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TCFDサミットについて 0 世界初となる「 TCFDサミット」を東京で開催し、「環境と成長の好循環」 のコンセプトの下、世界の産業界・金融界の リーダーが集結し、今後のTCFDの方向性を議論。 我が国からは、投資家が企業の開示情報を評価する際の指針となる、グリーン投資ガイダンス」を発表し、多くの賛同 を得る。 また、TCFD サミット総括において、ダイベストメントからエンゲージメントへ、気候変動のリスクだけでなく機会の評価の重 要性等のメッセージを発信。 1.日程・場所 日時:2019年10月8日(火)13:00-18:00 場所:ザ・キャピトルホテル東急 主催:経済産業省 共催:WBCSD(※)、TCFDコンソーシアム 参加人数:約350名 2.主な出席者 経済産業大臣 伊藤 邦雄 TCFDコンソーシアム会長、一橋大学大学院特任教授 産業界: ピーター・バッカー WBCSD 会長兼CEO 進藤 孝生 日本製鉄 代表取締役会長、経団連 副会長 十倉 雅和 住友化学 代表取締役会長 チャールズ・O・ホリデイ ロイヤル・ダッチ・シェル会長 金融界: 水野 弘道 PRI理事、GPIF理事兼CIO マーク・カーニー イングランド銀行総裁、前FSB議長 メアリー・L・シャピロ TCFD事務局特別アドバイザー(元SEC議長) 格付機関等:ベア・ペティット MSCI 社長 ワカス・サマド FTSE Russell CEO マーティン・スカンケ PRI議長 ※ヴァルディス・ドンブロウスキス 欧州委員会副委員長(ビデオメッセージ) エンゲージメントの重要性 オポチュニティ評価の重要性 アジアにおける開示の課題と今後の展望 3.テーマ World Business Council for Sustainable Development: 持続可能な開発のための世界経済人会議 TCFDサミット2019では、参加者の国内移動及び会場でのエネルギー使用に伴うCO2排出量(合計約2トン)相当を、 J-クレジット制度を活用してオフセットしました。(J-クレジット制度についてはこちら:https://japancredit.go.jp/

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TCFDサミットについて

0

世界初となる「TCFDサミット」を東京で開催し、「環境と成長の好循環」のコンセプトの下、世界の産業界・金融界のリーダーが集結し、今後のTCFDの方向性を議論。

我が国からは、投資家が企業の開示情報を評価する際の指針となる、「グリーン投資ガイダンス」を発表し、多くの賛同を得る。

また、TCFDサミット総括において、ダイベストメントからエンゲージメントへ、気候変動のリスクだけでなく機会の評価の重要性等のメッセージを発信。

1.日程・場所

日時:2019年10月8日(火)13:00-18:00 場所:ザ・キャピトルホテル東急主催:経済産業省 共催:WBCSD(※)、TCFDコンソーシアム参加人数:約350名

2.主な出席者

• 経済産業大臣

• 伊藤 邦雄 TCFDコンソーシアム会長、一橋大学大学院特任教授

• 産業界: ピーター・バッカー WBCSD 会長兼CEO進藤 孝生 日本製鉄 代表取締役会長、経団連 副会長十倉 雅和 住友化学 代表取締役会長チャールズ・O・ホリデイ ロイヤル・ダッチ・シェル会長 等

• 金融界: 水野 弘道 PRI理事、GPIF理事兼CIOマーク・カーニー イングランド銀行総裁、前FSB議長メアリー・L・シャピロ TCFD事務局特別アドバイザー(元SEC議長) 等

• 格付機関等:ベア・ペティット MSCI 社長ワカス・サマド FTSE Russell CEOマーティン・スカンケ PRI議長 等

※ヴァルディス・ドンブロウスキス 欧州委員会副委員長(ビデオメッセージ)

