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佐世保市 ICT 戦略 令和 2 年 4 月 佐世保市

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佐世保市 ICT 戦略

令和 2 年 4 月

佐世保市

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1

目次

1 はじめに ....................................................................................................................... 2

2 位置付け ....................................................................................................................... 3

3 期間 ............................................................................................................................... 3

第 1 章 戦略策定の背景 ......................................................................................................... 4

1 社会環境の変化 ............................................................................................................ 4

2 デジタル技術の進展 ..................................................................................................... 5

3 本市のこれまでの取組.................................................................................................. 9

第 2 章 方向性・基本方針 ................................................................................................... 11

1 方向性 ......................................................................................................................... 11

2 基本方針 ..................................................................................................................... 12

第 3 章 行政のデジタル変革 ............................................................................................... 13

1 目指す姿 ..................................................................................................................... 13

2 現状と問題点 .............................................................................................................. 14

3 課題 ............................................................................................................................. 15

4 重点取組方針 .............................................................................................................. 16

5 推進にあたって .......................................................................................................... 18

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2

1 はじめに

本市では、平成 12 年度に「佐世保市地域情報化基本計画」を策定し、それ以降、情報化

の取組や ICT(情報通信技術)の利活用を推進してきました。その間、AI(人工知能)をは

じめとする先進技術を含め、ICT の技術は急速に進展しており、今やあらゆるサービスや組

織、そして社会全体を変革する可能性を秘めたものとして、その重要性や役割が拡大してい

ます。

このような中、本市では令和 2 年度から第 7 次総合計画をスタートします。

人口減少や少子高齢化の進展等、今後、様々な社会課題に直面することとなりますが、

「海風 薫り 世界へはばたく “キラっ都” SASEBO」というコンセプトの下、着実に本市

のまちづくりを推進していかなければなりません。

そのためには、ICT を「まちづくりの原動力」として位置付け、データを新たな資源とし

て最大限に活用するとともに、官民連携・協働によるイノベーション1の創出が必要不可欠

です。また、まちづくりの一端を担う行政の分野においても、これまでのあり方に捉われる

ことなく、「行政のデジタル変革」に取り組んでいく必要があります。

ついては、本市における今後の ICT 活用の方向性・方針を明確化し、その取組を加速さ

せることを目的として、ここに本戦略を策定します。

なお、本戦略の構成は次のとおりです。

まず、第 1 章では戦略策定の背景として、本市を取り巻く社会環境の変化、デジタル社会

の進展、そして本市のこれまでの情報化の取組状況について整理を行いました。

次に、第 2 章では第 1 章の整理を前提として、本市が今後、ICT を「まちづくりの原動

力」と位置付け、積極的に活用していくという大きな方向性を示すとともに、その方向性に

基づき、各部局が連携して取組を進めるための 3 つの基本方針を定めました。

最後に、第 3 章ではまちづくりの一端を担う行政の分野において、デジタル化で目指す

姿を「市民中心の行政サービスの実現」と定義し、本市の現状と比較することによって、そ

のギャップを問題点として抽出しました。さらに、その問題点を解決するため、「行政のデ

ジタル変革」という視点から、本戦略で取り組むべき 4 つの課題と、課題に対する具体的な

取組の方向性を示す 8 つの重点取組方針を定めました。

