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3 取手アートプロジェクト TAPは、 1999年より市民と取手市、東京芸術大学の三者が共同でおこなっているアートプロジェクトです。若いアーティストたちの 創作発表活動を支援し、市民のみなさんに広く芸術とふれあう機会を提供することで、取手が文化都市として発展していくことを目指して活動を続けています。 TORIDE ART PROJECT PAPER “POST SUBURBIA” 3RD ISSUE www.toride - ap.gr.jp 第三号 取手 アートプロジェクトの広報紙特集 TAKE FREE Summer-Autumn 2017 Toride IBARAKI 郊外のまち茨城県取手市で、 18年続くアートプロジェクト Ashita-no-Kougai 羊屋白玉がミーティングで口にした、「チャプター・アーツ・セン ター」という場所の名前。彼女が幾度かの公演に訪れたその 施設では、アートが好きかどうかを問わず老若男女が自由に 行き来し、混 在しているという。まだ 見ぬチャプターのイメージ は、地域の日々に寄り添いながら続き、さまざまな人の手を渡る ことで転がっていくアートプロジェクトの姿に重なった。活動の 継続の先には、アートセンターがあるのだろうか。ということで、 ウェールズの首都カーディフまで、思い切って行ってきました。 チャプター・アーツ・センターほか 羊屋白玉 =リサーチパートナー 毎朝のコーヒーの隣に アートがある TAP MEETS ARTS CENTRES IN UK (指輪ホテル芸術監督・演出家) UKアートセンター 訪問ルポ Contents チャプター・アーツ・センター訪問ルポ 対談|羊屋白玉 五十殿彩子 わたしから、まちにつながる。なだらかに 空想団地リノベーション 第3回|ヴォロノイ化する団地 取手のひと/取手のしごと 取手アートプロジェクト《半農半芸》 ひだまりのひマルシェ 2 4 6 7 8

TAP 1999 2017 創作発表活動を支援し、市民のみなさんに広く芸術とふれあう機会を提供する … · する 他 のアーテ ィストがいるこの 場所

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3取手アートプロジェクト(TAP)は、1999年より市民と取手市、東京芸術大学の三者が共同でおこなっているアートプロジェクトです。若いアーティストたちの創作発表活動を支援し、市民のみなさんに広く芸術とふれあう機会を提供することで、取手が文化都市として発展していくことを目指して活動を続けています。

T O R I D E A R T P R O J E C T P A P E R “ P O S T S U B U R B I A ” 3 R D I S S U E

www.toride- ap.gr.jp

第三号[取手アートプロジェクトの広報紙]

特集

TAKE FREE

Summer-Autumn2017

TorideIBARAKI

-郊外のまち茨城県取手市で、18年続くアートプロジェクト

Ashita-no-Kougai

羊屋白玉がミーティングで口にした、「チャプター・アーツ・センター」という場所の名前。彼女が幾度かの公演に訪れたその施設では、アートが好きかどうかを問わず老若男女が自由に行き来し、混在しているという。まだ見ぬチャプターのイメージは、地域の日々に寄り添いながら続き、さまざまな人の手を渡ることで転がっていくアートプロジェクトの姿に重なった。活動の継続の先には、アートセンターがあるのだろうか。ということで、ウェールズの首都カーディフまで、思い切って行ってきました。

チャプター・アーツ・センターほか羊屋白玉=リサーチパートナー

毎朝のコーヒーの隣にアートがある

T A P M E E T S A R T S C E N T R E S I N U K

(指輪ホテル芸術監督・演出家)

UKアートセンター訪問ルポ

Contentsチャプター・アーツ・センター訪問ルポ対談|羊屋白玉 五十殿彩子わたしから、まちにつながる。なだらかに

空想団地リノベーション第3回|ヴォロノイ化する団地

取手のひと/取手のしごと取手アートプロジェクト《半農半芸》

ひだまりのひマルシェ

2

4

6

7

8

施設維持費チャプター収支の内訳

芸術プログラム(給与含む)芸術プログラム(給与含む)

48%収益事業(給与含む)収益事業(給与含む)

43%

7%

マーケティング2%

支出

2012年度

収入

カフェ・バーカフェ・バー39%

10%8%8%公的資金公的資金15%

補助金・寄付・会費補助金・寄付・会費28%

チケット・物販貸館事業

チャプター・アーツ・センター訪問ルポ

2|ハンナ・ファースHannah Firth

チャプター・アーツ・センターのヴィジュアルアーツ&プログラム部門ディレクター兼戦略・組織開発部門副ディレクター。2017

年のヴェネチアビエンナーレでは、ウェールズ・イン・ベニス・プログラムのキュレーター、プロジェクトディレクターを務める。今回、チャプターを案内してくれた。

3|クリスティン・キンゼイChristine Kinsey

ウェールズの画家。チャプター・アーツ・センターの共同設立者のひとりで、創設時の芸術監督。文中で紹介している言葉は、1999

年のギリー・アダムスによるインタビュー「チャプター―その最初期」より引用。[引用元]Chapter – The Early Years

https://www.chapter.org/chapter-early-years

1|ジェームス・タイソンJames Tyson

ロンドンを拠点に、パフォーミングアーツのディレクション、プロデュースを手がける。1999年から2011年までチャプター・アーツ・センターの芸術監督を務めた。取手には2015年と2016年の来日時に2回足を運び、羊屋との市内リサーチやアトリエ訪問、チャプターについてのレクチャーを行った。

