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255 特定課題研究5 感染症数理モデルの解析に基づく新規ワクチンの 定期接種導入に関する判断の客観化 西 浦   博 西浦  博(北海道大学大学院医学研究科・教授) コアメンバー:水本 憲治(北海道大学大学院医学研究科・特任助教) 宮松雄一郎(北海道大学大学院医学研究科・特任助教) 国谷 紀良(神戸大学大学院システム情報学研究科・講師) Kyeongah Nah(北海道大学大学院医学研究科・特任助教) 木下  諒(北海道大学大学院医学研究科・学術研究員) 斎藤 正也(統計数理研究所・特任准教授) 上記メンバーおよび講演を求めた招聘研究者によって,初年度となる 2016 年度の間に全 4 回の研究会を 開催した.次年度に向けて有意義な議論ができたと同時に, IMAID2016 Innovative Modelling and Analysis of Infectious Disease Data, 2016)と題して国際共同研究集会を神戸大学に於いて一般公開しつつ開催する ことができたので以下に報告する. 第1回研究会の開催(2016 年 5 月) 日   時:平成 28 5 30 日(月)15 : 0022 : 0031 日(火)8 : 4512 : 00 場   所:北海道大学大学院医学研究科 出 席 者:西浦 博,水本憲治,ナ ギョンア,宮松雄一郎,松山亮太,木下 諒(以上,北海道大学) 斎藤正也(統計数理研究所) 【主な内容】 1 回研究会ということで,メンバー紹介を行い,以下の小項目に分けて研究を実施予定であることを共 有した。 1新規ワクチン接種プログラムの人口レベルで予防効果を評価・比較可能にする方法の構築 2既存のワクチン接種プログラム重要性比較と政策評価 3個々の接種プログラム最適化.特に,年齢及び地理に依存する摂取の最適配分の実装 また,専門分野が多岐にわたることから,本研究の狙いが理論的手法・実践的目標・政策提言の 3 点に分 けていることを再確認した。 理論:最低限の目標として,上記 3 つの小項目に対応する数理的アプローチを開発・報告する。 実践2 年間の限られた期間の間に,課題 1 2 は方法論の日本への適用,課題 3 は風疹ワクチンに限定 して事例研究を行い,これらの研究成果を学術雑誌に提出するまでを最低限の目標に据える。 政策提言:上記 3 つの全ての課題が理論的・数理的に解決可能な課題であることについて,学術研究を通 じた政策提言により政策立案者に広く認識させる。 特定課題研究「感染症数理モデルの解析に基づく新規ワクチンの定期接種導入に関する判断の客観化」 2016 11 8 受理

Electron Polaron 特定課題研究5 感染症数理モデルの解析に ...256 特 定課題研究5「感染症数理モデル の解析 に基づく新規ワクチン 期接種導入

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254 特定課題研究4「非線形エネルギー輸送による新しい物性理論の探求」

嶋田隆広「ひずみ誘起Electron Polaron形成と原子スケールマルチフェロイクスの創出」

 ナノスケール強誘電体の空孔に発現する磁性の特性についての量子力学シミュレーションの結果について紹介した.この磁性は材料に付加されるひずみによって強磁性・反強磁性・非磁性などに変化するという特長を有していることから,非線形局在励起が生み出す強い局所ひずみによる磁性変化,さらには移動型非線形局在モードとこれらの現象との関連性が議論された. 豊田健二「Phonons in trapped ions from the viewpoint of nonlinearity」

 井戸型電場に閉じ込められた複数のイオンからなる系の非線形ダイナミクスについての研究事例の紹介が行われた.イオン間の相互作用はクーロン力によるものであるが,ソリトン,キンクなど多様な非線形構造が観測されることが紹介された.さらにイオントラップを用いた2個のフォノンの量子干渉観測に関する研究結果が示され,非線形領域の振る舞いについて議論された.

