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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 日本語を活用した英語プロソディ指導 著者 Author(s) 軽尾, 弥々 / 磯田, 貴道 / 大和, 知史 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸大学国際コミュニケーションセンター論集,14:14-23 刊行日 Issue date 2017 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI 10.24546/81010108 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81010108 PDF issue: 2021-07-31

Kobe University Repository : KernelKerr (2014)が指 摘するように、学習は既有の知識をもとにして新しい知識を獲得する過程であり、新たな言語の知識を獲得

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le 日本語を活用した英語プロソディ指導

著者Author(s) 軽尾, 弥々 / 磯田, 貴道 / 大和, 知史

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学国際コミュニケーションセンター論集,14:14-23

刊行日Issue date 2017

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/81010108

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81010108

PDF issue: 2021-07-31

軽尾 弥々 磯田 貴道 大和 知史 日本語を活用した英語プロソディ指導

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日本語を活用した英語プロソディ指導i

軽尾 弥々1 磯田 貴道2 大和 知史3

1.はじめに

コミュニケーションにおけるプロソディの重要性は認識されているが、強勢、リズム、イントネーションなどを

包含した多面的な音声現象であり、また文脈による可変性が大きいため、指導のための枠組みや具体的な

指導方法が提供されているとは言い難い。こういった状況に対し、筆者らはこれまでプロソディ指導の枠組と

なる 3 つの原則を提案し、指導方法の開発を行ってきた。

本研究ノートでは、まず、英語プロソディ指導は、強勢、リズム等の個別要素を関連付けて捉えた上で行う

ことが必要であるとし、そのために「プロソディ指導における 3 つの原則」を活用することを提案する。その後、

原則を活動やタスクを開発する際、英語音声の特徴の説明やタスクに、学習者の日本語で持っている感覚と

の結びつけをできるようなものが必要であると主張し、具体例を報告する。さらに、第一筆者の勤務校を例に

とり、そこでの活用例を紹介することで、さまざまな教育現場における応用可能性を提示したい。

2.発音指導の現状と学習者の抱える問題点

2.1 発音指導の現状とプロソディ指導の必要性

Grant (2014) がまとめているように、現在取られている発音指導のアプローチにおいて、学習者の目標と

して英語母語話者に近似することではなく明瞭性(intelligibility)を高めることが設定され、取り上げる音声要

素として、分節音だけでなくプロソディの要素を取り込む必要性があること、また発音を単独のカリキュラムと

して位置づけるのではなく、他の技能や授業内容と統合させて取り入れていく必要がある(統合の例では、

Jones (2016)が挙げられる)。しかしながら、プロソディは分節音よりもコミュニケーション上の重要性は高いな

がらも、強勢やイントネーションといったプロソディを構成する音声学的側面は、分節音に比べて指導が困難

である(Dalton & Seidlhofer, 1994)。

ベネッセ教育総合研究所(2016)の「中高の英語指導に関する実態調査 2015」によれば、指導方法・活動

内容として「音読」や「発音練習」を「よく行う」(中 88.2%、高 79.8%)・「ときどき行う」(中 9.9%、高 14.9%)と

回答しており、発音指導が行われているかのように見うけられるが、発音指導の大半が新出単語導入などに

際しての Listen & Repeat での練習や、音読も教員や音声について読む形式であることが多く、上述のアプロ

ーチが反映されていないのが実態ではないであろうか。音声学や発音指導に関する訓練が不足しており、

授業で発音を扱っていないという調査結果も一方では存在する(河内山 ほか, 2011; 柴田 ほか, 2008)。

1 神戸大学附属中等教育学校 [email protected] 2 立命館大学文学部 [email protected] 3 神戸大学国際コミュニケーションセンター [email protected]

軽尾 弥々 磯田 貴道 大和 知史 日本語を活用した英語プロソディ指導

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2.2 日本人英語学習者の英語プロソディの問題点

日本人英語学習者の英語プロソディの問題点としては、語強勢や文強勢、核配置などが報告されているが

(南條, 2010; 斎藤・上田, 2011; 渡辺, 1994)、中でも、松坂(1986)は、プロソディにおける「日本人英語学習

者が注意すべき 4 点」として、次のようにまとめている。

1. 強形、弱形を使い分け、文強勢を自然なものにすること。

2. 文強勢と抑揚とちぐはぐにならないようにすること。

3. 音調核の位置を間違えないようにすること。

4. 下降調では、自分の声域のもっとも下まできちんと声を下ろすこと。日本人は降りきらぬうちに

声門 閉鎖により発話をとめてしまいがちである。(p.176)