1 技術革新。従来のものとは異なる工夫や方法。新しい工夫。

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3

2 位置付け

本戦略は、佐世保市第 7 次総合計画を情報政策の面から補完するものであり、本市の情

報政策における最上位の戦略として位置付けるものです。

また、官民データ活用推進基本法(平成 28 年法律第 103 号)第 9 条第 3 項に基づく、佐

世保市版の「市町村官民データ活用推進計画」としても位置付け、その趣旨に沿って、国、

県の施策との整合性を確保しながら、各取組を推進していきます。

3 期間

本戦略の期間は、佐世保市第 7 次総合計画(基本計画)の実施期間に合わせ、令和 2 年度

から令和 5 年度までの 4 年間とします。ただし、個別施策・事業について、更に長い期間を

設定することが適当な場合はこの限りではありません。

なお、本戦略は、各施策の取組状況や社会情勢の変化、技術革新等の動向を踏まえつつ、

必要に応じて内容の見直し、改定を行います。また、期間終了後の取り扱いについては、次

期戦略の策定を前提としつつ、本市の情報化に関する意思決定機関である地域情報化推進

本部(事務局:総務部情報政策課)において、各取組の進捗状況の把握及び次期戦略の方向

性についての検討を行うこととします。

図表0-3-1 第7次総合計画との関連性及び期間

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第 1章 戦略策定の背景

1 社会環境の変化

本市を取り巻く社会環境の変化について、佐世保市第 7 次総合計画では、以下のとおり

整理しています。

(出典)佐世保市第 7 次総合計画

上記のとおり、今後の人口減少局面において、本市は様々な課題に直面することが予測さ

れます。行政経営の面においても、税収の減少や、人材の確保が困難になることが想定され

るため、今後は、ヒト、モノ、カネといった限られた経営資源をより一層有効に活用し、行

政サービスの維持や向上を図っていかなければなりません。

そのためには、既存の行政サービスに固執することなく、行政サービスや行政のあり方そ

のものに対する変革の視点を持ち、着実に実行に移していくことが必要不可欠です。

人口減少社会においては、少子高齢化の進展、生産年齢人口の減少による経済規模の

縮小、労働力の不足、医療・介護給付費の増大など社会保障制度の受益と負担のバラン

スの崩壊、税収減による行政サービスの低下など、今後、様々な社会的課題に直面する

ことになります。

また、わたしたちの生活や経済を支えている道路、上下水道、廃棄物処理施設、港湾

等の社会インフラの維持・更新に係るコストが増加し、このままでは本市の経済・社会

水準の維持を図ることは困難となります。

このことを踏まえ、縮小する社会へ対応していくとともに、限られた労働力でより多

くの付加価値を生み出し、市民一人あたりの生産性を高めることで、持続的な発展を目

指す必要があります。

第1 章

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2 デジタル技術の進展

近年のインターネットや、スマートフォンの普及を背景に、社会全体のデジタル化が大き

く進展しており、今やスマートフォンから情報にアクセスし、オンラインで問い合わせや予

約を行うといったサービスは、もはや特別なものではなくなりました。

本市においても、平成 30 年度に実施した市民アンケート調査2によると、インターネット

の利用率は 66.2%と前回調査(平成 20 年度)から 8.9 ポイント増加しました。その中でも、

回答者の半数以上がスマートフォンでインターネットを利用していると回答し、特に 10 代

から 40 代では、9 割を超える利用率となっています。また、全国的な調査結果3を踏まえる

と、今後益々この傾向は強まっていくことが予想されます。

図表1-2-1 インターネット利用率

平成 20 年度調査 平成 30 年度調査

57.3% 66.2%

図表1-2-2 インターネットの利用状況(機器・年齢別)

(出典)佐世保市情報化に係る市民アンケート調査報告書

2 佐世保市情報化に係る市民アンケート調査(調査期間:平成 30 年 10 月 5 日~11 月 9 日)

調査方法:佐世保市内に居住する 16 歳以上の男女 2,000 人に対する郵送アンケート

有効回答数:940 件

3 総務省「通信動向調査」

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図表1-2-3 【参考】インターネット利用率の推移(全国平均)

図表1-2-4 【参考】モバイル端末の保有状況(全国平均)

さらに、国は AI や IoT4、5G5といった新たなテクノロジーをあらゆる産業や社会生活に

取り入れることで、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)が高度に融合

4 Internet of Things(モノのインターネット)の略。自動車、家電、ロボ ット、施設などあらゆるモノ

がインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が

進展し、新たな付加価値を生み出すというコンセプトを表した語。

5 「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」といった特徴を持つ次世代(第 5 世代)の移動通信システム。

(出典)総務省「令和元年版 情報通信白書」

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し、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会「Society5.06」の実現を目指し

ています。

図表1-2-5 サイバー空間とフィジカル空間の高度な融合

図表1-2-6 Society5.0 で実現する社会

(出典)内閣府「Society5.0「科学技術イノベーションが拓く新たな社会」説明資料」

6 「第5期科学技術基本計画」(平成 28 年1月 22 日閣議決定)において我が国が目指すべき未来社会

の姿として提唱された、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報

社会(Society 4.0)に続く、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発

展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を指す。

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なお、これは遠い将来の話ではなく、その先行実現の姿として、まちづくりの推進に ICT

を活用する「スマートシティ7」の取組が、日本各地さらには世界中で、まさに進められて

いるところです。

一方で、社会全体のデジタル化と連動するように、ビジネスの面においても ICT の役割

は変化しています。従来、ICT は確立された産業の効率化や価値の向上を実現するための補

助ツールでした。しかしながら、近年、ICT と産業が一体化し、事業のコアとしてビジネス

モデル自体を破壊・変革していく「デジタル・トランスフォーメーション(デジタル変革)