255

特定課題研究5感染症数理モデルの解析に基づく新規ワクチンの

定期接種導入に関する判断の客観化

西 浦   博

研 究 代 表 者: 西浦  博(北海道大学大学院医学研究科・教授)コアメンバー: 水本 憲治(北海道大学大学院医学研究科・特任助教) 宮松雄一郎(北海道大学大学院医学研究科・特任助教) 国谷 紀良(神戸大学大学院システム情報学研究科・講師) Kyeongah Nah(北海道大学大学院医学研究科・特任助教) 木下  諒(北海道大学大学院医学研究科・学術研究員) 斎藤 正也(統計数理研究所・特任准教授)

 上記メンバーおよび講演を求めた招聘研究者によって,初年度となる2016年度の間に全4回の研究会を開催した.次年度に向けて有意義な議論ができたと同時に,IMAID2016(Innovative Modelling and Analysis

of Infectious Disease Data, 2016)と題して国際共同研究集会を神戸大学に於いて一般公開しつつ開催することができたので以下に報告する.

第1回研究会の開催(2016年5月)日   時: 平成28年5月30日(月)15:00─22:00,31日(火)8:45─12:00

場   所: 北海道大学大学院医学研究科出 席 者: 西浦 博,水本憲治,ナ ギョンア,宮松雄一郎,松山亮太,木下 諒(以上,北海道大学) 斎藤正也(統計数理研究所)【主な内容】

 第1回研究会ということで,メンバー紹介を行い,以下の小項目に分けて研究を実施予定であることを共有した。 1. 新規ワクチン接種プログラムの人口レベルで予防効果を評価・比較可能にする方法の構築 2. 既存のワクチン接種プログラム重要性比較と政策評価 3. 個々の接種プログラム最適化.特に,年齢及び地理に依存する摂取の最適配分の実装 また,専門分野が多岐にわたることから,本研究の狙いが理論的手法・実践的目標・政策提言の3点に分けていることを再確認した。・ 理論:最低限の目標として,上記3つの小項目に対応する数理的アプローチを開発・報告する。・ 実践:2年間の限られた期間の間に,課題1と2は方法論の日本への適用,課題3は風疹ワクチンに限定して事例研究を行い,これらの研究成果を学術雑誌に提出するまでを最低限の目標に据える。・ 政策提言:上記3つの全ての課題が理論的・数理的に解決可能な課題であることについて,学術研究を通じた政策提言により政策立案者に広く認識させる。

特定課題研究5「感染症数理モデルの解析に基づく新規ワクチンの定期接種導入に関する判断の客観化」

2016年11月8日 受理

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256 特定課題研究5「感染症数理モデルの解析に基づく新規ワクチンの定期接種導入に関する判断の客観化」

第2回研究会の開催(2016年7─ 8月)日   時: 平成28年7月31日(日)─ 平成28年8月11日(水)場   所: 統計数理研究所(東京,立川市)出 席 者: 西浦 博,水本憲治,ナ ギョンア,松山亮太,木下 亮(以上,北海道大学) 國谷紀良(神戸大学),遠藤 彰(東京大学),江島啓介(日本学術振興会)【主な内容】

 第2回研究会ということで,時系列計画について,出席者間で再確認した。本特定課題研究の時系列計画は以下のとおりであるが,この保有統計データ整理及び免疫状態データの収集などを実施した。【時系列計画】

 2016年4 ─ 6月 保有している統計データ整理,免疫状態データの収集 2016年7 ─ 9月 比較検討すべき新規接種プログラムの特定,パラメータ推定 2016年10 ─ 12月 目的関数の最適化,学会発表と論文執筆開始,研究集会,厚生労働省でのプレゼン その後,予防接種対象疾患のデータを再確認し,対象事例としては風疹とすることをメンバー間で確認し,パラメータ推定をおこなった。更に,2016年開催予定の国際研究集会開催にあたっての打ち合わせを連日行い,場所(神戸大学大学院情報学研究科)及び日程(2016年10月11─12日)等の再確認の他,プログラム・広報等について意見交換を実施した。特定課題研究の成果は,国際研究集会の特集号として出版予定であることから,構成等について意見交換を実施した。

