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本統合報告書に関するお問い合わせは、下記までご連絡ください。兼松株式会社 財務部 広報・IR室〒105-8005 東京都港区芝浦1-2-1 シーバンスN館TEL :03-5440-8000FAX:03-5440-6503

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SUSTAINED GROWTH THROUGH VALUE

CREATION

統合報告書

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 兼松グループは、1889年の創業から130年を超える長きにわたり、創業主意を企業理念とした

開拓者精神のもと、常に時代の先を読み、社会、経済の発展のため、事業創造を積み重ねて参りました。

 2019年3月期より6ヵ年の中期ビジョン「future 135」を掲げ、基盤事業における持続的成長と、

事業投資による規模拡大や付加価値獲得に向けた取組みを実施しています。安定した収益構造と

財務構造を武器に、ユニークな総合商社像を目指し、次なる成長ステージに向け着実に歩んでいます。

われらの信条

1. 伝統的開拓者精神と積極的創意工夫をもって業務にあたり、適正利潤を確保し、企業の発展を図る。

2. 会社の健全なる繁栄を通じて、企業の社会的責任を果し、従業員の福祉を増進する。

3. 組織とルールに基づいて行動するとともに、会社を愛する精神と、社内相互の人間理解を基本として、業務を遂行する。

創業主意「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」

「いま一粒の種をまく、それは我が国、日本の幸福、利益を増進する芽ばえを期待して、いまその種をまくのだ」と言う、当社創業者兼松房治郎が創業の際に宣言した主意です。「わが国の福利」とは明治時代に日本人が経済を発展させるための共通した社会的使命観でした。現在では、一般公共の利益、社会貢献、国際社会への寄与、人類への貢献などに通じる考え方であり当社の企業活動の原点となっています。この主意を受け継ぎ、基本理念にまとめたものが、1967年兼松江商として合併を機に制定された「われらの信条」です。

1.企業活動の原点 我々は、創業主意のもと、社会的に有用な商品・サービスを提供することを通じて、様々なステークホルダーに報いる企業活動を行い、持続可能な社会の実現に努める。

2.公正な取引 我々は、企業活動にあたり、内外の法令順守はもとより、国際的なルールや慣行、社内規定に則り、社会的良識をもって行動する。

3.情報の管理・開示 我々は、個人・顧客情報や知的財産の保護に向けて適切な管理を実施するとともに、社会との相互信頼を確立し、高い透明性を保持するため、情報を適時・適切に開示する。

4.人権の尊重 我々は、人権を尊重し、差別的な取扱いをしない。また、従業員のキャリア育成や能力開発を積極的に支援するとともに、その多様性・人格・個性を尊重し、活力のある企業風土を醸成する。

5.地球環境への配慮 我々は、地球環境の健全な維持に十分配慮した企業活動を行い、持続可能な発展を目指す。

6.社会貢献 我々は、よき市民として社会的責任の重要性を自覚し、積極的な社会貢献活動を行う。また、従業員による地域の発展や快適で安全な生活に資する活動を支援する。

「兼松行動基準」

企業理念

創業からの開拓者精神で、社会の発展に向けた価値創造を目指します。

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目 次

将来見通しに関する注意事項本統合報告書には、兼松グループの今後の計画や戦略など、将来見通しに関する記述が掲載されています。これらの将来見通しにはリスクや不確実性が内在しており、実際には、当社グループの事業領域を取り巻く経済環境や市場環境、為替相場など、様々な要因により記述とは大きく異なる結果が生じる可能性があります。

編集方針兼松グループでは、Value Reporting Foundation(IIRCとSASBが合併した団体)による「国際統合報告フレームワーク」、経済産業省による「価値協創ガイダンス」、および国際規格ISO26000を参照し、統合思考で捉えた内容として本誌を作成しています。当社グループへのご理解をより深めることができましたら幸いです。

兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

2 兼松グループの源流

4 兼松グループのあゆみ

6 価値創造プロセス

8 社長メッセージ

14 財務担当役員メッセージ

18 特集:中期ビジョン「future 135」

19 前半3ヵ年の振り返り

20 後半3ヵ年の方針

21 兼松グループのDX推進状況

22 サステナビリティ

35 コーポレート・ガバナンス

40 社外取締役インタビュー

42 取締役、監査役および執行役員

58 財務・ESGハイライト

60 財政状態および経営成績の分析

62 事業等のリスク

64 財務諸表

68 主要連結子会社および関連会社

69 グローバルネットワーク

70 国内・海外店一覧

72 会社情報

44 部門別概況

46 電子・デバイス

48 食品

50 畜産

52 食糧

54 鉄鋼・素材・プラント

56 車両・航空

兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

1兼松株式会社 統合報告書 2021

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兼松創業に至るまで  人生50年といわれた時代に、44歳で豪州との貿易に大きな一歩を踏み出した兼松房治郎の生き方は、日本の未来を見据えた挑戦の歴史でした。 1845年、大阪で生まれた房治郎は、幕末の混乱の中で新時代の到来を予感し、武士ではなく商人として身を立てることを決意しました。明治初期、外国との貿易が急速に盛んになっていた1873年、28歳で三井組銀行部(現 三井住友銀行)大阪分店に入店。誠実かつ積極的な努力により、当時の銀行が扱っていなかった民間資金の取扱いを導入し、多くの成果と信用を勝ち取っていきました。 その後、三井を退職し、1884年には大阪を中心とした海運業界の活性化を図るべく、大阪商船(現商船三井)の創設に参加します。さらに1887年には、大阪日報(翌年、大阪毎日新聞に改題)を買収しました。政治権力に偏っていた当時の新聞に新風を吹き込み、産業発展のためのビジネス新聞を発行。物価表や民間業者の意見を紹介するなど、新しい試みを取り入れていきました。  このように、房治郎の生き方には、開拓者精神や日本の産業発展のために尽くすという一貫した「志」が貫かれていました。 日本の貿易の9割近くが外国人商館の手に委ねられていた当時、房治郎は「国力の振興は貿易によるしかなく、貿易の商権は我々日本人の手中に握らねばならない」という理想と希望に燃え、その目は畜産や鉱山などの宝庫であり世界一の羊毛産出国である豪州に向けられました。1887年、初めてシドニーを訪れ現地を視察し、1889年に神戸で「豪州貿易兼松房治郎商店」(現 兼松)を創業。翌年にはシドニー支店を開設し、牛脂・牛皮や羊毛を初めて日本へ積み出し、日豪直貿易の第一歩を踏み出しました。

兼松 房治郎 (かねまつ ふさじろう:1845~1913)

 1889年(明治22年)に兼松房治郎が創業してから今年で132年となる兼松は、

豪州からの羊毛輸入を祖業としてスタートし、時代の流れとともに繊維、鉄鋼、機械、

食料、エネルギー、電子などの分野に事業を拡大し、総合商社として発展してきました。

長い歴史の中で国際社会や経済環境の変化に柔軟に対応し、幾多の困難も乗り越え、

形を変えながら現在に至っていますが、創業者が大切にしていた開拓者精神や、国際

社会のために貢献するという「志」は、今も兼松グループに受け継がれています。

2 兼松株式会社 統合報告書 2021

兼松グループの源流

創業者 兼松房治郎の「志」は、               兼松のDNAとして今も受け継がれています。

房治郎による「設立主意書」

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「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」 1889年の創業主意であり、当社の企業理念にもなっています。「わが国の経済を発展させ豊かにし、人々を幸福にするために一粒の種をまく(=事業をおこす)」という意味で、現代社会においては、日本のみならず世界中の国や地域、そこで暮らす人々を豊かで幸せにするために行動するという意思です。持続可能な開発目標(SDGs)の理念とも親和性があり、また、企業の事業活動を通じて社会的な課題を解決し、社会と共有できる価値を創造するというCSV(Creating Shared Value)の概念にも通じています。

