Download pdf - E book2 Magazine v1_n23

Transcript
Page 1: E book2 Magazine v1_n23

ISSN-2185-954X

EBook2 Weekly Magazine Vol.1 No.23

2242011

オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 2: E book2 Magazine v1_n23

1

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

2011幎 2月 24日号 第 1巻第 23号

目次

ANALYSIS

ePUB3が拓くオヌプンE-Bookリンキング(前) 2

ePUB3が拓くオヌプンE-Bookリンキング(埌) 5

9 欧州メディアの円卓䌚議が定期賌読問題で提蚀

11 INMAがメディアずテクノロゞヌの察話を提唱

NEWS  COMMENTS

16 米独犁圓局がアップルのIAP条項に「泚目」

19 B&N PubIt! が倧成功。店内むベントも開催

21 米囜の出版界、12月は印刷本も奜調

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 3: E book2 Magazine v1_n23

2

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

ANALYSIS

ePUB3が拓くオヌプン E-Bookリンキング(前) 鎌田 博暹本誌線集長

ePUB3は、今䞖玀に入っおからのWebの発展(HTML5)を反映した、新䞖代のスタンダヌドだ。このグロヌバル暙準での日本語仕様の開発ず実装によっお、われわれもフルにその恩恵に济するこずになるのだが、そろそろレむアりトは卒業しお、E-Bookをビゞネスずしお成立させる䞊での ePUB3の真䟡に

目を向けるべき時だろう。奔攟なたでにオヌプンな Web の血統を継ぐePUBがあれば、出版者は、犁断のリンゎを食べおも平気だし、アマゟンの密林も楜に通り抜けられるかも知れないのだ。

ナビキタスなリヌディング環境の意味

Kindle (2007)に始たる珟䞖代の E-Reader を過去から区別する最倧の特城は、それがワむダレス端末ずしお垞時Web䞊のクラりドず぀ながっおいるこず、同時にクラりドがデバむスから独立しおいるマルチデバむスこずにある。Web をオンラむンストアずしおだけ䜿うベンダヌも少なくないし、゜ニヌは最初のリヌダを PCのスレむブずしお出したが、ショッ

ピングからリヌディングたでを䞀貫させるメリットは、ナヌザヌにもベンダヌにも非垞に倧きいものがある。それは十分に理解されおおらず、時ずずもに浮䞊しおくる。

垂堎がいくら急拡倧しおも、コンテンツ垂堎

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 4: E book2 Magazine v1_n23

3

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

で先行するアマゟンのシェアがそう䞋がらない理由は、こうしたナビキタスな性栌によっお、それがたんなるオンラむン曞店ではなく、゜ヌシャルネットワヌキングのWebサヌビスずもなっお、ナヌザヌの䜓隓から最倧のデヌタを匕き出し、掻甚できるためである。だからKindleの゜フトりェアを曎新するだけで、SRSのハブずなるこずも容易だったわけだ。そうなるにはWi-Fiでもただ䞍十分で、3G/4Gが぀いお初めおスマヌトフォンに匹敵できる。クラりドずしおのアマゟンからみるず、ナヌザヌはすべおKindle、PC、スマヌトフォン でオンラむン接続できおいるこずになる。

E-BookがWebペヌゞずなる

Web垞時接続によっお、リヌダだけでなく、個々の E-Bookコンテンツがダむナミックで察話的なものずなる。Webから倚くを継承した E-Bookの最倧の利点の䞀぀は、本の内倖のリンク先の䞀発衚瀺にある。玙の本では、目次、玢匕、脚泚、匕甚・参照情報、参考文献リスト、甚語定矩などを䜜成し、本文ずの察応を瀺すのだが、かなりの手間がかかる割には、䞀般には䜿われないこずも倚く、最近ではこの面倒な䜜業を倧幅に省略する䟋も少なくない。しかしWebのようにワンクリックできれば、利甚頻床は䞀気に高たるこずは間違いない、Web によっおリンクは本の情報空間を 2次元から 3次元n次元に拡匵する。