チャプター・アーツ・センターは、イ

ギリス西部、ウェールズの首都カーディ

フにある。カーディフはウェールズの南、

人口約35万人の港町で、総面積は約140㎢。

鉱業の貿易拠点として19世紀中ごろから

栄えたが、1920年代に生産の最盛期

を過ぎるとともに衰退した。その後、1

955年にウェールズの首都になり、1

980年代からベイエリアの再開発が続

いた。今は四つの大学で7万5000人

近くが学ぶ学生都市でもある。

チャプターは1968年、ウェールズ

人の二人のアーティストと、一人のジャ

ーナリストの構想から始まった。当時イ

ギリス国内では、各地にアートセンター

と呼ばれる施設ができ始めていたが、首

都になってまだ10年あまり、作品を発表

する場所も手の届く家賃で借りられるア

トリエもなかったカーディフに、そのア

ートセンターをつくろうとしたのである。

まず彼らは約2年をかけて、この構想を

知ってもらうための様々なプログラムを

仕掛けた。中でも、1970年に市中心

部のソフィアガーデンズで開かれた12時

間に及ぶコンサートには、ピンクフロイ

ドやブラックサバスをはじめ、多くのミ

ュージシャンが参加し成功をおさめた。

戦後手厚い福祉政策をとっていたイギリ

スでは当時、高等教育への道が急速に開

かれつつあった。美術や音楽を学ぶ学生

も増えていた。希望と楽観主義の時代。

そんな社会の雰囲気の中で、市内の芸術

系学生やアマチュアアーティストらを中

心に、アートセンター構想への支持は広

がった。そして1971年、統合により

使われなくなった旧カントン高校の建物

を拠点に、チャプターはアーティストラ

ンスペースとして幕を開けた。

カーディフ中央駅からバスで約

20分、大通りから少し入った静

かな住宅地の中に、チャプタ

ー・アーツ・センターはある。よ

く手入れされたコミュニティガーデ

ンのアプローチを抜けると、赤いレンガ

造りの建物。感じよく、でも洗練され過

ぎないファサードが町になじんで、親し

みやすさを感じさせる。エントランスを

入るとすぐ、広々としたカフェスペース。

左手には控えめなボックスオフィスと、

ギャラリーがある。右手にある大小二つ

の映像シアターでは、メジャーな作品と

実験的な作品を組み合わせて上映してい

る。2階の小劇場と貸しスタジオは、バ

レエや空手、ヨガなどの教室が定期的に

借りていて、稼働率は高い。道を挟んだ

隣の建物は、様々な分野のクリエイター

に貸し出されているシェアスタジオ。案

内板にはウェールズ語と英語が併記され、

乳幼児や車いすの来場者向けの表示には、

細やかな心配りがみえる。

印象的なのは、1階の大部分を占める

カフェスペースだ。夜はバーになる。年

間80万人を超えるチャプターの来場者の

うち、約9割はこのカフェ・バーの利用

者だとか。天井は高く開放的で、周りの

スペースとの仕切りもない。コーヒーを

飲みながら新聞を読んでいたおじいさん

に話しかけた。毎朝ここに来るらしい。

ずっとカーディフに住んでいて、この建

物が高校だったころから知ってるよ、と

強いウェールズ訛りで話してくれた。そ

の周りには黙々とパソコンに向かう人、

ベビーカーを脇におしゃべりする人。奥

の席を陣取って打ち合わせしているグル

ープはチャプターのスタッフだろうか。

この多様でオープンな感じは何だろう。

無料でWi

-Fiが使えるからね、と、

今回私たちを案内してくれたハンナ(注

2)は冗談で言っていたけれど。

チャプターはれっきとした文化施設だ

けど、アートを目的とした人もそうでな

い人も、ごく自然に受け入れている。こ

のカフェは、そういうチャプターの在り

方を象徴しているみたいだった。このオ

ープンな雰囲気が、チャプターを訪れる

人の、アートに対するポジティブな気分

につながっているのかもしれない。

道を挟んだ別棟のシェアスタジオにも

案内してもらう。3階建ての、かつてア

パートメントだったビル。約40組のアー

ティスト、クリエイターが入居している。

ここに長くアトリエを構えているアーテ

ィストのポールに話を聞いた。チャプタ

ーがあり、自立して活動する他のアーテ

ィストがいるこの場所で制作活動をする

メリットを感じていると言う。彼にとっ

て、現在のチャプターはどう映っている

のだろう。「チャプターは変わってきた

ね。最近は特に商業的に成功していると

思うよ。」商業的な成功。芸術の世界では、

皮肉で使われることも多いかもしれない

が、彼はフラットな調子でそういった。

チャプター・アーツ・センターの年間

事業費は、2012年度で総額333万

9900ポンド(約4億8000万円)。

収入の60%弱が補助金に頼らない自己調

達資金で、これはイギリスの文化施設と

しては稀有な数字だ。自己調達資金の割

合は、カフェ・バー39%、チケット・物

販10%、貸館事業8%と続く。喫煙所で

立ち話をした人は、学生の時にチャプタ

ーのカフェでアルバイトをしているうち

にフリーランスとして雇われ

て、今はフルタイム職員とし

て劇場部門で働いていると言

っていた。チャプターが経済的に自立し

