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Part6

ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6 …きぎほぎほタ奇妙セ冒険第六部タぎうめくIFくぜゐまゐ くにまょぇどヴゐみそスぎす自分ス同カンがずャ持サ空条き徐倫ゲ

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  • ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】

    オレの「自動追尾弾」

  • 【注意事項】

     このPDFファイルは「ハーメルン」で掲載中の作品を自動的にP

    DF化したものです。

     小説の作者、「ハーメルン」の運営者に無断でPDFファイル及び作

    品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁

    じます。

      【あらすじ】

     聖王教会から盗まれた『矢』を探すため、スバル達は第97管理外

    世界の麻帆良学園に行く。

     そこでスバルが出会ったのは、『立派な魔法使い』を目指すネギ・ス

    プリングフィールドと、『自分と同じアザ』を持つ空条 徐倫だった

    …。

     ジョジョの奇妙な冒険第六部の、クロスIFストーリー!

     以前、「にじファン」で連載していたものを再構成したものになりま

    す。

    『恥知らずのパープル・ヘイズ』、並びに『UQ HOLDER!』発

    表前に書いていた作品なので、設定等の繋がりはほとんどないです。

    ご了承ください。

     16/12/30 タイトルを変更しました。

  •   目   次  

    ───────────────────

     プロローグ〜夢〜 

    1

    第1章 ぼくの夢は立派な魔法使い(マギステル・マギ)

    ─────────

     #01/出席番号11番  空条 徐倫 

    9

    ────────

     #02/教師スプリングフィールドの秘密 

    30

    ──────────────

     #03/グロウン・キッド① 

    41

    ──────────────

     #04/グロウン・キッド② 

    50

    ────────────

     #05/居残り授業を受けよう! 

    62

     #06/空条 承太郎!ネギ・スプリングフィールドに会う 

    ────────────────────────────────────

    73

    ───────────────

     #07/精霊 その正体! 

    83

    ──────

     #08/遠い世界(くに)から来たテロリスト 

    95

     #09/学園長からの第一指令;『学年最下位を脱出せよ!』 

    ────────────────────────────────────

    107

    ────────

     #10/ウルトラセキュリティ図書館 ① 

    117

    ────────

     #11/ウルトラセキュリティ図書館 ② 

    125

    ────────

     #12/ウルトラセキュリティ図書館 ③ 

    132

    ────────

     #13/ウルトラセキュリティ図書館 ④ 

    140

    ────────

     #14/ウルトラセキュリティ図書館 ⑤ 

    149

    ───────

     #15/チートコードなし!期末試験に挑め 

    161

    ──────

     #16/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ① 

    172

    ──────

     #17/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ② 

    181

    ──────

     #18/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ③ 

    187

    ─────

     #19/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ① 

    196

  • ─────

     #20/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ② 

    206

    ─────

     #21/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ③ 

    220

    ─────

     #22/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ④ 

    233

    ────────────

     #23/ミッドチルダのジョジョ 

    244

    ──────────────

     #24/星のアザを持つ少女 

    256

    ───────────────────

     STANDS ① 

    267

    ───────────

     PRIVILEGE CARD ① 

    273

    ────────────────

     #EX/竜と烈火の騎士 

    276

    第2章 EVAの世界

    ──────────

     #25/エヴァンジェリンが来る ① 

    287

    ──────────

     #26/エヴァンジェリンが来る ② 

    298

     #27/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ① 

    ────────────────────────────────────

    306 #28/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ② 

    ────────────────────────────────────

    316

    ────────

     #29/アルティメット・クライシス ① 

    325

    ────────

     #30/アルティメット・クライシス ② 

    333

    ────────

     #31/アルティメット・クライシス ③ 

    342

    ────────

     #32/アルティメット・クライシス ④ 

    352

    ───────────────

     #33/ほんの少し昔の話 

    362

    ────────

     #34/ダービー・ザ・リベンジャー ① 

    375

    ────────

     #35/ダービー・ザ・リベンジャー ② 

    385

    ────────

     #36/ダービー・ザ・リベンジャー ③ 

    394

    ─────────

     #37/吸血鬼の家にお見舞いに行こう 

    405

     #38/真祖の吸血鬼(ハイデライト・ウォーカー)の襲撃 

  • ────────────────────────────────────

    416

    ───

     #39/雷&氷(サンダ─・アンド・アイス)! ① 

    426

    ───

     #40/雷&氷(サンダー・アンド・アイス)! ② 

    440

    ───

     #41/雷&氷(サンダー・アンド・アイス)! ③ 

    451

    ───────────────────

     STANDS ② 

    474

    ───────────

     PRIVILEGE CARD ② 

    477

    第3章 炎の京都

    ────

     #42/学園長からの第二指令;「親書を届けろ!」 

    479

    ───────────────

     #43/学校に住もう ① 

    496

    ───────────────

     #44/学校に住もう ② 

    505

    ────────────

     #45/家出少女がやってくる! 

    513

    ───────────────

     #46/新大阪行き超特急 

    527

    ─────────────

     #47/京都観光中異常発生中 

    539

    ──────────

     #48/京都で生まれたならず者 ① 

    550

    ──────────

     #49/京都で生まれたならず者 ② 

    565

    ──────────

     #50/そいつの名はルル・ベル ① 

    584

    ──────────

     #51/そいつの名はルル・ベル ② 

    597

    ────────────

     #52/宮崎 のどかは恋をする 

    611

    ───────────────

     #53/朝倉 和美の収穫 

    628

    ─────────────

     #54/愛と欲望のキッス ① 

    646

    ─────────────

     #55/愛と欲望のキッス ② 

    661

    ─────────────────

     #56/本山上陸作戦 

    675

    ──────────

     #57/リード・マイ・マインド ① 

    687

    ──────────

     #58/リード・マイ・マインド ② 

    701

    ──────────

     #59/リード・マイ・マインド ③ 

    717

  • ───────────────

     #60/キタッラ兄妹 ① 

    734

    ───────────────

     #61/キタッラ兄妹 ② 

    749

    ───────────────

     #62/京都嵐警報! ① 

    768

    ───────────────

     #63/京都嵐警報! ② 

    782

    ───────────────

     #64/京都嵐警報! ③ 

    802

    ─────────────

     #65/京の鬼神蘇生実験 ① 

    821

    ─────────────

     #66/京の鬼神蘇生実験 ② 

    841

    ─────────────

     #67/京の鬼神蘇生実験 ③ 

    855

    ─────

     #68/レイジングハート・エクセリオンの逆襲 

    872

    ────────────

     #69/亀のスタンドに潜む真実 

    888

    ───────────────────

     STANDS ③ 

    901

    ───────────

     PRIVILEGE CARD ③ 

    909

    第4章 ルーテシア 浮上

    ───────────

     #70/長谷川 千雨の新しい事情 

    915

    ─────────────

     #71/麻帆良に来た3人の女 

    934

    ──────────────

     #72/セブン・カラー ① 

    952

    ──────────────

     #73/セブン・カラー ② 

    959

    ────────────

     #74/怪鳥シルバークロス ① 

    969

    ────────────

     #75/怪鳥シルバークロス ② 

    980

    ─────────────

     #76/オットーは謎だ! ① 

    990

    ─────────────

     #77/オットーは謎だ! ② 

    1009

    ─────────────

     #78/オットーは謎だ! ③ 

    1020

    ────────────────

     #79/ルーテシア浮上 

    1029

     #80/ディアボリック・シークエンスとパワー・ゲート ① 

    ────────────────────────────────────

    1043

  •  #81/ディアボリック・シークエンスとパワー・ゲート ② 

    ────────────────────────────────────

    1057 ♯82/ディアボリック・シークエンスとパワー・ゲート ③ 

    ────────────────────────────────────

    1070

    ───────────

     #83/ティアナのミュステリオン 

    1083

    ─────────────────

     STANDS ④─1 

    1097

    ─────────

     PRIVILAGE CADE ④─1 

    1103

    ─────────────────

     #84/学園に潜む魔 

    1106

    ───────────

     #85/ディスタント・ムーン ① 

    1121

    ───────────

     #86/ディスタント・ムーン ② 

    1134

  • プロローグ〜夢〜

      炎に包まれた、船の機関室と思われる場所。

      そこに、二つの人影があった。

      一人は、左肩に「星形のアザ」が見られる大男。

     もう一人は、小柄な老人だ。

     その老人が、一抱えもあるガラスケースを掲げた。

      なかには、ガラスケースを満たす液体と、金髪の男の「生首」が入っ

    ていた。

      ふいに、生首の目がかっと「開かれる」と、ガラスケースは勢いよ

    く破裂する。

     生首は切断面から無数の太い「血管」を伸ばし、大男に襲いかかる。

      生首は血管の数本を首に巻き付け、数本を突き刺すと、止めと言わ

    んばかりに、男に突進してくる。

     ズドン、と重い音とともに、機関室の至る所で爆発が起こった。

     爆発した破片が男の元へ飛んでくると、男はその破片を掴み、突進

    してくる生首に突き刺した。

      瞬間、機関室を大爆発が襲い、船は爆発とともに、ゆっくりと沈没

    した──

       ☆★☆★☆★

      「───んぁ?」

    1

  •  気が付くと、見知った天井に窓からの陽の光が差し込んでいる。

     青い髪を短く切りそろえたボーイッシュな少女───スバル・ナカ

    ジマは上半身を起こすと大きく伸びをして、軽く目をこすった。

    「うーん………なんだか、変な夢だったなぁ………」

     妙にはっきりと覚えている夢の内容に、スバルは首を傾げた。しば

    し不思議に思っていたが、もうすぐ朝の訓練の時間になるので起きて

    準備をする事にした。

    (それにしても………)