それによっお䜕が起こるか。E-BookがWebの䞀郚になり、本のペヌゞが実質的にWebペヌゞずなる。本の䞭からWebコンテンツをダりンロヌドするこずはもちろん、サヌビスを呌び出しお実行させたり、ブラりザを起動したり、Web で出来るこずなら䜕でもできる。そしお、その際に䞊

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 5: E book2 Magazine v1_n23

4

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

述した本のメタデヌタは、本ず倖界Webを぀なぐむンタフェヌスの圹割を果たす。Web䞊のクラりドは、サヌビスを呌び出した本の IDが分かれば、メタデヌタを通じお、その本誰が䜕に぀いお、い぀曞いたものかのコンテクストをほが正確に知り、間接的に読者の関心やニヌズを知るこずになる。これは経枈䟡倀を生む。

本を売りたい偎は、文献リストや匕甚から本を販売する機䌚が生たれる。本だけではなく、本が察象ずしおいるものに関連した商品やサヌビスを販売する機䌚も生たれる。そしお機䌚が生たれたならば、倚くのサヌビスが接続し、取匕・決枈が行われる。もちろん、アマゟンやアップル、Google が狙っおいるのもそこだ。ではその環境はオヌプンになり埗るだろうか、それによっお、ビッグ 3 以倖の参入の可胜性ず圢態が決たる。 ◆ 02/24/2011

関連蚘事

「WebずE-Bookの融合を進めるePUB 3最終段階」• 、EBook2.0 Magazine、02/17/2011

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 6: E book2 Magazine v1_n23

5

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

ANALYSIS

ePUB3が拓くオヌプン E-Bookリンキング(埌) 鎌田 博暹本誌線集長

プラットフォヌムは、コンテンツに玐を付けおおきたい。コンテンツはプラットフォヌムを必芁ずしながら、それから独立したい、ずいう矛盟を孕みながら、E-Book の垂堎は、たんなる静的コンテンツの配信を超えた、ダむナミ ッ ク で ã‚œ ヌ シ ャ ル な 方 向E-Book2.0ぞず進化しおいる。そ

しお 2.0 の氎準をオヌプンなサヌビスずしお実珟する䞊での倧きな前進が、ePUB3 におけるオヌプンなリンク機胜ずいえる。出版界がビッグスリヌず共存しおいく䞊で、これを䜿いこなし、ePUB3 の達成氎準を高めおいくこずが将来を決定するこずになる。そろそろ組版・レむアりトは卒業したい。[党文♥䌚員]

ePUB3で、コンテンツはデバむスから独立する

さお、E-Book正確には E-Bookクラりドが叀兞的な読曞䜓隓を超えお様々なオンラむンサヌビスず結び぀いたものを、本誌では EBook2.0ず称しおいるのだが、アップルの「iOSアプリ決枈芏制」は重芁なテストケヌスになる。アップルずしおは、デバむスの優䜍を発揮するために、ナヌザヌがアマゟンや Googleなど倖郚のサヌビスにアクセスし、決枈されるのを奜たない。そしお倖郚サヌビスにアクセスする手段がアプリだけで

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 7: E book2 Magazine v1_n23

6

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

あるならば、アップルの API を䜿っお開発するほかないので、アップルもコントロヌルできる。しかし、ブラりザで足りおしたうならば、このコントロヌルも無効になる。ではWebはそこたでサポヌトできるだろうか。可胜であるならば EBook2.0はメヌカヌのコントロヌルを受けない圢で発展するこずになる。

EBook2.0の完党Web化の鍵を握るのが ePUB3.0である。日本ではもっぱら日本語衚瀺に関心が集䞭しおいるわけだが、ePUB3 は、もちろんその皋床の拡匵ではない。この 10幎間のWebの構造・機胜・衚珟の定矩における進化(HTML5/JavaScript/CSS3)が反映されおおり、したがっお基本的に珟圚のWebでできるこずなら ePUB3でもできる。ePUB2ではWeb機胜のサポヌトが䞍十分で、本の構造定矩も粗かった。E-Book利甚が拡倧し、レベルが高床化したこずで、ePUBじたいも進化する必芁があったのだ。

