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• これまでの温暖化交渉と直面する課題
• コペンハーゲン会議の到達点とCOP16の位置
• カンクン会議で何が決まったか • COP17(ダーバン会議)に向けた課題
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これまでの温暖化交渉の進展 • 1988年 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)設置 • 1992年 国連気候変動枠組条約採択(1994年発効) • 1995年 第1回締約国会議(COP1):ベルリンマンデート • 1997年 COP3(京都会議):京都議定書採択 • 2000年 COP6:京都議定書実施規則案に合意できず • 2001年3月 米国の離脱表明 • 2001年10‐11月 COP7:マラケシュ合意採択 • 2005年2月 京都議定書発効 • 2005年11-12月COP11・COP/MOP1(モントリオール会議) • 2007年12月 COP13・COP/MOP3(バリ会議) • 2009年12月 COP15・COP/MOP5(コペンハーゲン会議) • 2010年11-12月 COP16・COP/MOP6(カンクン会議) • 2011年11-12月 COP17・COP/MOP7(南アフリカ)
国連気候変動枠組条約(1992年) • 究極的な目的(2条)
– 「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準」で大気中濃度の安定化
– 議定書の究極的な目的でもある • すべての締約国の義務
– 排出量と吸収量の目録の作成と提出 – 温暖化対策、適応策等を定める国家計画の作成と公表
• 先進国の義務 – 政策と措置の実施、情報送付、途上国への技術移転と資金供与
• 条約機関の設置:COP、補助機関、事務局 4
京都議定書(1997年)
• 国別排出削減目標(3条1項) – 1990年を基準年として、2008~2012年の5年間(第一約束期間)の排出量が約束の対象
– 附属書I国(先進国と旧社会主義国(市場経済移行国))のみが負う
– 日本:-6%、米国:-7%、EU:-8% • 京都メカニズム
– 市場メカニズムを利用し、国外での削減分・吸収分を排出枠として獲得して目標を達成できる制度
– 共同実施(6条)、クリーン開発メカニズム(CDM)(12条)、排出量取引(17条) 5
国際枠組みの到達点
• 排出放任から排出規制への社会的価値・規範の大きな転換
• 京都議定書採択後の温暖化対策の進展 – 先進国国内での温暖化対策の進展 – 京都メカニズム、とりわけCDMの進展
• 5,443のプロジェクト(2,344が登録済み、さらに3,099が手続中)
• CDMによる2012年末までの削減量:28.69億tCO2 (以上、2010年9月1日時点のUNEP Risø Centreによるデータ) • 2007年のCERsの取引は、74億ドル(The World Bank,
2008) • 地球環境ファシリティー(GEF)は、2002年-2006年の4年間
で23億ドルを途上国の環境保全を支援 • 2006年末までに登録手続に入ったプロジェクトに伴う投資
額は260億米ドル(UNFCCC, 2007) 6
直面する課題(1)
• 問題解決への「実効性(effectiveness)」 – 世界全体の排出量を現在の排出量の少なくとも50%といった規模で大幅に削減できなければ、大気中濃度の安定化=温暖化の抑制はできない
– 京都議定書は、米国を含むすべての先進国が目標を達成しても1990年比5.2%削減にとどまる
– G8で合意された「2050年50%削減」の持つ意味 • 遅くとも2020年頃までには世界全体の排出量を頭打ち
– 長期目標を可能とする中期目標とそれを実現する国際制度の合意の重要性
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長期目標の意味するもの 分類 CO2濃度
(ppm) CO2‐eq濃度 concentra2on (ppm)
産業革命以前からの全球平均気温上昇 (℃)
CO2排出量が頭打ちとなる年
世界の排出量の変化(2000年排出量比%)
I 350‐400 445‐490 2.0‐2.4 2000‐2015 ‐85 to ‐50
II 400‐440 490‐535 2.4‐2.8 2000‐2020 ‐60 to ‐30
