17
リーダーシップの本質 くーナート、の組織理論は、人間ないし個人に古!関i して、相対立する個人 と組織の統合を問題にする協f 動や組織は、観察、経験されるように、対 花する事実の具体的な統合物であり、人間の対?とする思考や感情の具体的 統合物である。管理者の機能 l 工、具体的行動において矛盾する諸力の統合 を促進し、対立する諸力、本能、利害、条件、な場、理想を調整すること である o l1 〉したがって、管理者の職能は、対立する諸力の統合を具体的活 動において促進することである。すなわち、「第ーに伝達体系を提供し、 第二に不可欠な努力の確保を促進し、第三に目的を定式化し、規定するこ とであるこ 12) 組織が長期的に存続するためには、 共同目的に共通な意味を与え、他 の諸誘因を効果的ならしめる誘因を創造し、変化する環境のなかで、無数 の意思決定の主観的側面に一貫性を与え、協働に必要な強い凝集力を生み 出す個人的確信を吹き込む !3)リーダーシッブが必要である。それは、 i1 人的な関心あるいは動機のもつ離反力を克服するものである O このよ うなリーダーシッブは、個人と組織との間の対立を調整し、組織に内在す る諸困難を克服するために必要である一 パーナート、 l 土、このリーゲーシッブを「道徳」と「責任Jの概念から分 1) C. 1. Barnard TheFunctionsofthe Executive 1938 p.2 1. 2) C. 1. Barnard ibid. p.217. 3)i bid. p. 283. 4)i bid. p. 283.

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リーダーシップの本質

日日 原 雅 文

くーナート、の組織理論は、人間ないし個人に古!関iして、相対立する個人

と組織の統合を問題にする協f動や組織は、観察、経験されるように、対

花する事実の具体的な統合物であり、人間の対?とする思考や感情の具体的

統合物である。管理者の機能l工、具体的行動において矛盾する諸力の統合

を促進し、対立する諸力、本能、利害、条件、な場、理想を調整すること

であるo l1〉したがって、管理者の職能は、対立する諸力の統合を具体的活

動において促進することである。すなわち、「第ーに伝達体系を提供し、

第二に不可欠な努力の確保を促進し、第三に目的を定式化し、規定するこ

とであるこ 12)

組織が長期的に存続するためには、 共同目的に共通な意味を与え、他

の諸誘因を効果的ならしめる誘因を創造し、変化する環境のなかで、無数

の意思決定の主観的側面に一貫性を与え、協働に必要な強い凝集力を生み

出す個人的確信を吹き込む !3)リーダーシッブが必要である。それは、 i1飼

人的な関心あるいは動機のもつ離反力を克服するものである O このよ

うなリーダーシッブは、個人と組織との間の対立を調整し、組織に内在す

る諸困難を克服するために必要である一

パーナート、l土、このリーゲーシッブを「道徳」と「責任Jの概念から分

1) C. 1. Barnard, The Functions of the Executive, 1938, p.21.

2) C.1. Barnard, ibid., p.217.

3) i bid., p. 283.

4) i bid., p. 283.

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- 90 リーダーシッアDの本質(前原)

析している。本稿は、リークーシッブの本質を道徳と長任との関連におし、

て考察するものであるο

1 リーダーシップと道徳

バーナードは、リーダーシッフ。を、 「信念を作り出すことによって協働

的な個人的意思決定を鼓舞するような力と定義する。「その信念とは、

共通理解の信念、成功するだろうという信念、個人的動機が結局;前たされ

るという信念、客観的権威が確止しているという信念、組織に参加する個

人の目的よりも共通目的のほうが優先するという信念である。 :6) このよう

な信念を、組織の内部に作り出すことによって、組織の構成員に共通目的

に対する協働的態度を生じさせるのであるO

パーナードは、組織におけるリーダーシップの重要性を指摘して次のよ

うに述べている。すなわち、「組織の構造、あるいはその動的過程につい

て綿密な研究をすれば、協働のより技術的な側面を強調しすぎるおそれが

生ずるだろう O しかし通常は、構造的な特徴があいまいで、作用要因の把握

が困難であるために、人間協働における主要要因を『リーダーシッブ』だけ

に求めることになる。 1

7) しかし、また、パーナートは、「リーダーシッブ

とか道徳的要素とかが、組織における唯一の重要な、意味のある一般的な

要因であると想定することは、ちょうどリーダーシップがなくても協働の

構造と過程だけで十分であると考えるのと同じように誤りである O いずれ

の見解も道理と経験に一致しなし、。 日的のある協働は構造的性格のある

限度内においてのみ可能であり、それは協働に:{(献するすべての人々より

得られる諸力から生ずるのである O 協{動の成果ばリーダーシップの成果で

はなくて、全体としての組織の成果であるコしかし信念を作り出すことが

なければ、すなわち、人間努力の生きた体系がエネルギーおよび、満足をた

えず相互に交換しつづけうる触媒がなければ、これらの構造は存続するこ

5) ibid., p.259.

