Upload
others
View
1
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
18 CHEMOTHERAPY JAN.1961
型5例,C型19例,F型 が8例 で,C,F型 が殆 ど大
部分 を占め,ひ ろが りも1が6例,2が15例,3が11
例 で,大 部分が空洞 を,而 も硬 化壁 空洞 を有 してい る。
INH耐 性は1mcgが6例,5mcgが7例,10mcg
が19例 であ る。THの 投 与方法は副作用を考慮 して1
日量0・5分2毎 日法 を原則 と した。此 の投 与量で強い
Magenbeschwerdeの ため早期 に中止 した ものが1例 あ
る。従 つて此 の1例 は集計か ら除外 してある。併 用薬剤
に つい ては,既 往の化学療法 を 継続 し乍 らTHを 追 加
す るか,INHを 止 めてTHに 切 り替 えるよ うに した。
TH6カ 月投与 後におけ る塗抹 お よび培養成績 は次 の
とお りである。す なわ ち,6ヵ 月後におけ る塗抹陰性化
は31例 中17例(54.8%),培 養陰性化は29例 中13
例(44・SldO)で ある。INH耐 性菌結核に 対 し相当 の効
果 が認め られ る。陰 性化ない し減少後途中か ら復帰 した
ものについて復帰がみ られ た月別に しらベ ると,大 体3
~4カ 月後か ら復帰 してい る。未 だ耐 性検査の結果が判
明 してい ないが,TH投 与 後3~4カ 月頃が耐 性発現 の
時 期 として警戒 を要す る頃 か と思われる。
次に,症 例をTH投 与前 の 病 状 か ら,1.亜 重症,
五.重 症,皿.超 重症 に分類 して菌 陰性化 の様 子 を 眺 め
る。今 回は此の重症 の病型分 類について詳 しく述 べ るこ
とは保留するが,重 症化ヘー歩片足 を踏 み出 している よ
うな亜重症17例 中11例(64.7%),未 だ 超 重症 では
ない重症例9例 中4例(44.4%)に 菌陰性化がみ られ て
い る。例 えばKMの よ うな強 力な化学療法剤 と 併用す
れば 更に好結果 が期待出来 るのであつて,THは 重症結
核 対策上大 きな武器 と考 えられる。
以上 のTHに よる強力な菌 陰 性 化は如 何な る機序に
よるものか興味 ある点 であるが 私共 の現在 迄のinvitre,
inviVOの 成績では末だ不 明の点が多い。
THはinvitroの 静菌作用 は必 ず し も 高 くない。
YOUMANS培 地 におけ るINH10mcg耐 性菌に 対 する
阻止効果 を検す ると,完 全阻止 には2~5mcgを 要 して
い る。細 胞 内結核菌に対す る阻止 力 もINHに 較ぺ る と
遙 に弱 くその阻止にはINHの10~20倍 の濃度 を要す
るo
又,TH投 与後 の血 中濃 度 も,そ の抗菌力か らみれば
必 ず しも高 くない。小 川氏直 立拡散 法に よ り生物学的活
性 濃度を検 した。標 準 曲 線 は3.1mcgで 僅かに6.25
rncgで はつき り阻 止帯 が 現わ れ る。4名 の患者に250
rng(こ れ が大 体普通1図 の投 与 量 で あ るが)を 投 与 し
て2,3,6時 間の血、中濃 度をこの方 法に よつて求め ると
殆 ど阻 止帯 がみ られず,僅 か に1例 に2,3時 間で軽度
の阻 止帯がみ られたに過 ぎなかつた。1回 投与量 を500
mg(此 の投与量 ではMagenbeschwerdeが 強 く出 るも
のが多い)と す る と漸 く5mcg以 上 を 示す ものが 出て
くる。
SCC法 によ り時間的に採血 し た 血 液 と菌 を混 じて培
養 した成績は,500mg投 与 の場 合には じめて菌増殖 を
阻止す る例が若干あ る。
以上 からTHの 抗菌 作用は 比較 的弱 く,而 も血中濃
度 もそ んなに高 くない とい う結果 であ る。
マウスに投 与 して肺 内濃 度を検 した。投 与量 は40mglx
kgで,投 与後2,4,6時 間後に失血 させ て,血 中及 び
肺 内活性濃 度を測定 した。INHの 同量 を投与 し た 場合
を対照 とす る。す なわ ち,INHの 血中 お よ び肺 内濃度
に比 しTHの 場 合は著 しく低 い とい うことが顕 著であ
る。而 し,INHの 血中お よび肺 内濃 度に比 してTHの
場合は低い乍 らも6時 間値 は2時 間値 よ りも寧 ろ高 い と
い う傾向を示 してい る。更 に,結 核 感 染 マ ウスにTH
40mg/kgの 量 を9日 間連 日投与 し10日 目に屠殺 しそ
の血 中お よび肺 内濃度 を測定 した成 績は,結 核感染 マ ウ
スに於 ては更に6時 間後の肺 内濃 度が高 く出てい る。
以上 の如 く,結 核病巣 内のTH濃 度は 或る程度高 く
現われ るとい う結果 であ るが,こ の現象 もTHの 抗結
核 作用 を表 現す る1つ のFactorと な りうるか とも考 え
られ る。
(20)肺 結 核 外科 に お け るKanamy-
cinの 使 用 法
綿貫重雄 ・伊藤健次郎
武 田清一。鈴 木 正 一・
千葉大学医学部綿貫外科
抗 結核 剤に耐 性を有す る症例に,外 科療 法を施行 した
場合,合 併 例を併発す ることが多 くみられ るが,こ の解
決 は重要 な研究課題であ る。
教室 では耐 性例 にKanamycinを 使用 して良好 な成績
をお さめ てお り,数 回にわたつて報告 してきておる。
今 回はKanamycinを 用い て手術 を行 なつた50例 の
うち,1年 以上経過 した36症 例につき,そ の成績を述
べ,投 与法につい て2,3検 討 を加えたので報告す る。
対象症例は,い つれ も術前SM10mcg以 上耐 性の も
ので,3者 耐性が19例 であ り半数以上 を占めてお る。
術前X線 所見をNTA分 類でみ ると,肺 切 例では中等
症 が多 く,学 研分類では,線 維乾酪型 が大 部分で,少 数
の重症混 合型が含 まれ ておる。空 洞型は,硬 化輪状 空洞
が大 部分であるo
次にこれ らの症例 にKMを 使用 して 手術 を行 ない,
1年 以上経過 した症例 の成績をみ ると,肺 切29例 の5
ち,培 養塗沫陽 性例に,一一過 性 排 菌2例 ・気管支痩2
VOL.9NO.1 CHEMOTHERAPY 19
例,対 側悪化1例 の合併症 をみ とめた。
胸成例 につい てみ ると,い つれ も重 症例のために,術
後排菌3,シ ューブ1例 を認めた。こ れは余 り良い 成績
では ないが,死 亡 例は1例 もない。
術後1年 以上経 過 した肺 切例の就労状 態をみ ると,普
通 生活に入つてい るものは29例 中18例(62%)に 及
ん でお り,SM感 性例に遜 色ない。
症 例。34才 の主婦。右 側大空洞,3者 耐 性例で,KM