ていることは、アートに関わる人材の雇

用を生むことにもつながっている。

チャプターの運営母体は非営利組織。

財務、オペレーション、事業開発、マー

ケティングの経営部門と、ヴィジュアル

アーツ、シネマ、カフェ・バーの事業部

門からなる。ヴィジュアルアーツ部門に

はギャラリー、劇場の専任ディレクター

がいる。カフェ・バー部門だけは、営利

組織として切り離されている。収益が増

えすぎたので切り離さないといけなかっ

た、とハンナは言っていた。

最近は、市内の商業施設や野外でのア

ウトリーチ事業、若手アーティストの支

援に力を注いでいる。劇場部門では、2

016年から若手作家を支援するプログ

ラムがスタート。アソシエイトアーティ

スト6組を迎え、稽古場の提供やクリエ

イションのサポートはもちろん、国際的

なコラボレーションの機会を提供するな

ど、3年間にわたって継続的に支える。

アーティスト支援に力を入れる一方で

「オーディエンスにもっとリスクを取って、

想像できない、理解できないかもしれな

い作品に出会ってもらうことが、チャプ

ターの大きな挑戦」というハンナの言葉

も印象的だった。

先鋭的な表現を発信し続けることと、

多くの人に親しまれること。矛盾するよ

うにも見えるそれらを共存させるという

大きな仕事を、チャプターは40年以上、

続けてきた。それは、アーティストの強

い表現へのモチベーションが社会化され

るプロセスそのものだったのではないか。

「あらゆる分野の表現者が、ひとつ屋根

の下で制作を行う。そのことが分野間の

垣根をなくし、コミュニケーションを促

し、寛容さと協調的な雰囲気の中で創造

力が開花する」創設者のひとり、クリス

ティン・キンゼイ(注3)の語ったこの

言葉が、今でもチャプター・アーツ・セ

ンターに生きているのだなあ、と思う。

一昨年からはじまった、羊屋白玉をパートナーに迎えてのプロジェクトは、

アートセンターの姿を、取手の過去と現在から探るリサーチの旅となった。

イギリスの老舗アートセンターの今を知るため、日本を飛び出した私たちを、

チャプターで羊屋と演劇をつくり、今も交流するジェームスが迎えてくれた。

訪問日=2017年2月3日[金] リサーチパートナー=羊屋白玉 コーディネーター=ジェームス・タイソン ガイド=ハンナ・ファース同行者=熊倉純子、TAP事務局・運営スタッフ、「めざせ!コミュニティ+アート・センター」特別研究員、東京藝術大学学生ほか

A・B入居者の名前が並ぶシェアスタジオの入り口と外観/C朝の定番、ボリュームのあるイングリッシュ・ブレックファスト/Dウェールズ語と英語が並ぶ館内サイン/Eカフェには朝から夜までさまざまな目的の人々が訪れ、時間を過ごす/F高校の教室を活用したスタジオ。レモンイエローの装いの女性がハンナ/G裏口のテラス席では夜のバータイムにくつろぐ人も/Hチャプター外観/I総合案内兼チケットカウンター。右手奥はギャラリー入口/Jチャプター周辺の街並には小さな店やアパートが並ぶ/K市民の企画など様々な告知が集まる自由掲示板/L年間80万人を迎える扉は街へと続く

A

B F

G

I

K

J

L

H

DC

E

Post Suburbia TORIDE ART PROJECT PAPERwww.toride-ap.gr.jp

002

チャプター・アーツ・センター訪問ルポ

Text 雨

貝未来 

Illustra

tion

武藤舞子 

Ph

oto

羊屋白玉、五十殿彩子、冨山紗瑛、羽原康恵

TORIDE ART PROJECT PAPER Post Suburbia No.3 201 7 Summer-Autumn

003

チャプター・アーツ・センター訪問ルポ

3|イースト・ロンドンEast London

正式な境界線は存在しないが、ロンドンの中心部東側でテムズ川の北側の地域。失業者や移民が多く所得の低い貧しい地区といわれていたが、2012年に開催されたオリンピックのメイン会場として整備され、その後地価や家賃が急上昇した。現在も都市開発が進む。

4|ジェントリフィケーションGentrification

1964年、イギリスの社会学者ルース・グラス(1912-90)が、ロンドン周辺地区の都市変化を表すために編み出した言葉。労働階級の人々が暮らす都市近郊の地域に、上流中産階級の人々が流入して居住者層の入れ替えが起こり、産業構造や社会構成が変容する都市の再編現象を指す。

2|ヴォルケーノ・シアターVolcano Theatre

カーディフに次ぐウェールズの都市スウォンジーが地元の、スウォンジー大学出身のアーティスト2名により1990年に結成。国際的に活躍する一方、2010年より市内に拠点を持ち、稽古や公演、子どもたちとのワークショップなど、地域コミュニティに向けた活動を行う。

1|トーベイ・カルチャー・ボードTorbay Culture Board

イングランド南西部の都市トーキーが面する、トー湾(トーベイ)を囲む3都市が連携し、キュレーター、アーティスト、文化行政担当者、ワークショップディレクターなどのメンバーにより構成。アート・フェスティバルの開催および当該地域における文化政策の長期計画を設計している。

