4
Beams Transport Models for Ultra-low Emittance of 0.1 mm mrad Jun Yamazaki 1A) , Atsushi Enomoto B) , Yukihide Kamiya B) A) Institute for Solid State Physics, University of Tokyo 5-1-5 Kashiwanoha, Kashiwa, Chiba 277-8581 B) High Energy Accelerator Reserch Organization 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801 Abstract Beam transport models of ERL injector with ultra-low emittance were optimized by a simulation code using envelope equations. The parameters of the injector with an emittance of 0.1 mm mrad (rms bunch length 0.83 mm) were obtained. The suppression mehanism of emittance growth was clarified in this report. It has been shown that the control of the space charge fields is most important. 0.1 mm mradの超低エミッタンスのビーム輸送モデル 1.はじめに エネルギー回収型線形加速器(ERL)の最重要課 題の一つとして、入射器における超低エミッタンス のビーム輸送がある。この入射器では、出口で運動 エネルギー5 MeV、規格化エミッタンス0.1 mm mradrmsバンチ長0.8 mmのビームパラメーターが要求さ れる。本発表では、入射器の基本的パラメータを決 めるとともにエミッタンス増大の原因を探る。具体 的には、エンベロープ方程式を使ったシミュレー ションコード [1]によりパラメータの最適化を行い、 粒子分布の相関係数を用いてエミッタンス増大の抑 制方法等を検討した。 2.ビーム輸送モデル概要 図2.1に、ここで用いたビーム輸送モデル(長 さ:260 cm)の各エレメントの配置図、表2.1にそ のパラメータを示す。電子銃はDC加速電場のフォト カソード電子銃であり、電子銃出口での運動エネル ギーは330keVで、電子の分布としては一様楕円体分 布(直径1 mm、バンチ全長6.3 mm)を仮定した。加 速管は、定在波型の1.3 GHz超伝導加速空洞で、1 Cell空洞を一台、2 Cell空洞を三台用いた。これに より、電子は5.25 MeVまで加速される。また、電子 を収束するために5台のソレノイド電磁石が配置さ れている。 本ビーム輸送モデルの最適化に用いたパラメー タは、各ソレノイド磁石の磁場、RF電場の初期位 相、1 Cell加速管と2 Cell加速管の間の距離(ド リフト空間)である。 表2.1 入射器設計パラメータ 入射エネルギー 0.33 MeV 平均電流 100 mA ビーム径 楕円体分布Φ1 mm バンチ全長(rms) 21psec ソレノイド磁石 1 4.5 cm, 540gauss ドリフトスペース 10cm 9.5 cm, ソレノイド磁石 2 Model A 476gauss Model B 410gauss β=0.8,1セル 1Cell 加速官 12.0MV/m 0.33MeVから0.79MeVへ加速・集群開始 ソレノイド磁石 3 10 cm, 475gauss ドリフトスペース 10cm β=0.9,2セル 2Cell加速管 1 12.5MV/m 0.79MeVから2.23MeVへ加速・集群開始 ソレノイド磁石 4 5 cm, 500gauss β=0.9,2セル 2Cell加速管 2 12.5MV/m 2.23MeVから3.65MeVへ加速・集群開始 ソレノイド磁石 5 5cm, 2100gauss β=0.9,2セル 2Cell加速管 3 12.5MV/m 3.65MeVから5.25MeVへ加速・集群開始 規格化エミッタンス 0.099 mm mrad(Model A) 1 E-mail: [email protected] 2nd Solenoid 1st Solenoid 2Cell Cavity E0=12.5MV/m 1Cell Cavity E0=12.0MV/m 3rd Solenoid 4th Solenoid 5th Solenoid 0.33MeV 0.79MeV 2.23MeV 3.65MeV 5.25MeV 粒子数 進行方向 2Cell Cavity E0=12.5MV/m 2Cell Cavity E0=12.5MV/m P-0 P-1 P-2 P-3 P-4 P-5 2.1 入射器配置図入射器での粒子分布変化図下段Proceedings of Particle Accelerator Society Meeting 2009, JAEA, Tokai, Naka-gun, Ibaraki, Japan 100

Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad · Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad Jun Yamazaki 1A), Atsushi Enomoto B), Yukihide Kamiya

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad · Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad Jun Yamazaki 1A), Atsushi Enomoto B), Yukihide Kamiya

Beams Transport Models for Ultra-low Emittance of 0.1 mm mrad

Jun Yamazaki1A), Atsushi EnomotoB), Yukihide KamiyaB) A) Institute for Solid State Physics, University of Tokyo

5-1-5 Kashiwanoha, Kashiwa, Chiba 277-8581 B) High Energy Accelerator Reserch Organization

1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801

Abstract

Beam transport models of ERL injector with ultra-low emittance were optimized by a simulation code using envelope equations. The parameters of the injector with an emittance of 0.1 mm mrad (rms bunch length 0.83 mm) were obtained. The suppression mehanism of emittance growth was clarified in this report. It has been shown that the control of the space charge fields is most important.

