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1 KJFC 2017/5/27 銀座ジャズカントリー例会 担当 北海道支部 JOANIE-S.T (1924/11/2 ~ 2016/8/25)

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KJFC 2017/5/27 銀座ジャズカントリー例会 担当 北海道支部 JOANIE-S.T

(1924/11/2 ~ 2016/8/25)

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2016 年8月、91 歳の天寿を全うした Mr.Rudy Van Gelder(以下 RVG と略称)。レコード盤を蒐

集し、その音を聴いてジャズの世界にどっぷり浸かって来た私にとって、このエンジニアの名前

と彼の係わった仕事に対しては、RVG 信仰とも云える特別な感情・信頼感を抱き続け来ました。

LP レコードが主流となった 1950 年代、既に CBS や RCA のようなメジャーレーベルは自前の録

音スタジオ・スタッフを保有しレコードを内製していました。しかし Blue Note/Prestige/Savoy

等ジャズ専門の独立レーベルはその様な余裕は端からなく、その恰好の受け皿として RVG のスタ

ジオが重宝されました。ニューヨーク・マンハッタンからハドソン川を渡り、ニュージャージー州ハッケンサックやイングルウッド・ク

リフスの RVG スタジオまでは車で 30 分前後、使い勝手の良いロケーションも功を奏したようです。

新旧 RVG スタジオの外観

写真左 / 25 Prospect Avenue, Hackensack / New Jersey 1952-1959/7/1

写真右 / 445 Sylvan Avenue, Englewood Cliffs/New jersey 1959/7/20 - 2016/8/25

RVG 独自の録音技法・秘訣は長らくヴェールに包まれていました。彼は徹底した秘密主義でマ

イクアレンジ・使用機材選定・操作も全て一人で行い、スタジオ内部の写真撮影も厳禁のため推

測すら叶いませんでした。(しかし近年僅かながらその一端を垣間見ることが許可されました)

RVG 録音の特徴は、楽器本来の音以上とも思える直接音の収録を可能にするマイクアレンジ。

そして何より他のエンジニアと異なるのは、レコード盤完成品の音を見据えたマスタリング、特

にラッカー盤へのカッティングを独自のノウハウで施すことです。結果、彼独特の「高い音圧」

の作品が仕上がり、目の前に拡がる迫力ある RVG Sound が創出されるのだ、と私は思います。

その RVG カッティングの証左であり、かつ自らの仕事へのプライドを結実させたのが「RVG 刻

印」。手掛けた 2000 作以上の録音・ジャズジャイアントたちの幾多の傑作が刻まれた記録の中

から本日は小生の集めたほんの一部のレコード・28 枚を持参しました。

なお、私は過去例会等で RVG に関連した下記テーマの特集を担当しました。

1. Van Gelder 録音・カッティング盤で聴く Jackie Mclean 特集 (2006/11 会報 No.42)

2. Lee Morgan & Hank Mobley の共演を辿る (2008/1 会報 No.45)

3. A.Lion が愛した二人のテナーマン/Ike Quebec & Tina Brooks の作品を集めて(2008/11 喫茶茶会記)

今回のプログラム策定に当たって、この3回の特集に登場した面々のレコードについては、重複

を避けたことを予めご承知おきください。 (従ってマクリーンの猫もクールストラッティンも持参しておりません)

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RVG 録音と総称されるレコード盤は、大きく次の4つのパターンに分けられます。

Ⅰ. 録音と、アナログ盤製作工程のマスタリング(カッティング)を共に RVG 自らが

行ったもの(レコード盤の内周空白部分=Dead Wax に本人イニシャルの刻印あり)。

この大半は自身のスタジオで録音・製作されましたが、ヴィレッジ・ヴァンガード等のラ

イブハウスに RVG がマイクやテープレコーダー等の機材を持ち込み、レコード化を前提と

した録音を行ったものも多く残されています。

Ⅱ. 上記の再発に当たり、改めて RVG 自らが再度カッティングを行ったもの(刻印あり)

Ⅲ. 録音自体は他のエンジニアが行った音源のマスターテープを RVG スタジオに

持ち込み、マスタリング(カッティング)のみ RVG 自らが行ったもの(刻印あり)

Ⅳ. 録音のみを RVG が行い、マスタリング(カッティング)は RVG 以外の人物が別に行った

もの(刻印はなし)。 RVG 自身のカッティング実績が激減した 80 年代後期以降、新たな

RVG 録音のアナログ盤はこのパターンが主流になってしまいました。

また市場にたくさん流通している Blue Note/Impulse/Prestige 等の RVG 録音マスター使用

を謳った旧作再発盤もこのパターンに入ります。日本プレスの国内盤もこの範疇です。

(本日お掛けする28枚+1枚の内訳はⅠ.が23枚・Ⅱ.は2枚・Ⅲ.も4枚。Ⅳ.はありませ

ん)

RVG 刻印の変遷

1.手書き刻印 1952-1957 年頃 2.ゴシック体 RVG の器械刻印 1958-1962 年頃

一部ステレオ盤には RVG STEREO の刻印もあり 3.ゴシック体 少し小さめの活字で VAN

GELDER の器械刻印 1962 年以降。同じく一部ステレオ盤には VAN GELDER STEREO の刻印も

あり。80年代には MASTER BY VAN GELDER の刻印も存在する

1. Hand Written RVG 2. Machine Stamp RVG 3.Machine Stamp VAN GELDER

1952-1957 1958-1962 1962-

私のコレクションの中で RVG 録音かつ刻印もあるレコードの一番新しいものは、

80 年代、その殆どのアルバムの録音を RVG に委ねていた uptown records の

Tommy Flanagan/Nights at Village Vanguard/uptown UP27.29・1986/10/18-19 録音です。

同じ Tommy Flanagan の人気盤 Jazz Poet/Timeless SJP301・1989/1/17-19 は RVG 録音ですが刻印

はありません。時は正に CD の興隆期、当時 65 歳を迎えていた RVG の健康状態・特に顕微鏡を見

ながら細かな作業をするカッティングは眼に大きな負担が掛かるため、その影響は如何ほどだっ

たのでしょうか? (勝手な私見による憶測・呟きの記載をご容赦ください)