「儲けは商売のカスである」 利益追求よりも仕事の公明性や公益性を重視し、同時に利益が自然に残るような商売をするべきであり、無理に利益を獲得するような商売を戒めているとも解釈される言葉です。「儲かりさえすれば何をしてもよい、という考えをおこすな」という教えは、現在のコンプライアンスやコーポレート・ガバナンスにも繋がる考えであり、商売・企業活動を持続的に行っていくにあたっての根底にあり続けるものです。

「勤労貸方勘定主義」 報酬に気を取られて仕事への情熱を損なうならば勤労は無意味になる、と報酬にこだわらずに仕事に打ち込むことが大切だと説いたものです。房治郎の基本的精神は単に金儲けよりも、「仕事を面白がる」「仕事そのものを楽しむ」ことにありました。努力を惜しまず楽しみながら仕事をすることで、やがて利益が付随されるだろうということは利他の精神にも通ずるもので、SDGsの発想とも繋がっています。

「お客大明神」 こうした顧客第一主義は大阪商人の伝統的かつ基本的な態度でもありましたが、当時の退廃的な居留地貿易の悪しき商慣習もあり、房治郎は商品売買の仲介業者として、売り手にも買い手にも誠実な態度で接するようにあらためて主張していました。「得意先には敬意と誠を以って当たるべし、得意先あっての兼松商店なり」と口癖のように言い、後人を指導していたといわれています。「誠」=誠実さは、現在の兼松グループの人材にも受け継がれています。

兼松房治郎語録

3

兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021

創業者 兼松房治郎の「志」は、               兼松のDNAとして今も受け継がれています。

創業時の神戸本店 1891年(明治24年)当時のシドニー支店

房治郎の手による豪州羊毛積出しインボイス第1号

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1889兼松房治郎により神戸で「豪州貿易兼松房治郎商店」創業

1890シドニー支店開設豪州羊毛直輸入開始

1918「株式会社兼松商店」に改組

1935兼松羊毛研究所(現カネヨウ株式会社)創業

1936ニューヨーク、シアトルに店舗を開設

1943「兼松株式会社」に商号を変更

1951ニューヨークに現地法人を設立(日本商社の戦後海外店舗開設第1号)

1985兼松エアロスペース株式会社設立

車両・航空

1967江商と合併し、「兼松江商株式会社」発足

1973東京証券取引所市場第一部に上場

1989創業100周年

1990「兼松株式会社」に商号変更

鉄鋼・素材・プラント

1959兼松油槽株式会社設立

1967株式会社ファインクロダサービスの経営権を取得し、兼松江商工作機械販売株式会社(現 株式会社兼松ケージーケイ)に改称

1970兼松建材株式会社(現 兼松トレーディング株式会社)設立

1974兼松化成品株式会社(現 兼松ケミカル株式会社)設立

1960兼松石油瓦斯株式会社(現 兼松ペトロ株式会社)設立

1985Steel Service Oilfield Tubular, Inc.と取引開始

食料(食品/畜産/食糧)

1954兼松肥糧株式会社(現 兼松アグリテック株式会社)設立

1977株式会社カネショク(現 兼松食品株式会社)設立

電子・デバイス

1968兼松電子サービス株式会社(現 兼松エレクトロニクス株式会社)設立

1972兼松セミコンダクター株式会社(現 兼松フューチャーテックソリューションズ株式会社)設立

1974株式会社兼松コンピューターシステム(現 兼松コミュニケーションズ株式会社)設立

1978兼松金属販売株式会社(現 兼松アドバンスド・マテリアルズ株式会社)設立

1982日本オフィス・システム株式会社設立

Pacific Western Systems Japan(現 兼松PWS株式会社)設立

社会課題解決

豪州以外にも海外との取引を拡大、海外店舗の整備も進め、日本の貿易発展の礎を築く。

高度経済成長に合わせ、日本企業と海外企業との輸出入、三国間取引を積極展開。発展途上国のインフラ整備等も推進。

商社としての機能の多角化、地域拡大により大きく発展。豪州貿易のパイオニアと称される創業者のもと、大恐慌を乗り越え礎を築く。さらに米国ほか海外へ進出。

1889-1950年代

創成期1960-1980年代

成長期

4 兼松株式会社 統合報告書 2021

兼松グループのあゆみ

時代の変化とともに自らを革新させながら、兼松なら     ではの価値を創造し、提供し続けて参ります。

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(百万円)

(年3月期)

30,000

25,000

20,000

15,000

10,000

5,000

0

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021

1991兼松エレクトロニクス株式会社が東京証券取引所市場第一部に上場

1993株式会社兼松コンピューターシステム(現 兼松コミュニケーションズ株式会社)が携帯電話機器の販売ビジネスに参入

1995兼松石油販売株式会社(現 兼松ペトロ株式会社)設立

1999大規模な事業の選択と集中の実施

2005兼松エレクトロニクス株式会社を子会社化

新東亜交易株式会社株式の過半数を取得(2010年に100%取得)

2012北米の鋼管加工事業会社Benoit Machine LLC(現 Benoit Premium Treading, LLC:ベンワ社)を買収

2013復配

経常利益

(注)2017年3月期より IFRS税引前利益を記載しています。

2014兼松日産農林株式会社(現 兼松サステック株式会社)株式の過半数を取得

2016株式会社ダイヤモンドテレコムを吸収合併し、モバイル事業の拡大を図る

2019創業130周年

2018年4月~2024年3月

• 基盤となる事業における持続的成長と、事業投資による規模拡大• 技術革新への対応 • 持続的成長を実現するための経営インフラ確立

「future 135」

(注)期間は当該計画およびビジョンの発表時に設定したものです。

• 創業125周年を迎えさらなる未来へ飛躍すべく、攻めの経営で、揺るぎない成長路線を確立する。• 事業創造集団としてのプロフェッショナルな組織・人材を一層強化し、お取引先との共生・発展を図る。• 内外のステークホルダーの期待に応えるべく、継続的な企業価値の向上を目指す。

~未来へ繋ぐ、新たなステージへの飛躍~2013年4月~2016年3月

2014年3月期中間配当より復配

• 兼松グループの創業130周年に向けて目指すべき姿として、商社の原点、兼松の基本理念に立ち返り、「健全な財務体質の維持」および、これまでのトレーディングを基盤としたお取引先との共生・発展による「収益基盤の拡大」を経営目標とする。

• 経営基盤の充実に取り組んだうえで、強みとする事業領域の深化、事業創造としての新規投資などへの「チャレンジ」を通じて、企業価値向上を目指す。

「VISION-130」2014年4月~2019年3月

•連結当期利益 163億円•ROE 15.1%•自己資本 1,160億円•ネットDER 0.5倍

2018年3月期目標を1年前倒しで概ね達成

急速な情報社会の到来・IT化への対応。モバイルビジネスへの参入や ICT(情報通信技術)の強化などデジタル化時代に即した事業展開を推進。

食資源や環境関連などサステナビリティを意識した商品・サービスの開発に注力。AI・IoTなど技術革新への対応も視野に、付加価値の高いビジネスモデルの提案にも取り組む。