• エンゲージメントの重要性• オポチュニティ評価の重要性• アジアにおける開示の課題と今後の展望

3.テーマ

※World Business Council for Sustainable Development: 持続可能な開発のための世界経済人会議

TCFDサミット2019では、参加者の国内移動及び会場でのエネルギー使用に伴うCO2排出量(合計約2トン)相当を、J-クレジット制度を活用してオフセットしました。(J-クレジット制度についてはこちら:https://japancredit.go.jp/)

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TCFDサミット結果概要①

1

経済産業大臣より、TCFD提言に関する我が国のこれまでの取組や情報開示の重要性について説明があり、イノベーションに向けた投資や気候変動対応をコストではなく競争力の源泉と捉えることの重要性についての認識が共有された。

イングランド銀行のマーク・カーニー総裁からは、包括的な気候関連情報の開示の重要性や、ネットゼロ社会の実現に向けた投資を主流化することの必要性等について述べられた。

Welcome Message 菅原 一秀 経済産業大臣

Opening Remark マーク・カーニー イングランド銀行総裁

Opening Session(TCFDサミットへの期待)

伊藤 邦雄 TCFDコンソーシアム会長、一橋大学大学院特任教授ピーター・バッカー WBCSD 会長兼CEOメアリー・L・シャピロ TCFD事務局アドバイザー水野 弘道 国連責任投資原則協会理事、年金積立金管理運用独立行政法人理事兼CIO進藤 孝生 日本製鉄株式会社 代表取締役会長、経団連副会長チャールズ・O・ホリデイ ロイヤル・ダッチ・シェル 会長

マーク・カーニーイングランド銀行総裁

気候リスクとレジリエンス(強靱性)を金融の投資判断の中心に持ってくるためには、気候開示が包括的で、気候リスク管理が変容し、ネットゼロ世界に向けた投資が主流化しなければならない。(中略)今、開示は静的を超えて戦略的である必要。市場はどの企業が気候変動にレジリエントかを評価するための情報を必要としている。そのために、企業、銀行、保険会社、投資家は4つのことをしなければならない。①開示の量と質を高める②投資判断に最も役立つ情報を決定するための開示手法を洗練する③戦略的なレジリエンスを評価するための知識を普及する④TCFDは現在のポートフォリオがネットゼロへの移行に向けて、どの程度準備ができているか開示する方法を検討すべき→最大のハードルの一つがESG測定におけるバリエーションの多さ→環境パフォーマンスを特定するための共通タクソノミーについて、EUタクソノミーやグリーンボンド基準は助けになるが、二進法的になる傾向。むしろ「50段階の色合いのグリーン」を示すようなタクソノミーが必要。

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TCFDサミット結果概要②

2

オープニングセッション【TCFDサミットへの期待】では、 TCFDサミットにおける議論のシーンセッティングとして、共催者(TCFDコンソーシアム、WBCSD)、TCFD事務局、投資家、事業会社の登壇者より発言。

TCFDコンソーシアム会長の伊藤一橋大学大学院特任教授より、TCFDコンソーシアムが同日に公表した「グリーン投資の促進に向けた気候関連情報活用ガイダンス(グリーン投資ガイダンス)」について、主なポイントは、①エンゲージメントの促進、②気候関連リスクと機会の把握及び評価、③イノベーションの促進と適切な資金循環の仕組みの構築と説明。環境と経済の二項対立を乗り越えることの重要性を強調。

WBCSDのバッカー会長兼CEOより、企業はパリ協定とSDGs実現で重要な役割を担う一方、多くの分野の変革に金融システムの変革が欠かせないこと、企業と資本市場の対話を変える重要な触媒となるのがTCFD提言に基づく情報開示と発言。

シャピロTCFD事務局アドバイザーより、日本が世界をリードし、TCFD提言が財務情報開示の常識になることへの期待が述べられた。

伊藤邦雄 TCFDコンソーシアム会長、一橋大学大学院特任教授

メアリー・L・シャピロ TCFD事務局アドバイザーピーター・バッカー WBCSD会長兼CEO

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TCFDサミット結果概要③

3

水野PRI理事、GPIF理事兼CIOより、今年8月にGPIFはTCFD提言に則った報告を公表。「ユニバーサル・オーナーであるGPIFのポートフォリオが2℃以内のシナリオに整合したとき、初めて世界は気温上昇2℃以内を達成できる」と考えている旨発言。

