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論文

I. ビッグ・デヌタ環境䞋における消費者行動

 デモグラフィック特性に基づきセグメンテヌションを行った結果20歳から34歳たでの女性をタヌゲットずし競合ずの差別化を行うべくタヌゲットが芖聎するテレビ番組のスポットを䞭心に1000GRP出皿し新聞広告に加えタヌゲットが接觊しそうな雑誌広告ず亀通広告に出皿し圓初2週間の間に新補品認知率を70%たで高め詊甚率10%を目暙ずするずいうマヌケティング蚈画は決しお旧いものではなく今でも䌁画されるこずもあるのではないだろうか。Kotler and Keller 2011はセグメンテヌションの有効性に関する評䟡基準ずしお枬定可胜性実質性接近可胜性差別性そしお行動可胜性をあげおいる。スマヌトフォ

ンやタブレットなどの今日のメディアの発展ず普及を考慮するず枬定可胜性や接近可胜性に関する困難性の皋床は枛少しおいるず蚀えよう。この環境䞋ではデモグラフィック特性などの埓来掻甚されおきたセグメンテヌション倉数やタヌゲット特性ずは異なる芖点が重芁ずなっおきおいるのではないだろうか。 メディアに関しおも同じこずが指摘できる。図−1はISPず呌ばれるむンタヌネット・サヌビス・プロバむダIDCず呌ばれるむンタヌネット・デヌタ・センタヌから構成されるむンタヌネット・゚クスチェンゞIXの内囜内で䞻芁IXに関するトラヒックのピヌク倀ならびにFTTHなどの囜内ブロヌドバンド契玄者がダりンロヌドしたトラヒック総量に぀いおの1997幎から2013幎たでの時系列倉化を瀺したものである。2004幎以降指数分垃的にトラヒッ

芁玄 ビッグ・デヌタはICT におけるむンフラの発展を前段階ずしそのむンフラ発展をベヌスずした倚様なデバむスやプラットフォヌムの発展により進展した。 本皿ではデバむスやプラットフォヌムのメディア性を理解する重芁性を指摘し぀぀ビッグデヌタ環境䞋でのマヌケティング戊略ず消費者行動に぀いお倚くの可胜性に぀いお論じ぀぀マヌケティング戊略課題に適切なビッグ・デヌタを掻甚すべき点䞀様にデヌタを扱うのではなく態床デヌタず行動デヌタを区別しお掻甚すべき点䟡栌匟力性ぞの圱響メディアの内郚化ず広告ず広報の融合冗長性を陀去するこずの重芁性など7぀の留意点に぀いおふれる。

キヌワヌドビッグ・デヌタマヌケティング戊略消費者行動デバむスプラットフォヌムメディア性

ビッグ・デヌタ環境䞋におけるマヌケティング戊略ず消費者行動

慶應矩塟倧孊倧孊院 経営管理研究科 教授

井䞊 哲浩

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ク総量が増加しおいるこずがわかる。これは動画などにより情報量そのものが増加したこずもあるが加えおむンタヌネットに接続するツヌルデバむスメディアが増加したこずも倧きな芁因である。぀たり新聞テレビラゞオ雑誌亀通屋倖などの埓来からのメディアも重芁であるがスマヌトフォンやタブレットなどのパヌ゜ナルなメディアを考慮の重芁性は増倧しおいるこずは疑いない。 消費財にせよ産業材にせよ顧客が補品やサヌビスを賌入する䞀連の意思決定過皋はそれらを取埗するこずで解決されうる問題の認識から始たる。぀ぎに補品やサヌビスに関連する情報を探玢し代替案を評䟡しある補品や

サヌビスを遞択する。さらに意思決定過皋は継続されその遞択埌の評䟡を行い今埌の意思決定過皋ぞずその評䟡結果がフィヌドバックされる。 2000幎以降のデバむスやメディアの進展による情報流の増加は意思決定過皋のすべおの段階に圱響を䞎えおきた。豊かな情報により今たで認識しなかった問題を認識するようになったり逆に今たで認識しおいた問題を認識しなくなったりずいう倉化が起こっおいる。海倖旅行の目的が倚様化し興味のあるテヌマの旅行パックを詳现に怜蚎する傟向やICタグによっお容易に産地を確認できるようになり逆に産地を気にしなくなった傟向も芳察されお

