Upload
others
View
2
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
物数 I.1
1 3次元のベクトルとその演算
1.1 ベクトルとスカラー¨§
¥¦香中 p.2
始点 を O, 終点 を P とする矢印を, ベクトル−→OPという. A =
−→OP などとかく.
この矢印のように, 大きさと方向の両方のある量を ベクトル という.
大きさだけのある量を, ベクトルに対して スカラー という.
大きさと向きが両方等しければ, (始点
が違っても)ベクトルは等しい. つまり,
平行移動 して重なるようなベクトル
は等しい.
A =−→OP =
−→QR.
ベクトルの例: 風 (風向きと風力). スカラーの例: 温度.
記号の使い方
• ベクトルは r や A のような傾いた太い字 (または ~r のように)で表わす.
• スカラーは r のような傾いた細い字で表わす.
• 点の名前や単位は O,P,Q,R, m, kg のように立った細い字で表す.
1.2 ベクトルの演算¨§
¥¦香中 p.3¨§
¥¦和達 p.21
ベクトルの和
一般に, ベクトルC = A + B とは, A と B を 2辺とす
る平行四辺形の対角線のベクトル.
ベクトルとスカラーの積
ベクトル A と スカラー c の積 B = c×A は, ベクトルであり,
• 大きさは A の |c| 倍.
• 向 き は, c > 0 なら同じ向きc < 0 なら逆向き. c = 0 なら, あとで出て
くるゼロベクトルになる.
ベクトルのスカラー倍ともいう.
A
B A+B
A-A 2A
0
物数 I.2
ベクトルの差
ベクトル A とベクトル B の差 C = A−B とは, ベクトルであり,
C = A−B = A + ((−1)×B) (2.1)
ゼロベクトル
A−A や, 0×A は, ゼロベクトル 0 である.ゼロベクトルは, 大きさは 0 で, 向きはない.
0×A = 0×B = A−A = B −B = 0. (2.2)
ベクトル, スカラーについては, 普通の数であるかのように展開して計算してよい.
例: 2(3A−B) = −2B + 6A.1.3 ベクトルの座標表示
¨§
¥¦香中 p.9
ベクトルを, やっぱり, 絵じゃなく数字で表わしたい!
図のように, 原点 O で垂直に交わる x-軸, y-軸を平面に描く. x-軸, y-軸には向きがあり, x-座
標, y-座標がある. x-軸, y-軸に垂線を下ろして x-座標, y-座標をよみとる.
この
A =
2
3
=
Ax
Ay
x-成分
y-成分(2.3)
を ベクトルの座標表示 または 成分表示 という. 2
を x 成分, 3 を y 成分という.
横に A = (2, 3) のように書くこともある.
x
y
O
A=( )23+2
-2
-2 +2
P
物数 I.3
成分で書いた ベクトルの和とスカラー倍
ベクトル
A =
Ax
Ay
, B =
Bx
By
(3.4)
とスカラー c に対して,
A+B =
Ax + Bx
Ay + By
c×A =
c× Ax
c× Ay
(3.5)
である.
x
y
O
A
B
A+B
-A
1.4 3次元の座標系¨§
¥¦和達 p.22¨§
¥¦香中 p.13
互いに直交する x,y,z の 3つの座標軸を使う.
3次元のベクトル A の始点を原点に置いたとき, 終点の
座標を A の x, y, z 成分といい, Ax, Ay, Az と書く.
A =
Ax
Ay
Az
x-成分
y-成分
z-成分
(3.6)
ふつうは, 右手を開いたときの親指方向を x, 人指し指方向を y, 中指方向を z 軸の正の方向に
とる. (右手座標系と呼ぶ.通常こちらを使う.)
左手を使うと, z 軸の向きが逆になる. (左手系と呼ぶ.特に理由がなければ使わない.)
物数 I.4
1.5 基本ベクトル¨§
¥¦香中 p.14
単位ベクトル : 大きさが 1 のベクトル.
x,y,z 軸の正の向きの単位ベクトルを 基本ベクトル と
いい,
i =
1
0
0
, j =
0
1
0
, k =
0
0
1
(4.7)
と書く. これらを用いると,
A =
Ax
Ay
Az
= Axi + Ayj + Azk. (4.8)
x, y, z 軸を右親人中指にとるとき, ベクトルの 3 個組
〈i, j,k〉 は 右手系 だという. 〈i, j,−k〉 は右手系じゃない.
1.6 内積 (スカラー積)¨§
¥¦香中 p.4
ベクトル A の大きさ (長さ,絶対値)を |A| と書く (絶対値と同じ記号). |A| はスカラー (実数).2つの 3次元ベクトル A,B に対して, 次の式で計算され
るスカラー A ·B のことを 内積 という.
A ·B = |A| × |B| × cos θ. (4.9)
ベクトル A,B,C, スカラー c に対して, 普通の数であるかのように,
(2A + B) ·A = 2A ·A + A ·B
のように展開したりしてよい.
基本ベクトル i, j, k は互いに直交していて大きさ 1なので,
i · i = j · j = k · k = 1. (4.10)
i · j = j · k = k · i = j · i = k · j = i · k = 0. (4.11)
物数 I.5
内積 A ·B の成分表示¨§
¥¦香中 p.16
A ·B =(Axi + Ayj + Azk) · (Bxi + Byj + Bzk)
=(AxBxi · i + AxByi · j + AxBzi · k)
+(AyBxj · i + AyByj · j + AyBzj · k)
+(AzBxk · i + AzByk · j + AzBzk · k)
= AxBx + AyBy + AzBz
(5.12)
仕事 (スカラー)は, 力 (ベクトル) と変位 (ベクトル)の内積.
ベクトルの大きさ (内積の使い道 1)
[b] 三平方の定理を 2回使うと, ベクトル A の絶対値 |A|は
|A|2 =(√
A2x + A2y
)2+ A2z = A
2x + A
2y + A
2z = A ·A
(5.13)
[t]
内積の使い道 2: ベクトル A と B のなす角度
内積の定義の式 (4.9)を逆に使うと,
cos θ = A·B√A·A×
√B·B
(5.14)
で, ベクトル A と B のなす角度 θ が計算できる.
(例題 1) A =(
110
),B =
(011
)とする. A ·B, |A|, およびA,B のなす角 θ は?
物数 I.6
1.7 外積 (ベクトル積)¨§
¥¦香中 p.6
2つの3次元ベクトルA,B に対して,次の式で表わされるベクトル C = A×B のことを 外積という.
この記号 ‘×’ は新しい記号.(実数のふつうの ‘かける’ とたまたま同じ文字だが意味は異なる).
C = A×B = |A| |B| (sin θ) Ĉ (6.15)
ただし, Ĉ は, A と B の両方に垂直な単位ベクトルで, 〈A, B, Ĉ〉 が右手系をなすようなもの.
別の言い方:
C ⊥ A, C ⊥ B で, C の向きは, Aから B に回る右ねじが進む向き.
大きさは |C| = |A||B| sin θ = A,Bのはる平行四辺形の面積.
外積 (ベクトル積)と内積 (スカラー積)を混同しないよう注意
A×B :ベクトル , A ·B :スカラー (6.16)
A×A = 0 , A ·A = |A|2 (6.17)
A×B = −B ×A , A ·B = B ·A (6.18)
( ) をはずすときはふつうの数であるかのように展開してよい.
計算例 (A + B)×A = A×A + B ×A = 0−A×B (6.19)
基本ベクトルの間の外積
i× i = 0, j × j = 0, k × k = 0. (6.20)
i× j = +k, j × k = +i, k × i = +j, (6.21)
j × i = −k, k × j = −i, i× k = −j. (6.22)
i, j,k が 循環的 (cyclic)に入れ替わってることに注意. i → j → k → i.