このような課題点を解決するような指導や活動が求められるが、それは単にここに挙げられる強勢、抑揚、核

の位置などを個別に指導すればよいというものではない。松坂(1986)の挙げる課題点を見ると、強勢・リズム・

イントネーションなど、それぞれの項目別に配列されて提示されがちな英語プロソディの各要素が相互に関

連し合っていることが分かる。こうした要素を interrelated system として捉えて指導する必要があることは他の

研究者からも指摘されている(Gilbert, 2008; 2012; 2014; Goodwin, 2014; Rogerson-Revell, 2011)。そのため、

強勢、リズム、イントネーションなどプロソディを形づくる音声学的特徴のなかから学習上重要な要素を取り上

げ、それらの要素が互いに関連してひとつのシステムとして捉えられ、かつ平生の授業における指導に活用

できる枠組が必要である。そこで、こうした課題を解決する一助として、筆者らは次節に見られるような3つの

原則を提案することとした。

3.プロソディ指導の方策と日本語の活用

3.1 プロソディ指導における3つの原則

音節、語強勢、文強勢、イントネーションなどの複合的な現象であるプロソディを、特に日本語を母語とす

る学習者に対して指導する上での枠組みとして、筆者らは次のような 3 つの原則を提案している。

1. 母音のあるところに拍がくる。

2. 拍が2つ以上になれば、強弱をつける。

a. 語強勢の形を確認

b. 弱は曖昧に早く

c. 強がおよそ等間隔でリズムを形成

3. 強い拍が複数になれば、その内の1つを目立たせる。

a. 一番目立つ語が、音調核

b. 原則は、イントネーション句の最後の内容語

c. そこでピッチを大きく変化させる

d. 別のところに来るということは意図がある

原則のそれぞれについての音声学的背景については大和(2016)を、原則1の音節構造、原則2の強勢、原

則3の核配置の活動例や原則の関連性については、大和・磯田(2015)、磯田・大和(2016) を参照されたい。

3.2.日本語の活用

外国語教育の歴史的変遷を見ると、学習者の母語を用いた指導は適切ではない、または有害であるとする

軽尾 弥々 磯田 貴道 大和 知史 日本語を活用した英語プロソディ指導

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向きがあり、排除すべきという考え方が多かったが、近年それが見直され、学習者の母語を用いることの有効

性を理論的に考察する動きが活発になりつつある(例えば Cook, 2010)。また、母語を活用する指導方法の

提案もなされている(Duff, 1989; Deller, & Rinvolucri, 2002; Kerr, 2014)。

外国語学習において母語を活用することの利点のひとつに、参照点としての役割がある。Kerr (2014)が指

摘するように、学習は既有の知識をもとにして新しい知識を獲得する過程であり、新たな言語の知識を獲得

するために、学習者の既有の言語知識、すなわち母語の知識を新しい知識への橋渡しに用いることで学習

を促進する利点がある。例えば、母語と対象言語を比較して、共通点や相違点を知ることができるように、母

語の知識を足掛かりに新たな言語知識を獲得することができる。

このような母語を足掛かりとした指導は、語彙や文法に関するものが多くみられるが、音声面、特に本稿の

テーマであるプロソディの指導においても、この参照点としての母語の役割が欠かせないと考えられる。学習

者にとって未知である英語のプロソディを効果的に指導するためには、まず母語での感覚を意識に上らせて、

プロソディの重要性やコミュニケーションにおける役割を理解させることが必要であり、その上で英語のプロソ

ディの諸側面と結びつけることで英語のプロソディの機能を身につけることができるものと考えられる。

4.指導方法・活動の提案

日本語(母語)を活用した英語のプロソディの指導方法を紹介する。タスク開発にあたっては磯田(2010)を

参考に、テキスト本文を活用できることを念頭に置いている。それぞれの指導方法がどの原則に該当するか

を合わせて括弧に示す。

a) わざと変に言う(原則 1、 2)

語、フレーズ、文などを例に用い、日本語を英語らしく、あるいは英語を日本語らしく発するなど、通常とは

異なる言い方にすることで、音節、強勢、イントネーションなどの違いを体感する方法である。

音節の違い

英語をカタカナ発音にする。余計な母音を入れる。

strike → su to ra i ku

強勢・イントネーション

① 英語の語や文を例に挙げ、(古い)ロボットの不自然な調子、またはお経の調子で読む。つまり、強勢、イ

ントネーション、thought group の区切りのポーズなどをなくした平坦な調子で読む。その後、正しく読む。強弱

をつけると、声の高さが変化したり、長さが変化していることを理解させる。

② 日本語を英語の強勢をつけて読む。強勢があるところを長くし、ないところを短くあいまいに言う。

こんにちは → こにーちは

b) 定型詩の感覚(原則 2)

