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知的財産デュー・デリジェンス
平成29年度特許庁産業財産権制度問題調査研究
標準手順書(SOP)
⽬次1.知的財産デュー・デリジェンス(知財DD)の必要性
2.デュー・デリジェンスとは
3.知的財産デュー・デリジェンスの意義
4.M&Aのプロセスとデュー・デリジェンス
5.デュー・デリジェンスの⼀般的な流れ
6.デュー・デリジェンスを踏まえての対応
7.スタートアップ及び中⼩企業における知財DDのメリットと難しさ
8.標準⼿順書(SOP)の活⽤⽅法
9.標準⼿順書を利⽤した知財デュー・デリジェンスの概要
10. まとめ
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⽇本におけるM&Aが増加し、スタートアップ企業への出資、事業提携、企業買収も増加している。しかし、出資等に踏み切るためには、対象会社が事業を継続していくうえで⼤きなリスクを抱えていないか、対象会社の技術⼒や将来性の価値は投資額に⾒合っているかを検討する必要がある。
産業構造・階層をまたいだ知的財産の実施許諾の必要性が⽣じており、これまでになく、知財紛争リスクが⾼まっている。
法務デュー・デリジェンス、税務デュー・デリジェンス、ビジネスデュー・デリジェンスに加え、知的財産デュー・デリジェンスの必要性が⾼まっている。
1 知的財産デュー・デリジェンス(知財DD)の必要性
2018/06/21 ⽇本経済新聞 朝刊
⽇本のスタートアップ企業が、成⻑資⾦の確保や市場開拓を狙い⼤企業による買収を選ぶ動きが広がっている。2018年1〜5⽉の国内の買収件数は前年同期⽐で3割増え、新規株式公開(IPO)件数を上回った。
1.知的財産デュー・デリジェンス(知財DD)の必要性M&Aはハイリスクだが、知財⾯ではメリット⼤
出典:平成29年度特許庁産業財産権制度問題調査研究「オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集」URL:http://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/files/startup/h29_02_1.pdf
2.デュー・デリジェンスとは
基本合意書の締結
契約
出資や提携、買収を検討する際に⾏う、相⼿⽅会社のリスク評価及び価値評価のための調査と検証
出資額は適正だろうか?相⼿⽅会社に問題はないだろうか??
ぜひ御社へ出資させてください!
DDの結果をもとに契約内容を検討し、無事契約。
デュー・デリジェンス(DD)
3.知的財産デュー・デリジェンス(知財DD)の意義●知的財産の観点でのデュー・デリジェンスを知的財産デュー・デリジェンスという
デュー・デリジェンス(DD)
法務 知財 ITビジネス
税務 ⼈事 環境会計
知財法務 ビジネス
アセスメント 価値評価
リスクの調査 知財の価値評価と可視化
●知財DDには、リスクの調査と、知財の価値評価の2⾯性がある
特許権の権利範囲は⼗分広いか?
他⼈の権利を侵害していないか?
ライセンス契約はどうなっているか
知的財産の管理体制は?
職務発明規定は整備されているか?
どんな知的財産を保有しているか?
4. M&Aのプロセスとデュー・デリジェンスの時期
NDA締結
出資等の対象会社(売主)を選定対象会社の選定
営業秘密を含む対象会社の秘密情報が開⽰されるため、売主側・買主側の間で秘密保持契約(NDA/CDC)を締結
初期的資料開⽰ 本格的なDDの実施前に、売主側の決算書や事業計画書などの典型的な基礎資料を開⽰
初期的検討出資等の⽬的、出資等のスキーム、出資等の取引を実⾏する前提となる最低限の条件(重要な前提条件)を検討し、DDの⽅針や調査範囲を決定
DD実施 初期的検討で決定した⽅針に沿ってDDを実施
最終契約締結 DDの調査結果を踏まえ、指摘事項に対応する契約条項を盛り込んだ出資等の最終契約を作成
取引実⾏ 前提条件の成就を確認の上、最終契約に基づき取引を実⾏
統合作業(PMI) 実⾏後のシナジーや円滑な運営を確保するため、必要な⼿当(社内規則の統合等)を実施
⼀般的なM&Aのプロセス
5. デュー・デリジェンスの⼀般的な流れ
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開⽰資料リスト作成
関係者でDDの⼿続きやスケジュールを確認キックオフ・ミーティング
買主側が開⽰を求める資料のリストを作成し、売主側に提出
資料開⽰ 売主側が資料を開⽰(買主側は開⽰を受けた資料の検討)
