12
1. 緒言 ബ൘Αͼͷज़ۀͷਐల มԽʹڧӨڹΛडలɻͷΛཏ తʹৼΓฦΔʹஶͷݟͰͳͱΒɼ छಈ༻ബ൘ͷ։ʹΔมԽͷΛऔ ΓɼมԽͷىͱͳతͱΈ߹ΘΔ ͱͰɼ ࡏݱͷज़ͷݯઘΛৼΓฦΓɻͰࡏݱ ΒΛḪΓͳΒज़ͷਐาΛཧղΈɻ িಥશͷنڧԽ CO 2 ഉग़ݮɼলΤωϧΪʔΛ తͱମԽͷڧٻΛडɼಈମ ·ࠓʹϋΠςϯͷຊద༻ͷʹೖΔɻ ڧͷߴ൘ద༻ΕΔߏ෦ͰϓϨ εՃΛલఏͱΔ 980MPa 1180MPa ڃͷΪΨύεΧϧ ϋΠςϯద༻ΕΊ 1ʣ ɻ·ɼॏཁอ෦ͱ ͳͳڧߴԽਐ·ͳճΓ෦Ͱ 780MPa ʹڃՃɼҰ෦ 980MPa ڃͷԆ൘༻ԽΕ Δ 2ʣ ɻ ʹߋҙঊͷ؍ΒڧߴԽਐΊΒΕͳ ֎൘ύωϧ෦ͷҰ෦ʹ 590MPa ͷڧߴ൘ద ༻ΕΔ 3ʣ ɻͷʹಈϝʔΧʔ ڝϋΠςϯͷద༻େΛਐΊΔɻͷͳϋΠς ϯԽͷʹɼಈज़ձͱమڠձڠ ׆ಈΔಈ༻ڞಉௐڀݚձ 2002 ʹΞ ϯέʔτΛɼͷՌΛʮϋΠςϯϋϯυϒοΫʯ ʹ·ͱΊΔ 4ʣ ɻදతͳߏ෦ͰΔη ϯλʔϐϥʔ෦ҐͰɼ 2002 ·Ͱͷ൘ڧϨϕϧม ԽͱͷޙͷڧߴԽʹରΔʮظʯ Fig.1 ͷ௨ΓͰ Δɻ Fig.1 ʹ 2010 ʹΕΞϯέʔτՌΒη ϯλʔϐϥʔʹద༻ΕΔڧϨϕϧͷ߹Θ ɻ 2002 ͰظΕ 2012 ஈ֊Ͱͷڧ 薄板技術の 100 年 −自動車産業と共に歩んだ薄鋼板と製造技術− ڮߴɹ 1ʣˎ Sheet Steel Technology for the Last 100 Years: Progress in sheet steels in hand with the automotive industry Manabu TAKAHASHI Synopsis : Development in sheet steels has progressed with a strong relation with automotive industry in Japan. To meet with the requirements from automotive industry, various types of sheet steels including high and ultra-high strength steel sheets have been developed. Progresses in three types of steel series will be discussed by checking the historical facts and technologies and their contributions. Introductions of interstitial free (IF) steel and continuous annealing system are the important events in mild steel developments for panels. Extensive work on finding the op- timum mixtures of hard and soft phases to improve elongation of steels contributed to improve the crashworthiness of autobodies. Continuous annealing system also played an important role in producing these advanced high strength steels. Precipitation is used in characteristic ways which is to scavenge solute carbon and nitrogen and to prevent coarse cementite particle precipitation. It is also worth to point out that the strong collaborative activities particularly characteristic in Japan between steel manufacturers and auto companies have affected on the prog- ress in advanced sheet steels. Key words : sheet steel; high strength steel; IF steel; dual-phase steel; TRIP type steel; crashworthiness; automobile; weight saving. 25 616डɹฏ25 710डཧʢReceived on Jun. 16, 2013 ; Accepted on Jul. 10, 2013ʣ 1ʣ৽ʢגʣज़։ຊ෦ʢTechnical Research & Development Bureau, Nippon Steel and Sumitomo Metal Corporation, 20-1 Shintomi Futtsu Chiba 293-8511ʣ ˎ Corresponding author : E-mail : [email protected] DOI : http://dx.doi.org/10.2355/tetsutohagane.100.82 鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 100 (2014) No. 1 Fig. 1. Change in tensile strength of sheet steels applied to center pillar of 2000CC class vehicles. (Online version in color.) 82 82

Tetsu-to-Hagané Vol. 100 (2014) No. 1 薄板技術の100年 −自動車 …

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Page 1: Tetsu-to-Hagané Vol. 100 (2014) No. 1 薄板技術の100年 −自動車 …

1. 緒言

薄鋼板商品およびその製造技術は国内自動車産業の進展や変化に強い影響を受けて発展してきた。この歴史を網羅的に振り返るには著者の見識は十分ではないことから,各種自動車用薄鋼板やその開発における変化のいくつかを取り上げ,変化の起点となった歴史的事実と組み合わせることで,現在の技術の源泉を振り返りたい。ここでは現在から時代を遡りながら技術の進歩を理解してみたい。衝突安全性の規制強化やCO2排出削減,省エネルギーを

目的とした車体軽量化の強い要求を受けて,自動車車体は今まさに超ハイテンの本格適用の時代に入っている。最も強度の高い鋼板が適用される骨格構造部品では冷間プレス加工を前提とする980MPaや1180MPa級のギガパスカルハイテンが適用され始めた 1)。また,重要保安部品としてなかなか高強度化が進まなかった足回り部品でも780MPa級に加えて,一部980MPa級の熱延鋼板も実用化されている 2)。更に意匠性の観点から長く高強度化が進められなかった外板パネル部品の一部に590MPaの高強度鋼板が適用された例もある 3)。この様に国内自動車メーカー各社は競ってハイテンの適用拡大を進めている。この様なハイテン化の傾向について,自動車技術会と鉄鋼協会が協力して

活動している自動車用材料共同調査研究会が2002年にアンケートを実施し,その結果を「ハイテンハンドブック」にまとめている 4)。例えば代表的な骨格構造部品であるセンターピラー部位では,2002年までの鋼板強度レベル変化とその後の高強度化に対する「期待」はFig.1の通りである。Fig.1には2010年に実施されたアンケート結果からセンターピラーに適用されている強度レベルの実績も合わせて示した。2002年時点で期待された2012年段階での強度

薄板技術の100年 −自動車産業と共に歩んだ薄鋼板と製造技術−

高橋 学 1)*

Sheet Steel Technology for the Last 100 Years: Progress in sheet steels in hand with the automotive industry

Manabu Takahashi

Synopsis : Development in sheet steels has progressed with a strong relation with automotive industry in Japan. To meet with the requirements from automotive industry, various types of sheet steels including high and ultra-high strength steel sheets have been developed. Progresses in three types of steel series will be discussed by checking the historical facts and technologies and their contributions. Introductions of interstitial free (IF) steel and continuous annealing system are the important events in mild steel developments for panels. Extensive work on finding the op-timum mixtures of hard and soft phases to improve elongation of steels contributed to improve the crashworthiness of autobodies. Continuous annealing system also played an important role in producing these advanced high strength steels. Precipitation is used in characteristic ways which is to scavenge solute carbon and nitrogen and to prevent coarse cementite particle precipitation. It is also worth to point out that the strong collaborative activities particularly characteristic in Japan between steel manufacturers and auto companies have affected on the prog-ress in advanced sheet steels.