6) ibid., p.259.

7) ibid., p.258.

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リーダーシップの本質(前原) - 91 -

とができない、否、一般に成立すらしなL、。生命力が欠乏し、協働が永続

できないのである。リーダーシ、ソプではなくて協働こそが創造的過程であ

る 18)と述べてリーダーシ、ソブだけを強調することの誤りを指摘するO そ

して、「協働諸力に不可欠な起爆剤 19)としてのリーダーシッフを主張する。

このような意味でのリーダーシッフの必要性について、バーナートは、

次のように述べている。すなわち、「物的環境と人聞の生物的構造とにも

とづく諸制約、協働の成果の不確定、目的の共通理解の困難、組織に欠く

べからざる伝達体系の脆弱さ、個人の分散的な傾向、調整の権威を確立す

るための個人的同意の必要、組織に定着させ組織の要求に服従させようと

する説得の大きな役割、動機の複雑性と不安定、意思決定という永続的な

負担、これらすべての組織要素一一道徳的要因はそこに具体的にあらわれ

る一一ーからリー夕、ーシッブが必要となる。J10)このように組織に固有の諸困

難を克服するためにリーダーシッブが必要とされるのである。

組織に固有の諸国難を克服し、個人と組織との間の対立を調整し、統合

するためのリーダーシップは、「技術的な練達と道徳的複雑性とに対する

比較的に高い個人的能力に与えられる名称であるJlllとして、八一ナート

l工、それを技術的リーダーシップと道徳的リーダーシヅプに区別する O

技術的リーダーシッブは、「局部的、個人的、特殊的、一時的で、ある O

体力、技能、技術、知覚、知識、記憶、想像力における個人的優越性の側

面である O これは直接的な側面で時と所のいかんによって非常に変動し、

条件づけ、訓練、教育によってとくに育成され、特殊な事情のもとにおい

てとくに意味があり、相対的で、かなり容易に決定しうるものであって、

比較的に客観的で、、 hUi阪的な行為に必要であり、人から尊敬もされ、対抗

もされるものであるU12)

8) ibid., p.259.

9) ibid., p.259.

10) ibid., p.259.

11) ibid., p.288.

12) ibid., p.260.

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- 92ー リーダーシップの本質(前原)

これに対して、道徳的リーダーシッブは、「より一般的で、 より不変的

であり、特定的に育成することがむずかしく、より絶対的で、主観的であ

り、社会の態度と理想およびその一般的諸制度を反映するものである。決

断力、不屈の精神、耐久力、および勇気における個人的優越性の側面で、あ

る。それは行動の質を決定するものであり、人がどんなことをしないか、

すなわちどんなことをさし控えるかという事実から、最もよく推察される

ものであり、尊敬と崇敬をあつめるものである O われわれが普通に「責任』

とし、う言葉に含めるリーダーシップの側面であり、人の行動に信頼性と決

断力を与え、目的に先見性と理想性を与える性質である。J13l

以上のパーナードの説明からも明らかなように、技術的リーダーシップ

は、一時的で、局部的な条件によって影響をうけるものであり、特定の仕

事における個人の優れた能力と関連をもつのである。これに対して、道徳

的リーダーシップt土、より一般的で、より安定的であり、環境的条件によ

ってあまり影響されなL、。それは、「長期的に人々を組織に結合させる個

人の信念を反映するものである。J14lこのように、パーナードは、リーダー

シッブを技術的側面と道徳的側面から分析しているが、基本的には、道徳

的リーダーシッブを重要視している。それは、バーナードが、主著第17章

「管理責任の性質」において、「道徳」 と「責任」の概念からリーダーシ

ップを考察していることからも明らかである。すなわち、「リーダーシッ

プの重要な側面は道徳的要素であり、リーダーシッフとその道徳的要素が

なければ組織は存続しないということが認識されなければならない。J15l

2 道 徳 と 責 任

パーナードは、道徳、を次のように定義する。すなわち、「道徳、とは個人

13) ibid., p. 260. 14)飯野春樹稿「バーナードの管理とリーダーシップの理論」関西大学『商学論集J

創立90周年記念号 1975年 18ページ。15) W. B. Wo!f, The Basic Barnard; An lntroduction to Chester 1. Barnard and His Theorie~ of Organization and Management, 1974.