第3回研究会の開催(2016年10月)日   時: 平成28年10月10日(日)─ 平成28年10月12日(火)場   所: 神戸大学(兵庫県,神戸市)出 席 者(コアメンバー):西浦 博,水本憲治(以上,北海道大学),國谷紀良(神戸大学)【主な内容】

 <概要> 第3回研究会として,時系列計画にしたがって研究集会を開催した。また,パラメータ推定結果を共有し,目的関数の最適化を実施した。本特定課題研究の時系列計画は以下の通りである。第3回研究会では計画進行についての意見収集も実施し,変更は必要ないという結論に至った。 特に,第3回研究会は神戸大学にて国際研究集会として一般公開で研究会を開催した。下記の招聘講師を含め,参加者数は30人に至った。 招聘講師(敬称略): Ying-Hen Hsieh(China Medical University),Houssein Ayoub(Weill Cornell Medical

Center),Hyojung Lee(UNIST),八島健太(総合研究大学院大学),三浦郁修(東京大学),遠藤 彰(東京大学),松山亮太(北海道大学),チャン ヤヒン(北海道大学)

 本国際共同研究集会のプログラム詳細を次頁に提示する. 第2回打合わせ時に開始した風疹の予防接種対象疾患のデータに関して,パラメータ推定結果を共有した。第3回研究会ではこれらの結果をふまえ,目的関数の最適化に取り組んだ。2017年開催予定の国際研究集会開催にあたっての打ち合わせを実施した。場所を統計数理研究所とすることを決定し,日程(2017

年10月中旬)や招聘講師等を検討した。特定課題研究の成果は,国際研究集会の特集号として出版予定であることから,構成等についてさらなる意見交換を実施した。

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256 特定課題研究5「感染症数理モデルの解析に基づく新規ワクチンの定期接種導入に関する判断の客観化」

第2回研究会の開催(2016年7─ 8月)日   時: 平成28年7月31日(日)─ 平成28年8月11日(水)場   所: 統計数理研究所(東京,立川市)出 席 者: 西浦 博,水本憲治,ナ ギョンア,松山亮太,木下 亮(以上,北海道大学) 國谷紀良(神戸大学),遠藤 彰(東京大学),江島啓介(日本学術振興会)【主な内容】

 第2回研究会ということで,時系列計画について,出席者間で再確認した。本特定課題研究の時系列計画は以下のとおりであるが,この保有統計データ整理及び免疫状態データの収集などを実施した。【時系列計画】

 2016年4 ─ 6月 保有している統計データ整理,免疫状態データの収集 2016年7 ─ 9月 比較検討すべき新規接種プログラムの特定,パラメータ推定 2016年10 ─ 12月 目的関数の最適化,学会発表と論文執筆開始,研究集会,厚生労働省でのプレゼン その後,予防接種対象疾患のデータを再確認し,対象事例としては風疹とすることをメンバー間で確認し,パラメータ推定をおこなった。更に,2016年開催予定の国際研究集会開催にあたっての打ち合わせを連日行い,場所(神戸大学大学院情報学研究科)及び日程(2016年10月11─12日)等の再確認の他,プログラム・広報等について意見交換を実施した。特定課題研究の成果は,国際研究集会の特集号として出版予定であることから,構成等について意見交換を実施した。

第3回研究会の開催(2016年10月)日   時: 平成28年10月10日(日)─ 平成28年10月12日(火)場   所: 神戸大学(兵庫県,神戸市)出 席 者(コアメンバー):西浦 博,水本憲治(以上,北海道大学),國谷紀良(神戸大学)【主な内容】

 <概要> 第3回研究会として,時系列計画にしたがって研究集会を開催した。また,パラメータ推定結果を共有し,目的関数の最適化を実施した。本特定課題研究の時系列計画は以下の通りである。第3回研究会では計画進行についての意見収集も実施し,変更は必要ないという結論に至った。 特に,第3回研究会は神戸大学にて国際研究集会として一般公開で研究会を開催した。下記の招聘講師を含め,参加者数は30人に至った。 招聘講師(敬称略): Ying-Hen Hsieh(China Medical University),Houssein Ayoub(Weill Cornell Medical

