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ラグジュアリーブランドの経営戦略と市場 ~ロシアにおける市場拡大の可能性~ 湯本

ラグジュアリーブランドの経営戦略と市場katosemi/semi/4thyPDF/yumoto.pdfそこで本研究の目的を2つに絞る。一つ目は、創業から現在まで世界中に人気を集めて

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  • ラグジュアリーブランドの経営戦略と市場

    ~ロシアにおける市場拡大の可能性~

    湯本

  • Ⅰ.はじめに Ⅱ.ブランドとは Ⅲ.ラグジュアリーブランドの経営戦略:グッチ 1.歴史 2.4P分析から見る経営戦略 3.まとめ Ⅳ.ラグジュアリーブランドの経営戦略:エルメス 1.概要 2.エルメスの強み 3.まとめ Ⅴ. 世界市場 Ⅵ.ロシア市場 1.現状 2.GDPと市場規模から見る市場拡大の可能性 3.消費行動の特徴から見る市場拡大の可能性 Ⅶ.おわりに

    参考文献

    Ⅰ.はじめに

    「ブランド」と聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。 多くの人がエルメス、シャネル、ルイヴィトン、グッチ、Dior、プラダといったブランドを思い浮かべるだろう。これらはファッションブランドであり、大別するならば「ラグジュアリーブランド」となる。2000年代以降、ユニクロや H&M を代表とする高品質・低価格のファストファッションが世界的に人気を集めるようになってきた。しかし、ファストファッションが人気を集める一方で、ラグジュアリーブランドは業績を落としてきた訳ではない。もちろん、各ラグジュアリーブランドの長い歴史において業績が低迷した時期もある。しかし、昨今のグローバリゼーション下において、各ラグジュアリーブランドは世界的にも人気を集めており、決してファストファッションの人気に影を潜めていない。<図表1>を見てもらうと分かるように、多くのラグジュアリーブランドが売上前年比を伸ばしておりこの傾向が近年続いているのだ。2017 年の世界ファッションラグジュアリー市場は 2620億ユーロ(約 35 兆 600 億円)であり前年比の5%増加となった。また、ベイン・アンド・カンパニーによると今後3年間、年に 4~5%のペースでファッションラグジュアリー市場は成長し、2020年には金額にして 2950億~3050億ユーロ(約 39兆 4700億~40兆 8100億円)に達するだろうと予想されている 1。

    1 FASHION Network

    https://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3

    https://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.html

  • 図表1 ラグジュアリー企業の収益率と商品回転 2017

    引用:商業界 ONLINE http://shogyokai.jp/articles/-/557

    そこで本研究の目的を2つに絞る。一つ目は、創業から現在まで世界中に人気を集めているラグジュアリーブランドの経営戦略について考察していく。とりわけ、グッチとエルメス2つのラグジュアリーブランドを取り上げる。この 2つのブランドを創業の歴史から遡り、どのような経営戦略を立ててきたのかを研究し、世界中に確固とした地位を築き上げてきた理由を解き明かす。 二つ目は、先進国においてラグジュアリーブランドの市場は飽和状態になってきている

    ため、先進国と比較して市場開拓に余地のある BRICs諸国、特にロシアにおいてラグジュアリーブランドが市場を拡大する可能性があるのかについて研究していく。 本論文では「ラグジュアリーブランド」という言葉を使用するが、「ラグジュアリーブランドの構成要素に関する先行研究の展開(金順心)」を参考に、ヨーロッパ発祥のファッション関連有名ブランドかつ、ファッション・レザーグッズ・ウォッチ・ジュエリー・香水・化粧品分野を扱っているブランドをラグジュアリーブランドとここでは定義する2。

    Ⅱ.ブランドとは

    ラグジュアリーブランドの経営戦略について考察する前に、そもそもブランドとは何なのか説明する。ブランド(brand)とは、他人の牛から自分の牛を区別するために牛のわき腹に押した焼印が語源であると言われている。現在、アメリカ・ブランドマーケティング協会は、ブランドとは「ある売り手、あるいは売り手の集団の製品およびサービスを意識し、競合他社の製品およびサービスと差別化することを意図した、ブランド要素(名

    %83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.html

    (2019/11/19 最終アクセス) 2 金(2010)71 頁

    https://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.htmlhttps://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.html

  • 称、言葉、記号、シンボル、デザイン)を組み合わせたもの」3であると定義している。また、ブランド研究の第一人者である Aaker(1991)はブランドを「ある売り手あるいは売り手のグループからの財またはサービスを識別し、競争業者のそれから差別しようとする特有の名前かつ、またはシンボルである」4と定義している。 ブランドの有用性には次の点が挙げられる。消費者にとっては、①製品の製造元の識

    別、②責任の所在の明確化、③探索コスト、時間の節約、④リスクの低減、⑤品質のシグナル、⑥イメージ、ライフスタイル、自己実現欲求の投影である。企業にとっては、①製品の差別化とポジショニングの明確化、②ロイヤルティの高い顧客の獲得、③法的(商標権など)によるユニークな製品特徴、④競争相手に対する優位性の構築、⑤売上高の増大と長期的な安定、⑥プレミアム価格の実現、⑦価格の安定、⑧利益率の向上である 5。 また、ブランドは大きくナショナルブランド(NB)とプライベートブランド(PB)に

    区別される。前者は商品を製造するメーカーによるブランドで、ほとんどのブランドがこれに該当する。後者は、小売業者や卸業者などが開発したブランドであり、近年需要が高まっている。プライベートブランドの例としてはトップバリュや ZOZOTOWN やAmazon が自社製品を製造、販売していることなどがあげられる。この論文では、ナショナルブランドであるグッチとエルメスの2つのブランドについて研究を進めていく。