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① ②

① Byrd in Flight (Blue Note BLP4048 )

1960/1/25 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Donald Byrd (tp) ・ Hank Mobley (ts) ・ Duke Pearson (p) ・

Doug Watkins (b) ・ Lex Humphries (ds)

A-1 Ghana (D.Byrd) 7:33

札幌の我が家に来訪された方には、リスニングルームのリクライニングシートにお座り頂

き、まずこの曲をお聞かせするのが恒例となっております。2006 年のマクリーン特集では B-

3 My Girl Shirl をお聞き頂きましたが、本日は満を持してオープニングに Ghana!!

(私見ではありますが,数ある RVG 録音 Blue Note 盤の中で、特に優秀な録音を極めたレコー

ドが集中しているのは、4000 番台の前半(4001-4051)だと思っております。中でも 4048 は

多分私のコレクションの中で間違いなく一番多くターンテーブルに載るレコードのため、最

近盤の溝に疲労(歪)が溜まって来ました。それでもこのレコードは、アンプやカートリッ

ジの機嫌が悪いとすぐに判る、我がシステムの鬼チェック盤です)

② Byrd’s Word (Savoy MG-12032)

1955/9/29 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Hand Written RVG

Donald Byrd (tp) ・ Frank Foster(ts) ・ Hank Jones (p) ・

Paul Chambers (b) ・ Kenny Clarke (ds)

A-3 Someone To Watch Over Me (I.Gershwin/G.Gershwin) 7:39

バードのデビュー最初期、Tradition 盤に続くリーダーアルバム。既に安定した豊かなフレー

ズを連発しています。 (本日唯一の Savoy 企画・RVG 録音のレコードです)

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① ⇒ ② ③

⇒ ① Miles Davis and The Modern Jazz Giants

(Prestige 10-inch PRLP200 ⇒ PRLP 7150 )

1954/12/24 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Miles Davis (tp)・ Thelonious Monk (p)・ Milt Jackson (vib)

Percy Heath (b) ・ Kenny Clarke (ds)

A-1 The Man I Love / Take2 (Gershwin) 7:58

クリスマスの喧嘩セッションと云われるモンクとのスリリングな演奏、しかしマイルスを聴け!!

の著者・中山康樹氏は全く別の解釈をされていますね。初発は冴えないジャケットの 10 インチ

盤。7150 は②のメンバーによる’Round About Midnight を加えた編集・リマスタリング盤です。

Prestige に限って云えば 10 枚も発売されたマイルスの 10 インチ盤はどういう訳か全く人気がな

く、その存在すら無視され、12 インチに編集された LP 群が初発の様な扱いをされています。

② Workin’ with Miles Davis Quintet (Prestige PRLP 7166 )

1956/5/11 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Miles Davis (tp)・ Red Garland (p)・ Paul Chambers (b)・ “Philly” Jo Jones (ds)

A-1 It Never Entered My Mind (Rogers & Hart) 5:26

メジャーの CBS/Columbia との契約が決まり、少しでも早く Prestige とのアルバム制作契約ノル

マを消化するために、LP4枚分の曲が 2日で録音された 1956/5 月と 10 月のマラソンセッショ

ン。ジャズ界のスターに昇り詰めるマイルス人気を予見した Prestige は Cookin’/Relaxin’/本作

Workin’/Steamin’の順に年 1 枚ペースでアルバムを発売し、便乗セールスに成功しました。

この曲、冒頭のミュートトランペットの素晴らしさと共に、ガーランドのソロも絶品ですね。

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③ Somethin’ Else(Blue Note BLP1595⇒Blue Note/France EP/45-1738)

1958/3/9 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Miles Davis (tp) ・ Cannonball Adderley (as) ・ Hank Jones (p) ・

Sam Jones (b) ・ Art Blakey (ds)

A-1 Somethin’ Else - Part 1 (M.Davis) 5:00

CBS 専属となったマイルスが、苦しい時代に録音機会を提供した恩人ライオンへの返礼として、

サイドメンの形をとって製作された本作。以降マイルスが録音で RVG スタジオを訪れる機会はな

く、Englewood Cliffs には足を踏み入れていないと思われます。定番の枯葉をお聞き頂きたいと

ころですが、11 分にも及ぶ長尺のため、アルバムタイトルのこの曲を。但し、当時ジュークボッ

クス用にプレスされた 45 回転 EP 盤(刻印有)で、片面に収録の前半のみをお聞きください。

アメリカの EP 盤は一般的にジャケットが無く、ジュークボックスの曲名紹介スペースに入れる切

手大のジャケ写真シールの添付が散見される程度。しかしフランスやスエーデンでは EP 本体を

Blue Note から輸入し、それに独自のジャケットスリーブを設え、発売しておりました。

このフランス盤 EP のジャケ写真は、最近マイルス・チェット・エヴァンス等の素敵な写真を使

い、手頃な価格の LP が人気の Jazz Images 盤、その写真家 Jean-Pierre Leloir 氏の作品です。

Chasin’ The Trane / Live at The Village Vanguard(Impulse A-10)

