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別 冊 No. 102 (2013 年度 専門委員会関係活動報告) 別冊 2014 年 7 月 目 次 技術活動関係委員会一覧 ................................................................ 2 第 1 種専門委員会及び関係機関の国内委員会 JTC 1/WG 7 小委員会 .................................................................... 3 アクセシビリティ SWG 小委員会 ........................................................... 4 ディレクティブズ SWG 小委員会 ........................................................... 4 インターネットオブシングス SWG 小委員会 ................................................. 6 マネージメント SWG 小委員会 ............................................................. 7 SC 2 専門委員会(符号化文字集合) ....................................................... 8 SC 6 専門委員会(通信とシステム間の情報交換) ........................................... 9 SC 7 専門委員会(ソフトウェア及びシステム技術) ........................................ 11 SC 17 国内委員会(カード及び個人識別) ................................................. 18 SC 22 専門委員会(プログラム言語,その環境及びシステムソフトウェアインタフェース) ...... 21 SC 23 専門委員会(情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体) ........................... 23 SC 24 専門委員会(コンピュータグラフィクス,画像処理及び環境データ表現)................ 25 SC 25 専門委員会(情報機器間の相互接続) ............................................... 27 SC 27 専門委員会(セキュリティ技術) ................................................... 31 SC 28 国内委員会(オフィス機器) ....................................................... 35 SC 29 専門委員会(音声,画像,マルチメディア,ハイパーメディア情報符号化) .............. 37 SC 31 専門委員会(自動認識及びデータ取得技術) ......................................... 40 SC 32 専門委員会(データ管理及び交換) ................................................. 42 SC 34 専門委員会(文書の記述と処理の言語) ............................................. 45 SC 35 専門委員会(ユーザインタフェース) ............................................... 49 SC 36 専門委員会(学習,教育,研修のための情報技術) ................................... 50 SC 37 専門委員会(バイオメトリクス) ................................................... 52 SC 38 専門委員会(分散アプリケーションプラットフォーム及びサービス).................... 57 SC 39 専門委員会(IT と社会の持続可能性) .............................................. 58 SC 40 専門委員会(IT サービスマネージメントと IT ガバナンス) ............................ 59 第 2 種専門委員会 学会試行標準専門委員会 ................................................................ 62 クラウドセキュリティ・コントロール標準化専門委員会 ..................................... 63 光ディスクの期待寿命推定方法に関する国際標準化専門委員会 ............................... 65 第 3 種専門委員会 SQL 規格群 JIS 原案作成委員会 ........................................................... 67 NFC 規格群 JIS 改正原案作成委員会 ....................................................... 68 システム及びソフトウェア技術―利用者用文書類の設計者及び作成者のための要求事項 JIS 原案作成 委員会 ................................................................................ 69 システム及びソフトウェア 安心アシュアランス-アシュアランスケース JIS 原案作成委員会 .... 69 システム及びソフトウェア品質要求及び評価(SQuaRE)―開発者,取得者及び独立評価者への評価の手 引 JIS 原案作成委員会 .................................................................. 70 ガバナンス JIS 原案作成委員会 .......................................................... 71

別 冊 No. 102 - IPSJ/ITSCJ · との情報共有と. itu-tとの合同作業の可能性 の考慮. 現在日本を含む. 9カ国が参加登録している.コンビ ーナ,セクレタリとも韓国が担当している.

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別 冊 No. 102 (2013 年度 専門委員会関係活動報告) 別冊 2014 年 7 月

目 次 技術活動関係委員会一覧 ................................................................ 2

第 1 種専門委員会及び関係機関の国内委員会 JTC 1/WG 7 小委員会 .................................................................... 3

アクセシビリティ SWG 小委員会 ........................................................... 4

ディレクティブズ SWG 小委員会 ........................................................... 4

インターネットオブシングス SWG 小委員会 ................................................. 6

マネージメント SWG 小委員会 ............................................................. 7

SC 2 専門委員会(符号化文字集合) ....................................................... 8

SC 6 専門委員会(通信とシステム間の情報交換) ........................................... 9

SC 7 専門委員会(ソフトウェア及びシステム技術) ........................................ 11

SC 17 国内委員会(カード及び個人識別) ................................................. 18

SC 22 専門委員会(プログラム言語,その環境及びシステムソフトウェアインタフェース) ...... 21

SC 23 専門委員会(情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体) ........................... 23

SC 24 専門委員会(コンピュータグラフィクス,画像処理及び環境データ表現) ................ 25

SC 25 専門委員会(情報機器間の相互接続) ............................................... 27

SC 27 専門委員会(セキュリティ技術) ................................................... 31

SC 28 国内委員会(オフィス機器) ....................................................... 35

SC 29 専門委員会(音声,画像,マルチメディア,ハイパーメディア情報符号化) .............. 37

SC 31 専門委員会(自動認識及びデータ取得技術) ......................................... 40

SC 32 専門委員会(データ管理及び交換) ................................................. 42

SC 34 専門委員会(文書の記述と処理の言語) ............................................. 45

SC 35 専門委員会(ユーザインタフェース) ............................................... 49

SC 36 専門委員会(学習,教育,研修のための情報技術) ................................... 50

SC 37 専門委員会(バイオメトリクス) ................................................... 52

SC 38 専門委員会(分散アプリケーションプラットフォーム及びサービス).................... 57

SC 39 専門委員会(IT と社会の持続可能性) .............................................. 58

SC 40 専門委員会(IT サービスマネージメントと IT ガバナンス) ............................ 59

第 2 種専門委員会 学会試行標準専門委員会 ................................................................ 62

クラウドセキュリティ・コントロール標準化専門委員会 ..................................... 63

光ディスクの期待寿命推定方法に関する国際標準化専門委員会 ............................... 65

第 3 種専門委員会 SQL 規格群 JIS 原案作成委員会 ........................................................... 67

NFC 規格群 JIS 改正原案作成委員会 ....................................................... 68

システム及びソフトウェア技術―利用者用文書類の設計者及び作成者のための要求事項 JIS 原案作成委員会 ................................................................................ 69

システム及びソフトウェア 安心アシュアランス-アシュアランスケース JIS 原案作成委員会 .... 69

システム及びソフトウェア品質要求及び評価(SQuaRE)―開発者,取得者及び独立評価者への評価の手引 JIS 原案作成委員会 .................................................................. 70

ガバナンス JIS 原案作成委員会 .......................................................... 71

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技 術 活 動 関 係 委 員 会

(2014 年 3 月現在)

委員会(テーマ) 委員長/主査

技術委員会関係

技術委員会(情報技術)

伊藤 智

情報技術戦略 伊藤 智

JTC1/WG7(センサーネットワーク) 越塚 登

アクセシビリティ SWG 山田 肇

ディレクティブズ SWG 伊藤 智

インターネットオブシングス SWG 伊藤 智

マネージメント SWG 伊藤 智

第 1種専門委員会関係

SC2(符号化文字集合)

織田 哲治

SC6(通信とシステム間の情報交換) 山下 博之

WG1(物理層及びデータリンク層) 高山 佳久

SC7(ソフトウェア及びシステム技術) 谷津 行穗

WG2(システム,ソフトウェア及び IT サービスの文書化) 山本 喜一

WG4(ツールと環境) 薮田 和夫

WG6(ソフトウェア製品及びシステムの品質) 東 基衞

WG6/FSMSG 高橋 光裕

WG7(ライフサイクル管理) 村上 憲稔

WG10(プロセスアセスメント) 新谷 勝利

WG19(IT システムの仕様化技術) 梶原 清彦

WG19/ODPSG 宮崎比呂志

WG20(ソフトウェア及びシステム知識体系とプロフェッショナル形成) 鷲崎 弘宜

WG21(情報技術資産管理) 高橋 快昇

WG24(小規模組織のソフトウェアライフサイクル) 伏見 諭

WG26(ソフトウェアテスト) 西康 晴

WG28(使用性のための工業共通様式) 福住 伸一

WG42(アーキテクチャ) 白坂 成功

SC22(プログラム言語,その環境及びシステムソフトウェアインタフェース) 石畑 清

CWG(WG14) 野田 誠

COBOLWG(WG4) 高木 渉

C++WG(WG21) 安室 浩和

C#,CLI,スクリプト系言語SG 黒川 利明

FortranWG(WG5) 田中 稔

SC23(情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体) 谷口 昭史

SC24(コンピュータグラフィクス,画像処理及び環境データ表現) 青野 雅樹

WG6(拡張現実世界によるプレゼンテーション及び交換) 青野 雅樹

WG9(拡張現実世界の概念と参照モデル) 蔵田 武志

SC25(情報機器間の相互接続) 宮島 義昭

WG1(ホームエレクトロニックシステム) 山本 和幸

WG3(商用構内配線) 倉嶋 利雄

WG4(計算機システム及び周辺機器間の相互接続) 佐藤 和弘

SC27(セキュリティ技術) 渡邊 創

WG1(情報セキュリティマネジメントシステム) 山﨑 哲

WG2(暗号とセキュリティメカニズム) 松尾真一郎

WG3(セキュリティの評価・試験・仕様) 甲斐 成樹

WG4(セキュリティコントロールとサービス) 中尾 康二

WG5(アイデンティティ管理とプライバシー技術) 崎村 夏彦

SC29(音声,画像,マルチメディア,ハイパーメディア情報符号化) 高村 誠之

WG1 (静止画像符号化) 小野 文孝

委員会(テーマ) 委員長/主査

WG11/AUDIO(動画像符号化/音声) 山崎 芳男

WG11/SYSTEMS/MPEG-7SG 渡部 秀一

WG11/SYSTEMS(動画像符号化/システム) 金子 格

WG11/VIDEO(動画像符号化/動画) 鈴木 輝彦

SC31(自動認識及びデータ取得技術) 河合 和哉

SC32(データ管理及び交換) 鈴木 健司

WG2(メタデータ) 安達 辰巳

WG3(データベース言語) 芝野 耕司

WG4(SQL マルチメディア・アプリケーションパッケージ) 鈴木 健司

SC34(文書の記述と処理の言語) 小町 祐史

SC35(ユーザインタフェース) 関 喜一

WG8(ユニバーサルリモートコンソール) 山本 喜一

SC36(学習,教育,研修のための情報技術) 仲林 清

WG2(協調及び知的技術) 池田 満

SC37(バイオメトリクス) 山田 朝彦

WG1(バイオメトリック専門用語) 溝口 正典

WG2(バイオメトリックテクニカルインタフェース) 熊谷 隆

WG3(バイオメトリックデータ交換フォーマット) 新崎 卓

WG4(バイオメトリックシステムの技術的実装) 山口 利恵

WG5(バイオメトリック技術の試験及び報告) 溝口 正典

WG6(バイオメトリクスに関わる社会的課題) 山口 利恵

SC38(分散アプリケーションプラットフォーム及びサービス) 鈴木 俊宏

SC40(IT サービスマネージメントと IT ガバナンス) 平野 芳行

WG1(IT ガバナンス) 原田要之助

WG2(ITサービス管理) 八木 隆

WG3(ITES-BPO) 清水 裕子

第 2種専門委員会

学会試行標準

小町 祐史

WG1(情報技術用語) 大野 義夫

WG2(文字図形識別情報) 黒田信二郎

WG3(解析・生成用日本語電子化辞書形式) 柏野和佳子

WG4(音声言語処理インタフェース) 新田 恒雄

WG6(レスポンシブリンク) 山崎 信行

WG7(フォントリソース参照方式) 小町 祐史

WG8(磁気記録データ完全消去方式) 竹内 正

クラウドセキュリティ・コントロール標準化 山﨑 哲

光ディスクの期待寿命推定方法に関する国際標準化 谷口 昭史

第 3種専門委員会

SQL 規格群 JIS 原案作成

芝野 耕司

SQL 規格群 JIS/WG 芝野 耕司

NFC 規格群 JIS 改正原案作成 山下 博之

システム及びソフトウェア安心アシュアランス-アシュアランスケース JIS原案作成 木下 佳樹

システム及びソフトウェア品質要求及び評価(SQuaRE)--開発

者,取得者及び独立評価者への評価の手引JIS原案作成

東 基衞

ガバナンス JIS 原案作成 原田要之助

GISJIS/WG 原田 敬

GITJIS/WG 平野 芳行

その他

ISO 2375 登録

三上 喜貴

注:第 1 種専門委員会:ISO/IEC JTC1傘下の SWG/SCs に対応 第 2種専門委員会:標準化の提案を準備、または標準化活動を支援

第 3 種専門委員会:経済産業省または日本規格協会の委託により,国際規格 JIS化の原案作成

SC17(カード及び個人識別) 一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会担当 SC31傘下の WG 一般社団法人電子情報技術産業協会担当

SC28(オフィス機器) 一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会担当 SC35傘下の WG 一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会担当

SC39(ITと社会の持続可能性) 一般社団法人電子情報技術産業協会担当 IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7  2

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第1種専門委員会および関係機関の国内委員会

■ JTC 1/WG 7 小委員会(センサーネットワーク/Sensor Networks)

委員長 越塚 登(東京大学大学院)

1. 概要

JTC 1/WG 7は,前身の SGSN(Study Group on Sensor Network)が,2008年 4月から 2009年 10月まで活動を行った後,2009年のテルアビブ総会で,JTC 1直下のWorking Groupとして設立が決議されたものである.そのスコープは,次の通りである:

1) センサーネットワークの一般的ソリューションにおいて JTC 1に関係する技術を支える標準化活動.

2) アプリケーションオリエントなセンサーネットワークにおいて JTC 1のスコープにインパクトを与えるかもしれないギャップと共通性の同定.

3) センサーネットワーク分野における関係組織との情報共有と ITU-Tとの合同作業の可能性の考慮.

現在日本を含む 9カ国が参加登録している.コンビーナ,セクレタリとも韓国が担当している. 第 1回のWG 7会合は,2010年 3月 8日から 12

日までロンドンで開催された(日本からの出席1名).以降年 2回のペースで会合が行われているが,いずれも日本からは参加していない.昨年度行われた会議は以下である:

・第 8回:2013-09-03/6,スペイン・サンセバス

ティアン(参加約 20名) ・第 9回:2014-03-25 /28英国・ロンドン(参加約 20名)

第 10回会合は,2014-09-16 /18,韓国・釜山にて予定されている.

2. 主なプロジェクト進捗状況

現在,4つのプロジェクトを持っている(そのうちの一つは 7つのマルチパート).それぞれのステータスを以下に示す. ・ISO/IEC 29182-1 Sensor Network Reference

Architecture (SNRA) - Part 1: General overview and requirements:IS発行.

・ISO/IEC 29182-2 Sensor Network Reference Architecture (SNRA) - Part 2: Vocabulary and Terminology:IS発行.

・ISO/IEC 29182-3 Sensor Network Reference Architecture (SNRA) - Part 3: Reference architecture views:IS発行.

・ISO/IEC 29182-4 Sensor Network Reference Architecture (SNRA) - Part 4: Entity models:IS発行.

・ISO/IEC 29182-5 Sensor Network Reference Architecture (SNRA) - Part 5: Interface definitions:IS発行.

・ISO/IEC 29182-6 Sensor Network Reference Architecture (SNRA) - Part 6: Application Profiles:IS発行.

・ISO/IEC 29182-7 Sensor Network Reference Architecture (SNRA) - Part 7: Interoperability guidelines:FDIS準備中

・ISO/IEC 20005 Services and Interfaces Supporting Collaborative Information Processing in Intelligent Sensor Networks:IS発行.

・ISO/IEC 30101 Sensor Network and its Interface for Smart Grid System :FDIS準備中

・ISO/IEC 30128 Sensor networks application interfaces:FDIS準備中

なお,2013年度は下記 3件の NWIPが投票に掛かったが,いずれも 5カ国以上の参加が得られなかった.参加国,メンバともに固定化してきており,閉じたコミュニティでの活動となっている. ・Proposal for a New Work Item on Sensor

Network Testing Framework ・Proposal for a New Work Item on Underwater

Acoustic Sensor Network Reference Model ・Proposal for a New Work Item on Internet of

Things Reference Architecture (IoT RA)

3. その他

現行の 4 件のプロジェクトは活動開始から 4 年を経過してようやくいずれも最終段階になってきた.一方,新規提案 3件がいずれも成立しなかったことから,この分野への各国の関心が薄れていることが窺われる.日本国内でも,この WG への関心は薄く,必要最小限の活動に限って対応している.

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 3

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■ アクセシビリティSWG小委員会

主査 山田 肇 幹事 野村 茂豊((株)日立製作所)

1. 概要

本委員会の主な目的は,2009 年に発行したInformation technology -- Accessibility considerations for people with disabilities - Part 1: User needs summary(ISO/IEC TR 29138 Part 1),Part2: Standards Inventory(アクセシビリティ関連の規格のデータベース)および Part 3: Guidance on User Needs Mapping(Part 1の活用方法)をデータベース情報として更新することである.また,JTC 1から,アクセシビリティに関連した業務支援があれば,JTC 1への支援も行う.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 Part 1: User needs summaryの更新について

ISO/IECガイド 71改定案に基づき Part 1の再構成案を日本寄書とカナダ寄書をベースに議論し,構成の変更とユーザ ニーズの追加を行うこととした.

WGにて具体的な案を作成し,2014年 6月に電話会議で審議する予定である.

2.2 Part 2: Standards Inventoryの更新について

Part2 にアクセシビリティに関連する新しい規格を追加し,the Online Browsing Platformに掲載した.

2.3 Part 3: Guidance on User Needs Mappingの更新について

Part 1の更新案の合意後に,審議を行う.

2.4 JTC 1への支援について

JTC1 Standing Documents をアクセシビリティ対応とするための提案を JTC 1/SWG-Directives Meetingに行った.

3. その他

The JTC 1 Secretariat と SWG-A Convenor がWikipediaに the SWG on Accessibilityを掲載した. http://en.wikipedia.org/wiki/ISO/IEC_JTC_1/SWG-A

■ ディレクティブズ SWG小委員会

幹事 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

1. 概要

JTC 1/SWG on Directivesのミッションは JTC 1の業務手続き(Directives)を管理することである.新しい業務手続きである JTC 1 Supplementと JTC 1 Standing Documentsが正式に発行・施行されて 3年が経過し,実質上の移行が完了した.しかし実際に規格開発を行っている Sub-Committee や Working Group の手順との不整合もいまだに多く,それに加え ITU-T との共同規格開発手順,外部業界団体との連携における PAS や Fast Track 手順の見直し,ISO/IEC JDMTや ISO TMBからの業務手続きの改訂要請もあり,それらに多くの時間を費やしている. 2013年度は,1回だけ 2013年 8月ロンドンにてSWG on Directives会議が開催された.また,JTC 1においても,2013年 JTC 1ペロス=ギレック総会でSWG on Directives 会議に直接関連する決議が行われ,さらには年間を通して Directives に関する Ad Hocの電話会議も行われるなど,JTC 1 Supplementと JTC 1 Standing Documentsに対するより詳細な検討が加えられている.

2. 主なプロジェクト進捗状況

以下に 2013年度に改訂が行われた,または検討が進んでいる JTC 1 Supplementと JTC 1 Standing Documentsの改定内容を簡単に記す.読者の中にはJTC 1にどれだけ多くの JTC1 Standing Documentが存在しているか把握していない方々も多いと聞くので,本稿では全ての JTC1 Standing Document名を上げ今年度の改訂の有無,改訂されている場合の内容を記載した.

ISO/IEC,特に ISOではこの数年 Directives に対し多くの変更を行っており,特に 2013年版で大きな変更が行われている.JTC1では ISOの国際規格開発手順を模倣しているところが多いため,今年はその対処方針の検討作業も含め時間を要した.

2.1 JTC 1 Supplement

a) 2年ぶりに JTC1 Supplement(2014年版)が発行された.今年から JTC1 Supplement単独の発行を止め, ISO/IEC Directives Part 1 と JTC 1 Supplement を統合した Consolidated JTC 1 Supplementのみを発行することになった. b) 改訂された JTC 1 Supplement は ISO Supplementとの整合性を意識し,ISO Supplementと JTC1 Supplement の比較が文節単位で行われ検

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 4

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討が加えられた.例えば,TC(JTC1)内での Internal Liaisonの要請に対してのガイド,Graphical Symbolの登録,プロジェクトの Automatic cancellationなどが盛り込まれた.また ISOの Fast Trackと JTC 1の Fast Track の違い,PAS の DIS 段階における業務手続きを整理して記載した.さらに,SCと JTC 1の NWI Parallel Ballot に つ い て の 記 載 やManagement System Standard (MSS)の扱いなどが盛り込まれた.ISO で明記している開発途上国(Developing Country)の参加に対しての配慮については JTC 1/SWG on Managementで検討することになった.また一方で,CDをスキップする条項は盛り込まないなど,JTC 1独自の業務手続きを残している.

2.2 JTC 1 Standing Document 1 - Teleconferences and Electronic Meetings

2.8節で説明する SD7 - Meetingsと密接に関連があるため,SD7と統合するべく作業が行われている.

2.3 JTC 1 Standing Document 2 - SD 2 on History

例えば新しいSCが設立された場合などに適時更新されている.発行には JTC 1 総会の承認が必要になる.2011 年以降更新されていないが,昨今 SC 39や SC 40 が設立されたのでそろそろ更新が必要な時期に差し掛かっている.

2.4 JTC 1 Standing Document 3 - Guide for ITU-T and JTC 1 Cooperation

本SD 3で規定している内容の不明瞭な点を加筆修正し改訂が行われた.本稿執筆時点(2014年 5月)では JTC1 側の承認が済み,現在は ITU-T 側の承認待ちとなっている.ちなみに ITU-T との連携そのものに 関 わ る 本 質 的 な 事 項 は JTC 1/SWG on Managementが担当している.

2.5 JTC 1 Standing Document 4 - Planning

JTC1レベルの新しい国際規格候補を発掘するための手順が記載されている.本 SDは JTC 1/SWG on Planningが管理している.

2.6 JTC 1 Standing Document 5 - Normative Referencing

AROとRERについて重複している文章の整理が行われ,RER は例えば企業が保有する仕様を参照する場合などのみに使用し,基本的には AROを使用するべきであるというガイドが盛り込まれた.

2.7 JTC 1 Standing Document 6 - Technical Specifications and Technical Reports

今年は改訂が無かった.しかし DTRと DTSの投票基準に曖昧さが残っている点や ISO Supplementでは存在しない TR と TSの Fast Trackの扱いについて Ad Hocを設置して現在検討中である.

2.8 JTC 1 Standing Document 7 - Meetings

SD 1 - Teleconferences and Electronic Meetings と統合作業が行われている.国際会議報告の一環として会議の収支報告のテンプレートがAnnex として盛り込まれた.収支報告の提供はshouldとすることも明記された.

2.9 JTC 1 Standing Document 8 - Maintenance

今年は改訂が無かった.

2.10 JTC 1 Standing Document 9 - Guide to PAS Transposition

a) PAS 規格の管理や SC の対応,Explanatory Report の書き方,PAS 提案時のクライテリアなど,PASプロセスの不明瞭な点について改訂が行われた.PAS の Maintenance 項 目 は 必 須 記 載 事 項(Mandatory Element)として記載されている.また本 SD 9で提供される Explanatory Reportのテンプレートは Fast Trackでも適用されることが明記された. b) ISOではプロジェクト開始時点から TRや TSを前提として規格開発を行っていないが,JTC 1では行われており,大きな JTC 1 特有の規格開発手順となっているため,JTC 1 側で ISO に何処まで合わせられるかについて検討が行われている.

2.11 JTC 1 Standing Document 10 - Advisory or Ad Hoc Groups

今年は改訂が無かった.

2.12 JTC 1 Standing Document 11 - Progression of JTC 1 Projects

今年は改訂が無かった.

2.13 JTC 1 Standing Document 12 - Electronic Document Preparation, Distribution and Archiving (EDPDA)

今年は改訂が無かった.

2.14 JTC 1 Standing Document 13 - Conformity Assessment

今年は改訂が無かった.

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 5

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2.15 JTC 1 Standing Document 14 - Interoperability

今年は改訂が無かった.

2.16 JTC 1 Standing Document 15 – Liaisons

今年は改訂が無かった.

2.17 JTC 1 Standing Document 16 - Registration Authorities

今年は改訂が無かった.

2.18 JTC 1 Standing Document 17

欠番となっている.

2.19 JTC 1 Standing Document 18 - Acronyms

今年は改訂が無かった.

2.20 JTC 1 Standing Document 19 - Meetings(新規:未発行)

SD1 (Teleconferences and Electronic Meetings)とSD7 (Meetings)を統合した新しいSDである.ISOの国際規格開発手順を基本に SD1, SD7 との整合性を図っている.3ヶ月の JTC1投票を経てコメント処理中である.日本からは理解を助けるため会議を運営する上で考えなければいけない期限を一覧した表を提出している.

ISO TMBや IEC SMBから「JTC 1の規格開発にはもっと ISO/IECの共通 Directivesを利用するべき」をというプレッシャーを受けている.WG Convenorの任期の変更, Category C Liaison の廃止とCategory D Liaison への移行など,将来,JTC 1 Supplementはさらに縮小されると予想される.

ISO では Working Group への参加は Individual Expert として参加することがガイドされているが,JTC 1では National Body として参加している.この差異はWorking Groupでの合意形成に大きな影響を及ぼしているため,ISO TMB から JTC 1 もIndividual ExpertとしてWorking Groupに参加するよう是正が求められ,National Bodyの任命によるIndividual Expert と して 参 加す る こと が各Sub-Committeeや National Bodyに周知された.

3. その他

a) 2013年3月のニューヨーク会議で日本から現在JTC 1 で使用されている NWIP Ballot Form がISO/IEC Directives Part 1の記載と食い違いがあることが指摘され,ITTF から「検討作業項目に入っているがシステムの改修にはコストがかかることもあ

り時期は未定,今後も現状報告を行う」との説明があった. b) JTC 1 NWIP 採択基準と現在利用している投票システムとの整合性について,ISO における NWIPのプロセスとカウント方法を確認し,2014年度シドニー会議で JTC 1の NWIP採択基準を ISOに整合できるか検討することになっている.

■ インターネットオブシングス SWG小委員会

主査 伊藤 智(産業技術総合研究所)

1. 概要

1.1 委員会の担当範囲等

インターネットオブシングス SWG 小委員会は, 2012年の JTC 1チェジュ島総会において JTC 1直下 に設置さ れ た Special Working Group on Internet of Things (SWG on IoT)に対応する国内小委員会である.SWG on IoTの幹事国は韓国が担当し,コンビナーは Sangkeun Yoo,セクレタリは Hyoung Jun Kimである.IoTに関する標準のトピックを見出し,JTC 1内の組織に標準化の開発を促すとともに,JTC 1内部および外部との IoTに関する活動の調整等を行うことを目的としている.

2.2 主な国際会議と参加の状況

2013年度には F2Fの会議が 2回開催された. 8月 20日~21日に,米国・ワシントン D.C.に

て第 2回目の会議が開催された.参加者は,カナダ(3),中国(5),ドイツ(1),韓国(3),シンガポール(1),英国(2),米国(10),JTC1(1),SC31(2),ISO/TC122(1),GS1(1),OGC(1),日本(1:河合和哉[パナソニック])で,8カ国,4リエゾン合計 32名(電話会議参加 8名を含む)であった. 第 3 回は,2014 年 3 月 18 日~20 日に中国・重

慶で開催された.この会議には,日本から参加者を送ることができなかった.

3.1 状況

これまでの三つの Ad-hoc Group に加えて,Reference Architecture/Framework をまとめるAd-hoc Group 4が設置され,英国がコンビナーを担当することとなった. 引き続き日本としては,動向をフォローするととも

に,国内の SCや関連する組織等と情報共有を行う予定である.

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 6

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2. 主なプロジェクト進捗状況

各 Ad-hoc Group は,電話会議にて議論を進めている.開発するドキュメントに比べて参加者がそれほど多くないため,策定状況は順調とは言えない状況である.

2.1 Ad-hoc Group 1

Ad-hoc Group 1 は, IoT の共通理解のためMindMapと IoTの定義をまとめている.IoTの定義については,SWG 5として新たな定義を作成するのではなく,他団体等での定義をドキュメントしてまとめることとした.MindMap は,アプリケーションドメイン,要件,ステークホルダ,その他検討点をまとめたものと,技術をまとめたものに分割して作成中である.

2.2 Ad-hoc Group 2

Ad-hoc Group 2は,IoTの要求事項をまとめている.要求事項をまとめるにあたり,関連の ISO,IEC,JTC 1の TC/SC及び外部団体から情報提供を受けるためのテンプレートを作成している.今後は作成したテンプレートを関連 TC/SC及び団体に送付し,情報提供を要請する.

2.3 Ad-hoc Group 3

Ad-hoc Group 3は,IoTに関連した標準について重複やギャップの有無を明らかにすることを目的にしている.このため情報収集のためテンプレートを作成し, 関連の ISO,IEC,JTC 1の TC/SC及び外部団体に情報提供を依頼している.

2.4 Ad-hoc Group 4

Ad-hoc Group 4 は,これまでに開発されているIoTの Reference Architecture/Frameworkについて,それらの間のギャップを明確にし,今後の協力可能性について検討するため関連団体等で定義されている IoTの Reference Architecture/Frameworkを集めて評価を行っている.

3. その他

第 4 回の会議は,7 月 29 日~31 日に,英国・ロンドンで開催される予定である. また,第 5 回は,2015 年 1 月 27 日~29日に,

ドイツ・ベルリンで,第 6 回は 2015 年 7 月にカナダで開催される予定である.

■ マネージメント SWG小委員会

主査 伊藤 智(産業技術総合研究所)

1. 概要

2012 年 11月の JTC 1チェジュ島総会において,設立された SWG on Management(SWG-M)に対応するための国内小委員会であり 2013年 12月に設立された.小委員会が設立される前までは,規格役員として,現在主査の伊藤が対応していたが,SWG-Mとしての活動内容が定まってきたので,対応する国内小委員会を立ち上げた.第一回目の委員会を 2014年 4月 22日に予定しており,国内委員会としての活動は2014年度からとなる.

2. 主なプロジェクト進捗状況

SWG-Mの会議は,これまで,2013年 3月のニューヨーク会合,2013 年 9 月のロンドン会合,2013年 11月の JTC 1総会と併設して行われた会合の合計3回の F2F 会合と,何回かの電話会議が実施されている.これまで,プロジェクトの競合を解く活動の他,JTC1総会の運営方法,JTC 1マーケティング,ITU-Tとの連携モデルについての検討を進めている.

2.1プロジェクトの競合解消

これまで SWG-Mでは,次のような競合解消に関わる活動を行ってきた.JTC 1/WG6およびSC7/WG40における IT ガバナンスに関する競合を解くとともに,IT サービスマネージメントに関わるプロジェクトを整理して 2013年には新しい SC 40(IT Service Management and IT Governance)を設立した.SC 38の設立と同時期に SC 7が SOAに関するスタディグループを立ち上げたが,SOA およびクラウドコンピューティングについては SC 38 が担当することを再確認した.SC 24/WG 9と SC 29/WG 11が拡張現実に関する取り組みをそれぞれに始めていたので,拡張現実の参照モデルを合同で開発するような調整を行った. また,JTC 1総会をどのように進めるのが良いか,

長期的および来年度の進め方について,検討を行った.総会の効率を上げるために,SWG-Mにおいて事前にIssueを議論することについて賛同はあるものの,総会での議論との重複を避け,混乱しないようにするための方法が必要である.今年度の総会では,総会の二日目の夕方に F2Fの会議を行い,SC 40の設立に関する意見調整を行った.事前の協議を SWG-Mで行うことで,総会での時間は多少短縮されたものの,総会で新規に提出される案件についての協議などは行われなかった.

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JTC 1の活動をより良いものとするため,マーケティングの観点から議論を行った.外部に対して,活動をアピールするため情報発信を行うページを作成するなどの意見が出た.JTC 1の活動を紹介するページは作成され公開された(http://jtc1info.org/).今後も議論が継続される見込みである.

3. その他

2014 年は,5 月のシドニー会合,9 月のモントリオール会合および 3 月の釜山会合が SWG-M として計画されている.国内小委員会では,これらの会合での JNB としての寄書やポジションについて検討する予定である.

■ SC 2 専門委員会(符号化文字集合/Coded Character Sets)

委員長 織田 哲治(日本アイ・ビー・エム(株))

1. 概要

1.1 担当分野

SC 2は,符号化文字集合(いわゆる文字コード)および文字列の照合順番を担当する.JTC 1の中で最も長期にわたって活動している SC である.日本は,SC 2の議長および幹事国を継続的に引き受けるなど,主導的な役割を果たしている. 過去には,国や地域・応用などごとに様々な符号化文字集合が使用されていた時代があり,SC 2も多数の符号化文字集合規格を作成していた.しかし近年は,特定の地域や応用に特化した符号化文字集合の利用は減少の一途をたどっている.代わりに,1990年頃に登場したユニバーサル符号化文字集合,すなわち,多数の国・地域や応用のニーズを満たし場面によって使い分ける必要のない符号化文字集合の利用が進んでいる. 現在の SC 2の活動の大部分は,ユニバーサル符号化文字集合の国際規格である ISO/IEC 10646(国際符号化文字集合(UCS:Universal Coded Character Set))にあてられている.その他に,国際文字列照合順番の規格である ISO/IEC 14651も担当している.

1.2 組織

現在 SC 2傘下には,ただ一つのWGとしてWG 2があり,ISO/IEC 10646(UCS)を開発している.WG 2 の傘下には,主に漢字使用国が集まって UCSの中で漢字に関連する事柄を担当する表意文字ラポ

ータグループ(IRG:Ideographic Rapporteur Group)がある.ISO/IEC 14651 は,WG を組織せず,OWG-SORT(Other working group on sorting)が規格の編集作業を担当している.SC 2は,過去に開発した様々な単一オクテット符号化文字集合,制御機能などの規格も担当しているが,これらの規格の大半はスタビライズされており,実質的な作業はほとんどない. 国内委員会の組織は,SC 2専門委員会が SC 2およびその傘下のすべての活動に対応している.常設の小委員会などはない.特定の技術的内容に関して詳しい検討が必要な場合には,必要に応じてアドホックグループを編成して対応することとしている.

1.3 国際会議対応

2013年度の国際会議は,6月および 2014年 2月にそれぞれビリニュス(リトアニア)およびサンノゼ(米国)でWG 2(OWG-SORTも併催)が,5月および11月にそれぞれ香港および東京で IRGが開催された.日本からの参加者は,それぞれこの順に,2人,3人,5人,8人であった.

1.4 規格の状況

2013年度には,ISO/IEC 10646:2012追補 1が出版された.なお,追補 2は投票プロセスは完了したが出版はされていない. 投票に付された規格案等は,NP 0件,CD 0件, DIS 1件,FDIS 0件,PDAM 2件,DAM 0件および FDAM 1件であった.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 国際符号化文字集合

2.1.1 全体

現在の SC 2の活動は,ISO/IEC 10646国際符号化文字集合(UCS)の開発と保守が中心となっている.最初の規格化は ISO/IEC 10646-1:1993である.この 後 , ISO/IEC 10646-1:2000,ISO/IEC 10646-2:2001 といったパート構成での出版を行い,2003 年度末にパート構成を廃した最初の版としてISO/IEC 10646:2003を開発し規格の再整理を行った.さらにその後も,継続的に主として文字の追加を行い,第 2版 ISO/IEC 10646:2011,第 3版 ISO/IEC 10646:2012を出版している.2013年度は,この第3 版に対する 2 つめの追補の開発を行った.現在は,第 4版及びその追補の開発を進めている. 照合順番に関する活動は,ISO/IEC 10646に対す

る文字の追加と一致するように ISO/IEC 14651を保守することが主要な内容である.2013 年度はISO/IEC 14651の第 3版に対する追補 2の開発を進めた.

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2.1.2 漢字関連

現在日本国内では,電子政府等公共分野における外字利用の実態の調査研究に基づいて,行政実務で必要とされる漢字の整理が行われており,汎用電子情報交換環境整備プログラム(*1)の成果を引き継いだ文字情報基盤整備事業(*2)が担当する仕様を国際標準と整合させることが急務となっている.当委員会では,文字情報基盤において ISO/IEC 10646に符号化されていない漢字の標準化提案を行っている.第 3 版ISO/IEC 10646:2012ではCJK統合漢字拡張Cおよび Dに,また 2013年度に DIS投票を終えた第 4版では CJK 統合漢字拡張 E に,この仕様に含まれる漢字が符号化されている.いずれも汎用電子情報交換環境整備プログラムの成果に基づいて標準化提案されたものであったが,2013年度には文字情報基盤の仕様に基づいた標準化提案を当委員会から IRGに行い,現在はそれらの漢字を含む CJK 統合拡張漢字 F 案の精査を行っている. また,当委員会の活動には 2012年度から大正新脩大藏經(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)の電子化を進める一般財団法人人文情報学研究所が参加しており,その作業を通して追加が必要と思われる漢字の国際標準化に向けた検討も行っている.CJK統合漢字拡張 F案には,これに基づく漢字も含まれている.

(*1) 経済産業省の委託事業として平成 14 年度から実施されたプロジェクトで,将来の電子政府の情報交換での活用を念頭に置き,いわゆる外字の調査・整理・体系化を行い,電子申請などのシステムでの情報交換を可能にすることを目的としていた.汎用電子情報交換環境整備プログラムの全活動は平成 23年度で完了した. (*2) 汎用電子情報交換環境整備プログラムの成果物に基づき,電子政府等公共サービスにおける文字環境の整備,標準化を目指す.2010年に経済産業省委託事業として検討が開始され,2011年度からは IPA の自主事業として,実証実験などを通して実用化に向けた検討が進められている.

2.1.3 非漢字関連

主に仏教の経典において用いられている悉曇文字(Siddham)が第 3 版 ISO/IEC 10646:2012 の追補 2で追加されることになったが,当委員会では,国内の専門家に意見を伺った結果,これらの文字だけでは実際の利用には不十分として不足の悉曇文字の追加を提案した.その結果,追加提案した文字は,第 4版のDIS案およびこの第 4版に対する追補 1のDAM案に含まれた. また,現在 ISO/IEC 10646への追加提案を検討し

ている文字としては,変体仮名に関して上記の文字情

報基盤事業との情報交換を行いながら,国内でのニーズの調査を行っている.