    Ⅲ.ラグジュアリーブランドの経営戦略:グッチ

    まず初めにグッチを取り上げる。グッチを取り上げた理由は、かつてグッチが同族経営の弊害によって他のブランドでは見られないほどブランド価値を大きく損ねた歴史を持つからだ。もちろん、各ラグジュアリーブランドは長い歴史においてそのブランド価値を損ねた時期がある。しかし、グッチほどブランド価値を下げ、現在では再建し世界でも人気の高いブランドの地位を確立しているブランドは他には存在しない。そこで、グッチの再建には何か効果的な経営戦略があるのではないかと考えた。この論文では、グッチを創業期、低迷期、再生期の 3つに時代区分する。グッチの歴史に触れた上で、それぞれの時期の経営戦略を比較することでブランドにとってどのような経営戦略が有効なのかを考察する。その際にはマーケティングミックスの 4P 分析を活用して分析を進めていく。 3.1グッチ歴史 (グッチ創業期)

    1921年にグッチオ・グッチがフィレンツェに革製品を販売する店舗をオープンしたのがグッチの始まりである。当初はドイツやイギリスの革製品を仕入れ、フィレンツェに訪れる観光客を中心に商品を販売していた。また、工房を所持しており修繕事業も営んでい

    3 AMERICAN MARKETING ASSOCIATION https://www.ama.org/(2019/09/10 最終アクセス) 4 水野(2005)2頁 5 同上

    https://www.ama.org/(2019/09/10

  • た。元々頑丈な製品に熟練職人による修理をおこなったため、次第にグッチは人気を集めるようになっていった。特に修繕事業はグッチにとって大きな収益源となり、それに伴い大きな工房を設立した。工房で自社製品を製造・販売して、その修理を行う事業も拡大したことにより現在の事業形態の基盤を築いたのだ。革が輸入禁止になった時代にはキャンバス地などの新しい素材を採用したことによって、財布やベルトなどの革小物製品の生産・販売を始めた。こうして商品も多岐に渡るようになったグッチは第二次世界大戦後に世界的に有名なラグジュアリーブランドへと成長していった。 (グッチ低迷期) アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港などに市場を拡大したグッチは当時絶頂期を迎えていた。そのことを表す言葉に「私たちの会社をつぶせるような奴はこの世に存在しない」というアルドの伝記が残っている 6。しかし、その拡大には歯止めが効かなくなっていった。グッチはあらゆる製品の生産を拡大し、バック、香水、5ドルのキーホルダーなど、その商品カテゴリーは限りなく増え続け、果てにはグッチのロゴの入ったコーヒーカップまで発売されていた 7。そこに、長年に渡る経営に関する家族間の抗争が加わりグッチはブランド価値を大幅に下げてしまったのだ。その結果、1991~1993 年にかけて、グッチの損失は 1 億 200 万(約 110 憶円)ドルに上ったのである 8。 (グッチ再生期) そんな低迷期のグッチを再建するために当時グッチに介入していた中東の投資会社イベントコープは 1994年にグッチ家のマウリツィオを辞任させ、アメリカグッチの CEO であったドメニコ・デ・ソーレを本社 COO に任命した。また、クリエイティブディレクターにトム・フォードを任命。デ・ソーレとトム・フォードはグッチウーマンの新しいイメージを打ち出し、また、価格、広告、流通などにおいて改革を行なった。その結果、グッチは消費意欲の高いファッション志向顧客獲得に成功し、売上を 1994年からの約2年間で約 3倍以上に向上させたのだ 9。また、1992年にはマイナスだった営業利益率も 1995 年以降は 20%を超える水準となり急速な伸長を遂げたのである 10。 3.2 4P分析から見る経営戦略 次にグッチの経営戦略、とりわけブランドマネジメント手法の成功要因を探っていく。

    ここではマーケティングミックスの4P(Product, Price, Place, Promotion)を活用してグッチのブランドマネジメント手法について分析していく。その際にラグジュアリーブランドの地位を確立した創業期、ブランドとしての地位を失墜してしまった低迷期、そこからの再生期の 3つのフェーズを中心に考察することで違いを明らかにする。しかし、広告の

    6 中村(1998)22 頁 7 長沢(2014)57 頁 8 長沢(2014)59 頁 9 長沢(2014)60 頁 10 同上

  • 低迷期にはあまり変化が見られないため創業期と再生期にのみ言及することとする。 ・Product(製品) 創業期はグッチオ・グッチを始めフィレンツェの熟練職人たちと共に高品質の製品を製作していた。熟練職人たちに安定した仕事を供給したことで職人たちはさらに高度な技術を身に付け、グッチの品質の向上へとつながっていた。また、グッチはこの時期に現在のアイコンの一つである竹材を使用したバンブーハンドルバッグやキャンバス地バッグなどの数々の斬新な新製品を開発した。低迷期にはライセンスの乱発やグッチ一族が各々に製品を発売したことにより、灰皿やライタ―にグッチのロゴを配した製品が出回り、品目数は約 2 万 2000 種にも及んだ 11。そのため、グッチの製品には質が低いものも存在し製品にばらつきが出ていたのだ。再生期には本来のラインに沿わない製品のライセンスを打ち切り、本来の高級革製品にライセンスを集中させた。その際に CEO のドメニコ・デ・ソーレはトスカーナの提携業者を全て訪問し、高い品質を保証できる業者のみと契約を交わしたのだ。そうすることでグッチは再び絶対的品質を追求することを実現させた。また、世界的なデザイナーであるトム・フォード監修のファッショナブルな新製品を次々と発売した。 ・Price(価格) 創業期はイタリアの富裕層やヨーロッパの富裕旅行者、ハリウッドスターなどの著名人富裕層をターゲットとして高価格で製品を販売していた。しかし、単に価格が高いだけでなく同時に価格以上の品質の良さにこだわり、顧客にとっての適正価格を目指した。低迷期には品目数が 2万 2000 種にも及んでいたこともあり、製品の価格は数ドルから数千ドルに至るようになっていた。再生期には安価な商品群を一掃することで、再び高級品のみを扱うことになった。しかし、価格は創業期と比べ平均して約 30%引き下げた 12。グッチの人気商品であるバンブーバッグは約 1350ドルから約 950 ドルまで価格を下げて販売した。こうすることで顧客にとって価値ある品質と価格を追求した。まさにかつての適正価格の追求を再現したのだ。 ・Place(流通チャネル) グッチオはブランドのコントロールやリスクを慎重に考え、フィレンツェ、ミラノ、ローマなどのイタリア主要都市の直営店のみに出店を制限していた。その後、息子のアルドの意向により初の海外店舗をニューヨークに出店した。直営店には多額の投資を行ない、内装を豪華にすることで高級感を生み出していた。低迷期にはグッチの絶頂期に伴い直営店だけでなく FC 店による出店も多数おこなっていた。直営店が減少したことによりグッチのブランドイメージが伝わりにくくなり、店舗の拡大によりグッチはどこでもすぐに買えるブランドとして消費者に認知されるようになってしまったのだ。再生期には多様化し