2000

1500

1000

500

1997 1997 1998 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

IX

Gbps

図 —— 1 囜内トラヒック量の時系列倉化

総務省資料に基づき筆者䜜成

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いる。我々は倚くのメディアやプラットフォヌムにアクセスし豊かな情報を収集しより豊かに代替案を評䟡するようになった。遞択する堎も店頭に加えお倚数の時間的地理的制玄のないECサむトず拡倧しおきた。個人のブログやSNSサむトにおいお䜿甚埌の評䟡に関する情報を発信するこずで自身のみならず他者の意思決定過皋にも圱響を䞎えるようになった。 図−1が瀺すように豊かな情報流によっお意思決定過皋は倉化しおきたが垞に豊かで奜たしい方向で倉化しおきたずは限らない。20幎前10幎前ず比范しお各皮情報源から埗られる情報を怜蚎する皋床は深く広くなったずいうより浅く狭くなっおきおいないだろうかたた蚘憶に残しおいる情報量は倚くなったずいうより少なくなっおきおいないだろうか情報量の急激な増幅に我々は察応できおおらず情報過負荷が発生し我々の情報凊理量は情報圓たり垌薄になっおいる点は吊めない。今日のマヌケティング戊略はこの情報過負荷に察応しお構築されなければならない。 「テレビをテレビで芋る」ずいう衚珟は数幎前であれば「䜕を圓然のこずを蚀っおいるのか」ず叱咀されたかもしれない。しかし今やスマヌトフォンでテレビを芋るこずもタブレットでテレビを芋るこずもPCでテレビを芋るこずもある。新聞や雑誌も同様であり

「新聞を新聞で読む」こずもあったり「雑誌を雑誌で読む」こずもあったりそれらを他のデバむスで読むこずもある。぀たりメディアずデバむスが同じだった時代からメディアずデバむスが異なる時代がビッグ・デヌタの時代の䞀぀の特城である。

 メディアにビッグ・デヌタが取り䞊げられるこずがここ数幎間で急速に増えおきた。ビッグ・デヌタそのものを管理するのは情報システム系の郚眲であるにもかかわらずもちろんクラりド・アヌキテクチュアなど情報システム系の議論が無いわけではないがビッグ・デヌタに絡んで泚目を集めるのはマヌケティングに関するものが倚い。そこには新たなマヌケティングぞの期埅があるのではなかろうか。そしお同時にマヌケティング・モデリングにおいお留意すべき新たな偎面の存圚しおいるのではなかろうか。 本皿ではビッグ・デヌタ環境䞋におけるマヌケティング戊略ず消費者行動に぀いお過去の拙皿を拡匵し぀぀倚くの可胜性に぀いお論じおみたいcf. 井䞊 2014a; 井䞊2014b。ただ楜芳芖するのではなく歎史的芋地から倧局的に倉遷を把握するべきである点をたず匷調したい。぀たりビッグ・デヌタはここ数幎で産出されたものではなくICTにおけるむンフラの発展を前段階ずしそのむンフラ発展をベヌスずした昚今の倚様なデバむスやプラットフォヌムの発展がもたらしたずころが倧である。したがっお珟行のベヌスやプラットフォヌムのメディア性を理解しなければビッグ・デヌタ時代のマヌケティング戊略は有効ではなかろう。 たたビッグ・デヌタは倚様であり゜ヌシャル・デヌタ通信や攟送デヌタ移動に関する亀通デヌタ取匕デヌタ゚ネルギヌ消費関連デヌタなどのビッグ・デヌタを包括的に把握しマヌケティング戊略構築に掻甚するこずが重芁である。そしおビッグ・デヌタをそのたた掻甚せずに行動デヌタか態床デヌタかどのメ

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ディア性を有したデヌタかなどを怜蚎し冗長性を陀去した䞊でデヌタ源ずしおのメディアやデバむスを䞀様にではなく個別に識別しお分析し぀぀ビッグ・デヌタの䞀郚を掻甚するこずがマヌケティング戊略の構築においお留意すべきである。぀たりビッグ・デヌタ環境䞋でのマヌケティング戊略構築は情報流の掻甚が鍵である。 

II. 今日のビッグ・デヌタ時代たでの倉遷

 ビッグ・デヌタず聎いお゜ヌシャル・デヌタを連想される読者もいらっしゃるかもしれないが゜ヌシャル・デヌタはビッグ・デヌタの䞀郚である。゜ヌシャルネットワヌク゜ヌシャルゲヌム゜ヌシャルメディアなど゜ヌシャルxxxず呌ばれるものが泚目されおいるこずがおそらくその䞀因であろう。䞖界最倧のSNS゜ヌシャル・ネットワヌキング・サヌビスであるFacebookの開蚭は2008幎5月であり日本のSNSの代衚であるMixiはそれ以前の2004幎3月に既に開蚭されおいる。たたクックパッドは2014幎4月の実瞟でhttps://info.cookpad.com/outline_of_serviceのべ月間利甚者数4,404䞇人 PC1,573䞇人スマヌトフォン2,678䞇人フィヌチャヌフォン107䞇人を蚘録し171䞇品を超えるレシピ数130䞇人を超えるプレミアム䌚員が利甚しおいるがその開蚭は20䞖玀である1999幎11月である。Mixiが最近ビゞネスモデル転換を図っおいるこずは新聞などのメディアで芋るこずができるがクックパッドは10幎以䞊も泚目を集め成長を続けおおりその成功芁因はむンフラやデバむスなどぞの柔軟な察応であるず考

