56
2014.7 Special Issue 調査月報 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

2014.7 Special Issue

調査月報調査月報

宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

Page 2: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-0-

目 次

はじめに -------------------------------------------------- 4

Ⅰ.都道府県経済の成長過程 -------------------------------- 4

1.推計方法の概要 -------------------------------------- 4

(1)推計モデル ---------------------------------------- 4

(2)使用データ ---------------------------------------- 5

2.推計結果の概要 -------------------------------------- 5

(1)全国・都道府県の概況 ------------------------------ 5

(2)宮城県・東北各県の概況 ---------------------------- 13

Ⅱ.都道府県の経済成長率の将来推計 ------------------------ 20

1.推計方法の概要 -------------------------------------- 20

(1)推計モデル ---------------------------------------- 20

(2)使用データ ---------------------------------------- 20

2.推計結果の概要 -------------------------------------- 22

(1)全国・都道府県の概況 ------------------------------ 22

(2)宮城県・東北各県の概況 ---------------------------- 32

Ⅲ.宮城県の経済成長率の底上げに向けて --------------------- 35

1.経済成長率の底上げを考える視点 ---------------------- 35

2.TFPの向上に向けて -------------------------------- 36

(1)高生産性産業のウェイトの向上 ---------------------- 36

(2)個々の産業の生産性の向上 -------------------------- 40

(3)集積の経済の活用 ---------------------------------- 41

(4)高生産性産業と低生産性産業のバランス調整 ----------- 43

おわりに -------------------------------------------------- 44

(資料)都道府県別経済成長率の将来推計結果 ----------------- 45

(参考文献) ---------------------------------------------- 51

Page 3: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-1-

【 要 旨 】

● 近年、地域経済は少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や大都市部への経済的資源の

集中などを背景に、総じて低迷している。今後も、本格的な人口減少社会の到来や大都

市部への経済的資源の一層の集中などに伴い、低迷を余儀なくされることが懸念される。

こうした中、宮城県を始めとした東日本大震災の被災地域では、このような環境変化に加

え、復興事業に係るさまざまな制約要因などから、将来的な地域の姿を見通すことが難しい

状況にある。本稿は、このような状況を踏まえ、地域の経済・産業の再生を図るための政策

的インプリケーションを提示することを意図して、各都道府県および宮城県・東北各県の経

済のこれまでの成長過程を概観するとともに、将来の経済成長の姿を推計したものである。

● 各都道府県および宮城県・東北各県の経済成長の分析においては、成長会計の考え方

を用いた。成長会計は、経済成長を供給面から捉える概念であり、経済成長率(県内総

生産の変化)を労働投入量の変化、資本ストック量の変化、並びに全要素生産性(TF

P)の変化の三つの要因で考察するものである。これにより、1980~2010年度までの過

去の成長過程と2010~2040年度までの将来的な経済成長の姿を推計した。

● 1980~2010年度の都道府県経済の成長過程をみると、都道府県合計の経済成長率(年度平均

値)は、1980年代が4.43%、90年代が1.00%、2000年代が0.43%となり、段階的に低下した。

都道府県別にみると、80年代は東京都、愛知県、滋賀県など三大都市圏等の都県では、人口

流入に伴う労働投入量の増加や不動産投資の活発化等による資本ストック量の積み増しなど

から、相対的に高い成長率を実現した。一方、東北、中国、四国、九州地方の県では、TF

Pおよび人口流出に伴う労働投入量の伸び悩みなどから、成長率は低位に止まった。90年代

は、バブル経済の崩壊等を背景に三大都市圏等の都県の成長率が低落した一方、地方圏は工

場・大型小売店の立地や公共投資の増勢などにより資本ストック量の伸びが堅調に推移し、

相対的に高めの成長率となった。2000年代に入ると、三大都市圏等の都県は企業の国内設備

投資の圧縮等による資本ストック量の伸びの縮小などから、成長率は伸び悩んだ。地方圏も

成長率は総じて低迷したが、産業構造等の違いを反映して各県の成長率には濃淡がみられる。

● 宮城県経済の成長過程をみると、80年代は労働投入量や資本ストック量の増加に牽引され、

経済成長率は東北地方の中では高い伸びを示した。しかし、90年代に入ると、労働投入量が小

幅ながらも減少に転じ、資本ストック量の伸びが低位であったことなどから、成長率は5県平均

並みとなった。さらに2000年代には資本ストック量の減少等から成長率はマイナスとなり、東

北各県に対する優位性は低下した。なお、各成長要因が80年代以降の経済成長率の変動に与え

た影響は、労働投入量よりは資本ストック量並びにTFPの寄与が大きい状況となっている。

東北各県については、80年代以降、労働投入量の減少が経済成長の足枷となる状況が

続いたが、90年代は工場立地や公共投資に伴う資本ストック量の増加などにより、成長

率は全国的にみても高めの伸びとなった。しかし、2000年代は設備投資や公共投資の縮

減に伴う資本ストック量の伸びの減退などから成長率は低下した。もっとも、山形県お

よび福島県においては、主に製造業での生産増加に伴うTFPの伸びを背景として、東

北地方における経済成長の優位性を高めている。

1七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 4: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-2-

● 都道府県の経済成長率の将来推計では、就業率を1980~2010年のトレンドで延長し、

TFPを2000~2010年度の10年間平均で不変としたケースⅠ(トレンド延長型)と、就業

率を2010年のもので不変とし、TFPを1980~2010年度の30年間平均で不変としたケー

スⅡ(安定成長期待型)の二つのケースについて推計した。

● ケースⅠにおける都道府県合計の経済成長率をみると、2010年代は0.71%とリーマンショ

ック等の影響から低成長に止まった2000年代に比べ持ち直し、その後、2020年代は0.70%と

概ね横ばいで推移するが、2030年代には0.25%となり大幅に低下する結果となった。

都道府県別にみると、2010年代は東京都、神奈川県、三重県、滋賀県など三大都市圏

とそれに隣接する都府県において、成長率が相対的に高い伸びを示している。これはT

FPの伸びが大きいことや、資本ストック量の増加が続いていること、労働投入量の減

少寄与が相対的に小さいことによるものである。一方、地方圏については、TFPの伸

びを主因として福井県や長野県、山口県、徳島県などで成長率が高くなっているが、秋

田県、富山県、石川県、鳥取県、島根県、高知県など、労働投入量の減少などから、マ

イナス成長となる県が相当数存在するなど、バラツキがみられる。これが2020年代、

2030年代となるに従い、大半で成長率は低下するが、2010年代の成長率の水準が高い地

域では、総じて、高めの成長率を維持する一方、北陸や四国地方の県では減少が加速す

るなど、都道府県間格差が拡大していく。

ケースⅡについてみると、条件設定上、全体的に成長率がケースⅠに比べて上振れし

ており、また、年代を経るごとの成長率の低下テンポやバラツキも緩やかなものとなる。

ただし、ケースⅠと同様に、三大都市圏等の都府県と地方圏の一部の県とには成長率に

大きな格差がみられる。

● ケースⅠの宮城県の経済成長率をみると、2010年代は1.47%(全国順位5位)と震災復興需

要に伴うTFPの伸びが原動力となり相対的に高い伸びとなった。しかし、2020年代は

0.39%(20位)と復興特需の終息等により成長率は大幅に低下する。また、2030年代に入ると、

成長率は▲0.18%(26位)となり、労働投入量のマイナス寄与の拡大と資本ストック量の伸び

の縮小によりマイナス成長に転じる。一方、ケースⅡでは、成長率は2010年代が1.82%(2

位)、2020年代が0.91%(11位)、2030年代が0.40%(16位)となり、条件設定上、労働投入量

のマイナス幅が縮小しTFPが上振れすることから、推計期間を通してケースⅠに比べて成

長率は上方シフトする。つまり、宮城県の将来的な経済成長の姿については、震災により甚

大な被害を受けたものの、2010年代は震災復興需要に牽引され相対的に高い経済成長が見込

まれる。しかしながら、2020年代以降は当該需要の終息等により成長率は大幅に低下する。

また、都道府県間における経済成長の相対的な位置付けは、TFPの伸びが高めの設定とな

っているケースⅡでは相応のポジションで推移するが、TFPが低めの設定となっているケ

ースⅠでは経済成長の優位性は段階的に低下し、2030年代にはかなり低位な状況となる。

東北各県については、岩手県ではTFPの設定如何により、経済成長の姿がかなり異

なるが、総じてみると、就業者数の減少テンポが相対的に速く、労働投入量の下押し圧

力が大きい青森県および秋田県では経済成長の低迷が見込まれる一方、資本ストック量

やTFPの伸びが相対的に高い山形県および福島県では将来的にも経済成長の優位性を

維持していくものと考えられる。

2    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 5: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-3-

● 将来にわたり、宮城県が持続的な経済成長を実現するためには、TFPの向上を図り、

労働投入量と資本ストック量の供給制約をカバーすることが必要となる。

具体的には、①自動車関連産業や高度電子関連産業の集積を一層進展させ、経済活動

における高生産性産業のウェイトを高めること、②水産業などを中心にコネクターハブ

企業(地域中核企業)の企業力強化あるいは創出を図ることにより、個々の産業の生産

性の向上を図ること、③パラダイムシフトを伴うようなイノベーションの創造と産業集

積の形成が期待されるILC(国際リニアコライダー)の誘致により、集積の経済を活

用することなどが考えられる。宮城県の経済成長率を底上げするためには、これらの施

策を中長期的な視点から見据え、着実に実行していくことが求められる。このような取

組みを通して、将来にわたり宮城県経済のダイナミズムが高まり、東北経済の牽引役と

して、その存在感を増していくことを期待したい。

3七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 6: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-4-

はじめに

近年の地域経済をみると、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少やグローバル化によ

る国際競争の激化に加え、東京を中心とした大都市部へのヒト・モノ・カネ・情報の集

中などを背景として、総じて低迷が続いている。今後についても、本格的な人口減少社

会の到来や大都市部への経済的資源のより一層の集中などに伴い、低迷を余儀なくされ

ることが懸念される。

こうした中、宮城県を始めとした東日本大震災(以下、「震災」という。)の被災地

域においては、震災からの復興事業が進められているが、このような環境変化に加え、

復興事業に係るさまざまな制約要因などもあり、将来的な地域の姿を見通すことが難し

い状況となっている。

本稿は、このような状況を踏まえ、地域の経済・産業の再生を図るための政策的インプ

リケーションを提示することを意図して、宮城県および東北各県の経済のこれまでの成長

過程を概観するとともに、将来における経済成長の姿(軌道)を推計したものである。

Ⅰ.都道府県経済の成長過程

本節では、1980~2010年度までの各都道府県の経済成長率と経済成長に影響を与えて

きた要因について分析することを通して、各都道府県および宮城県・東北各県の経済の

成長過程を概観する。

1.推計方法の概要

(1)推計モデル

経済成長を規定する要因は多岐にわたるが、ここではその要因分析等を行う際に一

般的に用いられている成長会計の考え方を採用した。成長会計は、経済成長を供給

面から捉える概念であり、経済成長率(産出量(県内総生産)の変化)を労働投入

量の変化、資本ストック量の変化、並びに全要素生産性(以下、「TFP1」(Total

Factor Productivity)という。)の変化の三つの要因(生産要素)で考察するもの

である。具体的には、以下のコブ・ダグラス型生産関数を使用した。

Y = AKαLβ(対数化して)

logY = logA + αlogK + βlogL

Y:産出量(県内総生産) K:資本ストック量 L:労働投入量 A:TFP

α(資本分配率) + β(労働分配率)=1

1 成長会計における各項目のうち、県内総生産、資本ストック量および労働投入量、資本分配率、労働分

配率は観測可能なデータであるが、TFPは観測が困難である。したがって、TFPの伸び率は、既知の

県内総生産の伸び率から資本ストック量と労働投入量の伸び率を控除して推計され、経済の成長要因の残

差として捉えられる。つまり、TFPは一般に経済成長において、資本ストック量や労働投入量の伸びで

は説明されない成長要因とされており、これを技術進歩や労働・資本の質的向上等によるものと見做し、

成長要因の一つと考えるものである。

4    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 7: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-5-

(2)使用データ

A.県内総生産

県内総生産(以下、「GPDP」(Gross Prefectural Domestic Product)とい

う。GPDPは実質ベースである。)については、内閣府経済社会総合研究所「県

民経済計算」における以下の系列を採用した。

・1980~1989年度:平成2年基準68SNA基準データ

・1990~2000年度:平成7年基準93SNA基準データ

・2001~2010年度:平成17年基準93SNA基準データ

また、系列の接続については、各基準の計数の前年度比増減率を用いて接続した。

なお、他の使用データ(就業者数等)についても、同様の方法により時系列の断層

を補正した。

B.資本ストック量

資本ストック量は、期末実質純固定資産とし、期首実質純固定資産に実質総固定資

本形成を加えたものから、実質固定資本減耗を控除したものとした2。

C.労働投入量

労働投入量は、就業者数に総実労働時間を乗じたものとした3。また、労働分配率

については、以下により求めた。

労働分配率 = 雇用者所得 ÷(雇用者所得+営業余剰+固定資本減耗)4

2.推計結果の概要

(1)全国・都道府県の概況

A.全国の概況

1980年度以降における都道府県合計の経済成長率(以下、特に断りのない限り、

経済成長率および各生産要素の増減率は各年代の「年度平均値」である。)の推移

を10年毎にみると、80年代の経済成長率は4.43%、90年代は1.00%、2000年代は

0.43%となっており、段階的に低下した。

2 期末実質純固定資産のベンチマークは1980暦年末とした。これについては、まず、内閣府経済社会総合

研究所「2009(平成21)年度国民経済計算確報」(2000年基準93SNA)「ストック編」の「純固定資産

の構成」(1980~2009年)の1980暦年末の名目値を平成17年基準にリンクし、それをデフレートして国全

体の期末実質純固定資産(平成17年基準)を算出した。次に、これにより求めた国の1980暦年末実質純固

定資産を県民経済計算等から推計した1980年度の都道府県別実質固定資本減耗の構成比で按分し、都道府

県別のベンチマークを設定した。

実質総固定資本形成については、同「県民経済計算」における実質総固定資本形成を使用し、時系列

の断層を補正するため、各採用系列の前年度比増減率を用いて、平成17年基準にリンクさせた。

実質固定資本減耗については、同「県民経済計算」における名目固定資本減耗を平成17年基準にリンク

させた後、名目総固定資本形成と実質総固定資本形成から求めたデフレータで実質化した。 3 就業者数は、同「県民経済計算」の「就業者数」、総実労働時間は厚生労働省「毎月勤労統計調査(地

方調査)」を採用した。 4 雇用者所得、営業余剰、固定資本減耗は、同「県民経済計算」の「付表」を採用した。

5七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 8: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-6-

これらを要因別にみると、80年

代については、特に、後半のバ

ブル経済期を中心に工場やオフ

ィスビルの建設が相次いだこと

などから、資本ストック量

(2.25%)とTFP(1.69%)

が高い伸びを示したほか、労働

投入量(0.42%)についても就

業者数の増加を背景に増勢を維

持した。

一方、90年代は、バブル経済の

崩壊に伴う経済活動の落込みや

設備、雇用、債務に係る三つの

過剰問題の深刻化と長期化など

を背景として、資本ストック量(1.30%)並びにTFP(0.17%)の伸びは大幅に鈍

化した。また、労働投入量(▲0.46%)については、就業者数が1995年でピークア

ウトしたことに加え、総実労働時間が時短法の制定などにより急激に減少したこと

からマイナスに転じた。

2000年代に入ると、労働投入量(▲0.49%)は、趨勢的な就業者数の減少とITバ

ブルの崩壊やリーマンショック等に伴う雇用調整の高まりなどに伴い低迷が続いた。

また、グローバル化の一層の進展に伴う海外への設備投資意欲の高まりや、設備の

投資収益率や期待成長率の低迷などを背景として、資本ストック量(0.14%)の伸

びは一段と低下した。一方、TFP(同0.78%)については、生産性の向上を伴っ

た輸出の増加などを背景として伸びを高め、この間の経済成長を下支えした。

図表1-1 都道府県合計の経済成長率の推移

資料:内閣府経済社会総合研究所「県民経済計算」を加工して作成

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

(%)

図表1-2 都道府県合計の経済成長率の要因分解

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

1981       1985         1990         1995         2000         2005         2010

労働投入量 資本ストック量 TFP 実質GPDP (%)

(%)