を使用,左 上葉切除,追 加胸成 を行 ない,現 在 家事 に従
事 しておる。以 上 のよ うに耐 性側 でも手 術に成功すれ ば
予後 は良好であ り,KM使 用の意味が大きい と云える。
次 に投与 法に.ついて検 討を加えてみ る。
KMの 投与法は療 研指導の もとに週2回49法 が行
なわれ ておるが,週2回29法,週3回39法 につ
い て検討 を行 なつてみた。
週39法 を行 なつた肺切13例 に2例 の 合併症 をみ
てお るが,療 研報告に比較 して大差ない。こ れ か ら み
て,週39法 は49法 に遜 色ない と考 えられ る。更 に
副 作用,経 済的面から も,長 期使用に有利である。
次にKMはSMと 同様 に肺局 処に使 用 して良い もの
で あるか ど うか,家 兎を用いて実験的 に検討 を加えてみ
た。
実験方法 は,各 濃度 のKM液 を家兎の肋膜腔 内,気
管 内,肺 内に注入 して,SM,生 理 的食塩水を対照 とし
て,肋 膜及 び肺 組織 の変化を病理 組織学的に検討を行な
つてみた。
先ず肋膜腔内にKMを 注入 した場合 の 肋膜の変化で
あ るが,生 理的食塩水20%で は変化はみ られないが,
40%粉 末例 では極 く軽度 に肋 膜 肥 厚がみ られ るが,他
に認むべ き変化は ない。
次 に気管 内に注 入 した場合であるが,1%,5%で 肺
胞 内細胞滲 出,出 血,細 胞滲潤 は どの限局 した炎症 性の
変化がみ られ,10%,20%,40%で は こ れ ら の滲 出性
変化が禰漫 性で,著 明になつ てきておる。
対照 と したSM注 入例 では,20%,40%で 組織 の炎
症所 見も限局性でKM例 に比 較 して 軽度である と云え
るo
それ では比較的 高濃 度のKMを 連続 注入 した 場 合で
は どうであるか とみる と,連 続3日 間注入 した ものでは
細胞滲潤がi著明にな り,肺 胞腔 消失,結 締織 細胞増殖が
み られ,時 間の経過 とともに器 質化が著明にみ られ る。
気 管内にKMを 注入後 の肺組織 変化を 経 過的 にみる と
気 管内にKMを 用いる場 合は5%以 下が望 ましい と云
える。
それ では直接肺 内にKMを 注人 した場 合の 肺組織 の
変化をみ てみ ると,生 理的食塩 水注入例では,気 管内注
入 の場 合に比較 して出血,細 胞滲 出な どの変化は梢著 明
であ り,肺 内注入の場合はいつれの濃度 の場合 にも認 め
られてお る。
5%,10%例 で,す でに肺 胞腔内滲 出液 の潴留,細 胞
滲出,肺 胞壁細胞滲潤,出 血な ど薦漫性 の変 化がみ とめ
られ る。20%,40%に な ると,更 に 著 明な炎症性変 化
がみ られ る。対 照 と したSM例 では,5%,10%で は肺
胞壁肥厚 な どの限 局 した 変 化 であ り,20%,40%で は
限局 性ではあるが,KM例 と同様に高度 の炎症 性変化が
み られ る。
肺 内にKMを 使 用する場 合には5%以 下 が望 ましい
と云 うことに なる。
以上,肺 局所にKMを 用い る場合には,肋 膜腔 の場
合は問題ないが,気 管内,肺 内に用い る場合に,は5%以
下 の低濃 度の ものを用いた方が良い と云 うことにな る。
実 験成績 がその まま臨床 的に適応す るとは 考 え な い
が,実 験か らみる と,5%以 下 の低濃 度を用いた方が安
全であ ると云 うことがで きる。
例数は多 くないが,臨 床的にKM低 濃度液をネブ ラ
イザーで使 用 して,何 等の副作用な く,良 い成績であ る
ことを経験 してお る。
以上結 論 として,耐 性例にKMを 使用 して外科療法
を行 なつた場合,矢 張 り合併 症は さけ られないが,SM
感性例 の成績にお とらない成績を修めてい る こ と を 述
べ,更 にKM投 与 法について,週39法 が週49法 に
較べて遜色 ない成績 であることを報告 し,KMの 肺局所
使用につい て2,3検 討 を加えた。
(21)重 症肺結核の研究
猪 野 家
国立千葉療養所
(指導:岡 田藤助所長)
NTA分 類 の高度進展以上に して排 菌陽性の経過を と
り,%ve,50%以 下 の昭和29年 よ り34年 迄の死亡モ
及 び剖検80例,臨 床例40例 につき検討 した。
1)3i剤 耐 性36%,2剤 耐 性32%,耐 性無 しは、僅か
4%,SMの みに つ い て 云 うと94%耐 性,INH57%
耐性,PAS49%耐 性。化 療 中の増悪 は喀血,血 疾に伴
うこと多 く31%で 化 療 中 断時に多 くINH間 歓PAS
が之に 次 ぐ。耐 性になつた薬剤 を用いて も腸 結核,各 臓
器 の栗粒性血行撒布 は昭和29,30年 頃の化療不充分症
例 に軽微 な者2例 認 めただけで喉 頭結核 はただ癒痕 のみ
で主 なる死 因はSchubに よる結核盤肺炎 及び喀血 夫 々
30%,肺 心障 害に関係す る肺 水腫77%。結 核 性肺 炎はL
化療 以前 の如き広範 な乾酪 性肺 炎はない。即 ち所謂good
20 CHEMOTHERAPY JAN.1961_一_一chronicusに 経過 してい ると云 える。
2)側 荒蕪肺 を呈す る群は滲 出性変化,発 熱,喀 疾 等
梢強 く,右 心室壁の肥厚せ る者は少ないQ右 心室壁 の5
mm以 上 の群は滲出性 変化,発 熱,喀 疾等が梢少 ないn
3)肺 活土量1,300cc以 下約62%,約80%が 肺 気腫
を伴 い,喀 疾 の多い者64%,肺 水腫 が77%に 見 られ肺
心障害 が非常 に多い。
4)喀 疾 の多い主 なる因子 と し結 核性肺炎58%,荒
蕪肺25%,そ れ以外 気管支拡張症 を含 め非結核性気管
支変化16%に 見 られ,結 核性肺 炎は喀疾の多い者に 多
い傾向が見 られ る。結 核性肺炎 の特に喀疾の多い群は少
ない群に比 し荒蕪肺 を呈 す る者多 く右心室壁 の肥厚せ る
者少 く,肺 炎 の範 囲,気 管支の変化,気 管支粘膜 の盃状
細の増 加,空 洞壁 の変化が強い傾 向が ある。
5)陳 旧性重症肺結核患 者の発熱,喀 疾に対 しPC,
CM等 の非結核性抗 生剤 がある程度有効 であ り,上 記所
見と併せ混 合感染が症状 の悪化 を促進 してい る1因 であ
る と考 え られ る。ネ ブ ライザ ーもあ る程度有効 で使用す
べ き もの と考 え られ る。
(22)抗 真菌剤の試験管 内併用効果
上 田英雄 ・福島孝吉 ・明石哲二
佐 々隆之 ・大塚恭生
東大上田内科
真 菌 症 に 対 して,最 近 種 々の 抗 真 菌 剤 が 発 見 され,治
療 に 際 して 効果 を あ げ て い る。し か し我 々の 経 験 に よれ
ば,こ れ ら抗 生 剤 に対 してCandidaalbicans,Crypto-
coccusneoformansに 於 い て は,耐 性 の 上 昇 が 署 明に は