えるこずができる。ビッグ・デヌタのマヌケティング適甚を怜蚎する際にむンフラやデバむスなどの発展の歎史を理解するこずは重芁である。ICTInformation and Commuication Technology情報通信技術の発展を簡単に述べよう図−2。

ビッグ・デヌタの瀎ずしおのむンフラの発展 むンタヌネットは情報通信のネットワヌクである。ブラりザヌを甚いおノァヌチャル空間を回遊する行為を「むンタヌネット」ず蚀うこずもあるが本来むンタヌネットは情報通信むンフラである。 むンタヌネットは1969幎にカリフォルニア倧孊ロサンれルス校ずスタンフォヌド倧孊間でARPAネットをベヌスに皌動したこずに端を発する。日本におけるむンタヌネットの歎史を語る際ニフティ株匏䌚瀟1986幎圓時゚ヌ・アむ・゚フ株匏䌚瀟のフォヌラムを忘れおはならない。1980幎代パ゜コン通信ず呌ばれるテキストをベヌスずしたコミュニケヌションが行われおいたコミュニティが存圚しおおりその時代に圧倒的なマヌケットシェアを保有しおいたのがニフティフォヌラムである。他方メむンフレヌムコンピュヌタのネットワヌクずしおJUNETず呌ばれる倧孊間で接続されおいたネットワヌクも1980幎代半ばには存圚しおいた。JUNETはたず東京倧孊東京工業倧孊そしお慶應矩塟倧孊間でネットワヌクが構築され接続されその埌党囜の倧孊ぞず展開されおいった。 特定のナヌザヌに限定された研究機関間のネットワヌクからより䞀般的なナヌザヌが参加可胜ずなったむンタヌネットの第䞀ブレむクは19945幎頃でありりィンドりズ95ずい

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うパ゜コンのオペレヌティング・゜フトが発売された時期ず考えるこずができる。それたでのMS-DOSやPC-DOSずいうテキスト・コマンド・ベヌスのOSOperating Soft基本゜フトからナヌザヌビリティの優れたGUIのOSぞず倉わったのみならずネットワヌク接続を容易ずさせるOSになったのが倧きな芁因であった。 第二のブレむクは19978幎のむンタヌネット・ブヌムである。ネットバブルずも呌ばれたこの圓時電子商取匕やITベンチャヌなどのドット・コム䌁業ず称される䌁業が倚数登堎した。それたでアメリカにおいおはクリスマス・シヌズンの数週間前にショッピング・リストを持っお癟貚店に買い物に行っおいたスタむルから家庭で電子商取匕サむトからクリックしおクリスマス・ギフトを決め発泚するずいうスタむルに倉わった。これはeクリスマスず呌ばれ

た珟象であり今日のECの端緒的な珟象である。 そしお第䞉のブレむクは2001幎頃から始たったブロヌドバンドの普及である。ADSLを䞻ずしたブロヌドバンドず呌ばれる高速通信網の普及である。埓来のモデム接続の堎合は接続時間をベヌスずした埓量課金制であったがブロヌドバンド接続になり䜕時間接続しおも䞀定ずいう月額固定制ぞず料金䜓系が移行した。その結果ナヌザヌは24時間むンタヌネットに垞時接続するようになった。これらの高速通信ず垞時接続ずいう二倧特性はそれたでのむンタヌネットの掻甚方法を倧きく倉化させ情報通信攟送商業などの融合を加速するこずになる。高速通信によりTV番組や映画や動画などの容量の豊かなコンテンツをむンタヌネットを介しお芖聎するこずができるようになりJAVAやFlashなどを甚いお豊かに衚珟さ

70 80 90 00 10

ARPANET JUNET WWW ASP Cloud

Dial Up ISDN ADSL FTTH Wi-Fi LTE

VMS UNIX Windows iOSAndroid

PC PDATablet

Yahoo! Google FacebookMixi Twitter

図 —— 2 ICTの発展

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れ実物ず倉わらないたた自由に色や圢を倉曎しシミュレヌションできる補品やサヌビスのサむトなどむンタヌネット䞊のコンテンツは日々発展しおいる。そしおこの発展はFTTH

Fiber To The Homeず呌ばれるADSLより高速の光ファむバヌ接続が2005幎頃から普及しさらに加速されおいる。 デバむスプラットフォヌムなどの発展によるビッグ・デヌタの到来 ここたでのブレむクはむンタヌネットにおける情報むンフラの発展ずたずめるこずができる。ずころが20056幎頃からの第四のブレむクではむンフラではなくプラットフォヌムそしおデバむスの発展がその䞻たる動因ずなっおきた。 たずデバむスずしお埓来はPCを䞭心ずしおいたが新たにスマヌトフォンやタブレットが利甚されるようになっおきた。RIM瀟のBlack Berryは90幎代末には既に北米で販売されおいたがOfficeやPDF閲読機胜などを備えたスマヌトフォンずしお2000幎代に販売されおからは䞻たるデバむスずしおしばらく君臚するこずずなった。その埌2007幎にApple瀟からiPhoneが発売されそしおiPhoneのOSであるiOSの競合ずしおGoogle瀟からAndroidが発衚されAndroidをOSずするスマヌトフォンが各瀟から販売されるようになりタブレット倚機胜携垯端末の参入そしお最近のWindows8 を OS ず す る Ultrabook も 加 わ りデバむスの発展はICT環境を䞀倉させた。2014幎1月10日付の日本経枈新聞は米調査䌚瀟のIDCの発衚に基づきパ゜コンからスマヌトフォンやタブレットぞの䞻圹の亀代を瀺唆しお

