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Campaign が 始動! 日本脳神経外傷学会の重症頭部外傷登録事業「日本頭部外傷データ バンク」によると、 重症頭部外傷患者の半数以上が高齢者 (65歳 以上)であり、最も多い受傷原因は転倒・転落であることが分かり ました (図 1) 高齢者における頭部外傷の 最大の原因は「転倒・転落」 高齢者は様々な合併症を有していることや、脳組織や脳血管の脆弱 化、抗血栓薬の服用によって頭部外傷の転帰が不良であることが 知られています。 高齢者の頭部外傷は転帰が不良 高齢者では脳梗塞予防を目的とした抗血栓薬の服用が増加してい ます。 実際に 65 歳以上の高齢者頭部外傷のうち抗血栓薬の服用は約30% に上りました。この割合は今後、さらに増加することが予想されます。 抗血栓薬の服用時には、 転倒に注意 高齢者が転倒等により頭部外傷を受けた場合、受傷直後は問題 なく会話が可能なものの、時間が経つと急速に意識障害が進行し 転帰不良となる“Talk & Deteriorate”が起こりやすいといわれてい ます。特に、抗血栓薬を服用している患者さんでは、その発現頻度が 高いことが知られており (図2) 迅速に適切な対応を実施し意識 障害を進行させないことが重要です。 “Talk & Deteriorate”には迅速対応 日本脳神経外科学会、日本救急医学会、日本脳 神経外傷学会、日本脳卒中学会、日本循環器学会、 日本脳卒中協会では、転倒・転落による高齢者頭部 外傷(特に抗血栓薬内服者)の危険性を患者さんに 理解してもらうとともに、適切な対応について医療 関係者への啓発活動を実施する「 “Think FAST” campaign」を始動させました。 日本脳神経外科学会、日本救急医学会、日本脳神経外傷学会、日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本脳卒中協会 (日本頭部外傷データバンクP2015) 対象:2015年4月1日~2017年3月31日の期間に日本頭部外傷データバンク検討委員会(日本脳神経外傷学会) に参加している施設で治療を受けた重症頭部外傷患者。 方法:頭部外傷症例の、年齢・性別・受傷機転・診断・治療方法・患者転帰等の疫学的検討を行った。 高齢者における受傷原因の割合 図1 11.554.833.7交通事故 その他 転倒・転落 40 30 20 10 0 全症例 抗血栓薬 なし (%) 抗血小板薬 のみ服用 抗凝固薬 のみ服用 両者を服用 21.7 17.8 31 27.7 33.3 ※脳神経外傷または頭部外傷を負った際に、一見軽傷で最初は会話が可能なものの、経過の中で急速に意識障害が 進行すること。 抗血栓薬服用の有無別にみたTalk & Deteriorate 発現率 * P<0.05(vs. 抗血栓薬なし) 対象:2015年4月1日~2017年3月31日の期間に日本頭部外傷データバンク検討委員会(日本脳神経外傷学会) に参加している施設で治療を受けた重症頭部外傷患者。 方法:観察研究。頭部外傷患者の年齢、性別、受傷機転、診断、治療方法、患者転帰等の疫学的検討を行った。 図2 (日本頭部外傷データバンクP2015) 医療従事者の皆様へ

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Campaignが始動!

日本脳神経外傷学会の重症頭部外傷登録事業「日本頭部外傷データバンク」によると、重症頭部外傷患者の半数以上が高齢者(65 歳以上)であり、最も多い受傷原因は転倒・転落であることが分かりました(図1)。

高齢者における頭部外傷の最大の原因は「転倒・転落」

高齢者は様々な合併症を有していることや、脳組織や脳血管の脆弱化、抗血栓薬の服用によって頭部外傷の転帰が不良であることが知られています。

高齢者の頭部外傷は転帰が不良

高齢者では脳梗塞予防を目的とした抗血栓薬の服用が増加しています。実際に65歳以上の高齢者頭部外傷のうち抗血栓薬の服用は約30%に上りました。この割合は今後、さらに増加することが予想されます。

抗血栓薬の服用時には、転倒に注意

高齢者が転倒等により頭部外傷を受けた場合、受傷直後は問題なく会話が可能なものの、時間が経つと急速に意識障害が進行し転帰不良となる“Talk & Deteriorate”が起こりやすいといわれています。特に、抗血栓薬を服用している患者さんでは、その発現頻度が高いことが知られており(図2)、迅速に適切な対応を実施し意識障害を進行させないことが重要です。

