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修士論文ゼミ 01 ME11002 Satoshi Aono May . 23, 2012 題目:「水を用いた建築」 ーBuilt-environment Information Modelingの実践ー 題目:「水を用いた建築」 ーBuilt-environment Information Modelingの実践ー □前回の反省 やりたいことが不明確で、一般的なことを述べるだけになってしまった。 そこで、もう一度振り返ってみたところ、修士1年 建築設計情報特論で 研究を行った「水を用いた建築設計手法」に立ち戻って、研究を進めるこ とを考える

題目:「水を用いた建築」 ーBuilt-environment Information ......また、 ρ=103 kg/m-3,g=9.8 m/s2,μ=1.8×10-5 N・sec/m2(15 )より、 よって、終端速度は水滴の半径の2乗に比例する。この議論が適用できる範囲は、Re<1、すなわちr<0.1mmの範囲である。速度の2乗

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Page 1: 題目:「水を用いた建築」 ーBuilt-environment Information ......また、 ρ=103 kg/m-3,g=9.8 m/s2,μ=1.8×10-5 N・sec/m2(15 )より、 よって、終端速度は水滴の半径の2乗に比例する。この議論が適用できる範囲は、Re<1、すなわちr<0.1mmの範囲である。速度の2乗

修士論文ゼミ 01ME11002 Satoshi Aono

May . 23, 2012

題目:「水を用いた建築」ーBuilt-environment Information Modelingの実践ー

題目:「水を用いた建築」ーBuilt-environment Information Modelingの実践ー

□前回の反省やりたいことが不明確で、一般的なことを述べるだけになってしまった。そこで、もう一度振り返ってみたところ、修士1年 建築設計情報特論で研究を行った「水を用いた建築設計手法」に立ち戻って、研究を進めることを考える

Page 2: 題目:「水を用いた建築」 ーBuilt-environment Information ......また、 ρ=103 kg/m-3,g=9.8 m/s2,μ=1.8×10-5 N・sec/m2(15 )より、 よって、終端速度は水滴の半径の2乗に比例する。この議論が適用できる範囲は、Re<1、すなわちr<0.1mmの範囲である。速度の2乗

May . 23, 2012

修士論文ゼミ 02ME11002 Satoshi Aono 題目:「水を用いた建築」ーBuilt-environment Information Modelingの実践ー

□目的・意義

東京都市部では、コンクリートジャングルと呼ばれるように、建築で埋め尽くされた、巨大な蓄熱体となっている。その影響で、都市はヒートアイランド現象を起こし、東京ではこの100年で3度の気温上昇を観測した。

日本では、年間の約3分の1の割合で雨が降っている。この雨を利用することで、建築そのものが気化熱を利用して、環境に還元することを考える。それは、単にビオトープや貯水機能をつければ良いという発想ではなく、建築の空間や意匠に反映させることを考える。

□日本の降水量と利用水量

□水の性質

1.水は蒸発しにくく、凍結しにくく、温まると冷めにくく、また良く熱を伝える

2.気化熱が大きい    液体が期待になる時に周囲から吸収する熱のことであるが、  液体は蒸発するためには熱が必要で、その熱は液体が接して  いるものから奪って蒸発する。故に、体が濡れていると、表面  の水敵が体温を奪って蒸発するため、寒くなる。

→打ち水の有効性(ex.ソニーシティ大崎/日建設計) 

洪水流出約2,000億t

日本の全降水量約6500億t/年

自然流出約1,700億t 都市用水

約90億t

工業用水約250億t

農業用水約460億t

自然蒸発約2000億t

出典:光・熱・音・水・空気のデザイン : 人間環境と建築ディテール / 彰国社 編

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建築設計情報特論   第 2課題「BIMを用いた設計」 01” 水の恵み”ME11002 Satoshi Aono

Aug . 03, 2011

Bentley Architecture V8i

  ( プラットホーム)

Ecotect Analys is 2011

  ( 水 - 流体解析)Generat ive Components

    ( 形態生成)

□用いるツール

Design Bui lder

( 水 - 流体解析)

□BIM における解析手法

※Ecotect や Design Bui lder で水の流れを解析するには?  →  流体力学として風解析を応用する

ex) 雨を解析する

ex) モデルを 90°回転することで、風の流体力学として解析をかける。

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建築設計情報特論   第 2課題「BIMを用いた設計」 02” 水の恵み”ME11002 Satoshi Aono

Aug . 03, 2011

□検証

オフィスビルと住宅においてスタディを行うこととする。実際に、Autodesk ecotect,Design Builderを用いて解析を行う。

STEP1 雨水を積極的に取り込むような形態をイメージする。

STEP2 そのイメージでボリュームを生成する(スタディ)

STEP3 解析をかけて、検証し、形態にフィードバックさせていく

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建築設計情報特論   第 2課題「BIMを用いた設計」 03” 水の恵み”ME11002 Satoshi Aono

Aug . 03, 2011

office

office

office

office

shop

office

office

office

office

office

shop

office

rain

□オフィスビルでの水の循環イメージ

 都市において、雨水を利用することで、従来よりも快適な居住環境をつくることができるのではないか。

 夏は涼しく、冬は、日光によって溜めた水を温めることで暖を取る。

 

groundwater

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建築設計情報特論   第 2課題「BIMを用いた設計」 04” 水の恵み”ME11002 Satoshi Aono

