92
脳梗塞の超急性期治療 Update 2019/7/30 慈恵ICU勉強会 レジデント1年 髙橋真悠子 1

脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

脳梗塞の超急性期治療Update

2019/7/30 慈恵ICU勉強会

レジデント1年 髙橋真悠子

1

Page 2: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

急性期脳梗塞の治療

閉塞している領域の再開通

細胞死には至っていない神経細胞領域に血流を与える

予後が改善する

参考:慈恵ICU勉強会 脳梗塞ガイドラインpart1から抜粋

2

Page 3: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

急性期脳梗塞の治療

Ø脳梗塞の発症→脳細胞が虚血へ

Ø一度虚血になった脳細胞は回復しない

Ø脳細胞の壊死が完成する前に再灌流を得る必要がある

脳卒中ガイドライン2015(2017年追補対応)より抜粋

急性期再灌流療法が発展

“Time is brain”3

Page 4: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

急性期脳梗塞の治療

Øt‐PA(tissue plasminogen activator):血栓溶解療法

ØEVT(endovascular treatment):血管内治療

脳卒中ガイドライン2015(2017年追補対応)より抜粋

4

Page 5: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

急性期脳梗塞の治療

Ø脳梗塞の発症→脳細胞が虚血へ

Ø一度虚血になった脳細胞は回復しない

Ø脳細胞の壊死が完成する前に再灌流を得る必要がある

Ø現在の脳梗塞治療は発症≦4.5hのt-PAの静脈内投与である

Ø近位主幹動脈閉塞症例:発症≦6h以内の血栓回収術との組み合わせが一般的

5

Page 6: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

日本におけるt-PAと血栓回収について近年新しい指針が相次いで発表された

最大の変更点は治療適応拡大について6

Page 7: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

そこで今回は・・・

超急性期治療の

「治療適応の拡大について」

Up-to-dateする

7

Page 8: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

本日のテーマ

・超急性期治療 適応時間の歴史おさらいt-PA:4.5hr

EVT:6hr

・最近までの流れ:画像を元にした適応拡大EVT: 〜24hrまでいけるかも?

t-PA: “Wake-up stroke”もいけるかも?

・さらに最近の流れ(ガイドライン未記載)・t-PA:9時間までいけるかも!?

8

Page 9: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

・超急性期治療 適応時間の歴史おさらいt-PA:4.5hr

EVT:6hr

・最近までの流れ:画像を元にした適応拡大EVT: 〜24hrまでいけるかも?

t-PA: “Wake-up stroke”もいけるかも?

・さらに最近の流れ(ガイドライン未記載)・t-PA:9時間までいけるかも!?

本日のテーマ

9

Page 10: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

t-PAとは?

Ø t-PA(tissue-type plasminogen activator):

遺伝子組換組織型プラスミノーゲン活性因子

Ø プラスミノーゲンの作用を増強→血栓溶解

Ø 従来の血栓溶解では多量薬剤が必要

容易に出血を起こす可能性が高い

遺伝子組み換えにより製作

脳卒中ガイドライン2015(2017年追補対応)より抜粋

10

Page 11: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

日本のガイドライン

Øt-PA投与は発症≦4.5hに強く推奨(グレードA)

Ø日本ではt-PA 0.6㎎/kgが保険適応(海外0.9mg/kg)

Ø発症≦4.5hで早期治療介入がbetter

早急にt-PAを開始することが強く推奨(グレードA)

脳卒中ガイドライン2015(2017年追補対応)より抜粋11

Page 12: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Ø発症時間が不明な時は最終健常確認時刻を

発症時刻とする。

Ø発症時刻が不明な時は、、、?

頭部MRIで拡散強調画像の虚血性変化がFLAIR画像で明瞭でない場合は、発症≦4.5hの可能性が高い

静注血栓溶解療法を考慮してもよい(グレードC1)

12

Page 13: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

N Engl J Med. 1995 Dec 14;333(24):1581-7.

