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Page 1: 支援シーズ・臨床試験一覧...NY-ESO-1 抗原特異的TCR 遺伝子導入T リンパ球輸注による同種移植後再発難治性成人 T 細胞白血病リンパ腫を対象とした多施設共同臨床第Ⅰ相医師主導治験

シ ー ズ 名 担当研究室/診療科

九州大学大学院 薬学研究院先端医療研究開発学講座特発性肺線維症(炎症性肺疾患)治療用吸入ナノ粒子製剤の臨床開発

熊本大学 発生医学研究所幹細開発胞誘導分野ニーマンピック病C型の新規治療薬の開発

九州大学大学院 薬学研究院 革新的バイオ医薬創成学独自に発見した全く新しいphenotype のNK 細胞を用いた養子免疫技術の開発

九州大学病院 整形外科自家骨採取は不要 炭酸アパタイト骨補填材による骨再生

重症全身性硬化症に対する自己造血幹細胞移植

九州大学病院 整形外科全身性エリテマトーデス患者における初回副腎皮質ホルモン治療に続発する大腿骨頭壊死症発生抑制治療

九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科

ハイリスク症候性人工弁周囲逆流に対する経カテーテル逆流閉鎖術の安全性及び有効性 を検討する医師主導治験(RESEAL試験)

九州大学病院 内分泌代謝・糖尿病内科

難治性クッシング症候群及びサブクリニカルクッシング症候群を対象とした11β-HSD1阻害剤の臨床開発

がん・感染症センター都立駒込病院 肝臓内科C型肝硬変等に対するCBP/β-カテニン阻害剤を用いた抗線維化治療薬の開発

九州国際重粒子線がん治療センター 放射線科手術不能肺野型I期非小細胞肺癌に対する重粒子線治療の多施設共同臨床試験

がん・感染症センター都立駒込病院 肝臓内科原発性胆汁性胆管炎に対する抗線維化治療薬の開発

九州大学病院 泌尿器科結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に対して医療費適正化を目指した凍結療法の安全性と有効性の検討

広島大学病院 歯科骨髄間葉系幹細胞集塊を用いた歯周組織再生療法開発

福岡大学病院 麻酔科・緩和医療血管拡張効果のある超音波吸引補助装置の開発

九州大学病院 睡眠時無呼吸センター

早期診断・治療介入を可能にする睡眠時無呼吸合併慢性心不全患者における心拍出量推定医療機器の開発

宮崎大学 医学部内科学講座 循環体液制御学分野

長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 腫瘍医学分野

インフリキシマブ治療抵抗性クローン病患者を対象としたアドレノメデュリン製剤による医師主導治験の実施

九州大学病院 呼吸器科PD-1阻害抗体の抗腫瘍効果を増強するミトコンドリア活性化剤を用いた新規併用治療法の開発

NY-ESO-1 抗原特異的TCR 遺伝子導入T リンパ球輸注による同種移植後再発難治性成人T 細胞白血病リンパ腫を対象とした多施設共同臨床第Ⅰ相医師主導治験

長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 リウマチ・膠原病内科学分野シーズ探索研究から発展する家族性地中海熱(FMF)に対するトシリズマブの医師主導治験

九州大学大学院 工学研究院 機械工学部門

小型・軽量・安価な手指リハビリ用訓練ロボット装具SMOVEの上市に向けた臨床試験および製品化技術開発

京都大学医学部附属病院 脳神経外科脳卒中急性期の上肢運動麻痺に対するHAL-SJを用いたパイロット試験

九州大学病院 別府病院 放射線科 イリノテカン含侵させた薬剤溶出性球状塞栓物質使用肝動脈化学塞栓療法

慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するエドキサバン(DU176b)の適応拡大を目的とした医師主導治験

九州大学病院 眼科ROCK阻害剤リパスジルを用いた未熟児網膜症に対する点眼療法の開発

鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 遺伝子治療・再生医学分野難治性肝疾患の根治を目指したHB-EGF蛋白医薬の開発