コルトレーンがアバンギャルドの狼煙を揚げた 1961/11/1-4 のライブ録音。延々15 分以上続くテ

ナーのソロ。楽器を振り回しステージ上を歩き回るコルトレーンを“追っかけて“録音を続けた

RVG がこの曲名を提案した、とのインタビューが 2012 年刊行の大冊「インパルス・レコード物

語」に記載されています。多くのジャズ・ジャイアントが RVG スタジオを去来していますが、そ

の楽歴の大半を RVG と共に記録したと云う点では、間違いなくコルトレーンがその筆頭に挙げら

れると思います。50 年代の Prestige~Blue Note 時代、Atlantic 時代は除き 60 年代初頭から 67

年・死に至る迄の Impulse 作品群、RVG は常にコルトレーンの良き伴走者でありました。

① ②

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③ ④ ⑤

① Lush Life (Prestige PRLP 7188)

1957/8/16 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

John Coltrane (ts) ・ Earl May (b) ・ Art Taylor (ds)

A-1 Like Someone In Love (Van Heusen/Burke) 4:58

ピアノ抜きのトリオはロリンズの十八番ですが、このアルバムのコルトレーンのソロは自信に溢

れた素晴らしい演奏を聞かせてくれます。

② Blue Train (Blue Note BLP1577)

1957/9/15 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

John Coltrane (ts) ・ Lee Morgan (tp) ・ Curtis Fuller (tb)・

Kenny Drew (p) ・ Paul Chambers (b) ・ “Philly” Jo Jones (ds)

A-1 Blue Train (J.Coltrane) 10:36

数百あるブルーノート作品の中でも、常に人気の上位に位置するこのアルバム、コルトレーンに

続くモーガンのソロも凄まじい迫力です。後述する、RVG 自身が録音した全 Blue Note 楽曲の中

から思い出深い9曲を選定・収録した日本企画の CD・「The RVG Album –Jazz From Rudy Van

Gelder」冒頭にはこのトラックが収められています。

③ Duke Ellington & John Coltrane (Impulse A-30)

1962/9/26 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine VAN GELDER

Duke Ellington (p)・ John Coltrane (ts)・ Jimmy Garrison (b) ・ Elvin Jones (ds)

A-2 Take The Coltrane (D.Ellington) 4:40

御大エリントンが Take the A Train に引っ掛けてコルトレーンに送った佳曲をお聞きください。

その昔買ったモノラル盤は、ピアノの音が割れ長年不満を持っていましたが、プレスの問題だろ

うと諦めていました。当然刻印入りだと思い込んでいたレコードの内周をよくよく見たら、悪名

高き Bell Sound 刻印の再発盤。程なく VAN GELDER 刻印盤を手に入れ聞き比べてみると、別のレ

コード?と思う程の迫力・クリアさで、ピアノアタック時の歪も無くなりました。

同じレコードでのこんな体験から、私の RVG 信仰が始まりました。

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➃ John Coltrane & Johnny Hartman (Impulse A-40)

1963/3/7 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine VAN GELDER

John Coltrane (ts) ・ Johnny Hartman (vo)

McCoy Tyner (p) ・ Jimmy Garrison (b) ・ Elvin Jones (ds)

A-3 My One And Only Love (Mellin/Wood) 4:50

RVG スタジオでのヴォーカル録音はあまり多くありませんが、なんと云ってもこのレコードが最

右翼でしょうね。 (男声には疎いのですが、秘かにハートマンは全作品収集を目指していま

す)

⑤ Expressions (Impulse A-9120)

1967/3/17 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine VAN GELDER

John Coltrane (ts)・Alice Coltrane (p)・Jimmy Garrison (b)・Rashied Ali (ds)

A-1 Ogunde (J.Coltrane) 3:34

運命の7月17日、その丁度4ヵ月前に吹き込まれたラストアルバム。コルトレーン逝去の直後

に発売されたこのレコードのジャケットは、彼の遺影を模る悲しいイラストが描かれています。

① ⇒ ②

① Worktime (Prestige PRLP 7020 ⇒ Esquire/England 32-038 )

1955/12/2 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Hand Written RVG

Sonny Rollins (ts)・ Ray Bryant (p)・ George Morrow (b)・ Max Roach (ds)

A-1 There’s No Business Like Show Business (Berlin) 6:25

Prestige はサキコロにするべきか随分迷いましたが、やはり音を第一に考えてこの曲を選びまし

た。お掛けするのは原盤と同じスタンパーを使ったイギリス Esquire 盤。このレーベルは

Prestige の主だった盤の RVG スタンパーを輸入してプレスし、洒落た別デザインのペラ・ジャケ

ットを設え販売。昔は手頃な値段でいい音・いい盤質のレコードが入手できる穴場的レーベルだ

ったのですが、最近はユニオンさんに目を付けられ随分と待遇が善くなっているようです。

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② Newk’s Time (Blue Note BLP4001)

1957/9/22 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Sonny Rollins (ts) ・ “Philly” Jo Jones (ds)

B-1 The Surrey With The Fringe On Top (Rogers/Hammerstein) 6:32

Blue Note に4枚あるロリンズリーダーアルバムの最後、1500 番台が終わり新たな 4000 番シリー

ズのトップを飾るのがこのレコードです。RVG のジャズ録音技法がピークを極めつつある時代、

ロリンズとフィリージョーの二人は火花が散るような対決を繰り広げました。

① ② ③

①Esquire / England ①Bel Air / French ①Artone / Holland

① Outward Bound (Prestige / New Jazz NJLP 8236 )

