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エレクトロニクス・エネルギー・通信分野 目次 1.鉄輪式リニアモーターカーの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2.電子白杖の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3.室温管理システムの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 4.卓球マシンの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 5.飲料容器自動分別器の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 6.目覚まし電波時計の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 7.電子オルガンの製作―調律機能付き合奏練習用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 8.防犯装置の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

エレクトロニクス・エネルギー・通信分野archives/Project_study_files/Project_Study/EE/… · 急な坂を上ることが出来る。これらの特徴を活か し,地下鉄などの敷設面積の限定される都市型交

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  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野 目次

    1.鉄輪式リニアモーターカーの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

    2.電子白杖の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

    3.室温管理システムの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

    4.卓球マシンの製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

    5.飲料容器自動分別器の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

    6.目覚まし電波時計の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

    7.電子オルガンの製作―調律機能付き合奏練習用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

    8.防犯装置の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

  • 1

    鉄輪式リニアモーターカーの製作

    Fabrication of Train Using Linear Motor: Linear Motor Train Control by Frequency Change

    秋元 靖之 *,齋藤 健実 *,佐藤 圭 *,北條 千聖 *,山口 守 *,東 隼人 **

    1 背景・目的 近年,リニアモーターを採用した新しい乗り物

    としてリニアモーターカーが注目を集めている。

    我々の日常の中にもリニアモーターは既に活躍し

    ており,その一例として東京の地下を走行してい

    る都営地下鉄大江戸線が挙げられる。速度こそリ

    ニア中央新幹線に劣るが,より小回りがきき,消

    費電力も少なく,一般的な電車よりも小さな車体

    を持つ。また坂道を上る力,登坂力も強く傾斜の

    急な坂を上ることが出来る。これらの特徴を活か

    し,地下鉄などの敷設面積の限定される都市型交

    通の一手段として採用されている。本研究では過

    去の鉄輪式よりも省電力化,さらに小型化を目指

    す。さらに,スーパキャパシタ(1)等を搭載し,駅

    間に架線を必要としない架線レス走行やカーブ半

    径の縮小,登坂力の高い鉄輪式リニアモーターカ

    ーへの応用などを考える。 2 概要 2.1 鉄輪式リニアモーターカー 誘導モータの回転原理を走行原理へと応用した

    ものが鉄輪式リニアモーターカーである。仮想的

    に誘導モータ内の回転磁界を切り開き,直線状に

    することによって,回転方向の力が直線方向の力

    へ変化する。鉄輪式リニアモーターカーはこの直

    線方向の力を推進力に走行する(2)。

    2.2 機体 直線方向の推進力を最大限に活かすために,直

    線を安定的に走行可能な機体を作成する。車輪と

    コイルだけを搭載した簡素な設計にすることによ

    って,車輪径の及ぼす登坂性能やコイルとリアク

    ションプレートのエアギャップが及ぼす走行への

    影響などの比較実験を容易なものにした。(図1)

    2.3 性能試験 表1は製作した機体に商用の三相交流電力を流

    し走行試験をまとめたものである。この試験によ

    り,コイルに流れる電流値は一定の値を超えると

    走行に変化が出なくなることが分かった。また,

    渦電流の発生しているリアクションプレートにつ

    いても,一定の厚みを超えると走行に変化が出な

    くなることが分かった。この原因として,リアク

    ションプレート内で渦電流が分散して推進力に繋

    がっていないことなどが考えられる。

    2.4 走行制御 走行を制御する信号源として,低周波発振器を

    利用し,入力された信号の周波数に応じて,リレ

    ーにより抵抗器の切り替えを行う。走行用の電源

    には三相 200V を用い,車上コイルに加わる電圧を変えることによって,停止・低速走行・中速走

    行・高速走行の 4 段階で速度制御を行う。また,

    逆転用のリレーを置き三相電源のうちの 2相を入れ替えることで後進することが可能である。(図2)

    3 結果と考察 3.1 登坂能力について

    図1に示した機体と同じようなコイルを搭載し

    たタイヤ径の違う機体を二機用意し,登坂能力な

    どについて比較実験を行った。(図3)

    コイルの性能は同程度のため車輪径によって,

    登坂能力や加速度が変化していることがわかる。

    図1 製作した機体

    図2 製作した制御盤

    図3 登坂能力試験

    表1 走行試験の結果 始動 最高速 電圧(V) 30 50 電流(A) 3.5 5.5

  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野

    2

    本実験から,車輪の接地面積によって推進力の伝

    播が変化し,登坂性能や加速性能の向上が認めら

    れた。(図4)この結果より,コイルの性能を大き

    く向上させるよりも,車輪の接地面積の極小的な

    変化量を増加させる方が登坂能力や加速度の増加

    に繋がることがわかった。また,設置面積だけで

    なく走行抵抗の影響を考慮すると,硬度が低くひ

    ずみ接地面積が増え,走行抵抗の少ない材質が車

    輪に適していると言える。その一例として,ブタ

    ジエンゴム(3)のような,ゴムの硬度特性を持ちな

    がらウレタン程度の走行抵抗を持つ素材で作られ

    た車輪等を使うことが望まれる。

    3.2 給電について

    架線レス走行を実現するために,スーパーキャ

    パシタを用いた接触給電の実験を行った。(図5)