8」という動きが大きな潮流となっています。

図表1-2-7 従来の情報化/ICT利活用とデジタル・トランスフォーメーションの違い

(出典)総務省「令和元年版 情報通信白書」

このように、あらゆるサービスや組織、そして社会全体を変革する原動力として、ICT の

重要性が高まっており、国は「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本

計画(令和元年 6 月 14 日閣議決定)」、「デジタル・ガバメント推進方針(平成 29 年 5 月 30

日 IT 本部・官民データ活用推進戦略会議決定)」並びに「デジタル・ガバメント実行計画

(令和元年 12 月 20 日閣議決定)」等において、デジタル社会に対応した行政変革の必要性

について言及しています。

7 先進技術の活用により、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、各種の課題解決を図るとと

もに、快適性や利便性を含めた新たな価値を創出する取組。

8 将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟

に改変すること。

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3 本市のこれまでの取組

本市では、平成 12 年の「地域情報化基本計画」策定以降、中長期的な視点による情報化

マスタープランを定期的に策定・更新しながら、本市の情報化を総合的かつ計画的に取り組

んできました。

図表1-3-1 本市情報化マスタープラン策定の状況

特に、前情報化マスタープランである「ICT 利活用による便利な市役所推進計画(平成 27

年度~令和元年度)」では、前身の「新電子自治体推進計画」から「便利な市役所」という

基本テーマを継承し、市役所本庁舎 1 階における総合窓口の開設や証明書等コンビニ交付

サービスの開始など、主に市民の利便性向上につながる取り組みを推進しました。(同計画

の取組結果は、次ページ参照)

加えて、計画期間中におけるその他の取組として、AI や RPA9に関する試行導入等、効率

的な行政経営を実現するスマート自治体への対応にも取り組んできました。

これらの取り組みの結果、平成 30 年度に実施した市民アンケート調査10において、「市役

所を利用して便利だと思いますか?」という問いに対し、74.1%の方が「とても便利だと思

う」、「ある程度は思う」と回答しており、平成 26 年度の同調査と比較して、2.5 ポイント

向上するなど、着実に情報化の取組が進捗していると評価できます。

一方で、前述のとおり社会全体のデジタル化は圧倒的なスピードで進展しており、本市と

してもこれまでの取組をベースとしつつ、これから訪れる Society5.0 時代に向けて、AI や

IoT といった先進技術の活用を含め、今後さらにデジタル化の取組を加速させていかなけれ

ばなりません。

9 Robotic Process Automation の略。パソコン上に仮想のソフトウェアロボットを作成し、自動処理を行

う技術のこと。

10 佐世保市まちづくり市民意識アンケート調査(調査期間:平成 30 年 4 月 23 日~5 月 11 日)

調査方法:佐世保市内に居住する 16 歳以上の男女 3,500 人に対する郵送アンケート

有効回答数:1,138 件

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図表1-3-2 ICT利活用による便利な市役所推進計画の取組結果

●主要な情報化事業(本計画の期間中に実施を目指す事業)

事業名 実施状況

1 総合窓口 達成

2 マイナンバー・個人番号カードを利用した新たな行政サービス 達成(継続検討)

3 証明書等コンビニ交付 達成

4 電子申請の拡大 達成(継続検討)

5 オープンデータの推進 達成

6 情報通信格差の解消 達成(継続検討)

7 市政に参画しやすい新たな広聴ツールの導入 見送り

8 避難行動要支援者台帳システム 達成

9 被災者支援システム 達成

●主要な情報化事業候補の検討(本計画の期間中に手段としての有効性を研究する取り組み)

事業名 実施状況

10 コールセンターの検討 見送り

11 電子決裁・文書管理システム 見送り(継続検討)

12 公衆無線 LAN の整備促進 進捗中

13 観光ナビ 一部民間で進捗

14 健康情報ポータルサイト 進捗中

15 教育の情報化支援 進捗中

16 災害情報共有システム(L アラート) 達成

●主要な ICT ガバナンス(本計画の期間中に推進する ICT の利活用に対する総合的なアプローチ)