3. その他

3.1 IVD登録

文字情報基盤整備事業が整理を進めている漢字のうち,ISO/IEC 10646では同じ符号を割り当てることになっているが業務の都合上区別して扱う必要のあるものについて,それらの漢字を漢字字形指示列(IVS, Ideographic Variation Sequence)で扱うための漢字字形データベース( IVD, Ideographic Variation Database)への登録案である”Moji_Johoコレクション”の作成を行い,この IVDの登録機関であるユニコードコンソーシアムが行う 90日間の公開レビューを行った.現在は公開レビュー期間を終えて,寄せられたコメントへの対応方針を検討中である.この Moji_Joho コレクションは,一部の漢字字形に関して,汎用電子情報交換環境整備プログラムから登録済みの Hanyo-Denshi コレクションと漢字字形指示列の共有を行っている.

3.2 国際標準に示す漢字字形についての考え方

現在,ISO/IEC 10646の CJK統合漢字表に使われている漢字の字形には,国内規格などその文字の原典で使用されている字形(いわゆる例示字形)を用いているが,原典が改訂されて例示字形が変更された場合には,それに合わせて ISO/IEC 10646 の CJK 統合漢字表の例示字形も変更するべきではないかという提案が出されている.この提案は,JIS X 0208と JIS X 0213との関係のように同一文字が複数規格で定義されておりしかもその例示字形が異なるような場合を考えると慎重に検討する必要がある. ■ SC 6専門委員会(通信とシステム間の情報交換/Telecommunications and Information Exchange Between Systems)

委員長 山下 博之(独立行政法人情報処理推進機構)

1. 概要

SC 6は,汎用計算機/ワークステーション/パソコンなどの情報処理装置,情報通信家電や ICカード互換通信機器,マルチメディア情報機器を含むシステム相互間の各種情報転送に必要となる下位層及び上位層の通信プロトコルの標準化を担当している.ニーズにあった規格をタイムリーに標準化するため,

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ITU-T,IEEE,Ecma,IETF 等とリエゾンをとりながら活動を進めている. 2013 年度には,我が国発で Ecma 経由のFast-Track 手続きに基づく NFCIP(Near Field Communication Interface and Protocol)関連の投票が行われた.また,NFC Forumとのカテゴリ Cのリ エ ゾ ン , ISO/IEEE Partner Standards Development Organization (PSDO) Cooperation Agreement に基づく IEEE からの LAN関連の FDIS投票等も行われた.さらに,無線 LAN 関連全般,無線電力伝送等の通信プロトコル,ユビキタス・センサ・ネットワーク,将来網,マネージド P2P,デバイス制御と管理,ディレクトリ,ASN.1 等の規格に関する活動も行った. なお,2013年度に出版された規格は,ISが 14件,TRが 4件,CORが 2件,AMDが 3件であった.また,投票については,FDIS/FDAM 投票 18 件,DIS/DAM投票 2件,DTR投票 3件,FCD投票 3件,CD投票 5件,PDTR投票 2件,NP投票 3件であった.

2. 主なプロジェクトの進行状況

2.1 WG 1(物理層およびデータリンク層)

a) NFC関係案件

1) ISO/IEC DIS 13157-1(NFC-SEC:NFCIP-1セキュリティサービス及びプロトコル)への賛成投票.技術内容は ISO/IEC 18092の改正内容との調和であり,日本企業からの貢献の大きい案件である.

2) ISO/IEC DIS 19369(NFCIP-2試験方法読み方指針)への反対投票.NFCIP-2 本体では規定していない技術を試験規格で追加しているところが問題である.活発な海外 NB担当者と意見交換したところ問題を共有できたが,ドイツが賛成票を入れたことから本件は承認扱いになってしまった.

b) IEEEからの PSDO案件

本格的に PSDO 手続きが行使され始めた.SC6 国内委員会は,対応を試行錯誤中である.さしあたり,当該案件を IEEEが JTC 1へ fast-trackで提案してよいかを問う CIB なので,DIS 投票同等と見做して下記の三つについて,技術委員会へ附議する試みを行った.補遺 1及び 2を前提とする三つ目の補遺が JTC1の規則に合わないため,そのことをコメントして賛成としているが,けっして問題の解決にならないことは自明である.

1) IEEE 802.11ae(無線 LAN 媒体アクセス制御(MAC)及び物理層仕様;補遺 1:管理フレームの

優先順位付けで IEEE Std 802.11ae(tm)-2012 (IEEE Std 802.11(tm)-2012への補遺))

2) IEEE Std 802.11aa(tm)-2012(無線 LAN媒体アクセス制御(MAC)及び物理層仕様;補遺 2:堅牢なオーディオビデオストリーミングのための MAC 強化;IEEE Std 802.11ae(tm)-2012補遺を適用後の IEEE Std 802.11(tm)-2012への補遺)

3) IEEE 802.11ad(無線 LAN 媒体アクセス制御(MAC)及び物理層仕様;補遺 3:60GHz帯超高処理能力のための機能強化;二つの補遺「IEEE Std 802.11ae(tm)-2012 及 び IEEE Std 802.11aa?-2012 」 を 適 用 し た IEEE Std 802.11(tm)-2012への三つ目の補遺;IEEE Std 802.11(tm)-2012 への「60GHz 帯超高処理能力のための機能強化」仕様追加)さらに,下記のローカル及びメトロポリタンエリアネットワーク仕様についての IEEEから JTC1への PSDOによる fast-track FDIS/FDAM 案件には賛成票を投じた.IEEEから JTC1への PSDO手続きによる案件対応は,試行錯誤中である.これに関しては,下記案件に関係する IEEEの標準化活動参加者から SC6国内専門委員会への情報が無いという問題がある.過渡期の猶予を鑑みて,いわゆる無線 LANは日本国内で使われているという理解レベルで下記 4~12の案件に対し賛成とした.

4) ISO/IEC FDIS 8802-1AE(第1AE部:媒体アクセス制御層セキュリティ)

5) ISO/IEC FDIS 8802-1X(第1X部:ポートに基づくネットワークアクセス制御)

6) ISO/IEC/IEEE FDIS 8802-1AB(第1AB部:ステーションと媒体アクセス制御との接続性探査)

7) ISO/IEC/IEEE FDIS 8802-1AR(第1AR部:セキュアデバイス識別)

8) ISO/IEC/IEEE FDIS 8802-1AS(第1AS部:ブリッジしているローカルエリアネットワークでの時間に厳密な応用のためのタイミング及び同期)

9) ISO/IEC 8802-11 FDAM1(第 11部:無線 LANのMAC,PHYの仕様;補遺1:管理フレーム優先順位付け)

10) ISO/IEC 8802-11 FDAM2(第 11部:無線LANのMAC,PHYの仕様;補遺 2:堅牢なオーディオビデオストリーミングのためのMAC強化)

11) ISO/IEC 8802-11 FDAM2(第 11部:無線LAN の MAC,PHY の仕様;補遺 3:60GHz 帯超高処理能力のための機能強化)

12) ISO/IEC/IEEE FDIS 8802-3(第 3 部:CSMA/CDアクセスメソッド及び物理層仕様)

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c) その他の投票案件

1) 韓国 NP提案「ALAN(音響ローカルエリアネットワーク)及び拡張 ALANのための物理層及び媒体アクセス制御副層プロトコル」について,国内では使用されないとみられることから賛成投票したが,内容には疑問が残るものが多く,今後の監視が必要である.

2) 韓国提案 ISO/IEC DIS 29157 ed 2(ISMバンドを用いる低伝送速度応用の短い距離の無線PHY/MAC仕様)について,巡回冗長検査の要件が不十分なため,互換性を確保できない恐れがあるとして反対で投票.

3) 韓国提案 ISO/IEC DIS 24771(産業上の利用環境において QoSを備えたアドホック無線ネットワークに関する MAC/PHY 標準)について,(1)5.15~5.35GHzを ISM帯としている誤りがあること,及び(2)5.8GHz を追加したのにそのPHY タイミングパラメータの規定が欠落していることを理由にして反対で投票.

2.2 WG 7(ネットワーク層およびトランスポート層)

WG 7は,国内では関心が薄くなり,リソースがないために対応する小委員会を構成できなくなり,2013年度よりSC 6専門委員会として対応している. ユビキタス・センサ・ネットワーク,将来網(Future Network),マネージド P2P,デバイス制御と管理等について,日本は国内での利用が現時点では不明であること,対応するリソースが無いことから棄権投票を行った.

2.3 WG 10(ディレクトリ,ASN.1及び登録)

国際では,従来のWG 8(ディレクトリ)及びWG 9(ASN.1及び登録)がWG 10に統合された.国内ではこれらのテーマへの関心が薄くリソースがないために対応する小委員会が構成できず,2012年度より SC 6専門委員会として対応している.

a) ディレクトリ

ディレクトリに関し,これまでに議論してきた2012年版について 9件の FDIS投票が行われ,特に問題はないとして全て賛成投票した.

b) ASN.1及び登録

ASN.1に関し,ITU-T との共同検討の結果 7件のDCOR投票が行われ,特に問題なく,全て賛成投票した.

3. その他

規格調査会における賛助会員の委員会活動への参加基準見直しに伴い,SC 6専門委員会(傘下の小委

員会を含む)への参加委員数が相当数減少した.また,国内で関心のある標準化項目がほとんど無くなったため,2013年度への国際会合への参加は無かった.

■ SC 7専門委員会(ソフトウェア及びシステム技術/Software and systems engineering)

委員長 谷津 行穗(シンフォーム,2013年 8月までベルリッツ ISC)

1. 概要

SC 7は,ソフトウェア製品及びシステムに関連したプロセス,支援ツール及び支援技術の標準化に取り組んでいる.

1.1国際及び国内の SC 7の体制

2013 年度は,国際では,WG 2: システム,ソフトウェア及び IT サービスの文書化,WG 4: ツールと環境,WG 6: ソフトウェア製品及びシステムの品質, WG 7: ライフサイクル管理,WG 10: プロセスアセスメント,WG 19: ITシステムの仕様化技術,WG 20: ソフトウェア及びシステム知識体系とプロフェッショナル形成,WG 21: 情報技術資産管理,WG 24: 小規模組織のソフトウェアライフサイクル,WG 25: IT サービス管理(2013 年 12 月廃止),WG 26: ソフトウェアテスト,WG 27: ITを使ったビジネスプロセスアウトソーシング(2013年 12月廃止),WG 28: 使用性のための工業共通様式(ISO/TC 159/SC 4との合同WG),WG 42: アーキテクチャ,の 14のWGと,SWG 1: SC 7の運営と将来計画,SWG 5: SC 7規格の管理,SWG 6: WG間の運営の円滑化(2013年 5月新設),SWG 22: システム及びソフトウェアの語彙の検証,の四つのSWG が常設されて活動を行った.また,総会前にAG(*1)(アドバイザリグループ.各 NB の HoD,WG/SWG コンビーナ及びリエゾンオフィサで構成し,SC 7総会の議題や決議案を事前審議)を開催したり,WG横断の標準化課題について 1年単位のスタディグループを設けるなどして,活発に活動している. このうち,SWG 6は,SC 7モントリオール総会で

新設された.また,WG 25 と WG 27 は,2013年11月の JTC 1総会 Resolution 21に基づき,2013年 12 月に廃止され,プロジェクトは新設の SC 40に引き継がれた.(*2) 国内では,2013年度は 14のWG小委員会と二つのサブグループを設置して国際の全ての WG に個別に対応した(2013年度末時点の委員数: SC 7専門委

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員会 32名,WG延べ 171名).また,SWGなどについては国内に対応委員会を設けず,SC 7専門委員会の委員が分担して対応している. なお,国際でのWG 25とWG 27の廃止に伴い,

国内でも 2013年度中に両WGを廃止した. (*1) SC 7設立初期から常設されて,番号なしに単に AGと呼

ばれている. (*2) WG 25とWG 27の 2013年度の活動については,SC 40

の報告を参照.

1.2 SC 7総会及びWGなどの国際会議実施状況

2013年度は,カナダがホスト国を務め,5月にモントリオールで SC 7総会と各WGの会議(以下,モントリオール会議)を開催した. モントリオール会議には,28 の国及び地域の代表(リエゾンオフィサを含め合計 186 名)が集まり,懸案事項を熱心に審議し,多くの成果をあげた.日本からは 32名が参加してほぼ全ての会議に委員が出席し,提出した寄書及び国際会議における意見交換において多くの貢献を行った.なお,SC 7決議を起草するドラフティング委員会には,日本意見の反映の正確性を期して室中健司(富士通)が参加し,その貢献に対し SC 7から感謝決議が贈られた. また,各 WG はモントリオール会議以外に 2013年度中にさらに 1~2回の国際会議を開催し,活発に活動を行っている.近年は複数 WG のテーマに跨るプロジェクトが増えているため,SC 7では,プロセスに関連する規格を扱う WG は,秋に合同で中間会議を開催するよう義務付けている.2013年度は,11月にピサ(イタリア)にて,七つのWG/SWGが中間会議(以下,ピサ会議)を同時開催した. なお,2014年度は,6月にシドニー(豪)で SC 7総会(以下,シドニー会議),11 月にビゴ(スペイン)でWG合同中間会議を予定している.

1.3 スタディグループによるNPの品質向上

プロジェクトの遅延や混乱を防ぐためには,NP 投票に付す前の予備段階で規格の制定方針と文書内容について十分議論し,PWD(Preliminary Working Draft.NP提案前に作成する文書)を準備することが望ましい.そこで,SC 7では,SCないしWG レベルでスタディグループを設置して,ある程度の完成度の PWDを準備してから NP投票を行うよう努めており,WG提案の NPについては最低でも目次を添付することと,NP投票前に SWG 5によるレビューを受けることを義務付けている(NB 提案の NPについても目次などの添付を強く推奨している). SC 7モントリオール総会では,2012年 5月の SC 7チェジュ総会で新設又は継続された9スタディグループの報告を受けて,ISO/IEC 23026:2006の改訂などを NP投票に付すこととした.

また,WG 横断の課題について,2013 年度には,次の 6 件のスタディグループを SC 7レベルで新設又は継続することとした(この他に WG レベルで設置されているスタディグループが 20件前後ある). ・ ソフトウェア資産管理に関する新たな標準化ニーズの検討(2年目)

・ ISO/IEC 20000-1(Service management ― Part 1: Service management system requirements)の改訂(第 3版)に向けた PWDの作成(新設)

・ ソフトウェア及びシステムエンジニアリングツールの評価と選択の指針(新規).薮田和夫(富士通)が議長を務める

・ SC 7の対象領域と規格のオントロジー構築の実現性(2年目)

・ アーキテクチャ構築のガイダンスに関するPWDの作成(新設)

・ ゲーミフィケーション(gamification)(*3)手法による,システム及びソフトウェアエンジニアリング分野での標準化の可能性検討(新設)

日本は,これらのスタディグループにそれぞれ必ず最低 1名が参加するよう努めている.

(*3) 課題の解決や顧客ロイヤリティの向上に,ゲームデザインの技術やメカニズムを利用する活動.

1.4 稼動中のプロジェクト及び投票の状況

2013年度中締切の投票は,NP 17件,CD 28件, DIS 11件,FDIS 6件,PDAM 1件,DAM 1件,PDTR 4件,DTR 3件,SR 17件,その他 8件の計 96件であった. また,2013年度中に,IS 13件,TR 5件,COR 1件の計 19件が出版された. なお,2013年度末時点で着実に稼動中のプロジェクト数は 49件(NP段階 3件,WD段階 1件,CD段階 18 件,DIS 段階 10 件,FDIS 段階 2 件,IS出版待ち 5件, DAM段階 2件,PDTR段階 5件,DTR段階 2件,TR出版待ち 1件)であり,このうち 21件(CD 10件,DIS 6件,PDTR 4件,DTR 1件)が 2013年度末時点で投票中である.

1.5 国際 SC 7への日本の貢献

日本の貢献は,人的な面でも大きく,国際コンビーナ 1 名(WG 6:東 基衞(早稲田大)),国際セクレタリ 3名(WG 6:込山俊博(NEC),高橋光裕(IPA),WG 28:福住伸一(NEC)),エディタ 28名(延べ45件.うち,プロジェクトエディタ 8件,コエディタ 36 件,シリーズ統括エディタ 1 件) (*4)を提供している.2013年度の異動は,新任 9名(延べ 12件),プロジェクト終了 6名(延べ 6件),役割変更 2名(延べ 4件),途中退任 2名(延べ 3件)である.また,木下佳樹(神奈川大)が IEC TC 65/SC 65A

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と IEC TC 56,伏見 諭(JISA)が ISO/IEC JTC 1/SC 27 への JTC 1/SC 7 からのリエゾンオフィサ(Special Liaison Group 2の議長を兼ねる)を担当している. さらに,日常的に多くの寄書により価値及び質の高い貢献を行っている.2013年度には NPやデフォルトバロット,IS定期見直しを除いて 54件の投票を行ったが,このうち 51件は寄書付の投票であり,不投票は 1件もない.

(*4) SC 7では,あるプロジェクト又は文書に責任を持つプロジェクトリーダ格のエディタを“プロジェクトエディタ”(又は単に“エディタ”),他のエディタを“コエディタ”と呼び慣わしているので,本稿でもこの呼び方で記述している.なお,複数の部で構成される規格には,シリーズ全体を統括する“シリーズ統括エディタ”(prime editor)が置かれる場合がある.

1.6 SC 7専門委員会が対応しているWGなどの活動状況

a) SWG 1(SC 7の運営と将来計画/SC 7 Business planning)と SWG 5(SC 7 規格の管理/SC 7 Standards management) この両 SWG は,SC 7総会期間中にそれぞれ数回の会合を開いており,モントリオール会議には各 1名が出席した. b) SWG 22(システム及びソフトウェアの語彙検証/Systems and software engineering vocabulary validation) SWG 22は,SC 7が関連リエゾン(IEEE-CS (IEEE Computer Society),PMI (Project Management Institute)など)と共同で整備を進めている用語データベースの検証チームであり,ISO Supplement Annex STで定められているDB規格保守手順に沿って,新たに出版/廃止された SC 7規格の中で定義されている用語の確認と DBへの反映(追加・更新・削除)を行っている.この用語集は,ISO/IEC/IEEE 24765(システム及びソフトウェアエンジニアリングの語彙.初版:2010年)として定期的に出版されるとともに,IEEE-CSがWebでのオンライン検索サービス (*5)をボランティア提供している. モントリオール会議には 1名が出席した. 2013 年度は,ISO/IEC/IEEE 24765:2010 の出

版以降に出版/廃止された規格の用語を用語 DB に反映させるため, Change Package(改訂案)の第2版及び第 3版の検証を行った.検証結果は IEEE-CSサイトの用語 DB に逐次反映するとともに,IS 定期見直しのタイミングに合わせて最新版のスナップショットを ISO/IEC/IEEE 24765として出版していく予定である.

(*5) URL: http://pascal.computer.org/sev_display/

2. 各WGの活動状況

2.1 WG 2(システム,ソフトウェア及び ITサービス の 文 書 化 / Systems, software and IT services Documentation)

WG 2(主査:山本喜一(慶應義塾大))は,情報の管理並びにシステム,ソフトウェア及び IT サービスの文書化のための規格の連携及び開発を行っている. モントリオール会議,バイスバーデン会議(独,2013年 11月)及びその直後のWebex会議には各 1名がWebexで参加した. 2013年度は,モントリオール会議においてWGの名称及び付託条項が上記の通り変更され,コンビーナが英国から米国に交代した. ISO/IEC/IEEE 26531(製品のライフサイクル,利用者及びサービスマネジメントの文書化のための内容管理)及び ISO/IEC/IEEE 23026:2006(インターネットのための推奨実施例 ― Web サイト技術,Webサイト管理及びWebサイトライフサイクル)の改訂はそれぞれ DIS 投票に進めた.ISO/IEC/IEEE 26514:2008(利用者用文書類の設計者及び作成者のための要求事項)は,修正なしでの継続が再確認され,ISO/IEC/IEEE 15289:2011(ライフサイクルにおいて生成する情報の内容(ドキュメンテーション))の改訂については,NP 投票の結果,小規模な改訂ならば CDを直接 FDISとする規則を適用するかどうかについての投票を行うことになった.これが承認されれば,2014年度早々に FDIS投票が開始される. ISO/IEC/IEEE 26513(利用者用文書類の検査者及びレビュアのための要求事項)の改訂又は再確認のための検討を開始した.

2.2 WG 4 ( ツ ー ル と 環 境 / Tools and environment)

WG 4(主査:薮田和夫,幹事:梶原清彦(NTTソフトウェア))は,ISO/IEC 26550~26559(ソフトウェア及びシステムプロダクトライン)及びISO/IEC 30130(ソフトウェアテストツールの能力)に関する審議をしている. モントリオール会議には2名,ユヴァスキュラ会議

(フィンランド,2013年 10月)には 1名が出席した.

2013 年度は,岸 知二(早稲田大)がコエディタを務める ISO/IEC 26550(プロダクトラインの参照モデル)が出版された.また,関連する 3規格 ISO/IEC 26557(プロダクトラインの多様性のためのツール及び手法),ISO/IEC 26558(プロダクトラインの多様性のモデリングためのツール及び手法)及びISO/IEC 26559(プロダクトラインの多様性の追跡

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 13

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性のためのツール及び手法)について,モントリオール会議での審議結果をもとにNP投票へ進めることとなり,それぞれ薮田和夫がコエディタの予定者に指名されている. 薮田和夫がコエディタを務める ISO/IEC 30130

(ソフトウェアテストツールの能力)については,日本が中心となって原案を作成し,NP&CD投票での承認を受けた. また,モントリオール会議にて,ツールの評価と選

定に関するガイドラインの検討について,スタディグループ設置の承認を受け,薮田和夫をチェアとして,梶原清彦及び朝倉健雄(富士通)が参画し,日本を中心として検討を行っている.

2.3 WG 6(ソフトウェア製品及びシステムの品質/Software product and system quality)

WG 6(主査:東 基衞,幹事:込山俊博)は,ISO/IEC 25000シリーズ(SQuaRE(*6):システム品質及びソフトウェア品質の要求及び評価)の審議を行っており,東 基衞が国際コンビーナ及び ISO/IEC 25000 シリーズ統括エディタを,込山俊博と高橋光裕(機能規模測定関連規格担当)が国際セクレタリを務めている. モントリオール会議には 8 名,アルビ会議(仏,

2013 年 11 月)には 8 名(委員以外の 1 名を含む)が出席した. SQuaREシリーズの構成は,日本提案によるもので,コア部門(14 規格)及び拡張部門を予定しており,2012年度までに,コア部門 10規格,拡張部門 4規格が出版されている.なお,2014 年 2 月には,ISO/IEC 25051(既成ソフトウェア製品(RUSP)に対する品質要求事項及び試験に対する指示(仮称).込山俊博及び石川俊一(CSAJ)がコエディタ)の改訂版が出版され,2014年 3月には,ISO/IEC 25000(SQuaRE の手引.込山俊博がコエディタ)及びISO/IEC 25001(計画及び管理.込山俊博がコエディタ)の改訂版が出版された. ISO/IEC 25011(IT サービスの品質モデル)は,中国 NB提案が NP承認され,SQuaREシリーズのコア部門の 1つとしてWG 6に正式にアサインされた.コエディタに和田典子が就任し,モントリオール会議及びアルビ会議で NPに添付したWDの改訂を行い,CD投票に進めた. ISO/IEC 25022(利用時品質の測定.坂本健一(NTTデータ)及び和田典子がコエディタ),ISO/IEC 25023(システム及びソフトウェア製品品質の測定.谷津行穗及び山田 淳(東芝)がコエディタ),ISO/IEC 25024(データ品質の測定.江崎和博(法政大)がコエディタ)は,各規格に掲載された品質測定量の理解性,実用性を高めるべく見直しを行い,2ndCD 投票

及び 3rdCD投票を実施した.いずれも 2014年 6月のシドニー会議後には,DIS投票に進める予定である. ISO/IEC TR 12182(ソフトウェアの分類)の改訂は NP 承認され,中島 毅(三菱電機)がプロジェクトエディタ,谷津行穗がコエディタに就任した.モントリオール会議及びアルビ会議でNPに添付したWDの改訂を行い,PDTR投票に進めた. (*6) SQuaREは ISO/IEC 25000 ~ 25099までの番号を割り

当てられたシステム及びソフトウェア製品の品質に関する国 際 規 格 シ リ ー ズ の 総 称 で , 当 初_*S*_oftware_*Qua*_lity *R*_equirements and *_E_*valuationの略称としていたが,SC 7がその対象をSystems に拡張したことに伴い,SQuaREシリーズの"S"も対象規格の内容に従って,Software又は Systems and Softwareを用いている.更に最近 Service Qualityをもその対象としたことから,Serviceも SQuaREの Sとして用いられる.

2.4 WG 6/FSM-SG(機能規模測定及び IT プロジェクトに関するパフォーマンスのベンチマーキング/Functional size measurement (FSM) and IT project performance benchmarking)

FSM-SG(主査:高橋光裕,幹事:竹田 滋(日立))は,機能規模測定関連規格の改訂(国際ではWG 6/SG 4が担当)と,ISO/IEC 29155シリーズ(ITプロジェクトに対するパフォーマンスベンチマーキングの枠組み)の制定(国際ではWG 10/SG 1が担当)を併せて担当している.いずれの SGも,高橋光裕が国際コンビーナを務めている. モントリオール会議,ピサ会議には各 1名が出席した. 機能規模測定については標準化がほぼ終息しており,2013年度は特に活動が発生しなかった. ベンチマーキングについては,国内先行組織・企業

と密に連携しつつ,日本が主導権を握って制定を進めている.ISO/IEC 29155シリーズのうち,第 1部(概念と定義)は日本案が全面採用されて 2011年 11月に IS出版済であり,2013年度には,10月に第 2部(実施手順)が出版された. また,2012年から制定に着手した第 3部(報告様

式)と第 4部(データの収集と維持管理)も,いずれも日本が作成して提案した WD 原案が全面的に採用されている.第 3部は 2013年 6月締切の CD投票で満票承認され,2013年度末時点では DIS投票中である.第 4部は,ベンチマーキングに利用するデータを収集・管理する専門家を主対象に厳格な規定を盛り込もうとした日本案に対し,提供されたデータを利用してベンチマーキングを行う利用者層向けの平易な規格を志向する米国との意見調整に長期間を費やしたが,一部専門家向けの詳細な規定は附属書として分離するなどの構成変更を行い,2013 年度末時点ではCD投票中である.

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 14

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なお,高橋光裕が,第 2 部及び第 3 部のプロジェクトエディタと,第 4部のコエディタを務めている.

2.5 WG 7(ライフサイクル管理/Life cycle management)

WG 7(主査:村上憲稔(IPA),幹事:室中健司,山田 淳)は,ソフトウェア及びシステムのライフサイクルプロセスと関連プロセスを定義する規格作りを進めている. モントリオール会議,ピサ会議には各 3名が出席した.

ISO/IEC 15288と ISO/IEC 12207につき,両規格の理解や併用をし易くするために両規格の構造をハーモナイズする改訂活動に関する NP投票が,モントリオール会議直前に承認された.2013年度末時点で,ISO/IEC 15288は DIS投票中,ISO/IEC 12207は CD1投票中である.

NP 投票に際して日本は,ISO/IEC 15288 を先行して改訂した後に ISO/IEC 12207を検討するという進め方に対して,ISO/IEC 12207の改訂が ISO/IEC 15288 の改訂結果を制約とした限られた審議となる可能性を危惧し,ISO/IEC 12207の改訂審議を後回しせずに ISO/IEC15288の改訂と並行して進めるべきと提案し受け入れられた †. ISO/IEC 15288については,NP投票と同時に CD1投票が行われ,ピサ会議前に CD2投票が行われたが,日本は二者間契約改善のために取組んできた,“共通フレーム 2013”や現行 ISO/IEC 12207:2008 での“契約変更管理”の組み込みを提案し,取得・供給両プロセスにタスク(規定)として取り込むコメント処理案を引き出した.2014年 6月のシドニー会議に向けて,取得・供給両プロセス記述改訂案の準備を進めている.

ISO/IEC 12207については,上記(†)に基づいてピサ会議にWD1が提出され初の審議となった.しかし,内容は ISO/IEC 15288 CD2 とほぼ同様で,ソフトウェア特有の記載が殆どなく,作業粒度も現行の ISO/IEC 12207:2008と比べて粗く,契約明細や役割分担等,取引や作業遂行の場で作業漏れが懸念されることから,日本は“ISO/IEC 12207 の改訂は2008 年版をベースとすべきだ.規格利用者を忘れてはならない”と主張した.結果,ソフトウェア特有の記載をアクティビティ・タスクレベルで明確に取り込む改善方針を得た.併せて,次版はWD2とすべきと主張したが,各国から意見を引き出す観点から CD1へ進めることとなった.2013 年度末時点で CD1 投票中である.

ISO/IEC 24748シリーズ(ライフサイクル管理のガイド)は,モントリオール会議にて,第 4部(システムエンジニアリング計画),第 5部(ソフトウェア開発計画)の審議がなされ,各々DIS 投票,CD2 投

票へ進めることとなった.ピサ会議では,WG内のスタディグループで検討してきた ISO/IEC 15288 のIntegrationプロセスへのガイダンス整備を,第 6部として NP&CD 投票に進めることになった.これらの案件は,2013年度末時点で投票文書準備中である.また,ピサ会議では,上記 ISO/IEC 15288 及びISO/IEC 12207の改訂活動を受け,発行済みの第 1部(ISO/IEC 15288と ISO/IEC 12207の共通ガイド),第2部(ISO/IEC 15288適用ガイド),第 3部(ISO/IEC 12207適用ガイド)の改訂戦略を検討する WG 内のスタディグループの発足が決まり,日本から小山清美(日立)が参画することとなった.

ISO/IEC 16350(アプリケーションマネジメント)は,モントリオール会議で CD1,ピサ会議で CD2投票処理が行われた.ISO/IEC 20000 や ISO/IEC 12207 等の他規格とのオーバラップ等につき審議が重ねられたが,他規格との対応関係(対応表やオーバラップ部分の囲み表示等)の改善が図られ,また,ISO/IEC 16350は ISO/IEC 20000と補い合う関係であるとの議論の結果,DIS投票へ進めることとなった.2013年度末時点で DIS投票中である.

ISO/IEC 15026シリーズ(システム及びソフトウェアアシュアランス)は,第 1部(概念及び用語)に対して,その後発行された他部との整合維持を目的とした見直しを実施してきたが,10月に IS発行となった.また,第 3部(インテグリティレベル)は,高井利憲(奈良先端大)がコエディタを担当し,リスクベースの考え方を明確化する改訂活動を進めており,2013 年度末時点で CD2 投票中である.なお,第 3部改訂で用語定義に関わる変更が含まれることから,ピサ会議にて,他の部に与える影響を見極める WG内のスタディグループの発足が決まり,日本から木下佳樹と高井利憲が参画することとなった.

ISO/IEC 30103(製品品質達成のための枠組み)はモントリオール会議にてPDTR3の投票処理が行われ,2013年度末時点で DTR投票中である. また,WG 23の解散によりWG 7にアサインされたISO/IEC 90003は,モントリオール会議にて,ベースとして引用する ISO 9001 や参照する ISO/IEC 12207 等の規格群の改訂との形式的な整合維持のみを目的とし改訂する方針が決定され,ピサ会議でのCD投票処理後,IS発行に向けた準備へ進められることとなった. なお,2011年度より中国提案でWG内のスタディグループで検討されてきた“サービス指向アーキテクチャ(SOA)における 12207 適用ガイド”(TR)の整備は,ピサ会議前に中国から取り下げの旨が示された.ピサ会議で継続審議を求める国もなくプロジェクトキャンセルとなった.日本は当初より必要性はないと主張しており,影響はない.

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2.6 WG 10(プロセスアセスメント/Process assessment)

WG 10(主査:新谷勝利(IPA),幹事:小林正幸(三菱電機情報ネットワーク),福地 豊(日立))では,調達及び改善に役立つプロセスアセスメントに関する枠組みの規格やガイドの制定を行っており,ISO/IEC 15504シリーズ(プロセスアセスメント)の制定・改訂も継続して行っているが,同シリーズの体系を見直して ISO/IEC 33000シリーズ(プロセスアセスメント)として再編成する作業が主たるものである. モントリオール会議,ピサ会議には各3名が出席した.

ISO/IEC 15504シリーズの改訂作業としては,もととなった ISO/IEC 15288の改訂を受けて,見直し追補を制定した第 6部(システムライフサイクルプロセスのアセスメントモデルの例,IS)が 2013年6月に出版された. さらに,ISO/IEC 15504シリーズの体系外の関連

規格 ISO/IEC 29169(プロセス能力と組織の成熟度に対する適合性アセスメント手法の適用)は,CASCOの助言を受けながら 2013 年度中継続して審議が行われた. 一方,ISO/IEC 33000シリーズのうち,第 1段として制定を始めている規格群は次の通りである. ・ ISO/IEC 33001(概念及び用語) ・ ISO/IEC 33002(プロセスアセスメント実施に関する要求事項)

・ ISO/IEC 33003(プロセス測定の枠組みに関する要求事項)

・ ISO/IEC 33004(プロセス参照モデル,プロセスアセスメントモデル及び組織成熟度モデルに関する要求事項)

・ ISO/IEC TR 33014(プロセス改善のガイド) ・ ISO/IEC 33020(プロセス能力及び組織成熟度をアセスメントするための測定の枠組み)

これらの規格のうち,ISO/IEC 33014は 2013年12 月 1日に TR として発行された.本 TR には新谷勝利及び福地 豊がコエディタとして貢献している.ISO/IEC 33001~33004及び ISO/IEC 33020は,2011 年 11月のムンバイ会議で規格間の整合性の問題が発見され,以降エディタ・グループが形成されて,国際会議以外にもメール及び電話会議にて精力的な審議がなされながら CD 投票が繰り返されたが,2013年中に DIS投票が行われ,2014年早々には4日間に渡る WebEX を用いたコメントディスポジションが行なわれて,エディタ間での合意が成立し,2014年度中に ISとして発行される見通しがついた.なお,ISO/IEC 33001 は岡崎靖子(日本 IBM)がコ

エディタ,ISO/IEC 33004は新谷勝利がプロジェクトエディタを務めており,日本の意見が大きく取り入れられている. また,2014年度年初時点で,ISO/IEC 33000シリーズの新たな部として,“セキュリティへの拡張アセスメントモデル“が NP 投票で承認されたので,本小委員会としては,国内では SC 27 専門委員会とリエゾン関係を確立させて対応する方針である.

2.7 WG 19( IT システムの仕様化技術/Techniques for specifying IT systems)及び同ODP-SG

WG 19(主査:梶原清彦,幹事:銀林 純(富士通))は,モデリング言語,開発方法論,ODP(*7)の枠組み及びその構成要素の標準化を行っている. モントリオール会議には 2名,ロンドン会議(英,

2013年 10月)には 1名が出席した. 2013年度には,OMGや IEEEなどの外部標準化団

体からの PASの審議はなかった. ODP については日本からも提案を行った ISO/IEC

19793(ODP ― ODPシステム仕様での UML利用)の追補の PDAM 投票に対して賛成と投票し,モントリオール会議でも積極的に改善に協力した.

ISO/IEC 15909シリーズ(高水準ペトリネット)の第 1 部と第 3 部の CD 投票ではそれぞれ賛成と投票した.

ISO/IEC 24744(開発方法論のためのメタモデル)の改訂は,DIS投票が行われ,賛成と投票した. (*7) ODP: Open Distributed Processing

2. 8 WG 20(ソフトウェア及びシステム知識体系とプロフェッショナル形成/Software and systems bodies of knowledge and professionalization)

WG 20(主査:鷲崎弘宜(早稲田大))では,ソフトウェアエンジニアリングやシステムズエンジニアリングを扱う技術者に必要な知識体系(BOK: Body Of Knowledge)と,知識体系に基づく技術者認証に関する規格やガイドの制定を行っている. モントリオール会議,ピサ会議には各 2名が出席し

た. ソフトウェアエンジニアリング知識体系ガイド

(SWEBOKガイド)は,IEEEにおける各章の改訂結果に基づき,WG 20に限らぬ広範囲でのコメント募集が実施された.2014 年度以降に IEEE においてそのコメントに基づく再改訂が行われる予定である.

INCOSEのシステムズエンジニアリング・ハンドブックをベースドキュメントとした ISO/IEC TR 16337は,2013年度末時点では TR出版に向けた最終調整の段階である.

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さまざまなソフトウェアエンジニアリング技術者認 証 を 比 較 す る 枠 組 み を 与 え る ISO/IEC 24773:2008(ソフトウェア技術者認証 ― 比較の枠組み)の利用ガイド(ISO/IEC TR 29154)の制定は,向山 博(IPA)がコエディタを務め,2013 年に TR発行された.

ISO/IEC 24773:2008 については, 2011 年 11月のムンバイ会議における決定を踏襲して 3 部構成(実施機関への要求,知識・技能領域の規定への推奨,エンジニアリングごとの知識・技能領域に関する要求)へと再編する改訂作業を継続した.そのうちの一部について,鷲崎弘宜および掛下哲郎(佐賀大)がコエディタを務める予定である.

2.9 WG 21(情報技術資産管理/Information technology asset management)

WG 21(主査:高橋快昇(富士通))は,ISO/IEC 19770シリーズ(IT資産管理)の審議を行っている. モントリオール会議,ダブリン会議(アイルランド,

2013年 10月)には各 2名が出席した. ソフトウェア資産管理のプロセスに対する要求事

項(第 1部)については,2006年に初版(プロセス),2012 年に第 2 版(プロセスと,適合の段階的評価)が出版されているが,2013年に ISOから Directives Part 1の Annex SLで“新マネージメントシステム標準(NMSS)”が提示されたので,この NMSSに従った改訂が必要ということになった.この作業は日本が中心なって進めているので,プロジェクトエディタに高橋快昇,コエディタに篠田仁太郎が就任した. 2014年 6月のシドニーの総会で NP提案を行うためにWDの開発作業を進めている.また,“ソフトウェア資産管理では,ソフトウェアが動作するハードウェアも一緒に管理する規格になっているので WG の名称も IT 資産管理に変えたい”という予てからの懸案に鑑み,モントリオール会議で WG 21 の名称を“ソフトウェア資産管理”から“IT資産管理”に変更した. ソフトウェア資産管理の自動化を支援するタグに

ついては,2009年度版の第 2部(ソフトウェア識別タグ)を改訂する NP&CD投票,及び第 3部(ソフトウェア権利スキーマ)の CD2投票を行った.第 2部の改訂では,市場評価からの要望を多く取り入れたために見た目は大きく変わった.ただし,現行のタグと新バージョンのタグの混在を保障し,かつ,タグの作成を容易に行えるようにしている.セキュリティ面も強化され,また,パッチにも対応している. タグの利用方法を説明した第 7部(タグ管理)は,

PDTR投票が遅れていたが,上述のとおりタグの規格開発が進んだことで,今後,加速されると思われる.今まで,ソフトウェア辞書の利用が進んでいた日本で

はタグの普及に戸惑いがあったが,今後はタグの利用に向けて本格的な啓蒙活動を進めたい.