いる。すなわち2013幎のパ゜コンの䞖界出荷台数は前幎比10.0枛の3億1455侇4000台ずなり2幎連続の前幎割れを蚘録した。アップル瀟もマむクロ゜フト瀟もそれぞれ新型タブレットを発売しスマヌトフォンやタブレットが䞻たるデバむスずしおしばらく存圚するこずが予枬される。 デバむスの発展によるICT環境の倉化の倧きなものはプラットフォヌムの倉化であろう。PCのみが䞻たるデバむスの際にはWindowsを OS ずしYahoo! や Google で怜玢しホヌムペヌゞやBlogなどで情報を公開しおいたがスマヌトフォンでFacebookにアクセスし情報を取埗し曎新したりタブレットでTwitterにLoginし情報を発信するずいうスタむルはもはや特別なものではなくなっおきおいる。 この盎前の2぀の段萜で蚘述しおいるこずが゜ヌシャル・デヌタがビッグ・デヌタ化しおいるこずを物語っおいる。端的にいえばむンフラの発展の䞊に立぀OSデバむスプラットフォヌムアプリ゜フトりェアの発展が゜ヌシャル・デヌタのビッグ・デヌタ化を出珟させたず蚀える。もちろんWiFiやLTEなどの無線通信むンフラの発展もなおざりにしおはいけない。したがっお単にビッグ・デヌタずいう珟象や゜ヌシャル・デヌタの台頭ずいう珟象に泚目するだけではこれからの曎なるビッグ・デヌタ化に察応できず困惑するだけずいう事態におちいっおしたう可胜性を吊定できない。粟緻な歎史芳的分析を行いむンフラ通信OSデバむスプラットフォヌムアプリなどを構造的に敎理し把握するこずがマヌケタヌに本源的に必芁ずされおいる。 加えおデバむスやプラットフォヌムを粟

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査しお珟行のメディア性を理解するこずもマヌケタヌに本源的に必芁ずされおいるこずである。その理由ずしお第1に20056幎頃からの第四のブレむクではむンフラではなくプラットフォヌムそしおデバむスの発展がその䞻たる動因ずなっおきおいるからである。したがっおデバむスやプラットフォヌムを理解するこずが必須である。そしおその理解は単に技術的に理解するこずのみならずマヌケティングの芖点からも理解するこずも必須である。情報システムずしお掻甚するのであれば技術的理解で十分かもしれない。しかしマヌケティング戊略の芖点から掻甚するのであればCRMにせよコミュニケヌション戊略にせよメッセヌゞの䌝達が䌎うためたさにデバむスやプラットフォヌムが意味するメディア性を理解するこずが重芁ずなる。 第2の理由は「テレビをテレビで芋る」「新聞を新聞で読む」「雑誌を雑誌で読む」こずが圓たり前ではないからである。冒頭で述べたようにメディアずデバむスが同じだった時代からメディアずデバむスが異なる時代ずなっおおりデバむスがメディア化しおいる時代ずなっおいるからである。プラットフォヌムずしおのFacebookは特にメッセヌゞを介するコミュニケヌションの様盞においおはメディアずしおマヌケタヌは認識すべきである。Twitterも同様である。デバむスもプラットフォヌムもメディア化しおいる点がビッグ・デヌタの時代の䞀぀の特城である。 

III. ビッグ・デヌタ環境䞋におけるマヌケティング戊略

 本節では䞊述のビッグ・デヌタの倚様性に関しお述べたい。すなわち第1にビッグ・デヌタずは第䞀想起である゜ヌシャル・デヌタのみならず倚様なデヌタを包含するずいう倚様性に関しお述べ第2に倚様なビッグ・デヌタの掻甚は様々な業界によっお倚様に掻甚されおいるずいう倚様性に぀いお述べそしお次節で倚様であるがゆえにマヌケタヌはビッグ・デヌタをマヌケティング問題に適甚する際いく぀かの偎面に留意し顧客行動に䞎える圱響などを勘案しおマヌケティング戊略を構築しなければならないずいう点ぞず぀なげたい。 ビッグ・デヌタが最初に掻甚された業界はむンタヌネット関連業界であるず蚀える図−3。さたざたなWeb系コンサルやサヌビス業によりクラむアント䌁業にビッグ・デヌタを掻甚したマヌケティング・サヌビスが適甚されおいる。ホヌムペヌゞなどぞのアクセス分析や最倧負荷察応分析Emailなどの最適配信蚈画分析SNSやTwitterなどの発蚀に基づく自瀟あるいは圓該ブランドぞの態床分析などは最たる䟋であろう。 賌入実態新補品開発顧客満足などの調査を行うマヌケティング・リサヌチはマヌケティング戊略構築においお重芁な圹割を担っおいる。90幎代䞭頃に出珟したネットを介したリサヌチは96から98幎にかけおコンピュヌタ・ベヌスの調査゜フトや調査パネル矀が倚数出珟したこずから数幎間で急成長を遂げた。 00幎代前半のある調査によればネット調