     練習着に着替えようと服を脱いだスバルは、姿見に映った下着姿の

    自分の姿を見た。

      

    私・と・同・じ・ア・ザ・

    (あの男の人、『

    』があったなあ………)

       スバルの左肩には、夢にでてきた大男と同じ『星形のアザ』が見え

    ていた──

       ☆★☆★☆★

      《古代遺物管理部機動六課》

     スバル・ナカジマの所属するこの部署は、旧文明の遺物『ロストロ

    ギア』を回収することを目的とした部隊である。

     ロストロギア『レリック』に関した事件を発端に起こった大規模な

    事件、通称『JS事件』から約半年、1年間の試験運用期間終了を間

    近に控えたある日、高町なのは分隊長率いる『スターズ分隊』は、部

    隊長『八神はやて』に呼ばれ、部隊長室に来ていた。

     部隊長室にははやての他にライトニング分隊隊長であるフェイト・

    Ⅱツヴァイ

    T・ハラウオン、そして、部隊長補佐リインフォース

    がいた。

    2

  • 「…捜索任務?」

    「第97管理外世界に…ですか?」

     着いて早々、はやてから告げられた内容を聞き返すスバルと、相棒

    のティアナ・ランスター。彼女らに告げられたのは、なのはやはやて

    達の故郷でもある次元、第97管理外世界、またの名を『地球』への

    ロストロギアの捜索任務であった。

    「うん。みんなに探してほしいんは…」

     そう言いながらはやては、コンソールを操作し、全員の前に画面を

    出す。画面には、古めかしい『石の矢』が映し出されていた。

    「この『矢』なんやけどね、数日前に『聖王教会』から盗まれたものな

    んよ。」

    「聖王教会から……!」

     はやての話を聞き、スバル達は驚く。

    「この矢、かなりの曰くつきでなあ………まあ、ロストロギアなんて大

    抵は「曰く」が付き物なんやけども………」

    「数年前にこの矢を見つけた時、教会の人が2人、矢の「鏃」で手に怪

    我をしたんだけど、その後、二人は原因不明の病気に感染して死ん

    じゃったんだ…」

     はやてに次いで話すフェイトの説明に、息をのむ3人。

    「二人は全身に水泡のような腫瘍ができて、四十八時間以内にトマト

    ソースのようになって死亡したって報告があった。医師団は『矢』で

    ついた傷口から血液に『なにか』が入り、二人にウイルスを感染させ

    たんじゃないかって断定したそうだよ。」

    「うげ………」

     思わず顔をしかめるティアナ。なのはとスバルも、顔をしかめてい

    た。

    「しかも、二名中一名は、信じられない事に意識のない状態で突然、指

    先からスタンガンのような火花を放電し、治療する医師の指を焼き

    切ってしまったって報告も残っている…

     この事件から、この『矢』には『人の肉体を変質させる』力がある

    のではと考えられて、ロストロギアとして認定されているんだ…」

    3

  •  フェイトの話を聞き、黙り込む3人。ふと、ティアナはある事に気

    が付いた。

    「…ちょっと待って下さい!その矢が盗まれたって事は、盗んだ犯人

    は…」

    「うん、『矢の使い道を知っている』可能性が高いねん!そして、どう

    言う訳か犯人は、わざわざ足取りを『残しとる』!」

     はやてはそういうと、再びコンソールを操作し、画面を切り替える。

     切り替わった画面には、三つの映像が映し出されていた。

     一つは顔写真で、網のようなものの付いた帽子をかぶり、顔に奇抜

    なメイクをした若い男のものだ。

     後の二つは、多分監視カメラの映像と思われるもので、写真の男が

    写っていた。

    「男の名前は『オエコモバ』!爆破テロをいくつもの世界で起こしたテ

    ロリストや!何故こいつが矢を盗んだかは本人を捕まえてから聞け

    ばいいとして、やつはわざわざこれを残したうえに、行き先も既に分

    かっている!しかも!向かった先は管理局にとって重要な場所で、9

    7管理外世界にいくつかある『魔力溜まり』ポイントの一つなんや!」

    「魔力溜まり………」

     はやての言葉に、スバル達は気を引き締める。

    「あと、あまり公表はされていないが、97世界では2年前、小規模の

    『次元震』が観測されとる………関連はあるかわからないけれど、念の

    ために頭にいてれおくように。」

       ☆★☆★☆★

       いつの時代も、昼休みの学食とは賑やかなものである。特に女子校

    ともなれば、尚更の事であろう。

    『第97管理外世界』は日本の麻帆良学園では、一棟が大きな学食棟と

    なっており、そこの一席では、2人の女生徒が向かい合って昼食を

    4

  • とっていた。

    「………ん?」

     向かい合っていた2人のうち1人は、震えた携帯電話を開くと、受

    信したメールの内容を見た。もう1人の眼鏡の女生徒は、彼女の表情

    が変化したことに気づき、聞いてみた。

    「ん?どうかしたか?」

    日本こっち

    「いや、なんかオヤジが、近いうちに

    来るらしい。」

     その答えに、眼鏡の女生徒は怪訝な顔になった。

    「本当かそりゃ?なんでまた………?」

    「そこまでは書いてないわ。まったく、来るのはいいけど、いつも突然

    なのよねぇー、あのオヤジは………」

     少女はウンザリしたように言う。すると、眼鏡の女生徒は、少し顔

    を曇らせた。

    「………それでも、会えるのは今だけなんだから、話せることは話した

    ほうがいいぞ……?」

    「あっ………」

     少女はしまった、と慌て、眼鏡の女生徒に謝る。

    「ご、ゴメン千雨、アタシ………」

    「いや、気にしなくていいぞ?私が余計な気使われるの嫌なの、知って

    るだろ?」

    「けど………」

     千雨と呼ばれた眼鏡の女生徒はそういうが、もう一人の少女はだけ

    ど、と言いよどむ。すると、彼女の背後から3人の女生徒が近づいて

    きた。

    「やっほージョジョ!」

    「隣、いいアルカ?」

    「あいあい♪」

    「うお!?お前ら………」

     3人の女生徒はそれぞれそう言うと、ドカドカと空いていた席に座

    り始めた。

    「ねえジョジョに千雨ちゃん、聞いた?来週、新しい先生が来るんだっ

    5

  • て!」

    「え?そうなのか?確かに高畑先生って、何だか出張が多いし、ちょう

    どいいとは思うけど、イキナリだな………」

     千雨はそう言うが、ジョジョと呼ばれた女生徒はムキになり、

    「おい、ジョジョって呼ぶなって何度言えばわかんだよ!!」

    「うぇ!?ご、ゴメン………」

    「いい加減、そこは譲ってやれよ………」

         徐倫

    ジョリーン

       ☆★☆★☆★

       イギリス メルディア魔法学校

      ここでは、まさに卒業式が行われていた。

     そして、卒業した生徒たちは、卒業証書に書かれた修行先で修行を

    立派な魔法使い

    ル・

    行い、『

    』を目指すのだ。

     さて、その内の一人、赤毛でメガネをかけた少年──ネギ・スプリ

    ングフィールドの修行内容は…

    「ええー!? に、『日本で先生をやること』ぉぉおお!?」

     であった。

     「こ、校長!!いくらなんでも先生なんて!何かの間違いでは!?」

     ネギが姉と慕う女性──ネカネ・スプリングフィールドは、校長に

    取り合う。

    6

  •  確かにネギはまだ10歳である。慌てるのも無理はない。

     が…

    立派な魔法使い

    ル・

    「…しかし、すでに決まったことじゃ。

    になるには、頑

    張って修行してくるしかない…」

     校長は、そう答えるしかなかった。

    「ああっ」くらっ

    「あっお姉ちゃん!」

     校長の答えに倒れかかるネカネを心配するネギと、幼なじみのアー

    ニャ。

    「──まあ、安心せい。修行先の学園長はワシの友人じゃからの。ま

    あ、がんばりなさい。」

     不安そうなネギに、校長は、優しく励ました。

    「…はい!」

     ネギは決心し、力強く答えた。

       ☆★☆★☆★

       スバルは知らない。自分の『星形のアザ』の『因縁』を──

     徐倫は知らない。自分が巻き込まれる『事件』を──

     ネギは知らない。『黄金の意志』を持つ者たちとの『出会い』を──

     そして、「彼女」たちは知らない。『自分たち一族』の『宿命』を─

    ─     これは、一世紀以上にわたる、ディオとジョースター家の因縁の物

    語である…

     