2.10 WG 24(小規模組織のソフトウェアライフサイクル/Software life cycles for very small entities)

WG 24(主査:伏見 諭)では,小規模な開発組織(VSE, 25名以下の小組織)に適したソフトウェアプロセスを抽出・整理するという視点に基づいて標準化を行っている. モントリオール会議及びダブリン会議(アイルラン

ド,2013年 11月)に各 2名が出席した.また,電話会議1回にも2名が出席した.

2013年度時点では,ISO/IEC 29110シリーズ(小規模組織のソフトウェアライフサイクルプロファイル)における部構成を拡充する審議及びソフトウェアのみならずシステム開発を対象にするための既存部分の改訂を行っている.また,プロセス改善への対応などの新しい動きも開始された.

ISO/IEC 29110 シリーズは,ISO/IEC 12207,ISO/IEC 15288,ISO/IEC 15289などの ISの一部をテーラリングした形式の規格,すなわちプロファイルを規定する部(IS)と,それらを支援する部(TR)で構成されている.2010 年度中に最初の IS が出版され,逐次,出版されてきている.小規模組織自身が参照すべき部としては,基本プロファイル(第 5-1-2部)に加えて,エントリプロファイル(第 5-1-1 部が成立している.さらに他の視点のプロファイルに対応する部の作成をどのように進めるべきかの議論がある. ソフトウェアに加えてシステム開発向けの VSE 規

格として,システム開発の基本プロファイル(第5-6-2部)が 2013年に成立し,同様にシステム開発のエントリプロファイルが 2014 年にかけて審議されている. システム開発への対象拡大に対応して,既存の第 1

部~第 4部の改訂が必要となり,その改訂審議を並行して行っている.第 4-1 部の改訂については,日本の塩谷和範がコエディタを務めている. 今後の新たなプロファイル作成のための“テーラリ

ングの行い方に関するガイドライン”を新しい部(ISO/IEC 29110-2-2;TR)として制定する NPが日本からの提案に基づいて成立した(エディタは伏見諭,塩谷和範).また,小規模組織に適したボトムアップ指向のプロセス改善に関する TR の NP 提案も,日本からの提案に基づいて 2013年秋に成立した(エディタは塩谷和範). 小規模組織に対して注目するという視点は他の

WG でも共有されており,サービスマネジメントの

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VSE 規格相当のものをどう扱うか SC40(旧 SC 7/WG 25)との間で調整が行われている. 本規格内容を適合性認証の枠組みや,プロセスアセ

スメントの枠組みで利用したいという動きは本 WG設立の当初からあったが,2013 年度末の時点では,適合性認証への適用について本 WG からのドラフトが CASCO から否認されるという事態となっており,その善後策の立案が国際 WG での重要懸案事項となっている.また,アセスメントの実施については,基本プロファイルに焦点を絞ったアセスメントモデル(PAM)案が第 3 部への大きな追補案として審議されている.

2.11 WG 26(ソフトウェアテスト/Software testing)

WG 26(主査:西 康晴(電気通信大),幹事:松尾谷 徹(法政大),増田 聡(日本 IBM))では,ソフトウェアテストに関する規格 ISO/IEC 29119シリーズの審議を行っている. モントリオール会議には 3名,エジンバラ会議(英,

2013年 11月)には 1名が出席した. 2013年度は,第 1部(ソフトウェアテストの概念),

第 2 部(ソフトウェアテストのプロセス)及び第 3部(ソフトウェアテストの文書化)の FDIS 投票と,第 4 部(ソフトウェアテストの技法)は DIS 投票を行った.これらに対しては,日本をはじめ各国から数多くのコメントが提出され,審議の結果,第 1部,第2部と第 3部は IS として出版され.第 4部は FDIS投票を準備中である. また2013年度に,第5部(キーワード駆動テスト)

のWD開発が進められ,2014年度に CD投票が行われる予定となっている.

ISO/IEC 33063(ソフトウェアテストのプロセスアセスメントモデル)は,2010 年に韓国提案の NPが承認されたプロジェクトで,国際では NP承認後にWG 10に割り当てられて ISO/IEC 33000シリーズに組み入れられているが,NP 準備段階では WG 26が担当しており,NP承認後も国内では引き続きWG 26が審議を担当している.この規格は日本もWD作成に参加しており,2012年度に CD投票を行っていたが,2013年度末時点で DIS投票準備中である.

2.12 WG 28(使用性のための工業共通様式/Common industry format for Usability (CIF))

WG 28(主査:福住伸一,幹事:込山俊博)は,SC 7と ISO TC 159/SC 4との合同WGである.使用性のための工業共通様式(CIF)の標準化(ISO/IEC 2506xシリーズ)を行っており,福住伸一が SC 7側の国際セクレタリを務めている.

2013 年度は,ヘルシンキ会議(フィンランド,5月),モントリオール会議,ゲイザースバーグ会議(米,12 月)の他,2回の Web 会議が開催され,各 1名が出席した.ISO/IEC 25063(利用状況の記述)及び ISO/IEC 25064(ユーザ要求の報告)については DIS審議を経て,FDIS投票で可決された.また,ISO/IEC 25066(評価報告)のWD審議及び CD投票が実施された.これについては,日本は反対投票としたが,賛成多数で可決された.しかしながら,内容の大幅修正が必要となったため,2ndCD を作成した.2014年度早々に再度 CD投票が行われる予定である.

なお,ISO/IEC 25065(要求仕様の記述)については,PWDを準備中である.

2.13 WG 42(アーキテクチャ/Architecture)

WG 42(主査:白坂成功(慶應義塾大),幹事:中島 毅(三菱電機))は,システム及びソフトウェアのアーキテクチャの記述や評価の標準化を行っている. モントリオール会議には 2名(うち 1名はネット)

が参加した. 2013年度には, 2011年度から作業を進めてきた

ISO/IEC 42030(アーキテクチャ評価)の CD 投票と審議を行った. ■ SC 17国内委員会(カード及び個人識別/Cards and Personal Identification)

委員長 廣川 勝久

1. 概要

1.1 標準化の対象・組織及び国際対応概況

ISO/IEC JTC 1/SC 17は,カード及び個人識別を対象とし,各種カードの要素技術から利用システム(クレジット・IC 旅券・運転免許証等)までを含む国際互換性に関する標準化と登録管理を担当している.SC 17国内委員会には,国際WG(WG 1~WG 11)に対応する国内 WG に加えて,WG 間及び国内関係機関との連携強化を図るための SWG を SC 17 の直下またはWGに設置し国際標準化を推進している. 第 26回 SC 17総会はシンガポールで開催された.

同総会では,日本寄書に基づき ISO/IEC 14443(近接型非接触 ICカード)への Low Power Class規格追加の必要性を審議した.同規格を参照しているNFC対応携帯電話の省電力動作を含めた各産業分野での

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利用拡大が期待されることから,日本の問題提起は好意的に受け入れられ,日本からの NP提案を求める決議が合意された. 本年度も,実装の実現性・後方互換を含めた互換

性・拡張性・全体的整合性等の観点からの詳細なレビューと考察及び実験データに基づき日本意見の反映を図るとともに,国内外関係機関と連携して国際標準化の推進に努め,要素技術及び IC旅券・運転免許証等に関する標準化活動を主導している.

1.2 国内委員会体制の特記事項

2013年 9月に国際WG 4及び国際WG 11への対応体制を見直し,バイオメトリクス応用案件に関する対応国内 WG の連携を強化するため,WG 4 国内委員会をWG 4・WG 11国内委員会(主査 坂本 静生氏)に改組した. また,2014年 1月に SWG C(カード新技術)の

主査が稲田 真弓氏から田中 洵介氏に交代した.SC 17及び発足時からの SWG Cにおける稲田氏の貢献に深く感謝する. 現在,SC 17国内委員会の直下に上記を含めた三つ

の SWGを設置している. SWG Aは,国際WG 1案件であるカードの用途別

耐久性の検討に貢献してきたが,現在は更なる改定検討に備えて待機中である.

SWG Bは,国際WG 8案件である ISO/IEC 14443シリーズと NFC(近距離無線通信)シリーズ(担当:JTC 1/SC 6)とのハーモナイゼーションに貢献してきたが,現在は関連する更なる改定検討に備えて待機中である.

SWG Cは,カード新技術に関する中長期国際標準化の検討と具体化推進を主要課題とし,複数 WG 横断テーマについて日本として一貫性のある対応及び新規提案を可能とするよう関係 WG と連携して検討及び提案を行っている. 上記以外で対応国内委員会を設置していない国際

WG 7(金融取引カード)案件,対応国内委員会が休会中の国際WG 9(光メモリカード)案件及び SC 17共通事項への対応案は SC 17 国内運営委員会で策定している.また,SC 17国内委員会会議・同運営委員会会議の年間開催予定を技術委員会に連動するよう設定することによって,各 WG 国内委員会等での案件審議時間を柔軟に確保できるようにしている. これらの活動を通じて,参画委員・その所属組織・

他の関係組織も含めた日本にとってのメリット創出と国際貢献を図るようにしている.

1.3 国際会議及び出席者数等

a) SC 17総会 開催地:シンガポール

会期:2013年 10月 2日~4日 参加国数/出席者数:17 ヵ国,4 リエゾン/計47名(内,日本 9名). 詳細は NEWSLETTER 101 SC 17総会報告参照.

b) WG 等の国際会議回数及び日本からの出席者数 WG1(3 回 8 名),WG3(2 回 7 名),WG4(5 回 16 名),WG5(1 回 1 名),WG8(3回 14名),WG10(3回 10名),WG11(3回6 名),Joint WG1-WG4(1回 3 名),ICAO(2回 5名)であった. なお,WG 10 対応については,一般社団法人UTMS協会に委託の上,合同で推進中である.

1.4 規格投票件数及び制定数

本年度に行った規格への投票は,以下のとおりである. NP:10 件,CD:24 件,DIS:20 件,FDIS:8件,Sys. Review:12件.

また,本年度中に IS:2件,TR:2件,Amendment:6件が発行となった.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 わが国の SC 17関連活動への国際役職貢献

わが国の技術の国際規格への反映と産業競争力強化のため次の国際役職を務めている(本項では敬称略). a) WG 3/TF4(IC旅券の試験方法)コンビーナ:榊

純一 2004年から継続 b) WG10(自動車運転免許証及び関係書類)セクレ

タリ:榊 純一 2004年から継続 c) ISO/IEC 24789-2(カードサービスライフ-第 2

部:評価方法)改定プロジェクト・コエディタ:中澤 明 2012年から継続

d) ISO/IEC 7816-8(ICカード-第 8部:セキュリティ処理コマンド)改定プロジェクト・コエディタ:坂本 静生 2012年から継続

e) ISO/IEC 7816-11(IC カード-第 11 部:バイオメトリクスを用いた本人確認)改定プロジェクト・エディタ:坂本 静生 2012年から継続

f) ISO/IEC 12905(ETA:カード所持者に適合したインタフェースを用いた端末利用の向上)プロジェクト・エディタ:広川 知剛 2012年から継続

g) ISO/IEC 14443(近接型非接触 ICカード)シリーズ及び 10373-6(試験方法-第 6 部)共通:RFU(Reserved for Future Use)定義の改定プロジェクト・エディタ:中村 健一 2013年就任

h) SC 17 総会決議案起草委員:廣川 勝久 1995年から継続

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2.2 複数WG横断テーマ

カードへのディスプレイ追加に関する独 NWI提案は 2011年 10月の SC 17ソンド総会でスコープを限定のうえ,追加提案を可とすることが決議された.入力デバイスを含めた追加の独 NWI提案があり,2012年10月のSC 17ニューオリンズ総会で二つの提案をマージすることが決議された.この ICカードへのヒューマン・インタフェース機構(表示・入力機能等)の追加は,複数WG(WG 1,4,8,11)にまたがる作業項目であり,WG間・国際間の意見調整が難航してきたが,物理的側面と論理的側面に分けた検討を行うことにより ISO/IEC 18328( ICC-managed devices)シリーズとして標準化を進める方向が合意された.日本は,論理的側面について審議をリードすべく仮想的なアーキテクチャの提案を行うことで貢献しているが,引き続きわが国の意見が反映されるよう注力する必要がある.

2.3 WG 1(IDカードの物理的特性及び試験方法)

カードの用途別耐久性に関する評価試験を国内で計画・実施し,その試験結果に基づく知見の反映等を通じて ISO/IEC 24789(カードサービスライフ)シリーズの改定審議に貢献している. 更に ISO/IEC 24789-2の改定コエディタを日本か

ら出し,平成 25年度で完了した経済産業省委託事業「カード耐久性評価基準に関する標準化」の成果を反映し,修正を主導している.

2.4 WG 3(機械可読渡航文書)

ICAO-TAG-NTWG(新技術 WG)が中心になり標準化している IC旅券(eMRP)の ICAO-TR(技術レポート)作成に外務省と共に積極的に参画し,近接型非接触 ICカード技術を利用した旅券の仕様策定に貢献してきた.国際的な運用では IC旅券及び読取装置の互換性確保のための統一仕様及び品質評価のための試験方法が必要となる.国際 WG 3 では試験方法に関する TFを設け ICAOの協力の下に標準化を進めており,榊 純一WG 3国内主査がWG 3/TF4国際コンビーナを務め互換性確保のための活動を推進している.

2.5 WG 4(ICカード)・WG 11(カード及び個人識別へのバイオメトリクス応用)

WG 4では,外部端子付き ICカード及び非接触(外部端子なし)IC カードの多くの利用分野に適用されている ISO/IEC 7816-4(ICカード-第 4部:交換のための構成,セキュリティ及びコマンド)の改定について,日本から問題提起した後方互換性確保の課題を解決した IS が発行された.これに伴い ISO/IEC 7816 シリーズの他の各部(第 6,8,9,11,12,

15 部)の改定審議が開始されており,シリーズとしての整合性等を確保しつつ改定していく必要がある. 日本提案の PBO コマンド(Perform Biometric Operation)は,既に ISO/IEC 7816 の第 4 部に反映されているが,詳細を第 8部及び第 11部に反映させるため日本からエディタを出して推進している.

WG 11では,ISO/IEC 24787(カード上での生体情報の入力・照合)について,IS の開発とともに参照規格を含めた利用方法に関するTRの開発を開始しており,関連する試験規格の PWI(予備的作業項目)についても検討を進めている.

2.6 WG 5(発行者識別番号等)

ISO/IEC 7812(カード発行者識別番号)シリーズの改定について,同規格の利用者に誤解を生じさせない記述とするため日本から多くの指摘を行い修正に貢献している.なお,ISO/CSからの要請に基づき登録機関に関する事項の見直しが開始されており,大幅な内容改定が予定されている.また,カード発行者識別番号体系の拡張について中長期的な検討を開始する予定である.

2.7 WG 8(非接触 ICカード)

SC 17 シンガポール総会の決議に従い,Low Power Classに関する日本からの NWI提案を準備している.引き続き実験データに基づく提案等によって,超高速伝送・PICC(proximity card; 近接型非接触ICカード)と PCD(proximity coupling device; 結合装置)との機能切り替え・外部電力供給付き PICC等の追加規格を含む ISO/IEC 14443シリーズの改定に貢献している.また,RFU ビットの処理規定等に関して後方互換性の確保を含めた合意形成のために日本からエディタを出して貢献している.

2.8 WG 10(自動車運転免許証及び関係書類)

榊 純一氏が国際セクレタリを務め,運転免許証に関する国際標準化を推進している.国内では 2010年1 月に全ての都道府県(公安委員会)で IC運転免許証の導入が完了した.引き続き国内外の動向を踏まえ後方互換性に配慮しつつ,技術環境の変化に対応するよう ISO/IEC 18013(ISO準拠運転免許証)シリーズの規格化を継続する.

3. その他

a) カードに関する要素技術以外に,カード利用システムに関わる標準化が求められている.その一方で,利用システムからの要求に基づき要素技術についても機能や性能に関わる追加提案が増加する傾向が続いている.

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b) カード利用の伸展に伴い,JTC 1の関係 SC, ISOの関係 TC等と連携して対応を行う場面が増加している.

c) 日本意見を反映した国際標準化のためのエキスパート養成を意識的に進めるよう努めている.引き続き本件は急務であり,そのための環境造りを継続して推進する.

d) カードの製造・発行・利用に係わる関係機関・関係企業のより積極的な理解と参画を得て,利用者個人も含めた各関係者の利益を考慮しつつ,わが国の技術力を踏まえた要素技術と利用技術の両面からの対応を継続していく必要がある.

■ SC 22 専門委員会(プログラム言語,その環境及びシステムソフトウェアインターフェース/ Programming languages, their environments and system software interfaces)

委員長 石畑 清(明治大学)

1. 概要

SC 22では,各プログラム言語の規格,及びプログラミング環境やシステムソフトウェアとのインタフェースに関する規格の開発を行っている.現在の国際の SC 22は,COBOL,Fortran,Ada,C,Prolog,C++,及び脆弱性を担当する WG で構成される.Pascal,APL,Algol,PL/I,BASIC,Modula-2,POSIX,ISLisp,VDM-SL,Z(仕様記述用言語),言語共通仕様(データ型,算術,手続き呼出し,結合方法など),国際化機能, PCTE( Portable Common Tool Environment)は,保守フェーズに入っている.

2013年の SC 22総会は,9月に東京の機械振興会館で開催し,日本からは 9名が参加した.WG活動では,Fortran の WG 及び脆弱性の WG に積極的に参加した. なお,2013 年度の投票は,NP 8 件,CD 3 件,

DIS 0件,FDIS 1件,PDTS 4件,DTS 2件,DCOR 2 件,国際規格の出版は IS 0 件,TS 1 件,COR 2件であった.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 COBOL WG(WG 4)

ISO/IEC FDIS 1989に対する投票が 2013年 11月 18日に締切られ,反対票なしで承認された.日本はコメントを付けて賛成した.各国から寄せられたコ

メントへの対応を検討後,必要に応じて修正した規格原稿を ITTFに提出し,2014年 6月に ISとして出版される.

2.2 Fortran WG(WG 5)

2013 年度の主な作業は,TS として発行予定のAdditional Parallel Features in Fortran の検討,ISO/IEC 1539-1:2010(通称 Fortran 2008 第 1部)の Technical Corrigendum 3の作成,及び Fortran 2008 第 1 部の次期改正内容の検討であった.Additional Parallel Features in Fortranについては,DTS 投票に向けてドラフトの作成を進めている.Fortran 2008 第 1部の Technical Corrigendum 3 については,2014年 4月 15日締切りの投票に掛けられた.Fortran 2008 第 1部の次期改正に向けては,2012 年度に決めた「TS の内容以外には大きな機能追加を行わず現在の規格の問題点や矛盾点の修正にとどめる」という方針に従って,さらに具体的な内容の検討を行った.また,2013年度のWG 5国際会議は,6月にオランダのデルフトで開催された.

2.3 C WG(WG 14)

WG 14では,C言語の規格を改訂し,2011年 12月 15日付で ISO/IEC 9899:2011を出版した.その後,2012年 7月に ISO/IEC 9899:2011/Cor.1が発行され,現在,次の技術仕様書の作成が行われている. a) TS 17961 プログラム言語Cに対する安全な(セキュアな)コーディングルールを記載する技術仕様書 利用者自身に対する注意事項および利用者にコ

ーディングルールを守らせるためのアナライザやコンパイラが持つべき動作仕様を記載している.近年,脆弱性のないプログラムやシステムを開発することが必須となっており,国際規格としてルールを守らせるソフトウェアの仕様を具体的に規定している意義は大きい.

2013 年 9 月 13日締切りで行われた DTS 投票に対して,日本は,PDTS投票に添付したコメントがほぼ反映されていることを確認し,無条件賛成投票を行った.投票結果は,賛成 12 か国,棄権 18か国,無投票 4か国で承認され,2013年 11月 15日 に ISO/IEC TS 17961 - Information technology -- Programming languages, their environments and system software interfaces -- C secure coding rulesとして出版された.

b) TS 18661 プログラム言語 Cに対して浮動小数点に関する仕様拡張を行う 5部構成の技術仕様書 浮動小数点計算に関する C 言語の拡張は,これ

まで ISO/IEC/IEEE 60559などとの互換を保ちながら複数の TRを規定し,言語仕様本体の改訂時に

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それらを取り込む形で進められてきた.それらの動向に対して日本は,以前から賛成を表明している.この TSもその延長であり,日本は,NWIPに対して賛成投票を行い,続く PDTSおよび DTSに対しても賛成投票を行っている. 1) 第 1部: ISO/IEC 9899:2011の Annex Fを拡張し,ISO/IEC/IEEE 60559:2011 の全ての必須機能をサポートする.

2013年 8月 16日締切りの PDTS投票および2014 年 3 月 5 日締切りの DTS 投票に対して,日本はコメント無しで賛成投票を行った.

2) 第 2部: ISO/IEC TR 24732:2008(十進浮動小数点計算をサポートする C 言語拡張)をさらに詳細に規定する.

2014年 3月 10日締切りの PDTS投票に対して,日本はコメント無し賛成投票を行った.

3) 第 3~5部: ISO/IEC/IEEE 60559:2011での推 奨 機 能 を サ ポ ー トす る よ う ISO/IEC 9899:2011を拡張する. 現在,WG 14が仕様案を作成中である.

2.4 C++ WG (WG 21)

C++言語の国際規格は,2011年に,言語仕様及びライブラリの大幅な追加や修正を含む,最新版のISO/IEC 14882:2011が制定された.その後,規格の誤りの訂正,及び比較的小さな言語仕様の追加を目的とする改訂版に向けての作業が行われ,2013年度に CD投票を行った.2014年度に DIS投票が行われる予定である.主な変更点は次のようなものが含まれる. ・ジェネリックラムダ式 ・ラムダ式におけるムーブキャプチャ ・変数テンプレート ・2進数リテラル ・constexpr関数の制限緩和 また,改訂版の作業と並行して,次に挙げる,いく

つかの機能拡張に関する技術仕様書(TS)作成の作業が進められている.これらは,将来の大幅な改訂版で言語規格に採用することを視野に入れたものである. ・ファイルシステムへのアクセス及び操作 ・ネットワーク通信 ・軽量版 Concepts ・実行時サイズ配列 ・ライブラリの並列実行 ・ライブラリの非同期実行 ・ライブラリのその他の拡張 ・トランザクショナルメモリ(2014 年度早期に

NP投票が行われる予定)

2.5 C#, CLI, スクリプト系言語 SG (対応する国際WGなし)

本委員会は,プログラム言語 C#,共通言語基盤 CLI及びスクリプト系言語の国際標準に関する ECMA 及びその他のファストトラック提案による言語の規格案に対応する国内委員会としての役割をもつ. スクリプト系言語をスコープに含めることは今年

から承認された.具体的には,これまでに IS になっている ECMAScriptなど,これから IS提案が出されるものと予想される DART,さらには,言語そのものの国際規格が出されていない PHP などについてのWG 23の調査に協力することなどを検討範囲に含めている.

C#の国際規格を現行の Microsoft 版に改訂する提案が 12月に ECMA TC49で出され,電話会議を含めて,現在提出されている改訂案に対する議論が始まった.本 SGでも手分けして,検討を開始し,TC49と検討結果を共有するようにしている.12 月末には最終案が ECMA に提出され,ファストトラック提案になる可能性がある.

2.6 Programming Language Vulnerabilities (WG 23)

次の二つの標準を扱うWGである. ・ ISO/IEC TR 24772 Guidance to avoiding

vulnerabilities in programming languages through language selection and use

・ISO/IEC 17960 Code Signing for Source Code TR 24772に関して,日本から,CWE (Common

Weakness Enumeration) TOP 25 を網羅するように提案し,現在の 3rd Revisionですべて反映された.TR 24772では,言語ごとの附属書で,本文で分析された言語特有の脆弱性と,それを回避する手法を各言語に適用したものをまとめている.既に,ADA,C,Python,Ruby,SPARK,PHP,Fortranについてまとめられていて,さらに対応する言語を増やす方針である.また,本文に追加された CWE TOP 25の脆弱性を,附属書にも適用する.

ISO/IEC 17960に関して,日本から,プロジェクトの見直しを促す根本的なコメントを出したが,十分対応されていない.

2013年までのコンビーナが,自身の Fundingの終了と共に退き,米国の Tom Plum氏がコンビーナに選出された.その後米国が,SC 22に,WG 23の活動停止を提案して問題となっており,WG 23の有志で,WGの存続を求める提案を準備している.日本は,WG 23が存続されるよう,働きかけに参加している.

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■ SC 23専門委員会(情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体/ Digitally Recorded Media for Information Interchange and Storage)

委員長 谷口 昭史(パイオニア株式会社)

1. 概要

SC23専門委員会(以下当委員会)は ISO/IEC JTC 1/SC 23(以下 SC 23)に対応する国内審議を担当する委員会である.

SC 23は,情報交換用ディジタル記録媒体(光記録方式,磁気記録方式の媒体およびフラッシュメモリ)および光ディスク用ファイルフォーマット等の標準化を担当している.日本,中国,韓国,オランダ,ロシア,スイス,アメリカの 7 カ国の P メンバと,その他 20カ国の Oメンバで構成されており,議長および幹事国は日本が担当している. 光ディスクの物理規格,期待寿命推定の試験規格お

よびデータ移行規格等に関し,IS レベルでの活動は全て日本がメインであり,提案・原案作成そしてプロジェクトエディタも日本から選出し,国際標準化を推進している.また,Ecma TC 31や BDA(Blu-ray Disc Association)等,日本企業が主要メンバである外部団体とも連携しながら活動を進めている.

2013年度は,引き続き当委員会(日本)主導で主に以下の活動を行った. ・ 記録形 BDディスクの国際規格化審議 ・ CD-ROMボリューム及びファイル構造の国際規格 ISO 9660追補に関する審議

・ 長期保存 DVDディスクのデータ移行方法規格ISO/IEC 29121の改定審議

・ 光ディスクの期待寿命推定試験規格 ISO/IEC 16963の改定審議

これらの審議のために当委員会 6 回と,ISO/TC 42および ISO/TC 171/SC 1と ISO/IEC JTC 1/SC 23とのジョイント・ワーキング・グループ(JWG 1)会議を 5月のソルトレイクシティ(米国),9月の東京および 2014年 2月のモントレー(スイス)で計3回開催し,SC 23/JNBとして ISO/IEC 16963規格(CD及び DVDディスクのデータ保存期待寿命推定のための試験規格)の改定に関する国際審議を主導した. 各国の標準化団体から強い要望のあった記録形 BD

の国際規格化に関しては,日本からの NP提案,日本主導によるWD,CDおよび DISの策定を経て,2013年7月に無事 4規格とも発行された.この国際規格化により,記録形 BDディスクの用途を各国の政府調達向けやプロフェッショナル用途等に拡大することが可能となる.これと関連して,ISO/IEC 16963に BDディスクを対象ディスクに加える国際規格化の作業

も,主要エディタを日本から選出して国際標準化が進行中である.枠組みとしては,国内では経産省の国際標準化推進事業として第 2種専門委員会を設立し,当委員会と連携して審議を進め,国際では ISO/TC 42,ISO/TC 171/SC 1およびSC 23で JWG 1を構成し,各々連携を取りながら具体的な審議を進めている.来年度,2014 年 5 月末から 8 月末まで DIS 投票が行われる予定である.本規格は,近年特に高まりつつある画像や文書データの長期保存用途としての光ディスクの応用拡大にも大いに寄与できるであろう.

2. 主なプロジェクト進捗状況

本項では,主なプロジェクト進捗として,光ディスクの期待寿命推定試験規格 ISO/IEC 16963の改定審議に関して 2.1項に報告し,その他の案件の活動結果に関して概略をまとめて 2.2項に報告する.

2.1 ISO/IEC 16963改定審議進捗

2013年度の当委員会の主要規格化活動は,SC 23傘下の JWG 1で策定し2011年10月に発行された,CD/DVD の記録ディスクの期待寿命推定試験規格ISO/IEC 16963に,記録型 BDを追加する ISO/IEC 16963 の Revision審議であった.

JWG 1は 2009年に ISO/IEC JTC 1/SC 23/WG 7JWG 1 between ISO/IEC JTC1/SC 23, ISO/TC 42 and ISO/TC 171/SC 1として発足した委員会である.設立当時の活動内容は,長期データ保存のための CD・DVDの期待寿命推定に関する共通の試験規格の審議と策定であり,その成果として以下の規格が発行された. ・ ISO/IEC 16963:2011 Information

technology -- Digitally recorded media for information interchange and storage -- Test method for the estimation of lifetime of optical media for long-term data storage

本規格は,ディスクから再生されたデータのエラー率があるしきい(閾)値を超えた時点をそのディスクの故障時間とし,高温・高湿の加速環境条件下で,複数のサンプルの故障データから実使用環境条件下での寿命を統計的に推定する方法を提供するものである. その後,ISO/TC 42 から ISO/IEC 16963 に BD

を含める改訂審議の要請があり,また SC 23では BDの国際規格の審議が開始され,規格化のスケジュールが見通せるようになったことから,本規格の改訂審議が開始された.プロジェクトエディタには,SC 23からは当委員会の菅谷教授(電通大),入江教授(大阪産業大),ISO/TC 42側からは Dr. Worthington (米国)が選任された.

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 23

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今年度は,当委員会と新たに設立した第 2種専門委員会の間で連携しながら,SC 23 JNBとして,下記の 3回の JWG 1会議の審議を主導した. ・第 6回会議

2013年 6月(ソルトレイクシティ/米国) 第5回会議においてBDメディアへの適応範囲を拡張するための改訂審議を実施することが承認されたことを踏まえ,SC 23/JNBから改訂原案の提案を行い,JWG 1 にて改訂審議を開始することを目的とした.審議の結果,JNB 提案文書は WD として承認され,2014年度のDIS策定に向けて審議を行うことが確認された. ・第 7回会議

2013年 9月(東京/日本) WD審議を行い,CD規格案と CD投票の実施が承認された.会議終了後,2013年 10 月から CD 投票を開始した. ・第 8回会議

2014年 2月(モントルー/スイス) CD 投票の際に提出されたコメントの検討及び SC 23/JNBから修正の提案を行い,JWG 1にて DISに向けての改訂審議を行うことを目的とした.審議の結果,JNB 提案文書は DIS 内容として採用され,以後エディタによって DIS 規格書を作成後,DIS 投票を開始することが確認された. 以上のように,今年度の審議により ISO/IEC

16963 2nd Editionは,DIS審議まで進捗した.DIS投票は 2 ヶ月間の翻訳期間を置いて 2014 年 5 月末から開始される見込みとなっており,8月末に終了し,国際規格承認される見込みである.

2.2 他の国際標準規格策定活動結果

2013 年度は,ISO/IEC 16963改定活動のほか,以下の国際標準規格の策定・発行を完了した. a) 記録形 BDディスクの国際規格化 以下の 4規格が 2013年 7月に制定,発行された.

1) ISO/IEC DIS 30190: Information technology – Digitally recorded media for information interchange and storage – 120 mm Single Layer (25,0 Gbytes per disk) and Dual Layer (50,0 Gbytes per disk) BD Recordable disk

2) ISO/IEC DIS 30191: Information technology – Digitally recorded media for information interchange and storage – 120 mm Triple Layer (100,0 Gbytes per disk) and Quadruple Layer (128,0 Gbytes per disk) BD Recordable disk

3) ISO/IEC DIS 30192: Information technology – Digitally recorded media for

information interchange and storage – 120 mm Single Layer (25,0 Gbytes per disk) and Dual Layer (50,0 Gbytes per disk) BD Rewritable disk

4) ISO/IEC DIS 30193: Information technology – Digitally recorded media for information interchange and storage – 120 mm Triple Layer (100,0 Gbytes per disk) BD Rewritable disk

規格の概要: 120mm 単層/2 層追記形 BD ディスク - 1),120mm 3層/4層追記形BD ディスク - 2),120mm 単層/2層書き換え形 BD ディスク - 3),120mm 3層書き換え形 BD ディスク - 4),の互換性を確保するための機械特性,光学特性,物理特性,データフォーマット,記録方法,記録および未記録状態の信号特性,他を規定する. b) CD-ROM ボリューム及びファイル構造の国際規格 ISO 9660追補 以下のAmendmentが2013年5月に発行された. ・ ISO 9960:1988/Amd.1:2013, Information

processing - Volume and file structure of CD-ROM for information interchange - Amendment 1)

規格の概要: ISO 9660:1998 の拡張規定.現在製造されているCD-ROMのボリューム・ファイル構造としては,ISO 9660を拡張したデファクト規定が使用されているため,その現状に国際規格を適合させるべく,ISO 9660を拡張するものである. c) 長期保存 DVD ディスクのデータ移行方法規格ISO/IEC 29121の改定 以下の Revisionが 2013年 11月に発行された. ・ ISO/IEC DIS 29121: Information

technology – Second edition (Data migration method for DVD-R, DVD-RW, DVD-RAM, +R and +RW disks)

規格の概要: デ ー タ の 長 期 保 存 用 に DVD-R, DVD-RW, DVD-RAM, +R, 及び RW ディスクのデジタルエラーの状態と,データ復元に必要なエラー上限値との継続的な適合性を監視することにより,ディスクの品質劣化を検出した場合にデータの欠落無く,新たなディスクへのデータ移行する方法を提供する. 2nd edition では,データ保存寿命推定値が得られているディスクの監視時間間隔を,その推定値に応じて設定できること,およびその推奨手順を附属書(参考)として追加する.

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3. その他

ISO/IEC 16963改定規格書の策定は,本年度終了時の目標「30.99(CDの DISとしての登録を承認)」を予定通り達成した.一方,規格書の規定値,及び解析手法の実験的検証は,試験媒体の準備を含め,長期間の試験を要するものであり,一部の実験が継続となっている.従って今後の活動としては,第 2種専門委員会と連携しながら,以下を予定している. ・ 継続している実証実験の結果を踏まえて,国際標準に反映する

・ DIS審議に引き続き規格策定を主導し,ISO/IEC 16963 2nd Editionの早期登録に貢献する

また,BDA と連携しながら新規規格化案件に関して調査・活動していく予定である.

■ SC 24専門委員会(コンピュータグラフィクス,画像処理及び環境データ表現/Computer graphics, image processing and environmental data representation)

委員長 青野 雅樹(国立大学法人豊橋技術科学大学)

1. 概要

本委員会に対応する国際組織は,ISO/IEC JTC 1/SC 24 であり,担当範囲は,以下に関する情報技術応用システムのための各種インタフェースを標準化することである.

• コンピュータグラフィクス • 画像処理 • 環境データ表現 • 拡張現実世界の支援 • 情報の表示と対話

ただし,以下の内容は除外されている. • 文字および画像の符号化 • マルチメディア/ハイパーメディア文書の交

換形式の符号化 • JTC 1での利用者システムインタフェースお

よび文書表現 • ISO/TC 207の環境マネージメント • ISO/TC 211の地理情報 • JTC 1/SC 22のソフトウェア環境

国際では,

• WG 6(拡張現実世界によるプレゼンテーションと交換)

• WG 7(画像の処理と交換, 登録) • WG 8(環境表現) • WG 9(拡張現実世界の概念と参照モデル)

のWGが存続しており,国内でもWG 6関係の案件はWG 6小委員会を設けて対応している.WG 7とWG 8案件は,専門委員会が直接担当することとなっている.WG 9は,2011年度から追加されたワーキンググループであり,国内でも対応する WG 9 小委員会を2013 年度に設立し,国際への対応だけでなく, 日本からの NP提案作業を開始している. 昨年の 8 月にオーストラリアのシドニーで SC 24

総会および各 WG が開催され,日本からは,委員長の青野と,SC 24専門委員兼WG 9主査の蔵田武志の 2名が参加した.

2013年度の主な SC 24の審議案件と投票案は,以下のとおりであった.

• FCD投票 3件(WG 6) • FDIS投票 2件(WG 6,WG 8) • FCD投票 3件(WG 6) • NP投票 3件(WG 6,WG 9)

FDIS投票のひとつである X3D(拡張 3次元記述)では,3D 規格らしく,3D の医療分野で重要なボリュームレンダリングと DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)形式のファイルサポートがはじまっている.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 WG 6小委員会

WG 6では,1990年代から続いている VRML,その後継の X3Dの規格を中心にコンスタントに活動を続けている.仮想現実モデル化言語 VRML97(ISO/IEC 14772)の後継規格で Web3D コンソーシアムと共同 開 発 の X3D ( 基 本 機 能 仕 様 は ISO/IEC 19775-1/2:2004)の第 1世代に関しては,2005年度に XML 符号化および VRML 風符号化(ISO/IEC 19776-1および 2)が出版され,言語結合(19777-1および 2)は 2006年の 3月までの FDIS投票で可決された. その後,第 1世代への第 1次機能拡張は,基本機能

部 分 ( 19775-1/Amd.1 ) , XML 符 号 化( 19776-1/Amd.1 ) , VRML 風 符 号 化 (19776-2/Amd.1)が,それぞれ FPDAM投票を通して,いずれも承認された. X3Dの符号化に関しては,2006年度に圧縮バイナリ符号化(19776-3)の FCD投票が行われた. 一方,2007年度からは,第 2次機能拡張の代わり

にこれまでの追補をまとめた基本機能部分の改訂版

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(19775-1/rv1)の CD投票,ならび に FCD投票が行われ,いずれも可決された. 19755-1/rv1 は,X3D の基本規格の第 2 版(edition 2)と呼ばれるようになった.X3Dの第 2版に関して,それに関連する幾つかの規格の投票が2008 年度に行われた.具体的には,符号化に関して,Part 1: XML 符号化(第 2 版)の FCD19776-1が可決,Part 2: VRML 風符号化(第 2 版)のFDIS19776-2が可決,Part 3: 圧縮バイナリ符号化の FCD19776-3 がそれぞれ可決された.圧縮バイナリ符号化では,2007 年に出版された ISO/IEC 24824-1(Fast Infoset)が採用され,X3D で定義可能なすべてのノードと属性値に関して Infoset のIDが整数値で定義されている.