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査の垂堎芏暡は100億円皋床ず掚定されおいたが2012幎床の日本マヌケティング・リサヌチ協䌚資料によれば党䜓ずしお玄1800億円の業界芏暡の内パネル調査の玄600億円を陀く玄1150億円芏暡のアドホック調査の䞭でネット調査は玄525億を占め蚪問や郵送などの既存手法調査の玄625億円ずいう業界芏暡にほが匹敵するたで成長しおきた。 その成長は順颚満垆ではなく圓初は特にサンプリング・バむアスの芖点から批刀されおいた。圓初のネット調査はパ゜コンにより通信を介しお行うこずが䞻流であったためパ゜コンを保有者や埓量制でなく固定制での通信接続契玄者などにネット調査察象者は限定される傟向にあった。これらの傟向は圓時ただ䞀般的ずは蚀えずネット調査察象者は本源的に情報収集志向が高い情報発信成功が高い

ICT知識氎準が高いなどのバむアスがあるず批刀されおいた。 しかし近幎のメディアやデバむスの普及によりこれらのバむアス批刀よりネット調査の利点の方が泚目を集めるようになった。既存手法調査ず比べ調査者の時間的制玄は少なく調査祚に豊かな衚珟を甚いるこずができ時には音声や動画なども掻甚できコストが少なくデヌタ化が容易で䞀床調査蚭蚈すればシステム化が容易であるなどを利点ずしおあげるこずができる。 むンタヌネット関連業界でのビッグ・デヌタの掻甚は早期であったがこの業界で掻甚されおいるデヌタの倚くは゜ヌシャル・デヌタであり゜ヌシャル・デヌタはビッグ・デヌタの䞀郚である点に留意するずむしろ掻甚可胜性は他の業界の方が高いず考えられる。゜ヌシャル・

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図 —— 3 ビッグ・デヌタのマヌケティング適甚

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デヌタ以倖のビッグ・デヌタベヌスには鉄道・車・航空・船舶などによる移動などの亀通デヌタ電子マネヌをベヌスずする取匕デヌタ電子マネヌではなく䌚員制カヌドやクレゞットカヌドそしお取匕むンフラなどをベヌスずした取匕デヌタ気象など環境に関するデヌタTVに加えおスマヌトフォンやタブレットなどを介した通信や攟送に関するデヌタスマヌト・メヌタの普及により期埅される゚ネルギヌ消費関連デヌタなどがあげられる。 ゜ヌシャル・デヌタ亀通デヌタ取匕デヌタ環境デヌタ通信デヌタ゚ネルギヌデヌタなどを掻甚する業界は倚岐にわたっおいる。資本芏暡の倧きい分野においお゚ネルギヌ分野では消費構造や消費量予枬分析が゚ネルギヌデヌタに加えお移動や環境デヌタなどずずもに分析されマヌケティングに掻甚されたた公共分野でも移動や環境デヌタそしお取匕デヌタが統合的に甚いられお気象や地震デヌタ分析亀通量や枋滞そしお事故防止分析などに掻甚されおいる。 補造業もビッグ・デヌタを掻甚業界ずしお䟋倖ではなくむしろ掻甚するこずによるマヌケティング効果は非垞に倧きいず考えられる。識別が困難な䞍良や仕損の原因を特定化するために自瀟内のデヌタに加えおRFIDなどの取匕むンフラを介しおの調達や取匕デヌタを加味するこずでより粟床の高い品質分析を行うこずができたた売䞊や圚庫などの予枬分析にも掻甚するこずができる。 埓来自瀟内デヌタを䞻ずしお掻甚しおきた流通業においおも他の取匕デヌタや環境デヌタさらには通信デヌタを総合的に掻甚するこずで顧客のロむダルティ分析やプロモヌショ

ンなどのマヌケティング効果分析をより効果的に行うこずができる可胜性がある。 分析的なこずがあたりなされおこなかったむメヌゞのある攟送業においおも゜ヌシャル・デヌタや取匕デヌタそしお環境デヌタを連結し分析するこずで芖聎率分析に加え理解・興味などの芖聎質分析脚本家やキャストなどのコンテンツ分析などを行いより芖聎者や広告䞻の垌望に応える攟送を行うこずができるであろう。通信業でも同様であり倚面的ビッグ・デヌタを掻甚するこずでより粟緻なログ解析やネットワヌク解析通信ピヌク分析を行いより良い通信サヌビスを提䟛するこずが可胜になる。 最埌に金融業もビッグ・デヌタを掻甚するこずでマヌケティング成長するチャンスがある。埓来行われおきた取匕デヌタをベヌスずしたリスク分析に消費などの取匕デヌタや亀通デヌタを勘案するずより粟床の高いリスク分析が可胜ずなり朜圚顧客の芏暡が増倧する可胜性がある。 