    本実験では,走行用三相交流電力の給電ではな

    く,車両内の仮想的な空調機能として 5VDC ファン

    への給電を行った。レール側に 200mm長 0.5mm厚アルミ板を敷設し,車両側から銅板を接触させ

    車両側へ給電をすることが出来た。また,フォト

    リフレクタを用いて,アルミ板が敷設されている

    仮想的な駅の位置を認識し,Arduino(4)を用いてファンの駆動とスーパーキャパシタへの充電を制

    御した。

    本実験より,駅に停車している間に接触式給電

    を行うことが可能であるといえ,走行用三相交流

    電力に対しても,十分な安全対策や大容量かつ耐

    電圧の高いスーパーキャパシタを用いることで実

    現できると考えられる。

    4 今後の課題

    今後の展望として,三相交流電力が主電源でな

    くとも走行を可能にすることや,機体側のカーブ

    や登坂能力を向上される機構の実装等が挙げられ

    る。給電に関しては,現在の三相交流電力から給

    電する方式から,単相交流電力から三相交流電力

    に変換する VVVF インバータなどを走行制御に導入することにより機体への給電を単相交流電力

    で済ませられると考えられる。単相交流電力を使

    用することで,スーパーキャパシタを用いた架線

    レス走行(6)などへの活用も容易であると言える。

    また,単相交流電力を長距離送電した際の電力

    損失について,駅に停車中のみ給電する方式を採

    用することで,長距離の送電線を敷設する必要が

    なくなる。これにより,電力損失の削減に大きく

    貢献できると考えられる。

    機体側については,車輪部に回転機構を組み込

    むことで,カーブ走行の安定走行化などが実現出

    来ると思われる。また,車輪に使用する素材につ

    いても比較実験を行っていくことで,より登坂能

    力や加速性能の高い鉄輪式リニアモーターカーを

    製作出来ると考えられる。

    参考文献

    (1) 赤阪有一,坂本光,高田利通,門馬大輔,土橋朗,横山努,増田洋輔,中島秀仁,柴田智史,古川淳,L.T.Lam , N.P.Haigh , O.V.Lim , R.Louey ,C.G.Phyland,D.G.Vella,L.H.Vu:ウルトラバッテリーの開発第三報,古河電池株式会社,入手先 〈 http://www.furukawadenchi.co.jp/research/tech/pdf/fbtn64/fbtn64_204.pdf 〉[参照2017/09/30]

    (2) 水間毅:第1章リニアモータ駆動/磁気浮上システム,電気学会論文誌D,入手先 〈 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejias1987/113/6/113_6_714/_pdf 〉[参照2017/09/30]

    (3) 松田孝昭:スチレン・ブタジエンゴムの最近の技術動向,日本ゴム協会紙,入手先 〈 https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/78/2/78_2_46/_pdf 〉[参照2017/09/30]

    (4) ARDUINO:Arduino UNO Rev3,入手先 〈https://www.arduino.cc/ 〉[参照2017/09/30]

    (5) モノタロウ:420R固定車(ナイロン一体車輪) 入手先 〈 https://www.monotaro.com/p/0221/2822/?t.q=%82 S%82Q%82OR%81%40%82%8E 〉[参照2017/09/30]

    (6) 小笠正道,田口義晃:バッテリー搭載型電車による省エネルギ―化,入手先 〈 http://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0004/2009/0004004941.pdf 〉[参照2017/09/30]

    図4 使用した車輪(5)

    図5 接触式給電の様子

  • 3

    電子白杖の製作

    System of Fall Prevention for Visually Challenged Person: Development of Electronic White Cane