物数 I.7
外積 A×B の成分表示¨§
¥¦香中 p.16
A×B
=(Axi + Ayj + Azk)× (Bxi + Byj + Bzk)
=(AxBxi× i + AxByi× j + AxBzi× k)
+ (AyBxj × i + AyByj × j + AyBzj × k)
+ (AzBxk × i + AzByk × j + AzBzk × k)
= (AyBz − AzBy)i + (AzBx − AxBz)j + (AxBy − AyBx)k.
(7.23)
x, y, z が循環的に入れ替わってることに注意. x → y → z → x.覚え方
A×B = =
∣∣∣∣∣∣Ay Az
By Bz
∣∣∣∣∣∣
∣∣∣∣∣∣Az Ax
Bz Bx
∣∣∣∣∣∣
∣∣∣∣∣∣Ax Ay
Bx By
∣∣∣∣∣∣
=
Ay Bz − Az ByAz Bx − Ax BzAx By − Ay Bx
(例題 2)
A =
2
3
0
, B =
−1−4+5
に対して, 外積 B ×A を計算しよう.
フレミングの左手の法則やローレンツ力は, 外積で簡単に書ける:
F = I ×B, F = q(E + v ×B).
物数 I.8
2 内積と力のバランス
内積の直観的な意味 → 射影
力はベクトル¨§
¥¦香中 p.3
F
F F=F +F
1
2 1 2
F
FF
F
F
n
1
23
4
力 は向きと大きさを持ち, ベクトルで表される. 大きさの単位はニュー
トン N=kg · m/s2.物体に, 2つの力 F 1 と F 2 が同時にはたらいているのは, 1つの力 ( 合力 )
F = F 1 + F 2 がはたらいているのと同じこと.
物体にはたらくすべての力の合力が
F = F 1 + F 2 + · · ·F n = 0 (8.1)
のとき, 力は つりあっている , あるいは つりあいの状態にある という. このとき, 止
まっていた物体は止まったまま.
ベクトルの和と綱引き
図の場合, F 1 + F 2 = 0 のときつりあっている.
力の大きさ f1, f2(> 0) で書くと,
f1 = f2 つまり f1 − f2 = 0 (8.2)
がつりあいの条件.
f f
F F
1
1 2
2
x
f1 と F 1 の関係
f1 = |F 1|(> 0), f2 = (> 0), (8.3)
F 1 = ,F 2 =
+f2
0
0
. (8.4)
力 F 1, F 2 はベクトル, 力の大きさ f1, f2 はスカラー.
物数 I.9
(例題 3)
マルチ綱引きの 4チームが, F 1,F 2,F 3,F 4 の力で引いたところ, つりあいの状態になって綱は
動かなかった.
F 1 =
1
3
0
, F 2 =
−22
0
, F 3 =
1
−40
(9.1)
のとき, F 4 を求めよう. いちばん力の大きいチームはどれ?
F
FF
F
F
n
1
23
4
物数 I.10
ベクトルの内積と列車の綱引き
線路上しか動けない列車に綱をつけて綱引き
F 1 を線路に平行なベクトルF 1‖ と垂直なベクトルF 1⊥
に分解して考える.
F 1 = F 1‖ + F 1⊥ (10.1)
列車の動きに関係あるのは線路に平行なベクトル F 1‖ だ
け. 列車が動かないためには,
F 1‖ + F 2‖ = 0つまりF 1‖ = −F 2‖ (10.2)
であればいい. 両辺の絶対値をとると,
|F 1| cos θ = |F 2| cos(π − φ). (10.3)
この条件は内積を使うともっと簡単に書ける!
u
F
F
1
2
θ
φ
π−φ
A
線路に平行な (単位ベクトルと限らない)ベクトルを A とする.
ベクトルF の, ベクトルA の向きの成分は, F · u = |F | cos θただし, u = 1|A|A は A と同じ向きの単位ベクトル.
線路上しか動けない列車のつりあいの条件は
F · u = (F 1 + F 2 + · · ·F n) · u = 0 (10.4)
つまり, 合力 F の, (線路に平行な)ベクトル A の向きの成分が 0になること. 成分 F · u は,合力が A の向きにどれだけはたらくかを表す量.
上の力 2個の場合に, この条件は, |u| = 1 より,
0 = (F 1 + F 2) · u =F 1 · u + F 2 · u = |F 1||u| cos θ + |F 2||u| cos φ
=|F 1| cos θ − |F 2| cos(π − φ).(10.5)
たしかに同じ条件になっている!
【注意】:
F 1‖ = (F 1 · u) u (10.6)
物数 I.11
(例題 4)
まっすぐな線路が, ベクトルA =
1
−20
に平行に走っている.
1. 線路に平行な単位ベクトル u を求めよう.
2. 列車に力F 1 =
2
0
0
,F 2 =
−11
0
が加わっている. 線路に平行な力 F 3 を加えて列
車を動かないようにするには, F 3 はどのようなベクトルであればいいか考えよう.
3. 力の大きさ |F 3| を求めよう.
(答 1) |A| =√
1 + (−2)2 =√
5より
u =1√5
(1 , −2 , 0
)(11.1)
(−1 倍も可)
(答2,3) F 1 + F 2 =(1 , 1 , 0
)より (F 1 + F 2) · u = − 1√
5となる.
従って,F 3 = Fu とおくと, 線路に平行な力の成分のつりあいの式
0 = (F 1 + F 2 + F 3) · u = (F 1 + F 2) · u + F u · u = − 1√5
+ F (11.2)
より F =
√5
5となる.つまり, 力の大きさは
√5
5であり
F 3 =1
5
1
−20
. (11.3)
となる.
ポイント 1: A の向きの単位ベクトルはu =1
|A|A.ポイント 2: fu の大きさは |f |.
物数 I.12
力以外にも ‘何とか向きの成分’ は使える
(例題 5)
北が y 軸の正の向き, 東が x 軸の正の向き, 上が z 軸の正の向きであるような右手系をとる。
1. 南向きの単位ベクトルを成分表示で書こう。
2. 北西向き (北と西の中間 45◦の向き)の単位ベクトルを成分表示で書こう。
3. 北西向きに 3km進んだ。 これは, 北向きにはどれだけ進んだことになる?
4. 北向きに 2km, 次に東向きに 1km進んだ。これは, 北西向きにはどれだけ進んだことに
なる?
(答)
1. s =(0 , −1 , 0
)2. u =
1√2
(− 1 , 1 , 0
)
3. 3u ·(0 , 1 , 0
)=
3√2
4.(1 , 2 , 0
)· u = 1√
2
内積 A ·B のイメージ A と B の協力度みたいなもの
• 2つのベクトルの向きが近いほど正で大きい. cos 0 = 1
• 2つのベクトルの向きが反対だと負. cos π = −1
• 2つのベクトルの向きが直交してると零. cos π2
= 0. A ·B = 0.
• 仕事 (スカラー)は, 力 (ベクトル) と変位 (ベクトル)の内積.
• B · u = B · A|A| は, B の A 向き成分.
x
y
i
A
A i
u
A u
(A i)
(A u)u
.
.
..
L
i
i,u は単位ベクトル.
A · i: ベクトル A の x 成分 (i 向きの成分)(A · i) i: ベクトル A の x 軸への 射影 .A ·u: ベクトル A の (有向)直線 L 成分 (u 向きの成分)(A · u) u: ベクトル A の直線 L への 射影 .
物数 I.13
3 回転のバランスと外積, ベクトル3重積
やじろべえ¨§
¥¦香中 p.5,7
右の図のような原点で支えられたやじろべえが回転しな
い (つりあいの状態にある)条件は,
|F 1| : |F 2| = |r2| : |r1|. (13.1)
じゃあ, 斜めに引っ張る場合は? x
y
z
F
F
r r1
1
2
2
2
1
N
N
F 1 を, r1 に平行, 垂直に分解して得られるベクトルを
F 1‖, F 1⊥ とする.