1996年に米国で初めて認可される根拠となった文献

NINDS rt-PA study

発症後3時間以内の脳梗塞患者624人t-PA群とプラセボで比較

(アルテプラーぜは0.9mg/kg)

<除外項目>発症時間不明, 脳出血症例, sBP≧185mmHg, dBP≧110mmHg症状の急速改善または軽微の症状

13

Page 14: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

3ヶ月後の神経学的予後を有意に改善後遺症が軽度もしくは全くない予後良好例が30%↑

N Engl J Med. 1995 Dec 14;333(24):1581-7.14

Page 15: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

36時間後の脳出血はt-PA群で多い(6.4% vs. 0.6%, p<0.001)

90日死亡率は有意差なし(17% vs. 21%, p=0.30)

N Engl J Med. 1995 Dec 14;333(24):1581-7.15

Page 16: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

2005年に日本における認可の元になった文献

J-ACT study

日本の脳梗塞患者103人を対象としたSingle-arm study

NINDSと比較して遜色ない結果(ただし, 用量は0.6mg/kgと少なく設定)

Stroke. 2006 Jul;37(7):1810-5.

2005年に厚生労働省より認可

16

Page 17: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

NINDS rt-PA study (1995)

J-ACT study (2006)NINDS rt-PA study (1995)

発症3時間以内のアルテプラーゼ 0.9mg/kg 承認

発症3時間以内のアルテプラーゼ 0.6mg/kg 承認

3時間以内のrt-PA療法が確立(ただし欧米と日本で用量が異なることに注意)

しかし3時間以内だと, 適応となる患者がかなり限られる・・17

Page 18: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ECASS-Ⅲ trial(2008)

IST-3 trial(2012)

EPITHET trial(2008)

ATLANTIS trial(1999)

ECASS trial(1995)

ECASS-Ⅱ trial(1998)

≦6hr

≦6hr

3-5hr

3-4.5hr

3-6hr

≦6hr

その後複数のRCTが行われ・・

3時間を超えても効果がある可能性が出てきた18

Page 19: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Lancet.2014;384: 1929-35.

ECASS-Ⅲ trial(2008)

IST-3 trial(2012)

EPITHET trial(2008)

ATLANTIS trial(1999)

ECASS trial(1995)

ECASS-Ⅱ trial(1998)

≦6hr

≦6hr

3-5hr

3-4.5hr

3-6hr

≦6hr

NINDS rt-PA study (1995)

全部あわせてmeta-analysis

→何時間まで有効か?19

Page 20: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Result

治療開始時期👉P<0.0001👉P=0.0132👉P=0.15

年齢 👉P=0.08で有意差なし

NIHSS 👉P=0.06有意差なし

4.5時間以内なら神経学的予後良好↑早ければ早いほど良い

有意差あり

神経学的予後良好(mRS 0-1)

Lancet.2014;384: 1929-35.20

Page 21: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

90日死亡率は有意差なし

ただし4.5hr超えると死亡リスク↑

7日目での頭蓋内出血↑

初期のNIHSSが高いほどリスク↑の傾向

つまり, 4.5時間以内なら益が害を上回るこれらの結果を経て, t-PA治療適応は

4.5時間まで延長Lancet.2014;384: 1929-35.

21

Page 22: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

最新の指針でも同様に記載されている(7.の項目については後ほど)

22

Page 23: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

・超急性期治療 適応時間の歴史おさらいt-PA:4.5hr

EVT:6hr

・最近までの流れ:画像を元にした適応拡大EVT: 〜24hrまでいけるかも?

t-PA: “Wake-up stroke”もいけるかも?

・さらに最近の流れ(ガイドライン未記載)・t-PA:9時間までいけるかも!?

本日のテーマ

23

Page 24: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

血管内治療

1. t-PAのみでは治療効果不十分な場合(例えば、内頚動脈閉塞や中大脳動脈近位部閉塞)

2. 時間的制限によりt-PAが投与できない場合

3. 投与しても無効だった場合

⇒血管内治療の適応となる可能性

24

Page 25: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Ø内頸動脈or中大脳動脈の閉塞と診断されたら?

アルテプラーゼ静注療法を含む内科的治療

発症≦6h以内に血管内治療を開始

グレードAで推奨

Øアルテプラーゼ以外のt-PAの静脈内投与

十分な科学的根拠がない

未承認(グレードC2)

脳卒中ガイドライン2015(2017年追補対応)より抜粋25

Page 26: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Ø2004年 初めて血栓回収デバイスが使用

Ø2008年

発症≦8hの主幹動脈閉塞の再開通率と転帰の改善

(Stroke 2009 Aug;40(8):2761-8.)