Key words: sheet steel; high strength steel; IF steel; dual-phase steel; TRIP type steel; crashworthiness; automobile; weight saving.

平成25年6月16日受付 平成25年7月10日受理(Received on Jun. 16, 2013 ; Accepted on Jul. 10, 2013)1) 新日鐵住金(株)技術開発本部(Technical Research & Development Bureau, Nippon Steel and Sumitomo Metal Corporation, 20-1 Shintomi Futtsu Chiba 293-8511)* Corresponding author : E-mail : [email protected] : http://dx.doi.org/10.2355/tetsutohagane.100.82

鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 100 (2014) No. 1

レ ビ ュ ー

Fig. 1. Change in tensile strength of sheet steels applied to center pillar of 2000CC class vehicles. (Online version in color.)

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レベルがまさに今実現しようとしている事は驚きである。一方,アンケートの中にはハイテン化の阻害要因として,部位毎に異なるものの,成形性,溶接性,部材剛性,耐食性,疲労耐久性,および音振動等への強い懸念が示されている。これらの課題を乗り越えて期待通りのハイテン化を進めるためには,素材や工法および部品設計における革新と共に,自動車メーカーと素材メーカーの継続的な協業が大きな役割を果たしたと考えられる。

2012年の国内鋼材内需の約20%強が自動車分野向けであり,自動車業界は日本鉄鋼業の主要な市場分野の一つである。Fig.2には国内粗鋼生産量と国内自動車生産台数の推移を示した。鉄鋼業は,1960年から1970年代の高度成長期も含めて,造船や建設等の市場と共に自動車市場の急激な拡大に呼応しながら発展してきた。この様な変化の中で,周囲環境からの要求に応える為に変化してきた自動車車体

用薄鋼板の中でパネル用鋼板,ミクロ組織制御型の高延性ハイテン,穴広げ性と析出強化ハイテンを取り上げ,その開発と製造技術に係わる歴史的背景を現時点から遡って振り返る。また,日本国内産業に特有な産業間連携の代表例としての自動車-鉄鋼連携についても,現状から過去へとその変化をたどることによってその特徴を理解したい。これら歴史的変化の代表的項目のみをFig.3にまとめた。

2. 自動車パネル用軟鋼板の開発 (IF鋼と連続焼鈍)

自動車用外板を含むパネル用鋼板は軟鋼(270MPa級)から340,340BHおよび370MPa級へと変化して後,大きな進展は認められなかった。外板パネルでは薄手化による張り剛性の低下が問題とることからハイテン化への期待感は薄いとも言われる。更に,高強度化の進展を阻害した理由として表面品位劣化の課題も上げられる。その一つは面ひずみである。面ひずみはプレス成型時の局所的な塑性変形量の違い(例えばドアとって部近傍等で発生)によって方向によるスプリングバック量の違いが面外変形として認識される現象である。この現象は降伏強度(YS)が高いほど顕著となるため,一般的には240MPa程度以下の降伏強度を持つ軟鋼板の適用が推奨されている。もう一つは局所的な降伏現象に起因するストレッチャー・ストレイン(St-St)と呼ばれる模様の発生である。St-Stはプレス時に導入された可動転位が鋼板中の固溶窒素(N)や固溶炭素(C)によって固着されることによって発生し(時効現象),冷延前に固溶N,Cをなくすことによって回避することが出来る。また,パネル用鋼板には良好なプレス成形性,特に高い深

Fig. 2. Change in the number of vehicle and crude steel pro-duced in Japan a year. (Online version in color.)

Fig. 3. Development of sheet steels for auto body with related historical facts and technologies. (Online version in color.)

83薄板技術の100年 -自動車産業と共に歩んだ薄鋼板と製造技術-

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絞り成形性が要求される。深絞り成形性の指標である塑性異方性(r値)は鋼中炭素量を低下させることによって向上することから,高い r値が要求されるパネル用鋼板には現在 IF(Interstitial Free)鋼が広く適用されている。IF鋼は極低炭素鋼をベースにTi(Ti添加 IF鋼は1966年に八幡製鐵にて開発)やNb(Nb添加 IF鋼は1981年に川崎製鐵にて開発)を添加することで固溶C,Nを固定した鋼である 5)。IF鋼では固溶N,Cがほとんど存在しないことから,時効性は良好であり,降伏強度も低いことから面ひずみの発生も抑制される。深絞り性向上に対しては,熱間圧延工程での低温大圧下と急冷による熱延鋼板のフェライト粒細粒化,その後の高圧下冷延と高温焼鈍を組み合わせて平均 r値=2.5,加工硬化指数n=0.27という非常に高い成形性を持つ鋼板も開発されている 6)。IF鋼の良好な成形性により,パネル系部品の形状自由度(複雑化)を可能とするとともに,大型パネル部品の一体成形化を可能とし,TB(Tailored Blank)技術と組み合わされて金型数削減やプレス後の溶接工程省略などによる製造コスト低減に貢献している。現在の IF鋼製造では精錬工程で鋼中C量を数10ppm以

下まで低下させる。Fig.4には国内における最小達成鋼中C量の経年変化を示した 7)。この最小達成鋼中C量の低下はFig.2に示した自動車と粗鋼の急激な生産量拡大の時期に対応しており,大量生産が進む自動車産業からより良好な成形性の鋼板供給が要求されたことを示している。低C化とその後の IF鋼製造を可能にした技術が真空脱ガス技術(DH:八幡製鐵で1961年稼働,RH:富士製鐵で1962年稼働)である 7)。真空脱ガス技術の進歩により,鋼中炭素濃度を50ppm以下,場合によっては10ppm程度以下まで低下させることが可能となり,TiやNbの添加量も低減できたことにより低コストの IF鋼製造が拡大したと同時に,各種鋼材の高清浄度化による高機能化に大きく貢献した。IF鋼は固溶Cをほぼゼロにすることから高い r値が得られること

は認識されていたものの,当初は表面欠陥の発生や熱延コイル端部における顕著な材質劣化などに起因する歩留り低下で,しばらくはAl-K鋼と分担して使われていた。1975年に5%程度の脱ガス比率は1982年には40%超に達したと言われている 5)。Ti添加鋼の製造最適化により IF鋼の連続鋳造化が実現したのは1979年であり 5),その後表面問題の解決が進み IF鋼の低コスト化に貢献した。