み られ ない が,AsPergillusに 於 い ては,耐 性 を 獲 得 す
る こ とを知 つ た。
こ の よ うな こ とか ら,真 菌 症 の 治 療 に あ た つ て 単 一 の
抗 生剤 の連 用 が,と もす れ ば,そ の 効果 を 減 じ,或 は 無
効 とす る こ とが考 え られ,そ の 場 合,薬 剤 の 毒 性 等 の関
係 か ら大 量 投 与 が 不 可 能 な 現 在,種 々抗 真 菌 剤 の併 用 に
よ り,よ り充 分 な 治 療 効果 が 上 げ られ れ ば,治 療 上 有 意
な 点が 多 々あ る と思 わ れ る。
我 々 は これ らの 点 か ら,抗 真 菌 剤 の 試 験 管 内併 用 効 果
につ き検 討 したo
使 用 した 菌 種 はCandidaalbicans,Cryptecoccusneo-
fomans及 びAsPergillusfumigatvs及 び 同 じ くflavus
で,薬 剤 はAmphotericinB,Trichomycin,Nystatin,
Naramycin,PolymyxinB及 びVariotinを 用 い た。
現 在 深 部真 菌 症 に 最 も有 効 であ るAmphotericinBを 基
本 と して,そ れ に対 して 他 の5種 を組 合 せ て行 なつ た。
な お 各薬 剤 は そ の2倍 稀 釈 の系 列 を組 合 せ て行 な つ た。
A.Candidαalbieansに 対 す る 各 種 薬 剤 の 試 験 管
内 併 用 効 果
実 験 は サ プ ロ ー液 体培 地 に 各 種 の 濃 度 に 薬 剤 を混 入 し
て 用 い,使 用 菌 はCandidaalbicansDukeNo.2株 を
用 い,37。C,72時 間 培 養 で 判 定 し た。
1・AmphotericinBとNystatin
2.AmphotericinBとTrichomycin
3.AmphotericinBとVariotin
以上 の3組 の 絹 合 せ で 実 験 を行 な つ た が,そ れ ぞ れ の
組 合 せ の薬 剤 が,そ の 最 低 阻 止 濃 度 に 準 じ て阻 止 して お
り,い つれ も相 加 的 に 作 用 す る。
B.Aspergillusに 対 す る 各 種 薬 剤 の 試 験 管 内 併 用
効 果
使 用 した`AsPer8illusはAsPergill%sfumigatus木
村 株 とAsPergillusflavus金 森株 の2株 を 用 いた。実
験 は サ ブ ロー 固形 培 地 に 種 々 の濃 度 に 薬 剤 を 混 入 し,
37。C,48時 間 の培 養 で 判定 した。
1.AmphotericinBとNystatin
2.AmphotericinBとTrichomycin
以 上 の2組 につ き,そ れ ぞれ 上 記2株 を用 い て実 験 を
行 な つ た。
い ず れ の組 合せ の場 合 で も,充 分 に 相 乗 的 な効 果 を み
る こ とが 出来 ず,概 して 枢 加的 な 作 用 を み た が,ASPer-
gillusfumigatus(木 村 株)に 対 す るAmphotericinB
とTrichomycinの 場 合,及 びAspergillusflavus(金
森 株)に 対 す るAmphotericinBとNystatinの 場 合 に
は,や や 相 乗 的 な効 果 が あ る よ うに み られ るが,こ れ ら
の場 合,更 に低 い倍 率 の 系 列 を 用 い た 実 験 が 必 要 で あ る
と思 わ れ る。
C.Cryptoeoeeusneoformαnsに 対 す る各 種 薬 剤
の 試 験 管 内併 用効 果
実 験 は サ ブ ロー液 体培 地 を 用 い,そ れ に 各 種 濃 度 の組
合 せ で薬 剤 を混 入 し,37。C,72時 間 の培 養 で判 定 した。
な お使 用 した菌 株 は,主 にCryPtococcuSneoformans
Duke株 を 用 い た が,AmphotericinBとTrichomycin
の組 合 せ に 於 い て は,そ の 他 に東 邦株 及 び 田 坂 株 を も加
え た。
1.Amph◎tericinBとNystatin
2.Ar叩hotericinBとVariotin
以上2組 で は・ 定 型 的 な 相 加 作 用 の 効 果 を あ らわ し,
相 乗 的 とみ られ る 点 は ま つ た くな か つ た。
3.AmphotericinBとNaramycin
4.AmphotericinBとPolymyxinB
こ の2組 の場 合 は ・ や や 複 雑 な 作用 を 上 の2者 に 対 し
てみ せ る が,特 に3・ に 於 い て は や や 相乗 的 な 効果 が み
られ るが,そ の効 果 は な お 細 か く検討 され る必 要 が あ ろ
VOL.9NO.1 CHEMOTHERAPY 21
う。4.の 場 合 は 概 して相 加的 に 作 用 して い る と考 え られ
る0
5.AmphotericinBとTrichomycin
こ の場 合,そ の結 果 が や や 異 常 な もの で あ つ た の で,
Cγyptococcvsneefeγmansは 、カ プ セル の厚 いDuke株,
東 邦 株 の2株,及 び カプ セ ル が な い と思 わ れ る田 坂 株 の
3株 を 用 い て 同 じ実 験 を 行 な つ た。
こ の両 者 の 併 用 に よ り特 微 的 な こ とは,Duke株,東
邦 株 の場 合 に,AmphotericinBの 阻 止 力 が,ま つ た く
消 失 して し ま うが,し か しTrichomycinの 効 果 はAm・
photericinBの 濃 度 に 関 係 な く一 定 の効 果 を示 し てい る
こ とで あ る。即 ち この 場 合Trichomycinの 濃 度 がO・03
~O .08u/ccの 如 き低 い値 で あ つ て もAmphotericinB
は そ の阻 止 力 は 消 失 して しま うので あ る。Amphotericin
Bの 最高 濃 度 は そ れ ぞ れO.5mcg/cc,1mcg/ccで あつ
た が 少 くと も こ の範 囲 では そ の効 果 は 失 わ れ て い る。
又,田 坂 株 を用 いた 場 合は,前2者 とや や そ の効 果 に
差 が あ り,こ の 併 用 に よ るAmphotericinBの 阻 止 の
減 退 は 弱 くAmph。tericinの み の 最 低 阻 止 濃 度0.25
mcglccに 対 して,Trichomycino.125u/cc看 こて1mcg
の濃 度 で そ の 発 育 を 阻 止 し て い る。こ の時 のTricho-
mycinの 行 動 は 前2者 の場 合 と同 様,一 定 した 濃 度 に て
肇 育 を阻 止 して い る。