    金澤 青樹 *,剣持 匠 *,塩谷 健 *,藤田 一範 *,堀江 真平 *,東 隼人 **

    1 動機 近年日本では,視覚障害者が駅のホームから転

    落するといった事故が増え,新聞記事やインター

    ネットなどで多く取り上げられている。図1のア

    ンケート結果からもわかるように,視覚障害者は

    日常生活において転落事故の危険にさらされてい

    ることがわかる。これらの解決方法として,ホー

    ムドアの設置などが挙げられるが,時間・お金・

    場所などの制約があり,導入が難しいと言える。

    そこで本研究では,ホームドアより短時間で準

    備・使用ができ,軽量かつ安価で製作できる電子

    白杖に着目し,現在問題となっている点について

    改善できるのではないかと考えた。また,この電

    子白杖を国や人種に関係なく,世界中で使うこと

    ができるのではないかと考え,研究を着手するこ

    とにした。 2 システム 2.1 測距システム 白杖本体の測距システムは,図2のような赤外

    線測距センサを用いる。具体的には,センサ内部

    にある光源からの赤外線ビームが床などの対象物

    に当たって跳ね返り,その返ってきた光を,セン

    サの内部でアナログ値に変換する。これを,マイ

    コン「Arduino NANO」を用いて処理を行い,そこで物体の有無を判断する。 本体には2種類の測距システムがあり,一つは

    本体の左右に取り付けた測距距離の長いセンサで,

    床・壁の有無を判断するメイン測距システムであ

    る。もう一つは,測距距離は短く人や周囲の近接

    物の有無を判断するサポート測距システムである。

    2.2 転落防止システム 転落防止システムの構造は,サポート測距シス

    テムにより,周囲に物・人がないことを確認し,

    メイン測距システムで測距を開始する。赤外線測

    距センサから読み取った値により,そこに床・壁

    がないと判断された場合,白杖取り付け型では白

    杖の持ち手部分,ポーチ型ではリストバンドに取

    り付けた振動モーターを振動させることにより,

    使用者に危険が近づいていることを伝える(図3)。

    また,赤外線測距センサからの評価値によって振

    動パターンを変化させることで,どの方向に危険

    があるかについても伝達することができる。

    2.3 SOS システム SOSシステムとは,図4の「白杖 SOSシグナ

    ル」の認知・普及に向けたシステムである。モジ

    ュール部分に取り付けたボタンを押すことで,本

    体に取り付けたスピーカーから音を出す。これに

    より,周囲に助けを呼びかけることが可能になる。

    さらに応用目標では,ブザー音から音声にするこ

    とで,容易に状況を把握することができるように

    なる。 3 仕様 3.1 白杖取り付け型 白杖にモジュールを取り付けて,中心にサポー

    ト測距センサ,左右にメインの測距センサを取り

    付けられるように設計をすることで,システムが

    安定するようにした工夫をした(図5)。また,図

    6のような赤外線測距センサを保護するケースに

    角度を 10 度ずつ調整できるギアを取り付けるこ

    図1 白杖使用者へのアンケート 図2 測距センサ

    図3 システム図 図4 白杖 SOS シグナル

  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野

    4

    とで,微妙な角度調整を可能にした。これにより,

    常に一定のセンサ値で評価できるようにし,ユー

    ザーの身長差などで変化する白杖の仕様に柔軟に

    対応できるように設計をした。 3.2 ポーチ型 転落防止,SOSシステムに必要な部品を一つの

    ポーチの中に集約することで,白杖取り付け型と

    は異なり,小型化や利便性を図ることに重点を置

    いた。また,上記のセンサ部分をクリップなどで

    固定し,白杖使用者以外でも使えるようにし,汎

    用性を高めた。 4 結果・考察 本体について,実際に白杖を使用している方か

    らアンケート調査や電子白杖を試用して頂き,重

    量などについて多くの指摘を受けた。白杖は日常

    的に使用するもので,この結果から手首への負担

    が少ない軽量なものが望まれることが分かった。

    原因として,本実験の中で使用した赤外線測距セ

    ンサが既存のものであり,そのサイズや形状を変

    えられず重量に大きく影響してしまっていること

    が挙げられる。しかし,総合的な評価として,製

    作した電子白杖は好評であり,需要の可能性は十

    分にあると考えられる。これにより転落の危険性

    が減り,一人で外出しやすくなるのが楽しみであ

    るという感想も戴いた。さらに製作費の面では他

    社が開発した,超音波の2つのセンサを用いた電

    子白杖「スマート電子白杖」に比べ,5分の1に

    まで抑えることができた。この結果から,安価に

    するという目標を達成することができたと言える。 5 課題 白杖取り付け型の今後の課題として挙げられ

    るのが,本体の軽量化である。実際に白杖を使用

    している方にインタビューの際にも,本体の重

    量・収納について指摘があった。さらにインタビ

    ューの中では, SOS シグナルは恥ずかしくて好きではない,本体のデザインはかっこいいほうが

    いいという意見もあり,使用者によって求めるも

    のは様々で,感じることや求めるものもまた様々

    であることが分かった。 ポーチ型の今後の課題として挙げられるのが,

    装着の手間の軽減である。本体をポーチに収納す

    ることにより,使用者への重量の負担を大幅に減

    らすことができるものの,現状では装着に手間が

    かかる仕様になっている。また本研究と類似した

    電子白杖に,「Walky」という,カメラによる画像認識,パラメトリックスピーカ,「SORACOM Air」サービスを使ったシステムがある。これは,使用

    者に障害物や距離を伝え,様々な場所で柔軟に使

    用できるように設計されている。このように,別

    システムやデバイスを用いるだけでなく,使用者

    の要望やニーズを考えて合わせていくことで,よ

    り使いやすく,グローバルな電子白杖を製作する

    ことが可能になると考えられる。本研究では,今

    後も使用者のニーズに応え,また新たな技術を取

    り入れることで,より多くの人が使える電子白杖

    を製作したい。

    参考文献

    (1) 社会福祉法人 日本盲人会連合 転落事故に関するアンケート調査結果 [accessed 2017/9/8]

    (2) 産経ニュース 盲導犬連れて線路に転落した男性,死亡確認 [accessed 2017/9/8]

    (3) オプテックス・エフエー株式会社 距離センサまるわかりガイド

    [accessed 2017/9/8] (4) devpost

    Wakly a smart device for supporting a person with impaired vision. [accessed 2017/9/14]

    図5 ハードの外形 図6 角度調整パーツ

    図7 製作した本体とセンサ部分

  • 5

    図 1 熱中症患者の推移(2)

    図 2 年齢別熱中症患者(3)

    65歳以上

    65歳未満

    図 3 WBGT簡易算出表(5)

    室温管理システムの製作

    Monitoring and Cautioning System for Prevention against Heatstroke

    朝倉 舜一 *,新井 友 *,川又 圭太 *,木村 友 *,堀池 尚輝 *,卯花 竜也 **

    1 研究動機 近年,地球温暖化による温度上昇に伴い熱中症

    患者の数は図 1のように増加傾向にある。その中でも特に高齢者の熱中症患者は図 2にあるように全患者の約半数を占めており,年々その数は増加

    している。高齢者や若者を問わず,自宅で発症す

    るケースが外出中の割合よりも高い。また,熱中

    症による死亡者も年々増加しており,その数も高

    齢者が最も高い割合を占めている。この原因とし

    て高齢者の暑さに対する感覚機能と体温調節機能

    の低下があげられる。高齢者と若者の温度感覚の

    差は1~5度まで違い(1),この感度の差によって

    高齢者が暑さに気づかないこと,熱中症に対する

    意識の低さや油断によって,熱中症患者数が増え

    ていると考えられている。特に日本では少子高齢

    化が進み,一人暮らしの高齢者の人口が急増して

    いる。そのため,自宅で熱中症を発症しても発見

    までに時間がかかったり,発見されずに重症化し

    てしまったりするというケースが多い。これらの

    問題点を解決するために我々は,高齢者と若者の

    温度感覚の差を補うと同時に熱中症危険度を通知

    し,ユーザーの家族などにメールで状況を送信す

    るシステ

    ムを製作

    した。こ

    れにより

    多くの高

    齢者の熱

    中症を減

    らし,全

    体の熱中

    症患者と

    高齢者の

    孤独死を

    減らすこ

    とができ

    ると考え

    た。

    2 システム構成 2.1 熱中症危険度の算出 熱中症の危険度を算出するにあたって,WBGT

    という指標を使用した。WBGT とは,1954 年にアメリカで熱中症を予防する目的で提案された指

    標である。こ

    の指標は人体

    と外気との熱

    収支(熱のや

    りとり)に着

    目し,「湿度,

    日射・輻射な

    どの周辺熱環

    境,気温」の

    3 つの要素を取り入れたものである(4)。本研究において製作し

    たものは屋内使用を想定しているため,温湿度セ

    ンサで測定した温度と湿度から,図 3に示したチャートを用いて簡易的に WBGT を算出し,それから屋内の環境が「注意・警戒・厳重警戒・危険」

    の 4段階のいずれであるかを割り出している。 2.2 利用者本人への通知 算出した屋内環境の危険度の段階を青・緑・

    黄・赤の 4 本の LED を用いて表示する。表 1 に示すように危

    険度最も低い

    際には青のみ

    を点灯させ,

    危険度が 1つ上がるたびに

    点 灯 す る

    LED を 1 つずつ点灯させ

    ていく。 また,危険度の段階が「警戒」以上の状態が長

    時間続く場合には,ブザーを用いて音で利用者に

    対して警告を行う。音は本体のボタンを押すこと

    で停止でき,この操作を行わせることで利用者の

    表 1 危険度と LED表示

  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野

    6

    熱中症になっていないかを確認する。 2.3 メール通知 利用者本人への通知に加えて,利用者親族など

    へのメールによる通知も行う。これは利用者本人

    が熱中症にかかってしまった際に,利用者を救助

    できる人物に知らせるために実装した。また,一

    部の地方自治体ではメールによる 119番に対応しているため,この通知方法によって救急車を申請

    することも可能である。 3 測定場所の検討 本体を置く場所により室内の温度や湿度にム

    ラが生じることで,ユーザーがいる場所と測定場

    所の間で危険度が異なる恐れがあり正しい通知を

    行えないという課題がある。そこで実際に図 5に示したように室内の異なる場所において温度,湿

    度を夏季の日中に 6 日間にわたり 30 分毎に測定を行った。結果を図 6に示す。直射日光が当たっている D の地点では,他の地点に比べて WBGTが高くなっていた。また,A~Cの地点ではWBGTに大きな差がないことが分かった。このことから

