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iGEM 参戦記 2008 11 28 理学部3回生 畠山昭一

iGEM - 京都大学...目次 1. Introduction 2. iGEM とは? 3. Raise the Titanic!! 4. これまでの活動 5. Jamboree(祭り) 6. 感想・反省 7. 謝辞 1. Introduction

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iGEM参戦記

2008 年 11 月 28 日 理学部3回生 畠山昭一

目次

1. Introduction

2. iGEM とは?

3. Raise the Titanic!!

4. これまでの活動

5. Jamboree(祭り)

6. 感想・反省

7. 謝辞

1. Introduction 今回、吉川研での課題演習を通して MIT 主催

の「iGEM」という国際的な大会に参加すること

ができた。ボストンまで行って発表するという、

普通の課題演習ではできない経験をできたので、

過去のレポートとは異なる旅行記のような形式

で提出しようと思う。詳しい内容などは別ページ

で参照する形で、誰にでも簡単に読めるようにし

てあるので、肩の力を抜いて気軽に読んでいただ

きたい。 (量が多いように感じられるかもしれないが後半

はほとんど写真)

2. iGEM とは? iGEM についての詳しい説明は iGEM 説明

PDF ファイルを参照していただきたい。 簡単に説明すると、遺伝子工学を用いる、アイ

ディアコンテストとロボコンを足した大会である。

テーマは自由で何をしてもいい。その点はアイディ

アコンテスト的、そのアイディアを実現するバク

テリアを、遺伝子工学を用いて作る点はロボコン

的だ。 参加してみて感じたのは、ネタ命。今年は世界

各国から 84 チームが参加した。そんな数多いチ

ームの中では、ネタがしょぼいと半年間せっかく

がんばってきたのに、何をやっていたか印象も残

せないまま帰国するはめになってしまう(もちろ

ん実験結果も重要だが・・・)

3. Raise the Titanic!!

今回の我々のテーマは「大腸菌でタイタニック

を引き上げる!!」というテーマである。なぜこ

のようなテーマに至ったのか?それには生物ド

素人である自分が、iGEM の過去の作品例を紹介

される中で受けた印象が強く関係している。それ

を受けて、自分たちのテーマは次の条件を満たす

ものでなければならないと考えた。

① 専門知識のない素人にも簡単にわかる ② 既存の機械では実現できない問題 ③ 実現したら興奮する (少なくとも僕は) これまでのバクテリアを使う応用例は、医学的、

またエネルギー問題などと絡めることが多かっ

た。これは iGEM でも同様で、過去の入賞作品も

このようなものが多かった。しかし、素人である

自分には複雑怪奇なものに思えるし、正直よくわ

からないものだった(つまらんかった) また、「合

成生物学のロボコン iGEM」という謳い文句と、

自分の中の「ロボット」のイメージがあまりにか

け離れていた。ロボット(ガンダムやマジンガー

Z・・・etc.)と言えば、巨大なボディ、とてつも

ないパワー!!というというイメージだろう。そ

こでバクテリアというミクロなもので、巨大なも

のを動かしたいと考え、沈没船の引き上げを思い

付いた。最初の候補としては、戦艦大和を考えた

が国際情勢を鑑みてタイタニック号に落ち着く

こととなった。 タイタニック号を知らない人間がいるだろう

か?その引き上げは誰にでもイメージできる①ま

た、タイタニック号は、現在のサルベージ技術で

は引き上げることは不可能である②。これは RMSタイタニック公式サイトでも否定されている。 また、50年以内に腐食して消滅してしまうと

言われている。やるなら今しかない!!③ 具体的にどのようなサルベージ作戦を考え、実

験はどこまで到達したかについての詳しい説明

については、iGEM 本番でも使ったポスター資

料・プレゼン資料 PDF ファイルを参照していた

だきたい。 引き揚げ作戦を簡単に説明すると、船体表面、

内部で大腸菌を大繁殖させ、風船タンパク質の浮

力、べん毛の推力により引き上げるというもので

ある。

4. これまでの活動

ここでは4月からの半年間どんな活動をし

てきたかについて大雑把に説明しようと思う。 4 月末:チーム結成 5 月:テーマ募集(個人的に減量中で気力0) 6 月:業を煮やして自分でテーマ提出。チームを

内部分裂に陥れる。京大にてワークショップ 7 月:テストがあったりしてあまり進展せず。末

から実験練習スタート 8 月:秋葉原でテーマ初お披露目。冗談のわから

ない大人たちのヒンシュクを買う。実験開始。 9月:実験がうまくいかない。阪大から1名参戦

10月:授業も始まり焦り始める。ちゃんと風呂

には入ってください・・・ 11月:実験を強制終了され、プレゼン練習。作

業が連日深夜(むしろ早朝)に及び、昼夜逆転生活

を送り出す。MIT で発表!!

