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滋賀大学教育学部 Faculty of Education 2019年3月 第2号 教育実践総合センター年報

Faculty of Education - 滋賀大学€¦ · 整理する必要がある。そこで,これまでの「読むこと」の学習活動に,思考ツールや図示等を用いて情

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滋賀大学教育学部 Faculty of Education

2019年3月 第2号

教育実践総合センター年報

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教育実践総合センター年報 第 2号

1 共同研究事業 ------------------------------------------------------------- 1

  1− 1 ) 国語で正確に理解し適切に表現する資質 ・ 能力育成する小学校            ( 長岡 由記 )

        国語科の授業づくり

  1− 2 )理科教育に関する研究 ( 加納 圭 )

  1− 3 )理科プロジェクト研究 ( 藤岡 達也 )

  1− 4 )情報教育に関する研究 ( 松原 伸一 )

  1− 5 )外国語教育に関する研究 ( 大嶋 秀樹 )

  1− 6 )国語科における学びのつながりをめざした授業改善 ( 長岡 由記 )

  1− 7 )小学校における予防教育プログラムの開発・実践 ( 芦谷 道子 )

  1− 8 )滋賀県における幼児の運動能力に関する研究(平成30年度) ( 奥田 援史 )

  1− 9 )滋賀県学校安全教育推進プロジェクト ( 藤岡 達也 )

  1− 10) 企業との連携を考えた滋賀県の情報教育研修拠点整備に向けたプロジェクト  ( 岳野 公人 )

  1− 11) 通級指導教室等の子どもに対する協調運動面の指導に関する実践的研究(2) ( 川島 民子 ) 

  1− 12)学びに向かう子どもの育成 ( 畑 稔彦 )

~主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して~

  1− 13)生徒が主体的に学び、確かな学力を身につけるための学習指導 ( 畑 稔彦 )

  1− 14)理科指導力向上研修の企画研究プロジェクト ( 糸乗 前 )

  1− 15) 小学校体育科教育に関する研究            ( 辻 延浩 )

  1− 16)特別支援学校における音楽づくりの授業開発プロジェクト ( 林  睦 )

  1− 17)子どもの造形活動の観察と理解 ( 世ノ一 善世 )

  1− 18)小学校外国語活動・外国語科において求められる学習内容と   (大嶋 秀樹 )

学習過程に関する研究

  1− 19)石山っ子わくわく親子で畑体験隊 ( 森 太郎 )   

  1− 20)観賞学習ルーブリックを活用した授業実践に関する研究 ( 新関 伸也 )

  1− 21)チームで考える授業づくり ( 新関 伸也 )

     〜若手 ,中堅教員を育てる教材開発プロジェクトⅡ〜

  1− 22)学校アート化計画『グリーンちゃんがやって来た』 ( 藤田 昌宏 )

  1− 23)教育学部発信!教育現場と連携した各種「イベント」の企画立案と遂行の実践  ( 渡邊 史 )

  1− 24)学習評価を軸とした授業・単元・カリキュラムの評価・改善 ( 岸本 実 )

  1− 25)「幼児の協同的な遊びの形成における教師の役割についての研究」 ( 菅 眞佐子 )

  1− 26)小学校特別支援学級に在籍する医療的ケアを必要とする児童への ( 白石 惠理子 )

     教育支援に関する研究

   

2 石山プロジェクト -------------------------------------------------------- 53

3 学力向上プロジェクト ---------------------------------------------------- 55

目 次

CONTENTS

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4 出前講座 ---------------------------------------------------------------- 57

5 教職探究講座 ------------------------------------------------------------ 66

6 教職臨床研究 ------------------------------------------------------------ 68

7 情報教育研究 ------------------------------------------------------------ 71

8 教育実習支援(その1) --------------------------------------------------- 73

9 教育実習支援(その2) --------------------------------------------------- 75

10 キャリア支援の取り組み -------------------------------------------------- 77

11 業務報告 ---------------------------------------------------------------- 79

CONTENTS

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 1-1) 国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を育成する

    小学校国語科の授業づくり

1.事業名および担当者

 事業名は,国語科プロジェクト研究「国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を育成する小学

校国語科の授業づくり―「情報の扱い方に関する事項」と「読むこと」を相互に関連させて―」であり,

担当者は次の通りである。

 滋賀県総合教育センター:鈴村 愛子(研究員),北村 拓也(研修指導主事)

 教育学部:長岡 由記(学部教員)

2.事業の目的

 本研究は,「情報の扱い方に関する事項」と「読むこと」の指導事項を相互に関連させた単元を構想

・実践・分析することを通して,国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を育成する授業づくり

の在り方について検討することを目的とする。

3.事業の概要

(1)研究の概要

 本事業では,まず,新学習指導要領において新設された「情報の扱い方に関する事項」と「読むこと」

の指導事項を効果的に組み合わせたり,それらを指導するのに適した教材や言語活動を選定したりする

ための単元構想の方策モデルやマトリックス型の年間計画例を作成する。次に,それらをもとに単元構

想・授業実践を行い,授業分析と授業実践を往還させることで,国語で正確に理解し適切に表現する資

質・能力を育成する授業づくりの実現に向けた検討を行う。

(2)授業の実際

 当センターの平成 28 年度研究員派遣による学校支援に関する研究では,単元「みつけよう!じどう

車のひみつ!」(教材名「じどう車くらべ」光村図書1年下 )の学習において,教材文「じどう車くらべ」

を読んで自動車の「しごと」と「つくり」について理解し,自分が選んだ自動車の情報を本から探すこ

とで理解を深めた。本年度の研究授業では,さらに「情報と情報との関係」(「情報の扱い方に関する

事項ア」)に関する学習内容を加えた。具体的には,本単元では教材文を読んだ後に次のような時間を

設けた。                     

 指導者は,情報と情報との関係を理解する手立てと

して,トラックの「つくり」を五つ挙げて,図鑑に載

せる「つくり」を二つに絞る課題を出した (図1)。  

「『ヘッドライト』がかっこいい」と感覚的に選ぶ児童

がいたが,「『ヘッドライト』は自分の家の車にも付い

ているから,別の『つくり』のほうがよい」や「『たく

さんのにもつをはこぶしごと』だから,広い荷台がい

る」等,「しごと」と関連する「つくり」を選ぶ友達の

考えを聞いて,自分の考えを改めていた。「つくり」と

して共通する情報の中にも,「しごと」に直接関係する

1 共同研究事業

1 共同研究事業 1

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ものとそうでないものがあることに気付き,「しごと」と「つくり」の関係を正確に理解する学習活動

となった。その後,ブルドーザーの「つくり」として,ハンドルはなく左右のレバーで操作するという

情報よりも,地面を削る大きなつめがあるという情報が,「じどう車ずかん」にふさわしいと気付いた

児童の姿があった。

 このように,教材文で学んだ後に,児童が情報と情報とを適切に結び付ける時間を再度設けることで,

児童の理解は深まり,「読むこと」のねらいにより迫る授業ができた。

 単元「めざせプレゼン名人!!」(教材名「自然に学ぶ暮らし」光村図書6年 )では,プレゼンテー

ションを行うことを言語活動に位置付けた。プレゼンテーションのフリップを作成するには,「自然の

仕組み」や「その活用」等,自然に学ぶ暮らし方を推薦するのに必要な情報を見つけて,わかりやすく

整理する必要がある。そこで,これまでの「読むこと」の学習活動に,思考ツールや図示等を用いて情

報を整理する「情報の整理」(「情報の扱い方に関する事項イ」)を加えて,育成すべき資質・能力を

明確にした。この指導事項を指導するため,本単元では次のような時間を設けた。   

 児童はまず,教材文のシロアリの巣の事例で作成された 

指導者のフリップ (図2) から,「生き物」「生き物のもつ

仕組み」「その仕組みの活用」「活用することのよさ」に関

する情報が書かれていることに気付いた。そして,これら

の情報を各階層にしてロジックツリー (図3) を作成する

と,新しい暮らし方を提案するために必要な要素が明確に

なることを知った。ロジックツリーは,情報を階層に分け

て体系的に整理する方法である。その後,児童は指導者の

モデルを参考に,教材文の別事例で「『空気の層によって

熱をにがさないというあわの性質』はどんな情報だろう」

「それは『仕組み』にあたると思う」等と,グループで相

談しながらロジックツリーを作成した。ロジックツリーに

よって読む視点が明確になったことで,自分たちで情報と

情報を関係付けながら教材文を読み進める児童の姿があっ

た。

 このように,思考ツールで情報を整理する時間を設ける

ことで,児童は情報を正確に理解し,「読むこと」のねら

いにより迫る授業ができた。

4.今後に向けて

 「情報の扱い方に関する事項」と「読むこと」を相互に関連させた授業づくりを行うことで,児童の

理解を深める学習活動や児童が読み方や表現の仕方を知る学習活動が加わり,国語で正確に理解し適切

に表現する資質・能力の確かな育成につながった。今後は,育成した「情報の扱い方に関する事項」と「読

むこと」の資質・能力について,他教科でも活用することによってその定着を図ることができるように,

カリキュラム・マネジメントの視点で考えていく必要がある。

                                 (鈴村 愛子・長岡 由記 )

1 共同研究事業

2 1 共同研究事業

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 1-2) 理科教育に関する研究

1.事業名および担当者

 事業名:理科教育に関する研究

     「科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指した高等学校理科の授業改善 」

     -探究の過程の充実に向けた指導と評価のあり方-

 担当者:滋賀県総合教育センター 研究員 阿武 朗広,滋賀大学教育学部 加納 圭

2.事業の目的

 高等学校学習指導要領 (平成 30 年告示 )では,理科において,資質・能力の育成に向けて,単元等

内容や時間のまとまりを見通しながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行

い,科学的に探究する学習活動の充実を図ることが求められている。また,学習評価の実施にあたっては,

各教科・科目等の目標の実現に向けた学習状況を把握する観点から,評価の場面や方法を工夫して,学

習の過程や成果を評価し,指導の改善や学習意欲の向上を図り,資質・能力の育成に生かすようにする

ことも示されている。これらのことから,本研究では,科学的に探究する学習活動を取り入れたり,観

点別学習状況の評価を行ったりして,探究の過程の充実に向けた指導と評価のあり方を探ることで,高

等学校理科の授業改善を推進し,科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指す。

3.事業の概要

(1) 探究の過程の充実を図る指導の工夫

 科学的に探究するために必要な資質・能力の育成に向けて,各単元・授業で特に育成したい資質・能

力を明確にし,単元・授業構想をした。その際,科学的に探究する学習活動を取り入れる中で,既習事

項を想起し,個人で思考する活動の場面を設定したり,育成を目指した資質・能力が身に付いたかどう

かを見取る場面を設定したりすることで探究の過程の充実を目指した。

 また,探究の過程全体の流れや学習内容,思考の流れを可視化できる 「探究ノート 」を活用した。各

時間で重視する学習場面を中心に,既習事項や生活体験から得られる自分なりの理論や根拠を基に,「個

人の考え 」をノートに記入する時間を確保し,対話を通して 「自分と異なる考え 」や 「新たな気付き 」

を追記していく。「探究ノート 」を基に学びを振り返ることで,自己の成長の過程を認識したり,次の

学びに主体的に取り組んだりする等,探究の過程の充実につながると考えた。

(2) 探究の過程の充実を図る学習評価の工夫

 探究の過程を通して,資質・能力が身 

育成を目指す資質・能力

観点 要素 定義 検証計画を

立案する力 観察・実験 デザイン力

仮説を確かめるための 観察・実験を計画する力

考察する力 実証考察力 仮説と照らし合わせて、 実験結果を基に考察する力

振り返る力 メタ認知力 振り返り、学習前から学習後

への自己の変容を認識する力

A B C D

具体的な ⽣徒の姿

第1・2時

図1 「観点別学習状況の評価シート」

に付いたかを見取るために,評価の観点

を検討し,細分化した要素を定義づけた。

A~Dの4段階で評価できるよう,具体

的な生徒の姿を想定し,「観点別学習状

況の評価シート 」を作成した (図1)。

1 共同研究事業 3

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 次に,生徒が探究の過程の最後に「自己評価 」  ( 理科教育に関する研究) 「観点別学習状況の評価」シート 単元: 遺伝情報と タ ンパク 質の合成

タンパク質 ⽣物基礎 振り返り・⾃⼰評価シート 年 組 番 氏名 ●タンパク質について、①構造、②役割、③酵素としての特徴の三点について、授業で学んだことを基

に、説明してみよう。

●学習を振り返って、新たに疑問に思ったことや、さらに知りたいことを書こう。

☆本時の目標を達成でき たか、 自己評価し よう !!( ※A ~D に○をつけよう !!)

目標① 仮説を確かめるための観察・ 実験を計画するこ と ができ る。

A B C D

実験条件を細かく設定し、

何回やっても同じ結果が出

る再現性の高い検証方法を

立案することができた。

仮説を検証するため、対照

実験、実験手順、実験材料

や機器について考えた方法

を立案することができた。

実験計画を立案したが、仮

説を検証するための方法に

ついて考えられなかった。

対照実験や実験手順などに

ついて、検証計画をまった

く立案することができなか

った。

図2 「振り返り・自己評価シート」

を行い,自らの探究のあり方について振り返る

機会を設定するために,「観点別学習状況の評

価シート 」を基に,「振り返り・自己評価シー

ト 」を作成した (図2)。学習の最初に 「振り

返り・自己評価シート 」を生徒に提示し,全体

で共有することで,生徒自身がどのような姿を

目指せばよいのかイメージできるようにした。

評価の場面で,「探究ノート 」と合わせて活用

することで,生徒が,探究の過程において資質・能力をどの程度身に付けることができたかや,探究の

過程を俯瞰的に捉え,どのような学びがあったのか等を説明できるようになることを目指した。

(3) 科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指した授業改善

 高等学校理科の授業改善に向けて,生物基礎を取り上げ実証授業に取り組んだ。生活体験や既習事項

を基にした学習前の考えに加えて,探究の過程を通した学びにより得た科学的な概念を活用して学習後

の考えを表現できる指導と,学習過程や成果を見取る評価のあり方を探り,探究の過程の充実を図った。

 問題を見いだし観察・実験を計画する活動や,観察・実験の結果を分析し解釈する活動を取り入れ,「検

証計画を立案する力 」や 「考察 

図3 生徒が作成した「探究ノート」

する力 」の育成を目指した。授

業の最後に,「振り返り・自己

評価シート 」を用いて自己評価

することにより,育成したい資

質・能力をどの程度身に付ける

ことができたかを,生徒自身が

認識する姿が見られた。また,

「探究ノート 」(図3) を作成す

ることで,生徒は学習の前後で

の自己の考えがどのように変容

していったのかを把握すること

ができ,探究の過程全体を主体

的に取り組むことにつながった。

4.今後に向けて

 育成したい資質・能力を基に,「観点別学習状況の評価シート 」を作成することで,指導者自身が生

徒にどのような姿になってほしいかイメージすることができた。また,生徒に事前に提示し共有したこ

とで,生徒自身もどのような姿を目指せばよいかイメージして,主体的に授業に取り組むことができた。

さらに,生徒が,「探究ノート 」と 「振り返り・自己評価シート 」を用いて自らの探究のあり方を振り

返ることにより,学習前から学習後の自己の変容を認識することができ,自らの探究の過程をメタ認知

できる生徒の姿が見られた。今後,高等学校理科における探究の過程の充実に向けた指導と評価の取組

を広げ,総合的な探究の時間や新教科 「理数 」の授業づくりにつなげていく必要がある。

  (阿武 朗広・加納 圭)

1 共同研究事業

4 1 共同研究事業

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 1-3) 理科プロジェクト研究

1.事業名および担当者

 事業名は,滋賀県を中心とした理科教育に関する実践的研究であり,担当者は以下のとおりである。

教育学部:藤岡達也(代表)

滋賀県総合教育センター:不破徹也 (係長),中島真奈美(研修指導主事),田中美甫(研究員)

            堀道雄(守山市立河西小学校教諭)

2.事業の目的

 今年度は,平成 30 年度までの取組を踏まえ,新学習指導要領に則った小学校と中学校とのつながり

を見据えた授業内容・方法の開発を意図したものである。つまり,県下の小学校,中学校の教員を含め

たプロジェクトチームをつくり,昨年度からの研究課題である児童生徒の姿から「深い学び」の実現を

目指す授業の開発とその実践,評価活動を中心においた。

 方法としては,従来と同様に指導案に基づいた実践授業を複数回行なう。特に新学習指導要領のねら

いを踏まえた授業の改善を追究し,それらを小学校及び中学校の理科教員で共有する。その成果は,教

育センター及び関係教員・所属学校だけにとどまらず,広く県内外に紹介し,本県の理科教育の振興に

つながるように配慮する。

 

3.事業の概要

 滋賀県総合教育センター及び県内の小学校と中学校において,同研究員及び教育センター研修指導主

事等と昨年度の取組との継続性も図り,求められる資質・能力育成から理科教育の在り方の検討を進め

てきた。つまり,「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力等」,「学びに向かう力・人間性等」を育成

するために「主体的,対話的で深い学び」な学習方法となる指導計画を作成し,単元を選定し,実践授

業を開発する。プロジェクトに参加した教員自身が,期待される力の育成に取り組んだと言える。

 

1 共同研究事業 5

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 研究成果は公開授業,教育センターでの研究発表大会での報告,論文として公刊,ホームページでの

掲載を行うなど,広く批評を仰ぐ。実践授業では,主体的・対話的な活動を行なう場面を効果的に設計

し,児童生徒による深い学びの実現を目指す取組を実施する。

 

 

 まず,前年度の研究員から,現在の所属校において,「深い学び」を目指した授業を実施した。その後,

県総合教育センターにおいて,「粒子」領域と「生命」領域を小学校から中学校までの系統性を整理した。

10 月には小学校,中学校で繋がりを重視した授業実践を行った。

<総合教育センターにおける研究発表及び課題について>

 新学習指導要領では,これからの時代を踏まえ, 

理科についても新たな学びが求められている。ま

た,4領域を考慮した小学校~高等学校の系統性

が明確になったとは言え,依然として実際の教育

現場では,小学校・中学校の義務教育段階に限っ

ても,内容の連続性を意識した取組は少ない。確

かに小学校において,学年や単元を考えると理科

指導は容易ではない。どのような観点から児童生

徒の「科学的な見方・考え方」を育成するのか,

模索状況であるとも言える。従来から全国学力・

学習状況調査において,滋賀県の小学校・中学校

の児童・生徒の結果は全国と比べて高いレベルで

はない。平成 30 年度は 3年ぶりに理科についても実施されたが,結果は改善されたとは言えない。

4.今後に向けて

 先述のように滋賀県では「全国学力・学習状況調査」における理科の成績には厳しいものがある。点

数だけが全てではないが,これまでの県全体での取組としては不十分であると言わざるを得ない点もあ

る。これには滋賀県の教育現場や教育行政だけでなく,教員研修・教員養成も連動して,今後,大学側

の取組としても課題を受け止める必要があるだろう。

                                       (藤岡 達也 )

1 共同研究事業

6 1 共同研究事業

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 1-4) 情報教育に関する研究

1.事業名および担当者

本事業は,滋賀県総合教育センターの「情報教育に関する研究:一人1台のタブレット端末活用によ

る家庭学習と授業との学びの連携~高等学校における思考ツールの活用を通して~」の研究事業におい

て,理論的・実践的な側面より専門的知識等の提供や指導助言を行うに当たり,松原研究室との共同研

究として位置づけられるものである。

その組織と役割分担との関係は,表1の通りである。なお,松原は,滋賀県総合教育センターの「情

報教育に関する研究」におけるトータルアドバイザーである。

表1 共同研究事業の組織と役割分担

協同研究事業の組織 役割分担

松原研究室(滋賀大学教育学部・

滋賀大学大学院教育学研究科)

担 当 者:松原伸一(滋賀県総合教育センター,トータルアドバイザー)・教科指導における ICT 活用に関する知識・技術の提供・デジタルコンテンツの開発に関する指導助言・その他,本事業のトータルアドバイス

情報教育に関する研究(滋賀県総合教育センター)

担 当 者:田中健亮(滋賀県総合教育センター 研究員)専門委員:大道敏喜雄(滋賀県立虎姫高等学校 教頭)

柳垣弘樹 (滋賀県教育委員会事務局高校教育課指導主事)

研究委員:八田悠司(滋賀県立河瀬高等学校 教諭)中西勝弘(滋賀県立高島高等学校 教諭)

他に同センターの関係者数名・本研究事業の企画・推進・評価を行う。

2.事業の目的

中央教育審議会答申「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善

及び必要な方策等について」(平成 28 年 12 月 21 日公示)では,学校において日常的に ICT を活用でき

る環境づくりや,学びの質を高める ICT 活用の普及など,教育情報化の政策が一層重要とされる (1)。

一方,高等学校の外国語科の授業については,中学校で学習した語彙・表現・文法事項等は高等学校

で意味のある文脈の中でコミュニケーションを通して繰り返し触れ,自らの学習活動を振り返って次に

つながる主体的な学びとともに,ICT 等を活用した効果的な言語活動の工夫が求められている (2)。

以上の経緯を踏まえ,本事業の目的としては,生徒がそれぞれ一人1台のタブレット端末を使用し,

学校での学習だけでなく家庭での学習においても,デジタルコンテンツを活用して,知識・技能の習得

を図り,自身の考えを共有できるようにするための工夫(可視化)を施すとともに,ICT の特性や強み

を十分に生かすことにより,学習の質を高めることができるように,家庭・学校間における学びの連携

を行うことである。

1 共同研究事業 7

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3.事業の概要

本事業の概要は,研究協力校の2校(滋賀県立河瀬高等学校,及び,滋賀県立高島高等学校)におい

て,外国語科(英語)の授業展開に際し,授業実践を踏まえて,生徒が一人1台のタブレット端末を使

用し,学習の質を高めることができるようにすることである。

そこで,本事業に関係して協力・実施した項目は下記の通りである。

(1)学校における ICT の特徴の分析・整理 …[松原研究室]

松原研究室におけるこれまでの研究成果をもとに,既に蓄積した知識・情報を整理・分析し,授業

展開と教材開発のための ICT 活用について支援を行った。その主な内容は,次の通りである。

①学校における「ICT 超活用」とその教育的意義 (3)

②学校における情報活用(ICT 活用)の在り方 (4)

(2)デジタルコンテンツの作成に対する開発支援 …[松原研究室]

デジタルコンテンツの作成にあたり,重要事項を整理して,適宜,評価を行い,利用しやすい形態

にするための支援を行った。その主な内容は,下記の通りである。

①デジタルコンテンツを活用する際の授業の在り方

②デジタルコンテンツの内容の妥当性

③その他,デジタルコンテンツの教育利用に関する諸事項

(3)授業実践 …[滋賀県総合教育センター,専門委員,研究委員,協力校,松原研究室]

作成されたデジタルコンテンツは授業実践にて利用・活用され評価を行った。

4.今後に向けて

ICT 活用におけるデジタルコンテンツは,学習内容(方法)を提供できる有効な手段である。今後は,

コンテンツを活用した授業の普及に際し,Web サイトの充実や広報などが求められる。筆者は,以上を

踏まえ,ICT 超活用,AGAA,感性に響く次世代教育,など重要なコンセプトを既に提案し,適宜,その

拡張と深化のための発展させた研究を予定している。

参考文献

(1) 文部科学省:幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必

要な方策等について(答申),平成 28 年 12 月 21 日公示,中央教育審議会.

  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/

afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf(2019.2.14 再確認)

(2) 文部科学省:教育課程企画特別部会 要点整理,平成 27 年 8 月公表,「⑫外国語,p.42-44」,中央

教育審議会・教育課程企画特別部会.

h t t p : / / w w w . m e x t . g o . j p / c o m p o n e n t / b _ m e n u / s h i n g i / t o u s h i n / _ _ i c s F i l e s /

afieldfile/2015/12/11/1361110.pdf (2019.2.14 再確認)

(3) 松原伸一:情報学教育の記念すべき年(2019 年)に向けて‐ICT 超活用(Ultra ICT Practical

Use),情報学教育論考,第 5号,pp.19-26, 2019.

(4) 松原伸一:超多様社会における情報学教育 :K-12 から K-all へ,AGAA(All Generations Arts

Activities),情報学教育研究,第 10 号,pp.13-20,2019.

 (松原 伸一 )

1 共同研究事業

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 1-5) 外国語科教育に関する研究

1.事業名および担当者

 事業名: 「主体的に考えを表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力の育  

      成を目指す高等学校外国語科の授業づくり 」

      -インプットとアウトプットが往還する言語活動の充実を通して-

 担当者: 滋賀県総合教育センター 研究員 藤岡 香織 , 滋賀大学教育学部 大嶋 秀樹

2.事業の目的

 高等学校学習指導要領 (平成 30 年告示 )解説外国語編・英語編では ,「 聞くこと 」,「 読むこと 」,「 話

すこと [やり取り ]」,「 話すこと [発表 ]」,「 書くこと 」の五つの領域を総合的に扱うことを一層重視す

る 「英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・Ⅲ 」と ,話すことと書くことによる生徒の発信力の育成を強化す

る 「論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 」を新設し ,外国語でコミュニケーションを図る資質・能力を育成するため

の言語活動を充実させることが明示されている。また ,「 他者と協働する力を育成するため ,( 中略 )学

習形態について適宜工夫すること 」も記されている。

 そこで ,本研究では ,タブレット端末の活用と 「Do( どう )! やった ?! シート 」( 図1) による生徒同

士の相互評価を取り入れ ,インプット (聞くこと ,読むこと )とアウトプット (話すこと ,書くこと )

が往還する言語活動の充実を通して ,主体的に考えを表現したり伝え合ったりするコミュニケーション

を図る資質・能力の育成を目指す高等学校外国語科の授業づくりを行いたいと考える。

 

3.事業の概要

(1) 学びへ向かう力を生み出す単元の導入の工夫-インプットとアウトプットの往還を促す原動力-

 学びへ向かう力を生み出す単元の導入を目指し ,生徒がこれまでの学びや経験を想起するやり取りを

行うことから始めた。次に,タブレット端末を活用し,単元の内容に関するやり取りの動画を視聴した。

実際に動画を視聴する場面では ,タブレット端末に耳を近づけて正確に英語を聞き取ろうとする姿や ,

聞き取れなかった部分を何度も再生する姿 ,理解できた箇所を友達と共有し ,それらを合わせて協働し

て理解しようと努める姿等が見られた。このように ,タブレット端末を活用することは ,手元で視聴し

たい箇所を何度でも視聴できるというよい点がある。その後 ,指導者が単元目標や単元で行うアウトプ

ット活動を明示し ,具体的なアウトプット活動のモデルも示した。

 このような単元の導入の工夫により ,単元目標や単元で行うアウトプット活動について友達と確認し

合う姿や ,教科書の本文に書かれている内容を確認する姿 ,また ,それらを行う授業がいつになるのか

を確認する姿等が見られ ,生徒は学習の見通しをもち ,主体的な学びへ向かうことができた。

(2) 気付きを促すアウトプット活動-インプットへ向かう推進力-

 ペアでやり取りを行ったり即興で表現したりしながら教科書の内容を確認するアウトプット活動や ,

教科書の内容で理解したことを基に生徒それぞれの考えを表現するアウトプット活動において ,動画の

撮影と視聴が可能なタブレット端末と ,それに基づき生徒同士の相互評価が可能な 「Do( どう )! やっ

た ?! シート 」を活用した。

1 共同研究事業 9

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 これにより,生徒は自分の知識や技能あ 

目的2自分の英語の表現がどのように伝わっていたのかを知ることで気付きの質を高める

目的3学びや変容を自覚することで,思考力,判断力,表

現力等を高める

目的1ペアの相手の英語の表現に着目することで,新たなインプットを増やして,表現力を高める

図1 相互評価において活用する「Do(どう)!やった?!シート」例

工夫1

工夫2

工夫3

るいは経験等が十分ではないということに

気付くとともに ,自分の英語の表現がどの

ように伝わっていたかを知ることができた。

タブレット端末の活用で自分の英語の表現

に対する新たな気付きも可能となった。

 タブレット端末の活用と 「Do( どう )! や

った ?! シート 」による相互評価を行うアウ

トプット活動を段階的に取り入れたことで ,

生徒はインプットの必要性を感じて主体的

にインプットへ向かった。そして ,インプ

ットの成果による学びや変容をアウトプッ

ト活動と相互評価により自覚するとともに ,

次なる課題を見いだし ,再びインプットへ

向かうことができた。このように ,インプ

ットとアウトプットが往還する言語活動の

充実を通して ,生徒は主体的に考えを表現

したり伝え合ったりすることができるよう

になった。また ,自分の考えをまとまりの

ある英語で表現できるようになった達成感

を得るとともに ,英語によるやり取りを楽

しいと感じる生徒の姿も見られた。単元のまとめのア 

33 43 15 36Verygood Good So-so Notgood 無記入

(数字は% 回答総数227)

