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巻頭言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ギャンブル問題に関する相談のパンフレットを作りました!・・・・・・・・・・・・ 令和元(2019)年度専門研修会について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 自殺対策担当者研修会 思春期関連問題研修会 精神科救急医療連携研修会 森田療法専門講座 情報コーナー 精神保健福祉センターの紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Vol.44 (通巻 236 令和2 (2020) 年6月発行 編集発行:栃木県精神保健福祉センター 329 - 1104 宇都宮市下岡本町 2145 - 13 Tel 028(673 8785 Fax 028(673)6530 この度、前所長の増茂尚志所長から、今回縁が あり令和2年4月1日より、天野が新所長となりま したので宜しくお願い申し上げます。 私事となりますが、出身は横浜です。前職は国 際医療福祉大学薬学部の教授として、10年間県北 (人生で現在3番目に長く住んでいます)で精神 神経薬理学の研究、教育(学生講義・学生指導) や診察(ここ3-4年は臨床中心でした)といった 方面の仕事をやってきました。それ以前も安田女 子大学薬学部(広島県)や広島大学医師薬学総合研 究科精神神経薬理学(医学部)に所属し、同様に研 究、教育や診察(地域の精神医療)といった方面 の仕事を中心にやってきました。 大阪の大学を卒業してから、京都、広島(途中 で2年ほど米国のミシガン州に留学)、栃木と住 む場所が変わってきましたが、ほとんどの人生を 研究・教育・診療の日々でしたので、行政の仕事 には全く関わったことがありません。そのため、 至らぬ点も多い若輩者かと思いますが、職員に支 えてもらいながら、精神保健福祉センターを盛り 上げていきたと思いますので、皆様今後とも宜し くお願い申し上げます。 さて、当センターは昨年度まで増茂尚志所長の 元、精神障害者保健福祉手帳の判定業務、自立支 援医療(精神通院)の審査業務、精神医療審査会 の審査業務、関係機関等への助言などの業務、デ イケア(スキルアップデイケア、スキルアップ Teens、P-デイなど)の業務、家族教室、各種専 門研修会、こころのダイヤルや精神科救急情報セ ンターの管理・精神医療審査会の事務の一部を担 う業務などと多岐にわたる仕事を行って参りまし た。 昨今の新型コロナウイルス感染症流行により東 京2020オリンピックが延期となり、日本のみな らず世界を巻き込んで大変な事態となっておりま す。当センターも新型コロナウイルス感染症に対 する対応・対策の一助なるようDPATの一員とし てもしっかりやっていく所存ですが、一施設では できることも限られますので、益々皆様のお力添 えを頂けますよう宜しくお願い申し上げます。 最初の巻頭言を通して皆様方にお願いばかりと なりましたが、今後とも、当センターの事業に関 しまして、御理解と御協力をお願い申し上げると ともに、皆様方の御意見を頂戴できれば幸いで す。 栃木県精神保健福祉センター 所長 天野 1

Vol.44 236...1 自殺対策担当者研修会 あ今年度は、令和元年12月11日(水)に当セン ター講堂にて実施しました。令和元年度末には、 県内全市の自殺対策計が策定されることを踏

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Page 1: Vol.44 236...1 自殺対策担当者研修会 あ今年度は、令和元年12月11日(水)に当セン ター講堂にて実施しました。令和元年度末には、 県内全市の自殺対策計が策定されることを踏

巻 頭 巻頭言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

報 告 ギャンブル問題に関する相談のパンフレットを作りました!・・・・・・・・・・・・ 2

令和元(2019)年度専門研修会について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

1 自殺対策担当者研修会

2 思春期関連問題研修会

3 精神科救急医療連携研修会

4 森田療法専門講座

情報コーナー 精神保健福祉センターの紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

Vol.44

(通巻 236)

令和2(2020)年6月発行 編集発行:栃木県精神保健福祉センター

〒329-1104 宇都宮市下岡本町2145-13 Tel 028(673)8785 Fax 028(673)6530

巻 頭 言

この度、前所長の増茂尚志所長から、今回縁が

あり令和2年4月1日より、天野が新所長となりま

したので宜しくお願い申し上げます。

私事となりますが、出身は横浜です。前職は国

際医療福祉大学薬学部の教授として、10年間県北

(人生で現在3番目に長く住んでいます)で精神

神経薬理学の研究、教育(学生講義・学生指導)