五十殿彩子(以下、五十殿) 羊屋さん

とアートセンターについて考えはじめて

一年になりましたが、当初からチャプタ

ー・アーツ・センターのことをお話しい

ただいていました。なぜチャプターに行

こうと提案していただいたのでしょうか。

羊屋白玉(以下、羊屋) 取手アートプ

ロジェクト(以下、TAP)と同じよう

な活動をしている人たちは世界中にいる

んだろうなと思って。私は何度かチャプ

ター・アーツ・センターを訪れていたん

だけど、アートセンターなのに、アーテ

ィスト以外の人とたくさん出会ったんで

す。子どもからお年寄りまでワイワイし

ている様子がTAPと重なったのかもし

れない。それで、見に行ってみようよっ

て誘ったの。

五十殿 「私が見た中で、最も地元の人々

から愛されているアートセンター」と紹

介してくださったのがとても印象的でし

た。首都のロンドンから離れている場所

にも関わらず尖った芸術プログラムをや

っていて、ヨーロッパの主要なアート界、

演劇界ともつながっているのに、市民の

集いの場になっているところが好きって

おっしゃっていて。

羊屋 入ってすぐのカフェを利用してい

る家族は、チャプターでどんな演目をや

ってるかは別に知らなかったりもする。

アートとかに興味がなくてもいられる場

所なんだよね。

五十殿 朝から晩までオフィス代わりに

している人や、新聞を読みに来ているお

じいちゃんもいたり。夜はイギリスのパ

ブっぽく交流の場みたいになる。入ると

まず食堂を通るつくりになっているから、

いろいろな人が行き交うのが見えて。

羊屋 昼間演劇をしたアーティストが、

夜はカフェでアルバイトしていることも

あってね。前回公演したときは、カフェ

のエリアを半分劇場の舞台として使った

の。食事を出す演目だったので、ウエイ

ターのお兄さんたちも出演者としてキャ

スティングされていて。ここまでできる

ところなんだなって、正直びっくりした。

エリアの半分はふつうにカフェとして営

業してるんですよ。だから入場料を払わ

ずに食事だけしている人も演劇を眺めて

いる。お客さんも、別にあの人たち入場

料払ってないとかそういう世知辛いこと

言わないし。普通の劇場だと演劇を見に

来る人しか来ないし、その場にいられな

いよね。

五十殿 空いているスタジオは場所貸し

しているんですよね。バレエスクールの

子どもたちがレオタード姿で歩いている

のがかわいかったです。

羊屋 そうそう。バレエを習う子どもた

ちの横を、コンテンポラリーダンスのダ

ンサーが歩いていたりする。知らない世

界の人に出会える、刺激をもらいあえる

場所っていうのはいいよね。

五十殿 チャプターの後に行ったトーキ

ーで会ったトーベイ・カルチャー・ボー

ド(注1)のメンバーは、高齢化や貧困、

格差など、街のいろいろなセクターに関

わるNPOや行政といった立ち位置の異

なるメンバーが集まって文化に焦点を当

てたアートプロジェクトをやろうとして

いて。アートプロジェクトを、コミュニ

ケーションを生み出す方法として開催し

ているんですよね。いろいろな立場の人

たちが集まっている感じが、TAPとし

て共感できるところも多かったです。

羊屋 スウォンジーでは元スーパーマー

ケットだった空きビルをアートセンター

と劇団の拠点にしたヴォルケーノ・シア

ター(注2)のメンバーに会ったよね。

彼らは国際的にも高い評価を得る作品を

つくり続けている一方で、彼らの地元に

も場所を持つようになって。地域に根ざ

すことと尖った表現をやり続けている、

芸術性と社会性を両方持っている成熟し

たアーティストたちだと思いました。日

本ではなかなかない現象として彼らの活

動をすごく尊敬しました。

五十殿 チャプターも含めて自主企画だ

けじゃなくていろんな人たちに場所貸し

をしているところは日本の公立ホールと

同じ仕組みにみえますが、日本は基本的

には発表会をする場所になってしまって

います。イギリスでは大学の駅前サテラ

イトキャンパスみたいに使ってもらおう

とか、多様な人に活用してもらおうと意

識的にしているところが日本とは違うな

と思いました。スウォンジーのアートセ

ンターの一角にも、酒樽の上に板を渡し

ただけの仮設カフェみたいなスペースが

あって。やっぱりそこでみんなが集まっ

て飲んで話せて、っていうことが重視さ

れている感じはしました。

羊屋 アートセンターを考えるためにも、

みんなが帰ったあとに一人で行ったイー

スト・ロンドン(注3)の話もしておき

たくて。そこにはベトナムの難民の人た

ちが70年代からつくり続けてきたコミュ

ニティがあるって聞いたから、訪れてみ

たの。イースト・ロンドンはもともと労

働者階級の貧しい人々が多くて治安の悪

い地域というイメージだったのだけど、

2012年のオリンピックにはメイン会

場になったことで街はとてもきれいにな

っているし、テムズ川沿いには高級レス

トランがあったりしてね。でも裏通りに

一歩入ると、取り残された家があるよう

な、古い町並みと新しい建物が渾然一体

としている場所でした。

五十殿 オリンピックをきっかけに開発

されて、土地の値段も上がっているはず

ですよね。今もベトナムからの難民の方

達はその地域にいたのでしょうか。

羊屋 そうなの。話を聞いていくと、彼

らは自治体からお金が下りて残ることが

できたみたいで。そうじゃない人は家賃

が払えなくて住めなくなったんだと思う。

まさにジェントリフィケーション(注

4)の真っ只中の場所だったの。東京の

オリンピックもイギリスをお手本にして

いると聞いているけど、ジェントリフィ

ケーションは踏襲して欲しくないの。

例えば、ホームレスの人たちの生活の場

になっているところに劇場ができたとし

たら、彼らはそこにいられなくなるわけ

でしょう。アートが何かを排除する役割

になるようなことは非常に恥ずかしいな

と思っていて。

五十殿 そこにしか生きられない人たち

の住む場所や権利が脅かされてしまいま

すよね。

羊屋 私も東京でプロジェクトをやって

いるんだけど、アートを理由に街や人の