垂直なベクトル F 1⊥, F 2⊥ がやじろべえの動きに効く.
回転についてのつりあいの条件は
|F 1⊥| : |F 2⊥| = |r2| : |r1|. (13.2)
つまり |F 1| sin θ : |F 2| sin φ = |r2| : |r1|. (13.3)
y
x
z
F
F
r r
1
2
2
1θ
φ
実は, これはベクトルの外積を使うと便利に書ける.¨§
¥¦香中 p.7
n 個の力がはたらいているとき,
N 1 = r1 × F 1, N 2 = r2 × F 2, · · · ,Nn = rn × F n (13.4)
とおく. これらを, (原点のまわりの) 力のモーメント という.
単位はニュートンメートル N ·m.原点のまわりの回転についてのつりあいの条件は, 原点のまわりの力のモーメントの
和がゼロになること:
N = N 1 + N 2 + · · ·Nn = 0 (13.5)
上の n = 2個の力の場合には,
N = r1 × F 1 + r2 × F 2 = 0.
ここで, 外積の定義を使う.
物数 I.14
0 =|r1||F 1|(sin θ)(−i) + |r2||F 2|(sin φ)(+i)
=(−|r1||F 1| sin θ + |r2||F 2| sin φ)i
よって, 同じ式
|F 1| sin θ : |F 2| sin φ = |r2| : |r1|. (14.1)
が得られた.
やじろべえの回転する向き
N =r1 × F 1 + r2 × F 2
=
0
2
0
×
0
0
−1
+
0
−10
×
0
0
−3
=
1
0
0
6= 0
(14.2)
で, つりあっていないので回転する. でも, どっちに?
x
y
z
F
F
r r
1
2
2
1
回転の向き
• 回転軸はN に平行.
• 回転の向き (図で, 時計回りまたは反時計回り)は, N 向きに進む 右ねじ の回る向き.
3次元やじろべえと外積
x
y
z
FF
r
1
2
3
r1
r3
F2
立体的なやじろべえのときも同じ.
N = 0 ならつりあってる. (回転しない.)
N 6= 0 なら,
• 回転軸はN に平行.
• 回転の向き (図で, 時計回りまたは反時計回り)は, N 向きに進む右ねじの回る向き. · · · 右ねじの向き
物数 I.15
外積 A×B のイメージ A と B のはった網みたいなもの
• 2本の棒 A,B を使って網を張るような感じ.
• 網の正対する向きが C = A×B の向き. (表裏あり)
• 網の面積, つまり平行 4辺形の面積が |C| = |A×B| . 2本の棒が違う方向を向いてるほうがたくさん魚がとれる.
• フレミングの左手の法則とか, これで簡単に書ける. F = I ×B.
スカラー 3重積¨§
¥¦香中 p.7
B ×C はベクトル. ということは, A · (B ×C) はスカラーになる. これをスカラー 3重積という.
下の図から, 絶対値 |A · (B ×C)| は, A,B,C を 3辺とする平行 6面体の体積 .
体積だから, A, B,C を
循環的に変えても等しい.
A · (B ×C) = B · (C ×A) = C · (A×B) = −C · (B ×A) . (15.1)
物数 I.16
(例題 6-1)
ベクトルA = (0 , 0 , 1), B = (1 , 1 , 1), C = (1 , −1 , 1) とする.
1. B,C を 2辺とする平行 4辺形の面積を求めよう.
2. A,B, C を 3辺とする平行 6面体の体積を求めよう.
(答)
1. B × C = (2 , 0 , −2) なので,平行 4辺形の面積は |B ×C| =√
22 + (−2)2 = 2√
2 と
なる。
2. スカラー 3重積A · (B ×C) = −2 より平行 6面体の体積は |A · (B ×C)| = 2 となる。
(例題 6-2)
原点を中心に回転するやじろべえを考える。
r1 = (0 , 2 , 1) の点に力F 1 = (0 , 2 , −1) を,r2 = (0 , −1 , 0) の点に力 F 2 = (0 , −1 , −2) を加える。右の図 (ベクトルは正確ではありません)のように x 軸の
正の向きから見たとき, やじろべえは時計回り, 反時計回
りどちらに回るか考えよう。
y
x
z
F
F
r r
1
2
2
1θ
φ
(答)
N 1 = r1 × F 1 = (−4 , 0 , 0) , N 2 = r2 × F 2 = (2 , 0 , 0) (16.1)
より,N 1 + N 2 = (−2 , 0 , 0) は x 軸の負の向きとなる。従ってやじろべえは時計回りに回る。
物数 I.17
4 ベクトル, 直線, 平面
直線や平面などの簡単な図形を数式で表現できるようになろう
ベクトルで表すいろいろな図形
・直線のパラメータ表示
r = At + C tはパラメータ, AとCは定ベクトル (17.1)
A = (Ax , Ay , Az) , C = (Cx , Cy , Cz) として成分で
表すと以下のようになる:
x = Ax t + Cx ,
y = Ay t + Cy ,
z = Az t + Cz .
【注】t が時刻を表す変数である場合,式 (17.1)は一定の速度 Aで 等速度運動 を行う物
体の時刻 t の位置ベクトルを表す.
・(空間の中の)平面のパラメータ表示
r = At + Bs + C (t, sはパラメータ) (17.2)
この式は位置ベクトル C で表される点を含み,ベクトル
A とB で張られる平面を表す。
・ (空間の中の)平面の方程式
n を平面と直交する単位ベクトル, つまり単位 法線ベクトル とする。n =A×B|A×B| で求め
られる。r0 を平面上のある一つの点を表す位置ベクトル,r を平面上の任意の点を表す位置ベ
クトルとすると r − r0 は平面内に含まれるベクトルなのでnと直交する;
(r − r0) · n = 0 (17.3)
【注】(r − r0) · n > 0 の場合,r で表される点は平面で区切られた空間の 2つの領域のうち,平面に対して n の側の領域にある.((r − r0) · n < 0 の場合は逆側にある.)また,平面までの距離は |(r − r0) · n| となる.
【注】式 (17.3)は
(r − r0) · (A×B) = 0 (17.4)
でも同じ式が得られる..
物数 I.18
D = r0 · n と書くと n に直交する平面の方程式は
r · n = D (Dは定数) (18.1)
となる。n = (a , b , c) としてこの方程式を成分で書くと以下のようになる:
ax + by + cz = D . (18.2)
(例題 7)
単位法線ベクトルが n =1√14
3
1
−2
であり, 点 r0 =
1
2
3
を通る平面の方程式を求め
よう。
(答)
式 (17.3)を用いる。r − r0 = (x− 1 , y − 2 , z − 3)) なので平面の方程式は
1√14
(3(x− 1) + y − 2− 2(z − 3)
)= 0
すなわち
3x + y − 2z = −1 (18.3)
となる。
物数 I.19
(例題 8)
原点を頂点とする, 無限に高い, 傾いた円錐を考えよう. v =
(1 , 1 , 2) は円錐の中心軸に平行で, 頂点から底面に向かうベク
トルである。(図は正確ではありません。) また, 円錐の軸と母
線のなす角は π/6 である。2 点 P1,P2 は,−−→OP1 = (1 , 1 , 5),
−−→OP2 = (−1 , +1 , −3) である。この 2点はそれぞれ, 円錐の内部,表面上, 外部のどこにあるか答えよう。
x
y
z
O
π/6
v
(答)
ベクトル−→OP と v のなす角が θ < π/6 なら点 Pは円錐の内部にある。また θ = 0 のとき,
θ < π/6 と cos θ >√
3/2 は同値なので
1.−−→OP1と p の間の角度を θ1 とすると,
cos θ1 =v · −−→OP1|v|
∣∣∣−−→OP1∣∣∣
=4
3√
2>√
3/2 (19.1)
従って,点 P1 は円錐の内部にある。
2.−−→OP2と pの間の角度を θ2 とすると,
cos θ1 =v · −−→OP2|v|
∣∣∣−−→OP2∣∣∣
= − 6√66
<√
3/2 (19.2)
従って,点 P2 は円錐の外部にある。
物数 I.20
5 運動のベクトルによる表現¨§
¥¦香中 1章と 2章の間
位置ベクトル
3次元空間に物体 P があって運動している. 例:飛行機, ボール, 蚊, . . .