2010年度に,第 2版の補遺 1に関する NP投票が5つの関連規格でまとまって行われた.その後,2011年度には,X3D の圧縮バイナリ符号化(19776-3)の FDIS投票が行われ可決された.また,X3Dのアーキテクチャと基本要素(19775-1/AMD1),XML符号化 (19776-1/AMD1),ならびに VRML 風符号化(19776-2/AMD1)の補遺の PDAM投票が行われ,いずれも可決された.WG 6全体に影響する変化として,2011年 11月の JTC 1サンディエゴ会議において,SC 24専門委員会内へのWG 9の発足の承認に伴い,それと関連する WG 6 の委員会の英語の名称が,これまでの Multimedia Presentation and Interchangeから,Augmented Reality Continuum Presentation and Interchange(和名:拡張現実世界のプレゼンテーション及び交換)へと変更になった.

2012年度には,X3Dのシーンアクセスインタフェース(SAI)第 2版(ISO/IEC 19775-2: 2010/PDAM1 Am1:201x)に関する PDAM投票があり,賛成多数で可決された.2012 年末に,X3D 全体を規定する19775-1の第 3版の CD投票が行われ,賛成多数で可決された.ボリュームレンダリングや DICOM形式のサポートなど医療応用向けの機能拡張が施されている.2013年度には,19775-1のFDIS投票もあり,WG 6は SC 24の中でも比較的アクティブに活動している.

2.2 専門委員会直轄プロジェクト

2005 年度に SC 24 内の国内の小委員会としては解散したWG 7の案件は,以降 SC 24専門委員会の直轄プロジェクトのひとつとなっている.しかし WG 7 にも国際的には人的かつプロジェクト的な新たな動きが出始めている.具体的には,2007年の東京会議において新しいコンビーナに,韓国の Y. K. Chung氏が抜擢された.現在のWG 7の活動の中心は,ISO TC211 グループと地理情報システムの規格作成での協同と,NATO ならびに JCGISR(Joint Capability

Group for Intelligence, Surveillance and Reconnaissance ) が BIIF ( Basic Image Interchange Format)をはじめとするWG 7での標準規格のユーザであることから,相互運用性を考慮した拡張などを行っている. 国際の WG 8 で作業が進められている SEDRIS

(Synthetic Environment Data Representation and Interchange Specification)は,飛行訓練などの地理座標依存情報を用いたシミュレーション対応の国際標準である.具体的には,基本となるデータクラスを規定する SEDRIS 本体(18023-1),地理・宇宙空間用の各種座標系を扱う空間参照モデル(SRM: Spatial Reference Model,18026),環境シミュレーション関係のオブジェクトおよび属性のコード化(EDCS: Environmental Data Coding Specification,18025)の 3 本の柱から成り,それぞれに,データ交換と応用プログラムインタフェース(API)の規格と言語結合の規格が含まれている. 2006年度までに,SRM(18026,18042-4)が出版され,SEDRIS関係でも,言語結合(18024-4)のほか,SEDRIS のデータ交換インタフェース規格(18023-1,18023-2,18023-3)が出版されている . 2009 年 度 に は , SEDRIS に 関 し て18023-1/AMD1 と 18023-3/AMD1 ,18024-4/AMD1 の 3 つの規格での NP 投票が,18024-4/AMD1,18023-1/AMD1,18023-3/AMD1の PDAM投票が,また SRMでは,18026/AMD1のFDIS 投票,18042-4/AMD1 の FPDAM 投票,および 18026/AMD2の NP投票が行われ,いずれも可決された.

2011年度は SRMの 18042-4/AMD1の FDAM投票と 18026の CD投票が行われた.前者は投票後まもなく可決され,CD投票に関しては,日本を含む幾つかの国やコンソーシアム等から修正案が提出され,編集会議を経て可決された.また,SEDRISに関しては,言語結合( 18024-4/AMD1),機能仕様( 18023-1/AMD1 ) , 転 送 用 バ イ ナ リ 符 号(18023-3/AMD1)の3つの補遺の FPDAM 投票が行われ可決した.さらに EDCS に関しては,補遺(18025/AMD1)の PDAM 投票が行われ可決した.2012年度には,SEDRIS関連で FPDAM投票まで終わっていた3つの規格の FDAM 投票が行われ,いずれも賛成多数で可決された.EDCSに関しては,第2版の FCD投票でコメント付き賛成を行った.SRMに関しては,第3版の FCD 投票でコメント付き賛成投票を行った.結果として,EDCSも SRM もいずれも可決された.

2013年度には,18025 EDCSの FDIS投票が行われた.内容としては,地理情報を利用した種々のシミュレーション(運転訓練,路程作成訓練等)のための

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規格群(広義の SEDRIS プロジェクト)の一つとして,各種のデータを共有するための,データの意味(メタデータ)のコード化方法および基本的なコードを規定した 2005年版規格の改訂版である. 日本としては,WG 8は専門委員会の直轄プロジェ

クトであるが,今後もこれまでと同様に取り組んでいく予定である.

2.3 WG 9小委員会

2011年度に新たに,拡張現実とその概念や参照モデル等を定めるためのWG 9の設立が 11月の JTC 1サンディエゴ会議で承認された.その英語名称はAugmented Reality Continuum Concepts and Reference Model(和名:拡張現実世界の概念と参照モデル)である.2012年のブリュッセル SC 24総会からは,正式な WG 9 の会議がはじまった.コンビーナは韓国ソウル大学のGerald J. Kim教授である.2012 年 度 に は , 拡 張 現 実 の 参 照 モ デ ル( SC24N3411),物理センサーモジュール(SC24N3415),ならびに実人物モジュール(SC24N3414)の3つの規格に向けた NP投票が行われ,日本は,参照モデルは賛成,その他の2つは,参照モデルに含ませるべきとのコメントで反対投票としたが,国際的には賛成国多数により,NP 投票は承認された.

2013年には,対応する日本国内のWG 9小委員会を設立し,蔵田武志を主査とし,エキスパートを含めた 6名程度で小委員会の活動を行っている.拡張現実や混合現実の技術の急速な発展と実用化を背景に,目下 SC 24 の中では最もアクティブな委員会であり,日本からの提案として,拡張現実に関する標準的な評価基準を与えるためのベンチマークに関するNP提案をまとめ,2014年度には,その NP投票が開始される予定である.

■ SC 25 専門委員会(情報機器間の相互接続/Interconnection of Information Technology Equipment)

委員長 宮島 義昭(住友電気工業(株))

1. 概要

1.1 会議開催

SC 25 専門委員会は情報機器間の相互接続に関する国際標準化を担当し,住宅,ビル内電子機器の相互接続ネットワーク(WG 1),構内の情報配線システム(WG 3),計算機システム及び周辺機器間の相互接続(WG 4)を取り扱っている. SC 25総会は 2013年 10月 4日,キスタ(スウェーデン)で開催され,17 カ国より 36 名が参加し,日本からは 3名(山本,別府,宮島:HoD)が参加した.

WG 1会議は,2013年 4月 22日~26日にアーリントン(米国)で開催され,7 カ国,23 名の参加があった.また 9月 10 日~13 日にジュネーブで開催され,8 カ国,22 名の参加があった.2014 年 3 月3~7日にミラノで開催され,7カ国,18名の参加があった.いずれの会合にも日本から 3名(山本,村上,根津,ミラノ会議は 1名オブザーバ追加参加)が参加した.なお PTTT(Project Team Terminology and Taxonomy)会議は総会開催時の WG 1 会議の中で時間を分けて開催されている. WG 3会議は,2013年 9月 30日~10月 3日にキスタで開催され,19 カ国より 58 名(日本からは別府,宮島)が参加,2014年 2月 25日~3月 1日に京都で開催され,17 カ国 55 名(日本からは宮島,植野,廣瀬,上村,別府,浅香,JEITAよりオブザーバ7名)の参加があった. WG 4会議は,SC 25総会に合わせて開催され,米国のみが参加した.

1.2 成果

NP 17件,CD 6件,FCD 4件,PDAM 1件,FPDAM 1件,FDAM 1件,FDIS 14件,PDTR 1件,DTR 1件の投票を行い,IS 4件が出版された.

1.3 総会

1.3.1 全体

前回のジュネーブ総会議事録を承認,Agenda確認,Drafting Committeeメンバ確認,議長報告,セクレタリ報告,各 WG コンビナー報告,SC 25関連プロジェクト,リエゾン審議,今後の課題審議が行われた.

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1.3.2 議長報告

a) IECにおける“Systems Work in the IEC” IEC AC/33/2013について

1) SMBは,”Systems Work in the IEC”を承認. 2) Systems Evaluation Groups(SEG),Systems Committees(SC),Systems Resource Group(SRG)の定義を明確化した. 3) SEG として,“Smart Grid”と“Smart Cities”の 2グループ設立を SMBが承認. 4) SEG の定義の説明: “a larger, open group used in the first stage of systems development whose role is to engage the community of experts, identify the relevant stakeholders and define the general architecture and boundaries of the problem to be addressed.”

b) NWIPの承認には,5カ国の Expertの氏名を明記するとのルールについて

1) Question 3が“Yes”投票でも,Expert 氏名が無ければ,”No”とみなされる. 2) 新しいプロジェクトへの参加が重要との視点で,SC 25としては,必ずしも Face-to-faceでの活発な貢献のみを要求せず,例えば”Electronic meetings”を活用して,幅広い貢献の方法があることを訴えたい.これらを考慮して積極的に Expert氏名を記入の上,参加表明願いたい,との議長発言があった.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 1関連(Home Electronic System)

2.1.1 審議概要

a) 2013年度の大きな動きとして,日本より提案したエコーネットライト規格の NP/CD 再提案が 2013年 6 月に開始され,10 月に CD 投票に入り,2014年 3 月の会合でコメント無し賛成多数で承認され,DIS投票に入ることを決定した. b)国際的な Smart Grid関連の標準化活動の高まりを受け,リエゾン活動が活発化している. c)韓国から相変わらず,集合住宅関連,スマート端末からの機器・情報通信システムとの連動規格など多数の規格提案が続いている.

2.1.2 ISO/IEC 14543-4-3 HES Architecture – Part4-3:エコーネットライト規格提案

2012年 5月に日本からエコーネットライトの提案を行い,NP投票を行った.実質反対国は無かったものの,Q3(エキスパート参加の有無)が 5 カ国に達せず否決された.一部を修正し,ISO/IEC 14543-4-3 HES Architecture – Part4-3: Application layer -- light version for network enhanced control

devices of HES Class 1として 2013年 9月に NP再投票で承認された.CD文書はコメント無し賛成多数で 2014年 3月承認され,DIS投票に掛けることが決定された.2014年度中の IS化が見えてきた.

2.1.3 ISO/IEC 14543-5-7 IGRS RA規格

UPNP規格類似の AV機器制御ミドルウェアである中国提案の IGRS 規格(Intelligent grouping and resource sharing)は既に ISとなっている.この規格に対し外部のスマートメディアからの住宅内へのアクセス規格が追加提案され,2013 年 10 月に NP投票で承認,さらに 2014年 3月にCD投票は承認され,DIS投票に掛けることを決定した.日本からの要求でコンテンツ保護に関する規定の欠落の釈明,UPNP規格との違いの Part 8での記載を織り込ませた.またさらに2015年までに今回を含め7パートを追加提案する予定である.

2.1.4 ISO/IEC 30100 1~3 Home Network Resource Management (HNRM)規格提案

韓国から提案されている HNRM 規格は団地(Apartment House Complex)のサーバから各住戸内の機器情報をネット側で一括管理するための通信プロトコル提案である. 情報セキュリティの問題を含んでいるとの理由で日本は CD投票で反対,主要国も保留とした.各国の修正要求を受け入れ,2nd CD投票に入った.Part 1, 3は承認を受け,さらに DIS 投票も終了した.Part 2に関しては,相互接続ガイドライン規格 ISO/IEC 18012-2 を適用するのか,固有言語を使うのかの議論となり,審議は進んでいない.

2.1.5 ISO/IEC 18012 Guidelines for product Interoperability Part 3, Part 4審議

韓国の集合住宅に関する提案が ISO/IEC 18012 Guidelines for product Interoperability part 3シリーズとして審議することが決まり,その後 Part 3, Part 4として審議が開始された. a)“Part 3-X: Community interface” マンション機器と住宅内機器のインタフェース提案 b)“Part 3-y: Home control device for smart devices” Smart devicesによる住宅内のホームネットワーク接続機器との制御インタフェース規定 NP/CD投票は実質賛成多数(Q1, Q2)であったが,エキスパート登録(Q3)が 5 か国に達せず否決された.このため内容を修正し再度 NP/CD投票の予定.

2.1.6 Modular communications interface for energy management: MCI

米国より電気温水器などの使用電力の大きい住宅設備機器のホームネットワークへのインタフェース

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規格の提案があり,NP/CD 投票が承認された.また2nd CDではエコーネットライトのコマンドのサブセット化追加の修正が行われる予定である.

2.1.7 OPEN Web Net – application layer for network enhanced control devices of HES Class 1提案

イタリアより家電機器,住宅設備機器,スマート端末をホームネットワークで接続する上位層プロトコルが提案され,既に標準となっている KNX, エコーネット,IGRS と同じ ISO/IEC 14543 シリーズのPart 7として NP投票に入ることを決定した.

2.1.8 EnOcean規格の追加提案

壁スイッチ押下の僅かな力による発電電力などを利用した AM変調方式の微小電力無線規格が KNX規格の一部として EnOceanの名称で既に国際規格になっている.新たに FM変調方式を採用した規格提案があり,NP/CD投票に掛けることを決定した.

2.1.9 HES Gate Part 3: Privacy and security (ISO/IEC 15045-3) ホームゲートウェイのプライバシー,セキュリティ審議

日本からのホームネットワークに対するプライバシー,セキュリティ機能の強化要請を受け,再び議論が活性化してきた.今年度は既存審議文書のレビュー,SC 27の関連規格文書の回覧等が行われた.

2.1.10 その他

a) Residential Complex Energy Management System for HES (ISO/IEC 15067-3-x: HES Application model part 3) 韓国からコミュニティ EMSの提案があり今後WD提出の予定. b) ISO/IEC 29145-1~3: WiBEEM規格(微小電力無線ネットワーク規格) 韓国提案の微小電力無線ネットワーク規格は CD

投票のコメント審議終了し,DIS 投票終了.Part 1: PHY Layerが IS 出版された.

2.1.11 WG 1スコープの見直し

Smart Grid議論の活発化に伴い他標準化組織でのHEMS規格の重複審議が目立ってきたため,歴史的に住宅内ネットワーク規格を審議してきた WG 1 を中心に SC 25スコープの見直しが行われ,キスタ総会で承認された.

2.1.12 リエゾン関連

a) JTC 1/SWG 5の Internet of Thingsに関するWG 1の活動状況の調査に協力した.

b)その他,Smart Grid, HEMS関連で数多くの標準化組織との関係が出てきたため,リエゾン活動が拡大しており,以下に主なリエゾン組織を示す. ・JTC1 WG 7 Sensor Networks ・IEC SWG SG3 - Smart Grid ・IEC TC 57/WG 21(Smart Grid Interfaceの新

WG) ・IEC TC 59 Household Appliances ・IEC TC 61 Safety of Household Electric

Appliances ・IEC TC 100/TA 9 Audio/Video ・IEC PC118:Home Electronics Systems

2.2 PTTT ( Project Team Taxonomy & Terminology)

PTTT はホームネットワークの用語,分類学の TRについて関連組織へのリエゾンで改良し,TR を出版した.

2.3 WG 3関連(Customer Premises Cabling)

2.3.1 国内委員会活動について

2013 年度は,6 回の委員会を開催した.NP 案件は,SC25N2221 / SC25N2222 / SC25N2223 / SC25N2224の 4件の審議を行い,すべてコメント無しで賛成とした.接地法に関する規格 (ISO/IEC 30129) は,CD文書と 2ndCD文書の審議を行いコメント無しで賛成とした.光ケーブルの試験法に関する規格(ISO/IEC 14763-3)は DISおよび FDIS文書の審議を行い,DIS ではコメント有で賛成とした.FDIS 段階では,まだ課題が残っているとの理由で,コメント有で反対に回ったが,投票では承認された.Amendment 関 係 で は , デ ー タ セ ン タ(ISO/IEC24764)の FDAM1の審議と AIM 規格(ISO/IEC 14763-2)のPDAMとDAM1の審議を行い,コメント無しで賛成とした.なお,タイトルとスコープに関する変更(25N2172)の提案があり,賛成とした.配線法に関する ISO/IEC TR 11801-99-1はPDTR と DTR の審議を行い,コメント無しで賛成とした.ISの定期見直しは,ISO/IEC 14709-1-1997と ISO/IEC11801:2002の 2件を審議し,いずれもconfirmとした.

2.3.2 WG 3国際会議について

WG 3 に関する国際会議はスウェーデンのキスタ(2013 年 9 月 30 日~10 月 3 日)と日本の京都(2014年 2月 25日~3月 1日)で開催された.キスタ会議には,別府委員と宮島委員が参加し,出席者数は延べ 58人で 19か国からの参加であった.京都会議には,WG 3委員会から宮島委員,植野委員,廣瀬委員,上村委員,別府委員,浅香委員が参加し,関

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連団体の JEITA からも 7人が参加し,会議の出席者は延べ 55人で 17か国からの参加であった.活発な議論と日本流の「おもてなし」で大変な盛況と好評の中で閉会した.

2.3.3 WG 3 関連の主なプロジェクトの進捗状況について

a) ISO/IEC 18598: Information technology - Automated Infrastructure Management (AIM) systems-requirements, data exchange and applications は WD の改定を行い,CD を準備する段階である.

b) ISO/IEC 14763-3: Implementation and operation of customer premises cabling - Part 3: Testing of optical fiber cablingは FDISが承認された.残されたテクニカルな課題は,Amendmentで対応することで合意された.

c) ISO/IEC 11801 Ed3:Generic cabling systems for customer premisesは NWIPが承認されて,各パートの Editorが決まり,WDの作成に入った.

d) ISO/IEC 11801-99-1:Guidance for balanced cabling in support of at least 40 Gb/s data transmissionは DTRが承認された.

e) ISO/IEC TR 17979-1-1:Application Specific cable assemblies-Twinax cable assemblies - Type 1 Cable assemblyについては,規格化を断念した.

f) ISO/IEC 30129: Information technology -Telecommunications Bonding Networks for Buildings and Other Structuresは 2nd CDが承認されコメント審議も京都会議で終了した.

g) ISO/IEC 11801-99-2:End to End link とISO/IEC 11801-99-3:Modeling of channels and links for balanced cablingは CD文書の作成に入った.

h) Modulator Data Center, Power over Etherについては,NWIP を提案し承認されれば審議に入る予定である.

2.4 WG 4関連(計算機システム及び周辺機器間の相互 接 続 / Interconnection of Computer Systems and Attached Equipment)

2.4.1 概要

Fibre Channel(FC),Small Computer System Interface(SCSI), AT Attachment with Packet Interface Parallel transport protocols and physical interconnect(ATA/ATAPI) およびストレージ/サーバ管理等の標準化を行っている. WG 4国際会議は SC 25総会に合わせて開催され,米国のみが参加した.

以下に各プロジェクトの 2013 年度の活動状況を報告する.

2.4.2 FC

Fibre Channelは,主に光ファイバを用いてコンピュータとストレージシステム間を接続するインタフェースの規格である.ポイントツーポイント,ループおよびスイッチ接続を規定し, Storage Area Network (SAN)の接続に使用される.今期は特記事項なし.

2.4.3 SCSI

SCSI は,コンピュータと HDD 等の周辺機器を接続するためのインタフェースの規格である.パラレルおよびシリアルワイヤ接続の規格がある.国内委員会において USB Attached SCSI (UAS)の FCD 投票, SAS Protocol Layer-2 (SPL-2)の NP 投票, SAS Protocol Layer-2 (SPL-2)のCD投票に賛成投票した.

2.4.4 ATA/ATAPI

ATA/ATAPI は,コンピュータと HDD 等の周辺機器を接続するためのインタフェースの規格である.今期は特記事項なし.

2.4.5 SMI-S(Storage Management Initiative - Specification)

SMI-S は,ストレージデバイスの属性の定義,デバイスの発見やセキュリティ等を規定し異機種混在システムの相互運用を可能にする規格である.Storage management technical specification (V1.5) Part1~P8の FDIS 投票の再投票が行われ賛成で投票した.

2.4.6 その他

WG 4 で扱う規格は重要な案件が多く生産性も高いが,2013年度の国際会議には,米国のみ参加した.これはWG 4が扱う規格は米国規格協会(ANSI)の諮問機関 International Committee for Information Technology Standard (INCITS) の T10/T11から提案されることが多く,INCITSに多国籍の企業が参加し JTC 1 への提案時点で既に国際的な仕様の調整が行われているためである.

3. 次回の開催予定

次回総会は,2014-9-19 北京(中国)で開催予定.

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 30

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■ SC 27専門委員会(セキュリティ技術/Security Techniques)

委員長 渡邊 創((独)産業技術総合研究所)

1. 概要

SC 27では,情報セキュリティに関するさまざまな技術の標準化が行われている.この中には,情報セキュリティの一般的な方法,技術,ガイドラインが含まれる. 一般に,情報セキュリティは,情報が許可なく読まれたり書かれたりすることを防ぎ,守秘性(暴露されないこと),完全性(ごまかされないこと),可用性(使用性が損なわれないこと)などを確保する技術である.本活動による情報セキュリティのための標準化は,次の観点から重要である. (1) グローバルな通信環境において普及が容易で安全な相互接続技術を提供すること, (2) 世界中どこでも同等に保証された安全性レベルで情報処理と通信の環境を提供すること. 本標準化活動は,1981年に暗号の標準化審議から始まり,その後対象を年々広げ,現在 5 つの WG に分かれて標準化が行われている. 2013 年度に行われた NP 投票は 7 件,CD/PDTR/PDTS/PDAM 投票は 22 件,Normal processing DIS投票は 11件,Fast-track/PAS DIS投票は 1件,DTR/DTS投票は 1件,FDIS/FDAM投票は 11 件,IS (International Standard) / TS (Technical Specification) /TR (Technical Report) 出 版 は 21 件 , AMD (Amendment) / COR (Corrigendum) 出版は 2件であり,引き続き活発に標準化が行われている.

2013年 4月にフランスのソフィア・アンティポリスで開かれた SC 27各WG国際会議および総会での主な決議には以下のようなものがある.その他,同会議の詳細については,既に報告したとおりであるので,そちらも参照されたい(NL No.100,2013 年12月).

1.1 人事案件

今回任期満了となる SC 27 チェア,バイスチェア,WGの議長(コンビーナ)と副議長(バイスコンビーナ)について,以下のように任命された. ・ SC 27 チェアのWalter Fumy(独)とバイスチ

ェアのMarijke De Soete(ベルギー)が再任された.

・ WG 2コンビーナの近澤武(IPA/三菱)とバイスコンビーナの竜田敏男(情報セキュリティ大学院大)が再任された.

・ WG 3セクレタリ退任に伴うバイスコンビーナもしくはセクレタリの募集が行われた結果,日本より推薦した甲斐成樹(IPA)がバイスコンビーナに就任することとなった.

・ WG 5コンビーナの Kai Rannenberg(独),バイスコンビーナの Jan Schallabock(独)が再任された.

1.2 ISO/IEC 27019 Ballot Resolution Meeting

独からの提案であった JTC 1N11146(SC 27 N11419),Text of Fast Track DTR 27019に対する投票の結果,TR成立は確定(賛成 12,反対 6)したものの多くの反対国(豪,加,仏,日,英,米)と反対意見があったことから,意見を反映すべく,本WG会議日程内に標記会議が開かれた.しかしながら,実質的に内容についての議論はできないこともあり,「TR 出版後,次のレビュー(次版)で内容を検討する」と先送りとしたものが多かった.その後受理されたコメントが反映され,TRが発行された. 以降本稿では,2013年 10 月に韓国のインチョンで開催された各 WG の国際会議の主要な議論について報告する.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 WG 1(情報セキュリティマネジメントシステム)

情報セキュリティマネジメントシステム ISMS は,組織のマネジメントとして自らの必要なセキュリティレベルを決め,プランを持ち,資源配分して,システムを運用する手続きを規定するものであり,ISO/IEC 27000シリーズとして標準化が進められている. a) ISO/IEC 27000 (Overview and vocabulary) ・ DIS投票の結果は 100%の賛成,技術的コメント

が 1件であった.ballot resolution meetingを行った結果,FDISをスキップして IS発行に進むこととなった.その後 2014年1月に発行された.

b) WG 1 SD3 (Mapping old-new of ISO/IEC 27001 and ISO/IEC 27002)

・ 2013年 10月に発行された ISO/IEC 27001および 27002の新旧版の対応関係を表した文書である.本会議で各国からのコメントが反映された.

・ 文書が無料で公開されることが合意され,http://www.jtc1sc27.din.de/sbe/wg1sd3 で公開されている.

c) ISO/IEC 27003 (ISMS implementation guidance)

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 31

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・ スコープが,ISO/IEC 27001 のすべてのフェーズ (establishing, implementing, maintaining and continually improving) に変更されることが合意された.

・ スコープの変更に伴い,タイトルも ”Information security management system – Guidance”に変更されることが合意された.

d) ISO/IEC 27004 (Information security management – Measurement)

・ スコープが ISO/IEC 27001 の “Monitoring, measurement, analysis and evaluation”をサポートするための文書,という位置づけに変更することが合意された.

・ スコープの変更に伴い,タイトルも “Information security management systems — Monitoring, measurement, analysis and evaluation”に変更されることが合意された.

e) ISO/IEC 27005 (Information security risk management)

・ ISO/IEC 27003,27004と同様にスコープについての議論が行われたが,結論が出ず次回に持ち越しとなった.

f) ISO/IEC 27006 (Requirements for bodies providing audit and certification of information security management systems)

・ ISMS審査工数の算定方法について,従業員数だけ,あるいは複数の要因を元にするか等の議論が行われた.

・ 1st CDを作成することが合意された. g) ISO/IEC 27011 (Information security

management guidelines for telecommunication organizations based on ISO/IEC 27002)

・ 投票の結果,賛成 18 ヵ国,反対 1 ヵ国(US)改訂作業を開始することとなった.

・ 本規格は ITU-Tとの共同文書である. ・ 新たに ITU-T SC 17リエゾンでもある中尾康二

(KDDI/NICT)がプロジェクトエディタに就任することとなった.

h) ISO/IEC 27017 (Code of practice for information security controls for cloud computing services based on ISO/IEC 27002)

・ 本規格は ISO/IEC 27002に基づき,クラウドコンピューティングの使用において,情報セキュリティマネジメントを行うガイドラインを提供しようというもので,日本から提案したプロジェクトである.

・ プロジェクトエディタを山崎哲(工学院大学)が務めている.

・ 1st CDを作成することが合意された. i) ISO/IEC 27019 (Information security

management guidelines based on ISO/IEC 27002 for process control systems specific to the energy utility industry)

・ 1.2のような TR発行の経緯があり,仏から早期改訂の提案があった.

・ スタディピリオドが開始されることが合意された.

2.2 WG 2(暗号とセキュリティメカニズム)

WG 2は,暗号アルゴリズム,エンティティ認証等のセキュリティ基盤技術の標準化を進めている.近澤武(IPA/三菱)が WG 2 議長(コンビーナ),竜田敏男(情報セキュリティ大学院大)が副議長(バイスコンビーナ)を務めている. a) ISO/IEC 18031 (Random bit generation) ・ NIST が 使 用 中 止 を 呼 び か け た

Dual_EC_DRBG 方式を削除することが英から提案された.南アより,正式なプロセスを経ずに削除するのは適切でないという意見が出された.

・ この方式を使用していると思われるリエゾン 8 組織 (SC17, SC31/WG7, TC68/SC2, VISA, MasterCard, ETSI, EPC, ABC4Trust)に対して注意喚起のリエゾンステートメントを出す.

・ WG 2 SD 12に今回の Dual_EC_DRBG の問題 とは別に,ハッシュ関数 MASH-1(ISO/IEC 10118-4)にも攻撃論文が発表されたため,両者の安全性に関する記載を追加する.また,SD12 のタイトルを”Assessment of cryptographic algorithms and key lengths” から”Assessment of cryptographic techniques and key lengths”へ変更することになった.

・ Dual_EC_DRBG の扱いについては,スタディピリ オ ド ”Study Period on Random Bit Generation”を設置して検討する.

・ プレスリリース発行を目指し,WG 2で原案を作成し,SC27 HoD 会議で承認した後,ISO/CSでリーガルチェックの後に公表することが合意された.

b) ISO/IEC 11770-3 (Key management - Part 3: Mechanisms using asymmetric techniques)

・ 現在改訂作業中であったが,DIS 11770-3 の投票期間中に英と日本から ISO/IEC 11770-2 および 3 に対する寄書が提出され,いくつかの鍵共有方式への攻撃が指摘された.投票期間中 は公式に議論できないため,DIS投票を中止し,本会議でこの問題の対応を議論した.

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・ 議論の結果,指摘された攻撃はプロトコルが相互認証であるかないか等,記述の修正で対応可能と 判断されたため,それらを修正した文書で再度DIS投票を実施することになった.

・ ISO/IEC 11770-2 については,Systematic review のタイミングであったが,上記の寄書を受けてすぐに改訂を開始せず,この攻撃の深刻度を慎重に検討するために,スタディピリオド ”Study Period on Required security properties in key management mechanisms” が設置されることになった.

c) ISO/IEC 10118-4 (Hash-functions - Part 4: Hash-functions using modular arithmetic)

・ 上記 a でも触れたように,本規格に含まれるMASH-1 に対する攻撃の DefectReport が露から報告された. パラメタ(moduli)がある条件を満たす場合,手計算できる程度の計算量で衝突攻撃が適用可能である.結果として,Technical Corrigendum を発行することになった.

d) Study Period on Secret sharing ・ ”Secret sharing - Part 1: General”

と”Secret sharing - Part 2: Fundamental mechanisms”の 2部構成で NWIP投票をすることになった.

・ 第 1 部のプロジェクトエディタの一人として松尾真一郎(NICT)が,第 2部のプロジェクトエディタの一人として鈴木幸太郎(NTT)が就任することになった.

e) ISO/IEC 15946-1 (Cryptographic techniques based on elliptic curves - Part 1: General)

・ 定期見直しの結果,独,露,ジャマイカが改訂を提案し,他は継続使用を提案した.独はサイドチャネル攻撃対策のスカラー倍算の追加を提案した.独の提案を採用することになった.

・ 議論の結果,改訂することになった.プロジェクトエディタは宮地充子(北陸先端大)が就任することになった.

2.3 WG 3(セキュリティの評価・試験・仕様)

WG 3 では,IT 製品や情報システムのセキュリティ評価に関連した規格や技術レポートの開発・保守を行っている.甲斐成樹(IPA)がWG 3副議長(バイスコンビーナ)を務めている. a) ISO/IEC 19791 ( Security assessment of

operational systems) ・ 早期改訂投票は改訂で可決されたことが報告さ

れた. ・ プロジェクトエディタの一人として甲斐成樹が

担当することが決定した.

b) ISO/IEC 20004 (Refining software vulnerability analysis under ISO/IEC 15408 and ISO/IEC 18045)

・ ISO/IEC 20004は ISO/IEC 30127 (Detailing software penetration testing under ISO/IEC 15408 and ISO/IEC 18045 vulnerability analysis)を 20004-2として取り込み,マルチパート化されることになった.

c) ISO/IEC 24759 ( Test requirements for cryptographic modules)

・ DIS 投票はコメント有賛成で可決されたことが報告された.コメント適用後出版されることとなった

d) NWIP “Catalogue of architectural and design principles for secure products, systems, and applications”

・ ISO/IEC 29193 (Secure system engineering principles and techniques) のスコープを定義し直した NWIP の投票の結果,賛成は4ヶ国でプロジェクト開始条件を満たせなかった.

・ 会議中にフランスが賛成に投票を変更したため,5ヶ国(日本,米,スペイン,韓,仏)の条件をクリアしプロジェクト開始が認められた.

2.4 WG 4(セキュリティコントロールとサービス)

WG4では,ISMS ISO/IEC 27000 シリーズを組織内で実装するための補助となる規格の開発・保守を行っている.また,組織内での情報通信技術利用に起因するセキュリティ上の問題やニーズ等に対処するための国際規格を開発している. a) ISO/IEC 27041 (Guidance on assuring

suitability and adequacy of incident investigation methods)

・ 日本のコメントは基本的に Accepted またはAccepted in Principleされた.

・ DIS 昇格に関するエディタ会合での投票では,日本のみが On Condition(27043の状況をみて),南ア,スウェーデン,英が賛成,カナダ,韓,米は Abstainとなった.最終的に DIS昇格が承認された.

・ 日本は,成熟度に問題が残るとしながらも,DISに対するコメントを行うこととし,DIS 昇格を承諾した.

b) ISO/IEC 27042(Guidelines for the analysis and interpretation of digital evidence)

・ 日本のコメントは基本的に Acceptされた. ・ DIS 昇格に関するエディタ会合での投票では,

日本のみが条件付反対,スウェーデン,英は賛成,南ア,独は ISO/IEC 27043の進捗を見て

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判断,カナダ,韓は Abstainとなった.最終的には DISへの昇格が承認された.

・ 日本は成熟度に問題が残るとしながらも,DISに対するコメントを行うこととし,DIS 昇格を承諾した.

c) ISO/IEC 27043 ( Incident Investigation principles and processes)

・ 日本のコメントについては,基本的にAcceptedまたは Accepted in Principle として処理された.

・ DIS 昇格に関するエディタ会合での投票では,日と米が反対,他国は賛成となった.最終的には DISへの昇格が承認された.

・ 日本は成熟度に問題が残るとしながらも,DISに対するコメントを行うこととし,DIS 昇格を承諾した.

d) ISO/IEC 27050 (Electronic discovery) ・ 27050 に対する日本のコメントは基本的に

Acceptedまたは Accepted in Principleされた. ・ E-Discovery, eDiscovery の記述は日本の提案

通り「Electronic Discovery」に統一されることになった.

・ 27050 で対象とすべき規格化の範囲が多岐にわたることから,Multi-Part化が議論され,以下のように分割されることが合意された. ISO/IEC 27050-1 (Electronic discovery

– Part 1: Overview and Concepts) ISO/IEC 27050-2 (Electronic discovery

– Part 2: Guidance for governance and management of electronic discovery)

ISO/IEC 27050-3 (Electronic discovery – Part 3: Code of Practice for electronic discovery)

ISO/IEC 27050-4 (Electronic discovery – Part 4: ICT readiness for electronic discovery)

・ 日本は,複雑化とGovernanceなどが明記される点から,Multi-Part 化に反対したが,他国の賛成が強く,押し切られる形となった.

2.5 WG 5(アイデンティティ管理とプライバシー技術

WG 5では,アイデンティティ管理,バイオメトリクス,プライバシーに関する規格の開発・保守を行っている. a) ISO/IEC 29003 (Identity Proofing) ・ 130ページに及ぶコメントがあり,3rd WDを

作成することとなった.

・ プロジェクトエディタを支援するため,Ad-Hocグループを作成する. またニュージーランドからコエディタを追加する.

b) ISO/IEC 29190 (Privacy capability assessment model)

・ フィンランドで現行の CDの内容を実施することになった.その結果,変更の必要が認められなければ DISに進むこととなった.

c) ISO/IEC 27018 (Code of practice for PII protection in public clouds acting as PII processors)

・ 30ページ以上に渡るコメントが処理された. ・ 日本の技術的コメント 2件は,指摘は正しいが

Proposed change がその指摘を解決していないとして Rejectされた.

・ ISO/IEC 29151とも平仄を合わせる必要があると意見も出されたが,欧州が本規格の成立を非常に急いでいるようで,日本以外は DISに進むことに賛成となり,DISに進むことになった.

3. その他

3.1 要注意事項

ISO/IEC TR 27019のように,他分野に関係する情報セキュリティ関連規格への期待が高まっている.このような規格を作成するには当然その分野への深い知見が必要であるが,SC 27関係者では対応が困難な場合も多い.専門家が多い当該分野での標準化が望ましい一方,SC 27関連規格との整合性を取る必要があると考えられ,今後は JTC 1 外を含む他標準化組織との連携が重要であると考えられる.日本国内でも動向の把握と国全体としての対応が求められよう.

3.2 今後の国際会議開催予定

2014-04-07/11 WG会議 香港(中国) 2014-04-14/15 総会 香港(中国) 2014-04-07/11 WG 会議 メキシコシティ(メキシコ)

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■ SC 28 国内委員会(オフィス機器/Office Equipment)

委員長 小澁 弘明

1. 概要

SC 28の担当範囲は下記に示される. Standardization of basic characteristics, test methods and other related items, excluding such interfaces as user system interfaces, communication interfaces and protocols, of office equipment and products such as: Printers, Copying Equipments, Digital scanners. Facsimile equipment and systems composed of combinations of office equipment. 国際 SC 28は,12カ国の Pメンバと,新たにインドが参加した19カ国のOメンバから構成されている.議長及び幹事国業務は 2002 年以降引き続き日本が引き受けている.現在の SC 28は 5つのWGから構成されている.中長期戦略を議論する Advisory Group(AG),Consumables消耗品・カートリッジ特性:WG 2,機器の生産性:WG 3,Image Quality Assessment画質評価:WG 4,2009年 6月開催の釜山総会で承認され新たに設立されたオフィスカラー:WG 5,がそれぞれのテーマを担当している. 一方,国内 SC 28 委員会は従来通り社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)において運営され,2008年度に JIS化も完了したリサイクル規格担当WG 5を廃止し,同じく ISOが成立したカートリッジ特性を担当する 29142WG(国際はWG 2の一部として活動)の廃止,前述の新設国際 WG 5の受け皿であるWG 5Jの 5WG体制で審議を行っている. 本年度の国際会議としては,第 24回総会(6月オーストリア ウィーン)及び,AG会議 1回(6月ウィーン),WG 2会議 1回(6月ウィーン),WG 3会議 1回(6月ウィーン),WG 4会議 2回(6月ウィーン,1月米国・サンノゼ),WG 5会議 1回(6月ウィーン)が開催され,参加した.

1.1 議長,幹事国業務の引き受け

2002年より幹事国業務を,また 2003年より国際議長を日本が引き受けている.幹事国業務は SC 28国内委員会参加の主要企業の持ち回りとすることが決められ,2006年 10月にこれまでのキヤノン(株)の出井克人から(株)リコーの熊倉和正に交代,2010年 6月ロチェスター総会において富士ゼロックス(株)杉山元邦が就任している.

また,国際議長はコンサルタントの斎藤輝であり,2009年 6月釜山総会で 3期目就任を SC 28に求め承認,2009年 10月開催のテルアビブ JTC 1総会で正式に承認され,引き続き議長を務めている. 議長のリーダシップと公正な態度は,参加各国から高く評価され,SC 28国際標準化活動は順調に推移している.