    11 長沢(2014)74 頁 12 長沢(2014)76 頁

  • ていた流通チャネルを直営店、一部の FC 店、百貨店、免税店に絞った。1995 年に 65 店であった直営店は 1998年には 126 店舗にまで増加した 13。さらに、デ・ソーレは百貨店や免税店に直接足を運び、ブランドイメージに沿わない店舗をすぐに閉鎖したのだ。また、デザイナーのトム・フォードは直営店の改装にも携わり、積極的な投資を行うことで、直営店を活用したブランドイメージの普及に努めた。 ・Promotion(販売促進) 創業期には首都ローマに出店していたため、多くのハリウッドスターが来店するようになりそれによる宣伝効果が持たされた。また、映画俳優だけでなく即位前のエリザベス女王などが来店することによるパブリシティを活用して宣伝をしていた。再生期には広告費に積極的投資を行ない、ファッション雑誌などを通してプロモーションをしていた。93 年に売上の 2.9%であった広告費は 2000 年には 13%にまで上った 14。また、スター的存在であったトム・フォード自身が広告塔として宣伝活動をおこなっていた。トム・フォードが手掛けた直営店のオープンなどは各国のメディアの注目の話題となり全世界でグッチは注目を集めるようになった。 3.3 まとめ グッチはその長い歴史において繁栄と没落の両方を経験したブランドである。その経験を経て現在グッチは世界で人気の高いラグジュアリーブランドの地位を確立している。そのことを可能にしたのは主に4P(製品、価格、流通、広告)を中心とした改革であった。世界的なデザイナーを雇い、製品の質を保ちつつ価格を少し下げることで幅広い顧客を獲得。直営店を増やすことでブランドイメージを消費者に正確に伝え、広告に多額な投資したことでグッチは低迷期を抜け出し、再びトップブランドにまで登りつめたのである。そして、現在グッチは時代の流行を読み取り他のブランドに先駆けて販売を強化しているチャネルがある。それはオンライン市場だ。オンライン市場は 2017年にラグジュアリー市場の販売チャネルで一番大きな伸びを見せた 15。この傾向は今後も続くと見られラグジュアリーブランドにとって魅力的なチャネルとなっている。そんな中、グッチのウェブサイトのトラフィックは 2018年に前年と比較して 2倍以上増加し、2018年度のオンラインショップ訪問数は 1月の約 180万から、12月には 420万余りにまで増えた 16。サイ

    13 長沢(2014)77 頁 14 長沢(2014)78 頁 15 FASHION Network

    https://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.html (2019/11/19 最終アクセス)

    16 Forbes https://forbesjapan.com/articles/detail/19515 (2019/11/14 最終アクセス)

    https://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.htmlhttps://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.htmlhttps://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.htmlhttps://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.htmlhttps://jp.fashionnetwork.com/news/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-2017%E5%B9%B4%E3%81%AF5-%E5%A2%97%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E5%82%BE%E5%90%91,884249.htmlhttps://forbesjapan.com/articles/detail/19515

  • トへのアクセスは売上につながるのが合理的であると考えると、オンライン市場においてグッチは他のラグジュアリーブランドよりも有利な立場に立っている。このようにグッチは時代の流れに素早く対応することで市場において更なる成長を遂げようとしている。

    図表2 グッチ創業期、低迷期、再生期における 4P 分析

    4P 分析 創業期 (1921~1973 年)

    低迷期 (1974~1993)

    再生期 (1994~2004 年)

    Product ・フィレンツェの熟練職人による高品質な革製品という絶

    対的品質。

    ・素材不足から生まれたバン

    ブーバッグ、キャンパス地バ

    ッグなどの新製品の感性品

    質。

    ・ライセンスの濫発や

    グッチ一族が各々に製

    品を発売したことによ

    り、ライターや灰皿な

    ど品目数が 2 万 2000

    種にも及ぶ。

    ・それに伴う質の低

    ・業者とライセンスの絞り

    込みによる絶対的品質の追

    求。

    ・トム・フォード監修ファ

    ッション性の高い独自の感

    品質の追求。

    Price ・イタリアの富裕層や観光客・著名人対象の高価格。

    品質に対しては顧客にとって

    適正価格。

    ・ステイタスシンボルとして

    の絶対的価値。

    ・品目数の増加により

    値段は数ドルから数千

    ドルにまで至る。

    ・本来の高級製品への絞り

    込みによる高価格。

    ・品質の向上と価格の見直

    しによる適正価格。(価格を

    平均して 30%引き下げ。)

    Place ・フィレンツェ、ローマ、ミラノなどイタリア国内とニュ

    ーヨーク5番街。

    ・直営店による店舗展開。

    ・アメリカ、ヨーロッ

    パ、日本など全世界に

    出店。

    ・FC 店による店舗拡大

    のためブランドイメー

    ジが低下。

    ・直営店中心の限定したチ

    ャネルへの徹底した絞り込

    み。

    ・トム・フォード監修の直

    営店改装への積極的な投資

    でブランドイメージを反

    Promotion ・映画などのメディアや各界の著名人に製品が使用される

    ことによるパブリシティを活

    用。

    (省略)