か くの 如 く,こ の 併 用 効 果 の異 常 は 薬 剤 の側 ではAm-
photericinBとTrichomycinの 組 合 せ の み に 見 られ,
他 の 組 合 せ で は 見 られ ず,又 菌 の 側 か らみ る と,Candida
albicans及 びAsPergillusecは 認 め られ ず,CryPtococcus
に つ い て の み 認 め られ た。こ れ は 併 用 薬 剤 と菌 との3者
の 間 の特 種 な関 係 に よ る も ので あ ろ うが,そ の効 果 が ど
の よ うな 機 序 に よ り生 じるか は 不 明 で あ り,今 後 の検 討
を 必 要 とす る問 題 で あ る。
結 論
Candidaalbicans,Asψergillusjumigatus,AsPer・
gillusfiavus及 びCryPtecoccusneOforma%sに 対 して
AmphotericinBを 中 心 と し て,他 の5種 の抗 真 菌 剤 を
組 合 せ,試 験 管 内 併 用 効 果 をみ た が,多 くの場 合 相 加的
な効 果 を み るの み で,相 乗 的 な効 果 は ほ とん ど認 め られ
な か つ た。又 一 般 の抗 生剤 に 時 と して み ら れ る よ う な
抵 抗 作 用 は 認 め ら れ な か つ た が,CryptOCOCCUSneofor・
mansに 対 す るAmphotericinBとTrichomycinの 併
用 の 場 合 に 一 方 の み が そ の阻 止 力 を失 うと い う特 種 な結
果 が 得 られ た が,こ の 点 に 関 し ては 今 後 検 討 す る必 要が
あ る と思 われ る。
(23)ア スペ ル ギル ス症 に対す るア ン
ホテ リシ ンBの 応 用,殊 に 副作
用につ い て
福島孝吉 ・福 村 豊
玉置昭英 ・増田真一郎
三井厚生病院内科
我 々は,気 管支 アスペル ギル ス症,ア スペ ルギルス菌
球,及 びアスペル ギルス膿胸 の3例 をアンホテ リ・シ ンB
に依 り治療 した。
気管支 アスペルギルス症 の患者 は23才 男性。昭 和32
年,肺 結核 に罹患,化 学 療法を行 な うと共に,翌 年両側
の上葉切除術 を受 け,術 後は順調に経過 した。し か し昭
和34年1月 初 旬,寒 冒に罹患,そ の頃 よ り連 日血疾及
び膿疾 を喀 し始めた。そ の1カ 月後に行なつた気管支鏡
検 査で右上葉 支に支柱 でつなが る菌塊を認め,そ の組織
学的 検査で真菌性疾 患を疑い,昭 和34年6月 本院に転
院 した。
入院時所見では,体 格中等,栄 養可,胸 部 では第 皿肺
動 脈音の充 進を認め る外,腹 部四肢共正常所 見であ り,
胸 部 レ線像 で も病的 陰影を認めず,又 諸検査成績 でも白
血球像 で,好 酸球の軽度増加を見 る外,全 て正常 な成績
を得た○ 気管支鏡検査で,右 上葉気管支分岐部 よ り1~
2cm上 方 の右壁 に平坦 であ るが,表 面が凹凸を 示す肉
芽 組織があ り,又,気 管内壁に濃厚な粘液膿性 の分泌物
が散在 してい る。之 等 をサブPt-一一寒天培地 で培養 しAs-
Pergillusfiavusを 分 離 した。こ のAsP.flavusの アン
ホテ リシンBの 最低阻止濃度は1.5mcglccで あ る。
入院後は,隔 日に アンホテ リシンBを0.25mg/kg,
却ち,こ の例では14mgを5%ブ ドウ糖500ccに 溶
解,大 体4~6時 間をかけてゆつ く り点滴静注を行 なつ
た所,悪 寒,戦 漂,発 熱 の副作用が見 られたが,速 かに
血疾 の消失が見 られ膿疾 の減少 を来 した。そ れ等副作用
と,点 滴が長時間にわた るための疲労が苦 しい事か ら投
与方法を気管内注入に変 えた。
軟骨間穿刺法に依 り隔 日に10~15mgの ア ンホテ リ
シンBを 注 入した所,一 時AsPergillus"avusの 排菌量
の増加を見たが注入の続行 と共に次第に減少 し,遂 には
培養で陰転 した。
この入院治療の経過中に屡 々米粒大 の菌塊 を喀 出 して
い る。そ の喀出 された菌塊の周辺部を見 ると,緻 密 に織
られた菌糸 よ りな り,そ の 周 辺 には細胞浸潤が あ り,
又,空 気に触れた一部分には,胞 子頭を見 る 事 が 出 来
るo
この症例では,ア ンホテ リシンBの 投与は大体6カ 月
22 CHEMOTHERAPY JAN.1961
間にわた り,総 量775mgの 投与 を受 けてい る。そ の間
感性は1カ 月後6.2mcg/cc,6ヵ 月後に500mcg/ccと
急速に上昇 してい る。
次は,ア スペルギ ル ス 菌を見た50才 男性。昭 和22
年7月,両 側肺結核 として,人 工気胸療法,更 に化学療
法 を行 なつたが 特に変化がなかつた。昭 和32年 右上葉
の肺壊疸 に罹患,治 療 に依 り一時好転 したが,治 療 の中
断 と共に,喀 疾量が増 加 して来たので昭和35年4月 当
院 内科へ紹介 され入 院 した。
入院時,体 格 中等,栄 養可,胸 部では,心 濁音心音等
正常,肺 野 では右上 部に限局性 の濁音 あ り,同 部 に微 弱
な水泡 音聴 取,左 上部では呼吸音減 弱,呼 気延長 等があ
り,水 泡 音は聴取 しなかつた。爾 腹部 四肢共 に異常 を認
めなかつた。
胸部 レ線像 では両側上肺 野に病的陰影を認め,左 側は
硬化性,右 側 は線維性 で梢 々禰漫性で上葉の萎縮,気 管
の右側偏位 を見,断 層撮影 では右側で上葉 の大部分 を占
め,上 葉 気管 支に連 る空間 によつ て幾 つかの塊 に区分 さ
れた不 規則な陰影 の集合が見 られ た。
臨床 検査成績では 白血球像 で好酸球 の増 加を見る外,
特に病 的な成績を見 ない。
断 層撮影 の所見 か ら我ft}XAsPergillusのFungUS
allを うた がい観 察をつづ け る うち に果 して碗豆大 の
褐 色の菌塊 の喀 出を確認 した。こ の褐 色の菌塊 は緻 密に
織 られ た菌 糸 よ りな り,そ の周辺 に単核細胞 の浸潤が 見
られ た。
そ こでテ トラサイ ク リン及び ペニ シ リンの気管 内注入
と共に アンホテ リシ ンBの 点滴 静注を試みたが僅か2回
で悪寒,戦 標,発 熱又悪心,嘔 吐のため中止 し軟骨間穿
刺法に依 る気管 内注入 に変えた。ア ンホ テ リシ ンBは
1mgよ り始め,漸 次増量 し最大量20mgま で注 入 を
行ない総治療 画数20回,総 量195.8mgを 注 入 した。
アンホテ リシ ンB投 与 と共に菌塊 の喀 出が大 きさ,数
共に増 加 したが治療後半 には減少,遂 に は菌塊 の喀 出が
消失す るに到つた。
治療 終了後 の胸部 レ線像 では,禰 漫性 の陰 影 が 消 失
し,空 洞化 した ことが知 られ る。又 断層撮 影で も右上葉