日本バーナード協会訳「バーナード経営学入門jその人と学説 ダイヤモンド社1975年 212ベージ。

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ワーダーシップの本質(前原) - 93-

における人格的諸力、すなわち個人に内在する一般的、安定的な性向であ

って、かかる性向と一致しない直接的、特殊的な欲望、衝動、あるいは関

心はこれを禁止、統制、あるいは修正し、それと一致するものはこれを強

化する傾向をもつものである。…- この傾向は、合理的過程とか熟慮、の

問題であるよりも、むしろ情操、感情、情緒、内的強制の問題である。.

・・この傾向が強く、安定しているときにはじめて責任の一条件が備わる

ことになる。J16l

このようなパーナートの道徳概念は、個人主義的なものであれそれ

は、個人の行動における私的行動準則 (aprivat巴 codeof conduct)を意味

する。「道徳は、人間としての個人に外的な諸力から生ずるJ17lものである。

それは、個人の物的環境、社会的環境から生じ、経験や習慣、教育や訓練等

を通じて習得され、摂取されるものであるO すなわち、個人は、彼が「関

係する環境の複雑性に比例して、さまざまな私的道徳準則 (privatecodes

of morals)をもつようになる J18lのであり、 このような道徳準則によって

安定した行動を示すものと考えられる。したがって、「道徳諸準則の内面的

な摂取の仕方によって、個々人の道徳、性 Imorality)が決定されることにな

り、同時にまた個々人の独自性をもあらわすことにもなる。すなわち、こ

の道徳性の存在こそが、個々人をして人格的存在として自律化せしめ、ま

た個性化せしめ、彼らの自由な行為を社会的に特認される一定の安定的な

行為たらしめるものなのである。」19)

このように各個人に内面化された道徳は、「通常の意味での法規ではな

くて、個人に対して現に働きかけている累積された諸影響の合成物で、あっ

て、具体的な情況において行動からのみ明らかになるJ20lものである。す

16) C. 1. Barnard, ibid., p.261.

17) i bid., p. 262.

18)坂井正広稿「バーナード理論における道徳の問題J11組織科学」 第9巻第3号

1975年 17ページo

19)向上 17ページ。

20) C.1. Barnard, ibid., p.262.

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-94ー リーダーシップの本質(前原)

なわち、道徳準則は、「一般的には滞在意識のレベルに仔在するものであ

るから、それらは人の言葉よりも行為によって感知されるものである。 :2])

そこで、バーナードは、このような道徳準則と行動ないし行為との関連に

おいて、責任の問題を考える O

パーナードは、責任を、「反対の行動をしたし、とレう強L、欲望あるいは

衝動があっても、その個人の行動を規制する特定の私的道徳準則の力f2)

と定義する。人聞は、さまざまな私的道徳準則を保持しているから、その

うちのある道徳準則についてはこれを遵守するが、他の道徳準則について

はこれを遵守しない場合がある。このような場合、前者は、道徳準則に対

して責任的でめり、後者は、道徳準則に対して責任的でないといわれる。

このように道徳準則を遵守する行為が、責任的な行為である。 したがっ

て、「責任は、個人が白己の道徳準則を遵守する程度を示す尺度であ

る。 123)

ところで、「一つの主要問題について責任的である人は、他の問題につ

いてもまた責任的で、ある、すなわち、逆境下においても、安定した情感、な

らびに信念に合致した行動をとる一般能力をもっ i24)と考えられる。倫理

的には低い道徳、準則しかもっていない人々でも、高い責任惑をもって、そ

の準則を遵守する場合がある。ぎた、逆に、より高い道徳、性をもっている

人々でも、自己の準則を遵守しない場合もある。すなわち、道徳、水準の高

低と責任能力とは別問題である。ここでいう「責任能力とは、準則に反す

る直接的衝動、欲望あるいは関心にさからい、準則と調和する欲望あるい

は関心に向かつて、道徳準則を強力に遵守する能力である。J25) したがっ

21) W. B. Wolf著

日本ノミーナード協会訳「バーナード経営学入門J214ベージ。

22) C. 1. Barnard, ibid., p.263.