京大チームは、2007 年に東工大・東大・京大混成

チームに参加していた生命研井上研究室の河原さん

(M1)をリーダーとして今年初めて結成され、メンバー

は個人的にスカウトしたり、教養科目の授業で勧誘し

たりしていたらしい。自分の場合は6号館の募集ポス

ター、また吉川研ポスドクの滝ノ上さんに紹介され、

冷やかし程度に参加していたら抜き差しならぬ状況

になってしまった。 結成当初は20名程度メンバーがいたのだが、意見

の食い違い、モチベーションの違いなどによって減り

最終的には学部生6名(M2(1)、M1(1)、4回生(2)、3

回生(1)、1回生(2))が残った。 当初の計画では、夏休み中の 8、9 月で実験を終え

10 月はプレゼンを練習して完璧にする予定だったの

だが、様々な問題が発生し計画通りには進まなかった。

いくつか上げると、リーダー河原さんのスイス留学、

MIT から送られてきた遺伝子パーツの状態がひどい、

実験になれるのに時間がかかった、etc・・・ (世界の MIT は意外といい加減。京大くらい・・・) iGEM の活動にはお金がかかる!!(実験、ボストン

までの渡航費など) 今回は企業、また先生方に寄付を

お願いするという方法で調達した。ただし、これから

も毎年参加していくような状況になれば、このような

方法はうまいとは考えにくいので大学側からお金を

出してもらえる方法はないかと模索したところ、どこ

に言っても断られた。現状では、お金を出せるルール

がないらしい。一方、東工大では iGEM を契機に学生

を支援する奨学金制度のようなものが新たに作られ

たらしい。今後も京都チームが活動していくのであれ

ば、資金調達は重要な課題だろう。

5. Jamboree(祭り) Jamboree のスケジュールは以下のとおり 11 月 7 日(金) 昼 関空出発 夜 ボストン到着、プレゼン練習

8 日(土) 昼 予選プレゼン 夜 予選結果発表

9 日(日) 昼 決勝プレゼン・結果発表

・ 7 日(出発) プレゼン準備が終わらず朝5時まで学校に。結

局完成しなかった。ほかのメンバーは徹夜で出発

したらしい。ここからすでに不眠不休の旅は始ま

っていた・・・

飛行機の中で 12 時間ほとんど作業していた阪大梶畠

デトロイトでのトランジットでも時間を惜しんで作業

ボストン上陸!!

[注] 一番ふざけている人はアドバイザーです

まだ何も知らない先生たちと楽しく夕食。アメリカは飯が

まずい。この数時間後衝撃の事実発覚。先生たちは凍りつ

くことに・・・

会場の入り口。マッキントッシュみたいでオシャレだった

夕食後 MIT にてプレゼン練習

「まずいよね?」発表前夜に完成度30%

シャレにならないので徹夜で作業

唯我独尊男たちが初めて力を合わせる

水こぼしました

ず~ん

[注] 午前3時半。この後も作業は続く

・ 8 日(予選) ほとんど寝ないまま出陣!!完成度70%程度

左から齊藤先生、野村さん、滝ノ上さん 最高のアドバイザー3人だった

会場はこんな感じの雰囲気。すごい人数

ポスター発表もする

直前ギリギリまで発表練習。他大もそんな感じ

予選会場の様子

ついに発表。イントロ森田君以外、みんな緊張で

頭真っ白に・・・ひどい状態だった。しかし会場

は異様に盛り上がった

プレゼン終了後、チーム全員で撮影

ポスターを印刷しにハーバードの町へ繰り出すお

のぼりさんたち。すごくきれいなところで文化的

な感じがした

行進するハーバード大学の学生たち。こんなとこ

ろで学生生活送れるなんてうらやましい

会場に戻りポスター設置。なぜか conclusion(結論)だけ印刷されていない・・・印刷屋の陰謀か?

