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Title マンガンの解毒および排出に寄与するタンパク質の機能 解析( Dissertation_全文 ) Author(s) 西藤, 有希奈 Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 2018-03-26 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21222 Right Type Thesis or Dissertation Textversion ETD Kyoto University

Title マンガンの解毒および排出に寄与するタンパク …...DMT1 DTT EDTA FPN HA HEPES HIF-1 HRP LDH MBP Mt MVB NRAMP PAGE PBS RT-PCR SDS SPCA TMD TRPM WT ZIP ZNT ATPase

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Title マンガンの解毒および排出に寄与するタンパク質の機能解析( Dissertation_全文 )

Author(s) 西藤, 有希奈

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2018-03-26

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21222

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion ETD

Kyoto University

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マンガンの解毒および排出に寄与する

タンパク質の機能解析

西藤 有希奈

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目次

要旨

略語表

序論

結果

第 1章 マンガンの排出・解毒に機能する輸送体のマンガンホメオスタシス維持機構への

寄与率の評価

第 2章 ZNT10の金属基質認識機構についての解析

考察

材料および方法

引用文献

謝辞

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要旨 マンガンは、細胞内で様々な酵素の補因⼦として機能し、⽣体内において重要な役割を

担う。⼀⽅で、過剰量のマンガンは、極めて強い毒性を⽰し、パーキンソン病などの様々

な疾患を引き起こすことが報告されている。このことからも、マンガンホメオスタシスは

細胞および⽣体レベルで厳密に制御される必要があるが、その維持機構に関する知⾒は主

に出芽酵⺟を⽤いた解析から得られたものであり、脊椎動物細胞においてはほとんど明ら

かにされていない。出芽酵⺟の知⾒などから、脊椎動物細胞においては、6 種類の輸送体

Secretory Pathway Ca-ATPase 1 (SPCA1), ATP13A1, PARK9/ATP13A2, ATP13A3, Ferroportin,

ZNT10 /SLC30A10 がマンガンの排出および解毒に機能することが予想されている。しかし

ながら、各輸送体のマンガン排出および解毒への寄与率や、マンガンホメオスタシスの維

持における分⼦機構の詳細については明らかにされていない。そこで本研究では、脊椎動

物細胞において、これら 6 種類の輸送体のマンガン排出および解毒への寄与率を⽐較評価

し、マンガンホメオスタシス維持における役割について評価を⾏った。

マンガン排出および解毒への寄与率を評価するために、相同組換え効率が⾼く遺伝⼦破

壊と再発現が容易なニワトリ B リンパ球系細胞株 DT40 細胞において、ゴルジ体へマンガ

ンを輸送するとされる Spca1 を⽋損させた株である Spca1-/-/-株 (以下 ΔSpca1 株) を作成し

た。Δ Spca1 株は、⾼濃度のマンガン存在下での⽣存率が著しく低下することを確認した

ため、この株に各輸送体を発現させ、⾼濃度のマンガンに対する⽣存率の回復度を指標と

することで、各輸送体のマンガン排出および解毒への寄与率について評価を⾏った。マン

ガン耐性試験を⾏った結果、6 種類の輸送体の中で SPCA1 と ZNT10 が ΔSpca1 株のマンガ

ン耐性を回復させることが明らかになった。さらに、ZNT10 が SPCA1 よりも⾼いマンガ

ン濃度で耐性を回復させることから、脊椎動物細胞においては ZNT10 がマンガンの排出お

よび解毒に⼤きく寄与する可能性が⽰唆された。

次に、亜鉛を特異的に輸送すると考えられている ZNT トランスポーターファミリーに属

する ZNT10 がどのような分⼦機序でマンガンを輸送するかについて、他の ZNT トランス

ポーターとの⾦属基質認識機構の違いに着⽬し解析した。DT40 細胞における亜鉛⾼感受

性株 Znt1-/-Mt-/-Znt4-/-株 (Δ1M4 株) および上述のマンガン⾼感受性株 ΔSpca1 株を⽤いた解

析により、ZNT10 が亜鉛輸送に関与せず、マンガン選択的な輸送を⾏う可能性が⽰され

た。この ZNT10 によるマンガン選択的輸送機構について、ZNT10 とアミノ酸配列の相同

性が⾼く、かつ亜鉛選択的輸送を⾏うことが知られる ZNT1 とのドメイン置換変異体を作

成し解析を⾏った。結果、ZNT10 の膜貫通領域 (TMD) II 内において⾦属結合部位を形成

すると考えられる 43 番⽬のアスパラギン残基が ZNT10 のマンガン選択的輸送において最

も重要な残基であることが明らかになった。また、ZNT10 の TMD II に存在する 52 番⽬の

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システイン残基と TMD V に存在する 242 番⽬のロイシン残基が ZNT10 の亜鉛輸送能を抑

制することにより、ZNT10 のマンガン選択的な輸送を可能としていることを⽰す結果を得

た。加えて、ZNT1 の TMD II の 43 番⽬のヒスチジン残基を ZNT10 と同じアスパラギン残

基に置換すると、ZNT1 が亜鉛輸送能を失い、マンガン輸送能を獲得することも明らかに

した。

本研究の結果から、脊椎動物細胞の⾼濃度マンガンの解毒に関わるマンガンホメオスタ

シス維持において ZNT10 が重要な役割を果たすこと、さらに ZNT トランスポーターの⾦

属基質認識は、TMD II に位置するアミノ酸残基によって制御されることが強く⽰唆され

た。

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略語表 ATP7A

ATP13A

BPB

CDG

DMT1

DTT

EDTA

FPN

HA

HEPES

HIF-1

HRP

LDH

MBP

Mt

MVB

NRAMP

PAGE

PBS

RT-PCR

SDS

SPCA

TMD

TRPM

WT

ZIP

ZNT

ATPase copper transporting alpha

ATPase type 13A

bromophenol blue

congenital disorder of glycosylation

divalent metal transporter 1

dithiothreitol

ethylenediaminetetraacetic acid

ferroportin

haemagglutinin

4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid

hypoxia inducible factor-1

horseradish peroxidase

lactate dehydrogenase

maltose-binding protein

metallothionein

multivesicular body

natural resistance-associated macrophage protein

polyacrylamide gel electrophoresis

phosphate-buffered saline

reverse transcription polymerase chain reaction

sodium dodecyl sulfate

secretry pathway Ca-ATPase

transmembrane domain

transient receptor potential melastatin

wild type

Zrt-, Irt-like protein

Zinc transporter

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序論 生体内におけるマンガンの生理機能

マンガンは、生体内において必須の微量金属元素である。マンガンは、様々な酵素の補

因子として機能することが知られる。代表的な酵素としては、神経機能の維持において重

要なグルタミン合成酵素 (glutamine synthetase)、解糖系において重要なピルビン酸デカル

ボキシラーゼ (pyruvate decarboxylase) などの脱炭酸酵素、ミトコンドリアの機能において

重要なスーパーオキシドディスムターゼ 2 (superoxide dismutase 2)、尿素回路において重

要なアルギナーゼ (arginase)、グリコシルトランスフェラーゼ (glycosyltransferase) などの

糖転移酵素などが挙げられる[1] [2]。さらに、マンガンは生体内の様々な生理的過程にお

いても重要な役割を果たしており、骨形成、糖代謝、脂質代謝、免疫機能、血糖値の調

節、生殖機能などにおいて重要な役割を果たす。したがって、マンガンが欠乏するとこれ

らの機能に障害をきたし、骨形成不全、糖代謝異常、脂質代謝異常、耐糖能異常、発達障

害などの症状を呈することが知られる[1] [2]。

マンガン過剰と神経疾患の関連性

マンガンの主な摂取経路は、食事からの摂取、または空気中・土壌・水からの吸収であ

る。食事中のマンガンは、消化管の十二指腸から吸収される。成人においては 2~5 mgの

マンガンが食事中から摂取されるが、 終的には 1~5 %が吸収される。十二指腸から吸収

されたマンガンは、血中を経て肝臓へ運ばれる。その後、胆汁中への放出、腸管への再吸

収が行われた後、排出される[3]。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 (2015年度版) 」

によると、成人 (18~29歳) のマンガンの 1日の摂取目安量は、3.5~4.0 mg/日と低いため、

通常の食生活においてマンガン欠乏になることは少ない[4]。一方で、過剰なマンガンは、

極めて強い毒性を示し、パーキンソン病に似た神経障害を呈することが知られる。このマ

ンガン過剰による神経障害はマンガニズムと呼ばれ、認知症と運動障害を特徴とするパー

キンソン病と非常によく似た症状を呈する[5][6][7]。マンガン過剰の原因としては、慢性

的なマンガンへの過剰暴露が挙げられ、特に、採掘や溶接など 6ヶ月から 2年の間、職業

的にマンガンに過剰暴露している人がマンガン過剰症に陥りやすいとされている[8]。ま

た、マンガンが含有された薬物の常用者や、マンガンの含有率の高い水の過剰摂取などに

よっても、マンガン中毒に陥りやすいとされる[9]。マンガン過剰による神経毒性が 初に

報告されたのは 1837年であり、これらの患者は職業的にマンガンに過剰暴露しており、

動作緩徐を特徴としたパーキンソン病様の症状を示し、脳の大脳基底核、特に淡蒼球や線

条体へのマンガンの沈着が認められている[10]。マンガンによる神経毒性の詳細なメカニ

ズムについてはこれまで明らかとされていないが、マンガン過剰によるドパミン代謝の異

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常や、ミトコンドリアの機能障害、活性酸素種の産生などによる細胞死が原因と考えられ

ている[11][12][13]。

これまで、マンガン誘導性の神経障害は、職業的にマンガンに過剰暴露しやすい環境に

よって引き起こされると考えられていた。しかしながら、近年、一部のパーキンソン病患

者において血清マンガン値の上昇と脳へのマンガン蓄積が認められることが報告されてい

る他、肝硬変などの肝機能に異常がある患者においても肝臓へのマンガン蓄積を介したパ

ーキンソン病様症状が引き起こされることなども報告されており、マンガン過剰暴露な環

境でなくてもマンガン誘導性の神経障害が引き起こされることが示されている[14][15]。さ

らに、マンガンの排出に関わる輸送体の遺伝子変異によって、マンガン蓄積を伴う神経疾

患が引き起こされることなども報告されている[16][17]。この事実は、生体内のマンガンホ

メオスタシスの崩壊が様々な疾患を誘発することを示しており、生体内のマンガン代謝は

厳密に制御される必要があると言える。

マンガンホメオスタシス維持に寄与する輸送体

これまで、このマンガン代謝維持機構に関する解析には出芽酵母が汎用されており、多

数の輸送体がマンガンホメオスタシス維持において重要な役割を果たすことが明らかにさ

れてきた[18][19]。これらの知見を元に、細胞質へのマンガンの取り込みに関わる輸送体に

ついては、脊椎動物細胞での機能解析が行われている[20][21][22]。例えば、亜鉛トランス

ポーターである ZIPトランスポーターファミリー (Zrt-, Irt-like protein : SLC39A) に属する

ZIP14 (SLC39A14) や ZIP8 (SLC39A8) は、亜鉛を輸送するトランスポーターとして知られ

ているが、細胞質へのマンガンの取り込みにも機能することが報告されている[23]。ま

た、Natural resistance-associated macrophage protein (NRAMP) ファミリーに属する NRAMP1

や NRAMP2/DMT1もマンガン輸送に関わることが報告されている。NRAMP1は、マクロ

ファージ特異的に発現しており、ファゴソームから細胞質へのマンガン輸送に機能するこ

とで、微生物がマンガンを利用できないように働くことが報告されている[24]。一方で、

NRAMP2/DMT1は、主に鉄の取り込みに関わる輸送体として知られるが、細胞質へのマン

ガンの取り込みにも機能することが予想されている[20]。さらに、カルシウム流入チャネ

ル TRPM7やイオンチャネル型グルタミン酸受容体などのカルシウムチャネルもマンガン

の輸送に関わると予想されているが、その詳細は明らかとされていない[25][26]。

なお、本論文中では、一般名称として使用する場合、および、ヒトの遺伝子・タンパク

質を意味する場合には全て大文字に、ヒト以外でのそれを意味する場合には 1文字目を大

文字、残りを小文字表記した。(例:ヒト ZNT, ニワトリ Znt)

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マンガンの排出・解毒に寄与すると予想される輸送体

マンガンの取り込みに関わる輸送体については、脊椎動物細胞における知見が多く存在

する一方で、マンガンの排出・解毒に寄与する輸送体の機能に関しては知見が非常に少な

く、そのほとんどが酵母におけるオーソログから得られた情報である。マンガンの蓄積は

強い毒性を示すため、近年、マンガンの排出・解毒に関わると考えられるトランスポータ

ーの機能欠損が様々な疾患を引き起こすことが明らかにされている。この様な疾患との関

連性からも、脊椎動物細胞におけるマンガン輸送体の機能解析が早急に求められている。

脊椎動物細胞においては、6種類の輸送体 SPCA1 (Golgi-localized secretory pathway Ca2+-

ATPase 1)、ATP13A1、PARK9/ATP13A2、ATP13A3、Ferroportin、ZNT10/SLC30A10がマ

ンガンの排出・解毒に機能することが予想されている。以下に、これまでに明らかにされ

ているマンガンの排出・解毒に機能すると予想される輸送体に関する知見を酵母における

知見および疾患との関連性を踏まえて解説する。

SPCA1 (Golgi-localized secretory pathway Ca2+-ATPase 1)