    ・ファッション性の高い広

    告宣伝に特化。

    ・トム・フォード自身や旗

    艦店のオープン、リニュー

    アルによるパブリシティの

    出所:長沢伸也「グッチの戦略」(2014)73、81頁を基より作成

    Ⅳ.ラグジュアリーブランドの経営戦略: エルメス

    続いてエルメスを取り上げる。なぜエルメスを取り上げたかというと「老舗ブランド」

  • であり、世の中からは「ブランドのなかのブランド」と呼ばれるほどラグジュアリーブランドの中でも異彩を放っているからである。また、高級ブランドの国際的なグループ化が進む中で、エルメスは創業から現在まで徹底した同族経営を行なっており独自の路線を一層強めている。そのため、ブランドについて論文を書く上で業界の中でも圧倒的存在であるエルメスを取り上げることは必然であると考えた。ここではエルメスの歴史に触れた上で、なぜエルメスが業界において圧倒的存在であるかを考察していきたい。 4.1 エルメス歴史 エルメスは 2020年には 183 年の歴史を数えるが、その立役者には歴代 5 人の社長を挙げることができる。知名度のわりに小規模であり、先述したようにエルメスは徹底した同族経営を行なっているため社長の意向は全てを左右する。そのため、エルメスの歴史とは各 5人の社長の歴史と同然なのである。ここでは代ごとに区切りながら歴史を遡ってみる。 エルメスは 1837 年に初代ティエリ・エルメスによって馬具専門店として創業されたのが始まりである。その機能性やデザインによって着々と評判を高めていくと皇帝御用達の馬具職人となり、1867年には万国博覧会において銀賞を獲得。宮廷と万国博覧会、エルメスは公式の場において品質を保証され最高級馬具工房として認知されるようになった。この時代に馬具やフランス宮廷文化という「イメージ」、最高級の原料と伝統の職人技術にもとづいた「品質」、そして手仕事による「希少性」の高さというエルメスの原点が形作られたのだ 17。 二代目のシャルル・エミール・エルメスの時代にはパリ万博でエルメスの鞍が金賞を受賞した。これによりエルメスは世界的にも認められ、各国の皇族などが主要顧客となっていた。しかし、その一方でベンツやダイムラーが自動車を発表し、ヨーロッパでは鉄道が各地で普及するなど馬具工房であるエルメスは存亡への道を確実に歩み始めたのである。 この危機を打開したのが三代目であるエミール・モーリス・エルメスである。エミールは自動車の時代に決して馬具製造に固執するのではなく、馬具製造の伝統を生かしつつファッション部門への転身を図ったのだ。つまり、現在のエルメスの基盤はこのエミールによって確立されたのである。エミールは日本やロシアなどいまだ馬具の需要がある外国に販路を拡大すると同時に、フランス国内においては商品の多角化を進めていった。この時代には鞄、財布、ベルト、香水、エルメスの代名詞でもあるスカーフが販売されるようになった。革や縫い方など馬具技術を活用しながら商品を作ることで、全く違った分野に進出したにもかかわらずそれまでのエルメスの伝統や技術を踏襲することに成功したのだ。また、ポスターに馬のデザインを採用し、商標には四輪馬車を採用するなど馬具工房としての伝統が強調されている。エルメスの原点を明確にしたうえで、時代のニーズに即した製品作りと、効果的なイメージ戦略の結果、現代の強力なブランド力の基礎を確立したの

    17 戸矢(2004)22-23 頁

  • が三代目のエミールである。 続いて就任したのが四代目のロベール・デュマ・エルメスである。ロベールの当面の課題は新規参入したシルクと香水部門を軌道に乗せること、また、多岐に渡った事業の安定を図ることであった。ロベールの功績としては当時他のブランドがライセンスを濫発していた時期に、一切ライセンス生産を行わなかったことである。他のブランドが自らの価値を下げる一方で、エルメスは流行に乗らなかったことでブランド価値を維持できたのだ。しかし、その一方で消費者に対して古臭いというイメージも植え付けてしまいエルメスは時代に遅れをとることになってしまった。 ここから再生を果たしたのが現当主であるジャン・ルイ・デュマ・エルメスだ。デュマはそれまでにはなかった斬新な広告を活用し、同時に時代のニーズに沿った新製品の開発を積極的に行なうことで若者の関心を集め人気を回復させていったのである。また、ルイヴィトンなどが大規模な店舗展開や広告、手ごろな価格での製品発売をしているなかで、デュマ率いるエルメスは職人技術にもとづいた品質を強調し、販売数も限ることで「憧れ」のブランドとして君臨するようになったのだ。 4.2 エルメス強み エルメスの歴史を振り返っただけでもブランドとしての強さの理由を少しは理解していただけたかと思う。この章ではエルメスの隠された強さをより具体的に考察していきたい。しかし、現当主であるデュマやエルメス本社副社長を経験した斎藤によると「エルメスはマーケティングをしていない」というのである。各ラグジュアリーブランドがこぞってイメージ戦略やマーケティングによって市場の獲得を目指しているのに対してエルメスはそのようなことをしていないのだ。ここではエルメスがどのような思想を持ち歩んできた結果、ブランドのなかのブランドと呼ばれるほどに成長したのかを明らかにする。 ・マーケティング 先ほどエルメスはマーケティングをしていないといったが、実際にエルメスにマーケティング部門は存在していない。このことはエルメスが利益拡大や新市場獲得のためにマーケティング戦略を重視しているのではなく、良い商品を作り顧客に喜んでもらうことに最も重点を置いているということを顕著に表している。近年、ラグジュアリーブランドを取り巻く環境は急激に変化しており、多くの企業が大量消費を前提としたマーケティング戦略をとるようになってきた。商品は低コストで生産可能な国で作り、ブランドに憧れる層が少しお金を出せば買えるリーズナブルな価格に設定することで新規顧客を獲得し、シェアの拡大を狙う。また、セレブリティを使った大胆な広告に多額な投資を行い、年に二回コレクションショーを開催することで流行の最先端という付加価値を作り上げている。このように多くのラグジュアリーブランドが流行を作り上げ、大量生産して販売することで利益を出しているのが現在のラグジュアリーブランドを取り巻く環境なのである。しかし、このような時代においてエルメスはラグジュアリーなイメージだけ打ち出して、手に