1960/4/1 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Eric Dolphy (as) ・ Freddie Hubbard (tp)

Jaki Byard (p) ・ George Tucker (b) ・ Roy Haynes (ds)

A-1 G. W. (E.Dolphy) 7:57

初リーダーアルバムにも拘わらず、ドルフィーは既に大物の風格が漂っています。欧州でも同時

期に発売された人気盤で、Esquire 盤(英)・ Bel Air 盤(仏)・ Artone 盤(蘭)は夫々ジャケッ

トデザインが異なりコレクター心理を擽ります。この3枚はスタンパーを Prestige から輸入して

プレス、当然 RVG 刻印が刻まれ迫力のある音が聞けます。この様に多くの国で同時期にスタンパ

ーを輸入して発売されたケースは、他に Sonny Rollins/Saxophone Colossus ぐらいしか思い当た

りません。(日本国内盤でこの時代、刻印のある同様のプレスが、他の作品を含めて存在したのか

は確認出来ていません。ここは Nicotama-T.I さんの深淵なる研究成果を待つのみです)

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② The Blues And Abstract Truth (Impulse A-5) produced by Creed Taylor

1961/2/23 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Oliver Nelson (ts) ・ Eric Dolphy (as) ・ Freddie Hubbard (tp)

Bill Evans (p) ・ Paul Chambers (b) ・ Roy Haynes (ds)

B-2 Butch And Butch (O.Nelson) 4:35

新興 Impulse 初期のヒット作。このメンバーが揃って外れはあり得ませんが、リーダーのアレン

ジが人気を支えています。ただ初発ジャケットは表も内面も意味不明の図柄で、ネルソンがクレ

ームを付けたらしく、程なく本人の横顔写真を使った仕様に変更されました。しかし手元にある

当時のイギリス HMV 盤(CLP1528)・日本キング盤(SH3017)は夫々シングルのペラジャケですが、変

更が間に合わなかったのか、初発のイラスト図柄を使っています。(2枚共刻印はありません)

③ ‘Out To Lunch!’ (Blue Note BLP4163)

1964/2/25 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine VAN GELDER

Eric Dolphy (b-cl) ・ Freddie Hubbard (tp) ・ Bobby Hutcherson (vib)

Richard Davis (b) ・ Anthony Williams (ds)

A-1 Hat And Beard (E.Dolphy) 8:20

私のレコード人生を変えた因縁の盤です。大学時代に購入した東芝直輸入盤は Liberty-Stereo 刻

印ありの中々の盤。しかしモノラル盤が聞きたくなり、20 数年前にアメリカのオークションで落

札、届いたレコードの1曲目を聴いて、正に目玉が飛び出しました。分厚くかつ鋭利な刃物の様

な音の洪水の連続に、暫し我を忘れたのを覚えています。この体験以降、私が Blue Note のモノ

ラル盤を本格的にかつ番号順に集め始めるきっかけとなった、実に罪作りな盤です。

(ただ、我が家では大音量でこのレコードをかけると決まって家人からクレームが入り、

一度は電源ブレーカーを切られ、静寂なる強制終了を迎えた事もありました)

その後、札幌某レコード店にて状態の良いモノ盤に出会い買い替え、旧いモノ盤は白山某店のゴ

イコヴィッチとトレード、Liberty 盤は札幌平岸の某喫茶店に無償で夫々嫁入りしました。

(暫く経って、三つの店ともたまたま疎遠になってしまったのは偶然でしょうか?)

6:10 秒から 6:15 秒辺り、ハッチャーソンの信じられないアタック音もお聞き逃しなく。

ベルリンでドルフィーが突然旅立ってしまうのは、この録音の僅か4ヵ月後のこと。ドルフィー

の死後、この演奏にも使われた愛用のバスクラリネットとフルートは親友コルトレーンへ形見分

けされ、3年後・彼のラストアルバム Expressions でそのフルートは使われました。

本日は uniqlo の T シャツ(4XL サイズ)を嬉しがって着用していることをお許し下さい。

また、最近本屋の店頭にこのレコードが積んであるのを発見しびっくりしました。(DeAGOSTINI

から出版されている隔週刊ジャズレコードコレクション 17 号 2.980 円)。あまり一般受けするレコードでは

ないと思いますが、13 号では既にオーネット・コールマンが発売されているとのことなので取敢

えず納得しました。 しかしこのシリーズ、85 号まで出るようですが、今までのセレクトのセン

スを見る限り、このままで需要はあるのでしょうかね?(余計なお世話ですが )

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6.

① ② ③

① Mobley’s Message (Prestige PRLP 7061 )

1956/7/20 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Hand Written RVG

Hank Mobley (ts) ・ Jackie Mclean (as) ・ Donald Byrd (tp)

Barry Harris (p) ・ Doug Watkins (b) ・ Art Taylor (ds)

B-1 Au Privave (C.Parker) 7:34

2008/1 例会でモブレイとモーガンの共演したレコード 21 枚を揃えたプログラムをお聞かせしま

したが、その際は双方単独参加のレコードは当然対象外であったため、本日晴れて3枚持参しま

した。この Prestige 盤は印象的なジャケットで(電線を通してメッセージを伝えるのでしょう

か?)人気がありますが、本日はマクリーンが師匠の曲を演奏するトラックをお聞きください。

② Candy (Blue Note BLP1590)

1958/2/2 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Lee Morgan (tp) ・ Sonny Clark (p) ・ Doug Watkins (b) ・ Art Taylor (ds)