1980~1990年度 1990~2000年度 2000~2010年度

経 済 成 長 率 4.43 1.00 0.43

労 働 投 入 量 0.42 ▲0.46 ▲0.49

資本 ス トッ ク 量 2.25 1.30 0.14

T F P 1.69 0.17 0.78注)各生産要素については、推計モデルの中で対数化して用いたものを指数化して示していることから、合計

  が一致しないものがある。(以下、同様の表でも同じ。)

6    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 9: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-7-

このように1980年代以降の全国の経済成長の姿を要因別にみると、80年代は労働投

入量がプラスに寄与したが、その貢献度は相対的に小さく、資本ストック量および

TFPの伸びが経済成長に大きく貢献した。一方、経済成長率が大幅に低下した90

年代については、労働投入量がマイナス転化し経済成長を下押ししたが、経済成長

率の低下への寄与という観点からみると、資本ストック量並びにTFPの伸びの低

下が主因であることが分かる。また、2000年代の経済成長率は一段と低下したが、

これも低下への寄与度からみると、やはり資本ストック量の伸びの低下が大きい状

況となっている。

B.都道府県の概況

都道府県別の経済成長率の動向(図表1-3、1-6)をみると、1980年代については、

埼玉県、千葉県、東京都、山梨県、愛知県、滋賀県など三大都市圏5とそれに隣接す

る都県の経済成長率が相対的に高い反面、東北、中国、四国、九州地方の各県につ

いては、低位なものとなっている。この要因としては、三大都市圏では、地方圏か

らの人口流入に伴う就業者数の増加傾向の継続により労働投入量の増加が図られた

ほか、不動産投資の活発化による資本ストック量の一段の積み増しがみられた一方、

東北地方等の地方圏においてはTFPの伸びが限定的であったことに加え、人口流

出等に伴う就業者数の減少により労働投入量が伸び悩み、この時期において既に労

働投入量がマイナスとなった地域が出現していたことなどが挙げられる。

5 三大都市圏とは、以下、特に断りのない限り、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏

(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)の 3圏域(1都 2府 8県)をいう。

図表1-3 都道府県別経済成長率の推移

資料:内閣府経済社会総合研究所「県民経済計算」を加工して作成  

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

1980~1990年度 1990~2000年度 2000~2010年度 (%)

7七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 10: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-8-

90年代については、80年代に高い経済成長率を示した三大都市圏等の都県の成長率が

低落した一方、東北、四国、九州地方の各県において相対的に高めの成長率となってい

る。これは三大都市圏においては、バブル経済の崩壊に伴う景気の落込みや、過剰設備

への対応等による設備投資の抑制あるいは減退などから資本ストック量並びにTFPの

伸びが鈍化したほか、時短法の制定や雇用調整の本格化により総実労働時間数が減少し

労働投入量がマイナス寄与に転じたことによるものである。

一方、地方圏においては、労働投入量が軒並みマイナスとなり、TFPの伸びも低下

したものの、資本ストック量の伸びが比較的堅調に推移し、経済成長を下支えする形と

なった。これについては次のような要因が考えられる。一つは、80年代後半から90年代

にかけて、地方圏への製造業の立地が進展したことである。工場立地件数の推移を地域

別にみると、いずれの地域もバブル経済期にかけて増加し、その後減少したが、この間

一貫して東北、九州地方を始めとした地方圏の立地ペースが三大都市圏を上回って推移

したことがうかがえる。この背景としては、バブル経済期に三大都市圏で顕著に生じた

地価や労働コストの上昇、あるいは、地方圏における新幹線や空港、高速道路等のイン

フラ整備の進展などにより、地方圏への工場移転が進んだことなどが挙げられる。また、

工場等制限法、テクノポリス法、地方拠点法等により、大都市部での工場立地が抑制さ

れ、地方圏への立地が促進されたことなども寄与したものと考えられる。

また、この間大型小売店の出店規制が段階的に緩和されたことも地方圏における資本

ストック量やTFPの伸びを下支えしたものと考えられる。大型小売店の出店を規制して

いた大店法は、日米構造協議等の影響から、90年には運用適正化措置が講じられ、92年の

改正大店法の施行、94年の規制緩和通達を経て、2000年に廃止され、それ以降は大店立地

法に移行した。このような規制緩和措置に大都市部における出店コストの高まりや人手不

足等が相俟って、大型小売店の地方圏への出店が加速度的に進むこととなったのである。

加えて、景気対策等として実施された公共投資も地方圏の資本ストック量の伸びに貢献した。

図表1-5 大規模小売店舗の新設届出件数の推移

資料:経済産業省「大店立地法の届出状況について」

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

大店法に基づく件数

大店立地法に基づく件数

 (件)

図表1-4 工場立地件数の推移

注)三大都市圏:埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、岐阜、

        三重、大阪、兵庫、和歌山の11都府県。

資料:経済産業省「工場立地動向調査」

0

50

100

150

200

250

300

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

東北地方

九州地方

三大都市圏

その他地域

(1980年=100)

8    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 11: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-9-

図表1-6 都道府県別経済成長率の要因分解

【 1980~1990年度 】

【 1990~2000年度 】

【 2000~2010年度 】

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

神奈川県

井 県

山 梨 県

長 野

岐 阜

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

9七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 12: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-10-

2000年代は、三大都市圏については、千葉県、東京都、神奈川県の経済成長率が都

道府県平均並みに止まり、大阪府がマイナス成長となるなど、総じて伸び悩みの状

況となった。これは労働投入量の減少傾向が続いたことに加え、企業の国内設備投

資の圧縮、並びに、住宅取得年齢層の人口の頭打ちや住宅の供給過多6に伴う住宅投

資の減退などにより、資本ストック量の伸びが縮小したことなどによるものである。

とりわけ、東京都などでは総固定資本形成が固定資本減耗を下回り、資本ストック

量がマイナスとなっている。

地方圏については、三大都市圏における経済成長率の下押し要因に公共投資の縮減

も加わり、総じて成長率は低迷した。ただし、こうした中で、関東甲信、北陸、東

海地方等の一部では、製造業における生産設備の拡大等を背景とした資本ストック

量やTFPの伸びにより、成長率を高めている県がみられる。一方、東北、四国地

方等の一部の県では、労働投入量の減少等を背景にマイナス成長を記録しているな

ど、地方圏においても、その産業構造や人口構造、人口動態等の違いなどを反映し

て、成長力に濃淡がみられる状況となっている。

C.経済成長率と成長要因の類似性に基づく都道府県のグループ化

ここでは、クラスター分析7を用いて、各都道府県の経済成長率とその成長要因の

類似性を分析し、都道府県の経済成長パターンをグループ化した。

①1980~1990年度の都道府県クラスター

この間の都道府県は大きく三つのグループに分類される。Ⅰグループは、経済成

長率が1~3%台であり、その成長要因については、大半で労働投入量がマイナス

寄与となっており、これを資本ストック量の伸びでカバーしている地域である。

なお、TFPについては、概ねプラスに寄与しているものの、その貢献度は大き

くはない。また、このグループは、岩手県など経済成長率が1~2%台のグループ、

青森県、秋田県など経済成長率が2%台で労働投入量のマイナス寄与が相対的に大

きいグループ、山形県など経済成長率が3%台のグループの三つに細分類される。

Ⅱグループは、経済成長率が3~4%台であり、その成長要因については、労働投

入量がマイナス寄与、あるいは、プラス寄与であってもその貢献度が小さく、こ

れを資本ストック量とTFPの伸びでカバーしている地域である。また、このグ

ループは、福島県など経済成長率に対する資本ストック量のプラス寄与が相対的

に大きいグループと、新潟県や京都府など資本ストック量とTFPのプラス寄与

が概ね同等のグループに細分類される。

6 総務省「住宅・土地統計調査」に基づき、2008年における三大都市圏の住宅の状況をみると、住宅数と

世帯数でそれぞれ全国の52.2%、52.8%を占めており、住宅充足率(住宅総数÷総世帯数)は114%とな

っている。なお、全国の住宅充足率の推移をみると、一貫して上昇しており、1968年に100%を超え、

1983年の110%を経て、2008年には115%となっている。 7 クラスター分析とは、多変量解析の一種であり、データ間の類似度に基づき、類似したデータ同士を集

めて一つのクラスター(群れ、集団)をつくることにより、多くのデータをいくつかのクラスターに取り

まとめる手法である。ここでは、年代毎の経済成長率、その成長要因である労働投入量増減率、資本スト

ック量増減率、TFP増減率の類似度から、各都道府県をいくつかのクラスターに分類したものである。

 

       

       

       

                            

                            

                            

                            

                            

                            

10    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 13: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-11-

図表1-7 経済成長率・成長要因の類似性からみた都道府県クラスター

【1980~1990年度の都道府県クラスター】

【1990~2000年度の都道府県クラスター】

【2000~2010年度の都道府県クラスター】

鹿

鹿

鹿

Ⅰ Ⅱ Ⅲ

Ⅰ Ⅱ Ⅲ

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

11七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 14: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-12-

Ⅲグループは、経済成長率が4~6%と高く、労働投入量、資本ストック量、TF

Pの成長要因が全てプラス寄与となっている地域であり、順調でバランスの取れ

た経済成長を実現した地域と位置付けられる。宮城県はこのグループに含まれる。

②1990~2000年度の都道府県クラスター

この間の都道府県も大きく三つのグループに分類される。Ⅰグループは、経済成

長率が0~1%であり、資本ストック量はプラス寄与となったものの、労働投入量

並びにTFPがマイナス寄与となったことから、経済成長率が低位に止まった地

域である。また、このグループは、資本ストック量の伸びの違いにより、その伸

びが相対的に小さい北海道などのグループと、伸びが相対的に大きい秋田県など

のグループに細分類される。

Ⅱグループは、経済成長率が概ね1%台後半であり、成長要因については、労働

投入量はマイナス寄与となっているものの、その度合いが小さく、資本ストック

量がプラス寄与となっている地域である。また、TFPはマイナス寄与となって

いるか、あるいは、プラス寄与であってもその貢献度は小さい。このグループに

は宮城県および青森県が含まれる。

Ⅲグループは、経済成長率が概ね1~2%台であり、労働投入量のマイナス寄与が

比較的大きいものの、これを資本ストック量並びにTFPの伸びでカバーしてい

る地域である。また、このグループは、岩手県や福島県など経済成長率が2%台の

グループと、経済成長率は概ね1%台で同レベルにあるものの、山形県など資本ス

トック量のプラス寄与が相対的に大きいグループと、愛知県や福岡県などTFP

のプラス寄与が相対的に大きいグループの三つに細分類される。

③2000~2010年度の都道府県クラスター

この間の都道府県については、大きく四つのグループに分類される。Ⅰグループ

は、経済成長率がマイナスあるいはゼロ成長であり、成長要因については、資本

ストック量並びにTFPの伸びが小さく、マイナス寄与となっている労働投入量

の落込み分をカバーしきれていない地域である。ここには、宮城県、岩手県、秋

田県が含まれる。

Ⅱグループは、経済成長率が概ね0%台後半であり、成長要因については、資本

ストック量並びにTFPがプラス寄与となっており、労働投入量のマイナス寄与

が小さいあるいはプラスとなっている地域である。また、このグループは、茨城

県など労働投入量がマイナス寄与となっているグループと、愛知県、沖縄県など

労働投入量がプラス寄与となっているグループに細分類される。

Ⅲグループは、経済成長率が概ね0~1%台前半であり、労働投入量のマイナス寄

与が比較的大きいものの、これを資本ストック量並びにTFPの伸びでカバーし

全体ではプラス成長となっている地域である。ここには青森県、福島県、山形県

が含まれる。

Ⅳグループは、経済成長率が0%台後半から2%台であり、労働投入量はマイナス

寄与となっているが、総じてTFPの伸びが大きく、これが経済成長率を引上げ

12    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 15: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-13-

ている地域である。このグループは、資本ストック量とTFPの伸びが共に大き

い三重県、滋賀県のグループと、東京都などTFPの伸びは大きいが資本ストッ

ク量がマイナス寄与となっているグループに細分類される。

(2)宮城県・東北各県の概況

A.経済成長率と成長要因

宮城県の1980年代の経済成長率は4.25%(都道府県別順位17位:以下、順位のみ示

す。)となっており、これを要因別にみると、労働投入量が0.51%、資本ストック

量が2.23%、TFPが1.46%となっている。労働投入量については、東北地方から

の人口流入などを背景として、東北6県の中で唯一明確な増加を示した。また、資本

ストック量やTFPについては、東北自動車道や東北新幹線等の高速交通網の整備

の進展や、仙台市の政令指定都市への昇格等に伴う企業進出・建設投資の増勢など

に牽引されて増加し、全体としては、堅調な経済成長を遂げた。

これが90年代になると、経済成長率はバブル経済の崩壊などに伴い1.60%(12位)

と鈍化した。ただし、全国的にみる経済成長率は比較的高めの水準となった。要因

別にみると、労働投入量が▲0.20%、資本ストック量が1.31%、TFPが0.49%と

なっており、80年代と比べると、労働投入量がマイナス転化したほか、資本ストッ

ク量、TFPとも1%ポイント程度低下した。もっとも、労働投入量のマイナス幅に

ついては、東北6県の中では最小であり、また、80年代に立地した工場の稼働や90年

代半ばまでの大型小売店の出店並びに公共投資、住宅投資の増勢などを背景として、

資本ストック量は都道府県平均(1.30%)並みとなり、TFPは都道府県平均

(0.17%)を上回った。

図表1-8 宮城県・東北各県の経済成長率の要因分解

【宮 城 県】 【青 森 県】

項目(%)/年度 1980~1990 1990~2000 2000~2010 項目(%)/年度 1980~1990 1990~2000 2000~2010

経 済 成 長 率 4.25 1.60 ▲0.11 経 済 成 長 率 2.63 1.63 0.17

労 働 投 入 量 0.51 ▲0.20 ▲0.58 ▲0.32 ▲0.32 ▲0.80労 働 投 入 量

資本ストック量 2.23 1.31 資本ストック量 2.49 1.96 0.42▲0.07

T F P 1.46 0.49 0.54 T F P 0.46 0.00 0.55

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

労働投入量

資本ストック量

TFP

GPDP (%)

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

労働投入量

資本ストック量

TFP

GPDP (%)

13七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 16: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-14-

2000年代に入ると、経済成長率は▲0.11%(38位)とマイナス成長となり、経済活

動は相対的にも大きく減退した。要因別にみると、ITバブルの崩壊やリーマンシ

ョック等を背景として、労働投入量のマイナス幅が拡大したほか、TFPについて

は製造業やサービス業での生産の伸びなどから増加したものの、建設業や卸売・小

売業の生産が減退したことなどから、増加幅は限定的なものに止まった。また、資

本ストック量は企業のリストラに伴う設備投資の抑制や公共投資の縮減、住宅投資

の減少などからマイナスとなった。

一方、宮城県を除く5県の動向をみると、80年代については、経済成長率が2%台後

半から4%台となっており、いずれの県でも工場立地等を背景とした資本ストック量

【岩 手 県】 【秋 田 県】

項目(%)/年度 1980~1990 1990~2000 2000~2010 項目(%)/年度 1980~1990 1990~2000 2000~2010

経 済 成 長 率 2.90 2.39 ▲1.03 経 済 成 長 率 2.62 1.30 ▲0.11

労 働 投 入 量 0.00 ▲0.46 ▲0.91 ▲0.30 ▲0.60 ▲0.84労 働 投 入 量

資本ストック量 2.02 1.64 0.09 資本ストック量 2.15 1.74 0.17

T F P 0.87 1.20 T F P 0.76 0.17 0.57▲0.21

           

【山 形 県】 【福 島 県】

項目(%)/年度 1980~1990 1990~2000 2000~2010 項目(%)/年度 1980~1990 1990~2000 2000~2010

経 済 成 長 率 3.21 1.50 0.59 経 済 成 長 率 4.25 2.24 0.39

労 働 投 入 量 0.03 ▲0.56 ▲0.97 ▲0.49 ▲0.73労 働 投 入 量 0.00

資本ストック量 2.61 1.62 0.22 資本ストック量 2.32 1.86 0.32

T F P 0.55 0.45 1.36 T F P 1.89 0.87 0.82

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

労働投入量

資本ストック量

TFP

GPDP (%)

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

労働投入量

資本ストック量

TFP

GPDP (%)

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

労働投入量

資本ストック量

TFP

GPDP (%)

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

労働投入量

資本ストック量

TFP

GPDP (%)

14    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 17: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-15-

