dulbecco’s modified Eagle’s medium

EMT, epithelial mesenchymal transition

FACS, Fluorescence-activated cell sorting

FGF, Fibroblast growth factor

FGFR, Fibroblast growth factor receptors

HGF, Hepatocyte growth factor

KLF5, Krüppel-like factor 5

mRECIST, Modified response evaluation criteria in solid tumors

OR, Objective response

OS, Overall survival

PD, Progressive Disease

PDGFR, Platelet-derived growth factor receptor

PFS, Progression-free survival

PR, Partial Response

PS, performance status

qRT-PCR, Quantitative real-time reverse transcriptase-polymerase chain

reaction analysis.

SD, Stable Disease

TACE, Transarterial chemoembolization

TAI, Transcatheter Arterial Infusion

TTP, Time to progression

VEGF, vascular endothelial growth factor

5-FU, 5-fluorouracil

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緒言

肝癌は世界における悪性新生物中、罹患率第 6 位、死亡率第 3 位を占める予

後不良の疾患である(Llovet JM et al., 2003)。一般的に、癌の治療には外科

的切除、化学療法、放射線療法および免疫療法などが挙げられるが、肝細胞癌の

治療には、これらに加え、穿刺局所療法、肝動脈化学塞栓療法、肝動注化学療法、

肝移植といった肝細胞癌に特異的な治療法が確立され実践されてきた。

一方で、2000 年代初頭まで、進行肝癌において他癌腫のように有効性が確立

された全身化学療法はなく、肝動脈化学塞栓療法、肝動注化学療法に対し不適

格・不応となった際の後治療は存在せず予後不良であった(Llovet JM et al.,

2008)。

こうした状況の中、2007 年に進行肝癌患者に対する新規分子標的治療薬ソラ

フェニブの 2つの世界的な大規模臨床試験(SHARP 試験および Asia Pacific 試

験)の結果が報告された。いずれの試験においても、プラセボ群と比較しソラフ

ェニブ群で全生存期間、病勢制御率、無病悪生存期間の有意な延長が示された

(Llovet JM et al., 2008, Ann-Lii Cheng et al., 2009)。この結果を受け、

2009 年に本邦で初めて進行肝癌に対する全身化学療法薬としてソラフェニブが

承認された。

ソラフェニブは performance status (PS)が良好な Child-Pugh 分類 A で、

Transarterial chemoembolization (TACE)不能・不応例、肝外病変や脈管侵襲を

有する症例などに適応であり(肝癌診療ガイドライン 2020 年度版)、進行肝癌に

対する唯一の標準化学療法となった。ソラフェニブ登場以降も、肝癌に対する、

新規全身化学療法候補薬の臨床試験が多数試みられてきたが、いずれの試験も

ソラフェニブに対しての優越性または非劣性が示せず、約 10 年もの間、ソラフ

ェニブが進行肝癌に対しての唯一の全身化学療法であった(Cheng et al., 2013,

Johnson et al., 2013, Cheng et al., 2016)。

2017 年に新規分子標的薬レンバチニブの第Ⅲ相試験(REFLECT 試験)により、

レンバチニブのソラフェニブに対する Overall survival(OS)(主要評価項目)

の非劣性および Progression-free survival(PFS)、Time to progression(TTP)、

奏効率(いずれも副次評価項目)の優越性が初めて示された(Kudo et al., 2018)。

これを受けて 2018 年より本邦でレンバチニブが進行肝癌に対して承認された。

ソラフェニブ、レンバチニブは共にマルチキナーゼ阻害剤であるがその作用

機序は異なる。ソラフェニブは c-RAF、b-RAF のセリン・メチオニンキナーゼ活

性と c-Kit、Flt-3、Ret、Vascular endothelial growth factor-1(VEGFR-1)、

Vascular endothelial growth factor-2(VEGFR-2)、Vascular endothelial

growth factor-3(VEGFR-3)、Platelet-derived growth factor receptor-β

(PDGFR-β)のチロシンキナーゼ活性を阻害する。肝細胞癌においては腫瘍細胞

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の Raf/MEK/ERK 経路の Raf キナーゼを標的とした腫瘍細胞増殖抑制と、VEGFR-

2/3 および PDGFR-β のチロシンキナーゼを標的とした血管新生阻害の 2 つの作

用機序により、抗腫瘍効果を発揮することが知られている(Llovet JM et al.,

2008)。一方レンバチニブは VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、c-Kit、Ret のチロシ

ンキナーゼ阻害作用を持つ点はソラフェニブと類似しているが、Fibroblast

growth factor receptor 1(FGFR1)、Fibroblast growth factor receptor

2(FGFR2)、Fibroblast growth factor receptor 3(FGFR3)、Fibroblast growth

factor receptor 4(FGFR4)、Platelet-derived growth factor receptor(PDGFR-

α)に対してチロシンキナーゼ阻害作用を持つ点でソラフェニブと作用機序が

異なる。特に肝癌に対するレンバチニブの作用機序として FGFR 阻害作用が重要

と考えられている(Matsuki et al., 2018)。

FGFR は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4 の 4 つのサブタイプを有する一回膜貫

通型チロシンキナーゼ受容体である。リガンドである Fibroblast growth

factor(FGF)はヒトにおいて現在 22 種が知られ、血管形成、創傷修復の調整を含

む、生体生物における多くの生理学的役割を担っている。癌においては腫瘍血管

新生、増殖、悪性形質転換にかかわることが知られている(Beenken et al.,

2009)。特に肝癌では FGF19/FGFR4 が高発現し、オートクリンループを形成する

ことが腫瘍増殖の一因とされている(Raja et al., 2019)。同機序に着目した

FGFR4 阻害剤の開発も進んでいる(Lang et al., 2019)。

これまで複数の研究で、ソラフェニブに対する血清バイオマーカーを用いた

治療効果予測因子が分析されているが確立されたものは存在しない(Shao et

al., 2015)。また、レンバチニブにおいても治療効果予測因子となる血清バイオ

マーカーの開発が臨床上、強く望まれる。そこで本研究の第一章ではソラフェニ

ブ、レンバチニブの治療効果予測因子となり得る新規血清バイオマーカーにつ

いて検討した。

次に第二章では肝癌の高い薬剤耐性能について、肝癌幹細胞 (Cancer stem

cell, CSC)に着目して検討を行った。肝癌は他癌腫と比較し高い薬剤耐性能を

有し既存の殺細胞性抗癌剤に抵抗性でソラフェニブ登場以前は有効な抗癌剤が

存在しなかった。癌細胞が薬剤耐性能を獲得するうえで重要なのが、CSC の存在

である。CSC は自己複製能、多分化能といった幹細胞様の性質や高い浸潤能、遊

走能を有し、癌の悪性化と関連する(Yang et al., 2010, Ma et al., 2013,

Schulze et al., 2013, Maehara et al., 2015)。さらに CSC は薬物排出能に優

れ、酸化ストレス耐性を持ち、高い抗癌剤耐性能を有する。この CSC の存在が肝

癌の高い治療抵抗性の一因と考えられている(Ma et al., 2007, Yang et al.,

2008, Yamashita et al., 2009, Zhu et al., 2010, Lee et al,.2011)。

これまでに CSC を識別するための表面マーカーに関連する報告は多数あり、

特に肝癌においては CD44、CD133 高発現細胞(CD44 High/CD133 High)が CSC の特徴

Page 13: DOI Doc URL - eprints.lib.hokudai.ac.jp

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を有することが報告されている(Yang et al., 2010)。

私達は以前、食道扁平上皮癌における CSC は FGF シグナル伝達経路の活性化

によって維持されており、FGFR 阻害剤によって抑制される可能性があることを

報告した(Maehara et al., 2017)。その他様々な癌腫においても、FGF を介した

シグナル伝達が CSC の維持に関与していることが報告されている。非小細胞肺

癌では、FGFR1 を介したシグナル伝達が幹細胞様表現型の獲得を促進することが

報告されている(Ji et al., 2016)。同様に、頭頸部癌では、CSC における FGFR

シグナルはシスプラチンに対する抵抗性を調節する役割を果たし、FGFR 阻害剤

は CSC を減少させた(McDermott., 2018)。トリプルネガティブ乳癌では、FGFR

シグナルは Notch1 と協働して CSC を維持し、抗癌剤耐性に寄与していた(Bhola

et al.,2016)。

現在のところ、進行肝癌治療薬であるソラフェニブ、レンバチニブの肝癌 CSC

に対する治療効果は明らかにされていない。また肝癌において、CSC と FGF シグ

ナル伝達の関係についても不明である。

肝癌においても CSC の維持と FGF シグナル伝達が関連している場合、ソラフ

ェニブとレンバチニブのキナーゼ親和性プロファイルの主要な違いである FGF

シグナル伝達阻害作用の有無が、両者の治療効果の差異の要因である可能性が

考えられる。本研究では、マルチキナーゼ阻害剤であるソラルフェニブとレンバ

チニブの 肝癌における CSC への効果、および CSC と FGF 伝達シグナルとの関連

について検討を行った。

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《第一章》

レンバチニブおよびソラフェニブの治療効果予測因子となる

バイオマーカーの探索

緒言

2017 年に新規分子標的薬レンバチニブの第Ⅲ相試験(REFLECT 試験)により、

レンバチニブのソラフェニブに対する Overall survival(OS)(主要評価項目)

の非劣性および Progression-free survival(PFS)、Time to progression(TTP)、

奏効率(いずれも副次評価項目)の優越性が示され(Kudo et al., 2018)、これ

を受けて 2018 年より本邦でレンバチニブが進行肝癌に対して承認された。

ソラフェニブ、レンバチニブ共にマルチキナーゼ阻害剤であるがその作用機

序は異なる。特にレンバチニブは Fibroblast growth factor receptors

(FGFR)1∼4 に対して強力なチロシンキナーゼ阻害作用を持つ点でソラフェニブ

と作用機序が異なり、特に肝癌治療においてはこの FGFR 阻害作用が重要と考え

られている(Matsuki et al., 2018)。

これら作用機序の異なるソラフェニブ、レンバチニブの有効性を予測するバ

イオマーカーについて REFLECT 試験のサブ解析で検討された(European Society

for Medical Oncology Congress 2017: ESMO 2017)。この解析では進行肝癌患

者の肝癌組織検体を用い、VEGF や FGF に関連した遺伝子の発現レベルのクラス

ター分析による分類と予後の関連について検討された。VEGF/FGF 関連の遺伝子

が高発現の場合、レンバチニブ群で長期予後が得られたが、ソラフェニブ群では

遺伝子発現が低い群で予後良好であった。従って組織検体の VEGF/FGF に関連す

る遺伝子を解析することでソラフェニブ、レンバチニブの選択基準となり得る

可能性が報告された。しかし実臨床上、全例に組織検体を採取することは困難で

ある。その為、より低侵襲なソラフェニブ、レンバチニブの効果予測因子となる

血清バイオマーカーの開発が臨床上、強く望まれる。これまで、ソラフェニブに

対する血清バイオマーカーを用いた治療効果予測因子が分析されているが確立

されたものはない(Shao et al., 2015)。そこでソラフェニブ、レンバチニブの

治療効果予測因子となり得る新規血清バイオマーカーについて検討した。着目

したのは、先述の ESMO 2017 でレンバチニブとソラフェニブの治療効果予測マ

ーカーとして解析対象であった VEGF である。VEGF は生体内で Angiopoietin-

2(ANG2)と共に血管新生に作用する。正常状態では血管内皮細胞を管腔外から裏

打ちする周細胞から Angiopoietin-1(ANG1)が分泌され、血管内皮細胞に発現す

る受容体 Tie2 を活性化することにより血管内皮細胞の維持に働いている。組織

Page 15: DOI Doc URL - eprints.lib.hokudai.ac.jp

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低酸素状態や炎症下では、Ang2 がワイベル・パラード体から放出され、Tie2 と