座標系 xyz と原点 O は固定する。
ある瞬間の物体 P の位置は, 始点 を O, 終点 を P とするベクトル−→OP で指定される。
これを P の 位置ベクトル という.
空間を物体 P が時間 t とともに, 移動していくときP の
位置ベクトルは時間の関数なので, r(t) のように書く. た
とえば
−→OP = r(t) =
x(t)
y(t)
z(t)
=
3t + 2
sin t
3
. (20.1)
x
y
z
P
O
r(t)
r(0)
r(1)
r(4)
(式 (20.1)に対する図ではありません。)
相対位置ベクトル
物体 P の位置ベクトルを rP 物体 Q の位置ベクトルを rQ とする.
物体 Q に対する 物体 P の 相対位置ベクトル とは, Q か
ら P に向かう矢印で表わされるベクトル r1 である. いわば,
Qからみた Pの位置ベクトル . OQ
P
r
r
r
Q
P 1
このとき,
rQ + r1 = rP. つまり r1 = rP − rQ. (20.2)
2点間の距離
rP(t) =
xP(t)
yP(t)
zP(t)
, rQ(t) =
xQ(t)
yQ(t)
zQ(t)
とする。時刻 t の P と Q の間の 距離 は
|r1(t)| = |rP(t)− rQ(t)|
=
[(xP(t)− xQ(t)
)2+
(yP(t)− yQ(t)
)2+
(zP(t)− zQ(t)
)2 ]1/2.
(20.3)
物数 I.21
時刻 t に P と Q が 衝突 する (21.1)
⇐⇒ 時刻 t に−→OP = −→OQ (21.2)
⇐⇒ xP(t) = xQ(t), yP(t) = yQ(t), zP(t) = zQ(t) (21.3)
⇐⇒ 時刻 t に距離が 0 . (21.4)
(例題 9)
時間帯 0 < t < 34π で, 位置ベクトルが
r(t) =(
cos(t) , sin(t) , 0)
(21.5)
にしたがって運動する物体がある。
(1) 点 A (0 , 1/2 , 0) に最も近づく時刻 t を求めよう。
(2) 点 B (−1 0 , 0) を, 物体が通過するならその時刻 t を求めよう。
(答)
(1) 物体は時刻 t = π/2 に点A に最も近づく。その時の距離は 1/2 となる。
(2) 物体は時刻 t = π に点 B を通過する。
速度ベクトル¨§
¥¦香中 p.30
時刻 t の速度ベクトル v(t) と位置ベクトル r(t) の関係:
v(t) =dr(t)
dt=
dx(t)dt
dy(t)dt
dz(t)dt
. (21.6)
【注】一般に, 時間の関数であるベクトル (ベクトル関数)
A(t) =(A1(t) , A2(t) , A3(t)
)(21.7)
があったとき,dA(t)
dt=
(dA1(t)
dt,
dA2(t)
dt,
dA3(t)
dt
)(21.8)
要するに成分ごとに微分すればよい.
物数 I.22
(例)
時刻 t = t0 に位置 r0 を通り,速度 v0 を持つ物体の運動を表す位置ベクトルは
r(t) = r0 + (t− t0) v0 (22.1)
となる.
速さ
時刻 t における速さ =∣∣∣∣dr(t)
dt
∣∣∣∣ . (22.2)
• 速度 はベクトル. 大きさと向きがある.
• 速さ はスカラー. 速度の絶対値. 大きさだけ.
速度ベクトルの性質
• 速度ベクトルの向きは 軌跡の接線方向 . (瞬間の向き)
• 速度ベクトルの大きさは, 速さに比例. (瞬間の速さ)
• 物体が静止 ⇔ 速度ベクトルが 零ベクトル ⇔ 速さが零.
加速度ベクトル¨§
¥¦香中 p.30
時刻 t の加速度ベクトル a(t) と位置ベクトル r(t) の関係:
a(t) =dv(t)
dt=
d2r(t)
dt2=
d2x(t)dt2
d2y(t)dt2
d2z(t)dt2
. (22.3)
やはり成分ごとに微分すればよい。
(例)
一定の加速度 a0 で運動する物体が時刻 t = t0 に位置 r0 を通り,速度が v0 であった。この物
体の運動を表す位置ベクトルは
r(t) = r0 + (t− t0) v0 + (t− t0)2
2a0 (22.4)
となる。
物数 I.23
6 速度ベクトルと加速度ベクトル
微分の基本的性質
・微分係数 (p.20)川
関数 x = f(t) を考える.次の極限
limh→0
f(a + h)− f(a)h
(23.1)
が定まるとき,関数 x = f(t) は t = a で 微分可能 であるという.またこの極限値を関数
x = f(t) の x = t における 微分係数 とよび
df(t)
dt
∣∣∣∣t=a
,dx
dt
∣∣∣∣t=a
とか ḟ(a), ẋ(a) (23.2)
と表す.
【注】x(t) が位置ベクトル r(t)の x 成分である場合dx
dt
∣∣∣∣t=a
は速度ベクトル v(t) の x 成分 vx(t)の
時刻 t = a での値となる.
・接線の方程式
関数 x = f(t)の t = a での微分係数は 点 (t = a, x = f(a)) を通る接線の傾きを与える.つま
り t = a,x = f(a) を通る,曲線 x = f(t) の接線を表す式は以下のようになる:
x = f(a) +dx
dt
∣∣∣∣t=a
(t− a) (23.3)
・f(t) = sin(t),a = 1,接線 y = sin(1) + cos(1)(t− 1)
-3 -2 -1 0 1 2 3
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
2
0.6 0.8 1 1.2 1.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
0.96 0.9 8 1 1.0 2 1.0 4
0. 82
0. 83
0. 84
0. 85
0. 86
物数 I.24
・導関数 (p.21)川
関数 x = f(t) を考える.各 t の値にこの t における微分係数を対応させる関数を x = f(t) の
導関数 とよびdf(t)
dt,
dx
dtとか ḟ(t), ẋ (24.1)
と表す.すなわちdf(t)
dt= lim
h→0f(t + h)− f(t)
h(24.2)
である.
【注】関数 f の導関数を f ′と書く場合もあるが,独立変数が時間を表す変数 t の場合は ḟ と表す
場合が多い.
・基本的な関数の導関数 (p.64)川
・tn (p.24)川dtn
dt= n tn−1 (24.3)
・三角関数 (p.72)川
d sin(t)
dt= cos(t) ,
d cos(t)
dt= − sin(t) (24.4)
・指数関数 (p.66)川det
dt= et (24.5)
・対数関数 (p.68)川d log(|t|)
dt=
1
t(24.6)
・微分の基本的公式 (p.22)川
・関数の和,差と定数との積の微分
d
dt
(a f(t) + b g(t)
)= a
df(t)
dt+ b
dg(t)
dt, a, bは定数 (24.7)
物数 I.25
・関数の積の微分
d
dt
(f(t) g(t)
)=
df(t)
dtg(t) + f(t)
dg(t)
dt(25.1)
・関数の商の微分
d
dt
(f(t)
g(t)
)=
df(t)dt
g(t)− f(t) dg(t)dt
g(t)2(25.2)
・合成関数 y = f(g(t)) の導関数 (p.25)川
df(g(t))
dt=
df(u)
du
∣∣∣∣u=g(t)
dg(t)
dt(25.3)
上の式で |u=g(t) は u に g(t) を代入するという操作を意味する.