  • 届きやすい価格のものを作るマーケティング戦略を良しとしてこなかったのである 18。デュマはインタビューで「エルメスは百六十年にわたって時代の先端であるよう努めてきたが、六ヶ月ごとに変わるようなファッションの中に、身を置くことはしていない」19と答えている。また、「成功する商品とは、“売れる商品”ではなく、作り手の意図が余すところなく反映されたモノ。顧客を驚かせ、彼らの想像を超えた製品を提供することが、我々の使命です」20と講演会では話している。このようにエルメスにとってマーケティングとは顧客にとって真に良いものを作ることであって、価格や広告における戦略を立てることではないのだ。エルメスのマーケティング費用の中には「コミュニケーション」というものが存在する。これは主にファッションショーや展覧会、イベントなどに使われる費用のことであり、どれもエルメスの商品や、職人の仕事ぶりを体験できるものとなっている。他のブランドがセレブリティを用いた広告費に多額投資する一方で、エルメスはモノの価値や仕事ぶりを伝えることで顧客の満足感を高めているのだ。創業から顧客の満足度を高めることに重点を置いてきたのがエルメスというブランドであり、そのことによりエルメスは最高級のブランドとして扱われるようになったのだ。 ・職人 そんなエルメスの質の良さを実現しているのは紛れもなく従業員の三分の一を占める職人である。多くのブランドが工場で機械を使い効率的に低コストで製品を製造しているのに対して、エルメスはあくまでフランスにおける手仕事のモノ作りにこだわり続けている。エルメスの製品が他のブランドと比較して高価なのはラグジュアリーというイメージを打ち出したいからではない。フランスにいる優秀な職人が代々受け継がれてきたエルメスの技術を活用し、一つ一つ精密に作り上げているからこそ価格が高いのだ。 エルメスの製造過程で特徴的なことが一つある。それは分業して製品を作るのではなく

    一人の職人が商品の完成までを受け持つことだ。エルメスの中でも人気が高いバックはひとつ作り上げるだけで優秀な職人でも約十八時間、丸二日以上かけて一人の職人が作るのだ 21。利益拡大や効率を考えれば手仕事で作るのをやめ、機械などを導入して作ることも可能だが、先述した通りエルメスはあくまでも「質」を追求しているのだ。需要に対する職人の数を揃えることが難しいため、数年にわたって顧客を待たすこともあるがエルメスはこだわりを貫いているのだ。また、エルメスには徹底したアフターサービスが存在する。例えば、エルメスのバッグには職人の名前がわかる記号、アトリエを指すアルファベット、作った年月を記載した数字がひとつひとつに刻印されており、どこのアトリエでど

    18 川島(2013)40 頁 19 戸矢(2014)56 頁 20 GQ https://www.gqjapan.jp/fashion/wardrobe/20120510/the-real-secret-of-luxe-appeal-3

    (2019/11/19 最終アクセス) 21 川島(2013)44 頁

    https://www.gqjapan.jp/fashion/wardrobe/20120510/the-real-secret-of-luxe-appeal-3

  • の職人が作ったのかが分かるようになっている 22。顧客はただ修理してもらうだけでなくその商品を作った職人に修理してもらえるのだ。ここに他のブランドでは決して見られない客と職人との繋がりが生まれるのである。 エルメスはブランドを支えている職人が更に成長できるように世界各地を巡り、異文化に触れる機会を与える研修を用意している。例えばインドの砂漠に行って遊牧民と交流したり、アマゾンの部族をたずねたりして、暮らしの中で使われる道具類に触れるイベントを継続的に行なっている 23。また、インディオとの交流から、天然ゴム素材を使った新しい製品が生まれたり、サハラの遊牧民との交流から、バックルや留め金に使う銀の加工技術が生まれたりもした 24。様々な研修によりエルメスの職人は技術をさらに高め、従来の枠組みにとらわれないアイデアに挑戦するのである。このことがエルメスの強さの源泉ともなっている。 ・マルチローカル主義 最後にエルメスにはマルチローカル主義というものが存在する。これは現地のことは現地が一番よく理解できるという考えに基づき、どの国に進出する時もそれぞれの土地に合わせ、「言葉は現地の言葉で、社長は現地の人で」という方針である 25。多くのブランドが他国に進出する際には市場シェアの拡大を目的とするので、社長は本社から派遣され、言語は英語または本国の言葉が使用される。進出する国によってはその国に合わせることもあるが、基本的には本社の手法を踏襲した展開がおこなわれ、商品やサービスは主に「売るため」に変更されることが一般的である。多くのブランドが市場シェアの拡大を目的とする一方で、エルメスは相応の売上を立てつつ「エルメスの文化を伝えること」を重視している 26。各国の風土や民族性を土台にしながらエルメスが長年培ってきた文化をしっかりと社員に伝えることで、その土地の消費者にもエルメスというブランドのイメージが正確に伝わるのだ。エルメスはマルチローカル主義を貫くことでどの国に進出する際にも社員に企業文化を正確に伝えられ、そのことによりエルメスは一切コンセプトを揺らぐことなくブランドの価値を高めているのだ。 4.3 まとめ エルメスは質の追求に重点を置き、顧客にとって真に良い商品を提供することを目指しているブランドである。これは近年、他のラグジュアリーブランドが利益拡大、新市場獲得のために様々な経営戦略を取っている傾向とは一線を画すことである。エルメスはその企業文化を踏襲するために職人に対するプログラムやマルチグローバル主義などを取り入れることでブランドの価値を高めている。その結果、2019年度の高級ブランドランキング

    22 川島(2013)54 頁 23 川島(2013)49 頁 24 同上 25 川島(2013)13-14 頁 26 川島(2013)14 頁

  • でエルメスは 3 位にランクインし、そのブランド価値は 310 億ドルと推定されている 27。また、他のブランドと比較すると小規模でありながらも、2017年度の売上利益は 2498 億6000万円であり業界の中でもトップクラスの利益率を誇っている 28。マーケティング戦略を練っていないにもかかわらず、ブランドの中のブランドと呼ばれるまでに成長した要因には以上述べたことに起因していることは明白である。