IF鋼は良好な耐時効性を示すために,短時間で処理を行う連続焼鈍工程に適した鋼種である。しかしながら,連続焼鈍技術は IF鋼を前提として開発されたわけではなく,従来箱焼鈍で造られていたAl-K鋼による深絞り用鋼板の生産時間短縮や材質変動低下等を目的に導入された技術である。国内における連続焼鈍設備の原形はおそらく1953年に八幡製鐵で稼働したゼンジマー式連続溶融亜鉛めっきラインであると考えられ 5),その他硬質ぶりき製造等で利用されていた。これらに対し,上述のように深絞り成形性や非時効性を有するパネル用鋼板製造を念頭に置いた設備は1971年の日本鋼管 8)や1972年の新日鐵君津 9)が最初である。深絞り用Al-K鋼の製造を箱焼鈍から連続焼鈍に移行したことで,数日を要していた焼鈍時間を10分単位まで短縮することが可能となった。箱焼鈍での r値向上には焼鈍徐加熱中に析出する微細な

AlN(正方晶もしくはクラスターと報告されている)が重要な役割を演じている。AlNの働きとしては,r値向上を阻害する方位の回復を抑制することで r値に有利な方位が優先的に生成する事 10),再結晶粒の成長を選択的に抑制する事 11)等のメカニズムが提唱されている。AlNを利用することを前提に,箱焼鈍用のAl-K鋼は熱延で低温巻取りされる。この鋼を連続焼鈍で製造する際には焼鈍時間が短い為に昇温途中でのAlN析出を利用できない。従って極力固溶炭素を低減した鋼を用い,更に熱延時に高温巻取りする事で鋼中のNをAlNとして固定し,Cは鉄炭化物とした熱延鋼板が利用される。また,箱焼鈍では徐冷中に鋼中侵入型元素(C,N)はAlやFeと化合物を作り,非時効化が達成されるのに対し,連続焼鈍工程ではC,Nの析出時間が十分でないため,焼鈍加熱中に再固溶したCは焼鈍設備の過時効帯(OA帯)で鉄炭化物として析出させることが必要であった。このOA帯での鉄炭化物析出は,例えばOA帯の温度以下まで一旦冷却した後に再加熱して過時効処理を行う事で短時間化することが可能となった 12)。このOA帯での炭化物生成挙動のモデル化も行われ,連続焼鈍過程での最適熱履歴パターンの提案にも貢献した 13)。1967年には低炭素Al-K鋼が連鋳化され 5),成分もAlの低減による低コスト化を達成しながら,Cレベルも0.02wt%程度まで低減した低N鋼として1978年には新日鐵にてCGC(Commercial Grade Continuous Casting)鋼が,また1982年には日本鋼管にてLANS(Low Al & N Steel)鋼の生産が開始されている 5)。

Al-K鋼が深絞り用鋼板として国産化されたのは1954年Fig. 4. Change in the minimum possible carbon content after

refining and technologies contributed.

84 鉄と鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 100 (2014) No. 1

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頃と言われ,まさにモータリゼーションの開始時期に一致する。Al-K鋼以前はインゴット鋳造時に脱酸剤をほとんど利用しないリムド鋼が製造されていた。リムド鋼は良好な表面品位から広く受け入れられていたようであるが,多量に固溶しているNによって時効性には課題を抱えていた。時効により生じるストレッチャー・ストレインが最初に問題視されたのが薬莢であったこと 14)は時代との強い関連性を感じさせる。1957年にLD転炉が導入された事は介在物の低減に大きく貢献し,介在物起因のプレス成形不良等も急激に減少した。また,深絞り成形性と同時に非時効性も考慮した鋼として,1961年に川崎製鉄により初めて導入されたOCA(open coil annealing)炉を用いて脱窒,脱炭を行ったP添加鋼であるKTS鋼板 15)なども開発されている。これ以前のパネル用鋼板としては,初期の自動車用鋼板としての官営八幡製鐵所による美装鋼板(1933年)や川崎造船所による深絞り用冷延鋼板(1938年)等があげられる 5)。連続焼鈍化された低炭素Al-K鋼ではあったが,BAF焼

鈍材に比べてn値が低く,到達 r値にも限界があった上に,自動車パネル部品の形状の複雑化や一体成形化による金型コスト低減等が指向されたため,結果的には高い深絞り成形性を有する IF鋼にその主役の座を譲ることになった。

3. 自動車用骨格構造部品用高延性ハイテンの 開発(複合組織と連続焼鈍)

骨格構造部品は衝突安全性向上と車体軽量化の目的でハイテン化が進んでいる。海外も含めて現在注目を集めているのが「第三世代ハイテン」である。この鋼板の定義は明確ではないが,一般的にはFig.5に示すような強度と全伸びのバランスで表現されることから,高延性ハイテンを意味するものと考えられる。Fig.5では,第三世代ハイテンを提唱しているSpeerらの報告 16)を元に,一般的なハイテンの特性を現実的な値に修正した。Fig.5によると980MPa級で20~50%,1180MPa級で15~45%の伸びの範囲が目指す

第三世代ハイテンの領域とされている。しかしながら,これまでに第三世代ハイテンとして報告されている例では,実験室レベルの結果で980MPa級では27%程度以下 17,18),1180MPa級では17%程度以下 18)と,Fig.5の領域の下限が達成されているにすぎない。一方,低合金TRIP型複合組織鋼(以下低合金TRIP鋼と略す)の研究では,980MPa級で30%,1180MPa級でも25%程度の延性が達成された例が報告されており 19),むしろ第三世代ハイテンの概念により近い鋼板であると言える。

TRIP現象はZackay20)によって最初に報告され,不安定オーステナイトを含む高合金鋼(TRIP鋼)の塑性変形中にオーステナイトが硬質マルテンサイトに加工誘起変態することでひずみの集中を回避し,結果として大きな均一変形能を示す現象である。TRIP鋼の延性は加工温度に大きく依存することが知られており 21),低温側では加工誘起変態が早期に完了することで,また,高温では加工誘起変態進行が遅いことにより延性が増大せず,最大延性の加工温度が存在する。しかしながら,TRIP鋼はMnやNi,Mo等のオーステナイト安定化元素を多量に添加することから高コストとなり,実用化は進まなかった。このコスト構造を大きく変化させたのが低合金TRIP鋼である 18)。オーステナイトの安定化には最も安価な元素であるCが利用される。低合金鋼における未変態オーステナイト中炭素濃度はAe1直上で約0.8wt%程度であり,オーステナイトを室温で安定化するには不十分である 22)。未変態オーステナイト中へのC濃化を進める為に無拡散変態であるベイナイト変態が利用される。SiやAl23),Cu24),P25)等を添加することでセメンタイト析出を遅延させる事で効果的にオーステナイト中に固溶Cを濃化させることが可能である。ベイナイト変態温度での最大C濃化量が熱力学的に決まるTo線(無拡散変態が可能な上限温度)の炭素量で決まり 26),変態停留が存在することで比較的広いプロセスウィンドウが確保できる。ベイナイト変態温度が高い場合にはセメンタイト析出の遅延が不十分であり,低い場合にはベイナイト変態そのものの遅延もしくはマルテンサイト変態の開始により所望のミクロ組織は得られない。また,ベイナイト変態時間が短い場合には未変態オーステナイトへのC濃化が不十分であり,長時間すぎるとセメンタイト析出が開始することから,最適な変態時間の設定も必要である。ベイナイト変態処理温度は低合金鋼では400℃前後,変態時間は数分から10数分程度が最適であり 21),低炭素Al-K鋼の時効性改善の為に設定された連続焼鈍ラインのOA帯の設備能力に合致した事は,全くの偶然であり,驚くばかりである。この偶然性のおかげで,特別な設備投資なしに低合金TRIP鋼の実用化が進んだ。モータリゼーションの最中,時代の主役であった軟鋼板の生産性向上等を目的に開発された設備が約20年後に新しい時代の主役となり得る高機能ハイテン製造で再度開花した瞬間である。

Fig. 5. Summary of tensile strength and elongation data for vari-ous types of high strength steels. The circle for the 3rd generation HSS corresponds to the region proposed by Matlock. (Online version in color.)