珟圚、iOSもAndroidも、E-Bookアプリはオヌプン゜ヌスのWebkitを䜿甚しおいる。KindleデバむスにもWebkitが䜿われおおり、同時にアマゟンはそれ以倖のハヌドりェアでKindleフォヌマット(MOBI/AZW)の本を衚瀺するのに䜿っおいる。ちなみにアマゟンの「独自フォヌマット」はじ぀に巧劙に぀くられおおり、ePUBを「䞭間フォヌマット」にするこずもできるし、自らのデバむスにロックむンされるこずもない。だから、アップルがKindleアプリやKindleコンテンツからAmazon.comぞのアクセスを犁止しおも、アマゟンはHTMLやJavaScriptの凊理゚ンゞンであるWebkitを䜿い、Webブラりザによるサヌビスに完党移行するこずで察抗できる。アマゟン以倖も同じ。アップルの芏制が匷たれば、iOSアプリではなく、ブラりザをフル掻甚し、Webkitをモバむル・プラットフォヌムにも䜿甚するこずで察応できるのである。

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 8: E book2 Magazine v1_n23

7

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

オヌプンで盞互運甚可胜な E-Bookリンキングを目ざしお

出版瀟はどうだろうか。Kindleなどオンラむンストアが、自瀟コンテンツが他瀟コンテンツの宣䌝に利甚されるのは奜たないだろう。しかし、もしナヌザヌが匕甚元の

本を持っおいお、すぐに衚瀺しお確認したいず考えるず、リンク先の本の章、節、パラグラフのIDが問題になる。ePUB3のプロパティたずえばdcterms:modifiedを䜿うこずで、本の構造に深く分け入っお参照個所を探玢・衚瀺するこずが可胜になる、ず蚀われおいる。もちろん、そのための開発が必芁になり、さらにePUBのオヌプンプラむベヌトな拡匵も必芁になるかもしれない。たずえば、W3CのSWEO (Semantic Web

Education and Outreach Interest Group)のLinking Open Dataずいうプロゞェクトは、オヌプンなE-Book環境の拡倧に貢献するだろう。䞋図を参照

ePUB3の䜜業は、完党な E-Bookリンキングの暙準を目ざしたものではないが、その入口を぀けた。アップルの「アプリ芏制」は、結果的に ePUB3を䜿ったオヌプンな E-Book環境ぞの志向を拡倧するだろう。アマゟンはePUBをサポヌトしおいないが、盎接間接に同期させおいくこずになろう。すでに Kindle環境での「E-Bookリンキング」は技術的には完成されおいる可胜性が匷く、垂堎投入のスケゞュヌルを枬っおいるず思われる。ePUB ずアマゟンずの「競争」が、E-Book を新しい段階に匕き䞊げるこずを期埅したいが、ダむナミックな E-Book環境のためのむンタフェヌスも開発課題だ。日本のテクノロゞヌベンダヌも、出版瀟、著者、読者ずずもに、E-Bookリンクを前提ずした環境の開発ず事業化に取組むこずを期埅したい。 ◆ 鎌田、02/24/2011

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 9: E book2 Magazine v1_n23

8

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

関連蚘事

「ePUB3が拓くオヌプンE-Bookリンキング(前)」• 、EBook2.0 Magazine、02/22/2011 「WebずE-Bookの融合を進めるePUB 3 が最終段階」• 、EBook2.0

Magazine、02/17/2011 「アップルのIAP芏制がePUB3 ぞの移行を加速する!?• 」、EBook2.0

Forum、02/22/2011

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 10: E book2 Magazine v1_n23

9

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

欧州メディアの円卓䌚議が定期賌読問題で提蚀

ニュヌスメディア経営者の囜際団䜓であるINMAは 2月 17日、ロンドンに欧州のメディア業界の代

衚者 60名を招埅しお円卓䌚議を開催し、アップルずGoogleの新しい定期賌読プランやHTML5の可胜性に぀いお議論を行い、声明を発衚した。䞻催者は䌚議の雰囲気を「楜芳的だが珟実的」ず衚珟し、アップルの「ルヌルが䞍透明」でタブレット垂堎の䞻圹ずの協力関係が䞍確実であるこずに苛立ちを隠さなかった、ずしおいる。

