9
18 CHEMOTHERAPY JAN.1961 型5例,C型19例,F型 が8例 で,C,F型 が 殆 ど大 部 分 を 占 め,ひ ろ が り も1が6例,2が15例,3が11 例 で,大 部 分 が 空 洞 を,而 も硬 化壁 空洞 を 有 して い る。 INH耐 性 は1mcgが6例,5mcgが7例,10mcg が19例 であ る。THの 投 与 方 法 は 副 作 用 を 考 慮 して1 日量0・5分2毎 日法 を原 則 と した。此 の投 与 量 で 強 い Magenbeschwerdeの た め 早 期 に 中止 した もの が1例 あ る。従 つて此 の1例 は集計か ら除外 してある。併 用薬剤 に つい て は,既 往 の 化 学 療 法 を 継続 し乍 らTHを 追加 す るか,INHを 止 め てTHに 切 り替 えるよ うに した。 TH6カ 月 投 与 後 に お け る塗抹 お よび 培 養 成 績 は次 の とお りである。す なわ ち,6ヵ 月後におけ る塗抹陰性化 は31例 中17例(54.8%),培 養 陰 性 化 は29例 中13 例(44・SldO)で あ る。INH耐 性 菌 結 核 に 対 し 相 当 の効 果 が 認 め られ る。陰 性 化 な い し減 少 後 途 中 か ら復 帰 した も のに つ い て 復 帰 が み られ た 月 別 に し らベ る と,大 体3 ~4カ 月 後 か ら復 帰 してい る 。未 だ耐性検査の結果が判 明 して い ない が,TH投 与 後3~4カ 月頃が耐性発現の 時 期 と して 警 戒 を要 す る頃 か と思 わ れ る。 次 に,症 例 をTH投 与前 の 病 状 か ら,1.亜重症, 五.重症,皿.超 重 症 に 分 類 して菌 陰 性 化 の 様 子 を 眺 め る。今 回 は 此 の 重 症 の病 型 分 類 に つ い て詳 し く述 べ る こ とは保留するが,重 症化ヘー歩片足を踏み出しているよ うな 亜 重症17例 中11例(64.7%),未だ超 重症では な い 重 症 例9例 中4例(44.4%)に菌 陰 性 化 が み られ て い る。例 え ばKMの よ うな強力な化学療法剤と併用す れ ば 更 に好 結 果 が 期 待 出 来 る ので あ つ て,THは 重症結 核 対 策 上 大 き な武 器 と考 え ら れ る。 以 上 のTHに よ る強 力 な 菌 陰 性 化 は如 何 な る機 序 に よ る もの か 興 味 あ る点 で あ るが 私共 の現 在 迄 のinvitre, inviVOの 成績では末だ不明の点が多い。 THはinvitroの 静菌作用 は必 ず し も 高 くな い。 YOUMANS培地 におけ るINH10mcg耐性菌に 対 する 阻 止 効 果 を 検 す る と,完 全 阻 止 には2~5mcgを要 して い る。細 胞 内 結 核 菌 に 対 す る阻 止 力 もINHに 較 ぺ る と 遙 に 弱 くそ の 阻 止 に はINHの10~20倍 の濃 度 を要 す るo 又,TH投 与 後 の血 中濃 度 も,そ の 抗 菌 力 か らみ れ ば 必 ず し も高 くない。小 川 氏直 立 拡散 法 に よ り生 物 学 的 活 性 濃 度 を 検 した。標 準 曲 線 は3.1mcgで僅かに6.25 rncgではつき り阻 止帯 が 現わ れ る。4名 の 患 者 に250 rng(こ れ が大 体 普 通1図 の 投 与 量 で あ るが)を 投 与 し て2,3,6時間の血、中濃 度をこの方 法に よつて求め ると 殆 ど阻 止帯 がみ られず,僅 か に1例 に2,3時 間で軽度 の阻 止 帯 が み られ た に 過 ぎ なか つ た。1回 投 与 量 を500 mg(此 の投 与 量 で はMagenbeschwerdeが 強 く出 るも の が 多 い)と す る と漸 く5mcg以 上 を 示 す も のが 出 て くる。 SCC法 に よ り時 間 的 に 採 血 し た 血 液 と菌 を混 じて 培 養 した 成 績 は,500mg投与 の場 合 に は じめ て 菌 増 殖 を 阻止する例が若干ある。 以上 か らTHの 抗 菌 作 用 は 比 較 的 弱 く,而 も血中濃 度 もそ ん な に 高 くな い とい う結 果 で あ る。 マ ウ ス に投 与 して肺 内 濃 度 を検 した。投与 量 は40mglx kgで,投 与 後2,4,6時 間 後 に 失 血 させ て,血 中 及 び 肺 内活 性 濃 度 を 測定 した。INHの 同 量 を 投 与 し た 場 合 を 対 照 とす る。す なわ ち,INHの 血 中 お よ び肺 内 濃 度 に 比 しTHの 場合は著しく低 い とい うことが顕著であ る。而 し,INHの 血 中 お よび 肺 内濃 度 に 比 してTHの 場 合 は 低 い 乍 ら も6時 間値 は2時 間 値 よ りも寧 ろ高 い と い う傾向を示 してい る。更 に,結 核 感 染 マウスにTH 40mg/kgの 量 を9日 間連 日投与 し10日 目に屠殺 しそ の血 中 お よび肺 内 濃 度 を測 定 した 成 績 は,結 核 感 染 マ ウ ス に於 て は 更 に6時 間 後 の 肺 内濃 度 が高 く出 て い る。 以上 の 如 く,結 核 病 巣 内 のTH濃 度は 或る程度高 く 現 われ る とい う結 果 であ るが,こ の 現 象 もTHの 抗結 核 作用 を表 現 す る1つ のFactorと な り うるか とも考 え られ る。 (20)肺 結 核 外 科 に お け るKanamy- cinの使 用 法 綿貫重雄 ・伊藤健次郎 武 田清一。鈴 木 正 一・ 千葉大学医学 部綿貫 外科 抗 結核 剤 に耐 性 を 有 す る症 例 に,外 科 療 法 を 施 行 した 場合,合 併 例を併発す ることが多 くみられ るが,こ の解 決は重要な研究課題である。 教 室 で は耐 性例 にKanamycinを 使 用 して良 好 な成 績 をおさめており,数回にわたつて報告してきておる。 今 回はKanamycinを 用 い て手 術 を行 な つ た50例 うち,1年 以上経過 した36症 例につき,そ の成績を述 べ,投 与法について2,3検 討を加えたので報告する 対 象 症 例 は,い つ れ も術 前SM10mcg以 上 耐 性 の も の で,3者 耐 性 が19例 であ り半 数 以 上 を 占 め て お る。 術 前X線 所 見 をNTA分 類でみると,肺切例では中等 症 が 多 く,学 研 分 類 で は,線 維 乾 酪 型 が大 部 分 で,少 数 の重 症 混 合 型 が含 まれ て お る。空 洞 型 は,硬 化 輪状 空洞 が大部分であるo 次 に これ ら の症 例 にKMを 使 用 して 手 術 を行 ない, 1年以 上 経 過 した 症 例 の 成 績 を み る と,肺 切29例 の5 ち,培 養 塗 沫 陽 性 例 に,一一過 性 排 菌2例 ・ 気 管 支 痩2

18 CHEMOTHERAPY JANfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/09/1/9_18.pdf · 18 chemotherapy jan.1961 型5例,c型19例,f型 が8例 で,c,f型 が殆ど大 部分を占め,ひ ろがりも1が6例,2が15例,3が11

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Page 1: 18 CHEMOTHERAPY JANfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/09/1/9_18.pdf · 18 chemotherapy jan.1961 型5例,c型19例,f型 が8例 で,c,f型 が殆ど大 部分を占め,ひ ろがりも1が6例,2が15例,3が11

