Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
1
第3章
さまざまな多数決ルール
ルールの比較
コンドルセ勝者
2
1.12個の多数決ルール
修正手続き
対案の中で勝ったものを現状維持と比較
それぞれ単純多数決を使う
?
a
現状維持(s)原案(a)修正案(b)修正案の修正案(c)
s
c b
3
シュワルツ方式
頂上循環
上位の選択肢間で循環が生じる
シュワルツ方式
勝者集合 S⊂X(普遍集合)
(1) ∀x∈S,∀y∈X\S:xPy(2) S:最小
4
最多数投票(最大多数決定)
各決定参加者が自分の第1位とする選択肢に投票し,得票数の多い順に決められた個数 (k) まで勝者とする
k=1 → 小選挙区制
k≧2 → 大選挙区制
日本の中選挙区制
→ 3≦k≦5 の大選挙区制
5
ボルダ方式(1)
各決定参加者がそれぞれの選択肢に評点を与え,評点の合計が最大になる選択肢が勝者となる
ボルダ自身は
小さい方から,a, a+b, a+2b, …ここでは,小さい方から,0, 1, 2, 3,…評点の合計=各人の選好において他の選択肢
に勝った回数の合計
6
cba
2abc
3 5人による意思決定
単純多数決=二項比較a f b f c
a が勝者
012
2654
210
abc
合計3 ボルダ方式では,評点の合計が最大であるa が勝者
7
b ca
2abc
3 5人による意思決定
単純多数決=二項比較a f b f c
a が勝者
021
2672
210
abc
合計3 ボルダ方式では,評点の合計が最大である b が勝者
↓↓単純多数決とボルダ方式は,異なる勝者を選びうる
8
adcb
2badc
2cbad
3 順位逆転のパラドックス勝者転落のパラドックス
ad単純多数決では
c b
3012
22301
21312116
1230
abcd
合計3201
2120
2678
012
abc
合計3
⇒
勝者が a から c に転換
9
ボルダ方式(2):別の定義
[定義]ボルダ数βi(x)
任意のx に対し,x より厳密に選好されない選択対象の数から,x より厳密に選好される選択対象の数を引いた数
ボルダ方式の下での社会的選択関数
C(X)={x} ⇔ ∑iβi (x)≧ ∑i βi (y) ,∀y∈ X
それぞれの選択肢に勝利回数-敗北回数の評点を与え,評点の合計が最大になる選択肢が勝者となる
10
adcb
2badc
2cbad
3別の定義では,点数の総計が0になる.最初の定義では,点数の総計が,人数×n(n-1)/2 になる.
3-3-11
213-3-1
2531-9
-113-3
abcd
合計32-20
202-2
2-202
-202
abc
合計3
⇒
勝者が a から c に転換
11
コープランド方式
二項比較での勝利回数から敗北回数を差し引いた値が最大である選択肢を勝者とする
単純多数決による二項比較
adcb
2badc
2cbad
3 γ(x):コープランド数γ(a)=2-1=1γ(b)=2-1=1γ(c)=1-2=-1γ(d)=1-2=-1
よって,a,b が勝者
単純多数決ad
c b
12
ドッジソン方式
a f b を b f a に変える操作 → 反転
ドッジソン勝者
=コンドルセ勝者となるのに必要な反転の数が
最小である選択肢
前ページの例a=2 (bに勝つためには2人が a f b になればよい)
b=2, c=2, d=6 (aに勝つために4人,bに勝つために2人反転)
ドッジソン勝者は,a,b,c
13
ナンソン方式
評点の合計が平均未満である選択肢を,評点が少ない方から順に排除していく連続的なボルダ方式
01
210
225
01
bc
合計3 評点の合計が平均未満であるaが取り除かれて,bとcの間でボルダ方式を使うとcが選ばれる
⇒
14
ブラック方式
単純多数決とボルダ方式の組み合わせ
コンドルセ勝者が存在すればそれを最終勝者,コンドルセ勝者が存在しないときはボルダ勝者を選ぶ
15
ヘア方式
有効投票数=V,勝者数=k
勝利に必要な最小得票数q=V/(k+1)+1投票者が全選択肢について選好順序を表明
qに達した選択肢があればそれを勝者とする
なければ,第1位が最少の選択肢を排除してその得票を,それらの人の順序で第2位のとされた
選択肢に配分する
k個の選択肢が選ばれるまで繰り返す
16
クームズ方式
ヘア方式の変形
第1位とする選択肢が最も少ない選択肢の代わ