の伸びが経済成長の牽引役となった。ただし、総じて労働投入量は弱い動きとなっ

ており、青森県(▲0.32%)および秋田県(▲0.30%)ではこの時期において既に

労働投入量がマイナスとなっている。

90年代については、経済成長率は概ね1%台半ばから2%台前半に鈍化した。要因

別にみると、労働投入量が5県ともマイナスとなり、TFPの伸びも総じて鈍化した

が、90年代中頃まで景気対策等として実施された公共投資などが資本ストック量の

伸びを支え、全体の成長を下支えした。なお、岩手県および福島県の経済成長率は

それぞれ2.39%(1位)、2.24%(2位)となり、工場立地等に伴う資本ストック量

とTFPの増加により、相対的に高い伸びを示した。

2000年代に入ると、経済成長率は、青森県、山形県、福島県が0%台前半から0%

台半ばのプラス成長、岩手県および秋田県がマイナス成長となった。各県とも、労

働投入量のマイナス幅が拡大し、資本ストック量の伸びが低下した点では共通して

いるが、各県の産業構造などを反映してTFPの動きにはかなりの違いがみられる。

図表1-8にみられるように、各県の2000年代の経済成長率の動きは大きな振れを伴

ったものとなっており、とりわけ岩手県、山形県、福島県で振れが顕著となってい

る。これはITバブルの崩壊とリーマンショックという二度の経済ショックを背景

に電気機械を中心に製造業の生産が大きく変動したが、当該産業への依存度が大き

い県において、その影響が色濃く生じたことによるものである。なお、青森県にお

いて2006年度の成長率が急伸しているが、これは非鉄金属(核燃料製造業等)の生

産が大幅に増加したことが主因となっており、これがTFPの伸びに反映されたこ

とによるものである。

これまでの宮城県および東北各県の経済成長の動きをまとめてみると、宮城県につ

いては、80年代は労働投入量や資本ストック量の増加に牽引され、経済成長率は東

北地方の中では高い伸びを示したが、90年代に入ると、労働投入量が小幅ながらも

減少に転じ、資本ストック量の伸びが低位であったことなどから、経済成長率は5県

平均並みとなった。また、2000年代には資本ストック量の減少などから経済成長率

はマイナスとなり、東北各県に対する優位性は低下した。

また、各成長要因が経済成長率の変動に与えた影響をみると、前述した全国の動

向と同様に、80年代は労働投入量がプラス寄与となったが、その貢献度は相対的に

小さく、資本ストック量およびTFPの伸びが経済成長率の引上げに大きく貢献し

た。一方、90年代は経済成長率が大幅に低下したが、低下の寄与度からみると、労

働投入量の減少よりは資本ストック量並びにTFPの伸びの低下の方が大きい。ま

た、2000年代はマイナス成長となったが、やはり資本ストック量の減少寄与が最も

大きい状況となっている。

他方、東北各県については、80年代以降、労働投入量の減少が経済成長の足枷とな

る状況が続く中、90年代は工場立地や公共投資に伴う資本ストック量の増加などに

より、経済成長率は全国的にみても高めの伸びとなった。しかし、2000年代は設備

投資や公共投資の縮減に伴う資本ストック量の伸びの減退などから、経済成長率は

低下した。もっとも、山形県および福島県においては、主に製造業での生産増加に

伴うTFPの伸びを背景として、東北地方における経済成長の優位性を高めている。

15七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 18: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-16-

B.労働投入量の減少要因

ここでは特に90年代以降、東北6県の経済成長の下押し圧力となってきた労働投入

量の減少要因について、その構成要素である就業者数と総実労働時間の動向(図表

1-9、1-10、1-11)から分析する。

宮城県の労働投入量の推移をみると、80年代は終盤にかけてテンポは鈍化したが、

増加傾向で推移した。これを就業者数と総実労働時間に分けてみると、総実労働時

間は80年代後半に減少したが、就業者数は生産年齢人口の増加や東北各県からの転

入者の増加などを背景として増勢を続け、労働投入量を引上げた。

90年代の労働投入量は中盤に持ち直しの動きとなったものの、初頭と終盤の落込

みが大きく、期中では減少に転じた。要因別にみると、総実労働時間は時短法の制

定、あるいはバブル経済の崩壊や金融危機に伴い大幅に減少した。一方、就業者数

は期中では増加傾向を維持したが、前半と後半とでは動向に大きな違いがみられる。

90年代前半は転入者の流入が続いたことなどから就業者数は増加を続けたが、中盤

以降については、頭打ちとなり終盤にかけて減少に転じた。これは、①東北各県か

らの人口流入は続いたものの、企業のリストラに伴う事業所等の撤退や統廃合など

により首都圏への転出者数が増加し、転入超過数が大幅に縮小したこと、②失業率

が上昇傾向を辿る中、生産年齢人口がピークアウトに向かったことに加え、就業率

の水準が生産年齢人口階層に比べ格段に低い高齢者人口の増加ペースが加速したこ

となどによるものである。

2000年代に入ると、労働投入量は減少幅を拡大した。要因別にみると、総実労働時

間は終盤にかけて幾分持ち直したが、ITバブル崩壊等に伴う景気の悪化による雇

用調整等を背景に期中では減少傾向を辿った。また、就業者数は減少に転じた。こ

れは首都圏への転出者の増加傾向の継続により、人口の社会動態が転出超過に転じ

たことや、90年代終盤からみられた生産年齢人口の減少と高齢者人口の増加が定着

したことなどによるものである。

このように80年代までは、東北地方においてかなりの優位性を有してきた宮城県の

労働投入量は、近年においても相対的には減少幅は小さいものの、主に人口動態と

人口構成の変化に伴う就業構造の変化を背景として明確な減少トレンドに入ってい

る。このことは今後の経済成長を考える上で重要な論点になると思われる。

一方、東北各県の状況をみると、労働投入量は総じて80年代、90年代、2000年代と

年代を経るごとに減少幅が拡大している。総実労働時間については、宮城県と同様

に、景気の変動による振れを伴いながらも、減少基調で推移した。就業者数につい

ては、80年代において、岩手県、山形県、福島県が概ね横ばい圏内で推移したが、

青森県および秋田県では人口流出などを背景に減少した。90年代半ば以降は、人口

の転出超過傾向が強まったことや生産年齢人口の減少と高齢者人口の増加が進んだ

ことなどから、全ての県で就業者数の減少幅は大幅に拡大した。

16    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 19: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-17-

図表1-9 宮城県・東北各県の労働投入量増減率の要因分解

【宮 城 県】 【青 森 県】

【岩 手 県】 【秋 田 県】

【山 形 県】 【福 島 県】

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

総実労働時間

就業者数

労働投入量 (%)

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

総実労働時間

就業者数

労働投入量 (%)

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

総実労働時間

就業者数

労働投入量 (%)

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

総実労働時間

就業者数

労働投入量 (%)

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

総実労働時間

就業者数

労働投入量 (%)

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

1981   1985    1990    1995    2000    2005    2010

総実労働時間

就業者数

労働投入量 (%)

17七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 20: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-18-

図表1-10 宮城県・東北各県の就業者数・就業率の推移

【宮 城 県】 【青 森 県】

【岩 手 県】 【秋 田 県】

【山 形 県】 【福 島 県】

資料:総務省「国勢調査報告」他

80

90

100

110

120総人口・就業者数(

1980

年=100)

0

20

40

60

80

就 業 率(

%)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口

就業者数

就業率(全体)

就業率(15~64歳)

就業率(65歳以上)

80

90

100

110

120総人口・就業者数(

1980

年=100)

0

20

40

60

80

就 業 率(

%)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口

就業者数

就業率(全体)

就業率(15~64歳)

就業率(65歳以上)

80

90

100

110

120総人口・就業者数(

1980

年=100)

0

20

40

60

80

就 業 率(

%)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口

就業者数

就業率(全体)

就業率(15~64歳)

就業率(65歳以上)

80

90

100

110

120総人口・就業者数(

1980

年=100)

0

20

40

60

80

就 業 率(

%)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口

就業者数

就業率(全体)

就業率(15~64歳)

就業率(65歳以上)

80

90

100

110

120総人口・就業者数(

1980

年=100)

0

20

40

60

80

就 業 率(

%)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口

就業者数

就業率(全体)

就業率(15~64歳)

就業率(65歳以上)

80

90

100

110

120総人口・就業者数(

1980

年=100)

0

20

40

60

80

就 業 率(

%)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口

就業者数

就業率(全体)

就業率(15~64歳)

就業率(65歳以上)

18    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 21: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-19-

図表1-11 宮城県・東北各県の総人口の推移

【宮 城 県】 【青 森 県】

【岩 手 県】 【秋 田 県】

【山 形 県】 【福 島 県】

資料:総務省「住民基本台帳人口移動報告」

0

500

1000

1500

2000

2500

総 人 口(

千人)

-20-15-10-505

10152025

人口増減数(千人)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口 社会増減 自然増減

0

500

1000

1500

2000

2500

総 人 口(

千人)

-20-15-10-505

10152025

人口増減数(

千人)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口 社会増減 自然増減

0

500

1000

1500

2000

2500

総 人 口(

千人)

-20-15-10-505

10152025

人口増減数(

千人)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口 社会増減 自然増減

0

500

1000

1500

2000

2500

総 人 口(

千人)

-20-15-10-505

10152025

人口増減数(

千人)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口 社会増減 自然増減

0

500

1000

1500

2000

2500

総 人 口(

千人)

-20-15-10-505

10152025

人口増減数(

千人)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口 社会増減 自然増減

0

500

1000

1500

2000

2500

総 人 口(

千人)

-20-15-10-505

10152025

人口増減数(

千人)

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

総 人 口 社会増減 自然増減

19七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 22: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-20-

Ⅱ.都道府県の経済成長率の将来推計

本節では、前節での検討結果を踏まえ、2010~2040年度までの各都道府県の経済成長

率を推計するとともに、宮城県および東北各県の経済成長の姿について考察する。

なお、推計する都道府県の経済成長率については、一般に過去の経済のトレンドからみ

て平均的な水準で生産要素を投入した場合に実現可能な経済成長率とされる潜在成長率と

同義のものである。ただし、前節で示したように、都道府県ベースの生産要素の動向は、

大型設備投資の有無や地域の主要産業の生産動向などにより、かなりの振れを伴うものと

なっている。経済成長率の将来推計においては、このような過去の生産要素の動向を与件

として取込むことから、推計結果については、相応の幅を持ってみる必要がある。

1.推計方法の概要

(1)推計モデル

推計モデルは前節と同様に、成長会計の考え方に基づき、コブ・ダグラス型生産関

数を使用した。

(2)使用データ

A.資本ストック量・GPDP

資本ストック量は、林宜嗣「地域の将来を踏まえた都道府県財政の予測と制度改革」

(2010)を参考に、当期の資本ストック量は前期の資本ストック量と経済活動の規

模(GPDP)から説明することとし、以下の回帰式により求めた。ここで資本ス

トック量は前節で求めた期末実質純固定資産、GPDPは前節と同様に、内閣府経

済社会総合研究所「県民経済計算」の系列を採用した。

なお、震災の影響を反映させるため、震災に伴う被害が大きかった岩手県、宮城県、

福島県の資本ストック量については、資本ストックの毀損額および復旧状況を推計

し調整した8。また、これら3県のGPDPについては、既に各県が2012年度県民経済

計算速報(早期推計)において、震災の影響を反映した2011・2012年度の計数を推

計・公表していることから、この2年度については当該計数を用いた9。

Kt = a + αKt-1 + βYt-1

K:資本ストック量 Y:GPDP a:定数項 t:期間

8 内閣府経済社会総合研究所「平成23年度国民経済計算年報」のストック編「付表」の国民資産・負債残

高に関する調整勘定における「その他の資産量変動」項目を利用し、当該項目における固定資産の毀損分

を震災に伴う資本ストックの毀損額とした。毀損額の被災県別割当については、住家被害、事業所の浸水

状況等に基づき按分したが、資本ストック量への反映については、被害額の大きい宮城県、岩手県、福島

県の3県(被災3県)のみとした。

資本ストックの復旧については、被災3県の現在の復旧状況や今後の復興計画を勘案し推計した。具体

的には、公共部門に係る資本ストックの復旧については、各県とも2017年度までに復旧すると仮定した。

また、民間部門については、住宅は各県の住宅復興計画に基づき2020年度までに整備が完了すると仮定し、

住宅以外の資本ストックは2020年度までに毀損額の80%が復旧すると仮定した。ただし、福島県の住宅復

旧については、原子力災害に伴う居住制限者の状況を勘案し復旧戸数を調整した。 9 被災3県の2011・2012年度のGPDPを既知としたことから、当該年度における資本ストック量、労働

投入量以外の変化要因は全てTFPの変化として調整した。

20    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 23: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-21-

B.労働投入量

労働投入量は以下により求めた。

労働投入量 = 就業者数 × 総実労働時間

就業者数 = 15歳以上人口 × 就業率 × 昼夜間就業者数比率

ここで総実労働時間は、前節で使用した厚生労働省「毎月勤労統計調査(地方調

査)」における過去の平均値10を採用し、これが推計期間中、不変と仮定した。

就業者数の推計における「15歳以上人口」は、国立社会保障・人口問題研究所

「日本の地域別将来推計人口」11(平成25(2013)年3月推計)を採用した。就業率

は、総務省「国勢調査報告」から求めたが、15~64歳の就業率と65歳以上の就業率

には、大きな乖離があり、これを反映させるため当該年齢階層別に就業率を設定し

た。就業率の設定については、総じて就業率は低下傾向を辿ってきたが、今後につ

いては、これまでの傾向が継続するとの見方がある一方で、高齢者や女性の就業率

の向上施策が実施され奏功すれば、就業率の低下にはある程度歯止めがかかるとの

見方もある。したがってここでは双方の就業率の過去のトレンドを延長したケース12

と、双方の就業率とも直年の調査結果である2010年の就業率で不変としたケースの2

通りを設定した。

また、当該推計人口に就業率を乗じた就業者数は居住地ベースのものであること

から、これを就業地ベースに置き換えるため、転換係数を乗じた。転換係数は総務

省「平成22(2010)年国勢調査報告」から求めた昼夜間就業者数比率とし、これが

推計期間中、不変と仮定した。

なお、労働分配率および資本分配率は2001~2010年度の平均値とし、これが推計

期間中、不変と仮定した。

10 総実労働時間の平均値は、過去のトレンドと各都道府県の変動係数に基づき、2002~2010年の平均とし

た。ちなみに、都道府県平均の総実労働時間は1990年頃から2000年頃にかけて趨勢的に減少したが、2000

年以降はリーマンショックの前後を除き、概ね横ばい圏内(月間155~156時間台)で推移した。また、

2002~2010年における各都道府県の総実労働時間の変動係数は、同時期を除くと、2.7~2.8台で推移し、

バラツキに大きな変化はみられない。 11 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(平成25(2013)年3月推計)では、震災

の影響が大きい岩手県、宮城県、福島県等の人口推計において、震災に伴う人口動態の変化を反映させる

ため、将来の生存率や純移動率を補正している。 12 就業率の過去のトレンドの延長については、1980~2010年の総務省「国勢調査報告」を使用し推計した。

15~64歳の就業率は概ね横ばいで推移していることから、直近調査の2010年の就業率で不変と仮定した。

また、65歳以上については、指数関数を当てはめて推計した。

なお、震災に伴う就業率への影響については、発災後、被災地域では事業所等の被災により多くの就業

者が離職を余儀なくされるなど、甚大な影響が生じた。もっとも、宮城県においては、現在でも職種や地

域間での雇用のミスマッチが残存しており大きな課題となっているが、雇用保険被保険者数の動きをみる

と、発災後、落込んだものの、復旧・復興需要に伴い、県全体では2014年2月には震災前の水準に達する

など、マクロ的には1年間で雇用水準が回復している。また、福島県については、原発事故の関係で未だ

に県外への避難を余儀なくされている被災者が多数に上っており、今後の就業地等に関する見通しが困難

な状況となっている。これらの情勢を踏まえ、被災地域の就業率については、特段の仮定は行わず、被災

地域以外の地域と同じ条件を適用した。

21七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 24: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-22-