SPCA1は P-type cation transport ATPasesファミリーに属する輸送体である。SPCA1の輸送

基質やその機能に関しては脊椎動物細胞での知見は少なく、その知見は主に出芽酵母にお

けるオーソログである Pmr1 (the yeast secretory pathway Ca2+/Mn2+-ATPase) から得られたも

のである[27]。Pmr1は、ゴルジ体の中間嚢に局在し、カルシウムとマンガンの排出や解毒

において重要な役割を果たす輸送体である。Pmr1は、ゴルジ体へカルシウムを輸送するこ

とで、小胞体からゴルジ体へのタンパク質の小胞輸送や、タンパク質前駆体のプロセシン

グにおいて重要な役割を果たすことが知られる。また、ゴルジ体にマンガンを輸送するこ

とで、糖タンパク質のグリコシル化や、分泌経路を介したマンガンの排出に機能すること

も示されている[28]。実際、Pmr1を欠損させた株であるΔPmr1株は、高濃度のマンガン

に対する耐性が顕著に低下しており、タンパク質のグリコシル化に異常をきたすことが報

告されている。このことから、Pmr1はマンガン輸送において非常に重要な役割を果たすこ

とが示されている[28]。この様に、Pmr1のカルシウムとマンガンの輸送に対する機能が明

らかにされている一方で、SPCA1の機能についてはほとんど明らかにされていない。

SPCA1が属する SPCAファミリーは、SPCA1 をコードする ATP2C1と SPCA2 をコードす

る ATP2C2に分類される[29]。SPCA1はユビキタスに発現するが、特に正常ヒト表皮角化

細胞での発現が高いとされる。一方で、SPCA2の局在の詳細は明らかにされていない。

SPCA1遺伝子 (ATP2C1) の変異は、角化細胞の異常角化および細胞間接着の異常により、

皮膚に深刻な水疱ができる水疱性皮膚疾患を特徴とする家族性良性慢性天疱瘡 (Hailey

Hailey病) の原因遺伝子となることが報告されている[30]。これは、SPCA1の機能欠損に

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より細胞質のカルシウムレベルが上昇し、ケラチノサイトにおけるカルシウムシグナルに

異常をきたすことが原因と考えられている。このため、SPCA1はカルシウムの輸送に重要

であると考えられてきた。しかしながら、ΔPmr1によって低下したマンガン耐性が、

SPCA1を発現させることで回復することから、SPCA1はカルシウムだけでなくマンガン

輸送にも寄与する可能性が示されている[29]。以上の様に、SPCA1はカルシウムとマンガ

ンの輸送に寄与すると考えられるが、その知見の多くは酵母におけるオーソログ Pmr1の

知見を元に得られたものであり、脊椎動物細胞での SPCA1の詳細な機能は明らかにされ

ていないのが現状である。

ATP13A1~5

ATP13A1~5は P5-type cation-transporting ATPaseファミリーに属する輸送体である。

ATP13A1~3はユビキタスに発現し ATP13A2は特に脳での発現が高いこと、また、

ATP13A4~5は主に脳や胃に発現していることなどが知られるが、輸送基質や詳細な機能は

不明であり、その知見の多くは酵母のオーソログから得られたものである[31]。酵母にお

いて P5-type ATPaseは、Cod1p/Spf1p と Ypk9pのサブタイプに分類され、ATP13A1が

Cod1p/Spf1p、ATP13A2~5が Ypk9pとそのオーソログが異なっている。Cod1p/Spf1pは小

胞体に局在し分泌経路へカルシウムおよびマンガンを輸送することが知られる[32]。その

ため、Cod1p/Spf1pのオーソログである ATP13A1はマンガンおよびカルシウムの輸送に関

わる可能性が高いが、脊椎動物細胞での機能はほとんど明らかにされていない。一方で、

Ypk9pは、液胞膜に局在し、マンガン、カドミウム、ニッケル、セレンに対する解毒作用

を持つことが知られる[33]。Ypk9pの欠損株であるΔYpk9p株においては高濃度のマンガ

ンに対する耐性が低下することから、Ypk9pは過剰なマンガンに対する解毒において特に

重要な役割を果たすことが示されている。このΔYpk9pによるマンガン耐性の低下は、

ATP13A2の過剰発現により回復することから、ATP13A2もマンガンに対する解毒作用を

有する可能性が示唆されている[34]。ATP13A2は、後期エンドソームまたはリソソーム膜

に局在する 10回膜貫通型の lysosomal P5 type cation-transporting ATPaseである。近年、錐

体路の退化、痴呆を特徴とする Kufor–Rakeb 症候群 (KRS)、および、若年性または家族性

のパーキンソン病症候群患者から、ATP13A2遺伝子の常染色体劣性のホモまたはヘテロの

変異が見出されたことから、別名 PARK9と呼ばれ、パーキンソン病と ATP13A2の機能と

の関連性に注目が持たれている[17][35] [36]。実際、培養細胞を用いた解析において、KRS

患者から見つかった変異を持つ ATP13A2は、高濃度のマンガンに対する解毒作用を持た

ないことが示されている。また、ATP13A2の過剰発現は、その蓄積がパーキンソン病の原

因とされるα-シヌクレインの毒性から細胞を保護することも知られており、パーキンソン

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病における病態の発症において、ATP13A2とα-シヌクレインとマンガンの 3つに関連性

があることが示されている[34][37][38]。一方で、ATP13A3~5は Ypk9pとオーソログであ

るため、2価イオンの輸送に関わる可能性が高いが、その詳細な機能については脊椎動物

細胞での知見はほとんどない。以上の様に、ATP13A2に関してはその酵母でのオーソログ

Ypk9pから得られた情報があるものの、ATP13A1、3~5に関しては知見がほとんどないの

が現状である。

Ferroportin (SLC40A1)

Ferroportin (FPN) は、細胞膜表面の基底膜側に局在する輸送体であり、細胞外へ鉄を放出

する機能を有する輸送体として見出された。酵母において FPNのオーソログは存在しな

い。FPNは全ての組織に発現しているが、特に腸管とマクロファージにおいて高発現して

おり、過剰な鉄を血中へ排出することで体内の鉄の動態において非常に重要な役割を示す

ことが知られている[39]。一方で、培養細胞を用いた解析により、FPNを過剰発現させる

とマンガン毒性が軽減することや、アフリカツメガエルの卵母細胞において FPNを過剰発

現させると、細胞外へのマンガンの排出が促進されることなどが示されていることから、

FPNがマンガンの輸送にも寄与することが予想されている[40][41]。これまでに、FPN遺

伝子の変異が肝臓や膵臓などの組織に鉄が沈着するヘモクロマトーシス等の鉄代謝異常に

関連することが報告されている一方で、FPNによるマンガンホメオスタシスの維持と疾患

との関連は報告されていない[42]。従って、FPNのマンガン輸送に対する寄与やその重要

性についての詳細は不明である。

ZNT10 (SLC30A10)

ZNT10は、亜鉛トランスポーターである ZNTトランスポーターファミリー (Zinc

Transporter : SLC30A) に属する輸送体である[43]。酵母において ZNT10のオーソログは存

在しない。ZNT10は主に、肝臓と脳、特に大脳基底核に高発現している[16]。これまで、

ZNT10はゴルジ体やリサイクリングエンドソームに局在し、細胞内の亜鉛ホメオスタシス

の維持に機能する輸送体であると考えられてきた[44] [45]。しかしながら、2012年に、高

マンガン血症、赤血球増加、慢性肝疾患を伴う家族性の若年性ジストニアおよび成人発症

性パーキンソン病患者において、ZNT10の常染色体劣性のホモ接合型変異が見出されたこ

とから、ZNT10がマンガンホメオスタシスの維持に寄与する可能性が示されている[16]

[46]。この患者はこれまでにマンガン暴露な環境には晒されていないにも関わらず、大脳

基底核へのマンガンの沈着と、肝臓のマンガンレベルの上昇が認められている。このこと

から、ZNT10が脳や肝臓におけるマンガンホメオスタシス維持において重要な役割を果た

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10

す可能性が新たに示された。この患者は健常者の 10倍の血清マンガン値を示す一方で、

血清の銅や亜鉛値は正常であることから、ZNT10は、亜鉛ではなくマンガン輸送において

特に重要な役割を果たす可能性が示唆されている。さらに、2016年にも、高マンガン血

症、赤血球増加、慢性肝疾患を伴うジストニア患者から、常染色体劣性のホモ接合型の新

たな変異が見つかっており、ZNT10によるマンガンホメオスタシス維持機構と神経疾患発

症の関連性に注目が集まっている[47]。

ニワトリ B リンパ球系細胞株 DT40 細胞を用いた解析の有用性

上述の様に、マンガンの排出に機能する輸送体については、その知見のほとんどが酵母

を用いた解析から得られたものである。しかしながら、酵母においてマンガンを液胞内へ

輸送することでマンガンの解毒に寄与する Ccc1は、脊椎動物細胞においてそのオーソロ

グが存在しないため、酵母には脊椎動物細胞とは異なる酵母特有のマンガン代謝調節機構

があることが予想される[48]。また逆に、FPNや ZNT10は脊椎動物細胞にのみ存在するた

め、出芽酵母を用いた系では脊椎動物細胞のマンガン排出・解毒機構を正確に反映出来な

いと考えられた (Table 1)。さらに、これまで脊椎動物細胞において、これら輸送体のマン

ガンホメオスタシス維持機構への寄与率について同一細胞での解析や比較評価は行われて

いない。そこで、本研究では、遺伝子破壊と再発現が容易なニワトリ Bリンパ球系細胞株

DT40細胞を用いて、脊椎動物細胞におけるマンガン排出・解毒機構を適切に評価できる

系を構築した[49]。ニワトリ細胞は、ヒトにおいてマンガン排出・解毒に関与すると予想

される遺伝子がすべて保存されているため、ヒトと同様のマンガン代謝機構を有している

と考えられた。そこで、DT40細胞を用いて作成した欠損株を用い、輸送体のマンガン排

出・解毒への寄与率を比較評価できる系を構築した。

DT40細胞において、ゴルジ体へマンガンを輸送すると考えられる Spca1を欠損させた

株である Spca1-/-/- 株 (以下ΔSpca1株) を作成した。このΔSpca1株は、高濃度のマンガン

に対する生存率が著しく低下することから、この株に各輸送体を発現させ、高濃度のマン

ガンに対する生存率の回復度を指標とすることで、各輸送体のマンガン排出・解毒への寄

与率について、脊椎動物細胞での比較評価が可能となる。

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11

Table 1. 脊椎動物細胞において、マンガン排出・解毒に関わると予想される遺伝子の、酵母、ヒト、ニワ

トリ DT40細胞における発現の有無

+は presence、-は absence、Dは detectable、UDは undetectable、NAは not applicableを示す。

本研究の目的

第 1章では、マンガン高感受性株ΔSpca1株を用い、マンガンの排出・解毒に機能する

と考えられる 6種類の輸送体について、マンガンホメオスタシス維持機構への寄与率につ

いて比較解析を行った。これにより、脊椎動物細胞におけるマンガン代謝維持機構を明ら

かにすることを目的とした。さらに、第 1章までの解析結果から、6種類の輸送体の中

で、ZNT10がマンガンホメオスタシスの維持において特に重要な役割を果たすことを明ら

かにした。しかしながら、ZNTトランスポーターファミリーに属する ZNT10がどのよう

な分子機序でマンガンを輸送するかについての詳細は明らかにされていない。そこで、第

2章では、ZNT10のマンガン輸送機構について、他の ZNTトランポーターとの金属基質認

識機構の違いに着目した解析を行った。

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第 1章 マンガンの排出・解毒に機能する輸送体のマンガンホメオスタシス維持機構への寄与率の評価 結果 1-1. DT40細胞において Spca1を欠損させた株 Spca1-/-/-株 (ΔSpca1株) の作成

まず初めに、DT40細胞においてマンガン排出・解毒機構を評価できる系を構築するた

め、酵母においてゴルジ体へのマンガン輸送に重要とされる Pmr1の脊椎動物におけるオ

ーソログであり、マンガンホメオスタシスの維持において特に重要な役割を果たすと考え

られる Spca1を欠損する細胞株を作成した。DT40細胞においては Spca1遺伝子 (Atp2c1)

が存在する第 2染色体がトリソミーとなっているため、3種類のノックアウトベクターを

用いて Spca1欠損株 Spca1-/-/- (ΔSpca1株) を作成した (Fig. 1A)。サザンブロット法およ

びノザンブロット法によって、Spca1遺伝子が欠損しているか確認した (Fig. 1B)。

Figure 1. ΔSpca1株の樹立

(A) Spca1の遺伝子欠損に用いたノッ

クアウトベクターのデザイン図。

(B) サザンブロット法 (左)、およびノ

ザンブロット法 (右) を用いて Spca1

遺伝子の欠損の確認を行った。

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1-2. ΔSpca1株は高濃度のマンガンに対して高い感受性を示す

次に、ΔSpca1株がマンガン解毒・排出機構の評価系として適しているか確認を行っ

た。はじめに、WT (野生株) とΔSpca1株において、高濃度のマンガンに対する耐性試験

を行った。WTおよびΔSpca1株に 0から 80 µMのマンガンを添加し、48時間培養した際

の細胞の生存率を評価した。細胞の生存率の評価には、目視でのセルカウントによる測定

と、生きている細胞の酸化還元反応を利用し細胞増殖や細胞毒性を高感度に測定できる

Alamar Blue試薬を用いた測定法で解析を行った。ΔSpca1株は、通常培地中での細胞の増

殖率に影響は与えない一方で、高濃度のマンガン濃度条件下においてはその耐性が顕著に

低下した。具体的には、WTでは 40 µM以上の高濃度のマンガン存在下であっても細胞は

生育するにも関わらず、ΔSpca1株では 40 µM以上の高濃度のマンガン存在下で完全に死

滅した。さらに、ΔSpca1株に SPCA1-GFPを発現させた株においては、ΔSpca1株の高濃

度のマンガンに対する耐性がWTと同程度まで回復した (Fig. 2)。このことから、SPCA1

は DT40細胞におけるマンガン解毒において重要な役割を果たすことが示唆された。さら

に、目視および Alamar Blue試薬を用いた 2種類の測定方法により算出した細胞生存率の

グラフは同じ挙動を示すことから、Alamar Blue試薬を用いた測定法は適切な評価法である

と考え、以降の金属耐性試験は、全て Alamar Blue試薬を用いて解析を行った。

Figure 2. ΔSpca1株におけるマンガン耐性試験

(A, B) ΔSpca1株を 10-80 µMの MnSO4を添加した培地で 2日間培養し、生存細胞数をセルカウンター

(A) および Alamar Blue試薬 (B) を用いて測定した。MnSO4非添加の培地で培養した細胞の生存細胞数を

基準とし、各濃度の MnSO4を添加した細胞の生存細胞数の比率をグラフ化した。

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1-3. ΔSpca1株は、細胞内にマンガンを蓄積させる

