ホレイシ．ヨ・アルジャーについての

神話

土　井　幸一郎

1序

　　　19世紀後半100以上の少年向けsuccess　storyを書いたHoratio　Alger

　　の名は，その作品が今や殆んど読まれないにもかかわらず，アメリカの成

　　功の夢の同意語としてアメリカ英語の中に定着している。四2ゐ3云卯（三版，

　　1961年）には　horatio　alger　を形定詞として　‘of，relating　to，or

　　resembling　the　works　of　Horatio　Alger　in　which　success　is

　　achieved　through　self－reliance　and　hard　work’と定義している。彼

　　の名は“Fブ。卿Rα8“o　Rゴoh8s”の伝説，“S召ケ一瓢α飽M伽”の神話の

　　代名詞としてアメリカ人の意識の中にしみ込んでいるといってよいであろ

　　う。しかし，彼の名がいわば神話化，伝説化され，普通名詞や形容詞とし

　　て英語の中に残る栄誉を持ったことは，同時に実存した作家としての彼の

　　存在が忘れられることを意味する様であり，アメリカ入の中にもアルジャ

　　一をもともと成功物語の主人公の名であるとか，また実在した成功者の名

謁　であると誤解している者も多いという。1）九

一　　文学史の上で彼が忘れられた作家であるのは当然かも知れない。109の

　　彼の物語の大部分は，すべて根本的には同一の筋一貧しい少年の努力と

　　幸運による成功の話一一であり，しかも構成は綿密さを欠き，登場人物は

　　類型的であり，文体は平易だが平凡で躍動感に欠けると云うことになれば・

　　　　　　　　　　　　　　　　一46一

文学的価値としては低く評価されざるをえない。また彼の説いて倦まなか

ったその成功の神話も無論，彼の創り出したものではなく・例えばフラン

クリンの自伝，その他に典形的に現われているアメリカの伝統の一部であ

ることは云うまでもない。彼の功績はその神話を通俗的な物語の形で一般

に普及し，当時のアメリカ人の意識の中に定着させたことにあるであろう。

　従ってアルジャーの意味は現在ではもっぱら社会史的なものである。事

実彼について，あるいは彼の作品についての研究と言及は，歴史家や社会

学者によってrアメリカの成功の夢」の観点からなされたものが大部分で

ある。2）

　彼が流行作家として一年に2，3冊の割で成功物語を書き続けたのは・

南北戦争以後，19世紀末年迄の期間であり，これはアメリカ社会が農業か

ら工業社会へと急激な変化の時期である。そして同時に人々が露骨な金銭

欲にとりつかれ，一攫千金を夢みて投機に走り，そして金もうけの為なら

どんな手段も許されると考えるような，いわゆるGildedAgeでもあった。

そしてこの時期輩出した産業界の統師達の中にはComelius　Vanderbilt，

Andrew　Camegie，John　D．Rockefeller等実際に　F■o卿Rσ83≠o

Riσh8sの神話を実現した人々が多くいた。ここからアルジャーの説いた

成功の観念を，産業社会におけるこれら大実業家達一別名，強盗貴族

（robber　baron）と呼ばれた人々一一の実現したものと同一視すること

はある意味で自然な考え方である。一般に彼の成功物語が彼等によって現

実に立証され，逆に彼等の成功の価値を彼が物語を通じて伝えたと考えら

れるかも知れない。さらに極端な例をあげれば，アルジャーはカーネギ

ーと同じく，Spencerの説く社会進化論の信仰者であるとさえ云われ　一　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　九た。3）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○

　しかしながら彼の物語は，彼が必ずしも自分の生きた時代の支配的観

念の代弁者ではなかったことを伝えている。我々はホレイショ・アルジャ

ーの名が喚起する先入観を離れて，彼の作品自体の中に正確な彼の成功の

　　　　　　　　　　　　　　一47一

観念をさぐるべきであろう。しかしその前に彼の生涯について簡単に考察

しなければならない。というのは彼の生涯についてもまた偽りの伝記が書

かれ，それが長い間信じられて来たのであるから。

H　r失敗者」の伝説

　　　Horatio　Alger，Jr．は1832年1月13日マサチューセッツ州　Revereに

　　ユニテリアンの牧師の長男として生まれた。1）父は自分の名を継がせるこ

　　とで，同時に息子が自分と同じ聖職につくことを期待し，そのための教育

　　をした。1848年父親の母校であるHarvardに入学，古典とフランス語に

　　優れた。卒業後はしかし，父のように神学部に進むことはせず，雑誌の編

　　葉者，小学校の教師などを一年間続ける。その間文筆家として立つ手段を

　　見つけようとしたがうまくいかず，結局父親の意に従ってHarvard

　　Divinity　Schoo1に進学する。1860年代に卒業すると，すぐに8ケ月間の

　　ヨーロッパ旅行に出かける。その紀行文を　A砺ω｝わ漉Sππ　に定期的に

　　送り旅費に充てている。帰国は南北戦争の勃発直1前であった。彼は二度志

　　顕したが虚弱な体質のために拒否される。その後，ボストンの出版社など

　　に小説，詩などを時折もちこんだり，教師をして生活するが，結局1864年

　　マサチューセッツ州　Brewsterの牧師に任じられる。しかしそれも2年

　　間と続かずにニューヨークに出て，少年雑誌に小説を書きはじめる。

　　Rα認2づDゴ罐；o■Sヶ麗’Z∫彦加ハ物θyb沈（1867年）が一躍彼を流行

　　作家にした。その後はニューヨークに住み，Charles　Loring　Braceを通

　　じて彼の設立した　Newsboys’Lodging　Houseを知ると，自からそこ

一　の少年達の保護者を認じて，同施設の一室を自分の仕事部屋とし・少年達

八九　から小説の題材を蒐集しながら，彼等をはげますための成功物語を書き続

　　けた。多くの少年雑誌からの求めに応じて同時に幾つかの作品を書き進

　　め，結局生涯に109の物語を作った。その他に三人の自立独行の政治家，

　　Abraham　Lincoln，Daniel　Webster，James　A．Garfieldの少年向け伝

　　　　　　　　　　　　　　　　一48一

記を書v・ている。彼の死後のものも含めて全部で2000万部といわれる彼

の作品の出版によって，出版社に利益をあげさせたにしても，彼自身は大

した金持にもならなかった。しかしNewsboys7Lodging　Houseに泊る

少年達に小遣を与えたり，何人かに学資を出してやるだけの余裕はあった

らしい。後にもう一度ヨーロッパへ旅行し，また二度カリフォルニアへ題

材を求めて旅した他は，記すべき変化のない平穏無事な生活であった。一

生を独身で過ごし，1899年7月生まれ故郷に近いマサチューセッツ州

Natickで65年の生涯を閉じた。

　アルジャーについて最初の伝記（？）を書いたHerbert　R　Mayesは，

この書くことのみに費やされた生涯を余りに無味乾燥と考えたにちがいな

い。Mayesは・4忽27：A　B∫097σρhy一びf∫ho雄。漉■o（1928）を記す

のに，彼の所有していると称する，実は彼自身の創作したアルジャーの

日記なるものを用いて，幾つかの恋愛と情事を創り出し，またアルジャ

ーが殺人犯と間違われて投獄されるエピソードなどをまじえて，この物

語作家の退屈な生涯を虚構で色どったのである。1920年代はPuritan・

ismに対する嘲笑が風潮であった時代である。いかにも清教徒的なアル

ジャーをパリの酒場の歌手との恋愛におち入らせたり，あるいは50才近い

彼を既婚の婦人にのぼせあがらせてパリまで追いかけさせたりすることは

時代の趣味に合っていたのであろう。

　1960年代，アルジャー研究者がMayesの伝記の信憑性に疑いをv・だきは

じめるが，つv・にMayes自身がそのr伝記の一部どころか殆んどすべて

が虚構である」ことを認めた。2〕彼はそれを当時（20年代）流行であった

暴露的伝記の物真似のつもりで書いたのだが，不幸なことに出版されると　＿

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　八正典として認められてしまったと云う。後にSα伽毎のR20紐〃　の　八