    7

  •       ストライカーズ・オーシャン

    【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】

     始まります。

    8

  • 第1章 ぼくの夢は立派な魔法使い(マギステル・マ

    ギ)

    #01/出席番号11番  空条 徐倫

      2007年 2月末

     第97管理外世界『地球』

     日本 埼玉県 麻帆良市 麻帆良学園

    『聖王教会』から『矢』を盗んだオエコモバの足取りが途絶えたこの地

    は、明治中期に創設され、幼等部から大学部までのあらゆる学術機関

    が集まってできた都市である。大きな湖の湖畔を臨むヨーロッパ風

    に統一されたレンガ造りの街並みは美しく、学生向けとは思えない程

    の充実した施設を完備されている。そのため非常に広大な敷地を有

    しており、毎年迷子が出るとのこと。

     しかし、その実態は『魔法使いによって造られた街』であり、東西

    の『魔法使い』の生徒や教師たちが多く在籍し、街の中心にそびえ立

    神木・蟠桃

    しんぼく・ばんとう

    つ魔力溜まりの巨木「

    」を保護しつつ、日々、魔法の修行

    や学園の治安維持に従事しているのだ。

       ☆★☆★☆★

       『グリーンドルフィンストリート麻帆良』

     このマンションの206号室は、今回の任務がどれほどかかるのか

    不明であるためにスバルたち六課の拠点として、麻帆良学園学園長・

    近衛 近衛門に提供された部屋だ。2階の角部屋を相場の半額以下

    の家賃で良いと言われて提供されたので、少し申訳がないとは、なの

    はの弁だ。

     フェイトとティアナ、そして、スターズ分隊副隊長──赤い三つ編

    みおさげの少女ヴィータと、捜索任務のサポートとして来たリイン

    9

  • フォースⅡと眼鏡の女性──シャリオ・フィニーノは、運んできた荷

    物の整理を行っていた。

    「……ふう、とりあえず、必要な荷物は運べたかなー」

     大き目の段ボールを置いたフェイトが、一息ついてそういった。ふ

    と見ると、ティアナが少し不安そうな表情でいる事に気が付き、フェ

    イトは声をかけた。

    「……やっぱり心配?スバルが」

    「……ええ。まあ、年齢的に、スバルが『適任」なんだっていう事は、

    分かっているんですけれど………」

     今この場にいない相棒がいるであろう女子校エリアの方を見なが

    ら、ティアナは心配そうに呟くのであった。

       ☆★☆★☆★

       長谷川 千雨がルームメイトと共に通学路を歩いていると、その

    ルームメイトがふと前の方を見て声を上げた。

    「───お、ありゃぁ明日菜に木乃香じゃねーか。あんな所で何して

    んだ?」

     千雨もそちらを見てみると、確かにそこにはクラスメートの2人

    が、担任の高畑先生と話しているのが見えた。よく見ると、明日菜は

    なぜか大荷物を抱えた『10歳くらいの男の子』につかみかかってお

    り、木乃香はそれを止めようとしているようであった。

    「………徐倫、早く教室に行こうぜ?」

     それを見た千雨は何かを感じ取ったのか、つかつかと早足になりな

    がら言う。追ってきた徐倫は声をかけた。

    「どうかしたか、千雨?」

    「なーんか知らんが、今あいつ等に関わるとロクな事が起こらない気

    がするんだよ………朝っぱらからトラブルに巻き込まれるのは、ゴメ

    ン被るっつーの………」

    10

  •  顔を引きつらせながら、千雨は説明した。徐倫は苦笑しつつも、そ

    れに着いていった。

    「キャーーーッ何よコレーーーーッ!!??」

    「………なあ、千雨………」

    「気にするな。巻き込まれるの嫌なんだよ、私は。」

     後ろに明日菜の叫び声が聞こえたが、気にしないようにしながら2

    人は教室を目指した。

       #01/出席番号11番  空条 徐倫

        麻帆良学園女子中等部 学園長室

      今、ここには3人の男女がいた。

     一人は、人とは思えないくらい後頭部が長い老人、麻帆良学園学園

    長にして関東魔法協会理事、近衛 近衛門である

     そして後の二人は──

     「管理局より参りました、高町 なのはです。」

    「お、同じくスバル・ナカジマです。よ、よろしくお願いします!」

     そう、戦技教導官の制服を着たなのはと、麻帆良学園中等部の制服

    に身を包んだスバルだ。

     麻帆良学園都市の最深部に当たるこの「女子校エリア」でオエコモ

    バが目撃された事を受け、スバルはこの麻帆良学園女子中等部に『転

    入生』として潜入し、オエコモバの捜査と生徒の護衛の任に着くこと

    になったのだ。

    「大変な任務になるだろうけれど、ワシらもサポートするでのお。さ

    て、スバルくんには『2年A組』に入ってもらうんじゃが、実は今日、

    『新任の先生』が来るんじゃ。」

    11

  • 「え?」

    「新任の…先生?」

     学園長の発言に、二人は学園長に顔を向ける。

    「うむ、そろそろ来る頃と思うg」バアァン!

     学園長が言い終わる前に、ドアが勢いよく開いた。

    「どう言うことですか学園長ォオーーーーーーー!新任の先生はとも

    理由わ

    かく

    を言ってくださいぃぃーーーーー!!」

     入ってきた少女──ツインテールに、右が緑、左が青のオッドアイ、

    後何故か制服ではなくジャージ──は、思いっきり叫んだ。彼女の右

    手には、やたらと荷物が多く、少し困惑した表情の赤毛の少年を『持っ

    ている』。

    「アスナー、少し落ち着きー。おじいちゃん、失礼しまーす………って

    あれ?お客さん?」

     ツインテールの少女の後ろから、おっとりとした黒髪の少女が入っ

    て来る。彼女の目の前には、ツインテールの少女に驚いたスバルとな

    のはがいた。

    「おお明日菜くん、こちらはわしの知り合いのなのはくんと、今日から

    この学園の生徒になるスバルくんじゃ♪」

    「は、初めまして、スバル・ナカジマです。」ペコリ

    神楽坂 明日菜

    か あ

    「あ、そうなんだ。『

    』です。こちらこそよろしく。」ペ

    コリ

     少女──明日菜は少年を下ろし、スバルと挨拶をする。

    「はわー、先生と転入生がいっぺんに来たんかー。

    近衛 木乃香

     

     初めましてスバルちゃん、ウチは『

    』や、よろしゅー

    なー♪」

     おっとりとした少女──木乃香も、明日菜に続き挨拶する。

    「あ、よろしく。ってあれ?近衛って…?」

     ふと、あることに気づくスバル。

    「うん、このかは、学園長の孫なのよ。」

    「そうなんだー………(おじいちゃんに似ないで、よかったね………)」

     明日菜に説明されて、割と失礼な事を考えるスバルであった。

    12

  • 「まあ、二人の紹介はこれ位にして、ネギ君には、まず教育実習という

    形で『2年A組』の担任になってもらうかのう。今日から3月まで

    じゃ。」

    「…はあ。」

    「え?担任?しかも2年A組って…?」

     スバルが、今聞いたことに疑問を持ち、少年を見る。どう見てもエ

    リオくらいの年の子だ。

     この子が先生?しかも、先ほど自分が行くことになったクラスの担

    任??

    「あ、自己紹介がまだでしたね。この度、この学校で英語の教師をする

    ことになりました、『ネギ・スプリングフィールド』です。」

    「えぇーーーーーーーーーー!!?」

     スバルの叫びが、学園長室にこだました。

    「まあ、驚くのも無理は無いがのう。では指導教員の『ブルーマリン先

    生』を紹介しよう。ブルーマリン君。」

    「…はい。」

     学園長が呼ぶと、明日菜が開けて、そのまま開けっ放しのドアから、

    背の高い男がぬっと入ってきた。よく見ると『爪先立ち』だ。

     黒いスーツはボタンを全部はずし、ネクタイはしていない。白い髪

    は円柱型に盛るようにセットしてあり、角が生えている。…角?

