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総力特集 看護記録システムを大幅見直し! 病院の紹介 当院は40の院内診療科,病床数594床(一 般544床,精神50床)を有する,東京都の区南 部(品川区・大田区)二次医療圏の急性期病院 であり,現在,一般病棟の平均在院日数は9.1 日となっている。がんの早期発見・低侵襲治 療,救急体制の充実,地域医療連携,国際化を 4本柱に掲げ,地域医療の拠点病院として地域 と密につながりながら,専門性の高い治療はも ちろんのこと,診療科間の連携により総合的な 医療の提供を目指している。 また,国際的な医療機能評価の一つであるJCI (Joint Commission International:国際病院 機能評価機構)の認証を取得しており,医療安 全と医療の質の改善に向けた取り組みを実践し ている。 当院における記録 当院の記録は,NANDA-I看護診断分類法13 領域データベース(領域区分項目は病院独自), 看護計画,NANDA-I看護診断,看護成果分類 (NOC),看護介入分類(NIC)を採用し,SOAP 記録で展開している。入院初期の看護診断に至 らない看護過程は,SOAP記録内でテンプレー トなどを使用し,展開している。 電子カルテ上での看護記録システムの構成は, ①看護データベース,②看護計画,③経過記 録・フロー型記録(ケアフロー),④看護サマ リーである。 看護記録見直しの経過 当院では,2000年の新病院移転と共に電子 多職種協働に役立つツール, PILE MAPを活用した看護記録への移行 カルテを導入し,NANDA-NIC-NOCによるア セスメントと看護計画を採用してきた。導入後 は,演習や研修を繰り返し実施してきたが,思 うようにアセスメント力の向上やNANDA-NIC- NOCを使った看護計画の立案の推進にはつな がらず,「実践した看護が記録に残っていない, 看護が見えてこない」という状況があった。 その原因として考えられたのは,看護診断を 含めた看護過程の記録に問題が生じているので はないかという点であった。そこで,2014年 4月から看護部内で看護長,看護主任で構成さ れた「看護過程のあり方検討ワーキンググルー プ」を発足させ,現状の看護過程のあり方の問 題点について,看護管理者やスタッフへのアン ケートやインタビュー,ワーキンググループメ ンバーによるカルテレビューを行うことによっ て確認し,解決方法などの検討を行った。その 結果,①看護診断・NOC・NICを使った看護計 画の立案方法が現状に合わない,②今行ってい る看護がSOAP記録に埋もれて見えない,③看 護データベースとスクリーニングの連動がない, ④領域アセスメント・全体像が活用されない, ⑤データベースが多職種で共有できるツールに なっていない,という課題が明確となった。 それを基に,2016年4月には,課題解決に 〈Profile〉 1998年同病院入職。2011年CCU病棟看護主任。 2016年消化器内科病棟看護長を経て現職。2019年認定看 護管理者の資格を取得,看護部記録委員会で活動。 吉川 聖 NTT東日本関東病院 救急センター看護長/認定看護管理者 2 臨床看護記録 vol.30 no.1

多職種協働に役立つツール, PILE MAPを活用した看護記録への … · 看護計画,nanda-I看護診断,看護成果分類 (noc),看護介入分類(nic)を採用し,soap

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総力特集 看護記録システムを大幅見直し!

◦病院の紹介 当院は40の院内診療科,病床数594床(一般544床,精神50床)を有する,東京都の区南部(品川区・大田区)二次医療圏の急性期病院であり,現在,一般病棟の平均在院日数は9.1日となっている。がんの早期発見・低侵襲治療,救急体制の充実,地域医療連携,国際化を4本柱に掲げ,地域医療の拠点病院として地域と密につながりながら,専門性の高い治療はもちろんのこと,診療科間の連携により総合的な医療の提供を目指している。 また,国際的な医療機能評価の一つであるJCI

(Joint Commission International:国際病院機能評価機構)の認証を取得しており,医療安全と医療の質の改善に向けた取り組みを実践している。

当院における記録 当院の記録は,NANDA-I看護診断分類法13領域データベース(領域区分項目は病院独自),看護計画,NANDA-I看護診断,看護成果分類

(NOC),看護介入分類(NIC)を採用し,SOAP記録で展開している。入院初期の看護診断に至らない看護過程は,SOAP記録内でテンプレートなどを使用し,展開している。 電子カルテ上での看護記録システムの構成は,①看護データベース,②看護計画,③経過記録・フロー型記録(ケアフロー),④看護サマリーである。