熊本大学 発生医学研究所幹細開発胞誘導分野メチルマロン酸血症の新規治療薬開発

宮崎大学 医学部内科学講座循環体液制御学分野PEG化アドレノメデュリン誘導体の炎症性腸疾患治療薬としての研究開発

福岡大学 医学部総合医学研究センターFX-39を用いたPET分子イメージングによる動脈硬化性疾患の新規診断法の確立

大阪市立大学大学院 医学研究科・発達小児医学分野

川崎医科大学 神経内科学教室

増幅したヒト臍帯血造血幹細胞の非臨床POC取得

筋疾患・心疾患迅速診断のための革新的バイオマーカーの実用化

九州大学大学院 医学研究院循環器内科心臓を保護する迷走神経刺激カテーテルの開発と臨床応用

九州大学大学院 薬学研究院生命物理化学分野新規細胞死阻害に基づく萎縮型加齢黄斑変性進行抑制薬の開発

九州大学 先端医療イノベーションセンター粘膜下層剥離術(ESD)用ロボットの研究開発

鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター抗重症熱性血小板減少症候群(SFTS)薬としての新規アモジアキン誘導体の開発研究

福岡歯科大学 総合医学講座 外科学分野・内視鏡センター

鹿児島大学大学院 医歯薬総合研究科 生体情報薬理学分野

Collagen嵌合現象を応用したLaser組織接合システムの研究開発

抗がん剤オキサリプラチンで誘発される急性末梢神経障害性疼痛治療を目指す新規PACAP特異的受容体拮抗薬の非臨床研究

佐賀大学医学部 病因病態科学講座 臨床病態病理学分野コラーゲン新素材(ブタアテロコラーゲンビトリゲル)を用いた再生医療デバイスの開発

九州大学大学院 薬学研究院革新的バイオ医薬創成学虚血肢治療製剤に関する臨床開発

九州大学大学院 薬学研究院先端医療研究開発学講座

重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための安心安全のナノ医療製剤(希少疾病用医薬品)の実用化臨床試験

佐賀大学医学部 眼科学講座

九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科/免疫・膠原病・感染症内科

眼科手術の際に使用する手術補助薬(ブリリアントブルーG250:BBG)の開発

九州大学病院 呼吸器科

九州大学病院 循環器内科

次世代シークエンサーを用いたHER2遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌に対する治療開発

九州大学病院 肝臓・膵臓・胆道内科食道アカラシアの発症予防としての食道胃接合部通過障害に対する治療法の開発

●全支援シーズの内、機密情報を含む課題名については掲載しておりません。国産新規レンチウイルスベクターによる難治性網膜変性疾患治療製剤宮崎大学医学部 感覚運動医学講座眼科学分野

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重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための安心安全のナノ医療製剤(希少疾病用医薬品)の実用化臨床試験

主要シーズの紹介

眼科手術の際に使用する手術補助薬(ブリリアントブルーG250:BBG)の開発

虚血肢治療製剤に関する臨床開発

 近年わが国では動脈硬化性疾患、中でも下肢閉塞性動脈硬化症の患者数は著しい増加傾向にあります。 「治療的血管新生」の概念が提唱され、多くの臨床試験が行われましたが、従来技術での臨床効果は限定的でした。 我々は従来の常識を捉え直し、複数の血管新生因子とベクター

の組合せによる詳細な効能評価の結果、組換えセンダイウイルスベクター(rSeV)と塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)の組合せ(開発コード:DVC1-0101)が最も有効であることを明らかにしました。 rSeVは国産高性能ベクターで、細胞質で転写を行う為、染色体遺伝子に影響が無く安全性に優れます。また遺伝子発現レベルが強力で、従来のベクターと比較して千分の一以下の投与量で効果を発揮します。 rSeVを治療へ使用する試みは世界にも例が無く、九大が世界初になります。

 先行臨床研究は既に終了。DVC1-0101投与との因果関係を積極的に示唆する有害事象は無く、認容性は高いと考えられ、特に歩行機能改善効果を有することが示唆されました。 この結果を受け、現在高度間歇性跛行肢を対象とした第Ⅱb相治験が計画されており、2014年10月より症例登録を開始し、重大な有害事象の発生もなく現在治験実施中です。 本臨床開発が成功した場合、高度間歇性跛行肢から重症虚血肢への移行を食い止めることが可能になり、患者さんのQOLの改善、生命予後の改善に寄与することが期待されます。またrSeVの安全性と有効性の証明につながり、様々な疾患治療への応用の可能性が広がります。

静脈内投与製剤

ピタバスタチン(封入率 %)