18 CHEMOTHERAPY JAN.1961

型5例,C型19例,F型 が8例 で,C,F型 が殆 ど大

部分 を占め,ひ ろが りも1が6例,2が15例,3が11

例 で,大 部分が空洞 を,而 も硬 化壁 空洞 を有 してい る。

INH耐 性は1mcgが6例,5mcgが7例,10mcg

が19例 であ る。THの 投 与方法は副作用を考慮 して1

日量0・5分2毎 日法 を原則 と した。此 の投 与量で強い

Magenbeschwerdeの ため早期 に中止 した ものが1例 あ

る。従 つて此 の1例 は集計か ら除外 してある。併 用薬剤

に つい ては,既 往の化学療法 を 継続 し乍 らTHを 追 加

す るか,INHを 止 めてTHに 切 り替 えるよ うに した。

TH6カ 月投与 後におけ る塗抹 お よび培養成績 は次 の

とお りである。す なわ ち,6ヵ 月後におけ る塗抹陰性化

は31例 中17例(54.8%),培 養陰性化は29例 中13

例(44・SldO)で ある。INH耐 性菌結核に 対 し相当 の効

果 が認め られ る。陰 性化ない し減少後途中か ら復帰 した

ものについて復帰がみ られ た月別に しらベ ると,大 体3

~4カ 月後か ら復帰 してい る。未 だ耐 性検査の結果が判

明 してい ないが,TH投 与 後3~4カ 月頃が耐 性発現 の

時 期 として警戒 を要す る頃 か と思われる。

次に,症 例をTH投 与前 の 病 状 か ら,1.亜 重症,

五.重 症,皿.超 重症 に分類 して菌 陰性化 の様 子 を 眺 め

る。今 回は此の重症 の病型分 類について詳 しく述 べ るこ

とは保留するが,重 症化ヘー歩片足 を踏 み出 している よ

うな亜重症17例 中11例(64.7%),未 だ 超 重症 では

ない重症例9例 中4例(44.4%)に 菌陰性化がみ られ て

い る。例 えばKMの よ うな強 力な化学療法剤 と 併用す

れば 更に好結果 が期待出来 るのであつて,THは 重症結

核 対策上大 きな武器 と考 えられる。

以上 のTHに よる強力な菌 陰 性 化は如 何な る機序に

よるものか興味 ある点 であるが 私共 の現在 迄のinvitre,

inviVOの 成績では末だ不 明の点が多い。

THはinvitroの 静菌作用 は必 ず し も 高 くない。

YOUMANS培 地 におけ るINH10mcg耐 性菌に 対 する

阻止効果 を検す ると,完 全阻止 には2~5mcgを 要 して

い る。細 胞 内結核菌に対す る阻止 力 もINHに 較ぺ る と

遙 に弱 くその阻止にはINHの10~20倍 の濃度 を要す

るo

又,TH投 与後 の血 中濃 度 も,そ の抗菌力か らみれば

必 ず しも高 くない。小 川氏直 立拡散 法に よ り生物学的活

性 濃度を検 した。標 準 曲 線 は3.1mcgで 僅かに6.25

rncgで はつき り阻 止帯 が 現わ れ る。4名 の患者に250

rng(こ れ が大 体普通1図 の投 与 量 で あ るが)を 投 与 し

て2,3,6時 間の血、中濃 度をこの方 法に よつて求め ると

殆 ど阻 止帯 がみ られず,僅 か に1例 に2,3時 間で軽度

の阻 止帯がみ られたに過 ぎなかつた。1回 投与量 を500

mg(此 の投与量 ではMagenbeschwerdeが 強 く出 るも

のが多い)と す る と漸 く5mcg以 上 を 示す ものが 出て

くる。

SCC法 によ り時間的に採血 し た 血 液 と菌 を混 じて培

養 した成績は,500mg投 与 の場 合には じめて菌増殖 を

阻止す る例が若干あ る。

以上 からTHの 抗菌 作用は 比較 的弱 く,而 も血中濃

度 もそ んなに高 くない とい う結果 であ る。

マウスに投 与 して肺 内濃 度を検 した。投 与量 は40mglx

kgで,投 与後2,4,6時 間後に失血 させ て,血 中及 び

肺 内活性濃 度を測定 した。INHの 同量 を投与 し た 場合

を対照 とす る。す なわ ち,INHの 血中 お よ び肺 内濃度

に比 しTHの 場 合は著 しく低 い とい うことが顕 著であ

る。而 し,INHの 血中お よび肺 内濃 度に比 してTHの

場合は低い乍 らも6時 間値 は2時 間値 よ りも寧 ろ高 い と

い う傾向を示 してい る。更 に,結 核 感 染 マ ウスにTH

40mg/kgの 量 を9日 間連 日投与 し10日 目に屠殺 しそ

の血 中お よび肺 内濃度 を測定 した成 績は,結 核感染 マ ウ

スに於 ては更に6時 間後の肺 内濃 度が高 く出てい る。

以上 の如 く,結 核病巣 内のTH濃 度は 或る程度高 く

現われ るとい う結果 であ るが,こ の現象 もTHの 抗結

核 作用 を表 現す る1つ のFactorと な りうるか とも考 え

られ る。

(20)肺 結 核 外科 に お け るKanamy-

cinの 使 用 法

綿貫重雄 ・伊藤健次郎

武 田清一。鈴 木 正 一・

千葉大学医学部綿貫外科

抗 結核 剤に耐 性を有す る症例に,外 科療 法を施行 した

場合,合 併 例を併発す ることが多 くみられ るが,こ の解

決 は重要 な研究課題であ る。

教室 では耐 性例 にKanamycinを 使用 して良好 な成績

をお さめ てお り,数 回にわたつて報告 してきておる。

今 回はKanamycinを 用い て手術 を行 なつた50例 の

うち,1年 以上経過 した36症 例につき,そ の成績を述

べ,投 与法につい て2,3検 討 を加えたので報告す る。

対象症例は,い つれ も術前SM10mcg以 上耐 性の も

ので,3者 耐性が19例 であ り半数以上 を占めてお る。

術前X線 所見をNTA分 類でみ ると,肺 切 例では中等

症 が多 く,学 研分類では,線 維乾酪型 が大 部分で,少 数

の重症混 合型が含 まれ ておる。空 洞型は,硬 化輪状 空洞

が大 部分であるo

次にこれ らの症例 にKMを 使用 して 手術 を行 ない,

1年 以上経過 した症例 の成績をみ ると,肺 切29例 の5

ち,培 養塗沫陽 性例に,一一過 性 排 菌2例 ・気管支痩2

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VOL.9NO.1 CHEMOTHERAPY 19

例,対 側悪化1例 の合併症 をみ とめた。

胸成例 につい てみ ると,い つれ も重 症例のために,術

後排菌3,シ ューブ1例 を認めた。こ れは余 り良い 成績

では ないが,死 亡 例は1例 もない。

術後1年 以上経 過 した肺 切例の就労状 態をみ ると,普

通 生活に入つてい るものは29例 中18例(62%)に 及

ん でお り,SM感 性例に遜 色ない。

症 例。34才 の主婦。右 側大空洞,3者 耐 性例で,KM

を使用,左 上葉切除,追 加胸成 を行 ない,現 在 家事 に従

事 しておる。以 上 のよ うに耐 性側 でも手 術に成功すれ ば

予後 は良好であ り,KM使 用の意味が大きい と云える。

次 に投与 法に.ついて検 討を加えてみ る。

KMの 投与法は療 研指導の もとに週2回49法 が行

なわれ ておるが,週2回29法,週3回39法 につ

い て検討 を行 なつてみた。

週39法 を行 なつた肺切13例 に2例 の 合併症 をみ

てお るが,療 研報告に比較 して大差ない。こ れ か ら み

て,週39法 は49法 に遜 色ない と考 えられ る。更 に

副 作用,経 済的面から も,長 期使用に有利である。

次にKMはSMと 同様 に肺局 処に使 用 して良い もの

で あるか ど うか,家 兎を用いて実験的 に検討 を加えてみ

た。

実験方法 は,各 濃度 のKM液 を家兎の肋膜腔 内,気

管 内,肺 内に注入 して,SM,生 理 的食塩水を対照 とし

て,肋 膜及 び肺 組織 の変化を病理 組織学的に検討を行な

つてみた。

先ず肋膜腔内にKMを 注入 した場合 の 肋膜の変化で

あ るが,生 理的食塩水20%で は変化はみ られないが,

40%粉 末例 では極 く軽度 に肋 膜 肥 厚がみ られ るが,他

に認むべ き変化は ない。

次 に気管 内に注 入 した場合であるが,1%,5%で 肺

胞 内細胞滲 出,出 血,細 胞滲潤 は どの限局 した炎症 性の

変化がみ られ,10%,20%,40%で は こ れ ら の滲 出性

変化が禰漫 性で,著 明になつ てきておる。

対照 と したSM注 入例 では,20%,40%で 組織 の炎

症所 見も限局性でKM例 に比 較 して 軽度である と云え

るo

それ では比較的 高濃 度のKMを 連続 注入 した 場 合で

は どうであるか とみる と,連 続3日 間注入 した ものでは

細胞滲潤がi著明にな り,肺 胞腔 消失,結 締織 細胞増殖が

み られ,時 間の経過 とともに器 質化が著明にみ られ る。

気 管内にKMを 注入後 の肺組織 変化を 経 過的 にみる と

気 管内にKMを 用いる場 合は5%以 下が望 ましい と云

える。

それ では直接肺 内にKMを 注人 した場 合の 肺組織 の

変化をみ てみ ると,生 理的食塩 水注入例では,気 管内注

入 の場 合に比較 して出血,細 胞滲 出な どの変化は梢著 明

であ り,肺 内注入の場合はいつれの濃度 の場合 にも認 め

られてお る。

5%,10%例 で,す でに肺 胞腔内滲 出液 の潴留,細 胞

滲出,肺 胞壁細胞滲潤,出 血な ど薦漫性 の変 化がみ とめ

られ る。20%,40%に な ると,更 に 著 明な炎症性変 化

がみ られ る。対 照 と したSM例 では,5%,10%で は肺

胞壁肥厚 な どの限 局 した 変 化 であ り,20%,40%で は

限局 性ではあるが,KM例 と同様に高度 の炎症 性変化が

み られ る。

肺 内にKMを 使 用する場 合には5%以 下 が望 ましい

と云 うことに なる。

以上,肺 局所にKMを 用い る場合には,肋 膜腔 の場

合は問題ないが,気 管内,肺 内に用い る場合に,は5%以

下 の低濃 度の ものを用いた方が良い と云 うことにな る。

実 験成績 がその まま臨床 的に適応す るとは 考 え な い

が,実 験か らみる と,5%以 下 の低濃 度を用いた方が安

全であ ると云 うことがで きる。

例数は多 くないが,臨 床的にKM低 濃度液をネブ ラ

イザーで使 用 して,何 等の副作用な く,良 い成績であ る

ことを経験 してお る。

以上結 論 として,耐 性例にKMを 使用 して外科療法

を行 なつた場合,矢 張 り合併 症は さけ られないが,SM

感性例 の成績にお とらない成績を修めてい る こ と を 述

べ,更 にKM投 与 法について,週39法 が週49法 に

較べて遜色 ない成績 であることを報告 し,KMの 肺局所

使用につい て2,3検 討 を加えた。

(21)重 症肺結核の研究

猪 野 家

国立千葉療養所

(指導:岡 田藤助所長)

NTA分 類 の高度進展以上に して排 菌陽性の経過を と

り,%ve,50%以 下 の昭和29年 よ り34年 迄の死亡モ

及 び剖検80例,臨 床例40例 につき検討 した。

1)3i剤 耐 性36%,2剤 耐 性32%,耐 性無 しは、僅か

4%,SMの みに つ い て 云 うと94%耐 性,INH57%

耐性,PAS49%耐 性。化 療 中の増悪 は喀血,血 疾に伴

うこと多 く31%で 化 療 中 断時に多 くINH間 歓PAS

が之に 次 ぐ。耐 性になつた薬剤 を用いて も腸 結核,各 臓

器 の栗粒性血行撒布 は昭和29,30年 頃の化療不充分症

例 に軽微 な者2例 認 めただけで喉 頭結核 はただ癒痕 のみ

で主 なる死 因はSchubに よる結核盤肺炎 及び喀血 夫 々

30%,肺 心障 害に関係す る肺 水腫77%。結 核 性肺 炎はL

化療 以前 の如き広範 な乾酪 性肺 炎はない。即 ち所謂good

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20 CHEMOTHERAPY JAN.1961_一_一chronicusに 経過 してい ると云 える。