C.TFP

TFPは、前述したように経済成長において、資本ストック量や労働投入量の伸び

では説明できない成長要因であり、これを技術進歩や労働・資本の質的向上等によ

るものと見做し、成長要因の一つと考えるものである。しかしながら、宮城県や東

北各県の過去の経済成長におけるTFPの動きをみると、かなりの振れを伴ったも

のとなっており、TFPが主に技術進歩等の動向を映じて動くと考えるには無理が

あると思われる。むしろ循環的な経済活動の変化や稼働率の変化(製造品出荷額の

アップ・ダウン等)、世界的な経済ショックなどに伴い、かなり不安定な動きとな

っている。また、TFPの将来推計については、産業別の生産性や情報通信技術の

浸透度等の要因に分解し推計を行うなどの研究事例があるが、これを都道府県ベー

スで行うことにはかなりの制約があると思われる。

このようにTFPの推計には不確定要素が多いことから、ここではTFPの将来推

計値については、簡便的に前節で求めた過去の実績値(推計値)を採用した。具体

的には、近年の動向を反映したものとして2000~2010年度の直近10年間の平均値を

用いたケースと、より長期の動向を反映したものとして1980~2010年度の30年間の

平均値を用いたケースの2通りを設定した。

D.ケース設定

上記のように、各成長要因の推計については、資本ストック量は基本的には回帰式

により求めたが、労働投入量とTFPについては、それぞれ2通りのケースを設定し

た。したがって、GPDPの将来推計値は、労働投入量とTFPのケース設定によ

り、4通り想定されるが、ここでは就業率は過去のトレンドを延長し、TFPは過去

10年間の平均値を用いたものを「ケースⅠ」(トレンド延長型)、就業率は直近値

で不変とし、TFPは過去30年間の平均値を用いたものを「ケースⅡ」(安定成長

期待型)として設定し、この二つのケースについて推計した。

図表2-1 都道府県の経済成長率の将来推計のケース設定

労働投入量

(15~64歳、65歳以上の就業率) TFP

ケースⅠ

(トレンド延長型) ・1980~2010年のトレンドで延長 ・2000~2010年度の平均値で不変

ケースⅡ

(安定成長期待型) ・2010年のもので不変 ・1980~2010年度の平均値で不変

2.推計結果の概要

(1)全国・都道府県の概況

A.全国の概況

ケースⅠにおける都道府県合計の経済成長率の推計結果を10年毎にみると、まず、

2010年代の経済成長率は0.71%となり、リーマンショック等の影響から低成長に止

まった2000年代(0.43%)に比べ経済成長率は持ち直しに向かう結果となった。そ

22    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 25: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-23-

の後、2020年代は0.70%と概ね横ばいで推移するが、2030年代には0.25%となり大

幅に低下すると推計される。

これらを要因別にみると、2010年代は労働投入量の落込みを資本ストック量とTF

Pの伸びがカバーする形となっている。2020年代も同様の構図であるが、労働投入

量の減少幅は幾分縮小する。これは団塊の世代が2010年代半ばまでに就業率の水準

が低い高齢者層に全て移行することに伴い、2020年代については就業者数の減少ペ

ースが幾分緩和されることなどによるものである。一方、2030年代に入ると、資本

ストック量の伸びが鈍化するほか、2030年代半ば以降、団塊ジュニア世代が高齢者

層に移行することなどから、労働投入量の減少幅は大幅に拡大し、これが経済成長

率の伸びを抑える主因となってくる。

ケースⅡについては、経済成長率のトレンドはケースⅠと同様であるが、条件設定

上、ケースⅠに比べて、労働投入量の減少寄与が小さく、資本ストック量およびTF

Pの増加寄与が大きいことから、経済成長率の水準は上振れした動きとなっている。

B.都道府県の概況

都道府県別の経済成長率の推計結果(図表2-3、2-4、2-5)をみると、ケースⅠに

おいては、2010年代は東京都、神奈川県、三重県、滋賀県など三大都市圏とそれに

隣接する都府県において、経済成長率が相対的に高い伸びを示している。これはT

FPの伸びが大きいことや、資本ストック量の増加が続いていること、労働投入量

の減少寄与が相対的に小さいことによるものである。一方、地方圏については、T

FPの伸びを主因として福井県や長野県、山口県、徳島県などで成長率が高くなっ

ているが、秋田県、富山県、石川県、鳥取県、島根県、高知県など、労働投入量の

減少などから、マイナス成長となっている県が相当数存在するなど、バラツキがみ

られる。これが2020年代、2030年代となるに従い、大半で経済成長率は低下するが、

2010年代の経済成長率の水準が高い地域では、総じて、高めの経済成長率を維持す

る一方、北陸地方や四国地方の県では減少が加速するなど、都道府県間格差が拡大

していくことがうかがわれる13。

13 各都道府県の経済成長率の変動係数をみると、2010年代:0.0063、2020年代:0.0068、2030年代:

0.0078となっており、バラツキ(格差)が拡大している。

図表2-2 都道府県合計の経済成長率(将来推計値)

(%)

2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度

ケースⅠ

経 済 成 長 率 0.71 0.70 0.25

労 働 投 入 量 ▲0.46 ▲0.43 ▲0.76

資本ストック量 0.40 0.35 0.23

T F P 0.78 0.78 0.78

ケースⅡ

経 済 成 長 率 0.96 1.01 0.62

労 働 投 入 量 ▲0.37 ▲0.35 ▲0.65

資本ストック量 0.45 0.48 0.39

T F P 0.88 0.88 0.88

23七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 26: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-24-

なお、宮城県については、震災からの復興需要を背景に経済活動の水準が大幅に引

上げられていることなどから、2010年代については高い伸びとなっている。

ケースⅡについてみると、都道府県合計の動きと同様に条件設定上、全体的に経済

成長率がケースⅠに比べて上振れしており、また、年代を経るごとの経済成長率の低

下テンポやバラツキも緩やかなものとなっている。ただし、ケースⅠと同様に、三大

都市圏等の都府県と地方圏の一部の県とには経済成長率に大きな格差がみられる。

図表2-3 都道府県別経済成長率の将来推計

【 ケースⅠ 】

【 ケースⅡ 】

-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度 (%)

-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度 (%)

24    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 27: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-25-

図表2-4 都道府県別経済成長率(将来推計値)の要因分解・ケースⅠ

【 2010~2020年度 】

【 2020~2030年度 】

【 2030~2040年度 】

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

神奈川県

井 県

山 梨 県

長 野

岐 阜

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

25七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 28: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-26-

図表2-5 都道府県別経済成長率(将来推計値)の要因分解・ケースⅡ

【 2010~2020年度 】

【 2020~2030年度 】

【 2030~2040年度 】

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

神奈川県

野 県

阜 県

静 岡 県

愛 知

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

26    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 29: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-27-

C.経済成長率と成長要因の類似性に基づく都道府県のグループ化

ここでは、前節同様に、クラスター分析を用いて、各都道府県の将来の経済成長率

とその成長要因の類似性を分析し、都道府県の経済成長パターンをグループ化した。

①ケースⅠ

a.2010~2020年度の都道府県クラスター

この間の都道府県は五つのグループに分類される。Ⅰグループは、労働投入量

のマイナス寄与が大きく、かつ、資本ストック量も概ね減少することから、経済

成長率がマイナスとなる地域である。ここには岩手県および秋田県が含まれる。

Ⅱグループは、労働投入量のマイナス寄与が小さく、資本ストック量とTFP

の伸びにより、経済成長率が0%前後から1%台となっている地域である。このグ

ループは資本ストック量とTFPの伸びの違いにより、茨城県、滋賀県など経済

成長率が高いグループと石川県、和歌山県など経済成長率がマイナスあるいは低

位なグループに細分類される。

Ⅲグループは、労働投入量のマイナス寄与が大きいが、これを主にTFPの伸

びでカバーし、経済成長率が概ね1%を超えている地域であり、ここには山形県

が含まれる。Ⅳグループは、労働投入量のマイナス寄与が大きく、これを資本ス

トック量とTFPの伸びでカバーし、経済成長率を概ね0%近傍に保っている地

域であり、ここには青森県が含まれる。Ⅴグループは、労働投入量と資本ストッ

ク量がマイナス寄与となるものの、TFPの伸びに牽引され、一部を除き経済成

長率が1%を上回っている地域である。ここには宮城県および福島県(ただし、

経済成長率は0.30%)が含まれる。

b.2020~2030年度の都道府県クラスター

この間の都道府県は五つのグループに分類される。Ⅰグループは、労働投入量

のマイナス寄与が比較的大きいグループである。このグループは、資本ストック

量とTFPの伸びの違いにより、宮城県、福島県を含むTFPの伸びが高めのグ

ループ、和歌山県など資本ストック量が減少し経済成長率がマイナスとなるグル

ープ、佐賀県など資本ストック量の伸びが中程度のグループの三つに細分類され

る。

Ⅱグループは、労働投入量のマイナス寄与が大きく、これを主因として、経済

成長率がマイナスとなる地域であり、ここには青森県、岩手県、秋田県が含まれ

る。Ⅲグループは、労働投入量のマイナス寄与が比較的小さく、資本ストック量

とTFPの伸びにより、一部を除き経済成長率が0.5%前後となる地域である。

Ⅳグループは、主にTFPの伸びに支えられ、一部を除き経済成長率が概ね1%

を上回る地域であり、ここには山形県が含まれる。Ⅴグループは、労働投入量と

資本ストック量がマイナス寄与となるが、TFPの伸びが大きく、経済成長率が

0%台後半から1%台となる地域である。

 

       

       

       

                            

                            

                            

                            

                            

                            

27七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 30: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-28-

c.2030~2040年度の都道府県クラスター

この間の都道府県も五つのグループに分類される。Ⅰグループは、労働投入量

および資本ストック量のマイナス寄与が共に大きく、経済成長率が概ね1%を超

えるマイナス成長となる地域であり、ここには青森県、秋田県が含まれる。

Ⅱグループは、労働投入量の落込みを主にTFPの伸びでカバーし、経済成長

率が0%前後となる地域である。ここには宮城県、福島県が含まれる。Ⅲグルー

プは、労働投入量の落込みを資本ストック量並びにTFPの伸びでカバーし、経

済成長率が概ねプラスとなる地域であり、ここには山形県が含まれる。Ⅳグルー

プは、労働投入量、資本ストック量、TFPが全てマイナスとなり、経済成長率

が2~3%台のマイナス成長となる地域であり、このグループは岩手県および高知

県とからなる。Ⅴグループは、三重県など労働投入量、資本ストック量が共に減

少するが、TFPの伸びが高い地域である。

②ケースⅡ

a.2010~2020年度の都道府県クラスター

この間の都道府県は四つのグループに分類される。Ⅰグループは、労働投入量

のマイナス寄与が大きく、これを主因として経済成長率がマイナスとなる地域で

あり、ここには秋田県が含まれる。

Ⅱグループは、労働投入量のマイナス寄与が相対的に大きい地域である。この

グループは、同グループ内において、青森県、山形県など労働投入量のマイナス

寄与が大きく、TFPのプラス寄与が小さいグループ、栃木県など労働投入量の

マイナス寄与が小さく、TFPのプラス寄与が比較的大きいグループ、徳島県な

ど労働投入量のマイナス寄与が大きいが、TFPのプラス寄与が大きいグループ

に細分類される。

Ⅲグループは、労働投入量のマイナス寄与が相対的に小さいグループである。

このグループは、同グループ内において、茨城県など労働投入量のマイナス寄与

が大きく、資本ストック量およびTFPのプラス寄与が小さいグループと、埼玉

県など労働投入量のマイナス寄与が小さく、資本ストック量およびTFPのプラ

ス寄与が大きいグループに細分類される。

Ⅳグループは、労働投入量並びに資本ストック量がマイナス寄与となるが、T

FPの伸びが大きく、高めの経済成長率となる地域であり、ここには岩手県、福

島県、宮城県が含まれる。

b.2020~2030年度の都道府県クラスター

この間の都道府県は五つのグループに分類される。Ⅰグループは、労働投入量

のマイナス寄与が大きく、加えて資本ストック量が減少することから、経済成長

率がマイナスとなる地域であり、ここには青森県、岩手県、秋田県が含まれる。

Ⅱグループは、労働投入量のマイナス寄与が比較的大きいが、Ⅰグループより

は小さいグループである。このグループは、同グループ内において、福島県、山

形県など資本ストック量とTFPのプラス寄与が大きいグループと栃木県などそ

 

       

       

       

                            

                            

                            

                            

                            

                            

 

       

       

       

                            

                            

                            

                            

                            

                            

28    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 31: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-29-

れらが小さいグループに細分類される。Ⅲグループは、労働投入量のマイナス寄

与がⅡグループと同様に比較的大きいが、資本ストック量とTFPの伸びが高め

であることから、経済成長率が0%台後半から1%台となる地域であり、宮城県は

このグループに含まれる。Ⅳグループは、労働投入量のマイナス寄与が小さい地

域である。このグループは、グループ内において、沖縄県など資本ストック量と

TFPの伸びが小さいグループと、滋賀県などそれらが大きいグループに細分類

される。Ⅴグループは、東京都など労働投入量と資本ストック量がマイナス寄与

となるが、TFPの伸びが大きく、経済成長率がプラスとなる地域である。

c.2030~2040年度の都道府県クラスター

この間の都道府県も五つのグループに分類される。Ⅰグループは、労働投入量

のマイナス寄与が大きく、これを主因に経済成長率がマイナスあるいは0%近傍

となる地域である。このグループは、同グループ内において、青森県、秋田県な

ど労働投入量のマイナス寄与が最も大きく、資本ストック量の伸びもマイナスと

なることから、経済成長率が比較的大きいマイナスとなる地域、岩手県や山形県

など労働投入量のマイナス寄与が比較的大きいが、これをTFPの伸びがカバー

し経済成長率が0%近傍となる地域、福島県など労働投入量のマイナス寄与が比

較的小さく、TFPの伸びが大きいことから、経済成長率が比較的高めの伸びと

なる地域、富山県など労働投入量のマイナス寄与は小さいが、TFPの伸びも小

さいため、経済成長率が0%近傍となる地域に細分類される。

Ⅱグループは、労働投入量のマイナス寄与がⅠグループほどは大きくはないも

のの、資本ストック量やTFPの伸びが小さいことから、経済成長率が概ねマイ

ナスとなる地域である。Ⅲグループは、労働投入量のマイナス幅はⅡグループと

同水準であるが、主にTFPの伸びが大きいことから、経済成長率が0%台半ば

から1%台となる地域であり、宮城県はここに含まれる。Ⅳグループは和歌山県

と高知県であり、これらは労働投入量、資本ストック量、TFPのマイナス幅が

全て大きく、経済成長率が2%台のマイナスとなる地域である。Ⅴグループは、

東京都など労働投入量の減少に加え、資本ストック量のマイナス寄与が大きいが、

TFPの伸びが大きいことから、経済成長率が0%近傍となる地域である。

29七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 32: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-30-

図表2-6 経済成長率・成長要因(将来推計値)の類似性からみた都道府県クラスター・ケースⅠ

【2010~2020年度の都道府県クラスター】

【2020~2030年度の都道府県クラスター】

【2030~2040年度の都道府県クラスター】

鹿

鹿

鹿

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ

30    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 33: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-31-

図表2-7 経済成長率・成長要因(将来推計値)の類似性からみた都道府県クラスター・ケースⅡ

【2010~2020年度の都道府県クラスター】

【2020~2030年度の都道府県クラスター】

【2030~2040年度の都道府県クラスター】

鹿

鹿

鹿

Ⅳ Ⅴ

31七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 34: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-32-