direc七〇rになり，またMcCall社の社長となったMayesの経歴が彼の

若年の手すさびに権威を与えたのかも知れないが，ともかくこの伝記は長

い間アルジャーの典拠すべき伝記と考えられてきた。

　　　　　　　　　　　　　　一49一

　　α燐。η8■y夢ハ耀7∫昭”Bf㎎rのhyのAlgerの項はその参考文献

　　に伝記としてはMayesのものだけをあげてv・ることから判るように，全

　　くこれに依拠したものである。また0埆■4Co卯α毎。η加A蜘αr∫昭π

　五舵■σ加rd4版）の彼の項にある，アルジャーが　Harvard　Divinity

　Schoo1を卒業後，　r彼の環境に反抗してパリでボヘミアン的な生活を送

　　つた」との記述もMayesに拠ったものであろう。1963年に出版された

　John　W．Tebbe1の伝記Fro〃3Rα83∫012∫ohθs：丑b7αオfo　A忽27α，24

　’加A卿θ■foo”D■餌卿（1963）も全くMayesを疑わずその延長上に書

　　かれた。従って直接Mayesの伝記でなくともTebbe1の伝記を参考文

　献としたEπoyolρρ84fσげ叩or14B∫09■砂妙（MacMillan，1973）の中に

　　もMayesによる虚構のアルジャーが入り込んでいる。しかもこの辞典で

　　アルジャーとして載せられている写真は別人のものらしい。これはRalph

　Gardnerの伝記刀b■α≠fo　A忽2■oグThθA吻ε■foθ”飾■o　E紹（1964）

　　の中でアルジャーの義弟Amos　Parker　Cheneyとして載っている写真

　　と同一のものである。（従って同辞典に準拠したポプラ社版，r世界伝記

　　大辞典・世界編」（1980）にも同じ誤りがある。）

　　Mayesが創作し，そしてかなりの間あるいは今でも一部信じられてい

　　るアルジャ一稼は一口に云えば人生の失敗者であった。恋愛においては，

　　最初は父の介入により，また彼自身の内気さと同時に突発的激情的行動の

　　為にいずれも失敗し独身生活を余儀なくされた男。自己の才能の乏しさ

　　も知らずに，Dickensのような本格的小説を書くことを夢見て，結局，

　　挫折した男。節約の徳を説きながら自分では流行作家としての収入を浪費

　　し，最後は貧窮のうちに死んだ男。すべての面で失敗者であったSuccess天七　Story　の作家一暴露的伝記の主人公としてこれは格好のものに違v・な

　　かった。

　　　さて実際のアルジャーは決して失敗者ではなかった。本格的小説を書く

　　夢をもっていたにしても，少年のために書くことを楽しみ，また生き甲斐

　　　　　　　　　　　　　　　　一50一

を見出していた。そして貧窮のうちにでなく，わずかであっても妹や彼の

若い友人，少年達に遺産を残して死んだ。彼は死の二年前に，彼の援助し

た若い友人への手紙で，　r自分は再び19才に戻って人生をやり直したいと

は思わない，今度は私の成功の分けまえが今より少なくなるかも知れない

から」3）と述べている。彼が自分の生涯にある程度の満足感をもっていた

ことは確かであろう。

　Mayesの描いた種類の女性に係わる愚行など彼には思いも及ばなかっ

た。彼が一生を独身で過ごしたのは，恋愛において常に失意であった為で

なく，別の理由によると考えられる。……アルジャーが30才でやっと与え

られた定職，Brewsterの牧師の地位を2年足らずで去ったのは文学的野

心の為でない。Edwin　P．Hoytによると彼は実際には解任されたのであ

り，教会の記録はその解任の理由について，アルジャーが教区のr二人の

少年に対して不自然な親密性をもつという恐るべき唾棄すべき罪」を犯し

たことを問われたと記している。4）彼はその問罪を否定せず，ただ思慮を

欠いたという言葉を残して町を去った。

　それがどの程度のものであったにせよ，彼がpederastの性的傾向をも

っていたことは否定出来ない。但し彼自身がそれを自己の性的傾向とし

て明瞭に意識していたかどうかは疑問である。また，彼がこの事件に対し

て罪と悔恨の念に苛まれたにしても，それは自分がもつ悪しき性向に対す

る罪悪感というよりも，一時でも悪の誘惑に屈したことの罪と考えたので

はなかろうか。その後のニューヨークヘ出てからの彼の「新聞少年宿泊施

設」での少年達との無邪気な交流を見ると，そのように考えることが妥当

と思われる。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　八　彼がそれらの新聞売りや靴みがきの少年達に対してもった保護者的な愛　六