1.2 第 24回 SC 28ウィーン総会

第 24 回総会が,オーストリア ASI(Austrian Standards Institute)の招待によりウィーン市街地にある ASI会議室にて開催され,6カ国 23名が参加した.(中 3名,米 8名,日 7名,韓 1名,蘭 1名,墺 1名および国際議長及び国際幹事) 今回の総会では,争点となる大きな問題も無く,順調に議事が進行した. 本総会においても,引き続き国際幹事の富士ゼロックス杉山氏と,斎藤国際議長との連携も良く総会はスムーズに運営された(Acclamation 3&4/2013). SC 28 Ambassadorの制度は,毎年総会において制度継続の確認が行われることになっていたが,任務もおおむね達成しこれ以上の成果が期待できないことから継続しないこととなった( Resolution 26/2013). これまで設置していた AWG(Advisory Working Group)の名称を,役割は変更せず AG(Advisory Group)に変更した(Resolution6/2013). 今回の総会では,全体会議と AG,WG 2,WG 3, WG 4,及びWG 5の会合が行われた. 次回第 25回総会は 2014年 6月 24日~25日の間ドイツ・ベルリン市で開催予定である.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

本年度に発行された国際標準は,次の 1件である. ・ISO/IEC 11160-2:2013 (Ed. 2)

Information technology -- Office equipment -- Minimum information to be included in specification sheets -- Printers -- Part 2: Class 3 and Class 4 printers

2.1 WG 1(コンビーナ: C. W. Kim,韓, /日本WGJ:キヤノン小林主査)

AWGの使命のひとつは現在と将来のマーケットニーズを分析・予測し,SC 28の短期・中期ロードマップの策定を行うことにより,新たな標準化課題発掘のベースを作ることにある. AGJは,本年度主査および委員の大幅な拡大・交代を実施し,それに伴う活動指針の練り直し,更に国際レベルでの活動の見直しなどを行い,初期の段階で方

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向転換を図った.改めて新規規格に呈するニーズ発掘に取り組んでいる. SC 28 Scopeの改定を検討していたが,現行を維持することとなった.(Resolution 02/2013) SC 28にかかわる Terminologyの検討を行っているが,各エディタが CD段階で既存各種データベースとの一貫性を検証することとし,設置していたTerminology Coordinator の役割を廃止した.(Resolution 01/2013) 日本の臼井委員がコンビーナを務めていたAWG/PW6 の活動については,討議の結果その活動を停止することとなった.(Resolution 03/2013)

2.2 WG 2(Consumables/消耗品,コンビーナ: P. Jeran,米/日本WG 2J:キヤノン平田主査)

大きなテーマであった ISO/IEC 29142(カートリッジ特性標準)が成立発行され,29142WGが解散したため,2014年 5月に,そのメンテナンスをWG2Jが継続することになった.また CD 24711 rev(カラ―イールド特性標準改訂)と CD 29102 rev(フォトイールド測定法改訂)が 9月に CD投票され,11月末に投票が承認された.今後トナーカートリッジイールドで同等の改訂を実施する予定.

2.3 WG 3(Productivity 生産性,コンビーナ: D. Lewis,米/日本 WG 3J:コニカミノルタ伊藤丘主査)

a) ISO/IEC 11160-2(プリンタ仕様書様式)は,伊藤丘委員がエディターを務め全面改定を進めていたが,FDISが承認され規格発行の運びとなった. b) ISO/IEC 17629(First Print Out Time 測定方法)は,DISが発行され投票中である. c) ISO/IEC 24734(プリンタ生産性測定方法)は,DISが発行され投票中である. d) スキャン生産性測定方法(17991)は CD が承認され,現在 DISの準備中である.

2.4 WG 4(Image Quality /画像評価,コンビーナ: E. Zeise,米/日本 WG 4J:JBMIA稲垣主査)

稲垣委員(JBMIA)がエディターを務める ISO/IEC TS 24790(画質属性測定方法) は,2012 年 8 月にTechnical Specification(TS:技術仕様書)の第1版が,12 月に第 2 版が ISO より発行された.また,ISO/IEC TS 29112(白黒レーザープリンタの解像力測定法およびテストチャート)が 2012年 7月に第1版が発行された,両 TS共に国際標準化を目指して活動をしている. また,ISO TC130/WG3が ISO/IEC TS 24790の

画質属性測定方法を利用するということで,SC 28/WG 4からの要請で,ISO TC130 JWG14が2012

年 10月に構成され,SC 28/WG 4委員がコンビーナに就任し,印刷分野(TC130)とオフィス分野(SC 28)を統合する画質評価方法の国際標準化が開始され,本年度 TC42(写真)も参加し,活動の輪が広がりつつある.

2.5 WG5(Office Colour/オフィスカラー,コンビーナ:仲谷文雄・富士ゼロックス)

a) カラー分野は 2009年に新しく標準化に着手,それに伴い WG 設立と大きく進展し,一昨年の釜山総会では,新たなWG 5(オフィスカラー)が発足した. b) WG 5 設立時に日本が積極的に提案活動をしていたこともあり,SC 28の WGとしては初めて主査を日本で引き受けている. c) 日本がエディターを務めている ISO/IEC 17823 Colour terminology for office colour equipmentは 2013 年 6 月開催のウィーン会議での議論を経てWD が作成完了し,CD 発行された.2013 年 12 月20日締切りの CD投票が実施され,投票した Pメンバの2/3以上の賛成を得たが,コメント付き反対へも可能な限り対応すべく,2014年 6月開催のベルリン会議で議論を行った上で CDver.2 を発行することとなった.

2.6 ISO/IEC10779 Accessibility Ad-Hoc Group(アクセシビリティアドホックグループ)主査:宮本裕之 (富士ゼロックス)

a) ISO/IEC 10779(ユニバーサルデザイン)は,JNBが主体となって ad hoc groupを設立. b) 2013 年 6 月開催のウィーン総会において,Accessibility Ad-Hoc Gの活動報告を行い,現在検討中の EU Mandate376原案(以下M376),USリハビリテーション法 508条(以下 508条)改正案とのハーモナイズの活動を継続.M376は,そのバージョンアップが 9月に実施され,内容の分析を行った.一方,508条改正案(NPRM)は,公開待ち状態が続いており,現時点で,改正案の公開が 2014年 3月から 5月の間になると予測し,当初の計画から大きく遅れることが懸念される.

3. 今後の主要課題

① 新テ-マの発掘と NP提案の促進(継続) ② 制定された国際規格の JBMS/JIS化の推進(支援)

③ Secretariat(Chairman & Secretary)業務への支援

④ SC 28の改革の促進

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■ SC 29 専門委員会(音声,画像,マルチメディア,ハイパーメディア情報符号化/Coding of Audio, Picture, Multimedia and Hypermedia Information)

委員長 高村 誠之(日本電信電話(株))

1. 概要

SC 29専門委員会の中には,WG 1(JPEG, JBIG),WG 11(MPEG)の二つのWorking Groupがあり,主にマルチメディア符号化技術の標準化を担当している.2013年度の主な審議対象は,JPEGでは ・ JPEG 2000(ISO/IEC 15444-X) ・ JPSearch(ISO/IEC 24800-X) ・ JPEG XR(ISO/IEC 29199-X) ・ JPEG XT (ISO/IEC 18477-X) ・ Advanced Image Coding and Evaluation

Methodologies(AIC)(ISO/IEC 29170-X) ・ JPEG Systems(ISO/IEC 19566-X) ・ JPEG AR (ISO/IEC 19710-X) MPEGでは ・ MPEG-2 (ISO/IEC 13818-X) ・ MPEG-4 (ISO/IEC 14496-X) ・ MPEG-7 (ISO/IEC 15938-X) ・ MPEG-21 (ISO/IEC 21000-X) ・ MPEG-A (ISO/IEC 23000-X) ・ MPEG-V (ISO/IEC 23005-X) ・ MPEG-M (ISO/IEC 23006-X) ・ MPEG-U (ISO/IEC 23007-X) ・ MPEG-H (ISO/IEC 23008-X) ・ MPEG-DASH (ISO/IEC 23009-X; Dynamic

Adaptive Streaming on HTTP) であり,CD 7件,FDIS 4件,FDAM 12件,PDAM 18件,PDTR 1件,DIS 7件,DAM 5件,DCOR 13件,NP 1件の計 83件の投票を行った.

2013年度の SC 29総会は 2013年 8月 3日にウィーン(オーストリア)で開催され,日本からは,浅井議長,渡辺セクレタリの他,JNBとして高村委員長が出席した.総会では,標準化項目の見直し・変更,エディタの任免,ビジネスプラン,リエゾン等が承認された.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 WG 1(JPEG静止画像符号化)

a) 開催会議および日本からの出席者数 会期 場所 出席者数 ・2013/04/22-26 仁川 (韓国) 4人 ・2013/07/08-12 London (UK) 5人

・2013/10/28-31 Geneva (Switzerland) 5人 ・2014/01/13-17 San Jose (USA) 5人 b) 活動内容

1) 投票案件 下記の 17件の投票を行った. CD 2件,FDAM 3件,PDAM 6件,DAM 2

件,DCOR 3件,NP 1件 2) JPEG 2000

低ビットレートからロスレスまでの広い範囲での高画質プログレッシブ再生,任意エリアの優先的伝送,伝送路エラー対策,動画像対応などの豊富な機能を有する JPEG 2000では,全パート(1~14)の標準化を終え,現在はパート 1 AMD7(High frame rate (HFR) profile for digital cinema) , 同 AMD8 ( Profiles for Interoperable Master Format (IMF)),パート 5 AMD2(Additional reference software)が審議されている.

3) JPSearch 画像検索を目的とする JPSearch では,全パ

ート(1~6)の標準化を終えパート 2 AMD1 (JPEG Ontology for Image Description)とパート 3 AMD1 (JPSearch API)の審議が現在進められている.

4) JPEG XR マイクロソフト等が推進する HD Photoと呼

ばれる静止画符号化方式に基づく規格 JPEG XRもパート 4 AMD1( Additional JPEG XR conformance test streams)とパート 5 AMD1 ( Extension of the reference software: Support for the Box based file format)を除き全てのパートの標準化を終えた.

5) JPEG XT 2012年に発足した JPEG XTは高いダイナミ

ックレンジをもつ画像を通常の JPEG 互換画像とその差分とで表すものであり,現在そのパート1: Core Coding System Specificationが DIS投票中で.パート 2: Coding of High Dynamic Range Imagesも DISに進んでいる.日本は実装上のコストパフォーマンスから各種提案を評価することにより方式の整理統合と性能改善に貢献している.

6) AIC 画質評価を含む新しい符号化規格の策定を目

指した AIC では,パート 1: Guidelines for codec evaluationが PDTRのままであるがパート 2: Evaluation Procedure for nearly lossless codingが新たに CD投票に進んでいる.

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7) その他・新たな探索 SC 29/WG 11とは HEVCの静止画プロファ

イルの比較などで協同作業を行っている.またSC 29/WG 1で JPEG関連規格のロゴを策定することになり日本案が採用の予定である.なおJBIG-2(ISO/IEC 14492),JPEG(ISO/IEC 10918)の進捗はなかった.JPEG規格ファミリーの中でファイルフォーマットやトランスポートメカニズムなどの仕様の統一化を目指したJPEG Systems が新たなプロジェクトとして発足した.JPEG規格ファミリーを用いた拡張現実感提供サービスにおけるコンポーネントレベルのインタフェース,ファイルフォーマット,アプリケーション記述等を規定する JPEG ARプロジェクトも本年度に発足した.

c) 実用化状況 デジタルカメラの 2013 年の出荷数はスマートフォンの普及のあおりを受け,前年比で約 60%と激減したが,写真の撮影枚数自体は飛躍的に伸びていることから付加価値の高いデジタルカメラへの需要は失われていないともいえる.その符号化方式についてはJPEGが依然独占状態にあるため,従来の JPEG 受信機でも復号が可能かつ高ダイナミックレンジ画像の送信やロスレス機能の付加を小さな実装規模で実現できる JPEG XTへの期待は高いといえる.なお JPEG 2000 はパスポートや運転免許証,デジタルシネマ,アーカイブ,医用画像などの分野で活用されている. d) 今後の課題 以前より新たなプロジェクト候補として検討が行われている JPEG Privacyは,主にインターネットで共有される画像を対象とし,付随する個人情報等の保護を目的とする,日本提案のワークアイテムである.JPEGをはじめとする各種規格ファミリーへの適用が考えられており,仕様検討の具体化が進んでいる.また,JPEG 2000では使いやすさや高速性の観点からの仕様見直しに加え,特定の分野に特化した仕様変更も検討されている.

2.2 WG 11/Video(MPEGビデオ符号化)

a) 開催会議および日本からの出席者数 会期 場所 出席者数 ・2013/04/22-26 仁川(韓国) 26人 ・2013/07/29-08/2 Vienna(Austria) 35人 ・2013/10/28-11/01 Geneva(Switzerland) 29人 ・2014/01/13-17 San Jose (USA) 30人 b) 活動内容

1) 投票案件 下記の 23件の投票を行った. CD 1件,FDIS 2件,FDAM 3件,PDAM 4

件,DIS 3件,DAM 9件,DCOR 1件

2) HEVC 次世代映像符号化規格 High Efficiency

Video Coding(HEVC)では,Range Extensions (RExt: 4:2:2/4:4:4, n-bit対応),Multi-view HEVC(MV-HEVC: ステレオ3D対応),Scalable HEVC(SHVC: スケーラブル拡張)の 3つの機能拡張の標準化が進められた.HEVCの標準化は,MPEGと ITU-T SG16 WP3 Q.6 (VCEG)との間で,次世代ビデオ符号化の標準化を行う Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC)を設立し,ここで技術審議が進められている.3D 関連の拡張は同じく MPEG とVCEG との間で設立した Joint Collaborative Team on 3D Video(JCT-3V)にて標準化が進められている.この内,RExtは 2014年 4月に標準化を終了し,誤植の修正と合わせて HEVCの New editionを発行した.SHVCとMV-HEVCは 2014 年 7 月の標準化終了を予定している.互換確保のため,参照ソフトウェア,コンフォーマンスの標準化を進めているが,当初予定より遅れて 2014年 7月に標準化終了を予定している.また,奥行情報を用いて更に符号化効率を向上する拡張が 3D-HEVCとして開始され PDAMが発行されている. また 2013年 1月にコンピュータ画面を圧縮

する Screen Content Coding の提案募集が発行され,7団体より応募があった.今後 JCT-VCにて標準化が進められる予定である.

3) システム関連 MPEG-2システムに関し,HEVCを伝送する

ための標準化が進められてきたが,AMD4 として標準化を終了した.また,HEVCの超低遅延伝送と MVC+Depth を伝送するための標準化も検討を進め,AMD5 として標準化を終了した.今後は SHVCや MV-HEVCを伝送するための拡張規格が検討される. ファイルフォーマットにおいて,HEVC を記

録するための標準化が進められ, ISO/IEC 14496-15:2010/Amd.2として標準化終了した.

4) 新たな探索 将来の標準化を見据えて新たな技術探索も進

められている.近年,Displayや撮像装置のダイナミックレンジが向上してきたことから,ビデオコーデックの高ダイナミックレンジ対応の検討が進められている.Exploration Experiment (EE)により技術検討を進め,2014年 10月までに今後の対応について結論を出す予定.また,超多視点の任意視点ビデオ(FTV)の検討も進められている.現在 EEを設立して技術検討を進めている.

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c) 実用化状況 HEVCはUHDTVなどをターゲットとして次世代放

送に使用される予定で,現在サービス開始に向け準備,開発が進められている.またスマートフォンなどに普及が進みつつある.今後,HEVCは放送・家電・通信の分野での映像サービス/システムを牽引する今後の主力規格となることが予想される.HEVCの持つ潜在的な符号化性能を十分引き出せるような LSI,コーデック装置,ソフトウェアの開発が各社で進んでおり,今後さらに大きな市場を創出していくことが期待される. d) 今後の課題 次世代映像符号化 HEVC の機構拡張の標準化が引

き続き進められており,2014 年度中に SHVC やMV-HEVC標準化は終了する見通しである.また将来を見据えた探索検討も開始されている.本委員会としても,これらの活動に積極的に参加し標準化を推進していく.

2.3 WG 11/Audio(MPEGオーディオ符号化)

a) 開催会議および日本からの出席者数 会期 場所 出席者数 ・2013/04/22-26 仁川(韓国) 6人 ・2013/07/29-08/02 Vienna(Austria) 5人 ・2013/10/28-11/01 Geneva(Switzerland) 5人 ・2014/01/13-17 San Jose(USA) 5人 b)活動内容

1) 投票案件 下記の 15件の投票を行った. FDAM 4件,PDAM 2件,DAM 4件,DCOR

5件 2) MPEG-H 3D Audio

MPEG-Hの音響パートの位置づけで検討が開始された 3D Audioの標準化については,2013年 1月に提案募集が発行された.その後,2013年 4 月に技術の提案方法と提案技術の評価方法についての文書が発行された.2013 年 7 月のRM0 の選定にむけた提案募集に対して,日本を含む 7 社が提案を行い,主観評価実験については日本を含む 10社が実験に加わった.2013年10月には,RM0のワーキングドラフトとリファレンスソフトが発行された.これに引き続き,2014 年 1月からコア実験がスタートしている.この 3D Audioの標準化には日本からも 22.2ch音響技術や 3D Audio のためのレンダリング技術の提案などで積極的に参画している.

3) MPEG-4 AAC 2012年度に,既存規格のMPEG-4 Advanced

Audio Coding (AAC),High Efficiency AAC (HE-AAC),HE-AACv2に対するレベルを拡張し

て,6.1ch や 7.1ch まで対応するような提案活動が行われ,2013年 1 月に PDAM が発行された.その後,2013年 4月に 22.2chまで対応するような提案が日本から行われた.2013年 7月の会合では 22.2ch を含めることが合意され,FDAMに含められた.2013年 12月には,6.1ch,7.1ch,22.2chを含め AMD4として標準化が終了した.この規格拡張の議論には,ドイツと特に日本の企業が積極的に参画している.

4) MPEG-D DRC 2013年 7月に,従来のMPEG-4 AACで使わ

れている DRCに比べて,より多くのユースケースに対応することと,時間の解像度を改善することを目的に技術提案の募集が行われた.これに対して,日本を含め3社が技術提案を行い,2013年 10月には RM0の選定が行われた.2014年 1月からはコア実験がスタートしている.主な特徴としては,これまで AAC では,一種類の DRCのみの伝送であったのに対して,ヘッドホン,スピーカ,モバイル再生など,ユースケース毎でのDRC パラメタ伝送が可能になっている.この標準化技術は,MPEG-4 AACやMPEG-H 3D Audioにも含まれることが決まっている.この標準化の議論には,日本,ドイツ,アメリカの企業が積極的に参画している.

c) 実用化状況 MPEG-H 3D AudioはUHDTVなどをターゲットと

して次世代放送での使用が期待されている.現在,関連する放送規格とのリエゾンを行いながら標準化が進められている.MPEG-4 AACについては,日本における UHDTVでの使用が想定されており,今後日本で放送の標準化が進むと思われる.このように,3D Audio や AAC は,UHDTV に関わる放送・家電・通信の分野で主力の規格となることが期待されている. d) 今後の課題

MPEG-H 3D AudioやMPEG-D DRCは標準化作業が引き続き進められ,2015年 6月に標準化が完了する予定である.またMPEG-H 3D Audioについては,phase 2として 128kbps以下で 3D Audioを伝送する標準化もスタートする予定である.本委員会としても,これらの活動に積極的に参加し標準化を推進していく.

2.4 WG 11/Systems(MPEGシステム)

a) 開催会議および日本からの出席者数 会期 場所 出席者数 ・2013/04/22-26 仁川(韓国) 8人 ・2013/07/29-08/02 Vienna(Austria) 7人 ・2013/10/28-11/01 Geneva(Switzerland) 7人 ・2014/01/13-17 San Jose (USA) 4人

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b) 活動内容 1) 投票案件

下記の 28件の投票を行った. CD 4件,FDIS 2件,FDAM 2件,PDAM 6

件,PDTR 1件,DIS 4件,DAM 5件,DCOR 4件(うちMPEG-7 SG担当 1件)

2) 担当範囲 Systems 小委員会は国際の WG 11 内の

Systems Subgroupと 3DGC Subgroupが作成する規格案を担当しており,Video(映像)やAudio(音響)の符号化をそれぞれの小委員会が担当し,それらを組み合わせる「複合・多重・応用」に関する部分,および 3D グラフィクスがSystems 小委員会の担当範囲である.ただし,Video 規格との関係性が高い部分は Video 小委員会が担当している.また特に MPEG-7 規格関連は Systems小委員会傘下であるMPEG-7 SGが担当している.

3) 主な審議案件 Systems 小委員会では現在,MPEG-4,

MPEG-7,MPEG-21,MPEG-A,MPEG-V,MPEG-M,MPEG-U,MPEG-H,MPEG-DASHが審議されている.

MPEG-7 関連ではパート 13 の CDVS(Compact Descriptors for Visual Search)標準化が進行中である.CDVSはモバイル端末などで撮影された画像(静止画)内オブジェクトを検索するためのコンパクトな特徴量の標準化であり,本年度 CD投票までが完了した.また次の標準化候補として CDVS の動画対応の検討が EEにて進められており,実験データの収集等が行われている.

DASHは encryptionなどの追補が完了した.MPEG Media Transport (MMT)は本年度 IS化が完了し,誤り訂正などのAMDの策定が進んだ.3D グラフィックス分野では SC 24 との協調による AR Reference Model (ARRM).永続保存形式MPAF,新規プロジェクトとしてユーザ記述やグリーン MPEG の標準化作業が開始または検討中である.

c) 実用化状況 MPEG-7の記述ツールはMPEG-21,MPEG-Aほか,

JPEGの JPSearchでもMPEG-7のメタデータ,クエリフォーマットが採用されている.またオーディオビジュアル記述プロファイル(AVDP)の制作での活用や,図書館等での長期保存を目的とした MPEG-7 記述ツールの活用検討が進行中である.MMT は日本では2016 年からの試験放送に用いる計画が作成された.DASH はライブ中継などへの使用が始まった.MPEG-21,MPEG-A,MPEG-V,MPEG-M,MPEG-U

は一部が実用化されたにとどまるが MPEG の他規格を策定する場合のツールとして活用される部分もある. d) 今後の課題

MPEG-7 関連では CDVS の標準化,動画対応の検討が本格化していく.動画対応においては静止画版CDVSには無い特徴的な動画検索機能の特定,動画版CDVS ユースケースの充実が必要となる.MMT,DASHは実用化展開時期を迎え,広報,参照モデル等の整備,必要に応じた敏速な改定が重要である. MMT,DASH,MPAF以外では日本からの標準化参加がやや少ないので関連企業,研究機関に参加を促していく.

■ SC 31 専門委員会(自動認識およびデータ取得技 術 / Automatic Identification and Data Capture Techniques)

委員長 河合 和哉(パナソニック(株))

1. 概要

SC 31 は自動認識及びデータ取得技術を標準化の対象としている.具体的には,1次元シンボル,2次元シンボル,RFID及びその関連機器,システムの標準化を分担している.SC 31の議長及び事務局は米国が担当し,Pメンバ 32カ国,O メンバ 11カ国で構成されている.SC 31は下部組織としてWG 1,WG 2,WG 4~WG 7の 6つのワーキンググループがあり,WG 1(データキャリア)は 1次元シンボル及び2次元シンボル規格を担当している.WG 2(データストラクチャ)はデータキャリア(1 次元シンボル,2 次元シンボル,RFID)へのデータの格納構造及び格納方法に関する規格を担当している.WG 4 はRFIDを担当し,4つの SG(SG 1,SG 3,SG 5,SG 6)と電波法に関連した規定類を分担するラポータグループがある.WG 5(Real Time Locating Systems (RTLS))は RFID の応用である物の位置情報を得るためのリアルタイムロケーティングシステムの規格を担当している.WG 6(Mobile Item Identification & Management)はモバイル端末(携帯電話等)に AIDC(Automatic Identification and Data Capture)メディア読取装置を組み込み,AIDCメディアからデータを読み取り,関連サイトからサービスや情報を受け取る仕組みに関する規格を担当している.WG 7(Security for Item Management)

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は RFID におけるセキュリティのあり方と関連規格を担当している. 2013年の SC 31総会は仁川(韓国)で 6月 14日に開催され,参加国は 11カ国,関連機関は 2機関で事務局を含めて 36名と通常の総会に比べて参加者がすくなかった.日本からは 3名が参加した.昨年同様,各 WG からの報告,各国の活動状況報告,ビジネスプラン,リエゾン報告が行われ,最後に Resolutionがまとめられた. 議長の Chuck Biss氏(米国)から,自身の任期が

切れる 11月の JTC 1総会をもって,SC 31議長を退任する旨の報告があり,後任には,米国が現 WG 7コンビナーのDan Kimball氏を推薦すると宣言した. これまで WG 5 のコンビナーを務めてきた Marsha Harmon 氏の任期満了に伴う後任の選出にあたり,コンビナー及び暫定コンビナー選出の手続きについて議論した結果を決議した. 次回の SC 31総会は,2014年 6月にデルフト(オランダ)で開催される. 今年度開発作業を行った日本提案のプロジェクトはモバイルデバイスにおける光学的読取り装置の読取りと表示(16480)であり,DIS投票に進んだ. 2013 年はワーキンググループ等も含めて SC 31全体では 17回の国際会議(Face to Face)が開催され,日本からは延べ 30名を派遣した. 2013年 10月に京都でWG 1の国際会議を開催した.また,引続き多くの電話会議が開催されており,各ワーキンググループにて対応している.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 WG 1(Data Carrier)

2 次元シンボル検証器のコンフォーマンス試験方法(15426-2)は,2ndDIS投票が始まった.PDF417シンボル仕様(15438)の改訂は,DIS投票中である.QRコードシンボル仕様(18004)の改訂は,DIS投票をパスし CRMが予定されている. WG 6 との共同プロジェクトの携帯機器組み込みORM リーダのガイドライン規格(日本提案 16480)は,ドキュメントの審議に積極的に参加し,日本意見を反映させた.3rdCD 投票はパスし CRM が完了,DIS投票に進んだ. SC 17との共同プロジェクトである OCR品質試験(30116)は WD の作成が完了し CD 投票をパス,CRM が予定されている.1989 年に制定された関連規格,OCR印刷仕様(ISO 1831)の改訂が今後の課題である. NP 投票 1 件,SR 投票 2 件,CD 投票 3 件,DIS投票 4件を行った.

2.2 WG 2(Data Structure)

ユニーク識別子の構造と登録手続き規格であるISO/IEC 15459シリーズは,これまでに成立している Part 1から Part 6までの見直しと整合を取るための改定作業が 2010年から開始され,昨年度に改定作業が始まる予定であったが,RA(Registration Authority)の NEN(オランダ規格協会)から AIM Inc(Automatic Identification and Mobility)への交代が発生し,作業が中断していた.RAの交代手続きは完了していないが,ISO中央事務局を参照することにより規格上の影響は無くなったため,FDIS投票用文書が出された.また,ISO/IEC 15459シリーズでは,ユニーク識別子をテキスト形式で扱っているが,これをデジタル(バイナリ)形式で扱う ISO/IEC 29161(ユニークデジタル識別子)の CD 投票が始まった.ユニーク識別子のデジタル化は,一次元シンボルやRFIDなどデータ容量が限定される AIDCメディアでも桁数の多いユニーク識別子を効率的に扱うことができるため,ユニーク識別子の利用拡大が期待されるが,既存規格との整合性が課題である. もう一つの主要規格である ISO/IEC 15434(大容量 AIDC情報媒体のシンタックス)は定期改定に伴い,現行規格のまま改定する投票がパスし,近々に定期改定版が発行される予定である. なお,今年度の投票案件は,0件であった.

2.3 WG 4(RFID)

WG 4の審議は,配下のサブグループ(SG 1,SG 3,SG 5,SG 6)において行われている. SG 1(アプリケーションインタフェースプロトコル)では,ホストとリーダライタ間のデータプロトコルに関する規格(15961,15962)の改訂,及びホストとリーダライタ間のデータ管理,デバイス管理,デバイスインタフェース等の規格をソフトウェアシステム基盤(24791)として開発中である.15961-1と 15962 は発行され,15961-2,-3 は発行待ち,15961-4(センサーと電池)は DIS投票済みである. 24791シリーズは,すべて発行された. SG 3(エアインタフェース)では,新たに 18000-3(HF)の改訂(29167で規定するセキュリティの追加)が開始された. 18000-63(UHF)は,EPCglobalの Gen2 Ver.2 の成立に合わせて改訂作業が開始された.また,18000-4(2.45GHz)のモード 3は DIS投票が終了,18000-7(433MHz アクティブ方式)は改訂 4版の FDIS投票待ちである. SG 5(RFID導入ガイドライン)では,新しい動きはない.

SG 6(コンフォーマンス & パフォーマンス)は,RFID のパフォーマンス試験方法(18046 シリーズ)及びコンフォーマンス試験方法(18047 シリーズ)

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の改訂を行っている.18046-4(図書館 HF帯 RFIDゲート)の CD投票が開始された. WG 4全体で,NP投票 1件,CD投票 2件,FDIS投票 1件,システマティックレビュー4件を行った.

2.4 WG 5(RTLS)

2.4 GHz を利用した RTLS システム(ISO/IEC 24730-2,-21,-22)では,-21 に関してはテクニカルコリジェンダムの CD投票を行った.また,UWB (Ultra Wide Band) を用いた二つの規格(24730-61,-62)が FDIS投票を通過して発行された. また,関係する評価試験の規格では UWB(24770-61,-62)での CD 投票を行った.また,米国提案の試験方法と評価方法(18305)は WD 作成に時間がかかり CD 投票に進めるとともにプロジェクト延長を申請した. CD投票 5件,FDIS投票 2件を行った.

2.5 WG 6( Mobile Item Identification & Management)

韓国が提案したモバイル RFID 関連の一連のプロジェクトでは, ITU-T SG16から共同開発の提案がされたUIIエンコーディングフォーマット(29174-1及び-2)及び ID解決プロトコル(29177)については, 2012年に FDIS投票がパスしているが,依然,発行待ちである. 日本から提案した,2次元シンボルを画面に表示する際の技術仕様(16480)は,WG 1との共同開発中である. センサー関連のプロジェクトでは,センサーとアク

チュエータのためのスマート・トランデューサーのインターフェースのうち,共通ネットワークサービス(21451-1)及びポイント間のシリアル インターフェース(21451-2)の改定が提案されて WD の作成中である.また,新規プロジェクトとして,ネットワークに接続されたデバイス通信のための拡張メッセージングとプレゼンスプロトコル(XMPP)が提案されてNP投票をパスし,こちらもWDの作成中である. Wg6全体では,NP投票 3件を行った.

2.6 WG 7(Security for Item Management)

RFIDのセキュリティサービスを規定した一連の規格(29167シリーズ)において,RFIDがサポートする暗号・認証方式を示すインジケーター仕様(29167-1)は DIS投票をパスした. RFIDとリーダライタ間の暗号・認証方式を個別に規定する各パート(29167-1x)の開発に関しては,パート 10からパート 19まで提案され,順次 CD投票,DIS 投票に進んでいる.RFID で使用される ICには,搭載論理ゲート量に制限があることから,多数

の暗号・認証方式を搭載することは困難であること,また,リーダライタが全ての規格の暗号・認証方式をサポートすることは,製品製造者の開発費増を招くことから,日本としては,当初より実用的な 1 から 2個程度の規格に絞るべきであることを意見してきたが,具体投票にあたっては棄権で対応している. WG 7全体では,CD投票 6件,DIS投票 2件を行った.

■ SC 32専門委員会(データ管理及び交換/ Data Management and Interchange)

委員長 鈴木 健司(東京国際大学)

1. 概要

今年度の第 17 回 SC 32 総会は,2013 年 6 月 4日~8日に慶州で開催された. 今年度 SC 32では,IS出版は 11件,TS/TR出版

は 3件,FDIS投票は 2件,PDTR投票は 5件,CD投票は 27件,NP投票は 1件であった. 今後の SC 32 運営に関して,アクティブな参加国

は,日本・中国・韓国・米国の 4カ国と,それにカナダ・英国・ドイツであり,参加国が減少傾向にある.加えて,経験がある参加者の減少及び高齢化で,新たにビッグデータを利用するデータマイニング及びその基盤となる SQL機能の開発をWG 3及びWG 4で議論しても方向性が決まらず,活発であると言い難い状況が生まれつつある.また,Web サービス及びクラウドへの関心から WG 2 へ中国・韓国からの参加者が増加する傾向にあるが,プロジェクト分割が無秩序に肥大化しないように産業界のニーズに基づくものか精査しながら運営させたい.さらに,Directivesに沿っていないバイアスされた運営及び議事の強行がないように,日本としてはそのような議事運営を改善するように継続的に腐心していく.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 WG 1(eBusiness)

(1) 経緯

WG 1 は,SC 32 専門委員会が対応しており,Open-edi への適合要件となる 15944 シリーズ(Business Operation View: ビジネス運用規格)を開発している.今年度は Part 9(Open-edi traceability framework)の CD投票が行われた.新たに電子商取引の情報管理におけるプライバシー要求事項を規格化する Part 12(Privacy protection

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requirements on information life cycle management (ILCM) in EDI)の開発が開始された.Part 12 は Part 8( Identification of privacy requirements as external constrains on business transactions)のスコープとの重複が多いが,EDIシステムへの要求に絞って規格化する方向である.

(2) 開発状況

a) 15944 シリーズの開発は Part 9(Open-edi traceability framework),Part 11(Description techniques for foundational modeling in Open-edi), Part 20(Linking business operational view to functional service view)を残すのみである.Part 9 はコメント対応の審議が終了し,DIS 投票が開始された.Part 11の原案作成は,リソース不足が深刻でいまだ目処が立たない状況である.Part 20はコメント対応が遅れたため DIS 投票が次年度に延期された. b) 他Partとの整合を図るためPart 2(Registration of scenarios and their components as business objects),Part 5(Identification and referencing of requirements of jurisdictional domains as sources of external constraints ) , Part 7(eBusiness vocabulary)の訂正が検討されていたが,改版を行うこととなった.Part 4(Business transaction scenarios – Accounting and economic ontology),Part 6(Technical introduction to eBusiness modeling)も定期見直しの結果,改版作業が開始された.

2.2 WG 2(Metadata)

(1) 経緯

WG 2では,大きく以下の 3つの分野で規格開発を進めている. ① データ要素の管理属性,命名規則および登録などに関する規格群(ISO/IEC 11179,MDR:Metadata registry)

② モデルや情報の共有・連携を促進するための規格群(ISO/IEC19763,MFI:Metamodel framework for interoperability:「メタモデル相互運用枠組み」)

③ その他のメタデータ関連規格(ISO/IEC 20943リーズ,24706シリーズ,24707).

SC 32慶州会議(2013年 5月),WG 2サンタフェ中間会議(2013年 11 月)を経た開発状況は以下の通りである.

(2) 開発状況

a) ISO/IEC 11179(MDR)規格改定と整理:2013年 2月に ISとなった第 3部第 3版に連動して,第 1

部,第 5部,第 6部の第 3版としての改版作業が進行中.第5部が先行してDIS投票中で先行しており,残りの第 1部,第 6部が CD投票中である. b) ISO/IEC 19763(MFI)規格開発:ISO/IEC 19763(MFI:メタモデル相互運用枠組み)規格は,eビジネスなどの分野でモデルや情報の登録と共有を進めるための規格群であり,現在 12部の構成となっており,以下に開発が進行パート毎の状況を報告する.

1) 第 1部:フレームワーク(日本・英国共同編集) MFI規格群が当初の 4部構成から 11部に拡張し,そのスコープも拡大したため,それに対応した改定をおこなっている.2013 年 11 月のサンタフェ会議にてWDの審議を経て現在CD投票中であり,2014年 6月の北京会議にて DIS登録を目指す.

2) 第 5部:プロセスモデル登録のためのメタモデル(中国編集) 既存のプロセスモデル言語で表現されたプロセスモデルを登録するためのメタモデルの仕様.11 月のサンタフェ会議での編集会議を経て現在DIS投票中である.

3) 第 6部:レジストリサマリ(日本編集) メタモデルを登録する登録簿システム間の相互連携のための登録簿システムを表すメタモデルの仕様.2013年初頭に行われた CD投票の結果,2013年 5月の慶州会議並びに 11月のサンタフェ会議にて編集会議を行い現在 DIS 投票中である.

4) 第 7部:サービス登録のためのメタモデル(中国編集) 既存のサービスモデル言語で表現されたサービスモデルを登録するメタモデルの仕様.2013年11 月のサンタフェ会議にて再度 CD 投票を行う事となり,2014年 6月の北京会議では次の段階に進めるかが議論の焦点となる.今回の指摘事項への対応において納得できるものであれば次の段階への進めることを了解したい.

5) 第 8部:ロールとゴールを登録するためのメタモデルの仕様(中国編集) サービスのロールとゴールを登録するためのメタモデル.2013 年 11 月のサンタフェ会議にて再度 CD投票を行う事となり,2014年 6月の北京会議では次の段階に進めるかが議論の焦点となる.今回の指摘事項への対応において納得できるものであれば次の段階への進めることを了解したい.

6) 第 9部(TR):ODMS(中国編集) 「On Demand Model Selection」を目標に,MFI第 5 部,第 7部,第 8 部のメタモデルを連携させサービスの意味的発掘環境を構築する手法

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(TR:Technical Report)である.課題であった第5部,第 7部,第 8部との整合性の問題も解消されているため,第 7 部,第 8 部と時期を合わせて次の段階に進めることを了解したい.

7) 第 12部:情報モデル登録のためのメタモデル(英国編集)

ERや IDEF1X,あるいはUMLモデルなどで定義された情報モデルを登録するメタモデルの仕様.モデルの基礎的登録方法に関する第 10部と連携しながら,一貫したモデル登録方法を規定するものである.サンタフェ会議にて編集会議を行い問題はすべて解消したことが確認された為,現在DIS投票中である.

8) 第 13 部: フォーム登録のためのメタモデル(英国編集) 帳票(フォーム)自身を登録するメタモデルの仕様. 2013年に本格的に動き出したパートであり,サンタフェ会議にて2回目のCDを行うこととなり,現在 CD投票中.北京会議において課題が解消された場合には次の段階へ進める旨を了解する.

c) その他メタデータ関連規格:2014年 6月の北京会議より,メタデータのコンセプトと使い方に関する手法をまとめる PJが開始される.この PJは ISO/IEC 11179 並びに ISO/IEC 19763 の利用法をまとめたTR である.日本としてもエキスパートを参加させ,これらの規格の利用促進を進めるための寄稿を行ってゆきたい.