Ø2009年以降

ステントリトリーバーが主流となり、現在に至る(Stroke 2010 Aug;41(8):1836-40.)

26

Page 27: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Ø2013年

血栓回収術の有効性を否定する研究が相次いで発表

27

発表された国際脳卒中学会(2013年)の開催地にちなんで“Honolulu shock”と呼ばれたりするらしい

(命名者は日本人らしい)

J Stroke Cerebrovasc Dis 2014; 23: e295-298.

IMSⅢ trial

DEFUSE3 trial

MR RESCUE trial

しかし・・・

Page 28: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

28

“Honolulu shock”の要因としては、・閉塞血管評価によらない症例選択・旧来デバイス使用による低い再開通率・治療開始や再開通の遅延

が指摘されているStroke 2014; 45: 3116-3122.

リベンジRCT×5(2014〜2015年)

Page 29: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

EXTEND-IA (N Engl J Med 2015;372:1009-18.)

SWIFT PRIME (N Engl J Med 2015;372:2285-95.)

29

EVT + 標準治療 MR CLEAN

ESCAPE

REVASCAT

EVT + t-PAEXTEND-IA SWIFT PRIME

標準治療のみ

t-PAのみ

MR CLEAN (N Engl J Med 2015;372:11-20.)

REVASCAT (N Engl J Med 2015;372:2296-2306.)

ESCAPE (N Engl J Med 2015;372:1019-30.)

(注:t-PAは必須ではない)

(≦ 6hr)

(≦ 12hr)

(≦ 8hr)

(≦ 6hr) (≦ 6hr)

Page 30: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Lancet 2016; 387: 1723–31

HERMES trial

MR CLEAN ESCAPE EXTEND-IA SWIFT PRIME REVASCAT

5つのRCTを統合したmeta-analysis

神経学的予後が改善 30

Page 31: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Lancet 2016; 387: 1723–31

頭蓋内出血も死亡率も増えない

31

メリットの方が大きそう

Page 32: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

HERMES trialでの追加解析

JAMA 2016; 316: 1279-1288.

90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は

3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98)6時間後:1.98(95%CI 1.30-3.00)8時間後:1.57(95%CI 0.86-2.88)

遅くなるほど有効性が減少6時間までで有効, 8時間で有意差なし

32

6時間までならメリットが上回るという結果

時間をさらに区分してみて検討

Page 33: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

5つのRCTから言えたこと

発症前mRS 0〜1NIHSS≧6ICAもしくはMCAのM1閉塞ASPECTS≧6≦6hr以内に血管内治療が可能

≦4.5時間以内だったらt-PAも併用

という条件でステントリトリーバーで血栓回収をすれば内科治療単独に優る有効性が得られる

33

Page 34: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

34

ASPECTとは?Alberta Stroke Program Early CT Score

MCA領域の大脳皮質を10の範囲に分類早期虚血像がある場所の範囲数分を減点

点数が低いほど虚血範囲が大きい

7点以下では神経学的予後悪化, 頭蓋内出血リスク↑

Page 35: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

35

最新の指針にも組み込まれた

Page 36: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

・超急性期治療 適応時間の歴史おさらいt-PA:4.5hr

EVT:6hr

・最近までの流れ:画像を元にした適応拡大EVT: 〜24hrまでいけるかも?

t-PA: “Wake-up stroke”もいけるかも?

・さらに最近の流れ(ガイドライン未記載)・t-PA:9時間までいけるかも!?

本日のテーマ

36

Page 37: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

血栓回収療法の適応時間延長を検討したRCT×2

DAWN試験(2017-2018)

DEFUSE3 試験(2017-2018)

37

Page 38: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

• DAWN試験 (N Engl J Med 2018;378:11-21)

ü最終無事確認時刻より6~24時間で内頸静脈終末部あるいは

中大脳動脈(M1)閉塞例

ü神経症候と虚血コア体積のミスマッチによって選択

→画像はRAPID automated software を使用し作成(日本で未使用)

ü内科治療と血栓回収療法を比較

ü対象:血栓回収療法群(107例) vs 内科治療群(99例)

ü90日後のmRS:内科治療群≧血栓回収療法群

ü死亡率:差はなし(血栓回収:19% vs 内科的治療18%)

38

Page 39: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

• DEFUSE3 試験 (N Engl J Med 2018;378:708-718.)