(2)宮城県・東北各県の概況

A.ケースⅠ

宮城県の2010年代の経済成長率は1.47%(5位)となり、マイナス成長となった

2000年代(▲0.11%)から一転し、相対的に高い伸びとなった。これを要因別にみ

ると、労働投入量が▲0.58%、資本ストック量が▲0.12%、TFPが2.18%となっ

ている。労働投入量については、団塊の世代が高齢者層に移行することに伴い就業

者数の減少ペースは加速するが、総実労働時間を一定と仮定していることから、首

都圏への転出者の増加や二度の経済ショック等に伴う雇用調整などの影響を受けた

2000年代(労働投入量:▲0.58%、うち就業者数寄与度▲0.32%、総実労働時間寄

与度▲0.26%)と比べると、マイナス幅は横ばいとなっている。資本ストック量は、

震災に伴い毀損した資本ストックの全てが震災前の状況に復することが困難である

ことなどから、2000年代に(▲0.07%)に比べ、マイナス幅が拡大する。TFPは、

震災復興需要に伴う建設業や公務の生産増加を主因として大幅に伸びを高め、経済

成長率を押し上げる原動力となる。

2020年代は、経済成長率は震災復興需要の終息などにより、0.39%(20位)となり、

成長率は大幅に鈍化する。要因別にみると、労働投入量が▲0.54%、資本ストック

量が0.40%、TFPが0.54%(ケースⅠで設定した仮定値)となり、2010年代と比

べると、労働投入量のマイナス幅が幾分縮小し、資本ストック量も2010年代を通し

た経済成長の影響からプラス転化するが、TFPの伸びは大幅に低下する。

2030年代に入ると、経済成長率は▲0.18%(26位)とマイナス成長に転じる。要因

別にみると、労働投入量が▲0.82%、資本ストック量が0.11%、TFPが0.54%と

なり、労働投入量のマイナス寄与が拡大し、資本ストック量の伸びが縮小して、経

済成長を下押しする。

一方、宮城県を除く5県の動向をみると、2010年代は、経済成長率が山形県

(1.03%:12位)、福島県(0.21%:29位)、青森県(0.07%:31位)ではプラス

となるが、秋田県(▲0.55%:43位)、岩手県(▲0.25%:36位)ではマイナス成

長となる。山形県および青森県では資本ストック量とTFPの伸び、福島県ではT

FPの伸びが経済成長を下支えする。一方、秋田県および岩手県ではTFPの伸び

が相対的に低いことに加え、労働投入量のマイナス幅が大きく、これが経済成長の

足枷となる。

2020年代については、山形県(0.93%:9位)、福島県(0.34%:22位)では主に

TFPの伸びに支えられ経済成長率がプラスを維持するが、他の3県(岩手県▲

1.93%:46位、秋田県▲0.95%:43位、青森県▲0.35%:34位)はマイナス成長と

なる。岩手県および秋田県では経済成長率のマイナス幅が拡大するが、これは、岩

手県では、労働投入量の下押し圧力が続くことに加え、資本ストック量のマイナス

幅が拡大し、TFP(ケースⅠの仮定値:▲0.21%)がマイナスとなること、秋田

県では、労働投入量のマイナス幅が高止まることに加え、資本ストック量のマイナ

ス幅が拡大することによるものである。また、青森県は資本ストック量の伸びが大

幅に鈍化するとともに、労働投入量のマイナス幅が拡大することから、経済成長率

はマイナスに転じる。

32    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 35: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-33-

2030年代に入ると、山形県を除く4県の経済成長率がマイナスとなる。山形県

(0.74%:7位)は主にTFPの伸びに支えられ経済成長を持続する。福島県(▲

0.003%:19位)は労働投入量のマイナス幅の拡大と資本ストック量の伸び率の縮小

によりゼロ成長となる。他の3県(岩手県▲2.57%:46位、秋田県▲1.37%:43位、

青森県▲0.87%:37位)は労働投入量および資本ストック量のマイナス幅の拡大に

より、経済成長率のマイナス幅が一段と拡大する。

B.ケースⅡ

宮城県の2010年代の経済成長率(1.82%:2位)は、ケースⅠに比べて上振れする

ものとなった。これは、条件設定上、ケースⅠと比較すると、就業率を一定とした

ことにより就業者数の減少テンポが緩やかで労働投入量(▲0.46%)のマイナス幅

が小さくなったことや、TFP(2.41%)が相対的に高めの生産増加を遂げた期間

(1980~2000年度)を含んでいるため、その伸び率が高くなったことなどによるも

のである。

図表2-8 宮城県・東北各県の経済成長率(将来推計値)の要因分解

【 ケースⅠ 】

項目(%)/年度 2010~2020 2020~2030 2030~2040 2010~2020 2020~2030 2030~2040 2010~2020 2020~2030 2030~2040

経 済 成 長 率 1.47 0.39 0.07▲0.18 ▲0.35 ▲0.87 ▲0.25 ▲1.93 ▲2.57

労 働 投 入 量 ▲0.58 ▲0.54 ▲0.82 ▲0.87 ▲0.92 ▲1.12 ▲0.89 ▲0.89 ▲1.05

資本ストック量 ▲0.12 ▲0.30 ▲0.07 ▲0.83 ▲1.330.40 0.11 0.40 0.02

T F P 2.18 0.54 0.54 0.55 0.55 0.55 0.71 ▲0.21 ▲0.21

                 

項目(%)/年度 2010~2020 2020~2030 2030~2040 2010~2020 2020~2030 2030~2040 2010~2020 2020~2030 2030~2040

経 済 成 長 率 ▲0.55 ▲0.95 ▲1.37 ▲0.001.03 0.93 0.74 0.21 0.34

労 働 投 入 量 ▲0.98 ▲0.95 ▲1.06 ▲0.88 ▲0.86 ▲0.98 ▲0.74 ▲0.75 ▲0.91

資本ストック量 ▲0.14 ▲0.57 ▲0.88 ▲0.030.55 0.44 0.38 0.28 0.10

T F P 0.57 0.57 0.57 1.36 1.36 1.36 0.99 0.82 0.82

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP

 (%)

 岩 手 県  青 森 県  宮 城 県 

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

 福 島 県  山 形 県  秋 田 県 

33七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 36: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-34-

2020年代および2030年代についても、この状況が継続することから、経済成長率

は2020年代が0.91%(11位)、2020年代が0.40%(16位)となり、ケースⅠに比べ

推計期間を通して上方シフトする。

一方、宮城県を除く5県の動向をみると、推計期間を通して、労働投入量について

は、5県とも上述した要因によりケースⅠに比べ上振れするが、TFPについては、

区々であることから、経済成長率の動きにはバラツキがみられる。青森県および山

形県ではTFPの下振れを主因にケースⅠに比べ経済成長率が下方シフトする。一

方、岩手県および福島県ではTFPの上振れを主因に経済成長率が上方シフトする。

また、秋田県については、TFPは下振れするが、労働投入量および資本ストック

量のマイナス幅の縮小により経済成長率は上方シフトする。

以上から、宮城県および東北各県の将来的な経済成長の姿をまとめてみると、宮城

県については、震災により甚大な被害を受けたものの、2010年代については、震災

からの復興需要に牽引され、相対的に高い経済成長が見込まれる。しかしながら、

2020年代以降は、当該需要の終息等により、経済成長率は大幅に低下する。また、

都道府県間における経済成長の相対的な位置づけについては、TFPの伸びが高め

【 ケースⅡ 】

項目(%)/年度 2010~2020 2020~2030 2030~2040 2010~2020 2020~2030 2030~2040 2010~2020 2020~2030 2030~2040

経 済 成 長 率 1.82 0.91 0.40 0.54 0.03▲0.07 ▲0.52 ▲1.03 ▲0.39

労 働 投 入 量 ▲0.46 ▲0.42 ▲0.67 ▲0.77 ▲0.79 ▲0.97 ▲0.73 ▲0.71 ▲0.86

資本ストック量 ▲0.12 ▲0.07 ▲0.40 ▲0.07 ▲0.140.49 0.24 0.36 0.12

T F P 2.41 0.83 0.83 0.34 0.34 0.34 1.35 0.62 0.62

                      

項目(%)/年度 2010~2020 2020~2030 2030~2040 2010~2020 2020~2030 2030~2040 2010~2020 2020~2030 2030~2040

経 済 成 長 率 ▲0.51 ▲0.84 ▲1.21 0.47 0.29 0.05 0.59 1.11 0.85

労 働 投 入 量 ▲0.88 ▲0.83 ▲0.94 ▲0.78 ▲0.73 ▲0.85 ▲0.63 ▲0.62 ▲0.77

資本ストック量 ▲0.13 ▲0.51 ▲0.77 ▲0.030.47 0.25 0.13 0.55 0.44

T F P 0.50 0.50 0.50 0.78 0.78 0.78 1.26 1.19 1.19

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP

 (%)

 岩 手 県  青 森 県  宮 城 県 

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

労働投入量 資本ストック量 TFP GPDP (%)

 福 島 県  山 形 県  秋 田 県 

34    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 37: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-35-

の設定となっているケースⅡでは相応のポジションで推移するものの、TFPの伸

びが低めの設定となっているケースⅠでは経済成長の優位性は段階的に低下し、

2030年代には全国的にもかなり低位な状況になると考えられる。

なお、各成長要因が経済成長率の変化に及ぼす影響をケースⅠとケースⅡとで比べ

てみると、過去の傾向と同様に、労働投入量よりはTFPの寄与が大きいものとな

っている。

東北各県については、岩手県のようにTFPの設定如何により、経済成長の姿がか

なり異なるものもみられるが、総じてみると、就業者数の減少テンポが相対的に速

く、労働投入量の下押し圧力が大きい青森県および秋田県では経済成長の低迷が見

込まれる一方、資本ストック量やTFPの伸びが相対的に大きい山形県および福島

県では将来的にも経済成長の優位性を維持していくものと考えられる。

Ⅲ.宮城県の経済成長率の底上げに向けて

1.経済成長率の底上げを考える視点

前節までにみたように、宮城県の将来の経済成長の姿を展望すると、震災からの復興

需要、いわゆる復興特需が続く間は高めの経済成長が見込まれるものの、それが剥落し

た後については、経済成長率は大幅に低下すると考えられる。したがって、宮城県経済

が中長期的に安定的な成長を遂げ、経済成長における優位性を回復・維持していくため

には、復興特需が終息した後、如何にして経済成長率を底上げしていくかが大きな課題

になると思われる。

繰り返し述べているように、経済成長の源泉は労働投入量、資本ストック量、技術進

歩等によるTFPの伸びに分けられる。ここで労働投入量については、これまでみてき

たように宮城県においても明確な減少トレンドに入っており、今後も少子高齢化と人口

減少に伴う就業者数の減少を通じて減少していくものと考えられる。労働投入量の減少

を抑える方策としては、一般に就業率の低下や少子化に歯止めをかけることなどが挙げ

られる。しかしながら、就業率については、前節でシミュレートしたように、就業率が

近年の水準を保ちながら横ばいで推移するとした場合でも、これまで低下傾向を辿って

きた就業率のトレンドを延長した場合に比べれば、労働投入量のマイナス幅は縮小する

が、総じてみれば経済成長への寄与は限定的なものに止まると考えられる。また、少子

化に歯止めをかけるため、仮に合計特殊出生率が人口置換水準とされる2.07程度まで引

き上がったとしても、これが就業者数の動向に反映されるまでには、少なくとも四半世

紀程度を要することとなる。労働投入量の減少に歯止めをかける、あるいは減少テンポ

を緩やかにするための施策は重要であり、長期的に腰を据えた取組みが必要であるが、

先行き10~20年程度を見据えると、その効果は限定的なものになると思われる。

資本ストック量については、本稿では、回帰式による推計を試みており、労働投入量

の減少等に伴うGPDPの伸び率の低下から、資本ストック量の伸びは逓減傾向を辿る

ものとなっている。また、ライフサイクルモデル等からも一般に高齢者人口の増加に伴

う貯蓄率の低下により貯蓄額が減少し、これが設備投資の減少を招き資本ストック量の

伸びの阻害要因になると考えられている。つまり、人口動態や人口構造の変化が資本ス

35七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 38: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-36-

トック量の制約要因となっており、それらが変わらなければ、資本ストック量の伸びの

低下あるいは逓減傾向も変わらないこととなる。

このような状況から将来における地域の経済成長の姿を考える際に、その原動力とし

て労働投入量および資本ストック量の持続的な増加等を検討することについては、かな

りの制約を伴うものと思われる。もっとも、その制約の程度は、その地域の産業構造に

依存する。つまり、その地域の経済が労働集約的な産業構造の場合と資本集約的な産業

構造の場合とでは、それらの動向が経済成長に与える影響がかなりの程度異なってくる

ことには留意する必要がある。

他方、過去および将来推計における経済成長の要因分解を通してみると、各都道府県

および宮城県においても、労働投入量よりも資本ストック量やTFPの変動の方が経済

成長に与えるインパクトは大きいものとなっている。このことは、将来にわたり労働投

入量が逓減しても、資本蓄積や知的財産等の活用により、生産性を高めることで、労働

投入量のマイナスをカバーできれば、今後とも相応の経済成長が可能であることを示唆

するものと考えられる。これまで述べてきたように、TFPについては、さまざまな要

因により変動しており、不確定要素が大きい反面、過去の経済成長過程において均して

みれば経済成長率の引上げ寄与が大きく、今後の地域経済の成長の鍵を握る存在になる

と考えられる。本節では、このような考え方に基づき、宮城県の経済成長率を底上げす

る原動力としてTFPに着目し、その向上策について検討する。

2.TFPの向上に向けて

今後は、少子高齢化と人口減少が一段と進行し、地域経済においては労働投入量と資

本ストック量の供給制約が強まる。同時に、地域経済は、加速化するグローバル競争並

びに域内需要の縮小への対応にも迫られることとなる。このような状況において持続的

な経済成長を実現するためには、TFPの向上を図ることが必要となるが、その要諦は

生産性の向上を如何にして図るかにあると考えられる。したがって、ここではTFPの

向上策を生産性の向上という観点から検討する。地域の生産性を向上させるためには、

生産資源を高生産性の産業に重点的に振向け、その産業構造上のウェイトを高める方法

と、個々の産業の生産性を高める方法、集積の経済を活用する方法などが考えられるが、

以下ではそれぞれについて検討する。

(1)高生産性産業のウェイトの向上

図表3-1は、各都道府県の2000~2010年度における就業者一人当たりGPDPとT

FPの伸び率(年度平均)をプロットしたものである。これをみると、両者には強い

正の相関関係がみられ、就業者一人当たりGPDPの伸び率が高い地域ではTFPの

伸び率も高く、逆に、就業者一人当たりGPDPの伸び率が低い地域ではTFPの伸

び率も低いことが示されており、地域の生産性とTFPが密接な関係にあることがう

かがわれる。

ここで、図表3-2は、どのような産業が生産性の向上に寄与したのかをみるために、

就業者一人当たりGPDPおよびTFPの伸びが共に全国1位の三重県と東北地方で

36    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 39: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-37-

1位の山形県および宮城県を採り上げ、就業者一人当たりGPDP増加額(2001年度

対2010年度14)の産業別寄与を示したものである。

まず、三重県について

みると、2001年度の就

業者一人当たりGPD

Pは6,996千円となって

おり、その産業別寄与

をみると、製造業が

1,827 千 円 と 全 体 の

26.1%を占め、最も大

きい。これが2010年度

になると、全体のGP

DPは9,713千円となり、

2,717千円増加したが、

その内訳をみると、生

産性が倍増した製造業

のプラス寄与が1,962千

円と全体の7割強に達し

ている。

山形県については、2001年度の全体のGPDPは5,611千円となっており、その産

業別寄与は、サービス業が1,361千円(構成比24.3%)と最も大きく、次いで、製造

業が787千円(同14.0%)となっている。これが2010年度になると、全体のGPDP

は7,018千円と1,407千円増加したが、ここでも生産性が2倍強となった製造業のプラ

ス寄与が全体の7割弱に及んでいる。

14 就業者一人当たりGPDP増加額の比較対象年度は、図表3-1等との整合性から2000年度対2010年度と

すべきであるが、内閣府「2010(平成22)年度県民経済計算」(93SNA・平成17年基準)における経済活動別

県内総生産の遡及期間が2001年度までであることから、2001年度対2010年度とした。

図表3-2 三重県・山形県・宮城県における就業者一人当たりGPDPの産業別寄与の変化

(千円)

三  重  県 山  形  県 宮  城  県

2001年度 2010年度 増減額 2001年度 2010年度 増減額 2001年度 2010年度 増減額

農 林 水 産 業 124 107 223 225 2 142 119▲18 ▲23

鉱 業 18 5 10 4 4 1▲13 ▲6 ▲2

製 造 業 1,827 3,789 1,962 787 1,741 955 842 1,173 331

建 設 業 599 474 536 321 562 401▲125 ▲215 ▲161

電気・ガス・水道業 234 286 52 141 172 31 195 221 26

卸 売 ・ 小 売 業 696 768 72 775 718 1,311 973▲57 ▲338

金 融 ・ 保 険 業 413 397 295 306 10 415 339▲16 ▲75

不 動 産 業 631 936 305 673 920 246 959 1,175 216

サ ー ビ ス 業 1,759 1,997 238 1,361 1,558 197 1,990 2,143 153

政府サービス生産者 660 748 88 784 854 70 833 904 71

対家計民間非営利サービス 111 146 35 106 145 40 117 151 34

G P D P ( 合 計 ) 6,996 9,713 2,717 5,611 7,018 1,407 7,340 7,589 249注1)産業分類の変更を調整するため、2001年度は運輸・通信業をサービス業に含め、2010年度は運輸業および情報通

