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応用経済学入門
(1)講義概要と講義計画
(2)公共経済学入門
講義概要
経済学科1年生を対象に応用経済学分野について入門的な解説を行う
2年生以降での専門科目選択の指針とする
当該分野の概要
ミクロ・マクロ経済理論が各分野でどのように応用されるか解説する
各分野での「前提科目」について説明する
講義計画
各専門分野について、講義担当者からオムニバス形式で講義を行う
講義日程は以下のとおり
都合により変更されることがある
教科書:なし
参考文献:各講師が紹介する
評価方法:出席と学期末レポートの総合評価
講義日程
10月4日 須賀晃一 (全体説明,公共経済学)
10月11日 栗山浩一 (環境経済学)
10月18日 白木三秀 (社会政策)
10月25日 清水英彦 (社会保障論)
11月1日 村上由紀子(労働経済学)
11月8日 堀内俊洋 (産業組織論)
11月15日 牛丸聡 (財政学・地方財政論)
11月22日 森映雄 (金融論)
11月29日 清野一治 (国際経済全体、
国際ミクロ・マクロ経済政策)
12月6日 石井安憲 (国際貿易理論)
12月13日 堀口健治 (農業経済学)
1月10日 深川由起子(開発経済学)
1月17日 上田貴子 (現代経済政策分析)
学期末レポート課題
「この講義を受講して,経済学入門Ⅰ・Ⅱで学んだ知識を,今後の学習にどのように生かそうと考えたか。」
A4ワープロ2枚(1500~2000字)+表紙, 学期末に学部事務所学務係に提出。
2006年度「応用経済学入門」世話人連絡先:
須賀晃一 ([email protected])上田貴子 ([email protected])
(各講義の内容については、各先生のオフィス・アワー等をご利用下さい。)
公共経済学 内容:個人的合理性と社会的合理性の対立を解明することから始め,市場の失敗の解消や制度設計のために要求される正義原理を主題として,公正な社会経済システムの編成原理について検討する
配当学年:3,4年 前提科目:経済学入門
事前の履修が望ましい科目:ミクロ経済学α,β,経済政策原理
同時履修が望ましい科目:環境経済学,社会保障論,政治経済分析
講義形態:週2コマ(4単位) 成績評価:学部の規定する相対評価による
公共経済学への入門
参考文献
緒方隆・須賀晃一・三浦功編
『公共経済学』勁草書房
スティグリッツ『公共経済学』東洋経済新報社
土居丈朗『入門 公共経済学』日本評論社
井堀利宏『ゼミナール公共経済学入門』
日本経済新聞社
公共経済学とは
市場の成功と失敗
厚生経済学の基本定理
I. 完全競争均衡配分はパレート最適(効率的)である.
II. どんなパレート最適(効率的)な配分も,初期状態の適切な変更により完全競争市場を通じて達成できる.
基本定理の解釈
市場メカニズムがうまく機能するように注意すればよい
ところが現実には 社会資本・公共財
外部性・不確実性
財政・税金
政府の規制
市場の失敗 普遍性の欠落
所有権や使用権が設定できないため,取引が不可能になってしまう財(大気や自然環境など)
内在的欠陥 凸環境・安定性など,市場の有効な作動を保証する諸仮定が満たされない場合
i) 収穫逓増・費用逓減 ii) 外部性 iii) 公共財 iv) 不確実性 v) 異時点間の資源配分(将来財)
機能障害:不完全競争 外在的欠陥
所得分配の不公正 市場:機能的分配
公共経済学のテーマ
どのような公共財,非私的財をどれだけ,どのように,誰のために生産するか.その費用は誰がどれだけどのように負担するか.
公共財・非私的財に関する資源配分の問題,技術選択の問題,分配の問題を扱う.
市場に任すことができないために生じる種々の問題(配分のメカニズム,費用負担方式,分配の評価基準など)を解決するという特殊な配慮が必要になる.
経済問題
(1)何をどれだけ(資源配分の問題)
(2)どのように(技術選択の問題)
(3)誰のために(分配・再分配の問題)
生産するのか
↑↑
稀少性
(有限の資源 vs無限の欲望)
私的経済(市場経済)
所有権の構造と需給調整の方式に依存 所有構造:私有と公有
需給調整方式:市場と計画
資本主義経済=私有(私的所有権制度)に基づく市場メカニズム
価格の役割 i)情報の伝達
ii)需給の調整
公共経済(非市場経済)
市場メカニズムを補う他の方法が必要1.需給調整・・・選挙を通じた需要顕示
政府(公企業など)による供給2.所有構造・・・私有・共有・国有
財によってさまざまな形態3.費用負担・・・租税・料金・社会保険
財に応じた費用負担原則
(cf. 罰金・課徴金)↓↓
制度設計の問題
社会的意思決定とは
人々の意思を集約する
市場(価格)
選挙・投票
私的経済と公共経済の差異
私的経済(市場経済)⇔公共経済(非市場経済)
自立的合理的個人⇔ 組織・集団
自動調整 ⇔ 意図的調整
投票のパラドックス
投票による社会的意思決定
(単純多数決投票)
a, b, c 3人の個人x, y, z 3つの選択対象3人の選好(価値判断):
Ra; x y z
Rb; y z x ⇒ 循環が発生
Rc; z x y
社会的選択(社会的意思決定)の問題
個人を離れて社会・集団は存在しない
社会的意思決定は個人の価値判断に依存
民主的な集計・集約の問題
↓↓
個々人の価値判断を集計する社会的意思決定のルールは存在するか?