「私たちはタブレットに぀いお語る時、これたではもっぱらマルチメディアなどコンテンツに぀いお目を向けおいたした。いたこそビゞネスモデルずパヌトナヌシップの詳现を議論すべき時です。それがテクノロゞヌ分野のパヌトナヌにずっおも新しいテヌマであるこずは理解しおいたす。」INMA Europe グゞゎルツ・ピ゚ツォタ䌚長

INMA によれば、䌚議の参加者は、むノベヌションをもたらしたアップル、Google その他の䌁業を称賛し、出版者は顧客ずの関係を築き、サヌビスを向䞊させ、豊かなナヌザヌ䜓隓を実珟する方法に぀いお、倚くを孊ぶこずができる、ずいう点で䞀臎した。たた、タブレットは技術的にも、たたビゞネス゚コシステムずその仕組みに぀いおもただ未成熟な段階にあるず認識しおいる。したがっおテクノロゞヌ䌁業の間の競争を促進するこずがナヌザヌずコンテンツ䌁業にずっお重芁であり、その点で出版者は協力すべきであるず考えおいる。今回の欧州ミヌティングがステヌトメントで提唱しおいるのは以䞋の 4点。

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 11: E book2 Magazine v1_n23

10

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

ットフォヌムも攟棄

1. コンテンツに察する怜閲の排陀

2. フレヌムワヌクの透明性 3. 顧客ずの盎接の関係 4. 公正なビゞネスパヌトナヌシップ

ピ゚ツォタ䌚長(Grzegorz Piechota写真)は、䌚議を螏たえお次のようにコメントしおいる。「出版者の目ざすずころは、顧客にコンテンツぞのアクセスを劥圓な䟡栌で、圌らが遞ぶデバむスずプラットフォヌムで提䟛するずいうこずです。ですから、どんなプラしたいずは考えおいたせん。たしお倚くの利甚者に

䜿われ、決枈システムも敎備しおいるものは。敵察的な行動をずる前に、出版瀟はすべおのテクノロゞヌ・プロバむダヌ、プラットフォヌム・プロバむダヌ、ステヌクホルダヌずそれらが関係する団䜓ずの間で協議を蚈画しおいたす。」 ◆

INMA (International Newsmedia Marketing Association、本郚米囜ダラス)は、1930

幎に創立されたニュヌスメディアの経営者による囜際的な NPO で、倉革のためのベストプラクティスずマヌケティング・モデルに関する情報を提䟛しおいる。80 ヵ囜以䞊のメディア䌁業経営者玄 5,000 名が䌚員ずしお参加。C

(Chief)レベルの幹郚最高経営責任者を含むマヌケティング、広告、賌読、デゞタル、線集のトップを擁しおいる。

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 12: E book2 Magazine v1_n23

11

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

ANALYSIS

INMAがメディアずテクノロゞヌの察話を提唱 鎌田 博暹本誌線集長

INMA のロンドン円卓䌚議ではアップル批刀が枊巻いたが、もちろんアップルがメディアビゞネスの存立にかかわる基本を尊重するこずを期埅しおのこずだ。提蚀の内容を怜蚎し、りィルキン゜ン CEO のコメントを読めば、ニュヌスメディア産業がテクノロゞヌ䌁業ず協力し぀぀新しいビゞネスモデルを構築しおいくためのむニ

シアティブをずろうずしおいるこずが理解できる。アップルのケヌスはコンテンツずテクノロゞヌの関係が倉化するきっかけずなり、2011 幎はその転換点ずなるかもしれない。日本もこの流れに乗っおいきたい。

コンテンツビゞネスの尊重を求める

INMAの円卓䌚議で提唱された内容をたずめるず以䞋のようになる。

コンテンツに察する怜閲(の撀廃)蚀論の自由はメディアの存立基盀に関わる。テクノロゞヌ䌁業がデゞタル出版物の線集䞊の決定に関しお介入するこずは容認できない。欧州その他の諞囜で適法ず認められたアプリを拒吊するルヌルおよび行為を改めるこずを芁請する。

フレヌムワヌクの透明性アプリの開発は耇雑で費甚がかかる。テクノロゞヌ䌁業は、コンテンツ䌁業を含む開発者が開発をスムヌズに行える

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 13: E book2 Magazine v1_n23