看護記録見直しの経過 当院では,2000年の新病院移転と共に電子

多職種協働に役立つツール, PILE MAPを活用した看護記録への移行

カルテを導入し,NANDA-NIC-NOCによるアセスメントと看護計画を採用してきた。導入後は,演習や研修を繰り返し実施してきたが,思うようにアセスメント力の向上やNANDA-NIC-NOCを使った看護計画の立案の推進にはつながらず,「実践した看護が記録に残っていない,看護が見えてこない」という状況があった。 その原因として考えられたのは,看護診断を含めた看護過程の記録に問題が生じているのではないかという点であった。そこで,2014年4月から看護部内で看護長,看護主任で構成された「看護過程のあり方検討ワーキンググループ」を発足させ,現状の看護過程のあり方の問題点について,看護管理者やスタッフへのアンケートやインタビュー,ワーキンググループメンバーによるカルテレビューを行うことによって確認し,解決方法などの検討を行った。その結果,①看護診断・NOC・NICを使った看護計画の立案方法が現状に合わない,②今行っている看護がSOAP記録に埋もれて見えない,③看護データベースとスクリーニングの連動がない,④領域アセスメント・全体像が活用されない,⑤データベースが多職種で共有できるツールになっていない,という課題が明確となった。 それを基に,2016年4月には,課題解決に

〈Profile〉1998年同病院入職。2011年CCU病棟看護主任。

2016年消化器内科病棟看護長を経て現職。2019年認定看

護管理者の資格を取得,看護部記録委員会で活動。

吉川 聖NTT東日本関東病院救急センター看護長/認定看護管理者

2 臨床看護記録 vol.30 no.1

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向けた方策を検討するための看護部内の組織として,「看護過程実践検討ワーキンググループ」を発足させた。そのワーキンググループでは,看護過程の記録のあり方について,他病院での現状調査や文献を持ち寄ってディスカッションを行ったり,他施設への見学で情報収集を行ったりした。その上で,当院で理想とする看護過程の展開についてのフローを作成し,それぞれの項目についての現状分析と記録のあり方についての検討を行っていった。その結果,今後の課題として多職種協働による標準ケア計画を立案できる仕組みをつくることが必要と考えられた。そこで,患者目標と診断・ケアプランを共有するために多職種で使用できるケア計画のフォーマット(図1)を作成し,1病棟で2週間のプレテストを行った。

看護記録の現状と課題 2000年に当院に電子カルテが導入されてか

ら,医療を取り巻く社会情勢は大きく変化している。医療の高度化や低侵襲な治療方法の確立,医療の役割分化の中での在院日数の短縮化,超高齢社会の進展による患者の多様化,JCI認証取得による国際水準の医療の質の保証,チーム医療の推進,地域包括ケアシステムの導入と推進など,チーム介入やリスク低減のために記録は増加の一途をたどっていった。 併せて,看護師に求められる役割の変化も見られるようになってきた。特に多職種チームによるケアの提供,生活者としての患者の情報を地域へつなぐ調整役としての役割を担う機会が増え,そのための記録が必要となっていった。そもそも看護業務の中で記録が占める割合は高いと言われている。看護師の役割拡大の中で,業務の効率化を図り負担を軽減するためには,前項の当院の記録に関する課題をクリアし,記録時間に関する業務負担を軽減することが大きな課題であり,現在の当院の記録のあり方を根

スクリーニングアセスメント プロブレム 目標 介入 評価

プロブレム(診断)Problem

(Diagnosis)

計画立案日Date ofplan

責任者Responsiblity

患者目標Goals/Outcome

介入Interventions

評価(責任者が評価する)Evaluation

予定日Scheduleddate

結果Result

評価日Date

疾病段階

看護

疼痛

栄養

身体機能

認知機能

退院支援

その他

患者プロファイル

サマリー(中間・退院)

情報提供書

紹介状

図1●多職種で使用できる計画のフォーマット

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本的に見直すことの重要性が再認識された。 そこで,記録内容と方法を見直すための体制として,前述の「看護過程のあり方検討ワーキンググループ」「看護過程実践検討ワーキンググループ」での課題を踏まえ,2016年11月にはPatient information integration team(Piit)が発足した(図2)。このチームは,看護部長を中心に,副看護部長3人,看護情報管理担当者1人,看護部記録委員会委員長(看護長)1人の計6人で構成され,看護記録の再構造化・看護業務支援のためのICT(Information and Communication Technology)・IoT(Internet of Things)の導入検討,全体のスケジュール管理を目的として,①必要な情報とは何か,②看護データベースの情報を多職種と共有できるツールとはどのようなものか,③看護過程の展開の記録システムを再構築するにはどのようなマスタを使用すればよいのかについて検討を行った。