2)側 荒蕪肺 を呈す る群は滲 出性変化,発 熱,喀 疾 等

梢強 く,右 心室壁の肥厚せ る者は少ないQ右 心室壁 の5

mm以 上 の群は滲出性 変化,発 熱,喀 疾等が梢少 ないn

3)肺 活土量1,300cc以 下約62%,約80%が 肺 気腫

を伴 い,喀 疾 の多い者64%,肺 水腫 が77%に 見 られ肺

心障害 が非常 に多い。

4)喀 疾 の多い主 なる因子 と し結 核性肺炎58%,荒

蕪肺25%,そ れ以外 気管支拡張症 を含 め非結核性気管

支変化16%に 見 られ,結 核性肺 炎は喀疾の多い者に 多

い傾向が見 られ る。結 核性肺炎 の特に喀疾の多い群は少

ない群に比 し荒蕪肺 を呈 す る者多 く右心室壁 の肥厚せ る

者少 く,肺 炎 の範 囲,気 管支の変化,気 管支粘膜 の盃状

細の増 加,空 洞壁 の変化が強い傾 向が ある。

5)陳 旧性重症肺結核患 者の発熱,喀 疾に対 しPC,

CM等 の非結核性抗 生剤 がある程度有効 であ り,上 記所

見と併せ混 合感染が症状 の悪化 を促進 してい る1因 であ

る と考 え られ る。ネ ブ ライザ ーもあ る程度有効 で使用す

べ き もの と考 え られ る。

(22)抗 真菌剤の試験管 内併用効果

上 田英雄 ・福島孝吉 ・明石哲二

佐 々隆之 ・大塚恭生

東大上田内科

真 菌 症 に 対 して,最 近 種 々の 抗 真 菌 剤 が 発 見 され,治

療 に 際 して 効果 を あ げ て い る。し か し我 々の 経 験 に よれ

ば,こ れ ら抗 生 剤 に対 してCandidaalbicans,Crypto-

coccusneoformansに 於 い て は,耐 性 の 上 昇 が 署 明に は

み られ ない が,AsPergillusに 於 い ては,耐 性 を 獲 得 す

る こ とを知 つ た。

こ の よ うな こ とか ら,真 菌 症 の 治 療 に あ た つ て 単 一 の

抗 生剤 の連 用 が,と もす れ ば,そ の 効果 を 減 じ,或 は 無

効 とす る こ とが考 え られ,そ の 場 合,薬 剤 の 毒 性 等 の関

係 か ら大 量 投 与 が 不 可 能 な 現 在,種 々抗 真 菌 剤 の併 用 に

よ り,よ り充 分 な 治 療 効果 が 上 げ られ れ ば,治 療 上 有 意

な 点が 多 々あ る と思 わ れ る。

我 々 は これ らの 点 か ら,抗 真 菌 剤 の 試 験 管 内併 用 効 果

につ き検 討 したo

使 用 した 菌 種 はCandidaalbicans,Cryptecoccusneo-

fomans及 びAsPergillusfumigatvs及 び 同 じ くflavus

で,薬 剤 はAmphotericinB,Trichomycin,Nystatin,

Naramycin,PolymyxinB及 びVariotinを 用 い た。

現 在 深 部真 菌 症 に 最 も有 効 であ るAmphotericinBを 基

本 と して,そ れ に対 して 他 の5種 を組 合 せ て行 なつ た。

な お 各薬 剤 は そ の2倍 稀 釈 の系 列 を組 合 せ て行 な つ た。

A.Candidαalbieansに 対 す る 各 種 薬 剤 の 試 験 管

内 併 用 効 果

実 験 は サ プ ロ ー液 体培 地 に 各 種 の 濃 度 に 薬 剤 を混 入 し

て 用 い,使 用 菌 はCandidaalbicansDukeNo.2株 を

用 い,37。C,72時 間 培 養 で 判 定 し た。

1・AmphotericinBとNystatin

2.AmphotericinBとTrichomycin

3.AmphotericinBとVariotin

以上 の3組 の 絹 合 せ で 実 験 を行 な つ た が,そ れ ぞ れ の

組 合 せ の薬 剤 が,そ の 最 低 阻 止 濃 度 に 準 じ て阻 止 して お

り,い つれ も相 加 的 に 作 用 す る。

B.Aspergillusに 対 す る 各 種 薬 剤 の 試 験 管 内 併 用

効 果

使 用 した`AsPer8illusはAsPergill%sfumigatus木

村 株 とAsPergillusflavus金 森株 の2株 を 用 いた。実

験 は サ ブ ロー 固形 培 地 に 種 々 の濃 度 に 薬 剤 を 混 入 し,

37。C,48時 間 の培 養 で 判定 した。

1.AmphotericinBとNystatin

2.AmphotericinBとTrichomycin

以 上 の2組 につ き,そ れ ぞれ 上 記2株 を用 い て実 験 を

行 な つ た。

い ず れ の組 合せ の場 合 で も,充 分 に 相 乗 的 な効 果 を み

る こ とが 出来 ず,概 して 枢 加的 な 作 用 を み た が,ASPer-

gillusfumigatus(木 村 株)に 対 す るAmphotericinB

とTrichomycinの 場 合,及 びAspergillusflavus(金

森 株)に 対 す るAmphotericinBとNystatinの 場 合 に

は,や や 相 乗 的 な効 果 が あ る よ うに み られ るが,こ れ ら

の場 合,更 に低 い倍 率 の 系 列 を 用 い た 実 験 が 必 要 で あ る

と思 わ れ る。

C.Cryptoeoeeusneoformαnsに 対 す る各 種 薬 剤

の 試 験 管 内併 用効 果

実 験 は サ ブ ロー液 体培 地 を 用 い,そ れ に 各 種 濃 度 の組

合 せ で薬 剤 を混 入 し,37。C,72時 間 の培 養 で判 定 した。

な お使 用 した菌 株 は,主 にCryPtococcuSneoformans

Duke株 を 用 い た が,AmphotericinBとTrichomycin

の組 合 せ に 於 い て は,そ の 他 に東 邦株 及 び 田 坂 株 を も加

え た。

1.Amph◎tericinBとNystatin

2.Ar叩hotericinBとVariotin

以上2組 で は・ 定 型 的 な 相 加 作 用 の 効 果 を あ らわ し,

相 乗 的 とみ られ る 点 は ま つ た くな か つ た。

3.AmphotericinBとNaramycin

4.AmphotericinBとPolymyxinB

こ の2組 の場 合 は ・ や や 複 雑 な 作用 を 上 の2者 に 対 し

てみ せ る が,特 に3・ に 於 い て は や や 相乗 的 な 効果 が み

られ るが,そ の効 果 は な お 細 か く検討 され る必 要 が あ ろ

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VOL.9NO.1 CHEMOTHERAPY 21