生活を脅かされるかもしれないというこ

とには意識的じゃないといけないって思

うの。取手でアートセンターを考えると

きにもそうだと思う。

私ね、この一年、取手でいろいろな場所

を見せてもらったし、いろいろな人に会

って話をきいてきたじゃない。TAPの

過去の活動や関わった人たちの記憶の中

から、アートセンターという未来を模索

することを、今できたらなと。

これまでは、アートセンターにふさわし

い場所を探している感覚があったんだけ

ど、イギリスを視察してみて、場所があ

ればアートセンターができるわけでもな

いと思ったんです。

五十殿 場所ありきではなくて、何をす

るか、どういう人と関わっていくかを先

に考えていくということですよね。

羊屋 多様な人たちに開いた場を持つな

ら、やっぱりお風呂屋さんとかタバコ屋

さんみたいに、表を向いていて店主の顔

がみえるお店みたいなほうがいいと思う

んです。

五十殿 そうしたら、学校帰りの子ども

に「おかえり」って声をかけたり、「うち

の子通りましたか?」って親御さんから

聞かれたり、そんな会話が起こるかもし

れないですね。

羊屋 そういう役割って道に面してる小

さいお店っていうのがやってたと思う。

チャプター・アーツ・センターは、居場

所を求めている人たちを受け入れながら、

さらに徐々に街につながっていく感じが

すごくいいなと思って。だから取手のま

ちでも、暮らしの中にアートがあって、

なだらかにまちへとつながっていくよう

なことができるんじゃないかなって思っ

ています。

五十殿彩子(おむか・あやこ)NPO法人取手アートプロジェクトオフィス事務局。1980年茨城県生まれ。愛知県立芸術大学音楽学部卒業。オーボエ奏者を目指していたが、芸術と社会の関係に興味を持ち、2005年から3年間、取手アートプロジェクトのインターンとして実践的にアートマネジメントを学ぶ。2008年より埼玉県北本市で市役所職員のちNPO事務局としてアートプロジェクト「北本ビタミン」の立ち上げから企画運営に携わる。2014年より取手アートプロジェクトに戻り、財務会計業務などを通じてアートNPOの持続可能な経営方法を模索している。

|対 談|羊屋白玉×五十殿彩子

UKアートセンターの視察から

イギリスで出会った人々と、彼らがつくってきた場所。

それぞれの地域、社会とのかかわり方に触れて見えてきた、

これからをまなざすアートセンターの形とは。

Torbay Culture BoardTORQUAY

Volcano TheatreSWANSEA

Chapter Arts CentreCARDIFF

East LondonLONDON

ENGLAND

WALES

多様な人たちに開いた場を持つなら

や�ぱりお風呂屋さんとか

タバコ屋さんみたいに

表を向いていて店主の顔がみえる

お店みたいなほうがいい

羊屋白玉(ひつじや・しろたま)「指輪ホテル」芸術監督・演出家・劇作家。1967年北海道生まれ。1994年「指輪ホテル」結成。劇場のみならず様々な場所での活動を行う。同時多発テロの最中ニューヨークと東京をブロードバンドで繋ぎ、同時上演した「Long Distance Love」(01年)、北米、ヨーロッパをツアーした「Candies」(06年)ほか世界各地で公演。06年、ニューズウイーク日本誌にて「世界が認めた日本人女性100人」の一人に選ばれる。近年、国内外の芸術祭で海や列車、トンネルなどサイトスペシフィックな演劇作品を発表する傍ら、13年亜女会(アジア女性舞台芸術会議)を設立、14年よりアーツカウンシル東京にて「東京スープとブランケット紀行」始動。15年よりTAP「めざせ!コミュニティ+アート・センター」リサーチパートナーを務める。

O M U K A H I T S U J I Y A

Post Suburbia TORIDE ART PROJECT PAPERwww.toride-ap.gr.jp

004

[対談]わたしから、まちにつながる。なだらかに

Ed

it 五十殿彩子、中嶋希実 

Ph

oto

高田洋三(人物写真)、五十殿彩子、羊屋白玉

TORIDE ART PROJECT PAPER Post Suburbia No.3 201 7 Summer-Autumn

005

[対談]わたしから、まちにつながる。なだらかに

収録日=2017年4月8日収録場所=東京藝術大学千住校地

①平面状にいくつかの点を配置する

②隣り合う点を線でつなぐと三角形ができる

③三角形の各辺の垂直二等分線どうしをつなぐ

④最初に引いた線を消して分割の完成

ヴォロノイ分割って?

Ku-So Floor Plan

ダイニングキッチンダイニングキッチン

玄関廊下

押入

階段

物置

WC

浴室

洗面所

押入

和室

1

2 3

バルコニー

ゆうくん(以下●) ベランダの角

度が印象的な部屋ですね。あちこち

に独特な角度がついてる。

マーさん(以下●) このイナズマ

みたいな「角度」を外から内に持ち

込みたい。地下鉄の飯田橋の駅のよ

うに室内の天井に続く感じで。

● おおお! 

外観を部屋の中に。

● 天井だけかと思いきや、それが

畳につながっていくっていうのはど

う? 

ヴォロノイ畳って知ってる?

● ヴォロノイ?

● 幾何学的な多角形の畳なんです

が、日本のアルゴリズミックデザイ

ンを牽引する建築家の豊田啓介さん

のチームが開発した、ヴォロノイ分

割を使ったアルゴリズムと、日本の

畳生産の技とが合わさって生まれた

プロダクトなんです。間取りを伝え

ると、その空間毎にこの図形をアル

ゴリズムで発生させて、無限に近い

パターンの中から、任意に分割され

た畳を発注できるというもので、21

世紀型の畳なんです。

● これすごい斬新な畳! 

外側の

特徴を内部に引っ張ってくるという

のが面白いですね。

● この部屋で感じたのは、直角じ

ゃない線をベランダ部分になんで使

ったのかな?って疑問で。明らかに

「表現」だなと思った。でも、まだ付

けたした感じで終わっているので、

その未完の表現欲を、リノベで完成

させちゃおうと。

● というと?