Aug . 03, 2011

□住宅での水の循環イメージ

 比較的降水量の多い四国や近畿地方での積極的な雨水利用を行う住宅を考える。 そうすることで、かつては自然蒸発していた雨水が利用されることとなる。

 

積極的に雨を引き込み、受け流す

採光の確保(ガラス)

石・砂・土によって濾過を行うさらに細かいフィルターを通す

浄水器を経て蛇口へ

水滴が蒸発をするのに

気化熱を生じ、室内温度が下がる

house

 意匠面においては、視覚的にも雨を楽しむものにする。

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建築設計情報特論   第 2課題「BIMを用いた設計」 05” 水の恵み”ME11002 Satoshi Aono

Aug . 03, 2011

□モデルケース2:住宅□モデルケース1:オフィスビル

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建築設計情報特論   第 2課題「BIMを用いた設計」 06” 水の恵み”ME11002 Satoshi Aono

Aug . 03, 2011

水滴には、鉛直下向きに重力、上向きに空気の粘性による抵抗力がはたらく。

速度に比例する抵抗力がはたらく場合 水滴が小さいとき、抵抗力の大きさは水滴の速度に比例する。鉛直下向きにx軸をとり、落下している間の質量変化を無視するとNewtonの運動方程式は、

v=dx/dtを用いて式を整理すると、

これを初期条件t=0でv=0のもとで解くと、

充分時間が経つと、重力と抵抗力がつり合って、

となる。これを水滴の終端速度と呼ぶ。

空気の分子粘性係数をμ、水滴の半径をrとするとStokesの抵抗法則より、

k=6πμr

また、 ρ=103 kg/m-3,g=9.8 m/s2,μ=1.8×10-5 N・sec/m2(15 ℃)より、

よって、終端速度は水滴の半径の2乗に比例する。この議論が適用できる範囲は、Re<1、すなわちr<0.1mmの範囲である。

速度の2乗に比例する抵抗力がはたらく場合 次に、水滴が大きいときを考える。このとき、抵抗力の大きさは水滴の速度の2乗に比例するから、 Newtonの運動方程式は、

v=dx/dtを用いて式を整理すると、

これを初期条件t=0でv=0のもとで解くと、

終端速度は、

空気の分子粘性係数をμ、動粘性係数をν、水滴の半径をrとすると、

k=0.235μπr2/ν

ν=0.15×10-4 m2/sec(15℃)より、

よって、終端速度は水滴の半径の平方根に比例する。この議論が適用できる範囲は、5×102<Re<2×105、すなわち0.7mm<r<30mmの範囲である。

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以上の考察より、いくつかの値を計算してみると、次のような結果が得られる。

       半径(mm)         落下速度(cm/sec) 雲粒        0.001             0.012 霧雨粒      0.01              1.2 霧と雨の境    0.1 120 雨粒 0.8 608 〃 1.0 680 〃 2.0 962

□解析するあたって、風速を雨滴の落下速度として捉える。

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建築設計情報特論   第 2課題「BIMを用いた設計」 07” 水の恵み”ME11002 Satoshi Aono

Aug . 03, 2011

□モデルケース1:オフィスビル

外部空間の解析を行うため、AutodeskEcotectによる解析を行った。都市における平均的な雨粒を想定し、先ほどの計算結果より雨粒の半径を1.0mmと仮定すると、落下速度は、0.68m/sとなる。

右の解析結果より、上空部分のボリュームの周辺が風量(雨量)が強まることが分かった。

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建築設計情報特論   第 2課題「BIMを用いた設計」 08” 水の恵み”ME11002 Satoshi Aono

Aug . 03, 2011

□モデルケース2:住宅

曲面形状のためDesignBui lderではなく、Autodesk Ecotectによる解析を行った。降水量が一番多い高知県を想定し、先ほどの計算結果より雨粒の半径を2.0mmと仮定すると、落下速度は、0.96m/sとなる。

右の解析結果より、下に雨が落ちるにつれ、雨量が強まっていくことが分った。これにより、雨水を効率良く収集することが可能だと考えられる。

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May . 23, 2012

修士論文ゼミ 03ME11002 Satoshi Aono 題目:「水を用いた建築」ーBuilt-environment Information Modelingの実践ー

□参考事例

古くから雨水建築とされていた集落の事例を参考にし、現在の建築に反映するヒントとする

1.スペイン (アルコス デ ラ フロンテーラ)

アルコスの中庭型住宅。中庭を介して、雨水を取り入れるようにしている。多くの雨をスムーズに中庭に流すため、切妻の勾配屋根を使用している。中庭は、石、コンクリート、セラミックタイルなど、水が浸透しない材料で舗装し、ゆるい勾配がつけられている。

雨水の流れを可視化してから地下に貯める 湿地帯に即したつくりになっている

屋根形状が雨をためるつくりになっている

2.イタリア (アルベロベッロ)

3.イタリア (ヴェネチアの雨水井戸)

4.タイ

出典:雨の建築術/日本建築学会 編