の競合的結合により、Ang2 は Ang1 のシグナル伝達に拮抗する。さらに VEGF の

存在下では、Ang2 は内皮細胞の増殖、遊走、および血管基底膜の破壊を伴う血

管新生を誘導する。 癌組織においては、血清 VEGF 値は肝細胞癌で増加し、腫瘍

の血管新生および進行と相関があることが示されている(Poon et al., 2003.)。

また VEGF の血清値が高いと、肝細胞癌における経動脈化学塞栓療法に対する治

療反応不良が予測される(Ronnie et al., 2004.)。また ANG2 も同様に肝癌の悪

性化と関連し(Miyahara et al., 2011)、肝癌組織中の Ang2/ANG1 mRNA 発現比

が高い場合、腫瘍門脈浸潤、腫瘍径、腫瘍内微小血管密度と密接に関連しており、

Ang2/ANG1 mRNA 比が高い群の患者の生存期間は、低い群と比較して有意に不良

であった。

次にバイオマーカー候補として着目したのが血清 FGF である。レンバチニブ

はソラフェニブと異なり FGF-FGFR シグナルを特異的に阻害する。22 種の FGF の

うち多くはパラクラインとして働くが、FGF19 サブファミリー(FGF19、FGF21、

FGF23)のみエンドクラインとして遠隔臓器に作用する。正常組織において FGF19

は回腸で分泌され、肝臓内で働き胆汁酸の分泌調整を行っている。FGF21 は肝臓

から分泌され、脂肪細胞で働き脂肪酸の分泌を調整する(Kuro et al., 2011.)。

これらは癌組織においても重要であり、肝癌ではFGF19の発現は腫瘍の大きさ、

Barcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)病期の進行度、肝切除術後の早期再発

と関連していることが報告されている(Lang et al., 2019.)。また甲状腺癌患

者では血清中 FGF21 の上昇が、腫瘍病期、リンパ管浸潤、再発と有意に関連して

いた(Kang et al., 2019.)。 このような背景から、ベースラインの血清中エン

ドクライン FGF 値によってレンバチニブ、ソラフェニブの治療効果に差が見ら

れるという仮説を立て、候補バイオマーカーとした。

さらにソラフェニブ治療において Hepatocyte growth factor (HGF)がソラフ

ェニブの治療効果の予測因子となる可能性が示されている(Miyahara et al.,

2011, Chu et al.,2013)。従って本研究では血清中の VEGF、ANG2、FGF19、FGF21、

HGF を解析対象とした。

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11

方法

1.研究の種類・デザイン

単施設後ろ向き観察研究

2.対象となる患者

2009 年 8 月から 2019 年 1 月の間に北海道大学病院で通院された患者の

うち以下の基準(1)を満たし、かつ除外基準(2)のいずれにも該当し

ない場合を適格とした。

(1)選択基準

①北海道大学病院で進行肝癌に対してソラフェニブあるいはレンバチニ

ブが投与された患者

②本研究への参加について自由意思による同意が得られた患者、もしく

は研究の参加について拒否しない患者

③適切な臨床情報を有する患者

(2)除外基準

①治療開始 2か月以内に他抗癌剤が併用された患者

②治療開始 2か月以内に TACE や Transcatheter Arterial Infusion(TAI)

などのカテーテル治療が併用された患者

③治療開始後 2 か月以内に化学療法関連有害事象等で治療中止となった

患者

④治療開始後 2か月以内に経過が追えなくなった患者

3.検討項目

ソラフェニブまたはレンバチニブで治療された進行肝癌患者を対象と

し、治療反応性と、患者因子(年齢、性別、腫瘍因子、治療前血液生化

学的データ等)や治療前血清バイオマーカー値の関連性について検討を

行った。

4. 観察及び測定項目とその測定方法

診療録を用いて治療開始時点での年齢、性別、肝癌の成因、The

Barcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)病期、治療開始時の Child-Pugh

score、肝外転移や脈管浸潤の有無、血液検査データ、腫瘍マーカーに

関するデータを収集した。さらに治療開始時点での候補血清バイオマー

カー値(FGF19、FGF21、ANG2、 HGF、VEGF)を ELISA 法にて測定した。

血清 FGF19、FGF21、ANG2、HGF、および VEGF 値は製造元のプロトコール

(FGF19、ANG2、VEGF:R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス、米

国;、FGF21:Merck Millipore、ダルムシュタット、ドイツ)に従って

測定された。患者は 2週間ごとに定期的に臨床検査と身体所見を評価さ

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12

れ、治療開始後 2〜3か月ごとに Dynamic Computed Tomography(CT)で治

療効果判定が行われた。

5.治療プロトコール

ソラフェニブは 1日 2回 400mg の用量で経口投与された。レンバチニブ

の投与量は治療開始時の体重が 60kg 未満では 8mg/日、体重 60kg 以上で

は 12mg/日が投与された。Common Terminology Criteria for Adverse

Events(CTCAE) Version5.0 に基づいて Grade3 以上の有害事象を認めた

場合、または治療中に肝癌の進行を認めた場合に中止とした。投与量

は、有害事象の発生と忍容性に基づいて主治医の判断で調整された。

6.治療効果の評価

治療効果は、治療開始後 2〜3か月毎に Dynamic CT を用いて Modified

response evaluation criteria in solid tumors (mRECIST)基準に基づ

き評価した。Complete Response(CR)は全ての標的病変の腫瘍濃染が消

失した状態を示す。Partial Response(PR)はベースラインの標的病変の

径の和(以下、径和)に比して、標的病変の viable lesion の径和が

30%以上減少した状態を示す。Progressive Disease(PD)は経過中の最

小の径和に比して、標的病変の viable lesion の径和が 20% 以上増

加した状態を示す。Stable Disease(SD)は経過中の最小の径和に比し

て、PR に相当する縮小がなく PD に相当する増大がない状態を示す。

最近の報告によると、mRECIST に基づく Objective response(OR)は、

全身化学療法を受けている進行肝癌患者の全生存期間の独立した予後因

子であるとされている(Arizumi et al., 2014,Kudo et al., 2019,

Lencioni et al., 2017)。したがって、レンバチニブ群では、治療効果

が OR(CR および PR)の症例を Responder として定義した。一方で、ソ

ラフェニブはレンバチニブと比較し OR 率がより低いが、ソラフェニブ

には病勢進行を抑えることで結果的に OS を延長させる効果があり、

long-SD を目標に治療を行うことが推奨されている。つまりソラフェニ

ブを投与された患者の OS に対する long-SD の影響は、OR と同様であ

り、SD が 6 か月を超える患者(long-SD)および PR、CR を Responder、

それ以外の患者(PD、short SD)を Non-Responder と定義した(Arizumi

et al., 2014)。

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13

7. 統計解析

カテゴリー変数の解析にはχ2検定とフィッシャーの直接確率検定を使

用し、連続変数の解析には Mann-Whitney の U 検定を使用した。P値

 <0.05 を統計的に有意であるとした。カットオフ値は、Youdenindex を

用いて受信者動作特性(ROC)曲線に基づいて算出した。2つの変数間の

関係は Spearman の順位相関係数によって分析した。統計分析は、Prism

7.03(GraphPad Software,Inc.,La Jolla,CA、USA)ソフトウェアパッ

ケージを使用した。

8.被験者を対象とした研究におけるインフォームドコンセント

本研究は「ヘルシンキ宣言 (2013 年 10 月改定) 」及び「人を対象とする

医学系研究に関する倫理指針 (平成 26 年文部科学省・厚生労働省告示第

3号) 」を遵守して実施され、あらかじめ臨床研究実施計画書と患者説明

同意文書を北海道大学病院長へ提出し、研究の実施に関して自主臨床研

究審査委員会の承認及び病院の許可を得て行われた (自主臨床研究番

号:自 017-0521) 。研究参加に対して書面による同意が得られた症例、

または参加を辞退しなかった症例を対象とした。また研究情報の公開に

ついては、研究の目的を含めて、研究の実施についての情報を当教室上の

ホームページに公開(オプトアウト)し、さらに拒否の機会を保障してい

る。

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14

結果

1.患者背景

Figure 1 に示す通り、2009 年 8 月から 2019 年 1 月の間に北海道大学病

院でソラフェニブまたはレンバチニブで治療された進行肝癌患者 114 名

(ソラフェニブ群 80 名、レンバチニブ群 34 名)を対象とした。ソラフ

ェニブ群 80 名のうち、治療期間が 2 か月未満の症例(21 名)、他抗癌

剤との併用例(19 名)、同時期に肝動脈化学塞栓術および肝動注療法を

併用した症例(7 名、)何らかの理由で臨床経過が追えなかった症例(4

名)を除外し 29 名が登録された。レンバチニブ群のうち、治療期間が 2

か月未満の症例(6 名)、他抗癌剤との併用例(1 名)を除く 27 名が登

録された。

Figure 1. Study flow

Eligible criteria を満たしたレンバチニブおよびソラフェニブ治療症

例の患者背景を Table 1 に示す。年齢中央値、肝外転移の有無、および

血小板数に関して両群間で有意差を認めた。

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15

Table 1 レンバチニブおよびソラフェニブの患者背景

Lenvatinib (n=27) Sorafenib

(n=29) p-Value

Baseline characteristics

Age-(yr)

Sex (Male/Female)

Etiology -no. (%)

HBV

HCV

NBNC

Vascular invasion-no.(%)

Extrahepatic extension-no. (%)

BCLC stage-no. (%)

B

C

Child-Pugh class-no. (%)

A

B

Biochemical analysis

Albumin-g/dL

Total bilirubin-mg/dL

Prothrombin time -%

Platelet -*104/μL

Alpha-fetoprotein-ng/mL

AFP-L3%

PIVKA-II-mAU/mL

68 (54-83)

25/2

10 (37%)

6 (22%)

11 (41%)

7 (26%)

6 (22%)

10 (37%)

17 (63%)

21 (78%)

6 (22%)

3.6 (2.8-4.6)

0.7 (0.3-3.1)

89.7 (46.6-117.1)

16.0 (4.4-51.7)

32 (1.6-449909)

31 (0.5-99.5)

1251.5 (13-195319)

63 (38-89)

26/3

17 (58%)

6 (21%)

6 (21%)

11 (38%)

16 (55%)

10 (34%)

19 (66%)

23 (79%)

6 (21%)

3.8 (2.8-4.5)

0.9 (0.1-2.1)

84 (44-124)

10.3 (4.5-31.6)

81 (2-193374)

17.8 (0-93.0)

478 (17-106354)