23) W. B. Wolf著

日本パーナード協会訳「ノーーナード経営学入門J214ベージ。

24) C.1. Barnard, ibid., p.263

25) ibid., p.274.

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‘い‘"..",,,'

リーダーシップの本質(前原) - 95-

て、「大事なことは、責任とは、各自に内在する道徳、性がどんなものであ

っても、それが行動に影響を与えるような個人の資質だということであ

る。f6)

このようにノミーナードの責任の概念は、個人サイドの概念として、道徳

性と結びついた個人の資質ないし能力を意味するのであるO バーナード

は、このような責任を非常に重要視するが、その理由について、 1958年の

論文“Elementaryconditions of BusIness Morals" において次のように

述べている O

「現在の情況で私を最も印象づけるものは、大いに注白されている混

乱、挫折、無責任さではなく、むしろ現代文明とその科学技術的表現の

発達に伴った責任ある行動のいちじるしい増大なのである。……・・多く

の種類の対立にもかかわらず、実際は、巨大な大きさと複雑さとをもっ

社会的行動のネットワークが、比較的誤ちゃ失敗もなく、日ごとに、そ

して大いに自律的に維持されている、ということであるo

道徳的行動の規模と複雑さがこのように増大したのは、第一に、増大

した専門化、とりわけ経済的諸活動における、また物質的目的のために

用いられる機械や原材料における増大した専門化の結果で、ある O 現に必

要とされる技術的知識と専門化された経験から生じる技術的スキルに対

してはますます注意、が払われている。これらの諸活動に含まれる道徳的

要因は、ほとんどまったく無視されているように思われる O しかしなが

ら、専門fとされた諸活動の重荷が果たされるに際しての信頼性と、われ

われがそれを担う人々に帰する信頼性とは、現代文明の最も基本的な側

面をなすものである。J27)

そして、さらに責任を重視する理由として次のような三つの指導的観念

26) ibid., p.267

27) C. I. Barnard,“Elementary Conditions of Business Morals", California Manage-

ment Review, Vo1.1, No.1, 1958, 飯野春樹監訳桜井信行・坂井正広・吉原正

彦共訳「ビジネス・モラノLの基本的情況J関西大学『商学論集』第20巻 第 1号

76ベージ。

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96ー リーダーシップの本質(前原)

を主張している C

「その第一は、あらゆる公式組織は、社会的システムであり、単なる経

済的あるいは政治的な手段的存在とか、会社法のなかに暗に含まれた仮

構的法的存在よりもはるかに広い何ものかである、ということである。

社会的システムとして、組織は、慣習、文化様式、世界についての暗黙

の仮説、深い信念、無意識の信仰を表現し、あるいは反映するのであ

る。そしてそれらは、組識を主として白律的な道徳的制度たらしめ、そ

の上に手段的な政治的、経済的、宗教的、あるいはその他の機能が積み

重ねられ、あるいは、この制度からそれらの機能が発展してくるのであ

る。

第二の観念は、経営意思決定は大いに道徳的な問題に関係がある、と

いうことである。疑いもなく、このことを認識するずっと以前から、私

はそれを例証するような数多くの経験をしてきたので、あった。しかし、

私は事実的で推論の結果達ぜられた結論に支配されている、技術的ない

し科学技術的な性格の意思決定と、価値という比較的明確に感取しえな

いものを含んでいる意思決定とを、決して区別してはいなかった。しか

し、組織における道徳性についてのこのような観念は、組織内部に生じ

てくる問題の一つであった。そしてそれは、これらの公式組織がそのな

かに存在している大きな社会に一般に行きわたっている道徳概念と、ほ

とんど、あるいはまったく関連がなL、し、また法的存在としての法人組

織の責務ともかかわりのないものであったO

人々の聞の協働が、彼らの活動からなる公式組織を通して、道徳性を

創造すると L、う事実は、 1938年には、私にとって驚くべき着想であっ

Tこ。J28)