バブル経済の拡大と崩壊、金融危機を受け、経営体質の強化を目的に大胆な事業の選択と集中を実施。財務基盤の改善・強化を図る。

事業の選択と集中を経て経営基盤が充実。専門性の高い分野でのM&Aや、事業拡大を実施し、攻めの経営へシフト。

1990-2000年代

改革期1960-1980年代

成長期2010年-

未来へのあゆみ

5

兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021

時代の変化とともに自らを革新させながら、兼松なら     ではの価値を創造し、提供し続けて参ります。

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企業理念:「創業主意」「われらの信条」

コーポレート・ガバナンス

外部環境

6 兼松株式会社 統合報告書 2021

価値創造プロセス

5つの重要課題(マテリアリティ)の解決に向け、兼松 グループの資本を企業活動に活かすことで、社会に新たな価値を提供し、企業価値向上を図って いきます。

マテリアリティ

持続可能なサプライチェーンの構築

脱炭素社会に向けた取組み

地域社会との共生

多様な働き方を実現する環境づくり

ガバナンスの強化&

コンプライアンスの徹底

国際情勢変動

気候変動

技術革新

食料需給バランスの変化

生活スタイルの変化

法改正・規制緩和・規制強化

兼松グループの資本

組織資本

• 専門性を有する事業分野• 専門的視点から営業を サポートする職能機能

• 国内・海外拠点• 専門性の高いグループ会社

人的・知的資本

• 幅広い事業分野• 業界・商品における専門性や 技術力

• 蓄積されたノウハウ• グローバル人材/多様性に 富んだ人材

• 事業創造力/事業提案力

財務資本

• 健全な財務体質 (ネットDER1.0倍未満)• 安定的な収益基盤• 年間営業キャッシュ・フロー 平均約200億円

社会・関係資本

• 優良なビジネスパートナーや多くのお取引先

• 地域社会への貢献• 約130年の歴史から培われた信頼

自然資本

• 生物多様性 (動物、植物、菌類など)• 太陽光、大気、森林、土壌• 地熱・風力などの再生可能 エネルギー

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企業理念:「創業主意」「われらの信条」

コーポレート・ガバナンス

企業活動

電子・デバイス半導体装置、電子部品・材料、電子機器、半導体・デバイス、ICTソリューション、モバイル、CCTVシステム、データ

食料(食品/畜産/食糧)食品原料(農産・水産・飲料等)、調理加工食品、畜産、穀物・食品大豆・油糧種子、飼料、農産加工品

鉄鋼・素材・プラント鉄鋼、鋼管、化学品、エネルギー、プラント・船舶、工作機械・産業機械

車両・航空車両・車載部品、航空宇宙

強みを持つ4つの事業セグメント

リスクと機会の考察

経営基盤の充実

地域社会・環境への貢献

中期ビジョン「future 135」重点施策

•基盤となる事業における持続的成長と、事業投資による規模拡大

•技術革新への対応•持続的成長を実現するための経営インフラ確立

7

兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021

5つの重要課題(マテリアリティ)の解決に向け、兼松 グループの資本を企業活動に活かすことで、社会に新たな価値を提供し、企業価値向上を図って いきます。

p1ご参照

環境・人権に配慮し、多様化する社会に働きかけ、安定的で持続可能な調達・供給・物流・サービスをパートナーやお客さまと共に実現します。

温室効果ガスの排出量ネットゼロを目標に、クリーン燃料・再生可能エネルギー事業を推進し、気候変動の緩和になお一層取り組みます。

グローバルな事業活動を通じて、各国・各地域の暮らしを支え、社会基盤の充実を図り、地域社会の持続的な成長・発展に寄与します。

それぞれの個性を活かし、能力を発揮できる多様な働き方を実現する職場環境を整備します。また研修の充実を図り、ビジネスを創造・拡大できる経営者を育成します。

事故・不正を未然に防止する体制・監督機能を堅持し、ステークホルダーへの透明性の高い情報開示を通じて、持続的な成長を図ります。

社会に還元する価値(アウトカム)

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8 兼松株式会社 統合報告書 2021

社長メッセージ

8 兼松株式会社 統合報告書 2021

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主な経歴1983年兼松株式会社入社。電子機器部長を経て2012年6月取締役就任、電子・IT部門から、組織改編を経て車両・航空部門担当に。2018年取締役専務執行役員、車両・航空部門長に加え、先進技術・事業連携を担当した。米国での駐在経験は10年を超える。

価値の提供から、価値の創造へ、商社にとっての新たな時代を見据えて

代表取締役社長

 当社グループは創業以来、新しい市場やビジネスを

開拓する起業家精神とともに、社会的に有用な商品・

サービスを提供するという、今日のSDGsにも繋がる

創業主意を受け継ぎ、実践しています。これは後世に伝

えるべき普遍的な価値だと捉えており、常に創業主意に

原点回帰しながら経営判断を行うことで、当社グループ

のアイデンティティが明確になると考えています。

 一方、時代の変化により商社の役割が変化している

ことも認識しています。従来商社に求められてきたの

は、情報、物流、金融、リスク管理といった機能でした

が、昨今はメーカーをはじめとする他業種がこれらの

業務に参入するようになり、我々はあらためて、自身の

存在意義や価値を深く追求する必要に迫られました。

社会的使命は創業主意への原点回帰

2021年6月に代表取締役社長に就任いたしました。2024年3月期を最終年度とする6ヵ年の中期ビジョン「future 135」の後半の目標達成に向け、当社グループの創業者である兼松房治郎が宣言した創業主意に立ち返り、企業価値向上に努めて参ります。