単元の

まとめ

図2 Did you enjoy today’s lesson?の回答

ウトプット活動では ,8割近くの生徒が楽しんでいた

(図2) という結果からも ,学びや変容の自覚が英語

によるコミュニケーションを楽しむことにつながり ,

主体的に次なる学びへと向かうことにつながるといえる。

4.今後に向けて

 タブレット端末の活用と 「Do( どう )! やった ?! シート 」による生徒同士の相互評価は ,自己の課題

を見いだし新たなインプットへ向かう必要性を感じる効果的な手立てであった。また ,単元の導入にお

いて ,単元目標や単元で行うアウトプット活動のモデルを指導者が示したり ,単元の内容に関する英語

によるやり取りの動画をタブレット端末で生徒が視聴したりすることにより ,生徒は学習の見通しをも

ち ,学びへ向かう力が生まれ ,インプットとアウトプットの往還が促進される原動力となった。さら

に ,「 やり取り 」や 「即興性 」を意識したり ,複数の領域を統合したりするアウトプット活動を単元の

中に効果的に組み入れることは ,生徒が学びや変容を自覚でき ,主体的に考えを表現したり伝え合った

りするコミュニケーションを図る資質・能力の育成に資する手立てであった。今後 ,波及効果の観点か

らも ,定期考査や生徒の学習過程の見取り等 ,指導と評価の一体化のあり方について検討し ,新設され

る 「英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・Ⅲ 」や 「論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 」につなげていく必要がある。

  (藤岡 香織・大嶋 秀樹 )

1 共同研究事業

10 1 共同研究事業

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 1-6) 国語科における学びのつながりをめざした授業改善

1.事業名および担当者

 事業名は,「国語科における学びのつながりをめざした授業改善」であり,担当者は次の通りである。

甲賀市教育研究所:福永 佐栄子(所長),村山 雅彦(研究員)

教育学部:長岡 由記(学部教員)

2.事業の目的

 本事業は,学習者が目的意識をもって主体的に学び合うことのできる国語科授業の実現に向けて,授

業分析による授業改善を行うことを目的とする。

 これまで本研究では,子どもたちの多様な考えを引き出し,課題意識をもって主体的に学ぶ子どもの

姿を目指し,教師集団による授業分析を行いながら予習を活かした授業改善を行ってきた。そこで,こ

れまでの本研究の成果を踏まえて,本事業は,学んだことがつながる授業づくりを探究することをねら

いとする。そのために,本年度前期では,学ぶ目的意識をもち主体的に学び合うための教材研究,授業

づくりに取り組み,上述の暫定的な方法を構築する。後期ではそれをもとに授業実践して反省し,先の

暫定的方法を修正する。本事業は,甲賀市と大学の連携によって,同市の授業研究体制を構築するため

の取組である。

3.事業の概要

4 月 12 日 研究目的・内容の確認 8 月 7 日 授業検討会,学習指導案の検討②

6 月 1 日 授業研究(第 2学年) 10 月 18 日 研究授業Ⅰ(第 2学年)

6 月 29 日 授業研究(第 5学年) 10 月 25 日 研究授業Ⅱ(第 5学年)

8 月 2 日 授業検討会,学習指導案の検討① 1 月 31 日 研究のまとめ

○研究授業Ⅰ:がまくんやかえるくんの心情について想像したことを,音読劇にしよう

(教材名「お手紙」光村図書2年下)

 本単元において付けたい力は,「行動や会話をもとに登場人物の気持ちを想像しながら読む力」であり,

主な単元の目標は,動作化や音読劇を通して,登場人物がどのような思いでその言葉を言ったのか,そ

の言葉を言われた相手はどのように思ったのかなど,想像を広げながら読むことができるようにするこ

とである。音読劇は,登場人物の言葉のやりとりに焦点化して考えられるように台詞中心の音読劇とし

た。本時は,全12時間の6時間目の授業であり,目標は「昼ねをしているがまくんと,声をかけるか

えるくんの気もちをそうぞうしよう」である。予習課題として,がまくんとかえるくんの気持ちが分か

る叙述に線を引いてくることが設定されていた。

 授業は,まず本時のめあてを共有し,次に前半グループと後半グループに分かれて,前者は教科書

11 - 12 頁,後者は 13 - 14 頁の叙述について,それぞれどのように表現するかをペアで考えた後に全

員で交流を行うという流れで行われた。授業では,会話文に着目して,誰がどのような気持ちでどのよ

うな表情で(行動を伴いながら)発話しているのか,なぜそのようなことを言ったのか(行ったのか),

その言葉を聞いて,聞き手はどのような気持ちになったのか(どのような表情で聞いていたのか)等に

ついて,挿絵と叙述を手掛かりとしながら考える姿が見られた。例えば,がまくん役の児童は,「かえ

1 共同研究事業 11

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るくん,どうして,きみ,ずっとまどの外を見ているの」と尋ねる場面で,挿絵のように窓から外をの

ぞいているかえるくんの隣に移動するという様子を演じていた。また,移動した理由として「かえるく

んがずっとまどの外をみてるから,なんでか聞きに行った」と発言していた。本授業では,ここに至る

までに,かえるくんの言動に対して目線をそらしたり布団をかぶったりして「誰もお手紙をくれるわけ

がない」という思いを表現していたがまくんが,繰り返されるかえるくんの言動によって変化していく

過程を動作化することで読み取る学習が行われていた。実際にベッド(机で代用)や窓枠等が教具とし

て用意されていたことも考える際の大きな手立てとなっていた。

○研究授業Ⅱ:登場人物の心情が分かる表現に着目して,椋鳩十作品の魅力を伝え合おう

(教材名「大造じいさんとガン」光村図書5年)

 本単元において付けたい力は,「登場人物の心情を表す効果的な表現に着目して読む力」「教材文を通

して学んだことを基に,他の椋鳩十作品の魅力(情景描写や著者の動物への愛情等)を伝える力」である。

主な単元の目標は,「登場人物の相互関係や心情,場面についての描写をとらえ,優れた叙述について

の考えをまとめることができる」ことである。本単元の特徴は,まず既習の「ごんぎつね」の魅力を語

り合う読書座談会を行い,作品の魅力を見つけるための視点を見出した後に,「色彩表現」や「オノマトペ」

「情景描写」「登場人物の気持ち」などの読みの視点を定めたミニ読書会を積み重ねることによって,作

品の魅力を導き出していこうとする点にある。本時は全 13 時間の9時間目の授業であり,目標は「『な

ぜ大造じいさんは残雪を撃たなかったのか』について,大造じいさんの心情が分かる表現に注目し,自

分の考えをまとめることができる」である。予習課題として,「大造じいさんの心情が分かる表現に注

目して全文プリントに線を引き,分かることを書き込む」ことが設定されていた。

 授業は,まず予習で考えてきたことを基にグループでミニ読書会を行い,次にグループ内の意見を出

し合いながら全体で課題について話し合い,最後に一人ずつ大造じいさんの気持ちが最も分かる表現を

書き抜いて選定理由をワークシートに記入するという流れで行われた。授業では「おまえみたいなえら

ぶつを,おれは,ひきょうなやり方でやっつけたかあないぞ」における「ひきょう」や,「そうして,お

れたちは,また堂々と戦おうじゃないか」における「堂々と」の意味することを中心に話し合いが行わ

れた。「堂々と」をめぐっては,大造じいさんと残雪が一対一で戦うのが正々堂々だと思うという趣旨

の発言に対して,「おとりを使ったら,一対二になるのでは」という意見が出た。その意見に対しては,

「『今年はひとつ,これを使ってみるかな。』っておとりのガンをここでつかってしまうって言ってるから,

それやったらガンをおとりに使うってことが正々堂々とじゃないんやったら最後の大造じいさんのセリ

フとつじつまが合いません」というように他の児童の発言について叙述に基づいて検討する姿が見られ

た。

4.今後に向けて

 1学期に授業研究を実施し,授業中の発話をもとに検討を行うことで各学級の児童の実態に応じた学

習方法の選択や教材研究を行うことができたことが本年度の大きな成果である。それにより,学習者集

団の学習への取り組み方の変容や,研究授業後も継続・発展する学びの様相を捉えることが可能となっ

た。今後も,発話記録をもとに授業者の思いと実際の授業内容とを照らし合わせながら授業検討を行い,

さらに言語活動の質を高めるとともに,特に「こうか授業術5箇条」の「うんと考えひとり学び(自立

解決)」と「かんがえつなげて話し合い」がさらに深まるような授業デザインの実現に向けて検討して

いきたい。

  (長岡 由記・村山 雅彦 )

1 共同研究事業

12 1 共同研究事業

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 1-7) 小学校における予防教育プログラムの開発・実践

1.事業名および担当者

 本事業は小学校における予防教育プログラムの開発・実践に関するものであり,担当者は次のとおり

である。

・教育学部:芦谷道子(代表者・教授)・佐山みなみ(大学院生)

・甲賀市立伴谷東小学校:中嶋政二(校長)・村田吉美(教諭)

2.事業の目的

 学校現場において,不登校やいじめ,暴力といった心理的問題は深刻化しており,特に小学校で増加

傾向にあることが報告されている。滋賀県における平成 29 年度統計によると,小学校における暴力行

為総発生件数は 373 件(前年比 198 件増加),いじめ認知件数 4126 件(前年より 684 件増加),不登校

児童数 453 人(前年より 55 人増加)と深刻な状況が続いている。なかでも,暴力行為の増加が倍以上

と著しく,いじめ,不登校も併せ,行動上の問題への対応が求められている。こういった問題への取り

組みとして,事後対応のみではなく予防教育の必要性が西欧諸国を中心に注目され,日本においても様

々なプログラムが開発されてきている。

 筆者らは,鳴門教育大学予防教育科学センターにて開発され,標準化された CD 教材などを通して比

較的教員にも取り組みやすい予防教育プログラム「いのちと友情の学校予防教育」(TOP SELF: Trial

of Prevention School Education for Life and Friendship)に注目し,昨年度より県内の小学校にて

実践授業を試みてきた。TOP SELF において設定される教育目標は,健康や適応に影響するおおもとの

心的特性(性格を中心とし,認知,感情,行動に及ぶ)の改善により,将来の健康や適応上の問題を予

防,促進することとされる。本事業においては,滋賀県の小学校において昨年に引き続き TOP SELF を

継続実践し,自尊感情や抑うつ度に対する効果を検証し,継続的に取り組むことのできる,不登校・い

じめ問題の予防教育プログラムを開発,実践することを目的とした。具体的な目的は以下の 2点である。

 ① 鳴門教育大学の指導を受け,対象校の 3,4年生に合うプログラムの教材づくりを行う。

 ② 作成した教材をもとに,小学 3,4年生を対象に,予防教育プログラム実践を行い,自尊感情や 

   抑うつへの効果を検証する。

3.事業の概要

 滋賀県より「生きる力を育むモデル校」に指定されている伴谷東小学校において,「生きる力担当」

の教諭と連携し,予防教育プログラムの開発,実践を行った。「TOP SELF」プログラムの開発を行って

いる鳴門教育大学予防教育科学センターにて,プログラム開発に携わる山崎勝之教授,内田香奈子准教

授の指導,助言を仰ぎ,伴谷東小学校の現状に合ったプログラムを開発した。そして,3年生(48 名),

4年生(57 名)を対象に全 4回の継続プログラムを実施し,効果評価を行った。4年生は昨年に引き続き,

2度目の実施となった。実施時期は,2学期の 10 月~ 11 月であった。効果評価としては,鳴門教育大

学予防教育科学センター作成の自己意識評価質問紙を用いた。質問項目の内容は,「自分の良いところ

を知っていますか。」「自分のことを大切に思いますか。」など 12 項目で,4段階評価で回答するもので

あった。抑うつ尺度はバールソン児童用抑うつ性尺度(DSRS-C)を用いた。

1 共同研究事業 13

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【プログラムの内容】

今回のプログラムの目的は,「自己信頼心(自信)の育成」とし,授業の内容として,以下の 4つの

操作目標を設定した。

・第1回 :正(楽しい,嬉しいなど)の出来後を想起し,正感情を高めることができる。

・第2回 :自己の長所を探すことができる。

・第3回 :他者の長所を探すことができ,他者の価値を肯定することができる。

・第4回 :自分の夢,将来について考えることができる。

【プログラム実施時の子どもたちの様子について】

 本プログラムの構成は,子どもたちの興味をひく非常に取り組みやすいものであった。学年ごとに標

準化されたアニメ教材により子どもたちはアニメの世界に引き込まれ,スムーズに活動に入っていくこ

とができた。子どもたちは,ゲームに集中し,見つけた答えを積極的に発表し,自分の考えを友達と共

有することができた。

 プログラムでは,ポジティブで楽しい感情に基づく学びが重視されており,賞賛の拍手や励まし合う

機会も多かったため,授業の雰囲気は温かく,子どもたちからは授業を待ち望む声が聞かれた。回を重

ねるにつれて,プログラムのねらいに深くせまる感想が増え,特にその傾向は 2年連続実施した 4年生

に顕著であった。離籍や退室の多かった特別支援教育対象の子どもも,徐々にプログラムに参加を望む

ようになり,課題に集中する姿が見られた。

【効果の評価】

 両学年ともに,自己意識評価には変化が見られなかったが,抑うつ度において有効性が検証された。

2年連続実施した 4年生では,3年生時プログラム実施前のベースラインから,効果が持続することも

分かった。また,対象児のうち 3年生では特に男児に効果が高く,4年生では女児に効果が高かった。

【考察】

 標準化されたアニメやゲームを通して自分や他人を見つめるという本プログラム授業の形態は,子ど

もたちの興味を惹き,また多忙を極める教員にとっても取り組みやすいものであった。抑うつに対して

効果がみられたことより,予防教育としての有効性が確認された。子どもの抑うつはイライラや攻撃的

行動として発現されやすく,滋賀県の課題である暴力行為への予防としても,効果が期待される。学年

によって効果に違いがみられたことから,学年の特徴に応じたプログラムの工夫が求められる。

4.今後に向けて

 今回は,学級活動の時間としてプログラムを実施したが,継続して時間を確保していくためには,学

校全体でカリキュラムを考えていく必要がある。また,今回は「生きる力」担当が授業を実施したが,

学校全体で取り組みを進めていくためには,担任が授業できるよう研修やサポートを行っていく必要が

あると考える。さらに対象学年を広げ,継続した効果検証が求められる。

  (芦谷 道子 )

1 共同研究事業

14 1 共同研究事業

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 1-8) 滋賀県における幼児の運動能力に関する研究(平成 30 年度)

1.事業名および担当者

 事業名は,「滋賀県における幼児の運動能力に関する研究(平成 30 年度)」であり,担当者は次のと

おりである。

 教育学部:奥田援史  滋賀県教育委員会スポーツ健康課 指導主事 内藤康司

2.事業の目的

 滋賀県内の幼稚園・保育所・認定こども園の園児を対象として、幼児の運動能力について調査する。 

3.事業の概要

1)実施した内容

① 調査実施園及び幼児数

 滋賀県内の幼稚園、保育所及び認定こども園の 140 園を実施園とした。測定対象者の園児は 4, 5 歳

児クラスに属す、有効測定者数は 8,029 人名である。今回の結果は、6種目のデータが揃っているもの

について分析した。

②調査内容 : 幼児運動能力テスト

 25m 走(秒)、立ち幅跳び(cm)、体支持持続時間(秒)、ボール投げ(m)、両足連続跳び越し(秒)、捕球(回)

の6種目を実施した。運動能力の測定については、説明会の後、各園で実施した。なお、実施方法に関

する DVD を配布し、適宜確認できるようにした。

2)結果と考察

 結果は次のページに示す通りである。滋賀県の幼児の運動能力は、依然として低水準で推移している

と考えられる。また、男児では総合評定の D, E 段階に属する者が多く、運動能力の向上が期待される

ところである。

3)今後の課題

 平成 30 年度の滋賀県における体力・運動能力については、小学校では改善傾向が認められ、中学校

では全国平均水準かそれ以上のレベルにある。こうした状況を踏まえると、この調査を実施する影響が

少しずつではあるが出てきているのではないかと推察される。

 幼児の運動能力調査は、各園の幼児の運動能力が県・市の他の園と比較できる物差しを提供してくれ

るだけでない。この調査の実施は、目の前の幼児の運動能力の実態を改めて知る機会でもあり、園や保

育者自身の保育を振り返る機会の契機となっているはずである。ある保育者は、勤務する園における幼

児の運動能力調査結果があまりにも低水準にあることに愕然とし、研修の場を主体的に求めて参加した

という例もある。

 幼児の運動能力の向上については、運動量を増やすことが最も必要な点である。幼児の運動量を確保

するためには、定期的で、一斉活動による運動遊びを実施することよりも、幼児が主体的に遊ぶことを

優先させることを大切にしたい。

 さらに、家庭における幼児の運動遊びを活性化させるために、園と家庭の連携をより一層充実させて

いくことが必要であるし、総合型スポーツクラブや学童保育などで運動遊びを普及・充実させていくこ

1 共同研究事業 15

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とも期待されることである。

    

4.今後に向けて

 滋賀県における幼児の運動能力調査が、今後も継続して実施されていくことを期待する。

 (奥田 援史 )

1 共同研究事業

16 1 共同研究事業

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 1-9) 滋賀県学校安全教育推進プロジェクト

1.事業名および担当者

 事業名は滋賀県学校安全推進プロジェクトであり,担当者は以下のとおりである。

教育学部:藤岡達也(代表者)

滋賀県教育委員会保健体育課:北川英樹(指導主事)

彦根市教育委員会保健体育課:山内徹好(指導主事)

近江八幡市教育委員会学校教育課:上田高也(指導主事)

2.事業の目的

 本事業は,滋賀県における学校防災を中心とした学校安全を推進するための教育内容,方法,さらに

はそのシステムについて,県内の市町の事例の収集・分析等をもとに各学校への指導・支援を通して実

践的に探るものである。本年度も本学に教職大学院学校経営力開発コースの「地域協働実習Ⅰ・Ⅱ」の

一環としても地域連携の強化を図った。また,平成 26 年度から刊行している「滋賀県防災教育資料集」

し,「滋賀県防災・安全教育資料集」を作成,関係機関,学校等に配布し活用を意図する。

 

3.事業の概要

 本年度は自然災害の発生が続き,喫緊の対応が求められた。これまでの実践を踏まえ,県教育委員会

事務局保健体育課,近江八幡市教育委員会学校教育課,彦根市教育委員会保健体育課等と連動し,滋賀

県内の学校安全の推進・啓発を目指し,地域の機関等と連携した災害安全(防災),生活安全(防犯を含む),

交通安全の内容,指導法について,実践的な取組を行ってきた。その一つとして,これまでに作成した

「滋賀県防災・安全教育資料集」の事例を各学校現場において具体的な方法を示した。

 本学にとっても,教職大学院に所属する派遣された現職教員に対する「地域協働実習」の場として学

校安全や防災教育に関する実習の場として位置付けたことである。4月に実施された「トップセミナー」

 

 

1 共同研究事業 17

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(前ページ写真左)では,県下の学校長が一堂に会し,学校危機管理の研修を行う場と言える。ここに,

本学教職大学院「経営力開発コース」の 6名の現職教員が教育委員会との連携のもと,研修の組立や当

日の運営等を学ぶことができた(同右)。つまり,本学に派遣された管理職候補者が,学校長とともに,

危機管理の状況を他県の実態をもとに学んだり,現在,管理職にどのような内容の研修が求められ,教

育委員会はどのように運営するのかを直接意識したりすることが可能となる。

 また,9月に開催された「学校防災教育コーディネーター講習会Ⅰ」や 6月と 2月に開催された「滋

賀県子どもの安全確保に関する連絡協議会」等にも同様に出席し,「地域協働実習」の一環として取組

を行ったことも付記する。本年度も,近江八幡市などにおいて,避難訓練や地域と連動した学校安全の

取組について,その実証的な検証を行ない,その都度アドバイスを行った。また,教員研修についても,

教育委員会保健体育課と進めている。特に各学校レベルの実践においては,市教育委員会との連絡の下,

地元の危機管理課や消防署,さらには地域の自治会やコミュニティセンターと連携した活動もこちらが

アドバイスするだけでなく,地域の具体的な実態を学ぶ点で重要な意味があった。さらに教職大学院で,

「学校危機管理」や「学校安全」等の進め方を検討する中で,滋賀県の事例分析として取扱うことがで

きたのは,本学にとっても意義は大きかったと考えられる。

 その中でも特に近江八幡市の小学校での実践  

について,一例を挙げてみたい。滋賀県は平成

30 年度も引き続き文科省「防災教育を中心とし

た学校安全総合支援事業」に採択されている。

近江八幡市は県のこの事業の一環として取り組

んでいる。

 写真(右)は,11 月 10 日に,避難訓練,引

渡し訓練等が実施された八幡小学校での様子で

ある。ここでは保護者の参加も意図して,土曜

日に実施された。まず,緊急地震速報によって,

児童は避難の対応を考える。その後,地震が収

まったと仮定して運動場に集合し,点検を受け

る。引き続き,保護者の協力を得て,引渡し訓練を行う。ただ,マニュアルがあったとしても,完全な

ものはなく,訓練を繰り返して,さらに改善していく必要がある。

 

4.今後に向けて

 平成 30 年は多くの学校が大阪府北部地震の影響,西日本豪雨,台風 21 号・24 号など自然災害の影

響を受けた。今後,滋賀県においても防災教育を含む学校安全,学校危機管理は喫緊の課題であり,学

校,教育行政,地域と一体となった取組は,本学にとってもこれからの新たな課題である。

 特に,本学の教職大学院のカリキュラムにおいては,「学校安全・防災教育」等の授業は今日重要な

意味を持っている。そのため,本学教職大学院としても,今後一層,滋賀県の教育行政や学校と連動し

た活動・実践等にも取り組む予定である。

(藤岡 達也 )

1 共同研究事業

18 1 共同研究事業

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 1-10) 企業との連携を考えた滋賀県の情報教育研修拠点整備に

     向けたプロジェクト

1.事業名および担当者

 事業名:企業との連携を考えた滋賀県の情報教育研修拠点整備に向けたプロジェクト

 担当者:岳野公人

 滋賀県立清陵高等学校:村田良(教諭),石﨑富治(校長)

2.事業の目的

 IT 人材の不足が叫ばれる中,小学校にプログラミング教育が必修化され,情報の受験科目がセンター

試験の科目に組み込まれるという案が実現しつつある。学校教育においては,今後さらに教員が ICT に

関わるリテラシーを身につける必要性も認められる。また,実際の社会でどのような ICT 技術が必要で

あるのかについても,企業と連携した研修内容の検討も重要になる。そこで,本プロジェクトでは学校,

企業と大学が連携した滋賀県の情報教育研修拠点整備に向けたプロジェクトチームを立ち上げ,研修内

容と拠点の整備に向けて会議を開催する。

3.事業の概要

 滋賀県の小中高の情報教育の拠点となるような研修内容を整備するために企業と大学が連携した打ち

合わせや会議を開催した。3年から 5年計画のプロジェクト継続を想定し,最終的には研修内容の開発

に取り組む。特に,本年度は滋賀県の情報教育の実情把握と企業側の連携の可能性を探るための会議

を,3ヶ月に1度程度開催した。特に,2018年 5月16日開催の開催では,写真1のようなブレインストー

ミングの結果 ,各種企業や学校との連携に関するアイデア図が完成した。

写真 1 アイデア図

 企業側からはどのような支援が得られそうかについて打ち合わせをするために , 滋賀県立清陵高等

学校の情報演習室の現状を企業側の担当者に確認してもらい ,どのような情報機器環境の整備が可能か

意見を伺った。その際には ,高等学校側からも情報機器管理教諭を含む 10 名程度に参加してもらい ,2

時間程度の情報交換を実施した。

 その後,プロジェクトチームの会議は,滋賀大学の大津サテライトや滋賀大学の大津キャンパスで開

催され,企業との連携を考えた滋賀県の情報教育研修拠点整備に向けた情報交換を重ねた(写真 2,3)。 

1 共同研究事業 19

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 このプロジェクトに興味を持ち参加しているのは,一般のプログラマ,中学校教員,高等学校教員,

滋賀大学学部生,滋賀大学教員であり,おおよそ 10 名程度で情報交換を実施した。情報交換の内容は,

シンポジウムの内容をどのように構成するか,情報教育の方向性,情報機器の整備について,情報教育

の教材はどのようなものであるか,小学校で必修化されるプログラミング教育について,プログラミン

グ言語についてなど,それぞれの構成員が得意分野について情報提供し,毎回 2時間程度の情報交換が

実施された。例えば,プログラム言語については,プログラマを職業とする立場の方からお話をいただ

き,プログラミング教育や情報教育のあり方について議論をした際には,教育現場の先生方からも非常

に活発な質問が出ていた。また,情報機器の整備にとどまらず,現場の先生方にとっては,情報教育に

関する授業やカリキュラムのアイデアについて議論する場ともなり,各回は有意義な会議となった。

   写真 2 大津サテライトでの会議      写真 3 大津キャンパス研究室での打ち合わせ

4.今後に向けて

 2019 年 2 月時点では,2019 年の 8月に滋賀県の情報教育シンポジウムを滋賀県立清陵高等学校の情

報演習室を利用して開催する予定である。そのために,清陵高校では情報機器を 2019 年度に更新する

予定で整備を進めている。この整備に向けても,各種企業よりアイデアやアドバイスをいただいた。今

後はさらに,打ち合わせを重ねるとともに,教育現場ではどのようなシンポジウムが期待されているの

か情報収集する必要がある。また,シンポジウムの内容をどのような構成にするのか検討していく必要

がある。

(岳野 公人 )

1 共同研究事業

20 1 共同研究事業

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 1-11) 通級指導教室等の子どもに対する協調運動面の指導に関する

     実践的研究(2)

1.事業名および担当者

 事業名は通級指導教室等の子どもに対する協調運動面の指導に関する実践的研究(2)である。担当

者は以下のとおりである。

 教職大学院:川島 民子〇 奥田 援史

 公立小学校通級指導教室:太田 恵 掛田 みちる 小川 絹子 西田 史子

2.事業の目的

 不器用で、運動が苦手と言われる発達性協調運動障害の可能性をもった通級指導教室等の子どもを対

象に、通級指導教室等での学習活動について、事例を通して検討し、協調運動面を向上させる学習活動、

指導内容・方法を明らかにする。

3.事業の概要

 通級指導教室の担当教員は、通級指導教室に通う児童に発達性協調運動障害の傾向のある児童が多い

のではないかと感じている。担当教員は、それらの児童に対して、適切な学習活動に取り組みたいと考

えている。このようなニーズに対して、感覚統合の視点を取入れながら実践的研究を行う。昨年度は、

グループ活動を対象にしたが、より個々の課題に迫るために、今年度は個別での学習を対象とする。大

学担当者がスーパーバイズとして関わりながら実践的研究を進める。滋賀県内の公立学校を対象とする

ことで、学校の教育課程に位置付けながら、様々な実態に応じた学習活動、指導内容・方法を明らかに

できる。

(1) 対象校

   公立学校通級指導教室4校

(2) 実施内容 

日にち 時間 対象校

【授業研究】

5月 23 日(水) 8:30 ~ 12:30 A小学校通級指導教室 1回目

5月 30 日(水) 13:30 ~ 15:30 B小学校通級指導教室 1回目

6月 13 日(水) 8:30 ~ 12:30 C小学校通級指導教室 1回目

6月 13 日(水) 13:30 ~ 15:30 D小学校通級指導教室 1回目

【全体研修会】 9月 19 日(水) 9:00 ~ 12:00 B小学校通級指導教室

【授業研究】

9月 26 日(水) 8:30 ~ 12:30 A小学校通級指導教室 2回目

13:30 ~ 15:30 B小学校通級指導教室 2回目

10 月 31 日(水) 8:30 ~ 12:30 C小学校通級指導教室 2回目

13:30 ~ 15:30 D小学校通級指導教室 2回目

【全体研修会】 11 月 14 日(水) 9:00 ~ 12:00 B小学校通級指導教室

【授業研究】

12 月 5 日(水) 8:30 ~ 12:30 A小学校通級指導教室 3回目

13:30 ~ 15:30 B小学校通級指導教室 3回目

2月 13 日(水) 8:30 ~ 12:30 C小学校通級指導教室 3回目

2月 20 日(水) 8:30 ~ 12:30 D小学校通級指導教室 3回目

1 共同研究事業 21

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・ケース児童の通級指導の参観(在籍学級での児童観察も含む)     

・通級指導についての指導助言

(3)実際の内容                          

写真 触ったのなあにの教材

①実態

 ○主訴(一部)

 ・マス目から大きくはみ出し、視写ができない。

 ・シ・ツの書き分けができない。

 ○体の動きに関するエピソード(一部)

 ・絵の具の色が混ぜるつもりがないのにいつの間にか混ざって濁った

  色になってしまう。

 ・運動会のダンス(ボックスステップ)が当日まで習得できなかった。

 ・常に何かを見つけて動き回っている。

 ・友だちに自ら関わりに行き、肩に手を回して接触する。

②指導助言 第1回目

 ○アセスメント(一部)

 ・ボールを思いっきり投げ、「やさしく」という言葉でも修正が難し

 かった。力加減の難しさと考えられる。絵の具も力のコントロールが難しく混ざってしまうだろう。 

 友だちに腕を回している時も力加減が過度になっているのではないだろうか。

 ・バランスボードや島わたり等の粗大運動では運動の切り替えや重心移動がスムーズにできていた。

 粗大運動ではなく、抹消部分でのアプローチがよいだろう。触覚弁別の活動で触覚刺激に注目するこ 

 とで、細かい部分への注目、身体を通した集中(常に動き回ることへの改善)に繋がるのではないか。

 ○課題                             

写真 触ったのなあにの取組

 ・微妙な感触を識別してみよう

 ・見たものを再現してみよう

③取組(一部)