III 440‐485 535‐590 2.8‐3.2 2010‐2030 ‐30 to +5
IV 485‐570 590‐710 3.2‐4.0 2020‐2060 +10 to +60
V 570‐660 710‐855 4.0‐4.9 2050‐2080 +25 to +85
VI 660‐790 855‐1130 4.9‐6.1 2060‐2090 +90 to +140
9 Source: IPCC AR4, 2007�
直面する課題(2)
• 実効性確保のための「参加」の課題 – 先進国のより一層の削減
• 米国の参加と衡平な努力
– 途上国、とりわけ排出量が多い途上国と経済発展水準の高い途上国の相応する削減努力
• 国別排出量目標は難しくとも、成り行き(BaU)排出量よりできるだけ大きな排出削減を可能としうる制度
– 市場メカニズムを含む、資金供与や技術移転などの国際的な支援の制度
• 必要な資金・投資のフロー 10
11 出典) EDMC/エネルギー・経済統計要覧2010年版 全国地球温暖化防止活動推進センターHPより �
12
先進国と途上国のエネルギー関連二酸化炭素排出量
Source: IEA,�World Energy Outlook 2004�
13 Source: IPCC,2007�
14
450ppmシナリオの削減の場所
Source: IEA, World Energy Outlook 2009�
15 出典) EDMC/エネルギー・経済統計要覧2010年版 全国地球温暖化防止活動推進センターHPより �
エネルギー起源一人あたり排出量
16 Source: IEA, 2004
17
電力へのアクセスのない人々
(2002, million) Source:IEA, World Energy Outlook 2004
18
KP3.9条 (先進国約束)
交渉 開始
コペンハーゲン 合意
モントリオール会議以降の交渉の流れ
2005年� 2006年� 2007年�
枠組条約 長期協同 行動
2008年� 2009年�
バリ行 動計画
AWG-KP�
AWG-LCA�「対話」 開始
グリーンイーグルズプロセス�
洞爺湖サミット�
ラクイラサミット�
APP �MEM � MEF �
AWG-KPとAWG-LCA
• 議定書の下での先進国の2013年以降の削減目標に関する作業部会(AWG-KP)
– 京都メカニズムや森林など吸収源など、議定書の制度の包括的見直し
• 枠組条約の下での作業部会(AWG-LCA)
– 米国が参加した交渉の場。米国と途上国の排出削減・抑制努力についても検討
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AWG-LCA: バリ行動計画(1)
• 長期的協同行動のための共有のビジョン(a shared vision)
• 排出削減策(mitigation) – 先進国:「数量化された目標を含む、測定可能で、報告可能で、検証可能な(measurable, reportable and verifiable)その国に適切な排出削減の行動又は約束」。先進国間の削減努力の同等性(comparability)の確保
– 途上国:「測定可能で、報告可能で、検証可能な態様で(in a measurable, reportable, verifiable manner)、技術、資金供与及び能力構築により支援され、かつ可能になる、持続可能な発展の文脈でのその国に適切な排出削減の行動」
– 費用対効果の高い削減を促進する市場の利用 – セクター・アプローチ
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AWG-LCA: バリ行動計画(2)
• 発展途上国における森林減少からの排出削減対策(REDD)
• 温暖化の悪影響への適応策の促進 • 技術移転、資金移転の促進
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COP15での決定事項
• コペンハーゲン合意(Copenhagen Accord)を留意する(take note)COP決定
• AWG‐LCAの結果に関するCOP決定 – AWG‐LCAの報告とCOP15での作業をもとに、COP16で結果を採択することを目的にAWG‐LCAの作業を継続
• AWG‐KPの結果に関するCOP/MOP決定 – AWG‐KPの報告をもとに、COP/MOP6で採択することを目的にAWG‐KPが成果を出すよう要請