う。4.の 場 合 は 概 して相 加的 に 作 用 して い る と考 え られ

る0

5.AmphotericinBとTrichomycin

こ の場 合,そ の結 果 が や や 異 常 な もの で あ つ た の で,

Cγyptococcvsneefeγmansは 、カ プ セル の厚 いDuke株,

東 邦 株 の2株,及 び カプ セ ル が な い と思 わ れ る田 坂 株 の

3株 を 用 い て 同 じ実 験 を 行 な つ た。

こ の両 者 の 併 用 に よ り特 微 的 な こ とは,Duke株,東

邦 株 の場 合 に,AmphotericinBの 阻 止 力 が,ま つ た く

消 失 して し ま うが,し か しTrichomycinの 効 果 はAm・

photericinBの 濃 度 に 関 係 な く一 定 の効 果 を示 し てい る

こ とで あ る。即 ち この 場 合Trichomycinの 濃 度 がO・03

~O .08u/ccの 如 き低 い値 で あ つ て もAmphotericinB

は そ の阻 止 力 は 消 失 して しま うので あ る。Amphotericin

Bの 最高 濃 度 は そ れ ぞ れO.5mcg/cc,1mcg/ccで あつ

た が 少 くと も こ の範 囲 では そ の効 果 は 失 わ れ て い る。

又,田 坂 株 を用 いた 場 合は,前2者 とや や そ の効 果 に

差 が あ り,こ の 併 用 に よ るAmphotericinBの 阻 止 の

減 退 は 弱 くAmph。tericinの み の 最 低 阻 止 濃 度0.25

mcglccに 対 して,Trichomycino.125u/cc看 こて1mcg

の濃 度 で そ の 発 育 を 阻 止 し て い る。こ の時 のTricho-

mycinの 行 動 は 前2者 の場 合 と同 様,一 定 した 濃 度 に て

肇 育 を阻 止 して い る。

か くの 如 く,こ の 併 用 効 果 の異 常 は 薬 剤 の側 ではAm-

photericinBとTrichomycinの 組 合 せ の み に 見 られ,

他 の 組 合 せ で は 見 られ ず,又 菌 の 側 か らみ る と,Candida

albicans及 びAsPergillusecは 認 め られ ず,CryPtococcus

に つ い て の み 認 め られ た。こ れ は 併 用 薬 剤 と菌 との3者

の 間 の特 種 な関 係 に よ る も ので あ ろ うが,そ の効 果 が ど

の よ うな 機 序 に よ り生 じるか は 不 明 で あ り,今 後 の検 討

を 必 要 とす る問 題 で あ る。

結 論

Candidaalbicans,Asψergillusjumigatus,AsPer・

gillusfiavus及 びCryPtecoccusneOforma%sに 対 して

AmphotericinBを 中 心 と し て,他 の5種 の抗 真 菌 剤 を

組 合 せ,試 験 管 内 併 用 効 果 をみ た が,多 くの場 合 相 加的

な効 果 を み るの み で,相 乗 的 な効 果 は ほ とん ど認 め られ

な か つ た。又 一 般 の抗 生剤 に 時 と して み ら れ る よ う な

抵 抗 作 用 は 認 め ら れ な か つ た が,CryptOCOCCUSneofor・

mansに 対 す るAmphotericinBとTrichomycinの 併

用 の 場 合 に 一 方 の み が そ の阻 止 力 を失 うと い う特 種 な結

果 が 得 られ た が,こ の 点 に 関 し ては 今 後 検 討 す る必 要が

あ る と思 われ る。

(23)ア スペ ル ギル ス症 に対す るア ン

ホテ リシ ンBの 応 用,殊 に 副作

用につ い て

福島孝吉 ・福 村 豊

玉置昭英 ・増田真一郎

三井厚生病院内科

我 々は,気 管支 アスペル ギル ス症,ア スペ ルギルス菌

球,及 びアスペル ギルス膿胸 の3例 をアンホテ リ・シ ンB

に依 り治療 した。

気管支 アスペルギルス症 の患者 は23才 男性。昭 和32

年,肺 結核 に罹患,化 学 療法を行 な うと共に,翌 年両側

の上葉切除術 を受 け,術 後は順調に経過 した。し か し昭

和34年1月 初 旬,寒 冒に罹患,そ の頃 よ り連 日血疾及

び膿疾 を喀 し始めた。そ の1カ 月後に行なつた気管支鏡

検 査で右上葉 支に支柱 でつなが る菌塊を認め,そ の組織

学的 検査で真菌性疾 患を疑い,昭 和34年6月 本院に転

院 した。

入院時所見では,体 格中等,栄 養可,胸 部 では第 皿肺

動 脈音の充 進を認め る外,腹 部四肢共正常所 見であ り,

胸 部 レ線像 で も病的 陰影を認めず,又 諸検査成績 でも白

血球像 で,好 酸球の軽度増加を見 る外,全 て正常 な成績

を得た○ 気管支鏡検査で,右 上葉気管支分岐部 よ り1~

2cm上 方 の右壁 に平坦 であ るが,表 面が凹凸を 示す肉

芽 組織があ り,又,気 管内壁に濃厚な粘液膿性 の分泌物

が散在 してい る。之 等 をサブPt-一一寒天培地 で培養 しAs-

Pergillusfiavusを 分 離 した。こ のAsP.flavusの アン

ホテ リシンBの 最低阻止濃度は1.5mcglccで あ る。

入院後は,隔 日に アンホテ リシンBを0.25mg/kg,

却ち,こ の例では14mgを5%ブ ドウ糖500ccに 溶

解,大 体4~6時 間をかけてゆつ く り点滴静注を行 なつ

た所,悪 寒,戦 漂,発 熱 の副作用が見 られたが,速 かに

血疾 の消失が見 られ膿疾 の減少 を来 した。そ れ等副作用

と,点 滴が長時間にわた るための疲労が苦 しい事か ら投

与方法を気管内注入に変 えた。

軟骨間穿刺法に依 り隔 日に10~15mgの ア ンホテ リ

シンBを 注 入した所,一 時AsPergillus"avusの 排菌量

の増加を見たが注入の続行 と共に次第に減少 し,遂 には

培養で陰転 した。

この入院治療の経過中に屡 々米粒大 の菌塊 を喀 出 して

い る。そ の喀出 された菌塊の周辺部を見 ると,緻 密 に織

られた菌糸 よ りな り,そ の 周 辺 には細胞浸潤が あ り,

又,空 気に触れた一部分には,胞 子頭を見 る 事 が 出 来

るo

この症例では,ア ンホテ リシンBの 投与は大体6カ 月

Page 5: 18 CHEMOTHERAPY JANfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/09/1/9_18.pdf · 18 chemotherapy jan.1961 型5例,c型19例,f型 が8例 で,c,f型 が殆ど大 部分を占め,ひ ろがりも1が6例,2が15例,3が11