● 20世紀の公団デザインと21世紀

のものづくりのコラボで「角度」が

外から中からつながって、あらゆる

ところに現れてきたら面白いなと。

増殖して全体になっていく感じ。

● じゃあ、ヴォロノイ分割でつく

った多角形のパーツを部屋にたくさ

ん備え付けておいて、入居者はそれ

を使って内も外もどんどん〝ヴォロ

ノイ〞していくというのは?

● ほう。

● レゴみたいにパチパチ組み立て

て、隣に越してきた人と仲良くなっ

たらパーツを渡して、お隣さんとも

ヴォロノイ。あんまり仲良くないお

宅とはヴォロノイしない。

● ヴォロノイ分割っていうのは、

複数の点と点の関係が作る分割方法

なので、人間関係の距離感という比

喩には合うかもね。

● 外にまで増殖していくなら、夜

には光らせたりとか……あ、でもち

ょっとケバケバしいか……。

● それでもいいのでは? 

昼の輪

郭と、夜の光る輪郭で、見え方がま

ったく違うのも。それができたらリ

ノベ建築の名作になるだろうね。

● 観光地になりそう。

● という妄想、野望を込めて、ま

ずは四畳半の畳替えから(笑)。

● そこに戻るんだ(笑)。外観か

らイメージが始まって、畳へ収束し

てゆく。そしてまた建物全体へ……

何か宇宙的なものを感じますな。

● 今回は、内と外を行き来するよ

うな空想リノベーションでしたね。

そろそろ一首いきますか。

手で焼肉を食べるなら、

取手一中の近くにある元

山がおいしいよ。」そう

紹介されることが多かった焼肉屋が

リニューアルして、2年半ほど前に

はじまったのが韓国定食屋の元山食

堂。扉を開けると、申麻実さんが手

際よく料理をつくるキッチンの奥か

ら、「いらっしゃい!」とお母さんの

韓勝子さんが元気に迎えてくれる。

「母が駅前で20年、こっちに移って

20年焼肉屋をやっていてずっと手伝

ってきました。機械の老朽化なんか

もあって閉じることになったので、

形態を変えて食堂にしようっていう

のがはじまりです。」

 

旅行が大好きで世界中を飛び回っ

ていたという麻実さん。どうして韓

国料理にしたんでしょう。

「韓国の路地裏にあるような、おば

ちゃんの手際がいい賑やかな大衆食

堂に行くと、心が躍るんです。好き

な料理を仕事にできるのは幸せなこ

とだなって思いますね。スープを一

滴も残さずにたべてくれる方がいる

と、すごい恍惚感を感じるんですよ。

焼肉屋だったときは母がメインで私

がサポート、今は逆になりました。

よく喧嘩もしますけど、いないと困

るんですよね(笑)。」

 

横で話を聞いていたお母さんが、

焼肉屋をやっていたころのことを聞

かせてくれる。

「当時、アルバイトは歴代芸大生に

お願いしてました。みんな頑張って

るのよね。まかないもたくさん出し

て、お土産なんかも持たせてあげた

の。うちは洗い物が大変だったんだ

けど、真鍮でできた焼台をほんとき

れいに磨いてくれてね。今思うと、

工芸とか彫金をやってた子は向いて

たかもしれないよね。芸大でやる展

示なんかにも誘ってもらって行きま

したよ。すごい発想だなと感嘆しち

ゃったりね。」

 

ようやく軌道にのってきたという

お店の運営。麻実さんはこれからや

ってみたいことがあるそうだ。

「取手を盛り上げようっていう友だ

ちが、利根川の土手で音楽フェスを

企画してて、去年出店させてもらっ

たんですよ。私も音楽が好きだから、

これからもそういうイベントにお店

を出していきたいですね。あとは、

焼肉屋のころから人気だった温麺の

ムーヴメントを起こすのも密かな夢

なんです。やっぱりおいしいから、

もっと世の中に知ってもらいたいな

って。まあまずは、好きなもの食べ

てもらえたら幸せです。」

郊外に埋もれる新たな暮らし方を見つけるべく、お部屋訪問をつづける空想リノベの匠たち。取手だからできちゃいそうなリノベ生活を、建築家とアーティストが勝手に妄想しながらお部屋を探訪します。今回は団地に隠れていたとある意匠から壮大なスケールの空想リノベーションが始まったようです。