高濃度のマンガンに対する耐性試験に加え、ΔSpca1株が実際にマンガンを細胞外に排

出できないことを確認するため、放射性マンガン (54Mn) を用いた解析により細胞内への

マンガン蓄積量の測定を行った。本実験は、徳島文理大学の藤代瞳博士に行っていただい

た。1 µMの放射性マンガンを添加した培地で細胞を 24時間培養し、細胞内の 54Mnの蓄

積量を測定した。その結果、マンガン耐性試験の結果と一致して、ΔSpca1株では細胞内

のマンガン量がWTと比較して顕著に増加していることを確認した。さらに、ΔSpca1株

に SPCA1-GFPを発現させた株においては、細胞内マンガン蓄積量がWTと同程度まで低

減した (Fig. 3)。以上の結果から、マンガン耐性試験の結果と、放射性マンガンを用いた

マンガンの蓄積量の測定結果は相関することから、マンガン耐性試験は細胞内のマンガン

蓄積量を反映できていると判断した。さらに、放射性マンガンの蓄積量による測定結果か

ら、SPCA1は DT40細胞において細胞内からのマンガンの排出において非常に重要な役割

を果たしていることが明らかとなった。

Figure 3. ΔSpca1株における細胞内へのマ

ンガン蓄積量の測定

WT、ΔSpca1株、ΔSpca1株に SPCA1-

GFPを過剰発現させた株における細胞内へ

の 54Mnの蓄積量。実験は 3連で行い、平均

値を示した (n = 3 , * p < 0.01) 。

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1-4. DT40細胞において SPCA1は分泌経路を介して細胞外へマンガンを排出する

次に、ΔSpca1株における SPCA1の局在について確認を行った。ΔSpca1株に SPCA1-

GFPを過剰発現させた株において免疫染色を行った。その結果、SPCA1はゴルジ体のマー

カーである GM130と共局在することが確認され、DT40細胞において SPCA1はゴルジ体

に局在することが明らかになった (Fig. 4)。このことから、これまでの先行研究と一致し

て、DT40細胞を用いた解析においても SPCA1は分泌経路を介した細胞外へマンガン排出

において重要な役割を果たすことが明らかになった[50][51]。

Figure 4. ΔSpca1株において SPCA1はゴルジ体に局在する

(A) ΔSpca1株における SPCA1の細胞内局在の蛍光観察。SPCA1-GFP (緑)、GM130 (赤)、赤と緑を重ね合

わせた蛍光写真を示す。

(B) ウエスタンブロット法による、ΔSpca1株における SPCA1-GFPの発現の確認。Tubulinはローディン

グコントロールとして用いた。

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1-5. マンガンの排出・解毒に機能する輸送体のマンガンホメオスタシス維持機構への寄与

率の評価

上述の解析から、ΔSpca1におけるマンガン耐性試験は、脊椎動物細胞におけるマンガン

排出・解毒機構を適切に評価していると判断した。そこで、これまでに脊椎動物細胞にお

いてマンガン排出に寄与することが予想されている 6種類の輸送体のヒトオーソログをΔ

Spca1株に過剰発現させ、各輸送体のマンガン耐性の回復度を指標とし、マンガンホメオ

スタシス維持機構への寄与率を比較評価した。具体的には、ΔSpca1が完全に死滅するマ

ンガン濃度である 40 µMのマンガン濃度を基準とし、40 µM以上のマンガン濃度に対して

顕著なマンガン耐性の回復が認められた場合、その輸送体はマンガン排出・解毒に寄与す

るとみなした。

FPNは、細胞膜の基底膜側に局在し細胞外へ鉄を輸送することが知られる輸送体である

が、培養細胞における過剰発現系を用いた解析から FPNはマンガンの輸送にも関与するこ

とが報告されている[40][41]。そこで、ΔSpca1株を用いて DT40細胞における FPNのマン

ガン排出への寄与を評価した結果、ΔSpca1株に FPNを過剰発現させても、ΔSpca1のマ

ンガン耐性は回復しなかった (Fig. 5A)。このことから、DT40細胞において FPNはマンガ

ン排出・解毒にほとんど寄与しないことが明らかになった。

次に、KRS症候群や若年性パーキンソン病の原因遺伝子である ATP13A2およびそのホ

モログである ATP13A1、ATP13A3の DT40細胞におけるマンガン排出への寄与について

評価した。ATP13A2は、酵母におけるオーソログである Ypk9pにおける解析から、マン

ガンを含む 2価イオンの輸送に関わると予想されているが、その詳細は明らかにされてい

ない[55]。さらに、そのホモログである ATP13A1、ATP13A3についても金属基質選択性の

詳細は明らかにされていない。そこで、ΔSpca1株に ATP13A1、ATP13A2、ATP13A3を

過剰発現させマンガン耐性試験を行った。Alamar Blue試薬を用いた耐性試験においては、

ATP13A1~3によるマンガン耐性の回復は認められなかった (Fig. 5B)。一方で、目視での

マンガン耐性試験の結果においては、ΔSpca1が完全に死滅するマンガン濃度である 40

µMにおいて僅かな生育が認められた (データ省略)。このことから、ATP13A1~3がマンガ

ン排出・解毒に寄与する可能性が示唆された。しかしながら、この寄与率は非常には非常

に低いため DT40細胞におけるマンガンホメオスタシス維持機構への寄与は極めて低いと

考えられた。

高マンガン血症を伴うパーキンソン病症候群との関連性から ZNT10はマンガンホメオス

タシス維持への関与が示唆されている[16]。そこで、ZNT10のマンガン排出・解毒への寄

与について評価を行った。ΔSpca1株に ZNT10を過剰発現させた株においてマンガン耐性

試験を行った結果、ZNT10は高濃度のマンガンに対する耐性を回復させることが明らかに

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なった (Fig. 5C)。この結果は、酵母におけるマンガン高感受性株ΔPmr1に ZNT10を発現

させるとマンガン耐性が回復するという先行研究の結果と一致している[46]。さらに、放

射性マンガン (54Mn) を用いた解析から、ΔSpca1株に ZNT10を過剰発現させると、Δ

Spca1株における細胞内へのマンガン蓄積がWTと同程度まで軽減した (Fig. 5D)。以上の

結果から、ZNT10はマンガン排出・解毒機構において非常に重要な役割を果たすことが明

らかになった。

Figure 5. ΔSpca1株を用いた各輸送体のマンガン排出への寄与率の比較解析

(A, B, C) ΔSpca1株に SPCA1-GFPおよび FPN-V5 (A)、FLAG-ATP13A1、ATP13A2-HAおよび HA-

ATP13A3 (B)、ZNT10-HA (C) を発現させた株におけるマンガン耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロ

ッティング法による各タンパク質の発現の確認(下図)。Tubulinはローディングコントロールとして用

いた。

(D) WT、ΔSpca1株、ΔSpca1株に ZNT10-HAを発現させた株における細胞内の 54Mnの蓄積量。実験は 3

連で行い、平均値を示した (n = 3 , * p < 0.01)。

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1-6. ZNT10は細胞外へマンガンを排出することでマンガンホメオスタシスの維持において

非常に重要な役割を果たす

上述までの解析結果から、SPCA1と ZNT10がΔSpca1株のマンガン耐性を回復させるこ

とを明らかにした。そこで次に、SPCA1と ZNT 10のマンガンホメオスタシス維持機構へ

の寄与率について比較解析した。ΔSpca1株に SPCA1と ZNT10を同時に過剰発現させた

株においてマンガン耐性試験を行った結果、SCPA1単独発現時よりも高濃度のマンガン存

在下でマンガン耐性を回復させた (Fig. 6A)。さらに、この生存率のグラフは ZNT10単独

発現時と同様の挙動を示した。このことから、ZNT10が SPCA1よりも強くマンガン耐性

を回復させることが明らかとなった。

続いて、ZNT10の細胞外へのマンガン排出に対する機能を詳細に解析するため、免疫染

色法を用いて DT40細胞における ZNT10の局在を確認した。その結果、ZNT10はゴルジ

体のマーカーである GM130と共局在することから、ZNT10はゴルジ体に局在することが

明らかになった (Fig. 6B)。更に、ZNT10は細胞膜表面にも局在が確認された。そこで、細

胞表面ビオチン化アッセイ法を用いて ZNT10の細胞膜表面での局在について解析を行っ

た。その結果、DT40細胞において ZNT10は細胞膜表面での発現が観察された (Fig. 6C)。

この結果は、ZNT10が細胞膜表面に局在するという先行研究の論文の結果と一致する

[52]。このことから、ZNT10は細胞内の過剰なマンガンの細胞外への排出において極めて

重要な役割を果たす可能性が考えられた。

Figure 6. ZNT10は細胞膜表面に局在し、細胞外へのマンガン排出に機能する

(A) ΔSpca1株に SPCA1-GFP、ZNT10-HA、ZNT10-HAと SPCA1-GFPを同時に発現させた株におけるマ

ンガン耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認(下図)。

Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

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(B) ΔSpca1株における ZNT10-HAの細胞内局在の蛍光観察。ZNT10-HAの発現 (緑)、GM130の発現

(赤)、赤と緑を重ね合わせた蛍光写真を示す。

(C) 細胞表面ビオチン化アッセイによる、ΔSpca1株における ZNT10-HAの細胞膜表面における発現の確

認。Inputはアビジンビーズで回収前の全タンパク質 (上図)、Biotinylationはアビジンビーズで回収した細

胞膜表面タンパク質を表す (下図)。Tubulinおよび IgMは Inputおよびビオチン化タンパク質のローディ

ングコントロールとして用いた。

1-7. 第 1章の総括

第 1章の解析結果から、マンガンの排出・解毒への機能が示唆されている SPCA1、

ATP13A1、ATP13A2、ATP13A3、FPN、ZNT10の 6種類の輸送体の中で、SPCA1と

ZNT10がマンガン排出・解毒に機能することで、脊椎動物細胞におけるマンガンホメオス

タシスの維持において重要な役割を果たすことが示された。さらに、ZNT10は SPCA1よ

りも高いマンガン濃度で耐性を回復させることから、脊椎動物細胞においては ZNT10がマ

ンガンの排出・解毒において特に重要な役割を果たす可能性が示唆された。

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第 2章 ZNT10の金属基質認識機構についての解析 第 1章までの解析結果から、ZNT10が過剰なマンガンを細胞外へ排出することで、マン

ガンホメオスタシスの維持において重要な役割を果たす可能性を示した。しかしながら、

亜鉛を特異的に輸送すると考えられている ZNTトランスポーターファミリーに属する

ZNT10がなぜマンガンを輸送するかについての詳細な分子機構は明らかになっていない。

そこで、第 2章では、ZNT10によるマンガン輸送機構について明らかにするため、ZNT10

に特徴的な配列を他の ZNTトランスポーターと入れ替えたドメイン置換変異体を作製し、

金属輸送能に変化があるか解析を行った。これにより、ZNT10のマンガン輸送機構におい

て重要なアミノ酸配列を同定し、ZNT10によるマンガン排出機構の一端を金属基質認識機

構の観点から明らかにすることを目的とした。以下に、これまでに明らかにされている

ZNTトランスポーターの構造的特徴、および ZNT10のアミノ酸配列を他の ZNTトランス

ポーターと比較した際に ZNT10に特徴的なアミノ酸配列についてまとめた。

亜鉛トランスポーター

亜鉛トランスポーターはその輸送の方向性から、ZNTトランスポーターファミリーと

ZIPトランスポーターファミリーに大きく分類される[43]。ZNTトランスポーターは細胞

質から細胞外または細胞小器官への亜鉛輸送に重要であり、ZIPトランスポーターは細胞

質への亜鉛輸送に重要である。これまでに、ヒトにおいては、9種類の ZNTトランスポー

ター (ZNT1~8、ZNT10) と、14種類の ZIPトランスポーター (ZIP1~14) が存在すること

が報告されており、これら複数の亜鉛トランスポーターが組織や細胞特異的に様々な場所

に局在することで細胞内の亜鉛ホメオスタシスが保たれている (Fig. 7)。

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Figure 7. 細胞内における亜鉛トランスポーターの局在

緑色の矢印は ZNTトランスポーター、赤色の矢印は ZIPトランスポーターを示す。

ZNTトランスポーターのタンパク質構造と亜鉛輸送能に重要と予想されるアミノ酸領域

ZNTトランスポーターは CDF (cation diffusion facilitator) ファミリーに属している。CDF

ファミリーは系統発生学的に分類して、Zn-CDF、Zn/Fe-CDF、Mn-CDFの 3つのグループ

に分類され、ZNTは Zn-CDFに分類される[53]。これまでに高等生物での ZNTトランスポ

ーターの立体構造は明らかにされていない。一方で、ZNTトランスポーターの大腸菌にお

けるホモログである YiiPにおいては全長タンパク質の結晶構造が明らかになっており、こ

の YiiPの結晶構造とアミノ酸配列の類似性に基づいて ZNTの構造が予想されている

[54][55] (Fig. 8)。ZNTトランスポーターは、6回膜貫通型の構造を有しており、C末端およ

び N末端領域が細胞質側に位置している。ZNTトランスポーターはホモ 2量体を形成し機

能すると考えられている。ただし、ZNTトランスポーターのうち、ZNT5は例外的に長い

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N末端領域を有し 15回膜貫通型であるとされており、ZNT5は ZNT6とへテロダイマーを

