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2015 October 10 2015 10 卵・牛乳アレルギーと薬 じんましん、湿疹、かゆい、赤くなる、 顔などの腫れ、など 咳、ぜいぜいする、呼吸が苦しい、 喉などの腫れ、など (目)赤くなる、腫れる、かゆい、涙が出る、など (鼻)くしゃみ、鼻水、鼻づまり、など (口) 口の中や唇や舌が腫れる、かゆい、違和感、など 腹痛、吐く、下痢、など 血圧が下がる、意識がなくなる、 ぐったりする、心臓がドキドキする、など 食物アレルギーの中で最も多いものは卵(鶏卵)アレル ギー で、次いで牛乳アレルギー です 1) 。両方とも、特に6歳くら いまでのお子さんに多く、年齢が上がるにつれて抵抗性(耐 性)を獲得して少なくなります。 医薬品の中には、卵や牛乳の成分を微量に含むものがあり ます。そのような薬は、卵や牛乳にアレルギーがある方は使え ません。該当する薬が処方されたり、調剤されたりしないよう に、過去に食物や薬でアレルギーを起こしたことがある場合 は、必ず医師と薬剤師に 伝えておくことが大切 です。過去にアレルギー を起こしたことを「お薬 手帳」の「アレルギー歴」 を書く欄などに書いて おき、それを見せると良 いでしょう。 私たちの体には、外から侵入してきた細菌やウイルスな どを「異物」と捉えて排除し、体を守る 「免疫(めんえき)」 いう働きがあります。免疫は体を外敵から守る大切な働き ですが、これが過剰に反応してしまうことがあります。それ がアレルギーです。 食物アレルギーの場合は、食品(卵や牛乳など)がアレル ギーの原因=「異物」となり、過剰な免疫反応が起こり、体 にとって不都合な症状が出ます。 卵由来の成分や添加物を含む薬として、次の表のような 薬があります。薬局で取り扱っている薬としては、卵白由来 の成分「リゾチーム」を含む薬が該当します。 インフルエンザワクチンは、卵を使用して製造しているた め、卵タンパク成分が含まれています。含まれる量がごく微量 であるため、多くの方は問題なく接種できますが、 重度の卵 アレルギーのある方は接種に問題がないか検査してからの 接種になります。 アレルギーとは・・・ 卵アレルギーや牛乳アレルギーの原因となる成分は、卵 や牛乳・乳製品に含まれるタンパク質(リゾチームやカゼイ ンなど)です。これらのタンパク質に体が過剰反応して、ア レルギーが起こります。 卵、牛乳をはじめとした食物アレルギーの症状は多様で、 次のような症状が出ることがあります。最も出ることが多 いのはじんましんなどの皮膚症状です 2) 卵・牛乳アレルギーの原因と症状 卵アレルギーを起こす成分が含まれる薬 卵アレルギー、牛乳アレルギーの主な症状 1、2) 卵アレルギーを起こす成分が含まれる薬 3) 皮膚症状 呼吸器症状 粘膜 (目、鼻、口) 症状 消化器症状 ショック 飲み薬 (錠剤、 カプセル、 シロップ) 目薬 塗り薬・ 貼り薬 注射 注射 炎症による腫れを 和らげる。 痰や膿を溶かして 出しやすくする。 目の炎症を和らげる。 傷の治りをよくする。 超音波検査の画像を 見やすくする(造影剤)。 感染を予防する。 卵白由来の 成分 「リゾチー ム」を含む。 卵由来の添加 物を含む。 製造する段階で、 卵を利用する。 アクディーム、 ノイチーム、 レフトーゼ ムコゾーム、 リゾティア リフラップ ゾナゾイド インフルエンザ HAワクチン、 黄熱ワクチン 薬の名前 薬のタイプ 何の薬か 卵アレルギーを 起こす理由

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Page 1: 卵・牛乳アレルギーと薬 - PHARMARISE2015 October 10 2015 10 卵・牛乳アレルギーと薬 じんましん、湿疹、かゆい、赤くなる、 顔などの腫れ、など

2015 October

102015 10

卵・牛乳アレルギーと薬

じんましん、湿疹、かゆい、赤くなる、 顔などの腫れ、など 咳、ぜいぜいする、呼吸が苦しい、 喉などの腫れ、など(目)赤くなる、腫れる、かゆい、涙が出る、など(鼻)くしゃみ、鼻水、鼻づまり、など(口)口の中や唇や舌が腫れる、かゆい、違和感、など 腹痛、吐く、下痢、など 血圧が下がる、意識がなくなる、 ぐったりする、心臓がドキドキする、など

 食物アレルギーの中で最も多いものは卵(鶏卵)アレルギーで、次いで牛乳アレルギーです1)。両方とも、特に6歳くらいまでのお子さんに多く、年齢が上がるにつれて抵抗性(耐性)を獲得して少なくなります。

 医薬品の中には、卵や牛乳の成分を微量に含むものがあります。そのような薬は、卵や牛乳にアレルギーがある方は使えません。該当する薬が処方されたり、調剤されたりしないように、過去に食物や薬でアレルギーを起こしたことがある場合

は、必ず医師と薬剤師に伝えておくことが大切です。過去にアレルギーを起こしたことを「お薬手帳」の「アレルギー歴」を書く欄などに書いておき、それを見せると良いでしょう。