情と関心が彼の潜在意識の中にある性的傾向と無関係でありえないどころ

か，そこに根ざしていたことは確かであろう。但しそれはあくまでもアル

ジャーの意識下にとどまっていたのであろう。彼が少年達に示した愛情の

　　　　　　　　　　　　　　一51一

　　うらに自己の性癖iを意識して，後ろめたく感じていたと想像することは出

　　来ない。あるいは彼の潜在的性向を保護者としての愛情という形に昇華さ

　　せたのだとも解釈されよう。Brewsterの事件は悪夢として彼の記憶に1ヒ

　　まったにしても，それは彼の少年達への愛情の発露を妨げるものでなかっ

　　たようである。

　　南北戦争前から地方から出て職もなくニューヨークの町をさまよう若者

　　達，あるいはスラム街の浮浪児達は一つの社会問題であったが，戦後その

　　数は急増した。彼等は乞食やスリからさらに悪質な犯罪者に育っていく者

　　も多かった。その中で靴みがきや新聞売子の少年達は悪の誘惑に抗して独

　　立して正しい生活を追求している健気な若者と考えられた。アルジャーは

　　r新聞少年宿泊施設」を利用するこれらの少年達を都会の悪の誘惑から

　　守り，正直，努力，節約による成功という伝統的な理念を教えることを自

　　分の使命と考えたのであろう。聖職からは追放されたとは云え，彼の育つ

　　た環境と受けた教育から身につけた一種の使命感・道徳的指導者の意識は

　　彼に残っており，それはこの少年達の精神的な監督者としての役割に発露

　　の場を見出し，また物質的にも少年達を援助する保護者の役割に満足感を

　　もったように見える。

　　　彼はこれらの少年達との交流から集めた題材で彼等を主人公にした物語

　　を書くのだが，その物語の目的について次のように書いている。r著者は

　　都会の中の幼い浮浪者たちの心の中の生活を描き，そして彼等の感情や激

　　情を写し出し，それによって世間の人々の間により広く深い同情の念を喚

　　起したいと希望する。同時にこれらの少年達に対しては，どんな逆境にあ

＿　っても，精力と野心と正しい目的をもつことで，何でも達成出来るというノヒ

五　立派な見本を示して有益な感化を与えたいと望んでいる。」5）つまり社会

　　に対してこれら少年達の存在を訴えることと，彼等に対しては成功の論理

　　によって彼等を励まし，悪の道から遠ざけることであった。

　　　この第一の点で最も効果的な社会的影響を与えた作品は　Ph∫〃∫hθ

　　　　　　　　　　　　　　　　一52一

丑濯41醇（1872）である。当時，南イタリアの貧しい家族から買われた子

供をニューヨークに連れて来て，街頭でヴァイオリン弾きや，物乞い，さ

らにスリなどを強制して彼等を搾取する組織があった。このような少年を

とりあげた彼の物語は，世間の人々のこの新しい都会の犯罪に対する関心

を集め，その組織の破壊に幾分か貢献さえしたのである。そして彼は都会

の少年問題の一種の権威として認められ，当時の社会事業家達が世人の関

心を喚起するために開く講演会に講師として呼ばれている。そこで

Gardnerは彼を社会事業家としても評価しているが，この点は余り強調

することは出来ないにしても，彼が都会の少年達の問題に強い社会的関心

を持っていたことと，当時の社会事業家と同じ認識をもってこれに対処し

たことは注目される。

　また本格的小説を書く夢を懐いていたにせよ，彼は街の少年達について，

少年達のために書くことに作家としての社会的影響力と教訓的・道徳的意

味を見出していた。また何よりも彼は彼等を描くことが楽しかったのであ

ろうし，また英国にも聞こえた人気作家の名声を享受したことは確かであ

る。

　少年物語の作家として，またr新聞少年宿泊施設」の少年達の保護者と

して，またニューヨークの少年問題の権威として，彼の生涯の時間と関心

の大部分がこれらの都会の少年のために使われたと考えてよいであろう。

彼が意識しなかったにしても，そこには一種の宿命的なものが感じられ

る。

皿　富と名声の神話

　0傾074Co〃¢ρσ”fo刀加ノ4吻8■ioβη五惚惚加■8（4版，1965）によれ

ば「彼の作品のすべてが貧乏と誘惑に対する奮闘が必ず少年を富と名声

に導くという理念の上に書かれている。」アルジャーの成功物語について

のこれは一般的な慨念にちがいない，しかし，実際には彼の主人公達は一

　　　　　　　　　　　　　　一53一

八四

　般に考えられる富と名声には決して達しない。彼等は決して当時の産業界

　　の統師にも，百万長者にもならないだろう。また全国的な名声を得るもの

　　もいない。結論的に云ってしまえば，彼の成功物語の中で彼は勤勉と節約

　　が主人公を必ず富と名声に導くだろうと保証しはしない。それによって

　competenceとrespectabilityが得られると説くのである。そして富と

　　名声よりもこの二つの理念が彼にとって重要なものであった。

　　　まず彼の出世作，代表作であるRα認副・Di罐を見るのが当然であろ

　　う。1）孤児の主人公はニューヨークの街頭で靴みがきをして生きている。

　　彼は仕事に熱心で商売がうまいので，若い事務員よりも金をかせぐのだが・

　　．くワリー劇場や賭博場に入ったり，高い煙草を友人におごって浪費するの

　　で，時々は安宿にも泊まる金のないときがある。成功のための三つの徳・

　　勤勉，正直，節約のうち，彼は仕事に勤勉で，わずかな釣銭も返しに行く

　　程正直であるが，節約の徳には欠ける訳である。彼の転機は，彼がニュー

　　ヨーク・の観光案内として雇われた実業家の息子と友達になり，彼から自

　　尊心と向上心を鼓舞されたことから始まる。彼はDickに云う。　「もし

　　あなたがひとかどの人間に，社会で尊敬される一員になろうと努めれば・

　　そうなれるのですよ。金持にはなれないかも知れません。誰でもが金持に

　　なれるとはかぎりませんからね。でも一人前の地位をもって尊敬されるよ

　　うにはなれるのですよ。」2）Dickは真面目に「よし・やって見よう」と

　　答える。

　　　D玉ckの希望は金持になることよりも，社会の中で立派な地位を占め・

　　尊敬される人間になることなのである。彼はその為に浪費をやめ，下宿を

一　定め，同じ靴みがきの仲間であるが教育のある友人を家庭教師として読み

　三　書きを習い，日曜学校に行き始める。ある日・ハドソン川に落ちた子供を助

　　けたことから，富裕な商人である子供の父親の商会で事務員として一週10

　　ドルで働くことになる。彼の前途は開かれ，r尊敬される人間になろうと

　　いう彼の大きな野心は結局達成されるだろうと思われる」3）とアルジャー

　　　　　　　　　　　　　　　　一54一

は予言して，物語は終るのである。いわゆるFrom　Rags　to　Richesの

成功物語の一般的概念とはRσ囎躍D∫罐が異なっていることは，簡単

な筋からも明瞭であろう。

　この作品があまりに好評であったので，アルジャーは同じ主入公による

第二作」勉耀σ”6∫b7如麗（1868）を書いた。今やRagged　Dickで

はなくRichard　Hunterと名のるこの少年は，彼の入った新しい社会の

習慣，テーブル・マナーなどに戸惑いながらもなんとかそれを身につけ，

彼の勤務先Rockwe11商会での彼を陥れようとする同僚の策謀にもうち

勝って，年俸1000ドルの会計係に昇進し，さらにRockwe11氏の共同経

営者が引退すると，今まで貯えた金を出資してRockwell　and　Hunter

商会のJunior　Partnerになる。アルジャーのFame　and　Fortuneと

はこの程度の中庸の成功である。但しそれは何よりも自分の商会を持つこ

とで示される経済的独立の理念を重視している。

　Ragged　Dickのシリーズは更に続くが，次の作品Mσr々，∫hθM磁oh

、Boy（1868）ではDickは主人公でなく，主人公Markを助けて面倒を見る

後見人として登場する。ただし，まだDick自身Rockwe11商会の会計係

の時期であり，彼はr社会での名誉ある地位を得るため」夕食後勉学に励

んでいる。数学やフランス語を学ぶのだが，後者については一年間でかな

り読めるようになったという。フランス語はDickにとって実用的価値と

いうよりも，紳士としての教養の意味を持つものなのである。そして彼の

日曜学校での熱意と勉学が認められ，“Richard　Hanter　is　Promoted”

と題された章において，彼は日曜学校の一つのクラスを受持つことにな

る。彼の社会の名誉ある地位をえたいという希望が着実にかなえられてい　．＿

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　八く訳である、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一一、