UR戸頭団地/タイプ3D/3DK64㎡

取手に来たのは平成14年で、64歳の誕

生日に引っ越してきてね。実は東京生ま

れ東京育ち。銀座線の上野駅と稲荷町の

間に住んでた。取手の前は岩井市(現・

坂東市)にいてテレビの技術屋をやって

たんだけど、退職を機にね。引っ越して

すぐは右も左もわからなくて知らない人

ばっかり。だからいろいろアプローチし

たんだよね。第九を歌ってる会に話を聞

きにいってみたり、駅前の店の利き酒会

に女房といったり。そこで今の坂道愛好

会のメンバーに会って。それがはじまり。

その一週間後には第九を始めて、その後

取手男声合唱団にも入っちゃった。

坂道をやりだしたから取手じゅうを歩

き出した。坂はいっぱいあるけど名前が

まだほとんどないから、「命名坂プロジ

ェクト」を仲間と一緒に平成16

年の取手アートプロジェクト

(以下、TAP)の公募に応募

したんだよね。仲間うちでは絶

対受かるって言ってたんだけど、

これは芸術じゃないって言われ

て落っこちちゃった。落ちたも

んだから頭に来てね、400近

くある市内の坂道を全部調べた。

市内の15地区、白地図に坂道表示をして。

傾斜があっても趣がなければ「坂」認定

はしない。TAPが駅前の旧茨城県学生

寮を会場にしたとき(※)に坂道の展示

をして、PRでその前の坂に「治助坂」

と木製の道標を立てて。その道標、10年

間残ってた。そのときつくった『駅周辺

の坂道に愛称と道標を』っていう資料に

関心を持ってくれた団体がいて、今は立

派な道標が12ヶ所に。

坂へのこだわりは人それぞれ。常磐線

で都内から来るとさ、取手でとまるため

に橋にかかるとゆるやかになるじゃない。

くだんのTAPの公募ではそこから「2

分の1のゆるやかさ」って言ってたでし

ょ、取手にはそういうものがあると。私

はそれを坂道に引っ掛けて。家屋は垂直、

川とかは横。坂道は斜めでしょ。この堅

苦しい世の中を、ちょっと斜めに構えて

みませんかとね。最近は坂つながりで水

戸や都内の坂の団体と交流したり、街道

宿を調べたり。坂道は、すれ違うときに

何となくこんに

ちはと声をかけ

たくなるから不

思議だよね。

酒井達夫(さかい

たつお)さん

※TAP2005「はらっぱ経由で、逢いましょう。」 学生寮跡地は現在、取手ウェルネスプラザに

1.シンプルで居心地の良い店内 2.厨房から時折聞こえる掛け合いも楽しい 3.看板メニューの温麺は暑い日に熱く食べるのも通

←羊屋白玉と「めざせ!コミュニティ+アート・センター」特別研究員を連れ小文間を散策する酒井さん。

とり

No.3

【取手の坂道愛好会】

ちょっと

斜めに構えて

みませんか

とね。

あの人・この

人に

インタビュー!

「ヴォロノイ化する団地」第3回●UR戸頭団地

Ku-So DanchiRenovation

(想定の住人…幾何学的美しさを愛する人)

万円4参考価格 02

WORK IN TORIDE元 山 食 堂

取 手 のしごと

申 麻 実さん

# 3 SINCE 2014TORIDE CITY

SHIN MAMI INTERVIEW

WORK IN TORIDEWORK IN TORIDE

元山食堂(げんざんしょくどう)d11:30–14:00、17:00–20:30

e日曜 a茨城県取手市東6-70-4

b0297-74-2684

c[Facebook]wonsansikdang

SHOP DATASHOP DATA

取取

佐藤悠さんアーティスト

東京芸術大学大学院博士課程修了

新堀学さん建築家新堀アトリエ

一級建築士事務所代表

●UR戸頭団地利根川を挟んで茨城県の入口となる取手市。戸頭団地は、常総線「戸頭」駅前に位置し、同駅から2駅の守谷駅からはつくばエクスプレスを利用できるので都心へのアクセスも良好です。団地内は歩車分離で安全な空間が形成されており、いちょうとメタセコイアが美しい遊歩道は住民の憩いの場となっています。また、スーパーやクリニック、教育施設も身近に整っており、日々の生活に大変便利な環境です。-アクセス 関東鉄道常総線「戸頭」駅より徒歩3~12分完成年月 1975年4月~1992年8月総戸数 1,187戸家賃 42,900円~74,100円(別途共益費3,600円)駐車場 5,076円

●物件のお問い合わせUR賃貸ショップ取手駅前

住所:茨城県取手市取手3-4-8 海方ビル4階

TEL:0297-77-5600 営業時間:10:00-18:00 定休日:水曜

ヴォロノイの

 結ぶ角度の

内と外

  畳替えから

   広がる宇宙

マーさん ゆうくん

空想リノベの匠① 空想

リノベの匠②

オススメです!

人気の温麺

外から室内に続く幾何学的な「角度」

備え付けのヴォロノイ畳とヴォロノイパーツ

Post Suburbia TORIDE ART PROJECT PAPERwww.toride-ap.gr.jp

006

空想団地リノベーション

Ed

it 新堀学、佐藤悠、羽原康恵 

Illustra

tion

武藤舞子

TORIDE ART PROJECT PAPER Post Suburbia No.3 201 7 Summer-Autumn

007

Ed

it 羽原康恵、中嶋希実 

Ph

oto

羽原康恵、中嶋希実

取手のひと/取手のしごと

㊧ TAKASU HOUSEの前庭がマルシェのメイン会場に変身

㊤マルシェ出店ブースの中にはワークショップも

㊤各店には店主の思いを感じられる品々が並ぶ

㊧会場を飾ったオーナメントをつくるワークショップコーナー

㊧次回12月10日のマルシェやイベントのおしらせはTAKASU HOUSEのウェブサイトをご確認ください。c takasuhouse.com

㊦TAKASU HOUSE1階は一日限りのカフェへ

㊧ひときわ会場を沸かせた「トンデ空静」のジュースづくりパフォーマンス

㊤色の変化を楽しむブルーベリーインクの絵はがきワークショップ

おいしいぞ~!