2.3 WG 3(データベース言語)

(1) 経緯

データベース言語 SQL(ISO/IEC 9075)は,2016年の発行を目標に次期の版を開発中であり,CD投票を2013年2月初旬から5月初旬にかけて実施した.2011 年に発行した現行の版では,第 1 部:枠組( SQL/Framework ) , 第 2 部 : 基 本 機 能(SQL/Foundation),第 4部:永続格納モジュール(SQL/PSM),第 11 部:情報及び定義スキーマ(SQL/Schemata),及び第 14 部:XML 関連仕様(SQL/XML)の 5個の部だけを開発したが,残りの4 個の部(第 3 部:呼出しレベルインタフェース(SQL/CLI),第 9部:外部データ管理(SQL/MED),第 10部:オブジェクト言語結合(SQL/OLB),及び第 13 部:Java ルーチン及び型(SQL/JRT))との整合性の問題が生じるようになったため,次期の版ではすべての部を改正することにした. 次期の版の開発及び日本における現行の版の JIS

化作業において,現行の版にいくつかの問題点が発見された.これらを修正するために,現行の版の第 1部,第 2部,第 4部,第 11部,第 14部の技術訂正

票の作成を行い,DCOR 投票を 2013 年 2 月初旬から 5月初旬にかけて実施し,2013年 12月に発行した. また,規格の開発と並行して技術報告(ISO/IEC 19075)の第 2 部:SQL での時間に関連する情報サポ ー ト ( SQL Support for Time-Related Information)の作成が継続中であるが,2013 年 6月に行われた韓国の慶州での会議でさらに,第 3部:Javaでの SQL埋込み(SQL Embedded in Java),第4部:Javaルーチン及び型を用いるSQL(SQL with Java Routines and Types),第 5部:SQL行パターン認識(SQL Row Pattern Recognition)を作成することが承認された.これらのうち第 2 部,第 3部,第 4部の PTDR投票を 2013年 11月から 2014年 2月にかけて実施した.第 5部については,2016年の発行を目標に作成中である.

(2) 開発状況

2013年の2月初旬から5月初旬にかけて ISO/IEC 9075 の次期の版の CD 投票を実施した.CD 原案に新規に追加された主要機能として,行パターン認識の機能がある.これは行間の値の関連性について特定のパターンを検知するための機能であり,例えば,平常状態からの逸脱パターンや,値の増減の変曲点を検知するための用途が想定される.この機能は ANSIで第15部:行パターン認識(SQL/RPR)として開発された.米国は当初,これを Fast Track手続きで ISO/IECに提出し,DIS 投票に進める意向であった.しかし,日本は,SQL の問合せ機能の一部である行パターン認識の機能を独立した部とする理由が見出だせないため,かつて SQL:1999 の補遺として提案され,SQL:2003において第 2部に統合された SQL/OLAPと同様に,第 2部に取り込むべきであることを主張し,英国等がこれに同調したため,次期の版で第 2部に取り込むことになった.

CD投票のコメントでは他にも新しい機能が提起されている.

a) JSON連携: Webアプリケーションでのデータ交換手段として広く使用されている JSONデータの SQLデータベースへの格納,検索機能を提供する.次回会議(2014年 6月)に米国から寄書が提出されている.

b) GENERIC表関数: 表関数の定義時に固定的に型を宣言せずに,呼出しの記述でパラメータ型,戻り型を与えることを可能にする.構造化されていないデータソース等の定型化しにくいデータを SQLで扱う場合の用途が考えられる.

c) 連想配列: キー値によって要素を指定する配列機能を提供する.KVS相当のデータ格納,操作を SQLで行うための機能と考えられる.

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d) 10進浮動小数点数型: 概数(2進浮動小数点数相当)を使用しないと扱えない大きな数を変換誤差なしに扱うために新しい浮動小数点数型を設ける.2013年 9月にシンガポールで行われた中間会議で承認された.

ISO/IEC 9075 はこれまでの多くの機能の追加により,仕様記述が大きくなり,記述レベルでの不備も多くなっている.日本での ISO/IEC 9075 の現在の版の JIS化作業で多くの問題点が摘出された.これに対する日本からの修正提案を順次反映している.

(3) 今後の取り組み

日本では,2012年 8月から,ISO/IEC 9075の最新の版(SQL:2011)の JIS化作業を開始した.第 1部及び第2部の JIS化作業の中で発見された問題点の修正提案を提出し,多くの問題点が解決された.2014年はさらに第 14部の JIS化が予定されており,ここで発見された問題点の修正提案を行い,国際規格としての質的向上に貢献する. また,近年関心が高まっている大規模データを活用

するためのデータ分析において,SQL の有用性が再認識されている.このようなデータ分析のために,SQL が有効に適用できる問題を抽出し,そのために必要な機能を検討していく.

2.4 WG 4(SQL マルチメディア及びアプリケーションパッケージ)

(1) 経緯

SQL マルチメディア及びアプリケーションパッケージ(SQL/MMと略称)(ISO/IEC 13249)は,マルチメディア及びアプリケーションで利用するデータを SQL データベースに格納し,操作することを可能にするために,共通のデータ型及びルーチンのパッケージを定義する.

2013年度は,主に,Part 3: Spatialの標準化作業に取り組んだ.

(2) 開発状況

2013年 5月の韓国の慶州会議,9月のシンガポール中間会議が開催され,次のような進捗状況である.

a) Part 3: Spatialの進捗状況 Part 3: Spatialの拡張として第5版の検討が進められている.鉄道や道路情報等の地理情報は緯度経度という 2次元情報ではなく基準点からの距離という1次元情報で管理されることが実際には多いといわれる.このことから,2011年の会議において,米国より 1次元地理情報を扱うための Linear Referencingが提案された.2011年から 2012年の会議において米国から提案された寄書を検討し,2012年 12月に CD

投票が行われ,319件のコメントが提出された.慶州会議の編集会議において 214件のコメントを解決した.残存した 105件のコメントについては,シンガポールの継続編集会議において53件を解決したが,52件のコメントが未解決のまま残存したため,さらに継続編集会議を行うことになった. 慶州会議の編集会議において,Part 3の中で使用している BNFや ISO/IEC 9075(データベース言語 SQL)の構文要素について参照元に関する記述の欠如の問題が取り上げられた.これは SQL/MM全般に関わる潜在的問題という理由で,SQL/MM Part 1: Frameworkで共通的な記述を行うことが合意され,Part 1の次版のWDを作成し,次年度の SC 32総会で CDに進めるにすることになった.

b) Part 1: Frameworkの進捗状況 上記の慶州会議の Part 3:Spatial編集会議において作成することになった Part 1: Frameworkは,エディタを担当する日本から第4版WDを提案し,若干の補正を行い承認された.

c) その他の状況 シンガポール会議において,ビッグデータに対する方向性を議論するためにWG3とWG4の合同会議が実施されたが,現状の状況整理に留まり,今後の方向性の議論には至らず,具体的な作業項目の話にはつながらなかった.

■ SC 34 専門委員会(文書の処理と記述の言語/Document Processing and Description Languages)

委員長 小町 祐史 (国士舘大学)

1. 概要

1.1 担当範囲と組織構成

SC 34 は, 広義の文書情報の交換に用いられる文書データの構造記述, ハイパリンク記述, スタイル指定,フォーマット済み文書記述およびそれらに必要なフォント情報に関する標準化を行う.2007 年 12月より日本が幹事国となり,幹事国担当を木村敏子,議長を Sam G. Oh(韓国)が務める.2013 年度末には,27ヶ国の Pメンバと 25ヶ国の Oメンバが参加して, 次のWGが組織されている.

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WG1(マーク付け言語) -- コンビナ: Alex Brown(英国). 情報記述言語,主に標準一般化マーク付け言語

(SGML),並びに SGMLのサブセット, API, 試験および登録に関連する補助的な規格を担当する. WG2(文書情報表現) -- コンビナ: 小町祐史(日本). 文書のフォーマティング, フォント情報交換, フ

ォーマット済み文書記述およびそれらの API を規定する規格を担当する. WG3(情報関連付け) -- コンビナ: P. Durusau(US). 文書情報のリンク付け, 番地付け, 時間依存情報

表現, トピックマップ等による知識処理および対話処理を規定する規格を担当する. WG4(オフィス開放形 XML) -- コンビナ: 村田真(日本).

ISO/IEC 29500(OOXML)のメンテナンスを行い,OOXMLに関連するプロジェクトを傘下に置く. WG5(文書の相互運用性) -- コンビナ: J. Lee(韓国). 異なる ISO/IEC 文書ファイルフォーマットで表さ

れた文書の相互運用性の原則と指針を開発する. WG6(開放形文書フォーマット) -- コンビナ: F. Cave(英国).

ISO/IEC 26300 開放形文書フォーマットのメンテナンスに関係する活動を行う.ISO/IEC 26300のメンテナンスおよび ISO/IEC 26300に関連する他の作業における OASIS ODF TCとの共同作業をも含む. 国内では, SC 34専門委員会が, 関連する国内意見

のとりまとめと国際への対応とを行っている.SC 34専門委員会には,2013年度末には 19名(エキスパート 4名,メールメンバ 1名,リエゾン 2名を含む.)がメンバ登録されている.

1.2 国際会議と参加状況

表1に2013年度に開催された国際会議とそれらへの日本からの参加状況とを示す.

表 1 国際会議と参加状況

会議 開催日 日本からの参加者数

開催場所

WG4 2013-04-09 1 online WG4 2013-05-14 1 online WG1 2013-06-17 1 Bellevue/US WG5 2013-06-17 0 Bellevue/US WG4 2013-06-18/21 1 Bellevue/US WG4 2013-07-16 1 online WG4 2013-08-13 1 online WG1 2013-09-09 3 Delft/NL WG4 2013-09-10/13 2 Delft/NL WG5 2013-09-10 3 Delft/NL WG2 2013-09-11 2 Delft/NL WG6 2013-09-11 1 Delft/NL SC34 2013-09-09, 13 3 Delft/NL BRM 2013-09-30/10-01 5 Tokyo/JP WG4 2013-10-15 1 online WG6 2013-11-08 1 online AHG5 (1.4.2参照)

2013-11-14 1 online

WG4 2013-12-04 1 online WG4 2014-01-07 1 online WG6 2014-01-08 1 online AHG5 2014-01-10 1 online WG4 2014-02-04 1 online WG2 2014-02-26 1 Seoul/KR WG1 2014-03-03 1 Berlin/DE AHG5 2014-03-03 1 Berlin/DE WG4 2014-03-04/06 1 Berlin/DE

1.3 投票等

DIS投票 1件 (13250-3 (2.3参照))

CD投票 4件 (21320-1(2.1参照), 21320-1.2, 21320-1.3, 29500-3(2.4参照))

Cor.投票 2件 (26300/Amd.1/DCor.1(2.6参照), 26300/DCor.3)

規格出版 1件 (13250-3 ed.2)

注: DTS 30135-1/7(2.7参照)の投票は,昨年度の報告に含めた.

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1.4 国際委員会の主な変更点および変更理由

1.4.1 EPUBに関する合同作業グループ(JWG)

2013-09の SC 34総会において,国際電子出版フォーラム(International Digital Publishing Forum, IDPF)が普及促進している電子書籍用ファイルフォーマット規格 EPUBに関する ISO TC 46/SC 4,IEC TC 100/TA 10 との合同作業グループ(JWG)に関して,次の 3件の決議を行った.しかし 2013年度末には,まだ EPUBに関する TS 30135-1/7が発行されていないため,JWG の活動は開始されていない.なおこの JWGは,ISO TC eCommitteeには,ISO/IEC JTC 1/SC 34/WG7として登録された.

a) エキスパート募集

SC 34の PメンバおよびOメンバ,リエゾン組織,ISO TC 46/SC 4,並びに IEC TC 100/TA 10に対して,JWG へのエキスパートを指名することを要請した.

b) ココンビナの指名

JWGのコンビナ(任期 3年間)に Dr. Sam OHおよび Dr. Yong-Sang CHOを指名した.

c) リエゾンの設立

IDPFに対して,EPUBに関する JWGとのカテゴリCリエゾンになることを要請した.

1.4.2 SC 34再構成に関するアドホックグループ 5

2013-09 の SC 34 総会において,次の作業要綱(terms of reference)をもつ SC 34再構成に関するアドホックグループ 5(AHG5)を設立した.2013 年度末には,AHG5において,まだ再構成に関する議論が継続して行われている. a) 90 日以内に最初の会議を開催して,次の指定を行う臨時報告書を作成する.

1) ISO/IEC Directives, JTC 1 SupplementおよびJTC 1 Standing Documentsの中にある,SCおよびWGの構成に適用される JTC 1の規則

2) JTC 1の規則を充分に配慮しつつ,新しい SC 34の WG を生成,既存の WG を継続または廃止する指針

3) SC 34のスコープを必要に応じて変更するための勧告

b) 0 個以上の特定の WG を再構成するオプションを勧告し,必要に応じて SC 34 のスコープを変更することを勧告する最終報告を 2014-07 までに作成する. メンバは,ISO/IEC JTC 1/SC 34の Pメンバおよ

び Oメンバ,リエゾン組織,並びにWGの代表とし,

AHG5のコンビナに Dr. Sam OH (SC 34議長)を指名し,管理支援を行う Jhhn Haug (US)を指名した.

1.5 日本担当のエディタの変更

2013 年度に WG2 において開始した ISO/IEC 9541-1/Amd.1および ISO/IEC 10036/Cor.1の作業(2.2参照)は,小町が担当している.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG1(マーク付け言語)

(1) DSDL(文書スキーマ定義言語 , ISO/IEC 19757)

XML 等で表現されるデータの構造, データ型, データ制約の定義を行う DSDLに関して, 2013年度に議論された主なパートの動向を次に示す.各パートの規定内容については,以前の報告を参照されたい.

a) パ ー ト 3( 規 則 に 基 づ く妥 当 性 検 証 - Schematron)

2013-09 の SC 34 総会において,ISO/IEC CD 19757-3 ed.2のプロジェクトコエディタにDr. Alex Brownmを指名した.CD 19757-3の改訂テキストがプロジェクトコエディタによって提出されたら,それをDIS処理のために ITTFに提出することをセクレタリアートに指示した.

b) パート 7(文字レパートリ記述言語)

ISO/IEC 19757-7:2009 に対する Defect 報告が昨年に UKから提出されたが,まだ投票にかかっていないため,投票手続きを急ぐことが,2014-03 のWG 1会議で確認された.

(2) 文書コンテナファイル(ISO/IEC 21320)

ZIP 仕様書(APPNOTE)を参照することによって,PKWare の ZIP との乖離を生じさせないようにしたマルチパート規格である文書コンテナファイルについては,既にパート 1(コア)の最初の CD投票が行われ,それが承認ていた.

a) パート 1(コア)

2013-09を期限とする 2nd CD投票に対して,日本は,ファイル名の正規化の揺れ等に関する調査結果を Informative Annexとして追加するコメントを付けて賛成投票を行った.各国はその提案には消極的であり,さらに 3rd CD 投票を行うことになった.2014-02 を期限とする 3rd CD 投票で,この日本提案は承認されたが,プロジェクトエディタがその英語表現を修正することになった.

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2.2 WG2(文書情報表現)

(1) フォント情報交換(ISO/IEC 9541)

フォント情報交換の体系,交換フォーマット,およびグリフ形状表現を規定する ISO/IEC 9541-1, -2,および-3は,ed.2として,SGML/DTDと ASN.1とによる構文記述が Relax NG(ISO/IEC 19757-2)による構文記述に更新されていた.

a) パート 1(体系)の Amd.1

ISO/IEC 9541-1の Annex A: Typeface design grouping に,中国と韓国の typeface がほとんど規定されていないとの,CJK-SITEからのリエゾン文書による要求を受理し,Amd.1 の開発を開始することにした.その開発に必要な情報提供を求めるリエゾン文書を CJK-SITEに送付した.

(2) フォント関連識別子の登録手続き(ISO/IEC 10036)の Cor.3

文字鏡からの登録要求に従って,14,463件のグリフ登録が行われ,対応するグリフ IDが発行されたことが,10036 RA(登録機関)から報告された.

10036 RAによるフォント関連識別子の登録には,既に簡素化された登録手続きが行われており,ISO/IEC 10036が規定する登録手続きとの相違が生じているため,ISO/IEC 10036 に対する修正要求(Defect報告)が RAから提出された.それを受けて,Cor.3を開発する作業が開始された.

2.3 WG3(情報関連付け)

(1) TM(トピックマップ, ISO/IEC 13250)

TMは,情報オブジェクト集合の複数の並行的なビューを可能とする.TMの規格を再構成してマルチパート化を図る作業が 2003 年度から継続されているが,WG 3コンビナの病気等によってプロジェクトの進捗が遅れていた.2013年度に議論された主なパートの動向を次に示す.

a) パート 3(XML構文)

この規格は,ISO/IEC 13250-2 が規定するトピックマップデータモデルのインスタンスを交換するために用いる,XML ベースの構文を規定する. 2012年度末に承認された ISO/IEC CD 13250-3 ed.2については,直ちにコメント対処と DIS テキスト作成とが行われ,2013-07を期限とする DIS投票が開始され,日本は編集上のコメントを付けて賛成した.ISO/IEC 13250-3は,2013-11に発行された.

b) パート 5(参照モデル)

この規格は,ISO/IEC 13250-2のデータモデルより少ないオントロジ上の公約に基づいてトピックマップの抽象モデル,サブジェクトマップを定義し,他の知識表現モデルとのマッピングを容易にする.サブジェクトマップはプロキシの集合で,プロキシは複数のプロパティから構成される.各プロパティは,キーと値との対で表現される.トピックマップ参照モデルは,サブジェクトマップの最小限のアクセス,検索機能,併合規則,制約も定義し,ISO/IEC 19756トピックマップ制約言語(TMCL)の形式的な基礎をも提供する.

2013年度末には ISO/IEC DIS 13250-5 ed.2が配布されて,2014-05 を期限とする投票が行われている.

2.4 WG4(オフィス開放形 XML)

(1) OOXML(オフィス開放形 XML ファイルフォーマット,ISO/IEC 29500)

ISO/IEC 29500 ed.3の全 4パートは 2012-08に発行されたが,機構間の相互作用を明確化して,相互運用性を確実なものにするため,ISO/IEC 29500-2および-3の改訂が行われている.

a) パート 3(マーク付けの互換性および拡張性)

2013-09の SC 34総会において,ISO/IEC 29500-3の改訂(Revision)のための下位プロジェクトを起こし,そのプロジェクトエディタに,Mr. Rex Jaeschkeを指名した.改訂テキスト CD 29500-3 ed.4 は,2014-02を期限とする投票で承認された.

b) パート 2(オープンパッケージ規約)

ISO/IEC 29500-2 を改訂して,長期電子署名(XAdES)を追加するため検討が開始された.

(2) OOXML ファイルフォーマットの拡張(ISO/IEC 30114)

ISO/IEC CD 30114-2(文字レパートリ検査)が2012-09 に承認されたが,2nd CD テキストを作成することになり,このテキストの完成が待たれている.パート 1(指針)についても,CD テキストの完成が待たれている.

2.5 WG5(文書の相互運用性)

中 国 か ら の 提 案 で あ る "Determination of document interoperability"のレビューが行われている.2013-09の SC 34総会においては,新規課題として,"Big Data & WG5"に関するプレゼンテーションがコンビナによって行われた.

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2.6 WG 6(開放形文書フォーマット: ODF)

(1) ODF 1.0および 1.1

次の 2件の DCor投票が,いずれも 2014-04を期限として開始された. ・ ISO/IEC 26300/DCor.3, ODF v1.0 ・ ISO/IEC 26300/Amd.1/DCor.1, ODF v1.1

(2) ODF 1.2

次のテキスト(Open Document Format for Office Applications (OpenDocument) v1.2) が , PAS submission によって DIS 投票にかけられるため,2014-04から翻訳/準備期間に入る. ・ ISO/IEC DIS 26300-1, OpenDocument

Schema ・ ISO/IEC DIS 26300-2, Recalculated Formula

(OpenFormula) Format ・ISO/IEC DIS 26300-3, Packages

2.7 EPUB

韓国が国内規格 KS X 6070として発行し,それをFast-track手続きを用いてTS原案として JTC 1に提出した

IDPFの EPUB 3.0の規定(Digital publishing)は,次の文書として配布され,2013-05 を期限とするDTS投票にかけられた. ・ DTS 30135-1, EPUB3 Overview ・ DTS 30135-2, Publications ・ DTS 30135-3, Content Documents ・ DTS 30135-4, Open Container Format ・ DTS 30135-5, Media Overlay ・ DTS 30135-6, EPUB Canonical Fragment

Identifier ・ DTS 30135-7, EPUB3 Fixed Layout

Documents 投票の結果,これらは承認されて,2013-09 に

BRM(Ballot Resolution Meeting)が開催された.投票に際して提出されたコメントは,次の方針に従って,最終テキストに反映されることになった.すなわち,EPUB 3.0をほぼそのまま承認し,コメントの一部はIDPFが EPUB 3.0.1に取り入れる.EPUB 3.0.1に対応した変更は,メンテナンスとして EPUBに関する合同作業グループ(JWG)が行う.

2014-05にワシントン D.C.において JWGの最初の会議を開催する計画を策定した.

■ SC 35専門委員会(ユーザインタフェース/User Interfaces)

委員長 関 喜一(産業技術総合研究所)

1. 概要

SC 35 はユーザインタフェース(UI)の国際標準を審議する委員会であり,議長・幹事国はフランスが務め,2014年 4月現在,Pメンバ 19カ国,O メンバ 17カ国で構成される. 国際会議は通常年 2回開催している. SC 35は,傘下に以下のWG 1から 8まで(ただ

し 3を除く)の 7つのWGを持つ.このうちWG 2とWG 4は日本がコンビナを務める.

WG 1: キーボード及び入力インタフェース WG 2: グラフィカル UI及びインタラクション WG 4: 携帯端末の UI WG 5: 文化及び言語適合性 WG 6: UIのアクセシビリティ WG 7: UIのオブジェクト,動作及び属性 WG 8: 遠隔インタラクションのための UI

審議の対象となる UIは,古典的なキーボードから,最新の音声やジェスチャ入力までを幅広く扱う.また高齢者・障害者配慮のための UIアクセシビリティも重要な焦点となる.

2014年 4月現在,26件の審議案件が Programme of Work として登録されており,そのうち 6 件は日本がエディタを務めている.

2. 主なプロジェクト進捗状況

主要なプロジェクトを抜粋して紹介する.

2.1 WG 1(キーボードと入力装置)

ISO/IEC 30113シリーズ

a) 情報機器のジェスチャコマンドに関する規格. b) 全 15部で構成される予定.全て韓国提案. c) ジェスチャコマンドは,マウスやタッチパネルを使用したものから,カメラを使って手の 3次元的な動きを使うものまで登場している.しかし,これらの方法論を体系的に分類することは難しく,国際の審議の場でも何度が規格の全体構成が変更されている.またジェスチャの動き方もメーカによって異なり,統一した方法が得られないのが現状であり,標準化のためには多くの課題が残されている. d) 日本からも,韓国への情報提供には協力しているが,ジェスチャは日本国内でもメーカによって異なる方法が採用されており,日本から公式に統一した意見を提出できないのが現状である.

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 49

Page 50: 別 冊 No. 102 - IPSJ/ITSCJ · との情報共有と. itu-tとの合同作業の可能性 の考慮. 現在日本を含む. 9カ国が参加登録している.コンビ ーナ,セクレタリとも韓国が担当している.

e) 2014 年 4 月現在,第 1 部(共通事項)が DIS投票中,第 2部(マウスジェスチャ)と第 11部(3Dハンドジェスチャ)が DIS準備中.

2.2 WG 2(グラフィカルUI)

ISO/IEC 13251

a) 事務機器の図記号に関する規格. b) JBMIA や IEC/SC3C(機器装置用図記号)とも協力して標準化作業を進めている. c) 2014年 4月現在,日本から修正提案している.

2.3 WG 4(携帯端末)

ISO/IEC 17549シリーズ

a) 情報機器のメニューナビゲーションに関する規格. b) 本件は,日本で開発された 4 方向キーを用いたメニューナビゲーションの標準化案件であり,日本国内で数年間の調査研究ののち,日本から提案した案件である.2007年に日本主導で本件のためのOWGをSC 35内に設立して準備を行った後に提案している.各国からの関心も高く,本件は国際の審議では,WG 1,4,5,および 6の合同会議の中で審議されている.本件は,国際の審議において 2部構成とすることが決まり,第 1部(総則)はフランスがエディタを務める.第 2部(4方向キーナビゲーション)は日本がエディタを引き受け,韓国が副エディタを務める. c) 2014年 4月現在,第 1部は NP投票中,第 2部は DIS投票中.

2.4 WG 5(文化言語適応性)

ISO/IEC 30122シリーズ

a) 情報機器の音声命令に関する規格. b) 本件は,2007年に日本主導で音声命令の OWGを SC 35 内に設立して数年間準備を行った後に提案した案件である.各国からの関心も高く,本件は国際の審議では,WG 4,5,および 6 の合同会議の中で審議されている. c) 以下の 4部で構成されている.全て日本提案であり,日本がエディタを引き受けている. ・第 1部-枠組みと一般指針 ・第 2部-構築と検証の手続き ・第 3部-音声命令の翻訳及び地域対応 ・第 4部-音声命令登録の管理

d) 2014年 4月現在,第 1部と第 4部は DIS投票中,第 2部と第 3部は NP+CD投票中.

2.5 WG 6(アクセシビリティ)

ISO/IEC 20071シリーズ

a) 情報機器のUI構成要素アクセシビリティに関する規格. b) 高齢者・障害者配慮技術は日本でも関心が高く,国内では国内 WG 6 委員会の開催頻度を増やして,障害者団体やメーカなどの利害関係者にも参加してもらい,積極的に対応している. c) 構成部数は今後増える予定であるが,現在 4部構成.全てカナダ提案. d) うち 1件(代替テキスト)は TS発行済.1件(解説音声)は提案中.残り 2件(字幕とサブタイトル)は未提案.

3. その他

現在,国際 SC幹事の負担が大きく,文書の発行や投票手続きが遅れ気味である.幹事の負担を減らすため,2014年より,常年 2回行われる国際会議のうち,夏の会議のみ SC会議とし,冬の会議は SC会議ではなくWGs会議として開催することとしている. ■ SC 36 専門委員会(学習,教育,研修のための情 報 技 術 / Information Technology for Learning, Education and Training)

委員長 仲林 清(千葉工業大学)

1. 概要

SC 36は,コンピュータを活用した教育・研修の分野を担当し,教育コンテンツ,学習者情報,教育品質,などに関する標準化活動を進めている.ただし,教育の内容自体に関わるような標準化は行わない.この分野にはすでに多くの技術標準化団体が存在しており,SC 36 はこれらの団体と連携して国際標準規格を制定しようとしている.現在 SC 36には 7つのWGがある.2013年 9月の時点で 30のプロジェクトが進行中である.P メンバは 23 カ国,O メンバは 22カ国である.また,ISO/IEC外の 12の団体とリエゾンを結んでいる.議長はスウェーデン,セクレタリアートは韓国である. 2013 年度の国際会議は,2013 年 9 月 7 日~13日にロシアのモスクワで開催され,11ヶ国,5団体,52人が参加した.2013年度,新たに承認された NPは 件,CDは 9件,出版された ISは 3件である.

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 50

Page 51: 別 冊 No. 102 - IPSJ/ITSCJ · との情報共有と. itu-tとの合同作業の可能性 の考慮. 現在日本を含む. 9カ国が参加登録している.コンビ ーナ,セクレタリとも韓国が担当している.

現在,日本はWG 2(協調技術)のコンビーナ(電通大 岡本),セクレタリ(大阪学院大 西田)およびプロジェクトエディタ(ユニシス 原,山口大 鷹岡),WG 3(学習者情報)のプロジェクトエディタ(東洋大 平田),WG 5(品質保証)のプロジェクトエディタ(東洋大 平田),WG 6(プラットフォーム・サービス・仕様の統合)のプロジェクトエディタ(上智大 田村)を引き受けている.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 WG 1(ボキャブラリ)

この WG は,SC 36で制定する規格で用いられる用語の定義を行う.昨年度までに,ボキャブラリを各国語に翻訳したアメンドメントを作成し,ロシア,韓国,中国,日本が翻訳を行ない内容の最終確認を行った.現在,SC 36の他のプロジェクトで用いられている語彙をもとに,内容を拡充した第 3版の検討を行っている.

2.2 WG 2(協調・知的技術)

日本からWG設置を提案し,電通大 岡本がコンビーナを務めている. すでに ISとなっている ISO/IEC 19778-1~3についての修正を計画するとともに,その普及を図るためのユーザガイドである ISO/IEC 19778-4 User Guide for Implementing, Facilitating and Improving Collaborative Applications の策定を日本の鷹岡がプロジェクトエディタとして進めている.

2.3 WG 3(学習者情報)

この WG は学習者の学習履歴,成績,スキルなどの情報の標準化を扱う.学習者のスキル・コンピテンシーの管理に関する ISO/IEC 20006 Information Model for Competency,学習者の学習履歴の管理に関する ISO/IEC 20013 e-Portfolio Reference Model,プライバシー保護に関する ISO/IEC 29187 Identification of Privacy Protection Requirementsのプロジェクトが進められている.

ISO/IEC 20006は日本から提案したもので平田がプロジェクトエディタを務めている.本プロジェクトは, ・Part 1: Competency general framework and

information model (IS) ・Part 2: Proficiency information model (IS) ・Part 3: Guidelines for the aggregation of

competency information and data (TR) の構成で,Part 1は DIS投票が,Part 2は CD投票が終了した.ISO/IEC 20013についても,DTS2投票が終了した.

また,プライバシー保護に関する ISO/IEC 29187 Identification of Privacy Protection Requirementsについては,Part 1: Framework Model は既に ISとなっており, ・Part 2: Guidelines for information life cycle

management and EDI of personal information

・Part 3: Multilingual Vocabulary. がそれぞれWDの議論中である.Part 3については,日本から平田が PEとして参加している.

2.4 WG 4(学習管理)

WG 4はコンテンツ関連の標準化を行う.ISO/IEC 19788 Metadata for Learning Resource (MLR),および,ISO/IEC 12785 Content packaging (CP) に関するプロジェクトが進められている. MLR は学習リソースに関するメタデータの項目ごとのMulti Part Standardとして規格化を進めようとしている.現在,以下のパートが進められている. ・Part 1: Framework ・Part 4: Technical Elements ・Part 5: Educational Elements ・Part 6: Availability, Distribution, and

Intellectual Property Elements ・Part 7: Bindings ・Part 8: Data elements for MLR records ・Part 9: Data elements for Persons ・Part 10: Application Profile for Access,

Distribution and Intellectual Property (WIPO compliant) elements

・Part 11: Migration from LOM to MLR 現在,Part4, 6, 8,9が DIS投票準備中,Part7,

10, 11が CDないし CD2投票準備中である.

2.5 WG 5(品質保証)

学習教材や教育サービスにおける品質標準を扱う.開発プロセスに関する ISO/IEC 19796 Quality Management, Assurance, and Metricsを議論しており,Part 1: General Approach および Part 3: Reference methods and metrics が既に ISとして発行されている.昨年度,シリーズ全体の名称を“Quality Management, Assurance, and Metrics”から“Quality for learning, education and training”に変更した.ISO/IEC 36000 Fundamentals and vocabulary については第 2 版の検討を行っていてWD 段階にある.ISO/IEC 36001 Management systems Requirements は CD2 投票が終了し DIS投票の準備中である. ISO/IEC 19796-4: Best Practice and Implementation Guide, ISO/IEC 19796-5: Guide

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Page 52: 別 冊 No. 102 - IPSJ/ITSCJ · との情報共有と. itu-tとの合同作業の可能性 の考慮. 現在日本を含む. 9カ国が参加登録している.コンビ ーナ,セクレタリとも韓国が担当している.

"How to use ISO/IEC 19796-1はそれぞれDTS, TSの準備中である.ISO/IEC 19796-6: Assessment Model for ISO/IEC 19796-1,ISO/IEC 19796-7: Product and services -- RequirementsはWD準備中であるが,36000,36001 の進捗を待って準備を進める.

e-Assessmentに関する ISO/IEC 30119 Quality Standard for the Creation and Delivery of Fair, Valid and Reliable e-Tests のプロジェクトは,Part1: Quality framework for e-Testsについては,CD2 の CRM が行われ,CD3 投票を行うこととなった.タイトルを Quality process reference model for e-Testsに変更した.Part 2: Application Guide with use casesは CDドキュメントの準備中である.

2.6 WG 6(支援技術と仕様統合)

WG 6 では,e-Textbook と Virtual Experiment(学習用の仮想実験)に関する標準化の議論が進められている.両規格とも PDTR 投票が行われたほか,各国の要求条件の収集を行っている.日本では,田村が中心に電子教科書に関する要求条件の整理を行って情報をインプットしている.

3. その他

2006 年に設立された ISO TC 232 Learning services for non-formal education and trainingが策定中の ISO 29990シリーズは教育の質保証に関するものであるが,すでに SC 36 から IS 化されたISO/IEC 19796 ITLET -- Quality Management, Assurance, and Metricsシリーズとの内容の重複が指摘されていた.また,ISO 9000シリーズを担当する TC 176でも教育分野の品質標準を扱う WG 5が設立され活動範囲の重複が問題となっていた. このような重複について,すでに JTC 1経由で ISO TMB に申し入れを行い,関係の正常化に向けた努力が行われてきたが,今回,Educational organizations management systems を扱う PC28X(その後PC288)を組織する方向であることが紹介され,現在各組織で開発中の規格をもとにして,統一的な規格を作ることを支持する議決がなされた.

■ SC 37 専門委員会(バイオメトリクス/Biometrics)

委員長 山田 朝彦(産業技術総合研究所)

1. 概要

SC 37(議長:Fernando Podio(米国))は,バイオメトリック技術に関する標準化を担当している.6つのWGから構成されている(2.を参照).Pメンバは 28ヶ国,Oメンバは 13ヶ国である. 国内専門委員会は,委員長,幹事(浜壮一(富士通

研究所),諌田尚哉(日立)),各 WG 主査,リエゾン(SC 17,SC 31,ISO/TC 68,ITU-T/SG 17,日本自動認識システム協会)から構成され,ほぼ月 1回の会議を開催している.各WG小委員会もほぼ月 1回会議を開催しているが,WG 4とWG 6は原則合同開催,WG 1は原則メール審議で会議は開催していない.WG 2,WG 3,WG 5が製品に関わる技術を扱っているのに対し,WG 4とWG 6は上記3つのWGの成果を基礎とした応用分野の標準化を担当しているので,上記3つのWG主査もWG 4とWG 6の審議に参加している.

2013年度の国際会議は,2013年 4月に英国ウィンチェスター(WGのみ)で,2014年 1月にドイツダルムシュタット(WGと総会)で,開催された.ダルムシュタット会議での審議プロジェクト 52件,ダルムシュタット会議以降の投票件数 35 件( CD/PDAM 14 件 , DIS/DAM/DTR 17 件,FDIS/FDAM 3件,NP1件)である.2013年度までに IS 89 件(うち Amd(Amendment)=15, Cor(Corrigendum)=19),TR5件が発行された.また,SD(Standing Document)は 21件である.

WG 構成は変更ないが,WG 4 のタイトルがBiometric Functional Architecture and Related Profiles か ら Technical Implementation of Biometric Systemsに変更された. 日本からは,以下のとおり,コエディタに新任した.

30107-1及び 2:新崎卓(富士通研究所) 30107-3:大木哲史(産業技術総合研究所) 30136:井沼学(城西大学)

各プロジェクトについては,WG 3及びWG 5に関する報告に記述する.上記では ISO/IECを略記したが,以下でも同様に略記する.

2. 主なプロジェクト進捗状況

各 WG におけるプロジェクトの進捗状況の報告に先立ち.SC 37総会の状況について述べる.総会の決議

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であっても,各 WG での報告がふさわしいものについては,2.1以下で述べる. a) SC 37運営

SC 37委員長 Podioの 3年延長が SC 37総会で承認され,JTC 1の承認を求めた. ビジネスプランについては,業界及び市場ニーズに

基づく標準作成を基本戦略とし,第 2世代標準(データ交換フォーマット,インタフェース,精度評価,データ品質)の作成を進めるとともに,新しい分野(DVI(Disaster Victim Identification)へのバイオメトリクス適用,監視カメラシステムの運用や精度評価の標準)に取り組む.ロードマップは,SC 37サイト及びWikipediaに継続的に公開する. b) リエゾン

CEN(欧州標準化委員会)からのリエゾンステートメントに基づき,CEN/TS 16428 Best practice for slap-ten print captureを CENから SC 37/WG 4に移行することを決定した.

ILO(国際労働機関)からの船員手帳へのバイオメトリクス適用に関する技術検討のリエゾンステートメントに対しては, WG 2からWG 4の活動内容を紹介するに留め,同様のリエゾンステートメントの SC 17 への送付を提起した.

IEC/TC 3/SC 3Cへ,血管(静脈)画像のシンボルに関する DIS 24779-9への寄書に対し,返礼のリエゾンステートメントを送付した.

SC 17/WG 3との連携のため SC 37 SG(Special Group)及び SC 27との連携のための SC 37 SGをそれぞれ設立した.相手先と SC 37 との両者に関係するプロジェクトについて議論をするために,それぞれ,双方の SCの代表者から成るWebEx会議を開催する.次回の総会までに 2回開催予定である.

OASIS からのリエゾンステートメントに対して,OASIS の プ ロ ジ ェ ク ト ” Best Practices in Biometrics Performance Monitoring Programs”に賛同し,OASIS におけるクラウド上のバイオメトリクスに関する標準化を提起した. c) ISO/IEC 19794(データ交換フォーマット)シ

リーズ第 1版継続出版要請 ICAOで ISO/IEC 19794シリーズ第 1版の使用が

終了する 2033年まで,第 1版出版の継続を ISO/IECに要請した.総会の度にリマインダーとして要請する.