書⾯での質問・回答(QAシート) 質問事項を売主側へ提出し、書⾯で回答を受領
インタビュー 経営層及び関係者を対象に、⼝頭でインタビューを実施
報告書作成 (買主側は)必要な場合、報告書を作成
対応策の検討 報告書を踏まえて、対応策の検討
デュー・デリジェンスの⼀般的な流れ
6.デュー・デリジェンスを踏まえての対応
リスク 対応策例
⾼取引⾃体の中⽌
主要な取引条件の変更
取引価格の減額取引⼿法の変更
中契約書における
リスクヘッジ
実⾏の前提条件の変更・追加
実⾏前の義務の変更・追加
表明保証条項実⾏後の義務の変更・追加
低出資等の後の統合作業(PMI)で
対応すべき事項の検討表明保証条項
発⾒事項なし
潜在的リスクの評価と転嫁(表明保証や補償義務)は、対象企業の成⻑性とのバランスを考慮
表明保証条項:リスクに該当する事実が契約締結⽇・取引実⾏⽇など特定の時点において存在しない旨を保証させる条項
取引実⾏には影響ないが改善が必要な事項(知財管理体制の未整備、職務発明規程の不備など)はPMIの中での解消も検討
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7.スタートアップ及び中⼩企業における知財DDのメリットと難しさ
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知財DDを実施するだけの⼗分な能⼒を持った法律・会計事務所のほとんどは、東京や⼤阪に集中。
スタートアップ・中⼩企業及び地⽅銀⾏にとって、知財DDの実施に伴う法律・会計事務所への報酬は⾮常に⾼額である。
知財価値の可視化は、スタートアップ企業がVC・CVC等の投資家に対して、技術×市場ベースのプレゼンテーションをする上で実りが多い。
買主側での知財DDによりディールにつながらないような致命的な結果が⽣じることを避けるために、申込前に売主側で知財DDを実施することが望ましい。
8.標準⼿順書(SOP)の活⽤⽅法
特許庁では、知財DDの標準⼿順書(SOP)を作成し、今年3⽉末に公開。売主側、買主側双⽅による活⽤を期待。
本標準⼿順書(SOP)を活⽤し、⾃社の事業領域やコスト・期限等各種の事情に合わせてカスタマイズしながら、⾃社に合った知財DDのプロセスを確⽴。
将来のDDに備え、⾃社の知的財産活動において留意すべき観点を把握する、いわゆるSellerʼs DDのために活⽤。⽇頃から重要なポイントを押さえつつ知的財産活動を⾏うことで、投資家や将来の提携先となる事業会社へのアピールにつながる。
買主側
売主側
※本標準⼿順書に記載されている全ての調査事項を調査しなければ、経営上の善管注意義務違反や忠実義務違反となるものではなく、調査事項についての不備が対象会社への投資判断に常にネガティブな影響を与えるということでもない
9.標準⼿順書を利⽤した知財DDの概要
Ⅰ.対象会社の価値源泉となる技術等の分析
Ⅱ.対象技術等の利⽤可能性・利⽤可能範囲
Ⅲ.対象会社の知的財産関連紛争の調査
Ⅳ.第三者権利の侵害リスク調査(FTO調査)
Ⅴ.ガバナンス調査
Ⅵ.価値評価
企業情報データベース、有価証券報告書など
出願書類、登録原簿、ライセンス契約書など
訴訟記録、紛争⼀覧など
対象会社保有知財⼀覧、先⾏技術⽂献など
知的財産管理規定、職務発明規定など
特許明細書、先⾏技術調査など
調査項⽬ 調査資料
知財DDの調査項⽬は主に6項⽬
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Ⅰ.対象会社の価値源泉となる技術等の分析
製品等の提供に利⽤しているシステム、ソフトウェア等のリソースを特定。
システム・リソースを分析し、それらに含まれる知的財産を特定。
事業内容を分析し、価値源泉となる製品・技術等を特定 製品・技術等の現在および将来の収益予測を⽐較・分析し、製品等の重要性につ
いて、ランク付け。
重要性の⾼い製品等がどのような技術で構成されているかを特定。
製品等の提供に利⽤しているシステム、ソフトウェア等のリソース(利⽤システム等)の特定
ポイント 対象会社の価値源泉(=対象会社の魅⼒)を分析・特定する多種多様な技術や製品を有している場合、そのすべてを知財DDの調査対象とすることはコスト的に現実的ではないので、まずは調査対象とすべき技術・製品の範囲を特定する。
Ⅱ.対象技術等の利⽤可能性・利⽤可能範囲
単独保有か、それとも第三者との共同保有か
発明者・創作者はだれか 職務発明規程は整備しているか 特許権、意匠権、商標権は有効か 権利の範囲はどの程度か 権利を第三者にライセンスしている
のかどうか
