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微量のTotal RNAおよびエクソソーム由来の RNAを用いたsmall RNA-seq 株式会社DNAチップ研究所 本報告は国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野 小坂展慶、落谷孝広 両先生のご厚意により作成いたしました。 通常のプロトコールでは、1μgのTotal RNAまたは1μgのTotal RNAから精製したsmall RNAを使用します。しかし、実験対象のサンプルが微量しか得られない場合やエクソソーム 由来のRNAを用いて実験を行いたい場合があります。 本報告では、微量のRNAを用いたsmall RNA-seqについてご紹介します。 マウス細胞株より抽出したTotal RNAおよび、エクソソーム由来 のsmall RNAを使用しました。全サンプルとも極めて微量のた め、使用可能な最大量を用いて実験を行いました。サンプル の濃度および品質のチェックは、分光光度計NanoDrop™ (Thermo Scientific)およびバイオアナライザ(Agilent)を使 用し、スタート量決定にはバイオアナライザを用いました。 HiSeq 2000(illumina)を用い、今回の6サンプルを含め12サ ンプルを1レーンにプールし、50bp シングルエンドリードの条件 でシークエンスしました。 得られたリードは、 small RNAのアノテーションが整備されて いるマウスゲノム mm9にアライメントしました。アライメントツー ルはCOBWeB (Agilent)を用い、既知small RNAにアライメ ントされたリードの分類を行いました。 微量のTotal RNAの場合、切り出し精製を行ってmicroRNA 分画をシークエンスした方が、得られるリード数が3倍以上にな ることが確認できました。 エクソソーム由来RNAを用いた場合もTotal RNAと同等のリ ード数が得られていることが確認できました。 PR 記事 1μg以下のTotal RNAを用いた検討で、切り出し精製を行うと microRNAの割合が飛躍的に大きくなることが確認できました。 エクソソーム由来RNAを用いる場合、約200ngでTotal RNA と同等のリード数が得られていることが確認できました。 リードがアライメントされた領域のsmall RNAの分類を行いま した。Total RNAの場合、切り出した方が、microRNAの割 合が飛躍的に大きくなりました。エクソソーム由来RNAを用い た場合、microRNAの割合はTotal RNAで切り出しを実施 したものに近いことが示されました。 B Small RNAの分類 シークエンスライブラリの作製は、TruSeq™ Small RNA Sample Prep Kit(illumina)を用いました。 キットの推奨プロトコールでは、シークエンスライブラリにおける microRNA分画のゲル切り出しを行うことになっていますが、 本報告ではゲル切り出しの濃縮効果を検証するため、切り出 しを実施しない場合のシークエンスライブラリも作製し、 small RNAに占めるmicroRNAの比率の違いを検証しました。なお、 切り出しには、PippinPrep(日本ジェネティクス)を用いました。 22ntのmicroRNA分画は、両端にシークエンスアダプタを付 加した後に切り出し精製を行うので、実際には約125-175bpの DNAフラグメントをターゲットとして切り出しました。 所在地 〒105-0022 東京都港区海岸1-15-1スズエベイディアム5F Tel (代表) 03 (5777) 1700 (営業) 03 (5777) 1705 (技術サポートセンター) 03 (5777) 1688 URL https://www.dna-chip.co.jp/ E-mail [email protected] 次世代シークエンスのほか、マイクロアレイ、リアルタイム PCR、デジタルPCR受託も承っております。 実験に使用したRNA量 サンプル名 Total RNA-1 Total RNA-2 エクソソーム由来RNA-1 エクソソーム由来RNA-2 NanoDrop濃度(ng/μL) 72.26 66.05 104.79 111.58 バイオアナライザ濃度(pg/μL) 4621 19402 84000 93000 バイオアナライザスタート量(ng) Alignment Statistics Total RNA-1 (切り出しなし) Total RNA-2 (切り出しなし) Total RNA-1 (切り出しあり) Total RNA-2 (切り出しあり) エクソソーム由来 RNA-1 エクソソーム由来 RNA-2 Total number of reads Aligned reads all_count 3,487,203 1,437,313 1052 4,516,359 1,317,776 1046 20,493,566 10,786,608 1241 14,229,378 4,069,464 1163 23,763,385 9,312,980 1246 13,382,986 4,850,577 1177 19.19 88.12 240.48 250.04 Aligned reads; マウスゲノムmm9にアライメントされたリード数  all_count; リードがアライメントされた既知のsmall RNAの総数 Total RNA-2(切り出しなし) 36.0% 54.0% 8.0% 1.0% エクソソーム由来RNA-2(切り出しあり) 68.0% 3.8% 3.5% 24.6% エクソソーム由来RNA-1(切り出しあり) 81.5% 11.6% 3.7% 3.2% Total RNA-2(切り出しあり) 89.3% 1.4% 7.5% 1.8% Total RNA-1(切り出しなし) 52.1% 21.9% 6.2% 19.8% miRNA snoRNA snRNA tRNA Total RNA-1(切り出しあり) 85.4% 3.4% 9.1% 2.1% リード数の集計 1 サンプル リード数の集計とリードがアライメントされたsmall RNAの分類 を行いました。 5 結果および考察 6 まとめ 2 シークエンスライブラリ作製 3 シークエンス 4 データ解析 A リード数の集計 株式会社DNAチップ研究所

微量のTotal RNAおよびエクソソーム由来の RNAを …微量のTotal RNAおよびエクソソーム由来の RNAを用いたsmall RNA-seq 株式会社DNAチップ研究所