 まず、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け

た方々にお見舞いを申し上げるとともに、社会基盤維

持のために尽力されている方々に感謝の意を表します。

 新型コロナウイルス感染症拡大のパンデミックの

終息が見えない中、気候変動をはじめとする脱炭素社

会へ向けた活動や、デジタルトランスフォーメーショ

ン(DX)による改革の波も押し寄せ、世界全体が大き

く動き始めていることを実感しています。このような

社会が劇的に変化する中での社長就任となりました。

私がこれまで国内外の営業畑を長く歩んできたこと

を評価いただいたとするならば、私に託された使命と

して、人と人の繋がり、行動、チャレンジといったキー

ワードを常に忘れずに経営に尽力して参ります。

託された想いに応える経営を

9

兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021 9兼松株式会社 統合報告書 2021

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環境変化とこれからの商社の可能性

失敗とチャレンジを恐れない商社に これからの商社は、トレーディングに軸足を置きなが

ら、投資だけではなく、新たな事業創造に向け、サプライ

チェーンや販売網の中に深く切り込んでいく専門性の高

いビジネスパートナーとしての存在感を示さなければな

らないと思っています。ビジネスをゼロからつくり上げ

るというのは、非常に楽しい経験です。失敗も多いです

が、成功したとき、チームで目標を達成したときは筆舌に

尽くしがたい満足感があります。こうした経験を社員に

少しでも多く若い頃から経験してもらいたいと思ってい

ます。そのためには、積極的に新しいことにチャレンジす

るという気風を育まなければなりません。成長企業を標

榜する当社グループとしては、グループ全体にそういっ

たカルチャーを根付かせることを目的に、環境や体制の

整備・改善に継続的に取り組んでいく必要があると考え

ています。

目的に向けチームを一体化するリーダーシップ 入社以来、米国駐在を含め、電子・デバイス部門、車両・

航空部門の営業での経験は私にとってかけがえのない財

産です。商社の仕事はまず動くことが大事だと思ってい

ます。PDCAの中ではD(Do)が最も重要で、人の話を聞

いて、特有な嗅覚で時代を先取りしながら新しい仕事を

開拓していく、それもたくさんの人を巻き込みながら。多

くの取引先やお客さま、社内外の人々とひとつのチーム

を結成している意識です。当社は取引先のオートバイの

レーシングチームに対する支援を30年来続けています。

プライベートのチームですので、資金力に勝るオートバ

イメーカーが直接運営するワークスチームとは力の差が

歴然としていましたが、ワークスチームに勝つという一

念で、2006年に鈴鹿8時間耐久ロードレースで日本一に

なり、2018年には世界耐久選手権で日本のチームとして

初めて年間チャンピオンに輝き、世界一のタイトルも獲

得しました。この間、チームは「勝つ」という目標に向かっ

て一丸となって全力で取り組み、また全力で取り組んで

いる姿を見てたくさんの方が応援するようになっていく

という過程を見てきました。中でも、チームを鼓舞し、ま

とめあげる監督のリーダーシップは感動的で、リーダー

とは何かを考えるときの指標となっています。

商社にとって今こそ千載一遇のチャンス この6月までは車両・航空部門長として業務執行を務

めていたので、まさに今は、荒海の中を羅針盤もなく航海

に出ているような感覚です。しかしながら、事業創造を担

う商社にとっては、守りに入らず、社会変革の航路を自ら

が切り拓くつもりで経営に挑むことが必要であり、この

時代こそが企業価値を大きく向上させることができる千

載一遇のチャンスであると捉え、機動的な経営を実施し

ていこうと決意いたしました。

 この環境下、最も迅速に、また広範囲にわたり確実に手

を打たなければならないのが、グループを挙げたDX推進

です。当社グループの中核のひとつである ICTソリュー

ション事業は、現在の社会環境の変化に無くてはならな

いデジタル・ビジネスであり、この強みを武器にグループ

の隅々にいたるまでトランスフォーメーションを実践し

ていきます。

部門の垣根を壊し新たな価値創造をするとき Amazon社やUber社などが象徴的ですが、業界秩序や

商慣習にとらわれず斬新なビジネスモデルやテクノロジー

10 兼松株式会社 統合報告書 2021

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中期ビジョン「future 135」前半3ヵ年の総括

 2024年3月期を最終年度とする6ヵ年の中期ビジョ

ン「future 135」では、将来に向けた更なる成長軌道を念

頭に「規模の拡大」「付加価値の獲得」「質の向上」を積

極的に推進し、伝統的ビジネスの進化と新規事業の創出

により、持続可能な世界経済成長の実現と社会課題の解

決に貢献することを基本方針として推進して参りました。

前半の3ヵ年については、初年度は計画が順調に進み、業

績についても予想を上回る結果を出すことができました

が、2年目以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を

受けることとなりました。3年目となる2021年3月期の

業績は、主に新型コロナウイルス感染症拡大の影響によ

り減収減益となりましたが、下半期の営業活動に係る利

益がパンデミック前の水準まで戻っており、電子・デバイ

ス、食料を中心とした収益基盤の底堅さを実感する結果

にもなりました。

 重要な経営課題として取り組んできた人材戦略とDX

推進は、将来への布石を打つことができるところまで進ん

だと評価しています。新規ビジネスの構築に向けた重要な

事業投資やM&Aに3年間で約230億円を投じてきまし

たが、事業単独や部門、グループ会社個社で実施した案件

が多いと感じます。シナジーをグループで最大化するよう

な効果的な投資を実施することが、後半3ヵ年の課題です。

 前半3ヵ年で特筆すべきは、成長の萌芽を発掘する活動

です。「先進技術・事業連携」チームを組成し、部門ごとで

はなくグループ全体として情報やネットワークの共有を図

る仕組みを整えました。チームのメンバーは、企画部が中

心となり、IT企画部と各営業部門、最近ではグループ会社

の兼松エレクトロニクス株式会社と兼松コミュニケーショ

ンズ株式会社も加わり日々議論をしています。きっかけは、

米国シリコンバレーを拠点にスタートアップ企業との連携

を深めて新事業を創出しているグループ会社の

Kanematsu Ventures Inc.で、いわば種まきの事業を手

掛けてきたことです。それぞれは大きな案件ではありませ

んが、単に資金を投入するというのではなく、商社の持つ

ネットワークやノウハウを、スタートアップ企業の機能を

補完する役割として活用するスキームを構築し、企業を育

成していく。シリコンバレーのベンチャーキャピタルとも

連携して事業化に取り組んでいます。現在は複数の部門へ

と案件の領域も拡大しており、部門間やグループ会社との

連携を促すことも可能な環境が整いました。当社グループ

のすべての部門で、これらの先進技術や新たなビジネスに

触れる機会を設けるとともに、オープンイノベーションな

どを通じ、社内外との強固な関係性をドライバーとして将

来の成長の芽を育成していきます。

で、従来の業界を破壊するような事態に加え、すべての業界

がDX推進を急務としています。自動車はすでに半導体の

塊であり、IT業界の代表的企業が自動車産業に参入しよう

という流れもあり、業界の垣根がなくなってきた状況です。

 一方、我々商社は幅広い領域でのビジネス展開を武器

とし、業界を超えて、ビジネスとビジネスを巧みに組み合

わせることで高度な付加価値を実現する事業創造に挑ん

でいます。それには、部門単位や兼松単体ではなく、より

大きな枠組みで事業全体を把握し、グループ会社と連携

しオール兼松で新規事業構築を加速させることが重要だ

と考えています。

 こうした中で、DX推進は当社グループには大きな飛躍

のチャンスです。アフターコロナにおいてもリモートワー

クを発端とした移動の変化は確実に残っていくと思われ

ます。商社の仕事は人と人との繋がりで成り立っている

ことは基本です。効率化の観点から、リモートでの業務が

成立するならば海外拠点の整理なども検討してはという

意見もありましたが、検討や調査を重ねた結果、海外の生

きた情報を得られる拠点は商社ビジネスの要であること

をあらためて認識し、拠点、人材、情報を今以上に活用し

ていくべきだと考えました。それには、当社自体のDXを

伴う変革が必須となります。社内の ITインフラについて

はこれまでの3年間でかなり進みましたので、今後はそれ

をグループ会社へと広げていきます。さらに、DXを推進

し、技術革新をすることで、既存のビジネスモデルをさら

に付加価値のあるものに昇華させ、競争力を上げていく

ことが重要だと思います。コロナ禍の1年はそれができ

ていない部分もあったと感じています。

11

兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

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財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021