このようにノくーナードが責任を重複する根拠は、第一に、現在のよう

に高度に専門化された複雑な社会においては、相互依存関係が増大し、信

頼性ある行動、すなわち自律的な責任ある行動が必要とされること、第二

28)向上 54ページ。

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リーダーシップの本質(前原-97-

に、公式組織は、社会的システムであり、自律的な道徳的制度であるこ

と、であるυ すなわち公式組織を自律的な道徳的制度とみなすことによっ

て、組織におげる専門化さわた諸活動の道徳的要因を重視することから、

責任を重視する思考が生じてくる C それは、責任が、道徳性との関連にお

いてのみ意味をもつからである C

ところで、個人は、さまざまな道徳準則を保持しているので、その準則

の聞に対立が生じる場合があるc その場合、支配的な準則が存在すれば、

「通常、重大な人格的困難はなく、行為者は一般に対立を意識していな

L 、0 ・第三者の立場から見た場合にのみ、その行為に不一致があること

となる。かようなとき、人格的な問題は、せいぜい誠実の問題であるか、

あるいは言行不一致となるかもしれないという問題だけである。」加すなわ

ち、個人が、支配的な準則を保持している場合には、あまり問題は生じな

いが、円、くつかの準則が、当面の問題に関して、実質上、同じ効力ある

いは同じ力をもっときには、準則聞の対的工重大な人格的な問題とな

るJ30〉のである O

このような準則間の対立から生ずる結果として、パーナードは、次のよ

うな三種類の場合を指摘している。31)

(1) 行動の麻埠状態が生じ、感情的緊張を伴い、挫折感、梗塞感、不安

あるいは決断の喪失および自信の欠如にいたる場合。

(の ある一つの準員IJの遵守と他の準則の侵害があり、罪悪感、不倫快、

不満足あるいは自尊心の喪失にいたる場合c

(3) 直接的な欲望、衝動、関心、あるいはーつの準則の指令を満たしな

がら、他のすべての準員IJにも合致する代替行動が見出される場合。

このように、準則聞の対白工、個人の行動に影響を」与え、 (1)の場合と (2)

の場合は人格的破壊をもたらす。これに対して、 (3)の場合のように代替行

29) C. I. Barnard, The Functions of the Executive, p.264.

30) C. 1. Barnard, idid., p. 264.

31) ibid., p.264.

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- 98ー リーダーシッブの本質(前原〉

動が見出される場合には、人格的彼壊をもたらすようなことはなく、人間

として満足し、責任を十分果たすことができるのである O

このようなさまざまな道徳準則を保持している個人が、組織に参加した

場合、 '(,同人ば、特定の組織との接触から、公的(組織的)克任を要求す

る組織道徳、のいくつかを白己の準則としてもち、組織人格を形成する」叩

のであるコ組織道徳が形成される基盤l土、人々の相互関係であり、人々の

協働関係が継続されることによって、組織道徳が創造されるomパーナー

トi工、公式組織における道徳性を次のように分類している。叫すなわち、

それば、(1)個人的責任、 (2)代理的あるいl工公的な責任、 (3)職員としての忠

誠、 (4)法人としての責任、 (s)組織への忠誠、 (6)経済的責任、 (i)技術および

川学技術的責任、 (8)法的責任、である J

このような道徳性のなかで重要と思われるものは、 (3)の「職員としての

忠誠ーであるが、このことについて、パーナードは、次のように説明して

いる。すなわち、「公式に組織された諸活動において、主要な職員の関係

;工上司と部下の関係であり、 同じ階層の人々(同僚の労働者〕のあいだの

関係である。この関係には、それぞれの公的資格で、行為する個々人への忠

誠が含まれている C このような情況における忠誠とは、他の人たちの責任

を認めること、夕、っていると忠われたり、弘欲に反すると思われる手段に

よることも多いが、それによってこれらの諸責任が遂行される過料で他の

人たちを支持しようとする欲望を意味する O 自発的な建設的努力は主とし

てこのような忠誠から生れてくるのであり、そしてそれらは組織の凝集性

の非常に大きい部分を構成するc」35〉そして、さらに、「職員としての忠誠

の基準が服従であると認めるようでは、これらの関係の高度に道徳的な性

32)坂井正広稿了パーナード理論における道徳の問題JIT'組織科学J第 9巻第3号

19ベージ。

33)向上 18べージ。

34) C. 1. Barnard, Elementary Conditions of Business Morals, 1958.