形成すると考えられている[56][57]。ZNTトランスポーターは、プロトンの濃度勾配を駆

動力とした H+/Zn2+アンチポーターであり、プロトンと亜鉛は1:1で対向輸送される

[58][59][60][61]。さらに、YiiPにおける解析より、亜鉛が結合することでコンフォメーシ

ョンが変化し、交換輸送が行われることが示されている[62][63]。YiiPの結晶構造解析およ

び ZNTトランスポーターにおける変異体を用いた解析から、これまでに ZNTトランスポ

ーターによる亜鉛輸送能において重要な機能を有する領域がいくつか示されている。

1つ目は、ZNTトランスポーターの TMD (transmembrane domain) Ⅱと TMD Ⅴに存在す

る 2つのヒスチジン残基 (H) とアスパラギン酸残基 (D) からなる4つの親水性アミノ酸

が、1つの亜鉛と 4面体構造を形成することで、亜鉛結合部位 (HDHD型モチーフ) とな

ることが示されている。この 4つの親水性残基は高度に保存されており、ヒスチジン残基

とアスパラギン酸残基をアラニン残基に置換した変異体は亜鉛輸送能を失うことが報告さ

れている[58]。また、YiiPにおいては 4面体構造の金属結合部位の 1つのヒスチジン残基

がアスパラギン酸残基に置換した DDHD型となっており、亜鉛に加えてカドミウムを輸送

することが知られる[64]。金属形成部位が HDHD型である ZNTトランスポーターは亜鉛

のみを輸送するとされるが、ZNTトランスポーターの HDHD型を DDHD型にすると亜鉛

に加えカドミウムを輸送できるようになることが示されている。これらの知見から、TMD

Ⅱと TMD Ⅴに存在する 4面体構造は金属基質選別において重要な役割を果たすことが予

想されている。

また、ZNTトランスポーターには TMD ⅣとⅤの間にヒスチジン残基 (His) に富んだ細

胞質領域 (His rich領域)があり、この領域に亜鉛が結合することで金属結合部位へ亜鉛が

輸送される可能性や、この部位が金属基質の選択性に重要であることが予想されている

[57][60]。

さらに、ZNTトランスポーターの C末端領域も亜鉛輸送能において重要である可能性が

示されている。YiiPの C末端領域はホモ 2量体を形成し、単量体あたり 2個の亜鉛部位を

有することが示されている[62][65]。この C末端領域は、亜鉛と結合することでダイマー

を安定化する可能性や、亜鉛が結合することで細胞質の亜鉛センサーとなり亜鉛が金属結

合部位へ送られる可能性などが示唆されている[54] [65]。

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Figure 8. 大腸菌のホモログ YiiPの結晶構造から予想された ZNTトランスポーターの構造とその配列的

特徴

他の ZNTトランスポーターと比較した際の ZNT10に特徴的な配列

ZNT10においては、これら ZNTトランスポーターにおいて亜鉛輸送能に重要であると考

えられる領域のアミノ酸配列が異なっている (Fig. 9)。TMD Ⅱと TMD Ⅴに存在する

HDHD型モチーフの 1つ目のヒスチジン残基は ZNT10においてはアスパラギン残基 (N)

に置換しており、NDHDとなっている (Fig. 9A, B)。また、TMD ⅣとⅤの間の His rich領

域はアルギニン残基 (Arg) やリシン残基 (Lys) に富む Arg, Lys rich領域となっている。さ

らに、C末端領域にもアルギニン残基やリシン残基が多いことも特徴としている (Fig.

9A)。

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Figure 9. 他の ZNTトランスポーターと比較した際の ZNT10に特徴的なアミノ酸配列

(A) ZNT10に特徴的なアミノ酸配列 (1, 2, 3) をタンパク質構造に模式化した。

(B) ZNTトランスポーターの TMD Ⅱと TMD Vのシーケンスの配列。ただし、ZNT5は TMD XIと XIV

を示す。亜鉛結合部位を形成すると予想されるヒスチジン残基とアスパラギン酸残基を緑色および水色で

示す。ZNT10の 43番目のアスパラギン残基を橙色で示す。なお、Fig. 20 , 21で詳細を示す ZNT10の 52

番目のシステイン残基と 242番目のロイシン残基は赤色で示す。

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結果 2-1. ZNT10は亜鉛を輸送せず、マンガン選択的な輸送を行う

第 1章までの解析結果から、ZNT10は亜鉛トランスポーターファミリーに属するにも関

わらずマンガンの輸送に寄与することが明らかになった。そこで次に、ZNT10が亜鉛輸送

に関わるか解析を行った。解析には、DT40細胞において過剰な亜鉛の排出に関わる

Znt1、Znt4、Metallothionein (Mt) を欠損させた 3重欠損株 ZnT1-/- Mt-/- ZnT4-/-株 (以下Δ1M4

株) を用いた[66][67]。Δ1M4株は高濃度の亜鉛に対する耐性が著しく低下しており、WT

が生育可能な亜鉛濃度である 60 µMで完全に死滅する。この株に輸送能を評価したい輸送

体を過剰発現させ、高濃度の亜鉛に対する耐性が回復するかどうかを指標とすることで亜

鉛輸送能を評価した。Δ1M4株に ZNT10を過剰発現させ亜鉛耐性試験を行った結果、

ZNT10は高濃度の亜鉛に対し耐性を回復させなかった (Fig. 10A)。このことから、ZNT10

は亜鉛を輸送せずマンガンを選択的に輸送する可能性が示唆された。そこで、ZNT10のマ

ンガン選択的輸送メカニズムについて他の ZNTトランスポーターとの金属基質認識機構の

違いに着目し解析を行った。比較対象として、まず初めに、ZNTトランスポーターの中で

ZNT10と も相同性が高く、また局在が類似する ZNT1を対象とし解析を行った。ZNT10

と ZNT1のアミノ酸配列の相同性は 37%である[55][68]。当研究室の先行研究から、ZNT1

はΔ1M4株の亜鉛耐性を回復させることが明らかになっている[66]。しかしながら、ZNT1

のマンガン輸送能についてはこれまでに解析が行われていなかったため、ΔSpca1株に

ZNT1を過剰発現させマンガン耐性試験を行った結果、ZNT1はマンガン耐性を回復させな

かった (Fig. 10B)。このことから、ZNT1はマンガン輸送能を持たず、亜鉛選択的な輸送を

行うことが明らかになった。

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Figure 10. ZNT10はマンガン選択的な輸送を行う

(A, B) Δ1M4株 (A) およびΔSpca1株 (B) に FLAG-ZNT1 または ZNT10-HAを発現させた株における耐

性試験の結果。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下図)。Calenxinはローデ

ィングコントロールとして用いた。

2-2. DT40細胞において ZNT1および ZNT10は共に細胞膜表面に局在する

次に、ZNT1と ZNT10の DT40細胞における局在について、免疫染色法および細胞表面

ビオチン化アッセイを用いて確認を行った。免疫染色法を用いた解析から、ΔSpca1株お

よびΔ1M4株どちらの株においても、ZNT1と ZNT10の細胞膜表面での局在が確認された

(Fig. 11A, B)。また、細胞表面ビオチン化アッセイを用いた解析からも、ZNT1と ZNT10

が細胞膜表面において発現することが確認された (Fig. 11C, D)。以上の結果から、ZNT1

と ZNT10は、共に細胞膜表面における局在が確認されるにも関わらず、異なる金属基質を

輸送することが明らかになった。

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Figure 11. ΔSpca1株およびΔ1M4における ZNT1と ZNT10の細胞内局在

(A, B) ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) における FLAG-ZNT1と ZNT10-HAの細胞内局在の蛍光観

察。

(C, D) 細胞表面ビオチン化アッセイによる、ΔSpca1株 (C) およびΔ1M4株 (D) における FLAG-ZNT1

と ZNT10-HAの細胞膜表面における発現の確認。Inputはアビジンビーズで回収前の全タンパク質 (上

図)、Biotinylationはアビジンビーズで回収した細胞膜表面タンパク質を表している (下図)。Tubulinおよ

び IgMは Inputおよびビオチン化タンパク質のローディングコントロールとして用いた。

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2-3. ZNT10と ZNT1のドメイン置換体の解析

ZNT10と ZNT1はアミノ酸配列の相同性が高いものの、それぞれに特徴的な相同性の低

いアミノ酸配列領域を有している。ZNT10では、TMD Ⅱと TMD Ⅴに存在し亜鉛結合部

位となることが予想される HDHD型モチーフのヒスチジン残基がアスパラギン残基に変化

し、NDHD型となっている。また、TMD ⅣとⅤの間の His Rich領域がアルギニン残基や

リシン残基に富む Arg, Lsy rich領域となっている。さらに、C末端領域にもアルギニン残

基やリシン残基を多く含んでいる。そこで、これらの ZNT10に特徴的な領域の中に

ZNT10のマンガン選択的輸送に重要な配列があるのではないかと考え、これらの領域を

ZNT1と入れ替えた際に、両者の金属輸送能に変化があるか解析を行った (Fig. 12)。

Figure 12. ZNT10と ZNT1に特徴的な配列を置換した変異体の解析

2-3-1. ZNT10の C末端領域および TMD ⅣとⅤの間の Loop領域は ZNT1と置き換わるこ

とができる

ZNT10のマンガン輸送能に重要な領域について解析を行うため、ZNT10に特徴的な配列

を ZNT1に特徴的な配列と入れ替えた変異体について解析を行った。まず始めに、ZNT10

の Arg, Lys rich領域を ZNT1の His Rich領域に置換した ZNT10 (ZNT1Loop)、ZNT10の C末端

領域を ZNT1の C末端領域に置換した ZNT10 (ZNT1Cter) をΔSpca1株およびΔ1M4株におい

て過剰発現させ耐性試験を行った。ΔSpca1株に ZNT10 (ZNT1Cter) および ZNT10 (ZNT1Loop) を

過剰発現させた株においては、ZNT10はマンガン耐性を保持したままであった (Fig. 13A,

C)。一方で、Δ1M4株に ZNT10 (ZNT1Cter) および ZNT10 (ZNT1Loop) を発現させた株において

は、ZNT10は亜鉛耐性を獲得することができなかった (Fig. 13B, D)。このことから、

ZNT10の C末端領域および TMD Ⅳと TMD Ⅴの間の Loop領域は、ZNT10のマンガン選

択的輸送能においては重要な領域ではないことが明らかになった。

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Figure 13. ZNT10の C末端領域および Loop領域を ZNT1に置換した変異体の解析

(A, B) ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) に ZNT10-HAまたは Myc-ZNT10 (ZNT1Cter) を発現させた株にお

ける耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下図)。

Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

(C, D) ΔSpca1株 (C) およびΔ1M4株 (D) に、ZNT10-HAまたは ZNT10 (ZNT1Loop)-HAを発現させた株に

おける耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下図)。

Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

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2-3-2. ZNT10の TMD IIのアスパラギン残基が ZNT10のマンガン輸送能に重要である

次に、ZNT10の NDHD型モチーフを HDHD型モチーフに置換した変異体 ZNT10 (N43H)

をΔSpca1株およびΔ1M4株において過剰発現させ耐性試験を行った。その結果、ZNT10

(N43H) をΔSpca1株に過剰発現させた株では、ZNT10のマンガン耐性が消失した (Fig.

14A)。また、細胞表面ビオチン化アッセイを用いた解析から、変異型 ZNT10は野生型

ZNT10と同様、細胞膜表面への局在が確認されたことから、この輸送能の変化は局在の変

化に起因しないと考えられた (Fig. 15A, B)。このことから、ZNT10の TMD IIに存在する

43番目のアスパラギン残基が ZNT10のマンガン輸送能において非常に重要な残基である

ことが明らかとなった。一方で、Δ1M4株に ZNT10 (N43H) を過剰発現させても、ZNT10は

亜鉛耐性を獲得しなかった (Fig. 14B)。

以上の ZNT10に特徴的な配列を ZNT1と入れ替えた変異体の解析結果から、ZNT10に

おけるマンガン選択的輸送活能においては、TMDⅡに存在する 43番目のアスパラギン残

基がその選別において重要な役割を果たす一方で、ZNT10における C末端領域、および、

TMD Ⅳと TMD Ⅴの間に存在する Arg, Lys rich領域は、特徴的な配列を有するにも関わ

らず、ZNT10のマンガン輸送能においては重要ではないことが示された。

Figure 14. ZNT10の TMD IIの 43番目のアスパラギン残基をヒスチジン残基に置換した変異体の解析

(A, B) ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) において、ZNT10-HAまたは ZNT10 (N43H)-HAを発現させた株

における耐性試験の結果(上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下

図)。Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

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Figure 15. 変異型 ZNT10の細胞膜表面における発現の解析

(A, B) 細胞表面ビオチン化アッセイによる、ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) における野生型 ZNT10

と変異型 ZNT10の細胞膜表面における発現の確認。Inputはアビジンビーズで回収前の全タンパク質 (上

図)、Biotinylationはアビジンビーズで回収した細胞膜表面タンパク質を表している (下図)。Tubulinおよ

び IgMは Inputおよびビオチン化タンパク質のローディングコントロールとして用いた。

2-3-3. ZNT1の C末端領域および TMD ⅣとⅤの間の Loop領域は ZNT10と置き換わるこ

とができる

ZNT10に特徴的な配列を ZNT1に入れ替えた変異体について解析を行ったため、次に、

ZNT1に特徴的な領域を ZNT10に入れ替えた変異体について解析を行った。まず始めに、

ZNT1の His rich領域を Arg, Lys rich領域に置換した変異体 ZNT1 (ZNT10Loop)、ZNT1の C末

端領域を ZNT10に置換した変異体 ZNT1 (ZNT10Cter) をΔSpca1株およびΔ1M4株において過

剰発現させ耐性試験を行った。Δ1M4株に ZNT1 (ZNT10Cter) および ZNT1 (ZNT10Loop) を過剰発

現させた株において亜鉛耐性試験を行った結果、ZNT1の亜鉛耐性は消失しなかった (Fig.