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「future 135」後半3ヵ年の重点課題

SDGs達成と積極的なDX推進 2021年3月期が終わりを迎えるにあたって、2021年

5月に、後半3ヵ年に向けた見直しを発表しました。市場

環境の変化はあったものの基本方針に大きな変更はなく、

重点施策にSDGs達成への施策およびDX推進についての

取組みを加えました。新型コロナウイルス感染症拡大によ

る事業投資やそれに伴う収益成長の一時的な鈍化を考慮

し、定量目標については修正をいたしました。p18-21の

特集で詳しくご説明しておりますのでご覧ください。

 後半3ヵ年はグループを挙げたDX推進や、部門の垣根

を越えシナジーを創出するグループ一体経営により、付

加価値の拡大と事業創造に重点を置くべきだと考えてい

ます。特に業務効率化に向けたデジタル化をさらに進展

させるとともに、従来のビジネスにデジタル技術を融合

させることで新たな価値を生み出す事業を創造し、収益

への貢献を高めていきたいと考えています。

 また、サステナブルな社会に向けて、SDGsの達成に寄

与する環境・社会・安全をテーマとする事業分野での投資

についても推進していきます。事業とSDGsとの関連性

や目的意識を明確にするため、案件申請にはSDGsのどの

ゴールあるいはターゲットとそのビジネスが紐づいてい

るか明記するようにしており、グループ全体でSDGsや

TCFD提言に対する意識を高めています。

イノベーション投資のこれから 「future 135」の成長イメージの軸であるイノベーショ

ン投資については、社会のイノベーションとともに新た

なビジネスを構築すべく、AIや IoTといった先進技術を

活用し、部門を超えた連携を実現しながら新事業の創出

に取り組んでいます。前半3ヵ年では、データ流通・利活

用の事業化に向け、データ取引市場の開設・運営を行う

サービス体制を構築し、車両運行データとAIを駆使して

脱炭素化や長期的には車載テレマティクス市場へと続く

技術を持つ企業をグループ化しました。今後は幅広い顧

客基盤を横断的に活かして、グループ全体でデータ流通・

利活用事業を推進する計画です。さらに、これまで当社グ

ループが手掛けてこなかった物流分野についても、2021

年4月、空飛ぶクルマ※向けインフラ構築分野およびド

ローン物流市場での事業提携を果たしました。

働き甲斐にも繋がる人材育成の推進 商社にとって人材戦略は、最も重要な経営要素のひと

つです。2019年に人材育成の要として、入社から10年

目程度までの社員に向けた研修制度「兼松ユニバーシ

ティ」を開設しました。当社グループ全社員が対象となっ

ており、商社パーソンとしての人格形成、各国の文化や言

語を学ぶこと、これらに加えてビジネスプランに必要な

オペレーション、インベストメントを組み合わせ、基礎知

識から実践まで幅広い知識を習得することができ、受講

者は非常に意欲的に取り組んでいます。それ以外にもビ

ジネスプラン策定研修や経営者育成研修など幅広い層に

向けた制度を充実させてきました。一方で、グローバルに

活躍できる人材の育成は座学だけでは難しい。ビジネス

の現場に若い人たちをどんどん投入して、とにかく経験

させるというのが大事なことなのです。そのため、入社か

ら5年目程度までを対象とした6ヵ月間の海外実習制度

を設けています。こうした育成の効果がそろそろ出てく

ることを期待しています。これからの時代は、個人のアイ

デアが事業に結び付く可能性を否定せず、意欲的な社員

からの提言を大いに吸い上げ、経営者との垣根を無くし

ていくことも必要だと考えています。人材戦略は単に学

習機会を与えるだけではありません。働き甲斐に繋がる

社員の意識改革の一端も担っているのです。

コーポレート・ガバナンスの実効性を拡大 コーポレート・ガバナンスについては、「future 135」の

最初の3年間で取締役会を機動的かつ効率的な体制に整

備し、経営の監督と執行の分離を進めてきました。当社グ

ループの企業価値向上に資する経験や知識を備えた社外

取締役を迎え、取締役会では、専門性の高い貴重な意見を

いただいています。取締役会の実効性評価についても外部

機関の評価・分析により機能の更なる向上と議論の活性化

が図られるよう取り組んでいます。今後は、中長期の経営

戦略の検討などアジェンダを広く深くし、また、取締役会

の機能発揮と多様性をより高めていくなど、一層の実効性

拡大を図って参ります。

※経済産業省と国土交通省が中心となり官民一体となって、日本における空飛ぶクルマの実現に向けて2023年サービス開始を目指しロードマップを協議中。

12 兼松株式会社 統合報告書 2021

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ステークホルダーの皆さまへ

 新型コロナウイルス感染症による不透明感は残るもの

の、ワクチン接種の進捗に応じて経済活動の正常化が進

むものと思われます。こうした仮定を踏まえ2022年3月

期については、連結業績は、収益を前期比7.8%増の

7,000億円、営業活動に係る利益は前期比18.5%増の

280億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は12.7%

増の150億円を計画しています。

 配当については、株主の皆さまへの利益還元を経営の

最重要課題と認識しており、リスクアセット倍率や収益

構造が引き続き安定的であることから、今後も株主の皆

さまに継続的かつ安定的な株主還元をさせていただきま

す。2022年3月期の年間配当は1株当たり60円(配当性

向33.4%)を維持していく計画です。

 当社の創業主意は、SDGsの考え方にも通じ、ステーク

ホルダーと利益をわかちあうCSV(Creating Shared

Value)の考え方にも繋がり、ニューノーマルといわれる

不確実性の高まる時代にとって頼りになる羅針盤である

とあらためて感じています。これからもこの普遍的な考

え方に常に回帰し、持続的な企業価値の向上、社会貢献に

邁進して参ります。

13

兼松のあゆみと強み

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14 兼松株式会社 統合報告書 2021

財務担当役員メッセージ

200

150

100

50

0

(円)200

150

100

50

0

(億円)

2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期(計画)

年間配当(右軸)当期利益(左軸) 配当性向

163 166

144 133

150

24.8%

30.3%

34.8%

37.6%

33.4%

48

60 60 60 60

(図1) 当期利益と配当性向

「future 135」前半の振り返り

 2019年3月期~2024年3月期を対象とする6ヵ年の中期ビジョン「future 135」は、定量的には、創業135周年にあたる最終年度の当期利益を250億円に伸長する経営計画でした。 これを営業活動に係る利益(以下、営業利益)ベースに置き直すと、スタート時262億円の営業利益を約450億円まで拡大する成長イメージであり、大きくは、基盤事業でその半分、新規事業投資で残り半分を賄おうとするものでした。 「future 135」の初年度は、営業利益303億円、+42億円の増益と、基盤事業で見込んだ成長分の約50%程度を実現する良好なスタートとなりました。ところが2年目後半からの新型コロナウイルス感染症拡大が、基盤事業全般に加えて、新規投資の進捗にも大きく影響し、業界的にバリュエーションが見通せなくなった例、あるいはバリュエーションが低くなり売り手側が見送った例などが、大型案件を中心に複数発生しました。結果として、前半3ヵ年は、強みと知見のある分野で収益基盤を拡大するための投資や、商社機能付加価値を獲得するための投資、先進技術を軸としたイノベーション投資を実行しましたが、投資キャッシュ・フローとしては約230億円、うち、事業投資としては約150億円と、6年間で想定した規模の3分の1程度の実績となりました。

 一方で、株主還元策としては、親会社の株主に帰属する当期利益(以下、当期利益)の落ち込みは新型コロナウイルスによる一過性と整理し、1株当たり配当金額を維持した結果、連結配当性向は平均して30%半ばと、「future 135」で目標とした25~30%を上回る形で推移しました。