肺血管抵抗

ナノ粒子製剤の電子顕微鏡写真 肺高血圧症ラットモデルを用いた有効性試験

溶媒

正常レベルまで改善

日本発心血管病治療用ナノ粒子製剤(医薬品)

ナノ粒子製剤のモデル図(平均粒径 )

治験薬 製剤

ピタバスタチン

ピタバスタチン 静脈内投与静脈内投与されたナノ粒子製剤は血管透過性が亢進された肺動脈と炎症細胞に送達

ILM-BLUE®を用いた硝子体手術(黄斑上膜)

 肺動脈性肺高血圧症はQOLの悪化をもたらす予後不良の希少難治性疾患です。プロスタサイクリン持続静注法や、ホスホジエステラーゼV阻害薬などの新しい治療法が導入されていますが、その有効性は限定的であり、長期的生命予後改善効果は未確立な状況です。 本研究開発の目的は重症肺高血圧症の予後とQOLを改善する低侵

襲かつ安心・安全なピタバスタチン封入ナノ粒子製剤(治験薬コード:NK-104-NP)を希少疾病用医薬品として実用化(薬事承認を最終目標)するための臨床試験を行い、臨床Proof o f Concept(POC)を取得することです。NK-104-NPの静脈内投与によって肺高血圧症モデルの病態が著明に改善(既に完成した肺高血圧症を正常レベル近くまで改善できる、図参照)することを明らかにしました。GLPでの各種安全性試験を実施し、無毒性量を得ています(非臨床POC取得)。すでに、健康成人日本人男性を対象としたPhase Ⅰ単回および7日間反復静脈内投与試験(医師主導治験)を完了しており、安全性、忍容性を明ら

かにするとともに、薬物動態パラメーターも用量に依存して増加し、蓄積性も認められないことを確認いたしました。現在、肺高血圧患者を対象としたPhase Ⅱ試験を実施中であり、最終的に、薬事承認が得られれば重症肺高血圧症患者のQOL・生命予後を改善できる高効果・低副作用の革新的ナノ治療が期待されます。

患者さんに届くデバイス開発を目指します! 心不全は一度発症すると一部の進行ガンと同程度に予後不良な疾患です。日本を含む先進諸国では、心不全患者が急増する「心不全パンデミック」の到来が大きな社会・健康問題となっており、心筋梗塞後心不全はその主要な要因です。現在の心筋梗

塞治療は、発症からできるだけ早い時間のカテーテル再灌流療法が大事ですが、同時に迷走神経を電気的に活性化させることで心筋ダメージが著明に抑えられ、心不全増悪が予防されることが近年明らかとなっています。私

どもの研究チームは、この治療技術を臨床応用するためにニューロシューティカルズ社(東京、本郷)とともに上大静脈に並走する迷走神経を安定かつ安全に刺激できるバスケット型カテーテルの開発に成功しました。現在、特許戦略や薬事戦略などを並行して進め、実用化を目指しています。平成28年~30年度にAMED先端計測事業(AMED理事長賞受賞)、令和元年よりAMED医工連携事業に採択をいただき、産官学の協力体制のもとで本邦初となる迷走神経刺激に特化したカテーテルの臨床試験を計画中です。

 繊細な操作を必要とする眼科手術においての切除対象となる組織の視認性の確保は手術を安全に行う上で極めて重要な要素です。眼科疾患のうち糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑上膜などの一部の網膜・硝子体疾患の治療に際し硝子体手術が行われています。その手術中に網膜内境界膜剥離という極めて繊細な手術手技が必要な場合があります。内境界膜は平均

の厚さが2.5μmときわめて薄い透明な組織であり、非染色下では手術操作が困難で、剥離の際に染色剤を用いた内境界膜染色が行われその切除が行われます。 また、白内障手術においても成熟白内障や角膜混濁有するものなど術中の組織(水晶体前嚢)の視認が不良な難症例については、手術中に染色剤を用いた術中の生体染色が必要となることがあります。ところが日本においては、これらの組織の術中染色が可能な安全性の高い承認された眼科手術補助剤はなく、これまでは既存の色素の適応外使用などで対応していました。したがってあらたな補助剤の開発はこの領域における長年の課題でもありました。