進藤日本製鉄会長、経団連副会長より、日本鉄鋼連盟は昨年11月に長期温暖化対策ビジョン「ゼロ・カーボン・スチールへの挑戦」を発表する等取組を推進。環境と経済の好循環を実現するには、オポチュニティの評価が益々重要。ダイベストメント(投資撤退)の発想ではなく、目指すべき未来社会像の実現に向けた技術開発に投資が促進されるべきと発言。

シェルのホリディ会長より、エネルギーの転換を恐れてはならず、このピンチを新たな機会と捉えて行動するべき。シェルのシナリオでは転換までに48年かかるが、達成に向け、30年、50年時点のGHG排出目標を立て、3年毎の目標も経営陣全体で共有していると発言。

欧州委員会のドンブロウスキス副委員長より、ビデオメッセージにて、2℃目標の達成には公的資金だけでなく民間資金を動員し、グリーン投資の規模を拡大していくことが必要であり、ファイナンス促進に向けたタクソノミー等の取組を推進しているとの紹介。また、「グリーン投資ガイダンス」の策定を含め日本の気候変動関連開示分野におけるリーダーシップを歓迎する旨、述べられた。

進藤日本製鉄会長、経団連副会長

チャールズ・O・ホリデイロイヤル・ダッチ・シェル 会長

ドンブロウスキス欧州委員会副委員長のビデオメッセージ

水野PRI理事、GPIF理事兼CIO

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TCFDサミット結果概要④

4

パネル1【エンゲージメントの重要性】では、ダイベストメントは排出する場所が変わるのみであり、投資家はエンゲージメントを通じて企業の変化を後押しすることが重要、「グリーン投資ガイダンス」は企業と投資家の対話のためのツールとなる等の議論が行われた。

PanelDiscussion 1(エンゲージメントの重要性)

モデレーター水野 弘道 国連責任投資原則協会(PRI)理事、

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事兼CIOパネリストマーティン・スカンケ 国連責任投資原則協会(PRI) 議長ゴードン・J・ファイフ British Columbia Investment Management Corporation (BCI)

CEO兼CIOユ・ベン・メン カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS) 最高投資責任者(CIO)パク・ユギョン APGアセットマネジメント 責任投資・ガバナンスチーム アジア太平洋担当代表マーク・ルイス BNPパリバ・アセットマネジメント サステナビリティ・リサーチ・グローバル・ヘッドヘレ・クリストファーセン トタル戦略イノベーション担当プレジデント、執行委員会メンバー パネルディスカッション1の様子

ヘレ・クリストファーセンTotal(仏)

勝者になるか、敗者になるか、エンゲージメントこそが鍵。グリーン投資ガイダンスではまさにその点が強調。 「濃い緑」でなくても、既存の低炭素ソリューションを見落としてはいけない。最近、エネルギー会社がエネルギー転換債等を発行する動きは、排出削減に貢献する。「濃い緑」だけでなく、このような取組が促進されるべき。

ゴードン・J・ファイフBCI(加)

エンゲージメントには変化を後押して影響力を行使する機会がある。ダイベストメントは排出する場所が変わるのみ。 ESGチームだけでなく、投資判断するポートフォリオマネージャーが企業に行き、直接話すことが重要。 グリーン投資ガイダンス等、日本では議論のための枠組ができ、対話が始まろうとしている。

ユ・ベン・メンCalPERS CIO

ダイベストメントは他のポートフォリオで排出が生じるとともに、分散投資を制限するため、受託者責任に反する。 発言権を持って声を上げるエンゲージメントの方がダイベストメントより好ましいアプローチである。 情報は一番の触媒であり、TCFDは重要。また、リスクをプライシングするための理論的枠組みが短中長期に必要。