0.029

>0.999

0.149

0.576

0.015

0.787

>0.999

0.157

0.220

0.294

0.041

0.133

0.468

0.694

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16

2.レンバチニブおよびソラフェニブ治療症例の治療効果

レンバチニブ群の治療効果判定は、最大腫瘍効果に基づいて評価され

た。Table 2 に示すように、27 人の患者のうち、CR、PR、SD、PD がそ

れぞれ 3人(11%)、13 人(48%)、9人(33%)、2人(7%)であっ

た。レンバチニブ群の OR 率(CR と PR の患者の合計割合)は 59%

(16/27)であった。

Table 2 レンバチニブ群の治療反応

ソラフェニブ群では、方法に示すように治療効果は Responder(SD が 6

か月を超えるか CR / PR)と Non-Responder(SD が 6 か月未満または

PD)に分類した。Table 3 に示すように、29 人の患者のうち、CR、PR、

SD、および PD は 0(0%)、2(7%)、19(67%)、8(28%)であった。

SD の症例(n = 19)のうち、9人が Long-SD(6 か月を超える SD)であ

った。全体として、Responder が 11 人(38%)、Non-Responder が 18 人

(62%)であった。

Table 3 ソラフェニブ群の治療反応

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17

3.ベースライン血清バイオマーカー値と治療効果

レンバチニブ群、ソラフェニブ群それぞれのベースラインのバイオマー

カー値(FGF19、FGF21、HGF、ANG2、および VEGF)と治療効果について

解析した。Figure 2 に示すように、ソラフェニブ群では、候補バイオマ

ーカーのすべてのベースライン値が Responder と Non-Responder で有意

差を認めなかった。一方、レンバチニブ群では、ベースラインの FGF19

および ANG2 値は Non-Responder で Responder と比較し有意に高かっ

た。

Figure 2. レンバチニブおよびソラフェニブの治療効果と血清バイオマーカー

のベースライン値

4.レンバチニブおよびソラフェニブ治療群の治療効果に関連する因子

Table 4 に示すように、ソラフェニブ群では、治療開始時の臨床的因

子、血液生化学検査結果、腫瘍マーカー値、およびバイオマーカー値の

いずれも治療反応と有意に関連しなかった。一方で、Table 5 に示すよ

うに、レンバチニブ群ではベースラインの血清 ANG2 および FGF19 値の

みが治療反応と有意に関連していた。

FGF19 FGF21 ANG2

p=0.017p<0.001 p=0.147

VEGF

p=0.827

HGF

p=0.367

CR PR SD PD0

500

1000

1500

2000

Lenvatinib group

FGF19 FGF21 ANG2

p=0.296p=0.807 p=0.707

VEGF

p=0.912

HGF

p=0.145

Sorafenib group

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18

Table 4 ソラフェニブ群の Responder および Non-Responder の患者背景

Responder (n=11) Non-Responder (n=18) p-Value

Baseline characteristics

Age-(yr)

Sex (Male/Female)

Etiology –no. (%)

HBV

HCV

NBNC

Vascular invasion-no. (%)

Extrahepatic extension-no.

(%)

BCLC stage-no. (%)

B

C

Child-Pugh class-no. (%)

A

B

Biochemical analysis

Albumin-g/dL

Total bilirubin-mg/dL

Prothrombin time -%

Platelet -*104/μL

Alpha-fetoprotein-ng/mL

AFP-L3%

PIVKA-II-mAU/mL

FGF19-pg/mL

FGF21-pg/mL

ANG2-pg/mL

VEGF-pg/mL

HGF-pg/mL

68 (47-77)

10/1

6 (55%)

3 (27%)

2 (18%)

3 (27%)

4 (36%)

4 (36%)

7 (64%)

10 (91%)

1 (9%)

3.9 (2.8-4.5)

0.9 (0.5-1.7)

98.0 (65-122)

10.7 (5.9-31.6)

19.0 (3-1979)

25.1 (0.5-79.6)

312 (20-5361)

76.5 (26.9-434.1)

161.1(30.9-2491.4)

2747 (1566-3724)

253.7 (73.6-717.2)

2869.5 (1760.8-4696.7)

61 (38-89)

16/2

11 (61%)

3 (17%)

4 (22%)

8 (44%)

12 (67%)

5 (28%)

13 (72%)

13 (72%)

5 (28%)

3.7 (2.8-4.5)

0.9 (1.0-2.1)

76.5 (44-124)

9.8 (4.5-27.5)

1195.5 (2-221328)

12.8 (0-64.9)

2176 (60-198425)

153.0(27.6-980.5)

215.4(15.9-2918.9)

3333 (1563-3728)

187.7 (84.0-732.2)

3612.8 (1630.1-6723.5)

0.081

>0.999

0.788

0.448

0.142

0.667

0.362

0.367

0.648

0.162

0.816

0.089

0.097

0.063

0.807

0.707

0.296

0.912

0.145

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19

Table 5 レンバチニブ群の Responder および Non-Responder の患者背景

Responder (n=16) Non-Responder (n=11) p-Value

Baseline characteristics

Age*(yr)

Sex (Male/Female)

Etiology -no. (%)

HBV

HCV

NBNC

Vascular invasion-no. (%)

Extrahepatic extension-no.

(%)

BCLC stage-no. (%)

B

C

Child-Pugh class-no. (%)

A

B

Biochemical analysis

Albumin-g/dL

Total bilirubin-mg/dL

Prothrombin time -%

Platelet -*104/μL

Alpha-fetoprotein-ng/mL

AFP-L3%

PIVKA-II-mAU/mL

FGF19-pg/mL

FGF21-pg/mL

ANG2-pg/mL

VEGF-pg/mL

HGF-pg/mL

67 (54-79)

16/0

8 (50%)

4 (25%)

4 (25%)

4 (25%)

4 (25%)

8 (50%)

8 (50%)

13 (81%)

3 (19%)

3.8 (2.8-4.6)

0.7 (0.3-1.9)

90.3 (59.2-117.1)

15.0 (6.5-34.6)

9.3 (1.6-94134.4)

10.5 (0.5-99.5)

1807 (13-17526)

160.5 (5.1-543.5)

141.4 (21.9-2156)

2501(1463.1-3761.3)

390.6 (176.8-1104.5)

3150.3 (1023.8-5809.1)

71 (56-83)

9/2

2 (18%)

2 (18%)

7 (64%)

3 (27%)

2 (18%)

2 (18%)

9 (82%)

8 (73%)

3 (27%)

3.3 (3-3.8)

0.7 (0.4-3.1)

88.4 (46.6-107.5)

19.1(4.4-51.7)

97.5 (5.5-449909)

40.9 (0.5-81)

696 (24-195319)

408.5 (146.5-1843.4)

690.2(30.8-2897.8)

3651(2103.7-3972.2)

488.1 (154.1-1356.7)

3552.8 (2017.6-5344.7)

0.075

0.156

0.116

>0.999

>0.999

0.124

0.661

0.297

0.516

0.761

0.488

0.077

0.598

0.798

<0.001

0.147

0.017

0.827

0.367

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20

5.ベースライン ANG2 および FGF19 値に基づく治療効果の解析

レンバチニブ治療を受けた患者群の治療効果とベースライン ANG2 およ

び FGF19 値は有意に関連しており、ROC 曲線を用いて最適なカットオフ

値を設定した。Figure 3 に示すように、治療反応を予測するための

ANG2 のカットオフ値は 3108 pg/mL だった(感度:0.75、特異度:

0.818、ROC 曲線下面積(AUC):0.772、p <0.001)。FGF19 のカットオフ

値は 194 pg/mL(感度:0.75、特異度 0.818、ROC-AUC:0.869、p

<0.001)であった。

Figure 3 レンバチニブ治療群のベースライン ANG2 値および FGF19 値に基づく

ROC 曲線とカットオフ値

これらのカットオフ値を用いると、ベースライン ANG2 値が低値であっ

た群では Responder となる割合は 86%(12/14)であった。 逆に、

ANG2 高値群では、Responder となる割合は 31%(4/13)だった。

(Figure 4)。 FGF19 低値では、レンバチニブの Responder 率は 86%

(12/14)で、FGF19 高値では、31%(4/13)であった(Figure 5)。

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21

Figure 4 レンバチニブ群におけるベースライン ANG2 と治療効果

Figure 5 レンバチニブ群におけるベースライン FGF19 と治療効果

次にベースライン ANG2 値と FGF19 値を組み合わせて層別化することで

レンバチニブに対する治療効果を分析した。 Figure 6 に示すように、

ベースラインの ANG2/FGF19 値が低値の場合は、全例(9/9)で

Responder となった。一方で ANG2/FGF19 値が高値の場合は、Responder

となる割合は 13%(1/8)と低値であった。

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22

Figure 6 レンバチニブ群治療効果とベースライン ANG2 および FGF19 値による

層別化解析

次に、ソラフェニブ治療群でも同様の検討を行った。Figure 7 に示すよ

うに、治療効果はベースラインの ANG2 および FGF19 値に関連はなかっ

た。ただし、ベースライン ANG2/FGF19 値が高値であった患者では、

Responder の割合は 40%(2/5)とレンバチニブ群に比して OR 率が高か

った。

FGF19

ANG2

High

Low

Low High

Responder100%(9)

Responder60%(3)

Non‐responder

40%(2)

Responder60%(3)

Non‐responder

40%(2)

Responder12%(1)

Non‐responder

88%(7)

Lenvatinib groupClinical response(n=27)

Responder Non‐responder

FGF19 and ANG2 Status CR PR CR+PR SD PD SD+PD Total

FGF19 Low/ANG2 Low 3 6 9/9 (100%) 0 0 0/9 (0%) 9

FGF19 Low/ANG2 High 0 3 3/5 (60%) 1 1 2/5 (40%) 5

FGF19 High/ANG2 Low 0 3 3/5 (60%) 2 0 2/5 (40%) 5

FGF19 High/ANG2 High 0 1 1/8(13%) 6 1 7/8 (87%) 8

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23

Figure 7 ソラフェニブ群治療効果とベースライン ANG2 および FGF19 値による

層別化解析

6.ベースライン ANG2/FGF19 高値群とそれ以外の患者背景の比較

最後にベースラインの ANG2/FGF19 値が高い症例の患者背景の特徴につ

いて解析した。Table 6 に示すように、ベースライン ANG2/FGF19 値が高

値の症例では、その他の群と比較してベースラインのアルブミン値が有

意に低く、HGF 値が高かった。それ以外の患者背景については両群間で

差は認めなかった。

Sorafenib groupClinical response(n=29)

FGF19 and ANG2 Status Responder Non‐Responder Total

FGF19 Low/ANG2 Low 4/7 (57%) 3/7 (43%) 7

FGF19 Low/ANG2 High 3/11 (27%) 8/11 (73%) 11

FGF19 High/ANG2 Low 2/6 (33%) 4/6 (67%) 6

FGF19 High/ANG2 High 2/5 (40%) 3/5 (60%) 5

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24

Table 6 ベースライン ANG2/FGF19 高値群とそれ以外の患者背景の比較

ANG2 High / FGF19 High

(n=13) Others (n=43) p-Value

Baseline characteristics

Age-yr

Sex (Male/Female)

Etiology –no. (%)

HBV

HCV

NBNC

Vascular invasion-no. (%)

Extrahepatic extension-no. (%)