0.1 mm mradの超低エミッタンスのビーム輸送モデル

1.はじめに エネルギー回収型線形加速器(ERL)の最重要課

題の一つとして、入射器における超低エミッタンス

のビーム輸送がある。この入射器では、出口で運動

エネルギー5 MeV、規格化エミッタンス0.1 mm mrad、rmsバンチ長0.8 mmのビームパラメーターが要求さ

れる。本発表では、入射器の基本的パラメータを決

めるとともにエミッタンス増大の原因を探る。具体

的には、エンベロープ方程式を使ったシミュレー

ションコード [1]によりパラメータの最適化を行い、

粒子分布の相関係数を用いてエミッタンス増大の抑

制方法等を検討した。

2.ビーム輸送モデル概要

図2.1に、ここで用いたビーム輸送モデル(長さ:260 cm)の各エレメントの配置図、表2.1にそのパラメータを示す。電子銃はDC加速電場のフォトカソード電子銃であり、電子銃出口での運動エネルギーは330keVで、電子の分布としては一様楕円体分布(直径1 mm、バンチ全長6.3 mm)を仮定した。加速管は、定在波型の1.3 GHz超伝導加速空洞で、1 Cell空洞を一台、2 Cell空洞を三台用いた。これにより、電子は5.25 MeVまで加速される。また、電子を収束するために5台のソレノイド電磁石が配置されている。

本ビーム輸送モデルの最適化に用いたパラメータは、各ソレノイド磁石の磁場、RF電場の初期位相、1 Cell加速管と2 Cell加速管の間の距離(ドリフト空間)である。

表2.1 入射器設計パラメータ

入射エネルギー 0.33 MeV平均電流 100 mAビーム径 楕円体分布Φ1 mm

バンチ全長(rms) 21psecソレノイド磁石 1 4.5 cm,  540gaussドリフトスペース 10cm

9.5 cm,  ソレノイド磁石 2 Model A 476gauss

Model B 410gaussβ=0.8,1セル

1Cell 加速官  12.0MV/m 0.33MeVから0.79MeVへ加速・集群開始

ソレノイド磁石 3 10 cm,  475gaussドリフトスペース 10cm

β=0.9,2セル    2Cell加速管 1  12.5MV/m

0.79MeVから2.23MeVへ加速・集群開始ソレノイド磁石 4 5 cm,  500gauss

β=0.9,2セル  2Cell加速管 2  12.5MV/m

2.23MeVから3.65MeVへ加速・集群開始ソレノイド磁石 5 5cm,  2100gauss

β=0.9,2セル  2Cell加速管 3  12.5MV/m

  3.65MeVから5.25MeVへ加速・集群開始規格化エミッタンス 0.099 mm mrad(Model A)

1E-mail: [email protected]

2nd Solenoid1st Solenoid

2Cell CavityE0=12.5MV/m

1Cell CavityE0=12.0MV/m

3rd Solenoid 4th Solenoid 5th Solenoid

0.33MeV 0.79MeV 2.23MeV 3.65MeV

5.25MeV

粒子数

進行方向

2Cell CavityE0=12.5MV/m

2Cell CavityE0=12.5MV/m

P-0 P-1 P-2 P-3 P-4 P-5

図2.1 入射器モデル配置図(上段) 入射器での粒子分布の変化図(下段)

Proceedings of Particle Accelerator Society Meeting 2009, JAEA, Tokai, Naka-gun, Ibaraki, Japan

100

Page 2: Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad · Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad Jun Yamazaki 1A), Atsushi Enomoto B), Yukihide Kamiya