A-1 Candy (David/Whitney/Kramer) 7:00

全てのトランペット・ワンホーン作品の中で、変わらない一番人気を誇るこのレコード。

但し、プログラムの関係で、最終の時間が許す範囲でお聞きください。

(札幌 N氏のレコード棚では、何とこのレコードが Sonny Clark のコーナーに収められていて呆れ果てました)

③ Soul Station (Blue Note BLP4031)

1960/2/7 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Hank Mobley (ts)・ Wynton Kelly (p)・ Paul Chambers (b) ・ Art Blakey (ds)

A-1 Remember (Berlin) 5:40

後掲企画 CD/The RVG Album – Jazz From Rudy Van Gelder にも選定された、モブレイの代表作で

す。朗々と奏でるテナーの音・その迫力を RVG は隈なくレコード盤に刻み込んでいます。

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7. Art Pepper

① ⇒

Discovery 盤 Savoy/Remaster 盤 キング国内盤

① Surf Ride (Discovery 10-inch DL3019 ⇒ Savoy MG-12089 )

1952/3/4 Recorded at Radio Recorders/Los Angeles/Calif.

Original Discovery Session’s Recording Engineer / Val Valentine

Remastered Hackensack・RVG Studio / Stamper-Hand Written RVG

Art Pepper (as)・ Hampton Hawes (p)・ Joe Mondragon (b)・ Larry Bunker (ds)

A-5 Holiday Flight (A.Pepper) 3:11

ペッパーの初リーダー作は 1952/3/4・10/8 と 1954/8/25 の3回のセッションで計 16 曲が録音さ

れ、西海岸のマイナーレーベル Discovery より 10 インチ LP2枚に分散し発売されました。

この 10 インチ盤は LP 初期段階の製作のためか品質の劣る盤が多く、別途8曲を4枚の 78 回転

SP 盤に分けて発売された Discovery 盤の方が、迫力のある音質でマニアの人気を集めました。

(1985 年キングが Direct From Original SP/Art Pepper と云う、4枚の SP 盤を再生し、これ

をダイレクトカッティングした LP を発売し話題になりました・イラストは野口久光氏)

程なく版権を Savoy が買い取り 16 曲のうち 12 曲を LP 盤に収めたのが Surf Ride です。品のない

ジャケットのイラストが気に入らず、大学生の私はスルーしておりました。

しかし、Savoy はマスターテープを RVG スタジオに持ち込み、しっかり高音質の作品に設えてい

たのを随分後になってから知り、赤ラベルの原盤を必死に探してやっと入手出来たのは割と最近

のこと・爆音さんのお蔭です。

② ⇒ ③ Discovery 盤 Regent/Remaster 盤 トリオ国内盤

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② Art Pepper / Sonny Redd

(Discovery 10-inch DL3023 ⇒ Savoy / Regent MG-6069)

1954/8/25 Recorded at Radio Recorders/Los Angeles/Calif.

Original Discovery Session’s Recording Engineer / Benny Jordan

Remastered Hackensack・RVG Studio / Stamper- Machine RVG

Art Pepper (as)・ Jack Montrose (ts)

Claude Williamson (p) ・ Monty Budwig (b) ・ Paul Ballerina (ds)

A-1 Deep Pueple (Parish) 4:03

Art Pepper Discovery Session の残りテイク4曲に Sonny Redd のリーダー作2曲を加えた編集

盤です。 Savoy の傍系レーベル Regent からの発売ですが、Surf Ride より大分後にマスタリン

グされたようで、刻印が手書きから 器械打ち RVG に変わっています。

③ Very R.A.R.E. (Trio / Japan PAP-9173) 45rpm Record

1979/6/13 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine MASTER BY VAN

GELDER

Roland Hanna (p)・ Art Pepper (as)・ Richard Davis (b)・ Elvin Jones (ds)

B-1 Tin Tin Deo (C.Pozo) 5:22

ジャズ・ジャイアント4名が RVG スタジオ前の森で談笑するジャケット写真が何とも言えないで

すね。長らく第一線から退いていたペッパー、Discovery 録音は LA でしたから、多分 RVG スタジ

オを訪れたのはこの録音が最初で最後かも知れません。

2006 年に出版された「ヴァン・ゲルダー決定盤 101」。当時お付き合いのあった執筆者のひとりか

らアルバム選定の相談を受けた小生はこのアルバムを推薦しただけでなく、現物を北海道支部 N

氏のコレクションから強引に譲り受け提供し、かつ冒頭唯一云々のキャッチフレーズまで考えて

しまいました。昨年の RVG 訃報に際しこのレコードのプロデューサー稲岡邦彌氏の下記ブログ

に、追悼の記載と共に最後に次の様な文章を見付け、不遜ながらひとり喜んでいました。

ちなみにアルバム・タイトルは僕が帰りの飛行機の中で考えた。Richard Davis の「R」、Art

Pepper の「A」、Roland Hanna の「R」、Elvin Jones の「E」を続けて、RARE、very を加えて

『Very R.A.R.E.』。心はお分かりのように、このカルテットが一期一会の「きわめて稀れ」な出

会いであること、さらに、ダイレクト・カッティングであるから「きわめて生に近い」鮮度のあ

るサウンドであること。名は体を表す、を地で行ったネーミングと自負しているのだが..。録

音から 30 年近く経った 2006 年に刊行された『ヴァン・ゲルダー決定盤 101』(音楽出版社)を

見て驚いた。2000 作を超すといわれるルディの生涯録音の中から選ばれた 101 作に、このアルバ

ムが取り上げられていたのだ。曰く「このアルバムはヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音から

マスタリングまで行われた唯一の日本制作盤です」。ちょっと意味合いは違うが、苦労が報われ

た気がした。(稲岡邦彌氏) http://jazztokyo.org/issue-number/no-221/post-8571/

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8.