BCLC stage-no. (%)

B

C

Child-Pugh class-no. (%)

A

B

Biochemical analysis

Albumin-g/dL

Total bilirubin-mg/dL

Prothrombin time -%

Platelet -*104/μL

Alpha-fetoprotein-ng/mL

AFP-L3%

PIVKA-II-mAU/mL

VEGF-pg/mL

HGF-pg/mL

67 (53-83)

11/2

4 (31%)

3 (23%)

6 (46%)

3 (23%)

5 (38%)

4 (31%)

9 (69%)

10 (77%)

3 (23%)

3.3 (2.8-4.0)

0.7 (0.1-3.1)

88.4 (46.6-107.6)

20.3 (4.4-51.7)

188.6 (6.4-449909)

42.6 (0.5-81)

2040 (21-47270)

454.0 (73.6-1356.7)

3890 (3020.6-5613.6)

67 (38-89)

40/3

23 (53%)

9 (21%)

11 (26%)

15 (35%)

17 (40%)

16 (37%)

27 (63%)

34 (79%)

9 (21%)

3.8 (2.8-4.6)

0.7 (0.1-2.1)

86.8 (44-124)

13.4 (4.5-34.6)

22 (1.6-193374)

17.6 (0-99.5)

408.5 (13-195319)

356.8 (84.0-1104.5)

3077 (1023.8-6723.5)

0.863

0.580

0.289

0.514

>0.999

0.751

>0.999

0.027

0.828

>0.999

0.096

0.153

0.144

0.409

0.611

0.005

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25

考察

進行肝癌に対するレンバチニブ治療の第Ⅲ相試験(REFLECT 試験)の

結果により、レンバチニブのソラフェニブに対する OS の非劣性が示さ

れ、進行肝癌の治療選択肢が広がった(Kudo et al., 2018, Sho et

al., 2020)。現在、進行肝癌の第一選択薬としてソラフェニブまたはレ

ンバチニブのいずれかが選択可能である。

しかしながら、患者背景に基づいた両薬剤の選択基準は確立されてい

ない。マルチキナーゼ阻害剤への反応は、進行肝癌の患者の予後を規定

する(Arizumi et al., 2014,Kudo et al., 2019, Lencioni et al.,

2017)。したがって、薬剤選択の最適化は肝癌治療において重要であ

る。これら 2つのマルチキナーゼ阻害剤は異なるキナーゼ親和性プロフ

ァイルを持っているため、治療の個別化に役立つ要因が特定可能である

可能性が想定された。

本研究では、ソラフェニブとレンバチニブの間の異なるキナーゼ親和

性プロファイル、特に FGFR シグナル阻害に焦点を当て、そのリガンド

である FGF19、FGF21 を分析した。さらに、以前の報告では、ANG2

(Miyahara et al., 2011)、HGF(Miyahara et al., 2011, Chu et

al.,2013)、および VEGF(Chu et al.,2013)がマルチキナーゼ阻害剤に対

する応答の予測因子候補である可能性が示されていた。したがって、本

研究では、これらの血清成長因子をバイオマーカー候補として解析し

た。以前の研究結果と同様に、ソラフェニブで治療された患者の有意な

予測因子は特定されなかった(Bruix et al., 2012)。一方で、Figure 2

に示すように、ベースラインの血清 FGF19 および ANG2 レベルは、レン

バチニブに対する治療反応の予測因子であった。さらに、ANG2 と FGF19

のカットオフ値を用いることによって、レンバチニブの治療反応を明確

に分類できることが明らかになった。Figure 6 に示す通り、ANG2 と

FGF19 の両方のベースライン値が低い患者では、全例(9/9)が

Responder となった。さらに、ANG2 と FGF19 の両方のベースライン値が

高い患者では Responder 率 13%(1/8)と治療反応不良である事が明ら

かとなった。一方、ソラフェニブ群ではベースライン ANG2 および FGF19

値は治療反応に影響を与えなかった。また ANG2 と FGF19 の両者のベー

スライン値が高い患者では、ソラフェニブに対して 40%が Responder で

あり、この群においてレンバチニブよりソラフェニブで OR 率が高かっ

た。したがって、ベースライン ANG2 値と FGF19 値の組み合わせは、進

行肝癌患者のマルチキナーゼ阻害剤選択において有用なバイオマーカー

となる可能性が示された。

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26

ANG2 は Tie2 を介したシグナル伝達のアンタゴニストであり、Tie2 を

介したシグナル伝達は血管の安定化に関連していると報告されている

(Souma et al., 2018, Benest et al., 2013)。したがって、ANG2 の血

清レベルの上昇は、血管の漏出や転移を惹起する可能性がある。肝癌患

者ではしばしば血清 ANG2 値の上昇が見られ(Allegretti et al.,

2019)、ANG2 値の上昇は進行肝癌患者の予後不良因子である(Liovet et

al., 2012)。しかし、進行肝癌に対するソラフェニブ、レンバチニブ治

療反応性と ANG2 値の関連は解明されていない。この研究では、進行肝

癌に対してレンバチニブおよびソラフェニブを投与された患者における

ANG2 値と治療反応との関係を実証した最初の研究である。

また、ソラフェニブとレンバチニブのキナーゼ親和性プロファイルの

違いに着目して、FGF シグナル伝達阻害作用の有無が 2つの薬剤間の抗

腫瘍活性の違いに影響を与える可能性があると推測した。特にエンドク

ライン作用を持つ FGF19 ファミリー(FGF19、FGF21、FGF23)は血清値

を測定することが可能である。FGF19 は肝癌の発症、増殖に中心的役割

を担っており(Sandhu et al., 2014, Hyeon et al., 2013,Tsou et

al., 1998, Miura et al., 2012, Nicholes et al., 2002, French et

al., 2012)、FGF21 は甲状腺癌の予後不良(Kang et al., 2019.)と関連

していることが報告されている。したがって、本研究では、候補バイオ

マーカーとして FGF19、21 を評価した。

本研究では Figure 2 に示すように、FGF19 がレンバチニブで治療され

た患者の治療反応予測因子の 1つであることが示された。レンバチニブ

は、FGFR のリン酸化を阻害することにより、FGF19 を介したシグナル伝

達を阻害すると考えられる。FGF19 が高く ANG2 が低い患者では、

Responder 率は 60%(3/5)であったが、一方で、FGF19 および ANG2 レ

ベルが高い患者では、Responder 率は低かった(13%、1/8)。したがっ

て、FGF19 と ANG2 の両方が高レベルである場合は、レンバチニブに対す

る治療抵抗性を示唆している可能性がある。

これまでに多くの研究が、進行肝癌患者におけるソラフェニブの治療

反応予測因子となるバイオマーカーを分析しており、HGF、VEGF、

ANG2、α-fetoprotein (AFP)を含むいくつかの候補バイオマーカーが報

告されている。しかし、検証されたバイオマーカーはいずれも他研究で

の再現性が明らかとなっていない(Shao et al., 2015)。本研究結果で

は、レンバチニブの治療効果が FGF19 および ANG2 レベルの影響を受け

る一方、ソラフェニブは両者に影響を受けなかった。従ってベースライ

ン FGF19 および ANG2 レベルが低値の場合は奏効率が高いレンバチニブ

を選択し、FGF19 および ANG2 高値例ではレンバチニブに対する応答不良

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が予想されるため、ソラフェニブが適している可能性があることが示唆

された。

本研究にはいくつかの制限がある。第一に後方視的単一施設研究であ

り、限られた症例数である。第二に年齢、血小板数、肝外転移の存在な

ど、いくつかのベースラインの患者背景がソラフェニブ群とレンバチニ

ブ群の間で有意に異なっており、結果を解釈する際には、これを考慮す

る必要がある。

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《第二章》

FGF シグナル阻害を介したレンバチニブの肝癌 Cancer stem cells

への効果

緒言

肝癌に対する治療は外科的切除、ラジオ波焼灼術、経カテーテル的動脈化学

塞栓療法など多岐にわたり進歩を認めるが、未だに肝癌は世界の癌関連死因の

第 3位(Llovet JM et al., 2003)とその予後は不良である。2000 年代初頭ま

で、進行肝癌に対する有効な全身化学療法は存在しなかった。肝癌は従来の殺

細胞性抗癌剤に対して高い耐性能を持ち、肝癌幹細胞(Cancer stem cell:

CSC)がその一因と考えられている。CSC は肝癌をはじめとする様々な癌種にお

いて癌組織内に存在するとされ、自己複製能、多分化能、遊走能、高い腫瘍増

殖能を有することが報告されている(Yang et al., 2010, Ma et al., 2013,

Schulze et al., 2013, Maehara et al., 2015)。肝癌における CSC はこれま

でに、CD44、CD133、CD90、EpCAM などの細胞表面マーカーなどに基づいて識別

できることが報告されている(Ma et al., 2007, Yang et al., 2008,

Yamashita et al., 2009, Zhu et al., 2010, Lee et al,.2011)。これらのマ

ーカーのうち、CD44、CD133 は従来から特に着目されている。癌組織中の CD44

或いは CD133 mRNA 発現が高発現であった場合、非高発現群と比較し有意に予

後不良であった。さらに CD44/CD133 発現で層別化すると、CD44/CD133 高発現

群が最も予後不良であった(Zhao et al., 2016)。また再発肝癌において、組

織中の CD44/CD133 mRNA が有意に高発現であり、全生存期間や無再発生存期間

の有意な予測因子であったと報告されている (Yang et al., 2010)。癌悪性化

の原因である CSC を標的とした治療開発も行われており(Li et al.,2019)、肝

癌治療の新たな治療戦略となる可能性がある。

しかし現在のところ、レンバチニブとソラフェニブの CSC に対する治療効果

は明らかにされていない。レンバチニブの第Ⅲ相試験の結果や、第一章で述べ

た通り、レンバチニブとソラフェニブでは奏効率に差が見られる。

そこで第二章では両薬剤の治療効果の差が、CSC 抑制効果の違いに起因する

との仮説を立てた。私達は以前、食道扁平上皮癌における CSC は FGF シグナル

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伝達経路の活性化によって維持されており、FGFR 阻害剤によって抑制される可