事業名 実施状況

17 業務の可視化(見える化) 達成

18 効果の測定・目標達成度の評価手法の確立 達成

19 情報システム部門の業務継続計画(ICT-BCP) 達成

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第 2章 方向性・基本方針

1 方向性

「ICT を原動力としたまちづくりの推進」

本市では、前述のような社会環境の変化やデジタル社会の進展等を踏まえ、ICT を単なる

行政の効率化のためのツールではなく、まちづくりの原動力の 1 つとして位置付けます。

あらゆる分野、政策の問題解決手段として、ICT を積極的に活用し、人口減少局面において

本市が直面する地域課題、社会課題の克服に役立て、佐世保市第 7 次総合計画に示す 4 つ

の都市像の実現に寄与していきます。

図表2-1-1 第7次総合計画における本市の将来像と目指す4つの都市像

海風 薫り 世界へはばたく“キラっ都” SASEBO

(出典)佐世保市第 7 次総合計画

第2 章

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2 基本方針

前項の方向性に基づき、以下に示す 3 つの基本方針の下、各部局が連携して取り組みを

進めていくものとします。

基本方針1:市民目線のサービスデザイン11

各政策の推進にあたっては、ICT の活用を大前提とした市民目線のサービスデザインを

心がけ、デジタル化がもたらすイノベーションや新たな価値によって、本市が直面する様々

な課題の克服に果敢にチャレンジします。

基本方針2:データの資源化と利活用

高いセキュリティの確保と個人情報の適切な取扱いに努めつつ、データを新たな資源と

して最大限に活用し、AI 等の先進技術の活用、部局間での相互運用や拡張性の確保、さら

には、官民の垣根を超えたデータの利活用に取り組みます。

基本方針3:民間投資の喚起によるイノベーションの創出

Society5.0 時代の新たなまちづくりの推進にあたっては、官民連携・協働によるイノベー

ションの創出が不可欠であることから、民間等の取組を支援し、投資を喚起します。

なお、個々の取組にあたっては、デジタル化そのものを目的化することなく、また、全て

の活動がデジタルで代替されるわけではないことに十分留意し、市民の利便性、事務の効率

化、必要経費等を総合的に勘案して、実施の可否を判断するものとします。

11 「デザイン思考」という概念を用いてサービスを設計するもの。デザイン思考とは、サービスやビジ

ネスの構築にあたり、デザイナーがデザインを行う際の進め方や考え方を適用するものであり、利用者の

ニーズを優先した人間中心の設計思考のこと。

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第 3章 行政のデジタル変革

1 目指す姿

「市民中心の行政サービスの実現」

第2章で示した方向性と基本方針を踏まえ、まちづくりの一端を担う行政の分野におい

て、デジタル化で目指す姿、つまり、人間中心の超スマート社会である「Society5.0」の時

代に相応しい本市の行政サービスのあるべき姿を以下のとおり定義します。

あらゆる分野において、デジタル技術を最大限に活用することで、既存の行政サービス、

さらには行政のあり方そのものを変革し、市民の利便性の飛躍的な向上と効果的・効率的な

行政経営を両立します。それにより、多様な属性を持つ全ての人が利便性を享受できる「市

民中心の行政サービスの実現」を目指します。

具体的には、佐世保市第 7 次総合計画(基本構想)の終期となる令和 9 年度を当面の目

途として、行政手続きの原則オンライン化を進め、時間や場所を問わずサービスを利用でき

る環境を構築します。また、直接対面でコミュニケーションをしながらサービスを受ける必

要がある方には、より丁寧なサービスを提供できるように、職員の事務作業を徹底的に自動

化・省力化することで、必要な人的資源を確保し、これまで以上に市民目線で質の高い行政

サービスの提供を目指していきます。

第3 章

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2 現状と問題点

前項で定義した本市の行政分野における目指す姿と現状を比較し、そのギャップを問題

点として以下のとおり整理しました。

(1)紙・対面を前提とした行政手続

社会のデジタル化が進み、多くの民間サービスが、オンラインでの手続を標準サービスと

する中で、本市における行政手続の多くは、未だに紙・対面を前提としたやり方をとってい

ます12。その結果、市民は手続のために、時間を割いて来庁する必要があり、窓口での待ち

時間をはじめ、行政手続に関する負担(手間・コスト)が大きい状況となっています。

(2)職員の業務状況

本市では、システムの導入や入れ替えを業務改善・改革のチャンスとして捉え、その取組

を推進してきました。また、AI や RPA といった先進技術を活用した業務の効率化について

も積極的に取り組んできましたが、まだ多くの点で改善の余地があります。

その一例として、平成 30 年度に庁内で実施した調査によると、職員は年間約 4,000 時間

もの膨大な時間を会議の議事録作成に費やしていることが判明しました13。また、総務省の

「平成 30 年度業務改革モデルプロジェクト」において実施された業務分析の結果14では、

