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Chapter 2...19 コミュニティワークは、重層的かつ日々変容するコミュニティを対象にしているため、多種多 様な主体に関わり働きかける援助です。そして、援助期間も長く、成果が見えにくいことから、「専

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Chapter 2ケーススタディ

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 コミュニティワークは、重層的かつ日々変容するコミュニティを対象にしているため、多種多様な主体に関わり働きかける援助です。そして、援助期間も長く、成果が見えにくいことから、「専門性のわかりづらさ」が以前より指摘されています。こうした、「わかりづらさ」を解消しなければ、「人が変われば方向性もやり方も変わる」といった属人的で継続性を伴わない援助になりかねません。そして、何より、「なぜ、地域に出るのか、その活動がなぜ必要なのか」職場、関連機関から目的そのものを問われることになります。そのことは、財源にも大きな影響を与え、活動するための基盤そのもののゆらぎの原因になります。 

 そこで、重要なことが、コミュニティワークの体系的理解(必要な技術と展開プロセス)を踏まえた、日々の記録化と事例検討になります。記録の重要性は、

 ① 実践の説明責任(目的、方法、結果から成果を可視化する) ② 組織の内部、外部との情報を共有(感覚ではなく、客観的事実として共有する)

であり、記録をもとにした事例検討を通して、実践力の向上を図っていくことです。実践力は、事例を抱える個人の援助の力量とともに、取り巻く組織内外を含む環境の総合力を高めていくことです。

 本章では、これまでの黒子読本で示された記録化の方法と PDCA サイクルを軸とした枠組みを基本とした事例検討を取り上げています(詳細は黒子読本 p149 〜 154、黒子読本2 p19 〜 22参照)。そこに追加項目として、コミュニティワークの成果について、インテーク時点と現時点の当事者をとりまく関係変容を可視化するために「エコマップ」をのせています。また、コミュニティワークの 3 つの目標(黒子読本 2 p15 参照)、仮説に基づく事後予測を計画的に展開していくために「ロードマップ」を検討素材として取り入れていました。

 コミュニティワークは思いつきではなく、アセスメント(事実に裏打ちされたニーズ把握)と多元的な主体の関係構築(エコマップ)を計画的(プランニング、ロードマップ)に展開し、成果(個を支える地域づくり、地域福祉の基盤づくり)をもたらす専門援助であることを踏まえることが重要になってきます。 

Chapter

2 ケーススタディ

1. 事例の読み方

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 今回取り扱う事例は、この研究会メンバーである中堅若手コミュニティワーカーの日々の実践をありのまま取り上げています。すべて支援途中であり、一定の成果が見えているものとそうでないものとが混在しています。ここでの事例は Chapter1 図1(P15)にある、地域を基盤としたソーシャルワークの展開に沿って位置づけています。

 ① 個別支援から地域自立生活支援への展開 (生活困窮者への相談支援) ② 地域自立生活支援と個別支援の往来 (認知症高齢者の社会参加支援) ③ 地域自立生活支援と地域支援(高齢者サロンの質の向上) ④ 地域支援と地域自立生活支援の往来 (新旧住民が織りなすコミュニティづくり)

 そして、こうしたコミュニティワークを展開していくための組織づくりを事例にした

 ⑤ コミュニティワークを展開するための社協組織づくり(計画と効果的な研修による組織再編)

の5つの事例を取り上げています。(川本健太郎)

2. 取り上げる事例について