“Talk & Deteriorate”には迅速対応

日本脳神経外科学会、日本救急医学会、日本脳神経外傷学会、日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本脳卒中協会では、転倒・転落による高齢者頭部外傷(特に抗血栓薬内服者)の危険性を患者さんに理解してもらうとともに、適切な対応について医療関 係 者 へ の 啓 発 活 動 を 実 施 す る「“Think FAST” campaign」を始動させました。

日本脳神経外科学会、日本救急医学会、日本脳神経外傷学会、日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本脳卒中協会

(日本頭部外傷データバンクP2015)

対象:2015年4月1日~2017年3月31日の期間に日本頭部外傷データバンク検討委員会(日本脳神経外傷学会)に参加している施設で治療を受けた重症頭部外傷患者。

方法:頭部外傷症例の、年齢・性別・受傷機転・診断・治療方法・患者転帰等の疫学的検討を行った。

高齢者における受傷原因の割合図1

11.5%

54.8%

33.7%交通事故

その他

転倒・転落

40

30

20

10

0全症例 抗血栓薬

なし

発現率

(%)

抗血小板薬のみ服用

抗凝固薬のみ服用

両者を服用

21.717.8

31*

27.7*33.3*

※脳神経外傷または頭部外傷を負った際に、一見軽傷で最初は会話が可能なものの、経過の中で急速に意識障害が 進行すること。

抗血栓薬服用の有無別にみたTalk & Deteriorate※発現率* P<0.05(vs. 抗血栓薬なし)

対象:2015年4月1日~2017年3月31日の期間に日本頭部外傷データバンク検討委員会(日本脳神経外傷学会)に参加している施設で治療を受けた重症頭部外傷患者。

方法:観察研究。頭部外傷患者の年齢、性別、受傷機転、診断、治療方法、患者転帰等の疫学的検討を行った。

図2

(日本頭部外傷データバンクP2015)

医療従事者の皆様へ

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提供:

頭部外傷の転帰を不良にしないために

●抗血栓薬服用中の頭部外傷患者が来院したら・迅速に画像診断にて出血の有無を確認し、出血を認める場合は軽症であっても最低24時間は厳重に神経症状の観察を行うようにしてください。・中和剤がある場合には抗血栓薬の中和を検討し、必要に応じて適切なタイミングで再開をしてください。

●患者さんにご説明・ご指導いただきたいこと・抗血栓薬の作用に関して十分にご説明ください。・服薬している抗血栓薬の名前や、中和剤の有無に関して、患者さんやそのご家族に覚えていただくようにしてください。・頭をぶつけた場合は、軽症であっても病院にて受診することが必要であることをお伝えください。・緊急時にも“どの種類の抗血栓薬を飲んでいるか”が医療関係者にわかるよう、お薬手帳や携帯カードを持ち歩くようにご指導ください。

抗血栓薬服用中の高齢者における

014309-A 2018年6月作成

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患者さんに知ってほしいこと

●抗血栓薬ってどんなお薬?様々な理由で血のかたまり(血栓)ができやすくなっていると、その血栓が脳の血管につまり脳梗塞を発症してしまうことがあります。抗血栓薬は血を固まりにくくして血栓ができるのを予防するお薬なので、きちんと飲み続けることが何よりも大切です。自分の判断で飲むのをやめたり、薬の量や回数を変更したりせずに、主治医の指示に従って服用しましょう。

●こんなときには事前に医師に相談を・手術や内視鏡、抜歯をするとき・新たに他の薬を服用するとき・別の医療機関にかかるとき

●こんなときにはすぐに医師に相談を・鼻や歯茎から出血が続く・あざ(内出血)ができた・血尿、血便がでた

・胸やけ、吐き気、むかつき・転倒した、体(特に頭)をぶつけた・脱水症状

抗血栓薬を飲んでいる抗血栓薬を飲んでいる患者さんへ

日本脳神経外科学会、日本救急医学会、日本脳神経外傷学会、日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本脳卒中協会

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●頭をぶつけた場合は 医療機関を受診しましょう!抗血栓薬を飲んでいるときには、血が止まりにくくなっています。転んだりして頭をぶつけたときは、少しでもおかしいと思ったらすぐに病院に行きましょう。

●抗血栓薬の中には 中和剤がある薬があります抗血栓薬を飲んでいて血が止まりにくくなっている状態を中和剤がもとに戻してくれます。転んでけがをした場合や、緊急手術の際に止血しやすくすることができます。自分が飲んでいる抗血栓薬に中和剤があるかあらかじめ医師に確認し、飲んでいる薬の名前を自分自身や家族が覚えておくようにしましょう。また、緊急の際に何の薬を飲んでいるかが医療関係者にわかるように、お薬手帳や携帯カードを持ち歩くようにしましょう。

病・医院名

提供:014311-A 2018年6月作成