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商法Ⅰ 2/3

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商法Ⅰ(全3回の2回目)

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商法Ⅰ 2/3

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商法Ⅰ

小菅成一氏(嘉悦大学経営経済学部)

2011/08/13

利害関係者の議論は会社法以前において会社は株主のモノという認識が大半であった。

ステークホルダーを意識した会社でなければ現在法に対処できない。

企業組織において、取引先=債権者であることが殆どである。

⇒いかに「債権者を保護」するのか。

任意規定 自由に取決めをしましょう(金利や支払期間など)

強行規定 強行規定は法律に(絶対に)従ってください

⇒ 公序良俗(民 90)という言葉があるが、それ以外で任意規定が可能である。

立法的商行為の場合は商法が適用される。

■商行為法の適用範囲(当事者の一方にとって商行為、当事者一方が個人、当事者の双方が個人

を分類し、対応する条文番号を付せよという出題があるので、ここでは羅列のみ)

商事代理(504)、商行為の委任、申込の特則、商事法定利率、債権履行場所、取引時間、債権

の消滅時効、多数債務者、保証の連帯性、流質の許容、報酬請求権、利息請求権(立替払)、利

息請求権(消費賃借)、交互計算、寄託、許諾の通知義務、物品保管義務、目的物の供託競売、

目的物検査・通知・保管・供託義務、定期売買、商事留置権

復習メモ:代理保険は営利保険が該当するが、

生命保険会社は相互会社と名乗るほど営利性はないと主張している。信用金庫や信用組合は地域型

で地域の公共利益を増進している機関としているので銀行機能を果たしていないと主張している。

復習メモ:生命保険会社は保険業法の下で運営されており、商法とは違った世界である。

業法=公法である。(他には銀行業法などがある)

⇒ 非営利・営利であっても保険業法は商法が準用される。

復習メモ:自家栽培したものを無人販売するのは商法適用対象外となるようにみえるが、無人であって

も建屋がある場合は擬制商人として扱うので商法対象となる。(仕入れ原価が設定できなくても)

どんな業種であれ、そんなので営業できるのか疑問であっても一度会社として登記して設立してしまえば、

すべての行為は商行為になる。

復習メモ:地方自治体が運営するものであっても、商法は適用される。例:東京都バス

公団のマンション運営も商法適用範囲。

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■商業の情報開示

登記 ⇒ 登記簿で相手の会社を知ることが出来る。

⇒ 一般公衆に公示

■株式の譲渡制限

会社法によると、株式の譲渡制限をしていない会社もある ⇒ 公開会社(会社法2条5号)

⇒ 会社の承認がないと株が譲渡できない

Cf.) サントリー:鳥居一族が大株主が故に経営統合も難しい。(譲渡制限)

メモ:代表取締役については氏名のみならず住所まで記載することがあった。

それを悪用されたことがある。東京電力の登記簿。

⇒ その自宅住所をネットへ流され、悪戯ではすまない事態に展開し警護がつくなどに発展した。

⇒ 決定ではないが今後、住所まで記載しなくてもいい方向になりそうである。

株主総会 監査役(1人~) (代表取締役、代表取締役をチェックする)

選任・解任

取締役会(3人~) 単なる取締役は、取締役会のメンバーにしかすぎない(※)

選定・解職

代表取締役(1人~) 会社を代表して取引活動をする

(※)対外的な取引活動ができない

大会社(会社法第2条第6号では次の要件いずれか。 Ex.林原は負債総額を満たすw)

資本金5億円以上

負債総額200億円以上

会社法 362条①~⑤号:取締役会の権限(取締役会の設置会社)

Cf. 登記簿に、取締役会設置会社に関する事項、監査役設置会社に関する事項もある。

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■登記 ⇒ 登記所

(本店所在地を管轄する登記所にて)

→ 正確には法務局

http://www.moj.go.jp/ONLINE/COMMERCE/11-1.html

インターネット登記(財団法人民事法務協会 http://www1.touki.or.jp/ )

登記の変更等

→遅滞なく(会社法 915条:変更の登記 → 2週間以内)

■商業登記の一般的効力 登記前後で区別可能。

・商法9条1項前段:

商業登記となる事項は、投機の後でなければ善意の第三者に対抗することができない。

・商法9条1項後段:

もっとも、登記の後であっても、「正当な事由」によってこれを知らない第三者に対しては対抗することがで

きない。

→会社の代表者が変わったときは登記変更を経なければならない、

変更しなければ取引無効を主張できるか?