看護記録見直しの実際患者情報の整理 現在当院では,看護師が収集した患者情報はNANDA-I看護診断分類法13領域データベースに記録されている。しかし,これは看護データベースとなっており,多職種と共有できる情報になっていない。入院期間が短期化している中で,それぞれの職種が別々あるいは重複する情報を収集することは,効果的かつ効率的なケアの実践につなげることはできない。 そこで,看護師が収集した情報をチームで活用できる仕組みに再構築するため,Piit内で検討を行い,まず,多職種で共有すべき基本情報と看護師の専門性の中で必要な情報について整理した。そこで作成されたのが,図3である。これは,NTT東日本関東病院看護部のアセス

メントの全体図であり,患者情報の連携する要素が重なり合うという視点から,PILE(Patient Information Link Elements)MAPと名づけられた。 PILE MAPに示されている第1の輪は,多職種で共有する患者基本情報と,看護師が初期スクリーニングからチームにつなぐカテゴリーである。第2の輪は,当院の記録基準に準じて,24時間以内にアセスメントが必要な項目で,チームではなく看護師が行うことが必要なアセスメントになっている。そして第3の輪は,72時間以内に実施すべき患者情報の中で,患者を全人的にとらえ統合するために必要なアセスメントで,ここでは看護師が介入すべき患者問題が特定される。

多職種連携のための記録 PILE MAPの第1の輪にあるチームにつなぐカテゴリー(疼痛・栄養・身体機能・生活機能・認知機能)のスクリーニングの内容は,情報収集を行う看護師だけでなく,チームが迅速に専門的アセスメントを行い,介入につなげるために,情報の受け手となる介入を担当するチーム・職種が共同で作成している(表1)。看護師の行うスクリーニングの最終評価は可能な限り数値化され,誰が実施しても同じく選別可能な内容となっている。これは,情報発信をする

病院内の委員会やワーキンググループに役割を分担

Piit

記録委員会

•記録内容•記録方法•記録監査内容

•記録共有方法•看護業務支援 デバイスの検討

•ケアの質モニタ

•看護過程研修

システムコアワーキンググループ

看護の質向上委員会

教育支援開発

図2●記録内容と方法を見直すための体制

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看護師と受け手のチームの間に,情報の食い違いが発生しないための工夫であり,スクリーニングを行う看護師の能力や経験値などに左右されないといった質の担保の点からも効果的である。 例として,チームにつなぐ栄養評価の流れを図4に示す。まず,入院時のスクリーニングとし

て,入院後24時間以内に看護師はテンプレートを用いて患者の栄養状態を評価(当院では簡易栄養評価〈MNA:mini nutritional assessment〉を使用)する。このスクリーニングでは,12 〜14点では「栄養状態良好」,8〜11点では「低栄養リスクあり」となっており,初期での介入は不要となっている。7点以下で「低栄養」と

カテゴリー 介入者スクリーニング担当者 アセスメント担当者

栄養

疼痛

身体機能

認知機能

退院支援

看護師

管理栄養士

看護師・PCT

リハビリテーション技師

看護師・医師

看護師・MSWなど

管理栄養士・NST

看護師・医師・PCT

PT・OT・ST・看護師

看護師・(リエゾンチーム)

MSW・退院支援チーム・看護師

表1●チームで行うスクリーニングとアセスメント

疼痛

安全

社会

疼痛

栄養

睡眠

栄養

バイタルサインズ

リエゾン神経内科

褥瘡対策チーム

管理栄養士NST

SW支援NS

ヘルスプロモーション

認知機能学習

能力身体機能生活

機能

生理機能 成長

発達

認知機能

身体機能

STPTOT

皮膚排泄

精神心理

価値信念

生活機能

在宅・地域のサポート窓口

患者基本情報

入退院支援

疼痛管理

栄養管理

創傷管理

認知機能

身体機能

看護初期アセスメント(入院後24時間以内に実施) 看護統合アセスメント(入院後72時間以内に実施)

緩和ケアチームPCT

図3●PILE MAP

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なるため,この結果を基に,72時間以内に管理栄養士が専門的な視点でアセスメントを行い,さらに必要な患者には栄養サポートチーム(NST)によるカンファレンスが行われ,介入検討が進められる。 これら定められた必要なスクリーニングを漏れなく行うための工夫として,すべての入院患者について入院時パスを入力している。これにより,初期スクリーニングに関する記録の実施率は増加してきている。しかし,このチーム介

入の流れはSOAP記録により展開しており,チームにつないだ後,現状では記録が分散してしまい共有が困難であるとの課題があるため,統合して見られるように情報一覧画面(図5)を運用している。併せて,患者の問題を共有する手段として,プロブレム一覧を多職種に開放し,どの職種・チームが何の患者問題に対して介入しているのか,全体像を把握できるようにしている。これにより,治療・ケアの進行や入院期間のマネジメントができるよう工夫している。