　アルジャーの他の主人公達も，Dickと同じ希望に動かされる。To砿

痂8Boo云δ1α罐（1878）‘）で主人公は交通の激しい（無論馬車のために）ブ

ロードウェイでセムシの婦人を助け，彼女からgentlemanと呼ばれた時

　　　　　　　　　　　　　　一55一

　　から，社会で尊敬される地位（a　respectable　place）を持ったgentleman

　　になりたいという大望が生まれる。結局彼は西部に行き法律を学び

　　Wisconsinで弁護士となって地位と名誉を得る。アルジャーは彼が下院

　　議員に選ばれるという噂があるとつけ加えて物語を終えるが，もしそうな

　　れば，多分アルジャーの主人公の中では最も有名になった人物の一人と思

　　われる。

　　、θo嬬4’o　Rfs2（1873）5）の主人公はNew　Hampshireの貧しい農家

　　の息子であるが，フランクリンの自伝を読み，彼が勤務と節約，忍耐，自

　　立心によって偉大な政治家，哲学者になったことを知り，フランクリンに

　　倣って成功者になりたいと考える．しかし中庸を先ず重んずるアルジャ

　　一の主人公の野心は余り大きくない。彼はフランクリンのような偉人にな

　　れるとは思わないが，ある程度の金持になりたいと考える。彼は貧しい生

　　まれから大金持になった人々がニューヨーク，ボストンなどには大勢いる

　　ことを知っている，しかし，彼は隣の地主のような拝金主義者にはなりた

　　くないと考え，地主のモットー“LiveandEam”と対して彼は“Live

　　and　Leam”を主張する。そしてこの物語が雑誌に連載中の題名は“Live

　　and　Le＆m”であった。6）

　　　このようにアルジャーの主人公の求めるのは富と名声ではなく，先ず

　　“a　respectable　member　of　society”になることであり，“an　honorable

　　Place　in　the　commmity”を占めることなのである。それは具体的には

　　教養と資産をもった中産階級の紳士の像であった。Rags　to　Richesの神

　　話の伝導者という一般的概念とはうらはらに，アルジャは多くの物語で

一　r誰でも金持になれるわけではありません」　と云い続けた。それには運

八一　によるのであり，幸運は時々神の恩寵のように彼の主人公に訪れるが，す

　　べての正直な努力の人に対して必ず訪れるとは限らない。しかし彼等は

　　自分の生活を支えるだけの資産は必ず獲取できる筈である。彼はRiches

　　でなくcompetence，（an　income　sufficient　to　fumish　the　necessity

　　　　　　　　　　　　　　　　－56一

of　life，without　great　luxuries）を説いたのである。

　従って彼の理想的成功者とは，同時代の産業界の統師Camegieや

Rockefellerではなく，18世紀のBenjamin　Franklinであった。つまり

r富への道」を説きながら，42才で一生を支えるだけの資力を貯えるとた

ちまち実業から引退し，あとは政治的奉仕活動と自分の好む自然科学の研

究に過ごしたこの典形的self・made　manであった。彼の主人公達はフ

ランクリンの偉大さを望むほど野心的ではないが，勤勉，節約，正直とい

う彼の成功への道の教えに忠実に従ってcompetenceとrespectability

をそなえた紳士になることを望むのである。

　アルジャーは確かに19世紀後半の社会を物語の題材としたにちがいない。

しかしRichard　Weissがノ47麗7foσ”ル解h夢Sπ60召ss8）でも説くよう

に，彼の成功の理念は彼の描いた工業化の時代，あるいは金メッキの時代

のそれではなく，彼の育てられた南北戦争以前の農業社会における中産階

級の理念であった。彼が“an　honorable　place　in　the　community”と

いう時，そのcommunityはニューヨークの街ではなく，19世紀前半の

ニューイングランドの田舎町である。そこでは彼の父のような聖職者も当

然成功者と考えられる筈である。実際には彼の父は経済的に充分な

competenceをもっていたと云えないにしても，マサチューセッツの州

議会の議員として何年か選出されていることは地区の人々の彼に対する敬

意を示すものであろう。

　Rex　BurnsはS鷹。εsε切ハ規2■∫oα9）において19世紀中頃までのアメ

リカ社会の伝統的成功の理念は独立自営農民の姿を原型として考えられ，

それは成功の三つの要件competence，independence（経済的，法律的　一

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　隷属からの自由），virtue（あるV・はそれに対する社会の尊敬）の象徴であ　○

つた，と述べている。この成功のイメージは都市に住む者の心も捉えてい

たので，徒弟工から出発して自営の印刷業で成功したフランクリンもまた，

urban　yeoman一都会でこのyeomanの成功を実現した人物一の典

　　　　　　　　　　　　　　一57一

型的代表者として考えられた。アルジャーの成功者もまたこの農本主義的

成功の観念を原型としている。Dickがなるであろうニューヨークの個人

商会の経営者は独立自営農民の象徴する　competence・independence・

moralityの都会における体現者なのである。そしてアルジャーにおける

農本主義の影響は彼の都会と農村に対する態度にも窺われる。

IV　都会と農村の神話

　　ThθG■o瞬h夢A規87f昭πThoκ8h’（1964）において，Merle　Curti

　　はアルジャーの物語では「主人公がしばしば田舎から移ってくる都市は

　　広い機会に満ちた舞台，昔のフロンティアに相当するものとして描かれて

　　いる」1）と述べている。確かにアルジャーは田舎から出た少年が都会で悪

　　の誘惑に打ち勝って成功する様子を描いた。しかし彼はその物語が田舎の

　　少年達を都会に引きつけることを心配しながらそれを書いたのである。多

　　くの物語の中で作者は都会に機会を求めて出る若者に対して警告して田舎

　　にとどまるように勧める。Boπ”4∫o　Rfsθでは次のように忠告する。

　　r中には高給をとる店員も都会に居るが，それは例外的である。そして都

　　会の雑貨店の店員は，高い生活費を考えれば・田舎の職人より生活は楽で

　　ない。しかし田舎の少年は誤った判断に動かされ，急いで立派な田舎の家

　　を捨てて，結局労働時間の長い商店のカウンターに立ち，荒涼たる三流の

　　下宿屋を貧しい住居とすることになる。…勿論成功して金持になる者も居

　　る。しかし田舎から都会の店員になりたくて来る者は何万人もいるが・

　　そのうちごく少数者をのぞいて皆わずかな収入しか得ていないのだ。」2）

　　　しかし彼が少年達に警告した根本的理由は成功の機会の有無よりも都会

莞　の生活の彼等に与える不道徳な影響力を恐れた為である。　砿α■々，飾θ

　　M凄oh　Bの’の中で都会の誘惑に落ちた若者を静かな田舎町に追放して次

　　のように云う。　r都会の影響力から逃れて，彼の性格が改まり，男らしく

　　人に頼らなくなることを期待しよう。」3）彼は健全な農村に対して不道徳

　　　　　　　　　　　　　　　　一58一

な都会を考えるジェファーソン以来の農本主義の神話を，当時の他の人々

と同じように信じていたであろう。しかし同時に彼自身のニューヨークで

の生活がその信念を強めさせたと考えられる。

　19世紀の代表的社会事業家Charles　Loring　Braceがr定まった家も

職もなく通りを放浪する多数の少年，少女一彼等は犯罪者や売春婦や浮

浪者の数をたえず増加させている」4）と述べたのは1850年代であったが・

南北戦争後それはさらに深刻化した。戦争による孤児，スラム街から逃げ出

した子供，農村から出てきた若者，さらにr新移民」の中の貧しい親から

捨てられた子供連が街をさまよっていた。Braceを中心にして1853年には

「ニューヨーク貧困家庭児童の間に増大する犯罪と貧窮に対処するため」に

The　Children7s　Aid　Societyが創立されているが，その仕事の一環と

して新聞少年宿泊施設が1854年に建てられた。

　前にのべたように，アルジャーがBrace　を知るのは　ThθR召囎24

α励の評判によってである。Braceが彼にその施設を紹介したのは同種

の題材の作品を書き続けることを勧めて，彼を通じて孤児や浮浪児達に対

する社会の関心を高めようとしたのであろう・アルジャーの方は・しかし

単にそこでの少年達から得た材料を物語に使っただけでなく，彼の多くの

物語にこの施設を登場させ，積極的にその存在と意義を世間に伝えたので

ある。そして，さらにThe　Children’s　Aid　Societyの他の活動にも賛

同協力していく。これはBraceとアルジャーが都会の少年問題について

本質的に同じ考え方をもっていたことを示すのであるが，それはまた二人

が同じような環境と教育を共有したためであろう。

　CharlesLoringBraceはアルジャーより数年早く，1826年にコネ　＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　七チカット州でニューイングランドの古い家柄に生まれた。5）父は牧師に　八