日本語では俳句などの定型詩のように、七五調がピタッとはまる感覚があるが、それは拍の数で決まること

を確認する。一方、その感覚は英語では強弱のパターンで決まるものであり、英語のリズムが強弱の繰り返し

で作られることを知る。例えば、俳句を一つ例に挙げる。

<例> さみだれを あつめてはやし もがみがわ

sa mi da re wo / a tsu me te ha ya shi / mo ga mi ga wa

一方、英語の定型詩は拍の数ではなく、強弱のパターンで決まる。英語の「ピタッとはまる」感覚は強弱の

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繰り返しにあり、すなわちリズムをとる感覚の単位は、拍ひとつひとつではなく、強弱の組み合わせにある。俳

句や短歌と英詩を比較することで、両言語のリズムのとり方の違いを体感させたい。

<例> ● . ● . ● . ●

London Bridge is broken down, ● . ● ● . ●

Broken down, broken down,

(中略) ● .● . ● . ●

Build it up with wood and clay ● . ● ● . ●

Wood and clay, wood and clay

c) 句読点、文節(原則 3)

thought group の役割や重要性について知るために、日本語の句読点や文節の感覚と結びつける。句読点

や文節の区切りを多くしたり少なくしたりして、分かりやすさを考えさせることで、英語でも同様に区切りが重

要であることを指導する。

日本語では句読点を打つ場所は文節であるが、文節を意識させるためには句読点の代わりに「ね」、「さ」、

「よ」を挿入して、意味の区切りがあることを意識させることができる。区切れる箇所はたくさんあるが、多すぎ

ても少なすぎてもよくない。

<例> 昨日わたしは家で勉強をしましたがすぐに寝てしまいました。

1.昨日わたしは家で勉強をしましたが、すぐに寝てしまいました。

2.昨日、私は、家で、勉強を、しましたが、すぐに、寝てしまいました。

3.昨日「ね」わたしは「ね」家で「ね」勉強を「ね」しましたが「ね」すぐに「ね」寝てしまいました。

1と2、3を比較すると、1のほうが分かりやすい。2や3のようにたくさん読点や「ね」を入れると理解しにくくなる。

また例のように、まったく区切らないのも分かりづらくなる。このようなことを意識したうえで、英語でも同様に細

かく区切りすぎたり、区切らずに長くなると理解しにくくなるので、ある程度の長さのまとまりに区切ることが重

要であると指導する。次の例であれば、カンマのところで区切るのがよい。

<例> I studied at home yesterday, but I soon fell asleep.

口頭では、ポーズを置くことが区切りを示す方法となる。話す際に、どこでもポーズを置いてよいわけでなく、

分かりやすくするためには適切な場所でポーズを置くことが求められることを意識させたい。ポーズが多くな

ることは、読点や「ね」で区切る箇所が多すぎてわかりにくくなる感覚に近い。

d) 日本語の語順(原則 3)

核配置の役割について指導する方法。文中のある特定の情報に焦点を当てたい場合、日本語では語順を

変えて言うことができるが、英語ではそれが難しく、代わりに言い方を変える(核の位置を変える)ことでそれ

を行っている。英語の例文と日本語のキーワードを示しながら、語順の自由度と核配置について日本語と英

語を比較する。

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まず例文を示す。 I bought the shirt at the department store.

この訳を、助詞を除いて示す。(前置詞の訳は入れておいてもよい。例:デパート「で」) 私 買った シャツ デパート

通常は、「私はデパートでシャツを買った。」と訳すのが一般的であろう。この訳は broad focusと言え、文全体の情報に焦点が当たっている。 特定の情報に焦点を当てる narrow focusの場合、日本語訳するとどうなるか考えさせる。上に示した日本語のワードを用い、順番を変えたり助詞を加えたりして作る。英文の の部分を核とする。

I bought the shirt at the department store. 私がデパートで買ったのはシャツです。

I bought the shirt at the department store. デパートでシャツを買ったのは私です。

I bought the shirt at the department store. 私はデパートでシャツを買ったのです。

日本語で焦点を当てたい箇所を変えるには、語順と助詞を変える。しかし英語には助詞はなく、語

順が比較的固定される(主語+動詞+その他)。そのため英語では語順を変えて焦点を変えることが難

しく、焦点を当てたい箇所は核配置(つまり言い方)を変えて示すという方法をとる。したがって、

同じ英文であっても言い方次第(核の位置)で日本語訳は変わることを理解させたい。

e) しつこく質問(原則 3)