    直射日光が当たらないという条件を考慮すれば測

    定結果は危険度を大きく左右するような差は生じ

    ないことがわかり,測定場所については直射日光

    が当たらなければ問題ないという結論が得られた。 4 今後の課題 このシステムを実際に使用した際の動作の確認

    ができているが,使用感の確認が取れていないた

    め,それの確認と修正作業が最優先課題である。 また,より利便性を向上させるために,小型化

    や,各季節の季節病などに対応できるようなシス

    テムの改良などが必要だと考えている。 参考文献

    (1) 北川公路:老年期の感覚機能の低下-日常生活への影響,入手先,(参照 2017-09-28)

    (2) 国立環境研究所:熱中症患者の発生状況と今後の予測,,(参照 2017-09-28)

    (3) 環境省:熱中症保健マニュアル,入手先,(参照 2017-09-28)

    (4) 環境省:暑さ指数(WBGT)とは?,,(参照 2017-09-28)

    (5) 環境省:職場の熱中症予防に努めましょう!,入手先,(参照 2017-09-28)

    図 4 システム構成

    利利⽤用者 ⾳音・光

    熱中症危険度度を通知

    ユーザーの親族

    地⽅方⾃自治体など メール送信

    利利⽤用者の状況を通知

    システム 温湿度度測定&WBGT 算出  

    図 5 屋内の測定地点

    図 6 測定結果

  • 7

    卓球マシンの製作

    Training Machine for Table Tennis Which Can Shoot Balls Automatically with Variety Rotation

    赤澤 毅 *,木村 茉理於 *,成澤 諒 *,山口 颯太 *,吉村 崇志 *,大熊 康弘 **

    1 背景・目的 中学校,高等学校における卓球部では実技指導

    が可能な教員は少なく,指導者からの指導を十分

    に受けることができない選手も多い(1)。この問題

    を解決すべく,私たちは卓球マシンを製作した。

    卓球マシンとは,自動で球出しを行う装置のこと

    である。現在でも多くの団体で卓球マシンを用い

    ての練習が行われているが,射出される球種をマ

    シンの稼働中に変更できなかったり,コース変化

    が単調であったりするため,練習の自由度を増す

    ことができない。本研究では十分な練習指導を受

    けることが出来ない人にも高度な練習を提供する

    ことを目的に,自動で球種が変更される機能が備

    わった卓球マシンの製作を目指した。 2 概要 2.1 仕様 本卓球マシンには大きく 3 つの機能がある。

    「球種変更」,「首振り機能」,「射出間隔の変更」

    である。球種変更は射出口から発射される球に

    様々な回転をかけるものである。 首振り機能は射出口の向きを変え,球のコース

    を変えるものである。 射出間隔の変更は射出口に球を送り出す間隔

    を制御するものである。

    2.2 球種変更 私たちは球の射出に 4つのDCモーターを使用

    する。上下左右に配置したモーターの回転を制御

    し,その間に球を通し,球に回転をかける。 また,モーターの回転制御には PWM方式を用

    い,球種の変更を実現する。 球種変更には,3つのモードが存在する。1つ

    はマシン稼働前に,射出する球の回転を「上」「下」

    「左」「右」の中から選択するモードである。4種類の球の回転を選択した順番で射出することがで

    きる。次に,1 球ごとにランダムに回転を掛けるモードである。前述した 4種の回転がランダムで射出される。最後に,4 つのモーターの回転速度を任意に変更し,使用者が理想とする回転

    の球のみを射出し続けることができるモードで

    ある。 前 2つのモードにおける,一球ごとの球種変

    更は,球の通過をセンサーで感知して行った。

    2.3 首振り機能,射出間隔の変更 「首振り機能」と「射出間隔の変更」には角

    度指定が容易に行える「ステッピングモーター」

    を使用し,2相励磁という駆動方法を採用した。 「首振り機能」には,静止,規則的,不規則の

    3つの動きを搭載した。

    球 遅

    球:左回転

    モーター モーター

    図 1. 射出口

    DCモーター

    射出口

    タイヤ

    図 2. 全体回路略図

  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野

    8

    「射出間隔の変更」は 3段階の速度で指定でき,この速度は「首振り機能」の動きと連動する。 2.4 操作

    上図のように機体の側面にスイッチとディス

    プレイを設置した。これにより容易な操作性を得

    ることが出来た。 2.5 プログラム 今回製作した卓球マシンの球種選択における

    プログラムの概要は以下のようになっている。

    2.6 電源 電源にはパソコン用電源を用いた。DC モータ

    ーには 5v を用い,マイコン起動とステッピングモーター用には 9vを使用する。

    3 結果と考察 「球種変更」,「首振り機能」,「射出間隔の変更」

    の 3つの機能は私たちの想定通りに動作した。また,それらの機能を組み合わせて動作させること

    にも成功した。 さらに,液晶ディスプレイ(LCD)の表示によ

    る操作性の向上,ランダム機能の実装により本マ

    シンは十分に高度な練習を行えるような機能を搭

    載できた。本マシンを使用することで練習の幅を

    広げ,指導者の指導を十分な時間受けられない者

    や,自分のレベルに適した練習相手のいない者に

    も実践的な練習を提供し,使用団体における選手

    層の底上げが期待できる。

    4 今後の課題 本卓球マシンはその製作に時間を要したため,

    その機能に関する実験回数が少なく,基本となる

    上下左右の回転でベストとなるものを見つけられ

    ていないため,卓球台での動作を確認し調整した

    い。また,モーターの回転速度変更に生じるタイ

    ムラグも検証したい。 加えて,外装の設計が不十分で射出口やその他

    の動作に影響を及ぼすため,より精巧なものを製

    作したい。

    参考文献

    (1)寺岡英普,松元剛:中学校運動部活動における教師の指導実態に関する研究,入手先

    〈http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/0/advpub_4065/_pdf〉[参照 2017/010/2]