85薄板技術の100年 -自動車産業と共に歩んだ薄鋼板と製造技術-

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低合金TRIP鋼の研究はその後も継続され,欧州での溶融亜鉛めっき(GI)27)に加え,合金化溶融亜鉛めっき(GA)鋼板も開発され 28),国内自動車メーカーに採用されている。学術的には2002年にベルギーで低合金TRIP鋼に焦点を絞った国際会議が開催され 29),その後もより高強度領域への展開等で研究活動が継続されている 30)。低合金TRIP鋼の開発は1980年頃に始まり,当初冷延-

焼鈍工程での検討がなされていたが,400℃近傍でのベイナイト変態処理を熱延後の巻取りで代替する研究が進められ 31),1989年には熱延780級鋼板が低合金TRIP鋼として初めてが実部品に採用された。ベイナイト変態の停留と未変態オーステナイトへの炭

素濃化はオーステンパリングとして知られている 32)。ここで報告されているFe-0.63C-0.89Mn-0.036Si-0.15Ni-0.31Cr-0.02Mo鋼の400℃での等温変態時間と冷却後のミクロ組織変化をFig.6に示した。前述のようにベイナイト変態時間の最適領域が存在することが分かる。この最適な保持時間は鋼の化学成分に依存し,Mn,Si,Mo等の合金元素添加およびその添加量増加に従ってベイナイト変態速度が遅れ,長時間化する傾向にある。また,未変態オーステナイト中のC濃度の増加はベイナイト変態速度を大きく遅延させるため,ベイナイト変態処理前のフェライト生成量を精緻に制御することも重要である。従って,高強度化の為にMn等の固溶強化元素添加量の増加が必要な場合などでは,ベイナイト変態時間を確保する為に通板速度を低下させる必要があったり,最適ベイナイト変態時間が確保できない場合も生じる。この様なセメンタイト析出と競合するベイナイト変態挙動を一貫で予測できる定量的なモデル計算についてはAzumaら 33)によって報告されている。実際に計算された例としてフェライト内およびオーステナイト内でセメンタイトが析出する場合についても報告されている 34)。一方ベイナイト変態の加速についてはOka35)やKawataら 36)

の報告があり,ベイナイト変態の前に一旦過冷してマルテンサイト変態させた後に再加熱することでベイナイト変態の核生成サイトが増加する。Fig.7にはKawataらによって報告されているベイナイト変態速度に及ぼす初期マルテンサイト変態量の影響を示した 36)。Al-K鋼の過時効処理の為の再加熱OAプロセスもまた,今後の超高強度低合金TRIP鋼や,第三世代ハイテンの一つとして議論されているQP(quench and partitioning)鋼の製造を実現する為に有利な設備となり得る。これももう一つの大きな偶然と言える。自動車骨格構造部品の軽量化が注目されたのは1973年,

1979年のオイルショックを契機に進んだ燃費向上の要求に起因する。この時プレス成形性の代表値として延性が重視された為,単なる固溶強化や析出強化では要求を満足することが出来なかった。このような要求に応えたのがDP(Dual Phase)鋼である。現在の780MPa以上級のハイテンでは種々にミクロ組織を制御したDP鋼が広く実用化されている。DP鋼製造には必ずしもSi等のめっき性に悪影響を与える元素添加が必要無い為に,比較的容易にGA化可能であったことも適用拡大の一因と言える。高延性タイプではフェライトとマルテンサイトの2相組織が,また,穴広げ性を向上させたい場合にはベイナイトも含むミクロ組織が選択される。一例として980MPa級超ハイテンの延性と穴広げ性(局部変形能を示す特性)のバランスを制御した例をFig.8に示した。DP鋼の強度は硬質相であるマルテンサイトの体積率やフェライトの硬さ,マルテンサイト以外の硬質相の存在等に依存する。直近では,980MPaに加

Fig. 6. Change in the microstructures as a function of isother-mal holding at 400ºC in a Fe-0.63C steel (reproduced). Possible maximum carbon content in untransformed aus-tenite Cγ is calculated by the volume fraction of bainite assuming no cementite precipitation before the stasis of the transformation. (Online version in color.)

Fig. 7. Effect of volume fraction of martensite fα’ on the bainite transformation behavior from mixtures of austenite and martensite. Actual volume fraction changes in upper part were redrawn as normalized volume fraction changes of bainite in lower part. (Online version in color.)

86 鉄と鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 100 (2014) No. 1

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えて1180MPa級の実用化も進んでいる。この様なハイテンでは比較的高いMn添加量に加え,組織の微細化等の目的でNbやTiが添加される場合が多いため,二相域焼鈍でも未再結晶フェライトが残留する場合があり,これが強度やプレス成形性に影響を及ぼしている 37)。特に変態温度が低い鋼板においては,再結晶完了前に二相域に突入することで再結晶が明確に遅延することが報告されている 38)。これは当初DP鋼が研究された際には全く注目されていなかった現象であるが,今後一層の高強度化が進む中で重要な材質制御因子の一つになると考えられる 37)。DP鋼の研究は市場の要求に呼応しながら1970年代に精力的に進められた。この時期のDP鋼に関する研究は2つの国際会議の予稿集にまとめられている 39,40)。DP鋼は低降伏強度であり,連続降伏を示しながら大きな加工硬化特性を示す事が特徴である。低降伏強度と連続降伏は,鋼板製造時のマルテンサイト変態時の変態膨張により周囲のフェライトに導入された転位によると理解されている。DP鋼は延性と共に大きな焼付け硬化(BH:Bake hardening)特性を示し 41),後に衝突時のエネルギー吸収能向上に有利であることが確認されて 42),自動車骨格構造部材へのDP鋼の一層の適用拡大につながった。また,DP鋼の延性(加工硬化指数)は複合組織効果と考察されるが,一方ではその延性が微量に残留している残留オーステナイト量に依存するとの報告もあり 43),その後開発された低合金TRIP鋼の概念が既に確認されていたともいう事が出来る。

DP鋼を代表とする複合組織鋼板は冷却制御によってミクロ組織制御をする事が最も経済的であるため,冷延-焼鈍材では急速冷却可能な連続焼鈍設備の導入以降に拡大した。連続焼鈍設備は1972年に新日鐵君津に導入されたC.A.P.L.44)の様な焼鈍後の冷却を途中で停止し,等温もしくは傾斜温度のOA帯を持つ「ダイレクトOA」タイプと,1976年にNKKに導入された水焼き入れと焼戻し工程を組

