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- 1 - リモート デスクトップ プロトコル (RDP) 8.0 新機能と簡易パフォーマンス検証 第 2 版 日本マイクロソフト株式会社 Published: 2013 年 5 月 23 日 概要 このドキュメントは、Windows Server 2012 および Windows 8 に導入されたリモート デスクトップ プロトコル (RDP) の最新バージョン RDP 8.0 の新機能を解説するとともに、RDP 8.0 の強化されたパフォーマンスを、簡易的 な検証テストで測定したレポートを提供します。 レポートでは、リモート デスクトップ接続における、マルチメディア コンテンツの再生および生産性アプリケーショ ンのパフォーマンスを、RDP の旧バージョンと比較して検証しています。また、RDP 8.0 で新たにサポートされた UDP トランスポートのパフォーマンス効果、および RemoteFX vGPU のパフォーマンス効果についても検証しています。 なお、今回の検証は、仮想環境で実施した簡易的なものです。ファイル形式やデータの違いにより、異なる結果が出る 場合があります。また、実際の物理環境における不安定な通信環境(遅延やパケットロス)は考慮されていません。こ れらの点を考慮した上で、検証結果を評価してください。

リモート デスクトップ プロトコル (RDP) 8download.microsoft.com/.../WS2012_RDP_Performance.pdfPublished: 2013 年 5 月 23 日 概要 このドキュメントは、Windows

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リモート デスクトップ プロトコル (RDP) 8.0

新機能と簡易パフォーマンス検証

第 2 版

日本マイクロソフト株式会社

Published: 2013 年 5 月 23 日

概要

このドキュメントは、Windows Server 2012 および Windows 8 に導入されたリモート デスクトップ プロトコル

(RDP) の最新バージョン RDP 8.0 の新機能を解説するとともに、RDP 8.0 の強化されたパフォーマンスを、簡易的

な検証テストで測定したレポートを提供します。

レポートでは、リモート デスクトップ接続における、マルチメディア コンテンツの再生および生産性アプリケーショ

ンのパフォーマンスを、RDP の旧バージョンと比較して検証しています。また、RDP 8.0 で新たにサポートされた UDP

トランスポートのパフォーマンス効果、および RemoteFX vGPU のパフォーマンス効果についても検証しています。

なお、今回の検証は、仮想環境で実施した簡易的なものです。ファイル形式やデータの違いにより、異なる結果が出る

場合があります。また、実際の物理環境における不安定な通信環境(遅延やパケットロス)は考慮されていません。こ

れらの点を考慮した上で、検証結果を評価してください。

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著作権情報

このドキュメントに記載されている情報は、このドキュメントの発行時点におけるマイクロソフトの見解を反映したもの

です。変化する市場状況に対応する必要があるため、このドキュメントは、記載された内容の実現に関するマイクロソフ

トの確約とはみなされないものとします。 また、発行以降に発表される情報の正確性に関して、マイクロソフトはいか

なる保証もいたしません。

このホワイトペーパーは情報提供のみを目的としており、明示、黙示、または法律上の保証に関わらず、これらの情報に

ついてマイクロソフトはいかなる責任も負わないものとします。

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目次

はじめに ........................................................................................................................................... 4

RDP 8.0 の新機能 ........................................................................................................................... 4

RDP 8.0 対応クライアント................................................................................................................ 8

検証テストの内容 ............................................................................................................................... 9

検証テストの目的 ............................................................................................................................ 9

検証結果の要約 ............................................................................................................................... 9

検証シナリオ .................................................................................................................................. 9

検証環境 ...................................................................................................................................... 10

検証テスト 1: 動画再生時のパフォーマンス比較 ..................................................................................... 11

検証結果 ...................................................................................................................................... 11

考察 ............................................................................................................................................ 12

検証テスト 2: Excel スクロール操作時のパフォーマンス比較 .................................................................... 12

検証結果 ...................................................................................................................................... 12

考察 ............................................................................................................................................ 14

検証テスト 3: RDP 8.0 のトランスポート比較 ....................................................................................... 14

検証結果 ...................................................................................................................................... 14

考察 ............................................................................................................................................ 15

検証テスト 4: RemoteFX vGPU のパフォーマンス効果 ........................................................................... 15

検証結果 ...................................................................................................................................... 15

考察 ............................................................................................................................................ 17

まとめ ............................................................................................................................................ 18