飯野春樹監訳桜井信行・坂井正広・吉原正彦共訳「ビジネス・モラルの基本的

情況」関西大学「商学論集』第20巻第 l 号 61~ìOページ。

35)向上 64べージ)

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リーダーシップの本質(前原) ~ 99 ~

格は理解されないであろう O 単なる命令の受容、規定通りの報告書の作

成、明細書に記された職務の効果的な実行などは、すべて固有の不忠誠と

まったくかわりがなく、事実また、サボターシニの手段となりうるのであ

るJ36)と説明している O

このような組織における道徳性は、組織の内部に生ずる問題の一つであ

り、それば、これらの公式組織が存在している大きな社会に一般に行きわ

たっている道徳概念とは、ほとんど関連をもたないのであるJ7〉すなわち、

それは、組織活動のなかから生ずるものであり、個人的利益ではなく、組

織の利益に関連している。そして、「道徳的行動とは、当面の情況のもとで、

ある L、は特定の文脈において、特殊なことをなすかいなかの意思決定の私

的利害または直接の結果に関係なく、何が正しいか、何が間違いであるか

についての信念ないしは感情によって支配されている行動」38)を意味する。

組織における道徳性は、「複雑であり、あるものは他のものからまった

く独改し、またあるものは寓援に関連し、相互依存的であり、かつ、それ

らの大部分は計測することのできないものである。しかし、それらのあい

だには多くの不一致と矛盾があり、それ故に責任の対立は協働的努力の

特徴的な情況であることは・…明らかである GJ39

)このような組織における

複維な道徳性が、同時に効力をもっ場合には、それらの聞に倫理的な対立

が生じる O バーナードは、このような対立から生ずるジレンマは、一般に

次の諸結果のうち、少なくともとやれか一つをもたらすと述べている 040〉す

なわち、挫折感や優柔不断に始まる一般的な道徳の低下、あるいは偶然や

外部的で無関係な決定要因や偶然の庄力などに意、思決定をゆだねようとす

る額向にみられる一般的な責任感の減退、あるいは対立の機会を減らすよ

うに不活発な情況への意識的な逃避、あるいは「トラブルの回避」、「誘惑

36)向上 64ベーシC

37)同上 54ベーシC

38)向上 59ページ。

39)向上 70ページ C

40) C. 1. Barnard, The Functions of the Executive, pp.271-272

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-100ー リーダーシップの本質(前原)

の回避」¥「責任の回避}として知られているように、対立を回避する能カ

の発展、あるし、はL、かなる準則をも犯すことなく直接的な欲望や要求を満

たす代替策を考え出す能力の発展、などであるc この最後の方策すなわち

新しい道徳準則の創造によって、倫理的な対fゆミら生ずるジレンマを解決

することができる l二この道徳、準則の創造こそ管理者の創造的職能であり、

それは、 リーダ一、/ッブの本質的側面をなすものである O

3 リーダーシップの本質

管理者は、組織において、個人的な道徳、準則と同時に公的な組織準則を

保持する。組織準則は、非人格的なものであり、それは、 「主として無形

の諸力、影響力、慣行などから生じるものであって、全体として受け入れ

られねばならないものである。J山管理者が、「その職位を与えられると、

そうでない場合よりも複雑な道徳性をもつようになる」山が、職位が上昇

するにつれて、それは、より複雑化するのである O したがって、管理者に

は、「一般的な個人の道徳問題のほかに、組織によって道徳的な複雑性な

らびに責任感のテストのいちじるしい増大と、道徳状態を創造する機能と

がつけ加えられるのである。,43)

このように「地位が高くなればなるほど、それに含まれる道徳性がます

ます複雑になり、責任を果たすため、すなわち、その職位に内在する道徳

的な対一之を解決するために、ますます高い能力が要求される 144

)のである。

「管理職能に伴う道徳的な複雑性は、それに対応した能力をもっ者だけが

これに耐えることができる,45)のである O このように管理職位は、複雑な

道徳性を含んでいるので、 「管理職位が高くなればなるほど、ますます道

徳的な対立にさらされ、意思決定過程は、道徳的にも、またしばしば技術

41) C. I. Barnard. ibid., p.273.

42) ibid., pp.273-274.

43) ibid., p.274.

44) ibidリ p.276.

45) ibid., p.276.