 われわれはかねてよりこの問題を解決するために、ブリリアントブルーG250(Brilliant Blue G : 以下BBGとする)を主成分とする新しい染色剤であるA0001の開発を行ってきました。本剤はすでに九州大学より企業へライセンスアウトされた後、2010年よりILM BLUE®としてClass ⅡAの医療機器の認可をうけ、EUですでに上市されており、現在日本と米国を除く世界74カ国で発売され広く用いられております。日本と米国では本剤はその薬事の関係から医薬品としての対応が必要で、米国ではその承認申請も完了しています。 本剤の日本への導入にあたっては、硝子体手術時の網膜内境界膜可視化および白内障手術時の水晶体前嚢可視化の臨床効果の判定と安全性を評価する第Ⅲ相多施設共同医師主導治験をすでに完了し、令和2年中に製造販売承認申請が予定されています。本成果は、安全性の高い眼科手術の実施につながると期待されます。

心臓を保護する迷走神経刺激カテーテルの開発と臨床応用

九州大学大学院薬学研究院 革新的バイオ医薬創成学 教授 米 満 吉 和

九州大学大学院医学研究院 循環器内科 特任講師 朔 啓 太

九州大学大学院薬学研究院 先端医療研究開発学講座 教授 江 頭 健 輔

佐賀大学医学部眼科学講座 教授 江内田 寛

装置のイメージ図 刺激カテーテル先端 カテーテル留置像

※ プロトタイプ機を動物に使用

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C型肝硬変等に対するCBP/β-カテニン阻害剤を用いた抗線維化治療薬の開発

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次世代シークエンサーを用いたHER2遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌に対する治療開発

国産新規レンチウイルスベクターによる難治性網膜変性疾患治療製剤

 眼科の病気でよく耳にする「白内障」や「緑内障」は、世界の中途失明原因の上位を占める疾患ですが、手術療法の進歩や点眼薬などの充実により治療することが可能となりました。一方、難治性網膜変性疾患のうち、網膜色素変性(以下、色変)という疾患は有効な治療法が確立されていない眼科領域の難病の一つです。 色変では様 な々遺伝子異常によっ

て、視細胞(光を感じる細胞)が失われてしまいます。遺伝子導入を用いて神経栄養因子の一つである色素上皮由来因子(PEDF)を眼内で大量に産生し、視細胞を護ることが視細胞保護遺伝子治療という治療のコンセプトです。本プロジェクトの目的は、色変の新しい治療法として視細胞保護遺伝子治療を定着させるため、臨床研究を実施することです。 安全性に優れた国産ベクターである第3世代アフリカミドリザル由来サル免疫不全ウイルス(SIV)ベクターを開発し、疾患モデル動物での高い効能とサルでの高い安全性を証明しました。平成24年8月に厚生労働大臣の臨床研究実施計画の了承を受け、

安全性を確認するための臨床研究を平成25年3月より開始しました。平成25年度内に低用量群にあたる5名の被験者へ投与し、全症例の2年間の観察期間において、臨床研究を中止しなくてはならないような重篤な合併症はありませんでした。また、この臨床研究と並行して、医師主導治験(Ⅰ/Ⅱa相)の準備を進めておりましたが、令和元年6月に第一症例目の被験者への投与を実施しました。今後、症例登録を進めていきます。 本プロジェクトにより色変の視機能維持が可能になれば、QOLを大幅に改善できる可能性が高く、患者様にとって大きな福音となるばかりでなく、その保険医療分野に果たす役割は大きいと考えています。

 国内で約20万人以上存在するHCV肝硬変、特にCh i l d -Pugh (CP) score B以降の非代償性肝硬変に対する治療薬は存在せず予後不良であり、新たな治療薬開発は喫緊の課題である。我々はヒトC型肝硬変患者に対してCBP-β-カテニン阻害剤であるPRI-724の安全性及び有効性を確認する医師主導治験(PhaseⅠ) を計画し、平成26年9月よ

り投与開始し、14例に治験薬が投与された。有効性に関しては、治験期間中登録時CP score Bであった7症例のうち、投与終了後の評価では2症例がCP score Aに改善した。肝生検による病理組織の解析の結果、中用量( 40 mg/m2/day)で、肝線維化面積の改善が認められ、特にCP score B症例で治療効果を認めた。上記Phase Ⅰ試験の治験結果をもとに、“CBP/βカテニン阻害薬 (PRI-724)のC型またはB型肝炎ウイルスに起因する肝硬変患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験”の第I相段階を都立駒込病院にて平成30年7月から開始した。現時点で140、280及び380 mg/m2/4hr投与群3例ずつの合