IV. ビッグ・デヌタ環境䞋におけるマヌケティング戊略構築䞊の留意点

 非垞に倚くの可胜性をマヌケティング戊略の構築に䞎えおくれるこずが期埅されるビッグ・デヌタであるが玠朎に掻甚する危惧に鑑みマヌケティング戊略を構築する際に留意すべき点を7぀述べおおきたい。 第1にビッグ・デヌタを掻甚すれば新たなマヌケティング戊略ぞの瀺唆が生たれるずいう考えに譊鐘を鳎らしたい。倧切なこずはマヌケティング戊略課題を明らかにしその

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マヌケティング戊略課題に適切なビッグ・デヌタを掻甚しなければならないずいう点である。あるブランドに察しおより奜たしい態床を圢成するこずがマヌケティング戊略課題であるずしよう。自瀟でブランド調査を行うずいうのが埓来のマヌケティングであったずしお新たにビッグ・デヌタを掻甚するならば゜ヌシャル・デヌタを掻甚しおBlogやFacebookで態床や意芋を収集するこずは有甚であろう。加えお取匕デヌタも勘案し地域や性別幎霢などのタヌゲット毎の差を明らかにしたうえで改めお゜ヌシャル・デヌタを掻甚すればさらに深遠な瀺唆をブランド戊略に関しお埗るこずができるのではなかろうか。党おのビッグ・デヌタを掻甚するのではなくマヌケティング課題に適切なビッグ・デヌタを識別し適切に分析するこずが重芁であろう。 第2の留意点は20幎ぐらいさかのがったデヌタマむニングが泚目された頃の教蚓であるGIGO で あ る。GIGO ず はGarbage In Garbage Outの略でごみからはごみしか出おこないずいう意味である。ビッグ・デヌタがマヌケティングに䞎える可胜性は盞圓であろう。しかしながら党おのビッグ・デヌタに䟡倀があるずは思えない。ここ数幎泚目を集めおいるDMPData Management Platformに関しおも競合があるDMPからデヌタを賌入したので焊っおDMP契玄をしDataを賌入するずいうマネヌゞャもいないずはいえない。ビッグ・デヌタを保有するこずを目的ずせずビッグ・デヌタ環境䞋でマヌケティング意思決定に䟡倀あるデヌタを準備するこずが重芁であろう。 第3の留意点は行動デヌタず態床デヌタを

区別しお掻甚すべきであるずいう点である。䞋蚘で瀺されるAjzen and Fishbein 1980行動意図モデルは 行動行動意図w1×態床w2×䞻芳的芏範  ず衚わされ行動は行動意図に埓いその行動意図は補品やサヌビスの諞属性の組合せから構築される態床ず友人や家族などの準拠集団の圱響を瀺す䞻芳的芏範のりェむトw1w2により特定化されるこずを意味しおいる。

ビッグ・デヌタのデヌタベヌスを゜ヌシャル亀通などの珟象で類型化するこずもできるが取匕や通信ずいった行動に関するデヌタず゜ヌシャル・デヌタに代衚される態床に関するデヌタに類型化するこずもできる。行動は行動意図に埓うずいうこずは行動ず行動意図には乖離があるこずも含意しおおり行動デヌタず態床デヌタを同じレベルで分析するこずはやや乱暎である。ある業界では態床圢成が十分になされず店頭やサむトで即座に意思決定されブランド遞択される堎合がある。このような業界では態床デヌタから構成されるこずが倚い゜ヌシャル・デヌタを甚いるよりビッグ・デヌタにおける行動デヌタに泚目しマヌケティング戊略を構築する方が有甚であろう。 第4の留意点は䟡栌匟力性ぞの圱響である。䟡栌に関する意思決定は売䞊そしお利益を倧きく巊右するずいう理由からマヌケティング戊略においお特に重芁な偎面の䞀぀である。顧客の䟡栌に察する感床を瀺すものずしお䟡栌匟力性がある。䟡栌に察する感床が高ければ匟力性は高く感床が䜎くければ匟力性は䜎くなる。豊かな情報流により䟡栌匟力性は高くなっ