りに,最下位とする人が最も多い選択肢を排除する
17
決勝付選挙(決選投票付決定)
投票者はそれぞれ第1位とする選択肢に投票す
る(最多数投票と同じ)
過半数の支持を得た選択肢がある場合には,それが勝者となる
そのような選択肢がない場合,上位2個の選択
肢で決戦を行う
18
承認投票
投票がm個の選択肢のうち自分が好むs個(0≦s≦m)に投票して,得票数が最も多い選択
肢が勝者となる
長所:参加者がなしうる決定行為の豊富さ
可能な決定行為最多数投票:m+1
{a}, {b}, {c}, φ承認投票:2m
{a}, {b}, {c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c}, φ
19
2.結果のルール依存性
決定参加者の選好が同じでも,ルール次第で結果は大きく異なりうる
=結果のルール依存性
20
ecbda
2edbca
4bceda
9cdeba
10debca
12abecd
18結果のルール依存性 単純多数決ではe
最多数投票ではaが選ばれる決勝付選挙ならaとdが残り,最終的にdが勝つ
a
b
cd
e
単純多数決
02314
202134
404312
901432
1002143
1272
136107101134
43102
abcde
合計18ボルダ方式ではb が選ばれる
21
6------
e121616--
d10122137
c99----
b18181818
第1段階
第2段階
第3段階
第4段階
a
ヘア方式では c が勝者
01800
37
第3位
018111412
第2位
1845212655
189
10126
abcde
合計第1位
第3位までの承認投票ではeが勝者
22
3.コンドルセ基準
ルール比較の基準
コンドルセ勝者基準コンドルセ勝者が存在する場合は,その選択肢が勝者となる
コンドルセ敗者基準単純多数決で他のすべての選択肢に負けるコンドルセ敗者が存在する場合,その選択肢は勝者とはならない
コンドルセ基準
=コンドルセ勝者基準+コンドルセ敗者基準
23
修正手続きとシュワルツ方式は(2つの)コンドルセ基準を満たす
コンドルセ勝者はどんなトーナメントでも勝つし,コンドルセ敗者は必ず負ける
コンドルセ勝者は頂上循環の唯一の選択肢であり,コンドルセ敗者は頂上循環には入らない
最多数投票はどちらの基準も満たさない
(ボルダのパラドックス)1968年アメリカ大統領選:コンドルセ勝者は勝ったニクソンではなく,敗れたハンフリー
1880年,1884年,1888年,1912年のアメリカ大統領選挙では,コンドルセ勝者が落選している
24
ボルダのパラドックス
最多数投票の勝者:a決勝付選挙の勝者:b
1回目:cが落選
2回目:bが当選,aが落選
コンドルセ勝者:cコンドルセ敗者:a
ボルダのパラドックス
最多数投票はコンドルセ勝者基準・コンドルセ敗者基準をともに満たさない
bca
7abc
1cba
6acb
7
1313c813b88acba
25
ボルダ方式はコンドルセ勝者基準を満たさない
cba
1acb
1bca
10bac
29cab
10abc
30
1221c6940b6041acba
012
1201
1102
10021
10120
2910110933
210
abc
合計30 単純多数決による勝者はaボルダ方式,および最多数投票による勝者はb
26
コンドルセ勝者基準は直観に合わない
bcda
3abdc
3bdca
2abcd
3
505d6116d
05c115b66acba
0312
20321
33201
318271110
3210
abcd
合計3 単純多数決によるコンドルセ勝者はaaは半数近くで最下位ボルダ勝者はbbは全員にとって第1位か第2位
27
ドッジソン方式はコンドルセ敗者基準を満たさない
bcad
3cdab
5dbca
2abdc
5
777d888d
510c105b510acba
⇒
a,b,c,dのいずれも必要な反転の回数は3.4つともドッジソン勝者.しかし,dはコンドルセ敗者
コープランド方式は両コンドルセ基準を満たす
28
ヘア方式はコンドルセ勝者基準を満たさない
bcdea
2cbdea
3ebcda
5dbcea
3abcde
5555
e33--
d358
c2----
b555
第1段階
第2段階
第3段階
a
55512e12121212e
3312d14145d
312c1412b55acba