なる計画で大学に入ったが，結局教職につき女学校の校長になる。

Charlesは父に教育をうけ，16才でYale大学に入り，1846年卒業する。

アルジャーと全く同様に一年間教師をした後で，再びYale　Divinity

　　　　　　　　　　　　　　－59一

　　Schoo1で神学を学ぶ。明らかに聖職への道を歩むのだが，そのころ

　　から彼の関心は都会の孤児・非行児などの社会問題に移っていた。彼もヨ

　　ーロッパ旅行をしているが，その間も自分の将来の進路の準備のように，

　　各国の保護施設などを見学している。帰国後牧師，社会事業家達とともに

　　The　Children’s　Aid　Societyを作ると，その中心になって働き，彼の指

　　導のもとに，浮浪少年のために夜学校，職業学校，また新聞少年宿泊施設

　　のような宿泊施設を創立した。

　　　さらに彼は都会の貧乏と犯罪から完全に少年達を救い出すために，彼等

　　を西部の農村に移す運動を推進した。年少の，犯罪歴のない少年達　　全部

　　で10万以上の数に昇る一が西部の家庭に引きとられ，そこで同時に働き

　　場も見つけた。　（これは但し年期奉公のように期間を縛られるものでなく，

　　どちらの側からも契約を解除できるものであった，と云う。）Braceの方

　　針は依頼心を助長するような古い慈善事業の方法を排して，当時としては

　　近代的なself－he1Pの原則に立った。その為には少年達はすべて自己の可

　　能性を追求する機会が自由に与えられるべきだと考えた。彼の活動の成功

　　により彼の名は世界的に知られ，Emerson，Henry　Ward　Beecher，は

　　じめDarwin，John　Stuart　Mi11などの友人を得た。1890年に64才で亡

　　くなった。

　　　このようにBraceもアルジャーも共にニューイングランドのプロテスタ

　　ントの家庭の雰囲気で育ち，共に聖職を選んで神学校に学んだ共通の環境

　　から，両者の間に程度のちがいはあるにしても，共に道徳的指導者の意識，

　　あるいは一種の使命感をもっていたことは考えられる。それが二人を都会

＿　の犯罪者の群れに陥りつつある少年達を救い出す運動の推進者と協力者に

七七　したことは云うまでもないであろう。さらにそのために少年個人の自立心，

　　自尊心を強調し，伝統的な成功の倫理を教える事でも二人は一致していた。

　　　Braceが新聞少年宿泊施設を建てたのも彼のそのような理念によって

　　である。ニューヨークの町を放浪する少年達はそれぞれ何らかの手段で（ま

　　　　　　　　　　　　　　　　一60一

つとうな手段から犯罪にいたる）自分の生活を支えていた。その中で，

r正直な手段で生きるべく努力している少年達は悪の力に対して闘ってい

る英雄のように思われた。特に新聞少年や靴みがきは，アメリカの自助崇

拝一正直で勤勉，節約で有徳な若者は必ず成功するという哲学一の

実行者であると見られた。新聞少年は少年援護協会の見る模範生だった。

彼等ほBrace達が街の少年に教え込もうとした徳を体現してv・ると思わ

れた。」6）Braceは彼等が最も必要としているものは宿泊所であると知っ

て新聞少年宿泊施設を建てた。そこでは少年達に慈善を施すのでなく，わ

ずかでも宿泊費，食費を支払わせて，自尊心と自立心を尊重した。

　アルジャーが最初にこの施設について書くのは砿α地，Th8M加oh

Boツにおv・てである。それは先づ主人公のMarkが義母の虐待を逃れ

る避難所であるが，アルジャーはそこの宿泊者のための’銀行”について

ふれる。それは貯金箱にすぎないが，さもなければ賭博と煙草と劇場に使

われる金を少年達がそれぞれ独立するために貯えているとアルジャーは

云って次のようにつけ加える。　r貯金の傾向は街の少年達の最初の頼もし

い兆候であって彼が自分の環境から抜け出して，社会で尊敬される地位を

得たいという希望をもっていることを示している。」7）このようにアルジ

ャーは街の少年達を指導する方向については完全に　Braceと一致してい

た。それは例えば節約の習慣を通じて伝統的なニューイングランドの生活

態度，世俗化されたプロテスタンティズムの倫理を教えることであった。

　しかしBraceは少年達の自立心，自尊心に訴えるのみでは都市の少年

問題の根本的解決にならないことを知っていた。先ず彼等を都市の環境か

ら引き離すべきであった。Braceも都市は悪の誘惑と不純に満ち，健康　＿

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　七的で健全な農村の生活とは比べようがないと考えていた。8）彼と児童援護　六

協会のplacing・out　system（少年達を西部の農家に住まわせ働かせる運

動）はこのようにして始まった。

　都会と農村について，その環境が少年達の人格形成に与える影響につい

　　　　　　　　　　　　　　一61一

　　てBraceと全く同意見であったアルジャーがこれに賛成したことは云う

　　までもなv・。1μ1fμs：Th8SケεαB砂0躍四θs≠（1874）は彼のこの

　　運動への賛意の表明であり，また援護の方法であった。9）主人公の

　　Juliusは，泥棒に育てられ，盗みを教えられたが，新聞少年宿泊所を通じ

　　て，他の少年と共に西部の農家に引きとられる。ここで彼は，主人Tailor

　　の財布を取る機会があった時にその誘惑に打勝って，正直と意志の強さを

　　証明する。さらにインディアンに攫われたTailor氏の娘を救い出して勇

　　敢さと機敏さを証明し，お礼の金で自分の土地を手に入れるのである。最

　　後に彼はTailor氏の農地の経営者となり，さらに金持になるであろう。

　　しかしその前にJuliUSはニューヨークに帰り，彼の成功を新聞少年宿泊

　　所に住む昔の仲間に知らせ，西部に来るように勧めなければならない。

　　　r数年前までは私も君達と同じように新聞を売り，靴みがきをして，こ

　　の街をうろついていたのです。ぼろを着て，前途に希望もありませんでし

　　た。　もしそのままニューヨークに残っていたら，今も同じ暮らし方をし

　　ているのでしょう。しかし，幸運にも私はオコーナーさんに勧められて西

　　部に行き，そこで親切な友人と良い家庭を見つけ，立派な教育をうける機

　　会を持ったのです。今，私は恩人であり第二の父と思っている人の，大き

　　な農場を経営しています。今に私は金持になるでしょう。皆さん，この都

　　会を出て西部に行けばあなた方の得になるのです。あなた方は私のように

　　金持の友人を見付けるという幸運に恵まれないかも知れません。しかしそ

　　こで人並みの暮らしが出来なければ，それはあなた方自身の責任です。あ

　　なた方を受入れる家庭は沢山あり，あなた方の仕事も沢山あるのです。も

一　し成功したいと思うなら，尊敬されるようになりたいと思うなら・チャン七五　スのあり次第西部に来られることをお勧めします。」m

　　　奇妙に聞こえるかも知れないが，これがアルジャーのDickの仲間達

　　に対する真摯な忠告であった。ここで彼は都会が彼等に対して殆んど

　　成功の機会を与えないとを認めている。勿論西部にいっても，皆が金持

　　　　　　　　　　　　　　　　一62一

になるとはかぎらない。しかし正直に働けば人並みの暮らしは出来るだろ

うし，社会で尊敬される人にもなれるだろう。しかも誘惑に富む都会は成

功するための人格を陶冶する場ではない。その為にも健全な西部に行くべ

きなのだ。アルジャーは農村や地方の町から都会に機会を求めて出たいと

望む若者に警告し，同時に都会を彷徨する少年達には西部に移ることを勧

めたのである。都会が彼の目にr機会に満ちた広大な舞台」とは決して見

えなかったことは確かである。

　それに対して鉄道と共に開発が進み，労働力を必要としている西部に移

ることを若者達に勧めることは合理的であったにちがいない。実際，西部

諸州や鉄道会社，土地会社も人々を招くためにr機会に溢れた黄金の土

地」を宣伝していた。その意味ではアルジャーも，それに迎合したといえ

なくもないであろうが，しかし彼の根本的理念はやはり伝統的なアメリカ

農本主義の倫理感に立って，道徳的に堕落した都会に対して，質実，素朴

な農村に若者を送り，その理想的環境で人格を形成させたいと望んだので

あろう。　n）

V　アルジャーと同時代の成功者

　Stewart　H．Holbrookはrどんな貧しい生れの者でも大統領になれる

と云うアメリカの夢は，さらに誰でもがCommodoreVanderbiltやJay

Cookeのような金持になる機会を保証した。ホレイショ・アルジャーは

アメリカの夢が現実に実現する．ことを証明するために109回にわたって同

様の物語を書いた。」1）と云う。このようなアルジャ一鶴は現在も一般的

に信じられてv・る。信頼出来る彼の伝記をかいた，Ralph　D．Gardnerも　一

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　七Edwin　P．Hoyt　も同様にアルジャーの成功物語の現実性は同時代の　四