第三者が権利を保有しているか ⾃社が継続して使⽤できる根拠は何か
(ライセンス契約、サブライセンス契約等)
ライセンス契約を締結している場合、ライセンス範囲、契約期間
M&A等により、ライセンス契約が消滅しないか
⾃社で保有している場合 第三者が保有している場合
対象技術を対象会社で保有しているのか、それとも、第三者が保有し、使⽤する権利を得ているのか、を確認し、それぞれの場合において、権利や契約を確認する。
ポイント 対象技術等を保有しているのは誰か、確認
Ⅲ.対象会社の知的財産関連紛争の調査
紛争の内容次第では、対象会社の価値に⼤きな影響をおよぼす可能性もある。係争中の事案については、以下の点を確認する。
訴訟の相⼿⽅は誰か 問題となっている製品、技術は何か 訴額はいくらか 請求内容は 訴訟の⾒通しについて 訴訟は何時ごろには終わりそうか。
交渉の相⼿⽅は誰か 問題となっている製品、技術は何か 請求内容は? 今後の⾒通しについて 訴訟に移⾏する可能性はあるか。 解決までどれくらいの期間がかかりそ
うか。
過去に終結した紛争案件も、⾃社の価値に影響を与えるおそれがあることから、その内容を確認し、把握しておく必要がある。
訴訟となっている場合 ⽰談交渉段階の場合
過去の紛争について
ポイント 対象会社の抱えている知財関連紛争を確認
Ⅳ.第三者権利の侵害リスク調査(FTO調査)
先⾏技術調査 他社権利の有効性 他社権利を侵害しているかどうかの鑑定
ニュース、裁判例の調査 同業他社の評判
他社の特許・技術等の調査には時間とコストを要するので、どこまで⾏うかは、検討が必要。
対象会社の同技術領域・同事業領域に属する他社の特許・技術等を調査
同種技術について、他社が紛争を抱えているかの調査
⾃社の過去・現在の紛争の調査 調査内容は、Ⅲに記載のとおり。
対象会社のサービス等が、万が⼀第三者の権利を侵害している場合、差⽌めなどにより、事業の継続ができなくなるおそれもあるので、FTO調査は、知財DDの中でも重要な項⽬の⼀つである。
ポイント 第三者の権利を侵害していないか確認
Ⅴ.ガバナンス調査
対象会社の知財に関する基本⽅針 対象会社の知財基本⽅針や知財戦略、知財に関するルールはどう取り決めているか 知財に関する⾃社のキーマンは誰か
知財の管理体制 対象会社の組織体制・管理システムについて
営業秘密の管理体制 営業秘密管理ルールの存在、内容はどうなっているのか 営業秘密管理のための⼈的・物的体制の確認
職務発明の取扱い⽅法の確認 職務発明規程の有無、内容及び策定⼿続きの合理性の確認 職務発明の対価⽀払実績 将来における職務発明の対価⽀払可能性の有無及び⾦額規模
⽇常的な知財管理体制について確認する。体制の如何によっては、将来的なリスクの可能性も⽰唆される。
ポイント どのような⽅針で知財を管理・活⽤し、他社の知財の侵害を回避しているのかを確認
Ⅵ.価値評価
対象となる技術・事業の特定(すでにⅠでおこなっているところです。) 知的財産の実効性の確認。特許権に無効理由がないか、権利満了⽇まで猶予があるか
などを確認します。
経済的価値はどうか ライセンスの対価はいくらか 譲渡価格 資⾦調達状況、将来予測等
価値評価の対象となる技術・事業の特定
知財の定性評価 知財が⽤いられている事業の規模、技術⼒はどうか。 市場における技術評価・ブランド評価 知財価値の経年変化
知財の定量評価
知財の定性評価及び定量評価を⾏うことによって、対象会社の知財の価値を明確に⾒える化する。対象会社の強み、コアとなる権利が社内で共有され、投資家等への効果的なアピール材料にもなる。
ポイント 対象会社の知的財産の価値を評価
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まとめ
1. 知財DDはリスク調査(法務DD)と価値評価(ビジネスDD)のハイブリッド。
2. 標準⼿順書を活⽤し、コンパクトかつ費⽤対効果に優れた知財DDを実現。
3. 知財を可視化し、⾃社の価値を把握することは資⾦調達、M&A等への備えとなる。
もっと詳しく知りたい場合は、知財デュー・デリジェンス標準⼿順書(SOP)をご活⽤ください
★特許庁HPでダウンロードできますhttps://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/startup.htm
標準⼿順書では、以下の項⽬について、わかりやすく解説しています。・⼀般的な出資等のプロセスの説明・⼀般的なDDの⼿順の説明・知財DDの⼿順の説明・知財DDの全体的な進め⽅・知財DDの⼿順ごとの解説
(別紙)調査項⽬⼀覧表(別紙)調査項⽬⼀覧表の解説(別紙)開⽰要求リスト