→ 善意の第三者は代表取締役が辞任していたことを知らなかった場合のみ取消無効を主張できる

悪意(知っていた)は取引の無効を主張することはできない。

→対抗しなえない第三者:登記当事者の方から第三者に向かってある事項を主張しないことを

いう。第三者の方から登記当事者に向かって主張することは認められる。

ただし第三者が「正当の事由」によって、これを知らなかった場合は、その限りではない。

これを商業登記の一般的効力という。(なお、会社法 908条 1項にも同様の規定がある)

・正当事由に関する要件

登記を見ようとしても見られないような客観的事情をいう。(災害、戦争、暴動等のため交通が途絶して

登記所に赴くことができないような事情を指す。したがって、長期の旅行や病気等の主観的事情は含ま

れないと解されている)最高裁昭和52年12月23日判決

・・・現在はインターネット等で自由に入手可能である。この要件の見直しがあるかもしれない。

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■表見代表取締役

→外観信頼保護

① 会社法上の外観信頼保護との関係

Y社

無効主張したい

代表取締役として 取引

登記していない A(副社長) X(善意)

XがAに代表権がないことを知らなかった。XはYへ対して取引無効を棄却できる。

→ 外観信頼保護より

ちょっと待てよ、登記簿見れば登記されているか否かは判断できるのでは?

⇒ 登記 or 外観 どちらが優先されるのか?

実際に最高裁昭和49年3月22日判決があり、登記 < 外観 が採用された。

判例は、外観規定が優先されると判示。 (後方)

・取引の度に登記簿を確認するのか?

…それは事務煩雑になるよね → 外観信頼保護が優先された。

13:15~

繰り返しになるが、外観信頼保護が商業登記よりも優先されるんだということ。

② 民法上の表見代理との関係は?

Y社

無効主張したい

取引

辞任登記済み A(副社長) X(善意)

民法§112 を主張

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表見代理

民法§109, 110,112 が該当するが、

ここでは民法§110 を例とする。

本人 Y 無効

代理人 A X(善意・無過失)

Aは Yの権限を有す 取引をした (民法 112主張)

民法の時間ではないので詳細説明は控えるが、商法だけでは対抗できないこともあるという例。

かつて本人Yが代理権をAに与えていた。現在は代理権を剥奪している、が相変わらずAは代理を名

乗っている。Xは変わらず善意・無過失であれば取引は有効であり無効にはあたらない。

登記 > 民法(民§112)

判例は、登記の規定が優先するとの立場を示した。

→学説からは批判がでた。

⇒ 会社法§354 類推適用。

■不実登記の効力

→ 商法§9②(会社法§908②)

名目的取締役(学術上の名目であり法律条文に規定されていない)

株主総会が開催されておらず、会議議事録もなく、しかし役員としてAさんが名目的に存在する場合。

この会社が倒産した場合、債権を持つ他者が役員に対する責任の追及をAさんに行うことができる。

役員に対する責任の追及

⇒ 取締役(不実の登記の実現に協力した)にも責任を負わせた。

⇒ 会社法§429 役員等の対第三者責任(債権者など)

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■会社(商人)の取引活動に従事する者 ⇒ 商業使用人(会社の使用人)

従業員のこと

社員 ⇒ 法人の構成員(出資者)

会社 ⇒ 使用人へ指揮・服従 (雇用・委任・請負)

雇用 ⇒ 従業員

委任 ⇒ 役員

請負

代理権 ⇒ 法律行為

会社の支配人(会社法10条)

営業所のトップ=支配人と呼んでいる。 法律上の支配人=全権限あり

本店・視点のトップ

→ 名称は何でもよい(支店長、支社長、営業所長等) 法律上の支配人ではない

= 表見支配人

表見支配人は当該店のトップ

(会社法13条)

例題:内規で5億円以上の取引は無断で出来ない(本体の許可が必要)

Y百貨店 無効主張

K店長 X社(善意)・・・Kの権限が制限されていることを

(登記している) 10億円の取引 知らなかった。

⇒Yは無効主張できない。

会社法11条①

支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

裁判上 → 訴訟行為

裁判外 → 営業活動に関する行為、法律行為

③ 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(民法 644:受任者の注意義務 善管注意義務)

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■競業避止義務

→ 取締役、支配人は営業禁止義務が課せられている。

協業禁止特約 (会社が従業員へ課す採用契約)