 ・触ったのなあに

 軍手をはめて、長さ、形を触って確かめ、何を触ったか選んで当て

 るゲーム。長さの違いは「ここを数えたらいい」と手掛かりを見つ

 け、立体は「蛇のほうやな」と形を言語化しながら弁別した。

④指導助言 第2回目

 ・じっくり指先の触覚で凹凸の違い、枠組み、3次元の情報を確認していた。触覚刺激を頭の中で、 

 形として再現(立体の場合は命名)して、変換している。目で見て回答できる時もあったが、触って

 回答する方が正答の場合があった。触覚情報が正しく入力されている。今回は形だったので、「重さ」

 「堅さ」「大きさ」等のバリエ-ションをもたせるとよい。

4.今後に向けて

 この取組を継続することによって、主訴である文字の書きへの効果の検証、通常の学級での学習との

連携に取り組んで行く必要がある。

  (川島 民子 )

1 共同研究事業

22 1 共同研究事業

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  1-12) 学びに向かう子どもの育成

     ~主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して~

1.事業名および担当者

 事業名は,「学びに向かう子どもの育成 ~主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通

して~」であり,担当者は次の通りである。

 長浜市立長浜南小学校:清水 伊佐雄(校長),吉田 教人(研究代表,教諭)

 教職大学院:畑 稔彦

2.事業の目的

 本研究では,主体的・対話的で深い学びに向けた授業改善を通して,学びに向かう子どもの育成を目

指している。児童の実態や課題ふまえながら,具体的な授業構築の方法を探ることをねらいとする。

 

3.事業の概要

 各学年がとらえる「主体的・対話的で深い学び」について話し合い授業研究を進め,それを高めるた

めの学習指導の在り方を探る。その中でも,自分の考えを発表する,友だちと交流する活動に重点を置

き,ノートに書くことを基本としつつ,さらに主体的に課題を解決していける力を高めていくための方

策を明らかにしていく。

 研究の内容として次の6点に取り組んでいく。

① 各学年の「深い学び」の到達基準を明らかにし,授業づくりを通して指導法や児童の変容を検証し

ていく。(全体授業研7回)

② 子どもたちと学習のめあてを作り,学習のまとめを考える活動を行う。

③ 必然性のある学習課題を設定し,解決する喜び,学び合う楽しさのある学習活動を工夫する。

④ 互いに認め合い深め合える学級集団作りにも継続して取り組み,自己有用感を高める。

⑤ グループで学び合う活動や,自分の考えを伝え合う活動(思考ツールの活用)を取り入れた対話的

な学びを工夫する。

⑥ ふり返り(指導者が求める姿を指導案に明記する)によって児童の意識を顕在化させ,児童にとっ

て達成感があり次時への学習意欲につながる授業づくりに努める。

 大学担当者は,以下の研究会において指導助言にあたった。

・第2回研究会( 5 月 30 日):第3学年「わくわく算数学習」の授業研究会

・第5回研究会( 8 月 22 日):全体研究会 2学期の研究授業の指導案検討

・第6回研究会(10 月 3 日):第2学年「100 ㎝をこえる長さ」の授業研究会

・第8回研究会(11 月 14 日):第1学年「かたちづくり」の授業研究会

 本稿では,実践された研究授業のうち,第3学年「わくわく算数学習」〔5月 30 日〕を事例として示

したい。ボールのはいった箱の縦の長さの求め方を考え,話し合いを通して,友だちに伝えたり,友だ

ちの考えを理解したりすることをねらいとした授業である。横の長さが与えられた箱に,同じ大きさの

球がすき間なくきちんと入っていることから,球の直径の何個分かをもとにして箱の縦の長さを求める

1 共同研究事業 23

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問題である。児童にとっては,上から見 

写真 1 写真2

た図で球を円とみることや,球がすき間

なくきちんと入っていることで,円が接

していることを理解することなど,把握

しなければならない条件が多い。そのた

め,授業者は児童のつまずきに応じて,

詳細な指導案だけでなく,右の図のよう

な学び把握シートを作成して授業に臨ん

だ。

 授業の導入では,問題の絵を見せて気

付いたことをあげさせ,「箱の中にまんじ

ゅうが12個。」「箱の中にぴったりはいっ

ている。」「すき間なく。」とでてきたとこ

ろで,写真1のように実物を見せた。児

童から「いつも見ているのは真上から見

ているけど,ななめっている。」「ななめ

だと気持ち悪い。」という思いを引き出し

たところで,真上から見た図を提示した。

どこから見たらすっきりするのという教

師の問いかけに,「真上です。」「見やすい。

うすっぺらくなっている。」と答えていた。

この間のやり取りは,写真2のように吹

き出しの形で板書に残していった。この

後も,ボールの大きさを円ととらえるこ

となど,教師が一方的に問題解決の手順

を示していくのではなく,児童の気付き

から解決の見通しをたてるようにしたこ

とで,自力で問題を解決する児童の姿に

つながった。

4.今後に向けて

 第 1回目の研究授業を研究主任が行うことで,授業づくりの視点を具体的に校内で共有することがで

き,その後の研究授業も視点がぶれることがなかった。学びの把握シートを作成することで,児童のつ

まずきを明らかにするだけでなく,その時間で児童に身に付けさせたい数学的な見方や考え方が整理さ

れていった。このことは「深い学び」の到達基準を明らかにすることでもある。本研究の6つの視点は,

算数教育を充実させる上で大切な視点であり,今後も引き続き研究を進める必要がある。

(吉田 教人・畑 稔彦 )

1 共同研究事業

24 1 共同研究事業

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 1-13) 生徒が主体的に学び,確かな学力を身につけるための学習指導

1.事業名および担当者

 事業名は,「生徒が主体的に学び,確かな学力を身につけるための学習指導 〜わかる・できる授業を

目指して〜」であり,担当者は次の通りである。

 豊郷町立豊日中学校:中野泰弘(教頭),北村 俊(研究代表,数学科教諭),岩崎 剛(数学科教諭)

                    髙井克徳(数学科教諭),高尾和樹(数学科講師)

 教職大学院:畑 稔彦

2.事業の目的

 算数・数学の問題発見・解決のプロセスを意識した教材の開発が望まれる。とりわけ,資料の活用(新

学習指導要領では「データの活用」)の実践事例が他領域に比べて少ないことから,重点的に研究を進

める。

 

3.事業の概要

 数学科では,年間2回の研究授業を行い,様々な考えを引き出したり思考を深めたりするような発問

や指導の在り方を検証した。豊日中学校で設定している3つの視点

視点1 教材は適切か。ねらいに対してどうだったか。

視点2 生徒は思考していたか。どのような考え方を身に付けることができたか。

視点3 伝えたくなるような問題設定ができていたか。

をもとにした研究協議を行った。あわせて,事前の指導案検討および先行授業についても大学担当者は

指導助言にあたった。

9 月 14 日 ( 金 ) 指導案検討  20 日 ( 水 ) 研究授業 1年「方程式」,2年「一次関数」

12 月 7 日 ( 木 ),11 日 ( 火 ) 指導案検討  11 日 ( 火 ),12( 水 ) 研究授業 1年「資料の活用」

 本稿では,実践された研究授業のうち,2事例示したい。

(1)1年「方程式」方程式の解き方〔9月 14 日〕少人数授業

 下の図のように,はじめの数として〇に整数を入れて計算し,計算結果 を求める場面を設定し,

はじめの数〇と計算結果 が等しくなるような整数を求めることを課題に授業を展開した。本時の目

標は,未知数を思いついた整数をあてはめて求めるのではなく,方程式を用いて求めることを通して,

立式できれば一定の手順によって解くことができる方程式のよさに気付かせることであった。数あてと

 いうゲーム的な要素もあり,生徒は主体的 

 に課題解決に取り組んだ。

  ①のはじめの数を4,計算の手順を増や

 した②のはじめの数を-2と設定したこと

 で,かんや小さい数から順に整数をあては

 めて求めようとしていた生徒から,「この

 やり方は,めんどうだ。」という思いを引

1 共同研究事業 25

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き出すことができ,自然な流れで文字を用いて数量の関係を式に表す活動に移った。

  

 

 この事例では,文脈の理解に時間をかけなくてもよい分,問題解決の時間を十分に保証することがで

きた。その一方で,はじめの数xと計算結果の3x+8を等号で結ぶことができないことは予想されたが,

上の写真のように3x に9を加えた表現に戸惑う姿などもあり,文字を用いて表現することに抵抗を感

じる生徒の実態が明らかとなった。つまずきに応じたきめ細かな支援が必要である。

(2)1年「資料の活用」豊郷町は本当に温暖化しているのか〔12月 11 日 (火 ),12( 水 )〕少人数授業

 2017 年3月に告示された新学習指導要領において,現行中学校第1学年で扱う用語「平均値,中央値,

最頻値,階級」を第6学年に移行したり,第1学年で用語「累積度数」,第2学年で「四分位範囲や箱

ひげ図」を新規で指導したりすることとし,統計に関する内容の充実が図られている。本事例では,ヒ

ストグラムと箱ひげ図を一つの単元で扱うこととした。データの散らばりに関して,ヒストグラムは分

布の形状はわかりやすい一方で,中央値などの指標がわかりづらいことから箱ひげ図を同時に用いるこ

とによって,より多面的に考察することが可能となると考えたからである。

 授業のねらいは,単元の導入で扱った 2018 年8月と 1971 年8月の気温のデータに加え,2018 年か

ら 10 年ずつさかのぼり,2008 年8月,1998 年8月,1988 年8月のデータをもとに,「豊郷町は本当に

温暖化しているのか」という問いに対して,根拠 

を示しながら説明することとした。データの整理

の仕方や指標については,右の写真のように生徒

から次々と出され,見通しをもって活動に入るこ

とができた。班で分析する場面では,5つの箱ひ

げ図を作成した後,形状の似た年を2つ抜き出し

て度数分布多角形を作成して分布の形を比べるな

ど,多面的に考察する姿が見られた。また,比べる対象に疑問を持ち,「温暖化を調べるのであれば,

冬のデータも調べる必要があるのではないか」「豊郷町以外の市町の記録も参考にできないか」と批判

的に考える生徒もいたことから,一層詳しい考察を加えることも考えられる。

4.今後に向けて

 問題解決の必然性を感じる課題を設定することで,生徒が主体的に学ぶ姿が見られた。特に資料の活

用では,単元を通して豊郷町に関係するデータをもとに教材開発を行ったことで,より生徒にとって解

決したい身近な問題となったようである。指導時期については,図形領域と入れ替えて実施しているこ

とから,その成果と課題について考察する必要がある。           

(北村 俊・畑 稔彦 )

1 共同研究事業

26 1 共同研究事業

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 1-14) 理科指導力向上研修の企画研究プロジェクト

1.事業名および担当者

 事業名は「理科指導力向上研修の企画研究プロジェクト」であり,担当者は次のとおりである。

 教育学部:糸乗 前

 長浜市教育委員会:長屋光彦(教育指導課主幹),保﨑昌幸(教育センター H24 年度認定)

 長浜市立虎姫小学校:大岡義博(小学校長)

 CST(コア・サイエンス・ティーチャー):大橋良平(長浜市立虎姫小学校教諭 H22 年度認定),間所忠昌(虎姫中学

校教諭 H23 年度認定),北村友紀(北郷里小学校教諭 H29 年度認定),山田陽子(長浜北小学校教諭 H29

年度認定),森田博(南郷里小学校教諭 H30 年度候補者),井口愛梨(浅井中学校教諭 H25 年度准 CST 認定),

本庄薫(彦根市教育委員会 H23 年度認定),多和完章(彦根市立河瀬小学校教諭 H24 年度認定),川上恵

里(亀山小学校教諭 H28 年度認定),北村智幸(彦根中学校教諭 H22 年度准 CST 認定)

2.事業の目的

 小学校理科の教科書に基づいた観察,実験を安全に楽しく指導するために,教師が様々な体験をする

ことで,児童の実感を伴った理解に繋げることに重点を置いた研修を企画することである。小学校理科

の教科書に記載された実験,観察を中心に,その指導上のコツを学べることを大切にした。また研修の

企画段階においては,滋賀大学が認定している CST(コア・サイエンス・ティーチャー)教員と長浜市教育委員会と

大学教員が共同研究として参画することとした。さらに実施時期,研修内容についても関連機関が連携

しながら,他の研修との差別化を図り十分に検討を行うこととした。

 

3.事業の概要

 小学校理科の教科書に掲載されている実験および観察の中には,理科の得意な教員にとっても完全に

再現性のある結果を得ることが難しい項目がある。同様に理科を苦手とする小学校教員にとっては比較

的難しいであろう項目も存在する。これらの内容について,中学校教員などの協力を得ながら,いわゆ

る「実験・観察のコツ」を学ぶことのできる研修会を企画したいと考えた。全小学校教員を対象とした

教科書理科実験の完全マスター講習会が最終的な目標である。

 本共同研究の企画運営と実施は CST 教員が中心となった。CST とは,「理数系教員 (コア・サイエン

ス・ティーチャー :CST) 養成拠点構築事業」において,小・中学校教員の理数教育における指導力向上

を図ることを目的として,地域の理数教育における中核的な役割を担う教員のことである。本学では,

「大学と教委の強固な連携による早期 CST 活動を組み込んだ包括的な養成プログラム」として平成 21 年

に(独)科学技術振興機構(JST)から委託され,平成 25 年度からは滋賀大学が滋賀県教育委員会との

連携協力を得て養成プログラムとして継続してきた。市教委を通じて県教委から推薦のあった候補者を

養成し,平成 30 年度時点で 56 名の CST と 25 名の准 CST(学生プログラム認定者)を認定してきている。

1 共同研究事業 27

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 今回の研修会を企画する際には,既に類似の研修会を実施されている彦根市の CST 教員に協力を仰い

だ。また,長浜市の CST 教員が彦根市から移動したこともあり,それぞれの教員が持つ強みを最大限に

活用することができた。講師担当教員,大学教員および市教委などが参画した企画会議を2回開催し,

実施は夏季休業中に半日開催とし,参加者についても校種を越えた参加を呼びかけた。

 実施形態は,3つのブースを設け 50 分ごとに研修者が体験型の講習を受講する形式で,各ブースで

は数名の CST 教員が指導を行った。これは,多くの現職教員研修会が1名の講師から講義として受講す

る形式であることに対して大きく異なり,きめ細かな内容を体験できることを意識したものである。

 内容

 (第1ブース)4年「水のすがた」「もののあたたまり方」→加熱実験のコツ

 ①温度計の違いによる実験結果の違いを知る ②水のあたたまり方の実験のコツ・絵の具と示温イン 

 ク・お湯墨汁 ③気球をとばそう

 (第2ブース)5・6年「顕微鏡の使い方」→顕微鏡の取り扱いの基礎基本

 びわこのプランクトン観察・プランクトンネット

 (第3ブース)ものづくり→発展的な内容・子供たちが喜ぶ実験の紹介

 おもちゃを作ろう・くぐりぬけゲーム・じゃんけんゲーム,コイルモーター・電磁ブザー

 いずれも小学校理科の「観察・実験指導のコツを学ぶ」をテーマに,器具の取り扱いの基本から児童

の主体的な活動を促す理科の授業作りまで,授業に役立つ実践的な研修を行うことに主眼を置いたもの

である。生物,地学分野の内容に不安を抱く教員が多いことが経験上分かっているが,室内開催での限

定化,実施時間配分による制約なども考慮しながら重要度の高い順番に講習内容を決定できるようにし

た。

 研修会では講師による指導であるのと同時に,受講者の反応による講師の指導上の気づきも見られ,

今後の内容の充実や新たなテーマの開発に繋がることが期待できた。

4.今後に向けて

 今年度は長浜市の CST 教員が中心となり,長浜市教育委員会と連携することで教員研修会を企画した。

CST 教員は勤務校のみならず,地域の学校での理科教育の中核となり児童生徒の理科教育に関わる能力

向上を目指した活動が期待されている。滋賀大学としても,これらの活動への支援として県教委並びに

市教委と連携しながら,さらなる CST 教員の養成を継続したいと考えている。今後は,今回の研修会を

参考にして,県内の CST 教員が協力しながら実施することの有用性をさらに検討していきたい。特に児

童にとってより良い理科教育を追究するために,全ての小学校教員が自ら楽しんで指導できるような観

察実験の実施を目指したいと考えている。

  (糸乗 前 )

1 共同研究事業

28 1 共同研究事業

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 1-15) 小学校体育科教育に関する研究

1.事業名および担当者

 事業名は「小学校体育科教育に関する研究」であり,研究テーマは「小学校における体力向上策を支

援する新体力テスト『新・分析支援システム』の作成」である。担当者は次のとおりである。

教育学研究科高度教職実践専攻:辻 延浩教授

 滋賀県総合教育センター:大坪臨太郎研究員,杉谷輝行研修指導主事

 東近江市立箕作小学校:町釋 惠校長,滋賀県教育委員会事務局保健体育課:内藤康司主査,彦根市

教育委員会事務局保健体育課:大森 亮主査,米原市教育委員会事務局学校教育課:伊部 学指導主事

 湖南市立石部小学校:小川 司教諭,大津市立瀬田小学校:掛水宣高教諭,日野町立南比都佐小学校

:明石 愛教諭,米原市立河南小学校:西嶋昭司教諭,滋賀大学教育学部附属小学校:岸本裕司教諭,

甲賀市立信楽小学校:冨板祐介教諭,東近江市立能登川南小学校:長谷川悠喜教諭,草津市立山田小学

校:山田淳子教諭

2.事業の目的

 指導者が児童の体力向上に向けての取組を実践するには,どのような運動にどのように親しませなが

ら体力向上を図るかという見通しをもつことが大切である。本研究では,指導者が,学校や学級の児童

の体力について課題を把握し,その課題に応じて体育科の「体つくり運動」の授業で活用するプログラ

ムと「健やかタイム」で取り組む運動 (遊び )のプログラムの2種類のプログラムを提示する新体力テ

スト「新・分析支援システム」を作成することにより,小学校における体力向上策を支援することを目

的とした。

3.事業の概要

(1) 新体力テスト「新・分析支援システム」の作成

 新体力テスト「新・分析支援システム」は,体力向上策の見通し,新体力テストの結果の分析,体力

の課題に応じた運動 (遊び )のプログラム,コンテンツの提示という構成とし,システムのトップペー

ジから各内容に移動できるようにした。

(2) 体力の課題を分析できる「新体力テスト分析シート」の作成(図1)

 従来の「分析支援システム」を改良し,分析資料のレーダーチャートの項目に体力要素を加えた。こ

れにより,学校,学級,個人の各データで,体力要素に着目して体力の課題を把握できるようにした。

(3) 2種類のプログラムの開発とその実践

① 体育科の「体つくり運動」の授業で活用するプログラム

 実証授業に取り組む学級の体力の課題に応じて「体の柔らかさを高める運動」「巧みな動きを高める

運動」「動きを持続する能力を高める運動」の各領域の単元計画,学習指導案,単元で取り組む運動を

コンテンツとして示すように開発した。

 

1 共同研究事業 29

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     図1 「新体力テスト分析シート」でA学級の体力のデータを提示するまでの流れ

② 「健やかタイム」で取り組む運動 (遊び )のプログラム

 指導者が体力の課題に応じた運動 (遊び )を明確にして「健やかタイム」等を実施できるコンテンツ

を開発した。その際,課題として捉えた体力と体育科の授業の各運動領域を関連付けたり,運動を実施

する人数や運動時間等の条件を指定したりして,運動 (遊び )のコンテンツが提示されるようにした。

(4) 「体つくり運動」の授業の工夫(図2)          

 開発した体育科の「体つくり運動」の授業で活用するプロ 

グラムを基に,児童が関心をもって楽しみながら運動したり,

運動を工夫する学習場面を設定したりして,主体的に学習に

取り組めるようにした。また,保健の内容をプログラムのな

かに取り入れ,児童が健康と運動の関わりを考える学習場面

を設定し,体育科の「体つくり運動」と単元間のつながりを

もたせて,効果的に体力向上を図るようにした。

(5) まとめ                           図2 オリジナルストレッチ

① 学級の体力の課題に応じて体育科の「体つくり運動」の授業にアプローチすることで,研究協力校

の児童が運動に取り組もうとする意識を高めることができた。また,授業後に学んだことを活用する場

面を設定し,体育科の「体つくり運動」の授業で学んだことを日常化するようにしたことは,「健やか

タイム」の取組に結び付くものであり,児童の運動習慣の定着を促進することができた。

② 本研究の取組を基に「新体力テスト分析シート」や2種類のプログラムを改善し,コンテンツとし

て取り入れることで,小学校における体力向上策を支援するためのシステムを作成することができた。

4.今後にむけて

 様々な視点から体力向上を図るために,本研究で取り上げた運動や動き以外に各領域の他の運動につ

いても効果的な取組を考える必要がある。また,「健やかタイム」で取り組む運動 ( 遊び ) のプログラ

ムを活用した「健やかタイム」の取組が児童の体力向上を促進するかどうかを実証する必要がある。

                       (大坪 臨太郎・辻 延浩 )

1 共同研究事業

30 1 共同研究事業

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 1-16) 特別支援学校における音楽づくりの授業開発プロジェクト

1.事業名および担当者

 特別支援学校における音楽づくりの授業開発プロジェクト

 岡ひろみ(滋賀県立新旭養護学校教諭) 林  睦(学部教員)

2.事業の目的

 新旭養護学校の岡は,ここ8年来,特別支援学校での音楽づくりの研究と勤務校での実践に取り組み,

生徒が意欲的に自分の音楽表現に取り組める実践を積み上げるとともに,各種学会での報告や県内研究

会でのワークショップや研修会での講師として特別支援学校での音楽づくりの普及を推進している段階

である。本プロジェクトでは,音楽づくりや音楽家との連携授業を研究している林が,新旭養護学校で

の授業を参観しながら,他校へ広めていくためにどうすればよいのか議論を重ねた。なお本授業の際に

は,打楽器奏者の可児麗子がゲストとして授業に加わった。これらの事例を日本音楽教育学会でのラウ

ンドテーブルでも発表した。

 

3.事業の概要

 本研究では,打楽器奏者であり,通常学校だけでなく特別支援学校での授業経験も豊富な可児麗子が

ゲストとして授業に加わり,打楽器を使った音楽づくりの授業を行った。授業は滋賀県立新旭養護学校

中学部1組(生徒5名)と2組(生徒5名)で行った。両クラスとも授業は全8時間,打楽器奏者は3

時間目と7時間目の授業に参加して,一緒に音楽づくりを行った。

 中学部1組の対象生徒の障害名は知的障害や,知的障害を伴う自閉症やダウン症であり,認知発達は

1歳半から5歳程度である。自分の思いのままに音を出す生徒から,自分がイメージした音を出すため

に音の強弱や長短や速度を工夫できる生徒までいる。授業内容はラップの芯やドレミパイプを使って,

色々な音を出すことを試したり,指導者や友だちと一緒に相手の音を真似したり,掛け合いをして音を

響き合わせることを楽しんだ。打楽器奏者が授業に加わったことで模範演奏での多彩な奏法とリズムに

魅了されて真似をしていた。また打楽器奏者が 

生徒と一緒に演奏して,生徒の音に同期させた

りあえて音をずらしたりすることで生徒はさま

ざまな音楽表現を体験し工夫することができた。

本事業助成を使って購入したカホンを使った音

楽づくりでは,指の形や打ち方の変化や足でミ

ュートを掛けていく斬新な奏法等から生まれる

多様なリズムや音色の違いを感じ取ることがで

きた。また同じ楽器でも演奏する人によって音

が違うことにも気付くことができた。授業後半

には生徒達はトガトン,打楽器奏者は音階のあ

るマリンバを使った合奏を行い,お互いの音を

響き合わせる楽しさを感じ,曲の終わりも自然

1 共同研究事業 31

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な感じで音が減衰していく終止形を作ることができた。

 中学部2組の対象生徒の障害名は,知的障害や知的障害を伴う自閉症や脳性麻痺や難聴であり,認知

発達は4歳から6歳程度である。音楽の要素である音の強弱や長短や音色の違いや速度を工夫すること

ができる生徒達であり,話し言葉だけでなく簡単な書き言葉でも自分の思いを表現できる力を獲得して

いる。授業内容は,トガトンやカホンを使って1人で演奏することやグループで相談して音楽をつくっ

ていった。音楽の仕組みについてもABAの3部形式や,

カノン形式,コーダの作り方等について,図示を交えた

説明も行った。グループでの音楽づくりでは簡単な図形

楽譜づくりを取り入れた。自分の演奏する箇所に自分の

名前を書いた付箋を貼り,f(フォルテ)やp(ピアノ)

等の強弱記号や<(クレシェンド)や>(デクレシェ

ンド)等の音楽記号も表記するようにした。自分たちが

今作っている音楽が次の時間にも演奏できることを実感

し,楽譜の意義を感じ取ることができた。

 また打楽器奏者と一緒に行ったことで,グループでの音楽づくりのアドバイスを受けることができ,

多彩な奏法や音色を直接見聴きすることができ,音楽表現の幅に広がりをつくることができた。

 授業後に行った他の特別支援学校教諭を含む議論では,型にはまったリズム打ちや簡単な奏法を真似

することが多い自閉症の生徒が,本授業では自由に自分の音楽を奏でることを楽しんでいたことが特別

支援学校での音楽づくりの効果でもあることが確認された。林は,特別支援学校における打楽器を中心

とした音楽づくりについて,身体表現がダイレクトに伝わるカホン等の打楽器を使うことの効果を実感

し,打楽器奏者の演奏やアドバイスと教師らとのコラボによって,生徒の自由で生き生きとした表現が

引き出されていたと感じた。また新旭養護学校の生徒が,トガトンで音楽をつくった時,非常に小さな

音で繊細かつ美しい表現をしていたことに感銘を受けた。小中学校で音楽づくりの授業を見てきたが,

ここまで繊細な表現と出会ったのは初めてだったからである。新旭養護学校の生徒たちの感受性の鋭さ

を感じた。このような表現を生み出す土壌は,日々の授業の中で教師らがコラボして積み上げ,作り上

げてきたものだと考えられる。

 日本音楽教育学会のラウンドデーブルで発表した際も,特別支援学校の子どもたちが生き生きと音楽

づくりをする様子に,子どもが自らの意志で表現することの原点を見たなど,フロアから活発な反応が

寄せられ、議論が盛り上がった。

4.今後に向けて

 本研究で得られた知見と経験を,新旭養護学校の他学部や県内特別支援学校の音楽の授業に取り入れ

られるように伝えていきたい。また,楽器を生徒の人数分揃えることに困難性がある学校も多いので,

新旭養護学校に備えている楽器類を貸し出すことも考えていきたい。

  (岡 ひろみ・林  睦 )

1 共同研究事業

32 1 共同研究事業

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 1-17) 子どもの造形活動の観察と理解

1.事業名および担当者

 事業名は「子どもの造形活動の観察と理解」であり,担当者は次のとおりである。

 教育学部 :世ノ一善生(代表者),藤田昌宏,村田透

 玉川小学校:宇佐恒浩(校長),太田静香,河村佐知子(教諭 図工クラブ担任)

2.事業の目的

 学生・現場の教員・研究者がそれぞれの立場で子ども達の協働性や相互行為に触れ,保育や授業に留

まらない広い意味での「美術教育」の実践・研究として,美術教育を深く理解することを目的とする。

具体的には,秋に教育実習を終えた図画工作・美術の3回生の学生が,児童を対象にした造形ワークシ

ョップを企画。協力校で実践し,次にそれを発展させて不特定多数を対象に美術館で実施する。

3.事業の概要

 平成 25 年度,学部授業「造形ワークショップ演習」を卒業制作展にリンクさせるかたちで企画実践し,

翌 26 年度に卒展会場の草津クレアホールを学区とする玉川小学校と連携し,五年にわたり本プロジェ

クトを継続発展させて来た。「ゆらゆらモビール」「カオカオの塔」etc. その中で活動の主役である学

生に,2回生での共同制作から3回生でのワークショップ(以下本文では WS と表記)といった流れが

カリキュラムとして定着し理解を得るものとなってきた。教員の移動もありつつも大学と小学校の間で

の交流も確立され,その流れを継承し,今年度も玉川小学校の図画工作クラブ活動のサポートから造形

ワークショップの企画実施へ,子ども達の造形活動時の協働性や相互行為の観察を行なった。

(1) 連携の経過

9月 25 日(火)15:30 ~ 16:30 小学校を訪問、宇佐校長,河村先生と具体的なスケジュール等を打合せ。

連携は,大学側が「基礎造形 2」(秋学期月 4限の 3回生 9人)で、小学校側はクラブ活動「図工クラブ」

(不定期で年間 15 回月曜 5時間目の開催 , 4 〜 6 年 19 人)と関わっていくこと,WS 実施は今年度も小

学校の都合で 1月とした。

11 月 19 日(月)14:00 ~ 17:00 工作クラブの活動を学生 9名と藤田が参観。太田先生指導のオリジ

ナル・キャンドル作りに取組む子どもたちを学生がサポート。授業後、WS の試作2案(傘をカラフル

に飾る活動,型紙のこすり出しで絵を描く活動)をプレゼン,先生方からアドバイスをいただいた。

 その後,大学での授業で協議し,参観で感じた子どもらの技量やニーズ,先生らからの助言をふまえ,

材料の新鮮さや出来上がりの空間の広がり等を理由に,傘をカラフルに飾る活動(透明ビニール傘に色

とりどりの○△□のセロハンを貼ってオリジナルの傘を作る)を選択し,出来上がる空間をイメージし

『かさテラス』と名付けた。その後試作を重ね,クラブ活動に合わせ 1時間のプログラムにまとめた。

1月 28 日(月)13:30 ~ 17:00 ワークショップ『かさテラス』実施

 参加児童は 4〜 6年生 13 名(インフルエンザのため 6名欠席)。学生 9名大学教員 2名,学校教諭 2

名で,玉川小学校図工室にて「かさテラス」を実施した。初めて使うスプレーのりに悪戦苦闘しながら

も,シンプルな図形の配置で生まれるリズムや流れを楽しんだり,セロハンを重ねることで生まれる混

色を発見し,絵具とは違う色の成り立ちを感覚的に体感していたようだ。あいにくの曇天で,青空をバ

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ックに傘をかざせなかったが,窓際での展示でセロハンを透過した色付きの光に感動もあったようだ。