(例) x = sin(√
t2 + 1)の導関数を求めなさい.また,t = 1 での接線を表す式を求めなさい.
(答) f(u) = sin(u),g(v) = v1/2,h(t) = t2 +1とすると sin(√
t2 + 1)
= f(g(h(t)))となるので,
合成関数の微分の式を 2回使えばよい.df(u)
du= cos(u),
dg(v)
dv=
1
2v−1/2 =
1
2√
v,
dg(t)
dt= 2t
なので式 (25.3)より以下が得られる;
d sin(√
t2 + 1)
dt=
df(g(h(t))
)
dt=
df(u)
du
∣∣∣∣u=g(h(t))
dg(v)
dv
∣∣∣∣v=h(t)
dh(t)
dt
= cos(u)|u=√t2+11
2√
v
∣∣∣∣v=t2+1
2t =t√
t2 + 1cos
(√t2 + 1
)(25.4)
以上より t = 1 でこの関数の値は sin(√
2)であり,微分係数は
1√2
cos(√
2)となることがわか
る。従って接線は次の式で表される;
x = sin(√
2) +cos(
√2)√
2(t− 1)
-4 -2 0 2 4 6 8 10
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
-0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
物数 I.26
・高次の導関数 (p.33)川
関数 x = f(t) の導関数df(t)
dtが微分可能なとき,導関数の導関数
d
dt
(df(t)
dt
)を
d2f(t)
dt2,
d2
dt2f(t) ,
d2x
dt2, ẍ , f̈(t) (26.1)
などと書き 2次の導関数 とか 2階の導関数 と呼ぶ.
【注】x が位置ベクトルの x 成分である場合d2x(t)
dt2は加速度ベクトルの x 成分となる.
同様に関数 x = f(t) を n 回微分して得られる関数を
dnf(t)
dtn,
dn
dtnf(t) ,
dnx
dtn(26.2)
などと書き n次の導関数 とか n階の導関数 と呼ぶ。
・関数の近似とテイラー (Taylor)展開 (p.101)川
関数 x = f(t) の t = a での接線は元の関数 f(t) を t = a の近くで ∆t = t− a について一次まで近似する式となっている:
f(a + ∆t) = f(a) +df(t)
dt
∣∣∣∣t=a
∆t +O(∆t2) . (26.3)
ここで O(∆t2) は大きさが∆t2 のオーダーの量を表す.
【注】 limh→0
g(h)/hn =有限の値 であるとき,g(h)を hnで抑えられる無限小といい
g(h) = O(hn) と表す.O(hn) = (何らかの係数)× hn と思ってよい.,(p.114)川
高次の微分係数を使うと,さらに誤差を小さくすることができる.例えば
f(a + ∆t) = f(a) +df(t)
dt
∣∣∣∣t=a
∆t +d2f(t)
dt2
∣∣∣∣t=a
∆t2
2+O(∆t3) . (26.4)
【注】 このような展開をテイラー展開と呼ぶ.(26.3)は 1次のテイラー展開 (接線),(26.4)
は 2次のテイラー展開と呼ばれる.
・f(t) = sin(t) の t = 1 のまわりの 1次および 2次のテイラー展開
-2 0 2 4
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
物数 I.27
1次元の運動
x-軸の式は y = z = 0 だから, x-軸の上だ
けを運動する物体の位置ベクトルは,
r(t) =
x(t)
0
0
(27.1)
となり, ただ 1つの関数 x(t) だけで表わ
せる.
t
x
a
bx
y
ab
z
1次元の運動の t-xグラフと軌跡の関係
このように, 位置ベクトルの 1成分だけで表わせる運動を 1次元の運動という.以下, しばらく
1次元の運動を考える.速度ベクトルと加速度ベクトルを
v(t) =
vx(t)
0
0
=
dx(t)dt
0
0
, a(t) =
ax(t)
0
0
=
d2x(t)dt2
0
0
(27.2)
とすると,時刻 t = t0 の近くで,x(t) は.
x(t) = x(t0) + vx(t0) ∆t + ax(t0)∆t2
2+O(∆t3) (27.3)
と表せる.ここで∆t = t− t0.【注】∆t は ∆× t ではない.∆t (デルタティー) は短い時間を表わす際によく使われる記号.
vx(t1) の正負から t = t0 での物体の x座標の変化の向きがわかる.
vx(t0) t-x グラフ x の変化 物体の運動
vx > 0 右上がり 増加 x 軸の正の向きに運動
vx < 0 右下がり 減少 x 軸の負の向きに運動
vx = 0 水平 (一瞬)変化せず (一瞬)静止
これより
物体の位置ベクトルは速度の向きに変化する (物体は速度の向きに運動する)
ことがわかる.
物数 I.28
3次元の運動
再び, 3次元を運動する物体の位置ベクトル r(t) =
x(t)
y(t)
z(t)
= x(t)i + y(t)j + z(t)k を考えよ
う.時刻 t = t0 の近くでの位置ベクトル r(t)は速度ベクトル v(t) や加速度ベクトル a(t)
v(t) =
vx(t)
vy(t)
vz(t)
=
dx(t)dt
dy(t)dt
dz(t)dt
, a(t) =
ax(t)
ay(t)
az(t)
=
dvx(t)dt
dvy(t)
dt
dvz(t)dt
=
d2x(t)dt2
d2y(t)dt2
d2z(t)dt2
(28.1)
の時刻 t = t0の値を用いて
r(t) = r(t0) + v(t0) ∆t + a(t0)∆t2
2+O(∆t3) , ∆t = t− t0 (28.2)
と表される.また,同様に時刻 t = t0 の近くでの速度ベクトル v(t)は
v(t) = v(t0) + a(t0) ∆t +O(∆t2) (28.3)
と表される.
物体の位置ベクトルは速度の向きに変化する (物体は速度の向きに運動する)。
物体の速度は加速度の向きに変化する
(参考)
a⊥ = a(t0)− (a(t0) · v(t0))(v(t0) · v(t0)) v(t0) , R =(v(t0) · v(t0))
|a⊥| (28.4)
とすると t = t0 の近くで物体の軌道は r(t0) + Ra⊥|a⊥| に中心を持つ半径 R の円に接触するようになっている.R
を点 r(t0) での軌道の曲率半径,1/R を曲率と呼ぶ.
r(t) = (t , −t2)の軌道と接触円
物数 I.29
(例) 物体が, r(t) =(t + sin t , 2t + 2 sin t ,
√5 cos t
)で運動している。
1. 速度ベクトル, 加速度ベクトルを求めなさい。
2. 物体が静止する時刻を求めなさい。
3. 速さが最大となる時刻を求めなさい。
(答)
1. v(t) =(1 + cos t , 2 + 2 cos t , −
√5 sin t
), a(t) =
(− sin t , −2 sin t , −
√5 cos t
).
2. 静止するのは, v(t) = 0 となるときで, t = (2n + 1)π
3. 速さの2乗は, f(t) = |v(t)|2 = (1+cos t)2+(2+2 cos t)2+(−√
5 sin t)2 = 10(1+cos(t)).
最大最小となるのは df(t)/dt = −10 sin t = 0 のときのはずで, t = nπ. 最大となるのは, t = 2nπ でそのとき |v(2nπ)| = √20. このことからも, 静止 v(t) = 0 となるのは t = (2n + 1)π であることがわかる.
【注】速さ
時刻 t1 における速さ =∣∣∣∣dr
dt(t1)
∣∣∣∣ . (29.1)
• 速度 はベクトル. 大きさと向きがある.