パク・ユギョンAPG AM(蘭)

ダイベストメントは会社の目を覚まさせる唯一の手段である場合にのみ行う。責任ある投資家としてあらゆる手段をとらなければならない。

外部コンサルを使った「美しい」だけの開示は誤った方向に投資家を誘導する。誠実な開示から始めるべき。

マーティン・スカンケPRI 議長

ダイベストメントは分かりやすい象徴的なツールである一方、エンゲージメントは時間や努力、体力が必要。 投資家は、エンゲージメントの努力の透明性を高めるべき。エンゲージメントの透明性を高め、長期的なツールとしての信頼性を高めることで、ダイベストメントへの圧力を減じることができる。

マーク・ルイスBNP PARIBAS AM

エンゲージメントによって、投資先企業の経営を、特に気候変動について望む行き先に導いていきたい。 ポートフォリオマネージャーがESGチームから引き受けて取り組むことが課題。

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TCFDサミット結果概要⑤

パネル2【オポチュニティ評価の重要性】では、事業会社より気候変動への取組を開示したことのポジティブな評価を紹介。指数・運用会社より機会を評価するための指標や商品、フレームワークの開発を進めているが、データ量の不足は依然ある(特に中小型株)との発言に対し、SASBより問題はデータの質・一貫性がないことであり、評価機関のモデルも一貫させる必要がある、等の議論が行われた。

パネル3【アジアにおける開示の課題と今後の展望】では、今後急激な成長と莫大なグリーン投資需要が想定されるアジアにおいてTCFD提言に沿った情報開示を進める上での課題等について議論が行われた。排出量の多い産業部門も存在しエネルギーアクセス等の課題もあるアジアにおいて公正な移行と適切な情報開示を両立することが必要、企業や資本がどのように進むべきかを指南するトランジッション・タクソノミーのようなツールを作ることも考えられる等との発言があった。

Video message ヴァルディス・ドンブロウスキス 欧州委員会副委員長

Panel Discussion 2(オポチュニティ評価の重要性)

モデレーターマルディ・マクブライアン 気候変動開示基準委員会(CDSB) マネジングディレクターパネリスト十倉 雅和 住友化学株式会社 代表取締役 会長ピエール・ブレバー シェブロン 副社長兼最高財務責任者ニコラス・エイキンズ アメリカン・エレクトリック・パワー社長、会長兼CEOワカス・サマド FTSE Russell CEO、LSEG情報サービス事業部門グループディレクターベア・ペティット MSCI 社長スタニスラス・ポティエ アムンディ CRIO(最高責任投資責任者)マデレイン・アントンチッチ 持続可能性会計基準審議会(SASB) CEO

Panel Discussion 3(アジアにおける開示の課題と今後の展望)

モデレーターレベッカ・ミクラライト 気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC) ディレクターパネリスト池田 賢志 金融庁 チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーエミリー・チュー マニュライフ・インベストメント・マネジメント ESG グローバル・ヘッドリチャード・パン ChinaAMC マネジングディレクター兼QFII投資国際事業担当ヘッドゲオルク・ケル アラベスク 会長マシュー・アーノルド J.P.モルガン サステナブル・ファイナンス担当グローバルヘッド

Closing Remark ピーター・バッカー WBCSDプレジデント兼CEO

パネルディスカッション2の様子

パネルディスカッション3の様子5

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「環境と成長の好循環」を加速するためには、企業価値を向上させ、投資リターンを増やす資金のポジティブな流れを生み出すことを可能とする建設的なメカニズムが必要です。本日、TCFDコンソーシアムが公表した「グリーン投資ガイダンス」は、こうした企業と投資家の対話を促進する有用なツールとなるでしょう。

我々は、気候変動リスクとその評価の方法だけでなく、ネットゼロ社会への移行がビジネスにイノベーションのチャネルを提供するという事業機会についても、明確に理解することによって、より持続可能な資金供給のシステムへの移行を進める必要があります。