   信業をサービス業に含めた。

 2)県民経済計算(連鎖方式)の加法整合性の不成立の関係から、各産業の合計はGPDPに一致しない。

資料:各県の2011(平成23)年度県民経済計算年報から作成

図表3-1 都道府県の就業者一人当たりGPDP伸び率とTFP

    伸び率のプロット図(2000~2010年度平均伸び率)

-1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

宮城県山形県

三重県

就業者一人当たりGPDP伸び率(%)

TFP伸び率(%)

Y=0.802X-0.180 (決定係数:0.668)

37七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 40: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-38-

一方、宮城県の2001年度の全体のGPDPは、三重県、山形県を上回る7,340千円

となっており、その産業別寄与は、サービス業が1,990千円(構成比27.1%)と最も

大きく、次いで、卸売・小売業が1,311千円(同17.9%)となり、製造業は842千円

(同11.5%)となっている。これが2010年度になると、全体のGPDPは249千円増

の7,589千円に止まり、三重県を下回った。内訳をみると、製造業、不動産業、サー

ビス業などがプラスに寄与したが、2県に比べ製造業の生産性の伸びがかなり小さく、

加えて、ウェイトの大きい卸売・小売業が338千円のマイナスとなったことなどが、

全体の生産性の伸びを阻害する要因となった。

他方、図表3-3から、各都道府県における製造業の生産額構成比(製造業生産額÷

GPDP)とTFPの伸び率の関係をみると、両者には正の相関関係がみられ、こ

こから製造業のウェイトが大きい地域ではTFPの伸びが高く、製造業のウェイト

が小さい地域ではTFPの伸びが低い傾向にあることが示唆される。

これらから、次の2点が指摘される。第一に、三重県および山形県では、2010年代

に高い生産性の伸びがみられたが、その主な原動力は製造業の生産性の伸びであっ

たこと、第二に、製造業の生産性(水準)は、その業種構成や立地企業の違い等を

反映して地域により濃淡がみられるが、総じて、製造業の産業構造上(GPDPベ

ース)のウェイトが大きいほど、地域全体の生産性の伸びが高いという傾向がみら

れることである。宮城県の産業構造をみると、相対的に卸売・小売業のウェイトが

大きく、製造業のウェイトが小さい。また、製造業の生産性も相対的に低いが、こ

のような産業構造が宮城県の生産性の伸びを低位なものに止めてきた一因と考えら

れる。具体的には、県都仙台市が、宮城県のGPDPの約半分を占めており、その

産業構造が卸売・小売

業のウェイトが大きく、

商業都市(=消費都市)

としての性格が強いこ

とから、人口が増加傾

向を辿った期間はその

恩恵を受けて宮城県経

済の成長を牽引したも

のの、人口の増加ペー

スが鈍化しピークアウ

トするに従い、このよ

うな産業構造が生産要

素と需要の伸びの足枷

となり、県全体の経済

成長の制約要因として

作用したものと思われ

る。また、宮城県の製

造業の業種構成(付加価値額ベース)は、食料品と電気機械が中心であり、両業種

で付加価値額全体の約4割を占めているが、食料品については水産加工関係が主体で

図表3-3 都道府県の製造業生産額構成比とTFP伸び率のプ

    ロット図

10 20 30 40 50

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

岩手県

宮城県

栃木県

東京都

石川県

福井県

長野県

静岡県

三重県

滋賀県

和歌山県

鳥取県

高知県

沖縄県

製造業生産額構成比(2010年度:%)

TFP伸び率(2

000

~2010

年度:%)

Y=0.035X-0.080(相関係数:0.499 決定係数:0.249)

38    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 41: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-39-

あり、また、電気機械は部品加工が主体であることから、共に生産性が低く、これ

が製造業全体の生産性を低位な水準に止める要因となったと考えられる。したがっ

て、端的に言えば、宮城県経済の生産性を高めるためには、高生産性の製造業の誘

致・育成を図ることが有効な方策になると考えられる。

このような観点からみると、宮城県が進めてきた企業誘致策により、近年県内に立

地した自動車関連企業および高度電子関連企業は、今後の宮城県経済の生産性の向

上に大きく貢献するものとして評価される。それぞれの中心企業はトヨタ自動車東

日本と東京エレクトロン宮城であるが、この2社が従来の誘致企業と大きく異なる点

は、これらの製造工場が自動車や半導体製造装置の完成品工場であることである。

加えて、技術開発部門、研究開発部門を併せ持っているということである。従来の

誘致企業の工場は電子部品等の加工工場が中心であり、県外から移入した部品に加

工を加え、県外に移出するパターンが大半であった。これに対し今般の完成品工場

の立地では、近隣に関連する部品工場が相次いで立地し、これらの完成品メーカー

とサプライヤー企業群からなる産業集積・クラスターが形成されつつあり、原材料

の加工・部品の製造加工から完成品の組立までの一連の生産過程の多くが県内で実

現される期待が高まっている。また、技術・研究開発が県内で進められることによ

り、より多くの付加価値が県内で生じ留まることとなる。

つまり、従来の企業誘致が単独の工場立地であったのに対し、現在進められてい

る企業誘致は、技術・研究開発も含めた重層型のピラミッド構造を有する企業群の

形成を図るものとなっている。生産性の面からみれば、これらの誘致企業は総じて

既存の県内の製造業(平均値)を上回る生産性を有している。また、県内での原材

料の調達率や自給率15の引上げが図られることにより、付加価値の歩留り率の向上に

結び付き、いわゆる生産誘発効果の高い産業構造への転換に寄与するものと考えら

れる。さらに、地元企業がこれらの産業分野へ参入するには相当の期間を要すると

みられるものの、参入機会の広がりを通して、地元企業の技術力の底上げが図られ、

これが延いては県内製造業全体の技術水準・生産性の向上に結び付く契機になると

考えられる。したがって、今後についても、これらの産業分野の集積を一層進展さ

せ、宮城県の新たな産業の柱とすることにより、県内の産業分野における位置づけ

を高めていくことが求められる。なお、日本の製造業については、国内需要の先細

りや海外生産比率の上昇、日本製品の世界市場におけるシェアの低下などに直面し

ており、国内に留まっての生き残りには限界があるとの指摘がなされている。しか

しながら、高度な技術力等を背景にグローバル市場の中で非価格競争が可能な分野、

あるいは、国内市場をターゲットに国内市場で競争力を高めることが可能な分野に

ついては、国内に研究開発機能や製造拠点が残る可能性が高い。このような棲み分

けはある意味、製造業の構造変化を表すものであり、製造業の誘致・育成について

はこのような観点にも留意する必要がある。

15 県内自給率=1-移輸入率(移輸入額÷県内生産額)。県内需要(中間需要+県内最終需要)のうちど

の程度を県内で生産された財・サービスで賄っているのかを示す指標。

39七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 42: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-40-

(2)個々の産業の生産性の向上

個々の産業の生産性の向上を図るための方策は多岐にわたるが、ここではコネクタ

ーハブ企業16(地域中核企業)の企業力強化あるいは創出という観点から検討する。

コネクターハブ企業とは、地域内で取引が集中しており、地域外とも取引を行ってい

る企業であり、地域内取引ネットワークのハブ機能と地域外取引を結節するコネクター機

能を併せ持った企業である。つまり、コネクターハブ企業の生産が増えれば、地域内の関

連取引企業の生産も誘発され、最終需要としては移出の増加に結び付く。これが循環的に

繰り返されることにより、地域全体の生産が持続的に増加することとなる。ここでのポイ

ントは、コネクターハブ企業が地域内の多くの企業から原材料を仕入れ、それを加工・製

品化して、地域外に販売し資金を得る構造を構築していることである。このような構造は

先述した自動車関連産業のピラミッド構造と類似したものであり、地域内からの原材料調

達率が引き上がれば、地域内での生産誘発効果は一段と高まることとなる。

こうしたことから、コネクターハブ企業の企業力の強化あるいはその創出は、地域

の生産性を高める有効な手段になると考えられ、さまざまな産業分野において展開

されることが見込まれるが、宮城県の場合は特に、震災により甚大な被害を受けた

水産加工業を中心とした水産業での取組みが期待される。水産業においては漁業、

魚市場、冷凍・冷蔵倉庫、水産加工、運輸、小売などからなる一連のサプライチェ

ーンが形成されており、ホテル・旅館や観光施設等の観光関連産業も含めると極め

て広範に及ぶ産業集積が形づくられている。これらの中には地域や業種等において

中核的な地位を占めるコネクターハブ企業が存在していることが想定され、それを

増強することにより、より強固なサプライチェーンの構築が図られるものと思われ

る。もっとも、今のところ地方自治体等がコネクターハブ企業やその取引構造を計

量的に把握することは難しい状況にあり、これについては、経済産業省が現在開発

を進めている「地域経済産業分析システム17」の活用が期待される。このシステムは、

企業間の取引情報に基づき、地域の産業構造の全体像を視覚的に捉えることができ

るものであり、これによりコネクターハブ企業の特定やその取引構造の分析などが

可能となる。今後はこのようなシステムを活用しコネクターハブ企業の企業力の強

化や新たなコネクターハブ企業の創出を図ることが肝要となる。

図表3-4は中小企業庁が一定の条件18で抽出した都道府県別コネクターハブ企業数

と1万社当たりコネクターハブ企業数を示したものである。これをみると、コネクタ

16 コネクターハブ企業とは、東京大学・坂田一郎教授が提唱しているものであり、「Z値(地域や業種の

中で取引が集中する度合い)とP値(地域や業種を超えた取引を行っている度合い)が共に高い企業」と

定義されている。ただし、ここでは中小企業庁「中小企業白書(2014年版)」を参考に、コネクターハブ

企業を地域の中で取引が集中しており、地域外とも取引を行っている企業とする。 17 経済産業省が開発を行っている地域経済産業分析システムとは、膨大な数の企業間取引データ(帝国デ

ータバンクが保有する約70万社の過去5年分の取引データ:500万の取引)に基づき、コネクターハブ企業

の特定や地域経済の産業構造分析を行うことができるシステム。経済産業省ではこのシステムの2014年中

の開発を目指しており、完成後は各自治体に無償で提供する予定であり、地域の産業政策立案等への活用

が期待される。 18 中小企業の抽出条件は図表3-4の通りであるが、コネクターハブ企業の規定条件が定まっているわけで

はなく、抽出条件は目的に応じて都度設定するものであることから、条件設定次第でコネクターハブ企業

数は変わるこことなる。

40    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 43: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-41-

ーハブ企業は東京都や大阪府、愛知県など大都市部に集中的に立地していることが

分かるが、その一方で大都市部以外の地域においてもある程度の数のコネクターハ

ブ企業が存在していることがうかがわれる。特に、新潟県、富山県、石川県、福井

県の北陸地方や長野県などでは、経済規模や企業数等が必ずしも大きいわけではな

いにも拘らず、コネクターハブ企業数並びにその割合が高い状況にある。これは特

定の産業集積や地場産業のネットワークの存在などがその背景にあると推測される

が、いずれにせよ大都市部ではなくともコネクターハブ企業が相当程度育つことが

可能であることを示唆するものとして注目される。因みに、宮城県のコネクターハ

ブ企業数は30社(22位)、1万社当たりコネクターハブ企業数は4.7社(25位)とな

っており、共に中位に位置するが、北陸地方等の状況をみると、コネクターハブ企

業数の引上げ余地は十分にあると考えられる。

(3)集積の経済の活用

集積の経済とは、産業が集積することに伴う経済的なメリットであり、具体的には、

産業が空間的に集積することにより得られる費用の節減や生産性の向上である。集

積の経済は、同業種の企業の集積による地域特化の経済と異業種の関連企業の集積

による都市化の経済に分けられるが、いずれもイノベーションの創造や企業間ネッ

ワークの形成を促し、地域の生産性を向上させる原動力になると考えられる。先述

した自動車関連産業の集積の動きなどは地域特化の経済に結び付くものであるが、

ここではイノベーションの創造という観点からILC(国際リニアコライダー)に

着目し、ILCの誘致に伴う集積の経済について検討する。

ILCは、全長30㎞余りの地下トンネルの中に設置される巨大加速器である。この

トンネルの中央部で電子と陽電子を衝突させ、宇宙初期に迫る高いエネルギー反応を

作り出し、時間と空間の構造や質量の起源を解き明かし、宇宙創成の謎に迫ることを

目的としている。国際宇宙ステーション、国際熱核融合実験炉と共に「21世紀の人類3

図表3-4 都道府県別コネクターハブ企業数と1万社当たりコネクターハブ企業数

注)コネクターハブ企業数は、中小企業庁「中小企業白書」(2014年版)によるものであり、帝国データバンクの企業情報から

  ①域外販売額が域内仕入額の1.2倍以上、②域内仕入額が総仕入額の50%以上、③取引数10件以上の3条件で抽出した企業。

  ただし、売上高500億円以上の企業を除く。

資料:中小企業庁「中小企業白書」(2014年版)、総務省「平成24年経済センサス活動調査」から作成

1

10

100

1000コネクターハブ企業数(社:対数目盛)

0

5

10

15

20

25一万社当たりコネクターハブ企業数(社)

神奈川県

和歌山県

鹿児島県

41七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 44: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-42-

大プロジェクト」の一つとされており、国際協力のもと世界に1箇所のみ建設されるこ

ととなっている。日本への誘致が実現すれば、国内初の国際的研究機関の立地となる。

なお、現在世界最大の素粒子加速器は、スイスのCERN19(欧州合同原子核研究

機関)にあるLHC(大型ハドロン衝突型加速器)であるが、ILCはその次の世

代の素粒子研究施設として位置付けられている。

昨年8月、ILCを推進する研究者で組成されたILC戦略会議の立地評価会議は、

この国内建設候補地に北上山地を選定した。ILCを国内に誘致するか否かの決定

には、なお時間を要するものの、国内誘致が決定すれば北上山地に建設させる公算

が極めて大きい状況にある。

ILCの誘致に伴う効果はさまざまな分野に及ぶが、集積の経済の観点からみると、

ILCの建設・運用に直接的に係わる産業並びにその応用に係わる産業の集積と、

それに伴うイノベーションの創造である。前者は、ILCの建設や加速器関連部品

の加工・製造に関連した産業であり、重電、電気機械、一般機械、建設土木産業な

どが挙げられる。後者には、医療・生命科学や新素材・材料、エネルギー・環境、

情報通信などの分野に関連した産業が含まれ、これらがさまざまな企業間ネッワー

クを形成し、イノベーションを誘発することが期待される。

因みに、CERNの状況をみると、CERN周辺にはさまざまな関連企業が立地し

ており、実験機材や材料等の調達先は6千社以上に及んでおり、また、ハイテク部品

の調達先の8割以上は従業者数100人以下の中小企業が占める状況にある20。また、C

ERNは、ヒッグス粒子の発見で注目されたほか、HTML(文献の検索・連携の

ために考案された言語)、HTTP(インターネット通信のために定めた規則)、

WWW(インターネット上で標準的に用いられている文章の公開・閲覧システム)

の発祥の地としても知られており、パラダイムシフトを伴うようなイノベーション

の創造に貢献している。

ILCはCERNのLHCをはるかに上回る性能を有する施設であることから、

より多くのイノベーションの創造と産業集積の形成が期待される。このような産業

集積の形成自体が集積の経済をもたらし、同時に地元企業のILC関連事業への参

入機会を高めることとなる。こうした動きが積み上がることにより、世界的なシリ

コンヒルズ21の形成に結び付くこととなる。このような産業集積の形成は、重層的な

企業間ネットワークを通じて、循環的な技術革新を生み出し、それが地域の生産性

を飛躍的に高めるものと考えられる。その意味で、ILCの誘致は建設予定地であ

る岩手県を中心とした東北地方の産業構造にパラダイムシフトをもたらす千載一遇

のチャンスになると思われる。なお、ILCの建設予定地は北上山地であることか

ら、地理的には岩手県が施設配置の中心になると考えられるが、産業集積の形成地

19 CERNは、素粒子の基本法則や現象の研究を目的に1954年に設立された国際研究機関。加盟国は20カ

国、年間予算約1000億円、職員数約2,400名、年間約1万名の研究者が利用している。 20 AAA(先端加速器科学技術推進協議会)HPより。 21 「シリコンヒルズ」とは高エネルギー加速器研究機構の吉岡正和名誉教授が提唱しているもので、北上