• 速さ はスカラー. 速度の絶対値. 大きさだけ.
(例) らせん運動
r(t) =(2 cos(t) , 2 sin(t) ,
t
2
)(29.2)
v(t) =(− 2 sin(t) , 2 cos(t) , 1
2
)(29.3)
a(t) =(− 2 cos(t) , −2 sin(t) , 0
)(29.4)
|v(t)| =√
17
4なので,この運動は速さが一定の運動 (等速運
動)だが,速度が一定の運動 (等速度運動)ではない.
-2 -1 0 1 2
-2-1
01
2
-4
-2
0
2
4
-10
12
iida長方形
iidaテキストボックス配布したプリントはこの部分に誤りがあります.
iida線
物数 I.30
7 位置・速度・加速度ベクトルと積分¨§
¥¦香中 3章
位置
r(t)
微分→積分←
速度
v(t) = drdt
(t)
微分→積分←
加速度
a(t) = d2r
dt2(t)
比例 (定数 m)←→運動方程式
力
F (t)
dA(t)
dt=
d
dt
(A1(t) , A2(t) , A3(t)
)=
(dA1(t)
dt, dA2(t)
dt, dA3(t)
dt
)(30.1)
積分は微分の逆
変数 t の関数 f(t), F (t) が,dF (t)
dt= f(t) (30.2)
を満たすとする (例えば, 位置 x(t) = F (t), 速度 v(t) = f(t)). このとき,∫
f(t)dt = F (t) + C. (30.3)
• f(t) は F (t) の (1階)微分, (1階)導関数
• F (t)+C は 被積分関数 f(t)の (不定)積分, C は積分定数, F (t)は f(t)の 原始関数という。
基本的な関数の不定積分 (p.78)川 C はいずれも積分定数を表す.
dtα+1
dt= (α + 1)tα より
∫tα dt =
tα+1
α + 1+ C , ただし α は定数で α 6= −1 (30.4)
d log |t|dt
=1
tより
∫1
tdt = log |t|+ C (30.5)
deαt
dt= αeαt より
∫eαt dt =
eαt
α+ C , ただし α は定数 (30.6)
d sin(ωt)
dt= ω cos(ωt) より
∫cos(ωt) dt =
sin(ωt)
ω+ C , ただし ω は定数 (30.7)
d cos(ωt)
dt= −ω sin(ωt) より
∫sin(ωt) dt = −cos(ωt)
ω+ C , ただし ω は定数
(30.8)
物数 I.31
速度の積分は位置
位置 r(t) =
x(t)
0
0
, 速度 v(t) =
vx(t)
0
0
に対して,
dx(t)
dt= vx(t) だから x(t) =
∫vx(t)dt + C =
∫dx(t)
dtdt + C (31.1)
位置
x(t)
微分→積分←
速度
vx(t) =dx(t)
dt
(例)
1. 物体の速度が vx(t) = t2 − sin(2t) である. また, x(0) = 2 である. x(2π) を求めよう.
2. 物体の速度が vx(t) = 1t −cos(πt)である. 最初 t = 1から最後 t = 2までの座標の 変位∆x = x(2)− x(1) を求めよう.
x(0) = 2 のような条件を, 初期条件 という. 積分定数は, これを用いて決めることができる.
(答)
1.
x(t) =
∫vx(t)dt =
13t3 + 1
2cos(2t) + C .
初期条件 x(0) = 2 より C = 32. よって,
x(2π) = 83π3 + 1
2+ 3
2= 2 + 8
3π3 .
2.
x(t) =
∫(1
t− cos(πt))dt = log |t| − 1
πsin(πt) + C .
x(2)− x(1) =(
log |2| − 0 + C)−
(log |1|+ 0 + C
)= log 2 .
物数 I.32
速度の定積分は変位¨§
¥¦香中 p.64
∫f(t)dt = F (t) + C (32.1)
とする.(F (t)は f(t)の原始関数.) このとき,
F (t1)− F (t0) =∫ t1
t0
f(t)dt (32.2)
を定積分という.これは, f(t) のグラフと t = t0, t = t1
および t 軸で囲まれる部分の面積.
t = t0 から t = t1 までの x座標の変位∆x は
∆x = x(t1)− x(t0) =∫ t1
t0
vx(t)dt (32.3)
のように定積分で表わせる.
(物数 I.31 の例の別解)
1.
x(2π) = x(0) + ∆x = x(0) +
∫ 2π0
vx(t)dt
= 2 +
∫ 2π0
(t2 − sin(2t)
)dt = 2 +
[t3
3+
1
2cos(2t)
]t=2π
t=0
= 2 +8π3
3+
1
2cos(4π)− 1
2cos(2π) = 2 +
8π3
3(32.4)
2.
x(2)− x(1) =∫ 2
1
vx(t)dt =
∫ 21
(1t− cos(πt)
)dt
=
[log |t| − 1
πsin(πt)
]t=2
t=1
= log(2)− 1π
sin(2π)−(
log(1)− 1π
sin(π))
= log(2) (32.5)
【注】 F (t1)− F (t0) のことを,
F (t1)− F (t0) = [F (t)]t1t0 = [F (t)]t=t1t=t0
= F (t)|t1t0 = F (t)|t=t1t=t0
(32.6)
なとど書くことがある.
物数 I.33
加速度の積分は速度
vx(t) =
∫ax(t)dt + C . (33.1)
vx(t1)− vx(t0) =∫ t1
t0
ax(t)dt. (速度の増加分) (33.2)
速度 対 加速度の関係は, 位置 対 速度 の関係と同じ.
【注】 (物体の加速度) = (物体に働く力)/(物体の質量) 運動方程式
速度ベクトルの積分は位置ベクトル
時刻 t の位置ベクトルを r(t) とすると, 速度ベクトル v(t) は
dr(t)
dt= v(t) すなわち
dx(t)dt
dy(t)dt
dz(t)dt
=
vx(t)
vy(t)
vz(t)
(33.3)
で与えられるのだった.したがって逆に,
x(t) =∫
vx(t)dt + Cx, (33.4)
y(t) =∫
vy(t)dt + Cy, (33.5)
z(t) =∫
vz(t)dt + Cz. (33.6)
Cx, Cy, Cz は積分定数. これをまとめて, 次のようにかく.
r(t) =
∫v(t) dt + C . C は定数ベクトル (33.7)
加速度ベクトルの積分は速度ベクトル
同様に加速度ベクトルは, dv(t)dt
=
dvx(t)dt
dvy(t)
dt
dvz(t)dt
=
ax(t)
ay(t)
az(t)
= a(t) より,
物数 I.34
vx(t) =∫
ax(t)dt + Dx, (34.1)
vy(t) =∫
ay(t)dt + Dy, (34.2)
vz(t) =∫
az(t)dt + Dz. (34.3)
よって v(t) =∫
a(t)dt + D . D =
Dx
Dy
Dz
は積分定数 (34.4)
(例)
物体が,加速度a(t) =
−4 cos (2t)−2 sin (2t)
0
で運動している.速度の初期条件を
dr(t)
dt
∣∣∣∣t=0
=
0
1
1
とする.最も遅く動いている時刻 (速度の大きさが最も小さくなる時刻)とその時の速度の大き
さを求めよう.
(答)
dvx(t)
dt= −4 cos (2t) , dvy(t)
dt= −2 sin (2t) , dvz(t)
dt= 0 (34.5)
の両辺を積分して,
vx(t) = −2 sin(2t) + Dx , vy(t) = cos(2t) + Dy , vz(t) = Dz (34.6)
が得られる。初期条件よりDx = Dy = 0, Dz = 1 となるので
vx(t) = −2 sin(2t) , vy(t) = cos(2t) , vz(t) = 1 (34.7)
となる。速さの 2乗
|v(t)|2 = 4 sin2(2t) + cos2(2t) + 1 = 3 sin2(2t) + 2
が最小になるのは, sin2(2t) が最小値 0 になるときなので,2t = nπ (n 整数) である場合.最小
値は, |v(n2π)| =
√2 となる.