12

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

よう、そのリ゜ヌスを䜿い芁件ず指針を分かりやすく説明すべきである。

顧客ずの盎接の関係出版者にずり顧客ずの関係ほど重芁なものはなく、(a)商品ずサヌビスを提䟛し、(b)䟡栌蚭定、商品構成などを柔軟に倉曎し、(c)商品、䟡栌、総合的䜓隓に察するナヌザヌの反応を知り、(d)それによっお商品、サヌビス、ポリシヌを改善し、(e)新旧の商品ずサヌビス、ポリシヌを顧客に説明するこずができなければ、それは維持できない。

公正なビゞネスパヌトナヌシップ出版者はこれが新興垂堎であり、事業の手法を開発し、その有効性を怜蚌するには時間が必芁であるこずを理解しおいる。こうした実践はパヌトナヌ間で広汎に議論されるこずによっお瀟䌚党䜓のものずなる。そこにはデゞタル垂堎の経枈性に関するテヌマも含たれる。プラットフォヌムが売䞊の 30%を城収するのであれば、出版瀟は新技術、商品、サヌビスぞの投資を行うこずは䞍可胜である。欧州では消費皎も加算されお 50%にもなるからだ。

「ニュヌスメディアはアップルを必芁ずしおいる」

NMAのアヌル・りィルキン゜ンCEOは 18 日のブログで、欧州䌚議のステヌトメントの背景を説明し、誀解ず玛糟を避けるためにナヌモアを持っお埮劙な陰圱を䞎えようずしおいる。

1. アップルずは亀枉を持っおいるが、回答は埗おいない。聞いた話ではアップルは出版瀟の反応に圓惑し、回答に苊慮しおいるらしい。

2. コンテンツ怜閲は欧州にずっお䞻芁な問題ずなっおいる。Android蚘

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 14: E book2 Magazine v1_n23

13

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

事やピンナップ写真を拒吊され「アメリカの䞀䌁業の基準を抌し぀けられるのは沢山」ず憀激しおいる。

3. アップルのポリシヌは、独自の CRM(賌読者管理システム)を持たない小芏暡なゲヌム開発者やメディア䌁業には必ずしも悪いものではない。しかし倧手はそうではない。

4. 囜によっおは定期賌読や宅配を䜿わない新聞も倚数ある。こうした新聞は読者の玠性に぀いおは関心がないから、アップルのポリシヌでも問題はない。

5. 出版者が読者ず関係を持たないケヌスは今回が最初ではなく、過去にはサヌドパヌティの流通䌁業に読者管理を委ねおいたこずもあり、囜によっおは珟圚も続いおいる。ただし、珟圚では出版瀟もこの流通モデルから必死で抜け出ようずしおいる。珟代ではずおも生き残れないからだ。

6. iTunesの音楜配信の堎合、アップルは商品管理を行う小売業者だが、ニュヌスコンテンツではコンテンツをサヌバに眮くわけでもなく、付加䟡倀の䜎い再販業者に過ぎない。

7. アップルに察しお蚀いたいこずは蚀うが、メディアニュヌス産業は、垌望をもたらしおくれたアップルを厇拝し、必芁ずしおいる、ずりィルキン゜ン䌚長は蚀う。「ロンドンの䌚議でも、参加者たちは口々にアップルを批刀し぀぀、iPad、iPhone、MacBook Airを䜿っおノヌトをずっおいた。」

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 15: E book2 Magazine v1_n23

14

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

メディアずテクノロゞヌのパヌトナヌシップぞ向け囜際的合意圢成を

INMA Europeのピ゚ツォタ(Grzegorz Piechota)䌚長は、䌚議を螏たえお以䞋のようにコメントしおいる。「出版者の目ざすずころは、顧客にコンテンツぞのアクセスを劥圓な䟡栌で、圌らが遞ぶデバむスずプラットフォヌムで提䟛するずいうこずです。ですから、どんなプラットフォヌムも攟棄したいずは考えおいたせん。たしお倚くの利甚者に䜿われ、決枈シス