ü最終無事確認時刻より6~16時間の内頚静脈あるいは中大脳動脈閉塞を認める症例

①虚血コア体積が70ml以下である

②ミスマッチ比(灌流遅延領域と虚血コアの体積比が6秒以上)が1.8以上

③ペナンブラ体積(灌流遅延領域と虚血コアの体積差)が15 ml以上

→画像はRAPID automated software を使用し作成(日本で未使用)

ü内科治療と血栓回収療法を比較

ü対象:血栓回収療法群(92例)vs 内科治療群(90例)

ü90 日後mRS:血栓回収群で有意に低い

ü死亡率:血栓回収療法群(14%) vs 内科治療群(26%)

39

Page 40: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

血栓回収術は適応時間延長を検討されているが、

一方で血栓溶解についてはどうだろうか?

40

Page 41: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

本日のテーマ

・超急性期治療 適応時間の歴史おさらいt-PA:4.5hr

EVT:6hr

・最近までの流れ:画像を元にした適応拡大EVT: 〜24hrまでいけるかも?

t-PA: “Wake-up stroke”もいけるかも?

・さらに最近の流れ(ガイドライン未記載)・t-PA:9時間までいけるかも!?

41

WAKE-UP trial

Page 42: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

42

“Wake-up stroke?”

起床時に気づく脳梗塞=発症時間がわからない

脳梗塞患者の14〜27%がwake-up strokeと言われている

Wake-up strokeは重症度が高く, 機能予後不良という報告もある

Stroke 2002; 33: 988-93.Neurology 2011; 76: 1662-7.

J Neurol 2007; 254: 782.Can J Neurol Sci 2005; 32: 232.

これまで治療適応にならなかったWake-up strokeをなんとかしたい

Page 43: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

DWI-FLAIR mismatch

DWI高信号(+)かつ

FLAIR高信号(-)

☞発症4.5時間以内の可能性が高い

43

Page 44: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

44

PRE-FLAIR study多施設観察研究

543名を解析

DWI-FLAIR mismatchが≦4.5hrであることを同定

by 神経内科医

感度 62%、特異度 78%、PPV 83%

DWI-FLAIR mismatchを使えばt-PA適応症例をチョイスできるのでは!?

Lancet Neurol 2011; 10: 978.

Page 45: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

DWI-FLAIR mismatchを用いた方法により発症時期不明の脳梗塞に対して

アルテプラーゼ投与で機能的予後が改善するか

45

WAKE-UP trial

Page 46: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ヨーロッパ8か国 70施設

ランダム化、二重盲検化、プラセボ対象試験

2012年9月~2017年6月

Ø導入基準

18~80歳

発症前mRS 0-1

起床時発症 or 発症時間不明(失語や混乱などで)で、かつDWI-FLAIRミスマッチのある患者

46

Page 47: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Ø除外項目:

üMRIで出血性病変がある

ü病変の大きさが中大脳動脈領域の1/3を超えるü機械的血栓回収術が予定された

üNIHSS 25を超える

üt-PAが禁忌

47

Page 48: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØPrimary efficacy end point

üランダム化後90日でmRSが0あるいは1

ØSecondary efficacy end point

ü90日後のmRSの平均値

ü90日後に治療効果のあった患者比率

ü90日後の包括的な成績ü90日後のベックのうつ病検査表点数

üランダム化22-36時間後のMRI上の脳梗塞巣の体積

48

Page 49: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØPrimary Safety end pointü90日後のmRSが4~6点

ØSecomdary safety end point

ランダム化後22~36時間後のMRIにおいて

ü神経症状を起こしている症候性頭蓋内出血ü脳梗塞巣の30%を超える出血性病変の発症

49

Page 50: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

サンプルサイズの計算

先行研究に基づいて、Primary efficacy end pointを有する患者の割合で10%の差がつくと予想

(Lancet 2010; 375: 1695-703. )