写真:(上段)玉川小学校での活動風景  (下段)卒業制作展での制作風景、会場風景

(2) 卒業制作展でのワークショップの記録展示および展開

 1月 16 日(水)クレアホール澤館長に WS の概要を伝え,作品展示で見映えを考慮し中庭の使用許諾

をいただいた。WS は年齢制限なし,随時参加自由で実施し,①玉川小学校での記録映像及び作品展示(室

内),② WS 当日は,かさテラスを中庭に展示して増やしていく計画とした。

 2月 17 日(日)「滋賀大学卒業制作展 2018」10 〜 15 時に WS を開催。玉川小学校の児童だけでなく

近隣の幼稚園児や親子連れら,この数年で最も多い 60 名程の子どもが参加してくれた。学生らも少し

ずつ声掛けやサポートに慣れていき,子どもからのイレギュラーなリクエスト(自由な形を切りたい ,

持って返りたい , 絵を描き加えたい etc.)にも学生同士でその都度判断し活動を展開。生憎曇天で青

空は少なめで残念だったが,『かさテラス』の中庭には色とりどりの傘が風にゆらゆらし,ロビーから

の眺めも印象的な空間となった。

4.今後に向けて

 今年度,広報くさつへの情報掲載や作品展示への中庭の提供など,会場の草津クレアホールから多く

の協力をいただいた。WS の中庭展示も喜んでいただき、ホールのスタッフの理解も着実に増したと感

じる。今後はさらに館を所管する草津市とも連携して模索を続けたい。        (文責:藤田)

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 1-18) 小学校外国語活動・外国語科において求められる学習内容と

     学習過程に関する研究

1.事業名および担当者

 事業名は「小学校外国語活動・外国語科において求められる学習内容と学習過程に関する研究」である。

 担当者は以下の通りである。

仲村晴美(滋賀大学教育学部附属小学校)(研究代表)

谷口優香(大津市立青山小学校)(共同研究)

大嶋秀樹(大学担当)(滋賀大学教育学部)(研究支援)

2.事業の目的

 本事業では,小学校外国語活動(英語)における「小学校外国語活動・外国語科において求められる

学習内容と学習過程」について,滋賀県および大津市の公立小学校で授業やモジュールの時間などを通

した実践的研究を行うことを目的とする。中学年は谷口,高学年は仲村を中心に研究を進めてきた。

 

3.事業の概要

 谷口は 3年生の担任であり,「くみかえ英語すごろく(ウチダ)」という教具を工夫して,児童にとっ

て効果的な学習内容や学習過程を研究した。「くみかえ英語すごろく」は一マスごとの分割式になって

おり,マス目には「先生が大文字で示すアルファベットを発音してみよう」「アメリカでの“自分を指

すジェスチャー”をやってみよう」などとか外国語やそれにかかわるジェスチャーや文化などを楽しん

で学習ができる。                 

成果

・今までに学習した表現を楽しく復習できた。

・英会話だけではなく,ジェスチャーや国旗など様々

なジャンルの問題があり,異文化理解が深まった。

・多くの人数で取り組むので,友だちの色々な回答に

触れ,知識の幅が広がった。

・問題をアレンジしたり,学習進度に合った問題を選

択して使ったりすることで,子どもたちの実態に合わ

せた活動にすることが出来た。

・授業以外にも休み時間など,短時間の中で気軽に取

り組むことができ,子どもたちの学びの定着に役立った。 くみかえ英語すごろくで学ぶ児童の様子

課題

・勝ちたいという思いが強くなり,一つずつの活動よりも勝ち負けを重視する傾向が見られた。

・一枚ずつのカードが,教室全体で共有するにはサイズが小さく,文字が見えづらかった。

 仲村は 6年生の外国語活動を担当している。主に新学習指導教材の「We can!2」を用いて,学習内容

の検討と,児童にとって無理のない学習過程の研究を進めてきた。

 「We can!2 Unit7 What’s your best memory?」の単元では,「小学校生活の思い出について,スピ

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ーチ発表をしよう」という単元のゴールを設定した。発表というと,まず原稿を書くことから活動する

場合が多い。しかし,書いてから発表しようとすると,「話す」ではなく英語を「読む」になってしまう。

これにより児童の「正しく読まなければいけない」という緊張感や負担感が増してしまうため,好まし

くないと考えた。そこで,スモールステップで段階を踏みながら,時数を経るごとに徐々に発表内容を

増やしていき,自然と思い出についての発表ができるようになるようにしたいと考えた。少しずつ発表

内容がよりよく,より深まっていくイメージである。

 第 1時では旧担任からの思い出のスピーチ動画を見せた後,「My best memory is 〜 . I went to 〜 .

It was 〜 .」の表現を,第 2時では「思い出を尋ねる表現の「What’s your best memory?」と「My

best memory is 〜 . I went to 〜 . I enjoyed 〜 . It was 〜 .」と楽しんだことを表す表現を新し

く入れ,ペアで尋ね合った。内容は自分で選択的に学びとっていけるようにした。第3時ではこれに加

えて,「I saw 〜 . I ate ~ . 」などの表現を入れ,ペアを変えて尋ね合った。第4時では,話し手と

聞き手のやりとりを向上させるため,活動→指導→活動  を繰り返した。「『very』」を入れて話してみよう。」「発

表の途中に『Do you like ~ ?』と質問をしよう。」「友

達の話に『Nice!』など感想を言ってみよう。」などと少

しずつポイントを示していった。第5時では,学級の前

で思い出を発表し合った。

 また,話しっぱなしや聞きっぱなしにはせず,その日

話したことを英語で書くことで,「今日はこんなことが

言えるようになった」と児童がふり返られるようにした。

また,英語を板書する際には,英語の 4線入りの黒板を

使用したり,4線の入った単語カードを使ったりするこ  4線黒板や4線入りの単語カードを掲示

とで,児童がそれを自然に手本として書くことができるようにした。 

成果

・1時間ごとに少しずつ表現を入れたことで,苦手な児童も無理なくスピーチ発表に臨むことができた。

 スピーチをゴールとして設定する単元ではこの学習過程が有効であることが実践で明らかになった。

・授業の最後にその時使用した表現を見ながら書くという活動は振り返りとして有効だった。

課題

・4線で表すことは一定の効果があると考えられる。しかし,文字自体は見えにくくなってしまう。

4.今後に向けて

 くみかえ英語すごろくは,短時間で取り組め,学年に合わせて問題も変えられるので,モジュールに

効果的な教具だと思われる。この教具をモデルにし,複数クラスで扱えるように同じような教具を作る

事も今後考えていきたい。また,学習過程や内容の検討も引き続き行っていきたい。4線の有効性や「よ

り良いやり取りや発表のためにどうすればよいか」と教師が示したポイントが児童の方から自然に出て

くるように,さらに研究を進めていきたい。

  (仲村 晴美・谷口 優香・大嶋 秀樹 )

1 共同研究事業

36 1 共同研究事業

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 1-19) 石山っ子わくわく親子で畑体験隊

1.事業名および担当者

 事業名は,「石山っ子わくわく親子で畑体験隊」であり,担当者は次のとおりである。

 教育学部:森 太郎(代表者),與倉弘子,久保加織,石川俊之

 地域ボランティア:内藤京子,石橋克也

 大津市石山公民館専門委員:小松文郎

2.事業の目的

 農作物の栽培や観察など実体験を重視して農と食の大切さを理解し,食の安全・安心について考える

ような「食農教育」が求められている。しかし学校現場において,このニーズに対応できるプログラム

の確立,対応できる教員の確保は不十分である。そこで,地域の住民と連携して,小学生の親子を対象

に畑体験活動を実施し,「食農教育」の地域連携プログラムを開発する。さらに,教育学部の学生がス

タッフとして主体的に参加し,教育現場において「食農教育」に対応できる人材を育成する。

3.事業の概要

1)活動の概要

 本プロジェクトは,石山公民館・地域ボランティアスタッフ・滋賀大学教育学部の3者の共同企画で

ある。公民館は参加者の募集業務,地域ボランティアスタッフが畑体験の具体的指導,滋賀大学教育学

部教員および教育学部の学生(主として環境教育専攻)が体験活動内容の計画立案,指導を行っている。

 本活動は,平成 14 年4月から始まり,今年度は 10 家族 26 名が参加した。3月に石山公民館を通じ

て石山および南郷学区の幼稚園,小学校の児童と保護者を対象に,「石山っ子わくわく親子で畑体験隊」

への参加申込書を配布した。4月上旬から滋賀大学自然環境教育施設の農場にて,毎週水曜日の 15 時

から 17 時まで食農体験活動を実施し,3月まで 41 回の活動を行った。

2)本年度の活動内容

 本年度の月ごとの実施内容を以下に示す。 

実施月 主な活動内容

4月開始式,自己紹介,農場見学,野菜の播種(トウモロコシ,キュウリ,エダマメ,バジル,ラッカセイ,ミニカボチャ,モロヘイヤ,オクラ,など),トマトの鉢上げ,タケノコ掘り

5月

花(マリーゴールド,ヒマワリ)の播種,野菜の生育スケッチ,夏野菜(4月に播種した作物,トマト,ナス,ピーマン,トウガラシ類など)の定植・管理(支柱立て,誘引,わき芽取り,草抜き),ジャガイモ土寄せ,サツマイモ挿苗,稲のモミ消毒・播種,タマネギ収穫,梅の収穫・梅ジュース・カリカリ梅・梅干し作り,タマネギ収穫,蚕の飼育を開始

6月ジャガイモ収穫,夏野菜の管理,キュウリ・トマト収穫・試食,田植え,田んぼの草取り,蚕が繭を作る部屋を作製,ジャガイモ試食(ポテトチップスなど)

7月田んぼの生き物(ミジンコ,カブトエビなど)観察,カイコについての講話(公益財団法人 衣笠繊維研究所 古澤壽治 先生),夏野菜の管理・収穫・試食(トウモロコシ,トマト,ピーマン,オクラ,エダマメなど),梅ジュース試飲

8月 夏休みであるが,当番制で畑の管理,水やりを実施

9月セルトレイに秋冬野菜を播種(キャベツ,ブロッコリー,ハクサイ,カリフラワー),露地に秋冬野菜を播種(ダイコン,ニンジン,ホウレンソウ,コマツナ,チンゲンサイ,ミズナなど)

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10 月セルトレイに播種した秋冬野菜の定植,秋冬野菜の間引き・草取り,ナス,オクラ,ピーマンの収穫,稲刈り・稲架がけ・脱穀,サツマイモ掘り,藍のたたき染め,

11 月チューリップなどの球根植え,ポップコーン試食,焼き芋,干し柿作り,マリーゴールド染め,タマネギ定植,秋冬野菜の間引き・草取り・収穫

12 月干し柿試食,餅つき,しめ縄作り(地域のボランティアの方のご指導),秋冬野菜収穫,米試食,梅干し試食

1月七草粥・豚汁作り・試食,秋冬野菜収穫,スナップエンドウ定植,伐採した梅の木で工作,節分行事(鬼のお面作り・豆まき),蚕の糸繰り・真綿作り(公益財団法人 衣笠繊維研究所 古澤壽治 先生)

2月 紙漉き,雛人形・雛あられ・甘酒作り,ジャガイモ埋め込み

3月 修了式:紙漉きした紙で修了証書を作成

 本年度も石山公民館,地域のボランティアスタッフ,滋賀大学教育学部の連携により,円滑に本事業

を運営することができた。昨年度に引き続き,飼育・栽培から利用(調理・試食,染色など)までの一

連の工程を経験することを目的に活動を行った(写真)。

   

       野菜の定植         田植え 豚汁作り

     

        干し柿         しめ縄作り     蚕の糸繰り・真綿作り 

 子どもたちの印象に残っている活動として,餅つき,藍のたたき染め,マリーゴールド染め,焼き芋,

焼きトウモロコシなど収穫物を利用する活動が多く挙げられ,単発の活動でなく,飼育・栽培から利用

まで一連の工程を行うことが,農場を利用した体験学習を行う上で重要であると考えられた。

 また本事業では,滋賀大学教育学部の学生が主体的に本活動に関わるような体制を整え,実施してい

る。稲の栽培,野菜の栽培,蚕の飼育,梅の収穫・利用など学生が各自テーマを持ち,教員や地域ボラ

ンティアスタッフと連携して,活動計画の立案,準備,実施,評価を行った。感想文から,学生は本事

業を通して主体的に子どもや保護者,地域スタッフ,教員と関わることで,体験学習において事前準備,

他者との協働,専門性などが重要であることが経験的に学べたと考えられた。

4.今後にむけて

 現在,「食農教育」が求められているが,学校現場では十分に対応できていない。本事業は貴重な「食

農教育」を行う場であり,今後も地域と連携して「食農教育」を行っていきたいと考えている。また,

本事業で新規の体験プログラムを考案・実践することにより,プログラムの有効性を評価し,学校現場

に還元したいと考えている。さらに,多くの学生が主体的に参加しており,将来教育現場で「食農教育」

の体験活動を行える人材の育成も積極的に行っていきたい。    ( 森 太郎 )

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 1-20) 鑑賞学習ルーブリックを活用した授業実践に関する研究

1.事業名および担当者

 事業名は,美術鑑賞学習ルーブリックを活用した授業実践に関する研究であり,担当者は次のとおり

である。

教育学部:新関 伸也

 高島市立安曇川中学校:下澤 辰次 (校長 ),堤 祥晃 (教諭 )

2.事業の目的

 美術鑑賞学習ルーブリックを活用した鑑賞の授業について,中学校の教育現場で実証的に導入し,そ

の効果や課題を分析して授業の内容や方法を模索する。

3.事業の概要

(1)研究の目的

 近年,美術教育における鑑賞教育の重要性が高まっており,学校現場では様々な授業実践が試みられ

ている。しかし,個々の教員が独自に工夫した題材を実践しているという傾向が強く,広く一般的な鑑

賞教育のスタイルが確立しているとはいえない。また,教員による温度差も大きく,地域や美術館と連

携した先進的な実践を行う教員がいる一方,鑑賞の授業をほとんど行わなかったり,知識注入に偏った

授業のみを行ったりしている教員も少なくない。その要因としては,鑑賞の授業における到達目標や評

価規準といったものが広く一般化されておらず,知識や経験のない教員にとっては「何をしてよいのか

分からない」状態に陥ってしまうことが考えられる。また,教材研究に莫大な時間がかかってしまうこ

とも鑑賞の授業が敬遠されてしまう原因となっている。「美術鑑賞学習のルーブリック評価と授業モデ

ルの普及に関する実践的研究 研究代表:新関伸也」はそのような現状を補完することを目的とした研

究であり,本研究は中学校美術科の授業において,その研究に即した実践を行い,その効果や課題を検

証することを目的としている。

(2)実践事例

〇日時:平成31年1月31日(木)5校時

〇学年・組:第3学年3組(男子17名 女子13名 計30名)

○題材名:ジョアン・ミロの《アルルカンの謝肉祭》を味わおう

〇参観者:新関伸也,滋賀大学学生4名

○授業の概要

 今回の授業で扱うジョアン・ミロ作《アルルカンの謝肉祭》は,とても不思議な絵である。「妖怪の

ような生き物たちが,玉を操ったり,綱引きをしたり,舞ったりしているようです。(中略)まるでお

もちゃ箱をひっくり返したようであり,子供が描く絵のようなプリミティブな世界が広がっています

(『西洋美術 101 鑑賞ガイドブック』2008,松岡)」とあるように,見たこともない生き物たちがてんで

ばらばらに描かれていて,見るものを惹きつける。この作品を見た子どもたちは,描かれた生き物の形

や色から様々に見立てを進め,見立てたものを手掛かりに自分の物語を紡ぎ出すことができる。この絵

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画作品の鑑賞では,美術鑑賞学習ルーブリックをもとに,次の様な目標設定で授業を行った。

○題材の目標

・作品の主題や造形について,作品にまつわる知識や他者の見方・感じ方に刺激を受けながら,自分な

 りの見方・感じ方を持つことができる。

 〈コモンルーブリック観点(A)「見方・感じ方」レベル 3〉

・作品から伝わる主題について絵の中にあるものや色,形から想像し,自らの言葉で説明している。

 〈コモンルーブリック観点(B)「作品の主題(作者の思い・考え)」レベル 3〉

・作品の中に描かれているものの構成や配置に関心を持ち,それらが生み出す効果やよさを指摘するこ 

 とができる。

 〈コモンルーブリック観点(C)-2「構成,配置」レベル 2〉

○成果と課題

 ルーブリックを活用することで,示された評価規準から具体的な評価基準を考えて授業ができるよう

になった。また,評価基準が具体的であるため,生徒が目標に到達できたかという授業後の省察につな

がった。また,題材の選定や目標,評価規準 

アルルカンの謝肉祭≪ジョアン・ミロ≫

を一から設定する必要がないため,授業の準

備にかかる労力がかなり軽減された。

 しかし,地域や学校の生徒の現状や興味関

心から学習目標を設定し,それに合った題材

の選定・設定をすることが本来の授業づくり

であり,それを繰り返すことで教師の力量が

高まるという側面もある。鑑賞授業の入門編

やトレーニングとしてルーブリックを活用す

るには差し障り無いが,最終的には題材の選

定・設定,目標の設定,評価規準の作成を教

師ができるようにならなければ質の高い鑑賞

教育につながらないのではないかと考える。

今後,鑑賞教育ルーブリックが単なるハウツ

ー的な教材に陥らないような工夫が必要であ

ろう。

4.今後に向けて

 美術鑑賞ルーブリックは,教育現場における鑑賞授業の題材開発や実践の普及のために開発されたも

のであり,常に実践による検証が必要である。それは題材開発に始まり,実践,評価,分析の各場面の

省察においてルーブリック評価を指標として活用することが望まれる。それらの積み重ねが鑑賞学習の

普及と改善につながるものである。今後,さらに実践による検証を重ねて,美術鑑賞ルーブリックの質

的改善に繋げたい。                           

 (新関 伸也 )

1 共同研究事業

40 1 共同研究事業

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 1-21) チームで考える授業づくり

     ~若手,中堅教員を育てる教材開発プロジェクトⅡ~    

1.事業名および担当者

 事業名は,チームで考える授業づくり~若手・中堅教員を育てる教材開発プロジェクトⅡ~であり,

担当者は次のとおりである。

教育学部:新関 伸也

 滋賀県中学校美術教育連盟:伊庭照実 (委員長 ),堤 祥晃 (研究部長 ),伊丹賞子 (事務局長 )

2.事業の目的

〇以下の目的で,中学校美術教員の授業力向上のためのグループ別研究会を行う。本学教員は,全体研 

 究会の指導助言やグループ別研究会についてアドバイスを行った。

 ・公開授業者だけでなく,多くの教員に学びが共有できるシステムをつくる。

 ・複数で授業づくりをすることで,多角的,客観的な教材研究につなげる。

 ・指導案作りから複数の美術教員が関わることで,公開授業の研究協議が深まる。

 ・昨年度の実践をふまえ,有効な研究会のスタイルを模索する。

3.事業の概要

(1)研究の背景

 中学校現場では,少子化や教科の授業時数削減の影響により,美術科の教員は1校に1名という学校

が増加している。また,初任者研修等,研修の機会は数多くあるものの,教科教育や授業づくりに関す

る研修の時数は限られており十分とはいえない。その結果,経験の浅い教員が身近に相談できる相手も

いない状況で授業内容を考えることになり,教員自身が過去に受けてきた授業や,前任の教員がやって

いた題材の表面的な再現になっている事例を多く見かける。そのような題材は,今の時代にそぐわなか

ったり,養いたい資質能力が明確でなかったりすることも多く,授業の質の低下を招いている。

 そこで滋賀中美連では,昨年度から若手,中堅教員の実践力を高めることに特化した実験的なグルー

プ研究プロジェクトを立ち上げた。研究部が中心となって,手探りでスタートした授業研究会ではあっ

たが,若手の教員にとっては授業づくりに本格的に取り組む貴重な機会となり,非常に有効な研修の機

会となった。

 しかし,3回行った研究授業では,グループ研究会で目標としていた授業のねらい(養いたい資質,

能力)を十分達成しているとはいえず,若手教員の実践力向上までは繋がっていない。また,複数の教

員で教材研究を行うことは,客観的な視点や多彩なアイデアを得られるという利点はあるが,意見がま

とまらずに授業者が混乱するといった場面も見られた。そこで,今年度は授業者の思いや過去の実践を

ベースに教材研究を進め,会議の要所でベテラン教員がアドバイスを行うといった改善策を取り入れて

いる。

(2)研究の概要

 滋賀中美連では,年間3回の授業研究会を行っている。今回の研究ではその3回の研究会を利用して

おり,滋賀中美連の中堅・若手の教員で3つのグループ (各8名 )を編成し,研究授業に向けてそれぞ

れ教材研究を進めるというスタイルで授業づくり研究会を組織している。グループ編成に際しては,昨

1 共同研究事業 41

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年度の研究グループに参加している教員を各グループに3~4名ずつバランスよく配置し,昨年度のノ

ウハウが生かせるよう工夫している。また,今年度は一層自主的,主体的な研究スタイルとなるように

グループリーダーである中堅教員に運営を委ねる部分を増やしている。本研究は授業づくりを通して学

びを共有したり,多角的,客観的な視点から考えたりできるシステムの構築を目指しているため,プロ

セスを重要視しており,試行錯誤や多少の失敗も学びの場と 

捉えている。しかし,ある程度の成果が得られたと実感でき

る研究授業を作り上げないと実践力の向上には結びつかない

ため,要所となる会議にはベテラン教員が参加し,必要なア

ドバイスや修正を行った。また,本グループ研究は教員同士

の繋がりを深め,孤軍奮闘しがちな美術教員のための教材研

究ネットワークを作ることも目的としている。そこで,懇親

会とセットにして居酒屋で開催するなど,親睦を深めながら

気軽に話し合えるような企画にしている。                   

                               居酒屋での研究会の様子

(3)成果と課題

 昨年度に中堅教員のアイデアで採用したホワイトボードや付箋を活用することで,会話が拡散的にな

りやすい飲食店での話し合いが機能的な会議の場になった。研究会を懇親会とセットで行うことで参加

教員が楽しさを感じつつ自然体で主体的に教材研究に取り組めた。その中で,昨年度も参加していた若

手教員が会議を仕切る場面もあり,これまでのノウハウを活かしながら,自分達で主体的に研究を進め

ていくスタイルが定着していると感じた。また,教材研究の重要な部分について話し合いでは,メリハ

リをつけてクループ研究を進めることができた。  

会議の合間に個人的に打ち合わせやアドバイス

を行っている教員もおり,教員同士のネットワ

ークが確実に育っている。授業内容も昨年度に

比べると洗練されてきておりレベルアップを感

じるが,題材自体の研究に留まっており,授業

展開や発問,タイムスケジュールなど指導技術

に関する話し合いが不十分で,研究授業では生

徒が戸惑う場面がみられるなど課題も残った。

                          回数を重ねて丁寧に話し合う様子

4.今後に向けて

 教育現場における採用数の少ない中堅教員の指導力向上は,喫緊の課題で様々な研修が試みられてい

るが,美術科に特化した取組は少ない現状にある。その中で,滋賀中美連の継続的な研究や中堅教員の

指導力向上をめざす取組は,他府県のモデルとなる優れた事業である。今回の教材開発のためにグルー

プで支援する取組は,大きな研究会とは違ったアプローチで充実感が得られたと理解している。

(新関 伸也 )

1 共同研究事業

42 1 共同研究事業

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 1-22) 学校アート化計画『グリーンちゃんがやって来た』

1.事業名および担当者

 事業名は「学校アート化計画『グリーンちゃんがやって来た』」であり,担当者は次のとおりである。

 教育学部 :藤田昌宏(代表者)

 大津市立青山小学校:田中誠(校長),中川理恵,蓮井亜美(教諭,図工科担当)

 草津市教育委員会 :松岡秀樹,山本一成(生涯学習課),築田尚晃(学校教育課)

2.事業の目的

 本プロジェクトは,子どもたちが多くの時間を過ごす学校という空間をアート作品で“異化”するも

ので,数年来藤田が『グリーンちゃんプロジェクト』と銘打って取組んできたアート活動の学校版。ア

ート作品の存在で学校探索から学校の怪談?へ,子ども等が身の回りの様々な事象を再発見することを

促す。そして、そこから生まれる色々な反応に呼応する形で,教員が教科に留まらない日常の中の学び

に展開し,アートの可能性を広げることを目的とする。

3.事業の概要

 立体作品『グリーンちゃん』と『ミドリグマ』,そこから発展したミドリグマのミニチュア(以下小

グマと表記)などの造形物を,学校園の構内に各校園それぞれ月曜から金曜までの 5日間,日替わりで

グランド,体育館,図書室など設置する場所を変えて展示する。また,それに合わせて各学校園の教職

員に本プロジェクトの意図を伝え,展示中に起る子どもたちの反応を観察してもらい,その聞き取りや

そこから生まれた活動を記録していく。今年度は,本学と草津市の包括協定により草津市教育委員会と

の連携を模索して,実験的に草津市内の小学校 2校と幼稚園(こども園)2園で実施。

(1) 連携の経過 − with大津市立青山小学校

10 月初旬に青山小学校中川先生と連絡を取り,過去2年の振返りから今年度の展開を検討。小グマを

増殖させていくプランを提案したが,在籍する特別支援学級の一人の児童の衝動的な反応(作品の破壊

やそれに起因する事故の発生)を危惧する声が教員にある,との相談を受けた。

10月24日(水)17:00~18:30青山小学校を藤田が訪問,田中校長らと児童への小グマとの出会わせ方や,

展示方法・場所,反応への対処などを検討。今年度の実施を見送る意見もあったが,他の児童の期待な

ども考え当初プランを一部変更,当該児童の様子を見つつ臨機応変に実施することとした。

10 月 29 日(月)〜 11 月 2 日(金) 初日の児童に過度の反応が見られなかったので,火曜日から随時

小グマを増殖させた。児童の反応は独特で,木曜には侵入者?の学校中の小グマを全部回収し校長室へ

“捕獲”した。今年一番の冷え込みとなった金曜には“小グマが寒そう”と保健室からタオルを借り出し,

全ての小グマにマフラーを巻いてくれた。これらの反応に関係者はもちろん,職員室の先生方も(心配

していた為)彼の素朴な行為に感動を覚えたようである。草津市教育委員会の職員も視察に青山小を訪

問,田中校長からアート化計画での学校側の印象や教育との関連などの聞取りを行なった。

(2) 連携の経過 − with草津市教育委員会

 草津市が平成 30 年 3 月に策定した「草津市文化振興計画」の重点プロジェクトの一つ「次世代文化

体験プロジェクト」の前段階として,藤田の取組む「学校アート化計画」で連携し,アートが子ども達

1 共同研究事業 43

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 玉川小学校図書室での展示風景 笠縫東小学校グランドでの展示風景  笠縫東こども園での小グマ

 笠縫東こども園で作られた新聞 園児の描いたグリーンちゃん 青山小学校でマフラーを着た小グマ

にもたらす効果について考察を行うこととなった。

7月 6日(金) 藤田が教育委員会を訪問し,川那邊教育長,竹村部長,相井課長らと面談。「学校アー

ト化計画」の概要を説明し,実施方法などを同課職員らと協議。市内の小学校幼稚園こども園に本プロ

ジェクトへの参加を募り,今年度の実施対象を絞ることとした。

 その後,後述する 4校園からエントリーを得,これまでの各校園の造形活動の取組みや地域性を考

慮し実施を決定。後日、各校園を藤田と生涯学習課職員が訪問し(9月 18 日笠縫東,同月 25 日玉川),

先生方への説明と実施の日程や方法・展示場所の調整を行なった。

10 月 22 日(月)〜 10 月 27 日(土) 19 日金曜搬入 玉川小学校,玉川幼稚園

11 月 26 日(月)〜 11 月 30 日(金) 22 日木曜搬入 笠縫東小学校,笠縫東こども園

 連日藤田と草津市教育委員会職員が夕方 16:30 〜 17:30 に学校園を訪れ,先生方と相談しながらグリ

ーンちゃん・ミドリグマとを小学校に日替わりで設置,座敷童のイメージで小グマを日毎,数を増やし

つつ幼稚園に展示(月曜 1体→金曜には全 10 体)。特に幼児の反応は面白く,小グマを自分たちの教室

の基地に移動させる,顔がないクマにシールで顔を作る,などが見られた。教員にも小グマを保育に活

かすアイデアが生まれ,平時の保育で訪れる近隣の神社に教員が小グマを仕込み,“ここにもクマが!”