    Ⅴ. 世界市場

    これまでグッチ、エルメスと各ラグジュアリーブランドがどのような歴史を辿り、いかにして市場を獲得し世界的なブランドへと成長したのかを見てきた。この章ではこれらのブランドを含めラグジュアリーブランドの世界市場の現状について研究していく。

    図表3 主要国別ラグジュアリー市場規模

    出所:CBRE(https://www.cbre-propertysearch.jp/article/retail_market_luxury_2015-vol2/)

    <図表3>は主要国別ラグジュアリー市場規模を表したものであるが、上位にはアメリカや日本、イタリアを始めとした先進国がランクインしているのが分かる。特にアメリカは市場規模が他の国と比較しても群を抜いておりその額は 649 億ユーロ(約 7 兆 5666 億円)となっている。ブランド好きで知られている日本は多くのラグジュアリーブランドの発祥地であるイタリア、フランスと同等の市場規模となっており、アジアにおいて中国と並ぶ最大のマーケットとなっている。グッチの地域別売上シェア(2018 年度)を見てみると、アジア太平洋 42%、西ヨーロッパ 30%、北米 21%、その他 7%となっている 29。また、同年のエルメスの地域別売上シェアはアジア太平洋 49%、西ヨーロッパ 32%、北米 18%、その他 1%となっている 30。このように多くのラグジュアリーブランドの主要市場がアジア、西

    27 BrandZ ホームページ https://brandz.com/Reports (2019/11/24 最終アクセス) 28 エルメスホームページ https://finance.hermes.com/en/Reports-and-Presentations/Annual-reports (2019/11/24 最終アクセス)

    29 GUCCI 公式ホームページ https://www.gucci.com/jp/ja/ (2019/12/12 最終アクセス) 30 エルメスホームページ https://finance.hermes.com/en/Reports-and-Presentations/Annual-reports (2019/ 11/24 最終アクセス)

    https://www.cbre-propertysearch.jp/article/retail_market_luxury_2015-vol2/https://finance.hermes.com/en/Reports-and-Presentations/Annual-reportshttps://finance.hermes.com/en/Reports-and-Presentations/Annual-reportshttps://www.cbre-propertysearch.jp/img/page_d/images/retail_market_luxury_2015/luxury_c.jpg

  • ヨーロッパ、北米の先進国に集中しているのが特徴となっている。これまで主に先進国において業績を伸ばしてきたラグジュアリーブランドだが、それらの国において徐々に市場飽和の状況が生まれつつある。グッチの地域別店舗数を見るとアジア太平洋 279 店舗、西ヨーロッパ 141 店舗、北米 85 店舗、その他 69 店舗となっており、日本だけでも 81 店舗が出店している 31。今後、先進国において業績が悪化するわけではないが、現状以上の市場拡大を期待するのは困難となってきている。そこで、ラグジュアリーブランドは次なる市場として BRICs諸国の市場に目を向けるようになってきた。BRICs 諸国の中の一つである中国はすでにラグジュアリーブランドにとって魅力的な市場となっており、<図表3>からも先進国に劣らない市場規模となっている。

    次章以降では特に BRICs のなかのロシアに着目し、ロシアにおいてラグジュアリーブランドが市場を拡大する可能性はあるのかということを中心に研究を進める。その際、ラグジュアリーブランドのロシア市場に関する先行研究がされてこなかったため、本論文ではあらゆる視点からその可能性について研究を進めていく。

    Ⅵ.ロシア市場

    6.1 ロシア市場現状 ラグジュアリーブランドのロシア市場進出の可能性を探る前にロシア市場の現状について説明する。<図表3>を見てもらうと分かるように 2014 年度ロシアは主要国別ファッションラグジュアリー市場規模が全体の 11 番目となっており 46 億ユーロである。先進国と比較するとやはり市場規模は劣るが、BRICs諸国のなかでは中国に続く 2 番目であり、ある程度の市場規模があることが分かる。 ロシアのファッション市場についてさらに詳しくみてみる。ユーラシア研究所に掲載されている「ロシアのコンサルティング会社 Fashion Consulting Groupによる」32と、ロシアのファッション産業(アパレル、靴、アクセサリー)は 2013 年に前年比 4.8%成長し、2兆4480 億ルーブル(2015 年 8 月の為替レート 1 ルーブル≒2 円で換算すると約 5 兆円)に達した。これは同年の携帯電話市場の規模が 9000 億ルーブル、大型家電市場の規模が 2500億ルーブルであることからもロシアのファッション市場規模の大きさが分かる。なかでもアパレルは 1兆 5030 億ルーブル(61.4%)と最大である。アパレルを価格帯別で見てみるとラグジュアリー層が 1,500 億ルーブル(10%)で、ミドル層とロー層がそれぞれ、6,010億ルーブ ル(40%)、7,510 億ルーブル(50%)と、ミドル層、ロー層が大半を占める典型的な新興国タイプとなっている。特徴的なのはラグジュアリー層の 89%がモスクワに集中していることである。これはラグジュアリーブランドを購入するのが主に都会に住んでいる富裕層に限定されていることが原因となっている。モスクワは世界的な不動産コンサル

    31 GUCCI 公式ホームページ https://www.gucci.com/jp/ja/ (2019/12/12 最終アクセス) 32 藤原(2015)1頁

  • ティング会社 CBRE Group によると、2012 年度高級品ファッションブランドの都市展開、トップ 10 進出都市ランキングでニューヨークとパリに並ぶ 4 位となっている 33。東京が 9位にランクインしていることからもモスクワがラグジュアリーブランドにとって魅力的な市場に成長してきていることが分かる。 しかし、ラグジュアリーブランドのロシア出店数は日本と比較するとはるかに少ない。グ