関連リソース ................................................................................................................................ 18

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はじめに

Windows Server 2012 のリモート デスクトップ サービスは、セッション ベースまたは仮想マシン ベースの仮想デ

スクトップへの環境を、ネットワークを介してユーザーに提供します。リモート デスクトップ サービスを使用するユ

ーザーは、デバイスの種類や場所を問わず、快適なエクスペリエンスとセキュアな通信で、データやアプリケーション

にリモート アクセスでき、高い生産性で業務を継続できます。

リモート デスクトップ プロトコル (Remote Desktop Protocol: RDP) は、リモート デスクトップ サービスのため

の標準のアプリケーション プロトコルです。Windows Server 2012 および Windows 8 では最新の RDP 8.0 が導

入され、特に、WAN 対応機能とエクスペリエンス機能が改善および強化されています。リモート デスクトップ サー

ビスにおける高度なエクスペリエンス機能の一部はこれまで、LAN 環境で十分なレスポンスを得ることができました。

RDP 8.0 の登場により、WAN 環境でも快適に利用できるようになるため、リモート デスクトップ サービスの用途が

広がります。

RDP 8.0 の新機能

RDP は、Windows NT Server 4.0, Terminal Server Edition (RDP 4.0) で初めて提供されて以来、Windows のバー

ジョン アップとともに着実に進化を続け、改善と新機能の追加が行われてきました。RDP 8.0 における主な新機能を以

下に示します。なお、RemoteFX は Windows Server 2008 R2 SP1 で初めて提供されましたが、当時は主に RemoteFX

vGPU および RemoteFX USB デバイス リダイレクトの機能のことを指していました。RDP 8.0 では、RemoteFX は

RDP 8.0 が提供するエクスペリエンス機能の総称であり、RemoteFX vGPU および RemoteFX USB デバイス リダイ

レクトはその一部ということになります。

接続品質の自動検出

RDP 8.0 対応の最新のリモート デスクトップ接続クライアント (Mstsc.exe) は、接続先との間のエンド ツー エ

ンドのネットワーク品質を自動検出し、品質に応じてパフォーマンスとエクスペリエンス機能を最適化します。

図 1: 接続品質の自動検出は既定で有効。接続バーから現在の品質を確認できる

RemoteFX for WAN

RDP 8.0 は、トランスポート プロトコルとして従来の TCP (3389/TCP) に加えて、UDP (3389/UDP) をサポー

トし、既定では TCP と UDP の両方が有効になっており、接続品質やコンテンツの種類に応じて最適なトランスポ

ートが自動選択されます。UDP は、パケット ロスや遅延の多い WAN リンクに適したトランスポートです。加え

て、前方誤り訂正 (Forward Error Collection: FEC) などの技術を用いて、再送することなく、パケット ロスを迅

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速に修復する機能も備えています。

RemoteFX メディア リモーティング (RemoteFX メディア ストリーミング)

RemoteFX メディア リモーティングは、WAN を介した接続においても、マルチメディア コンテンツのスムーズな

再生を実現にします。

RemoteFX アダプティブ グラフィックス

サーバーの負荷、クライアントの負荷、ネットワークの品質に動的に対応し、コンテンツの種類に応じて最適なエン

コード方式を自動選択します。これにより、帯域幅の低い WAN 経由の接続においては、テキスト コンテンツを優

先にクリアに表示し、イメージやビデオ、アニメーションの表示については徐々に鮮明化します。

図 2: RemoteFX アダプティブ グラフィックスのコンテンツに応じた表示

RemoteFX マルチ タッチ

タッチ対応デバイスからのリモート デスクトップ接続では、リモート セッションが接続元のタッチ対応機能を認識

します。ユーザーは、タッチ操作やジェスチャ操作に対応したアプリケーションを、リモート デスクトップ環境で

使用できます。例えば、Windows ストア (WinRT) アプリのタッチ操作や、リモート側のタッチ キーボードによる

入力が可能です。

図 3: リモート セッションが接続元のデバイスのタッチ対応機能を認識。接続バーの幅もタッチ操作に最適化され

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RemoteFX USB デバイス リダイレクト

ローカルに接続された USB デバイスを、Windows 8 Enterprise の仮想デスクトップ、Windows Server 2012 の

リモート デスクトップ セッション ホスト、RDP 8.0 が有効な Windows 7 Enterprise SP1 の仮想デスクトップ

のセッションにリダイレクトして利用できます。RDP 7.1 ではこの機能は RemoteFX vGPU に依存する機能でし

たが、RDP 8.0 では RemoteFX vGPU とは関係なく利用できます。また新たに、セッション中からの USB デバイ

スの接続や切断が可能になりました。

図 4: RD セッション ホストのセッションにクライアントの USB デバイスをリダイレクトしたところ

RemoteFX 仮想 GPU (vGPU)