Sweden Metronome/3 Single-7inch Album Prestige PRLP 7134

Prestige PRST 7632 / Japan Top-Rank Level / TEICHIKU SJ Gold-Disk

Disk Union LP Gatefold Disk Union 7inch・5records box set

① Overseas (Sweden Metronome MEP311 / MEP312 / MEP313 ⇒

Prestige PRLP 7134 ⇒ Prestige PRST 7632 )

1957/8/15 Recorded in Stockholm / Engineer Gosta Wiholm

Remastered Hackensack・RVG Studio / Machine Stamp VAN GELDER in RLP7632

Tommy Flanagan (p) ・ Wilbur Little (b) ・ Elvin Jones (ds)

A-1 Relaxin’ At Camarillo (C.Parker) 3:20

ピアノトリオの大名盤 Overseas は J.J.Johnson Quintet の北欧ツアー時に録音された Sweden 盤

7インチ・シングル3枚が大元ですが、Prestige がリアルタイムで版権を(海を渡って?)譲り

受け、有名な CCC ロゴジャケット LP に仕立てアメリカ発売しました。このレコードは Prestige

全作品の中でも特に人気が高く、その原盤に巡り合う機会が中々ないため、日本では栄えある

Swing Journal Gold Disk 第一弾選定(1967/5)のテイチク盤他、色々形を変えて再発が繰り返え

されています。(最後は VINUS 宣伝の片棒を担いでいた SJ/GD。私が 30 年近く続けた SJ 誌の購読

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を止めた原因です。しかし、昔は良いレコードの発掘をサポートしていましたね!)

本日お聞き頂くのは、赤く冴えないジャケットの Prestige 再発盤。ピアノトリオなのに JJ5 全員

が写真に写り、何と云っても日本では忌み嫌われた Electronically Remastered for STEREO(=通

称ニセステ)の安っぽい HISTRICAL SERIES。ユニオンの餌箱にもよく転がっています。

しかし、1958 年に CCC ロゴをマスタリングした RVG が、1968 年の再発時に改めて自らマスタリン

グを行い、しっかり VAN GELDER と刻むと共に、私の聴感ではモノラルのままで、電気的なステレ

オ分離を無視し、CCC 原盤に準じたマスタリングを賦していると思われます。音の粒立ち・迫力

も如何にも RVG のオト。依って超お薦めの逸品としてご紹介します。(本日の盤はレーベルが紺色

のもの。同じジャケットでも黄緑色のレーベルのものは刻印なしも有るため、ご注意を)

② ③ ④

② We Three (Prestige / New Jazz NJLP 8210)

1958/11/14 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Phineas Newborn Jr. (p) ・ Paul Chambers (b) ・ Roy Haynes (ds)

A-1 Reflection (R.Bryant) 4:23

Roy Haynes のリーダーアルバムはドラマーに有り勝ちなソロの連続があまりなく、人気のレコー

ドが多いですね。このアルバムも Phineas Newborn Jr.が縦横に弾きまくっています。

B 面の After Hours もお聞き頂きたいのですが… (亡き福居良さんの A.H.も最高でした)

③ The Three Sounds (Blue Note BLP1600)

1958/9/16 Hackensack・RVG Studio / Stamper-Machine RVG

Gene Harris (p) ・ Andrew Simpkins (b) ・ Bill Dowdy (ds)

A-1 Tenderly (Gross/Lawrence) 4:33

Blue Note からピアノトリオを1枚となると、先頃亡くなった US Three/Horace Parlan か Tender

feeling/Duke Pearson 辺りを選ぶのが順当ですが、敢えて3Sounds のデビューアルバムをお聞き

ください。RVG がピアノを打楽器として料理している様がこの録音に凝縮しています。

④ A Simple Matter of Conviction (Verve V/8675 ) produced by Creed Taylor

1966/10/4 Englewood Cliffs・RVG Studio / Stamper-Machine VAN GELDER

Bill Evans (p) ・ Eddie Gomez (b) ・ Shelly Manne (ds)

A-4 Laura (J.Mercer/D.Raksin) 4:15

Verve 後半のエヴァンス作品は殆どが RVG の手に委ねられています。

プロデューサー・Creed Taylor の意向が大きく影響しているからでしょうか。

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ABC パラマウント・レコードのプロデューサーであったテイラーは、1960 年に同社内にジャズ専門レーベルインパル

ス!レコードを発足。しかし翌年の 1961 年にヴァーヴ・レコードに移籍する。1967 年に A&M レコード内に CTI レコード

(Creed Taylor Issue)を発足、1970 年に独立し、正式名称を Creed Taylor Incorporated に変更。1974 年には CTI の

傍系レーベルとしてソウル・ジャズ、黒人ミュージシャンを中心とした KUDU(クドゥ)をスタート。テイラーはジャズの大

衆化を図り、クロスオーバー(フュージョンの前身)のブームを作った。また、アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・