Center),Hyojung Lee(UNIST),八島健太(総合研究大学院大学),三浦郁修(東京大学),遠藤 彰(東京大学),松山亮太(北海道大学),チャン ヤヒン(北海道大学)

 本国際共同研究集会のプログラム詳細を次頁に提示する. 第2回打合わせ時に開始した風疹の予防接種対象疾患のデータに関して,パラメータ推定結果を共有した。第3回研究会ではこれらの結果をふまえ,目的関数の最適化に取り組んだ。2017年開催予定の国際研究集会開催にあたっての打ち合わせを実施した。場所を統計数理研究所とすることを決定し,日程(2017

年10月中旬)や招聘講師等を検討した。特定課題研究の成果は,国際研究集会の特集号として出版予定であることから,構成等についてさらなる意見交換を実施した。

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第4回研究会の開催(2016年11月)日   時: 平成28年11月6日(日)場   所: 一橋大学一橋講堂(東京都特別区)出 席 者(コアメンバー): 西浦 博,ナ ギョンア(以上,北海道大学),國谷紀良(神戸大学) 斎藤正也(統計数理研究所)招へい講師: 竹内昌平(宮崎大学)そ の 他: 浅井雄介(北海道大学)【主な内容】

 <概要> 第4回研究会として,日本熱帯医学会学術総会においてワークショップを公開して開催した.ワクチン接種の最適化問題を中心として予防接種政策について得られた知見の整理と現在進行中の研究内容について発表し,一般参加の聴衆も交えて今後の数理モデルの活用などに関して活発な議論を行った.

*** Program ***

DAY 1: 11 October 2016 Tuesday08:30 Registration (planned)09 :00 Venue opened09:30 Opening remark. Toshikazu Kuniya09 :45 Plenary talk 1: Professor Ying-Hen Hsieh, China Medical University10 :30 Break10:40 Breakout session 1 (each talk 12 min + Q & A for 3 min): Akira Endo, The University of Tokyo Yusuke Kakizoe, Kyushu University Kyeongah Nah, Hokkaido University Kenji Mizumoto, Hokkaido University Alexey Martyushev, Kyushu University Takaaki Funo, Kyushu University12:15 Lunch13:45 Educational talk 1: Professor Hiroshi Nishiura, Hokkaido University14 :30 Break14:40 Breakout session 2 (each talk 12 min + Q & A for 3 min): Yusuke Ito, Kyushu University Louis Chan, Hokkaido University Ryota Matsuyama, Hokkaido University Shingo Iwami, Kyushu University Kenta Yashima, Graduate University for Advanced Studies Wei Shi, Hokkaido University16:15 End of Day 118:00 Banquet (for those who registered in advance)

DAY 2: 12 October 2016 Wednesday09:00 Venue opened09:20 Breakout session 3 (each talk 12 min + Q & A for 3 min): Shoya Iwanami, Kyushu University Kimihito Ito, Hokkaido University Fuminari Miura, The University of Tokyo & Hokkaido University Ryosuke Omori, Hokkaido University Ryo Kinoshita, Hokkaido University10:40 Break10:50 Plenary talk 2: Dr Houssein Ayoub, Weill Cornell Medical College – Qatar12 :10 Lunch14:00 Breakout session 4 (each talk 12 min + Q & A for 3 min): Tatsuya Kurusu, Kyushu University Toshikazu Kuniya, Kobe University Masaya Saitoh, Institute of Statistical Mathematics Yuuya Tachiki, Kyoto University Hyojung Lee, Ulsan National Institute of Science and Technology Yusuke Asai, Hokkaido University15:55 Closing remark, Hiroshi Nishiura

特定課題研究5「感染症数理モデルの解析に基づく新規ワクチンの定期接種導入に関する判断の客観化」