16B, D)。また、ΔSpca1株に ZNT1 (ZNT10Cter) および ZNT1 (ZNT10Loop) を過剰発現させた株に

おいてマンガン耐性試験を行った結果、ZNT1はマンガン耐性を獲得しなかった (Fig. 16A,

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C)。このことから、ZNT1の C末端領域および TMD Ⅳと TMD Ⅴの間の Loop領域は、

ZNT1の亜鉛選択的輸送能においては重要な領域ではないことが明らかとなった。

Figure 16. ZNT1の C末端領域および Loop領域を ZNT10に置換した変異体の解析

(A, B) ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B)に、FLAG-ZNT1または FLAG-ZNT1 (ZNT10Cter) を発現させた株

における耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下

図)。Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

(C, D) ΔSpca1株 (C) およびΔ1M4株 (D) に、FLAG-ZNT1または FLAG-ZNT1 (ZNT10Loop) を発現させた

株における耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下

図)。Calnexinはローディングコントロールとして用いた。

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2-3-4. ZNT1の TMDⅡの 43番目のヒスチジン残基をアスパラギン残基に置換すると ZNT1

にマンガン輸送能が付与される

次に、ZNT1の HDHD型モチーフを NDHD型モチーフに置換した変異体 ZNT1 (H43N) を

ΔSpca1株およびΔ1M4株において過剰発現させ耐性試験を行った。その結果、ZNT1

(H43N)をΔ1M4株に過剰発現させると ZNT1の亜鉛耐性が消失した (Fig. 17B)。このことか

ら、ZNT1の 43番目のヒスチジン残基が ZNT1の亜鉛輸送能に重要であることが明らかに

なった。さらに、ZNT1 (H43N) をΔSpca1株に過剰発現させると、ZNT1にマンガン耐性が

付与された (Fig. 17A)。このことから、ZNT1の TMD Ⅱの 43番目のヒスチジン残基をア

スパラギン残基に置換するだけで、亜鉛を選択的に輸送する ZNT1にマンガン輸送能が付

与されることが明らかになった。また、細胞表面ビオチン化アッセイを用いた解析から、

ΔSpca1株とΔ1M4株どちらの株においても変異型 ZNT1は野生型 ZNT1と同様に全て細

胞膜表面に局在することから、この変異による輸送能の変化は局在の変化によるものでは

ないことが明らかになった (Fig. 18A, B)。

以上の ZNT1に特徴的な配列を ZNT10と入れ替えた変異体の解析結果から、ZNT1の

TMD II の 43番目のヒスチジン残基が ZNT1の亜鉛輸送能において重要である一方で、

ZNT1の C末端領域および Loop領域は ZNT1の亜鉛輸送能には重要でないことが明らかに

なった。さらに、ZNT1の TMD IIの 43番目のヒスチジン残基をアスパラギン残基に変え

ると、亜鉛選択的な輸送を行う ZNT1にマンガン輸送能が付与されることが明らかになっ

た。

ここまでの ZNT10の変異体解析および ZNT1の変異体解析の結果を総括すると、ZNT10

と ZNT1の C末端領域および TMD Ⅳと TMD Ⅴの間の Loop領域は配列の相同性が低い

にも関わらず、両者を入れ替えても金属輸送能に変化はなく、その輸送能を保持したまま

であることから、両者は互いに置き換わることができることが明らかになった。また、

ZNT1の TMD IIの 43番目のヒスチジン残基を ZNT10と同じアスパラギン残基に置換する

と ZNT1が亜鉛輸送能を失いマンガン輸送能を獲得すること、一方で、ZNT10の TMD II

の 43番目のアスパラギン残基は ZNT10のマンガン選択的輸送において も重要な残基で

あるが、43番目のアスパラギン残基をヒスチジン残基に置き換えただけでは、ZNT10に亜

鉛輸送能を付与することはでないことを明らかにした (Fig. 19)。

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Figure 17. ZNT1の TMD Ⅱの 43番目のヒスチジン残基をアスパラギン残基に置換した変異体の解析

(A, B) ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) に、FLAG-ZNT1または FLAG-ZNT1 (H43N) を発現させた株に

おける耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下図)。

Calnexinはローディングコントロールとして用いた。

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Figure 18. 変異型 ZNT1の細胞膜表面における発現の解析

(A, B) 細胞表面ビオチン化アッセイによる、ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) における野生型 ZNT1

と変異型 ZNT1の細胞膜表面における発現の確認。Inputはアビジンビーズで回収前の全タンパク質 (上

図)、Biotinylationはアビジンビーズで回収した細胞膜表面タンパク質を表している (下図)。Tubulinおよ

び IgMは Inputおよびビオチン化タンパク質のローディングコントロールとして用いた。

Figure 19. ZNT1と ZNT10に特徴的な配列を置換した変異体の解析結果

2-3-5. ZNT10の TMD IIの 52番目のシステイン残基と TMD Vの 242番目のロイシン残基

は ZNT10の金属基質選別において重要な残基である

ZNT1(H43N) をΔSpca1に過剰発現させた株では、ZNT1にマンガン耐性を付与することが

出来た (Fig. 17A)。その一方で、ZNT10 (N43H) をΔ1M4に過剰発現させた株においては、

ZNT10に亜鉛輸送能を付与することができなかった (Fig. 14B)。このことから、ZNT10に

は亜鉛輸送能を抑制する特徴的な残基があるのではないかと考えられた。そこで、この

ZNT10の亜鉛輸送能を抑制する残基を明らかにするため、TMD Ⅱと TMD Ⅴにおいて他

のトランスポーターと比較して ZNT10に特徴的な残基をアライメントにより探索した。そ

の結果、ZNT10の TMD Ⅱの 52番目のシステイン残基および TMD Ⅴの 242番目のロイ

シン残基が他のトランスポーターと比較して ZNT10に特徴的であることが明らかになった

(Fig. 9B)。他の ZNTトランスポーターにおいては、TMD Ⅱの 52番目システイン残基 (C)

は、バリン残基 (V)、イソロイシン残基 (I)、メチオニン残基 (M) のいずれかであり、

TMD Vの 242番目のロイシン残基 (L) は、フェニルアラニン残基 (F) であった。この 2

つの残基は、YiiPの結晶解析から構築されたモデルから、金属結合部位となる HDHDモ

チーフよりも C末端側 (細胞質側) に近い部分に存在することが予測された。

そこで、これらの残基が ZNT10の亜鉛輸送能を抑制しているのではないかと考え、

ZNT10において金属結合型を亜鉛結合型 (HDHD型) にした ZNT10 (N43H) に加え、52番目

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のシステイン残基をバリン残基に変異させた ZNT10 (N43H, C52V) または、242番目のロイシ

ン残基をフェニルアラニン残基に置換した ZNT10 (N43H, L242F) について金属耐性試験を行な

った。ZNT10 (N43H, C52V) または ZNT10 (N43H, L242F) をΔ1M4株に過剰発現させ亜鉛耐性試験

を行った結果、両者は ZNT10に亜鉛耐性を付与しなかった (Fig. 20A, B)。そこで、ZNT10

に特徴的な 3つ全ての残基を入れ替えた変異体 ZNT10 (N43H, C52V, L242F) をΔ1M4株に過剰発

現させ亜鉛耐性試験を行った結果、Δ1M4株が完全に死滅する 60 µMの亜鉛濃度において

亜鉛耐性を回復させた (Fig. 20C)。一方で、80 µMの亜鉛濃度においては、ZNT10 (N43H.

C52V, L242F) はΔ1M4株の亜鉛耐性を回復させなかった。このことから、ZNT10 (N43H, C52V,

L242F) は ZNT10に亜鉛輸送能を付与するが、耐性の回復度は野生型 ZNT1より低いことが

明らかになった。しかしながら、この 2残基は ZNT10の金属基質選別に関わる重要な残基

である可能性が示唆された。

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Figure 20. ZNT10の TMD IIの 52番目のシステインと TMD Vの 242番目のロイシン残基が、ZNT10の

金属基質認識において必要な残基である

(A, B, C) Δ1M4株に ZNT10-HAおよび ZNT10 (N43H, C52V)-HA (A)、 ZNT10 (N43H, L242F)-HA (B)、ZNT10 (N43H,

C52V, L242F)-HA (C) を発現させた株における亜鉛耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法によ

る各タンパク質の発現の確認 (下図)。Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

2-3-6. ZNT10の TMD IIの 52番目のシステイン残基と TMD Vの 242番目のロイシン残基

は、亜鉛輸送能を抑制するがマンガン輸送能は抑制しない

ZNT10の TMD Ⅱの 52番目のシステインと TMD Ⅴの 242番目のロイシン残基の ZNT10

における金属選別機構への寄与についてさらに詳細に解析するため、ZNT10の TMD Ⅱの

の 52番目のシステイン残基と TMD Ⅴの 242番目のロイシン残基のみを変異させた

ZNT10 (C52V, L242F) について解析を行った。ZNT10 (C52V, L242F) をΔ1M4株に過剰発現させ亜

鉛耐性試験を行った結果、ZNT10 (C52V, L242F) はΔ1M4株の亜鉛耐性を回復させなかった

(Fig. 21A)。また、ZNT10 (C52V, L242F) をΔSpca1株に過剰発現させマンガン耐性試験を行っ

た結果、ZNT10 (C52V, L242F) は ZNT10のマンガン耐性を消失させなかった (Fig. 21B)。この

ことから、ZNT10の TMD IIの 52番目のシステイン残基と TMD Vの 242番目のロイシン

残基は亜鉛輸送能を抑制するがマンガン輸送能は抑制しないことが明らかになった。した

がって、これら 2残基は亜鉛輸送能を抑制することで ZNT10のマンガン選択的な輸送能に

おいて重要な役割を果たす可能性が考えられた (Fig. 22)。ここまでの ZNT1と ZNT10のド

メイン置換体を用いた解析結果を表にまとめた (Table 2)。

Figure 21. ZNT10の TMD IIの 52番目のシステイン残基と TMD Vの 242番目のロイシン残基は、亜鉛輸

送能を抑制するがマンガン輸送能は抑制しない

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(A, B) Δ1M4株 (A) およびΔSpca1株 (B) に ZNT10-HAおよび ZNT10 (C52V, L242F)-HAを発現させた株に

おける耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下図)。

Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

Figure 22. 本研究で明らかにした ZNT10のマンガン選択的輸送能に重要なアミノ酸残基

Table 2. ZNT10と ZNT1のドメイン置換体の解析結果のまとめ

ΔSpca1株においては 40 μMのマンガン濃度、Δ1M4株においては 60 μMの亜鉛濃度で、WTと比較し

て生存率が 75%以上の場合を+++、25-75%を++、25%以下を+、0%を-で示す (ただし目視において僅かな

生存が確認された場合には*マークを記す)。NEは not examinedを示す。

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2-4. ZNT10と ZNT2のドメイン置換体の解析

上記までの解析は、ZNT10と相同性が高く、また局在が類似する ZNT1を比較対象とし

て解析を行った。そこで、次に、ZNT10と相同性が低く、また、ZNT10と局在が異なる

ZNT2を比較対象とし解析を行った。ZNT2は、分泌小胞に局在し、細胞質から分泌小胞内

に亜鉛を輸送することで、細胞内の亜鉛ホメオスタシス維持において重要な役割を果たす

トランスポーターである[67][69]。ZNT2の TMD Ⅱと TMD Ⅴの金属結合部位は HDHD型

モチーフとなっており、TMD ⅣとⅤの Loop領域は His rich領域である。さらに、他の

ZNTと比較して C末端領域が短いことも ZNT2の配列的特徴の 1つである。ZNT10と

ZNT2のアミノ酸配列の相同性は 28%である[55][68]。これまでの先行研究から、ZNT2は

Δ1M4株の亜鉛耐性を回復させることが明らかになっている[67]。一方で、ZNT2のマン

ガン輸送能については解析されていなかったため、ΔSpca1株を用いてマンガン耐性試験

を行った結果、ZNT2はΔSpca1株の耐性を回復させないことが明らかになった(Fig.

23A)。このことから、ZNT2はマンガン輸送を行わず亜鉛選択的な輸送を行うことが明ら

かになった。そこで次に、ZNT10と ZNT2に特徴的な領域を入れ替えた変異体を作成し、

両者の金属輸送能に変化があるかについて解析を行った。

2-4-1. ZNT2の TMD Ⅱの金属結合部位のヒスチジン残基をアスパラギン残基に置換して

も ZNT2にマンガン輸送能は付与されない

まず、ZNT2の HDHD型モチーフを NDHD型モチーフに変換させた変異体 ZNT2 (H106N)

について解析を行った。ZNT2 (H106N) をΔ1M4株に過剰発現させ亜鉛耐性試験を行った結

果、ZNT2の亜鉛耐性が消失した (Fig. 23B)。一方で、ZNT2 (H106N) をΔSpca1株に過剰発

現させマンガン耐性試験を行った結果、ZNT2 (H106N) は ZNT2にマンガン耐性を付与するこ

とはできなかった (Fig. 23A)。ZNT1 (H43N) では ZNT1にマンガン耐性を付与することがで

きたが、ZNT2の同じ変異体である ZNT2 (H106N) ではマンガン耐性を付与できず、ZNT10

と ZNT1の変異体解析とは異なる結果が得られた。これは、ZNT10と ZNT1は局在が類似

し、アミノ酸配列の相同性が高い一方で、ZNT10と ZNT2は局在の類似性やアミノ酸配列

の相同性が低いためであると考えられた。

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Figure 23. ZNT2の TMD Ⅱの金属結合部位のヒスチジン残基をアスパラギン残基に置換した変異体の解

(A, B) ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) に、ZNT2-HAまたは ZNT2 (H106N)-HAを発現させた株におけ

る耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下図)。

Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

2-4-2. ZNT10と ZNT2の C末端領域は互いに置き換わることができない

次に、ZNT10の C末端領域を ZNT2の C末端領域と入れ替えた変異体 ZNT10 Cter

(ZNT2Cter) および ZNT2の C末端領域を ZNT10の C末端領域と入れ替えた変異体 ZNT2Cter

(ZNT10Cter) について解析を行った。ZNT10Cter (ZNT2Cter) をΔSpca1株に過剰発現させると、

ZNT10のマンガン耐性が消失した (Fig. 24A)。一方、ZNT10Cter (ZNT2Cter) をΔ1M4株に過

剰発現させても、ZNT10に亜鉛耐性を付与できなかった (Fig. 24B)。また、ZNT2Cter

(ZNT10Cter) をΔ1M4株に過剰発現させると、ZNT2の亜鉛耐性が消失した (Fig. 24D)。一方、

ZNT2Cter (ZNT10Cter) をΔSpca1株に過剰発現させても、ZNT2にマンガン耐性を付与できな

かった (Fig. 24C)。このことから、ZNT10と ZNT2の C末端領域は互いに置き換わること

ができないことが明らかになった。

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Figure 24. ZNT10の ZNT2の C末端領域を置換した変異体の解析