検出率80%、αエラー5%で計算

→1trial group 370人の患者が必要と算出

→除外される患者を考慮して800人と設定

(400人/1trial group)

50

Page 51: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

1362例が対象として抽出

ü503例がランダム化試験に参加ü800人を想定していたが、資金不足により中止された

859例が除外

【除外された患者】üDWI-mismatchがない人:53%ü虚血病巣不明:16%ü頭蓋内出血:10%

【対象:503例 (約37%が抽出)】ü発症前は日常生活可能ü目覚めたときに症状ありü発症時期不明üDWI異常+、FLAIR高信号域-

(=脳梗塞発症から4.5時間以内)

51

Page 52: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

プラセボ群:249例アルテプラーゼ群:254例

52

Page 53: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

60歳台、男性が60%

夜間睡眠中の発症が89%で最多

高血圧症の既往が多い

ü症状に気が付き投薬されるまでの時間は約3.1時間

ü最終無事確認時間から治療開始までの時間は

約10.3時間ü ICA閉塞がアルテプラー

ゼ群に多い。それ以外に両群に有意差なし

üNIHSSの平均は6点

53

Page 54: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØPrimary efficacy end point:アルテプラーゼ群で90日後のmRS0-1点の割合が有意に高い

54

Page 55: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Result

ØSecondary efficacy end point:ü90日後のmRS平均値はアルテプラーゼ群で有意に低い

ü90日後に治療効果のあった患者はアルテプラーゼ群で高い55

Page 56: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Secondary efficacy end point

56

P=0.003

mRSのスコア分布はアルテプラーゼ群でより良い(有意差あり)

Page 57: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØPrimary safety end point:

ü90日後の死亡、mRS4~6点では明らかな差を認めない

57

Page 58: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØSecondary Safety end point:

脳内出血はアルテプラーゼ群に有意に多い

58

Page 59: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Result

ØSecondary Safety end point:ü 症候性脳梗塞再発と占拠性脳梗塞で2群間に有意差なし

59

Page 60: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

この文献をまとめると、、、

Ø90日後の機能予後はアルテプラーゼ群で良好

Ø90日後に治療効果のあった患者はアルテプラーゼ群で高い

Ø今回の研究では2/3の患者にDWI-FLAIRミスマッチがなく、無作為化を受けなかった

Ø約20%の患者に主要な頭蓋内動脈に閉塞を認めた

→血栓回収術の適応となる可能性があった

60

Page 61: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ü資金不足で早期で研究が打ち切りへ

ü安全性の評価が不十分な可能性がある

ü早期試験中止に伴い治療効果を過大評価している可能性がある

üαエラーの可能性(擬陽性)

α

61

予定された患者数を大幅に下回る

Page 62: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

62

Page 63: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

血栓回収では治療適応の時間が長くなっているが、血栓溶解療法はどうだろうか??

最近はアルテプラーゼの投与開始時間を

さらに延長させる検討がされている

63

Page 64: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

・超急性期治療 適応時間の歴史おさらいt-PA:4.5hr

EVT:6hr

・最近までの流れ:画像を元にした適応拡大t-PA: “Wake-up stroke”もいけるかも?

EVT: 〜24hrまでいけるかも?

・さらに最近の流れ(ガイドライン未記載)・t-PA:9時間までいけるかも!?

本日のテーマ

64

EXTEND trial

Page 65: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

脳梗塞発症後9時間以内の灌流画像に基づく

血栓溶解療法

65

EXTEND trial

Page 66: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

多施設共同無作為化、プラセボ対照試験

2010年8月~2018年6月

Ø導入基準

ü脳梗塞発症から4.5~9時間以内

ü起床時発症(入眠~起床までの時間の中間を発症時刻とする)

ü画像で脳に低灌流であるが救済可能な領域を認めた患者(=ペナンブラ領域をもつ患者)

üNIHSS 4-26

ü発症前mRS 0-1

66

Page 67: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

この文献のペナンブラ

Ø有意なペナンブラ領域:ü低灌流領域と虚血領域に差があるものを対象

ü低灌流/虚血の体積の割合が1.2以上ある

ü虚血体積が70ml未満

ü低灌流領域と虚血領域の体積の差が10ml以上ある

低灌流領域

虚血領域

67

Page 68: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Ø虚血領域(救済不可能):