み合わせた「クエンチ&テンパー」タイプ 45)が存在する。ダイレクトOAタイプの連続焼鈍ラインでDPを製造する場合には,OA温度を鋼板の(正確には急冷前のオーステナイトの)マルテンサイト変態開始温度Ms以下に設定することで製造される。従って急冷で生成したマルテンサイトはOA温度で焼戻される。鋼板の化学成分にもよるが,OA帯でベイナイトが生成し,未変態オーステナイト中へのC濃化が進行して,最終冷却時に一部がマルテンサイト変態して未変態オーステナイトが残留する場合もある。980MPa以上級の超ハイテンDP鋼の延性はこの残留オーステナイトの存在も無視することはできない。一方クエンチ&テンパータイプの連続焼鈍ラインでのDP製造は,一旦フェライト+マルテンサイトになったミクロ組織が再加熱されて焼戻される為,フェライト+焼戻しマルテンサイト組織となる。この様な二つのプロセスによるハイテンの機械的性質の違いを比較した結果では,ダイレクトOAタイプの方が高延性であることが報告されている 45)。

1970年以前も各種鉄鋼材料でミクロ組織制御が行われていたものの,骨格構造部品用薄鋼板では目立った高延性タイプの鋼板開発は認められない。熱延ままのハイテンでは後述のHSLA(High Strength Low Alloy)鋼等,フェライト+パーライトやフェライト+ベイナイトに析出強化を組み合わせた鋼板が多く利用されている。高延性を目指した自動車用高強度鋼板で多く利用され

るマルテンサイトは鉄のミクロ組織観察に貢献したドイツのAdolf Martensの名前に由来し,フランスの金属組織学の創始者とも言われるFloris OsmondがMartensの業績に名誉を与える目的で1895年に命名したとされる。また,このMartensが鋼材のミクロ組織情報と機械的性質との関連性を最初に議論した技術者であり,現在の鉄鋼材料研究者の起源とも言える。ちなみにOsmondは金属組織学の父と称されるイギリスの研究者Henry Clifton Sorbyの詳細な金属組織研究と相変態の概念を拡張し,1880年代にはH.L.Le Chatelierが改良した熱電対を利用して相変態を発見し,焼き入れ硬度が相変態生成物によると議論した。まさに現在我々が行っている組織制御の生みの親とも言える。この様な各種ミクロ組織の発見の詳細に関しては「鉄のメルヘン」(中澤護人著)46)に詳しく紹介されている。

4. 自動車用足回り部品用高穴広げ性ハイテンの 開発(均一組織,析出強化と高清浄度鋼)

析出強化は容易に200~300MPa程度もしくはそれ以上の強化が可能であることから,多くのハイテンに利用されている 47)。自動車用ハイテンでの析出強化元素添加の目的は必ずしも一般的な析出強化元素添加鋼と同一ではない。その特徴を概観し,背景を議論したい。一つ目の特徴はパネル用鋼板の r値を向上させるために

Fig. 8. Three types of combinations between hole expansiv-ity and total elongation of 980MPa grade high strength steels.

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熱延鋼板の固溶CやNを固定するスカベンジングであり,前述の通り軟鋼板の IF鋼化に利用されている。この技術に更に析出強化を適用した例がある。外板へのハイテン適用は,ドア外板やエンジンフードでの耐デント特性向上や,サイドパネルアウターの強化による衝突特性向上等を目的に検討されている。後者では通常の IF鋼よりも高C濃度とし,Nb添加量を増加することで固溶強化に加えてNbCによる析出強化を利用した440MPa級GA鋼板が開発され 48,49),SiやMn等による固溶強化された鋼板 50,51)と共にサイドパネルアウター(Tailored blank(TB)技術利用)へ適用された。IF鋼の特徴である高い r値を確保しながら析出強化による高強度化を達成した例であり,CやNを固定する為にTi,Nbを利用する自動車用軟鋼板特有の IF鋼技術と一線を画している。フェライトの細粒化と粒内の析出強化によって強化されていることから,高降伏強度化が予想されるにも関わらず,フェライト粒界近傍に存在する析出物欠乏ゾーンによる一種の複合組織効果により低降伏強度も達成している 52)。

IF鋼で一層の高強度化を達成した例としてCuの添加がある 53)。Cuはフェライトに過飽和に固溶させることが可能であり,熱延時の巻取り温度の調整や焼鈍後に熱処理もしくは550℃付近で保持することでCuの析出による高強度化が可能である 53)。しかしながら,高温での溶融金属脆化回避の為にNi添加が必須であることから高製造コストとなり,実用化は進んでいない。二つ目の自動車用薄板における析出の利用における特徴

は高強度熱延鋼板の穴広げ性の向上である。自動車用熱延ハイテンでは析出強化が多用される。連続熱延工程の特徴から,加熱時に析出強化元素を完全に固溶状態に保つことが可能であり,その後の熱延時に一部オーステナイト(γ)域での析出で浪費するが,残りを冷却中もしくは巻取り中にフェライト中で析出させることで強化させることが可能である。特に巻取り処理は徐冷により等温保持に近い熱処理が可能であることから,析出処理に適したプロセスとなっている。析出元素としてはNbとTiが一般的であるが,これらに加えてMoやV等も利用される。析出物は強度上昇と共に溶接時のHAZ(Heat Affected Zone)軟化抑制にも効果があり,フラッシュバット溶接やアーク溶接が適用される部位にも適した鋼板である 54)。自動車部品への析出強化ハイテン適用例の中でも最も強度が高い例の一つがホイールリムへの980MPa級熱延ハイテンの適用である 2)。鋼材の詳細は議論されていないが,「溶接性と成形性を重視した」と表現されていることから,HAZ軟化対策の為の析出強化が利用されていると考えられる。高強度鋼板の穴広げ性の劣化にはいくつかの因子があり,ミクロ組織間の硬度差,硬質第2相の量,鋼中C量,展伸介在物やその他の粗大介在物および,鋼板の r値やn値にも影響を受けると報告されている 55)。複合組織化が高延性化に有利であった

が,穴広げ性向上の為にはベイナイトやマルテンサイトの単相組織もしくはミクロ組織間の強度差を極力小さくすることが必要である。また,鋼板中に不可避的に存在するセメンタイトも粗大な場合には硬質相として穴広げ性を低下させるため 56),TiをCとの原子量比1.0以上添加し,粗大セメンタイトの析出を抑制する事で780MPa級でありながら良好な穴広げ性を有する熱延鋼板が報告されている 57)。但し,的確な巻取り温度を選択する必要があり,550℃付近の巻取り温度では穴広げ性が極端に低下し,析出物とマトリックスの整合性に起因すると考察されている 57)。また,低C鋼にTiとMoを原子量比でCと同量程度添加した鋼板を650℃程度で巻き取ることで,3nm程度の複合析出物(TiMoC2)を析出させた良好な成形性を有する780MPa級ハイテンも報告されている 58)。この析出物は熱的にも安定な為,連続溶融亜鉛めっき工程で700℃程度まで加熱されても強度が低下しないことから,GA製造も可能とされている。この様な析出強化型ハイテンは980MPaや1180MPa級への拡張も可能とされている 59)。