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リーダーシップの本質(前原 -101-

的にもますます複維となるのであるつ '46)このように職位が上昇するにつれ

て、意思決定活動の負担は増大するつ意思決定の環境は、道徳性の対六を

含んでおり、在思決定過程(工、この道徳性の対 l'r:を解決する過程を意味す

るc

バーナートは、このような対ιを解決する方法として、次の事を主張す

る。すなわち、それは、「情況の戦略的要因をより正確に決定し、それに

よっていかなる準則にも反しない『正し~ ,~行為を発見するために、当該

環境をさらに分析すること、あるいは、一敗目的と合致する新しい細部目

的を採用すること、のいずれかである。両方とも、一般的能力のテストで

ある O すなわら、前者は、識別能力および分析能力のテストであり、後者

は、想像力、 [夫力、および革新力のテストであるコいずれの過flIもある

重要な雨からみれば、責任のうち『決断』として知られている部而を表現

するものである O 147)

この解決方法は、高い責任感がある場合のもので、そのために必要とさ

れるのは、知的、技術的な能力である O この能力が不十分である場合に

は、高い責任感があっても、準則を遵守することができず、人格の崩壊と

責任感の彼壊をもたらすのである。また、逆に、必要な能力があっても、

高い貞任感がない場合に:土、組織活動は混乱してしまう j したがって、

「道徳性を自覚し、それに支配される個人の資質、つまり責任の感覚がな

ければ、必要な各種の道徳性ないし責任問の対立を解決することは不可能

であるつJ48)

ところで、ハーナートは、リーゲーに必要とされる個人的資質ないし能

力として、次の五つを指摘しているすなわち、それば、(1)活動力と忍

耐力、(:2)決断力、 (3)説得力、 (4)責任感、および(5)知的能力であるο また、

46) ibid., p.276.

47) ibid., p. 276.

48) 飯野春樹稿「バーナードの責任と権威の理論 I~組織科学J 第 9 巻 第 3号 1975

年 12ベージ O

49) C. 1. Barnard, Organization and :¥1anagement, 1948, pp.93-95.

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-102ー リーダーシッブの本質(前原)

バーナードによれば、リーダーに必要な道徳的条件として、道徳的複雑性

と高い責任感ないし責任能力を指摘することができるが、とくに道徳的複

雑性を重視している c すなわち、それl土、一低い地位と高い地位との間の

おもな差異は、長任能力にあるのではなくて、道徳的な複縦性の程度にあ

る。 L火、かえれば、職位が高くなれば、しばしば言われるように、それだ

け多くの主任が諜せられるのはたしかであるが、しかしより大きな責任感

が強く要求されるのて、はなL、50)というパーナードの青葉から明らかであ

るヘ

リーターは、その地位ゆえに道徳的複線性を強調されるのであり、その

地位が高くなればなるほど、さまざまな環境の影秤をうけ¥道徳的に対 λ

することが多いので、それに対応して適切な意思決定を行なう必要があ

るつ印したがって、リーダーは、道徳的な対江を調整し、統合して、新し

い組織の道徳i'¥ia則を創造する能力を要求される「この道徳的自11造において

は、当然、道徳的複雑性が前提になければならなLらすなわち、それは、

リーダーの「道徳的内特が貧弱であれば、狭い道徳的枠に拘束されて、解

決に柔軟性を欠くことになるからである。 とくに現代のように、環境

の変動が激しい社会においては、このような道徳的複雑性は、その重要性

を増すと考えられるコ

組織における道徳的白I!造性の傾11同は、 組織内における『モラーノレ』の

確保、創造、鼓街と呼ばれているものであるここれは、組織ないし協1動体

系と客観的権威の体系に、考え万、基木的態度および忠誠心を教え込む過

保であり、それが、伺人的利害とか、 f同人的準則の重要でない指令を協{動

的全体の利益に従属せしめることとなるのである053)また、道徳的創造性

には、 一道徳的な対之を解決するための道徳的な基礎を工夫する J54){JW面

50) C.1. Barnard, The Functions of the Executive, p. 275.

51)山本安次郎・問杉続編[ハーナードの経常輝一論 l ダイヤモ/ドネ十 1972"f

264へージ 0

52)向上 264べーシJ

53) C. 1. Barnard, The Functions of the Executive, p.279.

54) C. I. Barnard, ibid., p.279.

