8

花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見

  • Upload
    others

  • View
    7

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見
Page 2: 花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見

花鳥諷詠令和元年 7月■第376号―目 次

花鳥諷詠選集 木村 享史   2山田 佳乃   4

子規と漱石と私 6 九月十四日の朝   7

虚子研究 虚子宛書簡を読む(一)  明治二十三年三月三日林茂八郎書簡(封書) 黒川 悦子   10

この人の作品 村山  要   17

一頁の鑑賞 藤原  哲   18安田 豆作   19

賛助会員だより 河内野   20

風報   21

2019年度 新入会員 23

新刊紹介 24

地区行事開催日程表 27編集後記 28

「日本伝統俳句協会」と「花鳥諷詠」は公益社団法人日本伝統俳句協会の登録商標です。

Page 3: 花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見

― 2 ―

二句短評

一句目

―今年は不順な春であった。三月には咲き

揃った桜が、月が変わってからの冷たい雨に苛まれ続

けた。

 しかし其故に、四月の半ばを過ぎてもなお耐えてく

れた。万斛の思いを「よかりし」と言い止めた佳什。

二句目

―ゼンマイを巻いて振子の力で動かした柱時

計。遠い記憶にしか残っていない物が、今も頑丈に動

いていると仰る。

 今年は昭和九十四年、やがて百年が経つのである。

花冷もよかりし見頃続く日々

伊 賀 

永 井 二紗子

まだ動く柱時計や昭和の日

高 松 

池 田 裕 子

籐椅子の昭和平成令和へと

仙 台 

赤 間   学

朗報はすぐに来ぬもの永き日を

金 沢  篠 島 安 子

一色で無き一山の山桜

香 川 

明 田 紘 子

星空に祈る三月震災忌

宮 城

山家登志子

ふるさとへ花菜分けゆく一両車

福 岡

三坂 一生

花屑を乗せ引越しの荷の届く

市 川

抜井 諒一

すり鉢もすりこぎも古り木の芽和

福 岡

西村 榮子

たんぽぽ黄北上川の滔滔と

東 京

荒井 桂子

黄色とは光る色なり初蝶来

岡 山

伴  明子

病み抜かんための蜆を今朝も買ひ

七 尾

松本 松魚

一憂のありて余寒のはなれざる

松 阪

大西 さよ

昔はと切り出す話木瓜の花

名古屋

波多野富代子

児の一歩尻もちばかり春うらら

鹿児島

森園三枝子

下校児を寄り道させてゐる子猫

三 原

成末知歌子

漣の綺羅に目覚むる菖蒲の芽

刈 谷

青山 和生

日溜りの初蝶の黄の動かざる

高 松

柏  敏子

花種を蒔き改元を待つ心

高 松

村川喜久子

利休忌や目抜き通りに茶の老舗

防 府

藤井 汎水

●木村享史 選

入選六十句

特選五句

花鳥諷詠選集

Page 4: 花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見

― 3 ―

小さき手に小さきむらさき花すみれ

東 京

加川 尚美

挿し添へし枝の流れも雪柳

龍ヶ崎

油原めぐみ

曖昧なこの頃の空黄水仙

松 江

森木 八潮

ゆたかなる枝垂桜に次の風

北九州

元田 品子

歩行器の妻伴うて花の道

うきは

喜多川 昇

来し方の昭和平成初桜

新 潟

本間 百果

一水の光りて余花の谷深し

大牟田

鹿子生憲二

蘖も天を向きたる師の忌日 高 松

渡部 全子

観音の寺格は高し花の雲 大牟田 介弘 浩司

一枝づつ揺れて大揺れ雪柳

高 松 佐保美千子

思ひ立つ今日が良き日と菊根分

伊 賀

藤井 光子

春らしくとは晴れきらぬ空のこと

京 都

山﨑 貴子

故郷の桜の野山駆ける夢

福 岡

佐竹美輪子

囀の空の楽しくなる夜明け

高 知

掛川 敬子

ふるさとの駅に再会朝ざくら

大 分

平  英子

鶴帰る北へ北へと晴れ渡り

阿 南

湯浅 芙美

対岸は眠らぬ街の朧の灯

豊後高田

大波多美妃

叡山の夕日に染まる花の堂

草 津

竹内 恵子

惜春の影を踏みゆくスニーカー

神 戸

石角 節子

昏れかぬる富士むらさきや街灯る

府中(東京)