Nb添加を代表とする析出強化はフェライト細粒化による靭性向上を目的とした造船用厚板のControlled Rolling(制御圧延:CR)で発展したことは言うまでも無い。当初C-Mn鋼で製造された構造用鋼が,強度確保の為に比較的高Cであったことから,溶接部信頼性に欠け,Microalloyingによって低C化が可能となった事も,その適用拡大を加速した理由の一つである 60)。CR技術は1950年代に工業化されたと言われ,1958には米国ではじめてNb添加ハイテンが開発されている 60)。HSLA鋼に関する研究はその後集中的に続けられるが,国際的な議論は1963年に英国Harrogateにおいて開催された国際会議「Metallurgical Developments in Carbon Steels」に端を発すると言われる。Microalloyingに関しては1975年に米国Washingtonで開催された国際会議に続き,1981年に米国Pittsburgh,1983年に同じく米国Philadelphia,1984年には豪州Wollongong,1985年には中国北京,そして1988年には米国Chicagoで開催されて,その後も議論が継続されている。自動車構造部品への最初のMicroalloyingの適用としては1916年頃にFord Model TへV添加鋼が適用された例があげられる 61)。まさしく100年の歴史を持つ鋼と言う事が出来る。非常に広範囲の鉄鋼製品で利用されている析出強化は

1906年にAl-Cu合金の研究をしていたAlfred Wilmによってアクシデンタルに発見された。この時期,マルテンサイトやその他のミクロ組織が発見され,鋼の高強度化とミクロ組織学が盛んに研究された事は前述の通りである。鉄の焼き入れと同様に焼き入れによるAl-Cu合金の高強度化を探索していたWilmは,残念ながら焼き入れ強化には成功しなかったものの,休日で焼き入れ材の硬度測定が中断した結果,冷却直後の硬度に対して休日明けの硬度が高くなっている事実を発見した 62)。時効硬化の発見である。相

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変態が存在せず,過飽和固溶体からの析出処理が最大の強化方法であるアルミ合金ではその後時効・析出現象を巧みに利用して高強度化が進んでいる。またこれまで述べたように,相変態や組織微細化等と共に,析出強化も鉄鋼材料で無くてはならない強化機構である。さて,薄鋼板の穴広げ性向上に向けたアプローチに戻り

たい。780MPa以上級の自動車用熱延ハイテンの穴広げ性改善は上述のようにTi等の炭化物析出によるセメンタイトの析出制御が利用されるが,より低強度では析出元素を含まないFe-C-Si-Mn鋼が利用されていた。540MPa級に対して開発されたこの鋼ではSiの添加によってセメンタイトの微細分散を達成し,フェライト+ベイナイト組織で高い穴広げ性を達成している 56)。しかしながら,これらの高穴広げ性ハイテンのベースには介在物の無害化が必須であった。穴広げ性と鋼板中S量の関係については昔から注目されており 63),低S化することで穴広げ性が向上することも確認されている 56)。穴広げ性の様な局部的な変形能を向上させる為には介在物の低減と合わせて偏析や不純物元素の低減も重要である。介在物の低減技術は自動車用鋼板のみならず,缶用のブ

リキでより厳格な管理もなされており,精錬段階での脱酸生成物の分離除去技術と介在物の組成形態制御による無害化技術が重要である。脱酸生成物の低減には鋼中酸素の低減が重要であり,その為の真空C脱酸と共に,取鍋内ガスバブリング法や電磁撹拌法,RH還流法などの溶鋼撹拌による浮上分離が積極的に適用されている 64)。また,スラグや取鍋耐火物や大気による再酸化を防止する為にスラグの除去分離と共にスラグの改質も実施されている 64)。当然のことながらアクシデンタルな外部からの介在物混入防止に向けた取り組みも続けられている。凝固偏析低減は永遠の課題であり,未だ完全な解決には至っていない。中心偏析の改善の為には凝固末期の流動制御の為の軽圧下法や等軸晶帯を増加させる為の電磁撹拌法等が導入されている 64)。有害不純物元素としてはSやPが代表的である。Pは高強度化の為の添加元素として利用されるが,一方では溶接部の強度低下 65)や極低炭素鋼の二次加工脆性 66)等の原因となる。Pの低減は溶銑脱Pと溶鋼脱Pを組み合わせることで達成されている。また,SはMnSになることで伸長しやすい介在物となり,前述のように穴広げ性を劣化させる。その低減はCaO系フラックスの吹き込みや上置きによる溶鋼脱Sと溶銑脱Sが組み合わせて利用される。また,CaやREM(rare earth metal)を添加することによりSをMnSでなくCaやREMのS化物とする事で介在物を伸長しにくくすることで穴広げ性を改善することも広く適用されている。穴広げ試験方法に関しては後述の薄鋼板成形技術研究会

で議論され,1996年に日本鉄鋼連盟規格 JFS-T1001穴拡げ(穴広げ)試験方法として規格化されている 67)。

5. 自動車産業と鉄鋼業界のつながり (鋼材利用技術開発と社会の要請)

2012年の国内鋼材内需の20%強が自動車分野向けであり,自動車業界は日本鉄鋼業の主要な市場分野の一つである。Fig.2に示す国内粗鋼生産量と国内自動車生産台数の推移からもわかるように,鉄鋼と自動車両産業の発展は強い関連性を持っている。この間の産業間連携は,公の場である学協会等(自動車技術会,鉄鋼協会,機械学会,塑性加工学会,自動車用材料調査研究会,薄鋼板成形技術研究会等々)での活動に加え,個々の企業間でも強力に推進されてきた。後者は特に日本特有の活動だと言われ,海外ではこの様な個々の産業間連携活動は目立っていないようである 68)。

Fig.2に示すように,粗鋼生産量および自動車生産台数の推移は大きく3つのステージに分けることが出来る。第3ステージは環境調和性と衝突安全性の両立,および

急速なグローバル化が特徴である。安全性については1970年に米国では自動車安全法が施行されているが,国内においては1994年にフルラップ衝突等の自動車アセスメントが義務付けられて以降に,より厳格な取り組みがなされている。その結果として1996年にはトヨタからGOAボディをコンセプトとした新車が発売されている。自動車業界と鉄鋼業界は自動車の衝突安全性向上に向けた素材,構造,工法等を検討する為に協業を進め,1995年には上記自動車用材料共同調査研究会(自動車技術会材料部門委員会と鉄鋼協会自動車用材料検討部会のジョイント委員会として設立)のハイテンWGが設立され,自動車各社および鉄鋼各社が自動車の衝突現象に関する各種公知情報や検討結果を共有した。1997年には衝突時の鋼材の高速変形挙動の検討を主眼に「自動車用材料の高速変形に関する研究会(武智弘主査)」が設立された。その年の9月25日には鉄鋼協会秋季講演大会の会期中に「自動車用材料シンポジウム~自動車の衝突安全性と高張力鋼板の高速変形特性~」が開催され,最終的には2001年3月に最終報告書がまとめられ,高速変形に関する知見が共有化された。高速変形の試験・評価技術については,1999年に通商産業省から(財)大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンターが受託した「金属材料の高速変形特性評価方法の研究開発(木原諄二委員長)」にて詳細に議論された。これら何れの活動も,自動車業界,鉄鋼業界,更には官学からの専門家による共同の活動である。高速変形の試験法に関しては,その後世界的に議論がなされ,ISO化された(ISO2603-1(2010年2月発行),ISO26203-2(2011年10月発行))69)。これらの学協会活動に加え,個々の産業間連携も活発に行われている。個別の企業間の活動である為に具体的な内容はオープンにはならないものの,新しい鋼板の実車適用による衝突特性向上と軽量化達成のプレスリリースや学会での連名報告等