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Page 1: 微量のTotal RNAおよびエクソソーム由来の RNAを …微量のTotal RNAおよびエクソソーム由来の RNAを用いたsmall RNA-seq 株式会社DNAチップ研究所

微量のTotal RNAおよびエクソソーム由来のRNAを用いたsmall RNA-seq

株式会社DNAチップ研究所

本報告は国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野小坂展慶、落谷孝広 両先生のご厚意により作成いたしました。

通常のプロトコールでは、1μgのTotal RNAまたは1μgのTotal RNAから精製したsmallRNAを使用します。しかし、実験対象のサンプルが微量しか得られない場合やエクソソーム由来のRNAを用いて実験を行いたい場合があります。本報告では、微量のRNAを用いたsmall RNA-seqについてご紹介します。

マウス細胞株より抽出したTotal RNAおよび、エクソソーム由来のsmall RNAを使用しました。全サンプルとも極めて微量のため、使用可能な最大量を用いて実験を行いました。サンプル

の濃度および品質のチェックは、分光光度計NanoDrop™(Thermo Scientific)およびバイオアナライザ(Agilent)を使用し、スタート量決定にはバイオアナライザを用いました。

HiSeq 2000(illumina)を用い、今回の6サンプルを含め12サンプルを1レーンにプールし、50bp シングルエンドリードの条件でシークエンスしました。

得られたリードは、small RNAのアノテーションが整備されているマウスゲノム mm9にアライメントしました。アライメントツールはCOBWeB (Agilent)を用い、既知small RNAにアライメントされたリードの分類を行いました。

微量のTotal RNAの場合、切り出し精製を行ってmicroRNA分画をシークエンスした方が、得られるリード数が3倍以上になることが確認できました。

エクソソーム由来RNAを用いた場合もTotal RNAと同等のリード数が得られていることが確認できました。

PR 記事

1μg以下のTotal RNAを用いた検討で、切り出し精製を行うとmicroRNAの割合が飛躍的に大きくなることが確認できました。エクソソーム由来RNAを用いる場合、約200ngでTotal RNAと同等のリード数が得られていることが確認できました。

リードがアライメントされた領域のsmall RNAの分類を行いました。Total RNAの場合、切り出した方が、microRNAの割合が飛躍的に大きくなりました。エクソソーム由来RNAを用い

た場合、microRNAの割合はTotal RNAで切り出しを実施したものに近いことが示されました。

B Small RNAの分類

シークエンスライブラリの作製は、TruSeq™ Small RNASample Prep Kit(illumina)を用いました。キットの推奨プロトコールでは、シークエンスライブラリにおけるmicroRNA分画のゲル切り出しを行うことになっていますが、本報告ではゲル切り出しの濃縮効果を検証するため、切り出しを実施しない場合のシークエンスライブラリも作製し、small RNAに占めるmicroRNAの比率の違いを検証しました。なお、切り出しには、PippinPrep(日本ジェネティクス)を用いました。22ntのmicroRNA分画は、両端にシークエンスアダプタを付加した後に切り出し精製を行うので、実際には約125-175bpのDNAフラグメントをターゲットとして切り出しました。 所在地 〒105-0022 東京都港区海岸1-15-1スズエベイディアム5F

Tel (代表) 03 (5777) 1700(営業) 03 (5777) 1705 (技術サポートセンター) 03 (5777) 1688 URL  https://www.dna-chip.co.jp/E-mail [email protected]

次世代シークエンスのほか、マイクロアレイ、リアルタイムPCR、デジタルPCR受託も承っております。

■実験に使用したRNA量サンプル名Total RNA-1Total RNA-2

エクソソーム由来RNA-1エクソソーム由来RNA-2

NanoDrop濃度(ng/μL)72.2666.05104.79111.58

バイオアナライザ濃度(pg/μL)4621194028400093000

バイオアナライザスタート量(ng)

AlignmentStatistics

Total RNA-1(切り出しなし)

Total RNA-2(切り出しなし)

Total RNA-1(切り出しあり)

Total RNA-2(切り出しあり)

エクソソーム由来RNA-1

エクソソーム由来RNA-2

Total number of readsAligned readsall_count

3,487,203 1,437,313 1052

4,516,359 1,317,776 1046

20,493,566 10,786,608 1241

14,229,378 4,069,464 1163

23,763,385 9,312,980 1246

13,382,986 4,850,577 1177

19.1988.12240.48250.04

Aligned reads; マウスゲノムmm9にアライメントされたリード数  all_count; リードがアライメントされた既知のsmall RNAの総数

Total RNA-2(切り出しなし)

36.0%

54.0%

8.0%

1.0%

エクソソーム由来RNA-2(切り出しあり)

68.0%3.8%3.5%

24.6%

エクソソーム由来RNA-1(切り出しあり)

81.5%

11.6%3.7%3.2%

Total RNA-2(切り出しあり)

89.3%

1.4% 7.5%1.8%

Total RNA-1(切り出しなし)

52.1%

21.9%

6.2%

19.8%

miRNA snoRNA snRNA tRNA

Total RNA-1(切り出しあり)

85.4%

3.4% 9.1%2.1%

■リード数の集計

1 サンプル

リード数の集計とリードがアライメントされたsmall RNAの分類を行いました。

5 結果および考察

6 まとめ

2 シークエンスライブラリ作製

3 シークエンス

4 データ解析

A リード数の集計

株式会社DNAチップ研究所