環境と成長の好循環の実現を加速させるためには、投資の引き揚げ(ダイベストメント)には手法として限界があり、むしろ建設的な対話(エンゲージメント)の方が、エネルギー転換に向けた資金のポジティブな流れをより生み出す上で、より強力なツールである、という議論が行われました。

急激な成長、インフラ投資、増加するグリーン投資需要が想定されるアジアにおいて、TCFD提言に沿った気候関連開示を促進することが重要です。アジアの継続的な経済発展を促進し、低炭素社会への円滑な移行を後押しするためには、この地域で実用的なアプローチを採用することが重要です。同様に、「50段階の色合いのグリーン」(注)を示していくことをも念頭に置きつつ、この地域での移行に貢献しうる低炭素技術群を提示することが重要です。

また、我々は、TCFDを支持し、その提言の履行に向けた取組に集中するためにも、世界の産業界、金融界、政府、規制当局、国際機関等を含む幅広い利害関係者をまとめるための継続的な努力が必要だと明確に呼びかけました。これは、地球規模での「環境と成長の好循環」を加速させる重要な触媒になります。

そのため、我々としては、来年東京で再びTCFDサミットを開催します。そしてTCFDコミュニティが作り出す更なる進展を聞く機会を楽しみにしています。我々はまた、日本のTCFDコンソーシアムが、アジアを含む世界中からベストプラクティスを収集し普及させることを通じて私達の取組を引き続き後押しすることを期待します。

最後に、今日の議論から、TCFDが低炭素経済への移行を導く上で重要な役割を果たしていることが十分に明確であることを付け加えたいと思います。したがって、TCFDの営みが継続され、重要な議論と学びの機会のためのプラットフォームと推進力を提供し続けることが最も重要です。

TCFDサミット結果概要⑥

6

クロージング・リマークでは、共催者であるWBCSDのピーター・バッカー 会長兼CEOより、TCFDサミット総括(Key Takeaways)が述べられた。

(注)英語では、”50 shades of green”。グリーンであるか否かの二進法的な分類ではなく、進歩幅や移行の観点をも加味した評価軸の比喩として用いられた言葉。

TCFDサミット総括(抜粋)

※TCFDサミット総括の詳細は、経済産業省ホームページ(https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191010004/20191010004-1.pdf)を参照。

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TCFDサミット: 主要メディアによる報道状況

7

【2019/10/6】

- 日本経済新聞(朝刊) 気候変動対応で企業評価 投資の指針策定

【2019/10/7】

- NHK NEWS WEBサクサク経済Q&A「環境×マネーのTCFDって何?」

【2019/10/8】

- 日本経済新聞(電子版)気候変動、企業の対応力に投資指針 官民サミット開幕経産相、企業の気候変動対応「世界をリードしたい」 TCFDサミット

- NHK NEWS WEB 「グリーン投資」拡大へ 産業界のトップ集まり初の国際会議

- Japan TimesJapan holds summit to accelerate climate-related corporate disclosures

【2019/10/9】

- 日本経済新聞(朝刊) 「気候変動の対応、企業は情報開示を」 都内で官民サミット

- 日本テレビ 「日テレNEWS24」 ”気候変動に積極対応”企業に投資促す会議

- The GuardianCorporations told to draw up climate rules or have them imposed

【2019/10/16】

- NHK 「おはよう日本」 おはBiz解説 「環境投資をどう呼び込むか」

【2019/10/17】

- 日本経済新聞(朝刊) 新たなリスクに揺れる金融 カーニー英中銀総裁に聞く

【2019/10/28】

- 日本経済新聞(朝刊)環境対策、「分類」で日欧に溝ルール作りに関与する姿勢を

【2019/11/1】

- 日本経済新聞(朝刊) 環境と成長の好循環を推進

【2019/11/7】

Financial TimesClimate-related financial disclosures openthe doors to the low-carbon economy 他多数