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コペンハーゲン合意の評価(1) • コペンハーゲン合意は締約国会議で採択できず
• 「採択」ではなく「留意する」決定の意味 – COPが正式に「コペンハーゲン合意」の存在を認める。しかし、COP(UNFCCCの締約国)をそれだけでは拘束しない
– この政治合意を支持する国は、事務局を通じて国名を「合意」冒頭に列挙
• 米国、新興国を含む136カ国とEUが支持を表明 • 附属書I国42カ国と非附属書I国43カ国が誓約を提出
(世界のエネルギー起源排出量の80%以上に相当) (2010年9月1日現在)
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コペンハーゲン合意の評価(2) • 課題は多い。しかし、交渉の歴史から見て明らかな前進点も
– 先進国と途上国の約束が同じ文書(プラットフォーム)に書かれる
• 「削減する先進国」と「削減しない途上国」という二分法からの脱却
– 途上国の削減行動を具体的かつ制度的に担保
• 程度の多少はあるが、国際的な検討の対象になる。特に支援を受ける削減行動は国際的なMRVの対象となる
– 短期的、中期的資金目標の設定
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コペンハーゲン合意の評価(3)
• What’s missing... – 明確な長期目標の記載なし – 途上国における森林減少からの排出削減(REDD)、市場メカニズム、国際航空/国際海運からの排出(バンカーオイル)、適応、技術(ex. IPR)の具体的な合意なし
– 先進国と途上国の約束が法的義務かどうか、次期枠組み合意の最終的な法的形式は決定されず
– 先進国の約束 • 先進国全体、国別の中期目標なし
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COP15が示したもの • 国際政治における気候変動問題の位置の変化
– 首脳レベルのアジェンダへ。それでも十分な合意ができない難しさ
• 国際政治力学の変化 – 合意を左右する圧倒的な中国の影響力。米国と並ぶ中国の存在感
– 途上国間の立場の違いの鮮明化 • 実に多様な争点、対立軸 • 途上国の中からの新興経済国の削減努力強化への圧力
• 市場メカニズムの利用に対する立場の違い 26
COP15が残したもの • 「合意」の前進点はあるが...
– 南北間の信頼の喪失 – 途上国からのプロセスの透明性と包括性(inclusiveness)への要求
– 先進国からの「国連プロセス限界論」 • 手続規則(投票方式)の合意がないため、コンセンサスでしか決定できない
• UNFCCCプロセスのあり方が、交渉の膠着、コペンハーゲンの「失敗」の原因と考える
• より効果的な意思決定を可能にするプロセスの改革や新たなプロセス、メカニズムの必要性の主張
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COP16に期待されたこと (1)
• AWG‐LCAからの”法的拘束力ある成果”に向けた”a balanced set of decisions (一連の決定)” をめざすことで大筋一致
– 法的拘束力ある成果の採択をめざすCOP17(南アフリカ会議)への足がかりに
– 先進国も途上国も • 2つの”balance”
– 2つのトラックの”balance” – 合意の内容の”balance”
• balance in each track ⇔ balance across 2 tracks 28
COP16に期待されたこと(2)
• “A set of decisions”をめぐる争点 – AWG‐LCAからの成果を法的拘束力あるものとすることを決定するかどうか
– 京都議定書の継続、延長に関する何らかの意志表明を盛り込むかどうか
– 実質的合意内容として何を盛り込むか • 先進国と途上国の排出削減目標/行動とMRV
– 2011年の南アフリカ会議(COP17)までのロードマップ
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カンクン会議の経緯(1) • 第1週はAWG‐LCA、AWG‐KPという2つの作業部会での交渉継続
• 第1週と第2週の間の12月5日(日)に非公式COP会合:第2週前半の進め方を確認
– 2つの作業部会は継続しつつ、閣僚にいくつかの事項の協議のファシリテータを要請
– “No Mexican text”(COP議長) – “Ghosts of Copenhagen”(コロンビア)