や診察(ここ3-4年は臨床中心でした)といった

方面の仕事をやってきました。それ以前も安田女

子大学薬学部(広島県)や広島大学医師薬学総合研

究科精神神経薬理学(医学部)に所属し、同様に研

究、教育や診察(地域の精神医療)といった方面

の仕事を中心にやってきました。

大阪の大学を卒業してから、京都、広島(途中

で2年ほど米国のミシガン州に留学)、栃木と住

む場所が変わってきましたが、ほとんどの人生を

研究・教育・診療の日々でしたので、行政の仕事

には全く関わったことがありません。そのため、

至らぬ点も多い若輩者かと思いますが、職員に支

えてもらいながら、精神保健福祉センターを盛り

上げていきたと思いますので、皆様今後とも宜し

くお願い申し上げます。

さて、当センターは昨年度まで増茂尚志所長の

元、精神障害者保健福祉手帳の判定業務、自立支

援医療(精神通院)の審査業務、精神医療審査会

の審査業務、関係機関等への助言などの業務、デ

イケア(スキルアップデイケア、スキルアップ

Teens、P-デイなど)の業務、家族教室、各種専

門研修会、こころのダイヤルや精神科救急情報セ

ンターの管理・精神医療審査会の事務の一部を担

う業務などと多岐にわたる仕事を行って参りまし

た。

昨今の新型コロナウイルス感染症流行により東

京2020オリンピックが延期となり、日本のみな

らず世界を巻き込んで大変な事態となっておりま

す。当センターも新型コロナウイルス感染症に対

する対応・対策の一助なるようDPATの一員とし

てもしっかりやっていく所存ですが、一施設では

できることも限られますので、益々皆様のお力添

えを頂けますよう宜しくお願い申し上げます。

最初の巻頭言を通して皆様方にお願いばかりと

なりましたが、今後とも、当センターの事業に関

しまして、御理解と御協力をお願い申し上げると

ともに、皆様方の御意見を頂戴できれば幸いで

す。

栃木県精神保健福祉センター

所長 天野 託

目 次

1

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1 はじめに

依存症については、従来、アルコールや薬物

といった物質依存に関する相談が長らく中核を

占めていましたが、社会環境の変化もあり、近

年はギャンブルやゲーム(ネット)等の行為依

存の占める割合も年々上昇傾向にあります。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(A

MED)による平成29(2017)年全国調査に

おいて、ギャンブル等依存症が疑われる者の推

計値は、過去1年間に限れば約70万人(成人の

0.8%)、生涯経験では約320万人(成人の約

3.6%)と推計されており、ギャンブル等依存症

は誰にでも起こりうる問題であることが分かり

ます。

2 近年の依存症に関する動き

平成28(2016)年に「IR推進法」が公

布・施行され、その中にギャンブル依存症対策

が盛り込まれたことで、従来以上に対策の強化

が急務とされました。

その後、平成30(2018)年に「ギャンブル

等依存症対策基本法」策定・施行、平成31

(2019)年に「ギャンブル等依存症対策推進

基本計画」策定と大きな動きを見せているとこ

ろです。

3 栃木県精神保健福祉センターの相談状況

ギャンブル問題を抱える人は全国的に増加傾

向にあり、その傾向は当センターの相談も同様

と言えます。

図1は当センターにおけるギャンブル問題の

相談対応推移です。対象者数及び支援数ともに

明確な増加傾向にあることが分かります。

また、令和元(2019)年度新規相談者の相

談内容に着目すると、図2のとおり「その他」

を除くと「ギャンブル」が22件と最も多く、割

合では全体の16.5%を占めます。

4 電子パンフレットの作成

既にお示ししたとおり、現在、ギャンブル問

題の相談需要は増加しています。その一方で、

相談に繋がった方から話を聞くと、「自分なん

かが相談対象者となり得るのか」、「初回相談

時にはとても抵抗を感じた」などと、依然、相

談に対するハードルが高いことが分かります。

そこで、ギャンブルの問題を抱えている方を

さらに具体的に相談に結び付けるための工夫が

必要と考え、電子パンフレットの作成に至りま

した(図3~図6)。内容は、ギャンブル等依

存症そのものについて理解を促すことに加え、

「適切な支援によって本来の自分を取り戻すこ

とができること」や「家族だけでも始められる

ことがあること」、「安心して話すことができ

る場所であること」など、相談ハードルを下げ

るためのメッセージに重きを置きました。

020406080100120140160180

0

5

10

15

20

25

30

35

支援数(回)

対象者数(人)

ギャンブル問題の相談対応推移

対象者数(人) 支援数(回)

2 4

1822

3

16 16

5

47

社会復帰

アルコール

薬物

ギャンブル

ゲーム

思春期

うつ・うつ状

摂食障害

その他

令和元(2019)年度

新規相談者相談内容別件数(件)

ギャンブル問題に関する相談の

パンフレットを作りました!