教科書の文章の中から一文選び、答えの文とする。教師が質問をして、生徒が答えの文を読み上げ

るが、質問の内容に応じて、ことばは変えずに言い方を変える(核の位置を変える)ことで適切に答

えられるか試す。質問を日本語で行うこともできる。(以降、英文は Elwood (2008)からの引用。) (答えの文) The first impression often lasts a long time. (回答例) が核の位置

Q: The first impression always lasts a long time, doesn’t it? A: The first impression often lasts a long time. Q: 何がしばしば長く続くのですか。 A: The first impression often lasts a long time. Q: 第一印象は長い間何をするのですか。 A: The first impression often lasts a long time.

f) 質問は何か(原則 3)

「しつこく質問」の逆で、教師が答えの文を読み上げ、生徒は答えの文の核の位置に応じて質問の

内容は何であるか考える。例えば次の文を答えとし、 の位置を核とする。 A: The first impression often lasts a long time.

生徒に質問の選択肢を与え、Aが答えとなる質問はどちらか考えさせる。この場合、2が適切である。 1. How long does the first impression often last?

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2. What often lasts a long time? 質問の選択肢を与える代わりに、質問を英語で作文させる、または質問の内容を日本語で言わせると

いうやり方もできる。 g) 核配置のゲーム的活動(原則 3)

「質問は何か」をアレンジし、生徒のペアで行いゲーム化する。まず教科書から選んだ文を答えの文として

挙げたワークシートを配布する。

<ワークシートの例>

生徒の一人(A)は答えの文の核の位置を決めるが、相手には伝えずワークシートの英文に印をつける。

合わせてそれに対応する質問を Q のところに英語で作文させるか、日本語で書かせる。もう一人(B)は、相

手がどこに核配置するか予想して英文に印をつけ、それに対応する質問を考え、Q のところに英語または日

本語で書き込む。

ワークシートに書いたとおりに B が A に質問をして、A もワークシートに書いたとおりの核配置で答えを読

み上げる。一致したら B の勝ち、一致しなかったら A の勝ちとする。同じ文で複数回行うことができる。また役

割を交代しながらでも複数回行える。

h) キーワードを日本語で示す(原則 2、3)

リスニングによる内容理解の活動として行うものである。まず、文章の内容のキーワードとなる部

分の日本語訳を並べて示す。キーワードを見て、どのような内容か予測させてから英語を聞く。続い

て聞いたことを基に、文の切れ目にスラッシュを入れる。その後で内容を日本語で言わせる。 <文章> Those who fall down when trying to put their best foot forward may have to work hard. It is not easy to overcome a bad first impression. In fact, those unlucky people may never overcome it. It is

Q:

A: The first impression often lasts a long time.

Q:

A: The first impression often lasts a long time.

Q:

A: I bought the shirt at the department store.

Q:

A: I bought the shirt at the department store.

好印象 失敗 苦労 第一印象 悪い 覆す 運の悪い人 マイナスイメージ 覆せない 第一印象 当たっている その通り 第一印象 的確 消えない 教室 重要 調査

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possible, as some say, that first impressions don't lie. It is also true that, accurate or not, the first impression often lasts a long time. Either way, research suggests that the first impression is important, at least in the classroom. <答え>

i) Odd One Out(原則 2、3)

「キーワードを日本語で示す」の変化形で、手順は「キーワードを日本語で示す」と同様であるが、

言われていないことばが含まれているため、それらを探して消すことが加わる。 言われていないことばは、内容的に出てきそうなことばや、他の文に出てくることばにするとよい。

「キーワードを日本語で示す」と同じ英文を基に作ると、例えば以下のようにできる。 <キーワード> 英語を聞いて文の切れ目にスラッシュを入れる。言われていないことばは線で消す。その後で内容

を日本語で言わせる。 <答え>

j) キーワードの並べ替え(原則 2、3)

複数の英文をフレーズごとに日本語に訳したものをばらばらに示す。すべてのフレーズを訳さずと

も、重要な部分のみでよい。「は」「を」など助詞は書かない。 次に、英語を数回聞かせ、生徒は内容に合わせてフレーズを並べ替える。その際には、まず何セン

好印象 失敗 苦労 / 第一印象 悪い 覆す / 運の悪い人 マイナスイメージ 覆せない / 第一印象 当たっている その通り / 第一印象 的確 消えない/ 教室 重要 調査