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カンクン会議の経緯(2) • 第2週12月8日(水)早朝に非公式COP会合:第2週後半の進め方を確認
– COP議長の下で協議 – いくつかの事項について閣僚がファシリテータを務め協議を進める
• 第2週12月10日(金) – 協議結果をまとめたCOP決定案、COP/MOP決定案が出される
• 第2週12月11日(土)早朝 – ボリビアから異議が出されるも、COP、COP/
MOPはそれぞれ決定=カンクン合意(Cancun Agreements)を採択
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カンクン合意
• COP決定:AWG‐LCAの作業結果 • COP/MOP決定:AWG‐KP15の作業結果
• COP/MOP決定:土地利用、土地利用変化及び林業(LULUCF)
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(1) • 共有のビジョン(SV)と再検討(1)
– 工業化以前からの全球平均気温上昇を2度未満に抑えるという長期目標を確認
– 究極的な目的に照らして、長期目標の適切さを定期的に再検討することを決定(cf. UNFCCC4.2(d))
• 第1回再検討は、2013年に開始、2015年に完了 • 第1回再検討において、1.5度目標を含め長期目標の強化を検討
– AWG‐LCAに第1回の再検討の範囲をさらに確定し、その方法を定めるよう要請し、COP17で採択
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(2) • 共有のビジョン(SV)と再検討(2)
– 2050年長期排出目標を確認する作業に合意し、COP17で検討
– 世界及び各国の排出量をできるだけ速やかに頭打ちにするよう協力することを合意。その時間枠を確認する作業に合意し、COP17で検討
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(3) • 適応策(1)
– 適応策の促進を目標に、カンクン適応フレームワークの設置
– 後発途上国(LDC)が国家適応計画を策定・実施することを可能にするプロセスの設置
• SBIに方法及び指針の策定を要請し、COP17で採択
– 長期的、規模を拡大した、予測可能な、新規の追加的資金、技術、能力構築を途上国に提供するよう先進国に要請
– 適応委員会の設置を決定 • 委員会の構成や手続についてAWG‐LCAが検討するよう要請し、COP17で採択
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(4) • 適応策(2)
– 気候変動の影響に伴う損失と損害へのアプローチを検討する作業計画の策定を決定
• SBIが作業計画の下で行われるべき活動に関して合意することを要請。SBI34で検討し、COP18で検討
– 地域センター・ネットワークの強化・設置を締約国に要請
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(5) • 先進国の排出削減目標または削減策
– 提出された附属書I国の国別排出削減目標を留意(AWG‐KP作業結果COP/MOP決定と同じ)
– IPCC AR4で勧告されている水準と合致した水準に削減するよう、先進国に対し目標の水準の引き上げを要請
– 国別報告書の報告促進を決定 • 排出目録を毎年提出 • 排出削減目標の進捗報告書を2年に一度提出
– 先進国は低炭素発展戦略・計画を策定すべきことを決定
– 国別報告書の情報報告の指針および情報の審査の指針の策定の作業計画を決定
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(6) • 途上国の排出削減策(NAMA)(1)
– 途上国が、2020年の「成り行き排出量」と比して排出を抑制することをめざして、その国に適切な排出削減策(NAMA)をとる(will)ことを合意
– NAMAを実施する意図をCOPに自発的に通報したい途上国に、事務局にその対策に関する情報を提出するよう要請
– 提出された非附属書I国のNAMAを留意(先進国とは異なりAWG‐LCAのInf.文書に)
– 先進国は、途上国のNAMAの策定と実施、並びに、報告の促進に支援を提供することを決定