John　D．R㏄kefe11erやAndrew　Camegieなどの生涯によって立証

された，と述べている。

　しかし，今まで見てきたように根本的にはcompetenceとrespecta一

　　　　　　　　　　　　　　一63一

　　bilityを内容とするアルジャーの中産階級的成功の観念は，19世紀後半・産

　　業界の支配者達の巨万の富と力とに対するあくなき所有欲に象徴される成

　　功とは本質的に異なっていた。またアルジャーの主人公達の身につける中

　　産階級のマナー，身だしなみなどに対して，大企業家達の中のself・made

　　menは軽蔑をもって答えたであろうし，アルジャーの説いた紳士の資格と

　　しての学問，教養についても，彼等は実際的な知識以外は無用のものとして無

　　視したにちがいない。Vanderbiltは生涯に一冊の本（P∫忽■伽’5P■09■θss）

　　を，しかも70才過ぎてから読んだだけであったと云われている。r教育を

　　うけるのに時間を使っていたら，他のことを学ぶ時間がなかったろう」と

　　彼は云った。Daniel　Drew　はもっと率直だった。“Book　leaming　is

　　something，but　thirteen　million（iollars　is　also　something，and　a

　　mighty　sight　more．”2）

　　　Richard　Weissは，Th8A吻醇∫oσ”1吻∫h夢S鷹02ssの中で，アメ

　　リカの成功の理念の内，産業社会における巨大な富と権力への欲望をr成

　　功の夢」，農業社会の時代の宗教的，素朴で中庸を重んずる成功の観念を

　　r成功の神話」として区別し，アルジャーを後者に入れている。

　　　それでは何故アルジャーの成功物語が実業界のself－made　menの代

　　弁と考えられてきたのであろうか。アルジャーと彼等の成功の観念に共通

　　しているものは何であろうか。結局それは成功が勤勉，節制，正直など個

　　人の人格characterの反映であるとする伝統的な考え方であった。アル

　　ジャーは街の少年を尊敬される中産階級の紳士にするためにそれを説き，

　　産業界のナポレオン達は自分の成功をそれによって説明した。

＿　　RichardHofstadterはSooi81Dα7～o∫”fs別’”」4甥67foσ”Tho麗ghオの

七三　中で次のように云う。　r急激な発展，搾取的手段，決死の競争，絶対的な

　　失敗の拒否によって，南北戦争後のアメリカはダーウィンの云う生存競

　　箏と適者生存を人間社会で実証する巨大な戯画のようであった。」3）この

　　ような情況の中でr実業家達はダーウィンの言葉をほとんど本能的に受け

　　　　　　　　　　　　　　　　一64一

入れ，社会淘汰のアナロジーが彼等の考え方に最も適したものであること

を発見した。」しかしこれに反論してIrvin　G．Wyllieは「成功と失敗に

ついて語った実業家達は，ダーウィンやスペンサーの本でなくキリスト教

の道徳家の本を引用している。彼等は富への競争の中で，生まれつきの知

力，体力その他の生得の性質でなく，勤勉，節約，節制など誰でも函養し

うる単純な徳に絶対的な影響力を認めている」4）と書いている，スペンサ

ーの信奉者を自認したカーネギーのような例外はあるが，多くの実業家た

ちはダーウィンもスペンサーも読まなかった，という．

　Hofstadterの云うように実業家達は企業の競争の中で，生存競争の意

味を理解したにしても，その敗者は知らず，その勝利者はその成功を自分

の個人的徳，characterの力に負っているとf言じ，それによって正当化し

たと考えられるであろう。

　さらにカーネギーにしても伝統的成功の倫理を前提として考えていたこ

とは無論である。彼は自分の成功，巨大な富と力の獲得，をその伝統的倫

理のみによって正当化することに不安を感じたので，スペンサーに頼り，

さらにr富の福音」を書いたのでなかろうか。そこで彼は競争の法則は高

い代価を要求するにしても，社会にとって不可避なものであり，有益なも

のであると説く。　「個人にとっては辛いものであるかも知れないが，この

法則はすべての分野で適者生存を保証するか戸），人類にとって最良のもの

である。」5）

　スペンサーのもう一人の弟子，アメリカの代表的な社会進化論の主唱

者，社会学者William　Graham　Sumnerも経済的成功は個人の人格と

徳の結果であると考えていた。そして生存競∠資におけるr強者と弱者は勤　一

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　七勉家と怠慢家，倹約家と浪費家と同義と解されなくては意味のない言葉で　一

ある」6）と述べて，伝統的成功の倫理とSocial　Darwinismを結びつけ

たことを示した。

　そしてIrving　G．Wyllieによれば，実業界のself・made　menは成

　　　　　　　　　　　　　　一65一

　功の唯一，絶対的要件であるcharacterの形成には貧乏と農村の生活が

　理想的環境と考えていた。7）そこでこそ野心，勤勉，節制，正直などの徳

　を人は学ぶことが出来るのである。（たとい後で都会の金持として暮らす

　ためであっても。）そこで金持の息子は絶対に成功しないだろうし・都会

　育ちの若者に成功の機会は少ないのである。アルジャーの成功物語は確か

　　にこの点でも共通していた。

　　　さらに彼が同時代の産業界の成功者の代弁者と見られる理由の一つは案

　外に彼の作品の題名にあるかも知れないのである。Merle　Curtiはアル

　　ジャーが成功礼讃によって，同時代の資本家達を弁護したと主張する。8）

　そして作品の題名が彼の根本的思想を表わしていると述べ，アルジャーが

　　ファンに与えた，彼の物語の題名をはめ込んだ次の詩句をあげる・

　　“Strive　and　Succeed，”the　world’s　temptations　flee，

　　“Be　Brave　and　Bold，”and“Strong　and　Steady”be．

　　Go　“S！ow　and　Sure，”and　prosper　then　you　must．

　　Win“Fame　and　Fortme，”while　you“Try　and　Trust”、

　　　しかしFame　and　Fortuneの実際に意味するものがどの程度の成功で

　　あるかはすでに見たところである。そして　Sloz〃朋4S解8の副題は

　　From　the　Street　to　the　Shopであった。ニューヨークの街頭の新聞売

　　りから商店主へ　　これこそアルジャーの成功物語を要約する代表的題名

　　ではないだろうか。そして前述のようにBoμη4云。　R漉の原題は　Live

　　and　Leamであった。原題は当時の成功物語の題名としてはそぐわなか

　　つたにちがいない。…般的に彼は物語の題名に余りこだわらなかったよう

一　であり，出版社の意向によって題名が変更されたことも何度かあったよう

七一　である。

　　　アルジャーは彼の時代の代表的成功者，産業界における実在の

　　self．made　menについて何も語らなかったし，石油，鉄鉱，鉄道などの

　　産業資本家は作中人物としても登場しないのである。それは彼が産業社会

　　　　　　　　　　　　　　　　一66一

の機構についても，その中で活躍する彼等の役割についても全く無知であ

ったためであろう。ただ例外として，枷δ6■！Cαr泥r’s五召goσy（1875）

においてVanderbiltが少年時代ニューヨークの渡舟の漕手から出発して，

ついに巨万の富を築いた成功者として紹介される．しかしアルジャーは彼

がそれによって貧しい少年からgentlemanになった事をより強調してい

る。アルジャーはVanderbiltも彼自身の成功の観念の中で理解していた

ように思われる。彼が一般的に産業界の統師たちをどう見ていたかは結局

推測の域を出ないが，彼等の成功の勤勉と誠実による正当化をアルジャー

が認めたにしても，彼等のあくなき所有欲と巨万の富の蓄積に対しては，

それが彼の成功の理念と異なるものと感じていたのではなかろうか。

　実際に現実の世界ではこれらのrobber　baron達の成功とアルジャー

的成功が対立するものであることが明瞭になるだろう．19世紀末に企業の

集中が急激に進行する中で，小企業は次々と淘汰される。つまり大企業は

アルジャーの描く中小個人企業家の成功の機会を徐々に奪っていった。従

って彼の成功物語は実は　Camegie，Rockefeller等の同時代の　self－

made　men，産業界の統師たちによって現実に立証されるどころか，逆に

彼等と彼等の大企業がその実現の夢を滅ぼしつつあるものであった。　r個

人主義の時代は過ぎ去った」と　Rockefellerは宣言した．rもう再び戻

っては来ないだろう。」今や資本と労働の集中と組織化の時代であった。

　そして当時の資本家と労働者の対立が激化する情況の中で，中産階級は

組織された両者の力によって自からの地位が脅かされつつあることを感じ

ていた．1884年の年次教書で大統領Clevelandは　r使用者と被雇用者と

の格差は拡がるばかりであり，急速に二つの階級，金と権力をもった階級　＿

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　七と労苦にあえぐ貧民階級が形成されっっある」9）とのべた。1886年には　O