    ッチはロシア 11 店舗:日本 81 店舗、エルメスはロシア 2 店舗:日本 38 店舗、ルイヴィトンはロシア 6店舗:日本 53店舗と日本の出店数の方が多くなっているのが特徴的だ。また、グッチはロシア 11 店舗中7店舗、エルメスは 2 店舗中 2 店舗、ルイヴィトンは 6 店舗中 4店舗がモスクワに集中して出店をしている。このようにロシアに進出しているラグジュアリーブランドの多くがモスクワかサンクトペテルブルクの大都市のみの出店にとどまっているのが現状である。 6.2 GDPと市場規模から見る市場拡大の可能性 前節でロシアの市場規模が先進国と比較して劣っていると述べたが、ここでは 2014 年度の各国の GDP とラグジュアリー市場規模の関係性から、ロシアにラグジュアリーブランドがさらに市場を拡大する可能性があるかについて考察していく。

    図表4 2014年度主要国別 GDPとラグジュアリー市場規模

    国 GDP 市場規模 各国の傾向

    ロシア 216 兆 408億円 5364億円 ― アメリカ 1797兆 6598億円 7 兆 5666 億円 持っていて買う 中国 1119兆 8575億円 1 兆 7484 億円 持っていて買う 日本 513 兆 8760 億円 2 兆 996億円 持っていて買う フランス 303 兆 7426 億円 1 兆 7834 億円 同等だが買う イタリア 234 兆 3710 億円 1 兆 9484 億円 同等だが買う 韓国 150 兆 106億円 1 兆 608億円 持っていない買う

    (出所):IMF-World Economic Outlook Databases、CBRE主要国別ラグジュアリー市場規模より

    筆者作成

    ※GDP(2019年 11 月の為替レート 1 ドル=108 円で換算)

    ※市場規模(2019 年 11月オ為替レート 1 ユーロ=121 円で換算)

    <図表4>を見ると 2014年度のロシアの GDPは 216 兆 408 億円であり、市場規模は5364億円となっている。このロシアの数値を基準として各国との比較をおこなう。アメリ

    33 CBRE グローバルリテールビジネスの海外展開からみた日本のリテール市場の今後

    https://www.cbre-propertysearch.jp/stndaln/pdf/article/oj-autumn-2012/20120908.pdf (2019/11/16 最終アクセス)

    https://www.cbre-propertysearch.jp/stndaln/pdf/article/oj-autumn-2012/20120908.pdf

  • カと日本を例にとってみるとそれぞれ GDP がロシアの約 8 倍、約 2.5 倍となっているが、市場規模をみるとアメリカはロシアの約 14 倍である 7兆 5666 億円、日本は約 4 倍の2 兆 996 億円となっている。このことからアメリカと日本はロシアを基準として考えると「お金を持っていてブランド品を買う国」と分類できる。同じ分類にはアメリカと日本以外には中国があげられる。次にフランスとイタリアを例にとってみるとそれぞれロシアと近い GDP であるが、市場規模はフランスが約 3.3 倍の 1 兆 7834 億円、イタリアは約 3.6倍の 1 兆 9484 億円となっている。このことからフランスとイタリアはロシアを基準として考えると「同等の資金力だがブランド品を買う国」と分類できる。最後に韓国の例をとってみると GDPはロシアよりも約 70 兆円小さくなっているが、市場規模は約2倍となっている。このことから韓国はロシアを基準として考えると「お金を持っていないがブランド品を買う国」と分類できる。フランス、イタリア、韓国の三ヵ国はロシアと同等、あるいは小さい GDPであるにも関わらず、市場規模がロシアより大きいことから、ロシアのラグジュアリー市場にはまだ成長できる余地があることが示唆される。また、ロシアのGDP は 2016 年以降成長を続けており、今後も増加を続ける見込みである。それに伴う一人当たりの GDPも今後増加していくと予測されている。また、2000 年には低所得層が多くを占めていたが、2007 年には中間所得層が 6割を超えており、この割合も今後増加していく見込みである 34。こうした経済背景も含めると、GDPと市場規模から見る市場拡大の可能性があることは十分に予測できる。 6.3消費行動の特徴から見る市場拡大の可能性 GDPと市場規模の関係性からロシアのラグジュアリー市場がさらに成長できる可能性を秘めていることを上述したが、実際に市場が拡大するのかを消費行動の特徴から考察していきたい。まず、広大な土地を有するロシアにとって大都市と地方部での特徴は違ってくる。モスクワやサンクトペテルブルクなどの大都市では富裕層を筆頭に欧米諸国に近い消費行動をとる傾向がある。その一方で、農業などを営む地方では実用的な服装を好む傾向がある。また、ロシア人は一般的にブランド志向が弱いことが特徴的である。ロシアの調査会社 Romir が実施したアンケートによると、 ロシア人が衣服を選ぶ際に最も重視するのはフィット感と着心地であり、約半数の回答者がこれらを重視しているが、逆に最も少なかった回答はデザインと装飾であった 35。ロシア人は愛国心が強く自国のブランドだけを愛する場合があり、商品を購入する際には安く機能性があるものを選ぶ傾向がある。以上のことを踏まえると、ロシアにはラグジュアリー市場が拡大する余地が十分にあるにも関わらず、実際にはそれほどまでには成長が見込めないという結論に至るだろう。しか

    34 ロシア経済産業省

    https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_Russia.pdf(2019/11/25 最終アクセス)