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(7) • 途上国の排出削減策(NAMA)(2)
– 国際的支援を求めるNAMAを記録し、支援策とのマッチングを促進する登録簿の設置を決定
– 支援を求めるNAMAに関する情報を事務局に提出するよう途上国に要請
– NAMAのために利用可能で提供される支援に関する情報を事務局に提出するよう先進国に要請
– これらの情報を登録簿に記録し、定期的に更新するよう事務局に要請
– 登録簿を通じて支援を促進する方法の策定を合意 39
COP決定:AWG‐LCAの作業結果(8) • 途上国の排出削減策(NAMA)(3)
– 登録簿の別のセクションで途上国のNAMAを承認することを決定
– 登録簿の別のセクションで排出削減策、国際的な支援を受けた排出削減策と支援に関する情報を記録し、定期的に更新することを事務局に要請
– 排出目録を含む国別報告書の報告を促進することを決定
• 4年に一度国別報告書を提出すべき • 排出目録の更新を含む2年に一度の更新報告書を提出すべき
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(9) • 途上国の排出削減策(NAMA)(4)
– 国際的に支援を受けた排出削減策は、国内でMRVされ、策定される指針に従って国際的MRVの対象となることを決定
– 国内的に支援を受けた排出削減策は、策定される一般指針に従って国内でMRVされることを決定
– SBIで2年ごとの進捗報告書の国際的な協議と分析。専門家による分析と意見交換を通じて削減策とその効果の透明性を促進。最後は要約報告書をまとめる。ただし、国内政策・措置の適切さは議論の対象としない
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(10)
• 途上国の排出削減策(NAMA)(5) – 持続可能な発展の文脈で低炭素発展戦略・計画を途上国が策定するのを奨励
– 以下の方法と指針の策定の作業計画に合意
• 登録簿を通じたNAMAへの支援の促進 • 支援を受けた行動のMRVと対応する支援 • 非附属書I国からの国別報告書の一部として2年ごとの報告書
• 国内財源で行われる削減対策の国内的検証 • 国際的な協議及び分析
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(11)
• 途上国における森林減少等からの排出削減策(REDDプラス)(1)
– 活動を行う際のガイダンスとセーフガードを確認(附属書I)
– REDDプラスの範囲を確定(森林減少からの排出削減/森林劣化からの排出削減/森林炭素ストックの保全/森林の持続可能な管理/森林炭素ストックの促進)
– 国家戦略または計画、森林参照排出水準、モニタリングシステム、セーフガードに関する情報提供システムの設置を途上国に要請
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(12)
• REDDプラス(2) – 3つのフェーズ
• 第1フェーズ:国家戦略または行動計画、政策と措置の策定と能力構築の段階
• 第2フェーズ:その実施の段階 • 第3フェーズ:十分にMRVされた結果ベースの行動
– SBSTAに附属書IIの事項に関する作業計画策定を要請
– 特に先進国に支援を要請 – AWG‐LCAに、第3フェーズの完全実施の為の資金調達オプションを検討し、COP17で決定
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(13)
• 市場メカニズムなど多様なアプローチ(1) – 1またはそれ以上の市場メカニズムの設置を
COP17で検討することを決定 – 京都議定書のもとで設置された現行のメカニズムを含め、現行のメカニズムを維持し、それを基礎に構築することに合意
– 1またはそれ以上の市場を利用しないメカニズムの設置をCOP17で検討することを決定
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(14)
• 資金(1) – 2010‐2012年の300億米ドルの新規の追加的資金の先進国の約束を留意
– 2011年、2012年、2013年のそれぞれ5月までに、先進国はその約束の達成に提供される資金に関する情報を事務局に提出
– 規模を拡大した、新規、追加的、予測可能で十分な資金供与が途上国に提供されることを決定
– 先進国が、2020年までに毎年1000億ドルの資金動員目標を約束したことを承認