(A, B) ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) に、ZNT10-HAまたは ZNT10 (ZNT2Cter)-HAを発現させた株に

おける耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下図)。

Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

(C, D) ΔSpca1株 (C) およびΔ1M4株 (D) に、ZNT2-HAまたは ZNT2 (ZNT10ter)-HAを発現させた株におけ

る耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認 (下図)。

Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

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2-4-3. ZNT10と ZNT2に特徴的な領域を全て置換しても両者の金属輸送能は変化しない

そこで、次に、ZNT2と ZNT10に特徴的な 3つの領域を全て置換した変異体を作成し両

者の金属輸送能が変化するか解析を行った。具体的には、ZNT10に特徴的な 3つの領域全

てを対応する ZNT2の領域に置換した変異体 ZNT10 (N43H-ZNT2Loop-ZNT2Cter) および ZNT2に特

徴的な 3つの領域全てを対応する ZNT10の領域に置換した変異体 ZNT2 (H106N-ZNT10Loop-

ZNT10Cter) について解析を行った。ZNT10 (N43H-ZNT2loop-ZnT2Cter) をΔSpca1株において過剰発現

させると ZNT10のマンガン耐性が消失した (Fig. 25A)。一方で、Δ1M4株に ZNT10 (N43H-

ZNT2Loop-ZNT2Cter) を過剰発現させても、ZNT10に亜鉛耐性を付与することができなかった

(Fig. 25B)。また、ZNT2 (H106N-ZNT10Loop-ZNT10Cter) をΔ1M4株に過剰発現させると、ZNT2の亜

鉛輸耐性が消失した (Fig. 25D)。一方で、ΔSpca1株に ZNT2 (H106N-ZNT10Loop-ZNT10Cter) を過剰

発現させても、ZNT2にマンガン耐性を付与することができなかった (Fig. 25C)。以上の結

果から、ZNT10と ZNT2は互いに置き換わることはできないことが明らかとなった。これ

は、ZNT10と ZNT2の相同性が低く、局在が異なるためであると考えられた。ここまでの

ZNT10と ZNT2のドメイン置換体を用いた解析結果を表にまとめた (Table 3)。

Figure 25. ZNT10と ZNT2は互いに置き換わることができない

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43

(A, B) ΔSpca1株 (A) およびΔ1M4株 (B) に、ZNT10-HAまたは ZNT10 (N43H-ZNT2Loop-ZNT2Cter)-HAを発現

させた株における耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認

(下図)。Tubulinはローディングコントロールとして用いた。

(C, D) ΔSpca1株 (C) およびΔ1M4株 (D) に、ZNT2-HAまたは ZNT2 (H106N-ZNT10Loop-ZnT10Cter)-HAを発現

させた株における耐性試験の結果 (上図)。ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の発現の確認

(下図)。Tubulinはローディングコントロールとして用いた (下図)。

Table 3. ZNT10と ZNT2のドメイン置換体の解析結果のまとめ

ΔSpca1株においては 40 μMのマンガン濃度、Δ1M4株においては 60 μMの亜鉛濃度で、WTと比較し

て生存率が 75%以上の場合を+++、25-75%を++、25%以下を+、0%を-で示す。(ただし目視において僅か

な生存が確認された場合には*マークを記す)

第 2章の総括

第 2章の解析結果から、ZNT10は亜鉛を輸送せずマンガンを選択的に輸送する可能性が

示唆された。また、この ZNT10のマンガン選択的な輸送能においては TMD Ⅱの 43番目

のアスパラギン残基が も重要な役割を果たしており、加えて、52番目のシステイン残基

と 242番目のロイシン残基が ZNT10の亜鉛輸送能を抑制していることを示した。さらに、

ZNT10と ZNT1の C末端領域や Loop領域は互いに置き換わることができるが、ZNT10と

ZNT2は互いに置き換わることができないことも明らかにした。

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44

考察 DT40細胞におけるマンガン高感受性株ΔSpca1株を用いた解析の有用性

マンガンの輸送体の機能解析については、これまで酵母を用いた解析が汎用されてお

り、細胞におけるマンガンホメオスタシスの維持機構についての知見が蓄積されてきた。

しかしながら、酵母と脊椎動物細胞においては、マンガン輸送に関わるトランスポーター

の存在の有無が異なっている。例えば、酵母においてマンガンを液胞内へ輸送することで

マンガンの解毒に寄与する Ccc1は脊椎動物細胞においてそのオーソログは存在しない

[48]。一方で、脊椎動物細胞において存在する ZNT10や FPNは、酵母においてはそのオー

ソログは存在しない。そのため、酵母での機能をそのまま脊椎動物細胞に置き換えること

は難しい。また、これまでの先行研究において、ゴルジ体へマンガンを輸送する SPCA1

の酵母でのホモログである Pmr1の欠損株を用いて、マンガン耐性試験を用いた輸送能の

評価が行われている。しかしながら、このΔPmr1株を用いたマンガン耐性試験において

は、非常に高濃度のマンガン濃度 (mMオーダー) でないとマンガン耐性の有無を評価で

きない点が問題点であった[27][70]。このことから、脊椎動物細胞を用いたマンガンホメオ

スタシス維持機構の解析が必要と考えられた。本研究では、この問題点に対して、遺伝子

破壊と再発現が容易なニワトリ Bリンパ球系細胞株 DT40細胞において、高濃度のマンガ

ンにおける耐性が顕著に減少した高濃度マンガン感受性株ΔSpca1株を作成し、脊椎動物

細胞においてマンガン排出・解毒機構を評価できる系を構築した。ΔSpca1株において、

高濃度のマンガンに対する生存率を指標としたマンガン耐性試験の結果と、放射性マンガ

ンを用いたマンガン蓄積量が相関することが確認されたため、細胞内のマンガン量の直接

的な測定なしに、マンガン排出・解毒機構への寄与について比較可能な系を構築すること

ができた。この株を用いて、これまでに脊椎動物細胞においてマンガンの排出・解毒への

寄与が予想されている 6つの輸送体について、マンガンホメオスタシス維持機構への寄与

率を比較解析した。これまでに、これら 6つのタンパク質のマンガン排出・解毒機構への

寄与に関する解析は、全て異なる細胞、あるいは異なる実験系により行われており、同一

の細胞あるいは同一の解析系での比較評価は行われてこなかった。そのため、本研究での

ΔSpca1株を用いた評価は、同一の細胞かつ同一の評価系で、各輸送体のマンガン排出・

解毒への寄与率を比較することを可能にした、非常に有用な系であると考える。

ATP13A1~3のマンガンホメオスタシス維持機構への寄与

ATP13A2は、酵母および脊椎動物細胞における過剰発現系を用いた実験により、どちら

の細胞においても、マンガン解毒に機能することが示されている[34] [37] [71]。しかしな

がら、本研究におけるΔSpca1株を用いた解析系においては、ATP13A2は高濃度のマンガ

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ンに対する耐性をほとんど示さなかった。さらに、ATP13A2の属する ATP13Aファミリ

ーに属する ATP13A1と ATP13A3も 2価イオンの輸送に関わると予想されているが、Δ

Spca1を用いた解析系においてはいずれも高濃度のマンガンに対する耐性をほとんど示さ

なかった。このことから、DT40細胞において、ATP13A1~3はマンガン解毒への寄与が低

いことが明らかになった。しかしながら、ΔSpca1株に ATP13A1~3を発現させた株におい

て、目視でのマンガン耐性試験を行ったところ、ΔSpca1株が死滅するマンガン濃度であ

る 80 µMで僅かな生育が認められた (データ省略)。そのため、ATP13A1~3がマンガン耐

性を有する可能性は捨てきれないが、その寄与は極めて低いと考えられた。これまでの先

行研究から、ATP13A2の機能欠損によりリソソームの機能が障害され、タンパク質のクリ

アランスに異常がきたされることが示されている[72][73]。このことから、ATP13A2は、

リソソームへマンガンを輸送することで過剰なマンガンの解毒に働くのではなく、リソソ

ームへのマンガン輸送を介してリソソーム内の環境の維持に働く可能性が考えられた。

近年、ATP13A2は小胞へ亜鉛を輸送することで、亜鉛ホメオスタシス維持にも機能する

ことも報告されている[74][75]。ATP13A2と亜鉛代謝機構の関連性についてはいくつか報

告がある。1つ目としては、ATP13A2の機能欠損によりミトコンドリアへ亜鉛が蓄積し、

ミトコンドリアの機能障害を介して、活性酸素種の産生による細胞死が引き起こされるこ

とが知られる。2つ目としては、ATP13A2の機能欠損により、リソソーム内へ亜鉛輸送が

できなくなり、リソソーム内のプロテアーゼの機能阻害やオートファゴソームとリソソー

ムの融合阻害を介して、α-シヌクレインの分解が抑制される可能性が示唆されている。さ

らに、ATP13A2は多小胞体 (Multivesicular body : MVB) への亜鉛の封入にも寄与してお

り、この MVBへの亜鉛輸送が細胞膜からの内腔小胞形成に機能し、エキソサイトーシス

を介したα-シヌクレインの除去に寄与するという報告もある。以上のことから、ATP13A2

の機能欠損による亜鉛輸送の障害が、パーキンソン病発症の原因の 1つとなる可能性も示

唆されている[76]。しかしながら、本研究でのΔ1M4株を用いた亜鉛耐性試験において、

ATP13A2による亜鉛耐性の回復は認められなかった (データ省略)。したがって、

ATP13A2による小胞への亜鉛輸送は、小胞の機能維持に重要であるが、細胞質の過剰な亜

鉛の解毒には機能しないことが示唆された。

FPNのマンガンホメオスタシス維持機構への寄与

FPNは、これまでにマンガンの輸送に関与することが報告されている[40][41]。一方で、

本研究におけるΔSpca1株を用いたマンガン耐性試験においては、FPNはマンガンの耐性

を回復させなかった。FPNのマンガン排出・解毒への寄与についてはこれまでに、アフリ

カツメガエル卵母細胞において FPNを過剰発現させると細胞外へのマンガンの排出が促進

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46

されることが報告されているが、これはマンガンの排出量を測定したものであり、本研究

の様なマンガン毒性を示したものではない[41]。また、培養細胞を用いた解析から、過剰

なマンガンが FPNの mRNAレベルを上昇させることや、FPNの過剰発現がマンガンの毒

性を軽減させることも報告されている[40]。しかしながら、マンガンの輸送能の評価には

乳酸脱水素酵素 LDH (Lactate Dehydrogenase) の放出量を指標とした解析が用いられてお

り、マンガンは低酸素誘導因子 HIF-1 (Hypoxia Inducible Factor-1) の発現を増加させること

で LDHの転写活性を促進することが知られるため、この手法はマンガンの輸送能を正確

に反映できていない可能性がある[77][78]。したがって、これまでの先行研究における FPN

のマンガン輸送能の評価法と本研究での解析系が異なるため、この様な結果の違いが得ら

れた可能性がある。さらに、FPNの機能欠損は、鉄代謝に関わる疾患との関連性が報告さ

れているものの、FPNによるマンガンホメオスタシス維持と疾患との関連性については報

告がない[62]。そのため、FPNの主要な機能は鉄輸送であると予想され、マンガンホメオ

スタシス維持への寄与は非常に低いと考えられる。

ZNT10と SPCA1のマンガンホメオスタシス維持機構への寄与率の差異

本解析系において、ATP13A1~3および FPNのマンガンホメオスタシス維持への寄与は

非常に低いことを明らかにした一方で、ZNT10と SPCA1はΔSpca1株のマンガン耐性を回

復させることから、両者が脊椎動物細胞においてマンガンの排出・解毒に寄与することが

明らかになった。さらに、ZNT10は SPCA1よりも高いマンガン濃度で耐性を回復させ

た。これは、ZNT10の変異がマンガン蓄積によるパーキンソン病を引き起こす一方で、

SPCA1の欠損は Hailey Hailey病を引き起こすが、この原因はマンガン代謝機構の異常では

なくカルシウム代謝の異常が原因であると考えられていることに一致した結果である

[80]。さらに、近年、ゼブラフィッシュを用いた解析により、ZNT10の機能が正常である

場合は、SPCA1よりも ZNT10が積極的にマンガン排出に機能するが、ZNT10の機能が欠

損すると SPCA1の発現が上昇し、ZNT10の機能を SPCA1が補足するというモデルが示さ

れている[81]。このモデルによっても、本研究で得られた ZNT10が SPCA1よりも強くマ

ンガン耐性を回復させるという結果が裏付けられている。

ZNT10における金属基質認識機構を明らかとすることの意義

ZNT10はその変異が高マンガン血症を伴うパーキンソン病を示すことから、マンガン輸

送において非常に重要な役割を果たすと考えられる[16][46]。その一方で、亜鉛を輸送する

と考えられる ZNTトランスポーターファミリーに属する ZNT10がマンガンを輸送する分

子機序についてはこれまで明らかにされてこなかった。そこで、本研究では、ZNT10のマ

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ンガン輸送メカニズムについて、他の ZNTトランスポーターとの金属基質認識機構の違い