に見 られた菌塊 の集合 による不規 則な形 の空隙に囲 まれ
た数 コの陰影 は喀 出消失 し,後 に空の空洞が遺残 した。
第3例 は アスペ ルギルス性膿胸 の58才 の男性。昭 和
20年 健診 時右肺結核 と診断 され 人 工 気胸療法1力 年半
の経過 で治癒 した。昭 和34年6月 寒冒に罹患,発 熱が
持続 し,某 院にて右結核性膿胸 として局部 及び全 身的 に
抗結核 剤の投与を うけたが下熱せず,又 胸腔 よりの排膿
量 が増加 し,胸 膜 の病理学的 検査でAsPergillusの 感染
と診断 され,昭 和34年10月 本院 へ転院 した。
入院時体格 中等であ るが,栄 養 とみ に衰 え,瞼 結 膜貧
血あ り,胸部は右側前 後前共に濁音に包 まれ,殆 ん ど呼吸
音な し。右 後腋窩 線第K肋 間にて切 開挿入 された ドレー
ンか ら淡黄色 の比較的粘 性のす くない 膿が1日150cc
前 後流出 してい る。胸 部 レ線像 では右 側は死 腔 を 形 成
し,そ の中に膿の貯留を認 め,肺 組織 は硬化性 に萎縮 し
ている。左 側では特に異常 を認 めない。臨 床検査成績 で
は血 色素量57%,白 血球数4,400,好 酸球は4%で あ
るo
胸膜 よ り分離 されたAsPergillPtsfPtmigatvsの ア ンホ
テ リシ ンBの 最低阻 止濃度 は6.2mcg/ccで あつた。
入院 と共に各種抗細菌剤 と共 に アンホテ リシンBを 胸
腔 内に注 入 し,又 胸 腔内洗灘 を併 用 した所,漸 次下 熱の
傾 向にな り,胸 腔 よ りの排膿量 が薯 しく減少 して来 た。
アンホテ リシ ンBの 胸 腔内注入 を始 めて1カ 月を経た頃
より洗潅の際褐色 の菌苔が 出て来 る様になつた。
その組織所見は前述 の2症 例 と殆 ん ど同 じ く,緻 密 に
織 られた菌 糸よ り出来 てお り周 囲に細胞 浸潤 が 見 られ
た。こ の症例 に於 いても局部へ と共にア ンホテ リシ ンB
の全身投与 を試みた が矢張 り前 述の症例 と同様 に悪寒,
戦標,発 熱,更 に 悪心嘔 吐があつたので後述 の新 しい方
法で全身投与 を再 開 した。
以上 の3例 を通 じて,通 常の静脈内点滴注射法 に 」ぞる
場合,ア ンホテ リシ ンBの 投与 に伴つて不快な副作 用が
ある。即 ち悪寒,戦 漂,発 熱及び悪心嘔吐であ る。
之等不快 な副作 用に対 し我 々はWINNの 方法か らヒ
ン トを得 て,新 らしい方 法を考按 した。先 ず 点滴 開始 前
30分,前 処置 として解熱剤,抗 ヒ スタ ミン剤 等を頓用
せ しめ,点 滴 にあつては2つ のイ リゲーターを用意 し,
出来 るだけ注射針 に近 い所で接続す る。イ リゲーターを
2つ に分ける理 由の1つ は アンホテ リシンBは 抗 ヒスタ
ミン剤 と混 合 した場合凝固析 出す る事 を防 ぐ た め で あ
り,今1つ は副作用発現 の場合 アンホテ リシ ンBの 投 与
を中止 し,解 熱剤,抗 ヒスタ ミン剤のみの投与を行な う
ためであ る。点 滴は2つ のイ リゲーターを同 時 に 開 放
し,約4~6時 間かけ て終 了す る。
この方法 での投与 の際 ア ンホテ リシンBを50mgに
増量 した場合 でも悪寒,戦 標 を完全に防ぎ,発 熱 も38℃
以下 に抑 える事が 出来る。然 しアセチルサ リチル酸の副
作用 である胃腸障 害のため,連 用は出来なかつた。ア セ
チルサ リチル酸の代 りに アセチルサ リチル酸 アル ミ凸ウ
ムを使 用 した所,悪 寒,戦 漂を防 ぎ得て も,発 熱そ の他
の副作用は抑制 出来なかつた。
又局所へ の注入 の場合 の副作用は,単 に発 熱のみが見
られた。即 ち気管内注入及び胸腔内注入共に20mgま
では大体副作用 をみないが,そ れ 以 上 の場合は,37℃
VOL.9NO.1 CHEMO'了HERAPY 23
台の軽熱が,気 管 内注入 の ときは一過性 に,胸 腔 内注入
の ときは3日 澗 にわたつ て発現 した。
アンホテ リシ ンBの 副 作用 としては上述 の 他 に 腎 障
害,肝 障害,又 造血臓器 への障害 並びに注射 部位の静脈
炎等が知 られ ているが,我 々が治療 した3例 にはそれ ら
は見 られ なかつた。
我 々の3例 のア スペルギルス症についてア ンホテ リシ
ンBに よる治療はいずれ も良好 な結果を得た。
ア ンホテ リシンBは 静脈 内点滴及び舞管内又は胸腔内
注入を行なつた。
静脈 内点滴 では悪寒戦標及び発熱,又 悪心嘔吐等 の副
作用 を見たが,WINNの 方法に ヒン トを得て考按 した新
らしい方法 によ りそれ等副 作用 を緩和 し得た。
一方 気管 内注入や胸腔 内注入 では副作 用 として軽度 の
発熱が 見 られ たが 有効 量 と思われ る20mg以 下 では副
作用はみ られ なかつた。
(24)実 験的家兎肺 アスペルギル ス症
のアンホテ リシンBに よる治療
福島孝吉 ・玉 置 昭 英
福村 豊。増 田真一郎
三井厚生病院内科
大 高 裕 一
東京医大病理
AsPer二gillusfumigatus木 村株 及びAsPergillusfiavus
金森 株を室温に5~7日 間培養 し,充 分に胞子の発生を'見た所で
,こ れを掻 き取 り,生 理 的食塩水に浮遊 しホモ
ゲナ イザ ーにかけて県濁液 とな し,次 いで2回 洗際 し,
40倍 の生理的食塩水県濁液 とした。家 兎30匹 に,そ の
2ccを 気管内に軟骨間穿刺法 によつ て注入接種 した。接
種家 兎は半数 を非治療群 とな し,半 数 を治療群 とした。
非治療群 は,接 種後約1週 間 後には胸部 レ線写真上に
禰慢性 の陰 影が 見 られ たo病 理 組織学 的には,こ の時期
は滲 出性炎 が著 明である。接 種 後6日 では滲 出性炎 で,
所 々に膿瘍 が形 成 し始 め られ ていて,肺 胞 内で接種 され
たAsPergillusflavusの 胞 子の腫大 発芽 及び菌糸の発育
す るのが 見 られ る。又 他の家兎では同 じく接種後6臼 目
であ るが,肺 の膿瘍 化 した病巣 に多数 の菌糸 と共 にAs-
Pergillusjumigatusの 胞子頭 の発 生を示 している。又
接種後5日 の気管 支内腔 に も菌 糸の集合発育 と共にAs-
Per二gillusj%migatusの 胞子頭 の発育 が見 られ る。
全 身播種 は接種 後5~7日 の間に起 り,15匹 中4匹 に
見 られ,脳,腎,肝,脾 等に膿瘍を形成 し急速に死亡 し
た。腎 の膿蕩性 病変,腎 細尿 管内の菌糸の発育,肝 グ リ
ソ ン氏鞘 を中心 とした小膿瘍,脳 の白質に毛細管を中心
として多発 した小膿瘍 等が 認め られ た。
接種 後約2週 間頃 より膿瘍 内容は喀出 されて大小 の空
洞 が形成 され,又 空洞 及び膿 瘍の周辺には増殖性炎が加