と園児のイメージをさらに広げる工夫がなされた。教員も楽しむ,うれしい実践であった。

4.今後に向けて

 三年前に自作を附属小学校に出前展示することから始まった『学校アート化計画』だが,青山小で起

ったサプライズな反応や,草津市との連携により対象が幼稚園こども園に広がった事で様々な発見を得

た。特に幼児の反応からは,関係者だけでなく日々の保育・教育に携わる教職員に発見や工夫を促す可

能性を感じられた。草津市との連携を継続し,この方面でさらに展開していきたい。  (藤田 昌宏 )

1 共同研究事業

44 1 共同研究事業

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 1-23) 教育学部発信 ! 教育現場と連携した各種「イベント」の企画立案と   

     遂行の実践

1.事業名および担当者

 事業名:教育学部発信 !教育現場と連携した各種 「イベント 」の企画立案と遂行の実践 (オペラ編 )

 担当者:渡邊 史 (本学教員 ) 畑 稔彦 (本学教員 ) 矢吹雄介 (附属小学校 教諭 )

2.事業の目的 

 教育学部の学生たちが教員となったときに求められる 「校内で行う各種イベント 」の企画立案および

遂行について,その具体的なノウハウを身に着けることを提案する。しばしば陥りがちな 「やった感・

達成感 」のみが結果…ではなく,イベントそのもの自体が 「質の良い時間・もの 」であることを目指す。

発信者は,自分の現在ある環境・能力を含めた諸条件に照らし,自ら工夫し,最良のものを構築するた

めにはどうしたら良いのか熟考した上で,最もふさわしい布石を打っていく必要がある。物事を成すた

めに踏むべき当然の轍。それを知るためには,学生たちが実地に「経験」を積むことこそが大きな指針

となる。

 教育現場は鑑賞教室などで,イベントの 「受け入れ側 」となることも多い。提供側とスムースかつ効

果的な連携が可能なように 「アウトリーチ活動の受け入れ方 」についてのノウハウを教師は知っておか

なくてはならない。発信側・受信側,双方が同じ価値観を共有し,「最良の結果 」のために力を尽くせ

る環境があれば,扱うイベントが数倍の効果をあげる可能性につながる。本教育学部にてこの研究を行

う目的は,学生たちに,彼らが学びの場にある時から能動的に知識・スキルを身に着けさせることである。

すなわち,「教師 」という立場がこの 「提供・受け入れ 」双方になる可能性を持っていることを自覚し,

自らが将来の発信者にして将来の受信者であることを具体的にイメージしながら取り組む必要がある。

 残念ながら,現在すべての教育現場で 「質の良い時間・もの 」が等しく授受されているとは言えない。

まずは県内の教育現場に適正なイベントを提供し,さらに受け入れ体制の最適化についての周知に繋げ

たい。本学部での研究をとおし,「提供・受け入れ 」双方になる可能性を過不足なく備えた人材として

の教員を養成するために,鑑賞型イベントの発信を「教育学部から」行っていくための提案である。

 

3.事業の概要 

 本学大学院生3名(声楽・バリトン歌手1名,声楽・ソプラノ歌手1名,ピアニスト1名)を 「発信者」,

附属小学校と県内小学校を 「受け入れ側 」として事業は進められた。実施日および対象は、2018年

9月27日/附属小学校演 (2年生3クラス ),10月4日/附属小学校 (4年生3クラス )、10月

25日/彦根市立鳥居本小学校 (2年生および4年生ひとクラスずつ・計2クラス ),3日間で合計8

クラスであった。

 演奏内容はすべて 「オペラ 」にその題材を求めた。「オペラ 」とは 15 世紀後半,いわゆるルネッサ

ンス時代,イタリアのフィレンツェにて人為的に発明された,主に歌唱によって話の筋が進行される 「音

楽を主要素とする舞台演劇の一形態 」である。「オペラ 」の魅力は様々であり,* 話・題材それ自体,

* 作曲者,* 歌手の声・音楽,* セット・小道具・照明・衣装・広報宣材など美術面,* 出演者,* オ

ーケストラ,* 合唱団・舞踊団, * 演出 * 劇場そのもの… など,観客の注目すべき点はオペラを構成

する全要素にあり,そのことから 「オペラ 」は 「総合芸術 」とされている。劇場以外で 「オペラ 」をそ

1 共同研究事業 45

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のまま上演することは不可能であるため,今回は 「オペラ 」の中から,「重唱 (複数の登場人物共に歌

唱する )」 と 「 アリア (登場人物が1人で歌唱する。音楽的にも技術的にも重要な楽曲であり、いわゆ

る聴かせどころ )」 を取り上げた。単一の作品からだけでなく,複数のオペラ作品から曲を選択。話の

筋や楽曲のシチュエイション説明として,簡単な解説 (MC) を交えながらのオペラハイライト・ガラ・

コンサートの形式を採用した。

 イベントの第一目的は 「オペラの魅力を子どもたちに周知する 」こととし、さらに今回の鑑賞機会を

きっかけに 「オペラ 」それ自体を 「良いもの・楽しいもの 」として子どもたちに認知させ,将来的に子

どもたちが「オペラ」を娯楽の選択肢とする可能性を導くことも目指していた。重唱,アリアともに「名

曲 」とされている人気のある耳ざわりの良いものから選曲するのはもちろんだが,プムグラムには観客

参加のコーナーを設定し,より 「オペラ 」を身近な親しみあるものと捉えられる工夫を行った。

 結果として事業は成功おさめた。発信を担った院生たちは条件に照らして最適な企画立案・遂行を成

すことができた。受信側である各小学校にも,イベント受け入れ時に有効な様々なことを具体的にお伝

えすることができた。何よりも,児童生徒たちが非常に能動的にイベントに参加し,当初の目的であっ

た 「オペラ 」の好意的認知は充分に為されただろうことが,一番の成果であると言えよう。院生の代表

はこの事業経験を修士論文にまとめた。彼らにとってこの経験が,将来の演奏・教育活動に繋がる指針

となり,それを活かしていく道すじが明確となるならば大変に喜ばしい。

4.今後に向けて

 演奏にあたった院生たちにとり,今回が初の 「コンサート自主企画・遂行 」であった。当然アラが多

く,本人たちも呆れるほどの手際の悪さ,遂行能力の不足,さらには演出を含めた演奏の未熟さ…であ

った。この原因は,経験の有無だけでなく 「知識 」の多少にもよるのではないかと考える。どうやら彼

らには,手本となる物との出会いが少なすぎる。「良い物 」を知らなければ,憧れたり,ましてや目指

すことはできない。何かの上達のために 「模倣 」は最も有効な手段である。既存の成功ルートすら理解

していない者が新しい道を開拓できるとは思えない。まずは既存で良いから,「成功」を理解するべきだ。

一定の轍を踏み,成功という場所に到達した者だからこそ、新たな道 (新たな成功の手順 )が見えてく

るのではないだろうか。また,意識的に成功例を模倣することで成功の思考に触れる。「上手くいく思考」

に慣れることができるのだ。模倣によって成果だけでなく,意識も高められると思われる。

 これは受け入れ側である観客も同様だ。今回,事業の目的とは別に,筆者個人は 「観客の表現スキル 」

の有無を課題注目点としていた。文科省の指導要領において 「自己表現の豊かさ 」が謳われている。そ

こで身近な表現の一つとして 「イベント時の反応 」に注目したところ,やはり受け手である児童生徒た

ちは,心動かされるものに出会ったときの反応に不慣れであったように見受けられた。もちろん反応は

あるのだが,その表現度合いは 「模倣 」から導き出されている印象を受けた。「模倣対象 」は,各クラ

スの担任である。「表現豊かであるクラス 」の担任は,須らく彼自身がその場を楽しみ,楽しんでいる

ことを身体で…具体的には拍手や表情,身振りなど…で表現することをためらっていなかった。人が,

置かれた 「場 」においてどのように振る舞うかの知識は,後天的に身につけるものである。立ち居振る

舞い表情はコミュニケーションの要である。すなわち,現代の教育目標である 「表現の充実 」「 コミュ

ニケーション能力の構築 」のためには,「模倣 」機会を教育の場において適正に用意することが肝要な

のではないだろうか。そのためにも,教員が発信者・受信者,両面のスキルを身に着けていることが,

広く社会に「表現の充実」をもたらすのではないかと考える。今後もこの研究を進め,より充実した「表

現」のために力を尽くしたい。                           (渡邊 史)

1 共同研究事業

46 1 共同研究事業

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 1-24) 学習評価を軸とした授業・単元・カリキュラムの評価・改善

1.事業名および担当者

 「学習評価を軸とした授業・単元・カリキュラムの評価・改善」をテーマに、主に、東近江市立御園小学校、

冨江智代乃校長及び中村和貴教諭と共同研究事業を進め、適宜、草津市立草津第二小学校北島泰雄校長

及び三浦知也教諭、湖南市立石部小学校村田俊宏教諭、甲賀市立大野小学校山本真由美教諭の研究協力

や授業研究会への参加を得た。

2.事業の目的

 本事業の目的は、子どもの学習評価、特にパフォーマンス評価と逆向き設計に基づく授業研究を軸に、

授業・単元・カリキュラムの評価と改善の在り方を探ることである。

 

3.事業の概要

(1)主な事業

 社会科と特別の教科道徳を中心に、逆向き設計に基づき教材・授業・単元を開発した。その研究授業

の授業研究を子どもの学習評価を軸とした逆向き設計モデルで実施する。特に、前の単元や授業におけ

る子どものパフォーマンス評価を生かした、授業研究を行う。そのことにより、開発した授業と単元の

評価・改善の方向を探り、それらを各単元で行うことを想定しながら、カリキュラムの評価・改善につ

なげた。カリキュラム評価と改善のキーコンセプトは主権者教育のストランドである。ストランドは、

複数の教科等をつなげた横断的な指導が縒り合されて、基軸となる目標を達成していくときの軸として

機能するカリキュラムの基本要素である。主権者教育のストランドが、充実していくようなカリキュラ

ムマネジメントの在り方を探った。

 具体的には,道徳の授業研究は次の 2回実施した。10 月に,「台湾からの転入生」という教材で,外

国籍児童の心情に迫り,他者理解・国際理解について考える道徳の授業研究。12 月に,「助け合い と

もに育つ」という,外国籍の卒業生の小学生の頃を題材にした作文を中心として自主制作した読み物教

材で,外国籍児童の心情に迫り,他者理解・国際理解について考える道徳の授業研究。また,年間を通

して,社会科と学級活動についての参与観察を行った。社会科では,社会,政治,経済についての知識

・技能と多面的・多角的な思考・判断・表現の力を,学級活動では,コミュニケーション能力,他者理解,

自己理解の力を身に付けさせる指導を,計画的・継続的に実施した。また,平和を主題とした総合的な

学習の時間の最後のまとめとして「いのちのつながりについて考える平和の学習」と題したリーフレッ

トづくりをパフォーマンス課題として設定して実践に取り組んだ。

(2)主権者教育の目標と評価基準(ルーブリック)及びパフォーマンス課題

 文部科学省(2016)「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善

及び必要な方策等について(答申)別紙5主権者教育で育成を目指す資質・能力」を参考に,主権者教

育の視点からの平和の学習の目標と評価基準を次のように設定した。A~Dまでの4つの尺度を設定し

ているが,ここではAとB基準のみを示す。下線部の特長を達成した作品がAで,そこまでは至らない

が基本の目標に達している作品がBである。Cは部分的に弱さがある作品で,Dは作品を仕上げること

ができなかった場合とした。

1 共同研究事業 47

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①知識・技能「平和記念館で調べた情報を効果的にまとめ,戦争の歴史について深く理解している。」  

②思考力・判断力・表現力「戦争について,事実を基に多面的・多角的に考察し,公正に判断し,

平和の実現に向けて,協働的に追究し根拠をもって自分の意見を表現できている。」

③学びに向かう力「自立した主体として,自分事として戦争の歴史を調べ,調べた事実を基に,平和の

実現を視野に主体的に意見を表明することにより社会に参画しようとしている。」

(3)パフォーマンス課題と作品例

 Aの基準に達した作品「いのちのつながりについて考える平和の学習 戦争中の八日市」について紹

介する形で,パフォーマンス課題としてどのような作品づくりに取り組んだのかということと評価基準

の具体像を以下に示す。課題は,滋賀県平和記念館の校外学習などをふまえて次のような6つのパート

からなる 3つ折りのリーフレット(A4版ケント紙両面)の制作である。

 1頁:「いのちのつながりについて考える平和の学習」という共通のタイトルに「戦争中の八日市」

などの副題を自分で考え,その副題について簡単に説明,2頁:テーマ設定の理由と目次。この作品で

は,「この学校にも爆弾を落とされ,学校にいた兵隊さんが 1名亡くなられたことや,縦断の跡が残る

岩や忠魂塔にこめられた願いを知り私たちの周りでも戦争が起こっていて,ここ八日市には飛行場を知

ったので…テーマを設定した。」と書かれ,地域に生きる主体として自分事として調べ活動を調べた様

子がうかがえる。3~5頁:調べた内容について見出しをつけて説明。写真,図,統計などの資料を活

用。この作品の小見出しと資料や写真(括弧内)は以下の通り。八日市飛行場(地図,掩体壕),八日

市に落とされていた爆弾(B29),当時の人たちの声,戦争によって失われるもの(空襲),学童疎開(当

時の子ども),人々の生活を変える(電球の覆い),西沢久一さんの手紙(手紙)。ここでは写真や地図

などが効果的にまとめられている。小見出しにも工夫が見られ,内容も重要な箇所にはマーカーで強調

されていてわかりやすい。地域に残る史跡も含め情報量も豊富である。6頁:調べたこと,わかったこ

とから戦争や平和について自分で考えたことをまとめる。この作品ではピースメッセージとして,「私

は戦争のおそろしさや悲しみ,そして,人々の心を変えるおそろしさを知りました。戦後の食糧不足も

深刻,そして,太平洋戦争の犠牲者数は約 310 万人。これだけの尊い命が失われ,そして,未来へのつ

ながりがなくなりました。平和の尊さを私たちは伝え,そして,もう戦争をしないことが大切だと考え

ました。石垣りんさんの詩には『戦争の記憶が遠ざかるとき,戦争がまた私たちに近づく』と書かれて

いて,しっかりと戦争のおそろしさを伝えています。戦争がなくなるようにするために,私たちはこの

学習で知ったので,これからは争いをせず,話合いで解決することをしていきたいです」と自分の意見

を表明し,最後に私たちに出来る事は「戦争のあったことを忘れないこと」と結んでいます。

 作品の交流では,周りの子どもからも次のように付箋でメッセージを受け,高評価であった。「大切

なところにせんがひかれていてわかりやすかった」,「いいことがかいてあったしわかりやすかった」,「争

いはせず話合いで解決するということは同じ思いです。」

4.今後に向けて

 この作品のようにA基準を達成した作品は多くはなかったがB基準以上を達成した作品は多かった。

しかし 2学期中には 6頁のすべてを仕上げることができなかった作品やとりあえず頁を埋めるだけとい

う作品まで,学力や意欲の格差が見られた。ほとんどの子どもがB基準を達成し,A基準に達する作品

数も増やしていくためには,総合的な学習の時間だけでなく,社会科,道徳,学級活動など教科等横断

的な指導を年間で計画的に実施していくためのカリキュラムマネジメントが必要である。

(岸本 実 )

1 共同研究事業

48 1 共同研究事業

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 1-25) 「幼児の協同的な遊びの形成における教師の役割についての研究」

1.事業名および担当者

 事業名:幼児の協同的な遊びの形成における教師の役割についての研究

 担当者:菅 眞佐子 (滋賀大学教育学部 )、中井清津子(相愛大学人間発達学部)

     金森優奈(大津市立青山幼稚園 教諭)

     連携先機関 大津市立青山幼稚園(園長 山田智子)

2.事業の目的

 協同性を身につけることは幼児期における重要な課題の一つであり、新教育要領においても幼児期の

終わりまでに身につけたい 10 の力の一つとして取り上げられている。この協同性の獲得には幼稚園等

における遊びが大きな役割を果たしていると考えられるが、協同的な遊びが形成されていく過程やそこ

で求められる教師の援助の具体的内容については、変化の過程が比較的長期にわたり時期によって指導

に求められる内容が変容していくこと、個々の幼児や集団により変容過程が多様であること、などから

くる研究方法上の難しさもあり、まだまだ体系的に明らかにされるには至っていない。本研究では、5

歳児後半の時期において幼児の遊びの姿がどのように変わっていくのか、また、その過程において教師

がその時々の遊びをどのように捉え援助を行っていくのか、について、5 歳児クラスの一人の担任教諭

とともに半年間その過程を追い学年末に教諭本人がその過程を振り返り内省することから明らかにする

ことを試みる。方法論も含めて事例として協同性の獲得過程との関連で検討するとともに、本研究を通

して幼児の遊びの変容過程と自らの援助のあり方についての振り返りを行うことで、共同研究者である

教諭自身の成長にも一定の寄与が期待される。

3.事業の概要

(1) 研究の流れ

 協同的な遊びの姿がとらえられ易くなる 10 月初めに共同研究を開始した。担当園において研究計画

ならびに倫理的配慮事項について説明し、①日々の遊びのなかで協同的な遊びへとつながっていくこと

が感じられる姿やその時期の遊びの特徴がよく現れている姿などが見られた際にそのエピソードを記録

すること、その際教師がその遊びをどう捉えたか、そのとき援助についてどのようなことを考えていた

か、についても併せて記録すること、②学年末の時期に面談を行い、10 月以降の幼児の遊びの姿の変

化やその過程で教師が意識してきたことなどについて振り返ってもらうこと、その際①で書きためた記

録を参考にしてもらうこと、を 5歳児の担任教諭に依頼した。その後、教諭にはすぐに学級での遊びの

様子を依頼された形で捉えることを開始してもらい、12 月下旬に進行状態について担当者間での確認、

1 月上旬にそれまでの経過についてのエピソードの確認と聞き取り、1 月下旬に大学担当者 ( 菅 ) によ

る保育観察、を行った。教諭による学級での遊びの把握とエピソードの記録は現在も継続中であり、そ

れを踏まえて 3 月に最終的な聞き取りを行う計画である。そのため、ここでは、11 月から 1 月にかけ

ての 5歳児の遊びの姿の変容と、それを捉える教諭の内省について報告する。

1 共同研究事業 49

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(2)11 月から 1月にかけての幼児の遊びの姿と教師の援助・内省について

① 11 月 報告されたエピソードから、この時期の幼児は 4 人から 6 人で集まり「動物園ごっこ」、「美

 容院ごっこ」など一つのテーマの元で遊びを展開しようとし始めていることがわかる。初めはイメー

 ジがバラバラだったり、他の遊びをしてしまい仲間の輪から外れてしまう姿が見られたりするが、教

 師はそれに対して互いのイメージを出し合い思ったことを伝え合うこと、仲間であることを子どもた

 ち相互が気づかせ合うことを意識して援助を行っていた。

② 12 月 報告されたエピソードから、この時期になると 6 人程度の幼児が一つの目的の下に力を合わ

 せて行動しようとし始めており、その中でそれぞれの言い分を話せるようになってきているが、相手

 の思いを受け止めるのに支えの必要な幼児もまだいる。教師は同じ遊びの仲間であることを意識でき

 るように、また自分たちで考えて解決していけるように意識して援助していた。

③ 1 月初旬の聞き取りから 友達と一緒に遊びを作り上げていくことに本格的に取り組めたのは運動会

 終了後の 11 月からであった。子どもにより協同性に向かう姿は異なるが、まず自分がやりたいこと

 をみつけることを大切にした。12 月初めに作品展がありいったん制作に力を入れたが、そのあとごっ

 こ遊びを楽しむようになってきた。11 月、12 月には思いを言える子が増えてきて、思いをすりあわ

 せること、みんなと一緒にやるってこういうことなんだと気づけるような体験をすることを大切にし

 てきた。1月になって生活発表会に向けての活動が始まり、グループを作り発表会の練習の隙間をぬっ

 てそこで使うグッズを作っている。これからの指導としては、目的意識を一人一人がしっかり持って

 それをしたいと思えるように、また葛藤を通して仲間の思いを聞けるようになる経験ができるように

 していきたいと考えている。さらには、遊びの振り返りの時間を設けて、別のグループのことも知ら

 せ合っていきたい。

(3)1 月の幼児の遊びの姿と教師の援助について

 観察時、保育室では、幼児たちが、影絵の材料を作るグループ、忍者のお城を作るグループ、森の妖

精の魔法の棒を作っているグループ、森の動物たちのパーティーのケーキやごちそうを作っているグル

ープ、に分かれてそれぞれが思い思いに制作に取り組んでいた。それぞれの活動においては、①参加者

それぞれが自分のイメージを言葉にして表すことでイメージがすりあわされていったり共有されていっ

たりする姿、②手伝ってほしいと言われると快く手伝おうとする姿、③手伝う中で相手のイメージや思

いに気づき、それにあわせて手伝いの仕方を変えていこうとする姿、④他児の発言や行動に出会うこと

で新たなアイデアや考え方に気づく姿、⑤互いのアイデアや作り上げた作品の良さに気づき認め合う姿、

など、協同して遊びを進めていこうとする姿が数多く観察された。教師は、幼児同士がイメージをすり

あわせていくこと、他児の発言や行動に気づかせること、作った作品を認めること、行き詰まっている

場合には新たな材料を提示したり新たな展開へのヒントを与えたりすること、などの援助をしていた。

4.今後に向けて

 本研究では、教師自身の内省から協同的な遊びが形成されていく過程における援助のあり方について

検討を試みた。3 月に行う最終的な振り返りの結果を踏まえて、このような方法によって教師がどの程

度的確に 5歳児後半の 6か月間にわたる援助の過程を振り返ることができたか、方法としての適切性も

含めて精査を行い、より多くの教師を対象とした質的な分析へとつないでいきたい。

  (菅 眞佐子・中井 清津子 )

1 共同研究事業

50 1 共同研究事業

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  1-26) 小学校特別支援学級に在籍する医療的ケアを必要とする児童への

     教育支援に関する研究

1.事業名および担当者

 事業名は,「小学校特別支援学級に在籍する医療的ケアを必要とする児童への教育支援に関する研究」

であり,昨年度の「交流及び共同学習のあり方について-特別支援学級に在籍する児童に有効な支援と

は-」に続く2年次目の研究となる。今年度の担当者は,教育学部:白石惠理子,草津市立南笠東小学

校:西村洋(校長),岩本宏子(教諭),清水智子(教諭)である。

2.事業の目的

 草津市立南笠東小学校では,昨年度,身体虚弱児学級が新設され,重度・重複障害があり医療的ケア(経

鼻経管栄養)を要する児童が入級した。当該児は学校教育法施行令 22 条の3に該当する児童であるが,

看護師配置等の教育条件整備を行ったうえで,日々の学習が行われている。昨年度は、児童の課題をみ

とり、教育課程や授業実践について、さらに校内の教師の理解・啓発について検討した。今年度,担任

が変わり,昨年度からの引継ぎは丁寧にされたものの,戸惑いながらのスタートとなった。そこで,本

年度は,昨年度の成果をふまえ,①教材研究と授業づくりをすすめること,②障害のある子にとっても,

通常学級に在籍する児童にとっても有効な交流及び共同学習のあり方を検討すること,の2点を目的と

した。

3.事業の概要

① とりくみ内容

 身体虚弱児学級に在籍する児童Aについて,昨年度のアセスメントや実践をふまえたうえで,Aの要

求をひきだす授業,教材・教具について検討する。さらに,通常学級に在籍する児童との交流について

考察する。                      

② 経過と概要

第1回:平成 30 年8月2日

 昨年度からの引継ぎを兼ね,今年度の研究についての

打ち合わせ。

第2回:平成 30 年8月 31 日

 午前中の授業場面(交流でのこくご,特別支援学級での

「朝の会」等)の観察。

第3回:平成 30 年9月7日

 第2回の授業観察をふまえて,遊びの指導の授業づく

りを中心に協議。

第4回:平成 30 年 10 月9日

 公開授業に向け,Aの興味・関心に依拠して,主体性を引き出す授業,教材・教具について検討を行

うこととした。

 

1 共同研究事業 51

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第5回:平成 30 年 10 月 16 日                  

 第4回に引き続き,Aの授業場面(特別支援学級)の観察と協議。

前頁写真は,ボールプールでの毛布ブランコの場面である。Aは,

この遊びが大好きで,揺れが止まると怒った表情になる。「もう1回

やね」と,Aの要求を何度か受けとめたあとで,「これで最後だよ」

と言って揺らした後は,満足げな表情をみせる。

第6回:平成 30 年 11 月 13 日

 大好きな絵本を題材にした,遊びの指導「ボールであそぼう」の

観察。手を使ったいろいろな遊びに気持ちをむけられるような教材

・教具について検討した。写真は,改良後のボード(ひもを引っ張

ると、ボールが落ちてくる)。

第7回:平成 31 年2月 19 日

 校内の中堅教諭等資質向上研修の報告会で担任(清 

水教諭)が報告(写真)。白石が助言を行った。肢体

不自由児学級の実践,読み書き入門期の指導の報告と

あわせ,特別支援教育と通常学級での実践の有機的連

携について重要な知見を得ることができた。

4.今後にむけて

 Aは,これまでも楽しい・嬉しい感情を笑顔で表出

しているが,今年度は拒否や怒りも明確に表現するよ

うになってきた。担任による丁寧なかかわり,Aの反

応を読み取りながらの「間」の保障,五感で季節や生

活を感じ取っていけるような積み重ねが重要であった。本児のように重度・重複障害をもち医療的ケア

も要する場合,どうしても「見かけの重度さ」に目を奪われがちになったり,医療的ケアのみに意識が

向きがちである。これは特別支援学校であっても同様であるが,本事例のように地域の学校での受けと

めにおいては,担任する教員もはじめての経験の連続となり,「何がわからないのかもわからない」と

いった状況からのスタートとなる。しかし,担任は,保護者や外部機関との連携,種々の研修への参加,

特別支援学校のセンター的機能を生かした助言等を活用し,Aの理解や授業づくりを進めてきた。なか

でも,Aの発達的理解,発達要求の理解という視点が重要であったと振り返る。こうした見方は,障害

のない場合も含め,どの子にとっても重要な普遍性をもつ。また,Aのように特別支援学級で過ごす時

間が長い場合,他学級の児童や教師からは見えにくい存在になってしまいがちであるが,この学校では,

休み時間に多くの子どもたちが特別支援学級を訪れ,そこで自然に過ごす中でAとの関係を築いている。

教師も交流授業での関わりや,今回の報告会等を通して担任の思いを聞くなかでAの表情の変化にも気

づきはじめている。実際に児とかかわることはもちろん,短時間であっても担任の思いや悩みを共有す

る場の必要性を実感することとなった。今回検討した授業づくりの視点をさらに実証的に検証していく

ことが求められる。                              (白石 惠理子)

1 共同研究事業

52 1 共同研究事業

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1.事業名及び担当者

 事業名は、石山プロジェクトであり、担当者は次のとおりである。  

 教職大学院:河口眞佐男(代表者) ,畑 稔彦

 大津市立石山小学校:横山泰史(校長)

 大津市立石山幼稚園:衣川洋子(園長)

2.事業の目的

 子どもたちの多様化した課題を抱える今日の学校状況から,新規採用教員といえども,即戦力として実践的

指導力や教員としての専門性が強く求められるようになっている。本学部では,平成17年度に 「石山プロジェ

クト」 を立ち上げ,以後大学近隣の公立小学校と公立幼稚園の協力を得て,学生を恒常的に学校の教育活動

に参加させる活動(スクールサポーター活動)に取り組んでいる。この活動を通して,学生が子供や学校の実

情を体験的に知るだけではなく,具体の場面における子供の心情の理解や教師として求められる対応の仕方な

ど,実践的な指導力を身に付け,教師としての対応力を高めることをねらいとしている。

3.事業の概要

 本事業は、附属教育実践総合センターの組織改編に伴い本センターの事業見直しにより事業終について検討

されたが、当該校園および関係者からの強い要望もあり、検討の結果、新たに大学側の担当者を決めて再開し

2年目である。

 スクールサポーター活動は春学期、秋学期の二期とし5月からとした。

(1)石山幼稚園へのスクールサポーターの派遣 ・活動期間,事前指導,派遣人数等

 春学期:活動期間:5〜9月,事前打ち合わせ5/11 (石山幼)

 活動開始:5/14 ,派遣人数:6名(3回生:6名) 

 秋学期:活動期間:11〜2月,事前打ち合わせ10/30 (石山幼)    

 活動開始:11/1,派遣人数:5名(3回生:5名)

 活動内容:4歳児,5歳児の保育補助

(2)石山小学校へのスクールサポーターの派遣

 活動期間,事前指導,派遣人数等  

 春学期:活動期間:5~9月,事前指導:小学校教員との打合せ5/11(石山小)

 秋学期:活動期間:11〜2月,事前指導:小学校教員との打合せ10/29(石山小)