青島 麗子

風もまた花見日和となりにけり

宇 佐

水野 公明

新しき御代生きぬかん風光る

神 戸

安田 悦子

花も人も朝日に心開きゆく

姫 路

英賀美千代

下 関

隅田 雅子

背伸びして届く鉄棒苜蓿

富士吉田

渡邊伊勢乃

新元号発表を待つ春炬燵

うきは

和合久美子

切株も磴もたちまち花の席

東 京

岡田 圭子

鬼瓦雀の子らをあそばせて

敦 賀

為永香月枝

末黒野に焦げし切つ先かぎりなし

高 知

中村 梅子

人と人むすぶも花の虚子忌かな

神 戸

小柴 智子

Page 5: 花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見

― 4 ―

今上の御代も名残に花吹雪

東 京

鈴木 風虎

花筵抱へて右往左往かな

成 田

阿部ひろし

春愁を忘れて古都の寺巡る

熊 本

児玉 胡餅

春暁の森より鳥語こぼれだす

つくば

大倉真知子

蕗の薹みつけて弾む万歩計

札 幌

西田美智子

春光や行幸迎ふ神の伊勢

津 

中西美穂子

燕来る表札はまだ夫のまま

福 山

池上 幸子

巣作りの燕集まる道の駅 米 子

中村 襄介

命尽くまでは旅人春惜しむ 熊 本

渡邊佳代子

裏山の花散つて来る虚子忌かな

福知山 植村太加成

のどけしや猫の駅長三代目

太宰府

野田 杉子

風車かざせば駆けてみたくなり

島 原

池田みを子

百歳の人と語りてあたたかし

加古川

瀧  積子

咲きつづく花平成を惜しむかに

福 岡

徳永スキ子

入学児ランドセルから手と足と

島 原

中原 綾子

二句短評

一句目

―活火山が見えるところにお住まいなのだろ

う。猛々しい火山を背景に飾られた武具に、男らしい

力強さが感じられ印象的。噴煙を遠くに見、武具を飾

られる静かな一間が見えてくる。

二句目

―土色の土筆は普通に歩いていると気がつか

ない。童のように野に遊ぶ心で童のように大地に近く

視線をもってこないと見つからない。「童心」という

一語でそのような様子を表現し、土筆らしさが良く言

えている。

噴煙のみゆる一間に武具飾る

鹿児島 

平 山 洋 子

童心に戻れば見ゆる土筆かな

三 田 

𠮷 村 玲 子

稜線の眉のきりりを雁帰る

北海道 

西 澤 カズ子

よろこびもかなしみも励ましも花

福 岡 

西 野 さち子

風車かざせば駆けてみたくなり

島 原 

池 田 みを子

●山田佳乃 選

特選五句

Page 6: 花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見

― 5 ―

水ぬるむ飛石けつて対岸へ

枚 方

篠田ひろし

未だしの花にはあれど酒壺ひとつ

神 戸

前田 容宏

夕映えの沖より帰る船遅日

輪 島

向 佐ち子

下校児を寄り道させてゐる子猫

三 原

成末知歌子

春陰の寺に子を抱くマリア像

堺 

内田 陽子

庭を見て玄関を見て雛の間に

広 島

尾首美知子

春風に紙飛行機の軽さかな

筑紫野

多田 蒼生

甘茶仏濡れて乾きて輝けり 西 予

末光恵美子

ぶらんこの日暮の風を蹴つてゐし 浜 松 豊田いし子

一水の光りて余花の谷深し

大牟田 鹿子生憲二

沖祓ひ祓ひ雛を流しけり

箕 面

須知香代子

初蝶や二人の会話ひらひらと

高 知

岡林知世子

春祭陣屋太鼓で始まりし

小 野

酒見  潮

芽柳の影を流してゐる水面

泉大津

多田羅紀子

湖渡りきては柳の風となる

愛 媛

黒田 美穂

一献を断りきれず月朧

福 山

貝原 玲子

春らしくとは晴れきらぬ空のこと

京 都

山﨑 貴子

厨より釘煮の匂ふ日永かな

神 戸

上岡あきら

様変りしたる町筋燕来る

福 岡

下原口允子

奉る一鐘一炷虚子忌寺

荒 尾

大川内みのる

まだ動く柱時計や昭和の日

高 松

池田 裕子

大橋も小橋も四条暖かし

大 阪

大川 隆夫

甘茶仏足元ひかり集めたる

高 知

川田 達子

山門を閉ざしてをりぬ花吹雪

磐 田

金田みな子

採寸に背伸びしてゐる春休

七 尾

坂下 成紘

背伸びして届く鉄棒苜蓿

富士吉田

渡邊伊勢乃

鶏鳴の遠く尾を曳く春の昼

鹿児島

松元 靖子

菱餅の角はや反りて落ち着かず

郡 上

谷口 恒子

海光にまた初蝶を見失ふ

下 関

中村 元代

今日一つ閉づる会あり桜餅

松 江

三浦 純子

入選六十句

Page 7: 花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見