わつて来る。接 種 後13日 の肺 で,大 小の空洞が発生 し,
肺 の表 面に藝胞状 に膨 隆 して見えた。空 洞壁 の壊死組織
には,増 殖性 炎が加わ り始めてい る。更 に 日時を経 て,
40日 にな ると一方では増殖性 炎が 主 な ものであつて,
病変の治 癒傾 向が見 られ,結 節性病巣は縮少 し,又 石灰
の沈 着が見 られ るが,一 方その近 くでは新 らしい溶 出性
の病変が見 られ,又 空洞が形 成 されてお り,慢 性炎 の病
像 を呈 してい る。
アンホテ リシンBは1、25~2.5mgを5ccの5%ブ
ドー糖に溶解 して耳静脈 よ り注射 した。
治療例に於 ては,滲 出性炎は弱 くな り,壊 死及び膿i瘍
形成 も弱 くな り,増 殖性炎は顕著 となつ てい る。又 治療
例にては空洞 の形成は少 な くなつ てい る。全 身播 種は治
療例にはな く,又 剖検時肺か らの菌 の培養 も治療例 では
陰性 のものが多 く,又 病死数 も少いQ接 種後2日 よ り治
療 し,10日 で剖検 した も の の例 では小膿瘍 はあるが,
増殖性 の変化が強 く巨細胞が 見 られ,前 述 した非治療 の
同時期 の未 £滲出性炎が主 となつてい る像 と明 らかな差
が 見 られ る。又 菌 の培養 も陰性 であつた。次 に接種 後8
日か ら94日 間治療 し総量711.5mgを 静注 した例の肺
では殆 ん ど肉眼的には正常に近 くなつてい る。こ の組織
像 では結節 には石灰 が沈 着 し,又 巨細胞 及び類皮細胞が
多 く増殖性の変化の搬痕 化が顕著であ る。又 一・部には肉
様 変化が見 られた。レ 線写真 もこれに相当 してい る。接
種 後9日 で両側に肺 炎陰影を認めてお り治療を始めた も
ので,治 療開始後13日 でなお灘慢性の陰影があ るが,
治療開始後39日 で,レ 線陰影の軽快が 明らか であ る。
これに対 して接種 直前,接 種後3日 と早期に治療 した も
のは.接 種後10日 を経て も陰影は軽度 であ り,病 理所
見 とよく一致 してい る。
次に本実験に於い て,治 療経過中に肺 よ り培養 回収 し
得たAsPergillusflavuSに つい て,そ の感性 を測定 した
が,治 療前1.5mcg/ccの 最低阻止濃度 であつた ものが,
使用量 の増加 と共 に 耐 性 が 増 し,47.5mgの 注射 後は
1,000mcg/ccに 迄 も上昇 している。か くア ンホテ リシ
ンBに 耐性が上昇 するにつれ て,同 時に員ス タチ ン及び
トリコマイシンにも耐性 の上昇 が見 られ る ことが示 され
てい るo
以上 を要 約する と,実 兎を使用 しこのア スペルギル ス
症 の治療実験 では,ア ンホテ リシンBの 治療は死亡を減
少せ しめ全 身播種 を防止 し,滲 出性炎を低下 させ,増 殖
性炎 を増強 させ,壊 死及び膿 瘍の形成は弱 くな り,空 洞
の形成 は少な く,菌 体は減少 し,菌 培養 も陰転す るのに
24 CHEMOTHERAPY JAN.1961
効 果が あつた。本 実験の治癒経過中に培養 回 収 し得 た
AsPergillusfiavus金 森 株について アンホ テ リシンBに
対 す る耐性 の上昇 が認め られ,又 アンホテ リシンBに 耐
性 の上昇 した菌 は同時に ニス タチ ン及び トリコマ イシン
に も耐性の上昇が 見 られ た。
(24')Saccharomycesの 陽 管 内異 常
増 殖 に よる酩 酊症 の1例
橋 本 孝 平
東 条病 院
松野 仁 ・加藤 博
腐敗研究所
土 屋 省 義
三 輪 内科
演者 は最近 食後酩酊感 を生ず る1例 を経験 し千葉大
相磯教 授 と三輪教授 の御協 力を得 て検索 した成 績を報 告
す る。
患者 は30才 の男で漁業,既 往症 として5年 前 費漬 瘍
に罹患せ る他著患な し。酒1~2合 程度,昭 和33年12
月肺結核 兼腸 結核 で血疾粘血下痢 を主訴 として入院gaf・
No.4,34年4月 上旬急性化膿性 申耳炎併発,同 下 旬急
性 胆嚢炎併 発,旬 日に して治癒 したがそ の頃か ら悪心嘔
吐等頻発 し5月 下 旬幽門狭窄症に て胃切除術施行(ビ ル
ロー ト皿法)術 後は順調 に経過 し35年3月 退院す。そ
の間化学療 法は当初3者 併用約6カ 月(SM469,PAS
l,8009,'INH209)以 後は頭痛,悪 心,耳 鳴等の副作
用 のた め中止 す。又PC600万 単位,CM59,SI1,100
9等 使用す。35年3月 下 旬都 内某病院に入院・5月 下
旬退院迄 の間 にKM159,PZA1009使 用 したが副作
用のた め中止す。そ の頃 より食後酩酊 感発現 し9月 初め
本院に再入院す。入 院時所 見:体 格中等,栄 養梢 々衰 え
微 熱,軽 咳,疾,便 通不定等あ り胸 部は理 学的に著変は
ないがX線 像は右肺 尖野 に雲紮状 陰影あ り,腹 部は平坦
軟 硬結 圧痛は ない。肝 脾 触れ ず全身の淋 巴腺触知せず,
毎食後約1時 間に して顔 色紅潮,呼 気に アル コール臭 を
発 し精神梢 々高揚 し陽気 多弁 とな り酩酊状態 を呈 し約4
時 間後には消失す る。入 院時一般 検査では軽度の貧血 と
喀疾 及び糞中結核菌陽性,SM10mcg,INH5mcg迄
耐性 あ り胃X線 所見 は胃は上部1/3が 残存 しバ リウムは
1~2分 停滞後輸 出脚 と同時 に梢 々膨 大 せ る輸入脚に も
流 入停 滞 し約10分 後輪入脚 バ リウムは'imlli脚に移行す
る。胃 液は著明な無酸症 を示 している。血 中アル コール
濃 度の 日中変動をWIDMARK法 で検す るに食後1~2~
3時 聞 と上昇 し最高0.08%以 上 に達 し概 ね4時 間後旧
に 復す る。酩 酊感は含水炭素食が 最 も著 しく次で蛋 由食
脂肪 食 の 順 で あ る。KotをCandi4aGS培 地 で37。C
2日 間 培 養 し無 数 の真 菌 のKolonieを 発 育 せ しめ得 た。
こ のKolonieは ア ル コ・一ル臭 を 発 し表 面 滑 沢 で 柔 か く中
心 部 は 薄 い 土 褐 色 を 帯 び 培 地 内 外 に 偽 菌 糸 を形 成 しない
之 等KolonieをGORODKOwA培 地 で 培 養 す る と大 部 分
の もの か らCarbolfucksin及 びWRIGHT染 色 で1~4
コの 子 嚢 胞 子 の形 成 が 認 め られ た。極 く一 部 のKolonie
の菌 は 出芽 の み 見 られ て 子 嚢 胞 子 の形 成 は 見 つけ られ な
い。子 嚢胞 子 形 成 の 菌 株 をS株,証 明 され な い 菌 株 をR
株 と名 付 け て 各 々の 糖 醸 酵 能 試 験 を試 み る と 前 者 は
91ucose,fructose,maltose,sucroseを,後 者 はglu.