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(15)
• 資金(2) – 途上国に提供される資金の資金源の多様性を合意
– 適応策のための新規の多国間資金供与の相当な割合はグリーン気候基金を通じて行われるべきことを決定
– AGFの報告書など関連する報告書を留意
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(16)
• 資金(3) – グリーン気候基金を設置。条約の資金メカニズムの運営主体の一つに指定することを決定
– 24人(先進国、途上国から同数)のメンバーからなる理事会。途上国の代表には、関連する国連の地域グループ代表と島嶼国と後発途上国を含む
– 基金には、基金の財産を管理し、記録を保持し、必要な報告を作成する信託者を置く。世界銀行に暫定信託者の任務を果たすことを要請
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(16)
• 資金(3) – 移行委員会による基金の設計
• 移行委員会の権限(検討)の範囲:附属書IV • 移行委員会は、40人の委員からなる。先進国から15人、途上国から25人(アフリカ7人、アジア7人、ラテンアメリカ・カリブ7人、島嶼国2人、後発途上国2人)
– COPのもとに常設委員会の設置を決定 • 資金提供の一貫性と調整、資金メカニズムの合理化、財源の動員、支援のMRV
• 常設委員会の役割と機能についてはさらに検討
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COP決定:AWG‐LCAの作業結果(17)
• 技術の開発と移転 – COPのガイダンスとCOPへの説明責任のもとに技術メカニズムの設置を決定。技術メカニズムは以下の2つからなる
• 技術執行委員会:任務はpara. 121。技術の開発と移転の障壁に対処する措置勧告も.執行委員会の権限と構成は附属書V
• 気候技術センター・ネットワーク:任務は、国内、地域、国際のネットワーク促進。para. 123
• EGTTの任務は終了 – AWG‐LCAの2011年の作業計画
• 執行委員会とネットワークの関係、ネットワーク・センターのガバナンスと権限、技術メカニズムと資金メカニズムの関係 50
COP決定:AWG‐LCAの作業結果(18)
• AWG‐LCAの延長 – 1年延長。決定に定める作業を行い、COP17に結果を示すことをめざす
– 検討中の文書に基づいて作業継続 – 法的オプションの検討継続
• BAP、COP16の作業、条約17条の下でなされた提案に基づいて「合意される結果」を出すことをめざす
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COP/MOP決定:AWG‐KPの作業結果(1)
• AWG‐KPは、作業を完了し、可及的速やかに、かつ、第一約束期間と第二約束期間の間の「空白」が生じないよう、結果をCOP/MOPが採択することをめざす
– これまでの議長テキストを基に作業継続 • 提出された附属書I国による国別排出削減目標に留意
• 1990年比25‐40%という削減幅にしたがって、排出削減目標の水準を引き上げを附属書I国に要請
52
「空白」が生じる条件 • 京都議定書第二約束期間の約束が2013年1月1日に効力を発生するには、
– 附属書Bの改正案と関連する議定書の改正案が、京都議定書の締約国会合(COP/MOP)の通常会合で採択=今年のCOP16(カンクン会議)か2011年のCOP17(南アフリカ会議)で改正案を採択が必要、かつ
– 2012年10月3日までに京都議定書の締約国の4分の3(現時点で144カ国)の批准が必要
• この条件が満たされない場合、2013年1月1日以降、国際的に法的拘束力のある先進国の数値目標がない状態が生じる 53
COP/MOP決定:AWG‐KPの作業結果(2)
• 第二約束期間の基準年は1990年 – 基準年に対する削減目標の記載に加えて、参照年を利用することもできる。ただし、参照年の削減数値は、京都議定書の下で拘束力を持たない
• 京都メカニズム、森林等吸収源は継続して利用可能
54
COP/MOP決定:LULUCF • 第一約束期間の原則を確認 • 森林、植林、再植林、森林減少、植生回復、森林管理、耕作地管理、牧草地管理の定義は第一約束期間と同じとすることを合意
• LULUCFの規則(森林管理からの吸収量の上限設定、異常事態の取り扱いも含む)について引き続き検討