AFLが結成され，同じ年にシカゴのヘイマーケット事件が発生し，1892

年にはカーネギー製鋼会社のホームステッド工場のストライキで労働者

とスト破りのガードマンとの間に数名の死者を出した。翌年国勢調査局の

　　　　　　　　　　　　　　一67一

ある統計学者は全米の富の71％を9％の家族が所有していると推定した。

「中産階級の国アメリカ」の神話は崩壊しかけていた・

　このような社会情況の中でアルジャーは産業資本家について語らなかっ

たように，当時の工場労働者についても語らなかった。彼は結局彼の生き

ていた産業社会について何も理解しなかった。確かに彼の物語には産業社

会の断面が現われる。労働力の流出によって荒廃しつつあるニューイング

ランドの農村が影を落とし，そして無秩序に膨張する都会に放浪する少年

達は彼の物語の主人公であった。しかしそれに対して彼は農村の若者にそ

こに止まるよう勧め，街の少年達には中産階級の紳士となる夢を語ってい

た。つまり彼は産業社会の及ぼした幣害を旧時代の理念に従って匡すこと

を考えていた。

W　アルジャーと革新主義の時代

　　　彼の物語の全発刊部数は正確には分らないが，1600万部から2000万部と

　　推定されている。この尨大な冊数のうち大部分が奇妙なことに彼の死後か

　　ら第一次大戦の間に発刊された。これは勿論当時安価な10セント版などが

　　大量に出たことが原因であろう。しかし彼が最も読まれたのがいわゆる

　　progressivismの時代，中産階級がその社会的地位と権威を回復しようと

　　した時代，であったのは偶然でないであろう。t）

　　　革新主義運動の中心となったのは都会の中産階級，職業では医者，弁護

　　士，牧師，商人，小企業家，教授，作家などであり，しかもアングロサク

＿　ソン・プロテスタントの家系の出が多かった。つまりGeorgeE．Mowryが六九　いみじくも“the　urban　gentry”と呼んだ人々であった。この運動は，

　　Hofstadterによれば，r以前のアメリカには存在していたが，後に大企

　　業と腐敗した政党機関によって破壊されたと信じられた一種の経済的個人

　　主義と政治的民主主義を回復しようとする努力であり，また同時に一種の

　　　　　　　　　　　　　　　　一68一

道徳と市民的純粋性を取り戻そうとする試みであった。」2）その背景につ

いてHofstadterは次のように説く。3）もともと多くのアメリカ人の理想

的社会像は財産と権力が広く分散していた農業社会の中で創られた。そし

て20世紀の初頭においても，多くの人々の親しみを感じた世界は，個人経

営による大多数中小規模の企業と，集中化されず，あまり組織化されない

生活より成る過ぎ去り行く世界であった。そして現実に企業が個人的形態

から巨大な管理的組織に代ってゆく事態に対して，革新主義者達は失なわ

れつつある個人の機会を維持することを要求した。またヤンキープロテス

タント的環境に育ったアメリカ人の大部分は経済的成功が個人の人格と関

わり続けることを求めた。経済的組織が単に十分な商品とサーヴィスの生

産のための体制でなく，個人の経済活動に対する刺激と報酬の体制である

ことを望んだ。しかるに大会社や金力家，政治ボス等はこの希望を無視し

ていると考えられた。何故なら大企業の成功は人格とか企業心と余り関係

がなく，金力家の行動は市民としての責任感に反していると思われた。

　革新主義時代の政治的指導者達，　Theodore　Roosevelt，William

Jennings　Bryan，Woodrow　Wilson等は皆この中産階級の希望と不安

を代弁し，またそれに訴えた。例えば大統領戦にNew　Freedomのスロ

ーガンを掲げたWilsonは次のように訴えた。4）大企業とトラストの出

現はアメリカ社会全体を変えてしまった。　r人々は昔のように独立自営業

者とか共同経営者として働くのでなく，一般的に大会社に雇用されている。

個人の経済活動は会社の中に埋没してしまい，一方少数者が大組織を支配

し，強大な支配力で国家の経済のみならず，個人の幸福も左右している。

　…」今やアメリカの伝統である筈の自由な機会と公正な競争は失われつ　＿

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　六つある。rアメリカでは個人の人格と意志以外には何の制約もない筈であ　冗、

る。階級，家柄，身分などの差別なく，その個人の功績によって勝利また

は敗北をうる筈である。」現在大企業とトラストによって破壊されつつあ

るこの経済的個人主義と自由競争の理念をアメリカは再び取り戻すべきな

　　　　　　　　　　　　　　一69一

　　のである。

　　平等な機会と自由な競争，経済的成功を個人の人格の反映とする考え方，

　　さらに大企業家でなく，中小規模の自営業者に代表される成功のイメージ

　等，これら革新主義の時代の中産階級が回復しようと望んだ社会はつまり

　　アルジャーが描いていた世界であったと云えるであろう。

　　　さらに革新主義者達は実業界の統師達の巨大な富に対する攻撃を，物質

　主義に対する批判という道徳的立場から行った。彼等は巨万の富の獲得は

　　道徳的価値の犠牲によってのみ可能であると考えた。George　E　Mowry

　　によると，中産階級の改革者たちは富そのものを否定する気は全くなかっ

　　たので，r良い富」とr悪い富」の区別を設けようとした。5’ある者は正

　　しい手段で得た富だけがrよい富」であると主張し，またある者は富の増

　　大が持主の人格に益することをやめて，逆に害に変る限界があると主張し

　　た。　（誰もその限界を決めることは出来なかったが。）これもアルジャー

　　の富に対する道徳主義的態度と似たものであろう。

　　　さらに革新主義者の大多数は都市に対する農本主義的な反感をもってい

　　た。都会は極端な富と貧困が並び，純真な農村の若者を退廃と堕落に巻き

　　込む渦だと考えられた。Muckrakerの一入，David　Graham　Philips，

　　は彼の小説の作中人物に次のように云わせる。　r都会に長く住むと人はア

　　メリカ人でなくなってしまう。本当に価値あることをしそうな本物のアメ

　　リカ人に会うには西部に行かねばならない。」6）そしてWJ・Bryanを

　　はじめとして，T．RooseveltもWilsonもこの農本主義の神話に対する

　　支持をそれぞれに表明した。

一　　この反都会的感情の原因の一つは都市に増大しっっある移民，特に南欧，

六七　東欧からのr新移民」に対する警戒心と偏見のためであり，また一つには

　　これらの移民の面倒を見ることによって彼等の票を利用した政党機関（マ

　　シーン）とその政治ボスに対する反感のためであった。アルジャーが人種

　　的偏見をもっていたと断言は出来ないが，Ph∫1，酌θ盈げ鷹併の場合を例

　　　　　　　　　　　　　　　　一70一

外とすれば，彼の物語の主人公が皆アングロサクソン系の顔付の少年達で

あることは事実である。またRα囎24D∫醜の中には主入公の社会的向上

を妬むMicky　McGuireとv・う不良少年達のボスが登場する．アルジャ

ーは彼についてrもし彼が今30才位で，もう少し教育があれば，政治に興

味をもち，地区の会合で目立って認められ，選挙の日には立派な考えの投

票者に脅威を与える人間となっていただろう」7）と云う。云うまでもなく，

これは当時，アイルランド系が支配したニューヨーク市のマシーン政治に

対する皮肉であるが，同時に彼のアイルランド系移民に対する感情の一端

は窺えるであろう。物語の中では無論McGuireはアングロサクソン系の

主人公によって完全に敗北させられることになる。

　このように見てくると，彼の物語が最も売れたのがprogressivismの

時代であったことが納得されるであろう。彼はこの時代の中産階級が取り

戻すことを望んでいた理想に成功物語として表現を与えていただけでなく，

彼等が恐れ，拒否したがっていた現実の脅威一大企業と大資本家，労働

者と労働組合，移民とボス政治など　については描かなかったのだから。

それは革新主義者の望んだような巨万の富も極度の貧困もなく，トラスト

も労働組合もなく，つまりすべて中産階級に吸収されるべき世界であり，

またアングロサクソン・プロテスタントの道徳と価値観の支配する世界で

あった。

　ホレイショ・アルジャーは皮肉な運命をもった作家である。彼は南北戦

争後の産業化の時代，あるいはGilded　Age（金メッキ時代）と呼ばれる

時代に生き，当時の物質主義とr成功崇拝」の代表的伝道者と思われなが

ら，実は産業化以前のアメリカ中産階級の理想を描いていた。そして彼の　＿

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　六死の前後から，20世紀初頭にかけて，中産階級が失われつつある彼等の理　六