Hyper-V のホスト サーバーに接続された GPU (Graphics Processing Unit) を仮想化し、RemoteFX 3D ビデオ

アダプターとして仮想デスクトップに割り当てることができます。RemoteFX 3D ビデオ アダプターが割り当てら

れた仮想デスクトップに対するリモート デスクトップ接続では、DirectX 11 対応のグラフィックス機能を利用でき

ます。RemoteFX vGPU は、リモート デスクトップ (RD) 仮想化ホストおよび Windows 8 Enterprise 仮想デス

クトップが提供する機能です。なお、RemoteFX vGPU は Windows 7 Enterprise SP1 仮想デスクトップでもサポ

ートされますが、その場合、RDP 7.1 バージョンの RemoteFX vGPU 機能が提供されます。

図 5: 仮想デスクトップに RemoteFX 3D ビデオ アダプターを割り当てる

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図 7: リモート デスクトップ接続のセッション内で、GPU を多用する CAD ソフトウェアの利用も可能

(※ お使いのアプリケーションがリモートデスクトップ接続に対応しているかどうかは、アプリケーションの製造元

に確認してください)

RemoteFX Media Redirection API のサポート

RemoteFX Media Redirection API は、Lync 2013 などの VoIP アプリケーションに対して、ローカルと変わら

ないオーディオ/ビデオ会議機能を提供します。Lync 2013 でこの機能を利用するには、Microsoft Lync VDI 2013

Plug-In が必要です。

Microsoft Lync VDI 2013 Plug-In (32 ビット)

http://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=35457

RDP セッションのネスト表示のサポート

RDP 8.0 のリモート デスクトップ接続のセッションから、別のコンピューターへの RDP 8.0 によるリモート デ

スクトップ接続を開始することがサポートされます。RDP 接続のネストは 1 セッションまでサポートされます。そ

の他、一部サポートに制限があります。詳細は以下のサポート技術情報を参照してください。

Running a Remote Desktop Connection session within another Remote Desktop Connection session is

supported with Remote Desktop Protocol 8.0 for specific scenarios

http://support.microsoft.com/kb/2754550

RemoteFX 用のパフォーマンス カウンター

RemoteFX のエクスペリエンス機能のパフォーマンスを監視できる、以下のパフォーマンス カウンターが提供され

ます。RemoteFX VM vGPU Performance は、RemoteFX vGPU を持つ仮想デスクトップでのみ利用可能です。

RemoteFX Graphics ・・・ RemoteFX グラフィックス エンコーディングのパフォーマンスを計測

RemoteFX Network ・・・ セッションあたりの RemoteFX のネットワーク パフォーマンスを計測

RemoteFX VM vGPU Performance ・・・ RemoteFX vGPU に関するパフォーマンスを計測

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RDP 8.0 対応クライアント

以下の Windows クライアントおよびサーバーは、RDP 8.0 に標準対応しています。

Windows 8

Windows 8 Pro

Windows 8 Enterprise

Windows RT

Windows Server 2012

なお、リモート デスクトップ接続を受ける側については、エディションによって機能が制限されます。RemoteFX vGPU

を割り当てるには、仮想デスクトップのゲスト OS が Windows 8 Enterprise である必要があります。また、RemoteFX

USB デバイス リダイレクト機能は、Windows 8 Enterprise および Windows Server 2012 RD セッション ホストに

対するリモート デスクトップ接続で利用できます。どちらの機能についても、クライアント側のエディションには制限は

ありません。

Windows 7 Service Pack (SP) 1 および Windows Server 2008 R2 SP1 は、標準で RDP 7.1 を搭載していますが、