22 CHEMOTHERAPY JAN.1961

間にわた り,総 量775mgの 投与 を受 けてい る。そ の間

感性は1カ 月後6.2mcg/cc,6ヵ 月後に500mcg/ccと

急速に上昇 してい る。

次は,ア スペルギ ル ス 菌を見た50才 男性。昭 和22

年7月,両 側肺結核 として,人 工気胸療法,更 に化学療

法 を行 なつたが 特に変化がなかつた。昭 和32年 右上葉

の肺壊疸 に罹患,治 療 に依 り一時好転 したが,治 療 の中

断 と共に,喀 疾量が増 加 して来たので昭和35年4月 当

院 内科へ紹介 され入 院 した。

入院時,体 格 中等,栄 養可,胸 部では,心 濁音心音等

正常,肺 野 では右上 部に限局性 の濁音 あ り,同 部 に微 弱

な水泡 音聴 取,左 上部では呼吸音減 弱,呼 気延長 等があ

り,水 泡 音は聴取 しなかつた。爾 腹部 四肢共 に異常 を認

めなかつた。

胸部 レ線像 では両側上肺 野に病的陰影を認め,左 側は

硬化性,右 側 は線維性 で梢 々禰漫性で上葉の萎縮,気 管

の右側偏位 を見,断 層撮影 では右側で上葉 の大部分 を占

め,上 葉 気管 支に連 る空間 によつ て幾 つかの塊 に区分 さ

れた不 規則な陰影 の集合が見 られ た。

臨床 検査成績では 白血球像 で好酸球 の増 加を見る外,

特に病 的な成績を見 ない。

断 層撮影 の所見 か ら我ft}XAsPergillusのFungUS

allを うた がい観 察をつづ け る うち に果 して碗豆大 の

褐 色の菌塊 の喀 出を確認 した。こ の褐 色の菌塊 は緻 密に

織 られ た菌 糸 よ りな り,そ の周辺 に単核細胞 の浸潤が 見

られ た。

そ こでテ トラサイ ク リン及び ペニ シ リンの気管 内注入

と共に アンホテ リシ ンBの 点滴 静注を試みたが僅か2回

で悪寒,戦 標,発 熱又悪心,嘔 吐のため中止 し軟骨間穿

刺法に依 る気管 内注入 に変えた。ア ンホ テ リシ ンBは

1mgよ り始め,漸 次増量 し最大量20mgま で注 入 を

行ない総治療 画数20回,総 量195.8mgを 注 入 した。

アンホテ リシ ンB投 与 と共に菌塊 の喀 出が大 きさ,数

共に増 加 したが治療後半 には減少,遂 に は菌塊 の喀 出が

消失す るに到つた。

治療 終了後 の胸部 レ線像 では,禰 漫性 の陰 影 が 消 失

し,空 洞化 した ことが知 られ る。又 断層撮 影で も右上葉

に見 られた菌塊 の集合 による不規 則な形 の空隙に囲 まれ

た数 コの陰影 は喀 出消失 し,後 に空の空洞が遺残 した。

第3例 は アスペ ルギルス性膿胸 の58才 の男性。昭 和

20年 健診 時右肺結核 と診断 され 人 工 気胸療法1力 年半

の経過 で治癒 した。昭 和34年6月 寒冒に罹患,発 熱が

持続 し,某 院にて右結核性膿胸 として局部 及び全 身的 に

抗結核 剤の投与を うけたが下熱せず,又 胸腔 よりの排膿

量 が増加 し,胸 膜 の病理学的 検査でAsPergillusの 感染

と診断 され,昭 和34年10月 本院 へ転院 した。

入院時体格 中等であ るが,栄 養 とみ に衰 え,瞼 結 膜貧

血あ り,胸部は右側前 後前共に濁音に包 まれ,殆 ん ど呼吸

音な し。右 後腋窩 線第K肋 間にて切 開挿入 された ドレー

ンか ら淡黄色 の比較的粘 性のす くない 膿が1日150cc

前 後流出 してい る。胸 部 レ線像 では右 側は死 腔 を 形 成

し,そ の中に膿の貯留を認 め,肺 組織 は硬化性 に萎縮 し

ている。左 側では特に異常 を認 めない。臨 床検査成績 で

は血 色素量57%,白 血球数4,400,好 酸球は4%で あ

るo

胸膜 よ り分離 されたAsPergillPtsfPtmigatvsの ア ンホ

テ リシ ンBの 最低阻 止濃度 は6.2mcg/ccで あつた。

入院 と共に各種抗細菌剤 と共 に アンホテ リシンBを 胸

腔 内に注 入 し,又 胸 腔内洗灘 を併 用 した所,漸 次下 熱の

傾 向にな り,胸 腔 よ りの排膿量 が薯 しく減少 して来 た。

アンホテ リシ ンBの 胸 腔内注入 を始 めて1カ 月を経た頃

より洗潅の際褐色 の菌苔が 出て来 る様になつた。

その組織所見は前述 の2症 例 と殆 ん ど同 じ く,緻 密 に

織 られた菌 糸よ り出来 てお り周 囲に細胞 浸潤 が 見 られ

た。こ の症例 に於 いても局部へ と共にア ンホテ リシ ンB

の全身投与 を試みた が矢張 り前 述の症例 と同様 に悪寒,

戦標,発 熱,更 に 悪心嘔 吐があつたので後述 の新 しい方

法で全身投与 を再 開 した。

以上 の3例 を通 じて,通 常の静脈内点滴注射法 に 」ぞる

場合,ア ンホテ リシ ンBの 投与 に伴つて不快な副作 用が

ある。即 ち悪寒,戦 漂,発 熱及び悪心嘔吐であ る。

之等不快 な副作 用に対 し我 々はWINNの 方法か らヒ

ン トを得 て,新 らしい方 法を考按 した。先 ず 点滴 開始 前

30分,前 処置 として解熱剤,抗 ヒ スタ ミン剤 等を頓用

せ しめ,点 滴 にあつては2つ のイ リゲーターを用意 し,

出来 るだけ注射針 に近 い所で接続す る。イ リゲーターを

2つ に分ける理 由の1つ は アンホテ リシンBは 抗 ヒスタ

ミン剤 と混 合 した場合凝固析 出す る事 を防 ぐ た め で あ

り,今1つ は副作用発現 の場合 アンホテ リシ ンBの 投 与

を中止 し,解 熱剤,抗 ヒスタ ミン剤のみの投与を行な う

ためであ る。点 滴は2つ のイ リゲーターを同 時 に 開 放

し,約4~6時 間かけ て終 了す る。

この方法 での投与 の際 ア ンホテ リシンBを50mgに

増量 した場合 でも悪寒,戦 標 を完全に防ぎ,発 熱 も38℃

以下 に抑 える事が 出来る。然 しアセチルサ リチル酸の副

作用 である胃腸障 害のため,連 用は出来なかつた。ア セ

チルサ リチル酸の代 りに アセチルサ リチル酸 アル ミ凸ウ

ムを使 用 した所,悪 寒,戦 漂を防 ぎ得て も,発 熱そ の他

の副作用は抑制 出来なかつた。

又局所へ の注入 の場合 の副作用は,単 に発 熱のみが見

られた。即 ち気管内注入及び胸腔内注入共に20mgま

では大体副作用 をみないが,そ れ 以 上 の場合は,37℃

Page 6: 18 CHEMOTHERAPY JANfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/09/1/9_18.pdf · 18 chemotherapy jan.1961 型5例,c型19例,f型 が8例 で,c,f型 が殆ど大 部分を占め,ひ ろがりも1が6例,2が15例,3が11