山地を米国のシリコンバレーと同じような先端技術関連企業の集積地にしようとするもの。

42    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 45: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-43-

域や参入企業については、宮城県も十分な適性を有することから、今後とも官民挙

げてILCの国内建設に向けた活動を積極的に展開することが求められる。

(4)高生産性産業と低生産性産業のバランス調整

これまで生産性の向上策についてみてきたが、ここでは高生産性産業と低生産性産

業の産業構造上におけるバランス調整の必要性について検討する。生産資源の供給

制約が強まる中において、地域が経済成長を持続させるためには、生産資源を低生

産性産業から高生産性産業に移し、地域全体の生産性を高める必要がある。ただし、

低生産性産業の中には、介護事業のように超高齢社会にあって将来有望な成長産業

と位置付けられているものの、制度的要因や職務内容等から労働集約的とならざる

を得ず、容易には生産性の向上を図れない産業もある。しかし、これらの産業は地

域の雇用を担う重要な産業となっており、今後もそのような位置付けに変わりはな

いと考えられる。したがって、実際の政策運営においては、このような低生産性産

業と高生産性産業のバランスに留意した取組みが求められる。

一般に、各産業分野は労働力や資本の投入状況の違いを反映して、相対的に従業者

一人当たりの付加価値が大きい産業(以下「付加価値創出型産業」という。)と、

売上高(生産額)1単位当たりの従業者数が多い産業(以下、「雇用創出型産業」と

いう。)に分類される。

生産性からみると、付

加価値創出型産業が高

生産性産業に、雇用創

出型産業が低生産性産

業に対応する。これら

の状況をみるために、

産業連関表を用い、縦

軸に従業者一人当たり

粗付加価値額、横軸に

生産額10億円当たり従

業者数をとり、各産業

部門をプロットしたも

のが図表3-5である。こ

れをみると、両者には

負の相関関係がみられ、

付加価値創出型産業に

は石油製品、乗用車、

鉄鋼・粗鋼、電子計算

機、航空輸送、医薬品、放送などが含まれ、雇用創出型産業には耕種農業、漁業、

飲食店、商業、介護、宿泊業などが含まれる。つまり前者は資本集約的な製造業が

中心となっており、後者は労働集約的な産業からなる。

図表3-5 従業者一人当たり付加価値額と生産額10億円当たり

    従業者数の産業部門別プロット図

注)基本取引表(108部門)から住宅賃貸料(帰属家賃)、自家輸送、事務用品、分

  類不能を除いた104部門を対象とした。

資料:総務省「平成17年(2005年)産業連関表」より作成

0 100 200 300 400 500 600 700

生産額10億円当たり従業者数(人)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

従業者一人当たり粗付加価値額(

百万円)

Y=45.999×0.9903^(X)

(相関係数:-0.252 決定係数:0.531)

0 50 100 150 200 2500

50

100

150

43七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 46: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-44-

産業政策においては、このような付加価値創出型産業(高生産性産業)と雇用創出

型産業(低生産性産業)のバランスをとることが肝要となる。最先端で生産性の高

い産業の誘致に過度に傾斜しても地域の雇用創出には結び付かないこともあり、ま

た、過度に雇用の創出に傾斜しても地域の付加価値の引上げ、すなわち経済成長に

対するインパクトはそれほど大きなものにはならない可能性がある。そのバランス

調整の巧拙が地域の実情に即した産業構造を実現できるか否かの鍵を握るものと考

えられる22。

なお、視点は異なるが、経済社会が多様化・複雑化する中、行政や企業では対応に

限界がある社会的課題が顕在化しており、このような動きは今後も助長されると考

えられる。これらの社会的課題への対応の担い手として、NPOやコミュニティビ

ジネス、ソーシャルビジネスなど(以下、「コミュニティ産業」という。)が注目

されているが、今後はその役割が一段と高まると思われる。コミュニティ産業の育

成は社会政策としての意味合いが強い面があるが、同時に産業政策としての意味合

いも持つ。コミュニティ産業は安全・安心な社会生活を支えるセーフティネットと

して不可欠の存在と思われるが、安全・安心な社会生活と経済成長は車の両輪であ

ることを考えれば、コミュニティ産業の育成を産業政策としても位置付け、産業の

バランス調整の一環として、着実な取組みを図ることが肝要になると思われる。

おわりに

以上のように、宮城県および東北各県の経済成長率の将来推計結果をみると、労働投

入量の減少と資本ストック量の伸びの鈍化あるいは減少を主因として、経済成長率は段

階的に低下する。県別では、労働投入量の下押し圧力が大きい青森県および秋田県では

経済成長の低迷が見込まれる一方、TFPの伸びが相対的に大きい山形県および福島県

では経済成長の優位性を維持していくものと考えられる。また、岩手県については推計

に係る条件設定により経済成長率に幅がみられる。

宮城県については、2010年代は震災復興需要に牽引され相対的に高い経済成長が見込

まれるが、当該需要が終息した後の2020年代以降は経済成長率が大幅に低下し、全国的

にみても低位な状況になると推計される。

今後、宮城県が持続的な経済成長を実現するためには、TFPの向上を図り、労働投

入量と資本ストック量の供給制約をカバーすることが必要となる。具体的には、経済活

動における高生産性産業のウェイトを高めることや個々の産業の生産性の向上を図るこ

と、あるいは、集積の経済の活用などが考えられるが、これらの施策を中長期的な視点

から見据え、着実に実行していくことが求められる。このような取組みを通して、将来

にわたり宮城県経済のダイナミズムが高まり、東北経済の牽引役として、その存在感を

増していくことを期待したい。

(大川口 信一)

22 七十七銀行「調査月報『東日本大震災後の宮城県の経済情勢と復興状況について』」(2013)より引用。

44    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 47: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-45-

(資料)都道府県別経済成長率の将来推計結果

【 ケースⅠ 】

  Ⅰ-1

  2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度

1 北 海 道

経済成長率 ▲0.31 ▲0.26 ▲0.71

労働投入量増減率 ▲0.79 ▲0.72 ▲1.05

資本ストック量増減率 ▲0.15 ▲0.16 ▲0.28

TFP増減率 0.63 0.63 0.63

2 青 森 県

経済成長率 0.07 ▲0.35 ▲0.87

労働投入量増減率 ▲0.87 ▲0.92 ▲1.12

資本ストック量増減率 0.40 0.02 ▲0.30

TFP増減率 0.55 0.55 0.55

3 岩 手 県

経済成長率 ▲0.25 ▲1.93 ▲2.57

労働投入量増減率 ▲0.89 ▲0.89 ▲1.05

資本ストック量増減率 ▲0.07 ▲0.83 ▲1.33

TFP増減率 0.71 ▲0.21 ▲0.21

4 宮 城 県

経済成長率 1.47 0.39 ▲0.18

労働投入量増減率 ▲0.58 ▲0.54 ▲0.82

資本ストック量増減率 ▲0.12 0.40 0.11

TFP増減率 2.18 0.54 0.54

5 秋 田 県

経済成長率 ▲0.55 ▲0.95 ▲1.37

労働投入量増減率 ▲0.98 ▲0.95 ▲1.06

資本ストック量増減率 ▲0.14 ▲0.57 ▲0.88

TFP増減率 0.57 0.57 0.57

6 山 形 県

経済成長率 1.03 0.93 0.74

労働投入量増減率 ▲0.88 ▲0.86 ▲0.98

資本ストック量増減率 0.55 0.44 0.38

TFP増減率 1.36 1.36 1.36

7 福 島 県

経済成長率 0.21 0.34 ▲0.00

労働投入量増減率 ▲0.74 ▲0.75 ▲0.91

資本ストック量増減率 ▲0.03 0.28 0.10

TFP増減率 0.99 0.82 0.82

8 茨 城 県

経済成長率 0.70 0.53 0.09

労働投入量増減率 ▲0.45 ▲0.44 ▲0.73

資本ストック量増減率 0.52 0.35 0.20

TFP増減率 0.63 0.63 0.63

9 栃 木 県

経済成長率 1.60 1.59 1.25

労働投入量増減率 ▲0.52 ▲0.49 ▲0.79

資本ストック量増減率 0.56 0.52 0.49

TFP増減率 1.56 1.56 1.56

10 群 馬 県

経済成長率 1.06 1.10 0.68

労働投入量増減率 ▲0.51 ▲0.49 ▲0.83

資本ストック量増減率 0.49 0.51 0.44

TFP増減率 1.08 1.08 1.08

11 埼 玉 県

経済成長率 1.01 0.89 0.40

労働投入量増減率 ▲0.32 ▲0.31 ▲0.71

資本ストック量増減率 0.40 0.27 0.18

TFP増減率 0.93 0.93 0.93

12 千 葉 県

経済成長率 0.63 0.51 ▲0.02

労働投入量増減率 ▲0.39 ▲0.33 ▲0.72

資本ストック量増減率 0.41 0.24 0.09

TFP増減率 0.61 0.61 0.61

13 東 京 都

経済成長率 1.25 0.61 ▲0.13

労働投入量増減率 ▲0.16 ▲0.25 ▲0.68

資本ストック量増減率 ▲0.25 ▲0.80 ▲1.09

TFP増減率 1.67 1.67 1.67

14 神 奈 川 県

経済成長率 0.95 0.86 0.23

労働投入量増減率 ▲0.26 ▲0.29 ▲0.77

資本ストック量増減率 0.41 0.36 0.21

TFP増減率 0.80 0.80 0.80

15 新 潟 県

経済成長率 ▲0.33 ▲0.40 ▲0.75

労働投入量増減率 ▲0.75 ▲0.68 ▲0.93

資本ストック量増減率 ▲0.05 ▲0.18 ▲0.29

TFP増減率 0.47 0.47 0.47

16 富 山 県

経済成長率 ▲0.56 ▲0.57 ▲1.06

労働投入量増減率 ▲0.69 ▲0.57 ▲0.93

資本ストック量増減率 ▲0.07 ▲0.21 ▲0.33

TFP増減率 0.21 0.21 0.21

45七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 48: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-46-

Ⅰ-2

  2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度

17 石 川 県

経済成長率 ▲0.84 ▲1.02 ▲1.54

労働投入量増減率 ▲0.49 ▲0.40 ▲0.73

資本ストック量増減率 ▲0.16 ▲0.43 ▲0.63

TFP増減率 ▲0.19 ▲0.19 ▲0.19

18 福 井 県

経済成長率 1.16 1.02 0.70

労働投入量増減率 ▲0.63 ▲0.58 ▲0.80

資本ストック量増減率 0.15 ▲0.04 ▲0.13

TFP増減率 1.65 1.65 1.65

19 山 梨 県

経済成長率 1.66 1.51 1.11

労働投入量増減率 ▲0.64 ▲0.70 ▲0.99

資本ストック量増減率 0.79 0.71 0.60

TFP増減率 1.51 1.51 1.51

20 長 野 県

経済成長率 1.26 0.70 ▲0.14

労働投入量増減率 ▲0.66 ▲0.66 ▲0.98

資本ストック量増減率 ▲0.11 ▲0.66 ▲1.17

TFP増減率 2.05 2.05 2.05

21 岐 阜 県

経済成長率 0.27 0.26 ▲0.18

労働投入量増減率 ▲0.61 ▲0.56 ▲0.87

資本ストック量増減率 0.24 0.18 0.06

TFP増減率 0.64 0.64 0.64

22 静 岡 県

経済成長率 0.99 0.65 0.07

労働投入量増減率 ▲0.57 ▲0.53 ▲0.85

資本ストック量増減率 ▲0.21 ▲0.59 ▲0.85

TFP増減率 1.79 1.79 1.79

23 愛 知 県

経済成長率 0.24 0.20 ▲0.29

労働投入量増減率 ▲0.24 ▲0.23 ▲0.63

資本ストック量増減率 0.13 0.08 ▲0.01

TFP増減率 0.35 0.35 0.35

24 三 重 県

経済成長率 2.33 1.87 1.20

労働投入量増減率 ▲0.42 ▲0.41 ▲0.68

資本ストック量増減率 0.45 ▲0.01 ▲0.39

TFP増減率 2.30 2.30 2.30

25 滋 賀 県

経済成長率 1.89 1.87 1.53

労働投入量増減率 ▲0.20 ▲0.18 ▲0.46

資本ストック量増減率 0.94 0.90 0.84

TFP増減率 1.15 1.15 1.15

26 京 都 府

経済成長率 0.47 0.54 0.06

労働投入量増減率 ▲0.48 ▲0.39 ▲0.77

資本ストック量増減率 0.31 0.29 0.18

TFP増減率 0.65 0.65 0.65

27 大 阪 府

経済成長率 ▲0.39 ▲0.36 ▲1.04

労働投入量増減率 ▲0.50 ▲0.46 ▲0.98

資本ストック量増減率 ▲0.13 ▲0.15 ▲0.30

TFP増減率 0.24 0.24 0.24

28 兵 庫 県

経済成長率 ▲0.01 ▲0.12 ▲0.74

労働投入量増減率 ▲0.51 ▲0.46 ▲0.86

資本ストック量増減率 0.27 0.27 0.27

TFP増減率 0.27 0.27 0.27

29 奈 良 県

経済成長率 0.22 0.16 ▲0.36

労働投入量増減率 ▲0.61 ▲0.57 ▲0.92

資本ストック量増減率 0.19 0.09 ▲0.07

TFP増減率 0.64 0.64 0.64

30 和 歌 山 県

経済成長率 ▲0.27 ▲0.67 ▲1.38

労働投入量増減率 ▲0.60 ▲0.61 ▲0.84

資本ストック量増減率 0.31 ▲0.08 ▲0.56

TFP増減率 0.02 0.02 0.02

31 鳥 取 県

経済成長率 ▲0.76 ▲0.99 ▲1.36

労働投入量増減率 ▲0.73 ▲0.69 ▲0.87

資本ストック量増減率 ▲0.11 ▲0.38 ▲0.58

TFP増減率 0.08 0.08 0.08

32 島 根 県

経済成長率 0.01 ▲0.07 ▲0.35

労働投入量増減率 ▲0.82 ▲0.73 ▲0.91

資本ストック量増減率 0.19 0.01 ▲0.08

TFP増減率 0.65 0.65 0.65

33 岡 山 県

経済成長率 0.29 0.30 ▲0.07

労働投入量増減率 ▲0.51 ▲0.44 ▲0.73

資本ストック量増減率 0.22 0.16 0.09

TFP増減率 0.58 0.58 0.58

46    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 49: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-47-

Ⅰ-3

  2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度

34 広 島 県

経済成長率 ▲0.22 ▲0.38 ▲0.97

労働投入量増減率 ▲0.59 ▲0.47 ▲0.83資本ストック量増減率 0.27 ▲0.01 ▲0.24

TFP増減率 0.10 0.10 0.10

35 山 口 県

経済成長率 1.13 1.26 0.99

労働投入量増減率 ▲0.74 ▲0.61 ▲0.86

資本ストック量増減率 0.49 0.48 0.47

TFP増減率 1.39 1.39 1.39

36 徳 島 県

経済成長率 1.18 1.09 0.75労働投入量増減率 ▲0.71 ▲0.66 ▲0.88

資本ストック量増減率 0.82 0.68 0.56

TFP増減率 1.07 1.07 1.07

37 香 川 県

経済成長率 ▲0.39 ▲0.45 ▲0.86

労働投入量増減率 ▲0.67 ▲0.59 ▲0.91

資本ストック量増減率 0.03 ▲0.11 ▲0.20

TFP増減率 0.25 0.25 0.25

38 愛 媛 県

経済成長率 ▲0.34 ▲0.59 ▲1.04

労働投入量増減率 ▲0.69 ▲0.62 ▲0.85

資本ストック量増減率 0.14 ▲0.18 ▲0.40

TFP増減率 0.21 0.21 0.21

39 高 知 県

経済成長率 ▲1.67 ▲2.30 ▲3.47労働投入量増減率 ▲0.86 ▲0.78 ▲1.02

資本ストック量増減率 ▲0.37 ▲1.10 ▲2.04

TFP増減率 ▲0.44 ▲0.44 ▲0.44

40 福 岡 県

経済成長率 0.51 0.52 0.12

労働投入量増減率 ▲0.52 ▲0.38 ▲0.70

資本ストック量増減率 0.27 0.14 0.06

TFP増減率 0.77 0.77 0.77

41 佐 賀 県

経済成長率 0.24 0.02 ▲0.29

労働投入量増減率 ▲0.56 ▲0.51 ▲0.64

資本ストック量増減率 0.46 0.19 0.02

TFP増減率 0.34 0.34 0.34

42 長 崎 県

経済成長率 0.18 ▲0.04 ▲0.38

労働投入量増減率 ▲0.82 ▲0.75 ▲0.91

資本ストック量増減率 0.40 0.11 ▲0.06TFP増減率 0.60 0.60 0.60

43 熊 本 県

経済成長率 0.39 0.28 0.03

労働投入量増減率 ▲0.58 ▲0.51 ▲0.65

資本ストック量増減率 0.40 0.21 0.11

TFP増減率 0.57 0.57 0.57

44 大 分 県

経済成長率 ▲0.13 ▲0.39 ▲0.79

労働投入量増減率 ▲0.67 ▲0.54 ▲0.73

資本ストック量増減率 0.35 ▲0.05 ▲0.25

TFP増減率 0.20 0.20 0.20

45 宮 崎 県

経済成長率 0.81 0.77 0.57

労働投入量増減率 ▲0.68 ▲0.59 ▲0.72

資本ストック量増減率 0.54 0.40 0.34TFP増減率 0.96 0.96 0.96

46 鹿 児島 県

経済成長率 0.54 0.30 0.09

労働投入量増減率 ▲0.71 ▲0.65 ▲0.74

資本ストック量増減率 0.56 0.27 0.14

TFP増減率 0.69 0.69 0.69

47 沖 縄 県

経済成長率 0.69 0.38 ▲0.02

労働投入量増減率 ▲0.12 ▲0.17 ▲0.39資本ストック量増減率 0.61 0.35 0.17

TFP増減率 0.20 0.20 0.20

48 全 県 計

経済成長率 0.71 0.70 0.25

労働投入量増減率 ▲0.46 ▲0.43 ▲0.76

資本ストック量増減率 0.40 0.35 0.23

TFP増減率 0.78 0.78 0.78

47七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 50: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-48-