2.1 WG 1 : Harmonized Biometric Vocabulary(バイオメトリック専門用語)

WG 1(コンビーナ:Steve Clarke(オーストラリア),国内主査:溝口正典(日本電気))では,SC 37で使用される様々な概念間の調和を図ってバイオメトリック技術用語を標準化している.活動の中心は,

SD 2 - Harmonized Biometric Vocabulary の作成である. a) 2382-37(バイオメトリクス専門用語集)改訂

開始 SD2 の中から定義が固まった用語を選択したのが

本規格である.2012年に発行されたが,ダルムシュタット会議で改訂開始が決議された. b) TR 24741 Biometric tutorial

WG 2 から移管され,SD 11 Part 1 Overview Standards Harmonization Documentと統合されて,改訂が開始された.現在WD段階である.

2.2 WG 2:Biometric Technical Interfaces(バイオメトリック テクニカル インタフェース)

WG 2(コンビーナ:Young-Bin Kwon(韓国),国内主査:熊谷隆(日立ソリューションズ))は,バイオメトリクスの共通インタフェース仕様を策定するグループである.バイオメトリクスの標準 API 仕様である 19784 BioAPI (Biometric Application Programming Interface)シリーズ,バイオメトリクスのメタデータフォーマット仕様である 19785 CBEFF(Common Biometric Exchange Formats Framework) シリーズの開発が中心的な活動である.2013 年度に審議したプロジェクトは 16 件,4 件のIS(Cor)が発行され,1 件のプロジェクトが廃案になった. a) 19784 BioAPIシリーズ及び関連プロジェクト

BioAPI シリーズの中心規格である 19784-1: 2006 BioAPI Specificationの改訂が進んでいる.今回の改訂では 2006 年版との互換性が失われるが,2006年版は以後も使われる可能性がある.このことを日本からコメントした結果,改訂版発行後も 2006年版を継続出版することの合意が得られた.ダルムシュタット会議で CDに進むことが決議された. 19784 シリーズでは,Part 2: Biometric archive function provider interfaceの Cor出版が決定し,Part 5: Biometric processing algorithm function provider interface 及 び Part 6: Biometric matching algorithm function provider interfaceがCDに進んでいる. オブジェクト指向版の BioAPI 規格の標準化が

30106 Object Oriented BioAPIシリーズとして進んでいる. Part 1: Architecture, Part 2: Java Implementation,Part 3: C# Implementationの構成で,いずれも CD段階である. 19784-1 の改訂が進んではいるが,その他のプロジェクトは19784-1: 2006準拠で仕様作成を進めている.ダルムシュタット会議で日本がこれを問題視し指摘した結果,19784-1 以外のプロジェクトは,

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19784-1 の改訂とは独立して進めること,19784-1改訂完了後に改訂を開始することを合意した. 組込み機器向け BioAPI として 29164 Embedded BioAPI が 2011 年に国際標準になり,セキュリティ追補が進行していた.しかし,スコープが定まらず,また 29164の重要性が高くないとの判断から,キャンセルされた.

19784-1 への準拠性試験規格として,24709 Conformance Testing for Biometric application programming interface シリーズがある.Part 1: Methods and Procedures と Part 2: Test Assertions for BSPsの改訂が進んでおり,現状はいずれも WD 段階である.Part 2 と Part 3: Test assertions for BioAPI frameworksは試験項目の多くが対応するにも関わらず,Part 2は Part 3に比べ試験網羅度が著しく低かった.また,Part 3 では試験仕様の記述に簡潔な方式が取られている.これらの点で Part 2も Part 3と同様にせよと日本からコメントした.ダルムシュタット会議では,Part 3 で実質的なエディタを担当した中村敏男(OKI ソフト)がPart 3 の考え方を説明して,日本コメントは採用された. b) 19785 CBEFFシリーズ

Part 1: Data Element Specificationで抽象的なデータ項目を定義し,利用分野毎に Part 3 - Patron format specifications でパトロンフォーマットという具体的なデータ構造(バイナリ形式や XML形式のもの)を定義している.ひとつの CBEFFデータがあった場合,どのパトロンフォーマットのものであるかが容易にはわからないという問題があった.スペインからの提案でPart 1のCor作成が開始されていたが,ダルムシュタット会議で日本とドイツから Cor の範囲を超えていると主張して認められ,Corを廃案とし改訂することになった.CD段階から開始する.Part 3は Cor 作成時から改訂を進めており,DIS になっている.

2.3 WG 3: Biometric Data Interchange Formats(バイオメトリックデータ交換フォーマット)

WG 3(コンビーナ:Christoph Busch(ドイツ),国内主査:新崎卓(富士通研究所))は,バイオメトリックシステム間での相互運用性確保を目的として,バイオメトリックデータの交換フォーマットを策定する WG である.具体的には,認証技術毎にマルチパート化した 19794(データ交換フォーマット)シリーズ及び関連規格としてバイオメトリックサンプル品質の規格である 29794シリーズ,更に,センサー入力攻撃検知(Presentation Attack Detection)

の規格 30107 の審議を進めている.2013 年度に審議したプロジェクトは23件,5件の ISが発行された. a) データ交換フォーマット及び関連プロジェクト 1) 19794シリーズ

19794 シリーズは,モダリティに共通する枠組みを規定する Part 1 と 12 のモダリティ毎のパートから成るマルチパート規格であり,第 2 世代の標準化が進行中である.Part 1と指紋・顔・虹彩・血管(静脈)などの9規格が発行されており,署名時系列・音声・手の皺画像に関して開発が進行中である.署名時系列は,半谷精一郎(東京理科大)が大きく貢献し,IS 発行準備中である.音声と手の皺画像については,まだWD段階である.

2) XML形式化 19794各パートの XML化を Amd.2として開発

している.Part 1の XMLフレームワークは,DAM投票中である.Part 2以降については,6プロジェクトが立ち上がっており,Part 5顔画像と Part 6虹彩画像が PDAM段階,Part 2指紋特徴点,Part 4指紋画像,Part 7署名時系列,Part 9血管(静脈)画像が DAM段階にある.

3) 適合性試験方法 19794 の各パートに対する適合性試験規格は,

19794の第1世代に対しては29109シリーズで,第 2 世代に対しては 19794 の各パートの Amd.1で,それぞれ標準化されている. 29109シリーズは,6パートが IS発行済だったが,この 1年で顔画像の Part 5(Rev.2)が IS発行されることになった.Part 2指紋特徴点 Level3は,審議が滞っており,まだWD段階である.

19794 各パートの Amd.1 のシリーズは,新たに Part 2指紋特徴点,Part 5顔画像,Part 8指紋スケルトン,Part 9血管(静脈)画像が IS発行され,計 5パートが IS発行済となった.Part 6虹彩画像は,DAM投票中,Part 11署名特徴量は DAM投票可決,Part 14DNAデータはPDAM投票可決,Part 13 音声は WD 段階だったがキャンセルされることになった.Part 7 署名時系列については,ベース規格と適合性試験規格が一体で IS化されている.

b) バイオメトリックサンプル品質関連プロジェクト

19794の各パートに対応して,29794シリーズでバイオメトリックサンプル品質を扱う.しかし,Part 1枠組みの他に現在立ち上がっているプロジェクトは,Part 4指紋画像とPart 6虹彩画像の2つだけである.Part 1は 2009年に IS化され,バイオメトリックサンプル品質データの品質算出アルゴリズム IDやベンダーIDを取り扱うための枠組みを規定し,19794シリーズ第 2世代のヘッダに取り込んでいる.

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現在 DISの Part 6で複数の品質値を扱う要求が出て,Part 1の改版プロジェクトが開始されて現在 CD段階にある.Part 4は,米国の要求で TRを ISに改版するプロジェクトが進んでおり,WD段階にある. c) センサー入力攻撃検知プロジェクト

30107 は,偽造生体検知も含むセンサー入力攻撃検知のプロジェクトである.センサー入力攻撃の分類,検知モデル,検知結果を伝達するためのデータ構造,評価方法などを含んでいる.バイオメトリクスがより普及するためにはセンサー入力攻撃検知が必要との認識から始まったが,進捗遅延が生じていた.扱う範囲が広いことが遅延の原因であるとし,ウィンチェスター会議でプロジェクト分割を日独は提案したが否決された.しかし,ダルムシュタット会議で分割が決定した.Part 1 は内容が安定して来た部分を枠組みとしてまとめ CDに進み,Part 2はデータ構造を扱ってWDから開始し,Part 3は評価方法を扱ってWDから開始することが合意された.Part 3 は,従来の相当する部分は informative だったが,IS にすることが決まった.エディタは,Part 1 には従来のエディタ(米国)が,Part 2にはドイツから,Part 3には米国から,それぞれ就任した.30107 のコエディタを務めた新崎卓(富士通研究所)が Part 1及び2のコエディタに,大木哲史(産業技術総合研究所)がPart 3のコエディタに,就任した.なお,Part 3はWG 5が担当する.

2.4 WG 4:Technical Implementation of Biometric Systems(バイオメトリックシステムの技術的実装)

WG 4(コンビーナ:Michael D. Hogan(米国),国内主査:山口利恵(東京大学))は,バイオメトリクスの応用システムに関する標準を策定する.1で述べたように,ダルムシュタット会議で WG のタイトルが変更になった.2013年度に審議したプロジェクトは 4件,1件の新しいプロジェクトが成立した.

29195 Passenger Processes for Biometric Recognition in Automated border control systems(国境の自動化ゲートにおける旅客処理)及び 29196 Guidance for Biometric Enrolment(バイオメトリック登録のガイダンス)は DTR投票中,30124 Code of practice for the implementation of a biometric system(バイオメトリックシステムの実装における実践のための規範)は CD投票中である.30125 はモバイル機器上のバイオメトリクス機能をシステムの中で利用するためのガイダンス文書の TRである.ダルムシュタット会議でタイトルが,Use of Mobile Biometrics for Personalization and Authenticationから Biometrics used with mobile devicesに変更された.コエディタに新崎卓(富士通

研究所)が就任し開発を進めている.また,ダルムシュタット会議では,新崎卓と山田朝彦(東芝ソリューション)がモバイル環境でのバイオメトリクス利用のプレゼンテーションとデモを実施した. 新しく成立したのは,監視カメラシステムにおける

バイオメトリクス利用に関するプロジェクトである.類似した2つのNPがあり一方は投票で否決されていたが,ダルムシュタット会議で英国が参加国を強く説得し,成立した.2つの NPの投票コメントを検討した結果,2つを統合し,マルチパート PJ とすることになった.以下のとおり,パート毎に別々の WG が担当することになった.

30137 Use of biometrics in CCTV systems Part 1: Design and specification (WG 4) Part 2: Performance testing and reporting (WG 5) Part 3: Data formats (WG 3)

本プロジェクトの審議には監視カメラに関する専門性が必要になるので,JEITA映像監視システム専門委員会のご協力をいただきながら進める.Part 1 については,WDは未発行であるが,スコープや英国からの寄書に対して,JEITA 専門委員会に協力いただき,寄書を提出した.最も大きなコメントは,CCTV( closed-circuit television ) を VSS ( Video Surveillance System)に変更せよとのコメントである.

2.5 WG 5:Biometric Testing and Reporting(バイオメトリック技術の試験及び報告)

WG 5(コンビーナ:Nigel Gordon(英国),国内主査:溝口正典(日本電気))は,バイオメトリックシステムとコンポーネントの試験に関する標準化を対象とするWGである.テクノロジ評価(Technology Evaluation),シナリオ評価(Scenario Evaluation),および運用評価(Operational Evaluation)までの各レベル,指紋などの各モダリティ,アクセスコントロールアプリケーションなど,種々のタイプの試験に対する試験手順の標準を,19795 シリーズを中心に開発している.2013年度に審議したプロジェクトは 8件,指紋の DB の困難度評価法の TR 29198 が発行された.

19795-2 Amd.1は,日本提案によるテクノロジおよびシナリオ評価に対するマルチモーダルの性能評価に関する Amdで,現在 DAM投票中である. 29120は,19795シリーズに基づく試験の入力や報告を電子的に参照できるようにするためのデータの機械可読フォーマットを定めるプロジェクトである. Part 1 は試験報告のフォーマットを定めるプロジェクトで,しばらく停滞したが,コエディタ山田朝彦(東芝ソリューション)の支援で活動が再開され,現在

IPSJ / ITSCJ NL102別 2014.7 55

Page 56: 別 冊 No. 102 - IPSJ/ITSCJ · との情報共有と. itu-tとの合同作業の可能性 の考慮. 現在日本を含む. 9カ国が参加登録している.コンビ ーナ,セクレタリとも韓国が担当している.

DIS 投票中である.Part 2 はテストの入力データに関するプロジェクトだったが,しばらく停滞の後,ダルムシュタット会議で廃案となった.

30136 は,テンプレート保護性能評価に関するプロジェクトで,ウィンチェスター会議で活動が開始された.まだ,WD段階にあり,用語定義,評価指標の議論が続いている.ダルムシュタット会議では,SC 27 リエゾンから,セキュリティやプライバシーに関する部分では SC 27 の関連規格を参照するようコメントがあった.井沼学(城西大学)がコエディタに就任し,技術貢献している.

29197 は,生体認証に環境因子が与える影響度に関する評価法の標準化で,DIS 段階にある.CEN の出入国自動化ゲート試験への適用が検討されている.

29189 は,鑑定家が指紋画像などでの画質や特徴の抽出処理や,照合結果の確認処理を行う場合の要素,シナリオ,運用の評価法に関する TRで,DTR投票中である.

29156は,安全性/利便性に関する運用要件のガイダンスだが,バイオメトリクス認証のエントロピーの定義についての議論が収束せず,現在 7th WD である.

2.3で述べたとおり,30107-3はWG 5の担当になった.

2.4で述べた30137-2についても,Part 1と同様,JEITA 専門委員会の協力をいただき,BD(Base Document)に対するコメントを提出した.

2.6 WG 6:Cross-Jurisdictional and Societal Aspects of Biometrics(バイオメトリクスに関わる社会的課題)

WG 6(コンビーナ:Mario Savastano(イタリア),国内主査:山口利恵(東京大学))は,バイオメトリック技術を適用する上での社会的側面の領域における標準化を行っている.バイオメトリクスのユーザビリティ向上のため,シンボル・アイコン・図記号を標準化する 24779シリーズが,マルチパートで開発されている.2013年度に審議したプロジェクトは 8件(24779シリーズ以外が 3件),NPが 1件である. a) 24779シリーズ

Part 1 でモダリティ共通の方針を定め,各モダリティについては 19794のパート番号に対応した番号が割り当てられている.Part 1が FDIS,Part 4指紋が DIS,Part 5顔画像がWD,Part 9血管(静脈)画像(エディタ:宇都宮康夫(エスアイリサーチ))が FDISにある.ダルムシュタット会議で DIS以上の文書に対して ITTFエディタから,各パートで定める図記号について ISO/TC 145/SC 3によるレビューを受けよとのコメントがあった.会議ではレビューは必須ではないとの結論になったが,会議後,SC 37事務

局からレビューのための文書作成が各エディタに指示された.

Part 9については,SC 35/WG 4リエゾン池田宏明(千葉大学)の尽力により,IEC/TC 3/SC 3C でPart 9で定める図記号の審議が実施されて,2014年3月に IEC 60417-6260から IEC 60417-6262として発行された.そのため,ISO/TC 145/SC 3によるレビューは受けないことをSC 37事務局と合意した.また,上記 IEC 文書とダルムシュタット会議でのコメント処理結果に差異が生じたため,宇都宮は,FDIS作成を保留し,次回 7 月の会議で WG 内での合意後に FDIS作成する. b) その他

29144 は,IdM(アイデンティティ管理)にバイオメトリクスを利活用する上での考慮点をまとめるTR で,ダルムシュタット会議で DTR が承認され,TR発行待ちである.

29194 は,体の不自由な人がバイオメトリクスを利用する上での考慮点をまとめた TRで,DTR段階にある.

30110 は,子どもたちがバイオメトリクスを利用する上での考慮点をまとめる TRで,WDに停滞している. 大事故対応のための生体認証と ID管理の NPが英

国から提出された.NPに必要な BDが提供されていないため,反対投票を投じた.コメントとしてPreliminary Work Itemとしての議論を提案した.

3. その他

今後の会議予定は,以下のとおりである. 2014年 7月 WG

West Lafayette, Indiana, USA 2015年 1月 WGと総会 未定(Austriaで調整中)

2015年 6月 WG Gjøvik, Norway

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■ SC 38 専門委員会(分散アプリケーションプラットフォームおよびサービス/Distributed Application Platforms and Services (DAPS))

委員長 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

1. 概要

SC 38 が担当する領域は,Web サービス,SOA(Services Oriented Architecture),クラウド・コンピューティングにフォーカスした,分散アプリケーションプラットフォームおよびサービス全般をカバーしている.本年度はクラウド・コンピューティングに関する規格開発に関し,JTC 1内の他 SCとの連携や業界団体からのPAS/Fast Trackの審議はもとより,ITU-TとのCollaboration Team Modeによる共同規格の開発が佳境を迎え,更にクラウド SLA についての新しいプロジェクトが始まるなど,SC 38にとって新しい局面を迎えた年であった.また,特にクラウド・コンピューティング分野について,SC 38内の組織改造も視野に入れた将来の活動に関して検討が始まった. SC 38参加国は,2013年 4月末時点で,Pメンバが 27ヶ国,Oメンバ 8ヶ国であり,本年度は Oメンバ 1 ヶ国が P メンバに昇格となった.リエゾンについては現在もメンバが増加している.Chairpersonは昨年と変わらず Dr. Donald Deutsch(米国),Secretariatは ANSI(Secretary: Marisa Peacock)である. SC 38の中に組織されているWGは以下の通り. ・ Working Group 1: Web Services ・ Working Group 2: Service Oriented

Architecture (SOA) ・ Working Group 3: Cloud Computing

2013年度に開催された SC 38 総会は以下の 2回である.それに併せてWG会合が行われた. ・ 2013-04-08/12 マドリッド(スペイン) ・ 2013-09-23/28 神戸(日本)

2.主なプロジェクトの進捗状況

2.1 クラウド・コンピューティングに関する ITU-Tとの共同規格開発(SC 38/WG 3)

以下の 2つが ITU-Tと Collaboration Team (CT) Modeにより共同で規格開発が行われている. ・ ISO/IEC DIS 17788 - Cloud Computing –

Overview and Vocabulary ・ ISO/IEC DIS 17789 - Cloud Computing -

Reference Architecture

どちらのプロジェクトも JTC 1 Standing Document 3 (SD3) - Guide for ITU-T and ISO/IEC JTC 1 Cooperationを参照して開発が行われているが,SD3自身の記載が不十分(未記載や不明箇所など)なため,また Convenorの Directivesについての理解不足も相まって混迷を極めている.SD3の不備については JTC 1 SWG on Directivesに報告され改訂作業が行われている.更にそれをきっかけとして JTC 1と ITU-Tとの協調作業のあり方について本質的な検討が JTC 1/SWG on Managementで行われている. 国際会議は SC 38側(2回)と ITU-T SG13側で

交互主催となり,結果,2~3 ヶ月に一度国際会議が開催されるなど多大な労力が払われているが,現在DIS段階まで進んでいる.

2.2 クラウド・コンピューティングの SLA枠組みの国際規格開発(SC 38/WG 3)

・ ISO/IEC NP 19086 - Cloud Computing – Service Level Agreement (SLA) Framework and Terminology

クラウドサービス・プロバイダーとクラウドサービス・カスタマー間の共通理解を促進するためにクラウドサービスの SLA の枠組みを定義し概説する NP が成立し,国際規格の開発が始まった.日本は経産省と総務省が既に公開している以下のガイドラインとの齟齬を減らすべく共同エディタを立て積極的に参加している. ・ クラウドサービスレベルのチェックリスト(経産省)

・ クラウドサービスの安全・信頼性に係る情報開示指針(総務省)

2.3 SOA Reference Architecture規格開発(SC 38/WG 2)

一般ユーザ向けに 2012年に出版された SOAを概説した TR(ISO/IEC 30102)を元に,SOA 実装者向けにSOAを解説した以下の ISがCD段階に進んだ. ・ ISO/IEC WD 18384-1, Reference

Architecture for Service Oriented Architecture (SOA) - Part 1: Terminology and Concepts for SOA

・ ISO/IEC CD 18384-2, Reference Architecture for Service Oriented Architecture (SOA) - Part 2: Reference Architecture for SOA Solutions

・ ISO/IEC CD 18384-3, Reference Architecture for Service Oriented Architecture (SOA) - Part 3: Ontology for SOA

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特に Part-3は TRからの拡張であり,Category A Liaison になっている業界団体の The Open Groupと OASISからの寄書を基に開発が行われている.

2.4 SC 38の将来の活動に関して

SC 38 も 4 年の年月を過ごし,対象となる参照アーキテクチャの国際規格開発に目処が付き一段落した感がある.ついては今後の作業領域,特にクラウド・コンピューティング分野について,SC 38内の組織改造を視野に入れ,更なる New Work Item の可能性を検討すべく新たに SC 38 Study Group on Future Work(SG-FW)を設立し SC 38の将来の活動に関して検討を加えている.

2.5 他の JTC 1/SCや業界団体との協調

SOAやクラウド・コンピューティングなど SC 38が担当している領域は,ITU-Tとクラウド・コンピューティングの分野で共同国際規格開発を行っているように,一つの閉じた機能領域に留まらない.ゆえにJTC 1の中でも他の SCの活動と競合することがある.現在 SC 7,SC 27,SC 32,SC 39,SC 40などとリエゾン関係を結び情報共有を図っている. 更には SC 38 が担当する技術領域は業界団体の標

準化活動が最も盛んな領域であり,SC 38自身が規格開発を行うよりも,業界団体が実ビジネスの中で開発した業界標準を,JTC 1 Category A/C Liaisonとなり PAS や寄書を通じての提案など,既に業界で標準化された仕様を国際規格として審議するケースが多い.

3.その他

SC 38専門委員会は CJK-SITE(日中韓情報電子技術国際標準化フォーラム)の中で SC 38 に焦点を当て設置された DAPS アドホックの日本側の対応窓口となり,中韓とその都度会合を持ちながら SC38国際会議に向けた寄書提案の事前協議や情報交換を行っている. また,ITU-T側のクラウド・コンピューティング国際規格開発について,日本国内の情報共有を目的として委員長の鈴木俊宏が情報通信技術委員会(TTC)AG-Cloud会合に定期的に参加している.

■ SC 39 専門委員会(IT と社会の持続可能性/Sustainability for and by Information Technology)

委員長 椎野 孝雄((株)野村総合研究所)

1. 概要

SC 39専門委員会は,いわゆる「グリーン IT」をスコープとしたSCとして,2012年6月に発足した.具体的には2つの WG で活動を行っており,WG 1はデータセンタの資源効率を,WG 2はグリーン ICTとして,データセンタから端末までを含む情報システム全体の資源効率を扱っている.まだ,IS 化されたものはない. 参加国は,Pメンバ 19カ国,Oメンバ 4カ国であ

り,アクティブな参加国は,日本,韓国,米国,カナダ,英国,ドイツ,オランダ,フランス,フィンランドである.SC 39のチェアは米国,セクレタリはANSI,WG 1 のコンビナーは米国,WG 2のコンビナーは韓国,WG 1傘下のアドホック会議のコンビナーは日本である.

2013年度の SC 39 総会は 5 月にアイルランドのダブリン郊外で,WG 1/WG 2の F2F会議は 10月にパリで開催された.これ以外に,WG 1 電話会議,WG 2電話会議,アドホック電話会議が毎月 1回開催されている.

2. 主なプロジェクト進捗状況

2.1 WG 1(資源効率の良いデータセンタ)

2.1.1 データセンタの KPI(ISO/IEC 30134)

本プロジェクトは,データセンタの効率指標(KPI: Key Performance Indicator)の定義の IS化を扱っている.現在,以下の2つのプロジェクトについては,CDレベルとなり,コメント募集と改定が行われることになった. ・ ISO/IEC CD 30134-1 Overview and general

requirements ・ ISO/IEC CD 30134-2 PUE(Power Usage

Effectiveness) 2014年 5月から 3か月の CD2のコメント募集が

始まる.30134-1は英国がエディタ,30134-2は米国がエディタだが,コメントに対する修正作業が遅れ,CDの開発期間を 9か月延長することになった.日本も 30134-2については,部分的にコエディタとなり執筆に参加すると共に,国内委員会や関連業界団体での検討を行い,多くのコメントを提出した. 以下の3つのプロジェクトについては,日本から

2014年 2月に NWIPが提出され,5月までの投票結

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果,30134-3(REF),30134-5(ITEEsv)の NWIPが承認された.

NWIP が承認されなかった,30134-4 ITEUsv については各国委員との交渉の結果,今回提案したWDを若干修正しリバロット(再投票)することとした. ・ ISO/IEC 30134-3 REF (Renewable Energy

Factor) ・ ISO/IEC 30134-4 ITEUsv (IT Equipment

Utilization for servers) ・ ISO/IEC 30134-5 ITEEsv (IT equipment

Energy Efficiency for servers) REFについては,自然エネルギーの定義について各エキスパートの意見がまとまらず,ITEEsv,ITEUsvについても IT 機器の性能のベンチマーク手法について各エキスパートの意見がまとまらず,合意形成に時間を要した.現在 NWIPと共に WDも提出しており,コメント募集も行っている.このコメントを反映させ,2014年度は CD投票に持ち込む予定.

NWIP提出の前段階での検討のために,アドホック会議が設けられ, その他の KPI候補が検討されている.サステナビリティがテーマということで,エネルギーについても空調だけの KPI(CER),排熱利用のKPI(ERF),水資源の効率的利用度 KPI(WUE),炭素利用度 KPI(CUE)などが提案されているが,エディタを引き受けるエキスパートが現れず,進捗が遅れている.

2.1.2 データセンタのタクソノミー(ISO/IEC NP 30131)

カナダのエディタを中心に,データセンタ関連の用語集と用語の関連が 2015 年の完成を目標に作成されている.用語の洗い出しとデータベース化が完了し,今後ドキュメント化に入る.完成までの期間は 9か月延長する予定.

2.1.3 高効率データセンタのガイドライン(ISO/IEC NP 30133)

ITU-Tとのリエゾンを参考にしながら,SC 39として,高効率データセンタのガイドラインをまとめる.期間を 2016年までに延長する予定.

2.1.4 データセンタの KPI の統合化(Holistic Approach)

複数の KPI を組み合わせてデータセンタの総合的なサステナビリティを評価する手法が提案され,アドホック会議での検討が進み,NWIP として提出予定.韓国と日本の共同でWDを作成し,TRとして提出予定.データセンタの環境関連指標に限定した統合化ではあるものの,データセンタの総合的指標でありラン

キングや格付けに使われると勘違いされやすく,明確な位置づけ,使い方を示すことが重要になっている.

2.2 WG 2(グリーン ICT)

コンピューティングのモデルのエネルギー効率の評価手法(ISO/IEC NP 30132-1) 韓国のエディタを中心に,分散・集中など各種コン

ピューティングモデルのエネルギー効率を比較・計算する手法を開発している. TRとして発行の予定.

3. その他

ISO/IEC における標準化作業に慣れていないエキスパートが多く WG に参加しており,意見の集約がなかなか進まなかったり,修正作業が期日までに行われなかったりした.また,各国のエキスパートは本業で忙しく作業時間が取れないとのことで,プロジェクトの数を絞りたいという意見も出た.ただ,日本提案については期日を守った対応をしており,早急の検討を望んでいる.2014年 5 月の SC 39総会では,このような進め方についての議論もなされた.今後の円滑な進捗に期待したい. ■ SC 40専門委員会(ITガバナンス及び ITサービ ス 管 理 /IT governance and IT service management)

委員長 平野 芳行((独)情報処理推進機構)

1. 概要

この委員会は,2013年 11月の JTC 1総会で「ITガバナンス及び IT サービス管理」のタイトルのもとに新たに設立された SCである.ITガバナンスは,ここ数年,JTC 1/WG 6の設置に始まり,2012年の総会決議に基づく SC 7/WG 40 の併合,更に,2013年の総会決議に基づき,SC 7/WG 25及び SC 7/WG 27 の統合によって形成され,2014 年 2 月に活動を開始した.そのため,各WG の活動は,2013年 11月までは,旧組織に基づくものがほとんどで,新組織では,電話会議で,体制整備,作業項目の確認を行い,継続案件の投票をできるだけ遅滞なく進めることであった. その適用範囲は,以下のとおりである.

a) IT ガバナンス及び IT サービス管理に関する標準,ツール,枠組み,ベストプラクティス及び関連する文書の作成を行うこと.その IT 活動領域には,監査,ディジタルフォレンジック,ガバナンス,リスクマネジメント,アウトソーシング,サービス運用及び

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サービス維持が含まれるが,SC 27及び SC 38の適用範囲及びその既存の業務によってカバーされる項目は除外される. b)この業務には,以下のことが含まれる. ・ ITガバナンス:ISO/IEC 38500シリーズ及び関連文書の作成

・ ITガバナンスの運用面:ISO/IEC 30120シリーズの業務,事業イノベーション領域のガバナンスの役割と同様に IT管理とのインターフェース

・ ITサービス管理及び ITを使ったビジネスプロセスに関連した領域

新たな SCの幹事国及び議長は,それぞれ,豪州, John Sheridan(豪州)が指名された. その組織は,従来の 3 つの WG を継承するかたち

で以下の 3つのWGの設置が決まった. ・ WG 1: Corporate governance of IT ・ WG 2: IT service management ・ WG 3: IT-enabled services/Business

process outsourcing また,この分野でそれぞれ担当するプロジェクトについても確認が行われ,WG 1で 5件(審議中 4件),WG 2で 10件(審議中 4件),WG 3で 5件(すべて審議中)となった.SC 40関係で発行された文書としては,TRが 3件である. この中で,日本が担当しているエディタは以下のと

おりである. ・WG 1 38500 コエディタ 平野芳行(IPA) ・WG 1 30121 エディタ 原田要之助(情

報セキュリティ大学院) ・WG 3 30105-3 コエディタ 清水裕子(エイ

チアールワン) ・WG 3 30105-4 コエディタ 近野章二(日立

製作所) ・WG 3 30105-5 コエディタ 近野章二

2. 主なプロジェクト進捗状況

現在の主なプロジェクトの進捗状況は,DIS 1 件(38500の改訂),CD 2件(30105-1,30105-3),DTS 1件(38501は発行前),DTR 2件(20000-9, 20000-11),PDTR 1件(30120)となっている. また,2013年度には 3件の TRが発行された. その他は,WDレベルの審議段階である.各規格の

状況は各WGの活動の中で紹介していく.

2.1 WG1(ITガバナンス/Governance of IT)

2013年の JTC 1総会で,このWGを含む新 SCが誕生することになり,数か月活動が止まることになった.ここに記載したのは,JTC 1/WG 8時代の活動である.

JTC 1/WG 8として第 1回会議,シドニーで開催され,第 2回が 2013年 8月 19日~22日に日本・東京で開催された.主査は,Phil Brown(英国)が務め,Secretary は今回から Jenny Mance(豪州)が務めた.この会議には,参加国 9か国,リエゾン1,で合計 30名(電話での出席者 4名を含む)が出席した.この WGでは,両WG の担当である,ガバナンスのツール及び枠組を含めた IT のガバナンスに関する標準及び関連文書を作成することを業務範囲となっている(ただし,SC 7の業務範囲にある,マネジメント,アーキテクチャ,ポートフォリオのマネジメント活動は除外する). そして,今回移管されたWG 1関係の 5つのプロ

ジェクトの進捗は以下のとおりである. a) 38500 の改訂について,DIS 投票にかかり承認された.エディタは,J. Graham(豪州),コエディタとして平野(日本)である.次回 6月の会議でDISのコメントを審議する予定.

b) TS 38501(GIT-Implementation guide)は,DTSは承認され,発行待ちの段階である.

c) TR 38502(GIT-Framework and Model)は,2014年 2月に発行された.

d) 30120 ( IT Audit-Audit Guideline for Governance of IT)は,原田が韓国,ニュージランドと共にエディタをしているが,修正したPDTR ドラフトが,調整が取れなかったため,現状のまま,PDTR にかけることで,シドニー会議を打ち合わせる予定になった.

e) CD 30121(Governance of Digital forensic risk framework)は,DIS投票が承認された.その後,進捗は不明である.

d) その他NP提案などあったが,2013年11月の JTC 1 総会で,再度組織の変更があったため,新規案件は,ほとんど再度やり直すような状況になっている.

2.2 WG 2( IT サービス管理/ IT service management)

WG 2(主査:八木隆[日立製作所],幹事:岡崎靖子[日本 IBM])では,IT サービス管理に関する規格やガイドの制定に取り組んでいる. モントリオール会議及びピサ会議には各 3 名が出

席した. 第 1部が改訂されたことに伴い,既存の各部の改訂及び新規案件の作成を進めている.加えて,2013年度からは,第1部の次期改訂に向けた Study Groupが発足され,日本からも 3名が参加している. 第 3 部(適用範囲の定義と適用のガイド,初版は

TR)は,2012 年 8 月に発行された.第 4 部(プロセス参照モデル,TR)は,初版を一部修正した WD

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が提出されたが,2012年春以降進展はない.第 5部(計画案の例,TR),および,第 10部(概念及び用語,TR)は,2013年 10月に発行された.第 11部(ISO/IEC 20000-1 と ITIL(IT Infrastructure Library)のマッピング,TR)は,著作権上の調整で2012年度末から DTR投票前で止まっている. 第 6部(サービスマネージメントシステム認定機関

への要求事項)と第 8部(小規模組織への適用ガイド,TR)の NPが 2013年 11月に通過した. 第 9部(ISO IEC 20000-1のクラウドへの適用の

手引,TR)は,内容に関して各国間のコンセンサスが取れないため,IS ではなく,TR となり,DTR 段階である. また,ISO/IEC TR 90006(ISO/IEC 9001を ITサービス管理に適用するための指針)は,2013年 5月に SC 7/WG 23から当WGに移管され,2013年10月に発行された. このように ISO/IEC 20000シリーズは次々に拡大されてきたが,策定・審議母体が,SC 7/WG 25から新設の SC 40/WG 2 に移ったことで,2014 年 6月の初回 SC 40 Plenaryにて,再整理される可能性がある.

2.3 WG 3(ITを使ったビジネスプロセスアウトソーシング/IT enabled services ― Business Process Outsourcing (ITES-BPO))

WG 3(主査:清水裕子,幹事:榎本義彦[日本 IBM] 近野章二)では,ITES/BPOに関する規格の審議を行っている. モントリオール会議,チェンナイ会議(インド,

2013年 10月)にはそれぞれ 2名が出席した. ITES/BPOの標準化は,ビジネスプロセスアウトソ

ーソシングに関して,サービスプロバイダがなすべき作業を定めるもので,2010年度からWD作成が進んでいる.国内では 2011年 5月に国際に対応してWG 27小委員会を新設して検討を開始している.

2013年度は,構成を 6パートから 5パートに変更し,国際電話会議も重ね,ドラフトレビューを行ってきた.5 パートは,PART 1: Process Reference Model, PART2: Process Assessment Model, PART 3: OMM & Measurement Framework, PART 4: Terms & Concept, PART 5: Application of Assessmentである.NWIPから時間が経過しており進捗が思わしくないが,2014年 4月に予定しているCDに向けて最終確認に入っている. また,2014年度秋の中間国際会議を日本で開催す

べく,計画を策定した.

3. その他

ここ数年,IT ガバナンス関係は,毎年のように組織改編が行われたため,プロジェクトの進捗に結構影響を与えていた.新しい SCが組織されたため,やっと安住の地を得た感じである.今後は,スムーズにプロジェクトが動くようになることを期待している. 今年の秋の SC 40/WG 3の国際会議を日本・東京

で開催する予定である.

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第2種専門委員会

■ 学会試行標準専門委員会

委員長 小町 祐史 (国士舘大学)

1. 経緯

情報処理学会試行標準は 2001 年度から始まった制度であり,国際規格を作成するための準備段階の技術仕様,または情報技術分野における規格開発,研究開発,もしくはシステム開発に有用な技術情報を学会試行標準(以降,試行標準または TS)として制定し,学会のウェブ https://www.itscj.ipsj.or.jp/hasshin_joho/hj_shiko_hyojun/hj_sh_list/index.html に公開して,その利用,普及および評価を促進することを目的とする. これまでに 14 件の試行標準(IPSJ-TS 0001~

0014)が制定・公開され,既にその幾つかは国際規格として発行され,国家プロジェクトにも利用されている.2013年度には,1件のNPが提出され,IPSJ-TS 0014が制定された.

2013年度に7回開催された試行標準専門委員会に報告された専門委員会の活動および WG の主な活動を次に示す.

2. 作業内容

2.1 試行標準のウェブ

情報規格調査会のウェブのリニューアルに伴い,試行標準専門委員会のウェブの見直しと更新とが行われた.主な変更は,各 TSに概要が付記されたことである.TS 0001, 0003, 0004, 0006, 0009, 0011, 0012, 0013, 0014については,TSを担当した主査に概要を執筆いただき,それ以外の TS については,専門委員長が概要を執筆した. 委員・賛助員がアクセスできる学会試行標準専門委

員会のページには,2001年 12月の第 1回委員会以降のすべての議事録を掲載することにした.議事録は年度ごとにまとめて ZIPアーカイブされている.

2.2 新規課題の検討

石崎委員から次の 2 件の新規課題の検討提案があった.

(1) コーパスの構築・記述 (2) E-learning,遠隔教育のための情報技術

(1)については,専門用語の分析を行っている筑波大学の関洋平先生を柏野委員から紹介いただき,委員登録を行った.その後,関委員を中心として NP提案の検討を行い,行政サービスの評価分析のための語彙体系における型・要素の記述方式を表題とする NP提案文書を技術委員会に提出した.それは,2014年 4月の技術委員会で承認され,新 WG の設立の検討も開始された.その NPのスコープと効果は,次のとおりである. スコープ 行政サービスについて,ソーシャルメディアに

現れる評価を分析するための,語彙体系の具体的な型および対応する要素,並びにその関係を記述する方式. 効果 多様な組織において提供されるサービスの評価

分析のための語彙体系を統一的に記述できれば,さまざまな組織が,自らのサービスを改善するための情報の発信や市民とのコミュニケーションに基づくフィードバックの分析を一貫して行うことが可能となる.ひいては,職員の質の向上や新たなサービスの提供に基づく価値の創発が期待できる.

(2)については,遠隔教育のための IT技術分野の動向が活発化していることを確認し,しばらく関連業界・学会の活動を調査してから,NP 提案を検討することにした.