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おきた。 機胜に関しお同質的補品であっおも情報の入手が困難な状況では入手情報量が差別化の偎面ずしお機胜し䟡栌匟力性が䜎䞋するこずがある。顧客がこだわりをあたり感じない補品の堎合入手情報が少ない補品は䞍確実性が高たり䜎䟡栌でなければ賌入されにくいずいう䟡栌匟力性が高い状況ずなりえるが逆に情報が倚い補品は䟡栌が高くおも賌入されえる䟡栌匟力性が䜎い状況ずなる。すなわち埌者が広告が効くケヌスである。 しかしメディアやデバむスが普及するこずで情報の入手が容易ずなったため同質的補品間では䟡栌競争が高くなり䟡栌匟力性は非垞に高い状況ずなっおいる。家電補品を䟋にずるずA瀟のBずいう冷蔵庫はC店でもD店でも同質的であり顧客は䟡栌の安い方の店舗で賌入するであろう。䟡栌.comずいうサむトでは家電補品のみならず家具や匕越しなど幅広いカテゎリにおいおECサむト間での䟡栌比范ができ最䜎䟡栌のECサむトを識別するこずができる。したがっお小売時点での䟡栌匟力性が䞊昇するこずで小売に出荷する卞そしお補造業者時点でも䟡栌匟力性が䞊昇し瀟䌚党䜓で䜎䟡栌が進展する䞀぀の芁因ずなっおいるずもいえる。昚日述べたマヌケティング・リサヌチ業界での䞀぀の倧きな問題はたさに売䞊ずしおの調査費の䜎䞋である。 たたカヌド型にせよネットワヌク型にせよデバむスずしおの電子マネヌの普及も䟡栌匟力性に圱響を䞎えおいる。JR東日本が提䟛しおいるSUICAは鉄道利甚が本来であったが近幎ではタクシヌやコンビニでも利甚するこずができる。筆者にずっおタクシヌは莅沢な亀通

手段であったがSUICAで支払えるようになり鉄道のような身近な亀通手段ぞず認知枠組みが倉化した。少々高くおも利甚する䟡栌匟力性が䜎い亀通手段ぞずタクシヌは倉容したのである。 第5の留意点はデバむスやプラットフォヌムなどの進展によりビッグ・デヌタが発展したためデバむスやプラットフォヌムの識別を行った䞊でビッグ・デヌタの分析をすべきであるずいう点である。䟋えば゜ヌシャル・デヌタのFacebookを䟋にずるずスマヌトフォンでアクセスしFacebookずいうプラットフォヌム䞊で衚珟する堎合ずPCでアクセスし衚珟する堎合にコンテンツの粟床や䞭心性は同じであろうか?おそらく前者の堎合は単なる衚珟であるこずが倚く埌者の堎合はやや掚敲された粟床の高い衚珟であるず考えられるこずが倚いのではないだろうか。そうであればデバむスを識別しそのメディア性を理解したうえでより適切なビッグ・デヌタ分析しマヌケティング戊略を構築するべきであろう。 第6の留意点はこの第5の留意点をさらに拡匵したメディアの内郚化そしお広告ず広報の融合に関する点である。新聞テレビ雑誌ラゞオはマスメディアずよばれマヌケティングにおけるコミュニケヌション戊略においお䌝達したいメッセヌゞを衚珟し掲茉する媒䜓ずしお重芁な圹割を担っおきた。䌁業の宣䌝郚が広告代理店を通じお広告制䜜䌚瀟やこれらマスメディア䌁業に広告を出皿しおきた。 しかしICTの進展によりネット䞊に新たなメディアが出珟しおきた。今日ほずんどの䌁業が自瀟あるいは個別の補品やブランドのホヌムペヌゞを有しおいる。これらのサむトはメ

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ディア䌁業ではなく各䌁業が有するメディアであり盎接管理し盎接メッセヌゞを衚珟し掲茉するこずができるメディアである。90幎代は広報的にこれらのサむトを運営しおいたが00幎以降は個別補品やブランドに関する広告ずしお明確なマヌケティング目的やキャンペヌン目的により運営されるようになっおきた。 さらに自瀟䌚員サむトが00幎以降運営されるようになり䌁業が顧客ず盎接接觊できる堎を䌁業が有するようになっおきた。䌚員サむトでは広告的でありか぀広報的な関係性を重芖した掻甚が行われる堎合が倚くみられる。新補品や特別キャンペヌンに関する情報を盎接顧客に発信しお埗意様感の意識を醞成する詊みがなされたりしおいる。 たた各瀟が運営する䌚員サむト以倖にFacebookなど䌚員サむトを運営する䌁業のプラットフォヌムに自瀟ブランドの公匏サむトを立ち䞊げ䌚員である顧客ず盎接接觊する堎合もある。あるいは自瀟䌚員サむトずしお立ち䞊

げたが䌚員数が非垞に倚くなりマスメディアずしお機胜しうるようになり他瀟がメディアずしお利甚するこずをベヌスずした事業ぞず発展したサむトもある。日本コカ・コヌラ瀟が運営するコカ・コヌラパヌクは12幎1月時点で玄1100䞇人の䌚員から構成され䞉ヶ月間で10億ペヌゞビュヌをパ゜コンならびに携垯で蚘録しおいる。 この各䌁業によるメディアの内郚化そしお広告ず広報の融合はICT進展が産出した倧きな傟向である。 最埌の留意点ずしお冗長性の陀去の必芁性を述べたい。図−4は1990幎代䞭ごろWWWWorld Wide Webのネットワヌク構造ず信頌性が議論されおいた頃よく芋られた抂念図である。図−4の巊から順に「䞭心化」「非䞭心化」「分垃化」のネットワヌク構造を瀺しおおり右に行くほど冗長性は高くなる。しかし冗長性は非効率な偎面を有し぀぀も信頌性が高いこずを含意しおいる。䞭心化されたネッ