職員がデータ入力や確認、集計作業等といった事務作業に時間を割かれ、相談対応や訪問業

務、事業計画の立案等といった本来職員が実施すべき業務に注力できていない状況が報告

されています。今後の人口減少によって、行政における人材の確保が困難になることが想定

されるため、非効率な作業を見直し、「選択と集中」による業務改善・改革に取り組まなけ

れば、行政サービスの提供が困難になる可能性があります。

(3)情報化関連予算

直近 5 年間(平成 27 年度~令和元年度)における本市情報化関連の予算額は、年平均 15

億円前後となっており、前 5 年間(平成 22 年度~平成 26 年度)と比較すると、およそ 30%

程度増加しています。今後、税収の減少が見込まれる中においては、これまで以上に高いコ

スト意識を持ち、無計画なコストの肥大化を避けなければ、新たな価値を生み出すための投

資に財源を充てることはもちろん、既存システムの維持、ひいては行政サービスの維持その

ものが困難になります。

12 平成 30 年 4 月に庁内で実施した調査によると、本市で実施している全手続 1,955 件のうち、オンライ

ン申請に対応しているものは、14 件に留まる。(オンライン申請対応率:0.71%)

13 平成 30 年 9 月調査実施。この結果を踏まえて、令和元年度に文字起こし AI を試行導入。

14 泉大津市「業務改革推進プロジェクト報告書」

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3 課題

前項の問題点を解決するため、本戦略で取り組むべき課題を以下のとおり設定します。

なお、課題の設定にあたっては、単に新たな要素を付加し、拡充するという視点ではなく、

既存のサービス、業務、組織等あらゆる枠組みをデジタル化によって抜本的に変える「デジ

タル変革」の視点を強く意識し、以下の 4 点を課題として設定します。

(1)利便性向上のためのサービス変革

デジタルを前提として、従来の行政サービスを市民の目線からゼロベースで再構築し、利

便性の飛躍的な向上を図ります。

(2)生産性向上のための業務・システム変革

先進技術やデータを積極的に活用することによって、業務の徹底した効率化、高付加価値

化に取り組み、行政全体の生産性向上を図ります。

(3)コスト適正化のための業務・システム変革

システムの統廃合をはじめとする既存システム等の見直しに着手し、ICT 投資コストの

適正化を図ります。

(4)実効性を確保するための組織変革

各取組を強力に推進していくためには、職員の意識改革や、庁内の仕組み、体制の再構築

が必要不可欠であり、その実現によって、実効性の確保を図ります。

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4 重点取組方針

課題に対する具体的な取組の方向性として、各課題に紐づく 8 つの重点取組方針を以下

のとおり定め、重点的に取組を推進します。

(1)利便性向上のためのサービス変革

【重点取組方針 1】行政手続のオンライン化

行政手続の原則オンライン化(地方公共団体は努力義務)を内容とする「デジタル手

続法15」の公布を受け、本市の行政手続についても、原則オンライン化の対応を進めま

す。取組にあたっては、スマートフォンでの利用を前提とするなど、サービス利用者の

視点で「すぐ使えて」「簡単で」「便利な」サービス設計に努め、行政手続における時間

や距離の制約を解消し、市民の利便性の飛躍的な向上を図ります。なお、市役所への来

庁が必要な手続き等についても、オンライン予約や窓口のデジタル化に取り組むこと

で、来庁時にお待たせしないスムーズな行政手続の実現を目指します。

【重点取組方針 2】支払いのキャッシュレス化

窓口や納付書等、あらゆる場面での公金の支払いについて、キャッシュレス対応(ク

レジットカード決済、QR コード決済等)を進めることで、市民、企業等の支払い手段

を多様化し、利用者の利便性向上を図ります。なお、手続のオンライン化を進める上で

も、支払い手段のキャッシュレス化は重要となることから、両者を連動しながら個々の

取組を進めていくこととします。

(2)生産性向上のための業務・システム変革

【重点取組方針 3】先進技術を活用した業務の自動化・省力化

AI、IoT、RPA などの先進技術を最大限に活用し、行政事務(バックオフィス)にお

ける単純作業・反復作業を徹底的に自動化します。また、各種審査業務やデータ分析等、

行政おける AI 活用の可能性についても、積極的に検討・検証を進めることで、業務の

効率化・省力化を進めます。

【重点取組方針 4】庁内における ICT 基盤の拡充

紙文化をはじめとする従来の行政の働き方から脱却し、電子決裁・文書管理システム

やビジネスチャットツール等の ICT 基盤を整備・拡充することにより、庁内のデジタ

15 正式名称は、「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性向上並びに行政運営の簡素

化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法

律(令和元年法律第 16 号)」

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ル化やデータ活用を促進します。これらの ICT 基盤によって、既存の業務プロセスや