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リーダーシッブの本質(前原 -103-

がある O このような場合の解決策として、行政的、あるいは司法的解決策

が考えられるが、それは、「対fF:を避ける析しい処置を代りにもってくる

か、あるいは例外とか妥協に道徳的正当性を与えるか、のいずれかであ

るっJ55l

リーダーは、組織における諸準 t~IJ の間の対立を統合して、他の人々に士、I

する道徳君主則を創造する能力を要求される。すなわち、リーターには、

「責任の最高の表現である『道徳的創造性』と Lづ管理職能 ;5引が必要と

される。したがって、「全体としての創造職能が、 リーダーシッフの本質

であるc それば、管理責任の最高のテストである υ なぜなら、剖造職能

{土、これを J乙派に達成するためには、 リーダーの見地からみて個人準則と

組織準則とがー致しているという『俗信』の要因を必要とするからであ

る。J57lこの職能は、組織活動において不可欠のものである。

そこで、われわれは、パーナードの次の言葉が重要な立味をもつものと考

えるO

「組織道徳の創造こそ、他人的な関心あるいは動機のもつ離反力を克服

する精神である。この最高の意味でのリーダャシッブがなければ、組織

に内在する諸困難はしばらくといえども克服できなL、。リーダーシッブ

は、自然、の法則を無効にするのでも、また、協働努力に不可欠な諸要因

にかわりうるものでもなし、っそうではなく、それは、必要欠くべからさ

る社会的な本質的存在であって、共同目的に共通な怠味を与え、他の諸

誘因を効果的ならしめる誘因を創造し、変化する環境のなかで、無数の

意思決定の主観的側面に一質性を与え、協1動に必要な強い凝集力を生み

出す個人的確信を吹き込むものである c58〉

55) ibid., p.279.

56) ibid., p. 261

57) ibid., p. 281.

58) ibid., p.283.

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~104 ー リーダーシッブの本質(前原)

リーダーシ、ゾブ l土、個人と組織との間の対、止を調整し、統合して、組織

に内在する諸困難を克服するために必要であるつパーナードは、このリー

ダーシソブを道徳と責任の概念から分析している。パーナートの道徳の概

念は、個人主義的なものであり、それは、個人の行動における在、的行動推

員IJを意味する J そして、古任の概念は、人格的、道徳的な概念と Lて定義

されているコすなわち、それは、何人にかかわる概念であり、道徳性と結

びついた個人の資質ないし能力を,意味する。

二一ナードは、点任の概念を~I'常 iこ重要視するが、それは、公式組織を

白律的な道徳的制度とみなすことによって、組織における専門化された諸

活動の道徳的要因を草視するからであるc したがって、 l リーダーは、権

力や強制力に{jIくるよりは諸何人の自律性と立任感、に信頼性を置き、かっそ

れらに依存してはじめて、全体としての調整が可能になるとともに諸個人

の発展をも期待することができるのである。「責任は信頼性の基礎であ

り、リーダーシッブ、管理職能にとって不可欠の資質であるに60)

組織における協働の基礎にあるものは、多元的で複雑な道徳慢であるニ

そして、このことが組織内に種々の対 J乙を生じさぜ、組織の存続をおびや

かす場合もあるが、この対止を軽減し、あるいほ解決するためには、責

任、能力、道徳性といった 1) ーダーン、ゾブの質が~要となる061} したがっ

て、「組織の永続性ばリーダーシッフの官に依存し、その質l士道徳、性およ

び道徳的創造性の問題と街接なつながりをもっ '62)のである。そして、こ

の道徳的創造住こそ、 リ-;1ーシ、ソブの本質的側面をなすものであるハ

そこで、次の言葉は、 リーダーンッブー論におけるバーナードのす:場をぷ

59)飯野春樹稿「ノ、ーナードの責任優先説につし、て|関西大学 7商学論集」第19巻

第5・6号 25へージ。

60) 三戸 公著「宵僚制」未来社 1973年 257ページο

61) W. B. Wolf著 日本ノミーナード協会訳 ノζーサート、経伝学入門:224ヘージハ

62)向上 224ベーン

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リーダーシップの本質(前原 -105-

もよく示している。

「全体としての創造職能が、 リーダーシッフーの本質である。それは、管

理責任の最高のテストである。なぜ、なら、創造職能は、これを立派に達

成するためには、リーダーの見地からみて個人準仰!と組織準則とが一致

しているという『確信』の要因を必要とするからである。 この職能l土、

組織の構成員に、ならびに公式組織の基底にあって最もすみやかに不誠

吏を感得する非公式組織に、 7確信』を与える同化作用である O それが

なければ、すべての組織は滅亡するο なぜなら、それは、組織を構成す

るために進んで瓦献する人々に、組織への定着欲求ーし、かなる誘因もこ

れに代りうるもので:土ないーーを起こさせる不可欠の要因だからであ

るづ

63) C. 1. Barnard, The Functions of the Execut;ve, pp.281-282.