• 附属書I国は森林管理の参照水準に関する情報を2011年2月28日までに事務局に提出。附属書IIのPart IIの指針にしたがって審査チームが評価を行い、COP/MOP7で検討
55
COP16とカンクン合意の評価(1) • すべての主要国が参加する国際枠組みに向けた大きな前進
– コペンハーゲン合意の内容をCOPの決定にし、さらにコペンハーゲンで合意できなかったor具体化できなかったことも合意
– 温暖化抑制の「2度未満」目標 – 先進国だけではなく途上国も削減行動をとる。2020年目標の記載も
– 2年ごとの進捗報告書、国際的な分析、協議などかなり詳細な途上国のMRVの枠組みの合意
– 合意できなかったことは、COP17に向け作業 56
COP16とカンクン合意の評価(2) • コペンハーゲンで失われた多国間の温暖化交渉(UNFCCC)プロセスへの信頼の回復
– 議長国メキシコの貢献 – 締約国のプロセス存亡の危機感
• 京都議定書の行く末、AWG‐LCAからの合意の法的形式=国際枠組みが最終的にどのような法的形式の合意となるかについては決定を先送り
57
結びにかえて(1) • 見えてきた?次期枠組み
– 低炭素型社会・経済への明確な長期目標 – 先進国だけではなく途上国も削減努力を進めていく国際的枠組みへ
– 先進国は国別排出上限目標を実施。途上国は、排出削減策を実施。いずれも目標、削減策の進捗を国際的に報告し、評価を受ける
58
結びにかえて(2) • COP17に向けた課題
– カンクン合意で委ねられた次期枠組みの詳細な規則の作成
– 先進国の約束はどのような形でなされるか、25‐40%削減といった水準とのギャップ(Giga ton gap)をどうするか
– 京都議定書の行く末、AWG‐LCAからの合意の法的形式=国際的枠組みの最終的な合意の法的形式の決定
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京都議定書からの転換?
• コペンハーゲン合意における先進国の約束:自発的誓約と審査(pledge and review)への「後退」?
– 2009年6月の米国実施協定案にそうもの=京都議定書作業部会交渉中の削減目標との違い
– 他の先進国とのcomparabilityは?:「衡平性」の課題
• 削減水準のcomparability • 目標の遵守審査のcomparability
– 長期目標達成に必要な削減を担保できる制度か?:「実効性」の課題 60
現在の誓約の水準
61 Source: Höhne et al. 2009�
次期枠組み合意の法形式
• 次期枠組みの最終的な合意の法形式 – A)1つの新議定書(日本、ロシアなど)
• 途上国からの強い反発 – B)京都議定書改正+新たな議定書(途上国)
• 米、途上国は新議定書のもとで法的拘束力のある約束をおう
– C)京都議定書改正+締約国会議(COP)の決定 • 米、途上国は、法的拘束力のない約束をおう
• いかなる法形式となるかは、約束の強度に影響を与え、合意のbalanceに影響を与える
62
63
気候変動枠組条約�
日本� EU � 米国� 中、印� その他 途上国�
新たな一つの議定書�
64
気候変動枠組条約�
日本� EU � 米国� 中、印� その他 途上国�
京都議定書 第2約束期間
新議定書
次期枠組みの法的形式(2)
• AWG‐LCAからの成果を法的拘束力あるものとし、「京都議定書第二約束期間+新たな法的文書」という法的形式を大多数の国が支持
• 日本の選択 – すべての主要排出国の参加をよりよく確保するには
65
結びにかえて(3) • 岐路に立つ国際交渉と国際制度
– 交渉の成否は、気候変動問題への対処に大きな影響。今年のCOP16(カンクン会議)とCOP17(南アフリカ会議)が鍵を握る
– 多国間合意の成立にむけた実質的な合意形成への努力
– 「低炭素型発展」へのパラダイム転換の実現
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ご静聴ありがとうございました。
*本報告は、環境省地球環境研究総合推進費プロジェクト「気候変動の国際枠組み交渉に対する主要国の政策決定に関する研究」(研究代表者:亀山康子)及び文科省科学研究費補助金特定領域研究「持続可能な発展の重層的ガバナンス」(研究代表者:植田和弘)のもとでの研究課題「温暖化防止の持続的国際的枠組み」(研究代表者:新澤秀則)、同基盤研究(B)「地球温暖化の費用負担論」(研究代表者:高村ゆかり)の研究成果に基づくものです。
高村ゆかり(Yukari TAKAMURA)
e-mail:[email protected]