図1図2

2

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図3 図4

図5 図6

3

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5 具体的な支援

それでは、電子パンフレットを含め、ギャンブル

の問題を抱えた方々に当センターを知っていただ

き、相談に繋がった場合、どのような対応が考えら

れるのか、本人来所時の具体的な支援の一部を紹介

します。

現在、精神疾患の治療場面において認知行動療法

は広がりを見せており、本県においても、既に薬物

依存症に対しては認知行動療法による「薬物依存症

回復プログラム(Tochi-MARPP)」を提

供し、再乱用防止に効果を上げているところです。

そこで、ギャンブル等依存症に対しても、本人支援

に特化した認知行動療法的志向性を持つプログラム

を検討し、平成30(2018)年3月から「SAT

-G」(島根県ギャンブル障がい回復トレーニング

プログラム)を導入しています(図7)。

このSAT-Gは、基本的にはSMARPPを参

考としており、ワークブックを用い、全5回(+ア

ンコールセッション)の構成による個別面接を月1

回程度実施していくものです(図8)。

ギャンブルによる問題を全般的に対する相談対応

のみならず、より具体的に焦点を絞りプログラムと

して実施していくことで、本人がスムーズに支援を

受け入れることに寄与していると考えられます。実

際に、図1で示した、平成30 (2018)年度以降

の支援数の大幅な増加(継続支援)はSAT-G実

施によるところが大きいと言えます。

6 おわりに

依存症は、家族を始めとした周囲の人を巻き込む

ことが特徴と言われます。その中でもギャンブル等

依存症は、借金という経済問題が非常に強く表面に

現れます。このお金に関する問題は、人が生きる上

で切っても切り離せない問題と言えます。それが後

には生活の崩壊へと繋がる可能性を秘めています。

どの病気の治療も同じですが、早期発見・早期治療

に勝るものはありません。ギャンブル等依存症も早

期対応することができれば、問題の深刻化を防ぐこ

とができるものと考えられています。

今回作成した電子パンフレットによって、ギャン

ブル問題の相談ハードルが少しでも低くなり、今

後、問題を抱える本人及び家族が気軽に相談してい

ただけるようになることを期待します。そして、個

人に応じた適切な支援を提供することで、ギャンブ

ル等依存症対策の一環となればと考えています。

図7

図8

4

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1 自殺対策担当者研修会

あ今年度は、令和元年12月11日(水)に当セン

ター講堂にて実施しました。令和元年度末には、

県内全市町の自殺対策計画が策定されることを踏

まえ、「いのち支えるネットワークづくり~効果

的な自殺対策の実践に向けて~」の演題で、新潟

県立大学人間生活学部子ども学科准教授 勝又陽

太郎氏に御講演いただきました。

前半は、国立精神・神経医療研究センター精神

保健研究所自殺予防総合対策センター自殺実態分

析室でのご経験から、自殺関連統計データの適切

な活用法について、わかりやすく御説明いただき

ました。後半は、多岐にわたるフィールドワーク

の実績を基に、地域の実態に即した、具体的かつ

実践可能な取組のヒントを御提示いただきまし

た。

平成10年に急増した年間自殺者数ですが、国を

挙げての対策により、全国的にも本県においても

減少傾向が続いています。しかし、『いのち支え

る栃木県自殺対策計画』の基本理念にも掲げられ

ているように、『共に支えあい、誰も自殺に追い