物数 I.35
8 運動方程式と放物運動
ニュートン (Newton)の運動方程式 (運動の第 2法則)¨§
¥¦香中 p.30
物体の加速度ベクトル a(t) =d2r(t)
dt2は, 物体の受ける 力 F (t) で決まる.
力はベクトル.
加速度ベクトルの向き: 力 F (t) の向きと同じ.
加速度ベクトルの大きさ: 質量 m に反比例, 力F (t) の大きさに比例.
md2r(t)dt2
= F (t) (35.1)
これを ニュートンの運動方程式 という.
質量の単位: kg (キログラム) . 質量はスカラー.
水 1リットルの質量は 1kg. 1円玉の質量は 1g=0.001 kg.
基本ベクトル i, j, k を使ってF (t) = Fx(t)i + Fy(t)j + Fz(t)k と書くと
md2x(t)
dt2=Fx(t), (35.2)
md2y(t)
dt2=Fy(t), (35.3)
md2z(t)
dt2=Fz(t). (35.4)
位置
r(t)
微分→積分←
速度
v(t) = dr(t)dt
微分→積分←
加速度
a(t) = d2r(t)dt2
比例 (定数 m)←→運動方程式
力
F (t)
r(t) =
∫v(t) dt + D , v(t) =
∫a(t) dt + C , a(t) =
1
mF (t) . (35.5)
積分定数 (ベクトル) C, Dは初期条件 (ある時刻 t = t0での速度と位置ベクトルの値,v(t0) , r(t0))
から決まる.
物数 I.36
(例) 質量 m = 2 の物体が, 力
F (t) =(1 , e−t , 0
)(36.1)
のもとで運動している. 時刻 t における位置ベクトルを r(t) とする. 初期条件は
r(0) =(1 , 0 , 0
),
dr(t)
dt
∣∣∣∣t=0
=(2 , 1 , 0
)(36.2)
である. 位置ベクトル r(t) を求めよう.
(答)
dr(t)
dt=
(12t + C1 , −12e−t + C2 , C3
), (36.3)
r(t) =(
14t2 + C1t + D1 ,
12e−t + C2t + D2 , C3t + D3
). (36.4)
初期条件より, C1 = 2 , C2 =3
2, C3 = 0. D1 = 1 , D2 = −1
2, D3 = 0.
物理量と単位系 世の中の量には単位がある.
例 量 単位 スペル 略記 その他の単位 (非推奨)
x 長さ メートル meter [m] 尺, ヤード
m 質量 キログラム kilogram [kg] オンス, ポンド
t 時間 秒 second [s] 分, 年, 週
I 電流 アンペア ampere [A]
θ 角度 ラジアン radian [rad] 度
上の単位を基本として, 他の量の単位は, 上の単位の組み合せで作る. これを MKSA 単位系
という.
例 量 作り方 単位 略記
dxdt
速度 (の x 成分) 長さ/時間 メートル毎秒 [m/s] dx(t)dt
= lim∆t→0x(t+∆t)−x(t)
∆t
V 体積 (長さ)3 立方メートル [m3]
ρ 密度 質量/体積 [kg/m3]
d2xdt2
加速度 (の x 成分) 速度/時間 メートル毎秒毎秒 [m/s2] d2x
dt2(t) = lim∆t→0
v(t+∆t)−v(t)∆t
.
Fx 力 (の x 成分) 質量× 加速度 [kg·m/s2]
1kgの物体が 1kg·m/s2 の力を受けると 1m/s2 の加速度で運動.・力の単位: キログラムメートル毎秒毎秒Ã ニュートン [kg·m/s2]Ã [N]
1kg ·m/s2 = 1 N (36.5)
物数 I.37
キロ, ミリなどは, 単位の大きさを 10n 倍変える接頭語.
倍率 接頭語 記号 使用例 倍率 接頭語 記号 使用例
1015 ペタ P 10−15 フェムト f
1012 テラ T 10−12 ピコ p
109 ギガ G ギガバイト 10−9 ナノ n ナノテクノロジー
106 メガ M メガヘルツ 10−6 マイクロ µ
103 キロ k 10−3 ミリ m
102 ヘクト h 10−2 センチ c
101 デカ da 10−1 デシ d デシリットル
(例)
60 km/h の速さは, 何 m/s かを答えよう. ( h=hour= 時間).止まっていた車が 10 s で時速
60km まで加速した.加速度が一定と考えて加速度の大きさを求めよう.
(答)
速さ 60 km/h = 60× 103 m/h は 1時間つまり 60× 60 s に 60× 103 m 進むということなので,[m/s] で表すと
60 km/h =6× 10460× 60 m/s =
50
3m/s ≈ 17 m/s (37.1)
となる.10 s でこの速度になったので加速度の大きさは
50
3
1
10m/s2 =
5
3m/s2 ≈ 1.7 m/s2 (37.2)
となる.
物数 I.38
物体の放物運動でよく使う座標系
地球上には上下がある. 物の落ちる向きを下 ( 鉛直下向き )という.
xyz 座標軸は, 右手系で, z 軸の負の向きが下になるようにとり, x, y 軸はそれと直交するよう
に (東西南北とは関係なく)適当にとるのが普通.
z 軸方向 (z軸の正の向き) 鉛直方向 (鉛直上向き)
xy 軸方向 水平方向 ( xy 平面は水平面)
重力¨§
¥¦香中 p.72
地球上の質量 m [kg]の物体には, 重力という 鉛直下向き の大きさm g の力 −mgk がはたらく.
g = 9.8 m/s2 : 重力加速度 の大きさ (38.1)
つまり質量 m [kg] の物体に働く重力の大きさは 9.8 m [kg·m/s2] = 9.8 m [N].【注意】m は質量, m はメートル.g は重力加速度, g はグラム.
・力の別の単位 (非推奨) : 1 kg 重 = 9.8 N = (質量 1kg の物体に地表ではたらく重力の大きさ)
放物運動 重力だけが働く場合の物体の運動
鉛直方向に z 軸, 水平面内に x, y 軸をとる. 運動方程式は,
md2r(t)
dt2= −mgk ⇔
d2x(t)dt2
= 0
d2y(t)dt2
= 0
d2z(t)dt2
= −g
積分Ã
dx(t)dt
= Cx,
dy(t)dt
= Cy,
dz(t)dt
= −gt + Cz.
積分Ã
x(t) = Cx t + Dx,
y(t) = Cy t + Dy,
z(t) = −12g t2 + Cz t + Dz.
(38.2)
Cx , Cy , Cz , Dx , Dy , Dzは積分定数.
放物運動は等加速度運動の一種.加速度 a = (0 , 0 , −g)水平 (x, y)方向だけみると等速直線運動, 鉛直 (z)方向だけみると等加速度直線運動.
物数 I.39
次のような初期条件で考えよう.
r(0) =
0
0
0
, (39.1)
v(0) =dr(t)
dt
∣∣∣∣t=0
=
V cos θ
0
V sin θ
=
Vx
0
Vz
(39.2)
( V = |v(0)| > 0 ).
V
x
y
z
O
ˆˇÌÌ
θ
V
=V sinθ
V
=V cosθ
z
x
v(0)
水平面 z = 0 を地面と思うと, この初期条件は次のような意味.
地面の点(0 , 0 , 0 ,
)から時刻 t = 0 に物を投げた.
初速度 v(0) =dr(t)
dt
∣∣∣∣t=0
の向きは, xz 平面内で, 地面から角度 θ の向きで, 大きさは V .