    図 3. 操作盤

    図 4. プログラム略図

    図 5. 全体像

  • 9

    飲料容器自動分別機の製作

    Making of the Device with Beverage Container Automatic Classifying Function and Nasty Smell Preventing Function

    犬塚 亜美 *,梶 浩幸 *,高田 圭喜 *,田中 敦也 *,中西 亮輔 *,河野 志行 **

    1 背景・目的 現在,日本は高い分別率を誇っているのに対し,

    世界では分別意識の低さが問題視されている。表

    1は世界のアルミ缶リサイクル率を表しており,

    各国によってリサイクル率が大きく異なることが

    わかる。そこで私たちは,自動で飲料容器(ペッ

    トボトル,アルミ缶,スチール缶)を分別するゴ

    ミ箱を開発することで,世界の分別率を日本水準

    に引き上げることを目標とした。また,資源とし

    ての再利用と焼却物の低減により焼却炉の長寿命

    化,二酸化炭素や有害物質の発生を減らす一助を

    目的として研究・製作を行った。

    2 目標 以上の背景を踏まえ,基本・応用目標を次のよ

    うに設定した。 基本目標:ペットボトル,アルミ缶,スチール缶

    の判別をし,分別を自動で行う。 応用目標:容器内の飲み残しを自動で外部に排出

    する。 3 概要

    3.1 材質判別

    飲料容器を自動で分別するには,ごみ箱内でペ

    ットボトル,アルミ,スチールのうちどの材質で

    できているかを判別しなければならない。そこで

    私たちは,飲料容器の材質判別に,静電容量セン

    サと磁気形近接スイッチの 2つを用いた。静電容量センサで導電性の有無,近接スイッチで磁性体

    か否かの判別を行った。(以下,材質判別を行う機構を測定部とする) 3.2 飲み残し処理

    ごみ箱の異臭問題は容器内の飲み残しを処理す

    ることで改善できると考えた。そこで,容器を判

    別後,判別部全体が左右 60 度ずつ回転し容器を振ることで,左右の網目状の側面から飲み残しが

    排出されるようにした。

    3.3 分別方法

    材質判別完了後,

    飲み残し処理と同時

    に最終的に容器を回

    収する箱(以下,回収部とする )の上部に設置された最終進路

    を決める機構(以下,振り分け部とする )が連動する。図 1は色のついた扇形の部

    分が振り分け部の可動域を表し①がスチール缶,

    ②がペットボトル,③がアルミ缶の回収部を表し

    ている。振り分け部は通常時は②を向いており,

    アルミ缶或いはスチール缶と判断された場合は,

    それぞれに左右 70 度ずつ回転し容器を回収部に落とし,処理後は②に戻る。

    3.4 外装・内部機構特徴

    外装特徴として発

    表時に内部を見やすく

    するために前面,側面

    に透明のアクリル板を

    使用し,背面にベニヤ

    板を使用した。可能な

    限り最小化を目指し,

    底面の縦 50㎝,横 50㎝,高さ 120㎝の製作に成功した(図 2)。ごみ箱としての内部機構の

    特徴として,容器の連

    図 2 本機外装

    ② ③

    表 1 世界のアルミ缶リサイクル率⑴

    図 1 回収部上面

    ② ③

  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野

    10

    図 3 連投対応部

    投により詰まることを防ぐため,連投対応部を備

    え,分別後の容器回収を迅速に行えるよう外壁と

    回収部を分離した。 4 研究内容 まず,材質特定に用いた静電容量センサ⑵とは,

    物体を静電容量の変化によって検知する,非接触

    センサのことである。静電容量は以下のように求

    めることができる。

    次に,磁気形近接スイッチ⑶とは,内部に永久

    磁石があり磁性体が近づくとスイッチが入る非接

    触スイッチのことである。容器判別・分別手順は,

    まず投入口すぐの連投対応部にあるマイクロスイ

    ッチ⑷によって容器が来たことを感知すると,次

    に近接スイッチが作動し,スチール缶のみを判別

    する。近接スイッチが無反応の場合,静電容量セ

    ンサが作動し,反応の有無でアルミ缶又はペット

    ボトルかを判別する。これらの手順の結果の値に

    よって,容器回収箱の上部に設置した振り分け部

    を動かすサーボモータが作動し,適切な方向に向

    け,容器を落とすことで分別が完了する。 連投対応部にはマイ

    クロスイッチを 2 つ(以下投入口側を A,排出口側を Bとする)を使用し,その間にはサーボモータ

    で上下移動する仕切りが

    ある。まず,矢印の方向

    に入ってきた容器を Aが感知すると仕切りが

    下がり,容器が移動し

    B が感知しているときは,常に仕切りを上げることで,判別部での容器の詰まりを防ぐことができ

    る。(図 3) 5 結果・考察 基本目標の 3 つの容器の判別・分別することは,

    近接スイッチと静電容量センサを使用し容器を判

    別し,サーボモータを連動させ振り分け部を動か

    すことで成功したが,問題点としては,ゴミ箱全

    体の最小化を追求したことで容器測定部の場所が

    狭く,容器が測定可能な位置に適切に落ちないこ

    とがあることだ。これは,容器が落ちるという,

    外部の影響を受けやすいという不安定な状態が生

    まれることが原因であるため,連投対応部から固

    定された状態で容器を移動させることで解決でき

    ると考える。また,応用目標の飲み残しの処理を

    行い,異臭問題を改善することは達成することが

    出来なかった。当初は測定場所で容器の測定後に

    測定場所を回転させることで,容器内の飲み残し

    を排出しようとしたが,そのためにはその機体全

    体を動かすことができる強力なモーターや回転が

    可能な大きな空間を必要とした。これは本機の構

    造上取り付けることが不可能だということが判明

    した。

    6 今後の課題 未達成の飲み残しの処理をするために,各機構

    をより連結させ,容器が分別に直接関係ない無駄

    な移動を減らすことで,ゴミ箱内により空間を設

    け,容器を回転させる機構に対応できるようにす

    ることが効果的だと考えられる。また,本機内部

    の機構を最小化することで容器の収容量を増やす

    ことができるようになる。 これらを改善することで,世界中の様々な場所

    に設置が可能になり,結果的に世界の分別率の向

    上につなげることができる。 参考文献 (1) 日本経済新聞 〈http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXNASDJ10028_R11C11A1000000/〉[参照2017/09/29]

