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コメの先物市場の活性化神戸大学 岩壷健太郎研究会
梶木挙 二宮憲佑 二田裕太郎 松田莉絵子
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目次
第1章:コメの先物市場の現状
第2章:コメの先物市場の問題点
第3章:分析
第4章:政策提言
第5章:先行研究と本稿の独自性2
第1章 コメの先物市場の現状
3
第1節 上場背景
世界初の先物取引所である堂島コメ会所設立から平成の再上場まで
4
江戸時代の大阪に世界初の先物取引所である堂島会所が設立
太平洋戦争に伴う食糧配給制度実施に伴い廃
止
2005年、2つの取引所からコメの上場申請をするも全中・全農の反対により却
下
2010年に再申請を行い2011年より72年ぶりにコメの先物取引が再開
第2節 商品先物取引とは
ある一定の商品を一定数量予め決められた価格で将来の一定時期に受け渡すという取引
将来の期限が来る前までであれば、その契約と反対の売買を行い、差額を受け渡しをすることにより取引を終了させる、差金決済ができる取引
5
第2節 商品先物取引とは
商品先物取引を行うメリット
1. 当業者が価格変動のリスクをヘッジできる。
2. 投資を行い資産を増やすことができる資産運用効果がある。
3. 先物市場に多くの買い手と売り手の多くが参入することで透明な価格が生まれる。
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第3節 コメの先物市場の現状
⇒ 市場が成長しているとは言い難い7
近年、毎月の出来高が減少している。
⇒ 商品先物市場全体が縮小傾向にあること がわかる。
第3節 コメの先物市場の現状
8
先物市場全体の出来高も減少傾向にある
第3節 コメの先物市場の現状
9
取引高等の減少により市場が縮小傾向にあり、流動性が低いことが原因である。
リスクヘッジ機能、資産運用機能、公正な価格形成機能の三つの機能が効率的に運用されていない。
第2章 コメの先物市場の問題点
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第2章 コメの先物市場の問題点
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コメの先物市場は取引量が減少しており、それは以下の3つに原因があると考えた
1. 高い税制
2. 規制の強化
3. 全中・全農の反対
第1節 高い税制先物取引に係る税と株式に係る税制の比較
現在、先物取引よりも株式取引の方が取引税が 低いため投資のインセンティブが高い ⇒この税制のために先物取引の取引量が減少し てしまった
12
先物取引 株式取引優遇税制下 2014年から
所得税 15% 7% 15%住民税 5% 3% 5%計 20% 10% 20%
第2節 規制の強化
13
第3節 全中・全農の反対
コメの流通システム
⇒消費者に届けられるコメの約 50パーセントはJA等を通しているため、全中・全農が先物市場に反対すると先物市場に流れるコメの量が減少する。14
第3節 全中・全農の反対
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コメの生産量を調整する政策、農業者戸別所得補償制度と矛盾する。
コメという一括りで価格が決定される先物取引は産地銘柄で流通する日本のコメ流通の実態と合わない
コメの先物取引は市場の原理に従うため、需給と価格の安定が保てない
食糧価格の高騰や東日本大震災が発生している中で、投機的なコメ先物取引を検討すること自体が問題
第3章 分析
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第1節 先物市場に対する反対理由の検証
(先物市場に対する反対理由)
1.投機によって価格の乱高下が起こるの ではないか?
2.需給調整の取り組みに悪影響を及ぼす のではないか?
3.産地銘柄で流通する日本のコメの流通 実態には即さないのではないか?
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第1節 先物市場に対する反対理由の検証
1.投機によって価格の乱高下が起こるの ではないか?
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価格の乱高下が抑制される。
故意に価格の乱高下を起こすような取引が行われないかを取引所が監視
農家と投資家、様々なニーズを持った人が先物市場に参加する
第1節 先物市場に対する反対理由の検証
2.コメの生産量を調整する政策に悪影響 を及ぼすのではないか?
19
先物市場が需給調整の取り組みに悪影響を及ぼすとは言えない
現在の農業者戸別所得補償制度と以前の減反政策とは性格が異なる
農家が市場メカニズムに基づいた価格形成を行うことができる。
第1節 先物市場に対する反対理由の検証
3.産地銘柄で流通する日本のコメの流通 実態には即さないのでは?