込まれることのない“とちぎ”の実現』に向け

て、「誰にでも起こりうる身近な問題」であり

「防ぐことができる社会的な問題」である自殺に

対する認識を更に高め、こころのサインに気づく

ネットワークの強化を図りたいと思います。

2 思春期関連問題研修会

令和2年1月31日(金)、「自傷行為の理解と

対応」をテーマに前所長の増茂尚志が講話を、そ

の後10代の頻回自傷・未遂者対象のデイケアを担

当する作業療法士の稲村哲男がスキルアップ

Teensの説明を行いました。県内の医療機関の従

事者、市町の精神保健・母子保健担当者、児童福

祉・教育関係者等156名が参加しました。約半数

が学校関係者で、そのうち半数以上の44名は養護

教諭でした。現場で実際に対応している方が多

く、相談対応をどのようにしたらいいのかお困り

な様子が事後アンケートから分かりました。

報 告

令和元(2019)年度専門研修会について

講話では事例を挙げながら自傷行為が起こる

背景について説明し、「根性出して頑張れ」で

はなく、「生きるために自傷行為をしている。

自傷行為をやめろというのは死ねといっている

ようなもの」という理解を基本に、支援者は一

人で抱え込むのではなく複数で対応することが

強調されました。また、どうしてそうなったの

かについて本人が言葉で話せるようになること

を促し、価値判断せず、話せたこと、SOSを出

せたことを「よく話してくれたね」と伝えるこ

とが回復への望ましい対応であると説明があり

ました。

スキルアップTeensの紹介では、自傷行為で

はない対処方法を身につけてもらうプログラム

になっていて、マインドフルネスを中心として

感情調節スキル、対人関係スキル、辛さに耐え

るスキルを学んでいく内容であると説明があり

ました。

(具体的には以下のように説明)

「このプログラムは長谷川病院などで用いら

れているものです。当センターでは15歳以上

(中学卒業後)から50歳ぐらいの方を対象に毎

週スキルアップデイケア開催していますが(本

誌最終ページに掲載)、日中通学がある学生が

参加しやすいように長期休暇を利用したスキル

アップTeensを開催予定です。プログラムを通

して大事にしていることは『承認』です。『認

める』や『共感』とも少し異なって、本人が話

していることを『あなたの言ってる○○って

△△ということであってる?』などと質問をし

ながら本人が感じていることを言葉にしていき

ます。そして、本人が抱える感情や行動を『そ

の状況であれば当然そうなる』こととし、最終

的に『だからつらいんだね』と伝えることにな

ります。」

アンケートでは、「事例がわかりやすかっ

た」、「価値判断をしないことなど、生徒への

対応がよくわかった」、「自傷行為者と接する

時も少し余裕を持って対応できる」、「生徒だ

けでなく保護者への対応でも同じだと思った」

などの感想があり、支援の現場で即参考にでき

る内容の研修会でした。

5

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報 告

3 栃木県精神科救急医療連携研修会

精神科救急をめぐる身体科と精神科の連携推進

を目的として、年1回シンポジウムや講演会を開

催しています。より身近な圏域単位での連携の推

進のため、平成29年度からは圏域単位で研修会

を実施することといたしました。

今年度は、県南圏域を対象とし、自治医科大学

医学部救急医学講座教授・救命救急センター長の

間藤 卓先生を講師として、講話及びグループで

の意見交換を実施しましたので、内容の一部を紹

介いたします。

間藤先生からは「精神疾患合併症地域連携体制

の構築のために~精神疾患合併症観察基準(案)