以下の更新プログラム KB2592687 をインストールすることで、クライアント機能を最新の RDP 8.0 に更新できます。

Windows 7 SP1 および Windows Server 2008 R2 SP1 のリモート デスクトップ プロトコル 8.0 の更新プログラム

について (KB2592687)

http://support.microsoft.com/kb/2592687

Windows 7 SP1 の場合は、更新プログラム KB2592687 をインストールした上で、以下のポリシー設定を行うことに

より、リモート デスクトップ接続のサーバー機能で RDP 8.0 を有効化することもできます。なお、Windows 7

Enterprise SP1 で RDP 8.0 を有効化した場合、RemoteFX vGPU の割り当てはサポートされなくなります。

コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\リモート デスクトップ サービス\リモート

デスクトップ セッション ホスト\リモート セッション環境\リモート デスクトップ プロトコル 8.0 を有効にする

コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\リモート デスクトップ サービス\リモート

デスクトップ セッション ホスト\接続\RDP トランスポート プロトコルの選択

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検証テストの内容

検証テストの目的、検証シナリオ、検証環境について説明します。

検証テストの目的

検証テストの目的は、Windows Server 2012 および Windows 8 ベースの最新のリモート デスクトップ サービス環

境において、マルチメディア コンテンツの再生や生産性アプリケーションの利用時のパフォーマンスを計測し、RDP 8.0

の大幅に改善されたネットワーク パフォーマンスと、優れたエクスペリエンス機能を実際のデータで示すことにありま

す。

検証結果の要約

今回の検証テストにより、RDP 8.0 のパフォーマンスとエクスペリエンス機能に関して、次のような結果が得られました。

RDP 8.0 のネットワーク使用帯域は、RDP 7.1 と比較して約 1/10 以下に大幅に削減されました。

帯域幅の削減とエクスペリエンス機能を両立するため、RDP 8.0 はクライアントのプロセッサ リソースを積極的に

活用する結果を示しました。

RDP 8.0 は、WAN 環境においても、マルチメディア コンテンツをスムーズに再生できました。一方、ビジネス系

アプリケーションについては、狭帯域でコマ落ちするような動作を見せました。これは、WAN 最適化機能の影響に

より、最終的な表示結果を重視しているためと予想されます。

RDP 8.0 の TCP と UDP のトランスポートの違いは、ネットワーク使用帯域に影響しませんでした。ただし、今回

の検証テストには、遅延やパケット ロスの影響が考慮されていません。遅延やパケット ロスの多い環境においては、

UDP トランスポートのメリットが生かされると予想されます。

以前のバージョンでは LAN 環境での使用に制限されていた RemoteFX vGPU が、RDP 8.0 では WAN 環境にお

いても問題なく、かつ快適に利用できることが示されました。

なお、今回の検証テストは、仮想環境で実施した簡易的なものです。ファイル形式やデータの違いにより、異なる結果が

出る場合があります。また、実際の物理環境における不安定な通信環境(遅延やパケットロス)は考慮されていません。

これらの点を考慮した上で、検証結果を評価してください。

検証シナリオ

最初に、RDP 8.0 のリモート デスクトップ接続セッションにおいて、以下の操作を行った際のネットワーク使用帯域お

よびプロセッサ使用率を計測します。比較対象として、旧バージョンの RDP 7.1を使用します。RemoteFX for WAN の

効果を検証するため、Excel ワークシートのスクロール操作については、実行時間の計測も行います。

Windows Media Player を使用した動画の再生 (検証テスト 1)

Excel ワークシートのスクロール操作 (検証テスト 2)

参考データとして、検証テスト 1 にとおいては Citrix の仮想デスクトップ環境である XenDesktop 5.0 標準の ICA

(Independent Computing Architecture) プロトコルとも比較します。

次に、LAN および WAN 環境におけるトランスポートの違いが、ネットワーク使用帯域やエクスペリエンス機能にどの

ように影響するのかを検証するために、RDP 8.0 の TCP と UDP で以下の操作を行った際のネットワーク使用帯域およ

び再生時間を計測します。

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Windows Media Player を使用した動画の再生 (検証テスト 3)

最後に、RemoteFX vGPU のパフォーマンス効果を検証するため、RemoteFX vGPU を割り当てた場合とそうでない場

合について以下の操作を行った際のネットワーク使用帯域、プロセッサ使用率、およびフレーム/秒 (FPS) を計測します。

Internet Explorer 10 を使用した HTML5 アプリケーションの実行 (検証テスト 4)