計9名の治験薬投与を実施している。本治験では、投与方法を先行治験の1週間持続投与1週間休薬から週2回4時間投与に変更した。今後第I相段階で推奨用量を決定し、多施設でのPhase Ⅱa相段階の試験を予定している。

 高齢化社会にともない近年では虚血性心疾患よりも弁膜疾患が増加しており、日本胸部外科学会の統計によれば弁膜症全体の手術件数は10年前と比較すれば60%程度増加している。その中でも人工弁置換術は広く行われているが、術後合併症として、血栓症、人工弁感染、パンヌス、生体弁機能不全、人工弁周囲逆流

(paravalvular leak; PVL)などが報告されている。これらの術後合併症のうち、人工弁周囲逆流は、僧帽弁置換術後の約7~17%、大動脈弁置換術後の2~10%に生じると言われ、遷延性溶血性貧血や心不全の症状をきたす。一般的にこのような有症候性のPVLが発生した場合、これまでは再手術が推奨されてきた。しかしながら術後の成績は必ずしも良好ではなく、10%程度におよび高い術後死亡率、術後PVL再発などが問題点として挙がっている。このような状況を鑑み、開胸手段によらないカテーテルを用いた経皮的PVL閉鎖術が、20年ほど前より欧州では行われてきた。既に2014年

に発表された米国の弁膜症治療に関するガイドラインでは手術がハイリスクの症候性PVLに対してカテーテル治療がクラスⅡaとして取り上げられている。翻って本邦においてはいまだ未承認であり実施例も少ない。よって今回我々は、2014年にCE承認されたPVL閉鎖専用デバイスである、Occlutech PLD デバイス(Occlutech社)を用いて人工弁置換術後のハイリスクPVL患者を対象とした経カテーテル人工弁周囲逆流閉鎖術の安全性及び有効性を評価する医師主導治験を計画した。

 ゲノム情報や臨床情報を収集し分析することで革新的医薬品等を開発し、がんの克服を目指す「がんゲノム医療」を推進していくことが2018年3月に閣議決定されました。九州大学病院を含む全国11施設ががんゲノム医療中核拠点病院に指定され、がんゲノム医療の推進に中心的な役割を果たしていくことが求められています。

 肺癌の85%を占める非小細胞肺癌においては、EGFR, ALK, ROS1, BRAFなどのドライバー遺伝子と呼ばれる分子標的治療のターゲットとなる遺伝子異常の発見と、それらに対する分子標的治療薬の開発が、薬物療法の効果を目覚ましく改善させてきました。HER2 exon 20挿入変異は非小細胞肺癌の2-4%に認められ、ドライバー遺伝子変異のひとつと考えられています。T-DM1(商品名カドサイラ)は、トラスツズマブ(抗HER2抗体)とDM1(チューブリン重合阻害剤)の複合体であり、米国で行われた臨床試験にてHER2 exon 20挿入変異陽性の非小細胞肺癌に対し、奏効率が55%と良好であったことが報告されています。T-DM1は本邦においてはHER2

陽性の手術不能又は再発乳癌に対して承認されていますが、非小細胞肺癌に対しては承認されていません。 私共は九州大学病院をはじめとするがんゲノム医療中核拠点病院を中心に『HER2 exon 20挿入変異陽性の進行・再発非小細胞肺癌に対するT-DM1の効果を検討する第Ⅱ相医師主導治験』を実施し、本邦においても同疾患に対するT-DM1の適応拡大につなげたいと考えております。本治験は2018年度~2020年度のAMED革新がん事業(岡本班)に採択され、全国8施設の多施設共同試験で2019年2月より治験開始しています。

ハ イ リ ス ク 症 候 性 人 工 弁 周 囲 逆 流 に 対 す る 経 カ テ ー テ ル 逆 流 閉 鎖 術 の 安 全 性 及 び 有 効 性 を 検 討 す る 医 師 主 導 治 験(RESEAL試験)九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科 特任准教授 有 田 武 史

がん・感染症センター都立駒込病院 肝臓内科 部長 木 村 公 則

九州大学病院 呼吸器科 診療准教授 岡 本 勇

宮崎大学医学部 感覚運動医学講座眼科学分野 教授 池 田 康 博

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