職員間のコミュニケーション、更には働き方そのものを柔軟かつ抜本的に変え、事務処

理の効率化・高付加価値化を図ります。

(3)コスト適正化のための業務・システム変革

【重点取組方針 5】全体最適化の推進

庁内におけるシステム全体最適の観点から、個別業務システムの過剰な改修や重複

投資の抑制、並びに類似システムの統廃合など、既存システム等の見直しに着手します。

見直しにあたっては、国や県が提供する共通プラットフォームや、民間のクラウドサー

ビス等の利用、さらには「西九州させぼ広域連携都市圏16」におけるシステムの共同利

用についても検討の視野に入れ、ICT 投資コスト、特にコストの大半を占める運用コス

トの適正化を図ります。

(4)実効性を確保するための組織変革

【重点取組方針 6】ICT ガバナンス体制の見直し

地域情報化推進本部のマネジメントの下、情報政策課及び ICT アドバイザー(外部

コンサルタント)を中心として、本戦略に定める方向性、基本方針並びに各重点取組方

針に基づく各部局の取組を積極的に促進するためのガバナンス体制を再構築します。

【重点取組方針 7】ICT 人材の育成強化

システム調達、運用等に関する標準的・実践的なドキュメントや様式を整備するとと

もに、データを主体的に活用する能力等、これからの行政職員に求められる ICT スキ

ルを整理し、それに基づく計画的な研修を実施することで、デジタル変革を推進する

ICT 人材の育成を進めます。

【重点取組方針 8】ICT 分野における官民連携・協働体制の構築

人口減少局面における複雑かつ分野横断的な課題に取り組んでいくためには、AI、

IoT、5G 等の新たなテクノロジーの活用や、官民の垣根を超えたデータの利活用を通

じて、様々な主体によるイノベーションの創出を図ることが必要不可欠であることか

ら、ICT 分野における新たな連携・協働の仕組み、枠組みの検討・構築を目指します。

16 平成 31 年 4 月に佐世保市を連携中枢都市として、平戸市、松浦市、西海市、東彼杵町、川棚町、波佐

見町、小値賀町、新上五島町、伊万里市、有田町の 11 の自治体が県堺を越えて形成。令和 2 年 4 月から

佐々町も加入。近隣の市町と連携して、行政サービスにかかる費用を節減するなど、スケールメリットを

生かした取り組みを進めるための枠組み。

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5 推進にあたって

(1)実行計画の策定

前項の重点取組方針に基づき、各施策を確実に実行していくためには、具体的な取組や実

行の主体、取組の期間、KPI17等を明確にする必要があります。一方で、近年の社会情勢の

変化や技術革新のスピードは著しく、戦略策定当初の環境から大きく変化することが予測

されます。

そこで、これらの環境変化に柔軟に対応しつつ、本戦略の着実な推進を図るため、毎年度、

具体的な取組内容を実行計画として取りまとめます。地域情報化推進本部において、その進

捗状況を把握し、継続的な事業の拡充や展開、見直しを実施します。

(2)幅広い意見の聴取と反映

市民中心の行政サービスを実現するためには、行政の視点ではなく、サービス利用者の立

場に立って、検討を進めていくことが重要です。

そのため、上記の実行計画は随時公開することとし、各施策、取組の実施にあたっては、

ウェブアンケート等を活用するなど、必要に応じて産学官民の意見を幅広く取り入れ、実施

内容に反映するよう努めます。

(3)デジタル格差対策

デジタル化は、本市が目指すまちづくりや市民中心の行政サービスを実現するための手

段であり、それによって、取り残される人があってはなりません。

よって、地理的な制約や身体的な条件等に関係なく、多様な属性を持つ全ての人が、不安

なくデジタル化の恩恵を享受できる環境の整備についても、適切な配慮を行うとともに対

応を進めるものとします。

17 Key Performance Indicators の略。目標の達成度を評価するための主要な評価指標のこと。

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佐世保市 ICT 戦略

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