cose,fructoseを 醸 酵 し,又S株 は試 験 管 内 で24時 間
後 に5%程 度 の アル コ ・一ル を 生 成 す る。
以 上 の 成 績 よ り子 嚢 胞 子 の証 明 され たS株 はSaceha-
r・mPtcesと 考 え,R株 に つ い て は 爾 現 在 引続 き 種 々の 培
養 法 を 用 い て 検 索 中 であ るが 糖 醸 酵 能 の上 か ら もS株 と
は 異 つ た菌 株 と思 わ れ,こ の患 者 では 腸 管 内 に 大 量 の
Saccharomycesと 少 量 のR株 の2種 の 真 菌 が 併 存 す る
が 酪 酊 症 の 発 現 はS株 が 極 め て 大 量 に 腸 管 内 に存 在 す る
こ と及 びS株 の方 が アル コPtル 醗 酵 能 が 強 力 で あ る こ と
よ り主 と してSaecharomycesに 基 因す る も の で あ る と
考 え る。な お 同 株 の 菌 が 胃液 及 び 喀 疾 か ら も 検 出 さ れ
たo血 液,尿,肝 生 検 組 織 か らは 培 養 は 陰 性 で あ る。又
糞 便 中 の大 腸 菌群 に は 特 に 異 常 と思 わ れ る所 見 が 認 め ら
れ な か つた 、 次に 肝 機 能 検 査 及 び 血 清 生 化 学 的 検 査 に 就
て:B.S.Pは 軽 度 に障 碍 され 血 清 蛋 白量 は 正 常 で 血 清
膠 質 反 応 は総 て異 常 を 認 め な い。モ イ レン グ ラ ハ イ ト
値,血 清総 ビ リル ビ ン量,直 接 ピ リル ビ ン土量 は 共 に 正
常,T-Lipid,T-Chel,S.G.0.T.,S・G,P・T・,Al,
phosph及 びMuco-Prot何 れ も硝 々低 値 を示 して い る。
血 清 ヂ ア ス タ ーゼ8×,尿 ヂ ア ス タ ー ゼ16×。肝 生 検
組 織 像 で は軽 度 のt0xischeHepotitiSの 像 を 塁 し真 菌
は 見 当 らな い。ブ5'… 糖 負荷 試 験 に 就 て:ブ ドー糖50g
経 ロ投 与 に よ り説 明 の つ か な い 曲 線 が 得 られ た。そ れ は
胃切 除 に よ る もの と考 え 非経 口的 投 与 法 では 全 く正 常 の
曲線 を得 た。早 朝 空腹 時 血漿VB1量 はESter型4.5γ/dl
Free型0で 絹 々 低 く,無 処置 日の1日 尿 中 排 泄 最 は
113.4γ で あ る。VBIlmg静 注 負 荷 試 験 では 血 中 濃 度
の上 昇 が 軽 度 で旦 尿 中排 泄 量 も 少 な く潜 在 性VB1不 足
の 状 態 を うかが わ せ る所 見 を 得 た。
以 上 我 々は 肺 結 核 症 で3者 併 用 療 法 施 行 中 幽 門 狭 窄 症
を 併 発 し,胃 切 除 衛 を施 行 後 約1力 年 を経 て 食 後酩 酊 症
を 来 した 症 例 に遭 遇 し種 々検 査 の結 果 腸 内 に異 常増 殖 し
たSaccharomycesに よる ア ル コー ル 生 成 の た め で あ る
こ とを 確 認 した。こ の患 者 では 肝,腎 諸 種 内 分 泌機 能 に
著 変 な く,血 液 及 び生 検 肝 組 織 培 養 を試 み て も全 身 感 染
VO」9NO.1 CHEMO↑HERAPY 25
の様 相は認め られなかつた。現 在Nystatinを 投与 して
経過 観察中であ るが,現 在迄の検査成績を考案 し報告 し
7eo
(25)小 児 リウマチ熱 の臨床的観察
中島博徳 ・福本泰彦 ・新美仁男
千葉大小児科
近 年,わ が国に於いて,リ ウマチ熱患者が増加す る傾
向が見 られ る。リ ウマチ熱は再発 しやす く,再 発す るこ
とに心障害の増悪を来 し,予 後を悪 くす る。
私達は,昭 和26年 か ら昭和35年9月 までの10年
間 に,千 葉大小児科に入院 した リウマチ熱患者について
調 査 したので報告す る。
1.年 度 別
前述の期 間に入院 した リウマチ熱患 者は64人(内2
回 入院 した もの2人)で,こ の間の総 入院患 者の約1・8
%に 相当する。こ れ を昭和26年 か ら昭和30年 まで
と,昭 和31年 か ら昭漁35年9月 まで とに分けてみる
と,そ の間 の総入 院患者 に対 す る%は,前 者は1.1%,
後者 は2.7%で あ り,最 近 増加傾向にある ことが うかが
われ る。
2.初 発 年 令
8才 と10才 が,そ れ ぞれ8人 で一番多 く,2才,14
才,15才 には,1人 もな く,f才 未満 に1人 ある。即
ち6才 か ら11才 までに多 く,1才 未満 は稀れ である。
3.入 院時主訴
62例 中,発 熱50例,関 節痛は48例 で,こ の2つ
が圧倒的に 多 く,次 い で 輪状紅斑10例,全 身倦怠5
例,食 欲不振5例,顔 面浮腫4例,舞 踏病様運動2例 と
い う様 に多種 多様 である。
4.入 院時 の主な検査
入院時の主な検査結果につい てみ ると,白 血球増多は
76%,血 沈 促進は100%,心 電図に於け るPQ時 間 の延
長は32%に み られ る。な お最近 の22例 では,CRP陽
性100%,ASLOは91%に 上昇がみ られた。
5.治 療
当 教室で行なつた治療は,大 別 して次 の3つ に分け ら
れ る。
(1)ペ ニ シリン等の抗生物 質 とサルチル酸剤
(2)ペ ニシ リン等の抗生物 質 と副腎皮質ホルモ ン
(3)抗 生物質 と,サ ルチル酸 剤及び副腎皮質ホルモ
ンの3者 併用
しか し,1955年 の英米 の共 同研究 と同様 にこの3者
の治療法の間に著明な差は見当 らず,又 その後 の心障害
に つい ても,そ れ程の相違はない よ うに思われ る。
6.リ ウ マ チ 熱 の 再 発
前 述 の患 者62人 の うち,再 発 予 防 を行 なわ ない41
例 に 通 信 に よ り,そ の 後 の 経過 を 調 査 した。
こ の 内,返 信 の あ つ た もの 及 び 来 院 して 問 診 の 出来 た
も のは32例 で,21例 に再 発 を 認 め た。即 ち 再 発 率 は
65%強 で あ る。
これ を初 発 よ り再 発 ま で の期 間 に つ い て み る と,全 例
に対 す る再 発 率 は,6カ 月 以 内 で は12.5%,6カ 月 か ら
1年 で は25%e,1年 か ら2年 では9.4%,2年 以 上 で も
19%の 再 発 が み られ る。な お再 発 例 の57%は,1年 以
内 に 起 る。
次 に 初 発 年 令 と再 発 との関 係 を み る と,1~5才 で は,
全 再 発 例 の14%,6~10才67%,11~15才19%で あ
り,6~10才 が 一 番 再 発 しやす い。し か しこれ は,前 述
の よ うに,リ ウ マ チ熱 の初 発が こ の年 令 に 多 い こ と も考
慮 に 入 れ ね ば な らない。
ゾウ マチ 熱 は,心 炎 を 合 併 す る こ とが 多 く,又 これ が
予 後 を 悪 く してい る大 き な原 因 と思わ れ る の で,初 診 時
の心 炎 の有 無 と予 後 及 び 再 発 に つい て検 討 して み る と,
32例 中 初 診 時 心 炎 の あ つ た も のは19例,な か つ た もの
は13例 で,心 炎 の あ つ た もの の再 発 率 は31.6%,心 炎
のな か つ た も の の再 発 率 は61.5%で あ る◎ 又 死 亡 率 に
つ い てみ る と,総 死 亡 率 は21.8%で,心 炎 の あ つ た も
のの 死 亡 率 は31.6%,心 炎 の な か つ た も の の 死亡 は1
例 で,死 亡 率 は7.6%で あ る(こ の死 亡 例 は,再 発 後 心
炎 を 起 した も の)。