⇒標準品を定めてその 価格に差をつけるこ とで産地銘柄ごとの 価格の差を出してい る。
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60kgあたり産地品種銘柄 2012年度
1等 2等関東産コシヒカリ 標準品 - 600円( )茨城県産コシヒカリ( )栃木県産コシヒカリ( )千葉県産コシヒカリ
( )福島県産コシヒカリ 会津 - 1,500円 - 500円( )福島県産コシヒカリ中通り - 1,500円 - 2,100円( )福島県産コシヒカリ浜通り - 1,500円 - 2,100円
新潟県産コシヒカリ +2,000円 +1,400円富山県産コシヒカリ + 600円 0円石川県産コシヒカリ + 300円 - 300円福井県産コシヒカリ + 300円 - 300円長野県産コシヒカリ + 300円 - 300円その他府県産コシヒカリ - 300円 - 900円岩手県産ひとめぼれ - 400円 - 1,000円宮城県産ひとめぼれ - 400円 - 1,000円秋田県産あきたこまち - 200円 - 800円山形県産はえぬき - 600円 - 1,200円北海道産ななつぼし - 1,000円 - 1,600円
397北海道産きらら - 1,000円 - 1,600円青森県産つがるロマン - 1,000円 - 1,600円青森県産まっしぐら - 1,000円 - 1,600円
東京穀物商品取引所の格付表
第2節 先物市場との相関関係分析
21
先物市場と株式や国債との相関関係を分析する
先物市場へ投資すると投資の分散効果が得られるか検証
第2節 先物市場との相関関係分析
22
先物市場と株式や国債との相関関係を分析する
先物市場へ投資すると投資の分散効果が得られるか検証
投資の分散効果とは、投資資金を複数の金融資産に
振り分けることによって、投資リスクを分散させる
ことである。
第2節 先物市場との相関関係分析
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先物市場のデータ• コメ• 金• 原油• 砂糖• とうもろこし• 小麦• 大豆• S & P• Rogers
先物市場と相関関係を分析するデータ
• 日本株式 日経 225 TOPIX ジャスダック
インデックス• 消費者物価指数• 円ドルレート• 日本国債
第2節 先物市場との相関関係分析
先ほどの原データをリターンに変換して相関関係を分析する。Log( 対象とする) ×100
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変数 標本 平均 標準偏差 最小値 最大値米(先物価格) 13 0.000000252 3.217943 -6.526834 3.536067
225日経 123 -0.1648461 5.296647 -26.71213 9.034344TOPIX 123 -0.2885935 5.040594 -23.41379 9.616107
ジャスダックインデックス 123 0.0071681 5.392483 -16.65823 16.76165消費者物価指数 151 -0.0222737 0.2836175 -0.8776263 0.7866314
円ドルレート 152 0.1091313 2.279879 -5.890583 10.54564日本国債 152 0.2333715 0.9392178 -4.049466 2.528593
SandP(先物指数) 152 0.3497893 7.20059 -33.12654 17.95267Rogers(先物指数) 152 0.6879857 5.716776 -28.61609 15.43898金(先物価格) 152 1.151724 5.077637 -20.33607 12.90188原油(先物価格) 152 0.9305675 11.08016 -43.93335 31.18287砂糖(先物価格) 152 0.8602557 9.648617 -34.19881 27.36442
とうもろこし(先物価格) 152 0.8848321 9.598384 -27.61036 25.01442小麦(先物価格) 152 0.7978741 8.934191 -31.05338 28.23512大豆(先物価格) 152 0.7771416 9.148592 -40.34807 18.89141
データの価格や指数の変動データの記述統計量資料出所:日経 Financial Quest 、国内指数 Yahoo ファイナンス、関西商品取引所
第2節 先物市場との相関関係分析
今回の分析では期間を 3 つに分けて分析する。
25
2000年1月から2006年12月まで
• Gorton/ 林 /Rouwenhorst の「商品先物:日本の投資家にとっての効用」が発表された2006 年まで。
2007年1月から2011年8月まで
• Gorton/ 林 /Rouwenhorst の「商品先物:日本の投資家にとっての効用」が発表された2006 年からコメの先物取引試験上場が開始される 2011 年 8 月まで。
2011年8月から現在まで •2011年8月にコメの先物取引試験上場が始まってから現在まで。論文提出期限の都合上、2012年9月までのデータを用いて分析を行った。
第2節 先物市場との相関関係分析
今回の分析では期間を 3 つに分けて分析する。
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2000年1月から2006年12月まで
• Gorton/ 林 /Rouwenhorst の「商品先物:日本の投資家にとっての効用」が発表された2006 年まで。
2007年1月から2011年8月まで
• Gorton/ 林 /Rouwenhorst の「商品先物:日本の投資家にとっての効用」が発表された2006 年からコメの先物取引試験上場が開始される 2011 年 8 月まで。
2011年8月から現在まで •2011年8月にコメの先物取引試験上場が始まってから現在まで。論文提出期限の都合上、2012年9月までのデータを用いて分析を行った。
