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ベクトル解析
12. 積分定理の応用
1 発散,回転の物理的解釈 –1–
v : 流体の速度ベクトル場C : 向きのついた閉曲線S : Cを周とする曲面
Cの単位接線ベクトル: t =
(dx
ds,dy
ds,dz
ds
)に対して
vの C に沿う単位時間あたりの循環:
∫C
v · t
ストークスの定理によって∫C
v · t ds =∫C
v · dr =
∫∫S
(rotv)n dS
積分の平均値の定理f (x, y) を領域Sの上の連続関数, m(S) は S の面積とする.
ある点Q ∈ S が存在して∫∫S
f (x, y) dxdy = m(S)f (Q)
回転の物理的解釈 –2–
ストークスの定理と平均の定理から、ある点Q ∈ S が存在して∫C
v · t ds = m(S)(rotv)n(Q)
点 P を固定して、点 P を 通る平面上に P を中心とする半径 ε
の円板Σεの境界を Γε とすると、ある点Q ∈ Σεが存在して
(rotv)n(Q) =1
m(Σε)
∫Γε
v · t ds
したがって ε → 0 の極限を取るとQ → Pなので
(rotv)n(P ) = limε→0
1
m(Σε)
∫Γε
v · t ds
循環∫Γε
v · t ds : Γεのまわりの流体の総速度
(rotv)n(P ) :軸 v のまわりの流体の回転効果
発散の物理的解釈 –3–
v : 流体の速度ベクトル場S : 閉曲面 V : Sの内部
単位時間あたりに S から外に向かう流体の流出量∫∫
S
vndS
ガウスの発散定理と平均値の定理から∫∫S
vn dS =
∫∫V
div v dxdydz = m(V )div v(Q)
(m(V ):V の体積, Q はV の中の適当な点)
Vε: Pを中心とする半径 εの球体Sε: V の境界
div v(P ) は点 P における湧出率を表わす:
div v(P ) = limε→0
1
m(Vε)
∫∫Sε
vn dS
div v(P ) > 0 のとき、点P に湧き出しがあるといい,
div v(P ) > 0 のとき、点 P に吸い込みがあるという.
保存力場 –4–
復習 a: D 上定義されたC1級のベクトル場aが保存力場とは
a = −grad f
をみた す C2 級のスカラー場fが存在することをいう
定理 aが保存力場であれば rota = 0.
証明 公式 rot (grad f ) = 0より明らか
※ rota = 0となるベクトル場aを渦なしベクトル場という つまり「保存力場ならば渦なしベクトル場」
逆に、ベクトル場aが保存力場になる条件を見つける
保存力場になる条件 –5–
定理 領域D上のC1級のベクトル場aが保存力場であるための必要十分条件は, D内の任意のC1 級の閉曲線Cに対し次が成立:∫
C
a · dr = 0.
証明・必要性 a = (a1, a2, a3) とする。今、aが保存力場である、すなわち
a = (a1, a2, a3) =
(−∂f
∂x,−∂f
∂y,−∂f
∂z
)= −grad f
とする。2点P , Qを結ぶD内のC1級の曲線Cに対して∫C
a · dr =
∫C
a1 dx + a2 dy + a3 dz
=
∫C
(−∂f
∂xdx− ∂f
∂ydy − ∂f
∂zdz
)= f (P )− f (Q)
Cが閉曲線のとき P = Q なので最後の式は 0 である.
十分性 –6–
D内の 1点P0 を固定しておく. PをD 内の任意の点とする.
仮定より D 内で P0 と Pを結ぶ曲線 C に対して, 線積分∫C
a · dr
の値は曲線 C の取り方によらない. ∆ ∆
従って,この値を f (P ) とかくことにする .
以下では grad f = a を示す。
まず、∂f
∂xを考える。
∆x は十分小さいとしてP (x, y, z), Q(x +∆x, y, z) ∈ D とする
f (x +∆x, y, z)− f (x, y, z) =
∫PQ
a · dr
線分 PQ のパラメーター表示は
x(t) = x + t∆x, y(t) = y, z(t) = z (0 ≦ t ≦ 1)
十分性・続き –7–
パラメーター表示
x(t) = x + t∆x, y(t) = y, z(t) = z (0 ≦ t ≦ 1)
を用いて線積分を行なう:∫PQ
a · dr =
∫ 1
0
{a1(x(t), y(t), z(t))
dx
dt+ a2(x(t), y(t), z(t))
dy
dt
+a3(x(t), y(t), z(t))dz
dt
}dt
= ∆x
∫ 1
0
a1(x + t∆x, y, z)
積分の平均値の定理より,適当な θ (0 < θ < 1) をとれば
∆x
∫ 1
0
a1(x + t∆x, y, z) = ∆x · a1(x + θ∆x, y, z)
偏微分 –8–
以上によって
f (x +∆x, y, z)− f (x, y, z) =
∫PQ
a · dr = ∆x · a1(x + θ∆x, y, z)
が示されたので
∂f
∂x(x, y, z) = lim
∆x→0
f (x +∆x, y, z)− f (x, y, z)
∆x= lim
∆x→0a1(x + θ∆x, y, z)
= a1(x, y, z)
. 同様にして ∂f∂y = a2,
∂f∂z = a3であることもわかる
よって grad f = a を得る.
単連結 –9–
空間内の領域 D内の任意の閉曲線を D内で連続的に変形して 1
点に縮める ことができるとき, Dを単連結領域という.
例)空聞から一直線や円環領域の表面および内部を除いて得られる領域は単連結でない.
例)空間から有限個の点を除いて得られる領域および球の内部などは単連結である.