第1位とする投票者が最も少ないbが排除される.しかし,bはコンドルセ勝者
29
クームズ方式はコンドルセ勝者基準を満たさない
cab
2bac
2bca
4acb
4cba
4abc
5610
c611
b9--
第1段階
第2段階
a
クームズ勝者はb
1010c1110b1111acba総有権者数は21.a,b,cのど
れも過半数q=11には達しな
い.最下位とする投票者が最も多いaが排除される.しかし,aはコンドルセ勝者
30
ナンソン方式,ブラック方式は,コンドルセ勝者基準,敗者基準をともに満たす
決勝付選挙はコンドルセ敗者基準を満たす(コンドルセ敗者は遅くとも決勝で敗れるから)しかし,コンドルセ勝者基準は満たさない
bca
7abc
1cba
6acb
7 a,bが決勝に進み,最終的にbが勝者となるが,コンドルセ勝者はcである
31
4.単調性・一貫性(整合性)・パレート原理
単調性(非負の感応性)
一部の投票者が自らの選好順序において,勝者となった選択肢の順位を上げ,他の投票者が順位を変更しないならば,その選択肢は勝者から転落することはない
修正手続・シュワルツ方式・最多数投票・ボルダ方式・コープランド方式・ブラック方式・承認投票は,単調性を満たす
ドッジソン方式はあるタイプで満たす
32
ナンソン方式は単調性を満たさない(1)
cba
2bca
5cab
5abc
8212019
合計
abc
012
2021
5102
5210
8
137
合計
ab
01
201
510
510
8ボルダ評点が平均未満のcが排除され,aが勝
者となる
33
ナンソン方式は単調性を満たさない(2)
cab
2bca
5cab
5abc
8231819
合計
abc
102
2021
5102
5210
8
812
合計
ac
01
201
501
510
82人の投票者がaの順位
を引き上げたとするボルダ評点が平均未満のbが排除され,cが勝
者となる(平均以下を順に排除)
34
ヘア方式・決勝付選挙は単調性を満たさない
cab
3bac
6cba
5abc
7acb
3bac
6cba
5abc
7a:c = 13:8 a:b = 10:11
左表の投票では,第1位とする投票者が最も少ないbが排除され,その支持票を得たaが勝者となる3人がaの順位を引き上げた右表では,第1位とする投票者が最も少ないcが排除され,その支持票を得たbが勝者となる決勝付選挙も同じ.左表ではaとcの決選投票でaが勝者となり,右表ではaとbの決選投票でbが勝者となる
35
クームズ方式は単調性を満たさない
cba
2cab
4bca
2abc
5cab
2cab
4bca
2abc
5
左表の投票では,最下位とする投票者が最も多いcが排除され,aが勝者となる (a:b = 9:4)2人がaの順位を引き上げた右表では,最下位とする投票者が最も多いbが排除され,cが勝者となる (a:c = 5:8)
36
一貫性(整合性)2つの投票者集団が同一の選択肢集合について投票を行ったとき,2つの勝者集合が共通部分を持つなら,2つの集団が一緒になった全体集団では,共通部分
の選択肢すべてが勝者となり,かつ勝者はそれだけに限定されるべきである
部分集団による決定と全体集団による決定の首尾一貫性
37
一貫性はコンドルセ勝者基準と相容れない
匿名性・中立性・一貫性を満たすルールはコンドルセ勝者基準を満たさない(Young, 1975)
12個の多数決ルールは匿名性を満たす
修正手続以外は中立性も満たす
コンドルセ勝者基準を満たすシュワルツ方式・コープランド方式・ドッジソン方式・ナンソン方式・ブラック方式は,一貫性を満たさない
38
修正手続(中立性を満たさない)は一貫性を満たさない
cba
2bac
2cab
2bca
2acb
3abc
3 はじめにaとbを比較し,次にその勝者とcを比較する左:aがbに勝った後,cに負
ける右:bがaに勝った後,cに負
ける→ c が勝つ
全体:aがbに勝ち,その後cにも勝つ
a:b=3:4b:c=2:5
a:b=5:2a:c=3:4
全体ではa:b=8:6a:c=8:6
39
シュワルツ方式は一貫性を満たさない
acb
1cba
1cab
3bca
3bac
3abc
4 左:aがbに勝ち,bがcに勝ち,cがaに勝つので,a,b,cともシュワルツ勝者右:bがコンドルセ勝者
全体:aがコンドルセ勝者
{a,b,c}∩{b}={b}≠{a}一貫性を満たさない
a