想を回復しようとした時期に，彼の物語は最も読まれ，多分そのために彼

の名は今日まで残ったのであろうが，皮肉なことに彼の物語が革新主義の

時代と共に忘れ去られた時，彼の名は彼の生きた時代と結びづけられ，巨

　　　　　　　　　　　　　　一71一

万の富と名声という意味での

のである。8）

r成功」の代名詞となって英語の中に残った

註

1

1、

2．

3．

n　1

2．

R生翫皿L

　　　2．

六　　3．

五　　　4．

5

6

Ralph　D．Gardner，Foreword　to　Horation　Alger　Jr．，S伽s　S訂ob48”’s

O方f68Bgy（Doubleday，1973）pp、6－7

そのうち参考にした主なものは次のものである。

Merle　Curti，Th8　（；ro瞬h　oゾ　A餌εr加”　Thoμg乃∫（Harper＆Row，

Publishers，19643ed．）

John　G．Cawelti，、4po3μes　oノ孟h8Sθゲ・ル毎ゴθ砿σ”　（Unlv、of　Chicago

Press，　1965）

Richard　Weiss，丁舵A惚プ加”　ノ吻∫h　げsμooεs5（Basic　Books　Incり

1969）

Richard　M．Huber，Th召A卿θプ吻”　∫4昭　o∫　S”‘‘8ss（McGraw・Hi11，

1971）

Rex　Burns，Sμ608ss切A膨r吻（Univ．of　Massachusetts　Press，1976）

Stewart　H．Holbrook，Lo3孟〃伽‘ゾ、肋！顔‘4π研5∫oη（Macmillan，1948）

p．237

生涯についてはRalph　Gardner，Horα’fo。41gεr　or　∫h8　A餌er∫σσπ　Hθro　Ero　（Alco

Publishing　Co．Inc．1978）　と　Edwin　P。Hoyt，Ho7σグ。’s　Bgアs　（Chiton

Book　Company，エ974）を参，照した。

P。Hoytの前掲書P．251

同書p．230

同書pp．5～6

同書p．84

Horatio　Alger，Jr．，勲99召4Df6たσ紹〃4挽，∫舵〃α励βの（Macmillan・

1962）

同書P．75

同書p。215Horatio　Alger，Jr．，To測地εBoo∫ゐ1α‘た　or　A　確ε5∫ε「”　Boヅs　S∬oo8∬

（The　New　York　Book　Company，1911）

Horatio　Alger，Jr．，Bo∬”4如R∫sεor乙φ∫舵L認4θr（New　York　Book

Company，1909）

Ralph　D．Gardner，前掲書p．397

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－72一

8

9

WL

2345

6．

7．

8．

9．

10．

11．

VL乞3

∠TrD

6

Richard　Weiss，A餌8ブ加”吻漉0／S解‘εss，（Basic　Books　Incり1969）

pp．48－61

Rex　Burns，Sπoo8ss加且蜘副砲（Univ．of　Massachusetts　Press，1976）

pp。17－18，p．30

Merle　Curti，丁舵Oro捉，飾‘ゾノ1”昭r∫‘σπ丁加μg配（Haper＆　Row，1964）

pp、629－630

Boμ”4∫o　R∫ε8，p．60

R49984D娩＆M4rた，伽賜・勧助・P・361Joseph　M．Hawes，Ch∫14r8”　動　ひゆ仰　300観フ　（Oxford　Univ・Press・

1971）p．91に引用されている。Braceの活動については主に同書に依った。

彼とAlgerの関係についてはGardnerとHoytの伝記による。Joseph　M．Hawesの前掲書とD∫‘∫ノ。π4，フ　oゾ」4摺礎∫‘σ”　β∫09惚ρ勿　の

Braceの頂による。

Joseph　M．Hawes，p．95

Rσ9脚D㈱＆伽r為，伽Mσ勧助，P・293Joseph　M．Hawesの前掲書P・88

Hoytの前掲書pp。140－152

同書PP．151－152

アルジャーと同じく新聞少年宿泊施設の後援者であり，またplacing・out

systemを援助したのはP、T．Barnumである。このいかさまを見世物に仕

立あげ巨万の富を得た「アメリカ最大のショーマン」こそr金メッキ時代」に

相応しい自力独行の成功者であった。しかし彼はアルジャーの年長の友人であ

り，アルジャーと同じく伝統的成功の倫理を少年達に説き・また禁酒主義者と

して酒の害を力説していた。二人の成功のイメージは多分異なっていたが，少

年達を成功の倫理によって向上させたいと考えていた点では共通であったのだ

ろう。

Stewart　H．Holbrook，丁舵・4gεげ酌εMog記1s（Double（1ay，1954）p。89

1rving　G　Willie，“Social　Darwinism　and　the　Businessman，’Nicholas

Cords　and　Patric　Gerster　編　ハ｛y∫h　σπ4　∫舵　・4”28■∫‘σπ　Eエρ召r紹”σ2

（Glence　Press，1973）VoL　II　p．128　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿』

RichardHofstadter，So‘fβ’Z）σ削加∫s辮加A餌8〆髭σ”Tho”9配（George六　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　四Braziller，Inc．，1959）p、44

1rving　G．Wnlieの前掲論文P・129

Andrew　Camegie，“Wealth”．Richard　D、Heffner，、4、Oooμ餌8漉鍔qブ

伽U競84S’σ’θ3，（A　Mentor　Book，1956）pp，167－168

William　Graham　Sumner，Eεs4ッ30ゾ予7疏。惚6ブσh傭3記溜”εr（Yale

一73一

789WL2．

345．

678

Univ，Press，1934）Vo1．II，p．56

1rving　G　Winie，下舵Sεゲ・砿σ48M側’”。4餌鮮血σ（Macmillan，1954）

Merle　Curti，前掲書pp．626－630

Richard　Hofstadter，Thεノ1”」8r‘昭π　Po1痂‘41　T704∫∫fo”　＆　’加　〃伽

凹み。　Mσ4ε’∫（Vintage　Books，1974）p．237

Richard　Weissによるとアルジャーの死亡記事は生前の全売上冊数を80万と

している。従ってそれ以外は死後から第一次大戦の間に売れたことになる。

Richard　Hofstadter，丁加ノ1g召。ゾR夢or餌　（Vantage　Books，　1955）　pp、

5－6

同書PP．10－11

Woodrow　Wilson，“The　Old　Order　Changeth”in　T舵　飽”　Er884伽

（Doubleday，1913）

George　E．Mowry“The　Progressive　Profile’，in　T加　Eプσ　‘ゾ71加040■8

Roosεδ8」’，1900－1912．Reprinted　in　Nicholas　Cords＆Patric　Gester，ed．，

物醜4”4坊θ且餌辞命σκE‡ρ群’θ”σ2，Vo1．II．p．172

同書P．167に引用ノぞα9984Z）∫6たσ”4”8プ為，〃把ハfα∫‘ん　Bρy，pp．122－23

彼の名がいっからFrom　Ragsto　Riches神話の代名詞となったのか不明で

ある。第一次大戦後は彼の物語は殆んど少年達の関心の外にあったが，1947年

にはTheAmerican　Schoolsand　Colleges　Associationが「個人のための

成功の機会が今も存在することを青年達に教えるために」著名な自力独行の人

に与えるホレイショ・アルジャー賞を設定した。この頃から彼の名は象徴的意

味を帯びさせられたのかも知れない。

山ノ、

74一