ジルベルト等ブラジルのミュージシャンを起用し、ボサノヴァをアメリカで普及させた

上記は Wikipedia のコピペですが、後段はあの Verve の大ヒットアルバム Gets/Gilberto/イパネ

マの娘/も彼のプロデュースだったと云えば納得頂けると思います。(残念ながら RVG 録音ではあ

りませんが) テイラーは RVG を重用し、レコード会社を移籍しても自身が関わる作品の録音の

殆どを委ねました。逆にテイラーの去った後のレコード会社は、目に見えて RVG を起用する機会

が減って行きました。彼が 1967 年 CTI レーベルを立ち上げた以降、A&M 時代の 32 作品、

CTI/KUDO の 100 超の作品ほぼ全ての録音は RVG スタジオで行われました。(大ヒット作・デオダ

ート/ツアラトウストラはかく語りきも!) RVG が CTI の実質専属時代はレーベルが破産する

1978 年まで 10 年以上も続きます。

① ②

① California Dreaming (Verve V6/8672 ) produced by Creed Taylor

1966/9/14-16 Englewood Cliffs・RVG Studio / Machine Stamp VAN GELDER

Wes Montgomery (g)・Herbie Hancock (p)・Richard Davis (b)・Grady Tate (ds) and more

Arranged and conducted by Don Sebesky

A-1 California Dreaming (J.Phillips) 3:08

ママス&パパスの大ヒット曲をカバーしたアルバムで、随分と売れたようです。しかし、当時の

煩型ジャズファンからは、ウエスもコマーシャルな音楽に堕落したと、軽く見られるような風潮

もありました。しかし、今じっくりと聞き直すとウエスのギターソロは限りなくスイングしてい

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て、オーケストラとの掛け合いも絶妙です。大編成の録音が可能になった新 RVG スタジオの面目

躍如の結果だと思います。

② Road Song (A&M SP3012 ) produced by Creed Taylor

1968/5/8 Englewood Cliffs・RVG Studio / Machine Stamp VAN GELDER

Wes Montgomery (g)・ Herbie Hancock (p)・Richard Davis (b)・Ray Barretto

(percussion)

Ed Shaughnessay (ds) and more ・ Arranged by Don Sebesky

A-3 Fly Me To The Moon (B.Howard) 2:50

Herb Alpert’s Tijuana Brass/Sergio Mendes & Brasil’66 そして Carpenters と次々ポピュラー

界で大ヒット作を送り出した新興レーベル「A&M」が立ち上げたジャズシリーズ「A&M/CTI」。

ウエスも A Day In The Life / Down Here On The Ground そして本作と、立て続けに人気盤を

リリース。しかし、これからと云う時の 1968/6/15、心臓発作が彼を襲いました。

この録音は図らずしもウエスの遺作となってしまいました。

③ Free (CTI / CTI6020 ) produced by Creed Taylor

1972/5-6 Englewood Cliffs・RVG Studio / Machine Stamp VAN GELDER

Airto Moreira(percussion) ・ Joe Farrell (ss / fl / alto fl) ・ Hubert Laws (fl)

Keith Jarrett (p) ・ Ron Carter (b) ・ George Benson (g)

B-2 Lucky Southern (K.Jarrett) 2:35

Airto Moreira(percussion) ・ Joe Farrell (ss / fl ) ・

Chick Corea (p) ・ Nelson Ayres (el.p) ・ Ron Carter (b)

B-3 Creek [Arroio] (V.Brazil) 6:00

CTI レーベルの最高傑作は何と云っても Jim Hall/アランフェス協奏曲の Paul Desmond アルトソ

ロだ!と思っている私、プログラムに何とか入れたくとも長尺を理由に断念。しかしながら3月

爆音マスターが銀座例会でご披露頂いたことを知り「我が意を得たり」と嬉しくなりました。

本日ご紹介の盤は70年代初頭、一世を風靡したあの Return to Forever のメンバーが一同に会

し、随分話題になったレコードです。リーダーの Airto Moreira は 1971 年 Weather Report 第1

作にも参加した時代の寵児。B面の2曲では若かりし二大ピアニストのファンキーなソロが聞け

ます。なお、Creek の前半に聞こえるエレピのソロは Chick Corea ではないようです。

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私が大学時代に買ったアイアートのキング国内盤は VAN GELDER 刻印の有るスタンパーを、そのま

ま輸入して日本プレスしていた逸品でした。

逆に、このキング/CTI 盤以外の日本盤で、USA 原盤のレコードを、USA から RVG スタンパーを輸

入して国内プレスしたケースの確認を、私は出来ていません。

また、CTI の USA 原盤は通常のレコード番号に並列して、レーベル面に RVG マスター管理番号と

思われる記号が印刷されています。Free のレコード番号は CTI6020、その下に RVG87676A(A

面)の記載があります。そしてレコード内周には VAN GELDER 刻印と共に、RVG 自身の懐かしい手

書きと思われる字で RVG87676A-1 が刻み込まれています。

これはもう CTI と RVG の蜜月関係を象徴する何よりの体裁だと思います。

・・・・Coffee Break・・・・

① ② ③

① Pioneering Sounds in Jazz (Pioneer Audio Lab Record PDX-1003 )

録音場所 / テイチク会館 第一スタジオ・東京,

録音技師 / 菅野 沖彦 ・ 録音年月は不明、但し多分 1970 年代末~80 年代初頭頃

Remastered at RVG Studio,Englewood Cliffs /Stamper- Machine VAN GELDER

五十嵐 明要 (as)・ 岡崎 広志 (ts / as / fl) ・ 伏見 哲夫 (tp)

八城 一夫 (p) ・ 原田 政長 (b) ・ ジミー 竹内 (ds)