 

【 ケースⅡ 】

  Ⅱ-1

  2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度

1 北 海 道

経済成長率 ▲0.34 ▲0.26 ▲0.68

労働投入量増減率 ▲0.72 ▲0.63 ▲0.94

資本ストック量増減率 ▲0.16 ▲0.17 ▲0.28

TFP増減率 0.54 0.54 0.54

2 青 森 県

経済成長率 ▲0.07 ▲0.52 ▲1.03

労働投入量増減率 ▲0.77 ▲0.79 ▲0.97

資本ストック量増減率 0.36 ▲0.07 ▲0.40

TFP増減率 0.34 0.34 0.34

3 岩 手 県

経済成長率 0.54 0.03 ▲0.39

労働投入量増減率 ▲0.73 ▲0.71 ▲0.86

資本ストック量増減率 ▲0.07 ▲0.140.12

TFP増減率 1.35 0.62 0.62

4 宮 城 県

経済成長率 1.82 0.91 0.40

労働投入量増減率 ▲0.46 ▲0.42 ▲0.67

資本ストック量増減率 ▲0.12 0.49 0.24

TFP増減率 2.41 0.83 0.83

5 秋 田 県

経済成長率 ▲0.51 ▲0.84 ▲1.21

労働投入量増減率 ▲0.88 ▲0.83 ▲0.94

資本ストック量増減率 ▲0.13 ▲0.51 ▲0.77

TFP増減率 0.50 0.50 0.50

6 山 形 県

経済成長率 0.47 0.29 0.05

労働投入量増減率 ▲0.78 ▲0.73 ▲0.85

資本ストック量増減率 0.47 0.25 0.13

TFP増減率 0.78 0.78 0.78

7 福 島 県

経済成長率 0.59 1.11 0.85

労働投入量増減率 ▲0.63 ▲0.62 ▲0.77

資本ストック量増減率 ▲0.03 0.55 0.44

TFP増減率 1.26 1.19 1.19

8 茨 城 県

経済成長率 0.53 0.37 ▲0.06

労働投入量増減率 ▲0.44 ▲0.39 ▲0.67

資本ストック量増減率 0.48 0.27 0.12

TFP増減率 0.49 0.49 0.49

9 栃 木 県

経済成長率 0.92 0.83 0.47

労働投入量増減率 ▲0.49 ▲0.43 ▲0.71

資本ストック量増減率 0.47 0.33 0.24

TFP増減率 0.94 0.94 0.94

10 群 馬 県

経済成長率 0.79 0.81 0.40

労働投入量増減率 ▲0.46 ▲0.41 ▲0.72

資本ストック量増減率 0.43 0.39 0.31

TFP増減率 0.82 0.82 0.82

11 埼 玉 県

経済成長率 1.04 0.92 0.45

労働投入量増減率 ▲0.27 ▲0.27 ▲0.65

資本ストック量増減率 0.40 0.27 0.19

TFP増減率 0.91 0.91 0.91

12 千 葉 県

経済成長率 1.23 1.25 0.77

労働投入量増減率 ▲0.35 ▲0.29 ▲0.66

資本ストック量増減率 0.54 0.50 0.40

TFP増減率 1.04 1.04 1.04

13 東 京 都

経済成長率 1.29 0.62 ▲0.10

労働投入量増減率 ▲0.07 ▲0.17 ▲0.55

資本ストック量増減率 ▲0.26 ▲0.83 ▲1.16

TFP増減率 1.63 1.63 1.63

14 神 奈川 県

経済成長率 0.71 0.54 ▲0.05

労働投入量増減率 ▲0.17 ▲0.22 ▲0.66

資本ストック量増減率 0.37 0.25 0.10

TFP増減率 0.51 0.51 0.51

15 新 潟 県

経済成長率 0.35 0.51 0.27

労働投入量増減率 ▲0.63 ▲0.56 ▲0.78

資本ストック量増減率 0.13 0.22 0.21

TFP増減率 0.85 0.85 0.85

16 富 山 県

経済成長率 ▲0.01 ▲0.300.09

労働投入量増減率 ▲0.55 ▲0.45 ▲0.78

資本ストック量増減率 0.04 0.04 ▲0.02

TFP増減率 0.51 0.51 0.51

48    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 51: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-49-

Ⅱ-2

  2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度

17 石 川 県

経済成長率 0.31 0.49 0.15

労働投入量増減率 ▲0.42 ▲0.33 ▲0.63

資本ストック量増減率 0.12 0.21 0.17

TFP増減率 0.61 0.61 0.61

18 福 井 県

経済成長率 1.04 0.90 0.61

労働投入量増減率 ▲0.48 ▲0.44 ▲0.65

資本ストック量増減率 0.15 ▲0.02 ▲0.11

TFP増減率 1.37 1.37 1.37

19 山 梨 県

経済成長率 1.41 1.23 0.85

労働投入量増減率 ▲0.50 ▲0.55 ▲0.80

資本ストック量増減率 0.75 0.62 0.49

TFP増減率 1.16 1.16 1.16

20 長 野 県

経済成長率 0.97 0.57 ▲0.04

労働投入量増減率 ▲0.49 ▲0.49 ▲0.77

資本ストック量増減率 ▲0.05 ▲0.45 ▲0.77

TFP増減率 1.52 1.52 1.52

21 岐 阜 県

経済成長率 0.26 0.22 ▲0.19

労働投入量増減率 ▲0.47 ▲0.43 ▲0.72

資本ストック量増減率 0.24 0.16 0.05

TFP増減率 0.49 0.49 0.49

22 静 岡 県

経済成長率 0.96 0.63 0.09

労働投入量増減率 ▲0.45 ▲0.41 ▲0.70

資本ストック量増減率 ▲0.21 ▲0.57 ▲0.82

TFP増減率 1.62 1.62 1.62

23 愛 知 県

経済成長率 1.40 1.55 1.16

労働投入量増減率 ▲0.15 ▲0.16 ▲0.53

資本ストック量増減率 0.31 0.48 0.45

TFP増減率 1.24 1.24 1.24

24 三 重 県

経済成長率 1.04 0.83 0.43

労働投入量増減率 ▲0.38 ▲0.36 ▲0.62

資本ストック量増減率 0.55 0.32 0.18

TFP増減率 0.87 0.87 0.87

25 滋 賀 県

経済成長率 1.92 1.90 1.59

労働投入量増減率 ▲0.15 ▲0.13 ▲0.39

資本ストック量増減率 0.94 0.91 0.86

TFP増減率 1.12 1.12 1.12

26 京 都 府

経済成長率 0.79 0.92 0.51

労働投入量増減率 ▲0.36 ▲0.30 ▲0.64

資本ストック量増減率 0.39 0.45 0.38

TFP増減率 0.77 0.77 0.77

27 大 阪 府

経済成長率 0.11 0.21 ▲0.36

労働投入量増減率 ▲0.39 ▲0.38 ▲0.86

資本ストック量増減率 ▲0.03 ▲0.020.08

TFP増減率 0.52 0.52 0.52

28 兵 庫 県

経済成長率 ▲0.02 ▲0.17 ▲0.75

労働投入量増減率 ▲0.40 ▲0.37 ▲0.74

資本ストック量増減率 0.15 0.15 0.15

TFP増減率 0.15 0.15 0.15

29 奈 良 県

経済成長率 0.30 0.28 ▲0.20

労働投入量増減率 ▲0.55 ▲0.50 ▲0.83

資本ストック量増減率 0.21 0.15 ▲0.00

TFP増減率 0.64 0.64 0.64

30 和 歌山 県

経済成長率 ▲0.86 ▲1.55 ▲2.67

労働投入量増減率 ▲0.57 ▲0.55 ▲0.77

資本ストック量増減率 0.16 ▲0.54 ▲1.46

TFP増減率 ▲0.46 ▲0.46 ▲0.46

31 鳥 取 県

経済成長率 ▲0.12 ▲0.08 ▲0.29

労働投入量増減率 ▲0.66 ▲0.57 ▲0.74

資本ストック量増減率 0.01 ▲0.03 ▲0.07

TFP増減率 0.53 0.53 0.53

32 島 根 県

経済成長率 0.33 0.41 0.21

労働投入量増減率 ▲0.74 ▲0.61 ▲0.79

資本ストック量増減率 0.26 0.21 0.19

TFP増減率 0.82 0.82 0.82

33 岡 山 県

経済成長率 0.38 0.44 0.11

労働投入量増減率 ▲0.42 ▲0.33 ▲0.61

資本ストック量増減率 0.23 0.20 0.15

TFP増減率 0.57 0.57 0.57

49七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 52: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-50-

Ⅱ-3

  2010~2020年度 2020~2030年度 2030~2040年度

34 広 島 県

経済成長率 ▲0.13 ▲0.28 ▲0.83労働投入量増減率 ▲0.46 ▲0.35 ▲0.68

資本ストック量増減率 0.28 0.03 ▲0.19

TFP増減率 0.04 0.04 0.04

35 山 口 県

経済成長率 1.20 1.38 1.14

労働投入量増減率 ▲0.65 ▲0.50 ▲0.74資本ストック量増減率 0.50 0.52 0.52

TFP増減率 1.36 1.36 1.36

36 徳 島 県

経済成長率 1.18 1.16 0.86

労働投入量増減率 ▲0.66 ▲0.57 ▲0.78

資本ストック量増減率 0.82 0.71 0.61

TFP増減率 1.03 1.03 1.03

37 香 川 県

経済成長率 ▲0.04 ▲0.320.03労働投入量増減率 ▲0.62 ▲0.49 ▲0.79

資本ストック量増減率 0.08 0.03 ▲0.03

TFP増減率 0.50 0.50 0.50

38 愛 媛 県

経済成長率 0.49 0.58 0.33

労働投入量増減率 ▲0.63 ▲0.53 ▲0.74資本ストック量増減率 0.33 0.32 0.29

TFP増減率 0.79 0.79 0.79

39 高 知 県

経済成長率 ▲1.21 ▲1.59 ▲2.36

労働投入量増減率 ▲0.80 ▲0.69 ▲0.92

資本ストック量増減率 ▲0.28 ▲0.77 ▲1.32

TFP増減率 ▲0.14 ▲0.14 ▲0.14

40 福 岡 県

経済成長率 0.44 0.43 0.06労働投入量増減率 ▲0.44 ▲0.32 ▲0.62

資本ストック量増減率 0.27 0.15 0.08

TFP増減率 0.61 0.61 0.61

41 佐 賀 県

経済成長率 0.38 0.22 ▲0.06

労働投入量増減率 ▲0.48 ▲0.42 ▲0.55資本ストック量増減率 0.49 0.27 0.12

TFP増減率 0.37 0.37 0.37

42 長 崎 県

経済成長率 0.34 0.18 ▲0.11

労働投入量増減率 ▲0.74 ▲0.65 ▲0.81

資本ストック量増減率 0.44 0.20 0.07

TFP増減率 0.64 0.64 0.64

43 熊 本 県

経済成長率 0.89 0.92 0.75労働投入量増減率 ▲0.54 ▲0.45 ▲0.59

資本ストック量増減率 0.50 0.45 0.41

TFP増減率 0.93 0.93 0.93

44 大 分 県

経済成長率 0.44 0.36 0.06

労働投入量増減率 ▲0.55 ▲0.42 ▲0.61資本ストック量増減率 0.47 0.26 0.15

TFP増減率 0.52 0.52 0.52

45 宮 崎 県

経済成長率 0.51 0.41 0.18

労働投入量増減率 ▲0.60 ▲0.49 ▲0.62

資本ストック量増減率 0.49 0.29 0.19

TFP増減率 0.62 0.62 0.62

46 鹿 児島 県

経済成長率 0.71 0.58 0.40労働投入量増減率 ▲0.62 ▲0.54 ▲0.63

資本ストック量増減率 0.60 0.39 0.30

TFP増減率 0.73 0.73 0.73

47 沖 縄 県

経済成長率 0.52 0.20 ▲0.20

労働投入量増減率 ▲0.09 ▲0.13 ▲0.33資本ストック量増減率 0.58 0.29 0.10

TFP増減率 0.04 0.04 0.04

48 全 県 計

経済成長率 0.96 1.01 0.62

労働投入量増減率 ▲0.37 ▲0.35 ▲0.65

資本ストック量増減率 0.45 0.48 0.39

TFP増減率 0.88 0.88 0.88

50    七十七銀行 調査月報 特集号

Page 53: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

-51-

(参考文献)

・内閣府「国民経済計算」

・内閣府「県民経済計算」

・内閣府「東日本大震災における被害額の推計について」(2011)

・内閣府「平成23年度国民経済計算確報」に係る利用上の注意について」(2012)

・厚生労働省「毎月勤労統計調査(地方調査)」

・総務省「住宅・土地統計調査」

・総務省「国勢調査報告」

・総務省「住民基本台帳人口移動報告」

・総務省「平成17年(2005年)産業連関表」

・総務省「平成24年経済センサス活動調査」

・経済産業省「工場立地動向調査」

・経済産業省「大店立地法の届出状況について」

・中小企業庁「中小企業白書」(2014年版)

・国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(平成25(2013)年推計)

・宮城県「宮城県民経済計算(平成24年度・速報)」

・宮城県「平成23年度宮城県民経済計算」

・岩手県「平成24年度岩手県県民経済計算(速報)」

・福島県「平成24(2012)年度福島県県民経済計算(早期推計)の概要」

・山形県「平成23年度山形県県民経済計算」

・三重県「平成23年度三重県県民経済計算」

・東北ILC推進協議会「ILCを核とした東北の将来ビジョン」(2012)

・桑畠滋「2020年度までの都道府県別成長率予測」(2011)

・大塚章弘、森岡隆司、黒瀬誠「地域経済における産業集積効果の実証分析」(2011)

・林宜嗣「地域の将来を踏まえた都道府県財政の予測と制度改革」(2010)

・梶善登「人口減少と日本の経済成長率」(2006)

・石川達也「都道府県別に見た生産と民間資本および社会資本の長期的推移」(2000)

・松浦春洋、渡邊克紀、植村修一「中長期的な日本経済の成長力」(1998)

・七十七銀行「東日本大震災後の宮城県の経済情勢と復興状況について」(2013)

-51(終)- 51七十七銀行 調査月報 特集号   

Page 54: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~
Page 55: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~
Page 56: 調査月報 - The 77 Bank2014.7 Special Issue 調査月報 宮城県・東北各県の経済成長率の将来推計 ~宮城県経済のダイナミズムの再生と発展に向けて~

七十七銀行調査月報 特集号 2014年7月15日発行発行/七十七銀行地域開発部調査課 tel. 022-211-9735 fax. 022-267-5303 http://www.77bank.co.jp

印刷 株式会社佐々木印刷