に着目し解析を行った。まず、ZNT10とアミノ酸配列の相同性が高く、さらに局在が類似

する ZNT1を比較対象とし、それぞれに特徴的な配列を入れ替えた変異体について解析を

行った。その結果、ZNT10の TMD IIに存在する 43番目のアスパラギン残基が ZNT10の

マンガン輸送能において も重要な残基であることを明らかにした。さらに興味深いこと

に、ZNT1の 43番目のヒスチジン残基を ZNT10と同じアスパラギン残基に変化させる

と、ZNT1の亜鉛耐性が消失し、ZNT1にマンガン耐性が付与された。これまでの先行研究

から、ZNT5および ZNT8において、TMD IIの金属結合部位を形成するヒスチジン残基を

アスパラギン酸残基に変化させると、ZNT5および ZNT8が亜鉛に加えカドミウムを輸送

するようになることが報告されている[64]。また、植物においてマンガンの排出に重要な

役割を果たす MTP8は、金属結合部位が 4つのアスパラギン酸残基で形成された DDDD

型となっており、亜鉛は輸送せずマンガンのみを輸送することが明らかにされている

[82][83][84]。さらに、 近の報告により、バクテリアにおけるマンガン輸送体 MntEにお

いては、金属結合部位が 1つのアスパラギン残基と 3つのアスパラギン酸残基で形成され

た NDDD型になっており、1つ目のアスパラギン残基および 3つ目のアスパラギン酸残基

がマンガン輸送において重要な残基であることも示されている[85]。そのため、本研究で

得られた ZNT10の TMD IIのアスパラギン残基がマンガン輸送能において重要であるとい

う情報は、これまでの TMD IIのこの位置に存在する残基が金属選別において重要である

という予想を補強するのみならず、ZNTトランスポーターおよびそのホモログにおける金

属選別メカニズムに関して重要かつ新たな知見を付与すると考えられる。

CDFファミリーは、その生理的機能から一般的に Zn-CDF、Zn/Fe-CDF、Mn-CDFの3つ

に大別される。MTP8などのマンガン輸送に関わる輸送体は Mn-CDFに分類されるが、

ZNTトランスポーターファミリーはすべて Zn-CDFに分類される[53][86]。本研究から得ら

れた ZNT10のマンガン輸送への寄与とその金属基質選別に関わる残基に関する情報から

も、CDFファミリーの再グループ化の必要があるかもしれない。

ZNT10と ZNT1は、上述した TMD IIと Vに存在する金属配位部分だけでなく、C末端

領域や TMD ⅣとⅤの間に存在する細胞質ループ領域の配列も相同性が比較的低い。先行

研究において、ZNTトランスポーターの C末端領域や細胞質ループ領域は、亜鉛輸送の制

御において重要な役割を果たすことが示されているという観点からも、この事実は非常に

興味深く、これらの領域が金属輸送基質の選別にも関わっている可能性が考えられた

[53][86][87]。そこで、ZNT10と ZNT1の C末端領域および細胞質ループ領域を互いに置換

した変異体を作成し、両者の金属輸送能について評価した結果、C末端領域やループ領域

を置換しても両者の金属輸送能は変化しないことが明らかになった。このことから、ZNT1

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と ZNT10において C末端領域および細胞質ループ領域は互いに置き換わることができる

ことが示された。一方で、ZNT1と比較して ZNT10との相同性が低く、また局在が異なる

ZNT2と ZNT10の C末端領域やループ領域を入れ替えた変異体解析においては、両者は互

いに置き換わることができないことが明らかになった。このことから、ZNTトランスポー

ターにおける C末端領域やループ領域はそれぞれの ZNTトランスポーターで機能的ある

いは構造的に異なっている可能性が示唆された。一方で、ZNT10と ZNT1は共に細胞膜表

面での局在が確認されるが、ZNT10と ZNT2はその局在が異なるため、この局在の違いに

より ZNT10と ZNT2が互いに置き換わることができなかった可能性も考えられる

[67][69]。

ZNTトランスポーターの大腸菌でのホモログである YiiPにおいてはその結晶が明らか

にされているが、ヒトの ZNTトランスポーターにおいてはその結晶は未だ明らかにされて

いない[54]。さらに、C末端や Loop領域など断片での結晶構造も紐解かれていない。した

がって、ZNTトランスポーターの全長または断片領域の結晶を明らかにすることで、

ZNT10と他のトランスポーターの金属基質認識機構の差異を構造学的な観点から明らかに

することが可能となると考える。

マンガンホメオスタシス維持に機能する ZIPトランスポーター

亜鉛トランスポーターのうち、亜鉛の取り込みに機能する ZIPトランスポーターにおい

ても、ZIP14と ZIP8がマンガンの輸送に寄与することが報告されている。ZIP14は肝臓へ

の亜鉛の取り込みに機能する輸送体として同定されていたが、 2016年に、マンガン誘導

性の若年性パーキンソン病とジストニアを引き起こす患者において、ZIP14のホモ接合型

の変異が見出されたことから、ZIP14によるマンガンホメオスタシス維持機構と疾患との

関連性が示されている[23][79] [88]。また、ZIP8も細胞質への亜鉛輸送を介して炎症時の

亜鉛の欠乏を防ぐ輸送体として同定されていたが、ZIP8の変異がマンガン欠乏を伴う先天

性糖鎖形成異常症 (Type II congenital disorder of glycosylation : CDG) の患者から見出され、

ZIP8によるマンガン輸送と疾患との関連性にも注目が持たれている[89][90]。この CDG

は、N結合型酵素合成経路に関わる酵素の機能欠損により、タンパク質のグリコシル化異

常が引き起こされ、成長遅延や精神運動発達遅滞を引き起こす疾患として知られている。

実際、ZIP8の変異を持つ患者は、ゴルジ体において糖タンパク質のグリコシル化を行うマ

ンガン要求性酵素β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ (β(1,4)-galactosyltransferase)

の機能に異常がきたされ、タンパク質のグリコシル化異常により、成長遅延、小脳萎縮、

てんかん、低身長など様々な症状を呈している[90]。このことから、ZIP8を介したマンガ

ン輸送がマンガン要求性酵素の機能維持に重要であることが示されている[91]。

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ZNTトランスポーターと同様に、ZIPトランスポーターにおいても亜鉛の配位に重要と考

えられる配列が示されている。ZIPトランスポーターにおいては、TMD Vに存在する

HEXPHEXGDという配列が亜鉛の結合において重要であると予想されているが、ZIP8と

ZIP14においては 1つ目のヒスチジン残基がグルタミン酸残基 (E) に置換しており、この

残基の違いにより ZIP14や ZIP8は亜鉛以外の基質を輸送できる可能性が示されている

[92]。この事実は、アミノ酸 1残基の違いで輸送基質が変化することを示唆しており、

ZNT10の TMD IIの 1残基がマンガン輸送能において重要であるという本研究の結果が裏

付けられている。

ZNT10が亜鉛ホメオスタシスの維持に寄与する可能性

ZNT10は亜鉛ホメオスタシスにも関与するという報告もある[44][45][93]。一方で、本研

究において、ZNT10は高濃度の亜鉛に対する耐性を回復させなかった。しかしながら、

ZNT10が亜鉛輸送能を持つ可能性を完全には排除できないと考える。なぜならば、本研究

においては、亜鉛高感受性株Δ1M4株を用いた高濃度の亜鉛に対する耐性の回復を指標に

亜鉛輸送能の評価を行っているため、わずかな亜鉛輸送能については測定できていない可

能性があるからである。実際に、分泌経路に亜鉛を輸送することが知られる ZNT5と

ZNT6をΔ1M4細胞に発現させた株において亜鉛耐性試験を行ったところ、ZNT5と ZNT6

は亜鉛耐性を回復させないという結果が得られている (データ省略)。したがって、Δ1M4

株を用いた解析系では僅かな亜鉛輸送能は測定できていない可能性が考えられた。ZNT10

が亜鉛輸送に寄与する可能性に関しては、先行研究において、ZNT10が ZNT3などの小胞

に局在する ZNTトランスポーターとヘテロダイマーを形成することで、小胞へ亜鉛を輸送

する可能性が示されている[93]。本研究において、免疫染色の結果から DT40細胞におい

て ZNT10は細胞膜表面だけでなく、ゴルジ体にも局在が認められた。そのため、このゴル

ジ体に局在する ZNT10が他の亜鉛トランスポーターとヘテロダイマーを形成しゴルジ体内

への亜鉛輸送に関与する可能性も考えられた。また、本研究で用いたΔ1M4株において

は、他の ZNTトランスポーターが欠損しているため、ZNT10がヘテロダイマーを形成で

きず亜鉛輸送能を減弱させた可能性も考えられる。

さらに、本研究において、ZNT10の TMD Ⅱに存在する 52番目のシステイン残基と

TMD Vに存在する 242番目のロイシン残基は、ZNT10の金属輸送基質の選別に関わる可

能性を示唆するデータを得た。YiiPの結晶解析から構築されたモデルから、これら残基は

4面体構造で形成された金属結合部位よりも細胞質側に近い部分に存在することが予想さ

れた。そのため、ZNT10においてこの 2残基が、金属結合部位への亜鉛輸送を抑制してい

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る可能性が考えられた。ZNT10と亜鉛輸送能の関連性については今後更なる解析が必要で

ある。

ZNT10の詳細な局在解析の必要性

先行研究において、ZNT10は通常はゴルジ体に局在するが、亜鉛レベルの上昇で細胞膜

表面へ移行することが示されている[44]。実際に、銅の排出に機能する ATP7Aは銅濃度に

よってその局在を変化させることが示されていることなどから、ZNT10が細胞内の金属濃

度に依存してその局在を変化させるか検討を行った[94]。しかしながら、本解析ではβ-

actinプロモーターという強力なプロモーターを用いて過剰発現株を作成しているため、細

胞内の金属濃度の変化による ZNT10の局在変化について詳細な解析を行えなかった。した

がって、ZNT10の金属濃度に応じた局在変化や発現変化についても今後詳細な見当が必要

と考えられる。

これまでに、高マンガン血症状を伴うパーキンソン病患者から ZNT10の変異が多数見出

されている[16][52]。患者においては、血清マンガン値の上昇と、脳や肝臓へのマンガン蓄

積が認められることから、ZNT10がマンガンホメオスタシスの維持において非常に重要な

役割を果たすことが示されている。マンガンホメオスタシス維持への重要性が示されてい

る一方で、ZNT10の機能欠損によりマンガンが蓄積する詳細な理由は明らかにされていな

い。ZNT10は肝臓において胆管への排出に寄与する面に局在し、胆汁中へマンガンの輸送

に機能することが予想されている[95]。そのため、ZNT10の機能欠損によって胆汁中への

マンガンの排出が抑制され、肝臓内のマンガンが飽和状態となり、肝臓への許容量を超え

たマンガンが血中へ流入し、脳などの全身へマンガンが過剰に輸送され蓄積する可能性が

考えられている。しかしながら、ZNT10の局在や生体内における詳細な機能について解析

は行われていない。したがって、組織における ZNT10の局在や、極性分化させた細胞にお

ける ZNT10の局在解析が、ZNT10による疾患発症メカニズムを明らかとする上で重要と

なるかもしれない。

ZNT10の機能解析の進展

近、ZNT10のノックアウトマウスが作成され、ZNT10の個体レベルでの機能解析が進

んだ[96]。このマウスは、初期発生の段階では野生型マウスとほとんど変化がないもの

の、離乳期を過ぎると体重が減少し、6~8週間で死に至る。ZNT10ノックアウトマウス

は、血清マンガン値の上昇、肝臓や脳へのマンガン蓄積という ZNT10に変異を持つ患者と

同様の表現系を示す一方で、症状としては運動障害に加え甲状腺機能低下症を引き起こす

という非常に興味深い結果が示されている。このことから、甲状腺機能障害がマンガン誘

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導性の神経疾患の発症に関わる可能性が示されており、マンガン中毒患者と甲状腺機能低

下症の関連性などにも非常に興味が持たれている。加えて、ZNT10のノックアウトマウス

においても、血清亜鉛値には変化がないことから、ZNT10は亜鉛ではなくマンガンホメオ

スタシスの維持において非常に重要な役割を果たす可能性が示されており、本研究におい

て ZNT10がマンガン選択的輸送を行うという結果の裏付けともなっている。

本研究の展望

過剰なマンガンが様々な障害を引き起こすことや、神経疾患を持つ患者においてマンガ

ンレベルが上昇していることが報告されている[14][21]。このことからも、マンガンの排出

に寄与する輸送体の機能に着目した治療は、これらマンガン蓄積を伴う疾患に対する治療

ターゲットとなる可能性がある。現在治療法としては、マンガンキレート剤を用いた治療

が汎用されているが、キレート剤は副作用を有することからも、新しいターゲットによる

治療法の開発が望まれている。また、パーキンソン病様症状を示す患者において、その根

本的原因が輸送体の機能欠損によるマンガン蓄積である場合、通常のパーキンソン病患者

における治療薬であるプラミペキソールやレボドパ等では症状が改善しないことが示され

ている。このことからも、マンガン蓄積と神経疾患の関連性を明らかにすること、また、

マンガンの排出に機能する輸送体の機能を解析することは重要であると考えられる。その

ため、マンガンの排出・解毒に大きく寄与する ZNT10の機能解析は非常に意味のあるもの

であると考える。本研究における ZNT10のマンガンホメオスタシスへの寄与、および、輸

送基質選別機構は、マンガン蓄積に関連する疾患に対して新たな知見を付与するのみなら

ず、マンガン代謝と亜鉛代謝の相関性の理解にもつながるだろう。

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材料および方法 細胞培養、トランスフェクション

DT40細胞は、RPMI培地 (Nacalai Tesque) に 10 % Fetal Bovine Serum (Multiser)、1 %

Chicken Serum (Invitrogen)、50 µM 2-Mercaptoethanol (Sigma)、100 µg/mL Streptmycin

(Nacalai Tesque) を加え調整し、39.5 ℃ 、5 % CO2 の条件下で培養した。

DT40細胞における Spca1遺伝子欠損株の作成には、Fig. 1に示すような 3つのノックア

ウトベクターを用いた。ノックアウトの確認にはサザンブロット法およびノザンブロット

法を用い確認を行った。サザンブロット法およびノザンブロット法は、参考文献 97の手

法に従い行った[97]。確認には、DT40細胞から回収したゲノム DNA (20 µg) および

Sepasol I (Nacalai Tesque) を用いて回収した total RNA (20 µg) を用いた。撮影には、

FLA5000 Bio imaging analyzer (Fujifilm) を用いた。ZnT1-/-Mt-/-ZnT4-/-細胞は、参考文献 66で

作成した細胞株を用いた[66]。

DT40細胞へのプラスミド DNAの導入には、Electroporation法を用いた。細胞数が 1.0×

107個になる様に細胞を回収し、PBS (137 mM NaCl, 20.4 mM Na2HPO4, 2.68 mM KCl, 1.47

mM KH2PO4) で 2回洗浄した後、0.5 mlの PBSに再度懸濁した。30 µg分のリニアライズ

プラスミドを添加し氷上で 10分静置させた後、Gene Pulser (Bio-Rad) を用い、550 V、25

µFの条件で Electroporationを行った。氷上で再度 10分静置した後、26 mlの培地に懸濁し

10 cm dishで培養した。24時間後、セレクション用の薬剤を添加した培地を 33 ml加え、

96 well plate 3枚に播種した。薬剤の濃度は、0.5 µg/mL puromycin (Sigma) および 0.1 mg/

mL zeocin (Invitrogen) でセレクションを行った。

プラスミドコンストラクション

DT40細胞における過剰発現株の作成には、C末端に GFPを付加した SPCA1 (SPCA1-

GFP)、N末端に FLAGタグを付加した ATP13A1 (FLAG-ATP13A1)、C末端に HAタグを付

加した ATP13A2 (ATP13A2-HA)、N末に HAタグを付加した ATP13A3 (HA-ATP13A3)、C

末端に HAタグを付加した ZNT10 (ZNT10-HA)、N末端に Mycタグを付加した ZNT10

(Myc-ZNT10)、N末端に FLAGタグを付加した ZNT1 (FLAG-ZNT1)、C末端に HAタグを

付加した ZNT2 (ZNT2-HA) の cDNAを pA-puroまたは pA-Zeocinベクターに挿入し作成し

た。ATP13A1 cDNAおよび ATP13A3 cDNAは、DNAFORMで購入した cDNAを用いた。

ZNT10、ATP13A2、SPCA1、FPNの遺伝子はそれぞれ、ユニバーシティ・カレッジ・ロン

ドン Karin Tuschl 博士、ハンブルク大学 Christian Kubisch博士、ジョンズ・ホプキンズ大

学 Rajini Rao博士、浜松医科大学医学部第一内科 河野智博士、宮嶋裕明博士よりご供与い

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ただいた。全てのプラスミドについて、シーケンスにより全長配列が正しいことの確認を