テムも敎備しおいるものは。敵察的な行動をずるより前に、出版瀟はすべおのテクノロゞヌ・プロバむダヌ、プラットフォヌム・プロバむダヌ、ステヌクホルダヌずそれらの団䜓ずの間で協議を蚈画しおいたす。」

流石に䞖界のニュヌスメディアの代衚だけあっお、曞籍出版瀟に比べるず論理が明快で察応も鮮やかだ。アップルぞのチャレンゞャヌずしおGoogleが登堎したタむミングINMAの声明を参照を捉えお、「党関係者による協議」をニュヌスメディアがリヌドしお亀枉を開始し、産業の存続ず発展のための芁求を、時間をかけお実珟しようずいうもので、婉曲な衚珟ながら「最悪の堎合は攟棄するこずになるかもしれない」ず察抗手段も匂わせおいる。䌚議の雰囲気は「アップル糟匟」の声が枊巻いたずいうが、怒りや䞍平、泣き蚀ではなく、あくたで理性で目的を実珟しようずする政治力は、われわれも芋習うべきものだろう。

INMA の芁求は本誌も支持するし、瀟䌚的にも公正であるず認められる

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 16: E book2 Magazine v1_n23

15

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

だろう。ずするず、Google のほかにもコンテンツ偎に有利な提案をする䌁業が珟れ、アップルはしだいに䞍利になるだろう。メディア偎に「蚀論の自由」「競争の公正」「消費者の利益」ずいう倧矩があり、それがメディアビゞネスずくに新聞・雑誌の存立基盀に関わるからである。おそらくアップルは新しいモデルを提案しおくるず思われる。珟圚の恣意的な玄欟はメディアビゞネスに利益をもたらさない以䞊、ここで争うこずに意味がないからである。

もしかするず、アップルのケヌスはコンテンツずテクノロゞヌの関係が倉化するきっかけずなり、2011 幎はその転換点ずなるかもしれない。これたで、日本ではむノベヌションを掲げるテクノロゞヌ䌁業の「倧矩」が、メディア業界の耇雑な感情を封じおきたために、たずもな議論が行われおこなかった印象がある。「䞉省デゞ懇」でもプラットフォヌムの問題は「フォヌマット」の問題に集䞭しすぎおいた。フォヌマットは「顧客にコンテンツぞのアクセスを劥圓な䟡栌で、圌らが遞ぶデバむスずプラットフォヌムで提䟛する」ずいう倧矩に関わりがあるが、ePUB3 ずいう暙準が実珟する以䞊、われわれも瀟䌚的に劥圓な「ビゞネスモデル」の議論を進め、囜際的な合意圢成に参加する段階に移行すべきだろう。 ◆ 鎌田、02/23/2011

Tags: INMA, アップル, ニュヌスメディア, ビゞネスモデル, 定期賌読

関連蚘事

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 17: E book2 Magazine v1_n23

16

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

NEWS & COMMENTS

米独犁圓局がアップルの IAP条項に「泚目」

米囜叞法省(DoJ)ず公正取匕委員䌚(FTC)は、アップル補デバむスを䜿ったコンテンツ定期賌読サヌビスの提䟛を垌望するメディア䌁業ずの間の玄欟に関連しお予備的調査を開始した、ず 2 月 18 日の Wall Street Journal玙が䌝えた。アプリから倖郚サむトぞのリンクを犁止し、たた iTunesでの取匕を最優遇するこずを芁

求する内容いわゆる最恵囜埅遇が、䟡栌を䞍圓に拘束する可胜性があるためである。欧州委員䌚(EC)も「状況を慎重に怜蚎しおいる」ず衚明した。もちろん立蚌責任は圓局偎にあり、先は長い。

認定においお重芁な芁玠ずなるのが、「垂堎支配力の行䜿」あるいは「優越的地䜍の濫甚」ずいうこずだが、本件においお「垂堎」をどう定矩するかは簡単ではない。それによっおどのような「優越的地䜍」を持っおいるかは違っおくるからだ。玄欟は iOS を䜿ったアプリを察象ずしおいる。ここで垂堎が「モバむルアプリ垂堎」なのか、デバむス垂堎スマヌトフォンメディアタブレットなのか。iPhone のシェアは、スマヌトフォン垂堎党䜓の 2 割に満たず、iPad はシェア 8 割に近いが、ただ垂堎は揺籃期にあり、競争者が揃っおいないので評䟡の察象にならない可胜性がある。アップルは「優越的地䜍」など存圚しないず䞻匵するだろう。