 派遣人数:春学期10名 秋学期20名 内2名 春秋参加

 活動内容:各数科等で基礎的な内容の習熟を図る指導補助

     各教科や総合的な学習の時間,遠足的行事等での校外学習の引率補助,        

     生活単元学習(特別支援学級)における指導補助

(3)定例省察会の開催

 毎月下旬に幼稚園と小学校の校種別に,省察会を大学で開催。

 外部講師と開催日は下記のとおりである。

◆幼稚園講師  ・退職園長で県教委の初任者研修巡回指導員安倍映子先生

 省察会開催日  5/31 6/29 7/20 9/27 11/30 12/18 1/21 2/25

◆小学校講師  ・退職女性校長会から次の6名の先生方から毎回2名ずつの先生方を派遣

 平地幸美先生  稲垣明美先生 福永佐栄子先生 上坂操先生 岩井知子先生 西川典子先生

2 石山プロジェクト

2 石山プロジェクト 53

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 窓口として退職女性校長会 諏訪栄子先生にご担当いただく。

◆省察会開催日 6/28 7/20 9/27 11/28 12/18 1/22

 省察会では、学生が当該月の学校園でのスクールサポート活動を振り返り、やり甲斐や感じたこと自信がつい

たこと、自らの成長を自覚できたこと、課題に思っていること、悩んだり、戸惑ったりしていること、子どもの言

動等をどう理解すればいいか分からなかったこと、指導や教育に当たっておられる先生の意図などについて、悩

みや疑問点を出し合い、互いに意見を交流する。この場には学校園での経験豊かな外部講師の先生方を迎え

ている。先生方からは学生の提示した課題について明快な返答や励ましなどの指導助言を受けることで、学生

自身が課題を明確にし、子どもたちへの対応改善に意欲を高める機会となっている。

(4)学期末報告会の開催日 

 実施日  小学校:2/1   場所  小学校:石山小学校図書室

 報告会には、学生や指導助言の外部講師と受け入れ校園の教員が一堂に会する。学生一人一人からは、スク

ールサポートの機会と指導助言をいただいたことへの感謝を述べ、自らの成長と気づきや発見について順番に

発表した。また、個々の学生の担当となって指導いただいた学校園の先生からは、ねぎらいの言葉と成果と課

題についてコメントをいただいた。最後に、外部講師からの指導助言をいただき報告会を終了した。後日、省

察会や報告会のアドバイザーを務めていただいた先生方から下記のような感想などを報告いただいた。

・教職を目指す学生の、誠実で、一生懸命な姿勢に感心し子どもたちを観察する視点の良さなどすばらしいもの

があった。

・自分たちのアドバイスが学生さんたちのお役に立てたかという心配はあった。

・学生さんにもいろいろ事情もあったとは思いますが、参加人数が少なかったこと、コートを脱がない礼儀に疎

いところや幼さを感じる質問内容にこのまま現場に出て行って大丈夫かと心配になった。

・この「石山プロジェクト」がより一層、教職を目指す学生さんのためになるよう、私どももより良いアドバイザー

ができますよう努力したいと思います。                    (文責:河口 眞佐男)

       石山幼稚園省察会                石山小学校報告会

2 石山プロジェクト

54 2 石山プロジェクト

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1.事業名および担当者 

 事業名は,「学力向上プロジェクト」であり,担当者は次の通りである。 

  豊郷町教育委員会事務局学校教育課:八木佐登留(課長)       

  豊郷町立豊日中学校:北村 俊(教務主任),長澤和馬(院生)

  豊郷町立豊郷小学校:福田 圭(教務主任)

  豊郷町立日栄小学校:安居猛司(教務主任)

  滋賀大学教職大学院:大野裕己,畑 稔彦

 事業では,学校経営の立場からの専門的な研究支援を大野が担当し,研究の推進と取りまとめを八木(研究

代表)が担当し,研究全般の総括支援を畑が担当した。また,各校における現状の分析と来年度に向けての立

案を北村,福田,安居が担当した。

2.事業の目的

 平成 29 年 3月公示の新学習指導要領では,各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立を改訂のポイ

ントの1つとしている。学校全体として,教育内容や時間の適切な配分,必要な人的・物的体制の確保,実施

状況に基づく改善などを通して,教育課程に基づく教育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図るカリ

キュラム・マネジメントを確立することが求められている。豊郷町教育委員会では,管内の小中学校の教務主任

を集め,新学習指導要領に向けたカリキュラム・マネジメントについて研修を実施しており,本事業は学術的側

面から支援をすることを目的としている。

3.事業の概要

 豊郷町教育委員会所管小中学校3校の教員の平均年齢は,39.0歳,44.5歳,38.8 歳であり,教務主任の

年齢層は,50代が2名と30代が1名である。中学校についてさらに詳しく見ると,教員の年齢構成については,

分布の形状はふた山で,平均値が38.8,中央値が36.0である。全体の半数が36歳未満であり,一つ目の山

のピークが30歳であることから,若手の層が厚いのが特徴である。教務主任は38歳と若く,教務経験のある

教員から学ぶ機会が必要である一方で,大規模校のように,教務助任を経験して職務を学ぶことや,主幹教諭

からの示唆を得たりすることができない現状がある。

 豊郷町教育委員会では,管内小中学校の教務主任を集め,新学習指導要領に向けたカリキュラム・マネジメ

ントについて研修を2回実施し,経験値のある教務主任から学ぶ機会としている。具体的な内容は,カリキュラ

ム・マネジメントの分析シート(以下,カリマネシート)をもとに,各校における現状の分析と来年度に向けての

立案である。実践をすすめるうえで,「見える化」(育成する資質能力-教委育内容-組織的条件)と「協働化」

(教職員集団の内発的取組)を常に意識することとした。

(1)第1回 教務主任研修 12月 3日(月) 15:00~16:45

 各校の教務主任が,自校のカリマネシートの説明と校内研修の取組を紹介した。交流からの学びを2点以下

に紹介する。                     

3 学力向上プロジェクト

3 学力向上プロジェクト 55

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・各学年の机から見えるところに教科・領域が1枚に収められた  年間指導計画を貼っておき,随時矢印等を書き込んで修正を図

り,学期末に教務主任が点検をしているという報告から,全職 

員で取り組むカリキュラム・マネジメントの方法について学んだ。

・家庭学習の習慣化について,校内研究会を核とした取組で成

果を上げている事例が小学校から報告された。授業実践部会

と家庭学習・学習環境部会の2部会に全職員が所属し,授業

改善と家庭学習の定着を視点に共通理解のもと,実践したものである。算数科のノート指導を全校で統一するこ

とで,計画的に単元の学習内容を進めることができるようになり,家庭学習の定着にも効果が波及しているとい

った内容である。レバレッジポイント(比較的小さな力で大きな効果)について具体的に学ぶ機会となった。

(2) 第2回 教務主任研修 2月 5日( 火 ) 15:00~16:45

 第1回研修会後,各校のカリマネシートに加筆した点について交流した。2小学校からは,新学習指導要領

で必修となるプログラミング教育の実施に向けて,教材の選定や各教科とのつながりを確認している取組等が紹

介された。教材の選定の講師は,町費の情報アドバイザーが務めていたことから,未実施の小学校でも取り入

れやすいことも確認できた。中学校からは,総合的な学習の時間の見直しに向けて,校内研修の時間を設け

ていることが紹介された。その内容は,独立行政法人教職員支援機構の校内研究シリーズ「カリキュラム・マ

ネジメントとは」を活用して共通理解を図り,「中学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編」で目標の

趣旨や指導計画の作成について理解を深めた上で,自校の年間の流れを確認・整理しているというものである。

第1回研修会で,小学校からカリキュラム・マネジメントについて全職員で研修をしているとの報告があり,教職

員集団の内発的取組を進めるうえで,その必要性を強く感じて実施したものである。

(3)中学校区で研修を実施する利点

 2回の研修から以下のような利点をあげることができる。

•教務主任の悩みに共感し,助言を与えることができるのは経験者であるが,多くの場合,管理職がそれに当た

り人数にも限りがある。校区の教務主任同士であれば,互いに顔も分かり各校の実情を踏まえながら話を進め

ることができる。

•県の研修を受け,カリマネシートを自校で活用するための研修として位置付いており,計画を具現化することが

できる。

•カリマネシートや年間指導計画を交流することで,中学校であれば,2小学校の総合的な学習の時間の内容

が把握でき,学習のつながりを意識した自校の取組を推進することができる。小学校であれば,互いの校内研

究の成果や課題を交流することで,自校の取組の参考とすることができる。学習規律や家庭学習についても,

9年間を見通した計画を立てることができる。

4.今後に向けて

 新学習指導要領では,「何ができるようになるか。」という視点で教育課程を捉えることが求められている。3

小中学校ともに,次年度に向けて総合的な学習の時間と各教科等の単元を関連付けた年間指導計画を作成して

いくことで,総合的な学習の時間を始めた当初の理念に立ち返りながら,子どもたちに身に付けさせたい資質・

能力を教員一人一人が意識できるようにしていく。来年度は各校で考えたカリキュラムを実際に運用し,その効

果について検証したい。                        (八木 佐登留・畑 稔彦)

3 学力向上プロジェクト

56 3 学力向上プロジェクト

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4 出前講座

4 出前講座 57

 この出前講座は、滋賀県内の学校等における研修や講演会に教育学部教員を講師として派遣する制度

である。既に、教育学部教員は県や市町教育委員会や各学校の依頼を受け、研修講師の役割を遂行して

いる。しかし、これらのネットワークが成立していない場合や新任教員の派遣の場合に限っては、本出

前講座は有効なものであろう。

 平成 30 年度の出前講座については、小学校 3校、高校 5校、幼稚園 1園、特別支援学校 7校、研究

所 1件の計 17 件の実績であった。他にもいくつか依頼があったが、日程等の関係で成立しなかったケ

ースもある。

 多くの教育関係者の方々に、本出前講座を利用していただくため、出前講座一覧を本学部ホームペー

ジにアップロードした。下記がその出前講座一覧である。

国語教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

国語教育 近江国と和歌井ノ口 史

(いのぐち ふみ)国語教育講座

(日本古代文学)児童・生徒(中・高)教員(中・高)

保護者市民一般

古代から近世まで、それぞれの時代背景を踏まえつつ近江国に関連する和歌を紹介します。近江国(現在の滋賀県内)には、和歌に詠まれた地名が少なくありません。いかなる風景が描写されているのか、和歌を通じて近江国の魅力を再発見することをめざします。

国語教育 書とその周辺中村 史朗

(なかむら しろう)国語教育講座(書道)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小・中・高・特)

保護者 市民一般

人はどのようにして「書の美」を自覚するようになったのでしょうか。王羲之や空海の筆跡はどこがそんなに上手いのでしょうか。生活の場において“手書き”の機会が減って、書という表現の領域は失われてしまうのでしょうか。書と周辺のさまざまな問題を取り上げます。講義と実習をあわせて実施することも可能です。

国語教育国語教育における

学びの探究長岡 由記

(ながおか ゆき)国語教育講座(国語教育学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小・中・高・特)

近年、さまざまな言語活動を取り入れた国語学習が行われています。国語の学習における学びの手応えは必ずしも得やすいものではなく、言語活動を取り入れた学習の成果と課題も明らかになりつつあります。そこで、演習を交えた講義を行い、国語教育における学びについて具体的な学習材や学習指導法を取り上げながら探究していきたいと思います。

国語教育 唐詩を読もう二宮 美那子

(にのみや みなこ)国語教育講座

(中国古典文学)生徒(中・高) 教員(小・中・高)

市民一般

中国古典詩を代表するのが唐詩(唐代に作られた詩)です。唐詩には、古くから日本人に愛されてきた多くの素晴らしい作品があります。この講義では、作品の背景を丁寧に解説しながら、漢字一文字一文字にこめられた意味を大切にして唐詩を読み解き、その豊かな世界をご紹介します。

国語教育 方言を考える松丸 真大

(まつまる みちお)国語教育講座

(日本語学/方言学)

生徒(小・中・高)教員(幼・小・中・高・特)

保護者市民一般

ひとくちに日本語といっても、その内実は人によって、または場面によって異なります。その中でも地域による言葉の違い(=方言)は多くの人が興味を持つテーマです。この講義では日本語の方言をとりあげ、なぜ・どのように方言があるのかを考えていきます。この授業を通して、言葉について考えることの楽しさに気づいていただければ幸いです。

社会教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

社会科教育

地理から考える物語の舞台

安藤 哲郎(あんどう てつろう)

社会科教育講座(地理学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小・中・特)

市民一般

説話などの古典を読むと、いくつか地名が出てきます。こういった地名と物語の内容を手がかりとして地図を作りながら考えると、物語が作られた時代の人々が物語の舞台となった場所についてどのような認識を持っていたのか分かることがあります。地図やパネルを使いながら、地理から物語の舞台について一緒に考えてみましょう。

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4 出前講座

58 4 出前講座

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

社会科教育

地理から考える物語の舞台

安藤 哲郎(あんどう てつろう)

社会科教育講座(地理学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小・中・特)

市民一般

説話などの古典を読むと、いくつか地名が出てきます。こういった地名と物語の内容を手がかりとして地図を作りながら考えると、物語が作られた時代の人々が物語の舞台となった場所についてどのような認識を持っていたのか分かることがあります。地図やパネルを使いながら、地理から物語の舞台について一緒に考えてみましょう。

社会科教育

史料を基礎と日本史(前近代史)

宇佐見 隆之(うさみ たかゆき)

社会科教育講座(日本史学/日本中世

史)

児童・生徒(小6以上) 教員(小・中・高)

歴史の記述は、すべて史料に基づいて行われています。このため、記述の背景にある史料の理解なしに理解できません。史料と教科書の記述を照らし合わせながら日本前近代史への理解を深めましょう。

社会科教育

古代ローマ史にみる

曖昧な「史実」大清水 裕

(おおしみず ゆたか)

社会科教育講座 (西洋史/古代ローマ

史)

児童生徒(中・高) 教員(中・高) 市民一般

歴史学は、様々な史資料を用いて過去の社会を再構成しようとする学問です。しかし、そこで用いる史資料が互いに矛盾していたり、あるいは荒唐無稽だったりすることは少なくありません。本講義では、古代ローマ史の中から有名な事件を取り上げ、人口に膾炙している「史実」の曖昧さと、「史実」を確定しようとする歴史学の営みをご紹介します。

社会科教育

論理学初歩

齋藤 浩文(さいとう ひろふみ)

社会科教育講座(哲学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小・中・高・特)

保護者 市民一般

論理学への入門として、以下の2つのいずれか、または、両方について講義します。(1) 形式論理学の初歩について紹介しながら、論理とは何か、そして、論理的で あるとはどういうことかを考えます。(2) 非形式論理学を背景として成立したクリティカル・リーズニングについて、 その基本の紹介と実践を目指した演習を行います。

社会科教育

滋賀の近代史馬場 義弘

(ばんば よしひろ)社会科教育講座

(政治学/歴史学)市民一般

明治前期に滋賀県の県令(のちの県知事)を務めた松田道之(初代、明治4年11 月~明治8年3月)、籠手田安定(二代、明治8年5月~明治17 年7月)を中心に、近代国家の形成と滋賀県政について考えます。

社会科教育

景観写真の観賞と教材化

松田 隆典(まつだ たかのり)

社会科教育講座(人文地理学)

児童・生徒(小・中・高) 教員(小・中・高)保護者 市民一般

WEB 上に多く掲載されている景観写真の観賞の仕方について、実例をもとにわかりやすく説明するとともに、社会科や地歴科・公民科のための教材化の可能性について示します。具体的テーマとしては、視覚的にわかりにくい気候を植生写真で説明したり、国際理解のために必要な社会的コンテキストを都市景観写真などで紹介します。

社会科教育

身近な事件をもとに法裁判の役割を考える

渡辺 暁彦(わたなべ あきひこ)

社会科教育講座(法律学/日本国憲法)

生徒(小・中・高・特) 教員(幼・小・中・高・特)

保護者市民一般

市民も「裁判員」として裁判に関わる時代となりました。憲法改正をめぐる議論も盛んです。法や憲法、そして裁判に対する関心も高まりつつあるようです。本講義では、最近の身近な事件や話題を取り上げ、実際の判決文なども活用しながら、日本国憲法や裁判についての理解を深めていきたいと考えています。

数学教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

数学教育 正多面体とその数理篠原 雅史

(しのはら まさし)数学教育講座(離散幾何学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小高・特)保護者

市民一般

正多面体はプラトンの多面体として古くから知られていて、正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正十二面体、正二十面体の5種類があります。実際に正多面体を作ったり、展開したり、計算したりすることを通して、正多面体の対称性やその美しさを体感してもらうことを目標とします。

数学教育 無限の考え方神直人

(じんなおんど)数学教育講座

(解析学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特) 教員(幼・小・中・高・特)

保護者 市民一般

私たちは小学校の頃から無限の考え方を利用しています。無限の考え方を利用すると多くのことが明らかになる一方で、無限のパラドックスというものも存在します。この無限の持つ二面を紹介することで算数・数学の面白さ、考えることの楽しさに気づいてもらえればいいと思います。

数学教育 非線形現象の解析鈴木宏昌

(すずきひろまさ)数学教育講座

(解析学)生徒(高) 教員(中・高)

私たちの身の回りで見られる様々な非線形現象は、しばしば数理モデル方程式で表されます。本講義では、数理生物学における生物個体群のモデルや、化学反応のモデル方程式の解析を通じて、数学と自然科学との関わりの一面を紹介します。モデル方程式にもとづいた計算機シミュレーションも紹介する予定です。

数学教育算数・数学教育の

理論と実際高澤茂樹

(たかざわしげき)数学教育講座(数学教育学)

教員(小・中)

算数・数学科の教授・学習過程について、理論的研究を教育実践にどのようにいかすかを検討する。特に、教師として子どもたちの数学的認識をどのように捉え、それを基にしてどのように指導するべきかについて考えたい。

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4 出前講座 59

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

数学教育 正多面体とその数理篠原 雅史

(しのはら まさし)数学教育講座(離散幾何学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小高・特)保護者

市民一般

正多面体はプラトンの多面体として古くから知られていて、正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正十二面体、正二十面体の5種類があります。実際に正多面体を作ったり、展開したり、計算したりすることを通して、正多面体の対称性やその美しさを体感してもらうことを目標とします。

数学教育 無限の考え方神直人

(じんなおんど)数学教育講座

(解析学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特) 教員(幼・小・中・高・特)

保護者 市民一般

私たちは小学校の頃から無限の考え方を利用しています。無限の考え方を利用すると多くのことが明らかになる一方で、無限のパラドックスというものも存在します。この無限の持つ二面を紹介することで算数・数学の面白さ、考えることの楽しさに気づいてもらえればいいと思います。

数学教育 非線形現象の解析鈴木宏昌

(すずきひろまさ)数学教育講座

(解析学)生徒(高) 教員(中・高)

私たちの身の回りで見られる様々な非線形現象は、しばしば数理モデル方程式で表されます。本講義では、数理生物学における生物個体群のモデルや、化学反応のモデル方程式の解析を通じて、数学と自然科学との関わりの一面を紹介します。モデル方程式にもとづいた計算機シミュレーションも紹介する予定です。

数学教育算数・数学教育の

理論と実際高澤茂樹

(たかざわしげき)数学教育講座(数学教育学)

教員(小・中)

算数・数学科の教授・学習過程について、理論的研究を教育実践にどのようにいかすかを検討する。特に、教師として子どもたちの数学的認識をどのように捉え、それを基にしてどのように指導するべきかについて考えたい。

数学教育江戸時代の数遊びから見る現代数学

長谷川 武博(はせがわ たけひろ)

数学教育講座(代数学)

教員(中・高) 児童生徒(高)

江戸時代の和算家 吉田光由(みつよし)によって書かれた和算書「塵劫記(じんこうき)」に収録されている文字遊び・数遊びに「目付字(めつけじ)」・「継子立(ままこだて)」などがあります。これらの遊びを紹介し、その背後に隠れている数学を考えます。具体的にはn進法や数列などが隠れています。

数学教育数学的ジレンマを使った対話による算数・数学科

授業

渡辺慶子(わたなべけいこ)

数学教育講座(数学教育学)

教員(小・中・高)

「算数・数学科の授業で先生と児童・生徒たちが如何にして対話をし、新たな知識を作り上げていくのか」について、具体的な教材(学習・指導の内容、具体的な問題)をもとに議論します。対話型授業の構造と展開を探求した上で、「話し合い」を取り入れた授業における教師の役割についても議論したいと思います。

理科教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

理科教育コミュニケーション

トレーニング加納 圭

(かのう けい)

理科教育講座(科学コミュニケーション)

児童・生徒(中・高・特) 教員(幼・小・中・高・特)

市民一般

滋賀大学に通う大学生が授業に求めていること第1位(滋賀大学キャリア通信:サンクス 2013 年 1 月 7 日号より)であった「コミュニケーション能力」の向上を目指したトレーニングプログラムです。科学の内容について「伝える・伝わる・分かち合う」ができるようになります。

理科教育細胞をつくっている

物質・脂質糸乗 前

(いとのり さき)理科教育講座

(生化学)生徒(中・高)

生物を形作っている細胞は脂質でおおわれた袋で、その外側には特有の成分が含まれています。その成分を調べることは、細胞にとってあるいは生物にとって重要な情報を与えてくれます。本講義では「セラミド」などの、どこかで聞いたことのある脂質を含め、色々な生き物の脂質の話とどのように調べるかなどの話をします。

理科教育①太陽の科学②天体観望会(夜間実習)

大山 真満(おおやま まさみつ)

理科教育講座(太陽物理学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(小・中・高)

①太陽は、宇宙に浮かぶ平凡な星の一つに過ぎない。しかし、地球に直接的に影響を与え、その姿を詳細に観測できる唯一の恒星である。この太陽に焦点をあて、最新の画像や動画も用いながら、太陽の素顔を紹介する。

理科教育物理学における シミュレーション

方法

神山 保(こうやま たもつ)

理科教育講座(物理学)

生徒(高) 教員(高)

自然科学の研究は観測と実験を基礎にしていますが、両方とも難しい場合や、現象を理解するためにたてられた理論の検証にシミュレーションが使われます。液体気体の相変化をはじめとする物質における様々な相転移に対するコンピュータシミュレーションの方法を紹介します。エクセルを使った誰でも簡単にできる方法もお話しします。

理科教育 物性物理学入門恒川 雅典

(つねかわ まさのり)

理科教育講座(物理学/

物性物理学)生徒(高) 教員(高)

「物性」といってもなじみが薄いかもしれませんが、実は「物性物理学」は素粒子・原子核・宇宙物理学と並ぶ分野の1つです。最新の科学技術を根底から支えている物質科学の中でも物質の成り立ちや現象などを、量子力学や統計力学などの物理的な考え方・手法の立場から研究するのが「物性物理学」です。本講義では、身近な例をあげながら「物性物理学」についてお話しします。

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4 出前講座

60 4 出前講座

理科教育 私たちの化学徳田陽明

(とくだようめい)

理科教育講座(無機化学/物理化学)

教員(小・中・高)

化学が私たちの暮らしをいかに豊かなものとしているかについて講習します。また,小中高での学びがどのように大学に接続するのかについて酸とアルカリをテーマに説明します。準備や片付け(廃棄を含む)の簡単な化学の実験を体験して頂き,生活用品を使った実験についても紹介します。

理科教育 遺伝情報とは何か?古橋 潔

(ふるはし きよし)理科教育講座

(生物学)生徒(高)

生命科学は近年目覚ましい進歩を遂げていますが、DNAと遺伝子の違いはおわかりでしょうか?この講座では遺伝情報がどのようなもので、どのように使われているかについて、身近な例を挙げて、しかし最先端の技術によって得られた知見も盛り込みながら説明します。

音楽教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

音楽教育 ピアノ演奏法犬伏 純子

(いぬぶし すみこ)音楽教育講座

(器楽/ピアノ)生徒(中・高) 教員(中・高)

市民一般

合唱や独唱の伴奏について、歌とのアンサンブルとしての役割を認識しながら、どのように音楽を組み立て、表現の可能性を広げるかを受講者の演奏をとおして考えたいと思います。

音楽教育 現代社会と音楽杉江 淑子

(すぎえ よしこ)音楽教育講座(音楽科教育)

教員(幼・小・中・高・特)市民一般

現代社会における音楽の多様な姿について、若者文化、世代、地域社会、マスメディアといった視点からとらえるとともに、文化政策や教育との関連について考えます。

音楽教育オーボエ演奏法/木管アンサンブル

中根 庸介(なかね ようすけ)

音楽教育講座(オーボエ/木管合奏)

生徒(中・高) 教員(中・高)市民一般

オーボエの経験者を対象に、基本的奏法を学び、練習曲集などを用いて音楽的な表現を学びます。木管を中心としたアンサンブル(木管四重奏、五重奏、ピアノと管楽の五重奏、六重奏、など)を通して、より高度な音楽作りを学びます。

音楽教育 楽しい音楽づくり林 睦

(はやし むつみ)音楽教育講座(音楽教育)

教員(幼・小・中・高・特)

音楽づくり、創作のワークショップをします。教師向けのワークショップや講習会、児童・生徒向けの授業のデモンストレーションもします。楽器がなくても、ピアノが弾けなくても、おもしろい音楽を作る方法があります。楽しく音楽をつくり、子どもたちが自らの表現に目覚める瞬間を一緒に体験できたらと思います。

音楽教育音による表現を

めぐって若林 千春

(わかばやし ちはる)音楽教育講座

(作曲/音楽理論)教員(中・高・特)保護者

市民一般

お芝居の台詞に、その場に適した演技があるように、音楽にもそれぞれ適切な表現の方向付けがあります。「ここで音楽はどんな台詞を演じているの?」という問題を、一緒に考えてみましょう。楽譜に書かれていない「とても大切なこと」を見つけたり、簡単な音楽文法のおさらいや、創作の実践などを通して、音による表現を共に深めてゆく場を体験してみましょう。

音楽教育本当の「声」と出会う~ヴォイストレーニング~

渡邊 史(わたなべ あや)

音楽教育講座(声楽)

児童・生徒(小4 年~・中・高)教員(幼・小・中・高・特)

保護者市民一般その他(企業社内研修、マナー講座等 )

人間の表現ツール、コミュニケーション手段として「声」は重要な役割を担っています。みなさんの「声」の可能性を見つめなおしてみませんか? 発声ストレッチ、呼吸トレーニングを経て、身体を芯から使いながら「声」と向き合う時間です。歌に、そして朗読にも、ちょっとしたコツで生まれる大きな変化を楽しみにご参加ください。

美術教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

美術教育西洋絵画鑑賞入門−「絵を見る」から「絵を読む」へ−

谷田 博幸(たにた ひろゆき)

美術教育講(美術理論/美術史)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小中・高・特)保護者

市民一般

絵というものを単に感覚的・主観的に「見る」のではなく、一歩作品に踏み込んで客観的に絵を「読む」。その方法をスライドを使ってやさしく解説します。

美術教育子どもの絵の見方、描か

せ方、造形遊びのすすめ方

新関 伸也(にいぜき しんや)

美術教育講座(美術教育)

教員(幼・小・中)

子どもの絵の見方や描かせ方、また「造形遊び」の具体的な指導方法について、各学校園の先生方の課題に応じながら講義や演習を行います。

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

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4 出前講座 61

美術教育入門アート 〜 ラクガキからアール・ブリュットまで

藤田 昌宏(ふじた まさひろ)

美術教育講座(彫刻/現代美術)

児童・生徒(小4以上・中・高)教員(幼・小・高・特)

その他(福祉関連作業所など)

ラクガキを描くことから始めます。ラクガキを見せあいっこし、ラクガキの名作を鑑賞?し、そこから見えてくる表現の楽しさ・不思議さを感じてみてください。そこからの展開は、「アールブリュット」「速写クロッキー」「エガオ絵」「目隠し彫刻」などなど、受講してくださる顔ぶれやリクエストでアレンジします。

美術教育グラフィックデザイン

の世界世ノ一 善生

(よのいち よしお)美術教育講座

(グラフィックデザイン)生徒(中・高) 教員(小・中・高)

保護者 市民一般

グラフィックデザインでは、ポスターや新聞広告などの広告物、パッケージ、雑誌、書籍装丁など様々なものを対象としますが、これらの多くは大量生産されて消費されてゆきます。しかしそのようなものだから、漫然と作られた価値の低いものという訳ではありません。ここでは図版資料を提示しながらその素晴らしさについてお話ししたいと思います。

  

保健体育教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

保健体育教育

ストレスって何? ―「こころの健康」

を考える―

大平 雅子 (おおひら まさこ)

保健体育講座(衛生学/健康科学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小・中・高・特)

市民一般

誰もが聞いたことがあるストレスという言葉。その言葉の本来の意味を解説しながら、「こころの健康」について様々な視点から考えていきます。

保健体育教育

できる・わかる・かかわり合う体育授業の

理論と方法

加登本 仁(かどもと ひとし)

保健体育講座(体育科教育)

教員(小・中・高)

子どもたちが学び合い育ち合う体育授業はどのように実現できるのか。いま教師に求められる考え方や指導性はどのようなものか、協同的な学びをどのようにデザインし、評価していけばよいのか等、学習集団づくりの理論と方法について考えていきましょう。

保健体育教育

スポーツと国際交流・異文化と理解

 平井 肇(ひらい はじめ)

保健体育講座(体育学/スポーツ

社会学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼.中・高・特)