    「指導教員の『ウェス・ブルーマリン先生』じゃ。分からないことが

    あったら、彼に聞いてくれ。」

    「ウェス・ブルーマリンだ。生徒や親しい者からは『ウェザー』と呼ば

    れている。」

    「は、はい、よろしくお願いします。(あの角はいったい…?)」

    「ああ、一応言っておくが、ウェザー先生のそれは帽子じゃよ。」

    「「「あ、そうなんだ。」」」

     安心する三人だった。

       ☆★☆★☆★

    13

  •    十分後

     麻帆良学園中等部 廊下

     「へえ、スバルさんも魔導士なんですかー。」ひそひそ

    「うん、ネギくんも、『こっちの』魔法使いだったんだね。」ひそひそ

    「いえ、まだ修行中の身でして…」ひそひそ

     ウェザー先生に聞かれないように小声で話す二人。

     あの後、先に教室へ向かった明日菜達と別れた二人は、ウェザー先

    生に連れられ、自分たちの教室へ向かっていた。

    「…ここだ」

    「えっあ、どうも…」

     いきなりウェザーに話しかけられて、驚く二人。この人は、基本的

    に無口らしい。

     ネギは、廊下の窓から教室の様子を覗く。

    (…あれ?) 

     ふと、スバルは気配のような『何かを』感じ取る。教室の方からだ。

     スバルは、ネギと一緒に教室を覗いてみた。

       ☆★☆★☆★

       2年A組

     「ん?」

     スバルと同じ『何かを』感じ取った徐倫は、読んでいたライトノベ

    ルから目を離し、廊下の方を見た。

    「…?どうした?」

     斜め前に座る千雨が徐倫の様子に気づき、声をかける。

    14

  • 「……いや、何でもない。(何だ?今のは…?)」

    「?」

     いつの間にか『何か』が消えたため、ライトノベルをまた読み始め

    る事にした。

       ☆★☆★☆★

      (消えた…何だったんだろ?今の?) 

    『何か』が消えたため、スバルは六個くらい疑問符を浮かべ、首を傾げ

    る。

    「どうしました?スバルさん?」

    「あ、ううん、何でもないよ!」

    「……?」

     心配するネギに答えるスバル。エリオ達位の子に心配されては情

    けない。

    「じゃ、じゃああけますよ。」

    「う、うん。」

    「……」

     ガラガラッ

    「し、失礼しま──」

     ネギがドアを開けた。すると、上からチョークの粉たっぷりの黒板

    消しが──

         ぱしっ

    「「「「「「「!!?」」」」」」

    (((と、止めた……!?)))

    15

  • (((できる………!)

    「…ふう、危ない危ない。大丈夫ネギくん?」

    「あれ、スバルさん?」

     ──ネギの頭上に落下する前に、黒板消しをキャッチするスバル。

    なかなかの反射神経に、何人かの生徒が感心した。

     が、

    「すいません、全然気づきませんでじだばっ!?」

     ズゴッガボンパスパスパスッゴガガガガッ

     メメタァ

    「ドベェーッ!?」

    「ネ、ネギくーーん!?」

    「「「「「「「あははははは!」」」」」」」

     黒板消しには気づいても、他にトラップがあるのには気づかなかっ

    たらしい…

    「ってあれ?子ども!?」

    「「「「「「「えぇっ!?」」」」」」」

     そこで、やっとネギが子どもである事に気づく生徒たち。いや、遅

    いよ。

    「ごめーん!新任の先生かと思ったから…」

    「いや、そいつが新任の先生だ。」

    「え?ウェザー先生?」

    「全員席に着け!ネギ先生、自己紹介をしてくれ。」

    「あ、はい。」

     全員が席に座ると、ネギはこほんとせきをした。

    「きょ、今日からみなさんに英語を教えることになった、ネギ・スプリ

    ングフィールドです。よ、よろしくお願いします。」

     緊張でガチガチになりながらも、ネギは自己紹介を終える。

    「で、こっちが転入生の──」

     ウェザーはスバルを紹介しようとするが、

    「「「「「「「かわいいーー!!」」」」」」」

    「え?え?」

    16

  • 「お、おいお前ら…」

    「うわーー!?」

     生徒たちの声に遮られてしまった。

    「ねえ、君頭いいの?」

    「どこから来たの?」

    「ほんとにもらっていいんですかウェザー先生?」

     次の瞬間、ネギは生徒たちにもみくちゃにされていた。

    「あー、おまえ等のじゃないからなー。食うんじゃねーぞー?」

     一応注意するウェザーだが、生徒たちは九割近く聞いてなかった。

     そこに、

    「いいかげんになさい!」

     バン!!

    「「「「「「「!!?」」」」」」」

     騒がしいクラスを静めたのは、机を叩く音と、高めの怒声だった。

    「皆さん、もうおやめになって。先生がお困りになっているでしょ

    う。」

     声の主──2年A組委員長・雪広 あやかは、クラスメート達に言

    う。

    「それに、」

     言いながら、あやかはスバルに手を向ける。

    「「新しい」クラスメートの紹介がまだでしょう?」

    「「「「「「「あ……」」」」」」」

    「えーと、あ、あははー、どうもー………」

    「「「「「「「す…すみません」」」」」」」

     クラスの全員が困惑するスバルに気が付き、一斉に謝るのであった

    ………

     「改めて、このたびこのクラスに転入してきた、スバル・ナカジマです。

    よろしく!」

    「「「「「「「よろしくーー!!」」」」」」」

     ようやくスバルの紹介が済み、クラスにある程度の落ち着きが戻っ

    17

  • た。

    「それじゃあ、ナカジマは長谷川の後ろの席に座ってもらおう。ちょ

    うど空いてるしな。」

    「あ、はい。」

     ウェザーがスバルの席を指示する。中央の列の最後尾、そこの廊下

    側の席だ。

     席に着き、ふと、席の隣の生徒を見た。

     まず、背が高い。座っているが、170cm以上はあるのではない

    だろうか。

     肌は白く、欧米の方の血が混ざっていると思われる。髪は、前髪は

    金髪で、後は黒。左右で団子にし、前髪の一部を後ろに回し、三つ編

    みにしている。瞳はブルー系で、スタイルも良い。

     個性豊かなクラスでも、結果目立っている部類に入るのではないだ

    ろうか。

     「スバルです、よろしく。ええっと…」

     スバルが挨拶すると、少女はスバルに顔を向け、自己紹介をする。

    空条 徐倫

    くうじょう ジョリーン

    よ。よろしくスバル。」

    「うん、よろしく。(空条さんか…変わった名前だなぁ。)」

      これが、スバル・ナカジマと空条 徐倫の出会いだった。

       ☆★☆★☆★

        放課後 麻帆良学園女子中等部 校内

    「どうだ?慣れてきたか?」

    「うん。…でも大丈夫かなネギ君…」

    「…まあ、自信をなくさなきゃいいけどな…」

    18

  •  校内を話しながら歩くスバルと徐倫、そして徐倫のルームメイトの

    長谷川 千雨

    わ ち

    』の3人。

     あの後、明日菜とあやかがケンカをするわ、他の生徒があおるわで、

    結局授業らしい授業を出来なかったネギ。初日の授業がこんな調子

    で、本当に自信をなくさなければいいが…

     そして放課後、校内を案内してやると徐倫たちに誘われたスバル

    は、こうして案内してもらっていた。まあ、二人には『別の目的』も

    あったが。

    「あ、この先が音楽室で───」

     ガラッ

    「やあ徐倫。ん?その子は誰だい?」

     不意に廊下の窓が開き、長髪にトゲつきの帽子をかぶった男が顔を

    だす。徐倫はその男の登場に、非常に嫌そうな顔をすると、踵を返し

    てそそくさと歩き出した。

    「…こっちが第二理科室だ。」

    「え?これスルーしちゃうの?」

    「ナカジマ、関わらない方がいいぞ…」

    徐倫ジョリ

    「ま、待ってくれよ

    ──────ン!」

     スルーする徐倫に驚くスバルと、スバルを男から遠ざける千雨。あ

    わてた男は窓から乗り出してくると、初めて男の全身がわかった。

     見た感じではスバルたちより3〜4歳年上で、背は180位あるだ

    ろうか。体格はいい方で、陸上選手のように引き締まっている。網

    シャツを着込み、下はレザーのズボンだ。

     徐倫に追いつき、肩を掴む男だが、

    「オラァ!!」

     ドグォ

    「ぐぼっ」

     振り向いた徐倫に殴られ、情けない声を上げながら廊下に倒れる。

    「『アナスイ』!!てめぇ懲りずにまた堂々と不法侵入しやがって!!『高

    畑』にでも通報されたいか!?」

     男──アナスイを怒鳴りつける徐倫。

    19

  • 「またって…なんなのあの人?」

    「…あいつは麻帆良大学2年の「ナルシソ・アナスイ」ってやつでな、

    徐倫のストーカーなんだよ…」

     アナスイについて説明する千雨。大学生が中学生をストーキング

    …なるほど、変態以外の何でもない…

    「ち、違うんだ徐倫!実は、これを君に渡してくれって!」

     そういうとアナスイは、ポケットから手紙を出し、徐倫に渡す。

    「手紙?誰からだ?」

    「ああ、『財団から』だ。中身は知らないがな。」

    「財団…!」

    「…そう、わかったわ。」

    「?」

     手紙の差出人を聞いた徐倫と千雨は、険しい表情をする。スバルは

    そんな二人をみて、首を傾げる。

    「じゃあ徐倫、オレはこれで!今度食事にでも行こうな!」

     そう言って、アナスイは来たとき同様窓から外に出る。

     そしてスバルは、あることに気づく。

      「…あれ?ここ『3階』じゃなかったっけ?」

       ☆★☆★☆★

      「ふう、さすがに『3階』からは派手すぎたか?」

     着地して、そう呟くアナスイ。

     徐倫たちがいたのは、『3階の音楽室の近く』だった。そこまで登る

    のに、彼の『能力』なら可能だ。

     使い方を制限されているが、ばれなければ問題ない。そう判断した

    アナスイは、『能力』を使ったわけだ。

    20

  •   が、

      ガシィ

    「うおっ!?」

     ズドォ!