正常領域と比較して30%血流が低下している領域、

あるいは拡散強調画像で高信号領域を認める領域

Ø低灌流領域:

MRI灌流画像やCT灌流画像でトレーサーを入れてから最大停滞時間が6秒を超えている領域とした

画像はRAPID automated software を使用し作成

(日本では使用されていないsoftware である)

68

Page 69: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

1. CTとMRIで頭蓋内血種があると診断された

2. NIHSS<4点3. 血管内治療(血栓回収療法)の対象と

なりうる

4. 脳梗塞発症前のmRSが2以上5. 禁忌となる対象6. 中大脳動脈領域に1/3以上の虚血範

囲がある7. 30日以内に研究に参加した患者

8. 余命が1年以内と診断されている末期患者

9. 溶血性尿毒症症候群または血栓性血小板減少性紫斑病などの重症の微小血管症に罹患している患者

10.妊娠している患者

69

Page 70: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

11.過去3か月以内に脳梗塞を引き起こした患者12.直近でクモ膜下出血、脳動静脈奇形、動脈瘤、

脳腫瘍の既往がある場合13.抗凝固薬を内服している、INR>1.714.ヘパリンを使用している患者15.72時間以内にⅡb-Ⅲ剤を使用している場合16.低血糖17.高血圧がコントロールされていない患者18.出血素因のある患者19.21日以内に消化管出血、尿路出血があった患者20.14日以内に外科的処置を先行する場合21.72時間以内に血栓溶解薬を投与している場合

70

Page 71: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØPrimary endopoint:

ü3か月後mRSが0-1の割合

ØSecondary endopoint:

ü3か月後のmRSにばらつきがあるか

ümRSが0-2の割合

üt‐PAを投与して24時間後の再灌流した体積の割合• 50%以上回復した群の割合

• 90%以上回復した群の割合

71

Page 72: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØThird endopoint:

ü主要血管が閉塞している患者において24時間後に再開通が得られたかどうか

(再開通の定義はArterial スケールで2-3であること)

ü神経学的症状の改善を評価

⇒NIHSSが8点以上回復した

1日後、3日後のNIHSSが0-1点である

72

Page 73: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØSafety outcome

ü脳梗塞発症後の90日以内の死亡率

ü治療介入36時後の症候性頭蓋内出血の割合

※症候性頭蓋内出血:

→症候性:NIHSSが4点以上増加

→頭蓋内出血:ECASS分類PH2 実質性出血タイプ

実質的な空間占拠性効果を伴う梗塞領域の30%を超える血腫をいう

73

Page 74: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

サンプルサイズの計算

先行研究に基づいて、Primary efficacy end pointを有する患者の割合で15%の差がつくと予想

( Lancet Neurol 2008; 7: 299-309. )

検出率80%、αエラー5%で計算

→1trial group 400人の患者が必要と算出

→最初の200人の時点でフォローアップ不能の患者が多いことが判明し310名に修正された

74

Page 75: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Method –統計学的分析-

Øロジスティック解析分析

ØPrimary endpoint:

→年齢とNIHSSスコアで多変量解析、調整済

ØSecondary・Third endpoint:

→95%信頼区間で点推定値として報告、未調整

Ø統計:Stata software, version 13 (StataCorp)

ØOddz検定:ブラント検定、近似尤度比検定

75

Page 76: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Ø年齢:ü75歳未満

ü75歳以上80歳未満

ü80歳以上

ØNIHSSスコア:ü10点未満、

ü10点以上

Ø治療介入するまでの時間:ü4.5h~6h未満

ü6h~9h

ü起床時発症

Ø地域:üオーストラリア(16施設)

ニュージーランド(1施設)

フィンランド(1施設)

ü台湾(10施設)

サブグループ解析

76

Page 77: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Results

77

Page 78: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

78

2018年WAKE-UP試験がで血栓溶解療法の安全性と有効性が発表

→試験は中止となった

Page 79: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

患者背景 有意差なし70歳台、男性<女性

起床時発症が多い

NIHSSスコアの平均有意な差なし

Page 80: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØPrimary outcome:ü 補正をすればアルテプラーゼ群で90日後のmRS0-1点の割合