の活用」について御講話いただきました。

【講話概要】

救急隊は「栃木県傷病者搬送・受入実施基準ハ

ンドブック」により、傷病者の観察、医療機関の

選定を行い、患者を搬送している。身体疾患の搬

送ルールの基準は従来から掲載されているもの

の、精神疾患についての基準はハンドブックには

掲載されていなかった。平成27年度に栃木県精

神科救急医療システム連絡調整委員会に身体合併

症課題検討部会が設置され、傷病者搬送に関する

考え方が取りまとめられた。さらに精神疾患合併

症観察基準(案)(図1)が作成され、平成31

年度から試行的に実施している。精神疾患合併症

観察基準(案)については、1年経過後に見直し

を行うことを前提に案のまま掲載している。

精神疾患合併症観察基準(案)の作成までに

は、各分野から様々な課題があげられた。救急隊

からは「身体症状と精神症状の判断が難しい」

「精神疾患があると受け入れ先がなかなか決まら

ず現場滞在時間が長くなる」、一般救急医療機関

からは「精神疾患を合併していると三次救急に搬

送されることが多い」「身体症状処置後の受け入

れ先がない(精神科単科病院では少しでも身体症

状があると受け入れてくれない)」、精神科医療

機関からは「精神科単科では身体治療の対応は難

しい」「身体症状が悪化した際は身体科が受け入

れてほしい」、精神科併設病院からは「身体およ

び精神疾患合併症がすべて総合病院へとなると機

能しなくなる」など、各分野からの課題をしっか

り検討し、今回の(案)が作成された。

精神疾患合併症観察基準(案)は救命救急セン

ター、二次救急医療機関、警察、精神科救急情報

センター等へ状態に応じて連絡するようになって

おり、救急隊が判断できるように書かれている。

この基準を関係機関が理解することが必要であ

る。また、精神疾患合併症観察基準(案)では判

断できない谷間の部分も含め、各消防で実施され

ている事後検証会での振り返りが大切である。小

山芳賀地域分科会事後検証会は月1回開催し、毎

回精神疾患の事例についても検討している。この

積み重ねが大切であり、データとして示す事を予

定している。今後、(案)が外れ、救急隊がこの

システムでトリアージしやすくなることを期待す

る。

図1

6

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報 告

講話後、「講話についての感想」、「業務の中

での連携に関する困りごと」、「関係機関連携に

ついての課題及び解決に向けた提案」等につい

て、グループで意見交換を行いました。

【各グループからの主な意見】

・未だに救急搬送の際に精神科既往があると難色

を示す身体科の医療機関があり、逆に精神科医療

機関は身体合併症があると苦手意識が強い。

・出口問題での課題は続いている。

・精神疾患のある方の搬送には時間がかかる。平

日日中に精神科かかりつけ医に連絡しても断られ

てしまう。かかりつけ医に対応してもらえるよう

周知徹底が必要である。

・精神疾患合併症観察基準(案)に書かれている

ものは判断に苦労しない。それ以外の谷間の部分

の問題は切実である。

・精神・身体症状がそれぞれ軽い場合が問題であ

り、119番があると症状が不安だけでも救急隊は

必ず出動する。問題ケースは地域関係機関でケー

ス会議を行っている。お互い困っているケースに

ついては協力して対応することが必要。依頼があ

れば出席したい。

今回の研修会では、栃木県立岡本台病院 増井

院長に御協力いただき、オーディエンス・レスポ

ンスシステム※でのアンケート調査を実施しまし

た。

※参加者の意見をリアルタイムに集計できるシス

テム

【会場内での調査結果概要】

Q1 精神疾患合併症観察基準(案)を知ってい

ますか。

回答:知っている40% 聞いたことがある25%

知らない34%

Q2 精神科救急情報センターを知っています

か。

回答:知っている81% 聞いたことがある9%

知らない9%

Q3 救急告示医療機関と精神科医療機関の連携

は図れていると思いますか。

回答:連携できている54%

連携できていない45%

研修会を開催した結果、精神疾患合併症観察

基準(案)や精神科救急情報センターを知らな

い関係者がまだまだ多く、基礎的な情報に関す

る周知が必要と思われました。

グループでの意見交換では多職種から様々な

意見が出されましたが、話し合われた内容は今

までに出されている課題が繰り返されている印

象を受けました。

地域合併症連携体制の構築のためには、身体

科と精神科の課題を相互にわかり合うことが重

要と思われますが、連携できていないと回答し

た研修参加者が45%と多い状況でした。年1回

の研修会でできることは限られていますが、多

職種がそれぞれの意見を本音で語り、顔の見え

る関係を作り上げるための研修会として継続が

必要と思われました。

また、救急領域で定期的に検証できる場とし

て消防各地域で事後検証会が開催されていま

す。小山・芳賀地域で実施しているように他地

域でも積極的に精神疾患に関する検証をしてい

ただき、そこに行政も入り、精神疾患ケースに

関する情報交換を図る必要があると思われまし

た。既存の場を有効活用し、システムの合間を

埋めるためにも、行政サイドとして積極的に参

加したいと思います。

7

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報 告

4 森田療法専門講座

当センターでは、昭和50年頃から「森田療