    「んがっ」

     世の中、上手いこといかないものだ。

     立ち去ろうとしたアナスイの足を「雲」が掴み、彼は盛大にすっ転

    んだ。

    「イッテェ!なんだよ一体…」

    「アナスイ、あれほど目立った『使い方』はするなと言ったはずだが…

    ?」

     転ばせた張本人──ウェザーは、アナスイに話しかける。

       ☆★☆★☆★

       校内 噴水前付近

     「まったく、『財団』からの手紙なら、俺に渡せばいいものを…そんな

    アプローチしても、空条はお前にたなびかないぞ?」

    「うるせぇ!お前に徐倫の何が分かるってんだ!?」

     注意をするウェザーに反発するアナスイ。

    「…そのセリフ、お前にそのまま返すぞ…それより、『財団』から連絡

    が来たってことは…」

    「…ああ、恐らくは『矢』についてだな。」

     ウェザーの言葉に答えるアナスイ。

     彼らが言う『矢』とは、スバルたちが探しているものと同一なのだ

    ろうか…?

    21

  • 「となると厄介だな、少し警戒した方が…ん?」

     ふと、ウェザーは階段の方を向き、そこにいた者に気づく。

    「あれは…ネギくんか?」

    「あん?知り合いかウェザー?」

    「ああ、2年A組の担任だ。」

    「………は?」

     アナスイは疑問を持つ。まあ、仕方ないことだが。

    「どういうことだよ担任って?まだガキだぞ?」

    「まあ、頭はいいらしいからな、問題ないだろ。」

    「いや、そうじゃなくt」「きゃぁぁぁあああああ!」

     アナスイの言葉は、少女の悲鳴によりかき消された。振り向くと、

    階段から少女と無数の本が落ちていく真っ最中だ!

    「な、何ぃ!」

    「く!間に合うか!?『ウェザー・リポ────』」

    『能力』を発現させようとするウェザーだが、

       フワァア

    「「!!?」」

       突然、少女の体が「浮いた」!

       驚く二人だが、すぐさま、『浮いた原因』にたどり着く。

     ガシィ

     ズシャアアア

    「あたた…だ、大丈夫ですか『宮崎さん』…?」

     浮いた原因(と思われる)ネギは、少女をキャッチすると、2mほ

    どスライディングして止まる。そして少女──宮崎 のどかは、どう

    やら気絶してしまったらしい。

    22

  • 「ああ、気絶してる!?ど、どうしよう…」

    「あ………あんた……」

    「!?」

     声がして、ネギはびくりとする。恐る恐る振り向くと、驚愕の表情

    の明日菜がいた……。

      ぱしっ

    「へ?うわぁぁあああ!!?」

     その場でネギを掴んだ明日菜は、そのままネギをどこかへ連れ去っ

    てしまった……

      「「………」」

     一部始終を見ていたアナスイとウェザーは、ただ呆然とその場に

    立っていた。

     そして、最初に口を開いたのは、アナスイだった。

    「あ……あのガキ、まさか!?」

    「ああ、多分『手紙の内容』はこれだ。『ネギ・スプリングフィールド』

    !彼は────」

       ☆★☆★☆★

       数分前

     中等部 3階 女子トイレ

     「つまり、この麻帆良で『矢』が目撃されたっていうんだな?」

    『ああ、しかも何人か『射ぬかれている』らしい。』

     女子トイレの個室で、「糸」を指で摘み話す千雨。相手は徐倫だ。

     二人は現在、『手紙』の内容を確認するため、スバルと別れ、このト

    23

  • イレにいた。わざわざ『糸』で話しているのは、ほかの者に怪しまれ

    ないためだ。

     

    2年A組

    うちのクラス

    「…内の一人が『

    』にいるってぇのが気になるな。だれだ?そ

    いつは?」

    『……それが、「宮崎」らしいんだ…』

    「な!?」

     思いもしなかった名前を聞き、千雨は立ち上がる。

     宮崎?あいつが射ぬかれた?あいつが『矢』に「選ばれた」??

    「…それは、マジなのか?徐倫?」

    『確証は得られない。だから、今後「確認を」とる!とりあえず、これ

    は決定だな。』

    「ああ…で、誰がやるんだ?」

    『私かお前のどっちかだな。ウェザー先生は彼女に近すぎるし、アナ

    スイはアレだ…』

     ガチャリ

    「まあ、確かにな。でも、私はパスだぞ!メンドイし。」

    「…まあ、お前はそうだろうな。」

     それぞれ個室から出て、最終確認をする。

     ム゛ー、ム゛ー、

    「っと、どうやら『むこうの準備』が出来たらしい。」

     携帯のバイブを聞き「準備が」出来たと確認した徐倫は、千雨と共

    に女子トイレを出る。

        「よお、悪いなスバル、待たせちまって。」

    「あ、大丈夫だよ空条さん。長谷川さんも。」

     外で待っていたスバルと合流する二人。

    「…あれぇ〜〜?ごめん二人とも、私『定期入れ』教室に忘れちゃった

    24

  • 〜〜。一緒に取りに行ってくんない?」

    「え?別にいいけど…」

     少しわざとらしく言う千雨と、同意するスバル。徐倫は、千雨の大

    根役者っぷりを見て、つぶやいた。

    「…はあ、やれやれだわ。」

       ☆★☆★☆★

       同時刻

     校庭

     「う…ううう〜」ずーーーーん

    「す、すいません……」

     落ち込む明日菜と、謝るネギ。

     あの後、問いただす明日菜に対して『記憶消去魔法』を明日菜に行

    おうとしたネギだが、何がどうしたのか、記憶を消そうとして明日菜

    のパンツを消してしまった。

     しかも間が悪い事に、そこへ高畑が来てしまい、明日菜は高畑に

    ノー○ンを見られてしまう結果となった。

    「どーーーしてくれるのよーーーーー!!魔法使いなら今すぐ時間を戻

    しなさいよーーーーーー!!!」

    「あああ、本当にごめんなさい〜〜〜」

     嘆く明日菜に、ネギは謝るしかなかった。魔法使いといえど、万能

    ではないのだ。

     ガシィ

    「うひぃ!?」

    麻帆良

    「────で、何でそのちびっ子魔法使いが

    まで来て…しかも

    先生なんてやることになった訳……?」

     いきなりネギの襟を掴み問いただす明日菜。仕方なく、ネギは語り

    25

  • 始めた。

      

    立派な魔法使い

    ル・

    麻帆良

     曰く、「

    」になるための修行として、

    で先生を

    する事になったとのこと。

    「立派な魔法使い」とは、世のため人のために陰ながら力を使う、魔法

    界でも尊敬される仕事のひとつだそうだ。

     今は仮免期間のようなもので、魔法がバレたら仮免没収の上に本国

    へ強制送還されるらしい。

    「だ、だから皆さんには秘密に───」

    「………だったら、私のこと、ちゃんと責任とってよね…!」

    「…へ?」

       ☆★☆★☆★

       2年A組 教室前

     「あれ?明日菜にネギ……先生。」

    「あ、本当だ。おーい。」

     教室前で、明日菜たちに気付く徐倫たち。なお、徐倫が呼び捨てに

    しようとしたことについては流しておく。

    「あれ?徐倫に千雨ちゃん、それにスバルも…」

    「皆さん、どうしたんですか?」

    「ん?明日菜も『メール』来たから教室に来たんじゃないのか?」

    「『メール』?……あ、そうか!」

    「「?」」

    『メール』と聞いて思い出す明日菜。だが、ネギとスバルには何のこと

    だかわからない。

    「ま、教室入れば分かるよ。」

    26

  • 「そういうことだ。ネギ先生、ドアを開けてくれ。スバルも。」

    「え?あ、はい…?」

     未だに何か分からない二人だが、言われた通り教室のドアを開ける

    と───

        パパパパァーーーン!