この よ5に,リ ウ マチ 熱 で は 心 炎 の 有 無 が,再 発 に対
して は た い した 影 響 を 与 え て い な い が,死 亡 に対 して は
大 きな 意 味 を 持 つ て い る こ とが わ か る。
7.リ ウ マ チ熱 の 再 発 予 防
リ ウマ チ 熱 の再 発 予 防 に つ い て は,色 々 の報 告 が あ る
が,そ の基 準 とも い うべ き もの は,1955年American
HeartAss◎ciationが 行 な つ た リウマ チ 熱 予 防 に 関 す る
勧 告 で あ ろ う。
即 ち,こ れ は
1.経 口投 与
a.Sulfadiazine体 重60ポ ン ド以 下 は1日0.59,
60ポ ン ド以 上 は1日xo9を 毎 朝 投 与 す る。
b,Penicillin20~25万 単 位 を 毎 朝 投 与 す る。
2.注 射 と して はBenzathinePenicillinGを120
万 単 位 月1回 筋 注 す る方 法 を 上 げ てい る。
私 達 もほ ぼ これ に の つ と りBicillin経 口投 与 を行 な つ
て い たが,longactingのSulfa剤 も使 用 した。Bicillin
は14例,Sulfamethoxypyridazine5例,Slfisomezole
2例 で,6カ 月 以上 投 与 し再 発 は1例,こ れ はBicillin
投 与 の 例 に み られ た。こ れ を再 発 予 防 を 行 な わ な い場 合
26 CHEMO髄 『HERAPY JAN.1961"_一.
と比較す ると,再 発率は6ヵ 月以内 では再 発予 防を行 な
わない場合12.5%,再 発 予 防 を行 なつた場 合は4.7%
で 明らか に再発率 の低下が み られ る。
8.Longactingsulfa剤 による再発予防
使用量はSulfamethoxypyridazineは1日250mg,
Sulfisomezoleは1日0.5gで,連H投 与 した。投 与
中 の血色素量,赤 血球数,白 血球 数,血 沈を1カ 月 ごと
に検査 した。副 作用 を来た した ものは1例 もな く,血 色
素量,赤 血球数 にも特 に変 化な く,血 沈は1例 を除いて
1時 間 値20mm以 下 であ る。又 そ の 間のCRP及 び
ASLO,咽 頭溶 連菌培 養の結果は,CRPは48圓 検査 し
陽性 は1回,ASL,0は23回 検査 したが,退 院後3カ 月
以 内に166単 位以下 とな り,以 後全例 に上昇 を認めなか
つた。又3カ 月に1度 咽頭培養 を行ない 全部 で14圓 施
行 してお るが,全 部溶連菌 は陰性 であつた。心 電 図 も3
~6カ 月に1度 とつ てい るが,退 院時 と変 らないか改善
をみてお る。
考 按
BLANDandJoNEsは,1921年 か ら1931年 ま で の
1,000例 の リウマチ熱患 者を20年 間観察 し,初 発か ら
10年 後には,約20%が 死 亡 し,更 に20年 後には,30
%が 死亡 してお り,全 死 亡例の1/3は,5年 以内に死亡
した と述 べてお る。又 再発につい ても,最 初 の5年 間は
各年 ご とに約1/5,次 の5年 間は各年 ごとに約1/10,更
に次の5年 間は,各 年 ご とに1115の 再発があ ると報告
してお る。又WILSONら は,リ ウマチ熱患 者1,042人
を観 察 し,死 亡率は毎年1,000に つ き147で,初 発 から
15年 後 には,4小5し か生存 しない と述べ てお る。こ れ ら
報告は,ス テ ロイ ドホルモ ン使用前 の しか も再発予防 を
行なわない場合の ものであ り,私 達の再発予防 を行 なわ
ない場 合のそれに近い値 を示 してい る。
ステ ロイ ドホル モンが使用 され だ したのは,比 較 的最
近 の ことであ り,そ の使用 法に も色 々の意 見があ り,今
後の遠隔成績 をみ なけれ ば,そ の効 果を判定す ることは
困難 であるが,ス テロイ ドホルモン使 用前に くらべて予
後は よ くなるもの と揺 定 され る。
再発予防 については,欧 米では多数 の報告があ り,我
国に於 いても以前 よ り加 藤氏がその重要性を強調 してお
られ るが,近 年 その報告が見 られ るよ うに なつた。再 発
予防 の基 準は,先 のAmericanHeartAssociationの
勧告 とすべきであろ うが,lengactingのSulfa剤 も私
達 の観 察 した期 間では再発が1例 もな く,又 使用量が少
量 のためか,Sulfa剤 の副作用であ る白血球減少,皮 膚
の発疹 等はみ られなかつた ので,再 発予防 に用いて よろ
しい と思 う。し か しなが ら,米 国の軍隊 で行 なつた集団
予防 の際にSulfa剤 耐 性 の溶連菌が 出現 した といわれ
てお り,こ の事 も考慮 に入れ る必要があ る。大 国氏 らの'
報告に よると,ペ ニシ リン耐性 の溶連菌は検 出され なか
つた との事 なので,若 しSulfa剤 が無効 とな れ ば,たri
だちにペ ニシ リンに切 り換 える必要があ ると思 う。
結 語
昭和26年 か ら昭湘35年9月 まで の10年 間に当科一
に入院 した リウマチ熱息 者について検討 し,再 発予 防を
しなかつた ものの65%強 が再発を起 してお り,死 亡率
は約22%セ,そ の内初診 時心炎を有 した ものの死 亡率
は31.6%で あるこ とがわ かつたo
経 口ペニシ リン及 び10ngactingのSulfa剤 に よ り
再発予 防を行 なつた場 合,6カ 月以内 の観察 では,再 発二
率 は,再 発予 防を しなかつた もの の12.5%に 対 して,
再 発予 防を した もの4.7%で,大 きな改善が み られ,再
発予防 の必要性 を認めた。し か しlongactingのSulfa
剤に よる再発予 防は,例 数 も少 く期間 もまだ短 いので,
今後例数を増 し,長 期にわた り観察 していきたい と考 え
る。
(26)Sulfamethomidineの 外 科 領.
域 に於 け る使用 経 験
前田外喜男 ・石引久弥
慶応義塾大学医学部外科教室
(島田信勝教授)
我 々は 邦 製 の新 サ ル フ ァ剤Sulfamethomidineに つ き一
臨 床 成 績 を検 討 した の で,そ の 一 端 を 発 表 す る。
D血 中 濃 度
Sulfamethomidineの 血 中濃 度 は 津 田氏 法 を 用 い て 測}
定 し,投 与 後1,3,6,12,24,25,27,30時 間 に.つ ぎ
そ の 値 を検 査 した。
初 回19以 後24時 間 毎 に.O.59内 服 例 に つ い て 見
る と,3例 平 均 の 値 は 投 与 後6時 間 に して ピ ー ク に 達
し,総 量6・2mgidl,遊 離 型5・9mg/dlを 示 し,以 後 漸
減 し24時 間 後0・59再 投 与 し た 後3時 間 で 総 量6,0・
mg/d1,遊 離 型5・7mg小d1で 第1回 目の ピ ・・一ク とほ ぼ 同
様 の 成 績 を えた。
初 回29以 後24時 間 毎 に19内 服 した3例 の平 均
血 中濃 度 は 投 与 後6時 間 で 総量9.5mg1d1,遊 離 型9 .2
mg!d1の 値 とな り第1回 目の ピ ・・クが 出 現 す る。そ の後
次第 に漸減するが24時 間後に19再 投与 す ると3時
間後 に第2回 目目のピークが 出現 し,そ の濃 度 は1総 量
10・2mg/di・ 遊離型9・6mg/d1と な り,前 回 よ りも高 い
血 中濃度がえ られ6時 間後に於て も倫第1回 目ピe-・bクと
同様な血中濃度を示 した。
10%溶 液10cc1画 静注投与 した3例 の平均 値は投