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からその一角を伺う事が出来る。第2のステージは第一次オイルショックと共にクローズ

アップした,省エネルギーの為の燃費向上への取り組みを特徴とした環境適合化のステージである。北米では1975年にエネルギー政策法を制定し,1978年モデルからCAFÉ(Corporate Average Fuel Efficiency)規制を適用した。日本においても1979年に自動車燃費基準が策定され,自動車燃費向上活動が加速した。この時期にはDP鋼やHSLA鋼の開発が積極的に行われていたが,同時に素材メーカーの中でのプレス成形技術に関する研究開発が精力的に進められ,それまでに着実に育てられてきた鉄鋼業と自動車産業の「二人三脚」がハイテンの適用を課題として実を結ぶ事となる 70)。社会的要請に従って研究が進められたハイテンの特性改善とその成形技術は従来の割れやしわの発生抑制技術に加えて,弾性回復に起因する形状凍結性の重要性も認識され,検討が進んだ。この技術はその後のCAE技術進歩によって定量化が進み,より正確な材料構成式による高精度な弾性回復量の予測も可能となっている。新たなハイテンが実際に自動車車体に適用され始めたのは1978年から1979年であり 71),その後急速な拡大を見ることになる。ハイテン化の定量的動向は必ずしも公になってはいない

が,上述の薄鋼板研究会で調査された結果が報告されている 55)。Fig.9には自動車生産台数と粗鋼生産量の変化と合わせてハイテン適用比率の変化を示した。この第2から第3ステージにかけて,ハイテン適用比率が急激に増加している事が分かる。各時点での予想に急激に近づいている様子も伺え,今後もハイテン化の進展が一層加速されるものと予想される。また前述のように,適用されているハイテンの強度レベルも上がっており,より硬質な鋼板をより多く適用した自動車車体の製造が進むものと考えられる。第1のステージは急激に生産量が増加した高度成長の時

代である。この時期に鉄鋼業と自動車産業の「二人三脚」がスタートし,確立する。プレス加工に関するこの協業は薄鋼板技術研究会を中心に進められた。本研究会は1960年に立ち上げられた「薄鋼板のプレス成形と試験法研究会」の名称を変更する形で1964年にスタートしている。この研究会は1952年に発足した「塑性加工研究会」を前身とし,その後深絞り性の簡易評価方法であるCCV(conical cup value)法を開発した福井伸二氏を中心に1957年に結成された「コニカルカップテスト研究会」を経ている 72)。当時実務部隊として活躍した吉田清太氏を代表幹事として,自動車メーカー14社,素材メーカー7社が集まり定期的な情報交換や共同作業を展開した。この活動が現在も継続されていることはこの二つの業界の密な連携の表れと言える。このステージでは,1949年にGHQによる乗用車生産制限が撤廃され,1960年に閣議決定された国民所得倍増計画による経済的な後押しもあって急速にモータリゼーション(自動車の大衆消費財化)が進展していた。1955年に通商産業省で立案された日本版フォルクスワーゲン計画である国民車構想を受けて,トヨタ「パブリカ」やスバル「360」等が開発され,自動車そのものが一般家庭でも手が届く比較的身近な存在となった。自動車生産の工業化,大量生産化には「プレス成形しやすい」鋼板の提供が不可欠となり,鋼板の特性改善やプレス加工などの利用技術の検討が加速した。この時期鉄鋼協会では「鉄鋼対策技術委員会(湯川正夫委員長)」が設置され,戦後の鉄鋼業のあるべき姿が議論された。ここでは,効率性追求の為に銑鋼一貫製鉄の重要性が示されているのみならず,「工業技術も科学に立脚した技術でなくてはその意義がない」と明言され,研究,技術開発の重要性や育成についても言及されている 73)。また,GHQのサポートも受けながら,海外からの技術者招聘や製造技術導入が積極的に進められた事も進展の大きな

Fig. 9. Predicted and achieved increase in the amount of high strength steels used for autobodies. (Online version in color.)

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一因であった。1951年に米国アームコから導入されたゼンジミア式亜鉛鉄板製造技術,ストリップミル方式による鋼板製造技術,1957年にスイスのコンキャストから導入された鋼の連続鋳造法等は,その後の「安くて,使いやすい」自動車用鋼板の基盤技術となる。しかしながら,この様に拡大する自動車生産とそれを支える鉄鋼材料生産技術の進展は容易に予想されていたものではないようである。1952年の第13回国会参議院運輸委員会では山縣勝見氏を委員長として,トヨダ自動車工業株式会社社長の石田退三氏,自動車輸入業である梁瀬商会社長の梁瀬長太郎氏,全国乗用自動車協会会長の新倉文郎氏,政府委員としては通商産業省通商機械局長の佐枝新一氏等,当時の自動車業界を代表するメンバーによる国内での自動車生産の現状分析とその後のあり方について議論がなされている 74)。参議院会議録を参照すると,梁瀬氏は当時の国内自動車製造技術とその後の技術進展に疑問を呈し,「二百や三百作っても只のお稽古で,向うではプレスというようなぽこんぽこんと打ちあけたようなボデイーを作つている際に,こちらではハンマーでひつぱたいてでこぼこのボデイーを作つて,横から見ると情ないような始末であります。(中略)アメリカのように乗用車を作るということはプレス技術もいいようでありますけれども,アメリカのミシガン湖の北側の成るスチールでなければよくて値の安いスチールは得られないというような細かいところまで行つておる。そういうような状態ですから,この点,はよく考えて算盤の合うトラック,バスでも精を出して作つて頂いて,乗用車には手をお染めにならんほうが経済上却つてよくもあり,国家全体としても又徳用である。」と明言している。また,新倉氏も,「国産乗用自動車を使つておりまするのは我々ユーザーが八五%であります。それから国産乗用自動車を今日使つておるというのは誰が使つておるのかというたらばその大部分は我々である。ところがそれはよくて,好きで,望ましくてこれを買つているのかというとそうではございません,泣き泣き買つている,非常に搾取をされて,暴利を貪られて,そうしてボロなものを押付けられておる。(中略)これ以上の一体むちやくちやな保護とは何を要求するのか。すべての生産は国が持つて,そうして勝手に高く売付けたものを全部懐に入れさせるというのは或いは保護となるだろうが,これ以上の保護はございません。私をして極言せしめるならば,現在の国産乗用自動車は機械局の番人と言いましようか,まあ悪い言葉で言うとあとで取消を命ぜられるといけませんから遠慮いたしますが,いわゆる十重二十重の保護下に立つて殿様的商売を,製造をいたし,殿様的横暴な販売をいたし,その上に高利貸の上前をはねるというふうな金利を稼いでおるのが今日の国産車のあり方である,かように申上げて間違いないと思います。」と厳しいコメントを与えている。これに対して日本の物造りの発展を信じる通商機械局の佐枝局長は,「私ども機械局