DoJ/FTC が関心を持っおいるのは、WSJ の取材によればメディア䌁業の顧客を iTunesの決枈システムに集めお 30%の手数料をずる商法であるずいう。メディア䌁業は独自に販売するこずが出来るが、「最恵囜条項」が

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 18: E book2 Magazine v1_n23

17

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

あるので、iTunes での販売に 30%の手数料を䞊乗せするこずはできない。アップルは iOS デバむスiPod/iPhone/iPadのアプリをすべおの面にわたっお厳栌に管理しおおり、ナヌザヌは iTunes ストアから提䟛されたコンテンツしか商業的には利甚できない。もちろん、30%のマヌゞンが高すぎる、ず

いうこずもある。䌚員制音楜配信では、著䜜暩者ぞの支払いに加えお 30%を支払うずビゞネスモデルがほずんど成り立たなくなる。関係業界から匷い圧力を受けおいる圓局は、30%ずいうマヌゞンが過倧でないかどうかも調査するずいう。

アップルはこれたでに、アドビの Flash を䜿えなくしおいた件、Googleの広告を制限しおいた件でFTC調査を受け、昚幎 9月に玄欟を改蚂した。DoJはオンラむン音楜配信で 70%のシェアを持぀iTunes に関する調査を行っおいる。独犁法に抵觊するかどうかで調査を受けるのは、IT䌁業にずっおは成功者の勲章のようなものでもあるが、マヌ

ケティング的にも、経営的にも「法務」が倧きな意味を持぀こずで、長期化すれば損倱も倧きい。マむクロ゜フトもそうだったが、数癟人もの匁護士がい぀も䌚瀟を出入りしおいるず、創造的な雰囲気が薄れおいくからだ。圌らは玛争が長匕くこずを歓迎する。

アドビや Googleのケヌスは、Flashや Googleの広告(adMob)の浞透を喰い止めた圢になったので、想定内の戊術的退华であったかもしれないのだが、そのために Android の浮䞊を速めたように思われる。たたメヌカヌ

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 19: E book2 Magazine v1_n23

18

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

がメディアず広告業を兌業するずいう異垞さは、シナゞヌを生たない。そしお定期賌読サヌビスの䞀件では、埌発の Googleに思わぬチャンスをもたらした。Google はアップルの埌をフォロヌしお、倱策を埅぀こずで着実に前進しおいる。◆ 鎌田、02/22/2011

参考蚘事

Regulators Eye Apple Anew: Enforcers Interested in Whether •

Digital-Subscription Rules Stifle Competition, By Thomas Cantan and

Nathan Koppe, Wall Street Journal, 2/18/2011

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 20: E book2 Magazine v1_n23

19

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

NEWS & COMMENTS

B&N PubIt! が倧成功。店内むベントも開催

B&Nの自䞻出版サヌビスPubIt!は、10月のスタヌトから 4 ヵ月あたりで、11,000 の独立小出版瀟ず著者の支持を埗お、すでに 65,000ものE-Bookを発行した。この成功によっお同瀟はマヌケティングを匷化しおおり、新たにベストセラヌ・リストを敎備し

たほか、Nookナヌザヌのための店内E-Book立ち読みサヌビスRead In

Storeぞの登録も可胜にした。そしお実際の曞店でPubIt!の著者を招いお䜿い方をコヌチするむベント・シリヌズも開始した。同瀟のリリヌス

デゞタルず珟実、読者ず著者を結び぀ける

自䞻出版サヌビスは日本でも雚埌の筍状態だが、小出版瀟や著䜜者に䜿っおもらい、読者にも評䟡されお商業的に成功するずころたでいくのは簡単ではない。技術的な面より、サヌビス的な面で数倚くのチェックポむントがあり、抜けがあるず必ず倱敗するずいうものだ。出版者、著者、読者のそれぞれの立堎に立ったキメ现かさが䞍可欠なのだが、この皮のプロゞェクトに出版ビゞネス線集・制䜜・流通・販売のプロが揃っおいるこずはほずんどない。ビゞネスセンス、本に察する情熱、著者に察するケア(忍耐)などがないずいけないのだが、けっきょく出版瀟を立ち䞊げるのず倉わらない。䞭途半端だず、著者の期埅を裏切る結果ずなり、恚みを買っお死屍环々 ずいうこずにもなりかねない。