 私たちの体には、外から侵入してきた細菌やウイルスなどを「異物」と捉えて排除し、体を守る「免疫(めんえき)」という働きがあります。免疫は体を外敵から守る大切な働きですが、これが過剰に反応してしまうことがあります。それがアレルギーです。 食物アレルギーの場合は、食品(卵や牛乳など)がアレルギーの原因=「異物」となり、過剰な免疫反応が起こり、体にとって不都合な症状が出ます。

 卵由来の成分や添加物を含む薬として、次の表のような薬があります。薬局で取り扱っている薬としては、卵白由来の成分「リゾチーム」を含む薬が該当します。

 インフルエンザワクチンは、卵を使用して製造しているため、卵タンパク成分が含まれています。含まれる量がごく微量であるため、多くの方は問題なく接種できますが、 重度の卵アレルギーのある方は接種に問題がないか検査してからの接種になります。

アレルギーとは・・・

 卵アレルギーや牛乳アレルギーの原因となる成分は、卵や牛乳・乳製品に含まれるタンパク質(リゾチームやカゼインなど)です。これらのタンパク質に体が過剰反応して、アレルギーが起こります。 卵、牛乳をはじめとした食物アレルギーの症状は多様で、次のような症状が出ることがあります。最も出ることが多いのはじんましんなどの皮膚症状です2)。

卵・牛乳アレルギーの原因と症状

卵アレルギーを起こす成分が含まれる薬

卵アレルギー、牛乳アレルギーの主な症状1、2)

卵アレルギーを起こす成分が含まれる薬3)

皮膚症状

呼吸器症状

粘膜(目、鼻、口)症状

消化器症状

ショック

飲み薬(錠剤、カフ セ゚ル、シロップ)

目薬

塗り薬・貼り薬

注射

注射

炎症による腫れを和らげる。痰や膿を溶かして出しやすくする。

目の炎症を和らげる。

傷の治りをよくする。

超音波検査の画像を見やすくする(造影剤)。

感染を予防する。

卵白由来の成分「リゾチーム」を含む。

卵由来の添加物を含む。

製造する段階で、卵を利用する。

アクディーム、ノイチーム、レフトーゼ

ムコゾーム、リゾティア

リフラップ

ゾナゾイド

インフルエンザHAワクチン、黄熱ワクチン

薬の名前 薬のタイプ 何の薬か 卵アレルギーを起こす理由

Page 2: 卵・牛乳アレルギーと薬 - PHARMARISE2015 October 10 2015 10 卵・牛乳アレルギーと薬 じんましん、湿疹、かゆい、赤くなる、 顔などの腫れ、など

2015 年 10 月号

1)日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:診療ガイドライン2012  ダイジェスト版2)「食物アレルギーの診療の手引き 2014」検討委員会:厚生労働科学研究  班による食物アレルギーの診療の手引き 20143)各製剤 添付文書

【参考文献】

 牛乳アレルギーの原因成分は、主に牛乳に含まれるタンパク質である「カゼイン」という成分です。カゼインは薬の添加物としても使われています。 牛乳由来の成分を含む薬としては次の表のようなものがあります。

 インフルエンザの吸入薬である「リレンザ」と「イナビル」は、吸入する粉の中に乳タンパクが混じっているため、牛乳アレルギーの方にアレルギーが出たという報告があります。

 なお、多くの薬には添加物として乳糖が使用されていますが、通常の乳糖は牛乳アレルギーの原因とはならないと言われています。

牛乳アレルギーを起こす成分が含まれる薬

「乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)」について

牛乳アレルギーを起こす成分が含まれる薬3)

飲み薬(粉薬)

飲み薬(粉薬)

飲み薬(錠剤)

飲み薬(カフ セ゚ル)

飲み薬(水に溶かす粉薬)

飲み薬(液、ゲル)

注射

吸入薬

お腹の調子を整える。抗生物質による下痢を予防する。

下痢を止める。

便を軟らかくし、便通を良くする。胃酸を中和して胃を守る。

血圧を下げたり、心臓の負担を少なくする。

肝臓病に用いる栄養剤。

食事が十分とれない時などの栄養剤。

炎症を抑えたりなどする。

インフルエンザウイルスの増殖を抑える。

製造する段階で、牛乳由来成分を利用する。

添加物としてカゼインが使われている。

牛乳由来のカゼインが含まれている。

牛乳由来のタンパク質が含まれている。

牛乳由来の乳糖を使用している。

乳タンパクが混じっている。

薬の名前 薬のタイプ 何の薬か 牛乳アレルギーを起こす理由

ラックビーRエンテロノン-R コレポリーR 耐性乳酸菌散(エントモール)※上記以外の乳酸菌製剤は除く。

タンニン酸アルブミン、タンナルビン

ミルマグ錠※ミルマグ内用懸濁液は除く

エマベリンL

アミノレバンEN※アミノレバンの点滴は除く

エンシュア、ラコールNF

エネーボ

ソル・メドロール、ソル・メルコート

リレンザ、イナビル

 牛乳や乳製品に含まれる乳糖は、牛乳アレルギーの原因にはなりませんが、乳糖を摂取すると下痢や腹痛などを起こす「乳糖不耐症」の方がいます。これは、乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の活性がなかったり、低下していたりするため、上手く消化・吸収できずに下痢などを起こします。  乳糖不耐性は、免疫のしくみとは関係しないので、 その点が牛乳アレルギーとは異なります。

 どのくらいの乳糖を摂取すると乳糖不耐症の症状が出るかは個人差があります。 極めて微量の乳糖であっても症状が出る方を除けば、医薬品に添加物として含まれるレベルの乳糖によって症状が出ることはまずありません。