図 —— 4 ネットワヌクの冗長性ず信頌性

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トワヌク構造では䞭心のハブが機胜しなくなればネットワヌク機胜党䜓が働かなくなる。非䞭心化されたネットワヌク構造でも同様であるが他のハブに関しお機胜しなくなっおもネットワヌクは䞀郚機胜䞍党ずなるが機胜するネットワヌクも存圚する。そしお分垃化されたネットワヌク構造ではすべおのネットワヌク構造が機胜䞍党になるのはすべおのハブが機胜䞍党になる堎合のみでありネットワヌクが機胜する信頌性は非垞に高いこずが含意される。 ここで留意すべきはネットワヌク構造における冗長性の信頌性に関する重芁性である。゜ヌシャル・デヌタは冗長性が非垞に高いデヌタである。コンテンツに関しおもツヌル構造に関しおも簡単に盞互リンクができたりフォロヌするこずができるからであろう。このデヌタにおける冗長性はネットワヌク構造における冗長性ず党く異なり信頌性にほずんど寄䞎しないばかりか゜ヌシャル・デヌタをそのたた甚いれば冗長性のバむアスが圱響し冗長性が高いデヌタに有利な結果ずなり信頌性も䜎く劥圓性も䜎い分析結果を産出するこずになる。゜ヌシャル・デヌタが本源的に保有する冗長性を陀去するこずなく分析するこずは誀ったマヌケティング戊略構築を導きかねない。 

V. 総括

 ビッグ・デヌタが泚目を集めるようになっお数幎が経過しおいる。ビッグ・デヌタはここ数幎で産出されたものではなくICTにおけるむンフラの発展を前段階ずしそのむンフラ

発展をベヌスずした昚今の倚様なデバむスやプラットフォヌムの発展がもたらしたずころが倧である。したがっお珟行のでベヌスやプラットフォヌムのメディア性を理解しなければビッグ・デヌタ時代のマヌケティング戊略は有効ではなかろう。 たたビッグ・デヌタは膚倧である。最近泚目を集めおいるビッグ・デヌタを゜ヌシャル・デヌタず理解しおいる読者もいるかもしれないが゜ヌシャル・デヌタはビッグ・デヌタの䞀郚でありPCや倚様なデバむスによる通信や攟送デヌタ鉄道や車などの移動に関する亀通デヌタ電子マネヌや䌚員制カヌドをベヌスずする取匕デヌタ気象など環境に関するデヌタスマヌト・メヌタの普及により期埅される゚ネルギヌ消費関連デヌタなどが他に包含される。これらビッグ・デヌタを掻甚しEmailの最適配信分析ブランド態床の分析売䞊・圚庫予枬プロモヌション効果分析ネットワヌク解析リスク分析などが行われマヌケティング斜策ぞの瀺唆が導出される。マヌケティング問題に適切なデヌタを識別し準備し分析しマヌケティング戊略を構築するこずが重芁である。 たたビッグ・デヌタをそのたた掻甚せずに行動デヌタか態床デヌタかどのメディア性を有したデヌタかなどを怜蚎し冗長性を陀去した䞊でビッグ・デヌタの䞀郚を掻甚するこずがマヌケティング・モデリングにおいお留意すべきであろう。そのデヌタ源ずしおのメディアやデバむスを䞀様にではなく個別に識別しお分析するこずが重芁であろう。ネット時代のマヌケティングは情報流の掻甚が鍵である。 

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論文

参考文献Ajzen, M., and I. Fishbein (1980), Understanding Attitudes

and Predicting Social Behavior. Prentice-Hall.井䞊哲浩 2014a「ネット時代のマヌケティング」日

本経枈新聞『経営孊はいた』2014 幎 1 月 6 日15 日連茉。

井䞊哲浩 2014b「ビッグ・デヌタの時代ずマヌケティング・モデリング」『AD STUDIES』4724-29。

Kotler, P., and K. Keller (2011), Marketing Management, 14th edition. Prentice-Hall.

井䞊 哲浩いのうえ あきひろ 慶應矩塟倧孊倧孊院経営管理研究科 教授

 専門分野マヌケティング論

 1989 幎関西孊院倧孊倧孊院商孊研究科博士課皋前期

課皋修了。

 1996 幎カリフォルニア倧孊ロス・アンれルス校 Ph.

D. 取埗。

 1995 幎関西孊院倧孊商孊郚専任講垫助教授教授

を経お2006 幎より珟職。