法」の1つである日記指導が行われ、グループ

療法として「生活の発見会」を発足させた経緯

があり、継続して森田療法の「普及啓発」と

「専門講座」を実施してきました。今年度は東

京慈恵会医科大学附属柏病院の川上正憲医師を

講師として「森田療法専門講座」を開催しまし

たので、内容の一部を御紹介します。

講義「森田療法の応用を考える-高齢女性の

抑うつ、自己愛を視点として-」という内容

で、1部で「総論」、2部で「症例編」として

講話をいただきました。

森田療法は「絶対臥褥期」や「日記」といっ

た漠然としたイメージがありましたが、それら

は一つの「手段」であり、「あるがままをその

まま受け止めていく人間肯定的なまなざし」が

森田療法であるということを学ぶことができま

した。

具体的には「『生の欲望と死の恐怖』は同一

の事柄の表裏両面観である。」と話があり、

「(生の)欲が強いほど不安は強まる」との説

明を丁寧にいただきました。「不安を欲望に置

き換える。欲望があるから不安があるというま

なざしで人間をどう見るか」がポイントであ

り、「森田(療法)的には結果よりもプロセス

が大事。不安があっても取り組めたあなたが立

派であると伝える」とのこと。何かを「した

い」ならば「不安があって当たり前のことであ

る」と思えることは、とても暖かみを感じまし

た。

2部の「症例編」では「自己愛くさい」プラ

イドが高い80歳代女性に対してどのような姿

勢で診療に当たっていたのか、どのような経過

で治療が進んでいったのかを、講師の詳細なこ

ころの動きとともに御報告いただき、森田療法

の優しさと、講師のあたたかい人柄が感じられ

る内容でした。

質疑応答も活発に行われ、その回答の中で、

森田療法を現代人に合うような工夫としては、

「ほめるところを見つけてつないでいく。でき

ている事実を取り上げて共有する。自己愛の人

は根底に人間不信があるので、森田の人間肯定

的はまなざしで関わることが大切」とまとめて

いただきました。

今話題となっている「マインドフルネス」も、

森田療法と同様に「『今ここ』での体験に気づ

き、それをありのままに受け入れること」とあり

ます。「とらわれに気づき、それをありのままに

感じ受け入れること。受け入れることがありのま

まにつながっていく。何か行動をしようとする時

に起こる葛藤は『表裏両面観』であり必然なこ

と。葛藤に関しては“不問”で目の前の必要なこ

とを自分の素直な気持ちで活動(作業)に入り込

むことが大切であること」を今回の講話で学ぶこ

とができました。

参加された方々のアンケートの中でも「わかり

やすい説明でとても良かった」、「日々の業務の

中でも関わり方などで参考となった」、「日常的

にも置き換えて考える事ができた」などの感想が

あり、参加者にとっても主催者にとっても様々な

気づきを得られました。

左:講師の川上正憲医師

右:精神保健福祉センター前所長増茂尚志医師

8

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☆御家族等を対象としたグループです。

名    称 開催日・期間、開催時間など 対象となる方の概要

1薬物依存を家族と共に

考える会「ガイドポスト」毎月第2月曜日

(開催時間)13:30~15:30薬物乱用・依存症者の家族

※1 グループ活動の参加を希望される方は、まずは、お電話での問い合わせをお願いします。

※2 開催日等については、事業等の関係で変更になることがあります。

2摂食障害者家族教室「ベルヴィー」

毎月第3月曜日(開催時間)13:30~15:30

摂食障害対応で悩んでいる家族

3頻回自傷・未遂者家族教室「スキルアップ家族教室」

年3回(開催時間)13:30~15:30

頻回自傷行為、自殺未遂等の経過をもつ方の家族

令和2(2020)年度のグループ活動(普及啓発)の紹介でいとっち

電話による相談をご希望の方は・・・

こころのダイヤル☎ 028-673-8341

対応時間 平日9:00~17:00

(土日、祝祭日、年末年始を除く)

※対応時間が変更となる場合があります

夜間休日の精神科救急医療に関する相談は・・・

精神科救急医療相談電話☎ 0570-666-990

受付時間 平日17:00~22:00

土日祝日10:00~22:00

やしお会は、こころに病を持つ人たちを抱える家族の会です。その家族による悩み相談と本音で包み隠さず

話し合う家族同士の交流会を通して、八方塞がりの状態から一歩踏み出しませんか。

相談及び交流会ご希望の方は、どうぞお気軽にお申し込みください。相談は無料です。

【各地区やしお会のご案内】

・宇都宮やしお会 TEL 028-626-1114 ・佐野やしお会 TEL 0283-24-9880

(宇都宮市保健所内) ・鹿沼やしお会 TEL 080-6748-9199

・日光地区やしお会 TEL 0288-22-7438 ・クローバーハーツ癒しの夢工房 TEL 090-4242-0147

・小山地区やしお会 TEL 0280-57-2673 ・ほっとスペースひだまり家族会 TEL 028-666-8693

・足利やしお会 TEL 0284-64-9770 ・ピアサポートやしお TEL 028-673-8404

本部相談会 日 時:毎週水曜日 10:00~15:00

会 場:栃木県精神保健福祉センター2F やしお会事務局

お問い合わせ:028-673-8404

栃木県精神保健福祉会(やしお会)

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