「future 135」後半で目指すところ

 「future 135」は6ヵ年の中期ビジョンであることから、策定当初より折り返しの時点で見直す予定としておりましたが、以上のとおり、新型コロナウイルスは、基盤事業の業績に影響しただけでなく、大型投資案件にも遅れや中止といった影響を及ぼしましたので、このタイミングで、後半3ヵ年について現実的に精査しました。 今2022年3月期(以下、今期)については、前下期からの回復傾向が確認できたこともあり、概ね、コロナ前(2020年3月期)の水準に回復する見通しです。 3年後、最終年度の当期利益については、基盤事業でのオーガニックの成長と、事業投資による成長が半々のイメージであることは前半と変わらないものの、事業投資については、前半3ヵ年の状況も踏まえて、現段階で見えている投資案件に絞り、その確認を踏まえて、定量目標の当期利益を当初目標の250億円から200億円に引き下げ、一方で、株主還元については配当性向(総還元性向)30~35%と上方修正いたしました。 今後3年間を財務的に俯瞰すると、まず、流動性の観点では、基盤事業が巡航速度に回復してくることから、平均して年間150億~200億円程度の営業キャッシュ・フローが創出され、これが株主還元と現段階で見えている投資案件の原資となります。加えて、グロスDERも財務規律として想

執行役員財務、主計、営業経理 担当桝谷 修司 

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15

兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021

250

200

150

100

125.6

187.8

171.1 159.4

212.7

162.3

126.2

114.2

132.9

114.7

2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期

TOPIX(配当込み)兼松

(%)

(図2) ROE・ROIC・WACC推移 (図3) 株主総利回り [TSR]

定する1倍を2021年3月期(以下、前期)に下回ってきたことから、追加の資金調達余力も十分にあり、大型投資の実行により資金調達を増やしたとしても、健全な財務バランスを維持できる見込みです。 効率性の観点では、前期の連結当期利益133億円から計算される投下資本利益率(ROIC)は4.9%、加重平均資本コスト(WACC)は、リスクフリーレートとβの微増により3%台半ばとわずかに上昇しましたが、超過リターン(EVAスプレッド)約1.5%程度を創出した結果となりました。 しかし、当期利益の減少によりROICは2019年3月期の6.4%(当期利益166億円)、2020年3月期の5.3%(当期利益144億円)と、悪化傾向にあり、一義的には分子としての当期利益の増益基調への回復が、財務効率性の観点でも最重要課題と位置付けられるものと認識しています。 上記観点で、2020年3月期よりグループ内資金効率指標としてROICを本格導入し、経営管理や各種審議に使用するとともに、セグメント開示も進め、連結グループ全体で資本コストを意識した経営の一層の進展を図ってきましたが、今後は、各連結セグメント内でのスクラップ&ビルドも進めながら、ROICの向上と超過リターンの創出、それによるROEの向上を目指していく必要性も認識しています。

働き方改革への対応

 前期はコロナ禍による出社制限などもあり、従来紙ベースを前提に構築されていた業務フローの課題が浮き彫りとなったため、リモートワークにも対応できるように見直しを図っています。 具体的には、年間1万件、14万枚にも及ぶ稟議書について電子決裁システム「HI-MAWARI」を開発・導入するこ

とにより、申請・承認フローの完全なペーパーレス化・効率化を実現しました。また、年間1万6千件、9万6千枚にも及ぶ経費精算について、コンカー社のConcur Expenseシステム等を導入することにより同様に完全なペーパーレス化・省力化を実現しました。加えて、これまで紙ベースで確認していた物流に関する受渡日報を、統制レベルを維持したまま電子手続きに完全移行しました。これにより、業務フローの効率化と年間6万~7万枚程度のペーパーレス効果が期待されます。 今期も引き続き、働き方改革への対応を進めていきます。

株価について

 当社の5年株主総利回り(TSR)は、2021年3月末で213%と、配当込みTOPIXの162%を上回っています(図3)。一方で直近(2021年6月中旬)のPERは8倍前後と低水準にとどまり、PBRも0.8倍と1倍を切っています。 昨今、脱炭素の流れが世界中で高まっておりますが、当社グループは過去にすべての資源権益を売却し、その後も発電や石炭等の環境負荷の高いビジネスを行ってきていないことから、低水準の排出量となっており、近い将来のカーボンニュートラル達成を目指していきます。地球に優しい企業グループであることもアピールすることで、当社の適切な企業価値をマーケットに評価いただき、企業価値に見合った株価の形成に注力いたします。 今期が中期ビジョン後半3ヵ年のスタートとなりますが、ワクチンの普及により、年内には経済活動も本格的に回復する可能性も見えてきました。コロナ後の世界の動向を見極め、中期ビジョン後半3ヵ年のゴールに向けて、更なる成長に邁進したいと思います。

(%)20

15

10

5

0

3.5

8.4

15.1

13.8

5.3

11.2

9.7

4.9

6.7 6.4

2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期

ROICROE WACC

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2000年3月期からの振り返り

16 兼松株式会社 統合報告書 2021

連結当期利益の推移

自己資本と自己資本比率の推移

有利子負債とネットDERの推移

250

200

150

100

50

0

△50

△100

△150

△200

△250

(億円)

2000年3月期

2001年3月期

2002年3月期

2003年3月期

2004年3月期

2005年3月期

2006年3月期

2007年3月期

2008年3月期

2009年3月期

2010年3月期

2011年3月期

2012年3月期

2013年3月期

2014年3月期

2015年3月期

2016年3月期

2017年3月期

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

173190

163 166144 133

繰延税金資産計上

減損会計導入

リーマンショック繰延税金資産の取り崩し

最後の資源権益の売却

財務体質の健全化を進めた結果、含み損を一掃し、当期利益は安定して推移

構造改革計画 新中期経営計画 New KG200 team KG120 S-Project future 135VISION-130

中期経営計画

1.3 1.9 2.6 2.0

4.6

7.3

4.7 5.9

9.1

6.0 7.3

8.5 9.8

13.7

16.7

19.4 20.6 20.9

22.3 22.8 23.7 25.8 自己資本比率(右軸)自己資本/親会社の所有者に帰属する持分(左軸)

(億円) (%)

2000年3月期

2001年3月期

2002年3月期

2003年3月期

2004年3月期

2005年3月期

2006年3月期

2007年3月期

2008年3月期

2009年3月期

2010年3月期

2011年3月期

2012年3月期

2013年3月期

2014年3月期

2015年3月期

2016年3月期

2017年3月期

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

115 144 157 108 233380

260330

456

249

289 331 390545

717

902 9161,004

1,1601,252 1,308

1,439

構造改革計画 新中期経営計画 New KG200 team KG120 S-Project future 135VISION-130

中期経営計画 30

25

20

15

10

0

1,800

1,500

1,200

900

600

300

0

5

47.1

30.1

23.0 12.3

6.9 9.5 6.2

3.3 5.4 3.8 3.2 2.3 1.6 0.9 0.8 0.5 0.6 0.5 0.4 0.4 0.3

29.7

ネットDERグロス有利子負債 ネット有利子負債

(億円) (%)

2000年3月期

2001年3月期

2002年3月期

2003年3月期

2004年3月期

2005年3月期

2006年3月期

2007年3月期

2008年3月期

2009年3月期

2010年3月期

2011年3月期

2012年3月期

2013年3月期

2014年3月期

2015年3月期

2016年3月期

2017年3月期

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

6,295

5,4385,288

4,330

3,624 3,5513,193 3,235

4,121

構造改革計画 新中期経営計画 New KG200 team KG120 S-Project future 135VISION-130

中期経営計画 70

60

50

40

30

0

7,000

6,000

5,000

4,000

3,000

2,000

0

20

1,000 10

2,8723,108 2,984

2,707

2,0491,489 1,346

1,094 1,046 900 864 680 722 488 554 590 500 518 405

2,237 2,136 1,931 1,736 1,608 1,469 1,419 1,397 1,369 1,338 1,373 1,395 1,434 1,222