    35 藤原(2015)1頁

  • し、こうしたロシアにおける消費行動の特徴は、今後徐々に変化すると予想されている。 特に 1995 年以降に生まれた若者を指す Z世代は、欧米の若者と変わらない価値観を持ち、より先進的だとさえいわれている 36。彼らは SNS などから情報を集めることで、よりファッショナブルなスタイルを目指している。自国のモノだけを溺愛するのではなく、ヨーロッパ発祥のラグジュアリーブランドなどの商品を購入し積極的にファッションに取り組んでいるのだ。これは従来までの流れとは違う傾向であり、今後 Z世代が国のメイン層になると考えるとロシアにおけるラグジュアリーブランドの市場拡大の可能性はあると考えられる。また、ロシア人はブランド志向が弱く、商品を購入する際には安く機能的なものを選ぶ傾向があると述べたが、この特徴にも変化が見られてきている。特に変化が見られるのはラグジュアリー品と同等以上に高価である自動車市場だ。従来、ロシアでは中古車やその地域の気候に合わせた実用的かつ安価な車が人気を集めていた。しかし、近年ロシアでは乗用車を購入する際には車格の良さ、つまりブランドを重視するようになってきたのだ。ロシアの消費者は、自動車を一種のステイタスシンボルとみなすようになり、燃費や安全性といった機能はあまり評価されなくなってきた 37。また、ロシアの消費者には「オンリーワン志向」があり、他者と異なる選択を尊ぶ傾向が強いと一般的に言われている 38。ファッションラグジュアリーブランドは多くの商品を揃えており、一つ一つが個性的であることからオンリーワン志向を持つロシアの消費者にとっては魅力的に見えるはずだ。こうした新たな志向を踏まえると、同じラグジュアリー品を販売している各ラグジュアリーブランドにもロシア市場拡大のチャンスはあるのではないかと考える。 近年、ロシアでは従来までとは違った新たな消費行動の傾向が見られてきており、それに伴いロシアにおけるラグジュアリーブランド市場は拡大するのではないかということを述べた。しかし、ここで注意してほしいことは広大な国土を持つロシアにおいてこのような新しい傾向は都心部のみにとどまっているということだ。もちろん、今後急速な経済発展により地方部においてもこのような新しい傾向はみられるかもしれない。しかし、現状においてはブランド品を好む傾向は主に都心部にとどまっており、地方部においては従来通り実用的なものが好まれている。以上のことを踏まえると、ラグジュアリーブランドが今後ロシアにおいて市場を拡大する際には、都心部が中心となり、地方部においては経済発展が急速に進まない限り市場拡大は困難であると結論づける。

    Ⅶ.おわりに

    本稿では、ファストファッションが世界中で人気を集めているなか、その流行に屈する

    37 BTMU Global Business Insight https://www.bk.mufg.jp/report/insemeaa/BW20131108.pdf (2019/11/25 最終アクセス) 38 BTMU Global Business Insight https://www.bk.mufg.jp/report/insemeaa/BW20131108.pdf (2019/11/25 最終アクセス)

    https://www.bk.mufg.jp/report/insemeaa/BW20131108.pdfhttps://www.bk.mufg.jp/report/insemeaa/BW20131108.pdf

  • ことなく人気を集め続けているラグジュアリーブランドの経営戦略について考察してきた。特にラグジュアリーブランドの中でも大手である「グッチ」と小規模ながら高い利益率を出している「エルメス」の 2つを取り上げた。グッチは創業期、低迷期から現在の人気を集めている姿に至るまでを主に 4P(製品、価格、流通、広告)分析の観点から考察し、世界的なブランドへと成長した理由を明らかにした。エルメスにおいてはマーケティング・職人・マルチローカル主義の 3つの観点から考察し、ブランドのなかのブランドと呼ばれる所以を明らかにした。 また、本稿では、そうしたラグジュアリーブランドが市場拡大のため新興国である

    BRICs 諸国、とりわけロシアにおける市場拡大の可能性について考察してきた。これまでラグジュアリーブランドのロシア市場における市場拡大に関する研究が多くはなされてこなかったため、本稿では、各国の GDP とラグジュアリー市場規模の関係性、ロシアにおける消費行動の特徴から結論を導き出した。結論としては、ロシアにおける市場シェア拡大の可能性は、現在では都心部にとどまり、地方部では急な経済発展が進まない限り困難であると結論付けた。 ■参考文献 足立勝彦(2005)「ブランド価値とその企業戦略的意義について」『京都学園大学経営学

    部論集』第 15 巻第1号1-16 頁 川島蓉子(2013)『エスプリ思考』新潮社 金順心(2010)「ラグジュアリーブランドの構成要素に関する先行研究の展開-プレステー

    ジ排他性、希少価値を中心として」『早稲田大学大学院商学研究科紀要』第 70 巻 71-83 頁 竹宮恵子(2015)『エルメスの道』中央公論新社 寺崎新一朗(2015)「ラグジュアリーブランドにおける流通戦略-地域別およびブランド

    別にみる国際化過程の検討」『早稲田商学』第 441・442 合併号 331-371 頁 戸矢理衣奈(2004)『エルメス』新潮社 中村雅人(1998)『グッチ家・失われたブランド‐イタリア名門の栄光と没落』日本放

    送出版協会 長沢伸也(2012)「ラグジュアリーブランドグッチにみる経営戦略とブランドマネジメン

    ト」『早稲田大学 WEB 研究センター早稲田国際経営研究』No,43 97-108 頁 長沢伸也(2014)『グッチの戦略』東洋経済新報社 藤原克美(2015)「ロシアのファッション産業」(ユーラシア研究所ホームページ) 藤原克美(2017)「グローバリゼーション下のロシア・ファッション産業」『比較経済研究』

    第 54 巻第 2 号1-14 頁 水野満(2015)「ブランドランキングとブランド価値ならびに企業業績に関する研究」『昭

    和女子大学現代ビジネス研究所紀要』2015 年度1-14 頁 アーカー,デービット(2014)『ブランド論』ダイヤモンド社

  • フォーデン,S(2004)『ザ・ハウス・オブ・グッチ』講談社 マルシャン,ステファヌ(2002)『高級ブランド戦争‐ヴィトンとグッチの華麗なる戦い』

    駿台曜曜社 参考URL AMERICAN MARKETING ASSOCIATION 公式ホームページ https://www.ama.org/

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    HERMES PARIS 公式ホームページ https://www.hermes.com/jp/ja/ (2019/11/24 最終アクセス)

    GUCCI 公式ホームページ https://www.gucci.com/jp/ja/ (2019/12/12 最終アクセス) CBRE 「 海 外 各 国 と 日 本 の ラ グ ジ ュ ア リ ー 市 場 規 模 」 https://www.cbre-

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