3.空間電荷、RF、色収差のk値への影響

従来、エミッタンスの増大を抑制するためには、

ビームのバンチ内での横方向の収束力を一定にする

ことが重要であると考えられていた。しかし、今回

のような場合には、空間電荷力が非常に大きく、ま

た、バンチ内での空間電荷力の差も大きいため、こ

のようなエミッタンスの抑制方法は機能しない。こ

の節ではまず、バンチ内での(進行方向の)位置に

よる空間電荷力の違いの影響が支配的で、RF電場、

色収差のバンチ内位置による違いの影響は大きくは

ないことを示す。 そのため、表3.1のように空間電場、RF電磁場、

色収差の影響を場合分けして計算した結果を図3.1~3.5に示す。図の縦軸は参考文献[1]で定義されて

いる位相空間内の粒子分布の「相関係数」で、横軸

はソレノイド電磁石の磁場である。なお、図中の相

関係数は入射器出口での値であり、ゼロのとき一般

にエミッタンスが最小となる[1]。図から、RF電場、

色収差のバンチ内位置による違いの「相関係数」の

極小値の対する影響は大きくないことがわかる。 低いエネルギーでは、空間電荷力が大きいため、

第二、三ソレノイド磁石付近では、ソレノイド磁場

の値によって相関係数に大きな違いが生じている。

しかし、第一ソレノイド付近(図3.1)では、バン

チ内位置での空間電荷力がまだ一様なので、位相空

間内でのビーム楕円の傾きが揃っている。したがっ

て、第一ソレノイドの磁場を変えても、ビーム楕円

の傾きが一様に変化するだけで、相関係数は(ほと

んど)変わらない。一方、第4、第5ソレノイド磁石

付近では、エネルギーが高いため空間電荷力は相対

的に小さく、相関係数の変化はほとんどない。つま

り、エミッタンス増大への影響は小さい(図3.4、3.5)。

○ バンチ内位置で実際にエンベロープが感じる

k値を使用 × バンチ中央のエンベロープが感じるk値のみ

使用

表3.1 エンベロープが感じるk値の対応表

図3.1 第一ソレノイド磁場と「相関係数」

図3.2 第二ソレノイド磁場と「相関係数」

図3.3 第三ソレノイド磁場と「相関係数」

図3.4 第四ソレノイド磁場と「相関係数」

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0corr

elat

ion

coef

ficie

nt [m

m m

rad]

700600500400300

4th Solenoid [Gauss]

Case1 Case2 Case3 Case4

4

3

2

1

0corr

elat

ion

coef

ficie

nt [m

m m

rad]

700600500400300

3rd Solenoid [Gauss]

Case1 Case2 Case3 Case4

10

8

6

4

2

0corr

elat

ion

coef

ficie

nt [m

m m

rad]

500450400350

2nd Solenoid [Gauss]

Case1 Case2 Case3 Case4

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0corr

elat

ion

coef

ficie

nt [m

m m

rad]

700650600550500450400

1st Solenoid [Gauss]

Case1 Case2 Case3 Case4

空間電荷場 RF電磁場 色収差Case1 ○ ○ ○Case2 ○ × ×Case3 ○ ○ ×Case4 ○ × ○

Proceedings of Particle Accelerator Society Meeting 2009, JAEA, Tokai, Naka-gun, Ibaraki, Japan

101

Page 3: Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad · Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad Jun Yamazaki 1A), Atsushi Enomoto B), Yukihide Kamiya

図3.5 第五ソレノイド磁場と「相関係数」

4.空間電荷力によるエミッタンス増大と

その抑制

バンチを進行方向にスライスし、そのエミッタンスを「スライスエミッタンス」と呼ぶ。エミッタンス増大は、最初重なり合っているスライスエミッタンスの傾きが、空間電荷力の違いによって、バタフライ状に広がっていくことによって生じる。

図4.1 入射器における外力のk値の変化図 バンチに働く外力(RF電磁場、ソレノイド磁場)

については、図4.1に示すように、バンチ中央(center)と後端(tail)での差が小さいので(k値を比較して約10%以下である)、それだけでは、エミッタンスの増大の抑制に大きな効果がないことがわかる。RF位相とソレノイド磁場を組み合わせるならば、バンチ内の空間電荷力を制御することができる。 このことを理解するため、まず、表2.1のModel A

(エミッタンス増大が抑制される場合)を取り上げる。この場合のエミッタンスの変化は、図4.2の6つの図に示されている。図4.2は、ビームサイズaとその微分a’の位相空間における、スライスの分布を表わし、スライスエミッタンスの重なり具合を表わしている(参考文献[1]3節参照)。 電子銃から出たバンチは、第一ソレノイド通過後、

縦の空間電荷場の影響により伸び、進行方向の粒子分布、電荷密度分布ともパラボリック分布を取る。バンチ中央(○)の空間電荷場は、バンチの端(バ

ンチテールを△)より大きいために、スライスのエンベロープは、aa’空間上でバタフライ型のばらつきを持ちながら発散する(図4.2-(1))。さらに、第二ソレノイド磁場により各スライスエンベロープは収束する(図4.2-(2))。