保護者

・スポーツの果たす社会的、文化的役割について、各国のスポーツ事情を通して紹介します。・スポーツを通した国際交流や異文化理解の意義と実際について紹介します。

保健体育教育

生理学の基礎に基づいた効果的な運動・

トレーニング松田 繁樹

(まつだ しげき)保健体育講座

(体力科学/生理学)生徒(中・高) 教員(中・高)

市民一般

運動・トレーニングを行う際には、ヒトの生理的特徴や科学的知見に基づいた合理的なトレーニングをするべきです。本講義では、運動生理学の基礎を踏まえたうえで、効果的な運動・トレーニングについて考えていきます。

技術・情報教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

技術・情報教育

金属材料のこれから磯西 和夫

(いそにし かずお)

技術教育講座(金属加工学 /

粉末冶金)

生徒(中・高)教員(中・高)市民一般

金属材料は最も多く用いられている材料の一つである。最近、既存の金属をしのぐ材料特性が求められている。このような材料は溶解−塑性加工−切削による従来からの加工が不可能な場合が多い。その一解決法が粉末を用いた素材製造・加工・成形法である。粉末冶金法による材料開発と加工について解説する。

技術・情報教育

教育工学的手法 を用いた教育環境の改善

岩井 憲一(いわい けんいち)

情報教育講座(認知科学/教育工学)

生徒(中・高) 保護者

教育環境は、慢性的な人材・予算不足等の問題から、これまで以上に質の高い教員の採用や情報ネットワークの導入による資源の共有、および、新しい教育手法の検討が求められています。本講座では、これまで行ってきた学習指導案の電子化や情報ネットワーク環境等の ICT 導入事例を通じて教育環境の電子化について提案します。

技術・情報教育

一本の木から椅子をつくる

岳野 公人(たけの きみひと)

技術教育講座(技術教育/環境教育)

教員(幼・小・中・高・特) 市民一般

森林環境の有効利用の観点から、伐採から製材、椅子作りのプロセスをすべて人間の手でおこなう方法を紹介する。米国では、グリーンウッドワーキングといい、日本の木地師が山にこもって、器づくりをしていたころの技術と同様の伝統的な手法である。作業できる場所が確保できれば、実際の作業を体験するワークッショップを開催することもできる。

技術・情報教育

多様な生物と生態的ネットワーク

服部 昭尚(はっとり あきひさ)

情報教育講座(生態学)

生徒(高) 保護者

生産者と消費者、分解者から構成される生態系に、なぜ多様な生物が存続しなければならないのでしょうか。具体的に何種、絶滅すると、生態系は崩壊するのでしょうか。観光地として人気のサンゴ礁に焦点を当て、多様な生物が構成する好循環のシステムを紹介しながら、生態系と生物多様性、そして絶滅の意味を考えます。

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

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4 出前講座

62 4 出前講座

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

技術・情報教育

宇宙の誕生と進化穂積 俊輔

(ほづみ しゅんすけ)情報教育講座(天体物理学)

市民一般

宇宙はビッグバンという大爆発から始まったとされています。では、なぜそのような大爆発があったことがわかったのでしょうか。さらに、「大爆発」とはガス爆発のようなものなのでしょうか。このような宇宙の誕生から始めて現在の私たちが見ている宇宙の姿を、人類の宇宙観の変遷とともに解説していきます。

技術・情報教育

動物の行動を真似るロボット

右田 正夫(みぎた まさお)

情報教育講座(認知科学/ロボット工学)

生徒(高)

外界からの情報に応じて、自ら適切な行動を選択できるロボットを総称して「自律ロボット」といいます。自律ロボットが動作する環境はとても複雑ですが、さまざまな動物の行動様式を真似てロボットの行動をデザインすることでうまく対処できる場合があります。本講義では、そのような自律ロボットの研究事例を紹介します。

技術・情報教育

複雑系入門−フラクタルとは何だろう−

水上 善博(みずかみ よしひろ)

情報教育講座(コンピュータ

シミュ レーション)生徒(高)

海岸線や川の流れ、雲の形や木の枝ぶりなど、自然の造形には複雑な形をしているものが多く見られます。複雑な形をした図形の特徴を表す方法にフラクタルがあります。本講義では、フラクタルという考え方を分かりやすく解説し、形の複雑さを知るための指標としてのフラクタル次元の求め方を学びます。

家庭科教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

家庭科教育

何をどう食べる? −自分のための食べ物、

食べ方−

久保 加織(くぼ かおり)

家政教育講座(食物学)

教員(小・中・高・特) 市民一般

誰もがいつでも食べたいものを食べられる現在であるからこそ、どの年代の人も自分の健康のためには何をどれだけどのように食べるのがいいか、きちんと理解しておくことが大切です。様々な情報と食品表示が氾濫する中で、自分のための食材選びと食べ方について考えます。(具体的にどのような点に重点をおくかは、対象者に応じて相談させていただきます。)

家庭科教育

くつろぎの住まい 田中 宏子

(たなか ひろこ)家政教育講座

(住居学)

児童・生徒(小・中・高)教員(幼・小・中・高・特)

市民一般

住まいは、雨や風、暑さ・寒さや様々な過酷な自然現象から人々を守る役割があります。また、そこで暮らす人々がゆっくりと休養し、エネルギーを蓄えるなど、住まいは人々の心身の健康を維持する役割ももっています。これらの役割を果たすためにはどのような工夫が必要でしょうか、ともに考えてみたいと思います。

家庭科教育

家族の機能平松紀代子

(ひらまつ きよこ)家政教育講座(家庭経営学)

児童・生徒(幼・小・中・高)教員(幼・小・中・高)

保護者市民一般

家族の存在はどのような機能を果たしているだろうか。社会で一番小さい組織(システム)である家族について、客観的に振り返り、時代、国、あるいは同じ時代に同じ地域に暮らしていても異なる家庭の文化にも目配りしつつ、それぞれの価値観の違いをふまえ、それぞれの価値観を尊重することの大切さについてお話します。

家庭科教育

衣生活と環境 與倉 弘子(よくら ひろこ)

家政教育講座(被服学)

教員(小・中・高・特) 市民一般

環境問題に配慮した衣服の着装行動について解説します。衣服による気候の調節と省エネルギー(暑さ寒さに応じた着方、クールビス・ウォームビズなど)、有害紫外線と健康の関わりや衣服による紫外線対策について、衣服のリユース・リサイクルなど、環境保全に関わる衣生活の問題について考えてみましょう。

英語教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

英語教育人間の言葉の能力について:母語の獲得、外国語の習得と脳のはたらき

大嶋 秀樹(おおしまひでき)

英語教育講座(英語科教育/言語心理学)

児童・生徒(小・中・高・特) 教員(幼・小・中・高・特)

市民一般

ことばの能力は、生き物の中で、人間だけが持つ能力です。人間は、ことばを覚え、ことばを使ってコミュニケーションをします。ことばの能力には、音声、語彙、文法、意味の領域で、脳の活動が大きく関わっています。講義では、人間の持つことばの能力、ことばの能力と脳の働き、母語の獲得、外国語の習得について、最近の言及の知見にも触れながら、話を進めようと思います。

英語教育アメリカ小説を読む 林 直生

(はやしなお)

英語教育講座(アメリカ文学/アメリカ文化)

市民一般

詩や小説などの文学作品は、それ自体が独立して存在するのではなく、作家が作品を執筆した当時またはそれ以前の時代の社会や文化と密接な関わりを持っています。この講義では、主に 20 世紀前半のアメリカで書かれた小説を取り上げて、作品とその背景について見ていきます。

英語教育 言語学への招待板東 美智子

(ばんどうみちこ)英語教育講座

(言語学)

生徒(高)教員(幼・小・中・高・特)

市民一般

・なぜひとはことばをもっているのか(言葉の起原)・なぜひとは3歳ぐらいになるとことばをしゃべり始めるのか(普遍文法)・アメリカ人の子供のように学習すれば日本人も英語がぺらぺらになるのだろうか(言語臨界期仮説)・ことばのかたち・いみ・ならび(形態論・意味論・統語論)・会話の意図は会話に出てこない(語用論) などについて紹介します。

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4 出前講座 63

学校教育関係分野

分野 題名 講師 講座 対象 内容

学校教育 教育法規を読み解く藤村 祐子

(ふじむら ゆうこ)学校教育講座(教育制度学)

教員(小・中)

教育法規は、教育の枠組みとなる重要な要素です。様々な教育改革が進められる中で、教育法規に目を通し、教育に何が求められ、どの方向に進もうとしているのか、改めて考えてみたいと思います。

学校教育『エミール』を読む

〜生きるための教育と大人の役割について

三輪 貴美(みわ きみえ)

学校教育講座(教育学・教育哲学)

保護者

ルソーによって書かれた『エミール』は、人が教育をまさに「生きるために」必要とした時代のものであり、その思想は時代や文化の違いを越えて現代の私たちにも「生きること」の意味を考える材料を提供してくれます。それが書かれた時代状況等にも触れながら、“生きるための教育と大人の役割”について考えます。

学校教育記憶のしくみと効果教授・学習

井上 毅(いのうえ たけし)

学校教育講座(認知・学習心理学)

教員(小・中・高・特)

認知心理学の観点から人間の記憶システムに関して概説したうえで,効果的な学習につながる教授・学習上の工夫についてお話しします。

学校教育他者理解の

コミュニケーション心理学

蔵永 瞳(くらなが ひとみ)

学校教育講座(社会心理学)

教員(幼・小・特)保護者 市民一般

人間は、他者とたくさんのコミュニケーションをとりながら生活する生物です。本講座では、対人コミュニケーションのメカニズムとつまずきのポイント、人間が持つコミュニケーション能力の基盤である「他者の気持ちを理解する」力について、心理学の観点からお話します。

学校教育キャリア教育の

理解と推進若松 養亮

(わかまつ ようすけ)学校教育講座

(キャリア心理学)教員(幼・小・中・高・特)

進路指導や就職指導と混同されがちなキャリア教育について、その出自や必要性、中教審答申に示された内容について解説し、具体的な推進方法や運営上の課題について、これまでの実践例にふれながらお話しします。

学校教育子どもが「こころ」

に気づく時渡部 雅之

(わたなべ まさゆき)学校教育講座(発達心理学)

教員(幼・小・特)保護者 市民一般

幼い子どもたちは、自分自身の中にある「こころ」という存在を、十分に意識することができません。他の人間にも「こころ」があり、それが自分の「こころ」と同じ働きをしていることに気づくことで、他者への共感や理解が深まります。こうした「こころ」への気づきの発達過程についてお話します。

学校教育

 カウンセリングマインドを育む

芦谷 道子(あしたに みちこ)

学校教育講座(臨床心理学)

教員(幼・小・中・高) 市民一般保護者

さまざまなこころの問題が起こっている現代において、どのように人と関わればよいか、どのように子育てや子どもの心理的援助をすればよいか、悩みを抱えておられる方も多いことと思います。自己理解や他者理解のヒントとなるよう、カウンセリングの基本的な概念や、カウンセリングマインドについて、絵本や教材、体験を通して学んでいきます。

学校教育教師-生徒関係の変容とこれから

太田 拓紀(おおた ひろき)

学校教育講座(教育社会学)

教員(幼・小・中・高・特)保護者 市民一般

現在、教師と児童生徒との関係性における危機が広く叫ばれています。では、過去の教師と生徒の関係は良好だったのでしょうか。そもそも、問題視されはじめるのは、いつ頃からでしょうか。この講義では、わが国における教師-生徒関係の歴史的変化を概観し、その上で、今後の望ましい関係性のあり方について考えてみたいと思います。

幼児教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

幼児教育 子どもの育ちと絵本菅 眞佐子

(すが まさこ)幼児教育講座(幼児心理)

児童・生徒(幼・小・中・高)教員(幼)

絵本を読み聞かせてもらうことで、子どもは自らの内面世界を豊かに作り上げていくとともに、周りの人とつながることの楽しさやその大切さを感じとっていきます。子どもの育ちとの関連で注目される絵本をいっしょに楽しみながら、子どもの育ちと絵本の関係について考えてみましょう。

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4 出前講座

64 4 出前講座

障害児教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

障害児教育

障害の原因と最近の話題

江原 寛昭(えはら ひろあき)

障害児教育講座(小児神経学)

教員(幼・小・中・高・特)

近年、遺伝医学などの研究の急速な進展により、病気や障害の原因の解明が急速に進展しました。この講義では、それらの研究の成果を中心に、障害に関するトピックスを概説します。

障害児教育

ちょっとたちの発達と教育

窪田 知子(くぼた ともこ)

障害児教育講座(特別支援教育)

教員(幼・小) 保護者

私たちの身のまわりにいる“ちょっと気になる子どもたち(主に、発達障害の子どもたち)”のことをどう理解すればよいのか?家庭や学校でどのような関わりをすれば、彼らの健やかな育ちを支え励ますことができるのか?保護者とうまく連携するには…?などのテーマについて、一緒に考えてみたいと思います。

障害児教育

  障害のある子の発達と教育

白石 恵理子(しらいし えりこ)

障害児教育講座(障害心理/障害児

教育)

教員(幼・小・中・高・特)保護者

主として知的障害や発達障害をもつ子どもたちの発達と教育について考えます。(発達の時期等については、ご相談に応じます)。

障害児教育

支援の必要な子どと教育

羽山裕子(はやま ゆうこ)

障害児教育 教員(小・中)

通常学校に在籍する支援の必要な子どもたちは、学校生活のどこにつまずきを抱えがちなのか。どのような支援が可能なのか。一緒に考えていきたいと思います。

障害児教育

「気になる」児童・生徒の発達的理解と支援

松島 明日香(まつしま あすか)

障害児教育講座(障害児心理)

教員(幼・小・中・特)保護者

友達とトラブルになる、じっとしていられないなど、対人面や行動面において「気になる」児童・生徒の存在が注目されています。その支援と対応には彼らの困難さを発達的に理解していくことが重要です。本講義では、この時期の発達を通して「気になる」児童生徒の困難さをどのように理解し、対応していけば良いのかについて考えます。

環境教育関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

環境教育 湖沼の生態系石川 俊之

(いしかわ としゆき)環境教育講座(湖沼生態学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特) 教員(幼・小・中・高・特)

市民一般

湖沼の水の中には一見すると何もないように見えます。しかし、そこには目に見えない小さな生き物が活躍する実に豊かな世界があります。琵琶湖を例に生物と生息環境の関係について考え、自然環境を大切にするためにできることを考えます。

環境教育 食料生産と環境森 太郎

(もり たろう)環境教育講座

(園芸学/植物病理学)

児童・生徒(幼・小・中・高・特)教員(幼・小・中・高・特)

市民一般

私たちの生活に欠かせない食料生産と環境との関係について、食料生産は環境にどのような影響を与えているのか? 一方、食料生産は環境からどのような影響を受けているのか? の観点から講義し、持続可能な食料生産について考えます。

教職大学院担当教員関係分野

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

教職大学院

幼児の健康と生活奥田 援史

(おくだ えんじ)幼児教育講座(健康教育)

教員(幼) 保護者

幼児の健康と生活の関連について概説します。また、「幼児期運動指針」(文部科学省)を解説します。

教職大学院

学校の危機管理河口 眞佐男

(かわぐち まさお)教育実践総合センター

(学校管理)教員(幼・小・中・高・特)

今日、学校をとりまく環境には様々な危機が存在します。児童生徒の安心安全を守ることが何より最優先課題です。最近の国の動向をふまえ、近年の事例から、事件・事故の発生前、発生直後、発生後の学校管理について取るべき対応について分析・検証し、安全教育、安全管理、組織対応の内容や課題について考えていきます。

教職大学院

社会科の学力とパフォーマンス評価

岸本 実(きしもと みのる)

社会科教育講座(社会科教育)

教員(小・中・高)

社会科の思考・判断・表現の学力を身につけさせるために,パフォーマンス評価の指導と実践が求められています。授業の中の15~20 分の中心活動,1 時間そして 1 単元の授業など,生徒の思考・判断・表現のパフォーマンスをどのように指導し,評価すればよいのか,ワークショップ形式で考察します。

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4 出前講座 65

教職大学院

体育授業における指導と評価の一体化

辻 延浩(つじ のぶひろ)

保健体育講座(体育科教育)

教員(小・中・高)

子どもたちが学び合い育ち合う体育授業はどのように実現できるのか。いま教師に求められる考え方や指導性はどのようなものか、協同的な学びをどのようにデザインし、評価していけばよいのか等、学習集団づくりの理論と方法について考えていきましょう。

教職大学院

自然景観と自然災害/ 防災教育と学校安全

藤岡 達也(ふじおか たつや)

理科教育講座(科学教育/防災教育)

児童・生徒(小・中・高)教員(幼・小・中・高・特)市民一般

本講義では,次の3つのテーマを取り扱っています。テーマの選択等は可能です。① 自然と人間との関わり(持続可能な社会とこれからの環境教育)② 自然景観の形成・活用と自然災害(国立公園・ジオパークと近年発生した自然災害など自然の二面性について)③ 防災教育と学校安全・学校危機管理(子供を事件・事故災害から守るために)

教職大学院

授業実践の事例研究 堀江 伸(ほりえ しん)

学校教育講座(教育方法学)

教員(小・中)

学校で授業研究を実際にされることを前提に引き受けることにしています。ひとりの教師や何人かの教師が、ある目的で授業研究されるのを参観し、その後の検討会に参加させていただくという形式です。その目的は、問いませんが、以下の教科に限らせていただきます。国語科、社会科、図工・美術科、道徳、総合の授業です。授業を改善するという目的でも、校内研究のテーマに即した授業研究でもかまいません。進め方などは相談に応じます。

教職大学院

メディアと教育松原 伸一

(まつばら しんいち)技術教育講座

(メディア情報学)教員(小・中・高) 市民一般

①「メディアの本質を科学する」、②「メディアの利用を実践する」、③「メディアの内容を吟味する」という3つの視点から、メディア教育の在り方について講義する。①では,いろいろなメディアを取り上げ、②では,コンピュータやインターネットなどの情報メディアや、e-Learning/WBL(ネットワークやホームページ利用の学習)などの教育メディアを取り上げ、③では、メディアリテラシーを取り上げて、講義を行います。

教職大学院

家庭科教育の理論と実際矢野 由起

(やの ゆき)家政教育講座(家庭科教育)

教員(幼・小・中・高・特)

生涯にわたって自分らしく豊かな生活を送っていくためには、家庭科において何をどのように学べばよいでしょうか。ともに考えてみたいと思います。

教職大学院

算数・数学科の授業づくり畑 稔彦

(はた なるひこ)教員(小・中)

新学習指導要領で目指す「主体的・対話的で深い学び」について,事例をもとにワークショップ形式で考えます。

教職大学院

学校のビジョン形成と評価の手法

大野 裕己(おおの やすき)

教員(主に小・中・高校)

今日の学校経営改革下で各学校に求められるビジョン形成やその評価の考え方・手法について、学校組織開発や内外連携構築と関連して整理・検討します(講義・演習・コンサルテーション)。※学校関係者評価や学校第三者評価実施への関わりについても、本務に支障のない範囲(年度数件程度)で対応できます。

分 野 題 名 講 師 講 座 対 象 内 容

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5 教職探究講座

66 5 教職探究講座

 教職探究講座は、滋賀県内外の高校生を対象として、教員の仕事や子どもの発達特徴を理解すること

を通じて、教職への意識高揚を図ることを目的として実施されるものである。

 平成 30 年度は、長浜北高校、愛知県立高蔵寺高等学校の依頼を受け教職関係の講座を実施した。

・長浜北高校:大野祐己 教授(教職大学院)

・愛知県立高蔵寺高等学校 :大清水 裕 准教授(大学出張講義)

 また、この講座の重要なプロジェクトとして例年実施されている教職探究講座(東大津高校及び水口

東高校)を平成 30 年 12 月 19 日・20 日の2日間に渡り、本学部大会議室で実施した。高校生約 60 名

と本学部在学生で各高校 OB・OG の参加があり、多角的に教職への意識を高める機会であった。具体的

なプログラムは以下のとおりである。

<平成 30 年度地域教育支援室連携講座「教職探究講座」実施要項>

1 目的  教職に対する理解を深めながらモチベーションを高め、進路(教職)に対する視野を広げ、 

     その希望を確実なものとするために、東大津高等学校、水口東高等学校と連携して開催する。

2 対象  滋賀県立東大津高等学校、水口東高等学校、1・2年生(希望者 58 名)

3 主催  滋賀大学教育学部・滋賀県立東大津高等学校・滋賀県立水口東高等学校

4 期日 平成 30 年 12 月 19 日 ( 水 )・20 日 ( 木 )

5 会場  滋賀大学教育学部 本館3階 大会議室 (2日とも)

6 日程

(1)1日目:12月19日(水)

◆開講式 (14:00 ~ 14:05)  学部長 挨拶           (司会:糸乗 前 教授)

◆第1講 (14:10 ~ 14:40)  「教職への志が拓く教師の道」    (担当:河口眞佐男 教授)

       ◯教職とは

・人を教えること、人に教えることについて考える。

・教職を志す上で大切なこと

◆第2講 (14:45 ~ 15:35)  「授業と ICT」           (担当:岩井憲一 准教授)

        ◯ 教育における ICT 活用とは

・ICT 活用の重要性

・ICT 活用の効果

◯ 教育の情報化にむけて

・ICT 活用の取り組み

◆第3講 (15:40 ~ 16:30)  「教育学部で学ぶとは」       (担当:畑 稔彦 准教授)

 ◯教育学部とは

・各学校種の免許取得方法

・他学部との違い(教育学部の独自性)

・教育学部の可能性(就職)

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5 教職探究講座 67

     ◯先輩に学ぶ       

  東大津高校、水口東高校の卒業生OB・OGとの懇談交流会

・「私が滋賀大で学んでいること、感じていること」( 先輩からの話)

         ・「先輩への質問と応答」(高校生からの質問)

(2)2日目:12月20日(木)

◆第4講 (13:30 ~ 14:20) 「学校における心理的問題への教師による対応」

     ◯現代の子どもたちが抱える心理的問題 (担当:芦谷道子 教授)

        ◯仲間関係の発達的変化

        ◯教師による関わりと支援

          

◆第5講 (14:25 ~ 15:15) 「教師力の形成」          (担当:大野裕己 教授)

 ◯今なぜ教師力が求められているのか

         ・教師力とは

         ・求められるコンピテンシー

        ◯教師力を高めるために

         ・教師力の形成と大学での学び

         ・学び続ける教師と教師力

◆閉講式 (15:20 ~ 15:30) 修了認定証授与(代表)      (司会:糸乗 前 教授)

◆ Tea Party with Cake set & OB・OG(15:40 ~ 16:10)

        

        (講義の様子)                (Tea Party の様子)

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6 教育臨床研究

68 6 教育臨床研究

1.教育相談領域

 これまで同様、非公開での相談業務を継続した。相談場所としては主にカウンセリング室と研究室(芦

谷)を用いた。今年度は、教員からの相談、コンサルテーションの依頼が 10 件、スーパービジョンの

依頼が 20 件、本人や保護者からの教育相談依頼が 5件、学生からの相談が 11 件あり、相談延べ件数(1

月末まで)は 46 件であった。スーパービジョンとしてはグループを対象とした自治体への支援や、教

員になった卒業生を対象としたものも実施しており、例えば平成 28 年度より「野洲市ふれあい教育セ

ンター」にてスーパービジョン研修のアドバイザーを年2~3回継続して行っている。学生相談として

は、今年度は「公認心理師」資格制度開始に伴う進路に関するものが多く見られた。

2.大津少年鑑別所との連携事業

 2014 年度より開始した、大津少年鑑別所と連携事業を引き続き実施し、鑑別所に入所している少年を

対象とした学習教室に大学院生を派遣し、教養講話を行っている。時間は一回 30分~ 1時間ほど、頻度

は 1ヶ月に一度程度で、今期 11 回実施し、通算 35 回の実施となった。必要に応じて筆者が関係者と枠

組みについて検討し、担当院生にスーパービジョンを行っている。鑑別所からは子どもたちに貴重な体

験になっていると好評を得ており、また派遣講師にとっても貴重な学びの機会となっている。以下は担

当大学院生(M2 佐山みなみ)からの実施報告である。

(1) 教養講話実施状況 (受講者:各回1~2名)

第1回 4 月 10 日、 第2回 5 月 8 日、 第 3回 7 月 10 日

第4回 8 月 7 日、 第 5回 9 月 11 日、 第 6回 10 月 9 日

第 7回 11 月 13 日、 第 8回 12 月 11 日、 第 9回 1 月 8 日

第 10 回 2 月 12 日(予定)、 第 11 回 3 月 12 日(予定)

(2) 教養講話概要

【テーマ:人間の発達について】

<内容>人は生まれてから発達を繰り返し、現在に至る。個人差に留意しながら、誕生から幼児期の発

達について、発達体験やアニメ鑑賞などを通して、少しでも入所者の心に届くように講義を行った。

<所感>講話を受講する対象者の学力や発達段階にはばらつきが大きい。そのため、プリントにはルビ

を振り、視覚教材の工夫や、日常的になじみのあるもので例を示すなど、対話的で分かりやすい講話を

心がけた。講話を受講する中で、対象者の家庭環境や生育歴などから傷つき体験にならないように、特

に「愛着(母親とのむすびつき)」など親との関係性を伝える際には留意し、対象者の表情や反応など

の変化に注意した。また、発達には個人差があることを強調し、教科書通りではないことを伝えた。さ

らに少しでも対象者が勉強を楽しいと感じられるようにアニメの視聴時間を設けた。アニメでは、幼児

期の発達課題が描かれている場面を鑑賞し、よりイメージしやすいように必要に応じて説明を加えた。

アニメ視聴を講話時間の終盤に設定することで、少しでも楽しい時間であったと思ってもらえるように

工夫した。 対象によって反応は様々であったが、筆者が説明中に頷いたり、積極的に質問をしたりと、

多くの対象者が意欲的に参加している様子がうかがえた。また、乳児から幼児の発達的な行動例を示し

ていく中で、対象者の表情が徐々に穏やかになっていく様子も印象的であった。また、講話冒頭で「勉

強は好きですか?」と尋ねたところ、多くの対象者が首を横に振ったが、講話後のコメントからは「お

もしろかった」や「アニメでみて分かりやすかった」などの感想が多くあった。中には、「将来、赤ちゃ

んに色々試してみたい」など将来について書いている感想もあり、多少なりとも、本講話が楽しく、対

象者の未来への希望につながったのではないだろうか。今後の課題としては、講話内容を一般的な話と

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6 教育臨床研究 69

して進めていくことが挙げられる。発達について乳児や幼児の話をする中で、自分自身の過去を想起し

た対象者もいたのではないかと考える。個人的な情報を話すことが禁止されていたこともあり、自分自

身のことについて詳しく口に出す対象者はいなかったが、講話内容が親との関わりの話が多々あったた

め、その感じ方は様々であっただろう。講話中の対象者の表情や反応の変化を敏感に感じ取りながら、

講話を進めていくことが重要であると考えられる。最後に、筆者にとっても対象者とともに過ごした時

間はとても貴重なものとなった。このような機会を与えて下さったことに感謝の意を表する。

3.SKC キッズカレッジ(滋賀大キッズカレッジ)2018 年度連携活動報告

(1) 2018 年度 SKC キッズカレッジの教育学部との連携・協力

 昨年度、教育学部との包括的な連携、協力の協定書及び覚え書きを交わしたことにより様々な分野で

連携・協力を発展させる基礎ができました。教育学部の皆さんに感謝いたしますとともに当 NPO 法人と

いたしまして一層の努力を重ねていきたいと思っています。連携・協力の協定書の締結にともない当法

人が名実ともに独立法人であることを明確にするために正式の法人名を「SKC キッズカレッジ」に変更

し、滋賀県知事の再認証、法務局への名称変登記も終了しました。一方、「滋賀大キッズカレッジ」とい

う名称もすでに10年以上にわたり使用してきましたので地域や保護者の間ではかなり定着もしていま

すので今後も通称として使われることはあるのではないかと考えています。ご了解いただければありが

たく思います。

(2) 具体的な連携・協力

① 教育活動関係

・当法人事務局長の堀口真理子が 4月に当法人を退職して教育学部の特任講師に就任しました。

・窪島務が、大学院の授業科目「障害児教育方法特論・演習」「障害児心理学演習」の授業を担当しました。

・当法人理事の深川美也子が、8 月に行われた教員免許更新講座の発達障害に関する科目の講師を担当

しました。

② 4回生の「ボランティア参加」受け入れ。

学部からの要請を受け、卒業に必要な単位取得の機会として当キッズカレッジでのボランティア活動参

加の受け入れを行い無事修了しました。

③ 学生、大学院生のボランティア受け入れ。

現在、学部学生1名、大学院学生 3名のボランティアを受け入れています。見学だけでなく、子どもた

ちにたいして遊びや学習指導にもとりくんでくれています。

他大学学生1名もボランティアとして参加しています。

④ 地域貢献事業

地域に開かれた活動として、毎年実施している「子育てサロンぽかぽか」を今年度は隔月で実施しまし

た。発達障害に関する「講演とトーク」を 25 番教室にて春秋2回実施しました。

「子育てサロンぽかぽか」は、子育て中のお母さんたちに気軽に子育ての悩み、苦労などを話し合って

もらう場として提供をしています。現在は、隔月で清流荘をお借りして実施しています。毎回ボランティ

アの参加もあります。教育学部の芦谷先生に専門顧問になっていただいています。「講演とトーク」は、

発達障害のある子どもの保護者に子育ての経験をお話しいただきました。

1月 12 日には、「登校拒否・不登校問題滋賀県連絡会」と「発達障害と不登校」をテーマに 26 番教室

をお借りして懇談会を行いました。SKC キッズカレッジへの関心も高いということで多数の参加があり

ました。今後も連携と協力をしていくことを確認しました。今後、当法人としても、発達障害のある不

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6 教育臨床研究

70 6 教育臨床研究

登校児童生徒に対する居場所、フリースクール的な取り組みをすることが課題となっています。

                               (文責:窪島 務・堀口 真理子 )