    「「「「「「「ネギ先生!スバルちゃん!ようこそーーーー♪」」」」」」

    「「へ?」」

     クラッカーの音と、明日菜たち三人以外の生徒たちが二人を出迎え

    た。

    「二人の歓迎会をやることになってね。これ買出しね。」

    「その間、二人を教室に近づけないように遠ざけてたのよ。」

     説明する明日菜と徐倫。そう、徐倫と千雨は、スバルを教室に近づ

    けないよう、校内を案内していたのだ。

     まあ、予想外の事態はあったが…。

    「ほらほら、主役は真ん中に!」

    「飲み物何飲む〜〜〜?」

    「わ、あ、どうも。」

    「わ〜、ありがとう。コーラある?」

    「瓶ので良ければあるよ〜。」

     席に誘導される二人。相変わらずネギはもみくちゃにされている

    が。

    「はは、大人気だなネギくんは。」

    「見た目可愛いからな。」

    「ま、オレの魅力には適わないだろうがな。」

     そんなネギを見て感想を述べる高畑、ウェザー、アナスイの三人。

       …………アナスイ?

    27

  •   「って何でお前がいるんだぁぁぁあああ

    !!!!!」

     アナスイを見つけた徐倫は、近くにあった瓶のコーラを手に持つ

    と、

     ドン

    「ギャアアアス!!」

     コーラのふたを『発射して』、アナスイの額に当てた。ふたには手を

    触れずに。

    (え?何今の!?魔法!?)

    (魔力は全然感じなかったのに!?)

     驚く明日菜とスバルをよそに、徐倫は手に持ったコーラを豪快にグ

    イっと飲んだ。

    「…空条、こいつは俺が呼んだんだ。だから、いるのには何の問題もな

    い。」

    「な!?正気かよ!?こいつが何するか分かったもんじゃねーぞ!」

    「ジョ、徐倫、そんな人を変質者みたいな言い方しなくても…」

    「「「「「「「変質者じゃん」」」」」」」

    「なっ………」

     クラス全員に言われ、落ち込むアナスイ。それを見て、全員が笑っ

    た。

       そんな光景を見て、スバルは思った。

     ────この笑顔を守るためにも、『矢』を見つけなければ────

    と  ナルシソ・アナスイ──精神的に再起不能

     スバル・ナカジマ───この後、肉まん83個を完食し、クラスに

    「大食い」を認識させた。

     

    28

  •  ↑to be continued…

    29

  • #02/教師スプリングフィールドの秘密

      女子寮 徐倫と千雨の部屋

     「はぁ!?あの子供先生が!?」

    「ああ、『ウェザーとアナスイ』が、能力らしきものを使った所を見た

    らしい。見ただけだと、『風を操る』能力らしい。」

     歓迎会もお開きになり、帰宅した二人は、ウェザーたちが見たネギ

    の「能力」について話していた。

    「……つまり、しばらくは先生に『警戒』しろってことか?」

    「そうだ。どっちにしろ、ネギが『矢』に関係している可能性がないと

    は言い切れないからな。『みんな』にも、連絡は入れえてある。まあ、

    危険な能力じゃなけりゃいいが…」

     そう言う徐倫。だが、彼女らは知らない。

     ネギが、自分たちの『想像』を超越した力をもつことに………

       ☆★☆★☆★

       翌日 成田空港

      観光客やビジネスマンで賑わうここに、ある男が降り立った。

    「…やれやれ、久しぶりの日本だな。」

       #02/教師スプリングフィールドの秘密

        同日 2年A組

    30

  •  「き、起立ー、きおつけー、礼ー」

    「「「「「「「おはよーございまーーーす!!」」」」」」」

    「えー、では1時間目を始めます。教科書の27ページを開いてくだ

    さい。

     〝Two men look out through the

     same bars: One sees the mud, a

    nd one the stars.〞……」

    (お、今日は頑張ってるね〜〜。)ヒソヒソ

    (昨日失敗続きだったからな。)ヒソヒソ

     昨日の失敗を挽回すべく、頑張っているネギを見て、小声で話す徐

    倫とスバル。

    「───じゃあ、今のところ、誰かに訳してもらおうかなーー?」

     そう言うと、クラス中を見渡すネギ。だが、誰一人目を合わせよう

    としない。

     すると───

    「じゃあ、アスナさん。」

     ズルッ

    「な、なんで私なのよ!?」

    「え?だってアスナさん『ア行』だし…」

    「私は『カ行』よ!」

    「それに、感謝の意味とかも兼ねて…」

    「どんな感謝よ!?」

     文句を言う明日菜だが、はたから見たら漫才をしているようだ。周

    りからくすくす、と笑い声が聞こえる。

    「───もうっ!分かったわよ!やるわよ!やればいいんでしょ!?」

     そう言って、席を立った明日菜は、英文を訳し始めた。

    「えーっと…『2の男たちが』……『見る』?『外の棒たちを』………

    ?えーーっと?」

    「───アスナさん、英語ダメなんですね。」

     ネギが言った瞬間、クラス中が爆笑した。

    31

  • 「………やれやれだわ。ネギ、そういうのははっきり言わないほうが

    良いわよ……」

    「え?あ、す、すいません…」

     謝るネギだが、明日菜は震えている。

     ガシィイ

    「ひっ!?」

    「こ、こんのガキイィイ!!」

    「な!ちょっと明日菜さん!」

     ネギに掴みかかる明日菜と、止めようとするあやか。

     だが、

    「ふ、ふぁ…」

    「げ……」

     掴みかかった事で明日菜の髪がネギの鼻をくすぐり、そして───

    ───

    「はっくしょん!!」

     ブワアァァァ

    「き、きゃぁあああ!」

     ネギは『くしゃみ』をしてしまう。そして、『くしゃみが』原因で「風

    の魔法」が暴発してしまい、明日菜は下着姿になっしまう。

    (((((!!?)))))

    「きゃーー!」

    「ちょっと、何やってんのアスナ!!?」

     騒ぐ生徒たちだが、誰も、スバルすらも気付かない。

     この現象に異変を感じたものが『5人』いたことに………

       ☆★☆★☆★

       商店街 スーパー前

     

    32

  • 「えーっと、後買う物はありませんね。」

    「うん、じゃあ、帰ろっか。」

     買出しに出たなのはとティアナは、両手に買った食材や日用品の

    入った袋を下げ、拠点であるマンションへと向かっていた。

    「いやー、安く買えてよかったねー。」

    「はい……」

    「……やっぱり心配?スバルが」

    「……ええ。まあ、たった『2日』でバレるなんてドジやらかすとは思

    えませんが。」

     そんな風に話していたため、自分の前に『地図を見ながら歩く男』が

    いるのに、なのはは気づかなかった。

    「!!なのはさん!前!」

    「え?」

     ドシィン

    「きゃっ」

     ティアナが注意するも間に合わず、なのはは男と衝突してしまい、

    買い物袋の中身をぶちまけながら転んでしまう。

       だが!

       ドキュ!ドキュ!

    「え!?」

    「あ! !?あれぇ〜……?」

     なんとなのはは『立っていた』!袋の中身も『無事』だ!

    「お、おかしいな…今ぶつかって『転んだ』と思っていたのに…?」

    「い…今のは…?」

    「余所見しててすまなかったな……この町の地図を見ていたんでな。」

     男に謝られて、2人は男の方を見る。

     見たところ、30代後半くらいだろうか。190cm以上はある身

    33

  • 長にガッシリとした体系ながら、その顔立ちは整っている。

     服装は、襟に鎖のようなもののついた黒いコートに、星のマークの

    入ったシャツ、ズボンは蛇のウロコのような柄だ。そして、もっとも

    目を引くのが、男のかぶった帽子だ。これにも星のマークが入ってお

    り、『左手形』のアクセサリーがついている。それはいい。だが、よく

    見ると、後ろのほうが、髪と『一体化』しているように見える。どう

    いう原理なのだろう?