行った。

Spca1欠損株作成用のノックアウトベクターの作成は、参考文献 49に従い行った[49]。

Histidinol、Blasticidin、Puromycin耐性遺伝子の両端に LoxPサイトを付加した薬剤カセッ

トの前後に、Spca1遺伝子のエキソンを欠損させるようにアームを付けて作成した。遺伝

子特異的なプライマーを用いて、KOD-FX (TOYOBO) を用いて DNAフラグメントを増幅

し、ノックアウトベクターを作成した。

プラスミド作成のための形質転換には、大腸菌 DH5α (TOYOBO) を用いた。全てのプ

ラスミドは適切な酵素を用いてリニアライズし、細胞にトランスフェクションした。

高濃度亜鉛および高濃度マンガンに対する耐性試験

DT40細胞を各濃度の ZnSO4添加培地および MnSO4添加培地中で 10×10 4個/mlになる

様 96 well plateに播種し、48時間培養した。培養後、Alamar Blue試薬 (Bio-Rad)を、Well

中の液量の 1/10量になる様に添加し 4時間培養した。その後、PowerScan 4 (DS Pharma

Biomedical) を用いて、570 nm、600 nmの吸光度を測定した。得られた値を、以下の計算

式に代入し、0 µMでの生存率を 100%としてグラフを作成した。

Percentage difference between treated and control cells

={(O2×A1) - (O1×A2)}/{(O2×P1) - (O1×P2) }× 100

O1 = molar extinction coefficient (E) of oxidized Alamar Blue at 570 nm (E570=117216)

O2 = E of oxidized Alamar Blue at 600 nm (E600=80586)

A1 = absorbance of test wells at 570 nm

A2 = absorbance of test wells at 600 nm

P1 = absorbance of positive growth control well at 570 nm

P2 = absorbance of positive growth control well at 600 nm

放射性マンガン (54Mn) を用いた細胞内へのマンガン蓄積量の測定

DT40細胞を 6 well plateにまき、1uMの放射性マンガン [54Mn]-labeled MnCl2

(PerkinElmer) を添加した。24時間後、細胞を氷冷した培地で 2回 washした後、0.05 %

EDTAを添加した氷冷 PBSに懸濁した。54Mnの放射能測定には、Auto-well gamma counter

(Wizard2) を用いた。データは、全細胞のタンパク量で補正を行った。本実験は、徳島文

理大学の藤代瞳博士に行っていただいた。

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ZNT10および ZNT1抗体の作成

ZNT10および ZNT1抗体の作成には、ZNT10のアミノ酸 C末端領域 (391番目の Leu残

基から stop codonまでの 95残基)、および、ZNT1のアミノ酸 C末端領域 (341番目の Leu

残基から stop codonまでの 167残基) に MBP (maltose-binding protein) を融合させたタンパ

ク質を大腸菌発現させ、それぞれの融合タンパク質を、アフィニティーカラムを用いて高

純度に精製したものを抗原として用いた。抗体の作成は、参考文献 98および 99の論文に

基づき作成した[98][99]。ハイブリドーマは、京都女子大学 成田宏史博士、松永安由博

士、龍谷大学 岡崎史子博士に作製していただいた。

全タンパク質の回収

細胞を 15 mlチューブに回収し、遠心したのち、PBSで 2回洗浄した。その後、可溶化

液 (10 mM Tris-HCl, 0.5 mM MgCl2, 0.1 % SDS) を用いて懸濁し、超音波処理によるホモジ

ナイズによりタンパク質を可溶化させた。

膜タンパク質の回収

細胞を 15 mlチューブに回収し、遠心したのち、PBSで 2回洗浄した。細胞を HES

beffer (0.25 M sucrose, 20 mM HEPES, 1 mM EDTA) に懸濁し、ホモジナイザーにて細胞を

破砕した。破砕液を、スイングローターを用い 15,000 rpm 4 ℃で 5分間遠心した。上清を

回収し、スイングローターを用い、5,000 rpm 4 ℃で 5分間遠心した。上清を除去し、PBS

にて洗浄し、5,000 rpm 4 ℃で 5分間遠心した。得られたペレットを可溶化液に懸濁させ、

膜タンパク質サンプルとした。

イムノブロッティング

10-30 µgのタンパク質溶液に DTT含有 6 ×sample buffer (375 mM Tris-HCl (pH 6.8),

30 % glycerol, 6 % SDS, 0.5 M DTT, 0.1 % BPB) を加え、37 ℃で 30分間静置した。その

後、8 %のポリアクリルアミドゲルを用いて、20 mAの条件下で電気泳動を行った。泳動

後、ゲルを転写 Buffer (Tris 50 mM, glycine 40 mM, 0.04 % SDS, 20 % EtOH) で平衡化し、セ

ミドライ式の転写装置 (Bio-Rad) を用いて 15 V 30分の条件下でタンパク質を 0.45 µm

PVDF膜 (Immobilon-P) に転写した。転写後、PBS-T (0.1% Tween-20 in PBS) で調製した

5 %スキムミルクにて PVDF膜をブロッキングした。室温で 1時間ブロッキングを行った

後、1次抗体を 5 %スキムミルクで希釈し、4℃で一晩反応させた。1次抗体は、抗モノク

ローナル FLAG M2抗体 (1:3,000, Sigma)、抗モノクローナル HA-11抗体 (1:3,000,

Covance)、抗モノクローナル Myc抗体 (1:3,000, Santa Cruz)、 抗モノクローナル V5抗体

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(1:3,000, Nacalai Tesque)、抗モノクローナル ZNT10抗体 (1:3,000)、 抗モノクローナル

ZNT1抗体 (1:3,000)、抗モノクローナル GFP抗体 (1:1,000, Invitrogen)、 抗モノクローナ

ル Tubulin抗体 (1:10,000, Sigma)、抗モノクローナル calnexin抗体 (1:10,000, Enzo Life

Sciences)、抗モノクローナル chicken IgM M4抗体 (1:3,000, Southern Biotech) を用いた。1

次抗体を反応させた後、PVDF膜を PBS-Tで 10分間 3回洗浄した。その後、2次抗体を室

温で 1時間反応させた。2次抗体は、HRP標識抗マウス抗体 (1: 3000, GE Healthcare) また

は、HRP標識抗ウサギ抗体 (1: 3000, GE Healthcare) の濃度で用いた。2次抗体を反応させ

た後、PVDF膜を PBS-Tで 10分間 3回洗浄し、Immoblin Western (Millipore) で発光させ

後、LAS1000 plus (Fujifilm) または LAS500 (GE Healthcare) を用いて撮影した。

細胞表面ビオチン化アッセイ

野生型または変異型 ZNT1および ZNT10を発現させた DT40細胞を、氷冷させた PBS

で 2回洗浄した。細胞ペレットを 0.25 mg/ml EZ-Link, a sulfo-NHS-SS-biotin reagent (in PBS)

(ThermoFisher Scientific) に懸濁し、4 ℃で 30分反応させ、細胞表面タンパク質のリシン残

基をビオチン化した。その後、氷冷 PBSで 2回洗浄し、細胞を NP40 Buffer (100 mM NaCl,

50 mM HEPES, 1 % NP40, 0.5 % Deoxycholate, 0.1 % SDS) で可溶化させた。可溶化液に

avidinビーズを加え、4 ℃で一晩反応させた。ビーズを PBSで 3回洗浄したのち、6 ×

SDS sample buffer を添加し、37 ℃で 30分間反応させた。10,000 rpm 室温で 20分間遠心

し、上清をサンプルとし、イムノブロッティングにより解析を行った。

蛍光顕微鏡観察

免疫染色は参考文献 100に従って実施した[100]。カバーガラスに 0.1 % Poly-L-lysine

(Sigma) を添加し、室温で 30分処理した。各タンパク質を過剰発現させた DT40細胞を

PBSで 2回洗浄した。細胞を PBSに再懸濁し、Poly-L- lysineでコーティングを行ったカバ

ーガラス上に播種し、室温で 30分静置し細胞をカバーガラス上に固定した。PBSで洗浄

後、4 % ホルマリン溶液 (in PBS) を加え 15分室温で反応させた。PBSで 2回洗浄後、

0.1 % triton X-100 (in PBS) を加え、室温で 5分反応させ透過処理を行った。PBSで 2回洗

浄した後、6 % BSA (in PBS) で 1時間処理しブロッキングした。固定後、2 % BSA (in

PBS) で希釈した一次抗体を 4℃で一晩反応させた。1次抗体には、抗 HAポリクローナル

抗体 (1:500, MBL)、抗 FLAGポリクローナル抗体 (anti-DDDDK; 1:500, MBL)、抗 GFPモ

ノクローナル抗体 (1:50, Invitrogen)、抗 GM130モノクローナル抗体 (1;100, Transduction

Laboratories) を用いた。PBSで 3回洗浄した後、2 % BSA (in PBS) で希釈した二次抗体を

1時間室温で反応させた。2次抗体は、goat anti-mouse IgG conjugated to Alexa 594

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(Molecular Probes) または donkey anti-rabbit IgG conjugated to Alexa 488 (Molecular Probes) を

用いた。PBSで 3回洗浄した後、SlowFade Antifade kit (Molecular Probes)を用いて退色防止

処理を行い、カバーガラスに封入した。染色された細胞の蛍光観察及び撮影は、Zeiss

Axioplan 2 microscope equipped with an Olympus digital camera (Metamorph) または fluorescent

microscope FSX100 (Olympus) を用いて行った。

統計解析

全てのデータは平均値を示し、エラーバーで標準偏差を表した。t検定により、p< 0.01

の場合を統計学的に有意差ありとした。

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謝辞 本研究の遂行にあたり、多くの方々にお世話になりました。

はじめに、本研究に携わるにあたり、指導教員として直接ご指導いただき、実験手技や

研究の進め方、論文執筆や研究者としての在り方など多くのことに対しご指導を賜りまし

た京都大学大学院生命科学研究科生体情報応答学分野准教授 神戸大朋 博士に深く感謝

申し上げます。また、同分野教授 永尾雅哉 博士、同分野助教 西野勝俊 博士、同分野

前助教 宮前友策 博士には、多くのご助言をいただき、研究を続ける環境を常に整えてい

ただきました。心よりお礼を申し上げます。

また、京都大学大学院生命科学研究科教授 荒木崇 博士、同教授 見学美根子 博士、

同教授 片山高嶺 博士には、貴重なご助言、ご指摘を承りました。誠にありがとうござ

いました。

徳島文理大学教授 姫野誠一郎 博士、同助教 藤代瞳 博士には、放射性マンガンを用

いた解析を行っていただきデータをご提供いただきました。京都女子大学教授 成田宏史

博士、松永安由 博士、龍谷大学講師 岡崎史子 博士には、ZNT1および ZNT10抗体を

作製していただきました。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン Karin Tuschl 博士、ハン

ブルク大学 Christian Kubisch 博士、ジョンズ・ホプキンズ大学 Rajini Rao 博士、浜松

医科大学医学部第一内科 河野智 博士、宮嶋裕明 博士にはプラスミドをご供与いただ

きました。ありがとうございました。

本研究は、生体情報応答学分野の先輩、後輩、同期の皆さまのご協力無くしては遂行す

ることができませんでした。特に、本研究の先駆けとなる実験を行ってくださった、北海

道大学助教 山崎智弘 博士、寺西文恵 氏、辻奈都子 氏には深く感謝を申し上げま

す。また、事務手続きや研究室の日々の生活を支えてくださった事務官の嶋林かほる氏に

も感謝いたします。ありがとうございました。

後に、研究に専念する環境を与えてくれた家族に感謝します。

2017年 12月 12日

西藤 有希奈

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本学位論文は以下の学術論文の内容に基づいて書かれたものである。

Yukina Nishito, Natsuko Tsuji, Hitomi Fujishiro, Taka-aki Takeda, Tomohiro Yamazaki, Fumie

Teranishi, Fumiko Okazaki, Ayu Matsunaga, Karin Tuschl, Rajini Rao, Satoshi Kono, Hiroaki

Miyajima, Hiroshi Narita, Seiichiro Himeno, and Taiho Kambe

Direct Comparison of Manganese Detoxification/Efflux Proteins and Molecular Characterization of

ZnT10 as a Manganese Transporter

The Journal of Biological Chemistry, 291 (28), 14773-87, 2016