検証環境

今回の検証で使用したシステム構成の概要を以下に示します。

図 8: 検証環境のシステム構成

検証環境は、すべて Windows Server 2012 Hyper-V 上に構成しました。ホスト、仮想デスクトップ、および

XenDesktop 用のサーバーは、内部ネットワーク タイプの Hyper-V 仮想スイッチに接続し、ホスト OS 上のリモート

デスクトップ接続クライアント (Mstsc.exe) および Citrix Receiver を使用して仮想デスクトップにリモート接続しま

す。送受信データ量は、ホストが仮想スイッチに接続する仮想ネットワーク アダプター上で計測します。帯域幅制限につ

いては、Hyper-V 仮想スイッチの標準機能である、帯域幅管理機能を利用しました。

クライアントの構成 (兼 Hyper-V ホスト)

Windows Server 2012 付属のリモート デスクトップ接続クライアント (Mstsc.exe)

Citrix Receiver 3.3.017207

RDP 仮想デスクトップの構成

Windows 8 (RDP 8.0) 2 CPU、2 GB メモリ、Windows 8 x86、Excel 2013

Windows 7 SP1 (RDP 8.0) 2 CPU、2 GB メモリ、Windows 7 x86 SP1+KB2592687、Excel 2013

Windows 7 SP1 (RDP 7.1) 2 CPU、2 GB メモリ、Windows 7 x86 SP1、Excel 2010

ICA 仮想デスクトップの構成

Hyper-V ホスト

Windows 7 SP1 (RDP 7.1)

Hyper-V

Citrix Receiver

Mstsc.exe

ホスト OS

Windows

Server 2012

Hyper-V 仮想スイッチ (内部ネットワーク)

Windows 7 SP1 (RDP 8.0)

Windows 8 (RDP 8.0) Windows 7 SP1 (ICA) Citrix XenDesktop 5.6 FP1

Windows Server 2008 R2 Citrix XenDesktop 5.6 FP1 Desktop Delivery Center

RDP 仮想デスクトップ ICA 仮想デスクトップ

送受信データ

の測定

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Windows 7 SP1 (ICA) 2 CPU、2 GB メモリ、Windows 7 x86 SP1、Excel 2010、

Citrix XenDesktop 5.6 FP1 (5.6.200)、Virtual Desktop Agent

XenDesktop サーバー 2 CPU、2 GB メモリ、Windows Server 2008 R2、

Citrix XenDesktop 5.6 FP1 (Hotfix 3)、Desktop Delivery Center、

WebInterface

動画ファイル

WMV 形式の同一の動画・音声ファイル

Excel ワークシート

マクロを使用した自動スクロール

HTML5 アプリケーション

Internet Explorer Test Drive サイトの Aston Martin アプリケーションを開始直後ギア 6 速で実行

http://ie.microsoft.com/testdrive/Performance/AstonMartin/

検証テスト 1: 動画再生時のパフォーマンス比較

検証結果

動画再生時のネットワーク使用帯域の結果をグラフ 1 に、その際のクライアント側のプロセッサ使用率の結果をグラフ

2 に示します。

グラフ 1: 動画再生時のネットワーク使用帯域 (Bytes Total/sec)

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グラフ 2: 動画再生時のクライアント CPU 使用率 (% Processor Time)

考察

RDP 8.0 と RDP 7.1を比較すると、RDP 7.1 は RDP 8.0 よりも多くのネットワーク帯域を使用しています。このこと

からも、RDP 7.1 以前は WAN での利用を得意としていなかったことがわかるでしょう。RDP 7.1 を WAN 環境で利

用する場合、パフォーマンス オプションを選択して、エクスペリエンス機能の多くを無効にする必要がありました。ある

いは、リモート デスクトップ サービスを Citrix XenDesktop で拡張して、ICA を利用できるようにし、快適なエクス

ペリエンス機能を提供することができました。

RDP 8.0 のネットワーク帯域の使用が大幅に削減されたことは、グラフ 1 が示すとおりです。Windows 8 の RDP 8.0

は、同じ動画を再生するのに、RDP 7.1 の 1/10 以下の帯域しか必要としません。また、Windows 7 SP1 の RDP 7.1

を RDP 8.0 に更新することでも、ICA と同等の良好な結果が得られています。

RDP 8.0 のプロセッサ使用率が RDP 7.1 よりも上昇しているのは、データを高度に圧縮しているため、エンコード処理

のためのより多くのプロセッサ時間が消費されているものと考えられます。

なお各プロトコルはデフォルト設定のままであり、その特性の違いからネットワーク環境やチューニングにより異なる結

果となることがあることに留意してください。

検証テスト 2: Excel スクロール操作時のパフォーマンス比較

検証結果

Excel スクロール操作時のネットワーク使用帯域の結果をグラフ 3 に、その際のクライアント側のプロセッサ使用率の

結果をグラフ 4 に、スクロール操作の実行時間をグラフ 5 に示します。

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グラフ 3: Excel スクロール操作時のネットワーク使用帯域 (Bytes Total/sec)