VOL.9NO.1 CHEMO'了HERAPY 23

台の軽熱が,気 管 内注入 の ときは一過性 に,胸 腔 内注入

の ときは3日 澗 にわたつ て発現 した。

アンホテ リシ ンBの 副 作用 としては上述 の 他 に 腎 障

害,肝 障害,又 造血臓器 への障害 並びに注射 部位の静脈

炎等が知 られ ているが,我 々が治療 した3例 にはそれ ら

は見 られ なかつた。

我 々の3例 のア スペルギルス症についてア ンホテ リシ

ンBに よる治療はいずれ も良好 な結果を得た。

ア ンホテ リシンBは 静脈 内点滴及び舞管内又は胸腔内

注入を行なつた。

静脈 内点滴 では悪寒戦標及び発熱,又 悪心嘔吐等 の副

作用 を見たが,WINNの 方法に ヒン トを得て考按 した新

らしい方法 によ りそれ等副 作用 を緩和 し得た。

一方 気管 内注入や胸腔 内注入 では副作 用 として軽度 の

発熱が 見 られ たが 有効 量 と思われ る20mg以 下 では副

作用はみ られ なかつた。

(24)実 験的家兎肺 アスペルギル ス症

のアンホテ リシンBに よる治療

福島孝吉 ・玉 置 昭 英

福村 豊。増 田真一郎

三井厚生病院内科

大 高 裕 一

東京医大病理

AsPer二gillusfumigatus木 村株 及びAsPergillusfiavus

金森 株を室温に5~7日 間培養 し,充 分に胞子の発生を'見た所で

,こ れを掻 き取 り,生 理 的食塩水に浮遊 しホモ

ゲナ イザ ーにかけて県濁液 とな し,次 いで2回 洗際 し,

40倍 の生理的食塩水県濁液 とした。家 兎30匹 に,そ の

2ccを 気管内に軟骨間穿刺法 によつ て注入接種 した。接

種家 兎は半数 を非治療群 とな し,半 数 を治療群 とした。

非治療群 は,接 種後約1週 間 後には胸部 レ線写真上に

禰慢性 の陰 影が 見 られ たo病 理 組織学 的には,こ の時期

は滲 出性炎 が著 明である。接 種 後6日 では滲 出性炎 で,

所 々に膿瘍 が形 成 し始 め られ ていて,肺 胞 内で接種 され

たAsPergillusflavusの 胞 子の腫大 発芽 及び菌糸の発育

す るのが 見 られ る。又 他の家兎では同 じく接種後6臼 目

であ るが,肺 の膿瘍 化 した病巣 に多数 の菌糸 と共 にAs-

Pergillusjumigatusの 胞子頭 の発 生を示 している。又

接種後5日 の気管 支内腔 に も菌 糸の集合発育 と共にAs-

Per二gillusj%migatusの 胞子頭 の発育 が見 られ る。

全 身播種 は接種 後5~7日 の間に起 り,15匹 中4匹 に

見 られ,脳,腎,肝,脾 等に膿瘍を形成 し急速に死亡 し

た。腎 の膿蕩性 病変,腎 細尿 管内の菌糸の発育,肝 グ リ

ソ ン氏鞘 を中心 とした小膿瘍,脳 の白質に毛細管を中心

として多発 した小膿瘍 等が 認め られ た。

接種 後約2週 間頃 より膿瘍 内容は喀出 されて大小 の空

洞 が形成 され,又 空洞 及び膿 瘍の周辺には増殖性炎が加

わつて来る。接 種 後13日 の肺 で,大 小の空洞が発生 し,

肺 の表 面に藝胞状 に膨 隆 して見えた。空 洞壁 の壊死組織

には,増 殖性 炎が加わ り始めてい る。更 に 日時を経 て,

40日 にな ると一方では増殖性 炎が 主 な ものであつて,

病変の治 癒傾 向が見 られ,結 節性病巣は縮少 し,又 石灰

の沈 着が見 られ るが,一 方その近 くでは新 らしい溶 出性

の病変が見 られ,又 空洞が形 成 されてお り,慢 性炎 の病

像 を呈 してい る。

アンホテ リシンBは1、25~2.5mgを5ccの5%ブ

ドー糖に溶解 して耳静脈 よ り注射 した。

治療例に於 ては,滲 出性炎は弱 くな り,壊 死及び膿i瘍

形成 も弱 くな り,増 殖性炎は顕著 となつ てい る。又 治療

例にては空洞 の形成は少 な くなつ てい る。全 身播 種は治

療例にはな く,又 剖検時肺か らの菌 の培養 も治療例 では

陰性 のものが多 く,又 病死数 も少いQ接 種後2日 よ り治

療 し,10日 で剖検 した も の の例 では小膿瘍 はあるが,

増殖性 の変化が強 く巨細胞が 見 られ,前 述 した非治療 の

同時期 の未 £滲出性炎が主 となつてい る像 と明 らかな差

が 見 られ る。又 菌 の培養 も陰性 であつた。次 に接種 後8

日か ら94日 間治療 し総量711.5mgを 静注 した例の肺

では殆 ん ど肉眼的には正常に近 くなつてい る。こ の組織

像 では結節 には石灰 が沈 着 し,又 巨細胞 及び類皮細胞が

多 く増殖性の変化の搬痕 化が顕著であ る。又 一・部には肉

様 変化が見 られた。レ 線写真 もこれに相当 してい る。接

種 後9日 で両側に肺 炎陰影を認めてお り治療を始めた も

ので,治 療開始後13日 でなお灘慢性の陰影があ るが,

治療開始後39日 で,レ 線陰影の軽快が 明らか であ る。

これに対 して接種 直前,接 種後3日 と早期に治療 した も

のは.接 種後10日 を経て も陰影は軽度 であ り,病 理所

見 とよく一致 してい る。

次に本実験に於い て,治 療経過中に肺 よ り培養 回収 し

得たAsPergillusflavuSに つい て,そ の感性 を測定 した

が,治 療前1.5mcg/ccの 最低阻止濃度 であつた ものが,

使用量 の増加 と共 に 耐 性 が 増 し,47.5mgの 注射 後は

1,000mcg/ccに 迄 も上昇 している。か くア ンホテ リシ

ンBに 耐性が上昇 するにつれ て,同 時に員ス タチ ン及び

トリコマイシンにも耐性 の上昇 が見 られ る ことが示 され

てい るo

以上 を要 約する と,実 兎を使用 しこのア スペルギル ス

症 の治療実験 では,ア ンホテ リシンBの 治療は死亡を減

少せ しめ全 身播種 を防止 し,滲 出性炎を低下 させ,増 殖

性炎 を増強 させ,壊 死及び膿 瘍の形成は弱 くな り,空 洞

の形成 は少な く,菌 体は減少 し,菌 培養 も陰転す るのに

Page 7: 18 CHEMOTHERAPY JANfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/09/1/9_18.pdf · 18 chemotherapy jan.1961 型5例,c型19例,f型 が8例 で,c,f型 が殆ど大 部分を占め,ひ ろがりも1が6例,2が15例,3が11

24 CHEMOTHERAPY JAN.1961

効 果が あつた。本 実験の治癒経過中に培養 回 収 し得 た

AsPergillusfiavus金 森 株について アンホ テ リシンBに

対 す る耐性 の上昇 が認め られ,又 アンホテ リシンBに 耐

性 の上昇 した菌 は同時に ニス タチ ン及び トリコマ イシン

に も耐性の上昇が 見 られ た。

(24')Saccharomycesの 陽 管 内異 常

増 殖 に よる酩 酊症 の1例

橋 本 孝 平

東 条病 院

松野 仁 ・加藤 博

腐敗研究所

土 屋 省 義

三 輪 内科

演者 は最近 食後酩酊感 を生ず る1例 を経験 し千葉大

相磯教 授 と三輪教授 の御協 力を得 て検索 した成 績を報 告

す る。

患者 は30才 の男で漁業,既 往症 として5年 前 費漬 瘍

に罹患せ る他著患な し。酒1~2合 程度,昭 和33年12

月肺結核 兼腸 結核 で血疾粘血下痢 を主訴 として入院gaf・

No.4,34年4月 上旬急性化膿性 申耳炎併発,同 下 旬急

性 胆嚢炎併 発,旬 日に して治癒 したがそ の頃か ら悪心嘔

吐等頻発 し5月 下 旬幽門狭窄症に て胃切除術施行(ビ ル

ロー ト皿法)術 後は順調 に経過 し35年3月 退院す。そ

の間化学療 法は当初3者 併用約6カ 月(SM469,PAS

l,8009,'INH209)以 後は頭痛,悪 心,耳 鳴等の副作

用 のた め中止 す。又PC600万 単位,CM59,SI1,100

9等 使用す。35年3月 下 旬都 内某病院に入院・5月 下

旬退院迄 の間 にKM159,PZA1009使 用 したが副作

用のた め中止す。そ の頃 より食後酩酊 感発現 し9月 初め

本院に再入院す。入 院時所 見:体 格中等,栄 養梢 々衰 え

微 熱,軽 咳,疾,便 通不定等あ り胸 部は理 学的に著変は

ないがX線 像は右肺 尖野 に雲紮状 陰影あ り,腹 部は平坦

軟 硬結 圧痛は ない。肝 脾 触れ ず全身の淋 巴腺触知せず,

毎食後約1時 間に して顔 色紅潮,呼 気に アル コール臭 を

発 し精神梢 々高揚 し陽気 多弁 とな り酩酊状態 を呈 し約4

時 間後には消失す る。入 院時一般 検査では軽度の貧血 と

喀疾 及び糞中結核菌陽性,SM10mcg,INH5mcg迄

耐性 あ り胃X線 所見 は胃は上部1/3が 残存 しバ リウムは

1~2分 停滞後輸 出脚 と同時 に梢 々膨 大 せ る輸入脚に も

流 入停 滞 し約10分 後輪入脚 バ リウムは'imlli脚に移行す

る。胃 液は著明な無酸症 を示 している。血 中アル コール

濃 度の 日中変動をWIDMARK法 で検す るに食後1~2~

3時 聞 と上昇 し最高0.08%以 上 に達 し概 ね4時 間後旧

に 復す る。酩 酊感は含水炭素食が 最 も著 しく次で蛋 由食

脂肪 食 の 順 で あ る。KotをCandi4aGS培 地 で37。C

2日 間 培 養 し無 数 の真 菌 のKolonieを 発 育 せ しめ得 た。

こ のKolonieは ア ル コ・一ル臭 を 発 し表 面 滑 沢 で 柔 か く中

心 部 は 薄 い 土 褐 色 を 帯 び 培 地 内 外 に 偽 菌 糸 を形 成 しない

之 等KolonieをGORODKOwA培 地 で 培 養 す る と大 部 分

の もの か らCarbolfucksin及 びWRIGHT染 色 で1~4

コの 子 嚢 胞 子 の形 成 が 認 め られ た。極 く一 部 のKolonie

の菌 は 出芽 の み 見 られ て 子 嚢 胞 子 の形 成 は 見 つけ られ な

い。子 嚢胞 子 形 成 の 菌 株 をS株,証 明 され な い 菌 株 をR

株 と名 付 け て 各 々の 糖 醸 酵 能 試 験 を試 み る と 前 者 は

91ucose,fructose,maltose,sucroseを,後 者 はglu.

