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議事録 2009年8月作成
K-CIT代表世話人 神戸労災病院 循環器科
井上信孝 神戸大学循環器内科
藤原 征
K-CIT世話人 豊橋ハートセンター 寺島充康
三木市民病院 大橋佳隆 六甲アイランド病院 土井智文
神鋼病院 宮島 透 済生会兵庫県病院 矢持 亘
甲南病院 野中英美 神戸大学循環器内科 福家啓起
神戸労災病院 小澤 徹
INTRODUCTION 循環器医療の画像診断と治療をフランクに 議論する研究会、 K-CIT 誕生!!
平成 21 年 5 月 16 日、ニューオータニ神戸にて、循環器の画像診断と治療をフランクに討論する研究会、第 1 回 Kobe Cardiovascular Imaging & Therapeutics K-CIT が行われました。この研究会は、循環器診療の画像診断から治療までを包括的に、かつフランクに議論する場を提供することを目的に設立致しました。近年、 MDCT 、心臓 MRI 、心臓核医学、心エコー図、血管内超音波、 OCT など循環器診療における画像診断 の進歩には目を見張るものがあります。一方で、循環器疾患の治療面においては、侵襲的な治療法の新規 devise が次々と導入され、また薬物治療に関しても大規模臨床研究の結果を踏まえた多くのエビデンスが構築されつつあります。このように、循環器診療は革新的な変化が起りつつあると捉えることができるかもしれません。
こうした流れをうけて、 K-CIT がスタートしました。 第1回目の今回は、豊橋ハートセンター循環器部長の寺島充康先生を特別講演の講師としてお招きして、血管内イメージングの最先端のお話しがあり、多いに Discussion が盛り上がりました。また一般講演として、神戸大学 循環器内科の福家啓起先生から、MDCT の最新の進歩についてのご講演がありました。K-CIT では、率直な議論、討論を通じて、循環器診療における新たな情報の発信源になることを目指しています。 第2回は、平成 21 年 11 月 21 日に予定しておりますので、 多数のご参加をお待ちしております。
神戸労災病院 循環器科部長 井上 信孝
Kobe Cardiovascular Imaging & Therapeutics
K-CIT研究会
第1回 平成 2 1 年 5 月 1 6 日 ( 土 ) ホテルニューオータニ神戸 ハーバーランド 5階 翠鳳
Opening Remarks 神戸労災病院 循環器科
部長 井上 信孝 先生
一般講演 座長 神戸労災病院
副部長 小澤 徹 先生 「心臓CT最前線と
日常診療への応用」 神戸大学 循環器内科
福家 啓起 先生
特別講演 座長 神戸大学循環器内科
藤原 征 先生 「新しい血管内
イメージングの現状」 豊橋ハートセンター 循環器科
寺島 充康 先生
第2回 K-CIT研究会 開催予告
日 時 : 平成21年11月21日(土)午後5時30分より 場 所 : ホテル北野プラザ六甲荘 特別講演 : 神戸市立医療センター中央市民病院 加地修一郎先生
井上信孝循環器科部長、小澤徹内科副部長らが中心となり、循環器診療に関する医学研究会 KCITが新しく発足いたしました 。第一回の研究会の議事録です。
特別講演
新しい血管内イメージングの現状 豊橋ハートセンター 循環器科 寺島 充康 先生
冠動脈病変の評価は従来冠動脈造影(CAG)により行われてきたが、得られる情報は血管内腔の形状観察・狭窄度の評価にとどまる。動脈硬化の本質は内腔ではなく血管壁の異常であることを考えると、冠動脈病変の評価としては十分ではない。 近年、Beyond Angiographyと称される各種イメージングモダリティーの開発により、それらを用いた冠動脈硬化の臨床的研究が数多く行われている。本講演ではカテーテルを用いた血管内イメージングの現状につき概説した。
血管内超音波検査(Intravascular Ultrasound: IVUS) 各種イメージングモダリティの中でもIVUSの果たした役割は大きい。IVUSは血管断層構造をリアルタイムに観察する検査方法であり、生体内で直接かつ実時間で血管壁および内腔の構造に関する情報を得ることができる。血管断面積、プラーク面積などの定量的評価に加えて、組織性状により超音波像が異なることから、プラークの性状、石灰化病変の検出などの定性的評価も行なうことが可能であり、臨床的冠動脈硬化の研究はIVUSの登場により飛躍的に進歩した。我々も、局所の酸化ストレスが冠動脈硬化の進展に果たす役割についてIVUSを用いて検討を行っている。方向性プラーク切除術(Directional Coronary Atherectomy:DCA)を行なった患者において、DCA前のIVUS所見と採取されたプラークにおける活性酸素の産生など組織化学的所見を対比した。DCA組織における活性酸素陽性エリア率はIVUSで求めた%プラーク面積、arterial remodelingの程度と正相関し、酸化ストレスと冠動脈プラークの進展との関連が臨床的に示された。 (Terashima, et al, Circ Cardiovasc Intervent. 2009; 2: 196 ‒ 204; Fig.1, 2)
Virtual Histology™ 先に述べたIVUS画像は、得られた超音波信号(radio-frequency: RF)に処理を施し、画像として認識しやすく描画されたものであり、定量的計測には優れているが、定性的組織診断は主観的であり、限界がある。V i r t u a l H i s t o l o g y™は未処理のRF信号を スペクトル解析することにより、プラーク組織の生体内評価を行うものである。