渦なしベクトル場は保存力ベクトル場 –10–
以前, 保存力場は渦なし場となることを示したが, 特に領域Dが単連結のとき,逆も成り立つ.
定 理 領域Dが単連結とする。D上のC1級のベクトル場aが渦なしベクトル場,
すなわち rota = 0 となるとき、aは保存力ベクトル場となる.
証明 仮定より rota = 0.
C をC1級の閉曲線とする。Dは単連結だから C を境界とする D 内の曲面 S が存在して、Sはストークスの定理の仮定をみたす.
ストークスの定理を適用すれば∫C
a · dr =
∫∫S
(rota)n dS = 0
がわかる. 前の定理より aは保存力場であることがわかる.
ベクトルポテンシャル –11–
領域D上で定義されたC1 級のベクトル場aに対し, a = rot bをみたす D 上の C2 級のベクトル場 b を a のベクトルポテンシャルという.
1) aがベクトルポテンシャルbをもつとき
diva = div rot b = 0.
2) 逆に,式 diva = 0をみたすベクトル場aがベクトルポテンシャルをもつか否かは, D の形状による(D に穴が空いている時はdiva = 0でもベクトルポテンシャルを持たないことがある)。
参考(aを領域D上で定義されたC1 級のベクトル場とする。D
に含まれる任意の閉曲面 S に対して∫∫S
an dS = 0
が成り立つことと、aがベクトルポテンシャルをもつことは同値。
※ド・ラームの定理が必要になるので説明は省略
ベクトルポテンシャルの存在 –12–
定理 D が空間全体のとき, diva = 0をみたすC1級のベクトル場aがつねにベクトルポテンシャルをもつ。
証 明 a = (a1(x, y, z), a2(x, y, z), a3(x, y, z)) とおく. 仮定より
diva =∂a1∂x
+∂a2∂y
+∂a1∂z
= 0
まず
a2 =∂b2∂x
, a3 =∂b3∂x
をみたす関数 b2(x, y, z), b3(x, y, z)を積分で求めて、ベクトル場 b
を b = (0, b2,−b3)で定義する. このとき
rot b =
(−∂b2∂y
− ∂b3∂z
,∂b2∂x
,∂b3∂x
)=
(−∂b2∂y
− ∂b3∂z
, a2, a3
)ベクトル場c をc = a− rot b とおけば c = (c, 0, 0)の形になる.
具体的には –13–
c = a1 +∂b2∂y
+∂b3∂z
であるがdiv c = diva− div rot b = 0 なので∂c
∂x= 0. よって cは
y, zの関数である.
次に∂Q
∂z= −c をみたすy, zの関数 Q(y, z)を積分で求める.
ベクトル場d をd = (0, Q, 0) とおけば
rotd =
(−∂Q
∂yz, 0, 0
)= (c, 0, 0) = c
であるから,
a = rot (b + d)
となってaのベクトルポテンシャルはb + dとなる。
D が球や円柱、平行六面体の内部のときも同様.
問題 –14–
次のベクトル場 a のベクトルポテシシャルを求めよ.
(1) a = (x2, y,−(2xz + z))
(2) a = (z − y, x− z, y − x)
ベクトル場の分解とラプラシアン –15–
問題 領域D 上の C2 級のベクトル場 a を, D 上のスカラー場 f
とベクトル場 b により
a = grad f + rot b
の形に分解せよ.
まず、この分解が存在したと仮定する. 両辺の div をとると
diva = div grad f
となる。 div grad f は∂2f
∂x2+
∂2f
∂y2+
∂2f
∂z2となっているので,記号
∆ =∂2
∂x2+
∂2
∂y2+
∂2
∂z2
を導入して、ラプラシアンと呼ぶ。
div grad f = ∆f
となる.
ポアソンの方程式 –16–
D上の関数 g(x, y, z) に対して
∆f = g
なる偏徴分方程式を関数fに対するポアソンの方程式という.
ポアソンの方程式の解の 1 つは次の定理で与えられる.
定 理 領域V が閉曲面Sで固まれ, 関数 g(x, y, z)はV およびS を含む開集合でC1級とすれば,関数
f (x, y, z) =1
4π
∫∫∫V
g(x, y, z)√(x− ξ)2 + (y − η)2 + (z − ζ)2
dξdηdζ
はV 上でC2級で, Vにおいてポアソンの方程式∆f = gをみたす.
証明は省略する.
ヘルムホルツの定理 –17–
上の定理を用いて,領域 V が球の内部の場合に式 (6.9) の分解がつねに可能であることを示そう.
diva = ∆f
をみたすfを求める.
div (a− grad f ) = 0
から定理 よりa = grad f + rot b
をみたすベクトル場 b が存在する. これをヘルムホルツの定理という.
問題 –18–
1 V を有界な閉集合で,その境界が閉曲面Sからなっているとする.そのとき∫
S
r · nr3
dS =
{0 原点が S の外部の時
4π 原点が V に含まれる時
が成り立つことを証明せよ.
問題2 –19–
空間の中の領域Dで定義された関数f (x, y, z) が
∂2f
∂x2+
∂2f
∂y2+
∂2f
∂z2= 0
を満たすとき、f を調和関数という
[問題] 空間の中の領域Dで定義された調和関数とD内の閉曲面Sに対して ∫
S
∂f
∂ndS
が成り立つことを証明せよ.またSの内部の点Pに対して
f (P ) =1
4π=
∫S
(1
r
∂f
∂n− f
∂
∂n
(1
r
))dS
が成立することを証明せよ.ここで∂
∂nはSの単位法線方向の方向
徴分, rはS 内の動点AとPとの距離を表わす.