「望ましさ」の基準
(1)効率性(パレート最適性・パレート原理) (2)公平性・公正・正義 (3)情報の最小性 (4)個別合理性(参加すると得をする) (5)誘因両立性(嘘をついても仕方ない.正直は善)
(6)権利・自由の尊重
望ましいルールの存在可能性
(1) 民主主義的な社会的意思決定のルール
(2) 望ましい性質i) 広範性
ii) パレート原理(パレート最適性)
iii) 非独裁制
iv) 無関連対象からの独立性
↓↓
これらの条件を同時に満足する社会的意思決定のルールは存在しない
外部性(外部効果)の定義
外部性(技術的外部性)とは ある経済主体の活動が他の消費者の効用関数,他の企業の生産関数に対して,市場を経由しないで直接に与える影響
大気汚染,水質汚染,煤煙など
市場の普遍性が満たされない
外部性による市場の失敗 外部性はそれを目的とする活動が存在しない,すなわち他の活動に付随して生じる
市場を経由せず取引されない
その効果・影響そのものに対して所有権が設定されていなかったり,責任の所在が不明確
消費に伴う外部性(1)
外部不経済の例
2人の共同生活者(A,B) A:喫煙者 B:非喫煙者 Aの喫煙による限界効用は逓減 Bの受ける限界不効用は逓増
タバコの限界費用=一定
EE’
C
D
0N F’ F 0 N
MN’
M’
Aの限界効用 Bの限界不効用
本数 本数
G
CG:個人Aの限界効用曲線 NM:個人Bの限界不効用曲線 DE:私的限界費用曲線 点E:個人Aの効用最大化 CGとDEの交点 私的限界便益=私的限界費用
DN’M’:社会的限界費用曲線 点E’:社会的便益の最大化 DN’M’とCGの交点 社会的限界便益=社会的限界費用
消費に伴う外部性(2)
外部経済の例
教育サービス 個人Aの消費する教育サービス 社会の受け取る外部便益
E E’
C
D
0F’F 0
N
M
Aの限界効用
社会の限界効用
教育 教育
G
N’
N’G:社会的限界効用曲線 私的限界効用+限界外部便益=社会的限界便益
点E’:社会的便益の最大化 N’GとDEの交点 社会的限界便益=社会的限界費用
いずれの見方でもよい
私的便益と社会的便益の区別
私的費用と社会的費用の区別
外部性の対策
外部性の内部化
市場の創設 → 自発的交渉
コースの定理
課税・補助金
ピグー的課税・補助金政策
市場の創設
権利賦与の問題
喫煙の例
①個人Aに喫煙権があるケース 個人Bは個人Aに対価を払って喫煙をやめてもらう Bが不効用の減少に見合う対価を払うところで均衡②個人Bに嫌煙権があるケース 個人A は個人Bに対価を払って喫煙させてもらう Aが不効用の増加に見合う対価を払うところで均衡
E
E’
C
D
0N F’ F 0 N
MN’
M’
Aの限界効用 Bの限界不効用
本数 本数
G
HD’
Aの喫煙権 → Bへの対価要求①
E
E’
C
D
0N F’ F 0 N
MN’
M’
Aの限界効用 Bの限界不効用
本数 本数
G
HD’
Bの嫌煙権 → Aへの対価要求②
加害者,被害者いずれの側に権利が与えられても,交渉の結果はパレート最適になる
制度設計の基本命題
取引費用の非存在
コースの定理
ピグー的課税・補助金政策
外部性に見合う税金の賦課 新たな限界費用=従来の限界費用+税金 最適行動の変化
パレート最適の実現
外部性減少に見合う補助金の提供 補助金=機会費用の増加
新たな限界費用=従来の限界費用+補助金 パレート最適の実現
分配上の効果はまったく逆
E
E’
C
D
0N F’ F 0 N
MN’
M’
Aの限界効用 Bの限界不効用
本数 本数
G
HD’
S S’
税金・補助金 → 限界費用曲線の上方シフト