b
a
bc c
40
コープランド方式・ドッジソン方式は一貫性を満たさない
badc
1bcad
1cabd
1bacd
1abdc
1abcd
1abcd
122-2-2
左
111-3
右 全体
31-1-3
abcd
コープランド数
コープランド方式 ドッジソン方式左:a, bが勝者 左:a,bは反転1回,c,dは3回右:a, b, cが勝者 右:a,b,cは反転1回全体:aが勝者 全体:aはコンドルセ勝者
41
ナンソン方式は一貫性を満たさない
bdca
1cadb
1adbc
1cabd
1bcad
1abcd
1
666
合計
abc
102
2021
2210
2
左:a,b,c右:ボルダ評点が平均未満のb,cが
排除され(同点だから),最終的にaが勝者となる全体:a,b,c
6660
計
5445
計
0312
12031
11110105
合計
abcd
3102
12130
11320
13210
1
42
ブラック方式は一貫性を満たさない
dabc
1bcda
1badc
1abcd
1bd ca
4cd ab
2abcd
5 左:aがコンドルセ勝者
右:ボルダ評点は同じa,b,c,d
全体:b a
bc
d
単純多数決
2103
10321
1o---
w9999
計
2301
13210
124271821
合計
abcd
1032
20213
43210
5
43
ヘア方式は一貫性を満たさない(1)
dabc
3bcda
4cadb
6abcd
8cadb
3d cba
6bcd a
4abcd
8abc
3bca
4cab
6abc
8adb
3d ba
6bd a
4abd
8
ac
3ca
4ca
6ac
8ad
3d a
6d a
4ad
8
左:まずcが抜け,次にbが抜け,aが勝者右:まずdが抜け,次にbが抜け,aが勝者
↓a
↓a
44
ヘア方式は一貫性を満たさない(2)
dabc
3bcda
4cadb
6abcd
8cadb
3d cba
6bcd a
4abcd
8dac
3cda
4cad
6acd
8cad
3d ca
6cd a
4acd
8
ac
3ca
4ca
6ac
8ca
3c a
6c a
4ac
8
全体:まずbが抜け,次にdが抜け,cが勝者
↓a:c=19:23
45
クームズ方式は一貫性を満たさない(1)
dabc
2bdca
3abcd
4abdc
1dabc
1b cda
3bad c
1acdb
4abc
2bca
3abc
4adc
1dac
1cd a
3ad c
1acd
4
ab
2ba
3ab
4ac
1ac
1c a
3a c
1ac
4
左:まずbが抜け,次にdが抜け,aが勝者右:まずdが抜け,次にcが抜け,aが勝者
↓a
↓a
46
クームズ方式は一貫性を満たさない(2)
dabc
2bdca
3abcd
4abdc
1dabc
1b cda
3bad c
1acdb
4dbc
2bdc
3bcd
4bdc
1dbc
1bcd
3bd c
1cdb
4
全体:まずaが抜け,次にcが抜け,bが勝者
db
2bd
3bd
4bd
1db
1b d
3b d
1db
4
↓b:d=12:7
47
決勝付選挙は一貫性を満たさない
acb
1cab
2bac
2cab
2bca
1abc
3cb
1cb
2bc
2ca
2ca
1ac
3→
↓
左:bが抜け,aとcの間で決選投票.aとcとも勝者右:aが抜け,bとcの間で決戦投票.cが勝者全体:まずbが抜け,aとcの間で決選投票.aが勝者
ac
1ca
2ac
3ca
1c a
2ac
3
↓a:c=6:5
48
承認投票は弱パレート原理を満たさない
adcb
1abcd
2→
3つを承認adc
1abc
2 3231
abcd
→ a,cが勝者
3人にとって,a f c弱パレート原理を満たさない
×○○××承認投票
○××○×決勝付選挙
○××○×クームズ方式
○××○×ヘア方式
○×○○○ブラック方式
○××○○ナンソン方式
○×○/××○ドッジソン方式
○×○○○コープランド方式
○○○○×ボルダ方式
○○○××最多数投票
××○○○シュワルツ方式
××○○○修正手続
P原理一貫性単調性敗者基準勝者基準
50
シュワルツ方式:劣位勝者のパラドックス
dabc
1cdab
1abcd
1
122d211d
11c20b23acba
シュワルツ方式による勝者はa,b,c,dbは全員一致でaより劣る
→弱パレート原理に矛盾
ad
c b