2,616 2,463

 本邦バブル経済崩壊後の1999年に行った大規模な事業の選択と集中以降、総花的な展開から訣別し、事業の選択と経営資源の集中を図り、筋肉質で良質商権に特化した新しい総合商社を目指し、経営の改善と効率化を図って参りました。当期利益の順調な積上げによる自己

資本の増強や借入金の返済による有利子負債の圧縮など、財務基盤の大幅な改善・強化も進め、2021年3月期にはROE約10%、親会社の所有者に帰属する持分比率(以下、自己資本比率)約25%、ネットDER0.3倍と安定した収益構造・財務構造を維持しています。

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 兼松は、バブル崩壊以来の財務リストラの時期が他社と比較して長く続きましたが、結果

として、総合商社業界の中で随一の優良な財務体質を誇る会社に生まれ変わりました。2019

年3月期からスタートした6ヵ年の中期ビジョン「future 135」では、「基盤となる事業にお

ける持続的成長と、事業投資による規模拡大」を掲げ、成長飛躍のステージを迎えています。

前半3ヵ年が終了した2021年5月には「future 135」の見直しを発表。定量面での主な変更

は、2024年3月期当期利益目標を当初250億円→見直し後200億円に、総還元性向目標を

当初25~30%→見直し後30~35%、などです。

 これは以下の2点において、兼松が標榜している「資本の効率性を重視した経営を推進」の

実現として評価しています。1点目は、投下資本の効率性重視です。現在のような世界的金融

緩和の環境下では投資案件の買収価格は高騰しがちです。総合商社業界では投資効率を度外

視した高過ぎる買収案件が散見され、多額の減損を計上する企業が少なくありません。その中

で兼松は、「future 135」の前半3ヵ年の事業投資実績を約230億円に抑えました。兼松は財

務体質的には全く問題がないにもかかわらず、投資効率の観点からきちんと冷静に判断し、投

下資本を無駄遣いせず大切にしています。中計当期利益目標の修正も、この冷静な投資抑制が

主因であり、健全だと判断しています。2点目は、株主資本の効率性重視です。当期利益目標は

引き下げたものの、総還元性向を引き上げることによって、いかなる経営環境であれ、兼松に期

待して投資してくれた株主にとっての資本効率を高めようとする姿勢も高く評価しています。

アナリストからのコメント

大和証券株式会社エクイティ調査部シニアアナリスト永野 雅幸

資本を大切にする会社

17

兼松のあゆみと強み

経営戦略

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財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021

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• 兼松グループが有する強い事業をさらに伸ばし、かつ安定した収益基盤の事業分野において持続的成長を実現する。また、効果的な事業投資により規模の拡大や付加価値の獲得を追求し、当期利益※200億円を目標とする。

• 安定した収益構造・財務構造を背景に、ROE10~12%、配当性向(総還元性向)は30~35%とし、資本の効率性を重視した経営を推進する。

中期ビジョン「future 135」(2019年3月期~2024年3月期/ 2021年5月見直し)

将来に向けた更なる成長軌道を念頭に「規模の拡大」「付加価値の獲得」「質の向上」を積極的に推進し、伝統的ビジネスの進化と新規事業の創出により、持続可能な世界経済成長の実現と社会的課題の解決に貢献する。

2018年5月発表時の目標である連結当期利益250億円については、既存事業の成長とM&Aを軸とした新規投資による成長を両輪としていました。その後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、複数の既存事業の目標達成に遅れが出たこと、さらに新規投資についてもバリュエーションが困難、もしくは低下したことで案件が消失するなどの要因により、目標値を変更しました。

基本方針

定量目標

重点施策

骨 子

基盤となる事業における持続的成長と、事業投資による規模拡大•安定した収益構造・財務構造を背景に、資本とリスクアセットのバランスを取りつつ持続的成長を実現•強みを有する事業分野での事業投資により、規模の拡大と付加価値の獲得を目指す•SDGs達成に向け、環境、社会、安全をテーマとする事業分野での投資を推進

技術革新への対応•グループを挙げたDX推進•先進技術(IoT/AI など)を軸とした新規事業の推進と拡大•イノベーション投資(将来に向けた開発投資)の推進

持続的成長を実現するための経営インフラ確立•海外収益基盤強化など、グローバル戦略に対応する体制づくり•経営人材の育成など、人材への投資•働き方改革の継続的推進など、業務効率と従業員満足度(ES)の向上

見直し後の目標(最終年度 2024年3月期)

2018年5月発表時目標

連結当期利益 200億円 250億円

ROE 10~12% 13~15%

総還元性向 30~35% 25~30%

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

※親会社の所有者に帰属する当期利益

イノベーション投資(種まき)

付加価値

顧客・市場・シェア

規模拡大

安定収益基盤

機能

特集

 当社グループは、創業135周年にあたる2024年3月期までの6ヵ年の中期ビジョン「future 135」を推進

しています。前半3ヵ年が終了した折り返しとなる2021年5月に、事業投資の進捗や新型コロナウイルス感

染症拡大の影響なども踏まえ、方向性を再確認しました。基本方針に大きな変更はなく、事業投資やそれに伴

う収益成長の進捗を勘案し、定量目標を見直しています。また、重点施策には、SDGsやDXへの取組みを追加

しました。前半3ヵ年の振り返りと、後半に向けた方針についてご説明します。

18 兼松株式会社 統合報告書 2021

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中期ビジョン 「future 135」

0

50

100

150

200

250

350

300

(億円)

2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期

営業活動に係る利益 税引前利益 ROE連結当期利益 (親会社の所有者に帰属する当期利益)

総還元性向

15.1%13.8%

11.2%

24.8% 30.3% 34.8% 37.6%

9.7%

電子・デバイス:約60億円

新規事業投資の実績(3ヵ年)

(日)カードプリンター事業会社の完全子会社化(日)半導体イメージセンサー後工程事業譲受(日)データ取引市場の開発・データコンサル事業

会社への出資(日)モバイル通信ビジネスの拡充(独)写真プリンター事業会社への持分法出資(日)半導体製造装置(マーキング)商社の買収(日)半導体製造装置(ICテストハンドラー)製造事

業譲受

食料:約10億円(中)牛肉一次加工製造販売会社設立(中)飼料原料製造工場設立(尼)加工食品製造会社への増資 (鵜)ウルグアイ産牛の肥育農家への出資(日)大豆植物肉生産会社への出資

車両・航空:約70億円

(米)サイバーセキュリティ投資ファンドへ参画(米)救難ヘリ用装置開発ベンチャー企業への出資(欧)航空機部品事業での機体購入(日)カネヨウ(株)の株式公開買付(日)ドライブレコーダ開発・製造会社の買収

鉄鋼・素材・プラント:約90億円(韓)鋼板加工メーカーへの持分法出資(日)金属サッシ専門メーカーの買収(日)プラントエンジニアリング会社の買収(越)鉄骨・橋梁ファブリケーターへの持分法出資(米)鋼管加工事業第2工場設立

前半3ヵ年の収益に寄与した主な投資案件後半3ヵ年で収益に貢献すると想定される投資案件

前半3ヵ年の振り返り (2019年3月期~2021年3月期)