能性があることを報告した(Maehara et al., 2017)。その他、様々な悪性腫瘍

において、FGF を介したシグナル伝達が CSC の維持に関与していることが知ら

れている。小細胞肺癌では、FGFR1 を介したシグナル伝達が幹細胞様表現型の

獲得を促進することが報告されている(Ji et al., 2016)。同様に、頭頸部癌

では、CSC における FGFR シグナルがシスプラチンに対する抵抗性を調節する役

割を果たし、FGFR 阻害剤は CSC を減少させた(McDermott., 2018)。トリプルネ

ガティブ乳癌では、FGFR シグナルが Notch1 と協働して CSC を維持し、抗癌剤

耐性に寄与していた(Bhola et al.,2016)。

一方で、肝癌においては、CSC と FGF シグナル伝達の関係は明らかにされて

いない。第一章で明らかにした如く、レンバチニブとソラフェニブは治療奏効

を示す患者群が異なる。特にベースラインの血清 FGF19 値がレンバチニブの治

療効果と関連するが、ソラフェニブでは FGF19 値と治療効果に関連がないこと

を見出した。レンバチニブおよびソラフェニブの奏効率の違いや治療奏功が得

られる患者背景の違いの原因を探るべく、第二章では CSC に対する両薬剤の治

療効果の違いと、レンバチニブに特異的な作用点である FGFR シグナルと CSC

との関係について着目し検討を行った。

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30

方法

1 細胞株および細胞培養

1-1 肝癌細胞株

Hep3B、Huh7 および Huh7 由来の細胞を用いた。

Huh7 は後述の通りフローサイトメーターで CD44/CD133 発現割合を解析

し、CD44Low/CD133Lowあるいは CD44High/CD133High分画細胞を分取した。それ

ぞれの細胞を Huh7(Low) 細胞、Huh7(High) 細胞とした。Huh7 由来細胞

とは、我々が以前作成し報告した細胞である。すなわち、Huh7 に転写調

節因子である Krüppel-like factor 5 (KLF5)を形質導入した細胞である

Huh7-KLF5KR 細胞と、Empty vector を用いたコントロール細胞である

Huh7-Empty 細胞のことを指す。これらの細胞に対し、遺伝子導入後にピ

ーュロマイシン(2μg/ml)で選択し安定化細胞を作成した。KLF5 は 3 つの

Zinc domain を有する転写調節因子の一つで正常組織では細胞サイクル、

血管新生、浸潤、炎症、stemness と関連している。多くの癌種において

は癌発育の促進に関連し、CSC の発生や維持を調節していることが知られ

ている。私達は以前 Huh7-KLF5KR 細胞は Huh7-Empty 細胞と比較し

CD44High/CD133High 分画細胞を高発現することを発見し報告している

(Maehara et al., 2015)。

1-2 試薬および材料

いずれの細胞株も Dulbecco’s modified Eagle’s medium (DMEM)に 10%

ウシ胎児血清、ペニシリン G 100 単位/ml、ストレプトマイシン 100μg/ml

を添加した培地で培養した。

1-3 細胞培養条件

Hep3B 細胞、Huh7 細胞および Huh7 由来細胞は、DMEM(10%FBS, Penicillin-

Streptomycin(1×))を用いて、37℃、5%CO2 条件下で培養した。2∼3 日お

きに培地を交換し、細胞が 80∼90%コンフルエントになった際に継代した。

継代の手順は PBS で洗浄後に 0.25% Trypsin-EDTA(37℃, 10 min)で処理

して細胞をはがし、遠心分離(300×g , 3 min)後、上清を除去し、沈殿し

た細胞を DMEM に再懸濁して新しい培養皿に播種した。

2 Real-time reverse transcriptase-polymerase chain reaction analysis

2-1 試薬および材料

PBS pH 7.4 (1×) (Life Technologies)

RNeasy® Mini Kit (Qiagen)

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UltraPure Distilled Water (Life Technologies)

Prime Script™ RT Master Mix (Takara)

SYBR® Premix Ex Taq™ (Takara)

2-2 実験操作(細胞)

day0 に 6 well プレートに細胞を 3×105 個/2 ml 播種し、day1 に各試薬

を含んだ培地に交換し、day3 に RNA 抽出を行った。試薬の添加のない実

験系においては day2 に RNA を抽出した。

2-3 実験操作(RNA 抽出~遺伝子発現解析)

PBS で細胞を洗浄後に RNeasy® Mini Kit を用いて添付のプロトコールに

従って行った。RNA 濃度測定は分光光度計(Nano Drop 2000, Thermo

Scientific)を用いて行った。cDNA 合成は Prime Script™ RT Master Mix

を用いて添付のプロトコールに従って行った。逆転写反応は 37℃で 15

min incubate した後に、85℃で 10 sec 反応させた。合成した cDNA は

H2O を加えて希釈した(最終濃度 : 約 1.67 ng/µl)。Quantitative real-

time reverse transcriptase-polymerase chain reaction analysis

(qRT-PCR)は、SYBR® Premix Ex Taq™を試薬として用い、装置およびソフ

トウェアは Step One real-time PCR system と Step One software

version2.2.2 を用いた。具体的な実験条件は下表に記した。遺伝子発現

レベルの解析はβ-actin を内因性コントロールとして用いて、

comparative threshold cycle (ddCt) method で計算した。なお、使用し

た primer の一覧は Table7 に記した。

qRT-PCR の反応液 反応条件

SYBR® Premix Ex Taq™ 10 µl 95℃ 20 sec

Forward primer (10 µM) 0.5 µl 95℃ 1 sec

Reverse primer (10 µM) 0.5 µl 60℃ 20 sec

cDNA 希釈液 9 µl

Total 20 µl

40 cycle

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Table 7 qRT-PCR で使用した primer

3 ウエスタンブロット

3-1 試薬および材料

PBS pH 7.4 (1×) (Life Technologies)

Tris ultra-pure (MP Biomedicals)

HCl (Wako)

SDS (Wako)

Glycerol (Wako)

BPB (Wako)

2-ME (関東化学)

Glycine (関東化学)

Methanol (関東化学)

NaCl(sodium chloride) (関東化学)

Tween20 (関東化学)

Can Get Signal® Solution1 (TOYOBO)

ImmobilonTM Western chemiluminescent HRP substrate (MILLIPORE)

スキムミルク (CO・OP)

各種使用溶液

SDS-sample Buffer(1×) (Tris-HCl pH 6.8(25 mM), SDS(1%), glycerol(5%),

BPB(0.01%), 2-ME(2%),in H2O)

SDS-PAGE-buffer (Tris (25 mM), glycine (192 mM), SDS (0.1%), in H2O)

SDS-PAGE-running gel(10%) (Tris-HCl pH 8.8(375 mM), A.A-Bis(9.7%-

0.3%), SDS(0.1%), APS(0.05%),TEMED (0.1%))

SDS-PAGE-running gel (7.5%) (Tris-HCl pH 8.8(375 mM), A.A-Bis (7.3%-

0.2%), SDS (0.1%), APS (0.05%) TEMED (0.1%))

SDS-PAGE-stacking gel (Tris-HCl pH 6.8(125 mM), A.A-Bis (3.9%-0.1%),

SDS (0.1%), APS (0.04%), TEMED (0.2%))

Transfer buffer (Tris (25 mM), glycine (192 mM), methanol (10%), in

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H2O)

TBS-T (Tris-HCl pH 7.5(20 mM), NaCl (0.8%), Tween20 (0.05%), in H2O)

3-2 実験操作(細胞 ; FGFR 検出用)

day0 に 6 well プレートに細胞を 3×105個/2 ml 播種し、day1 に無血清培

地に交換(overnight)、day2 にタンパク抽出を行った。

3-3 実験操作(タンパク抽出)

PBS で細胞を洗浄後、SDS-sample Buffer(1×)350 µl を添加しセルスクレ

イパーを用いて回収した。回収溶液は氷冷下で超音波破砕(10 sec)を行っ

た後、遠心し(20,400 rpm, 5 min)上清を回収後、95℃で 15 min 加熱した。

3-4 実験操作(SDS-PAGE∼タンパク検出)

SDS-PAGE 用のゲルは 7.5%∼10%のものを自作し、使用した。SDS-PAGE は専

用の buffer(SDS-PAGE-buffer)を用い、ゲル 1 枚あたり電流を 20 mA に固

定して約 1 Hr 泳動した。Transfer はセミドライ法を用いて行った。具体

的には、ろ紙、ゲル、PVDF 膜、ろ紙の順に重ね合わせ、専用の

buffer(transfer buffer)で十分浸し、ゲル 1枚あたり電流を 85 mA(高分

子量タンパクが目的の際は 120 mA)に固定して 70 min 行った。ブロッキン

グは 5%スキムミルク/TBS-T に浸して行った(室温, 30 min)。1 次抗体は

Solution1 を用いて下記に示す希釈濃度でそれぞれ反応させた(室温, 1∼2

Hr)。TBS-T で洗浄後(5 min×3 回)、2 次抗体は 10000 倍で TBS-T に希釈し

反応させた(室温, 30 min)。TBS-T で洗浄後(5 min×3 回)、ImmobilonTMを

用いて化学発光によりタンパク質の検出を行った。なお、検出には

ImageQuant LAS4000(GE)を使用した。

1 次抗体 希釈濃度

anti-FGFR1 (#9740, Cell Signaling Technology; 1:1000)

anti-FGFR2 (HPA056562, Sigma–Aldrich; 1:1000)

anti-FGFR3 (#4574, Cell Signaling Technology; 1:250)

anti-FGFR4 (#8562, Cell Signaling Technology; 1:1000).

4 Cell growth assay

4-1 試薬および材料

Luna™ Automated Cell Counter (Logos Biosystems Anyang-si, South Korea)

0.4% Trypan Blue Solution (Thermo fisher scientific)

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4-2 実験操作

Day0 に Huh7 由来細胞を 6 well dish に 2×105 cells(2ml)播種した。

24 Hr、48 Hr、72 Hr 後に PBS で洗浄し 0.25% Trypsin-EDTA(37℃, 10

min)で処理して細胞をはがし、遠心分離(300×g、3 min)後、上清を除去

し、沈殿した細胞を DMEM 1ml で再懸濁した。懸濁液 10μl と Trypan Blue

10μl を懸濁し、10μl 採取し Cell counter で細胞数をカウントした。

5 薬剤感受性試験

5-1 試薬および材料

Cell counting Kit (Dojindo)

5-2 実験操作

Day0 に Hep3B 細胞、Huh7 細胞および Huh7 由来細胞を 5×103個/100 µl の

濃度にし、96 ウェルプレートに 100 µl ずつ播種した。Day1 に各薬剤を

含んだ培地に交換し、Day4 に WST-8 アッセイを行った。WST-8 アッセイは

Cell counting Kit を用いて添付のプロトコールに従って行った。

6 フローサイトメトリーおよび Fluorescence-activated cell sorting(FACS)

6-1 試薬および材料

PBS pH 7.4 (1×) (Life Technologies)

0.25%Trypsin-EDTA (Life Technologies)

HBSS(1×,Ca(-),Mg(-)) (Thermo fisher scientific)

BSA (SIGMA-Aldrich)

APC anti-human CD44 (BD Bioscience)

PE anti-human CD133 (Milteny Biotec)

7-AAD (BD Bioscience)

1×FACS buffer (HBSS(1×,Ca(-),Mg(-)),0.5%BSA)

6-2 実験操作

day0 に 6well プレートに細胞を 3×105個/2 ml 播種し、day1 に各試薬

を含んだ培地に交換し、48 Hr 後(day3)に細胞を回収し FACS による解析

を行った。試薬の添加のない実験系においては day2 に細胞を回収し

FACS による解析を行った。なお、細胞の回収方法は継代時と同様に PBS

で洗浄後、Trypsin で剥がし遠心分離により回収した。

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6-3 実験操作(抗体反応、FACS 解析)