    (2)富士エレクトロ二クス株式会社〈https://www.fujiele.co.jp/semiconductor/ti/tecinfo/news201707210000〉[参照2017/09/29]

    (3) omron 〈http://www.geocities.jp/sakanou1/disparity.html〉[参照2017/09/29]

    (4) omron 〈http://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/mic

    roswitch_tg_j_3_2.pdf〉[参照2017/9/29] (5)アルミ缶リサイクル協会〈http://www.kbsjp-cn.com/al_can_test/data/kunibetu_recycle.pdf〉[参照2017/09/29]

  • 11

    目覚まし電波時計の製作

    The Wave Alarm Clock Using Light for Doing Works at a Good Rate

    小林 寛 *,桜田 貴希 *,諸澤 和樹 *,山岡 喬志 *,大熊 康弘 **

    1 背景・目的 現代における問題の一つに,睡眠に満足してい

    ない人が多いという問題がある。Fig.1(1)によると,日本のうち睡眠に満足していない人は,全体の 5割近くにまで及び,海外でも,その数が 3割程度と,決して少なくない。このことから,この問題

    は日本だけでなく,世界全体の問題であることが

    わかる。 私たちは,その問題が Quality of Life(QoL)の

    低下,ひいては国民の生産性に影響を及ぼすと考

    えた。私たちは,その問題を解決するために,心

    地よく,確実に起きることができる,目覚まし時

    計を製作することにした。

    2 概要 2.1 電波時計 電波時計は,日本に 2か所ある送信所からの電波を受け取っている。福島県にあるおおたかどや

    山送信所と,福岡県・佐賀県の県境にあるはがね

    山送信所である。東日本は 40kHz の電波が,西日本は 60kHz の電波がカバーしている。送信所から送られる電波(標準電波)に乗っている信号は,「タイムコード」と呼ばれている。タイムコード

    とは,1Hzの方形波(パルス)であり,ASK(振幅偏移変調)を使用して,40kHzまたは 60kHzの電波

    として送られ,日本中をカバーしている。タイム

    コードには時刻などの情報が入っており,パルス

    の幅(Highレベルの長さ:時間)によって,1と 0と区切りを表すマーカー(M)に分類される。(Fig.2)

    2.2 光による内発的な起床 我々の製作した目覚まし電波時計は,太陽光を

    再現した光を用いて,起床を促している。人は睡

    眠中に太陽光を感知すると,脳からセロトニンが

    分泌される。そのセロトニンが体内時計をリセッ

    トし,結果的に生活リズムを整えてくれる(2)。そ

    のことを利用し,「直接アラーム音で起こすことで

    生まれるストレス」を回避し,比較的ストレスフ

    リーな起床を促すことを目指した。 2.3 二度寝防止機能(音デバイス) 二度寝防止のために,目覚まし電波時計(本体)

    とアラーム音を発するデバイス(音デバイス)を分離した。リレーとリードスイッチでアラーム音の

    オンオフを制御することで,アラーム音を発した

    まま,音デバイスを本体から分離させることに成

    功した。 3 機能 目覚まし電波時計を,画面表示と LED による

    発光部を搭載した本体と,音を発し,取り外しが

    可能な音デバイスの2つに分けて製作を行った。

    はい 70%

    はい 69% はい

    53%

    いいえ 30%

    いいえ 31% いいえ

    47%

    アメリカ フランス 日本 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

    睡眠に満足していますか?

    Fig.1 睡眠に関する国際調査

    Fig.2 受信の様子

    M

    0.2Sec 0.8Sec 0.8Sec 0.5Sec

    0 1 0

  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野

    12

    Fig.3 に一連の制御の流れをブロック図に示した。本体では,アンテナで感知した標準電波を受

    信モジュールで復調する。それにより得られたタ

    イムコードを Arduino(マイコン)で処理し,年月日,時分などの情報を表示させている。これによ

    り,電波時計として動作させることができる。 ただし,パワーLEDと電磁石は高電流を必要と

    する。これは Arduinoの出力電流だけでは駆動させることができないため,FETを用いて出力を増幅(PWM制御)させて駆動させた。 自分で設定した起床時間の 30 分前になると,

    搭載されている LED が徐々に光る。次に,起床時間になると,LEDが最高輝度(太陽光の再現)になると同時に,電磁石を動作させ,音デバイスか

    ら音が鳴るという流れである。

    4 展望 富山大学人間発達科学部が行った研究の結果

    を Fig.4(3)に示す。 この結果から,起床前に光を浴びることで,ス

    トレスフリーに起床することができる。これによ

    り,トラブルを少なくし, QoL の低下を回避できるのではないかと考えた。 5 今後の課題 アンテナの感度が悪く,電波の干渉を受けやす

    い場所などでは正しく受信ができなかった。その

    ため,アンテナの改良が必要であると考えた。ま

    た,本体を小型化し,外観を部屋になじむように

    することで,より多くの人に利用してもらえると

    確信している。 これらの点を改良することで,日本だけでなく,

    世界中で QoL の低下を避けることに活用できると私たちは期待する。 参考文献 (1) イケア・ジャパン株式会社:「睡眠に関する国際5都

    市比較調査」(オンライン)入手先 〈 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000006550.html〉[参照2015/10/02]

    (2)前村浩二:生体リズムの乱れを調整する3要素(光,食事,メラトニン),(オンライン)入手先 〈 https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/43/2/43_154/_article/-char/ja/〉[参照2017/09/29]

    (3)神川康子,森綾乃,野口公喜,戸田直宏:起床前漸増光が児童の睡眠と生活の質に及ぼす影響(オンライン),入手先 〈 https://core.ac.uk/download/pdf/70318817.pdf〉[参照2017/09/29]

    41%

    65%

    59%

    35%

    0% 50% 100%

    照明有

    照明無

    「起床前照明の有無」と「起床時の気分」 普通・悪かった 気持ちよかった

    Fig.4 起床前の照明が及ぼす影響

    Fig.3 ブロック図

  • 13

    表 1 様々な基準周波数の例(1)

    時代 名称など 基準周波数

    15-16世紀 ルネサンス時代 ベネチアン・ピッチ 466Hz

    16-17世紀 バロック時代 バロック・ピッチ 415Hz

    18-19世紀 古典派時代 古典派ピッチ 430Hz

    1939年 国際会議による ロンドン国際会議によって制定されたピッチ 440Hz

    現在 ウィーン交響楽団,

    ベルリン交響楽団など

    現在も使われている基準値以外のピッチ 444-448Hz

    電子オルガンの製作 ―調律機能付き合奏練習用―

    Fabrication of the Electronic Organ with a Function to Change the Basic Frequency for a Quality Ensemble Practice 有本 明広 *,内山 彩乃 *,岸本 隼 *,黒田 留以 *,松井 竜也 *,河野 志行 **