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 21: E book2 Magazine v1_n23

20

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

B&Nの PubIt!の成功は、いく぀もの関門をパスしお成し遂げたものだ。5月の発衚、10 月のサヌビス開始を経お、ラむブブックストアぞの展開ずなった。もずもず、著者を招いお各地でむベント講挔サむン䌚を開催しおいる実瞟があり、これはアマゟンにはない B&Nの匷味を存分に発揮するものずいえる。デゞタルコンテンツ担圓のテレサ・ホヌナヌ副瀟長は「PubIt!タむトルが早い段階で成功したこずを非垞に喜んでいたす。数癟䞇のお客様が PubIt!の著䜜者ず出版者からの新著を探すのを楜しみにしおいたす。」ず述べ、さらにこうコメントしおいる。

「PubIt!のむンストア・むベントは、デゞタルず珟実の読曞䞖界を䞀぀にするずいう Barnes & Nobleの戊略の䞀環です。本のフォヌマットがどうあれ、読者ず著者を結び぀けるこずの重芁性を認識しおいたす。そしおPubIt!の著者を私たちの店で支揎するために、さらに倚くのむベントを蚈画しおいたす。」◆02/24/2011

Tags: B&N, PubIt!, 米囜, 自䞻出版

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 22: E book2 Magazine v1_n23

21

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

NEWS & COMMENTS

米囜の出版界、12月は印刷本も奜調

米囜出版協䌚(AAP)は 2月 16日、2010幎 12 月床の出版統蚈倧手 14 瀟分の卞販売額を発衚し、E-Bookの

売䞊が前幎同月比 2.5倍匷(164%増)の 4,950䞇ドルずなったこずを明らかにした。2010幎党䜓では 4億 4,100䞇ドルに達し、2008幎から続く爆発的成長のテンポを維持し、電子化率は぀いに 8.3%ず、幎内に 1割を超えお 15%をうかがう氎準ずなるのが確実ずなった。党䜓のトレンドに぀いおの分析は、EBook2.0 Forumのほうで行っおいるので「数字から読み取る米囜の『電子曞籍元幎』」02/19、本誌では䞭身を簡単にみおいきたい。

2010 幎の印刷本は、䞻芁なカテゎリヌのすべおで若干の萜ち蟌みを瀺しおおり、ずくに児童向けハヌドカバヌの萜ち蟌み(-9.5%)が倧きい。最も垂堎が倧きい成幎向けハヌドカバヌは 5.1%枛少した。しかし、12月床の数字だけを芋れば、成幎向けハヌドカバヌは+23.1%ず奜調で、ペヌパヌバックも+4.5%、量販本も+14.6%ず、E-Book の圱響を感じさせない掻況を呈しおいた。たた児童・青少幎向けも+4.5%ず悪くない。したがっお2010 幎の萜ち蟌みは、必ずしも圚来型曞籍出版が衰退に向かっおいる兆候ず芋るこずはできない。印刷本はベストセラヌなどの「季節芁因」が働きやすいずいうこずが蚀えるように思われる。たた、高等教育(+7.8%)、初等䞭等教育(+3.2%)向けの本は、幎ベヌスではいずれも堅調で、専門曞(+5.0)も安定成長ずいえる。◆ 02/24/2011)

「アップルのIAP芏制がePUB3 ぞの移行を加速する!? 」、EBook2.0 Forum、02/22/2011

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所

Page 23: E book2 Magazine v1_n23

22

Vol.1, No.23, 2/24/2011 EBook2 Weekly Magazine ©2010-11 OTI, Inc.

©オブゞェクトテクノロゞヌ研究所