回収した細胞を 2∼3×105個/100 µl の濃度になるように 1×FACS buffer

に再懸濁し、セルストレイナーを通過させた後、100 µl ずつ測定チュー

ブに分注した。抗体は 2.5 µl ずつ(50 倍希釈)各チューブに入れ、氷

上、暗所で 30 min インキュベートした後、洗浄操作(1×FACS buffer

2 ml を各チューブに加え、混合した後、遠心分離(300 ×g, 3 min)して

上清を除去)を 2回行い、最終的に 1×FACS buffer 500 µl に再懸濁し

てフローサイトメーター (FACS Canto II, BD)もしくはセルソーター

(FACS AriaⅢ, BD)により、解析および目的細胞の分離を行った。なお

死細胞は 7-AAD の取り込みを指標に除外した。

7 3D colony formation assay

7-1 試薬および材料

Corning Matrigel (Corning)

0.25%Trypsin-EDTA (Life Technologies)

DMEM/F12 (1xGlutamax, 15mM)

N-2-hydroxyethylpiperazine-N-2-ethanesulfonic acid)

7-2 実験操作

Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞それぞれ 3000 個に対し DMEM 50μl

と Matrigel 50μl で懸濁し 96 well プレートで培養した。連日

DMEM/F12(1×グルタミン酸、15mM N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-

N-2-エタンスルホン酸)で培地交換し 5日目に蛍光顕微鏡 BZ-9000

(KEYENCE)で観察しコロニー数をカウントした。

8 Cell migration assay

8-1 試薬および材料

Radius Cell Migration Assay Kit (Cell Biolabs)

8-2 実験操作

Day0 に Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞 3000 個を Cell

migration assay kit(96well)に播種しインキュベートした

(overnight)。プロトコールに従い Day1 に Radius Gel を除去し、3

Hr、48 Hr、72 Hr 間後に蛍光顕微鏡 BZ-9000(KEYENCE)で観察した。

9 small interfering RNAs

9-1 試薬および材料

Lipofectamine™ RNAi Max reagent (Life Technologies)

Opti-MEM® (Thermo Fisher scientific)

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Small interfering RNAs (Qiagen)

9-2 実験操作

Lipofectamine 2μl、Opti-MEM 400μl、Small interfering RNAs 2μ

l を 6 well dish に添加し、20 min インキュベートした。20 min 後に各

細胞を 3×105 cells(2ml)well に播種しよく懸濁した。48 Hr 後に PBS

で洗浄し 0.25% Trypsin-EDTA(37℃, 10 min)で処理して細胞をはがし、

遠心分離(300×g、3 min)後、上清を除去した。上記 qPCR あるいは FACS

の手順に従い解析した。

Small interfering RNAs Qiagen

FGF2 (SI02627541)

FGF19 (SI03045448)

FGFR1 (SI03094637)

FGFR2 (SI04380649)

FGFR3 (SI00604772)

FGFR4 (SI00031374)

Non-silencing control sequence (AllStars Negative Control siRNA)

10 動物実験

10-1 試薬および材料

BALB/c slc nu/nu マウス 6 週齢 メス(日本 SLC)

Corning Matrigel (Corning)

10-2 実験操作

Huh7-KLF5KR 細胞 2×106 cells に対し DMEM 50μl と Matrigel 50μl で

懸濁し、マウス(n=3)の背側に 4か所ずつ皮下移植した(Day1)。Day10 か

ら Day23 まで Lenvatinib(10mg/kg)あるいは Sorafenib(30mg/kg)をそれ

ぞれ pure water 500μl に懸濁しマウス用経口ゾンデを用いて経口投与

した。コントロール群は pure water 500μl のみ経口投与した。体重と腫

瘍サイズを 2-3 日毎に測定し、腫瘍体積を長軸(mm) ×短軸(mm)2/2 で近

似計算した。

全ての動物実験において北海道大学の「国立大学法人北海道大学動物実

験に関する規定」および「北海道大学動物実験実施マニュアル」を遵守し

た。

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結果

1 CD44High/CD133High 細胞の腫瘍増殖能の検討

Huh7 細胞に対しフローサイトメーターで CSC 分画である CD44、CD133 に

対する抗体を用いて細胞集団の分布を解析し、CD44High/CD133High 分画

(Huh7(High) 細胞とする)と、CD44Low/CD133Low分画(Huh7(Low) 細胞とす

る)にそれぞれ分取した。分取した細胞に対しフローサイトメーターで

CD44、CD133 発現割合について解析したところ、Huh7(Low) 細胞では CD44、

CD133 発現が低く、Huh7(High) 細胞では CD44、CD133 高発現であった

(Figure 8)。次に Huh7-KLF5KR 細胞と Huh7-Empty 細胞も同様に CD44、

CD133 に対する抗体を用いて細胞集団の分布を解析したところ、我々の先

行 研 究 通 り Huh7-KLF5KR 細 胞 は 、 Huh7-Empty 細 胞 と 比 較 し

CD44High/CD133High 割合が多い結果であった(Figure 8)。

Figure 8 Huh7(Low)細胞、Huh7(High)細胞および Huh7-Empty 細胞、Huh7-

KLF5KR 細胞の表面抗原解析。

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次にこれらの細胞を用いて腫瘍増殖能について検討を行った。in vitro

の検討では 6 well プレートに細胞を播種して 24 Hr、48 Hr、72 Hr 後に

Cell counter で細胞数をカウントした。72 Hr の腫瘍増殖能の比較では、

Huh7(High)細胞が Huh7(Low) 細胞と比較し有意に腫瘍増殖能が高かった。

同様に Huh7-KLF5KR 細胞は Huh7-Empty 細胞と比較し 72 Hr の時点での腫

瘍増殖能が高いことが示された (Figure 9-1)。

次に in vivo での検討を行った。ヌードマウスに Huh7(High)細胞および

Huh7(Low)細胞を皮下移植し腫瘍形成能について検討した。2-3 日おきに

腫瘍サイズを測定し腫瘍形成能を比較検討したところ、Huh7(High)細胞

が有意に高い腫瘍形成能を示した。同様に Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty

細胞を用いて検討したところ、Huh7-KLF5KR 細胞が Huh7-Empty 細胞に比

して有意に高い腫瘍形成能を示した(Figure 9-2)。

Figure 9-1 Huh7(Low)細胞、Huh7(High)細胞および Huh7-Empty 細胞、

Huh7-KLF5KR 細胞の腫瘍増殖能(in vitro)。(*: p<0.05, **: p<0.01)

Figure 9-2 Huh7(Low)細胞、Huh7(High)細胞および Huh7-Empty 細胞、

Huh7-KLF5KR 細胞の腫瘍増殖能(in vivo)。(**: p<0.01, ****: p<0.001)

続いて Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty 細胞を用いて 3D colony formation

assay を行った。Huh7-KLF5KR 細胞が Huh7-Empty 細胞に比して有意に

colony 形成能が高いことが示された (Figure 10)。

Cel

l nu

mb

er (

×10

5 )

Cel

l nu

mb

er (

×10

5 )

** *

** ****

0 5 10 15 200

500

1000

1500

2000

day

Tu

mo

r V

olu

me

(mm

3 )

Huh7(Low)

Huh7(High)

0 7 14 210

200

400

600

800

day

Huh7(Empty)

Huh7(KLF5KR)

Page 44: DOI Doc URL - eprints.lib.hokudai.ac.jp

39

Figure 10 Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞の 3D colony formation

assay。(***: p<0.005)

続いて Migration assay を行った。細胞播種後 3 Hr、48 Hr、72 Hr で観

察したところ、いずれも Huh7-KLF5KR 細胞 が Huh7-Empty 細胞に比して

遊走能が高いことが示された(Figure 11)。

Figure 11 Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞の Migration assay。

以上より、CD44High/CD133High 細胞では CD44Low/CD133Low 細胞と比較し腫瘍

増殖能、colony 形成能、遊走能が高いことが示された。

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40

2 CSC に対する 5-fluorouracil (5-FU)の薬剤感受性と CSC 割合に与える影響の

検討

Huh7-KLF5KR 細胞と Huh7-Empty 細胞の抗癌剤感受性の違いについて検討

するために、それぞれの細胞に殺細胞性抗癌剤である 5-FU (0.5μM、1

μM 、2μM 、5μM )を添加、Control 群に対しては(0.1% Dimethyl

sulfoxide, DMSO)を添加し 48 Hr 後に Cell viability を検討した。そ

の結果、いずれの細胞でも Control と比較し 5-FU 投与群で濃度依存的

に腫瘍細胞は減少していたが、Huh7-Empty 細胞と比較し Huh7-KLF5KR 細

胞で薬剤耐性能が高いことが示された(Figure 12)。

Figure 12-1 Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞の薬剤感受性試験。

(***: p<0.005, ****: p<0.001)

次に 5-FU の CSC への影響を検証するために、フローサイトメーターを用

いて 5-FU 2µM 添加後 48 Hr 後の CD44High/CD133High発現割合の変化につい

て検討した。Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty 細胞いずれも Control(0.1%

DMSO)と比較し 5-FU 添加によって CD44High/CD133High細胞集団が増加して

いたが、この傾向は Huh7-KLF5KR 細胞で顕著だった(Figure 12-2)。以上

の検討で、5-FU 添加によって腫瘍細胞数は減少するが CD44High/CD133High細

胞集団は増加することが示された。

Cel

l via

bili

ty ****

**** *******

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41

Figure 12-2 5-FU 投与による Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞におけ

る CSC 割合の変化。

3 CSC に対する Lenvatinib および Sorafenib の薬剤感受性と CSC 割合に与える

影響の検討

Huh7-KLF5KR 細胞と Huh7-Empty 細胞に対し Lenvatinib(1μM、 2μM、5

μM、10μM)および Sorafenib(2μM、5μM、7.5μM、10μM)を添加し 48 Hr

後に Cell viability を検討したところ、Lenvatinib、Sorafenib 共に濃

度依存性に腫瘍増殖抑制効果が見られた(Figure 13-1)。次に Lenvatinib

および Sorafenib の CSC への影響を検証するために、フローサイトメー

ターを用いて Lenvatinib 2μM および Sorafenib 5μM 添加後 48 Hr 後の

CSC 割合の変化について検討した。Lenvatinib は Control(0.1% DMSO)

と比較しHuh7-KLF5KR細胞、Huh7-Empty細胞いずれもCSCを減少させた。

一方、Sorafenib は Huh7-KLF5KR 細胞に対し CSC 割合の変化は見られなか

った(Figure 13-2)。

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42

Figure 13-1 Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞の Lenvatinib および

Sorafenib に対する薬剤感受性試験。

(*: p<0.05, **: p<0.01, ***: p<0.005, ****: p<0.001)

*****

****

****

****

*****

**

0 2 5 7.5 100.0

0.5

1.0

1.5

Sorafenib

Concentrations(μM)

Huh7(KLF5KR)ns***

*****

0 1 2 5 100.0

0.5

1.0

1.5

Lenvatinib

Concentrations(μM)