     以上のように、風貌はワイルドだが、知性と、物静かな態度がある

    男だった。

    「い、いえ。こちらこそ、余所見をしてすいませんでした…。」

     なのはは、男の射抜くような眼差しに一瞬ビクついたが、何とか平

    常を保ち、男に謝った。

    「…ま、お互い不注意だったってトコか。ところで、ひとつ尋ねたいん

    だが…『麻帆良学園』はこの先でいいのか?」

    「え?…ええ、そうですが……?」

    「…そうか、すまないな。」

     ティアナに道を教えられた男は、指された方向に歩いていった。

    「……なんだったんだろう?今の人…」

    「………ティアナ、とりあえず帰ろう?ね?」

     疑問に思うティアナとなのはだが、とりあえず、買ったものをマン

    ションに持って帰ることにした。

       ☆★☆★☆★

       その日の放課後、麻帆良学園都市のある建物の屋上で、双眼鏡を手

    にした男が学校から出てくる女子中学生を見ていた。

     その中で、目的のグループを発見した男は、携帯電話を開いて電話

    を掛けた。

    「───私です。お嬢様、空条 徐倫と長谷川 千雨、それと他2名を

    34

  • 確認しました。」

     ﹇わかったわ。予定通り、『初音』にあの公園まで誘導させるわ。後

    はアナタの出番よ、『サルシッチャ』。﹈

    「了解しました。」

     男、サルシッチャ・アーリオは電話を切ると、この辺の周囲の地図

    を取り出した。

     数拍置いて、サルシッチャの姿は屋上から消えていた………

       ☆★☆★☆★

       校庭 『慈愛の女神像』の前

    「はあー、またアスナさんにひどいことしちゃった…」

    「うーん、こっちの魔法は誰でも使える分、制御が難しいって聞いてた

    けど…」

     ﹇まさかここまでとは思いませんでしたね。﹈

     落ち込むネギと、何て言っていいか分からないスバル、そして呆れ

    る彼女の相棒──『マッハキャリバー』。

     あの授業中、昨日のように授業が中断するようなことはなかったも

    のの、明日菜が睨み付けてくるため、彼女の視線が痛かったネギ。今

    は、明日菜以外でネギの事情を知るスバルが、何とか慰めようとして

    いるところであった。

     ﹇まあ、『我々の魔法』は、プログラムを元に作られた術式を発動し

    ますからね。例えるなら、自動車と自転車くらいの差はあると言えま

    す。﹈

    「……自分の性能の良さ自慢してない?」

     ﹇いえ、そんなことは。それより相棒《バディ》。﹈

    「ん?何?」

     マッハキャリバーの自慢にツッコミを入れるスバルだが、マッハ

    キャリバーが何かに気づいたらしい。

    35

  •  ﹇先ほどから誰かが我々のやり取りを聞いておりますが…﹈

    「「え?」」

     「……2人で何話してるのかなぁ〜って思ったら…『そういうこと』

    だったのね〜」

    『慈愛の女神像』の陰から、明日菜が出てきた……

       ☆★☆★☆★

       数十分後、グリーンドルフィンストリート麻帆良

     この部屋には今、フェイトとスターズ分隊副隊長──赤い三つ編み

    おさげの少女ヴィータと、リインフォースⅡにシャリオ・フィニーノ

    に加え、ネギと明日菜がいた。

     今、リビングではスバルとネギは正座をさせられ、2人の前では

    ヴィータが仁王立ちしている。

    「まったく!何やってんだお前等は!!」

    「「すみません……」」

     ヴィータに怒鳴られ、縮こまる2人。

    「…ねえ、あのちっちゃい子の方が偉いの?」

    「うん、スバルたちよりは…」

     明日菜の質問に、苦笑しつつ答えるフェイト。

     そこに、リビングのドアが開かれる。

    「ただいま帰りました。」

    「どうかしたのヴィータちゃん?大声何か出して。」

     入って来たのは、買い出しから戻ってきたなのはとティアナだっ

    た。

    「おう、なのは!このバカ、やらかしたんだよ!」

    「…や、やらかしたって、何を…?」

    「じ、実は………」

    36

  •  スバルは、事の経緯を2人に話した。

    「……つまりこういうこと?『潜入2日目でいきなり魔法がバレた』

    ?」

    「Exactly(そのとおりでございます)……」

     目の前でネギと共に正座をするスバルに、顔を引きつらせながら聞

    くティアナ。汗をだらだら垂らしながらスバルが答えると、

     ドグシャア

    「ぎゃあアアァ!」

     ティアナの跳び蹴りが飛んできた。すぐさま、ティアナは『海老固

    め』をかける。

    「この馬鹿!私をナメてんのッ!何たった2日で!バレるようなこと

    してんのよ!この!ド低脳がァーッ!」

    「痛たたた!ギブギブギブゥ〜〜!!」

    『!』ごとに『海老固め』を強めるティアナと、痛がるスバル。先ほど

    自分が「やらないだろう」と信じたことを、あっさりと裏切ったのだ。

    怒るのも無理はない。明日菜やネギは、ただ呆然と2人のコントのよ

    うなやり取りを見ていた………

       ☆★☆★☆★

      「───ねえ千雨?私たちさぁー、確か「女子寮」に帰るために、「駅」

    に向っていたはずよねぇー?」

    「………ああ、そうだな………」

    駅・と・反・対・に・あ・る・公・園・の・広・場・

    「それが、なーんでまた、

    に来ちゃってるワ

    ケぇ〜?マジわかんないわぁ〜………」

     一方、徐倫達4人は、いつの間にか麻帆良公園の中央広場にまで来

    ていた。無意識のうちにここまで誘導されたようであった。すると、

    徐倫の後ろにいた2人が、口を開いた。

    「何らかの「攻撃」を受けたって事?」

    37

  • 「無意識の内にこちらを誘導してくるなんて、それ以外考えられない

    けれど………」

    「だとしたら、なにが目的だ?………まあ、心当たりは、指五本で数え

    られるくらいはあるけど………」

     4人は話しながら、周囲を警戒する。広場に人影はなく、普段の騒

    がしさとは裏腹に、不気味なほど静かであった。

     背中合わせで固まっていると、次の瞬間、頭上に青いカプセル型の

    マシンが出現し、4人に迫った!

          ズパッ

          ﹇──────────!?﹈

     瞬間、マシンは左右に斬り裂かれた!別れた半身は徐倫達に落下し

    迫ってくるが、

     ドグシャァッ

     強い力で殴られたのか、装甲に『拳の形をしたヘコミ』を作り、吹っ

    飛んで行った!哀れ謎の機械は、何が起きたのか理解する間もなく破

    壊されてしまったのだ。

    「……やれやれだわ。今の感触、ホンモノの機械のようね………」

    「けれど、高いところから落ちてきたって感じじゃねぇーなぁー

    ………まるで瞬間移動のように突然現れたようだ………」

     背中から『一対の腕』を出した徐倫と千雨が、破壊されて、火花を

    散らしながら転がる青い機械を見ながら言う。

    38

  • 「あ、ありがとう徐倫に千雨ちゃん………私の『グロウン・キッド』じゃ

    あ、今のに反応できなかったよ〜……」

    「まあ、急に現れたし、それに、グロウン・キッドの性質上、仕方がな

    いよ………」

     それより、と一点を見る少女。すると、先ほどと同型の機械や、大

    型の球体型の機械が合わせて20機近く、何の前触れもなく出現した

    !「さっきのは小手調べってトコみたいだなぁあーーー!」

     機械は中央のランプを光らせると、そこから光線を発射させた!4

    人は散開して回避をすると、徐倫と千雨は一気に距離を詰めた!

    「オラオラオラオラオラオラァアーーーッ!!」

       ☆★☆★☆★

      

    麻帆良

    「…つまり、その『矢』を探すために『

    』に来たってこと?」

    「うん、何人か犠牲者も出ているみたいで…」

     ティアナがようやく海老固めからスバルを解放し、明日菜はスバル

    たちが麻帆良に来た理由を聞き出していた。『六課』にも、犠牲者が出

    ているという情報は入っているようだ。

    「まあ、こんな派手なカッコしたやつなら、すぐ見つかりそうね!」

     手元に差し出された『オエコモバ』の写真を見てそういう明日菜。

    だが、

    「いや、普段からこんな格好な訳ないでしょ…」

    「え?」

     呆れるティアナと頷くスバルたちに、明日菜は不思議そうな顔をす

    る。なのはたちは苦笑いだ。

      そんな時だった。急に、部屋のすみに設置されたアラートが鳴り響

    いたのは………

    39

  •    ↑to be continued...