世界金融危機が起こる前
世界金融危機が起こった期間
世界金融危機が起こった後
第2節 先物市場との相関関係分析
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日経 225 TOPIX
ジャスダックインデックス
消費者物価指数
円ドルレート 日本国債
コメ - - - ** ** **
S & P + + ** **
Rogers + + ** ** 金
原油 + + + *** *** **
砂糖
とうもろこし
小麦
大豆 + + + ** ** ** 2011 年 8 月~ 2012 年 9 月のリターンで相関関係を分析した結果
第2節 先物市場との相関関係分析
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2000 年 1 月~ 2006 年 12 月のリターンで
相関関係を分析した結果
日経 225 TOPIX
ジャスダックインデック
ス
消費者物価指数
円ドルレート 日本国債
S & P
Rogers 金
原油
砂糖
とうもろこし
小麦 + *
大豆
日経 225 TOPIX
ジャスダックインデック
ス
消費者物価指数
円ドルレート 日本国債
S & P + + + - *** *** *** ***
Rogers + + + - *** *** *** *** 金
原油 + + + - - *** *** *** *** **
砂糖
とうもろこし
小麦
大豆 + + ** **
2007 年 1 月~ 2011 年 8 月のリターンで
相関関係を分析した結果
第2節 先物市場との相関関係分析
以上の結果から、下の四つのことが分かる。
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コメの先物価格と日本株式との間では負の相関関係があること。
原油や大豆の先物価格やアメリカの先物指数と 日本株式との間では正の相関関係があること。
金、とうもろこし、小麦の先物価格は日本株式や消費者物価指数、円ドルレート、日本国債と無相関であること。
2006年あたりを境に先物価格、先物指数と日本株式との正の相関関係は年々強まってきている。
第4章 政策提言
30
第4章 政策提言
31
私たちは以上を踏まえて3つの政策提言を行う
1. コメの先物市場への投資促進
2. 農家への提言
3. 全中・全農への提言
第1節 コメの先物市場への投資促進
分散投資先としてコメの先物市場
を利用
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第1節 コメの先物市場への投資促進
33
コメの先物市場へ投資することのインセンティブを高めて、投資家の参入数を増やす
コメの先物と株式に同時に投資を行えば投資リスクを分散させることができる
コメの先物価格は日経 225、 TOPIX、ジャスダックインデックスと間に負の相関関係
第2節 農家への提言
日本版Option Pilot
Programの導入
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第2節 農家への提言
日本版 Option Pilot Programとは1. 農家への定額給付金 (15000 円 /10a)の廃止
2. コメの先物市場の参加に対するセミナーへの参加
3. コメの先物市場への参加を条件に、コメのプットオプションを購入する金額を支給
4. 先物市場に参加した農家が決済を行った時に、農家の標準的な生産費に届かなかった場合には農業者戸別所得補償制度の変動支払分で補てん
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第2節 農家への提言
オプションとは?⇒売り手 (農家 )が将来、コメを価格変動の影響を受けずに売りたい価格で売るための権利のこと
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第2節 農家への提言
オプションを購入しない場合
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農家はコメを1000 円 /10kgで売りたいと思う。
しかし、価格が下落し、 500 円になってしまう。
農家は500 円の損失を被る。
第2節 農家への提言
オプションを購入した場合
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農家はコメを 1000 円/10kgで売りたいと思う。
価格が下落し、 500円になってしまう。
オプションを行使することでコメを 1000 円で販売できる。
オプションの行使により農家は 500円分の損害を回避できる。
第2節 農家への提言
オプション購入を勧める理由1. オプションの買い手 (農家 )はオプション購入の価格を支払うだけで、売りたい価格でコメを売ることができるため
2. そしてこのオプションの購入費用を政府が負担するため農家はリスクなしで先物市場に参加することができるため
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第3節 全中・全農への提言
コメの先物市場への参加
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第3節 全中・全農に対する提言
JA グループの現状①
⇒農業に従事している正組合員が減少しており、 JAの農業へ分野への影響力に陰りが見える
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第3節 全中・全農に対する提言
JA グループの現状②
⇒JAは信用事業と共催事業から成り立っており、全農が担当している経済事業のみでは組織が存続できない
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第3節 全中・全農に対する提言
この他にも「 JA 越前たけふ」など全中・全農から離れていく地方農協も存在している。
全中・全農の影響力の低下