Huh7(KLF5KR)****

******

***

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43

Figure 13-2 LenvatinibおよびSorafenibによるHuh7-Empty細胞、Huh7-

KLF5KR 細胞における CSC 割合の変化。

次に Huh7 細胞とは異なる肝癌細胞株となる Hep3B に対しても同様の検討

を行った。Hep3B に対し Lenvatinib (1μM、 2μM、5μM、10μM)および

Sorafenib (2μM、5μM、7.5μM、10μM)を添加し 48 Hr 後に Cell

viability を検討したところ、Lenvatinib、Sorafenib 共に濃度依存性に

腫瘍増殖抑制効果が見られた(Figure 14-1)。

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44

Figure 14-1 Hep3B 細胞の Lenbatinib および Sorafenib に対する薬剤感

受性試験。

続いて Hep3B 細胞に対して Lenvatinib 2μM および Sorafenib 5μM を添

加しフローサイトメーターを用いて CSC の変化を検討したところ、

Lenvatinib では Control(0.1% DMSO)と比較し CSC の割合が有意に減少

したが、Sorafenib では有意な変化を認めなかった。

Figure 14-2 Lenvatinib および Sorafenib による Hep3B 細胞における

CSC 割合の変化。

Ce

ll v

iab

ility **

****

****

ns

Ce

ll v

iab

ility ****

***

nsns

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45

in vivo でも同様に Sorafenib, Lenvatinib の CSC に対する効果の検討

を行った。Huh7-KLF5KR 細胞を皮下移植したヌードマウスに Lenvatinib

あるいは Sorafenib を連日経口投与し腫瘍サイズを測定した。Sorafenib

群では Control 群と比較し有意に腫瘍縮小が見られた(p≺0.05)。

Lenvatinib 群では Sorafenib 群と比較しより腫瘍縮小効果が高いことが

示された(Figure 15-1)。

Figure 15-1 Huh7-KLF5KR 細胞の Lenvatinib および Sorafenib に対する

薬剤感受性試験。ヌードマウスを用いた Xenograft での検討(n=12)。

続いて Day24 にサクリファイスを行い Control 群、Lenvatinib 群および

Sorafenib 群の皮下移植細胞から腫瘍細胞を抽出し、フローサイトメータ

ーを用いて各群での CSC 割合について解析した(n=3)。Control 群と比較

し Sorafenib 群では CSC 割合が減少していた。一方で Lenvatinib 群では

より顕著に CSC 割合が減少していた。以上の結果から、Lenvatinib、

****

*****

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46

Sorafenib 共に CSC に対し腫瘍抑制効果を認めるが、CSC 割合に対しての

抑制効果は Lenvatinib の方がより高いことが示された(Figure 15-2)。

Figure 15-2 Lenvatinib または Sorafenib 投与による CSC 割合の変化。

ヌードマウスを用いた Xenograft での検討(n=12)。

4 Huh7-Empty 細胞と Huh7-KLF5KR 細胞の FGFR 発現の違いについての検討

CSC に対して Lenvatinib と Sorafenib の治療効果に差が見られる要因と

して、Lenvatinib に特異的な FGF シグナル阻害作用に着目してさらなる

検討を行った。まず Huh7-Empty 細胞と Huh7-KLF5KR 細胞の FGFR 発現の

違いを Western blotting にて解析した。Huh7-KLF5KR 細胞は Huh7-Empty

細胞と比較し FGFR1 が高発現であり、FGFR4 は Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-

Empty 細胞いずれも高発現であったが、Huh7-Empty 細胞でより発現レベ

ルが高かった(Figure 16-1)。qPCR でも検討したところ、mRNA の発現につ

いても同様の結果が得られた(Figure 16-2)。これら FGFR 発現の違いが

CSC 割合の差に寄与している可能性が考えられた。

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47

Figure 16-1 Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞の FGFR 発現の解析(ウ

エスタンブロット法)。

Figure 16-2 Huh7-Empty細胞、Huh7-KLF5KR細胞のFGFR発現の解析(qPCR)。

(*: p<0.05, ***: p<0.005)

5 CSC に対する FGFR 阻害剤の効果

次に FGFR1∼3 阻害剤(BGJ398、AZD4547)および FGFR4 阻害剤(BLU9931)

の CSC への効果を検討した。Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty 細胞いずれに

対してもFGFR1∼3阻害剤 (2μM)およびFGFR4阻害剤 (2μM)は Control

(0.1%DMSO)と比較し腫瘍抑制効果を示した(Fig 17-1)。さらにフローサ

イトメーターの解析では FGFR1∼3 阻害剤 (2μM)は Control (0.1%DMSO)

と比較し CSC を減少させるが、FGFR4 阻害剤 (2μM)は Control と比較し

CSC の減少効果が見られなかった(Figure 17-2)。

Huh7(Empty)

Huh7(KLF5KR)

0.0

0.4

0.8

1.2

FGFR2

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n

***

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n *

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n

***

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

nns

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48

Figure 17-1 Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞の FGFR 阻害剤に対する

薬剤感受性試験。(**: p<0.01, ***: p<0.005)

Con

BGJ398

AZD4547

BLU9931

Cel

l via

bili

ty

*** ******

*** ** **

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49

Figure 17-2 FGFR 阻害剤による Huh7-Empty 細胞、Huh7-KLF5KR 細胞にお

ける CSC 割合の変化。

Hep3B 細胞でも同様の検討を行った。Hep3B 細胞に対しても FGFR1∼3 阻害

剤 (2μM)および FGFR4 阻害剤 (2μM)は Control (0.1%DMSO)と比較し腫

瘍抑制効果を示した(Figure 18-1)。CSC 割合は Control (0.1%DMSO)と比

較し FGFR1∼3 阻害剤 (2μM)で減少した一方で、FFGR4 阻害剤 (2μM)で

は CSC 割合の減少効果が見られなかった(Figure 18-2)。

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50

Figure 18-1 Hep3B 細胞の FGFR 阻害剤に対する薬剤感受性試験。

(***: p<0.005, ****: p<0.001)

Figure 18-2 FGFR 阻害剤による Hep3B 細胞における CSC 割合の変化。

*** **** ***

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51

6 FGFR ノックダウンによる CD44High/CD133High 細胞への影響

FGFRシグナルとCSCの関連を検討するためにsiRNAを介してFGFRをノッ

クダウンして検討した。まず、Huh7-KLF5KR 細胞に対して FGFR1∼3 の siRNA

を導入した。続いてノックダウン効率を確認するために各 FGFR mRNA 量

について Control 細胞と比較し qPCR を施行して解析した。FGFR1∼3 はい

ずれも Control 細胞に比べて発現量が低下していた。一方で FGFR4 は

Control 細胞と比較し FGFR1∼3 ノックダウン細胞で高発現であった

(Figure 19-1)。

Figure 19-1 FGFR1∼3 ノックダウン後の FGFR mRNA の発現解析。

次にフローサイトメーターを用いて Control 細胞と FGFR1∼3 ノックダウ

ン細胞の CSC 割合を解析した。Control 細胞と比較し、FGFR1∼3 ノックダ

ウン細胞で CSC 割合は減少していた(Figure 19-2)。

Figure 19-2 FGFR1∼3 ノックダウン後の CSC 割合の解析。

si C

ontrol

si F

GFR1-3

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n

****

si C

ontrol

si F

GFR1-3

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n

****

si C

ontrol

si F

GFR1-3

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n****

si C

ontrol

si F

GFR1-3

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n

****

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52

次に FGFR4 をノックダウンし同様に検討した。qPCR でノックダウン効率

を確認したところ、FGFR4 発現量は Control 細胞と比較し FGFR4 ノックダ

ウン細胞で有意な減少が確認された。一方で FGFR1、FGFR2 発現は Control

細胞と比較し FGFR4 ノックダウン細胞で高発現となった(Figure 20-1)。

続いて Control 細胞と FGFR4 ノックダウン細胞の CSC 割合を解析したと

ころ、Control 細胞と比較し FGFR4 ノックダウン細胞で CSC 割合は増加し

ていた(Figure 20-2)。

Figure 20-1 FGFR4 ノックダウン後の FGFR mRNA の発現解析。

Figure 20-2 FGFR4 ノックダウン後の CSC 割合の解析。

si C

ontrol

si F

GFR4

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n

***

si C

ontrol

si F

GFR4

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n

****

si C

ontrol

si F

GFR4R

elat

ive

exp

ress

ion

ns

si C

ontrol

si F

GFR4

Rel

ativ

e ex

pre

ssio

n

****

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53

7 FGF2/FGF19 による CSC への影響

7-1 FGF2/FGF19 添加による CSC マーカーの変動解析

これまでの実験結果より FGFR1∼3 を介したシグナルが肝癌 CSC の維持に

重要である事が明らかとなった。次にリガンドとなるFGF2あるいはFGF19

による CSC に対しての影響について検討した。Huh7-Empty 細胞、Huh7-

KLF5KR 細胞をそれぞれ 6well plate に播種し、同時に FGF2(50ng/mL)あ

るいは FGF19(1000ng/mL)を添加し 48 Hr 後にフローサイトメーターを

用いて CSC の変化を検討した。FGF2 では著明に CSC 割合が増加した。一

方でFGF19ではFGF2程はCSC割合に変化は見られなかった(Figure 21)。

Figure 21 FGF2、FGF19 添加後の CSC 割合の解析。

7-2 FGF2/FGF19 ノックダウンによる CSC マーカーの変動解析

次に Huh7-KLF5KR 細胞において FGF2 あるいは FGF19 をノックダウンし

CSC に対しての影響について検討した。Huh7-KLF5KR 細胞に siRNA を導入

し FGF2 あるいは FGF19 をノックダウンして解析を行った。まず、Huh7-

KLF5KR 細胞に対して FGF2 あるいは FGF19 の siRNA を導入し、ノックダウ

ン効率を確認するために mRNA を抽出し各 FGF について qPCR にて発現量

変化を検討した。各ノックダウン FGF はいずれの細胞も Control 細胞に

比べて発現量の低下が確認できた (Figure 22-1)。

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54

Figure 22-1 FGF2、FGF19 ノックダウン後の FGF mRNA の発現解析。

次に FGF2 あるいは FGF19 をノックダウンした細胞を用いてフローサイト

メーターで CSC の変化を検討した。FGF2 ノックダウン細胞、FGF19 ノック

ダウン細胞ではいずれも Control 細胞と比較し著明に CSC 割合が減少し

ていた(Figure 22-2)。

Figure 22-2 FGF2、FGF19 ノックダウン後の CSC 割合の解析。

si C

on

siFGF19

0.0

0.5

1.0

1.5

FGF19

Huh7(KLF5KR)

***

si C

on

siFGF2

0.0

0.5

1.0

1.5

FGF2

Huh7(KLF5KR)