図4.2 aa’空間図 「相関係数」の変化を示す 1Cell加速管に入ったビームは集群を開始する。

バンチ先頭はエネルギーが低くバンチ中央に吸収される。バンチ後端は運動エネルギーが高いが、バンチ中央との速度差が小さいために距離は縮まらない。図2.1下段のP2に示すような三角形状の電荷分布を取る。第二ソレノイド磁場の大きさと1Cell加速管の初期初期位相を調整することにより、バンチ中央のエンベロープは発散、バンチ後端のエンベロープは収束する(図4.2-(3))。このとき、バンチ後端の電荷密度が増大し、逆パラボリック状を取る(図4.3)。この電荷密度分布は最初の2Cell加速管入り口付近まで続く。 図4.3 進行方向に対する空間電荷場のk値分布図 バンチ中央のk値で規格化したもの、1Cell加速管後半から最初の2Cell加速管入り口付近

4

3

2

1

0corr

elat

ion

coef

ficie

nt [m

m m

rad]

2500200015001000500

5th Solenoid [Gauss]

Case1 Case2 Case3 Case4

-400

-300

-200

-100

0

100

200

300

Exte

rnal

k V

alue

[1/m

]

250200150100500Injector Position [cm]

Center (Model A) Tail (Model A) Center (Model B) Tail (Model B)

476 Gauss

410Gauss

電子銃から

第二ソレノイド

磁石(1)

第二ソレノイド

磁石から1Cell

加速管(2)

1Cell加速

管から2Cell

加速管(3)

ビームウェスト

通過後(5)2Cell加速管出口からビーム

ウェスト通過(4)

ブリルアンフローにてビー

ム輸送(6)

TailCenter

Center 発散

Tail 収束

20

15

10

5

0

Spac

e C

harg

e k

Val

ue R

atio

-10 -5 0 5 10

←Tail Bunch Position [deg] Head→

Model A Model B

← 476Gauss バンチテール部  エンベロープの収束  電荷密度の増大 →空間電荷場の増大

エンベロープの発散により電荷密度の減少→空間電荷場の減少

Proceedings of Particle Accelerator Society Meeting 2009, JAEA, Tokai, Naka-gun, Ibaraki, Japan

102

Page 4: Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad · Beams Transport Models for Ultr a-low Emittance of 0.1 mm mrad Jun Yamazaki 1A), Atsushi Enomoto B), Yukihide Kamiya

つぎに、第三ソレノイド磁場によりバンチ中央のエンベロープが収束し始めるのに対して、バンチテールは空間電荷場の増大(バンチ中央の約15倍)により発散する。aa’空間上でそれぞれ回転の向きが逆となり、スライスエンベロープは同一直線状に向かい動き始める(図4.2 -(4))。 最初の2Cell加速管の初期位相、電場振幅を調整するとほぼバンチの集群は完了し、スライスエンベロープはaa’平面の同一直線上に乗る(図4.2(5))。二番目、三番目の加速管通過後に集群は完了し、運動エネルギーは5MeV以上になる。スライスエンベロープはそれぞれブリルアンフローをとり、同一直線に乗ったままビーム輸送される(図4.2-(6))。 Model Bの場合、全体を通して電荷密度はパラボ

リック分布をとり、図4.3に示すような逆パラボリック分布を取ることができない。規格化エミッタンスは1.67 mm mradであった。

5.まとめ ソレノイド磁石の磁場の最適化を行った。最適磁

場は、第一ソレノイド磁石から順に440、500、440、

600、1600 [Gauss]であった。このパラメータを初期

値として用いてPARMELA Ver3.3により規格化エ

ミッタンスの絶対値を求めたところ、0.099mm mrad、rmsバンチ長は0.83mmであった。最適化磁場の大き

さは20%以内で一致した。 エミッタンス増大の抑制方法を検討した。電荷密

度の制御が支配的であることがわかった。この方法

を用いると、電子銃電圧が300 kV程度でも、十分小

さなエミッタンスが得られる可能性があることがわ

かった。

6.謝辞 本研究を行うにあたり、斉藤健治(KEK)、梅森健

成(KEK)には加速管の設計データを提供していただ

き感謝します。

参考文献 [1] J.Yamazaki, et al., “第六回日本加速器学会年会”,

東海村, Aug. 5-7, 2009

Proceedings of Particle Accelerator Society Meeting 2009, JAEA, Tokai, Naka-gun, Ibaraki, Japan

103