前半3ヵ年の業績推移

強みと知見のある分野に約230億円の新規投資を実施

 中期ビジョン「future 135」の初年度は国内外ともに緩やかな市場成長が続き、前期比増収増益と順調に推移しましたが、2年目終盤以降、新型コロナウイルス感染症拡大により描いていた成長スピードに遅れが生じる結果となりました。しかしながら、ビジネスにより濃淡はあるものの、新型コロナウイルス感染症拡大のマイナス影響は限定的と判断でき、当社グループの収益基盤の底堅さを一定程度確認することができました。成長に資する「規模の拡大」においては、モバイル、畜産、航空機部品、機械、化学品といった幅広い分野での活動が実を結び、「付加価値の獲得」については、プリンターや半導体の事業再

編、アジアの食市場の深耕など当社グループならではの領域での事業展開が進みました。 財務面においては、自己資本比率が25.8%、ネットDERが0.3倍となり、経営の安定性において十分な水準に到達しております。株主還元についても、自己資本比率やリスクアセット倍率等の各指標で安定的水準を維持していることから、継続的かつ安定的に配当を実施した結果、前半3ヵ年の総還元性向は、上限の30%を上回る水準となりました。また、年間+150億~200億円の営業キャッシュ・フローにより、数百億円規模の投資にも耐えうる健全な財務バランスを継続しています。

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兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021

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後半3ヵ年の方針 (2022年3月期~2024年3月期)

当社グループは、2019年3月期の中期ビジョン「future 135」スタートを機に、SDGsなど国際社会の動向やステークホルダーからの期待、兼松の基本理念、経営にとっての重要性を踏まえ、マテリアリティを設定し、非財務目標の達成にも注力しています。また、今回の中期ビジョン「future 135」の見直しでは、重点施策である「基盤となる事業における持続的成長と、事業投資による規模拡大」に、「SDGs達成に向け、環境、社会、安全をテーマとする事業分野での投資を推進」が追加となりました。これまでも社会課題解決に向け取り組んできた企業活動の延長線上として新規投資案件に対しては、各部門別に重点的に取り組むSDGs項目を設定しました。(p46-57参照)

電子・デバイス• DX支援のための総合力強化• 半導体・半導体部品・半導体製造装置分野での付加価値追求

• データ流通市場の育成、拡大

鉄鋼・素材・プラント• バイオマスエネルギーの供給拡大• 再生可能エネルギーODA事業(風力、太陽光)• CO2圧入EOR※用鋼管の供給拡大※Enhanced Oil Recovery(増進回収技術)

食料• 畜産サプライチェーンの拡大伸長と付加価値獲得

• DXを通じた農畜産業の生産性・競争力向上• 植物由来代替肉、化学物質フリー食材

車両・航空• 内燃機関から電動化部品への転換トレンド• 車両制御・燃費向上など「安全」「環境」分野• 宇宙産業(衛星関連、ロケット関連)・ドローン等の新市場

• アフターコロナの中型航空機市場

定量目標

後半3ヵ年における重点・成長分野

非財務目標

0

50

100

150

200

(億円)

2022年3月期見通し

150億円

3ヵ年で50億円増

当期利益目標達成には電子・デバイスセグメントの伸長が鍵• DXを支援するICTソリューション事業• 5G普及に伴うソリューションを提供するモバイル事業• ますます高度化していく半導体関連

200億円

2024年3月期目標

連結当期利益

2022年3月期見通し 2024年3月期目標

ROE 10.4% 10~12%

総還元性向 33.4% 30~35%

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兼松グループのDX推進状況

兼松、経営DXを実践し会議体の完全デジタル化・ペーパーゼロを実現

兼松エレクトロニクス、経済産業省が定める「DX認定事業者」に認定

兼松サステック、地盤トータルサポートシステム「e-soil」の開発

DXトピックス

 兼松株式会社では、2021年4月より社内決裁手続きの起案から経営層の会議体までを完全デジタル化し、紙文書ゼロを実現しました。IT企画部が中心となり約1年間で、会議参加者全員がタブレット端末1台で討議できる体制を整えることができ、経営層自らがデジタル技術を活用することで効率化を実現する業務変革を果たしました。 当社では年間数千件から1万件の申請が紙面と捺印によって回覧・決裁され、文書の保管や差し替えなど煩雑な作業に対応してきましたが、社内ルールの見直しにより、

約3,000に及ぶ決裁ルートを600にまで集約、例外なしでのデジタル化を達成しました。 今後はデジタル化した決裁データから種別ごとの件数や所要時間、部署別の作業負担の分析を加えて社内ルールの継続的な最適化を図るとともに、申請文書の自然言語解析などによる傾向分析なども模索し、自社の変革と経営の高度化を進めて参ります。

 兼松エレクトロニクス株式会社(以下KEL)は、2021年5月1日付で、経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」の認定を取得しました。 KELでは、2020年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画において、重点施策の一つにDXの取組みを設定し、設備投資や人材投資、アライアンスパートナーとの戦略的協業の強化など、DX戦略・体制を整備して参りました。 今後、企業ひいては社会インフラとしてデジタル技術は更に重要になります。しかしながら、デジタル技術をど

のように活用し、自社ビジネスへ実装するのか、という点が多くの企業での課題となっています。 こうした中、KELはDX認定事業者として新たなサービスを創出し、真のビジネス目的・課題をデジタル技術によって実現・解決する戦略的 ITパートナーとして、お客さまのDX推進を支援して参ります。

 兼松サステック株式会社では積極的にDX推進に取り組んでおります。ジオテック事業部が開発した地盤トータルサポートシステム「e-soil」は、国内において自社で実施した約10万件の戸建住宅向け地盤データおよびその地盤解析結果をデジタル化し地図情報とリンクさせることにより、住宅新築時において精度の高い地盤判定の提供が可能になりました。さらに、現場作業者の労務改善として、タブレット端末による現場での調査データや写真の入力なども同システム上で実現しています。近年では、本システム上に顧客情報、物件動向等を一元管理できる機能を搭載したことにより、顧客のニーズにあった工

法提案や追客が可能となりました。今後は、ビッグデータを活用した次世代防災・減災システムの開発・展開や、AIを用いた地盤設計サービスの開発など、顧客価値の実現やビジネスモデルの変革に取り組み、新たな成長・競争力強化に邁進したいと考えています。

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兼松のあゆみと強み

経営戦略

サステナビリティ

事業概要

財務・会社情報

兼松株式会社 統合報告書 2021

 前半3ヵ年において当社グループのDX推進を図るべく、インフラ、リソースの構築を進めて参りました。この度の中期ビジョンの見直しにおいて、重点施策「技術革新への対応」に「グループを挙げたDX推進」を追加し、一層スピード感を持って実行していきます。当社グループは、電子・デバイス部門に、お客さまのDX推進を支援する ICTソリューション事業を擁しています。自社においてもそのノウハウを活用すべく、電子・デバイス部門長がDX推進担当として、当社グループのDX推進に取り組んでいきます。商社は多くのグループ会社から幅広い領域のデータを得ることが可能です。それらを活用し、DXによる早期の業務効率化を図り、ビジネスモデル改革・ビジネスの創出へと繋げていきます。 また、後半3ヵ年においてこの流れを加速するべく、2021年7月にDX推進委員会を設立しました。当社グループ全体のデジタルインフラ強化と、既存ビジネスチェーンのDX化を促進し、業態変革を実現するための施策を強力に企画・実行して参ります。

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