→ヘッドハンティングで転職した後に、損害賠償訴訟を受けることも。クワバラクワバラ

■表見支配人

例題:家具販売業を営むYの青山店に勤務するKは「店長」という肩書を与えられていたが、実際には

単なる売子であった。ところがKはY本社に無断で、S家具工業から青山店用の椅子とテーブルを20

客分買い入れてしまった。S家具工業はKが真実の店長ではないということを知らない。

無効主張

K(青山店長) S (善意)←→悪意=重過失

(家具の取引) 悪意と重過失は同一

仕入等の取引に (知り得るような)

ついての権限は付与

されていない。

ここで、表見支配人として考えてみる。

→ 営業所の事業について、一切の裁判外の権限があるものとみなす。

善意のSを保護する制度が表見支配人制度である。

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■営業所の実体

Aは支社長名義で約束手形を振り出した、会社はAに手形振出しの権限を与えていない。

(最高裁昭和37年5月1日判決)

ある営業所としての実体が無いと、そこの代表者や支配人は表見支配人にあたらない。

↑最高裁の立場

主たる事業者から離れて独自に取引ができることが必要

新規保険業務の取次や募集が、その業務のすべてであった。

会社法 14条 自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任

現商法25条

(当時、商法43条)

最高裁平成2年2月21日判決 (イトマン関連の事件)

Y社

無効主張

A(係長) X社(善意かつ無重過失)

契約の勧誘と (取引)

交渉の権限のみ

事実行為しか与えられていない

使用人の権限について

例題:SはスーパーYで買い物をしていたところ、レジに店員がいなかった。すると店内で品物の陳列をし

ていた店員のTがレジ打ちを行い、Sは商品を購入することができた。しかし、その後Yの店主から「Tに

は品物を売る権限を与えていないので、お客様との取引はなかったことにしてほしい」と言われた。Sは品

物を返さなくてはならないのか?

商法では物品の販売を目的とする店舗の使用人は、その店舗内に現存する物品を販売する権限を有

する者とみなされる(商法26条、会社法15条)

ただし、商法26条、会社法15条は、その店舗にある物品の現実の販売等に関して適用がなされ、

売買契約はその店舗内において行われることから、その店舗内に存在しない物品または店舗街で行われ

る売買契約については適用されない。(福岡高裁昭和25年3月20日判決)

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■商号、商標

商号 → 会社(商人)の名前

商標 → ブランド名

// 松下電産はパナソニックを商号へ替えた。

商人は原則として商号を自由に選べる(商法 11条①、会社法6条①)。

→ 商号選定自由の原則

旧商法 ⇒ 同一の市町村内において、同一の商法を登記することが規制されていた。

会社法 ⇒ 同一商号・同一住所の禁止

会社法8条①

何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはなら

ない。

不正の目的・・他の商人(会社)の商号権を侵害する意思を必要とせず、他の商人(会社)の営業

であるという誤認を生じさせて、自己の企業活動を有利に展開しようとする意志で足りる。

【判例】知的財産高等裁判 平成19年6月13日判決「控訴棄却」

⇒スポーツ・マーケティング・ジャパン株式会社(原告)

対 株式会社ジャパン・スポーツ・マーケティング(被告) ともに渋谷区の企業

商号の使用と「不正の目的」 筑波大学教授 弥永真生氏 による会社法判例解釈は

ジュリスト 2009.4.15 P.76に掲載がある。

要約:スポーツ、マーケティング、ジャパンは一般名称であり、それらの組み合わせである。

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■不正競争防止法

商号の使用に関する規定がある。

一般の人々の間で広く認識されている(周知性のある)他人の氏名・商号・商標と同一または類似

の商号を使用して、他人の商品、営業上の施設または活動と誤認・混同を生じさせる者、あるいは著名

な商号等を使用する者がいる場合、これによって営業上の利益を侵害される恐れのある者は、当該行

為者に対し、その行為の差止(不正競争防止法3条)または損害賠償を請求することができる(不

正競争防止法4条)

【判例】最高裁昭和59年5月29日判決

不正競争防止法2条1項1号に規定されている「類似性・混同を生じさせる行為」とは何か?

⇒最高裁は「不正競争防止法2条1項1号にいう」混同を生ぜしめる行為には、周知の他人の商品

表示又は営業表示と同一又は類似性のものを使用する者が、自己と⇒他人とを同一の商品主体又は

営業主体と誤信させる行為をも包含し、混同を生ぜしめる行為というためには両者間に競争関係がある

ことを要しないと解するのが相当である。」と判示している。

以上