2.3 WG 1: 情報技術用語(主査:大野義夫)

以前から登録されたままのメンバに対して継続確認を行い,新規メンバを加えて,WG1メンバの更新を行った.昨年度に改訂された TS 0001「情報技術用語データベース」に対して,新たに公開された TSおよび JISについての用語の追加を行う.利用者からの追加要求提案は少ないと思われるので,追加すべき用語案はWG1で検討することにした.

2.4 WG 2: 文字図形識別情報(主査:黒田信二郎)

WG 2 主査を黒田委員に変更することを規格役員会に申請し,受理された.TS 0002「文字図形識別情報」の改訂に伴い, ISO 10036 Registration Authorityに対してグリフの登録作業を完了し,グリフ識別子を確定した.その情報を含めて,TS 0002の改訂原案を作成し,何度も技術委員会への原案提出を行おうとしたが,その度に編集上の問題点が見つかり,2013年度末にはまだ技術委員会の承認を受けるに至っていない.

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TS 0010「文字図形間の構造的距離 ― 定義とその算出法」についても,改訂の必要があるので,実施計画を示すことにした.

2.5 WG 3:日本語電子化辞書形式(主査:柏野和佳子)

昨年度に設立された TS 0016「代表性を備えた均衡コーパスに基づく日本語辞書の用例の記述方式」のプロジェクトにおいて,TS 原案の策定が行われている.コーパス分析の強みを生かし,表記情報を充実させるための記述方式とその例とが検討され,この TSに含まれる言葉の使用域の一つである「古風な語」の辞書記述方式が示された.

2.6 WG 4:音声言語処理インタフェース(主査:新田恒雄)

1月の委員会において,「マルチモーダル対話システムの Java Scriptによる記述を行った.次回に新課題提案の文書を提出し,それを技術委員会に提出して承認を受ける.」との報告を受けたが,その後の活動はまだ報告されていない.

2.7 WG 6:レスポンシブリンク(主査:山﨑信行)

昨年度に設立された TS 0015「ディジタル通信用高機能伝送路符号4b/10b」のプロジェクトにおいて,その技術の評価を完了し,その実装が報告された.1月の委員会において,次回に TS原案を提出するとの報告を受けている.

2.8 WG 8:磁気記録データの完全消去方式(主査:竹内正)

TS 0014「磁気記録データ完全消去方式及びそのための測定方式」の原案は,2013年 5月の技術委員会に提出され,承認された.このTSの構成を次に示す.

序文 1. 適用範囲 2. 引用規格 3. 用語及び定義 4. バルクイレーズ方式のデータ完全消去及び測定

5. オーバライト方式のデータ破壊及び測定 解説 その後この TSに対して,附属資料(参考)として,

磁気消去マーカに関する情報を追加することにした.附属資料の原案が作成され,そのレビューを行った結果,マーカの色の時間的変化を明示することにした.

■ クラウドセキュリティ・コントロール標準化専門委員会

委員長 山﨑 哲(工学院大学)

1. 概要

1.1 本専門委員会の位置づけ

「クラウドセキュリティ・コントロール標準化専門委員会」は,クラウドコンピューティングにおける情報セキュリティの国際標準を開発することを目的として,2012年度に情報規格調査会に設置された.活動期間は 2014年度までの 3年間である. 国際標準化組織では,ISO/IEC JTC 1/SC 27/WG 1(注 1)において,クラウドコンピューティングにおける情報セキュリティの国際標準である ISO/IEC 27017(注 2)の開発に着手している.対応する国内組織は SC 27/WG 1小委員会である.本「クラウドセキュリティ・コントロール標準化専門委員会」は,ISO/IEC 27017の開発を担当する国内組織であり,SC 27/WG 1 小委員会を通して国際標準開発に貢献している. 注 1)SC 27:ITセキュリティ技術(IT Security

techniques),WG 1:情報セキュリティマネジメントシステム(Information security management systems, ISMS)

注 2)ISO/IEC 27017 Information technology -- Security techniques -- Code of practice for information security controls based on ISO/IEC 27002 for cloud services

クラウドコンピューティングにおける情報セキュリティに関して,日本では,2010年から,経済産業省の下で利用者向けガイドラインの検討が進められてきた.その成果が「クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン」(2011年 4月 1日)として公表されている.

http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110401001/20110401001.html

このガイドラインの内容を国際標準とすることを日本から ISO/IEC JTC 1/SC 27へ提案し,これが採用されて現在の ISO/IEC 27017の開発に至っている.

1.2 クラウドコンピューティングにおける情報セキュリティの標準化の必要性

組織において,情報セキュリティの維持とは,その組織が保有し取り扱う情報について「機密性」,「完全性」および「可用性」を確保するという課題である.この課題に取り組むため,ISO/IEC 27001で規定する情報セキュリティマネジメントシステム(以降,

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ISMSと記す)の導入などの施策が多くの組織で採られてきた.ISMSは,組織が保有し取り扱う情報を自らが直接に管理する場面を主に想定し,その要求事項を定めた標準である.ところが,組織の活動においては,事業判断に基づき外部の資源やプロセスを活用する「外部委託」が通常のこととして行われている.組織が業務に活用する情報システムの開発や運用を外部の事業者に委託したり,既存の情報処理サービスを調達して利用したりする,さまざまの外部委託の例がある.このような場合は,組織の情報を,委託先に預けたり,取り扱わせたりするため,情報の安全管理の施策が組織内では完結しない.そのため,ISMSにおいても,その管理策で,第三者との契約等の要求事項を定めてこの状況に対応している. クラウドコンピューティングの利用は,組織における「外部委託」の一つの形態であることから,第三者との契約等による情報セキュリティの対応は,クラウドコンピューティングを利用する場合にも意味がある.しかし,クラウドコンピューティングの場合,その特徴に由来する情報セキュリティへの対応の難しさがある.利用組織に ITの専門知識を求めないこと,情報処理センターの資源を多数の利用組織で共有することにより効率的で変化に柔軟に対応するサービスが実現されること,グローバルなネットワークを駆使してサービスが提供されることなど,総じて利便性の高いサービスが提供されるという特徴がある.その反面,事業者が実施している情報セキュリティ対策やその妥当性が利用組織には把握しにくいこと,サービスが法域を超えて提供される場合に適用される法令との整合性に留意すべきこと,などの課題もある.ISO/IEC 27017は,この課題への対応の支援を目的として,クラウドコンピューティングにおける情報セキュリティマネジメントの指針を提示するものである.

1.3 ISO/IEC 27017の特徴

ISO/IEC 27017は,27000ファミリー標準の一つとなる.27000 ファミリー標準は,その中核に二つの標準がある.マネジメントシステムを定めたISO/IEC 27001と,体系的な情報セキュリティ対策を 「 管 理 策 ( control ) 」 と 「 実 施 の 手 引(implementation guidance)」で示した ISO/IEC 27002である.管理策は,ISO/IEC 27001の附属書にも掲載され,これら二つの標準が密接に繋がるものとなっている. ISO/IEC 27017 は,これを利用する組織がISO/IEC 27002とあわせて利用する.どの組織にも適用できる汎用の ISO/IEC 27002 に対して,ISO/IEC 27017は,クラウドコンピューティング向けに管理策と実施の手引を追加するものである.利用

組織は,ISO/IEC 27001や ISO/IEC 27002での経験を基礎に,クラウドコンピューティングの要件に対応する指針を ISO/IEC 27017に求めることができる.

1.4 関連する国際標準化活動との連携

ISO/IEC 27017の開発は次の国際標準化活動と深く関係するものであり,これらの組織の支援を得て,相互に整合性のある国際標準の開発を進めている. ・ ISO/IEC JTC 1/SC 38(Distributed application

platforms and services)におけるクラウドコンピューティングに関する国際標準 ISO/IEC 17788及び ISO/IEC 17789(注 3)の開発

・ ITU-Tにおけるクラウドコンピューティングにおける情報セキュリティに関する国際標準X.1601(注 4)の開発

注 3)ISO/IEC 17788 Information technology -- Cloud computing -- Overview and vocabulary ISO/IEC 17789 Information technology -- Cloud computing -- Reference architecture

注 4)Recommendation ITU-T X.1601, Security framework for cloud computing

2. 作業内容

本専門委員会では,ISO/IEC 27017の開発に関して,国内活動と国際活動を行っている. a) 国内活動:ドラフトの検討及び意見書案の策定 国際の ISO/IEC JTC 1/SC 27/WG 1 においてISO/IEC 27017の検討が行われ,そのドラフトが年2回更新される.このドラフトを本専門委員会において検討し,日本の意見書案を策定している.意見書案は,国内の SC 27/WG 1小委員会を通して,日本の意見書として承認される. 本年度は,Working Draft(WD)の段階にあるISO/IEC 27017の構成及び主要な内容を確定することを目的として,本専門委員会において ISO/IEC 27017 5th WD(2013年 6月)及び 1st CD(2013年 12月)を検討し,日本の意見書の策定・提出等を行った.専門委員会会合は,14回開催している. b) 国際活動:国際の ISO/IEC JTC 1/SC 27における審議への参加 国際の ISO/IEC JTC 1/SC 27会議(年 2回,通常4月及び 10月)における ISO/IEC 27017編集会議にプロジェクト責任者(editor)を派遣し,審議の運営・推進を行っている. また,国際の ISO/IEC 27017編集会議に検討メンバとして本専門委員会の委員が参加している. 本年度は,2013年 4月にソフィア・アンティポリス(フランス)で,10 月に仁川(韓国)で開催され

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た SC 27会合における ISO/IEC 27017の編集会議に参加した. 本年度の作業では,ISO/IEC JTC 1/SC 38 及びITU-Tで開発している国際標準(1.4項参照)を前提とした記述の整備と ISO/IEC 27002との整合性の向上に,日本を含む各国が注力した.

3. 今後の展開

3.1 出版の日程等

来年度以降,2nd CD, DIS, FDISの検討を経て,2015 年秋に ISO/IEC 27017 を ISO/IECと ITU-Tの共同文書として出版する計画である.

3.2 分野別 ISMSガイドラインの整備

ISMS認証基準の ISO/IEC 27001は,すべての組織に適用し得る,汎用の認証基準である.これに対し,ISO/IEC 27017は,クラウドコンピューティングの利用組織及び事業者に対して ISO/IEC 27001 に追加する指針を提供する国際標準である.このような位置づけの国際標準は ISO/IEC 27017 の他にもISO/IEC 27010(注 5),ISO/IEC 27011(注 6)等があり,「分野別 ISMSガイドライン」と呼ばれている.この状況を受けて,分野の特徴に合った ISMS認証を可能とする枠組みを新たな国際標準として定める動きが 2012年 10月に国際のSC 27で提案され,現在,ISO/IEC 27009として検討されている.この構想が実現すれば,「クラウドコンピューティングサービス提供の特徴を加味した ISMS認証」等が成立することとなる.ISO/IEC 27017もこの枠組みに対応するものとなることを予め想定し,ISO/IEC 27017 で定める「管理策( control)や「実施の手引(implementation guidance)」を,ISO/IEC 27009で定める枠組みに合致するものとすることに特に留意していく. 注 5)ISO/IEC 27010, Information technology

-- Security techniques -- Information security management for inter-sector and inter-organizational communications

注 6)ISO/IEC 27011, Information technology -- Security techniques -- Information security management guidelines for telecommunications organizations based on ISO/IEC 27002

■ 光ディスクの期待寿命推定方法に関する国際標準化専門委員会

委員長 谷口 昭史(パイオニア株式会社)

1. 経緯と事業概要

SC 23 専門委員会において審議を始めた ISO/IEC 16963 に記録形 BD を包含するための改訂活動に関して,本年度は経済産業省の「平成 25年度戦略的国際標準化加速事業」に応募し,下記の事業名で採択された. ・ 事業名:「社会ニーズ(安全・安心)・国際幹事

等輩出分野に係る国際標準化活動”(デジタル情報を恒久的保存するための光ディスクの期待寿命推定方法に関する国際標準化)」 本事業の目的は,デジタル情報のアーカイブ保存メ

ディアとして期待されている種々の光ディスクの期待寿命推定試験方法を統合的に取扱うことができる国際標準規格を策定することにある. 本目的を達成するために CD(Compact Disc),

DVD(Digital Versatile Disc)の期待寿命推定試験方 法 ( ISO/IEC 16963:2011, Information technology -- Digitally recorded media for information interchange and storage -- Test method for the estimation of lifetime of optical media for long-term data storage; 以後 ISO/IEC 16963と称す)に,新たに BD(ブルーレイディスク,Blu-ray DiscTM)を追加した改訂を行うことで,既存光ディスクを統合的に取り扱うことが出来る光ディスクの期待寿命推定方法の国際標準規格を策定するものである. 本事業を推進するため,情報規格調査会では平成

25年 7月に技術委員会の下に第二種専門委員会を組織し,「光ディスクの期待寿命推定方法に関する国際標準化専門委員会」として活動することとなった.本専門委員会のメンバは,国内の光ディスク関連業界から専門家および有識者(メディアメーカ,ハードメーカ,大学,試験機関など)を多数集めて構成し,BDディスクに適した加速試験のストレス条件や試験データの統計的解析手法,評価パラメタ等の規定内容の審議を行った.規格原案は,SC 23専門委員会と連携を取りながら日本提案として,ISO/TC 42(写真),ISO/TC 171/SC 1(文書管理)との合同国際会議(ISO/IEC JTC 1/SC 23/JWG 1 with ISO/TC 42 & ISO/TC 171/SC 1;以後 JWG 1会議と称す)で規格原案にフィードバックし,WD,CD,DIS と規格ドラフトの完成度を上げ,来年度に国際標準規格として策定する予定である.

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2. 作業内容

2.1 実施内容

平成 25 年 7 月から平成 26 年 2 月末までに,ISO/IEC 16863の改訂審議および光ディスクの期待寿命推定法の実証実験検討のため本専門委員会 6回,Ad-hoc会議 2回の計 8回の会議を開催した.さらに,SC 23専門委員会(SC 23 JNB)と連携して JWG 1国際会議を 5月のソルトレイクシティ(米国),9月の東京,および 2014年 2月のモントレー(スイス)で計3回開催し,ISO/IEC 16963規格の改定に関する国際審議を日本として主導した. また,規格化審議と併行して,外部専門機関で実証

データ確認のための加速試験を実施し,得られた試験データを基に規定内容の妥当性を確認した.実証データ確認実験は,国際標準に規定する様々なストレス条件での加速試験を行う必要があり,専門の設備や測定環境が必要であるため,本委員会にて外注機関としてADTC(特定非営利活動法人アーカイヴディスクテストセンター)および大阪産業大学を選定し,実施した.

2.2 規格改定の概要

ISO/IEC 16963の 1st editionは 2011年 10月に発行され,ディスクから再生されたデータのエラー率があるしきい(閾)値を超えた時点をそのディスクの故障時間(寿命)とし,高温・高湿の加速環境条件下での複数のサンプルの故障時間のデータから実使用環境条件下での寿命を統計的に推定する方法を提供している. 今回の改定による主な変更項目を以下に説明する.

a) BD(Blu-ray™ディスク)を対象ディスクに追加 本規格の対象ディスクとして 1st edition でのCD-R/RW ディスク,DVD-R/RW/RAM ディスク及び+R/+RWディスクに加えて,2nd edition では新たに BD Recordable / Rewritableディスクを加えている.BDの故障時間を判定するデータエラー率としては,ランダムシンボルエラーの最大値(Max RSER)を用い,Max RSER が 10-3を超える時間を故障時間としている. b) 加速環境条件がディスクにとって破壊条件にな

る場合の取り扱いの追加 1st edition では,高温・高湿の加速環境条件を規定しているが,加速環境条件の一部の条件下で被測定サンプルが破壊されてしまう場合の取扱いを規定しておらず,そのような場合には寿命推定ができない.2nd editionでは,高温高湿で破壊されるサンプルでも実使用条件での寿命は存在するとの観点で,より穏やかな代替条件を使って加速環境試験を行ってもよいことを追記した.具体的には,サンプルの破壊には温度条件のほうが湿度条件よりも支配的であるため,

温度 85℃を使う条件を 80℃にするなどの代替条件を呈示している.これらの具体的な条件は推奨値で,試験時間の増大を厭わなければ必要に応じてさらに穏やかな条件を用いることも妨げてはいない. c) 加速環境条件下でも全サンプルが寿命に到達し

なかった場合の取り扱い方の追加 1st editionでは,各加速条件下で 20ないし 30の複数の被測定サンプルを保持し,その故障時間を測定して寿命推定を行っているが,一部のサンプルが規定の保持時間を超えても故障時間に達しない場合には,寿命推定ができない.結果として,全てのサンプルが故障時間に達するまで加速試験を継続しなければならない.これを解消するために 2nd editionでは,対数正規分布を仮定して得られている故障時間のデータから得られていない故障時間をメディアンランクの上位データとして補完して計算する手法を呈示している.ただし,実際よりも推定寿命が長くなるおそれもあることから推奨(Informative)となっている. d) 寿命を統計的に推定する計算手法として,最尤法

を用いて区間推定まで行うことの明確化 1st edition では,加速係数法と最尤法を併記していたが,検討の結果,煩雑と考えられた最尤法での計算が規格のユーザでも可能であることが判明したことから,最尤法を主たる計算手法としている.なお,加速係数法も 1st editionを用いて得られた推定寿命との比較が必要となる場合などを想定して記載を残している.

2.3 事業の成果

平成 25年度事業の評価としては,以下が挙げられ事業目的は達成された. ・ 平成 26年 2月 5日にモントルー@スイスで開催

された第 8回 JWG 1会議にて日本提案の規定内容を審議・決定し,国際標準の DIS規格案を策定した

・ 規格改定の内容としては,新たに追加した BD評価項目の物理的規定値の策定と統計的解析手法の明確化に注力して実施し,物理的規定値の検証は実証実験を実施することで標準規格としての有効性も確認した

3. その他

本事業は,規格改定の内容を物理的な規定値の追加と統計的解析手法の明確化に注力して実施した.物理的規定値の検証は実証実験を実施することで確認を行っているが,統計的解析手法に関しては,計算手順等の利用者向けの解説の充実が必要と考えられる. 規格書の策定は,本年度終了時の目標「30.99(CD

の DISとしての登録を承認)」を予定通り達成した.一方,規格書の規定値,及び解析手法の実験的検証は,

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試験媒体の準備を含め,長期間の試験を要するものであり,一部の実験が継続となっている.従って今後の活動としては,以下を予定している. ・ 継続している実証実験の結果を踏まえて,国際標

準に反映する ・ DIS審議に引き続き規格策定を主導し,ISO/IEC

16963 2nd Editionの早期登録に貢献する

本事業を完了するため,来年度も経済産業省の「平成26年度省エネルギー等国際標準化・普及基盤事業」に対する提案として以下の公募に応募し,活動を継続する予定である. ・ 事業名「“省エネルギー等国際標準開発”(デジタ

ル情報を恒久的保存するための光ディスクの期待寿命推定方法に関する国際標準化)」

第3種専門委員会

■ SQL規格群 JIS原案作成委員会

幹事 山平 耕作((株)日立製作所)

1. 経緯

1.1 活動計画

今回の JIS 原案作成活動は,2012年度~2014年度の 3年間で,次に示す三つの規格の改正原案を作成するという計画を立てて,それを実現するための活動である. (1) X 3005-1:201x (ISO/IEC 9075-1:2011) デー タ ベ ー ス 言 語 SQL 第 1 部 : 枠 組(SQL/Framework)/Information technology -- Database languages – SQL -- Part 1: Framework (SQL/Framework) (2) X 3005-2:201y (ISO/IEC 9075-2:2011) デー タ ベ ー ス 言 語 SQL 第 2 部 : 基 本 機 能 (SQL/Foundation)/Information technology -- Database languages – SQL -- Part 2: Foundation (SQL/Foundation) (3) X 3005-14:201z (ISO/IEC 9075-14:2011) データベース言語 SQL 第 14 部:XML 関連仕様 (SQL/XML)/Information technology -- Database languages -- SQL -- Part 14: XML-Related Specifications (SQL/XML) なお,各年度の実施計画は,次のとおりである. ・ 2012年度:第 1部の原案完成,及び第 2部の素案作成

・ 2013年度:第 2部の原案完成,及び第 14部の素案作成

・ 2014年度:第 14部の原案完成

1.2 JIS原案の改正に至る経緯

SQL規格群の JISの中で,第 14部の XML関連仕様を規定する JIS X 3005-14(SQL/XML)は, ISO/IEC 9075-14:2003と一致する国際一致規格として 2006年に制定した後に改正を行っていない.しかし,国際規格の ISO/IEC 9075-14は,2003年に発行された後,XML のデータモデルを XQuery に拡張するための大きな改正が 2006 年に行われたため,JIS X 3005-14 の改正の必要性が高かった.したがって,2008年に改正された ISO/IEC 9075規格群の第 1部及び第 2部と一致する JIS X 3005-1:2010及び JIS X 3005-2:2010の改正時には,引き続き JIS X 3005-14 も改正することを予定していた.しかし,ISO/IEC 9075規格群が,幾つかの機能が追加されて2011年に改正されたため,この最新の国際規格と一致する JISの第 1部,第 2部及び第 14部の原案を 3年計画で作成し,順次改正していくことにした.

1.3 規格の内容

2013 年度に原案を完成させた第 2 部(基本機能)は,SQL 規格群中で最も重要で,かつ,中心的な規格であり,第 1 部及び第 2 部を除くこの規格群の他の規格(追加規格)の基盤となる規格でもある.この第 2 部は,SQL データのデータ構造及び基本操作を規定するとともに,SQL データの作成,アクセス,保守,制御及び保護の機能を提供するための,SQLデータの構造及び整合性制約の指定及び変更,データ操作の指定,文の実行方法(ホスト言語への埋込み,外部呼出し手続,直接起動,動的実行)などを含むデータベース言語 SQLの構文及び意味を規定する.

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2. 作業内容

2.1 作業の進め方

分科会(JIS/WG小委員会)の各委員に担当範囲を割り当てて,分担して翻訳するとともに,訳語案,翻訳上の問題点及び国際規格の問題点などを摘出し,それらを分科会で審議した.提出された翻訳結果に分科会で審議した結果をエディタが反映するとともに,国際規格と突き合わせて翻訳漏れ・誤訳・誤字脱字などの有無もチェックしながら,全体的な文章表現の統一や JIS の規格票の様式に適合していない用字の修正などを行った.そして完成した 1次翻訳版(素案)に対して,各委員に翻訳した部分とは異なる担当範囲を割り当てて,再度チェックすることによって,品質を向上させて原案として完成させた.最後に,本委員会を開催し,原案としての承認を完了させた.

2.2 作業中問題となった点

原案作成活動では,重大な技術的問題を含む多くの問題点を摘出した.これらの問題点に関しては,編集上の問題点を含めて,すべて ISO に報告するとともに,技術的な問題に関しては,日本からの提案の形でCorrigendum又は次の改正に提案し,SQLの国際規格の品質の確保に大きく寄与している.

3. その他

SQL は,ほとんどすべての業務アプリケーションで利用され,基盤技術となっているので,国際規格の改正への JISの対応は,非常に重要である.

■ NFC規格群 JIS改正原案作成委員会

委員長 山下 博之(独立行政法人情報処理推進機構)

1. 経緯

本 委 員 会 は , 次 の NFC ( Near Filed Communication)規格群の JIS原案の改正を目的に,2013年度に設立された: X 5212 情報技術 - システム間の通信及び情報交換 - 近距離通信用インタフェース及びプロトコル2 (NFCIP-2)

X 5211 情報技術 - システム間の通信及び情報交換 - 近距離通信用インタフェース及びプロトコル (NFCIP-1)

X 5213 情報技術 - システム間の通信及び情報交換 - 近距離通信用インタフェース及びプロトコル (NFCIP-1) - RFインタフェース試験方法 上記 JIS規格は,それぞれ,次の日本発の国際

規格に対応している: ISO/IEC 21481:2012 Information

technology - Telecommunications and information exchange between systems - Near Filed Communication Interface and Protocol -2 (NFCIP-2)

ISO/IEC 18092:2013 Information technology - Telecommunications and information exchange between systems - Near Field Communication - Interface and Protocol (NFCIP-1)

ISO/IEC 22536:2013 Information technology - Telecommunications and information exchange between systems - Near Field Communication -- Interface and Protocol (NFCIP-1) -- RF interface test methods

今回の改正は,非接触 ICカードの国際規格であるISO/IEC 14443シリーズとの調和のために対応国際規格群が改正されたことに伴うものである.

2. 作業内容

2013年度には,X5212の改正原案を作成した.対応国際規格が日本発であることから,その改正に関わった委員が翻訳を担当し,他の委員のレビューを通して,それをブラッシュアップした. また,X5211の翻訳を開始した.

3. その他

今後,X5212の制定に向けた手続きを行う.また,X5211の改正原案を完成させる予定である.さらに,X5213の改正原案作成にも着手する予定である.

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■ システム及びソフトウェア技術―利用者用文書類の設計者及び作成者のための要求事項 JIS 原案作成委員会

委員長 山本 喜一(慶應義塾大学)

1. 経緯

1.1 規格の内容

対応国際規格は,ISO/IEC/IEEE 26514: 2008 Systems and software engineering ― Requirements for designers and developers of user documentation であり,JIS の名称は“システム及びソフトウェア技術―利用者用文書類の設計者及び作成者のための要求事項”とした. 近年のソフトウェアは,直感的なインタフェースを採用するなど操作性の向上が図られているが,その内容がますます高度になり製品の機能をきちんと利用しようとするときには,ヘルプだけではなくその他の利用者用文書類が必要となることから,印刷された文書に限らず画面上に表示される文書も含めた文書類がソフトウェア製品の必須な一部となっている.この規格は,JIS X 0160:2012及び JIS X 0170:2013の利用者が,ソフトウェアライフサイクルの一部として利用者用文書類を設計及び作成するときの,文書類作成者からみた文書化プロセスを定義するとともに製品としての文書類の構造,内容,及び体裁を規定している.さらに,利用者用文書類のスタイルの指針を提供している.

1.2制定の経緯

システム及びソフトウェア技術の分野では,今までに複数の文書化に関する国際規格が発行されてきたが ad. hoc な開発であったために規格番号がバラバラで相互の関係を理解することが難しかった.SC 7/WG 2では 2004年の高山会議の際に,文書化に関する規格の全面見直しを日本から提案し,その議論に基づいて文書化の対象(利用者用文書,ライフサイクル文書)及び読者(マネージャ,取得者及び供給者,検査者及び評価者,設計者及び開発者)について整理し,統一した規格番号(26500~26549)を確保して規格開発を進めている.この規格は,このシリーズの最初のもので,読者の範囲が最も広く,影響も大きいことから早期の JIS化が望まれていた.対応国際規格の 2008年の発行から,シリーズ規格の発行が続き,それに伴う対応国際規格の修正・変更が起こる可能性があったため JIS化を遅らせていたが,5年見直しで継続が決定したことから,この規格の JIS化を開始した.

2. 作業内容

訳語の統一を図るために,用語の定義の翻訳を最初の対面の委員会で検討し,それに基づいて粗訳は一人が行い原案を各委員が検討してメールでのやりとりによって作業を進めた.対応国際規格が 140 ページを超えていたことと,図表を示す用語だけで 8種類を使っているように修辞がかなり多かったため,翻訳に時間を取られ訳語の統一に苦労した.粗訳版を含め 3版を作成し,訳語の統一と文章の校正を行った. 文書類の製品の体裁を規定する部分については,国内の大企業では文書の出版に関わる部分はソフトウェアの文書化を行う部署とは全く別の所で行うので,この規格に含める必要はないとの意見もあったが,ソフトウェア開発が中小の企業にも広がっていること及び文書そのものをデータベースから自動生成する開発環境が使われるようになってきていることから,原規格の内容をそのまま残すこととした.ただし,欧文に特有な部分は JISには含めていない. この規格では,印刷された文書に限らず画面上に表示される文書についても,文書化プロセス及び製品を規定しているので,この規格を基にして各企業が自社用のスタイルガイドを作成することも期待できる.

■ システム及びソフトウェア技術-システム及びソフトウェアアシュアランス-アシュアランスケース JIS原案作成委員会

委員長 木下 佳樹(神奈川大学)

1. 経緯

規格番号 ISO/IEC 15026-2 システム及びソフトウェア技術-システム及びソフトウェアアシュアランス-アシュアランスケース Systems and software engineering - Systems and software assurance - Part 2: Assurance case

1.1 規格の内容

ISO/IEC 15026-2は,システム及びソフトウェアアシュアランスの規格群である ISO/IEC 15026シリーズの一部として 2011 年に出版された.ISO/IEC 15026 シリーズは,システムやソフトウェアの安全・安心の達成を記述した文書を作成し,利害関係者間のコミュニケーションや第三者認証に用いる活動であるシステムアシュアランスに関する規格である.本規格は,①そのような文書(アシュアランスケース

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と呼ばれる)の様式と内容の規定,②リスク抑制の完全度水準の規定,③安心・安全実現のためのガイドライン,などについて,ソフトウェア及びシステムに共通する方策を示したものである. ISO/IEC15026-2 は特に,アシュアランスケースの様式を規定する.

1.2制定の経緯

ISO/IEC 15026-2は,日本を含むエディタチームによって制定された.初期の草稿では,文書の様式の規定は曖昧である一方,有用性の不明な参考情報が多く含まれていた.これに対して,日本からのエディタは,様式の規定を厳密にし,また,参考情報に関しても最低限のものに限定するなどにより貢献した.当原案作成委員会の委員長は日本側のエディタである.

2. 作業内容

原案作成委員会は,生産者委員 3名,使用消費者委員 3 名,中立・学識経験者委員 5 名で構成され,またその中から 2 名からなるエディタグループを構成した.エディタが翻訳原案を作成し,3回(2013 年7月 13日,10月 10日,12月 12日)の委員会を通じて原稿を確定させてきた.訳語について,既存の規格における訳が必ずしも適切でない場合に,既存の規格との整合性を尊重すべきか,本規格を機会に適切な訳を導入すべきかの議論があった.また,産業界で広く用いられている用語にすべきか,本来の意味に基づいた訳語をあてるべきかの議論もあった.さらに,日本語に対応する語句がない場合に,カタカナ語で対応すべきか,比較的近い意味の漢語を採用するかの議論もあった.

3. 産業界に及ぼす影響

ISO/IEC 15026シリーズは,米国政府が取り入れる動きを示しており,システムの安心・安全関連規格に今後大きな影響を与えることが予想される.いち早く JIS化することにより,わが国産業に対し,アシュランスに関する国際的潮流に先んじるための有効な刺激を与えることができる.

■ システム及びソフトウェア品質要求及び評価(SQuaRE)―開発者,取得者及び独立評価者への評価の手引 JIS原案作成委員会

委員長 東 基衞(早稲田大学),幹事 山形 薫(規格専門家)

1. 経緯

1.1 規格制定の経緯

SQuaRE シリーズ規格は,図 1 に示すように,品質管理部門(ISO/IEC 2500n,2 規格),品質モデル部門(ISO/IEC 2501n,3 規格),品質測定部門(ISO/IEC 2502n,5規格),品質要求部門(ISO/IEC 2503n,1規格),品質評価部門(ISO/IEC 2504n,3 規格),及び SQuaRE拡張部門(ISO/IEC 25050~ ISO/IEC 25099,1 規格 – 別WGによる CIF 関連を除く)の 6部門 15規格から構成されている.この規格の元となる国際規格 ISO/IEC 25041 は,JIS X0133-3,-4,-5(ISO/IEC 14598-3,-4,-5)をSQuaREの考え方に対応するように一つに集約して,改訂したものである.図中 JISで表記された 8規格が既に JISとして発行されており,シリーズ規格を充実させるために,2014年度 JIS X 25041の JIS原案の作成を行った.

1.2 規格内容

この規格は,開発者・取得者・独立した評価者の三者に,システム及びソフトウェア製品の品質を評価するための評価プロセスに対する要求事項,推奨事項及び指針を提供するもので,特定のアプリケーション領域に限定することなく,あらゆる種類の製品の品質評価に使用することができる. この規格では,各役割からの評価の概念を規定し,

さらにライフサイクル中のそれぞれの役割に対する要求事項,推奨事項及び指針を規定することによって,品質評価ができるようにしている.

2 作業内容

2.1 原案作成/改正の作業の進め方

JIS化を効率的に進めるために,まず一人の人が全文を翻訳し,次に委員を5グループに分け,各グループが自分たちの分担範囲をチェックした.チェック結果は委員会で内容を審議し,検討した.更に検討結果を統合し,各委員が全体を通してレビューし,記述内容に誤り・誤解がないように注意した. また,既存の SQuaRE シリーズ JIS との用語・訳

語の整合性を確保するため,SQuaRE シリーズ JISの作成時から蓄積している用語辞書を参照するだけ

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でなく,従来の JISとの用語に齟齬がないように注意した.

2.2 産業界に及ぼす影響

SQuaREシリーズ規格は,システム及びソフトウェア製品の品質を規定した唯一無二の規格で,情報システムの開発,開発委託及び利用,ソフトウェア開発などの業界で広く使用されている.特に品質特性についての考え方は,様々な書籍,文書,規格などに数多く引用され,ソフトウェア品質を論じる場合には欠くことのできないものとして活用されている.今回の JIS 規格では,JIS X25010の品質特性の考え方に基づいて,JIS X0133-3,-4,-5 をより実用的に統合,改正しており,システム及びソフトウェア製品の品質向上に貢献するものと考えられる.

品質要求部門 JIS X 25030:品質要求事項

品質モデル部門

JIS X 25010:システム及び

ソフトウェア品質モデル JIS

X 25012:データ品質モデル

品質評価部門 JIS X 25040:評価プロセス JIS X 25041:開発者,取得者及び独立した評価者のための評価手引(今年度作業)

ISO/IEC 25011: Service Quality Model

品質管理部門 JIS X 25000:SQuaREの指針 (ISO/IEC 25000: 2014 には未対応)JIS X 25001:計 画 及 び 管 理 (ISO/IEC 25001: 2014 には未対応)

品質測定部門 JIS X 25021:品質測定量要素

ISO/IEC 25020:Measurement reference model and guide ISO/IEC CD 25022:Measurement of quality in use ISO/IEC CD 25023:Measurement of system and software product quality ISO/IEC CD 25024:Measurement of data quality

SQuaRE拡張部門 JIS X 25051:商用既製(COTS)ソフトウェア製品に対する品質要求事項及び試験に対する指示 (ISO/IEC 25051: 2014 には未対応)

図1:SQuaREシリーズ規格の構成

■ ITガバナンス JIS原案作成委員会

幹事 平野 芳行

1. 経緯

1.1 委員会設立の目的

最近,企業の信頼を損ねるようなオリンパスや大王製紙といった企業会計に絡む不祥事が発生してきている.また,IT の運用の世界でも,みずほ銀行や東京証券取引所などで経営者のモニターが十分でなく,問題を深刻化される事例が見られた.そのため,企業統治(コーポレートガバナンス)の一層の強化が叫ばれている.その状況を鑑み,また,ここ 10 年の ITの企業運営への浸透を考えると,IT を使って若しくは IT そのものを管理することは企業のガバナンスにとって重要となった.JTC 1 において,IT のガバナンスの標準 ISO/IEC 38500が 2008年に発行され,その知名度も高くなってきている.それを翻訳して,企業の経営層へその原則を周知し,経営者としてやるべきことについて知らしめていくことがガバナンスの向上に役に立つと考え,JIS化を行うこととした. また,ISO/IEC 27014は,経済産業省が 2009年

に公表した「情報セキュリティガバナンス導入ガイダンス」を元に国際提案したものである.それをもとに今回 JIS 化を行うものである.特に,経済産業省は,上 記 文 書 の 中 で 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 報 告 書( Information security status report)について,CSR(Corporate social responsibility)報告書と同様に,その発行を推進・普及したいと考え,これらの JIS化により,経営層のガバナンスへの意識づけをしていくことが目的である.

1.2 規格の概要

本委員会で JIS化を行った規格は次の 2つである. ・ ISO/IEC 38500:2008 Information

technology – Corporate governance of information technology

・ ISO/IEC 27014:2013 Information technology – Security techniques – Governance of information security

最初のISO/IEC38500は,豪州規格AS8015:2005 Corporate Governance of Information and Communication Technologyを,ファストトラック提案によって国際標準化したものである.この標準はISO書式に従っていないため,書式上の違いで JIS化の際に翻訳一致規格(IDT)にできなった.技術的内容は,同一である.

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ISO/IEC 27014については,その新規開発提案の時期から経済産業省の「企業における情報セキュリティガバナンスのあり方に関する研究会」の活動結果を基礎に積極的に貢献し,国際規格の開発については,共同エディタを日本から推薦するとともに,経済産業省が 2009年に発行した「情報セキュリティガバナンス導入ガイド」にて開発したモデルなどを提案して国際規格化を積極的に推進してきた.

2.JIS原案作成委員会

委員会の組織は,親委員会としてガバナンス JIS原案作成委員会(委員長:原田要之助[IISEC],幹事:平野芳行)のもとに以下の 2つの分科会(WG)を設置し,実質的な作業を行った. ① 38500JIS原案作成分科会(WG 1)主査:平野芳行

② 27014JIS原案作成分科会(WG 2)主査:原田敬,幹事:川口修司

委員会の設置は 5月に行い,WG 1を 5回,WG 2を 6 回開催し,審議した.最終的に作成された JIS原案について 12月の委員会で承認された.

3.JIS原案作成上の検討した点

①については,タイトルについて,原標準には「コーポレート」が入っているが,あらゆる組織が関係する点から「IT ガバナンス」とした.「ガバナンス」は「統制」等に日本語がつかわれることが多いが,今回は意味が広いということで,「ガバナンス」をそのまま使った.また,ファストトラックのため JIS書式に合わせる作業を入れたため,技術的内容の変更がないが,修正(MOD)の形となった. ②については,書式,内容については,問題がなか

ったが,用語の上で,情報セキュリティマネジメントシステムとの関連が強い規格で,ISO/IEC 27000との訳語等で調整を行った. これらの規格は,情報分野の扱いではなく,管理規

格分野として JIS化を行う予定である.想定する規格番号及び名称(案)は以下のとおりである.

JIS Q xxxxx: 情報技術 ― ITガバナンス (MOD) JIS Q xxxxx: 情報技術 ― 情報セキュリティ―情報セキュリティのガバナンス(IDT)

IT ガバナンス標準の JIS 化が各組織の経営層への普及を目的とした活動へ利用しやすくなればよいと考えている.

発 行 人

一般社団法人 情報処理学会 情報規格調査会 広報委員会

〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8 機械振興会館 308-3

Tel: 03-3431-2808 Fax: 03-3431-6493

https://www.itscj.ipsj.or.jp/

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