4.滋賀県公立小学校との予防教育開発実践事業

 2016 年度より、滋賀県において「生きる力を育むモデル校」に指定されている公立小学校にて、予防

教育開発実践に取り組んでいる。1 年目は 6 年生を対象に、認知行動療法心理教育プログラムの一種で

あるマインドフルネスの小児版である「.b プログラム」を実施し、2年目は 3 年生を対象に、鳴門教育

大学予防教育科学教育研究センターが開発した「いのちと友情の学校予防教育」(トップ・セルフ、TOP

SELF: Trial of Prevention School Education for Life and Friendship)を実施した。今年度は3年生、

4年生を対象に、昨年から引き続き TOP SELF を実施し、自己評価意識と抑うつに対する効果検証を行っ

た。実施時期は 10 ~ 11 月、各学年 4回ずつ実施した。抑うつ度に関しては低減効果がみられ、また学

年によって効果に性差も見られた。プログラム実施には各学年の発達段階や特徴を捉える必要性がある

と考えられ、今後もプログラムの修正をしながら継続実施の効果を検証したいと考えている。

 【プログラム操作目標】

第 1回 :正(楽しい、嬉しいなど)の出来後を想起し、正感情を高めることができる

第2回 :自己の長所を探すことができる

第3回 :他者の長所を探すことができ、他者の価値を肯定することができる

第4回 :自分の夢、将来について考えることができる 

 

 

(文責:芦谷 道子 )

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1.今年度の取り組み

 以前より利用されている技術の最新技術への導入という観点から、今回は「CSV(Comma Separated Values)」

の応用例として「CSVの人工知能(AI)への導入取り組み」について紹介します。

2.CSV形式について

 まず CSV形式について少し紹介します。CSVとは Comma Separated Valuesの略で、前回の年報[1]でもお伝

えしましたが、その際の図1を再度提示しますと、下記のように各データがカンマで区切られたテキストです。こ

れについては Excelでもなじみがあると思います。このテキストを「.csv」の拡張子を付けて、例えば「score.

csv」のような名前でファイルに保存してExcelに読み込ませると、そのままExcel上での編集が可能です。

   

“No.”, “Name”, “Score”

“1”, “佐藤”, “90” “1”, “佐藤”, “90”

“2”, “鈴木”, “68” “2”, “鈴木”, “68”

“3”, “山田”, “72” “3”, “山田”, “72”

  図1(a) CSV形式の例(項目名なし) 図1(b) CSV形式の例(項目名あり)

 この形式の一番のメリットは、Excelで表組み等の作成・編集が可能なことと、テキストファイルですからメモ

帳等のテキストエディタでも作成・編集が可能だということです。すなわち、比較的簡単なプログラムでデータ

処理が可能となりますから誰でも取り組みやすく、小規模な簡易データベースプログラムでしたら、十分にその

性能を発揮することができます。(ここで、一行分をレコード(例.“1”, “佐藤”, “90”)、レコード内の半角

のカンマ「,」で区切られた各項目をフィールド(例.“佐藤”)と呼びます。また、カンマやダブルクォート自体

をデータとして扱いたい場合を考慮すると、CSVではなくタブを区切り記号として利用するTSV(Tab Separated

Values)を用いるのもいいでしょう。)

3.人工知能(AI)への導入取り組み

 ここで、この CSVの用途について少し考えてみたいと思います。例えば、図2のようにデータの並びに役割を

もたせます。(わかりやすいように表形式で示します。)

3.1 機械学習のためのデータ

 図2は機械学習に用いるデータの並びの例です。(実はこの例は機械学習における教科書的な存在です。)各

レコードの最終フィールドを独立変数、それ以外を従属変数として定義します。各フィールドはSepal.Length(ガ

クの長さ)、Sepal.Width(ガクの幅 )、Petal.Length(花弁の長さ)、Petal.Width(花弁の幅 )、Species(品種 )

となります。これはアヤメ(iris)の花の特徴である前4つの数値フィールドからどの品種なのかを判定するため

7 情報教育研究

7 情報教育研究 71

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のデータの一部です。

 このようなデータは構造も簡単であることから、例えば既存のデータセットからフィルタリングすれば、容易に

集めることが可能です。

3.2 簡易知識ベースとしての応用

 先程の図2を拝借して、従属変数と独立変数のデータを図3のように解釈して取り扱ってみます。

 

If Sepal.Length = 5.1,Sepal.Width = 3.5,Petal.Length = 1.4,Petal.Width = 0.2

 then Species = “Iris-setosa”

  「もし、Sepal.Length(ガクの長さ)が5.1、Sepal.Width(ガクの幅 )が3.5、

  Petal.Length(花弁の長さ)が1.4、Petal.Width(花弁の幅 )が 0.2であれば、

  Species(品種 )は“Iris-setosa”となる。」

図 3 知識の例

 これは、第2世代のルールベース人工知能システム(今は第3世代)の知識の例ですが、知識の構造が大変

シンプルであることから、ある程度機能を絞って実用性を優先すれば、このように利用するルールベース人工知

能システム自体も容易に構築可能です。

4.今後に向けて

 本稿では、人工知能に利用可能なデータ形式としてCSVを紹介しました。CSVは Excelだけでなくテキストファ

イルとしても扱うことができますので、テキストファイル処理ライブラリ等を利用してプログラミングすることで比較

的簡単に制御可能となります。特に昨今注目されている機械学習は例えばGoogle 社のTensorFlow 等のように、

充実したライブラリや環境が用意されていますが、学校現場ではまだまだ具体的にどのように用いるべきか広く

知られていないと言っても過言ではないでしょう。

 しかし、人工知能や機械学習の注目度を鑑みると、プログラミング教育や教科「情報」等においても、これ

らを無視した教育は次第に難しくなっており、教員の側としてもなんらかのデモンストレーションについても対応

する必要が求められようとしています。そのような中でCSV形式のファイルは構造が簡素ながら実用性が高いので、

ぜひご利用を検討していただければ幸甚です。

参考文献

[1] 岩井憲一:情報教育研究部門報告,教育総合実践センター年報,No.1,pp.88-89,2018.

https://www.edu.shiga-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/72d684797692f284cfdc77e60e31f80a.pdf,

(2019 年 2月6日アクセス)

  (文責:岩井 憲一)

7 情報教育研究

72 7 情報教育研究

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 教育参加カリキュラムは平成17 年に始まり,今年で14 年目を迎える。1年次の教育参加プラニング・事前

観察,2年次の基本実習事前学習・交流実習,3年次の基本実習(教育実習)・教育実習中間指導,教育実習

終了後(3年次の秋学期と4年次)の発展実習,自主参加体験という滋賀大学のすべての教育参加カリキュラムを,

原則として4年間,積み上げ式に体験するプログラムである。特に、地域実習(平成17 年から始まった栗東実習,

平成 25 年度から始まった守山実習、平成 30 年度から始まった大津実習)では「地域の公立学校における教

育支援活動を通して実践的力量を高める」という目的に則り,実習校,教育委員会,大学とが連携して行っている。

1.教育参加プラニング

 1回生の教育参加プラニングは、グループ学習を通して,将来の目標を設定し,これからの4年間の学びを

計画させるものである。プラニング作業は,個々の学生の立場から,教育参加カリキュラムにおけるそれぞれの

実習の位置づけを明確にし,目的意識をもって実習に取り組むことを容易にしていると考えられる。

2.事前観察

 事前観察は,交流・基本実習の事前指導として附属学校での授業参観等(事前観察)を行う,1回生の活

動である。交流・基本実習を行う前に附属学校の日常に触れ,教員としての心構えや,学校の現状を体感する

機会になっている。この事前観察の事前指導は次の項(教育実習支援 その2)で述べる。

3.交流実習

 交流実習は,学校行事等における準備や運営に指導者の立場から体験的に関わる実習である。今年度の2

回生は,小学校では校外体験や運動会,中学校では体育祭や合唱コンクール(文化祭)の指導補佐を行った。

児童生徒とのふれあいを通して,先生方が学校行事等をどのように準備し,どのような配慮をしながら実施して

いるのかを実践的に学んでいる。

4.基本実習                     

 3回生になると,交流実習を行った学校で4週間の基本実習

を行う。具体的には,児童生徒の生活指導,授業観察,(研究)

授業,一日担任などである。基本実習では,個別の児童生徒の

対応にとどまらず,クラス全体を視野に入れて,児童生徒との関

係を作っていくこと,授業を進めていくことが求められる。また,

公立学校での実習においては,多様な児童生徒や様 な々課題

を抱えた児童生徒と向き合うことで,より具体的な対応を学ぶこ

とができる。この基本実習の事前指導は次の項(教育実習支援 

その2)で述べる。

5.サポーター活動(自主参加体験・発展実習) 

 地域実習では、基本実習の事前・事後指導の一環として,基本実習の配属校で3年次の3月まで原則として

週1回のサポーター活動を行う(栗東実習3回生は全員必修,守山実習及び大津実習3回生は希望者のみ)。基

本実習前の活動は,児童生徒や先生方との関係をつくることに重点を置き,6月から10月までの実習期間中は,

児童生徒との信頼関係の形成,担当教員との授業の打ち合わせ,授業構想・指導案の確認等のために欠かす

ことのできない活動となっている。そして,基本実習修了後の活動は,基本実習で学んだ成果をいかして,児

童生徒や先生とより深く関わり,学校の教育活動に積極的に参加することを目的としている。なお,基本実習前

と実習期間中のサポーター活動は自主参加体験として,実習後のサポーター活動は発展実習として単位申請する

ことができる。また,学生が希望すれば,基本実習の配属校で4年次になってもサポーター活動を続けられる。

6.大学の支援体制

 学生への支援体制は多岐にわたっているが,以下の3つについて述べる。1つ目は,実習中の支援である。

地域実習校での教育実習

8 教育実習支援(その1)

8 教育実習支援(その1) 73

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地域実習では、栗東守山実習担当の学部教員が学生の授業を参観したり,学生から実習の様子を聞いたりして,

技術面,精神面への支援を行っている。また,基本実習を行う3回生には,第1ステージ(6月)と第2および

3ステージ(9・10 月)の間に,教育実習中間指導を実施している。教育実習中間指導では,それぞれの実

習校での経験を語り,共有することで,前ステージの課題を見つけ,次ステージに向けての目標を明確にするこ

とを目指している。

 2つ目は,実習後の支援である。基本実習と教育参加プラニングが終了する頃に,各専修専攻毎に教育実習

報告会を開催している。3回生が基本実習の成果を発表し,それぞれの経験を振り返る機会を提供している。

また,1回生や2回生は,上回生の発表や彼らとの意見交流を通して,次に行う実習の情報を得ることもできる。

 3つ目は,サポーター活動への支援である。週1回の  

サポーター活動による学びを充実させるため,3年次の

基本実習履修前の段階から発展実習のプログラムへの参

加を認めている。具体的には,学生たちが日々 の活動を

記録し,公開,共有するためのウェブ掲示板SULMS

(滋賀大学・学習管理システム)の利用を行っている。

SULMSは,学生一人一人が日々 の実践を整理し,振り

返るために活用されている。さらに,学部教員が,SU

LMSに書かれた学生の記録を閲覧し,アドバイスを書

き込むことで,学生の振り返りがより有意義になるよう手

助けしている。このように大学が学生のサポーター活動

の振り返りを支援する取り組みを充実させることで,学生

が目的意識をもってサポーター活動に臨みやすくし,活動を続ける動機づけを見出しやすくしていると考えられ

る。

7.今後にむけて

 今後,重点的に取り組むべき課題は,次の3点である。第1に,教育参加カリキュラムの運営や改善について,

大学と実習校がより密接に連携して行うシステムを充実させることである。

 第2に,学生のニーズを踏まえつつ,協力自治体・協力校の受入体制や大学のサポート体制を洗練させ,サポー

ター活動がさらにしやすい環境を整えることである。

 第3に,これからの4年間を考えるために必要な情報を提案するなど,学生がプラニングをしやすくするため

のきめ細やかなサポートを行うことである。

  (宮嶋 國彦)

中学校でのスクールサポーター活動

8 教育実習支援(その1)

74 8 教育実習支援(その1)

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 教育参加カリキュラムを円滑に取り組めるよう、1回生で行う事前観察のための事前指導、3回生の

基本実習のための事前指導(2回生で実施)基本実習後の事後指導(3回生で実施)、4回生では教職実

践演習をおこなっている。

1.事前観察のための事前指導 8月 21日

 各校園での観察実習日

小学校:8月 31 日、中学校:9月 5日、幼稚園:10 月 9,10 日、特別支援学校:9月 5日+ 0.5 日

 【内容】

    1   9:00~ 9:40   求められる教師・メモの取り方

    2   9:40~10:00   授業を見る視点と観察・記録及び分析の仕方

    3  10:20~12:00   DVD 視聴による授業観察・記録・分析 

    4  13:00~14:00   授業分析・グループ協議

    5  14:05~14:35   まとめ

    6  14:40~16:00   観察実習オリエンテーション

       14:40~14:55   各学校担当者の紹介

       14:55~15:00   観察実習の諸注意

       15:00~16:00   校種別学校説明

2.基本実習のための事前指導(教育実習基礎)7月 31 日~ 11 月 1 日

A. 本指導について

  「教育実習基礎」の受講を教育実習の履修条件に位置付け、実習参加予定者全員が必ず受講する。

B.「教育実習基礎」の指導について

(1)教育実習につなぐために必要な指導内容

 ①授業づくりと教材研究についての講義

         (授業の構想と授業のイメージ:指導計画と授業過程)

 ②指導案の大切さと指導案の様式、指導案の書き方の具体についての講義

         (指導後、指導案作成に係る課題を提示・・・中学校は各教科)

 ③模擬授業の学習指導案および教材等の作成(各グループごとに集まって作業)

④模擬授業の実施と指導Ⅰ(模擬授業および指導案に関する指導)

 ⑤模擬授業の実施と指導Ⅱ(        〃       )

(2)指導の場と時間の確保

             指導者    平成 30 年度実施日

 A 来学指導1・・・①と②を指導 附属教員 7 月 31 日 ( 火 )、8 月 1 日 ( 水 ) 9:00 ~ 12:00

B グループ作業・・・③の活動 大学教員  8月 17 日 ( 金 ) 9:00 ~ 12:00

 C 来学指導2・・・④を指導 附属教員 8 月 23 日 ( 木 ) 9:00 ~ 12:00

 D 来学指導3・・・⑤を指導 附属教員 小:10 月 25 日 ( 木 ) 14:30 ~ 17:00

                       中:10 月 4 日 ( 木 ) 18 日 ( 木 ) 11 月 1 日(木)

9 教育実習支援(その2)

9 教育実習支援(その2) 75

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3.基本実習後事後指導 11 月 15 日、29 日

【テーマ】 実習を通した成果を振り返り、改善と協働できる教師を目指す

【内容】・教育実習を手掛かりに振り返り思考と改善の態度ができるようになろう

   ・仲間と協働し、仲間同士で育ちあう機会にしよう

【日程】14:30~14:40     はじめに

14:40~15:10     自己評価書への記入

15:20~16:50     「実習を終えて」グループ協議

課題1:「教育実習で何を学び、何が自分の課題になったのか」

課題2:「実習を終え、教職への志向・迷いと これからの自分の生き方」

16:55~17:25     グループ別協議の報告  キーワードで   

大講義室 :1班から 20 班

中講義室 :21 班から 40 班

4.教育実践演習 11 月 22 日、12 月 13 日

 教職を目指す 4回生の指導として具体的な教育活動を想定とした演習をおこなった

 【内容】

11 月 22 日 14:30~ 効果的な学級経営

15:30~ 4月 8日を迎えるために

               学級開き

               親身になること 

               愛着ある学級づくり

 12 月 13 日  15:00~ 授業の基本

       16:00~懇談会・親対応

              電子黒板の利用の仕方

               児童・生徒の救急対応

本年度 1回生から 4回生まで教育参加プログラムを見据え

た事前指導や事後指導を行ったが、何よりどの指導も学生

に意欲を持たせること、ビジョンや見通しを持たせること

に配慮した。演習方式を取り入れたり、指導案を実際に作

成させてのぞませることで机上の議論にはならないように

工夫した。グループ協議などで課題についてそれぞれの卒

業までのスパンの中で何をすればよいのかも感じさせるこ

とができた。課題として個々の学生によって思いや捉え方

が違うのでもう少し人数を少なくしたり、いつでも相談で

きる教育相談的な機会も学生にはサテライトとして必要と感じた。次年度も指導の内容の更新と指導の

工夫改善に留意していきたい。

(狩野 秀樹 )

9 教育実習支援(その2)

76 9 教育実習支援(その2)

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1.事業名および担当者

  事業名:キャリア支援事業  担当者:学部教員 松岡尚文

2.事業の目的

  面談による助言などをとおして学生一人ひとりが充実した学生生活を送り,将来の職業人としての 

 資質向上が図れるよう支援する。また,教員採用試験受験に備えた助言や指導を行う。

3.事業の概要

1)主な取り組み

①グループ・ガイダンス

 1回生全員が対象。5名前後のグループを編成し,5月の連休明けから7月中旬までに授業の空き時

間を利用して研究室で実施。ガイダンスの時間は約45分。キャリア支援の内容紹介のほか,大学生活

を送るうえでの助言や卒業生の進路状況の説明などを行う。いつでも気軽に相談できるという安心感を

与えることを第一目標にしている。また,本学へ入学した理由,大学生活の満足度,教職を目指す気持

ちなどについてアンケート調査(下に結果の一部を掲載)を実施し,個人相談などを行う際の基礎資料

としている。

②進路相談

 学部生・院生の希望者が対象。教職に就くことへの不安,教職以外の就職,大学院への進学,教員採

用試験の校種や受験する自治体の選択などに関する個人相談を行う。

③採用試験対策の指導

主に3・4回生と院生の希望者が対象。出願書類の添削や論作文,面接試験の対応などの全体指導と

個別指導をしている。希望者が一定期間に集中するため,時間確保が課題となっている。

④フォローアップ・ガイダンス

 教員採用試験の不合格者のうち希望者が対象。今後の進路希望について十分に話を聞き,場合によっ

ては進学や講師登録などについて助言するとともに,次年度の採用試験に向けた具体的な対策などにつ

いても助言している。

2)アンケート調査結果の一部

①「あなたが本学へ入学した理由は何ですか」(1つ選択)

   1 教職を目指しているから 2 入試難易度や受験科目などが自分にあっていたから

   3 国立大学法人だから 4 親や高校の教師などが勧めたから

   5 特に理由はない     6 その他

回答   年度 平25 平26 平27 平28 平29 平30

1 68.4%  70.4% 65.3% 68.7% 71.9% 67.2%

2 7.2% 6.4% 10.5% 9.6% 8.7% 12.4%

3 12.0% 12.4% 14.9% 13.7% 11.6% 9.5%

4 5.6% 4.4% 4.8% 4.4% 4.1% 6.2%

5 1.2% 0.4% 0.8% 0.4% 0.8% 1.2%

6 5.6% 6.0% 3.6% 3.2% 2.9% 3.3%

10 キャリア支援の取り組み

10 キャリア支援の取り組み 77

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②「あなたは本学での大学生活に満足していますか」(1つ選択)

1 大変満足している    2 ほぼ満足している

3 やや不満である      4 大いに不満である

回答   年度 平25 平26 平27 平28 平29 平30

1 28.8% 24.8% 37.1% 25.7% 24.8% 33.6%

2 66.4% 66.4% 57.7% 69.5% 67.8% 61.0%

3 4.4% 7.6% 4.4% 4.8% 7.4% 5.0%

4 0.4% 1.2% 0.8% 0% 0% 0.4%

1+2 95.2% 91.2% 94.8% 95.2% 92.6% 94.6%

3+4 4.8% 8.8% 5.2% 4.8% 7.4% 5.4%

③「現時点であなたの教職を目指す気持ちはどの程度ですか」(1つ選択)

   1 ぜひ教職を目指したい  2 できるだけ教職を目指したい

   3 教職以外を目指したい  4 どうするか決めていない

回答   年度 平25 平26 平27 平28 平29 平30

1 59.5% 58.8% 58.9% 66.3% 66.9% 56.0%

2 23.8% 30.0% 32.3% 23.7% 26.9% 31.1%

3 6.8% 2.8% 3.2% 2.8% 2.1% 6.6%

4 9.9% 8.4% 5.6% 7.2% 4.1% 6.2%

1+2 83.3% 88.8% 91.2% 90.0% 93.8% 87.1%

3+4 16.7% 11.2% 8.8% 10.0% 6.2% 12.9%

④「あなたは週1日以上定期的にアルバイトをしていますか」

   1 している 2 していないが,する予定である 3 していないし,する予定もない

回答  年度 平29 平30

1 66.1% 68.5%

2 28.5% 26.6%

3 5.4% 5.0%

1+2 94.6% 95.0%

⑤「あなたは奨学金を受けていますか」

   1 受けている   2 受けていない

回答  年度 平29 平30

1 28.1% 32.0%

2 71.9% 68.0%

4.今後に向けて

 明確な職業意識、適切な教育観や使命感の形成に寄与するとともに,将来の職業人としての資質向上

が図れるよう支援していく。また,厳しい教員採用試験に自信を持って臨めるように指導していく。 

                                        (松岡 尚文)

*「1」と回答した者の従事時間は,週あたり

約2.6日,1日当たり約3.9時間が平均

値(平成30年度)

*「1」と回答した者のうち金額を記入した者

の1か月あたりの平均値は、約4.7万円

(平成30年度)

10 キャリア支援の取り組み

78 10 キャリア支援の取り組み

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   (春学期)

教職キャリア教育支援 教育実習支援 石山プロジェクト 共同研究 ・ 年報

4月

・新入生対象グループガイダンス諸準備

(実施時間希望調査・日時連絡等 4 ~ 5 月)・大学推薦選考面接(4 ~ 5 月)・進路指導(通年)                           

・ 実習担当教授と打合せ・ 教育実習委員会・ 守山・栗東市教委挨拶・ 教委打合せ(栗東・大津)・ 実習連協(栗東・守山・附属)・守山実習オリエンテーション・京都発展実習説明会・ 守山・栗東スクサポ登録

(サクセス)・ 交流実習 ・ 基本実習オリテ・ 開始式(守山・栗東)・ 京都サポートセミナ-オリテ ・ 大津市実習市教委と打合せ 

・ 春学期実施の打合せ <事務>      ・ 石山 SS 春学期募集

(ポスター作成)

<事務>・年報第 1 号 HP 掲載

5月

・新入生対象グループガイダンス(5 ~ 7 月)

・京都セミナー会議・実習校挨拶(栗東・守山・大津・大山﨑小・宇治中)・ 滋賀県採用大学推薦面接・ 院生面接指導・ 教育実習訪問(守山・栗東)サクセス説明会  

・ 退職女性校長会への協力依頼・石山 SS 春学期募集締切5/9・石山 SS 打合せ会 ( 幼・小とも 5/11)・石山幼省察会<事務>・ 石山 SS 打合せ会について参加者へ連絡    

6月

・採用試験対策指導(小論文・面接)・模擬集団討論指導の全体講義         ・ 新入生対象グループガイダンス

・ 教育実習訪問(守山・栗東)・ 学生面談<事務>                 ・ 実習アンケート結果作成   ・H30 年度実習スケジュール一覧作成         

・石山幼 SS 省察会 ・石山小 SS 省察会

<事務>        ・ 共同研究案内通知

7月

・採用試験対策指導(小論文・面接)・ 1回生・4回生面談

・ 学生面談・3 回生実習中間オリテ     ・ 教育実習委員会                 ・ 地域実習オリエンテーション ・ 実習基礎

・石山幼 SS 省察会 ・石山小 SS 省察会  

・共同研究締め切り<事務>・共同研究応募の一覧作成と結果通知(第1報・第2報)

8月

・新入生アンケート調査集計・ 採用試験対策指導

(自己 PR 文・面接)・フォローアップ

・ 実習基礎・ 観察実習事前指導・ 免許更新講習会       ・ 学生面談 ・ 交流実習開始式      <事務>・ 観察実習事前指導、資料作成、印刷他         ・ 志望調査結果グラフ作成

9月

・採用試験対策用資料の見直し・フォローアップ

・小学校観察実習(栗東・守山・附属)・ 教育実習訪問(栗東・守山・附属)<事務>・実習関係(旅費申請)

・石山幼 SS 省察会 ・石山小 SS 省察会 <事務>・石山プロジェクト秋学期募集(ポスター作成・応募者受付 , 一覧作成等)

11 業務報告

11 業務報告79

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教職実践講習探究探究講座 出前講義・校内研究 滋賀県総合教育

センターとの共同研究学力向上

プロジェクト

4月

<事務>

・講師依頼について担当教

授に連絡       

・問い合わせについて回答

(各担当より)   

・ファイリング(通年)

・トータルアドバイザーとして連携総合窓口を担当 河口先生 (通年)

5月

・教職探求講座について(東大津高等学校より依頼) <事務>・本館 3 階大会議室予約

<事務>       ・出前講義の加筆・修正等締め切り 5/25(HP 更新に伴い)

6月

<事務> ・HP 更新「2018 年度 出前講義一覧」

7月

<事務>

・高体連携の準備

8月

9月

11 業務報告

80 11 業務報告

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   (秋学期)

教職キャリア教育支援 教育実習支援 石山プロジェクト 共同研究 ・ 年報

10月

・フォローアップ・3 回生教員養成研修講義

・実習基礎【中】(10 ~ 11 月)・実習基礎【小】・栗東教育実習訪問・教育参加ガイダンス

・石山幼 SS 打合せ会       ・石山小 SS 打合せ会    ・石山 SS 秋学期募集締切<事務>          ・石山 SS(幼・小)参加者ネームプレート、一覧作成、連絡等)     

11月

・教職大学院生対象小論文指導・フォローアップ

・ 教育実践演習(11 ~ 12 月)・ 学級担任実践演習

(11 ~ 12 月)・事後指導Ⅰ・Ⅱ(3 回生)・学生面談        ・教育実習委員会     <事務>   ・事後指導Ⅰ・Ⅱ、アンケート作成(サクセス)、集計、グラフ作成、印刷他  

・石山幼 SS 省察会  ・石山小 SS 省察会

12月

・教職大学院生対象小論文指導(12 ~ 3 月)・フォローアップ

・栗東実習連協・守山実習連協      ・院生面接指導      <事務>・1回生アンケート集計

・石山幼 SS 省察会  ・石山小 SS 省察会

1月

・集団討論対策小論文指導 ・大津市実習連絡協議会  ・教育実習委員会      ・平成 30 年度実習まとめ

・石山幼 SS 省察会 ・石山小 SS 省察会

<事務>・年報原稿依頼(共同研究、センター業務)・業者さんと打合せ          

2月

・3 回生スタートアップ事業講義

・実習基礎(補講)・平成 31 年度実習計画立案(2 ~ 3 月)<事務>・実習事後Ⅰ ・ Ⅱレポート返却(準備と学生へ連絡)

・石山幼 SS 省察会 ・石山小 SS 報告会 <事務>      ・ 石山幼 SS 省察会日程連絡・石山 SS 報告会の出欠につい連絡・お礼状について

<事務>・年報原稿締切 2/18・年報原稿締切確認

3月

・ 次年度新入生対策グループガイダンス用資料作成

<事務>・年報関係業務・校正・年報 HP 掲載前の確認    

11 業務報告 81

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教職実践講習探究探究講座 出前講義・校内研究 滋賀県総合教育

センターとの共同研究学力向上

プロジェクト

10月

・教職実践演習        10 月 18 日(河口先生)

11月

・教職実践演習       11 月 8 日(河口先生)    <事務>          ・教職探究講座準備(12 月 19 日・20 日)・原議書提出 ( 矢倉副事務長 )           ・参加学生の認定証作成

12月

<事務>・ 教職探究講座の準備   

(資料印刷・来校へ連絡) ・Tea party 参加人数、生協へ連絡            ・教職探求講座 OB 参加学生へUSB、クリアーケース、クリアーホルダー(お礼として)

・豊郷町教務主任会(大野・畑先生指導 助言)

1月

2月

・豊郷町教務主任会(大野・畑先生指導 助言)

3月

<事務 >           ・教職探究講座へご協力いただいた先生方へお礼

<事務>・ 出前講座にご協力いただいた先生方へお礼

11 業務報告

82 11 業務報告

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〒520−0862 大津市平津二丁目5番1号 T E L 077−537−7993(直通) F A X 077−537−7909https://www.edu.shiga-u.ac.jp/cerp/

教育実践総合センター年報 第2号2019年3月発行滋賀大学教育学部 教育実践総合センター

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教育実践総合センター年報 第2号 滋賀大学教育学部教育実践総合センター