コメの先物市場に参加していくことで新たな役割を担うようになる。
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第3節 全中・全農に対する提言コメの先物市場に対して全中・全農が果たすと期待される役割
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全中・全農は農家や市場への影響力を保持したまま、先物市場を活性化させることができる。
農家と市場をつなぐ窓口としての役割を果たすことで農家の商品先物市場価格への参加を促す
コメの先物価格がファンダメンタル価値よりも外れていると判断した時に売り買いによって利益を上げることも可能
価格の乱高下が見られた時には、適正な価格を保つように取引を行うことで農家の利益を守ることできる
第4章 政策提言
コメの先物市場への投資促進 ⇒市場を分散投資先として提言
農家への提言 ⇒日本版 Option Pilot Programの導入
全中・全農への提言 ⇒コメの先物市場への参加
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第5章 本稿の独自性
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第1節 本稿の独自性
分析1. コメの先物価格と日本株式、日本国際、消費者物価指数、外国為替との相関関係分析を3つの期間に分けて行った点
政策提言1. 投資家に分散投資先としてコメの先物市場を勧めている点
2. 日本版 Option Pilot Programの導入
47
参考資料
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参考資料
先行論文1. ・立正大学経済学部教授 林康史(2012)「商品先物市場の現状と総合取引所
構想」 『全国銀行協会』2012年金融p12〜262. ・神戸大学経済学部 岩壷研究室(2008)「原油価格と商品先物市場 原油価
格高騰下の背景には」『2008年度ISFJ論文集 金融部門』3. ・経済産業課 岡田悟(2008)「商品先物市場をめぐる現状と課題」『国立国
会図書館鵜及び立法考査局』調査と情報(615)p1-11,巻頭1p4. ・立命館大学 古川研究会(2007)「ブランド米戦略 コメ先物市場導入を通
じて」『2007年度ISFJ論文集 農業部門』5. ・高本茂(1997)「江戸時代米先物取引についての一考察」『兵庫大学論文集
2』p41-516. ・高本茂(1995)「日本の株価変動と先物取引」7. ・宮本又郎(1998)「近世日本の市場経済」8. ・Gary Gorton/林文夫/K.Geert Rouwenhorst(2006)「商品先物:日
本の投資家にとっての効用」9. ・武蔵大学 大野早苗、茶野努(2012)「コモディティ市場は金融市場化した
のか?―構造 VAR に基づく検証―」http://www.jsmeweb.org/kinyu/pdf/12s/12s-108ohnosanae.pdf 49
参考資料
参考文献1. ・三次理加(2010)『商品先物市場の仕組み 資産運用からリスクヘッジ機能まで』株式
会社PHP研究所2. ・島実蔵(2011)『歴史に学ぶお米の先物取引 平成の上場 暴挙か英断か』株式会社原書
房3. ・『コメ先物分析ガイド』(2011)株式会社米穀データバンク4. ・木原大輔(2005) 『最新 商品先物取引の仕組み』日本実業出版社5. ・「商品価格と投機(下)」 日本経済新聞朝刊2011/6/17 P256. ・ゲイリー・ゴートン、K・ゲールト・ルーヴェンホルスト 林康史+望月衛 訳(2006)7. 「商品先物の実話と神話 資産運用における商品投資の有効性について」日経BP社8. ・JA全中 「米の先物取引に関するJAグループの基本的な考え方について」9. (http://www.zenchu-ja.or.jp/release/pdf/1305542020.pdf) 2012/09/11
データ取得10. ・東京穀物商品取引所「Mrトーコクの「農産物先物取引」講座」11. (http://www.tge.or.jp/japanese/simulation02/what/pl.html)2012/9/10
データ取得12. ・全農 「米穀事業(小麦の販売)」13. (http://www.zennoh.or.jp/operation/index.html)2012/10/15データ取得14. ・農林水産省HP 「2 農業者戸別所得補償制度と生産・経営関係施策の実施」15. (http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h23_h/measure/t4_02.html)
2012/09/11データ取得
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参考資料
データ出典1. ・日経Financial Quest
http://finquest.nikkeidb.or.jp/ver2/online/2. ・国内指数Yahooファイナンス
http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=998407.O
3. ・関西商品取引所 http://www.kanex.or.jp/other/kome.html
4. ・東京穀物商品取引所 http://www.tge.or.jp/japanese/index.shtml
5. ・日本商品先物振興協会 http://www.jcfia.gr.jp/index.html#5
6. ・農林水産省 http://www.maff.go.jp/7. ・経済産業省 http://www.meti.go.jp/ 8. ・世界経済のネタ帳 http://ecodb.net/
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ご清聴ありがとうございました
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