    1 背景・目的 1.1 背景

    音楽は古代西洋音楽から生まれて,そこからど

    んどん移り変わっていく中で世界中に広まってい

    った。時代の変遷によって,バロック派,古典派

    音楽といったジャンルが生まれ,それに伴い,基

    準周波数も様々に変化していった(表 1 参照)。基準周波数とは,合奏の基準になる周波数のこと

    で,その周波数の音をラとして,それを基準に,

    すべての音の周波数が決まっている。基準周波数

    が異なることで曲全体の印象が変わってくる。こ

    のように基準周波数の音楽において大きな影響を

    与えるが,普通のキーボード※1では,製造された

    時点で,出せる音の高さが,すなわち基準周波数

    が決まっているのである。これでは多数の音楽の

    ジャンルに対応できず,チューニングをする際は

    ジャンルごとにキーボードを用意しなくてはなら

    ない。そこで私たちは基準周波数を変更できるよ

    うなキーボードを作ることができれば,効率よく

    チューニングを行うことができ,合奏練習の環境

    向上につながると思いこの研究に着手した。 (※1:キーボードは他の楽器と違って湿度,温度

    といった環境に影響を受けづらいため,通常キー

    ボードがチューニングの基準になる楽器として使

    われるのである。)

    1.2 目的

    上記の基準周波数変更機能に加えて,チューニ

    ングの基準になる楽器には,「正確な音程」,「きれ

    いな音色」といった制約が課されることを考慮し,

    以下のように目標を設定した。 基本目標:①1オクターブ分の音の出力

    ②基準周波数変更機能の搭載 応用目標;①正弦波の出力※2

    ②和音の出力※3

    (※2:通常,Arduino(研究で採用したマイクロコンピューター)から出力される電気信号は矩形

    波であり,矩形波そのままではブザー音のような

    汚い音しか出力できず,正弦波に変換することで

    ラジオの時報のような綺麗な音を出力することが

    できる。) (※3:和音とは 2音以上の音が組み合わさって作り出す音のことである。) 2 研究内容 以下搭載した機能ごとに説明を行っていく。

    2.1 音の出力機構 まず音とは空気の波であり,空気の振動によっ

    て発生する(図 1 参照)。また,音の高さはその振動の周波数によって決まっている。私たちのオ

    ルガンでは,鍵盤を押すと Arduinoを通して,その鍵盤に対応する周波数の信号を出力し,スピー

  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野

    14

    カーによってそれを空気の波に変換することで,

    任意の音を発生させて

    いる。 2.2 基準周波数変更機能

    先述の通り,すべて

    の音の周波数は基準周

    波数をもとに定まって

    おり,1 オクターブ上がるごとに周波数が 2倍になるように指数関数的に定まっている。例を挙げると,ここに基準周波

    数(ラの周波数)が 440Hzのキーボードがあったとしたとき,1オクターブ上のラの音は 880Hzになる。1オクターブごとに 12鍵あるので,ラ♯は440の2

    !!"倍,シは 440の2

    !!"倍,…となっている。

    そこで,私たちは Arduinoによって基準周波数変更機能の搭載を試みた。具体的には,基準周波数

    を𝑓!としたとき,鍵盤の配列とピンの配列を対応させて,𝑓 𝑥 を出力周波数,g 𝑥 を鍵盤の位置に対応する変数としたとき

    𝑓 𝑥 = 𝑓!×2g !!"

    の計算式(2)によって Arduinoに計算させて,任意の鍵盤の音を出力させている。

    2.3 正弦波の出力 私たちは正弦波の出力を可能にするために CR積分回路と 2次ローパスフィルター回路を用いた。

    まず,CR 積分回路を通すことで矩

    形波を疑似三角波

    に直し(正確には

    三角波ではないの

    でここでは疑似三

    角波と呼ぶ。)2次ローパスフィルタ

    ーを 2回通し,疑似三角波の高周波

    成分を除くことで,

    疑似正弦波(正確

    には正弦波ではな

    い)を出力してい

    る。

    2.4 和音の出力 和音の出力を可能にするのに,初めは,周波数

    の異なる複数の電気信号を独立的にそれぞれ異な

    るピンから出力させを加算回路によって出力させ

    ようと試みた。しかし,それぞれの電気信号を独

    立して出力させるには Arduino の処理が追いつかないので,それぞれの音の波形を計算し,一つ

    のコマンドとしてそれぞれ異なるピンから電気信

    号を出力させ加算回路に通すことで和音の再現を

    可能にした。その計算を各音の組み合わせごとに

    行い,同様の処理を行うことで和音の出力を可能

    にした。 3 結果および考察・展望 以上述べてきた,機構を組み合わせることによ

    って概要で述べた基本目標,応用目標を一通り達

    成することができた。しかし,和音については,

    2和音と,一部の 3和音の出力には成功したが,4音以上の和音を出力することができなかった。こ

    れは,和音の出力を個々の和音に対して波形をそ

    れぞれプログラムで再現して出力したため,4 音以上の和音の出力を再現するには,時間,労力の

    観点から現実的に困難であったためである。今後

    の展望としては,4 音以上の和音の出力を可能にさせることであるが,今回採用した方法ではほぼ

    不可能であるため,その達成のためには根本的な

    改変が必要であると思われる。また,正弦波につ

    いても課題が残った。というのも,確かに疑似正

    弦波は出力されるものの,周波数が上がるにつれ

    て(より高い音を出力させようとすると),音がだ

    んだんと小さくなってしまうのである。これは,

    ローパスフィルター回路の性質上不可避的な欠陥

    である。ただ,この課題はすべての周波数の信号

    に対して 1つのフィルタ回路しか使っていないために生ずるものであるので,フィルタ回路をそれ

    ぞれの周波数信号に合わせて作ることで,解決で

    きることであると考えられる。 参考文献

    (1) Suginami-ku,『基準周波数A=440Hzって何?』 https://acoutis.jimdo.com/acoustics

    [accessed 2017/09/15] (2) 『音階周波数』

    http://tomari.org/main/java/oto.html [accessed 2017/09/01]