が有意に高いü 補正しないと有意差なし

80

補正無し補正あり

Page 81: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØSecondary outcome:各mRSのばらつきに

差を認めない

81

Page 82: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØSecondary outcome:機能的自立・改善、24時間後の再灌流体積に有意差あり

補正すると有意差あり

有意差あり

82

補正無し補正あり

Page 83: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØTertiary outcome:ü24時間後の再開通率に有意差ありü24時間後の神経学的所見に有意差ありü72時間後、90日後の神経学的所見に有意差なし

アルテプラーゼ群で再開通率は良好

24時間後の神経学的所見に有意差あり

83

補正無し補正あり

Page 84: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ØSafety outcome:ü90日後の死亡率に有意差を認めないüアルテプラーゼ群で症候性の頭蓋内出血が

多い傾向にある(有意差は示されず)

84

補正無し補正あり

Page 85: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

この文献をまとめるとØアルテプラーゼ投与群

→90日後のmRS、機能的自立・改善度・24時間後の再灌流体積は有意差をもって良好

Ø72時間以降の神経学的所見、90日後の死亡率には有意差を認めない

ØWake-up 試験と対象患者が異なるため、早期中断には無理がありそう。

Ø早期に試験が中断されたのでαエラーの可能性、安全性の評価が不十分

85

Page 86: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

86

Page 87: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

ü脳梗塞発症後4.5-9時間の間にアルテプラーゼを投与

アルテプラーゼ群のほうがmRS(0-1点)が44%高かった。

(P値=0.04)

ü血栓溶解療法は4.5h以内という限りがあるのに対し、

血栓回収療法は6・16・24hでも良い結果をもたらした。

ペナンブラ領域からの側副血行路が発達

87

(Int J Stroke 2015; 10: 723-9)

Page 88: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

Ø急性脳梗塞を発症した患者で、発症後≦4.5-9hに

アルテプラーゼを投与すると治療効果が高い

Øしかし・・・・

ü脳梗塞発症時期が不明の患者も多い

ü病院設備によりMRI、CTなど診断に使用する機械が異なる

88

Page 89: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

üアメリカでは急性脳梗塞で入院した患者のうち、

わずか6.5%しか血栓溶解療法が施行されていない

(Stroke Vasc Neurol 2016; 1: 8-15.)

ü治療適応可能な時間を拡大することで、より多くの患者に対して治療が可能

üさらに正確な画像評価(虚血コアとペナンブラ領域)が可能な施設があれば、

→治療介入できる可能性が高まる(N Engl J Med 2018; 379: 611-22.)

89

Page 90: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

日米ガイドライン カバー範囲

・超急性期治療 適応時間の歴史おさらいt-PA:4.5hr

EVT:6hr

・最近までの流れ:画像を元にした適応拡大EVT: 〜24hrまでいけるかも?

t-PA: “Wake-up stroke”もいけるかも?

・さらに最近の流れ(ガイドライン未記載)・t-PA:9時間までいけるかも!?

90

Page 91: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

私見

ü現状、血栓回収と血栓溶解の線引きは不透明な部分も多く、慎重な判断が必要である。

üアメリカではソフトウェアで解析がされているのに対して日本では未使用であるため、そのまま応用可能かは不明。

ü実臨床では、臨床症状と梗塞領域の解離からペナンブラ領域を推定するしか方法がない。

üペナンブラを正確に評価できる人材が少なく、臨床で応用しにくい。

ü研究が早期に中断されていることを踏まえると、特に安全面に関して研究が必要。

91

Page 92: 脳梗塞の超急性期治療 UpdateJAMA2016;316:1279-1288. 90日後のmRSスコアが内科治療よりも改善するオッズ比は 3時間後:2.79(95%CI 1.96-3.98) 6時間後:1.98(95%CI

<今後の展望>

・Time is BRAIN !

・ Mechanical>Chemical thrombolysis

(※SKIP STUDY:超急性期の血管内治療単独療法)

・THAWS試験も解析中(Wake-up 試験の条件で日本の投与量で行うとどうなるか)

92