Re

lati

ve

ex

pre

ss

ion

****

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55

考察

第一章ではレンバチニブとソラフェニブで治療奏功率や、治療奏功が得られ

る患者群が異なることを見出した。特にレンバチニブ群のベースライン FGF19

値が治療奏功と関連しており、FGF19 値が高値であった症例で治療奏効率が低

いという結果であった。

この結果を受け、第二章では肝癌に対するレンバチニブとソラフェニブの効

果の違いについて両薬剤の肝癌 CSC への効果に着目して検討した。これまでに

肝癌細胞における CSC の表面マーカーは数多く報告されており、その中でも

CD44/CD133 Double positive 細胞集団は予後不良と有意に関連していることが

報告されている(Yang et al., 2010)。

そこで本研究では、まず CD44/CD133 発現割合の異なる細胞の腫瘍形成能や

薬剤耐性能等について比較し、CD44High/CD133High高発現細胞が既報通り CSC 様

の性質を有することを確認する実験を行った。セルソーターを用いて分離した

Huh7 CD44High/CD133High細胞、Huh7 CD44Low/CD133Low細胞、及び Huh7-KLF5KR 細胞

(CD44High/CD133High)、Huh7-Empty 細胞(CD44Low/CD133Low)を使用した。腫瘍形

成能の比較では in vivo、in vitro いずれの実験系でも CD44High/CD133High高発

現細胞で有意に腫瘍形成能が高かった。また、Huh7-KLF5KR 細胞は Huh7-Empty

細胞と比較し Migration assay では高い遊走能を、Colony formation assay で

は高い Colony 形成能を示した。続く薬剤感受性試験では殺細胞性抗癌剤 5-FU

に対して Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty 細胞いずれも濃度依存性に腫瘍抑制効

果が見られたが、Huh7-KLF5KR 細胞は Huh7-Empty 細胞と比較し有意に高い薬剤

耐性能を示した。以上の結果より、CD44High/CD133High高発現細胞は高い腫瘍形

成能、遊走能、薬剤耐性能という CSC 様の性質を有することが確認された。さ

らにフローサイトメーターを用いて殺細胞性抗癌剤 5-FU 投与による CSC 割合

の変化を検討した。Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty 細胞共に 5-FU 投与によっ

て CSC 割合が増加した。従って、従来の殺細胞性抗癌剤では見た目の腫瘍量は

減少するが、残存した細胞では CSC が高発現しており、結果としてその後の治

療抵抗性や再発転移の原因となり得ることが推察された。

続いてソラフェニブとレンバチニブでも同様に腫瘍抑制効果、CSC に対する

効果を検討した。ソラフェニブ、レンバチニブ共にコントロールと比して腫瘍

増殖を有意に抑制したが、一方で CSC 割合はレンバチニブでは減少させたがソ

ラフェニブではコントロールと比して変化が見られなかった。従って、レンバ

チニブではソラフェニブと比較し CSC に対しての抑制効果がより高い可能性が

示された。

ソラフェニブ、レンバチニブ共にマルチキナーゼ阻害剤であるがその作用機

序は異なり、レンバチニブは FGFR に対してチロシンキナーゼ阻害作用を持つ

Page 61: DOI Doc URL - eprints.lib.hokudai.ac.jp

56

点でソラフェニブと作用機序が異なる。FGFR は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4

の 4 つのサブタイプを有する一回膜貫通型チロシンキナーゼ受容体である。リ

ガンドである FGF はヒトにおいて現在 22 種が知られ、血管形成、創傷修復の

調整を含む、生体生物における多くの生理学的役割を担っており、癌において

は腫瘍血管新生、増殖、悪性形質転換にかかわることが知られる。特に肝癌で

は FGF19/FGFR4 が高発現し、オートクリンループを形成することが腫瘍増殖の

一因とされ同機序に着目した FGFR4 阻害剤の開発も進んでいる(Lang et al.,

2019)。

また、私達は以前、食道扁平上皮癌における CSC は FGF シグナル伝達経路の

活性化によって維持されており、FGFR 阻害剤によって抑制される可能性がある

ことを報告した(Maehara et al.,2017) 。肝癌においても FGF を介したシグナ

ル伝達が CSC の維持に関与している可能性が報告されている(Sandhu et al.,

2014, Jin-no et al., 1997)。

これらの報告から、レンバチニブとソラフェニブの CSC に対する治療効果の

違いが FGF シグナル阻害作用の有無にあるとの仮説を立て、続く検討を行っ

た。

まず、Huh7-KLF5KR 細胞と Huh7-Empty 細胞の FGFR 発現の違いについてウエス

タンブロットおよび qPCR で検討した。いずれの実験系においても Huh7-KLF5KR

細胞で Huh7-Empty 細胞と比較し FGFR1 の発現量が多かった。一方で FGFR4 は

Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty 細胞いずれも高発現であったが、Huh7-Empty 細

胞で発現量がより多かった。これらの結果から FGFR1、FGFR4 の発現量の違い

が CSC 割合に影響している可能性が考えられた。次にこの仮説を検証するため

に Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty 細胞、Hep3B 細胞に対し FGFR1∼3 阻害剤と

FGFR4 阻害剤をそれぞれ投与し検討したところ、いずれの薬剤も用量依存性に

抗腫瘍効果を示したが、FGFR1∼3 阻害剤のみが CSC の減少効果を示した。さら

に Huh7-KLF5KR 細胞に対して FGFR1∼3、FGFR4 をそれぞれノックダウンし、フ

ローサイトメーターを用い CSC 割合の変化を観察したところ FGFR1∼3 ノックダ

ウン細胞では Control と比較し CSC 割合が減少したが、FGFR4 ノックダウン細

胞では Control と比較し CSC 割合は増加した。このことから、肝癌細胞におい

て CSC の維持には FGFR1∼3 を介した FGF シグナルが重要であり、従来肝癌の発

生や増殖などに重要とされている FGFR4 シグナルは CSC の維持への関与は低い

ことが推察された。

続いて FGF と CSC の関係について検討した。先述の通り、先行研究で FGF2 が

食道癌における CSC の維持に重要であることを見出し報告した(Maehara et

al.,2017)。FGF2 は塩基性 FGF(bFGF)とも呼ばれ、288 アミノ酸からなるプロペ

プチドの 142 番目と 143 番目の間が切断されることで成熟 FGF2(C 末端側の 146

アミノ酸)となることが知られ、パラクライン作用で近傍細胞に働く。FGF2 は

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57

正常組織において線維芽細胞をはじめとした様々な細胞に働き、細胞の生存・

分裂・分化・遊走、血管新生、上皮間葉転換(EMT, Epithelial mesenchymal

transition)を誘導するなど多彩な機能を有している(Turner et al., 2010,

Li et al., 2015, Lorusso et al.,2008)。我々の以前の研究では FGF2 が食道

CSC で発現・分泌が亢進しており、MAPK を介した細胞内シグナル経路を活性化

することで CSC の維持を制御していること、これらのシグナルを抑制する FGFR

阻害剤や MEK 阻害剤は食道 CSC を抑制することを明らかにした(Maehara et

al., 2017)。

また、FGF19 は 216 アミノ酸からなる FGF ファミリーの一つであり FGF の中で

エンドクライン FGF に分類される。生体内では回腸から分泌され肝内でその受

容体である FGFR4 と共受容体のβ-klotho に結合することで 2量体を形成し、

下流のシグナル伝達を介して胆汁酸合成酵素の発現抑制に働いている。肝癌に

おいては、FGF19 と FGFR4 のオートクリンループが腫瘍増殖等に関与している

ことが知られており、複数の FGFR4 単独阻害剤も開発段階にある(Lang et

al., 2019)。

これらの事実より、本研究では FGF2 および FGF19 と CSC との関係について検

討した。Huh7-KLF5KR 細胞、Huh7-Empty 細胞に FGF2 を添加したところ、共に

CSC 割合が増加した。一方で FGF19 添加では CSC 割合に変化は見られなかっ

た。さらに siRNA の導入によって Huh7-KLF5KR 細胞の FGF2 あるいは FGF19 を

ノックダウンして CSC 発現割合を解析したところ、FGF2 ノックダウン、FGF19

ノックダウンともに CSC 発現割合は減少した。以上、FGFR ノックダウンと

FGF2、FGF19 ノックダウンの検討から、以下の可能性が推察された。すなわ

ち、肝癌において FGF2 は CSC 維持に重要な働きを有しており、FGF2 発現割合

が増加すると FGFR1∼3 シグナルを介し CSC が増加する。既報によると肝癌では

正常肝組織と比較し FGF2 の発現増加が見られ、FGF2 が肝癌の増殖を刺激する

可能性が指摘されている(Lorusso et al.,2008)。しかし、FGF2 を介したシグ

ナル伝達と肝癌における CSC との関係は、これまで十分に解明されていない。

本研究で、外因性 FGF2 が肝癌における CSC 割合の増加に寄与し、CSC の維持に

極めて重要な役割を果たしていることが示された。さらに FGF2 は FGFR4 より

も FGFR1 および FGFR3 と親和性が高いことが知られている(David et al.,

2015)。従って FGF2/FGFR1∼3 介在性シグナル伝達経路が肝癌における CSC の維

持に重要である可能性が推察された。

一方で FGF19 は肝癌 CSC の維持に寄与しているが、FGF19 は恒常的に十分量分

泌されており、外因性 FGF19 を加えても CSC に影響を与えない可能性が推察さ

れた。また FGF19 は FGFR4 ではなく FGFR1∼3 を介して CSC 維持に関与する可能

性が示唆された。

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58

以上の結果より、FGFR1∼4 阻害作用を有するレンバチニブは、FGFR 阻害

作用を有さないソラフェニブと比較し肝癌 CSC に対して高い治療効果を有する

可能性が示された。

本研究ではいくつかの限界がある。第一にすべての肝癌が FGFR を発現し

ているわけではないため、FGFR を発現していない肝癌について、さらなる検討

が必要である。第二に、本研究では CSC マーカーとして CD44High/CD133Highのみ

に着目した。CD44、CD133 非発現細胞の CSC に対するレンバチニブの効果は解

明されていない。

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59

結論

(第一章)

ベースライン血清 ANG2 および FGF19 値の組み合わせは、進行肝癌患者にお

けるレンバチニブに対する有用な治療反応予測因子となり得ることを示し

た。特に ANG2、FGF19 低値の場合は全例が Responder であった(100%、9/9)。

反対に ANG2、FGF19 高値の場合、Responder 率は低かった(11%、1/8)。

一方、ソラフェニブ群では、ベースライン血清 ANG2、FGF19 値と治療反応

性に関連性は見い出せなかった。ベースライン ANG2 および FGF19 値が高い場

合でも Responder 率(40%、2/5)はレンバチニブ群より高かった。

従って、ベースライン血清 ANG2 および FGF19 低値の症例はレンバチニブ

が、高値の症例はソラフェニブが有用である可能性が示された。

本検討でベースラインのバイオマーカー値が進行肝癌に対しての全身化学

療法の適合性を決定する可能性があることを初めて示した。

(第二章)

肝癌においてレンバチニブがソラフェニブと比較し FGFR シグナルを抑制す

ることで、CSC 阻害活性を発揮することを明らかにした。

肝癌で従来重要とされている FGFR4 シグナルではなく、FGFR1∼3 を介在する

シグナル伝達が CSC 維持に重要であることを明らかにした。

これらの知見は、肝癌における CSC の維持に関する新たな機序を明らかに

するととともに、CSC に対する新たな標的治療法開発の萌芽となりうる。

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謝辞

先ず、本研究にご協力頂いた全ての患者様とそのご家族に心より感謝

申し上げます。

本研究を遂行するにあたり、有益な御指導・御助言をいただきました北

海道大学大学院医学研究院内科学分野消化器内科学教室 坂本直哉教授

に深く感謝いたします。

研究に対する心構えや信念、実験方法、データ解釈、論文作成など、

様々な面において御指導・御援助頂きました北海道大学病院消化器内科

特任助教 須田剛生先生には感謝の念に堪えません。厚く御礼申し上げ

ます。

また、臨床における技術指導や、検体の採取などにご尽力頂きました、

北海道大学病院消化器内科 肝臓グループの諸先生方に、心より深く感

謝申し上げます。

2021 年 3 月

重沢 拓

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61

利益相反

開示すべき利益相反状態はない。

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