A-3 Midnight Sun Will Never Set (Q.Jones ) 5:18

パイオニアがステレオ販促を兼ねて企画したレコード。日本のベテランジャズメンの演奏を菅野

沖彦氏が録音し、当時ブランド化しつつあった「RVG」にカッティングを依頼。また日本人の RVG

信仰を擽るが如く、本人の写真をトリミングしサインまであるジャケットに惹かれた御仁(私の

ことです)も多く、当時は随分売れたようです。今でも中古をたまに見かけますね。

しかしながら、表舞台に立つことを極端に嫌って来た RVG ご本人は、このジャケットを手に取

り、どんな感想を持ったのか、知りたいですね。

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② The RVG Album – Jazz From Rudy Van Gelder

(Toshiba EMI/Japan TOCJ66060/CD)

1 2 3 4 5

6 7 8 9

1. Blue Train (1577) /John Coltrane

2. Moanin’ (4002) / Art Blakey

3. Remember (4031) / Hank Mobley from Soul Station

4. Hush (4101) / Donald Byrd from Royal Flash

5. Just One More Change (4093) / Ike Quebec from Heavy Soul

6. Cheese Cake (4112) / Dexter Gordon from Go

7. Midnight Blue (4123) / Kenny Burrell

8. The Sidewinder (4157) / Lee Morgan

9. Song for My Father (TOCJ68044) / New Directions/1999/5

レコード(アナログ盤)とは製作工程が全く異なる CD が主流となった 80 年代後半以降、RVG は

新規の録音を継続する傍ら、彼流のデジタルマスタリング技術の研究を行ってノウハウの蓄積に

努めていたようです。1998 年、東芝 EMI からのオファーでスタートした、CDの 24bit by RVG シ

リーズ。過去に RVG が録音した Blue Note の 1500 番台/4000 番以降の旧作マスターテープから

RVG 自身が直接デジタルマスタリングを施した CD の企画は大好評となり、Blue Note の主要作約

360 タイトルが発売。後に Prestige 等の旧作も加わり、ジャズ CD 再発の一大潮流となりまし

た。RVG 自身も亡くなるまでの 20 年近くの期間、この膨大な作業に没頭していたようです。

1998 年、24bit by RVG シリーズの発売に合わせリリースされたのが、RVG 自身が録音した全 Blue

Note 楽曲の中から思い出深い上記の9曲を選定・収録した日本企画の CD・「The RVG Album –Jazz

From Rudy Van Gelder」です。 (RVG フリークを自認する小生ですが、どういう訳かこの CD は

持っていないため、本日は自宅スピーカーの間に常にこの CD を奉納・鎮座させている北海道支部

N 氏に懇願してお借りし持参しました)

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③ From Hackensack To Englewood Cliffs / Ike Quebec

(Toshiba EMI/Japan TOCJ66083/CD)

1959/7/1 Hackensack・RVG Studio

Ike Quebec (ts) ・ Edwin Swanston (org) ・ Skeeter Best (g) ・

Sonny Wellesley (b) ・ Lles Jenkins (ds)

3. Blue Monday (Sharp/Fisher/Singleton) 5:03

1969/7/20 Englewood Cliffs・RVG Studio

I Ike Quebec (ts) ・ Same member above 1959/7/1 session

10. Up Tight (I.Quebec) 5:04

ミュージシャン兼 AR マン(Artist & Repertoire)兼 NY と RVG スタジオ間の運転手としてライオン

を支えたケベック。下記➃1985/2/22 One Night With Blue Note のステージ・スピーチにて、ラ

イオンはブルーノートを支えた功労者として、Francis Wolf(相棒&写真家), RVG, Read

Miles(ジャケットデザイナー)と共に,亡きケベックの名前を挙げて「長い年月、私を次から次へ

と新しいタイプの音楽へ案内してくれたのはこの人です」と感謝の言葉を捧げています。

そんなケベックへのライオンと RVG からの洒落た計らいの記録を収めたのがこの日本企画の

CD。Hackensack Studio 最後の録音、そして Englewood Cliffs Studio 口開けの録音と云う二つ

の栄誉を、共にケベックに献上したのであります。

➃ One Night With Blue Note Preserved(Manhattan/Capitol BTDK-85117

⇒Toshiba EMI/Japan BNJX-91006~9)

1985/2/22 Town Hall / New York City

RVG のスピーチ One Night With Blue Note のステージにて

「私が言えることは、ブルーノートのオリジナル・チームに参加する機会を与えてくれたアルフ

レッド・ライオンにありがとうと言うことだけです。それにしてもアルフレッドを納得させるに

は、長い年月がかかりました。実はまだその努力中でもあるんですが(笑)。すべてはひとえに、

あなた(アルフレッド)の辛抱強さと楽観的性格のおかげです。どうもありがと。(拍手)」東芝

4枚組日本盤にのみ、当日のステージ・スピーチ集が特典 EP に収められ封入されています。

A.Lion / R.Lion / Rudy Van Gelder/ Read Miles、司会の Michael Cuscuna に加え、当日

体調が思わしくなく演奏に参加出来なかった Hank Mobley 生前の肉声が聞けるお宝 EP 盤です

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With Tape Recorder & Monitor Speaker RVG with Alfred Lion

(Probably ALTEC 604C )

ALTEC 604C / Duplex Speaker Machine Stamp [RVG]

Scully Record Cutting Machine

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大変貴重な Englewood Cliffs RVG Studio 内部の写真、杉製の高い天井に注目ください。奥の録

音ブースは 70 年代に作られたそうです。左写真の右側にあるリハーサル用ピアノ天板には、その

昔モンクがいたずら書きした傷跡が残り、RVG を激怒させたと云う伝説のピアノです。

常盤 武彦氏 レコードコレクターズ 2011/11 月号 記事写真(2011/9/20 撮影)より転載

http://jazztokyo.org/issue-number/no-221/farewell-to-mr-rudy-van-gelder/