    (3) 『CR回路と時定数』 http://www.kairo-nyumon.com/rc_circuit.html

    [accessed 2017/07/12]

    図 1.音の原理

    図 2.CR 積分回路の回路図(3)

    図 3.2次ローパスフィルター回路の回路図(3)

  • 15

    防犯装置の製作

    Fabrication of Easy Setup Home-Security-Device Aimed of Increasing Penetration Rate

    川村 陸明 *,志村 拓海 *,菅井 陽太 *,豊田 丈司 *,東 栄伸 *,卯花 竜也 **

    1 研究動機 現在,一軒家での防犯装置の設置率は低く,大

    手警備保障会社が行った全国の有職男女 500人対象のアンケートでは設置していると回答した者は

    約 2割に留まっている。(図 1参照)(1)しかし,未設置の家庭の中で,費用や環境条件を考慮しなけ

    れば設置を希望するかというアンケート(図 2 参照)では,その内の 6割が希望すると回答した。このデータから,我々は設置の妨げとなっている課

    題を解決すれば,防犯装置の普及率を向上できる

    と考えた。我々は課題の原因について議論をし,

    高い設置コスト(労力・工事費)と,常時カメラ

    を稼働させることに伴う近隣住民へのプライバシ

    ー侵害の問題の,2 つが設置の課題になっていると考えた。この 2つの問題を解決した防犯装置を製作した。

    2 構想 初めに地面に差し込むガーデンライトを参考に

    設置しやすい形状を考えた。この形状により設置

    を簡単に行うことができ,かつ防犯機能を追加す

    れば課題を解決することができる。このことから

    玄関に設置し不審者接近を検知して追い払う柱状

    の防犯装置を考案した。また防犯カメラが常に録

    画をすることがプライバシー侵害に繋がると考え

    人が近づいた時のみ静止画を撮影する仕組みにす

    ることで 2 つ目の課題の解決を狙った。この防犯

    装置本体を以下親機と呼称する。さらに装置とし

    ての最低限の防犯能力と利便性を確保する目的で

    防衛範囲を広げるための子機と設定を簡単に行う

    ための WEB アプリを製作した。

    2.1 装置本体(親機) 親機の主な機能は不審者の識別とその撃退で

    ある。家主は装置を玄関前に置いて固定し,ケー

    ブルを家庭用電源に繋ぐ。次に装置上部のカメラ

    で家主の顔写真を十数枚撮り登録し,設置作業は

    完了する。装置の作動中玄関前に人が近づくと,

    図 3のように装置が作動する。顔認識機能で不審者と登録されている家主を判別し不審者の顔写真

    をメールで送信する。これにより不審者の撃退と

    特定を同時に行うことができる。

    [パーセンテージ]

    [パーセンテージ]

    設置状況調査

    設置している 設置していない

    図1 防犯装置の設置状況調査

    図 2 防犯装置の設置希望調査

    12%

    46% 30%

    12%

    設置希望調査

    図 4 親機外観 図 3 フローチャート

  • エレクトロニクス・エネルギー・通信分野

    16

    表 1 類似防犯装置との比較

    2.2 室内用装置(子機) 子機は主に室内に設

    置し防衛を行う。家主は

    窓のサッシに子機を取り

    付ける。子機にもセンサ

    ーとライトを搭載し,

    人が近づくと感知し発

    光する。人が近づいた履歴は,後述の WEB アプリで確認できる。高さと角度の調整も可能で親機

    同様に設置も簡単で利便性に優れるように設計し

    た。

    2.3 WEB アプリ 家主が装置をより簡単に使用するために WEB

    アプリを開発した。アプリでは親機と子機のセン

    サーの感度,ライトの点灯時間などを設定できる。

    親機ではそれらに加え,スピーカーの音量と音色

    の調整も可能とした。さらに両機の人接近の感知

    ログが閲覧可能で,家主は侵入の形跡をまとめて

    把握することができるようにした。

    3 結果 1 つ目の課題であるコストについては,設置に

    かかる労力は配線工事が必要な防犯カメラや警備

    保障と比べると少なくできた。機体にかかった費

    用は親機子機で合計約 12,000円となった。2つ目の課題であるプライバシー侵害では,人感センサ

    ーと顔識別機能を活用し解決にあたった。防犯カ

    メラは 24 時間周辺を録画するが,製作した装置は人を検知した時に絞って静止画を撮影すること

    で,この被害を最小限に抑えた。 4 今後の課題と展望 前述の通り最初に設定した課題は達成するこ

    とができた。よって我々は普及率をさらに上げる

    ために他の方法を模索した。そして防犯装置の防

    犯性能と利便性の向上が必要であると考えた。利

    便性向上の具体案としては,アプリでの顔写真登

    録やスマートフォンへの対応など,WEB アプリの充実を検討している。アプリでできることがさ

    らに増えれば,簡単にユーザ好みのカスタマイズ

    をすることができる。また防犯性能の強化のため

    には,顔識別の精度をあげることが求められる。

    識別の精度は,撮影する際の画質の設定や,顔登

    録に使用する学習用顔写真の枚数によって変わる。

    顔認識のテストを重ね,その検証をする必要があ

    る。その他に今後は装置を実際に家に設置して実

    証データを取り,改良を重ねたい。最終的に改良

    したものを社会に普及させ,地域全体の防犯レベ

    ルを向上することで,空き巣のいない町づくりが

    実現することを期待する。 初期費

    (円)

    維持費

    (円/月)

    当防犯装置 12,000 電気代のみ

    警備保障 50,000 6,000

    防犯カメラ 8,000~20,000 電気代のみ

    ドローン 800,000 5,000

    参考文献

    (1)[ALSOKニュース]防犯装置に関する意識調査 [参照 2017/9/30] http://www.alsok.co.jp/security_info/enquete/10.html (2)防犯対策を始めよう!はじめてのホームセキュリティ [参照 2017/10/03] https:// ホ ー ム セ キ ュ リ テ ィ 比 較 .jp/comparison /sa-cost.html (3)報道資料 2015年度版 12月 10日[参照 2017/10/03]

    https://www.secom.co.jp/corporate/release/2015/nr_20151210.html (4)価格 com 防犯カメラネットワークカメラ価格比較[参照 2017/10/03] http://kakaku.com/camera/network-camera/

    図 5 子機の画像

    図 6 システム相関