008

 昨冬、TAKASU

HOUSEにて開

催した「MARCHE×ART

ひだまり

のひマルシェ」では、「素材」を大切にす

る18組の出店者が集まった。石窯ピザや

パスタ、地粉シフォンケーキ、地元産フ

ルーツなどでつくるジャム、ビオワイン、

自然栽培の旬野菜などフードやドリンク

とともに、柿渋染やあけびなどの自然素

材を使用した小品、スワッグやクリスマ

スリースなどの品々が並ぶ。会場には一

日限定のカフェも登場し、出店者の料理

をひと口ずつ味わえるワンプレートラン

チが提供された。普段はのどかな高須に、

市内外から親子連れをはじめとした多く

の来場者が訪れ、明るい声が溢れた。

 マルシェには《半農半芸》のパートナ

ーアーティストも複数名参加した。異色

ながら盛況だったのは、舞踏家の松原東

洋が主宰する舞踏団「トンデ空静」によ

るパフォーマンスだ。ポールダンスで発

電した電気でミキサーを回してミックス

ジュースをつくるというユニークな出店

は来場者を巻き込む協奏劇となった。

 「風景と食設計室ホー」は、耕作放棄

地でのブルーベリー栽培を試みており、

品種ごとに味も形も違うブルーベリーの

特徴を楽しめるよう、セミドライのシロ

ップ漬けをカナッペにして試食提供した。

パン屋を営む方からは、商品化したらぜ

ひ使いたいという声が寄せられた。

 藍染師・染織家の岡博美は植物から絵

具をつくる研究を続けており、その成果

のひとつとしてブルーベリーインクを開

発し、絵はがきワークショップを行った。

酸性とアルカリ性で色が変わる科学的な

面白さ、体験の貴重さが好評を博した。

現在、拠点周辺では実験栽培として10種

16本のブルーベリーが育てられている。

 TAKASU

HOUSEでは施設開設

当初からマルシェの開催計画があったが

実現には至っていなかった。そうした中、

近隣で活動する女性グループ「ひだまり

のまちプロジェクト」(※)との出会いか

らこのマルシェが実現した。同団体はこ

れまでに龍ケ崎市などでマルシェを手が

けており、そのノウハウとネットワーク

をお借りし、《半農半芸》は会場構成や

装飾などのデザインスキルを活かし新し

い形の事業として始動することができた。

 会場を飾った手づくりのクリスマスオ

ーナメントや看板などは毎週集まって制

作し、当日は30名を超えるボランティア

の方々に会場案内や車の誘導などをして

いただいた。準備の過程と当日の風景に

は普段の活動とは異なる新たな広がりが

見えた。それぞれのつながりを持ち寄っ

て開いた高須での初めてのマルシェ。今

年は12月10日の開催を予定している。

取手アートプロジェクト《半農半芸》 表現と暮らしの

つながりから生まれた

初めてのマルシェ。

出会いと笑いに溢れた

一日になりました。

ひだまりのひマルシェ

取手アートプロジェクトペーパー『あしたの郊外』 第三号 2017年7月7日発行

主催・発行=特定非営利活動法人取手アートプロジェクトオフィス、取手アートプロジェクト実行委員会 協賛=UR都市機構協力=戸頭団地自治会、戸頭町会、取手井野団地自治会、高須地区区長会、UR都市機構、株式会社OpenA、関東鉄道株式会社執筆・取材・編集=羽原康恵、五十殿彩子、新堀学、佐藤悠、中嶋希実、雨貝未来 監修=熊倉純子 デザイン=森垣賢お問い合わせ=取手アートプロジェクト実施本部 〒300-1522 茨城県取手市高須2156 TAKASU HOUSE

TEL・FAX:0297-84-1874(電話は火・金13:00-17:00) WEB:http://www.toride-ap.gr.jp   @toride_ap  toride.ap

年間購読料:年2回発行500円/年(送料・手数料)。本紙を無償で設置いただける施設・店舗も募集しています。

プロジェクトに市民記者(無償・取材時交通費支給)として参加しませんか。興味のある方ならどなたでも。

本紙をご覧になっての

ご意見・ご感想などを

ぜひお聞かせください

年間購読のご案内 本紙記者募集中!

購読申込・記者申込は、 [email protected]まで

物件、人、アイデアまで暮らしの「おもしろい」が続々登場!

おしらせ取手アート不動産 torideartestate.jp

「あしたの郊外」を探る対談・コラム、WEBにて全編公開中!あしたの郊外WEB ashitanokougai.com

出店者=[フード&ドリンク]自然素材の西辻弥「素のまま」、intervallo、TLOCCO、est amor、板倉ファーム、ほぽぜきっちん、つくばブルーベリーゆうファーム、NPO法人バイオライフ、社会福祉法人身障者ポニーの会、つぼやきいも(協力:成田優之)、TAKASU CAFÉ(協力:風景と食設計室ホー) [プロダクト]Jaco、ひまたら企画、la renoncule、古書もんあや [ワークショップ]はなともり、雪の結晶をつくろう、ブルーベリーのインクで絵手紙をかこう(協力:岡博美)、高須写真館(協力:佐々木創) [パフォーマンス]舞踏団トンデ空静主催=ひだまりのまちプロジェクト、取手アートプロジェクト実行委員会 運営協力=実践女子大学生活学科有志、高須公民館、TAPサポーター※「ひだまりのまちプロジェクト」・・・・・龍ケ崎市・牛久市・取手市を中心に、住んでいる町の魅力を発見し、人と人の出会いや、活躍の場を増やすことを目的とし2015年設立。

|2016年度開催概要|

日時=2016年12月11日[日]10:00-15:00

会場=TAKASU HOUSE(茨城県取手市高須2156)

プロジェクトディレクター=岩間賢

Reportセミドライ・ブルーベリーは

クリームチーズを添えて

取手アートプロジェクト《半農半芸》

Text 五

十殿彩子、岩間賢 

Ph

oto

ひだまりのまちプロジェクト、中嶋希実

Post Suburbia TORIDE ART PROJECT PAPERwww.toride-ap.gr.jp