初期条件は, (Vx, Vz) の組, あるいは (V, θ) の組で指定できる.
このときには,
x(t) =Vx t = V cos(θ) t , (39.3)
y(t) =0, (39.4)
z(t) =− 12g t2 + Vz t = −1
2g t2 + V sin(θ) t . (39.5)
となる.
(例) 式 (39.3)と (39.5)から t を消去して,z-x 平面内の運動の軌跡を表す式を求めよう.
(答) (39.3) より t = x/Vx なので,これを (39.5)に代入して
z = −12g
(x
Vx
)2+ Vz
(x
Vx
)
= − g2V 2x
x
(x− 2 Vx Vz
g
)
= − g2V 2x
[(x− VxVz
g
)2−
(VxVz
g
)2]
= − g2V 2x
(x− xm)2 + zm (39.6)
これは (x = xm , z = zm) を頂点とする 放物線 を表す.ただし,
xm =VxVz
g, zm =
V 2z2g
(39.7)
とおいた.
物数 I.40
.
cos(α + β) = cos(α) cos(β)− sin(α) sin(β)
9 等速円運動と単振動
単振動
質量 m の物体の, x軸上の運動
位置 r(t) =
x(t)
y(t)
z(t)
=
R cos(ωt + φ)
0
0
=
A cos(ωt) + B sin(ωt)
0
0
(40.1)
を x 軸上の原点 x = 0 を中心とする 単振動 , あるいは 調和振動 という. ただし,
R(> 0) , ω , φ は定数. R , φ と A , B の関係は
A = R cos(φ) , B = −R sin(φ) , R =√
A2 + B2 . (40.2)
速度dr(t)
dt=
−Rω sin(ωt + φ)0
0
=
ω(− A sin(ωt) + B cos(ωt)
)
0
0
,
(40.3)
加速度d2r(t)
dt2=
−Rω2 cos(ωt + φ)0
0
= −ω
2r(t) , (40.4)
力 F (t) = md2r(t)
dt2=
−mRω2 cos(ωt + φ)0
0
= −mω
2r(t) . (40.5)
-6
-4
-2
0
2
4
6
0 2 4 6 8 10
x,v,
a
t
x(t)v(t)a(t)
位置ベクトル,速度,加速度の x 成分
物数 I.41
単振動のいろいろな量
記号 単位 名前 意味 (単振動)
R [m] 振幅 あるいは 半径 原点からの最大距離
ω [rad/s] 角速度 単位時間あたりの位相の変化
φ [rad] 初期位相 時刻 t = 0 における位相
ωt + φ [rad] 位相 cos の引数
T = 2πω
[s] 周期 もとの位置と速度にもどるまで
の時間
f = 1T
[1/s] = [Hz] 振動数 単位時間に何回振動するかとい
う数
単振動の組みあわせ — リサジュー (Lissajous)運動
x, y 軸方向に, それぞれ単振動している物体を考えよう. 運動
r(t) =
x(t)
y(t)
z(t)
=
R1 cos(ω1t + φ1)
R2 cos(ω2t + φ2)
0
(41.1)
を リサジュー運動 という. ただし, Ri > 0 , ωi , φi は定数.
軌跡の例.
-4-3-2-101234
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4
y
x
x(t) = 4 cos(2t +
π
2
)= −4 sin(2t) , y(t) = 4 cos(3t)
物数 I.42
等速円運動
リサジュー運動の特別な場合 R = R1 = R2,ω = ω1 = ω2, φ1 = 0, φ2 = −12π を考えよう.cos(ωt− 1
2π) = sin(ωt).
位置ベクトル
r(t) =
x(t)
y(t)
z(t)
=
R cos(ωt)
R sin(ωt)
0
. (42.1)
軌跡
x2 + y2 = R2, z = 0 より, xy 平面上の原点を中心とする半径 R の円.
r(t) の向きは, x 軸の正の向きから 反時計回りにはかって ωt (時刻に比例)
x
y
R
R
-R
-R
r(t)
ωt
v(t)
ωt
a(t)ω > 0の場合の図
これは等速円運動.等速円運動の x 座標, または y 座標だけを見ると単振動になっている.
速度ベクトル
dr(t)
dt= v(t) =
−Rω sin(ωt)+Rω cos(ωt)
0
(42.2)
これは 等速運動 なぜなら速さ |v(t)| = (R2ω2 cos2(ωt) + R2ω2 sin2(ωt)12 = Rω.
【注】原点を中心とした円周上 (あるいは球面上)の運動では位置ベクトルと速度ベクトルは直
交する.なぜなら r(t) · r(t) = 一定 の両辺を t で微分すると v(t) · r(t) = 0となるが,これはベクトル v(t) と r(t) が直交することを意味する.
物数 I.43
加速度ベクトル
d2r(t)
dt2= a(t) =
−Rω2 cos ωt−Rω2 sin ωt
0
= −ω
2r(t). (43.1)
等速円運動を引き起こす力
F (t) = md2r(t)
dt2=
−mRω2 cos ωt−mRω2 sin ωt
0
= −mω
2r(t). (43.2)
力の 大きさ は一定, 向き は一定ではない.
力の大きさ∣∣∣md2r(t)dt2
∣∣∣ = mRω2.(一定)向きは r(t) と平行で逆向き.
つまり, 力は回転の中心を向いている ( 向心力 といわれる)
したがって, 力と速度ベクトルdr(t)
dtとは直交. これは実は等速運動すべてに成り立つ性質.
【注】速度の大きさが一定の運動では加速度ベクトルと速度ベクトルは直交する.なぜなら
v(t) · v(t) =一定 の両辺を t で微分すると a(t) · r(t) = 0となるが,これはベクトル a(t) とv(t) が直交することを意味する.
一般化
φ1 = φ, φ2 = φ− 12π. φ:新しい定数. いままでは φ = 0 としてた.
r(t) =
x(t)
y(t)
z(t)
=
R cos(ωt + φ)
R sin(ωt + φ)
0
=
R cos(ω(t + φω))
R sin(ω(t + φω))
0
(43.3)
これも等速円運動.
時刻 t = 0 の位置が
R
0
0
でなく,
R cos φ
R sin φ
0
になっただけ.
あるいは, r =
R
0
0
となる時刻が, t = 0 から t = −
φωにずれただけ (出発時刻の変更).
物数 I.44
等速円運動のいろいろな量
記号 単位 名前 意味 (単振動) (等速円運動)
R [m] 振幅/半径 原点からの最大距離 半径
ω [rad/s] 角速度 単位時間あたりの位相
の変化
単位時間あたりの位相
の変化
φ [rad] 初期位相 時刻 t = 0 における位
相
時刻 t = 0 における位
相
ωt + φ [rad] 位相 cos の引数 x 軸からはかった角.
T = 2πω
[s] 周期 もとの位置, 速度にも
どるまでの時間
一周するまでの時間
f = 1T
[1/s] = [Hz] 振動数 単位時間に何回振動す
るかという数
単位時間に何周するか
という数
位置, 速度, 加速度ベクトルの大きさの間には,
|r(t)| = R, (44.1)∣∣∣∣dr(t)
dt
∣∣∣∣ = |v(t)| = Rω, (44.2)∣∣∣∣d2r(t)
dt2
∣∣∣∣ = |a(T )| = Rω2 = =|v(t)|2
R(44.3)
などの関係があることがわかる.
(例)
30秒に 1回転しているメリーゴーラウンドがある. 中心から 10 m のところで白馬に乗ってい
る人は円運動している. この人の角速度を求めよう. 速さと加速度の大きさを求めよう.
(答)
ω =2π
30rad/s . 速さ=
2π
30· 10 = 2
3π m/s . 加速度 =
(2π
30
)2· 10 = 2π
2
45m/s2 .