― 6 ―

振り下ろす剣舞の刃桜散る

多 摩

松井 秋尚

細々と農を継がんと耕せる

徳 島

秦  和男

阿蘇谷の幾何学模様麦青む

久留米

坂井 順子

早く咲け長く咲けよと初桜

倉 敷

長代 美川

客去りしあとのかげりや夕牡丹

久留米

矢野 愛子

巣作りの燕集まる道の駅

米 子

中村 襄介

老の旅故国の花を見納めに

シアトル

高村 笙子

今聞いて忘れる話亀の鳴く 宇 部

爲近 正子

虚子忌へと園丁余念なき手入れ 横 浜

工藤喜美子

暖かと思ふ日和のつづかざる

大 分 古屋仲くに子

憧れの校章胸に花の門

金 沢

金子 慶一

ふらここの揺れちぐはぐに兄妹

八 尾

米澤 悦子

鰊群来鴎飛び交ふあの辺り

小 樽

岩﨑スイ子

初蝶を追ふあやふやな視線かな

高 松

岡  悦子

平成と令和をつなぐ余花の旅

大 阪

久保 達哉

のどけしや猫の駅長三代目

太宰府

野田 杉子

待ちかねてをりし初孫毛糸編む

川 西

大西 水芳

古雛お道具のまたひとつ欠け

柏 原

鈴木 輝子

学舎は母にも母校卒業歌

高 知

中平 孝子

海見ゆるまでは寺領や葱坊主

岡 山

山口喜代子

囀や手で掬ひ飲む山の水

福 岡

工藤 友子

あたたかや虚子愛用の硯箱

和 泉

橋本 晶艶

造成のそこに来てゐる犬ふぐり

島 原

原  典子

初蝶や光となりて影もなし

札 幌

𠮷村 佳峰

百歳の人と語りてあたたかし

加古川

瀧  積子

花冷や弾痕あまた残る門

大 阪

山田  天

入学児ランドセルから手と足と

島 原

中原 綾子

石仏と共に暮らして畑を打つ

大 分

福嶋ただし

美しく乱れてをりぬ白牡丹

島 原

八木 花栗

ため息は小さく細く花の雨

東 京

須川  久

Page 8: 花鳥諷詠 - haiku.jphaiku.jp/wp-content/uploads/2019/06/19-07.pdf · 籐 椅 子 の 昭 和 平 ... 花 に は あ れ ど 酒 ... 田 陽 子 庭 を 見 て 玄 関 を 見

― 28 ―

夕立やぬれて戻りて欄に寄る

虚子

明治二十八年

 

明治に入っての虚子の本当に初期の

ころの句。その後明治は二十年近くあ

り、大正が十五年、昭和が六十四年、

そして平成が三十一年、そして令和と

いうことになった。その約百三十年に

俳句ははたして進歩したのだろうか。

もしかしたら後退したのかもしれない。

 

去る令和元年六月九日、東京千代田

区の都市センターホテルにおきまし

て、平成三十年度の通常総会がおこな

われ、すべての審議事項が会員多数を

もって可決いたしました。

 

ここに、会員の皆様、関係諸氏すべ

てに御礼を申し上げます。

 

なお、今年度の活動であります、関

西支部管轄の全国俳句大会の募集句に

つきましては、より一層の事前募集句

のお願いの申し出があり、会員のみな

らず一般の方も含め、御投句をお願い

申し上げます。本号到着後すみやかに、

ご投句くださいますよう重ねてお願い

を申し上げます。

 

なお、今回の総会をもちまして協会

役員の異動がございましたので、ここ

に掲載いたします。今後ともよろしく

ご支援ご鞭撻をお願い申し上げます。

(俊樹)

役員名簿(俳号)

会長(代表理事)  

稲畑 

汀子

副会長

稲岡  

長 

大輪 

靖宏 

岩岡 

中正

常務理事

稲畑廣太郎 

井上 

泰至 

岡安 

紀元

小川 

龍雄 

坊城 

俊樹

理 事

荒舩 

青嶺 

伊藤とほ歩 

岩田 

公次

黒川 

悦子 

駒形 

隼男 

鈴木しどみ

須藤 

常央 

田中 

靜龍 

辻  

桃子

成田 

一子 

橋田 

憲明 

橋本くに彦

松井 

秋尚 

安原  

監 事

木村 

享史 

湯川  

雅 

山田 

佳乃

新顧問

赤川 

誓城 

大久保白村 

千原 

叡子

編 集 後 記

花鳥諷詠七月号(通巻第三七六号)

定価二五〇円 

但し、本代は年会費に含む

年会費一〇、〇〇〇円

令和元年七月一日

発行人 

稲 

畑 

汀 

発行所 

公益社団法人

日本伝統俳句協会

〒151-

0073 

東京都渋谷区笹塚二-

一八-

    

シャンブル笹塚二-

B一〇一

電 

話 

〇三-

三四五四-

五一九一

郵便振替 口座番号 〇〇一六〇-

七-

一八六八二〇

印刷所 

日本ハイコム㈱

〒112-

0014 

東京都文京区関口一-

一九-