Lesion Distal reference Proximal reference
Fig. 1 Positive Remodeling (+) Fig.2 Remodeling (-) Lesion Distal reference Proximal reference
H-E ROS p22phox H-E ROS p22phox
これによれば組織は①密な膠原線維のfibrous(緑)、②脂質の蓄積した疎な膠原線維のfibro-fatty(黄緑)、③カルシウム分を多く含むdense calcium(白)、④高脂質の壊死性成分を含む粥状の柔らかな組織のnecrotic core(赤)の4成分に分類され、カラーマッピングされる。近年、このシステムを用いて急性冠動脈症候群の原因となる不安定プラーク等に関する研究が行われている。個人的印象として、複雑な病理組織を単純に4成分に分類することから、そのVH-IVUSで表現される組織性状については疑問を感じるところもあるが、プラークの組織性状の経時的変化を見る上では、特にスタチン等薬剤によるプラークの質的変化を客観的に評価する上では有用な手段と考えられる。 (Nasu, et al, J. Am. Coll.Cardiol. Intv., in press: Fig.3)
Optical Coherence Tomography(OCT) OCTは、IVUSで用いられる超音波を、約1,300nmの波長の近赤外線に置き換えたものであり、IVUSと同様に血管断面を断層像として描出するデバイスである。その特徴は解像度が約10~15μmとIVUSの約10倍の高度分解能を有している点である。OCTはこの高い分解能により、IVUSでは描出不可能な微細な血管構造、例えば急性冠症候群における薄い繊維性皮膜の破綻像や薬剤溶出性ステントを覆う薄い新生内膜等(Fig. 4 & 5)を詳細に描出できる。
その他イメージングモダリティ 先に述べたイメージングモダリティ以外にも、いくつかユニークなモダリティがあり、紹介する。プラークの発生・進展には、流体力学、特にshear stressが大きく関与している。Brigham & Women’s HospitalのStoneらは、二方向からのCAGとIVUS組み合わせることで、立体的にIVUSを三次元再構築し、この立体的モデルから冠動脈の各部位のshear stressを算出し、立体モデル上にカラー表示することを行っている(Stone, et al Eur Heart J. 2007; 28: 705-710)。この方法を用いて、in vivoにおいてshear stressが、プラークの進展やrupture等のeventにどのように関わっているかを検討する多施設共同研究が現在日本において進行中である(PREDICTION trial)。OCTと同じように光を用いたデバイスとして、InfraReDx™ がある。これは、scanning laserのspectrogramから、組織性状を診断するシステムであるが、脂質の存在する部位が明るい黄色にカラー表示される。その他Intracoronary MRIについても、現在数社において開発されている。
Kobe Cardiovascular Imaging & Therapeutics
A B Fluvastatin 投与群 非投与群 Fig.3
Fig. 5 IVUS and OCT image of SES at 3-month follow-up Fig. 4 ACS
特別講演
心臓CT最前線と日常診療への応用 神戸大学 循環器内科 福家 啓起 先生
一般講演
いままでの使用経験のあるCTから、320列と128スライスという現在市販されている最上位クラスの機種の特徴を説明し、今後循環器内科の日常診療にどのように役立てていければいいかをお話いたしました。 東芝の320列CT「Aquilion One」は検知器の数を320列に増やし管球1回転の非ヘリカル撮影0.35秒で心臓全体(16cm)のスキャンが可能です。ヘリカルスキャンによる被曝の重複がなく、線量や造影剤の大幅な削減に成功しながら全部位同一位相のコントラストの均一な画像が得られるしていることに加え、1心拍撮影なので心房細動などの心拍変動の影響が大幅に少なくなりました。また、連続回転で撮影を行うと4次元動画を得ることが可能で、心機能解析や血流評価への応用が期待でき、CTによる機能評価という新しい分野が開拓できる可能性があります。一方、当院に導入された128スライスCT「Somatom definition AS+」は従来のマルチスライスCTと同じくヘリカル撮影ですが、検知器の性能向上による空間分解能の改善に加え、回転速度とヘリカルピッチの高速化による時間分解能を始めとした撮影精度がさらに向上しています。 その結果、薬剤溶出性ステント内腔の評価などが可能になったケースや撮影 時間の短さを利用し、複数部位を広範囲に同時撮影した症例を紹介しました。128スライスCTでも非ヘリカル撮影は可能で、演者自身を管球4回転で撮影し2.6mSvという胸部単純CT以下の線量で撮影を行った画像も紹介しました。低侵襲・高性能の傾向は両機種とも共通しています。また、スクリーニングやPCI後フォローアップ、プラーク評価などの実例を交えながら、膨大な情報量に対応するべくCD‐Rを用いたフィルムレス診断の重要性をお話しました。
最も大事なことですが、新しい機器の高性能を引き出すには、依頼を出す主治医と、検査・読影を行う検査医、患者様の3者がコミュニケーションを取り合って、患者様の利益が最大になるよう努力していく必要があります。 質疑応答では石灰化や中等度狭窄の評価など、CTの普及で新たに出てきた問題もあるため、MRIやSPECTなど他のモダリティも含めてその特徴を把握して使用する重要性などを議論させていただきました。