情報一覧画面の活用

図5●分散した記録を統合的に確認する方法

介入不要

介入

介入

管理栄養士の介入は不要

NSTの介入は不要

NSTの介入検討が必要

介入が必要

管理栄養士の介入が必要NSTの介入検討は不要

スクリーニング:入院後24時間以内に所定のテンプレートを用いて評価アセスメント:入院後72時間以内に所定のテンプレートを用いて評価

アセスメント(管理栄養士)

アセスメント(管理栄養士)

スクリーニング(看護師)

8点以上 7点以下

図4●チームへつなぐ栄養評価の流れ

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看護計画の見直し 現在使用している看護計画,NANDA-I看護診断,看護成果分類(NOC),看護介入分類(NIC)は,診断を導き出し計画を立案するのに時間がかかり,リアルタイムな介入になっていないだけではなく,言葉が難しく,誰が担当しても同じケアを実践するということが困難であった。そこで,多職種で共有でき,地域連携にも活用できる看護計画作成システムの見直しと,標準ケア計画の導入・作成を行った。 新たな看護計画の検討の際に考慮したことは,次の2点である。まず,多職種で共有して使えるツールとなること。また,使用する用語は患者参画型のケア計画を視野に入れた平易な言葉で,日本にある標準規格を用いた用語を選択することとした。 そこで,いくつかのプランについてメリットとデメリットについて検討を重ね,当院では看護成果分類(NOC)に代わるものとしてBOM

(Basic Outcome Master),看護介入分類(NIC)に代わるものとしてHCbooks(Health Care books)の導入を決定した(表2)。これらを使用し,疾病や症状段階に応じたケア計画(目標・観察・介入)を部署別にセット化の作業

(図6)を行い,現在はマスタを現行の電子カルテの看護診断画面を使用しての導入に向けて準備を進めている段階であり,間もなく運用を開始する予定である。

質の担保と教育 新たな記録の仕組みを導入するに当たり,記録の方法だけでなく,記録の質を担保するための教育についても検討を行った。看護の現場で標準化を図ろうとすると,個別性のある看護ができなく

なるのではないか,看護師のアセスメント能力が育たないのではないかと懸念されることが多い。そこでまず,看護師長,看護主任,記録リンクナースに対し,「新たな看護過程の展開と標準ケア計画について」の研修会を行い,その中で「個別性の考え方」について説明し,理解を得た。加えてスタッフ看護師には,フィジカルアセスメントをSOAP記録に残す練習をワークショップ形式で実施した。 また,今まで行っていた記録監査を見直し,

「形式監査」と「質監査」を導入した。質監査は,監査者と被監査者が記録を通して行った看護実践を振り返ることで,看護の妥当性・適切性を判断し,質向上につなげることを目的に,面接による監査方法とした。ただし,質監査については監査者の育成が課題となるため,部署で

現状 今後

NANDA-I看護診断分類法13領域データベース

看護成果分類(NOC)

看護介入分類(NIC)

Patient Information Link Elements(PILE MAP)

PILE MAPBasic Outcome Master(BOM)

Health care books(HCbooks)

表2●新たなケア計画

患者目標 患者像分類 ケア 評価

大目標 目標

HCbooksHCbooksBOM

PILE MAPHCbooks

MEDIS看護実践用語標準マスタ

疾患症状

治療検査 病期 観察

介入 結果

標準看護計画

クリティカルパス

基本マスタ

セット化

図6●マスタセット化作業

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行った監査について看護部記録委員会内で事例検討などを行いながら課題を明確にし,今後の教育のあり方について検討を進めていきたいと考えている。

今後の課題 記録について,見直しを図った一部分については現在すでに運用を開始しているが,PILE MAPを活用した多職種協働が可能な看護記録へ完全に移行できるのは,2021年1月の電子カルテ更改のタイミングである。まず,新たな記録について多職種も含めて理解を深め,チーム医療推進のために活用できる記録とできるかが

今後の鍵である。標準化を図れた記録は,多職種協働に効果的なだけでなく,さまざまなデータを私たちにもたらしてくれるというメリットもある。そのデータを看護実践の質や医療全体の質の評価のために分析し,活用していくこと,将来的には他病院とベンチマークできるようにすることを,今後の課題と考えている。

引用・参考文献1)大久保清子,坂本すが編:多職種連携がうまくいく看護記録の活用術,P.159,メディカ出版,2018.

2)日本看護業務研究会:HCbooks特徴 https://www.jasni.or.jp/index-hcbooks.html(2020年3月閲覧)

3)日本クリニカルパス学会:Basic Outcome Master(BOM) http://www.jscp.gr.jp/bom.html(2020年3月閲覧)

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