ポスターを張った瞬間、電池が切れて崩れ落ちた

ファイナリストの発表

Kyoto の名がない。理解に苦しみながらユースホ

ステルに帰る

疲れすぎてカバンも降ろせず眠り出す、リーダー

河原

やけ食いした

・ 9 日(決勝) 「我々を決勝に残しませんでしたけど、じゃあ残った

方々はどれだけすごいんですか?」と挑戦的な態度でプレ

ゼンを見に行く(結局寝坊して半分しか見られなかった)

何かに立ち向かうかのような眼差しのアドバイザー。自分

たちの発表はないのに、いったい何とどう戦うつもりだっ

たのだろうか?

決勝の会場は本当に立派だった。ファイナリストに残れな

かったのが悔やまれる

記念撮影タイム

スロベニアチームと写真撮影(ちなみに彼らは今年の優勝

チーム) 海外の学生は女の子も多い(しかも美人)

東工大チームの皆さん。日本の他大チームの人と交流でき

たこともいい刺激になった。ちなみに真ん中の梶田君は

iGEM のために 72 時間寝ないで実験したそうだ。熱い男

だった

優勝チームへの銀色のレゴの贈呈。来年こそは・・・

スポンサーの皆様、申し訳ございませんでした

結局やけ食い。この日もほとんど徹夜で iGEM 反省会。ボ

ストン滞在3日間で確実に睡眠時間は1桁。時差ボケなん

か関係なかった(というよりすでに出発の時点でボケの状

態だったように思う)

・帰国

さらばボストン、来年覚えとけよ。滞在中の疲れが一気に

出て機内ではずっと寝ていた。気がつけば大阪上空

京都駅のラーメン屋にて。お疲れ様でした!!

[注] 満 20 歳

6. 感想・反省 まず、自分の反省から。

① 実験ノートをいい加減につけすぎて困

ることが多かった。自分がわかるだけじ

ゃなく、他人が見てもすぐ分かる形で記

録を残しておくべきだった(結果につい

て相談するときに困った) これは、無駄

な作業を増やして時間が膨大にかかった

ことにもつながった。 ② チーム内でのコミュニケーション不足。

忙しくなってくると、周りと相談するの

が面倒になり結果自爆、混乱状態に陥る

ことがあった(他のメンバーもそうなっ

ていたと思う) ③ コンコルドの誤り。引く勇気も大事だ

と思う。 ④ 当たり前のことだが、実験は朝来て夜

ちゃんと終えましょう ⑤ 活動資金の調達。これはアドバイザー

の力に頼るところが多すぎた。実験始ま

ると他の事に力はほとんど回せないので

しっかり事前に準備すべき。 ⑥ 今回のテーマは、iGEM のメインスト

リームを破壊するつもりで考えたつもり

だったが、正直これも枠にとらわれすぎ

たように思う。 ⑦ 英語ができない。他大の学生との交流

がうまくできなかった あげだすとキリがなさそうなのでこの辺で。 iGEM という大会についての感想 ① 他チームのテーマ、よい子ちゃんすぎて

自分には相変わらず複雑怪奇 ② これってただの遺伝子工学の大会じゃな

いの?合成生物学って何? ③ 誰も問題提起しようとしていないのでは

ないだろうか? (iGEM をぶっつぶ

せ!!くらいの勢いが感じられない気

が) 他大の学生さん、先生方、iGEM は

現状のままでいいと思っていらっしゃる

のでしょうか?(この辺、とても聞いてみ

たかったが英語の壁が立ちはだかった)

とこちらもキリがなさそうなのでこの辺で。 「知的にふざける」という、自分の中のテ

ーマはある程度達成したように思う。京大の

自由の校風にもあっていたのではないだろ

うか。 今回、世界の学生たちを見て感じたのは、

「外国人だからといって独創性があるわけ

ではない。日本人にもバカな奴はいっぱいい

る。流行り廃りに流されるな」ということ (ほとんど吉川先生の受け売り)

7. 謝辞 こんなふざけたネタ(もちろん真剣に取り組ん

だ)にご支援くださった皆様、本当にありがとう

ございました。賞は取ることができませんでした

が、笑いは取ることができました。 特に吉川研 新藤さん、佐藤さん、そして、井

上研 藤田さんには実験において直接のご指導い

ただきました。 アドバイザーに就いてくださった先生方、学生

の位置まで降りてきてくれる最高のアドバイザ

ーだったと思います。iGEM 京都チームの今後に

乞うご期待!! 最後に、この参戦記を読んで興味をもたれた方

はぜひご連絡ください。

連絡先

[email protected]

TO BE CONTINUED…