好印象 悪印象 失敗 苦労/第一印象 悪い 覆す/

運の悪い人 マイナスイメージ 永久 覆せない/第一印象

当たっている その通り/第一印象 的確 消えない/教室

覆す 重要 調査

好印象 悪印象 失敗 苦労 第一印象 悪い 覆す

運の悪い人 マイナスイメージ 永久 覆せない 第一印象

当たっている その通り 第一印象 的確 消えない 教室

覆す 重要 調査

第一印象 続く 正しい

第一印象 ありうる 覆す

第一印象 うそをつかない 覆せない

不運な人 やさしくない 悪い

それ かもしれない 長い期間

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テンスあるか考えさせ、一文につき一行とするとよい。フレーズの順番は(内容が分かればいいので)

英文の語順通りでなくともよい。 <例> It is not easy to overcome a bad first impression. In fact, those unlucky people may never overcome it. It is possible, as some say, that first impressions don't lie. It is also true that, accurate or not, the first impression often lasts a long time. <答えの例> k) 字幕翻訳の応用(原則 3)

映像翻訳ではセリフの長さに応じて日本語訳の長さが規定され、字幕翻訳の場合では 1秒間に 4文字という制限がある。こうした制限があると、意味を深く考え、それを表す訳を吟味する必要がある。 会話文の意味を日本語で言わせる際、特に核配置が解釈の鍵になる場合にこの方法を用いるとよい。ひと

つひとつのセリフの時間が短い場合、すべてのことばを訳出することは無理であるため、会話において重要

な情報を拾って訳出する必要がある。そのため、字数制限を設けることで、直訳でなく話者の意図をくみ取っ

て日本語で表すようにしたい。

字数制限は、生徒の英語力に合わせて自由に設定してよい。また、字数制限を設ける代わりに、できるだ

け少ない文字数で訳すという指示でもよい。

5.実践例

4. に挙げた、日本語を活用したプロソディ指導の活動例を踏まえ、第一筆者の勤務校である中等教育学

校1年生を対象にプロソディ指導を実践した。例として、以下の活動案を紹介する。

悪い 第一印象 覆す やさしくない 不運な人 それ 覆せない かもしれない ありうる 第一印象 うそをつかない 正しい 第一印象 長い期間 続く

図 1 「どちらが英語らしいか」 図 2「ハミングで読んだのはどちら?」 図 3「目立つのはどこ?」

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図 1 のワークシートは、「a)わざと変に読む(原則1、2)」をアレンジしたもので、英語と日本語読みで読まれ

た英語の単語を聞かせ、どちらが英語らしいかを判断する活動である。プロソディ指導の導入時に行う活動と

して、英語らしさとはどういうものかについての意識を向けることができた。

図 2 では、英語と日本語をハミングで読み上げたものを聞かせ、どちらが発音されているかを当てる活動で

ある。ここでは、ハミングで読み上げることにより子音や母音の区別などがマスクされることで、音節という固ま

りに注意を向けて聞かせることが可能になり、英語と日本語の音節構造の違いに気づかせることができた(軽

尾・大和, 2017)。

図 3 のワークシートでは、音節の固まりが把握されつつあるところで、複数音節の単語を導入し、複数音節

間の強弱の違いに気づかせる活動である。日本語のモーラのように、同じ強さ・長さで均一に並ぶ読み方で

はなく、英語では複数拍が並ぶと強弱のメリハリをつけることに気づかせる活動である。ここから「b)定型詩の

感覚」に派生させることが可能である。

このように、日本語との比較に基づきながら原則1と2について、実際の活動に昇華させて実践を行ってい

る。今後は、プロソディへの意識の高まりに合わせて、活動の幅を広げることや、原則3についての活動をア

レンジしていくことを検討している。

6.まとめ

本稿では、まず、英語プロソディ指導において、個別要素を関連付けて捉えた上で指導を行うための「プ

ロソディ指導における 3 つの原則」を提案し、原則を基にして活動やタスクを開発する際、英語音声の特徴の

理解を促進するために、学習者の母語である日本語を活用することを提案した。活動例を挙げつつ、それら

をそれぞれの実践の場で用いることができる活動やタスクに昇華する過程を、第一筆者の勤務校を例にとり

記述した。このように、平生の授業においてプロソディの指導を組み入れることは可能であり、多くの教育現

場でプロソディに関する指導が行われることが望まれる。

謝辞

本稿は、JSPS 科研費 17K04778 の助成を受けたものである。

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i 本稿は、全国英語教育学会第 43 回島根研究大会での自由研究発表「日本語を活用した英語プロソディ指

導」を基にしている。