グラフ 4: Excel スクロール操作時のクライアント CPU 使用率 (% Processor Time)

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グラフ 5: Excel スクロール操作時の所要時間 (秒)

※ このテストは、RDP 8.0 は接続品質の自動検出設定で、RDP 7.1 は同一条件のエクスペリエンス機能設定で実施しま

した。

考察

グラフ 3 および グラフ 4 の結果は、ネットワークの帯域を制限していない LAN 上での計測結果です。LAN 上では

RDP 7.1 でも良好なパフォーマンスを示していますが、特に、RDP 8.0 がより少ないネットワーク使用帯域で、高速に

操作を完了できています。RDP は LAN 上でのビジネス アプリケーションを得意としていると言えるでしょう。

ただし、帯域幅が制限されると状況が変わります。RDP 7.1 の場合は、WAN 向けにエクスペリエンス機能を無効にしな

い限り、狭帯域では実用に耐えない結果でした。RDP 8.0 の狭帯域における実行時間の結果は良好でしたが、描画がコマ

落ちすることがありました。

RDP 8.0 は RemoteFX メディア リモーティングにより、マルチメディア コンテンツのスムーズな再生は可能ですが、

この機能はビジネス アプリケーションの操作には適用されません。RDP 8.0 の狭帯域におけるコマ落ちは、RemoteFX

アダプティブ グラフィックスなど、WAN 最適化機能の影響と予想されます。

検証テスト 3: RDP 8.0 のトランスポート比較

検証結果

グラフ 6 は、LAN と WAN (2 Mbps および 1 Mbps) の両環境において、TCP と UDP のトランスポートの違いによ

る、動画再生時のネットワーク使用帯域を計測した結果です。

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グラフ 6: RDP 8.0 における TCP と UDP プロトコルの比較 (Bytes Total/sec)

※ UDP の結果は、既定値である[TCP と UDP の両方]のトランスポート設定で測定したものです。動画の再生である

ため、LAN 環境においても、UDP が優先的に使用されるはずですが、TCP 接続が使用されている可能性も否定できませ

ん。TCP の結果は、Windows ファイアウォールで UDP 3389 ポートをブロックして測定したものです。

考察

LAN 環境において、トランスポートの違いによるネットワーク使用帯域の明らかな差は確認できませんでした。WAN 環

境においては、UDP のほうが数秒早く再生が完了していることから、より効率的にデータ転送ができているとわかります。

遅延やパケット ロスの多い実際の WAN 環境では、UDP のメリットがより際立つことになると予想されます。

検証テスト 4: RemoteFX vGPU のパフォーマンス効果

検証結果

グラフ 6 とグラフ 7 は、RemoteFX vGPU を割り当てた仮想デスクトップと、RemoteFX vGPU を割り当てていない

仮想デスクトップに対してリモート デスクトップ接続を行い、HTML5 アプリケーションを実行したときのネットワーク

使用帯域、クライアントのプロセッサ使用率、仮想デスクトップのプロセッサ使用率、および HTML5 アプリケーション

のレンダリング性能 (フレーム/秒、FPS ) を計測した結果です。グラフ 8 は、グラフ 6 と同じテストを、WAN 環境を

想定した上限 2 Mbps の帯域幅で実施した結果です。

0:30 s 2:15 s

2:20 s

4:42 s

4:45 s

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グラフ 6: RemoteFX vGPU 使用時のネットワーク使用帯域 (Received byte/sec、Sent byte/sec) およびクライアン

トと仮想マシンの CPU 使用率 (% Processor Time)

グラフ 7: RemoteFX vGPU を使用しない場合のネットワーク使用帯域 (Received byte/sec、Sent byte/sec) および

クライアントと仮想マシンの CPU 使用率 (% Processor Time)