Financial Times日本経済新聞

各メディアともTCFDサミットおよび「グリーン投資ガイダンス」について、事前・事後で紹介。

NHK 「おはよう日本」

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(参考)グリーン投資ガイダンスに関する言及①

8

TCFDサミットでは、登壇者よりグリーン投資ガイダンスに関して以下の言及があった。

TCFDサミット(10/8開催)

ヴァルディス・ドンブロウスキス(欧州委員会 副委員長)「グリーン投資ガイダンス」の策定を含め、日本の気候変動関連開示分野におけるリーダーシップを歓迎する。

ピーター・バッカー(WBCSD 会長兼CEO)「環境と成長の好循環」を加速するためには、企業価値を向上させ、投資リターンを増やす資金のポジティブな流れを生み出すことを可能とする建設的なメカニズムが必要。TCFDコンソーシアムが公表した「グリーン投資ガイダンス」は、こうした企業と投資家の対話を促進する有用なツールとなるだろう。

メアリーL・シャピロ(TCFD Secretariat アドバイザー、米国SEC 元委員長)TCFD促進のための作業(TCFD研究会、金融庁との会議主催、TCFDコンソーシアム、「グリーン投資ガイダンス」作成)は貴重。日本はTCFD支持のリーダー。実施においても先導することを期待する。

水野 弘道(PRI理事、GPIF 理事兼CIO)世界の投資家がガイダンスに注目している。企業と投資家の間で対話を始める際にどのようにすればよいか、共に考えて枠組を作成した。

ヘレ・クリストファーセン(トタル イノベーション担当プレジデント(執行役員))勝者になるか、敗者になるか、エンゲージメントこそが鍵である。事前に読んだグリーン投資ガイダンスではまさにその点が強調されていた。

進藤 孝生(日本製鉄株式会社代表取締役会長、経団連副会長)TCFD提言は企業のチャレンジを前向きに評価し、資金面で後押しするツールとなりうる。TCFDガイダンスやグリーン投資ガイダンスは機会にも光を当て、環境と経済の好循環を目指す上で皆の参考になる。TCFDに沿った情報開示が進み、産業界と投資家間の相互理解が進み、ダイベストメント中心ではなく、技術開発への投資促進や、企業と投資の両活動の活性化を期待。

ゴードン・J・ファイフ(British Columbia Investment Management Corporation CEO兼CIO)企業の開示が、株価に悪影響を及ぼすと考える企業があるが、開示が進めば上向きになることを企業に言いたい。グリーン投資ガイダンス等、日本では議論のための枠組ができ、対話が始まろうとしている。データがなければ共通基盤がなく、対話が発生しない。日本の取組は手本になるすばらしいものである。

経済産業大臣グリーン投資ガイダンスも活用しつつ、TCFDの取組をさらに加速し、気候変動対応に積極的な企業への資金の流れを拡大すべく、(日本が)アジアを含めて世界をリードしていきたい。

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(参考)グリーン投資ガイダンスに関する言及②

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TCFDサミットの翌日に首相官邸で開催されたグリーン・イノベーション・サミットにおいて、安倍総理、イングランド銀行のマーク・カーニー総裁より、以下の言及があった。

グリーン・イノベーション・サミット(10/9開催)

安倍内閣総理大臣世界全体で、この分野への民間投資をもっと増やしていかなければなりません。TCFDの考え方に基づき、環境分野における企業の取組について、投資家に向けた情報開示を充実します。今回、我が国は、『グリーン投資ガイダンス』を世界で初めて作成しました。金融機関や投資家の皆さんが、環境投資を評価する指針となるものです。これを世界に広く展開することで、非連続なイノベーションへの資金の流れを一層加速していきたいと思います。

マーク・カーニー イングランド銀行総裁過去1年間で、時価総額で2兆ポンドに近い、約200の日本企業がTCFD提言に賛同し、世界第一位となりました。TCFD研究会、TCFDコンソーシアム、資本の提供者向けに新たに策定されたグリーン投資ガイダンスを通じて行われた日本政府の支援が、すべての行動の触媒となっています。日本のリーダーシップは、他の国が手本とすべき青写真を描いています。