の立場としましては,やはりこういつた総合的な非常に関連の部門も多く,そういつた産業が伸びることによりまして,自然に関連の産業も非常に発達をするというような一つのインダストリーというものを国としてやはり守り立てて行かなければならん,こう考えておる次第であります。だから将来の可能性如何ということにつきましては,これは似たような例としまして,これは戰争中強い国家的な保護があつたわけでありますが,航空機の工業も,勿論戰争中といえども世界第一であるということではありませんでしたが,一流に伍する製品を作つておつたと存じます。従つて日本の工業能力は,一流品に伍する自働車を将来作ることはできないということはないという私は確信を持つております。」と述べ,自動車およびそれを取り巻く各産業の努力による生産実力の向上を唱えた。これに対して梁井氏は,「よほどもつと研究して,支那でも,印度のタタでも,或いはどこの鉄がいいとか,どこから持つて来てどうするとか,もつと研究を積んで,自動車の用途に値の安い鉄を選んだほうが勝つようです。その鉄の選択をするほどの余裕がありません。日本では漸く鉄やステイールを入れるだけであつて,中の品質の研究,調査をする余裕がありません。それからその他に使われるもので何が国際貿易の上から日本で自動車をうまく作つてアメリカ品などに追着いて行かれるかと調べて見ると,実に何にもありません。それでこちらが研究をして五歩というときにはアメリカは七,八歩進んでおる,七,八歩日本が進むときにはアメリカは十歩進んでおる。この勢いを以て行けば算盤ずくで行つても三年,五年,八年,十年と進むに従つてだんだん開いて行く,いずれの日かこれに追着くことがありましようか。」と国内鉄鋼業の研究開発能力に対しても不安感を示している。これらの意見に対してトヨダ自動車の石田社長は,「今後現在皆さんが非常に設備の改良,その他によりまして改良生産方式をとられることによつて,その質がよくなると同時に,最近は各メーカーといろいろ御相談を申上げまして,自動車に極く適当なる寸法のものを頂き,なお自動車に適当なる材質のものを頂く,なおできるだけこの材質についての検討は,材料メーカーと自動車技術メーカーのしよつちゆうの技術懇談会によつてこれを打開して行こういう考えをいたして参つたのであります。」と企業間連携を主張し,今後の自動車品質の向上に対し,「この材質の問題も私どもとしては先般来鋼材メーカーともいろいろ協議をいたしまして,今度は質的な御改良をして頂くということも先般来より話合いをいたしておりますし,又実際鋼材会社の作つております生産の相当額まで自動車が使つておりますので,この点は鋼材会社もよく認めて頂いて,最近大童に研究を頂いておりますので,当然これは私は成る水準まで上げ得るであろうと……,要するに朝から皆さんにこれだけお叱りを頂くだけ,ものが悪いだけに,伸びるほうは早く伸びるであろうとそういう期待を私は持つておりま

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す。」とコメントしている。これがまさに自動車と素材メーカーの「二人三脚」がスタートしている状況を示していると考えられる。佐枝局長や石田社長のコメントがまさに的を得たものであった事はその後それほどの時間を経ないうちに証明されていくことは前述のとおりである。

6. 自動車用薄鋼板の今後の動向

自動車の進歩発展と共に技術開発が進められた薄鋼板にとって,自動車分野は今後とも重要な市場である事は疑う余地が無い。自動車の燃費向上の動きはHEVやEVの導入へと進み,将来的にはFCVの割合も増加する方向である。しかしながら,どの様な動力が採用される場合でも車体重量の軽減は全体としてのエネルギー効率向上につながる。また,1992年以降低下し続けている交通事故死者数を今後も低減する為の各種取り組みがなされる中,インフラ整備等による交通事故数の抜本的低減(発生件数は2004年以降減少している)も将来的には期待できるものの,当面は衝突安全への考慮も必須と考えられる。これら相反する2つの要求は今後一層厳格化することが予想され,これまで以上に最適な構造と最適な材料の組合せが求められる。この様なトレンドの中で車体の軽量化と衝突安全性向上に有効な使いやすいハイテンの開発とその利用方法を追求することが重要である事は言うまでも無い。また,最適構造を達成する為には,新車開発の初期段階から自動車メーカーと素材メーカーが協力するSimultaneous Engineeringが重要であり,これこそが日本の物づくりを支える日本独特の文化と言う事が出来る。また,上記2つの相反する課題を鋼材のみで解決することは困難であり,他の軽量化材料(アルミ合金,樹脂等)との究極のマルチマテリアル構造も指向する必要がある。この時にも最適な材料配置や接合技術等,自動車メーカーと素材メーカーが協力して初めて最適化が可能となる。各産業での研究開発と産業間連携の一層の強化によって,日本が今後も物造りで世界をリードすることが可能であると確信する。

文   献 1 ) 高張力鋼,車向け加速 日産車の骨格に1180MPa冷薄,日刊産業新聞ホームページ,http://www.japanmetal.com/back_number/news/newsidt2011100601.html(参照2013-06-14).自動車用冷延ハイテンの開発・採用について,神戸製鋼所ホームページ,http://www.kobelco.co.jp/releases/2011/10/1186711 _12093.html(参照2013-06-14).成形性を2倍に高めた自動車用超ハイテンが世界で初めて実用化,新日本製鐵ホームページ,http://www.nssmc.com/news/old_nsc/detail/index.html/?rec_id=4128(参照2013-06-14).

2 ) 世界初の980MPa級高張力鋼板を採用した軽量化スチールホイールを開発,トピー工業ホームページ,http://www.topy.co.jp/release/archives/2009/11/18/entry424.html(参照2013-06-14).

3 ) 自動車向けハイテンの採用拡大~部品に応じた各種ハイテンの開発・提案で車体軽量化に寄与,新日鐵住金ホームページ,

http://www.nssmc.com/news/old_nsc/detail/index.html/?rec_id=4297(参照2013-06-14).

4 ) 高橋学,吉永直樹:ハイテンハンドブック,自動車用材料共同調査研究会編纂,日本鉄鋼協会,自動車技術会,(2008), 18.

5 ) 阿部光延:薄鋼板製造技術,日本鉄鋼協会,(2000), 132. 6 ) K.Koyama, Y.Matsumura, S.Sanagi, N.Matsuzu and N.Kino: J. Jpn.

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(1992), 1. 8 ) T.Kurihara: Tekkohkai, 23(1973), 22. 9 ) K.Toda, B.Kawasaki and T.Saiki: Iron Steel Eng., 50(1973), 415.10) H.Abe and T.Suzuki: Tetsu-to-Hagané, 56(1970), 869.11) S.Hanai, N.Takemoto, Y.Mizui and Y.Saziki: Tetsu-to-Hagané,

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93薄板技術の100年 -自動車産業と共に歩んだ薄鋼板と製造技術-

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