    40

  • #03/グロウン・キッド①

     「この先を左だったわね!アスナ!?」

    「ええ!それが一番『近道』よ!」

     先頭を走る明日菜は、ティアナに聞かれて振り返りながら返答をす

    麻帆良

    る。彼女は

    の地理に詳しくないティアナたちのために、道案内

    をしていた。ネギは、明日菜いわく『おまけ』みたいなものだ。

     先ほどのアラートは、「麻帆良公園」に機動兵器──通称『ガジェッ

    ト』が20機近く現れたというものだった。麻帆良の「魔法使いたち」

    はガジェットとの『戦い方』を知らない。そのために、スバルたちフォ

    ワードが出動した訳である。ヴィータも、上空から向かっている。

    「いい!?さっきも言ったけど、あんたたちは到着次第、どっかに隠れて

    んのよ!」

    「は、はい!」

    「分かってるわよ!相当『危ないん』でしょ!?」

     ティアナは、確認をとるように、明日菜とネギに言う。

    アンチ・マギリング・フィールド

     ネギは「魔法使い」とはいえ、ガジェットの『

    』の対

    抗策を知らないし、明日菜は一般人であるためだ。

    「ほら!この道を左よ!」

    「分かった!」

     明日菜に言われて曲がる4人は、「麻帆良公園」へと駆け抜けていっ

    た。

       ☆★☆★☆★

      『グリーンドルフィンストリート麻帆良』 206号室

      カーテンを閉め、証明を落としたリビングは、「司令室」と化してい

    た。

    41

  •  中央にはモニター、テーブルにはコンソールが『浮かび』、そこにリ

    インとシャーリーがついている。

     なのはとフェイトは、後ろからガジェットの動きをみていた。リイ

    ンは今、どこかと連絡しているようだが。

    「フォワードの皆さんと明日菜ちゃんたちは、最短距離で『麻帆良公

    園』へと向かっています。ガジェットたちは、公園の『中央広場』へ

    と集まっているみたいですが……」

    「…そこに、『レリック』級の『ロストロギア』があるってことかな?」

    「多分…まさか『矢』がそこに?」

     憶測を立てる二人。そこに、通信を終えたらしいリインが、なのは

    達に言う。

    「なのはさん!『学園側』が、麻帆良公園に『結界設置』を承認してく

    れたです!」

    「ありがとう。シャーリー!スバルたちに連絡を!」

    「はい!……え?」

     振り向き、通信をしようとしたシャーリーは、信じられないものを

    見た。

    「そんな……どうして……!?」

       #03/グロウン・キッド ①

       麻帆良公園 中央広場

     「やれやれだわ……何だったのこいつら?」

     徐倫は、自分たちを襲ってきた機械の『残骸』を見て呟いた。周囲

    にいた千雨や、中等部の制服を来た「二人」も機械を倒したらしく、徐

    倫の周りに集まってくる。

    「はぁ、『矢』のこともあるのに、何かスッゲー面倒なことに巻き込ま

    れたんじゃないか?私ら」

    42

  •  かったるそうに、千雨は手に持った『透けている小太刀』を弄びな

    がら愚痴る。

    「……長谷川、そう言わない方がいいよ。こいつら、『矢』が絡んでい

    るかもしれないし。」

     制服の少女のうち、黒髪の少女が千雨に注意する。彼女の両手に

    は、野球のボールほどの大きさの『鉄球』が二つ、『回転』していた。

    すると、もう一人の少女──髪を左右で留めている──が、左手の平

    を見て、何か話し始めた。

    「どうしたの………え!?うん、わかった………徐倫!誰かがこっちに

    向ってきているって………5人くらい!」

    「何………?」

    「…『こいつら』のご主人様か?」

     話を聞いて、機械の残骸をつま先で小突きながら千雨が言う。

    「どうする?全員で出迎えるか?」

    「……いや、『こいつ』で十分だろ。」

     徐倫は、髪を左右で留めた少女を指しながら言った。

    「え?私!?」

    「ああ、おまえの『グロウン・キッド』なら、「5人」くらい楽に倒せ

    るだろ?一応、ウェザー先生に連絡は入れておくからよぉー」

    「………う〜〜、わかったよ〜。」

     渋々承諾した少女は、鞄から『布』を取り出した。

       ☆★☆★☆★

       この時、徐倫たち4人は気づいていなかったが、彼女らを陰で見て

    いた者たちがいた。

    「もしもし、リーダー?」

    「聞こえる、リーダー?」

     黒い服を着た少年と、白い服を着た少女は、1台の携帯電話を2人

    43

  • でもって、交互に話す。

     ﹇───聞こえている。﹈

    「「ガジェットは、みーんなやられちゃったよ!」」

     少年と少女の二人が、同時に言う。完全に息がぴったりだ。

     ﹇それは確認済みだ。私の『アンダー・ザ・レーダー』の能力を、忘

    れた訳ではあるまい?﹈

    「それはそうだけどさ、」

    「監視をしている私たちも、任務を果たさないといけないからね。」

    「「………おや?」」

     そう話していた2人だが、ふと、少年の右手に握られていた『矢』が、

    何かに引っ張られるように先端が持ち上がり始めた事に気が付いた。

    「リーダー、『矢』が反応したよ!」

    「リーダー、近くに「才能」を持った人がいるよ!」

     ﹇そうか………誰を指すのか、見てくれ。﹈

    「「了解!!」」

     2人はそういうと、矢の先端が指す方を探す。すると、遠くのほう

    からこの公園に向けて駆けてくる一団を見つけ、更に、その中の『1

    人』を指したのを見て、2人は意外そうな顔になった。

    「………おやおや、これは………」

    「………あらあら、これは………」

       ☆★☆★☆★

       司令室

     「フェイトさん…わ…私はち…ちょいと目を離したんです…………あ

    なたもそばにいました。リイン曹長やなのはさんもそばにいました。

    でも……誰も見ていないんです…」

     シャーリーは言い終わると、気を落ち着かせようと、ガタガタ震え

    44

  • ながらコーヒーを飲もうとする。だが、

    「飲んどる場合ですかシャーリーッ!」

     ガシャン

     何故かリインに怒鳴られ、カップを落としてしまう。

    「リ、リイン、落ち着いて、ね?」

    「……どうなってるの?」

     リインを宥めるフェイトと、シャーリーに聞くなのは。

    「ほ…ほんの少しの間でした……私が目を離していたのは、たったの

    数秒だったんです……でも、あそこで何が起こったのか分かりません

    !信じられません!

     ほんの数秒目を離したうちに!『20機近くいた』ガジェットが!

    1機残らず『破壊されていた』んです!!」

       ☆★☆★☆★

       麻帆良公園 中央広場

     「な……何だよこれ…?」

    「誰がこんなに沢山のガジェットを……?」

     スバルたちの目の前に広がるのは、破壊されたガジェットが『散ら

    ばる』中央広場だった。

     何発も殴られたようなヘコミがあるものや、輪切りや袈裟掛けに斬

    り裂かれたもの、何か『球体』をぶつけられたものに、強い力で『締

    め付けられた』ようなもと、様々な壊され方をしていた。

    「…これだけ『壊され方』が様々なのは、『集団で戦った』ってことで

    しょうか?」

    「多分ね。それも、『魔力を持たない連中の』ね。」

     推測するネギと、それに付け足すティアナ。そこに、明日菜の疑問

    が飛ぶ。

    45

  • 「え?なんで『魔法使いじゃない』って分かるの?」

     明日菜の質問に、球状のヘコミのついたガジェットⅢ型の装甲を拾

    うヴィータが応えた。

    「…ガジェットには、「AMF」という、魔力を消すフィールドを発生

    させることができんだ。『こちらの』魔法使いたちは、AMFの環境に

    慣れていないから、『魔力強化していないただの刃物や拳でこれを

    やってのけた』ことになる………」

    「……ふ、ふ〜〜ん…?」

    「……その様子じゃあ、あんま分かってないわね……」

     明日菜の反応に、ため息をつくティアナだった。呆れながらもガ

    ジェットの残骸を見ていると、ふと、視界の端で動くものを見つけた。

    「ん………?」

    「ティア?どうかしたの?」

    「?」

     スバルが声をかけると、ティアナの視線の先を見た。ヴィータ達も

    それに気が付いて、視線を追った。

      見つけたものは、『緑色の布』であった。

      大きさはおよそ2.5m四方と、意外と大きい。それが、バサバサ

    と音を立てながら、ヴィータたちから少し離れた場所に落ちた。

     いきなり現れた布に警戒するスバルたち。一番近い位置にいたネ

    ギとヴィータは、ゆっくりと布に近づいて行った。

    「……何か妙ですね。誰かに見られているような…」

    「確かに……だが、周りに隠れるような場所はない!だが…まさかだ

    よな……!」

     そう言って、ヴィータが布に手をかけて、めくってみる。

      布の下には──

      

    46

  •     何もなかった。

    「……だよなぁ〜〜〜」

    「そんなことありませんってぇ〜〜〜気のせいですよ〜〜」

     ヴィータが布をポイッと放ると、ほっとしたのか、笑い出す二人。

     だが!

     「二人とも!後ろ!」

     ドギャァアン

    「え?うわっ」

    「なんだ!?」

     いきなり、二人の間を『パンチ』がすり抜け、思わず避ける二人!

    そのままパンチは近くのガジェットの残骸に突き刺さる!

    「こ、これは!?」

    「何だよ!この『腕』は……!?」

     そこにあったのは「緑色の右腕」だった。肩の付け根に穴があいて

    おり、中は『空洞』だ。