cose,fructoseを 醸 酵 し,又S株 は試 験 管 内 で24時 間

後 に5%程 度 の アル コ ・一ル を 生 成 す る。

以 上 の 成 績 よ り子 嚢 胞 子 の証 明 され たS株 はSaceha-

r・mPtcesと 考 え,R株 に つ い て は 爾 現 在 引続 き 種 々の 培

養 法 を 用 い て 検 索 中 であ るが 糖 醸 酵 能 の上 か ら もS株 と

は 異 つ た菌 株 と思 わ れ,こ の患 者 では 腸 管 内 に 大 量 の

Saccharomycesと 少 量 のR株 の2種 の 真 菌 が 併 存 す る

が 酪 酊 症 の 発 現 はS株 が 極 め て 大 量 に 腸 管 内 に存 在 す る

こ と及 びS株 の方 が アル コPtル 醗 酵 能 が 強 力 で あ る こ と

よ り主 と してSaecharomycesに 基 因す る も の で あ る と

考 え る。な お 同 株 の 菌 が 胃液 及 び 喀 疾 か ら も 検 出 さ れ

たo血 液,尿,肝 生 検 組 織 か らは 培 養 は 陰 性 で あ る。又

糞 便 中 の大 腸 菌群 に は 特 に 異 常 と思 わ れ る所 見 が 認 め ら

れ な か つた 、 次に 肝 機 能 検 査 及 び 血 清 生 化 学 的 検 査 に 就

て:B.S.Pは 軽 度 に障 碍 され 血 清 蛋 白量 は 正 常 で 血 清

膠 質 反 応 は総 て異 常 を 認 め な い。モ イ レン グ ラ ハ イ ト

値,血 清総 ビ リル ビ ン量,直 接 ピ リル ビ ン土量 は 共 に 正

常,T-Lipid,T-Chel,S.G.0.T.,S・G,P・T・,Al,

phosph及 びMuco-Prot何 れ も硝 々低 値 を示 して い る。

血 清 ヂ ア ス タ ーゼ8×,尿 ヂ ア ス タ ー ゼ16×。肝 生 検

組 織 像 で は軽 度 のt0xischeHepotitiSの 像 を 塁 し真 菌

は 見 当 らな い。ブ5'… 糖 負荷 試 験 に 就 て:ブ ドー糖50g

経 ロ投 与 に よ り説 明 の つ か な い 曲 線 が 得 られ た。そ れ は

胃切 除 に よ る もの と考 え 非経 口的 投 与 法 では 全 く正 常 の

曲線 を得 た。早 朝 空腹 時 血漿VB1量 はESter型4.5γ/dl

Free型0で 絹 々 低 く,無 処置 日の1日 尿 中 排 泄 最 は

113.4γ で あ る。VBIlmg静 注 負 荷 試 験 では 血 中 濃 度

の上 昇 が 軽 度 で旦 尿 中排 泄 量 も 少 な く潜 在 性VB1不 足

の 状 態 を うかが わ せ る所 見 を 得 た。

以 上 我 々は 肺 結 核 症 で3者 併 用 療 法 施 行 中 幽 門 狭 窄 症

を 併 発 し,胃 切 除 衛 を施 行 後 約1力 年 を経 て 食 後酩 酊 症

を 来 した 症 例 に遭 遇 し種 々検 査 の結 果 腸 内 に異 常増 殖 し

たSaccharomycesに よる ア ル コー ル 生 成 の た め で あ る

こ とを 確 認 した。こ の患 者 では 肝,腎 諸 種 内 分 泌機 能 に

著 変 な く,血 液 及 び生 検 肝 組 織 培 養 を試 み て も全 身 感 染

Page 8: 18 CHEMOTHERAPY JANfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/09/1/9_18.pdf · 18 chemotherapy jan.1961 型5例,c型19例,f型 が8例 で,c,f型 が殆ど大 部分を占め,ひ ろがりも1が6例,2が15例,3が11