レンダリング性能: 18~21 FPS

レンダリング性能: 60 FPS

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グラフ 8: RemoteFX vGPU 使用時のテストを帯域上限 2 Mbps で実施した結果

考察

RemoteFX vGPU が利用できる場合、Internet Explorer 10 は GPU を活用してレンダリングを行います。その結果、

RemoteFX vGPU が有効な仮想デスクトップのプロセッサ使用率は、RemoteFX vGPU が有効ではない場合と比べて低

下します。次の画面は、Windows Sysinternals の Process Explorer を利用して、HTML5 アプリケーション実行時の

GPU の利用状況を表示したものです。

図 7: Process Explorer を使用した、仮想デスクトップの GPU 使用状況の確認。左は RemoteFX vGPU あり、右は

RemoteFX vGPU なし

レンダリング性能: 58~60 FPS

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Process Explorer のダウンロード

http://technet.microsoft.com/ja-jp/sysinternals/bb896653.aspx

RemoteFX vGPU が利用できる場合に、クライアントのプロセッサ使用率とネットワーク使用帯域が大きくなっているの

は、レンダリング性能 (FPS) が約 3 倍と高いため、より多くの画面データを転送して表示する必要があるからです。

Windows Server 2008 R2 SP1 のリモート デスクトップ サービスで提供された RemoteFX vGPU は、LAN 上でのみ

利用できる機能でした。Windows Server 2012 のリモート デスクトップ サービスが提供する RemoteFX vGPU は

WAN 上でも利用可能です。グラフ 8 が示すとおり、帯域幅が制限される場合でも、さほどレンダリング性能 (FPS) を

落とすことなく、スムーズに表示できました。

仮想化製品の検討

仮想デスクトップの実現はネットワークへの依存性が強いため、プロトコルによる使用ネットワーク帯域に注目されるこ

とがあります。しかし実際に検討する場合は、利用するユーザーの環境、配置、規模、利用するアプリケーションやシナ

リオ、セキュリティに関するポリシーなどを加味して検討する必要があります。そのため、マイクロソフトでは実際に必

要となる多くの機能を補完するために、シトリックス社とのアライアンスを結び、共同のソリューションとして提供して

います。

多様な OSの利用や、プロトコルレベルでの QoS、セッション監視や詳細なポリシー制御など、実際の検討で多くの場合

に必要となる機能を、両社のソリューションでカバーします。状況に応じてシトリックス社のソリューションも併せてご

検討ください。

まとめ

本検証結果が示すように、Windows Server 2012 と Windows 8 ベースのリモート デスクトップ サービスは、最新の

RDP 8.0 および RemoteFX の拡張により、さまざまネットワーク環境において、マルチ メディア コンテンツの再生と

生産性アプリケーションの利用の両方に対して、それぞれの特性に応じたエクスペリエンス機能を提供できます。この機

能は、Windows 7 SP1 向けの RDP 8.0 更新 (KB2592687) によって、Windows 7 SP1 クライアントに対しても提供

されます。

このドキュメントでは詳しく触れていませんが、RemoteFX マルチ タッチや RemoteFX USB デバイス リダイレクト

と組み合わせることで、ユーザーは、ローカルのコンピューターやデバイスにインストールされている OS が提供するデ

スクトップ環境を操作するのと同じように、仮想的なデスクトップをネットワーク経由で利用できます。

モバイル ワーカーや在宅ワーカー、BYOD (Bring Your Own Device) への対応を進める必要がある企業にとって、

Windows Server 2012 標準のリモート デスクトップ サービスは、低コストで最適なソリューションになるでしょう。

また、RemoteFX vGPU を WAN 環境で利用できるようになったことで、シン クライアント ソリューションの対象範

囲も広がります。

関連リソース

Microsoft 仮想デスクトップ インフラストラクチャ (VDI)

http://www.microsoft.com/ja-jp/windows/enterprise/products-and-technologies/virtualization/vdi.aspx

Remote Desktop Services Blog > RemoteFX Features for Windows 8 and Windows Server 2012

http://blogs.msdn.com/b/rds/archive/2012/11/26/remotefx-features-for-windows-8-and-windows-server-

2012.aspx

Page 19: リモート デスクトップ プロトコル (RDP) 8download.microsoft.com/.../WS2012_RDP_Performance.pdfPublished: 2013 年 5 月 23 日 概要 このドキュメントは、Windows

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