VO」9NO.1 CHEMO↑HERAPY 25

の様 相は認め られなかつた。現 在Nystatinを 投与 して

経過 観察中であ るが,現 在迄の検査成績を考案 し報告 し

7eo

(25)小 児 リウマチ熱 の臨床的観察

中島博徳 ・福本泰彦 ・新美仁男

千葉大小児科

近 年,わ が国に於いて,リ ウマチ熱患者が増加す る傾

向が見 られ る。リ ウマチ熱は再発 しやす く,再 発す るこ

とに心障害の増悪を来 し,予 後を悪 くす る。

私達は,昭 和26年 か ら昭和35年9月 までの10年

間 に,千 葉大小児科に入院 した リウマチ熱患者について

調 査 したので報告す る。

1.年 度 別

前述の期 間に入院 した リウマチ熱患 者は64人(内2

回 入院 した もの2人)で,こ の間の総 入院患 者の約1・8

%に 相当する。こ れ を昭和26年 か ら昭和30年 まで

と,昭 和31年 か ら昭漁35年9月 まで とに分けてみる

と,そ の間 の総入 院患者 に対 す る%は,前 者は1.1%,

後者 は2.7%で あ り,最 近 増加傾向にある ことが うかが

われ る。

2.初 発 年 令

8才 と10才 が,そ れ ぞれ8人 で一番多 く,2才,14

才,15才 には,1人 もな く,f才 未満 に1人 ある。即

ち6才 か ら11才 までに多 く,1才 未満 は稀れ である。

3.入 院時主訴

62例 中,発 熱50例,関 節痛は48例 で,こ の2つ

が圧倒的に 多 く,次 い で 輪状紅斑10例,全 身倦怠5

例,食 欲不振5例,顔 面浮腫4例,舞 踏病様運動2例 と

い う様 に多種 多様 である。

4.入 院時 の主な検査

入院時の主な検査結果につい てみ ると,白 血球増多は

76%,血 沈 促進は100%,心 電図に於け るPQ時 間 の延

長は32%に み られ る。な お最近 の22例 では,CRP陽

性100%,ASLOは91%に 上昇がみ られた。

5.治 療

当 教室で行なつた治療は,大 別 して次 の3つ に分け ら

れ る。

(1)ペ ニ シリン等の抗生物 質 とサルチル酸剤

(2)ペ ニシ リン等の抗生物 質 と副腎皮質ホルモ ン

(3)抗 生物質 と,サ ルチル酸 剤及び副腎皮質ホルモ

ンの3者 併用

しか し,1955年 の英米 の共 同研究 と同様 にこの3者

の治療法の間に著明な差は見当 らず,又 その後 の心障害

に つい ても,そ れ程の相違はない よ うに思われ る。

6.リ ウ マ チ 熱 の 再 発

前 述 の患 者62人 の うち,再 発 予 防 を行 なわ ない41

例 に 通 信 に よ り,そ の 後 の 経過 を 調 査 した。

こ の 内,返 信 の あ つ た もの 及 び 来 院 して 問 診 の 出来 た

も のは32例 で,21例 に再 発 を 認 め た。即 ち 再 発 率 は

65%強 で あ る。

これ を初 発 よ り再 発 ま で の期 間 に つ い て み る と,全 例

に対 す る再 発 率 は,6カ 月 以 内 で は12.5%,6カ 月 か ら

1年 で は25%e,1年 か ら2年 では9.4%,2年 以 上 で も

19%の 再 発 が み られ る。な お再 発 例 の57%は,1年 以

内 に 起 る。

次 に 初 発 年 令 と再 発 との関 係 を み る と,1~5才 で は,

全 再 発 例 の14%,6~10才67%,11~15才19%で あ

り,6~10才 が 一 番 再 発 しやす い。し か しこれ は,前 述

の よ うに,リ ウ マ チ熱 の初 発が こ の年 令 に 多 い こ と も考

慮 に 入 れ ね ば な らない。

ゾウ マチ 熱 は,心 炎 を 合 併 す る こ とが 多 く,又 これ が

予 後 を 悪 く してい る大 き な原 因 と思わ れ る の で,初 診 時

の心 炎 の有 無 と予 後 及 び 再 発 に つい て検 討 して み る と,

32例 中 初 診 時 心 炎 の あ つ た も のは19例,な か つ た もの

は13例 で,心 炎 の あ つ た もの の再 発 率 は31.6%,心 炎

のな か つ た も の の再 発 率 は61.5%で あ る◎ 又 死 亡 率 に

つ い てみ る と,総 死 亡 率 は21.8%で,心 炎 の あ つ た も

のの 死 亡 率 は31.6%,心 炎 の な か つ た も の の 死亡 は1

例 で,死 亡 率 は7.6%で あ る(こ の死 亡 例 は,再 発 後 心

炎 を 起 した も の)。

この よ5に,リ ウ マチ 熱 で は 心 炎 の 有 無 が,再 発 に対

して は た い した 影 響 を 与 え て い な い が,死 亡 に対 して は

大 きな 意 味 を 持 つ て い る こ とが わ か る。

7.リ ウ マ チ熱 の 再 発 予 防

リ ウマ チ 熱 の再 発 予 防 に つ い て は,色 々 の報 告 が あ る

が,そ の基 準 とも い うべ き もの は,1955年American

HeartAss◎ciationが 行 な つ た リウマ チ 熱 予 防 に 関 す る

勧 告 で あ ろ う。

即 ち,こ れ は

1.経 口投 与

a.Sulfadiazine体 重60ポ ン ド以 下 は1日0.59,

60ポ ン ド以 上 は1日xo9を 毎 朝 投 与 す る。

b,Penicillin20~25万 単 位 を 毎 朝 投 与 す る。

2.注 射 と して はBenzathinePenicillinGを120

万 単 位 月1回 筋 注 す る方 法 を 上 げ てい る。

私 達 もほ ぼ これ に の つ と りBicillin経 口投 与 を行 な つ

て い たが,longactingのSulfa剤 も使 用 した。Bicillin

は14例,Sulfamethoxypyridazine5例,Slfisomezole

2例 で,6カ 月 以上 投 与 し再 発 は1例,こ れ はBicillin

投 与 の 例 に み られ た。こ れ を再 発 予 防 を 行 な わ な い場 合

Page 9: 18 CHEMOTHERAPY JANfa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/09/1/9_18.pdf · 18 chemotherapy jan.1961 型5例,c型19例,f型 が8例 で,c,f型 が殆ど大 部分を占め,ひ ろがりも1が6例,2が15例,3が11

26 CHEMO髄 『HERAPY JAN.1961"_一.

と比較す ると,再 発率は6ヵ 月以内 では再 発予 防を行 な

わない場合12.5%,再 発 予 防 を行 なつた場 合は4.7%

で 明らか に再発率 の低下が み られ る。

8.Longactingsulfa剤 による再発予防

使用量はSulfamethoxypyridazineは1日250mg,

Sulfisomezoleは1日0.5gで,連H投 与 した。投 与

中 の血色素量,赤 血球数,白 血球 数,血 沈を1カ 月 ごと

に検査 した。副 作用 を来た した ものは1例 もな く,血 色

素量,赤 血球数 にも特 に変 化な く,血 沈は1例 を除いて

1時 間 値20mm以 下 であ る。又 そ の 間のCRP及 び

ASLO,咽 頭溶 連菌培 養の結果は,CRPは48圓 検査 し

陽性 は1回,ASL,0は23回 検査 したが,退 院後3カ 月

以 内に166単 位以下 とな り,以 後全例 に上昇 を認めなか

つた。又3カ 月に1度 咽頭培養 を行ない 全部 で14圓 施

行 してお るが,全 部溶連菌 は陰性 であつた。心 電 図 も3

~6カ 月に1度 とつ てい るが,退 院時 と変 らないか改善

をみてお る。

考 按

BLANDandJoNEsは,1921年 か ら1931年 ま で の

1,000例 の リウマチ熱患 者を20年 間観察 し,初 発か ら

10年 後には,約20%が 死 亡 し,更 に20年 後には,30

%が 死亡 してお り,全 死 亡例の1/3は,5年 以内に死亡

した と述 べてお る。又 再発につい ても,最 初 の5年 間は

各年 ご とに約1/5,次 の5年 間は各年 ごとに約1/10,更

に次の5年 間は,各 年 ご とに1115の 再発があ ると報告

してお る。又WILSONら は,リ ウマチ熱患 者1,042人

を観 察 し,死 亡率は毎年1,000に つ き147で,初 発 から

15年 後 には,4小5し か生存 しない と述べ てお る。こ れ ら

報告は,ス テ ロイ ドホルモ ン使用前 の しか も再発予防 を

行なわない場合の ものであ り,私 達の再発予防 を行 なわ

ない場 合のそれに近い値 を示 してい る。

ステ ロイ ドホル モンが使用 され だ したのは,比 較 的最

近 の ことであ り,そ の使用 法に も色 々の意 見があ り,今

後の遠隔成績 をみ なけれ ば,そ の効 果を判定す ることは

困難 であるが,ス テロイ ドホルモン使 用前に くらべて予

後は よ くなるもの と揺 定 され る。

再発予防 については,欧 米では多数 の報告があ り,我

国に於 いても以前 よ り加 藤氏がその重要性を強調 してお

られ るが,近 年 その報告が見 られ るよ うに なつた。再 発

予防 の基 準は,先 のAmericanHeartAssociationの

勧告 とすべきであろ うが,lengactingのSulfa剤 も私

達 の観 察 した期 間では再発が1例 もな く,又 使用量が少

量 のためか,Sulfa剤 の副作用であ る白血球減少,皮 膚

の発疹 等はみ られなかつた ので,再 発予防 に用いて よろ

しい と思 う。し か しなが ら,米 国の軍隊 で行 なつた集団

予防 の際にSulfa剤 耐 性 の溶連菌が 出現 した といわれ

てお り,こ の事 も考慮 に入れ る必要があ る。大 国氏 らの'

報告に よると,ペ ニシ リン耐性 の溶連菌は検 出され なか

つた との事 なので,若 しSulfa剤 が無効 とな れ ば,たri

だちにペ ニシ リンに切 り換 える必要があ ると思 う。

結 語

昭和26年 か ら昭湘35年9月 まで の10年 間に当科一

に入院 した リウマチ熱息 者について検討 し,再 発予 防を

しなかつた ものの65%強 が再発を起 してお り,死 亡率

は約22%セ,そ の内初診 時心炎を有 した ものの死 亡率

は31.6%で あるこ とがわ かつたo

経 口ペニシ リン及 び10ngactingのSulfa剤 に よ り

再発予 防を行 なつた場 合,6カ 月以内 の観察 では,再 発二

率 は,再 発予 防を しなかつた もの の12.5%に 対 して,

再 発予 防を した もの4.7%で,大 きな改善が み られ,再

発予防 の必要性 を認めた。し か しlongactingのSulfa

剤に よる再発予 防は,例 数 も少 く期間 もまだ短 いので,

今後例数を増 し,長 期にわた り観察 していきたい と考 え

る。

(26)Sulfamethomidineの 外 科 領.

域 に於 け る使用 経 験

前田外喜男 ・石引久弥

慶応義塾大学医学部外科教室

(島田信勝教授)

我 々は 邦 製 の新 サ ル フ ァ剤Sulfamethomidineに つ き一

臨 床 成 績 を検 討 した の で,そ の 一 端 を 発 表 す る。

D血 中 濃 度

Sulfamethomidineの 血 中濃 度 は 津 田氏 法 を 用 い て 測}

定 し,投 与 後1,3,6,12,24,25,27,30時 間 に.つ ぎ

そ の 値 を検 査 した。

初 回19以 後24時 間 毎 に.O.59内 服 例 に つ い て 見

る と,3例 平 均 の 値 は 投 与 後6時 間 に して ピ ー ク に 達

し,総 量6・2mgidl,遊 離 型5・9mg/dlを 示 し,以 後 漸

減 し24時 間 後0・59再 投 与 し た 後3時 間 で 総 量6,0・

mg/d1,遊 離 型5・7mg小d1で 第1回 目の ピ ・・一ク とほ ぼ 同

様 の 成 績 を えた。

初 回29以 後24時 間 毎 に19内 服 した3例 の平 均

血 中濃 度 は 投 与 後6時 間 で 総量9.5mg1d1,遊 離 型9 .2

mg!d1の 値 とな り第1回 目の ピ ・・クが 出 現 す る。そ の後

次第 に漸減するが24時 間後に19再 投与 す ると3時

間後 に第2回 目目のピークが 出現 し,そ の濃 度 は1総 量

10・2mg/di・ 遊離型9・6mg/d1と な り,前 回 よ りも高 い

血 中濃度がえ られ6時 間後に於て も倫第1回 目ピe-・bクと

同様な血中濃度を示 した。

10%溶 液10cc1画 静注投与 した3例 の平均 値は投